2007/05/25

平成19年6月号

改正雇用保険法案のポイント「50%以上」の割増率

◆雇用保険法が改正されました!
雇用保険制度の安定的な運営を確保し、直面する諸課題に対応するための改正雇用保険法案が、今通常国会で審議され、平成19年4月(以下に掲げた項目については10月)から施行されました。
ここでは、改正案の主な内容をご紹介します。

◆被保険者資格・受給資格要件の一本化
短時間労働被保険者とそれ以外の被保険者の区分がなくなり、被保険者資格が一本化されます。
現行では、1週間の所定労働時間が20~30時間の労働者は短時間労働被保険者という区分に該当し、失業給付(基本手当)を受給するための被保険者期間は12月(短時間労働被保険者以外の一般被保険者は6月)でしたが、受給資格要件は被保険者期間6月に一本化されます(ただし、自己都合等による離職の場合の被保険者期間は12月)。

◆育児休業給付制度の拡充等
休業前賃金の40%(休業期間中30%、職場復帰6カ月後に10%)から暫定的に50%(休業期間中30%、職場復帰6カ月後に20%)となります。

◆教育訓練給付の対象範囲の見直し
教育訓練給付の受給要件を、当分の間、初回のみ緩和(3年→1年)されます。
現行では、教育訓練給付を受給するためには被保険者期間が3年以上なければ支給を受けることができませんが、教育訓練給付金の支給を受けたことがない者に限り、1年以上あれば、教育訓練給付金の支給を受けることができるようになります。



「年収130万円」の壁、働き方で変化?
◆「年収130万円」未満の意味
働く時間と日数が正社員のおおむね4分の3未満で、年収が130万円未満である場合、配偶者が加入する厚生年金保険や健康保険の被扶養者となり、健康保険や年金の保険料を負担しなくても給付が受けられるようになります。
しかし、この「年収130万円」の内容が職業などにより異なることは意外と知られていないのではないでしょうか?

◆額面通りでない職業も
サラリーマンの夫を持つ妻の場合、妻がパートで働いているときは、給与、公的年金などすべてが収入となりますので、これらを足し合わせて130万円未満かどうかが問題となります。
一方、妻が自営業者だと、売上からその売上を得るための必要経費を控除した金額を年収として扱います。この経費には、消耗品や研修費など実際に使用した金額以外に、パソコンや車を購入した場合の減価償却費も含みます。したがって、妻が自営業者なら売上130万円以上であっても夫の扶養になれることがあります。
また、妻の働き方だけでなく、夫の会社の健康保険組合の規約によっても被扶養者になれるかどうかが異なります。健康保険組合の中には、規約で年収130万円未満でも、103万円を超えていると被扶養者にはならないと決めている組合もあるからです。

◆現実はどうか?
本来、年収103万円以下は税法上の扶養親族、130万円未満は社会保険の被扶養者の認定基準ですが、混在しているのが現状です。いずれにしても、国民年金に加入している夫を持つ妻は、働き方や収入にかかわらず、医療も年金も自身で保険料を支払います。パートに出て厚生年金に加入したほうが社会保険料も安く年金額も増えることがあるのが現実のようです。
一般的に、サラリーマンに扶養される第3号被保険者は有利だと言われていますが、政府はパートを厚生年金に加入させることを検討中です。今までのように制度に合わせて働き方を選ぶ時代が終わりつつあるのではないでしょうか。



会社に無断でアルバイトをしたら?
◆社員の兼業にどう対処?
ある企業に勤める女性社員が勤務終了後にクラブで接客のアルバイトをしていたところ、それが会社に見つかってしまい、女性社員は厳罰をおわされることになりました。この会社の判断は正当といえるのでしょうか。

◆懲戒処分の判断基準は?
アルバイトなどの兼業を理由とした懲戒処分が正当かどうかは、企業が就業規則に兼業禁止を定めていて、その規則を適用することに合理性があるかどうかで決まります。
アルバイトによる疲労のために会社の本業に従事することが著しく困難になるような場合は、兼業禁止を適用される可能性があります。また、会社の評判を損なうような内容のアルバイトをしている場合などにも、適用事由になりうるといえます。

◆裁判例では?
裁判例の中には、就業時間後の午後6時から午前0時までキャバレーで働いていた女性社員を解雇したことについて、社員の兼業の可否について会社の承諾を得る必要があると定めた就業規則の適用は権利の濫用に当たらないとしたものがあります(1982年東京地裁)。このように、会社に無断でアルバイトをしていることも問題になります。「アルバイトをする場合は、会社の承諾を得ることが必要である」といった就業規則がある場合、無断で就業すると手続違反として懲戒事由になる可能性もあるでしょう。

◆就業規則の徹底を図ってきたかが問われる
また、会社がそれまで違反行為に厳しく対処してきたかどうかもポイントになります。会社や社外での行動に厳しく対処してこなかった会社が、急に特定の人を対象に懲罰を科すことは妥当ではないという見方もできます。
会社側が日常的に研修などを通じて就業規則の徹底を図っており、違反者には公平に処分を下していたのであれば、社員が反論するのは難しいでしょう。



仕事に関係のないウェブサイトの閲覧
◆取引先との会話に困る?
企業で、業務に関係のないウェブサイトの閲覧を制限する動きが広がっているようです。業務の効率アップを図るともに、情報漏洩対策を強化する企業が増えているためです。
そんな中、青少年向けとして始まった有害サイトを遮断する「フィルタリングソフト」の市場が昨年は約2割伸びており、学校や家庭以上に企業で浸透しています。このソフトを導入すると、買い物サイトやスポーツニュースなど、趣味のサイトを閲覧しようとした場合、画面上に「このページは利用制限されています」、「業務に関係ありますか」といった警告が表示されます。
従業員の中には、「野球やゴルフの結果がわからないので、取引先との会話に困る」といった意見もあるようです。

◆サイト閲覧の4分の1が私的利用?
国内ソフトメーカーによれば、ある企業では、フィルタリングソフト導入前に閲覧されたウェブサイトのうち、約4分の1が業務に関係のない私的利用だとみられるそうです。
個人情報保護法が施行され、企業が情報漏洩対策や内部統制を進める中、ウェブサイトにアクセスしただけで情報が漏洩する危険性もあるため、アクセス制限や履歴の監視などの対策をとる必要がでてきたようです。

◆プライバシーの問題は?
社員の電子メールの送受信については、一定のプライバシーを認める判例があります。
一方、ウェブサイトは情報を得る手段に過ぎず、アクセス制限にプライバシー侵害が成立する余地はないと考えられていますが、チェックされる側がストレスを感じる方法をとると人格権の侵害につながる可能性がないとは言えない、との指摘もあります。



外食産業の回復は雇用状況にも影響?
◆外食産業に回復の兆し
低迷していた外食産業に回復の兆しが出てきました。日本フードサービス協会がまとめた3月の外食の既存売上高(120社)は、ファーストフードがけん引して前年同月比2.0%増と、3カ月連続でプラスになりました。客数も同3.7%増と高い伸びを示しています。
各社は人手の確保に向け、賃金や働き方で新手法も取り入れ始めました。外食産業の回復は消費のすそ野の広がりを裏づけ、雇用の需要にも影響しそうです。

◆ファーストフードの売上好調
既存店売上高を個別に見ると、ファーストフードが7.1%増と高い伸びとなっています。ファーストフード以外でも高級レストラン(1.2%増)、喫茶(0.4%増)などが3カ月連続でプラスとなっています。
既存店売上高の増加を支えているのは全体の客数の伸びです。3月の客数は3.7%増で、1月、2月と月を追うごとに伸び率が大きくなっています。中でもファーストフードの3月の伸び率は7.8%でした。これに対して、客単価は総じて横ばいから減少傾向に転じています。
ただ、外食の中でもファミリーレストランや居酒屋は構造的な問題を抱え低迷しています。ファミリーレストランは、主力客層である家族連れの来店が減少し、居酒屋は昨年夏以降の飲酒取締まり強化で郊外店が苦戦しています。

◆人手不足で人材確保にひと工夫
回復の兆しが出てきた外食産業ですが、人件費や原材料の上昇が、収益回復の足かせになっています。中でも人手確保の問題は深刻で、各社はパートやアルバイトの採用・つなぎ留めに向け、賃金体系や働き方などで知恵を絞っています。外食産業は、店舗従業員の約9割をパートやアルバイトに依存していますが、特に都心部などは人手確保の激戦区になっています。
2007年2月時点の「飲食店・宿泊業」のパートの雇用状況は、「不足」から「過剰」の割合を引いた値が47と、全生産業の中で最も高く人手不足が常態化しています。そのような状況の中、人手を確保するために、以下のように様々な工夫をこらしているところもあるようです。
・3カ月継続して働いた人に5万円支給する。
・事前登録しておけば、定期給料日以外の希望日に給料を支払う。
・1カ月ごとに働く店舗の変更を可能にする。
・友人、知人を紹介すると一定の報奨金を支払う。



労働・雇用に関する企業の社会的責任(CSR)
◆企業に求められる「社会的責任」の内容
企業には、その利害関係者(ステークホルダー)に対して責任ある行動をとるとともに、説明責任を果たしていくことが求められており、その傾向は年々高まっているといえます。このような考え方は、「社会的責任」(CSR)と呼ばれますが、労働・雇用の観点からもCSRを検討する必要性が高まっています。その主な理由は次の通りです。
1.従業員の働き方に十分な考慮を払い、個性や能力を活かせるようにしていくことは、企業にとって本来的な責務であるといえる
2.従業員に責任ある行動を積極的にとっている企業が、市場において投資家、消費者や求職者等から高い評価を受けるようにしていくことは有益である

◆企業はどういった取り組みをすべきか?
企業が従業員に対して取り組む事項としては、次のことが挙げられます。
1.従業員がその能力を十分に発揮できるよう、人材の育成、従業員個人の生き方・働き方に応じた働く環境の整備、安心して働く環境の整備などを行う
2.事業の海外展開が進む中、海外進出先の現地従業員に対し、責任ある行動をとる
3.人権への様々な配慮を行う

◆労働・雇用のCSR推進のための環境整備
労働・雇用の分野において企業がCSRを進めるための具体的な国の施策としては、どこまで自社の取り組みが進んでいるか企業が自主点検できる材料を開発すること、表彰基準や好事例の情報の提供を行うことなどが想定されています。
CSRはあくまで企業の自発性に基づいて進められるものですが、それぞれの企業が、社会的公器としての認識を深め、多種多様な取り組みを積み重ねていくことで、「人」の観点からも持続可能な社会が形成されていくことが期待されます。



外国人研修・技能実習制度をめぐるトラブル
◆制度の概要は?
発展途上国への技術移転を本来の目的として、日本企業が外国人を一定期間受け入れる制度があります。日本における研修生の受け入れは、多くの日本企業が海外に進出するようになった1960年代後半から実施されており、1990年には従来の研修制度を改正し、より幅広い分野における研修生の受け入れが可能となりました。
具体的には、1年間の研修期間と、2年間の技能実習の2段階があり、最長で3年間働きながら学ぶことができます。
2006年に来日した外国人は9万人を超えており、そのうち、8割超は中国人だそうです。

◆多発するトラブルと国の対応
1年目の研修中は雇用契約がないため、労働諸法令が適用されず、企業が最低賃金を下回る金額で働かせるなどといったトラブルが多発しているようです。
政府は、今後、実習指導員の配置や帰国前の技能評価を義務付けるほか、1年目の研修生についても労働法令の適用対象としていく見込みです。また、研修期間を廃止し、雇用契約を当初からの3年とすることも検討しており、不正行為をした企業への罰則も強化し、外国人の新規受け入れ停止期間を3年から5年に延ばすとしています。



運行管理者に対する規制が強化されます
◆悪質行為の取締まり基準強化 
国土交通省は、飲酒運転などの問題が相次いでいることから、タクシーやバス会社などの運行管理者が、運転手の悪質な行為を容認した場合などについて、管理者資格を直ちに取り消すことができるよう、資格返納命令の発令基準を今年の7月から改正するそうです。
これまでは、違反行為を繰り返し、運転手への監督や指導が不十分と判断された場合などに限って資格返納命令を出していたものを、より強化していきます。

◆返納命令が出せるケース
以下のような場合、直ちに資格の返納命令が出せるようになります。
1.管理者が運転手に飲酒運転、無免許、薬物使用などの悪質行為をさせたり、容認したりした場合
2.管理者自身が事業用車両で飲酒運転などを行った場合
3.管理者が運転手への点呼をまったくしていなかった場合
4.安全確保に関する違反行為を隠ぺいしていた場合

◆貸し切りバスに対する安全対策
また、今年2月に大阪府吹田市でスキー客ら27人が死傷したバス事故を受け、貸し切りバスへの安全対策も実施します。
目的地での運転手の睡眠施設の確保を義務化し、運輸局の監査などで確認できるように、バス事業者が作成する運行指示書に施設名を記入させる方針で、今年の夏ごろに省令を改正する方針です。
また、警察庁は、今通常国会に飲酒運転の罰則引上げなどを盛り込んだ道路交通法改正案を提出しています。



裁判外紛争解決手続(ADR)の時代が到来!?
◆「ADR」とはどんなものか?
裁判外紛争解決手続(ADR)は、裁判によらない紛争解決手段(仲裁、調停、あっせん等)を広く指すものであり、厳格な手続きによってすすめられる裁判と比較すると、「柔軟な対応」、「迅速な解決」に特徴があるといえます。
ADRは「訴訟手続によらず民事上の紛争を解決しようとする紛争当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決手続を図る手続」などと定義され、「司法型ADR」、「行政型ADR」、「民間型ADR」に分類されます。
労働分野の代表的な「行政型ADR」には、都道府県労働局で行われる「あっせん」の制度があります。
<ADR機関の例>
・司法型……民事調停、家事調停
・行政型……公害等調整委員会、中央労働委員会、国税不服審判所
・民間型……財団法人交通事故紛争処理センター、弁護士会仲裁・あっせんセンター

◆4月1日から「ADR法」が施行
4月1日から、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(いわゆる「ADR法」)が施行されました。この法律の目的は、「紛争の当事者がその解決を図るのにふさわしい手続を選択することを容易にし、もって国民の権利利益の適切な実現に資すること」(同法1条)とされています。
ADR法の施行で定められた「認証制度」(一定の要件に適合した民間事業者を法務大臣が認証する制度)により、これまで十分に機能しているものばかりとはいえなかった「民間型ADR」の充実・活用が期待されています。

2007/05/07

平成19年5月号

月80時間を超える残業に「50%以上」の割増率

◆労働基準法の改正案
厚生労働省は、長時間労働の削減を図るため、残業代割増率の引き上げについて、労働基準法改正案に「月80時間を超える残業に50%以上の割増率」という具体的な数値を盛り込みました。
改正案には残業代割増率引上げのほか、現在は原則として1日単位でしか取得することができない有給休暇を、年間5日分は1時間単位で取得できる新制度なども盛り込まれています。改正案が成立すれば、生活環境に合わせ、「両親の介護のために5時間のみの有給休暇を取得する」ことなども可能になります。

◆明文化で拘束力
改正案では、残業代割増率の枠組みとして、以下のように3段階方式となっています。
1.1カ月の残業時間が45時間以下だった社員に対しては最低25%
2.45時間超80時間以下の場合はそれより高い率を設定する(努力義務)
3.80時間を超える場合は労使協議に関係なく50%以上
80時間以上の残業は、過労死などの危険性が高まるとされていますが、現行制度では残業時間に関係なく最低25%以上の割増賃金を企業に求めています。
厚生労働省は当初、3段階方式という枠組みだけ改正法に明記し、具体的な割増率は労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)で議論して政省令で定める予定でしたが、法に明記することで拘束力を強め、制度が簡単に変わることを避けたいと考えているようです。

◆当面は中小企業は適用除外
厚生労働省の調べによると、1カ月の残業時間が80時間を超えるのは、働く人全体のうち0.2%程度だそうです。割増率の引上げにより企業のコスト意識を高め、残業を減らす効果を期待しています。しかし、企業側からは、「社員が残業代を増やすために、社員自ら残業を増やすケースが出てくる」との声もあがっており、かえって残業が増えるのではないかとの指摘もあります。
改正案は、雇用ルール改革の柱の1つです。一定の条件を満たす会社員を1日8時間の労働時間規制から除外する制度(日本版ホワイトカラー・エグゼンプション)は労働組合などの反発が強く見送られました。
残業代割増率引上げは、原則として当面は社員数301人以上、資本金3億円超の大企業が対象です。施行から3年後には中小企業も対象とするかどうかを改めて検討するそうです。



社会保険のパートへの適用拡大 大半は対象外?

◆現在の適用基準
現在、パート労働者への健康保険・厚生年金保険の適用基準は次の通りです。
1.正社員の1日または1週間の所定労働時間の概ね4分の3以上(週30時間以上相当)
2.正社員の1カ月の所定労働日数の概ね4分の3以上

◆新しい適用基準の対象範囲
当初、厚生労働省は、新適用基準に関する案を、
1.労働時間が週20時間以上
2.月収が9万8,000円以上
3.勤務期間が1年以上で
4.当面は従業員300人以下の中小企業は適用が猶予される
としていましたが、反対派の意見が大きかったこともあり、「学生は対象外」という新基準を加えました。
さらに、月収条件(9万8,000円以上)に賞与や通勤手当、残業手当を含めないこととする基準も法案に明記する方針を明らかにしています。

◆新基準適用は5万人程度?
政府は、適用拡大について2011年9月の実施を目指していますが、現在、適用外のパート労働者は約900万人いると言われており、そのうち、新適用基準に該当するのは看護師、管理栄養士など、約5万人程度の比較的高賃金パートに限られるとみられ、「大半のパート労働者には無関係で、意味がない」との批判も出てきています。



4月から改正された公的年金制度のポイント

◆年金分割制度がスタート
離婚日の翌日から原則2年以内に請求を行えば、婚姻期間中の厚生年金や共済年金を夫婦間の合意により最大で2分の1に分割できるようになりました。話し合いで合意できなければ、裁判で分割の割合を決めることになります。

◆厚生年金の70歳までの繰下げ
本来65歳からだった老齢厚生年金の受給開始を、66歳~70歳に繰り下げできるようになりました。繰下げ1カ月ごとに老齢厚生年金が0.7%増額(年換算で8.4%増)されます。
ただし、70歳まで繰り下げた場合、本来の65歳から受給し始めた場合と受給総額が同じになるのは、82歳頃となります。この年齢を超えて生きれば、繰り下げたほうが受給総額は多くなります。

◆在職老齢年金の適用拡大
60歳過ぎの会社員が老齢厚生年金を受け取る際、賃金に応じて年金受給が減る在職老齢年金の対象が拡大されました。4月1日以降に70歳になる人は、月収と年金月額との合計が48万円を超えた場合、超過額の半額が減額されます。ただし、基礎年金部分に関しては減額されません。

◆遺族厚生年金の縮小
夫を亡くした妻が受け取ることができる遺族厚生年金の給付対象が縮小されました。これまで、残された妻は、無期限に夫の老齢厚生年金の4分の3相当を受け取れましたが、「子供がいない30歳未満の妻」は、受給期間が5年間で打ち切られます。
また、夫の死亡時に子供がいない妻などが、「35歳以上」だった場合に受け取ることができる「中高齢寡婦加算」に関しては、受給要件が厳しくなり、対象年齢が「夫の死亡時に40歳以上」に引き上げられました。

◆国民年金保険料の引上げ
現行の1万3,860円から、1万4,100円に引き上げられました。



「山ごもり研修」への参加は拒否できる?

◆どんな研修も参加しなければダメ?
入社間もない営業担当の社員に向けて、社長が「集中力を高めるために1週間の山ごもり研修を実施する」と号令をかけました。研修内容は業務と関連が薄いようなのですが、従わなければならないのでしょうか?

◆「業務との関連性」で判断 
会社と社員との間で労働契約が結ばれると、会社は就業規則などに基づいて、社員に業務命令を出すことも可能となります。問題は、会社が命じることのできる範囲がどの程度まで許されるか、ということにあります。
会社の業務命令が適法と判断されるためには、「命令と業務との間に合理的な関連性があり、正当な目的や理由があること」が必要です。よって、「山ごもり研修」が適法か否かはその内容次第となります。終日、座禅を組んだり山を歩いたりと、業務とは直接関係のないメニューばかりの場合、集中力を高める研修と銘打っていても業務命令としての適法性を欠くとみられることもあるでしょう。

◆研修内容により、参加拒否は懲戒処分も
「体力強化や集中力を高めることは仕事にプラスになるから」といって、業務とは直接関係のない運動や精神修養などのメニューを社員研修の中に組み入れる企業はあるでしょう。心身に過度の苦痛を与えるのは論外となりますが、研修内容について企業側の一定の裁量権は認められます。業務とは直接関係のないメニューも、1日の研修のうち1~2時間程度であれば、違法性が問題になることはないだろうと考えられます。
研修への不参加が懲戒処分の対象となるか否かについては、研修内容が適法なものであれば、「業務命令に従わなかった」として可能な場合もあり得るとされています。命令に従わないことが度重なれば、解雇に至るケースもあるでしょう。
ポイントは以下の2点です。
1.研修には、業務との間に合理的な関連性や正当な目的・理由が必要
2.研修内容が適法であれば、参加を拒否した社員の懲戒処分も可能

◆入社前の内定者研修は?
入社前の内定者が事前研修を課された場合、断ることは可能なのでしょうか。
会社と内定者はまだ労働契約を結んでおらず、会社が業務命令を出す権利はないとされ、研修に参加させるには同意が必要とされます。また、学業に支障が出る場合などは、内定者は事前研修を断ることができ、その場合に、会社が内定取り消しなどの不利益な取扱いをするのは違法とされています。



社内での飲み会も業務の一環?

◆東京地裁が「社内での飲み会も業務」として労災認定
勤務先の会社内において開催された飲み会に出席した後、帰宅途中に地下鉄の駅の階段で転落して死亡した建設会社社員の男性について、妻が「通勤災害で労災にあたる」として、遺族補償などを不支給とした中央労働基準監督署の処分の取り消しを求めていた訴訟の判決で、東京地裁は労災と認定しました。
男性は、1999年12月に勤務先で開かれた会議の後、午後5時頃から開かれた会合で缶ビール3本、紙コップ半分程度のウイスキーを3杯飲んでおり、同労働基準監督署は、「会合は業務ではない。飲酒量も相当あった」と主張していましたが、東京地裁は、「酒類を伴う会合でも、男性にとっては懇親会と異なり、部下から意見や要望を聞く場で出席は職務。飲酒は多量ではなく、酔いが事故原因とも言えない。降雨の影響で足元も滑りやすかった」として、労災と判断したのです。

◆通勤災害の定義の変化
労災保険法7条2項は、「通勤とは、労働者が、就業に関し、移動(住居と就業の場所との間の往復)を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする」と定めています。
また、同条3項は「労働者が、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の移動は、通勤としないと定めています。
そのため、食事等で長時間にわたって腰を落ち着けたような場合は、逸脱・中断とみなされ、その間およびその後の行為は通勤とは認められていませんでした(昭48.11.22基発第644号)。今回の判決が今後の実務にどのように影響してくるのか、大変興味深いところです。

2007/03/27

平成19年4月号

営業車の駐車違反に関する会社の責任


◆駐車料金の支給がない場合、反則金の支払いは?
社員が営業車でのセールス中に駐車違反で反則金をとられてしまいました。会社は経費節減と称して駐車料金を支給しないため、やむなく路上駐車していました。「反則金は自分で払え」と会社は主張していますが、会社が負担しなくてもよいのでしょうか?

◆改正道路交通法による駐車違反取り締まり強化の柱
1.放置車両の取り締まり事務の民間委託を開始
2.車両の使用者責任を強化。放置違反金の納付命令を可能に
3.放置違反金を納付しなければ、滞納処分も可能に
4.放置違反金を納付しなければ車検が受けられず
道路交通法改正により、昨年6月から駐車違反取り締まりの民間委託が始まり、同時に短時間の車両放置も摘発対象となりました。これにより、短時間駐車している営業車の違反が取り締まられるケースも増加しています。

◆会社負担の放置違反金
違反を摘発しても、運転者が出頭せず、車両である会社も「誰が運転していたかわからない」などと釈明する例が増えているようですます。これでは「逃げ得」という不公平感を助長してしまいます。そこで、運転者が出頭しない場合、使用者に放置違反金の支払いを科すことになったのです。会社に科される放置違反金は反則金と同額です。会社が支払いを拒めば当該車両の車検が受けられなくなり、営業活動への影響も出てきます。
会社は、民法715条により、社員が不法行為をしないよう指導する義務と、不法行為があった場合に代わりに責任を負うこととされています。違反駐車の場合、本来は運転者に支払い義務がありますが、会社が駐車料金を支給しないような場合には、運転者の不法駐車を助長していたともいえそうです。
 
◆今回のケースでは
今回の例では、会社が反則金を負担し、その上で社員が違法駐車をしないよう駐車場を確保してあげることや、駐車料金を支給する仕組みを作ることも求められそうです。
ただ、会社は法令順守の徹底を訴えているのに、社員が駐車違反を繰り返しているような場合は事情が異なります。本人が違反金を支払わない場合や、注意をしても改善しない場合は、懲戒処分や減給処分を受けても、社員は対抗できない可能性があります。
(ポイント)
1.駐車違反で運転者が出頭しなければ、会社に支払い責任の可能性がある
2.会社には、社員が違反をしないルールづくりが求められる



口頭による採用内定に効力はあるか?


◆口頭で「採用する」と言った場合
A社で働く社員が転職先を探してB社の面接を受けたところ、その場で採用担当者から口頭で「採用する。2カ月後には来てほしい」と言われ、A社にすぐ退職届を出しました。しかし、その後B社が「採用するつもりはない」と態度を変えました。社員が内定取り消しとして損害賠償を求めることは可能でしょうか。

◆内定は両者の合意により成立
法律上、内定は、「始期付解約権留保付労働契約」として一定の拘束力を持ちます。一般の解雇よりも基準は緩いですが、合理的な理由なしに契約を取り消すことはできません。
では、どのような状態なら「内定成立」といえるのかですが、一般的に、雇用する側と雇用される側の意思が合致し、両者の合意があったとみなされた時点で内定は成立するとされています。重要なのは、この「合意の有無」であり、口頭での約束か文書かは判断基準ではないとの考えが一般的です。
ただ、口頭での採用の意思表明は、裁判時の証明が難しいという難点があります。その場合は、身体検査の実施や就業規則の交付などが状況証拠になるといえます。

◆新卒採用と中途採用で違いは?
また、新卒採用と中途採用では合意の判断に若干違いがあります。新卒の場合、試験や面接を経て夏頃までにいったん採用が決まっても、多くの場合、内定通知書の受け渡しや誓約書への署名などの手続きは10月ごろに行われます。
新卒者は何社もかけもちで就職活動を行い、いくつか内定をもらった中から進路を選ぶことが前提のため、誓約書への署名などの前段階で示される企業側の採用の意思表示は「内々定」として一連の手続き後の内定よりは法的な拘束力が緩いといえます。
一方、中途採用の場合は、通常、何社もかけもちで内定を取ることは考えにくいので、企業から採用の意向を示された時点で両者の合意が形成されたとみなされ、内定が成立するといえます。企業の人事権者が、「採用します」、「○月○日から来てください」などと伝えた場合は口頭でも合意が成立したといえるでしょう。
ただ、紹介者などその企業の人事権者以外から伝えられた採用の意向は、内定とは認められません。また、賃金などの条件が話題に上がっていた場合に、それが折り合わないままでは合意があったとは言い切れないでしょう。



出張先で飲酒中のケガは労災の対象になる?


◆出張先の反省会で酒を飲み転倒!
泊まりがけで出張した社員が、夜、上司と反省会と称して飲酒していたところ、酔って転んでケガをしてしまいした。お酒を飲んでいたとはいえ、出張中の行為であるため、労災と認められるのでしょうか。

◆労災認定のポイント
労働者が負傷や死亡した場合、労災になるか否かはまず労働基準監督署長などが認定します。認定されず、異議があれば処分取り消しを求める行政訴訟とすることも可能です。
 労災保険法などの解釈によると、労災認定の可否は、「業務遂行性」(労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態かどうか)、「業務起因性」(業務と傷病との間に相当因果関係が存在するかどうか)の観点から判断されます。

◆出張中は通常よりも業務性の範囲が広い
飲酒時の労災が認められるかは、どの程度「業務遂行性」があるかで異なります。通常の就業日であれば、飲酒が業務性を帯びるのは、会社が費用を負担した接待や、出席が義務付けられた会合などに限られます。それ以外は上司との飲酒でも業務性が認められる可能性はほとんどないといえます。
しかし、出張中は仕事後の飲酒でも通常業務より業務性が認められるケースが広がります。出張では全般的に事業主の支配化にあると考えられ、食事など現地で必要な行為も同様です。宿舎内での飲酒や、飲食施設がない宿舎から近所へ出かけて飲酒した場合も業務中と認められる可能性は高く、上司が同行しているかどうかは問われません。

◆裁判例では
1993年の福岡高裁判決では、出張中に宿泊施設内で同僚と飲酒し酔って階段で足を踏み外し、頭部を強打して死亡した会社員の事例を労災と認定しました。「宿泊施設での飲酒は慰労と懇親の趣旨であり、出張に伴う行為」と判断されました。
一方で、出張時でも事故原因が業務と無関係なら労災と認められないケースもあります。
1999年の東京地裁判決は、出張先での送別会で泥酔し一度宿舎に戻った後、近くの川で、全裸で水死しているのを発見された会社員の事例で、「事故は自らの意思で外出した結果で、業務起因性がなく労災とはいえない」と判断しました。
出張中は、通常より広く業務性が認められ、宿舎で普通に飲んでのケガであれば原則として労災と認められる可能性も高いですが、仕事から逸脱した状態では労災と認められない可能性が高いといえます。



パート労働者に健康保険も適用か?


◆厚生年金と健康保険の両保険適用を検討
現在、パート労働者に対して厚生年金の適用を進める際に、健康保険制度への加入も同時に進めることが検討されています。
年金の場合は、保険料が増えれば加入者が将来受け取る年金が増額されるため、パート労働者からは比較的理解が得やすいといえますが、健康保険の場合、保険料が増えても医療サービスの内容や自己負担額には変わりはなく、負担が増えるだけなので、具体化に向けた議論はかなり難航する可能性がありそうです。

◆負担保険料は年額約55,000円
新たな保険料の負担を強いられるのは、サラリーマンの妻が多く、パート勤務で年間120万円稼いでいる場合、健康保険料の負担は年間55,000円程度になるとする試算結果を厚生労働省は出しています。厚生年金保険料と合わせると、給与から控除される金額が増額され、パート労働者にとっては収入減につながります。
また、厚生年金保険の適用条件を、現行の労働時間の週30時間以上から週20時間以上に広げる検討もなされており、労働時間そのものを減らすパート労働者が出てくる場合も考えられそうです。

◆保険料負担が減る世帯は
夫婦が2人ともパートやアルバイト等の非正社員で、国民健康保険に加入している場合は、健康保険加入により、保険料が減額になる場合があります。国民健康保険にはない制度を受けることができるようになる上に、1年間の保険料も、世帯で約33,000円減額になるとする試算が出ています。

◆健康保険加入で受けられるサービス
被扶養者としてサラリーマンの健康保険に加入している場合に比べると、いくつかの給付等のサービスが増えます。私傷病等で仕事を休業する場合には「傷病手当金」を申請することにより収入の約60%の休業補償を受けることができ、また、女性の場合は「出産育児一時金」に加えて「出産手当金」が、産前・産後休業の期間受け取れます。育児休業をしている期間には、保険料の免除もあり、いくつかメリットもあります。

2007/02/27

平成19年3月号

派遣社員の事前面接が可能になる?

◆「事前面接」解禁を検討
厚生労働省は、派遣社員の雇用ルールである労働者派遣法を改正し、派遣会社から人材を受け入れる際に企業が候補者を選別する「事前面接」を解禁する方向で検討に入ったようです。
もし実現すれば、企業にとっては候補者の能力や人柄を見極めたうえで派遣社員の受け入れを決められるようになり、雇用の自由度が高まります。派遣会社が選んだ候補者の受け入れを企業が拒否でき、新たな人材を求めることができるようになるのです。

◆現行制度では「事前面接」禁止
現行の労働者派遣法では、派遣社員の定義は「企業から仕事や技能の希望を聞いた派遣会社が人を選び、企業に派遣する雇用形態」とされており、一時的に発生した仕事を片付けてもらう臨時雇用という発想が前提となっています。
しかし、企業が経費削減のために安易に正社員を派遣社員に代えることのないよう、事前面接など派遣労働者を選ぶ行為を禁じています。

◆背景には雇用形態の多様化
ここ数年で雇用形態が多様になり、派遣社員の待遇も改善し正社員との区別がつきにくくなってきたことが、事前面接解禁検討の背景にあります。企業側が「職場の調和を重視するうえでも、どんな人が派遣されるのかわからないのはおかしい」と主張していることも大きな理由の1つです。

◆派遣社員にもメリット
現在でも「顔合わせ会」、「職場見学会」などと称して派遣候補者に事前接触するケースもあるようですが、非公式なため、派遣会社が示した候補者を断りにくいのが実状のようです。
事前面接が認められるようになれば、派遣候補者も職場環境や雇用条件などを具体的にチェックできるといったメリットがあります。しかし、企業が人材を選別する結果、「年齢が高い」、「性格が合わない」などといった勝手な理由で仕事に就けなくなる派遣希望者が出てくる可能性があり、「企業が派遣社員の採用を増やし、正社員採用を減らす」と懸念する声もあります。



1年変形制における年休取得日 通常賃金の計算方法?
◆年休取得日の賃金は?
1年単位の変形労働時間制を導入し、1日の所定労働時間が異なる場合は、年休取得日の賃金として、その日に予定された時間分を支払わなければならないのでしょうか。

◆年次有給休暇に対する賃金の支払方法
年次有給休暇に対する賃金の支払方法としては、次の3種類があります。
1.平均賃金
2.通常の賃金
3.健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額
このうち、どの支払方法によるかは当事者の自由とされています。しかし、あるときは上記1.の方法をとり、別のときは2.の方法をとるなど、社員が年次有給休暇を取得する都度、使用者が恣意的に選択することは認められません。
1.または2.の支払方法をとる場合は、採用した支払方法を就業規則その他これに準ずるものにあらかじめ定める必要があります。また、3.の支払方法をとる場合には、三六協定の場合と同様に過半数労働組合(ない場合には労働者の過半数代表者)と書面協定を結んで、就業規則に定めておく必要があります。

◆「通常の賃金」による支払いの場合
パートタイム労働者などの時間給制による労働者の通常の賃金の計算方法については、「時間によって定められた賃金は、その金額にその日の所定労働時間を乗じた金額」であることが定められています。
また、1年単位の変形労働時間制の場合で、時間給制による労働者の年次有給休暇の賃金を通常の賃金の方法によって支払う場合については、「各日の所定労働時間に応じて算定される」とされています。
したがって、パートタイム労働者が、年次有給休暇を取得した日に4時間の所定労働時間が設定されていれば4時間分の賃金を、6時間の所定労働時間が設定されていれば6時間分の賃金を支払わなければなりません。
一方、正社員のような完全月給制の労働者に対して1年単位の変形労働時間制が実施されているケースでは、年次有給休暇取得日に通常の賃金を支給する場合は、年次有給休暇取得日の所定労働時間が長い場合も短い場合も月給額をそのまま支払うことになります。



「毎月勤労統計調査」2006年分の結果は?
◆賃金について
2006年の1人当たりの平均月間現金給与総額は、規模5人以上の事業場で前年比0.2%増の33万5,522円となりました。
現金給与総額のうち、所定内給与は0.3%減の25万2,810円、所定外給与は2.5%増の1万9,790円、特別に支払われた給与は1.1%増の6万2,922円となっています。物価変動の影響を除いた実質賃金指数は0.6%減と2年ぶりに減少しており、企業業績の好転が賃金上昇に結び付いていない実態を裏付けた格好になりました。
企業規模別にみると、従業員数30人以上の企業が0.8%増となった一方、5~29人では1.1%減となり、小規模企業ほど賃金が抑えられています。

◆労働時間について
2006年の1人当たりの平均月間総実労働時間は、規模5人以上で前年比0.5%増の151.0時間でした。
総実労働時間のうち、所定内労働時間は0.3%増の140.3時間、所定外労働時間は2.6%増の10.7時間となっています。
総実労働時間を就業形態別にみると、一般労働者は0.7%増の170.1時間となり、パートタイム労働者は0.3%減の94.8時間となりました。

◆雇用について
2006年の常用雇用の動きをみると、全体では事業所規模5人以上の事業場で前年比1.0%増え、3年連続の増加となりました。一般労働者は0.9%増、パートタイム労働者は1.4%増です。
パートタイム労働者は残業時間が1.8%増に留まる半面、所定外給与は6.6%伸びています。労働需給のひっぱくにより、時給が上昇傾向にあるためとみられています。
主な産業別にみると、製造業1.0%増、卸売・小売業0.4%増、サービス業1.6%増となっています。

2007/01/30

平成19年2月号

定期健康診断の受診は個人の自由!?
◆定期健康診断は受けないとダメ?
会社員が忙しさにかまけて、勤務先の会社で年1回実施している定期健康診断を受けなかったところ、「受診を拒否すると減給などの処分もあり得る」と会社側から言われました。定期健康診断を受けるかどうかは個人の自由ではないのでしょうか。

◆事業者には「実施義務」、労働者には「受診義務」
労働安全衛生法66条は、企業の健康診断について事業者には実施を、労働者には受診を義務付けています。
(労働安全衛生法で定められている定期健康診断の主な項目)
1.既往歴および業務歴の調査
2.身長、体重、視力、聴力の検査
3.胸部エックス線検査および肝機能検査
4.尿検査
5.貧血検査、血中脂質検査、血糖検査
※本人の承諾なしに法定検査項目以外の検査をすると、プライバシー侵害が問われることもあります。

◆拒否なら懲戒処分も可曝J働安全衛生法は労働者に対する罰則規定は設けていませんが、事業者や産業医が再三受診を促しても強硬に拒否した場合、事業者はその労働者を懲戒処分にすることも可能です。具体的には、出勤停止未満の処分が一般的で、けん責や戒告、重ければ減給になる可能性もあります。
懲戒処分にするかどうかの裁量は事業者側にありますが、衛生や健康問題に特別配慮すべき職場以外では、健康な労働者が定期健康診断を受診しなかったという理由だけで、雇い主が処分した事例はほとんどありません。しかし、業務に支障をきたすような症状が出ているのに、会社からの受診命令を拒んだ場合は、健康回復努力義務違反とみなされる場合もあります。
労働安全衛生法66条5項は、事業者が指定した医師の健康診断を受けることを望まない場合は、他の医師の診断を受け、結果を証明する書面を会社に提出してもよいとしています。しかし、労働者が選択した医療機関の受診結果について事業者が疑問を持つ合理的理由がある場合は例外とされています。定期健康診断のポイントは、1.事業者には健康診断の実施義務、労働者には受診義務があること、2.受診拒否は健康回復努力義務違反になる場合もあることだといえます。


日本・ベルギー間の社会保障協定締結
◆日本とベルギーの年金加入期間の通算が可能に
2007年1月1日から、「社会保障に関する日本国とベルギー王国との間の協定」が発効され、日本とベルギーの年金加入期間が通算できるようになりました。
主な内容は以下の通りです。
1.日本の年金加入期間が25年未満の人については、ベルギーの年金加入期間を通算して25年以上の場合、日本の老齢年金を受けることができる。
2.ベルギー国外に住んでいる人でも、日本に住んでいる場合または日本国民の場合、ベルギー年金を受け取ることができる(ベルギー障害給付は除く)。
3.協定発効前にすでにベルギーの年金を受給していた人でも、申請により日本の年金加入期間を通算することで、ベルギーの年金額が高くなる場合がある。
4.ベルギー年金の申請が日本の社会保険事務所または共済組合の窓口で行
うことができるようになった。

◆ベルギー年金の受給について
ベルギー年金は、原則として男性は65歳、女性は64歳から受給することができます。ただし、ベルギーと日本の年金加入期間が35年以上ある人は60歳からの受給が可能です。
ベルギー年金は、通常申請月の翌月から年金が支給されるため、申請が遅れた場合でも支給開始日が遡及することはありません。ただし、協定発効日にベルギー年金の受給権を満たす人は、2008年12月までに申請された場合に限り、2007年1月分から年金が支給されます。

◆社会保障制度二重加入の解消
日本の事業所に勤務する人などが、ベルギーにある支店や駐在員事務所などに派遣される場合、これまでは両国の社会保障制度に二重に加入しなければならないことがありましたが、協定により、いずれか一方の社会保障制度のみに加入することになりました。
派遣される期間によって免除される社会保障制度が異なります。
<派遣期間が5年を超える場合>
日本からベルギーへ派遣される人:日本の年金・医療保険免除
ベルギーから日本へ派遣される人:ベルギーの年金・医療保険・労災保険・雇用保険免除
<派遣期間が5年未満と見込まれる場合>
日本からベルギーへ派遣される人:ベルギーの年金・医療保険・労災保険・雇用保険免除
ベルギーから日本へ派遣される人:日本の年金・医療保険免除


厚生年金保険料の上限引上げを検討
◆安定した給付を目指す
社会保障審議会年金部会は、公的年金制度の改正に向けた議論を開始しました。
少子・高齢化が年金財政に与える影響を検証し、年金給付の安定を図るため、保険料体系や加入対象者などについて幅広く見直しがなされることとなります。

◆検討される課題
課題の1つとして、厚生年金保険料の上限引上げが挙げられています。
現在、厚生年金保険料は月収に応じて最高30等級(標準報酬額62万円)となっています。これ以上月収があったとしても、それ以上の保険料は徴収されません。この等級の上限を引き上げることによって、高所得者からの保険料徴収を増やし年金財源の増収を見込んでいます。
また、現在、働いていて一定以上の収入のある高齢者を対象として、年金給付を減らす制度がありますが、その対象者を増やしたり、働いている間は給付を止めたりすることによって給付を抑制する案も検討課題として挙げられています。
その他、国民年金加入年齢の見直しも検討課題となっています。現在は20歳から59歳までとなっている加入年齢を25歳から64歳に引き上げる案なども検討されています。

◆財政の確保
これらの制度変更により財政の安定化を図る理由は、2004年度の年金改革で5年ごとに保険料と給付額を改正する仕組みがなくなったことにあります。少子高齢化の進展具合に合わせて自動的に給付を抑制する代わりに、保険料の引上げスケジュールは原則として変更しないことになっています。
しかし、2004年度の年金改革で給付等の試算をした数字のベースは、50年後の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生むとされる子供の数)を「1.39」としていましたが、最近の新しい推計人口では、「1.26」にまで落ち込んでいますので、出生率や賃金上昇など最近の傾向を反映した年金財政の試算を発表し、年金財政の健全化を進め、国民の不安を和らげる方向をとっていくようです。


診療報酬の「定額制」を導入へ
◆75歳以上の外来患者も対象に
厚生労働省は、75歳以上のお年寄りの外来診療について、医師の治療を1カ月に何回受けても医療機関に支払われる診療報酬を一定にする「定額制」を導引する方針を固めました。寝たきりの在宅患者への往診など高齢者向け医療の一部ではすでに定額制が導入されていますが、これを外来医療へと拡大して医療費の抑制を図る考えです。
2004年度の75歳以上の医療費は9兆214億円で、医療費全体の28%を占めますが、高齢者に対し必要度の高くない医療が過剰に行われているとの指摘もあります。
こういった現状を改善する狙いの「定額制」ですが、患者の受診機会の制限につながる可能性や、医療機関がコストを下げようと必要な医療まで行わなくなる危険性もあり、今後、適用する疾病の範囲や条件を慎重に検討する方針です。

◆「定額制」を診療報酬体系の基本方針の柱に
2006年の医療改革で、75歳以上を対象にした保険制度を2008年度に創設することが決まっており、外来診療の定額制導入はその柱となります。厚生労働省は2007年3月までに診療報酬体系の基本方針を出す予定で、社会保障審議会の特別部会で1月から本格的に検討を始める予定です。
患者は高血圧や心臓病、関節障害など特定の慢性疾患の医療機関をあらかじめ選びます。そこで一定回数以上受診すると、それ以上は何度受診して投薬や検査を受けても医療機関が健保組合から受け取る報酬は定額とされる方法などが検討される見込みです。

◆現在の診療報酬の問題点
現在の診療報酬は個別の診察や検査、投薬について細かく料金が設定され、それを積み上げて治療費が決まる「出来高払い」が基本です。患者に多くの治療を行うほど医療機関の収入が上がる仕組みで、高齢者の外来医療では「過剰な診療で医療費の増加や病院・診療所のサロン化を招いている」との指摘もあります。


雇用対策法・パートタイム労働法の改正法案
◆通常国会に提出予定の改正法案
厚生労働省は、次期通常国会に雇用対策法、パートタイム労働法の各改正法案を提出する予定です。それぞれの内容は以下の通りです。

◆雇用対策法
目的に「働く希望を持つすべての人の就業促進」が追加され、同法4条1項において、若者、女性、高齢者、障害者等の就業促進や地域雇用対策について、様々な施策の充実を図ることを国の重要な施策として位置付ける方針です。
また、外国人労働者については、事業主の努力義務に外国人労働者の雇用管理の改善および再就職の促進を加えるとともに、公共職業安定所への外国人雇用状況報告制度の義務化を規定します。

◆パートタイム労働法
今回の改正では、従来の労働条件の明示、均衡処遇の確保、通常の労働者への転換等の対策をさらに進めるものです。具体的な方向として、労働条件の明示については、労働基準法において義務付けられている事項に加え、昇給、賞与、退職金の有無を明示した文書の交付を義務付けます。また、助言・指導・勧告をしても履行しない事業主には、過料を新設する考えです。
通常労働者との均衡ある待遇の確保については、通常の労働者と職務、職業生活を通じた人材活用の仕組み、運用等および就業の実態が同じであるパートタイム労働者に対しては、パートタイム労働者であることを理由として差別的取り扱いをすることを禁止します。
また、賃金は、職務、意欲、能力、経験、成果等を勘案して決めることを努力義務化し、賃金決定方法についても、通常労働者と共通にすることを努力義務とします。その他、教育訓練の実施と福利厚生の利用機会も与えなければいけないこととし、通常労働者への転換の推進に向けた措置も講じなければならないこととします。

2006/07/27

平成18年7月号

社員旅行には参加しなくてもよいか

◆社員旅行への「参加義務」
会社の社員旅行は、半ば強制参加である場合が多いかもしれませんが、予定が合わない場合やどうしても参加したくない場合もあると思います。社員には、社員旅行に参加する「義務」があるのでしょうか。
◆業務命令か否か
社員旅行に参加する義務があるかどうかは、その旅行が雇用契約上の「業務命令」に該当するかどうかによります。その社員旅行の目的が、単に親睦を深めるためだけにある場合は業務命令には該当しないこととなり、参加しなくても問題はありません。
しかし、例えばその旅行中に、業務上必要な研修や会議などが含まれる場合は、会社が業務命令として参加を強制することができるため、参加しなければならないこととなります。
◆業務命令に該当する場合とは
業務命令に該当する社員旅行の場合、参加している時間は勤務時間となり、費用もすべて会社負担となります。また、社員旅行が休日に設定された場合は、「時間外勤務」もしくは「休日勤務」となり、割増賃金が支払われることとなります。
この観点からすると、業務命令であっても通常の勤務時間に当たるため、有給休暇を取得することも可能です。ただし、有給休暇の取得が事業の妨げになる場合には、会社は時季変更権を行使して休暇の取得を拒否することもできます。
◆旅費の取扱いは
会社によって違いはありますが、労働基準法の規定では、労働組合との協定がある場合などは、月給などの賃金から天引きすることも可能です。この場合の積立金は、会社に返還義務があります。
一方、社員が自主的に親睦会費として積み立て、社内規約で返還しないことを定めている場合は返金されないこともあります。

勤務時間中の株取引は処分の対象となるか

◆就業中の株取引
最近、株取引を始める人が増えてきているようですが、一般的な株取引の時間は会社の就業時間と重なります。会社員が就業中に持ち株の値動きが気になってしまい、職場のパソコンや携帯電話を利用して株価をチェックした場合、処分の対象とすることはできるでしょうか。
◆就業規則で禁止する
就業中の株取引は、労働契約に基づく「職務専念義務」に違反する可能性が高いといえます。企業は、就業規則に定めれば、社員が勤務時間中に株取引を行うことを禁止することができます。他にも、私用メールなど、私的行為と判断できる行為については就業規則に定めて禁止するのが一般的となっています。
会社によって私的行為の許容範囲は異なりますが、繰り返し違反する場合には労働義務を果たしていないとして、解雇の要件に触れる場合もあります。株価のチェックや売買は、この私的行為に該当するといえます。
◆休憩時間の株取引は許されるか
では、休憩時間の株取引は認められるのでしょうか。
休憩時間は、自由利用の原則から、株価のチェックや売買も認められるように思えますが、職場のパソコンなどを仕事以外に用いることは会社の許可がないとできないという見方もあります。
最近では社員1人に1台のパソコンを貸し与える会社も多くなり、個々の従業員がパソコンを私的に利用しやすい状況にありますが、会社から貸し出されたパソコンを私的に使用する場合は会社の許可を必要とするとするのが望ましいでしょう。
◆会社側のチェック
会社が従業員のパソコンの通信履歴を見る際には、人格権などに配慮する必要があり、「目的に応じて社会的に相当な理由がいる」とされています。パソコンの私的利用などを未然に防止するためには、ネットへの接続状況をチェックできるように社内規程で定めておくなどしておくことが望ましいでしょう。

【トピック】
●国民年金保険料未納者への差押え件数が急増
国民年金保険料の未納者に対する財産差押えの執行件数は、2005年度は1,051件(昨年度22件)だったことが、東京社会保険事務局のまとめでわかった。未納者からの徴収強化の方針をとったことによるもので、昨年度から急増した。強制徴収を前提とした最終催告状を57,890件(昨年度3,029件)送付し、それでも未納だった人へは督促状を16,548件(昨年度1,560件)送付したが、今年2月末における納付率は60.3%にとどまっており、同事務局は「2006年度も徴収にさらに努力する」としている。

2006/06/13

平成18年6月号

新入社員⇔上司に求めることとは何か?

◆新入社員を迎えて
今年もまた、各社が新入社員を迎えました。仕事のマナーや働く際の心がけなど、上司が新入社員に気をつけてもらいたいこと、仕事面・精神面など、新入社員が先輩や上司に求めることはどんなことでしょうか。

◆上司が新入社員に求めること
・「ホウ・レン・ソウ」の徹底
一般的に、「ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)」と呼ばれる基本的なマナーが重要だと言われています。あるアンケートの結果によると、上司は、まだ仕事に慣れていない新入社員に対して、「わからないことや悩んだことがあれば相談してほしい」と思っており、また、「挨拶をきちんとしてほしい」、「嘘をつかないでほしい」などと考えているようです。
・自分なりの考えを持つことも大切
「ホウ・レン・ソウ」の徹底を求める一方で、「わからないことはすぐに質問するのではなく、自分なりに考えてから聞くようにしてほしい」、「一度聞いたことを何度も聞き直さないでほしい」、「時には上司の誘いを断るくらいの勇気も必要」などと、社会人としての自覚も求めているようです。

◆新入社員が上司に求めること
逆に、新入社員は上司に対して、「的確なアドバイスをしてほしい」、「指示ははっきりとしてほしい」、「説明するときには全体的な流れから説明してほしい」などと考えています。また、「間違っていてもなぜそう考えたのか理由を聞いてほしい」、「部下の教育を放棄しないでほしい」とも思っているようです。

◆コミュニケーションが重要
双方の意見の基本となっているのが、「コミュニケーション」の大切さです。上司はコミュニケーションを通じ、部下に仕事に対する責任感とその大切さを伝えること、また、部下がどのように考えているかを聞くことが重要だといえるでしょう。

支給日前に退職する者への賞与不支給は可能か

◆賞与の支給に関する問題点
賞与の支給について、1?6月を算定対象期間として7月末に支給するようなケースで、賞与の支給算定対象期間のすべてに勤務していた社員が支給日より前に退職する場合に賞与を不支給としても、問題はないのでしょうか。

◆賞与不支給が可能な場合
次の?、?のいずれかに該当する場合には賞与を支給しないことが可能といえます。
?賞与支給日に在籍していることを賞与の支給条件としており、就業規則、労働協約、労働契約に定めている、あるいはそのような労使慣行がある場合
?退職日までに賞与の支給額や算定方法が決定していない場合

◆支給日在籍要件とは
上記は?は、「支給日在籍要件」と呼ばれるもので、賞与の受給権の取得につき当該支給日に在籍することを要件とする慣行は、その内容において不合理なものということはできず、従業員がその存在を認識してこれに従う意思を有していたかどうかにかかわらず、事実たる慣習として社員に対しても効力を有するものというべきものである、といった裁判例があります。
したがって、?のような場合には算定対象期間の全部または一部勤務した社員であっても、賞与の支給日より前に退職する者には賞与を支給しないことが認められると考えられます。ただし、例年より支給日が遅れたために、例年の支給日には在籍していたが実際の支給日前に退職した者には、「支給日在籍要件」は適用されません。

◆支給日在籍要件がない場合
では、「支給日在要件」がない場合はどうなるのでしょうか。この場合には、上記?に該当するか否かが問題となります。賞与の請求権について、査定などを経て、使用者が具体的な支給額またはその計算方法が決定した時点、あるいはこの点について労使の合意が成立した時点以降から生ずる、とする考え方が有力だからです。
この解釈によると、支給額またはその計算方法が決定される日までの間は、社員には賞与の請求権がないことになりますので、たとえ、賞与の算定対象期間の全部に勤務していても、決定日前に退職する者には賞与を支給しないという取扱いが可能となります。

平成18年5月号

健康保険・厚生年金保険の報酬の支払基礎日数が変更されます

◆平成18年7月1日から健康保険・厚生年金保険の報酬支払の基礎となる日数が、平成18年7月1日より、「20日以上」から「17日以上」に変わります。

◆平成18年度以降の定時決定は?
平成18年度以降の定時決定(算定基礎届)については、4月・5月・6月の報酬支払の基礎となった日数が17日未満の月がある場合には、その月を除いて決定されます。

◆平成18年7月以降の随時改定は?
平成18年7月以降に行われる随時改定(月額変更届)については、昇(降)給等により固定的賃金の変動のあった月以降(平成18年4月以降)継続した3カ月間のいずれの月も報酬支払の基礎となった日数が17日以上必要となります。

◆用語の解説
?「報酬支払基礎日数」
報酬の額を決定するときにその計算の基礎となった日数のことです。だいたい、月給制の場合は暦日数になり、時給制や日給制の場合は出勤日数になります。
?「定時決定」
原則として毎年7月1日現在被保険者資格を有する人について、その年の9月からの標準報酬月額(保険料算出の基準となるもの)を決定することで、4月・5月・6月に受けた報酬額とその報酬支払基礎日数をもとに決定されます。(「被保険者報酬月額算定基礎届」によります)
?「随時改定」
固定的賃金の変動または給与体系の変更により報酬がすでに決定されている標準報酬月額と比較して著しく高低が生じたときに改定が行われます。(「被保険者報酬月額変更届」によります)

生活保護と国民年金

◆生活保護の支給額削減へ
現在、厚生労働省は生活保護の支給額削減を検討しています。国民年金は少子高齢化に伴って中長期的に減額となる可能性が高く、「このままでは保険料を払わず老後を安易に生活保護に頼る人が増える」との指摘があるように、年金保険料を長年払い続けてきた人より、保険料を払わないで生活保護を受ける人の所得が多いケースがあるためです。2007年度から、段階的に国民年金(基礎年金)の支給額以下に引き下げる方針です。

◆生活保護とは
生活保護は、生活、教育、医療、介護など8種類の扶助があります。医療扶助および介護扶助は、医療機関等に委託して行う現物給付が原則であり、それ以外は金銭給付が原則です。
厚生労働大臣が定める基準で測定される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に保護が適用され、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。
収入としては、就労による収入、年金等社会保障の給付、親族による援助、交通事故の補償等のほか預貯金、保険の払戻金、不動産等の資産の売却収入等も認定されるため、これらを使い尽くした後に初めて保護適用となります。

◆生活保護世帯数の増加
生活保護を受けている世帯数は、2004年度は月平均で99万8,887世帯でした。1995年度は平均60万1,925世帯であったことから、ほぼ10年で約1.6倍にまで増えたこととなります。
生活保護を受ける世帯は高齢者世帯が多く、その背景には、年金保険料未納など、年金制度の空洞化問題があります。

◆それぞれの支給額は?
それぞれの支給額はどうなっているのでしょう。国民年金では、40年間保険料を払い続けた人で月額約6万6,000円であるのに対し、生活保護の支給額は年齢や地域によってそれぞれ異なりますが、生活扶助分のみで8万円を超え、さらに家賃を払っている場合に上限が約1万円の住宅扶助が加算されるケースもあります。

2006/03/31

平成18年4月号

年金未加入防止対策案

社会保険庁は、国民年金に加入していない人を減らすため、住民基本台帳ネットワークの情報を本格的に活用する方針を進めています。これは、住基ネットの氏名、生年月日等の個人情報を基に、毎年34歳の人の年金加入状況を総点検し、未加入者に対して加入を促すことを目的としています。なぜ「34歳」を対象としているのかというと、年金の最低加入期間である25年要件を満たすためです。年金を受給するには、最低加入期間として25年が必要とされています。ですから、加入期間がたとえば24年11カ月だった場合、たった1カ月足りないだけなのですが、年金は1円も受給できないこととなっています。したがって、60歳に到達するまでに25年間の年金加入期間を満たすには、35歳がぎりぎりの年齢となるというわけです。そういった実情を請けて、今国会に提出される社会保険庁改革関連法案に住基ネットの活用を盛り込み、来年度から着手することとしているようです。

これまでの対策
政府はこれまでにも、若年層に対し「学生納付特例」や「若年者納付猶予制度」等を設け、年金未納を減らすための措置を行ってきています。しかし、若年層の納付率は低く、平成16年度の納付率が63.6%であるのに対し、年齢階層別でみると、40歳未満の納付率はこれ以下となっており、20歳台前半では49.6%と、50%を切っているのが現状です。また、全体の年金の納付率も決して高いとはいえません。こういった状況にかんがみ、現在でも、経済的な理由等で保険料を納めるのが困難な場合には、申請により保険料が全額免除または半額免除となる制度がありますが、平成18年7月からは新たに1/4免除、3/4免除の新しい割合も加えられます。

厚生年金未加入事業所への対応
4月から社会保険庁は、厚生年金と中小企業の会社員らが加入することになっている政府管掌健康保険に加入していない企業や個人を、強制的に加入させる措置を強化する方針です。強制加入は、社会保険庁の文書や個別訪問による加入の呼びかけに応じない事業者に対して行われており、現在は従業員20人以上の事業所がその対象となっていますが、これが15人以上の従業員がいる事業所等へと拡大されます。具体的には、未加入の事業所に対して事前に立入検査を行う日を通知し、従業員名簿の提出を促し、職権で加入手続きを進めます。そして、もし強制加入させた事業所が保険料の納付を拒否した場合は、銀行口座などを差し押さえるなどの方法で保険料を払わせるとしています。
厚生年金と政管健保はすべての法人事業所と5人以上の従業員がいる個人事業所に加入義務があります。しかし、事業主が保険料の半額を負担することを嫌い、加入手続きを怠ったり、違法に脱退する事業主が途絶えず今回の対応となったようです。


少子化対策

政府は、急速に進む少子化を食い止めるには、仕事と子育ての両立を促す企業環境の整備が不可欠とみており、次世代育成支援対策推進法(次世代法)で社員300人超の企業に行動計画の策定を義務付けました。それに伴い、主要企業が社員の子育て支援策を相次いで拡充し始めています。

●主要企業の例
東京海上日動火災保険やサントリーなどは、子どもが小学3年生になるまで勤務時間を短縮できる制度を導入、日産自動車では妊娠がわかれば即座に産前休暇を認める制度を導入しました。企業の支援策が実際にどの程度活用されるかは未知数ですが、リーディングカンパニーの名に相応しい実績を残していただきたいところです。ちなみに、政府は女性の育児休業の取得率の目標を80%としていますが、実際には2004年度で70%強、同年の男性の取得率は政府目標の10%に対して0.44%でした。制度はあっても利用しにくい雰囲気があるとの指摘は以前から多くあります。

●兵庫の例
兵庫県では、「5年間で25万人」の赤ちゃんを産んでもらおうという“産めよ増やせよ”作戦に着手するため、平成18年度の予算案に約618億円を盛り込んだそうです。また、「晩婚化・未婚化の進行」への対策として、平成18年度から男女の出会いを支援するお見合い紹介事業を始めます。これは「ひょうご出会いサポート事業」という名称で、企業、自治体など会員団体を募り、職場交流会で気の合った相手を探してもらうシステムです。出生率の低下に危機感を抱く兵庫県は、年平均5万人への回復を目標に、結婚支援など少子化対策を多角的に展開していく方針です。

●その他の例
富山県では経営者の次世代育成支援事業に100万円を予算化したり、久留米市では特定不妊治療を行う夫婦を対象に、来年度から年間5万円を独自に助成することを決めました。

平成18年3月号

無断欠勤の社員を解雇できる?

社員が無断欠勤を続けており、自宅にも戻っていないようで、連絡も取れない状況となってしまいました。また、ご家族も連絡がとれないようです。この社員は、これまでも何度か無断欠勤をしたことがあり、その都度注意していましたが、会社として社員を解雇したい場合、どのような手続きが必要でしょうか。
◆解雇するには
行方不明の社員を解雇するには、民法97条の2の「公示送達」によって、解雇の意思表示を行わなければなりません。具体的には、社員の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てを行い、裁判所の掲示板に掲示するほか、掲示したことについて官報および新聞に少なくとも1回掲載し、最後に掲載した日から2週間が経過すれば、社員に会社の解雇の意思表示が到達したものとみなされます。
◆解雇予告手当は
公示送達によって解雇する場合にも、所轄の労働基準監督署長から解雇予告の除外認定を受けない場合には、社員に解雇の意思表示が到達したとみなされる日(この場合、官報および新聞に最後に掲載した日から2週間が経過した日)の翌日から起算して30日目の日を解雇日と指定するか、30日分の解雇予告手当を供託するか、どちらかの手続きが必要です。
◆労働契約の自然終了
また、就業規則、労働協約、労働契約のいずれかで無断欠勤が連続して一定期間に及び、連絡不能である場合において自然退職とする旨の定めがある場合には、労働契約の自然終了として雇用契約を終了させることができます。
ただし、無断欠勤の期間が短すぎる場合や無断欠勤をして連絡が取れなくなったことについて客観的な正当性がある場合には、規定の適用が認められないケースも考えられますので注意が必要です。

公益通報者保護法が4月に施行

不正を内部告発した社員に対して、会社が解雇その他の不利益な取扱いを行うことを禁止する公益通報者保護法が2006年4月に施行されます。内部告発のルールを明確にし、内部告発者を守ることで企業に法令を遵守させることが目的です。
◆保護の対象となるのは
内部告発者として保護されるのは、正社員、派遣労働者、アルバイト、パートタイマーなどで、退職者も含まれます。自ら不正を是正する立場にあり、株主総会で選任・解任される取締役や監査役は保護の対象外となっています。
内部告発者を保護するために、具体的には内部告発を理由とした解雇や減給、降格、派遣労働者の交代要求、退職金の没収・減額などが禁じられています。
◆通報先と保護要件は
通報先は、事業者内部、処分等の権限を有する行政機関、報道機関や消費者団体などの事業者外部ですが、それぞれに保護の要件が定められています。
事業者内部については通報が金品の要求などの「不正の目的」でないこと、行政機関についてはそれに加え、通報内容が真実であるという相当の理由があることなどです。
◆外部への告発は
報道機関や消費者団体などの外部へ告発する場合には、さらに以下のいずれかに該当するケースに限るなど要件が厳しくなっています。
1、不利益な取扱いを受ける恐れがある
2、証拠隠滅の恐れがある
3、公益通報をしないことを正当な理由なく要求された
4、企業に告発したのに20日以上たっても調査が開始されない
5、個人の生命、身体に危機が生じる切迫した危険がある
◆もし公益通報を受けたら
公益通報を受けた事業者は、公益通報の是正措置等について、公益通報者に通知するように努めなければなりません。また、行政機関が公益通報を受けた場合は、必要な調査や適切な措置を取らなければなりません。

【トピック】
●初任給調査結果 東京労働局
今年の3月卒業予定者の初任給の平均値(東京都)は、大学が20万2,000円(前年比0.7%増)、短大が18万3,100円(同1.3%増)、専修学校が18万3,000円(同1.7%増)、高校が16万5,000円(前年同)だった。東京労働局が都内ハローワークで受理した求人内容をもとにまとめた。

●管理職以外も「残業代なし」へ?
厚労省の研究会で、管理監督者や裁量労働制で働く人でなくても、一定以上の収入や権限がある労働者を労働時間規制から外す方向が示された。その条件として、1.業務の進行について指示を受けず、成果で賃金が決まる 2.一定以上の収入があり、本人が同意している 3.会社が過労を防ぐための健康確保措置を講じている 4.導入を労使で協議し、合意に至っている などをあげている。同省は、審議会の議論を経て07年上程予定の労基法の改正案に盛り込むことを目指す。

2006/01/25

平成18年2月号

児童手当、小学6年まで支給へ

少子化対策の一環として支給されている児童手当ですが、2006年4月から支給対象が引き上げられ、所得制限も緩和されることが決まりました。現在は、仮に夫婦と子ども2人の世帯とすると、給与所得者で年収780万円未満、自営業者については年収596万円未満の方に支給され、0歳から小学3年生までの子どもの85%に支給されていますが、年収要件の緩和によって約90%の児童が対象となる見込みです。
◆児童手当とは
児童手当は児童を養育する方に手当を支給することにより、家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健全な育成および資質の向上に資することを目的に、現在は小学3年生までの児童を養育している方に第1子、第2子に対して月額5,000円、第3子以降に対しては月額1万円が支給されています。
2006年4月からは支給対象が小学6年生まで引き上げられ、所得制限も夫婦と子ども2人の世帯で給与所得者については年収860万円未満、自営業者は年収780万円未満に引き上げられます。

◆必要な財源は
児童手当拡充のために必要な財源は2006年度から、たばこ税を1本につき85銭引き上げ、たばこの値段は1本1円の値上げでまかなうことが決まっています。


結婚しても子供を多く持てない夫婦が増加

わが国の合計特殊出生率は低下し続け、04年には1.29となりました。しかし、多くの未婚者はいずれ結婚して子供を持ちたいと考えており、結婚に対する意欲が低下しているわけではありません。子供を持たない理由については、未婚者、既婚者を問わず多くの人が子育ての経済的な負担が大きいことをあげていますが、子育てにかかる費用が近年増大しているわけではありません。
◆子供を持つ余裕のない若年世帯が増加しつつある
近年、大学卒業者がパート・アルバイトとして就業する割合が増加しています。若年者のパート・アルバイトにおける年収は同年代の正社員の3割程度にあたる約120万円にとどまっており、特に近年増加しているパート・アルバイト同士の夫婦は、共働きをしても必要な所得を得ることが難しく、子供を持つ余裕がない状況にあると考えられます。一方、正社員として就業していても時間外労働の増加などにより長時間働くため、子育てに時間を割きにくくなっているのではないでしょうか。
◆子育てには総合的な支援が必要
アルバイト同士の夫婦をはじめとした低所得若年層においては、将来の収入見通しに対する不安が子育てをためらわせる大きな要因となっています。現在のような正社員かパート・アルバイトかという二者択一ではなく、多様な働き方および賃金体系が認められれば将来の収入の増加を見込むことができ、子育ての希望を持ち続けられるのではないでしょうか。
また、子育て支援に関する多様なサービスが十分かつ安価に供給されるようになり、育児休業制度の利用や男性の働き方を見直していくことなど、企業との協力の下で夫婦が子育てをしていくことが望ましく、出産、子育てが一段落した女性の再就職・キャリアアップに向けての教育環境が整備されれば子育てに対する負担の軽減につながることが期待できます。
◆子育ての社会化
今後、子育てが家族の責任だけで行われるのではなく、親世代、同世代の友人、会社の同僚、近隣に住む人々など社会全体で子育てに取り組む「子育ての社会化」、そして子育てにかかる個人の経済負担を軽減していくことが必要になってきているように思われます。


【トピック】
●介護保険見直し
厚労省は、介護保険料の負担を現在の40歳から引き下げることに関する検討会を設置する。これについては昨年の介護保険法改正で検討されたが、改正法に盛り込まれるには至らなかった。年内にも報告書をまとめ、2009年度までの改正を目指す模様。

●年金徴収強化へ
社保庁は、2004年度に約3万1,000人に対して実施した国民年金保険料の強制徴収を、2005年度は約14万人に対して行う方針だ。昨年12月上旬ですでに8万6,000人に対して強制徴収を実施しており、年度末にかけてさらに強化するとしている。
一方、同庁と厚労省内には「強制徴収だけでは目標とする『2007年度末までに納付率80%』を達成できない」という見方が強い。そこで、国民年金の長期未納者と長期未加入者は国民健康保険を使えないようにするという案が浮上している。総務省や自治体との調整もあるが、早ければ2007年度から実施したい考えだ。

●「年金カード」導入
政府は、銀行や郵便局のATMに差し込むだけで現在の年金積み立て額、受取額等がわかる「年金カード」を、2008年4月から国年・厚年の加入者全員に配布することを検討している。政府はすでに、同年から同様の情報を定期的に郵送する方針を公表しているが、これよりも利便性が高いものとの判断がなされた。

2006/01/05

平成18年1月号

2007年問題 技能継承に助成金

「団塊の世代」が定年退職を迎えることで、製造業を中心に熟練した技術・技能やノウハウの喪失が懸念される、いわゆる「2007年問題」の対策として、厚生労働省は中小企業の技能継承の取組みに対し、助成金を導入する方針を固めました。中小企業労働力確保法を改正し、取組みにかかる企業の経費の半分を負担するほか、訓練期間中の社員の賃金の半分についても負担するということです。
◆団塊の世代の技術などを次の世代にどう伝えるのか
昭和22年から昭和24年に生まれた「団塊の世代」は約670万人とされ、平成19年から60歳の定年退職を迎えます。各企業の生産現場では、労働力減少のほか、団塊の世代が持つ高度な技術力やノウハウを、どう次の世代に伝えていくかが課題となっています。
特に全企業の9割以上を占める中小企業の経営者からは「企業体力に限界があり、技能継承に向けた行政の支援は重要」などの声が強くなっています。
◆助成金制度を活用
厚生労働省はこうした要請を踏まえ、中小企業労働力確保法に基づく中小企業雇用創出等能力開発助成金制度を活用し、現在は技能の高度化や新分野進出への取組みに限られ支給している助成金の対象範囲を拡大し、技能継承に取組む企業にも支給できるように制度を改めるということです。
助成金を受けたい中小企業の事業主か業界団体は、まず都道府県に技能継承に関する取組みの計画書を提出します。認定されれば、企業が講師を招いて社員の教育を実施したり、職業訓練学校など外部訓練施設を活用して技能継承を図ったりした際、かかった費用の原則半分が助成金として支給されます。

労災保険加入制度の強化

厚生労働省は平成17年11月1日から、労災保険未加入の事業主に対する費用徴収制度を強化することにしました。労災保険は、労働者を1人でも(パート・アルバイト含む)雇用している事業主には加入手続きを行う義務があります。もし、労災保険に加入していない時に労災事故が発生した場合、遡って保険料を納めなくてなりません。また、労災保険料を納めるだけでなく、ペナルティの保険料を課せられることとなれば、それだけで事業主にとってかなりの経済的負担となります。労使ともに安心して働ける職場環境のため、また労災事故が起こって慌てないためにも、労災保険の加入は事業主にとって必要不可欠なものです。
◆適用事業所
労災保険は労働者単位で適用される雇用保険とは違い、事業所単位で適用されます。適用されない事業および労働者は1、国の直営事業2、官公署の事業(地方公務員には一部適用)3、船員保険に加入している労働者だけで、これ以外の事業および労働者には適用されます。労災保険率は業種によって異なりますが1,000分の5から1,000分の129となっています。また、中小企業の場合は、労働者だけでなく事業主等が労災保険に加入できる「特別加入」という制度があり、労働保険事務組合に事務委託をしている場合に加入できます。
◆費用徴収のポイント
労災保険未加入時に、費用徴収の対象となる場合は次の2通りです。1、労災保険の加入手続について行政機関から指導等を受けたにもかかわらず、未加入期間に労災事故が発生した場合。2、行政機関からは指導は受けてはいないが、労災保険の加入手続を1年以上怠っていたときに労災事故が発生した場合。1、の場合、事業主が故意に手続きを行わなかったものとして、発生した労災事故に関して支給された保険給付額の全額が徴収されます。2、の場合、事業主が重大な過失により手続きを行わなかったものとして、発生した労災事故に関して支給された保険給付額の40%が徴収されます。徴収される金額は、療養を開始してから3年間に支給されるものに限ります。また、療養(補償)給付・介護(補償)給付は除外されます。いずれにせよ、労災保険適用の事業所となった時点から加入しておけば、徴収されずにすむ金額であることに違いはないです。

【トピック】
●医療改革大綱決定
医療制度改革大綱が決まった。高齢者の医療費の負担割合は、70歳以上の高所得者について現行の2割から3割へ(06年10月から)、70歳以上75歳未満の中低所得者について1割から2割へ(08年度から)引き上げることとなった。 また、現在特例で3歳未満は2割負担とされているが、これを義務教育就学前とすることとなった。

●高額療養費未請求分を通知
社保庁は、高額療養費の払戻し対象となっていながら貰い損ねている政管健保加入者に対し、その旨の通知を始める。年内のサービス開始を目指し、通知のタイミングなどの調整を図るとしている。
高額療養費の還付については、多くの健保組合ですでに自動還付システムが確立しており、政管健保も一部の社保事務所では通知サービスを行っていたが、サービスの均一化を求める声を受け、今般の措置となった。

2005/12/01

平成17年12月号

派遣?請負?

書類上、形式的には請負(委託)契約であるにもかかわらず、実態は労働者派遣であるものを「偽装請負」と言い、違法です。
その理由は、労働者派遣法等に定められた派遣元(受託者)・派遣先(発注者)の様々な責任が曖昧になり、労働者の雇用や安全衛生面など基本的な労働条件が十分に確保されないという事が起こりがちだからです。
請負とは、「労働の結果としての仕事の完成を目的とするもの(民法)」ですが、派遣との違いは、発注者と受託者の労働者との間に指揮命令関係が生じないということがポイントです。自分の使用者からではなく、発注者から直接、業務の指示や命令をされるといった場合には、偽装請負である可能性が高いと言えます。
偽装請負の代表的なパターンは、「代表型」、「形式だけ責任者型」、「使用者不明型」、「一人請負型」の4つです。
「代表型」とは、請負と言いながら、発注者が業務の細かい指示を労働者に出したり、出退勤・勤務時間の管理を行ったりしています。これが最も多いパターンです。
「形式だけ責任者型」とは、現場に形式的に責任者を置いていますが、その責任者は、発注者の指示を個々の労働者に伝えるだけで、発注者が指示をしているのと実態は同じです。単純な業務に多いパターンです。
「使用者不明型」とは、業者Aが業者Bに仕事を発注し、Bは別の業者Cに請けた仕事をそのまま出します。Cに雇用されている労働者がAの現場に行って、AやBの指示によって仕事をします。つまり、労働者が誰に雇われているのか良く分からないというパターンです。
「一人請負型」とは、実態として、業者Aから業者Bで働くように労働者を斡旋します。ところが、Bはその労働者と労働契約を結ばず、個人事業主として請負契約を結び業務の指示、命令をして働かせるというパターンです。
請負で働かせる場合、雇用形態について疑問を持ったときは、私共社会保険労務士にご相談ください。

名刺大の小冊子でできること

名刺大の小冊子に、経営理念をまとめている会社があります。毎年1月1日に発行して、社員全員胸ポケットに入れています。取引先や出入り業者の方にお配りすることもあります。
小冊子は、社長の思いに始まり、社長の使命宣言、経営理念、経営ビジョン(我が社のあるべき姿・我が社の目標)、会社の使命・目的、信条(クレド)、事業領域、価値観、教育理念(職業観・人生観・人間観)、人事理念、会社の行動指針、日常の心構え、営業の心得、今年の合言葉で終わります。
社長の思いでは、社長の事業に賭ける思いを率直に綴っています。以下に引用します。
「私は28歳で職業として○○に出会い、今年で15年になります。この15年間、1つの○○で数多くの人々と出逢いをもちました。1つの○○を通じて、お付き合いをいただき、なおかつ学ばせていただけることに感謝の気持ちでいっぱいであります。」「私は、○○を伝統文化の一つととらえ、社会に広めてゆきたいと思います。」
社長の使命宣言は5つありますが、3番目に「適正な利益をいただき、社員の豊かさと、より良い商品開発・設備投資にむけ、お客様に還元します。」を挙げ、売上至上主義ではなく適正利益第一主義を宣言しています。
経営理念は、「CREAN&HEART 信頼と真心をおとどけしよう」です。社長の思いを凝縮したものです。
事業領域では、「私たちは、○○地区を事業展開地域と考えています。私たちは、毎日・または週3便お届けする新鮮な○○とともに、お店で必要な外食産業用資材を多品種・小ロットで必要な分量のみお届けします・弊社がお店のバックヤードとなります。私たちのネットワークが、お客様をきめ細かくサポートできることを目指します。」と、営業地域・業務内容を明確にしています。この事業領域で、従業員が目指すべきこと、判断基準を具体化しています。
価値観の冒頭では、「私たちは、法令・倫理を犯してまで、利益を追求することはいたしません。」と法令遵守を強調しています。
今年の合言葉は、「守る」です。以下に引用します。
「やらなければならないことは必ずやる。そして、必ずやらせる。やってはいけないことは、絶対やってはいけない。絶対やらせてはいけない。」
名刺大の小冊子でできることは、成果主義賃金制度やコンピテンシーよりも、ずっと大きいかもしれません。

【トピック】
●時間単位の有休 制度化へ
有給休暇を時間単位で取得できるようにするための改正法が2007年の通常国会に上程され、2008年にも導入されることになりそうだ。時間単位の取得日数に上限を設けるなどして、1日単位での取得ができなくなることのないよう検討する。なお、国家公務員は現在すでに時間単位での有休休暇制度を導入している。

●短時間労働者の残業に割増賃金
厚労省は、短時間労働者が契約時間を超えて労働した場合、それが法定時間以内でも割増賃金(5?10%程度)を支払わなければならないとする仕組みを導入する方針だ。労働契約法の制定とあわせ、2007年通常国会への上程を目指す。ただし、今後経営者側の反発は必至。

2005/11/01

平成17年11月号

求人セット型訓練

独立行政法人雇用・能力開発機構が、採用コストを抑えて適材適所の雇用を実現するために「求人セット型訓練」を行っています。
求人セット型訓練とは、履歴書や面接ではわからないその人の適性や能力を見極めるため、職場実習(公共職業訓練として実施)を行った後に採用する制度です。
求人セット型訓練のポイントは、
1 賃金等の支払いは不要
2 訓練委託費をお支払い
3 事業所の保険料負担なし
です。
1.賃金の支払いは不要とは、訓練生へは失業給付の基本手当に加え、受講手当、事業所までの通所手当が支給される場合があるということです。2.訓練委託費をお支払いとは、職場実習を行う企業に対して、訓練生一人当たり月額25,305円(税込)をお支払いするということです。3.事業所の保険料負担なしとは、訓練生は、万が一の事故に備えて、労働者災害補償保険に加入(雇用・能力開発機構負担)しているということです。
求人セット型訓練を利用するには、1.人材を求める事業所が採用に先立ち、人材ニーズに応じた職業訓練コースを設定、2.ハローワークを通じて応募する求職者を選考、3.事業所内で標準3ヵ月の職場実習を実施、4.訓練修了後採否を決定という手続きを経る必要があります。
これまで、製造業では、プラスティック成形金型製作・機械設計・バッグデザイン企画・CAD製図・鋼板切断加工、情報通信業ではプログラマー・デジタル機器設計・WEBデザイナー・ソフトウェア開発・モバイル機器設計、サービス業ではインテリアデザイン・企画開発デザイン、その他では経理実務などで実績があります。
一度ご活用を検討してみてはいかがでしょうか?


年金書類、事前送付サービス始まる

社会保険庁は10月から、厚生年金や国民年金の加入者が年金を受け取る年齢になる直前に年金の請求書類を送付するサービスを始めました。これまでは加入者が自分で気をつけて請求手続に出向く必要があり、不親切との批判が強かったので、従来に比べると利便性は大きく向上するでしょう。

◆60歳から年金を受けることができる人が対象
年金の裁定請求書類は一定の加入期間を満たし、60歳から厚生年金を受け取ることができる人を対象に加入者が60歳になる3ヵ月前に郵送します。書類にはあらかじめ氏名や基礎年金番号、過去の加入履歴などが印刷されており、加入者は説明書に沿って必要事項を記入し、社会保険事務所に持参すれば年金の請求手続ができます。受け付けは60歳の誕生日の前日からです。

◆60歳から受け取れない人には
60歳からは年金を受け取れない人や加入期間が足りない人には、60歳になる3ヵ月前に年金請求の手続きや年金加入期間などを記載した案内はがきを送付します。共済年金に加入していた期間などは、共済組合等から社会保険庁に情報提供されていない場合があり、加入期間として合算されていないこともあるので注意が必要です。
また、共済組合の期間しかない人には、65歳前に各共済組合から年金の裁定請求書が送付されるため社会保険庁からは事前送付は行いません。
65歳から国民年金だけを受け取る人や、年金を受け取る権利があり、まだ請求し忘れている人に対しては65歳の誕生日の3ヵ月前に書類を送付するサービスも同時に始めました。


【トピック】
●民間給与 7年連続ダウン
昨年1年間に民間企業で働く人が得た平均給与額は438万8,000円で、前年を5万1,000円下回っていることが明らかになった。減少は7年連続。内訳は給料・手当が370万1,000円、賞与が68万7,000円。男女別では、男性が540万9,000円、女性が273万6,000円。

2005/10/01

平成17年10月号

接待ゴルフも仕事のうち?

最近では不況の影響で接待ゴルフも減っているといわれますが、週末の接待ゴルフは休日が
つぶれる上に、得意先とのプレーは気を遣うことも多く大変のようです。会社が代休や休日出勤手当の対象としてくれるならいいのですが、社員が要求した場合に認められるでしょうか?
◆休日の接待ゴルフは労働時間ではない
休日の接待ゴルフは、原則として労働時間とはなりません。接待ゴルフの参加が業務の遂行に必要な行為であっても、それはあくまでも付随的なものであり、業務遂行そのものではないため、休日労働と認められることはまずないでしょう。これは、相手に招待された場合だけでなく、業務命令で参加した場合や、会社がゴルフの費用や旅費を負担して休日にゴルフコンペを開催した場合も同様です。
◆例外的に認められる場合もある
接待ゴルフが勤務として認められるためには、いくつかの条件が必要となります。上司の特別な命令があり、そこで具体的で重要な商談を行うなどの業務を伴い、プレー代も会社が負担する場合です。取引先との価格の折衝など重要な交渉の細部を詰めながらプレーするといった場合に勤務となり得る場合があります。
また、ゴルフコンペの準備、進行、接待、送迎など幹事役を上司の業務命令で行った場合は、それが主たる業務である場合は休日労働扱いとなり、会社が休日割増賃金を支払うことが必要となることもあります。
◆ゴルフ後の宴会は?
ゴルフ後の宴会も通常は、勤務とは認定されないでしょう。ゴルフが実際には重要な交渉で、その後の宴会が事実上の「会議」となるというような特別な事情がない限り、ゴルフの後の宴会も業務と認められることはないでしょう。


社員旅行に行かなければ積立金は?

社員の交流を図ったり、結束を強めたりする目的で、毎年、社員旅行に出かける会社も多いと思います。社員旅行のために、月々の給料から天引きで積立てをしている会社もあるでしょうが、もし社員旅行に行かなかった社員から積立金の返還を求められた場合、積立金は返さなければならないのでしょうか?
◆請求があれば返金すべき
労働基準法に社内預金に関する規定があり、利用目的を旅行に限定している場合でも、会社が社員から徴収し、管理する資金という点では、社員旅行の積立金も社内預金の一種と見られています。そのため、社員から要求があった場合、会社は遅滞なく返金する必要があります。
ただし、直前のキャンセルなどで宿泊施設のキャンセル料が発生した場合などは、その社員に現金で請求することができます。
◆給料から天引きする場合
積立金を給料から天引きする場合には、会社には労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者と労使協定を締結する必要があります。もし、労使協定なしに天引きすれば、違法な社内預金となるため、法定利率を付け、社員の不利益にならないように返金しなければなりません。
◆親睦会費の積立金は
親睦会費などの名目で積立てをしている場合、あらかじめ規約で「旅行に参加しなかった場合、積立金は返還しない」旨を定めておけば、原則返金する必要はありません。規約に定めていない場合には、旅行の準備などの活動経費を差し引いた分を欠席した社員に返却しないと民法上の不当利得に当たる可能性もあるので注意が必要です。
親睦会費か社内預金かは、名称ではなく実態に即して判断されます。親睦会費と称していても会の実態がなかったり、親睦会は存在していても活動の実態がなく社員旅行目的の積立てを行っていたりすれば社内預金と解され、返還の請求があれば返金しなければなりません。


【トピック】
●製造業への派遣事業所を集団指導/大阪労働局
 大阪労働局は29日、派遣・業務請負の適正化に向け、製造業務への労働者派遣を行う191の事業所に対して集団指導を行った結果を発表した。83の事業所で問題点が発見され、改善を指導。製造業務への労働者派遣と業務請負の両方を行っている28の事業所で、契約上は請負としながら、実際には指揮命令を伴う労働者派遣を行っていた。

●労災未加入事業主の罰則強化
 厚生労働省は11月から、業務上のけがや病気を補償する労災保険に未加入の事業主に対し、罰則を強化する。労働基準監督署の加入指導を受けても保険料を払わない事業所で労災が起きた場合、労働者への保険給付額の4割を強制徴収していたものを全額徴収に改めるほか、指導を受けていなくても、一定期間以上、加入手続きをしなければ強制徴収の対象とする。厚労省は未加入事業所は全国で約54万に上るとみており、罰則強化で減少を狙う。

2005/09/01

平成17年9月号

子育て支援による人材確保

次世代育成支援対策推進法(次世代法)が施行されて、半年になります。
次世代法は企業や自治体に対し、2015年3月までの10年間で積極的な子育て支援に取り組むことを求めています。
300人超の従業員を雇用する企業は育児支援への取組みを「一般事業主行動計画」としてまとめ、各都道府県労働局へ届け出る義務があります。
「一般事業主行動計画」を策定するメリットは、2つあります。第一に、安定的な女性の働き手の確保です。女性の働き手の多くは、家庭で育児や介護の問題を抱えています。育児支援に積極的に取り組む企業は、女性にとって魅力的です。第二に、認定マークの取得があります。認定マークの取得は、企業イメージの向上にも役立つからです。認定マークを受けるためには、男性の育児休業取得者1人以上、女性の育児休業取得率70%以上といった基準を一定期間内(2年から5年)に満たすことが要件になっています。認定マークを取得すれば、自社の広告や商品に使用できます。
全国中小企業団体中央会が今年1月に実施したアンケートによると、次世代法の対象になっていない300人以下の中小企業でも、仕事と育児の両立支援に取り組んでいます。例えば、1.保育園の運営や保育所費用の3分の1を補助するなどの育児支援、2.労働時間の短縮や週2日出勤などの労働日数の短縮、3.看護休暇制度を高校生以下にまで拡充するなどの子育て時間の捻出への協力、4.育児休業中の書籍の購入費用支援などの職場復帰支援、5.男性社員の育児休業取得の奨励などの男性の育児への参画支援です。小回りが利く中小企業こそ、従業員一人ひとりの要望に沿ったきめ細かな支援への取組みが可能になります。
「一般事業主行動計画」策定にかかわる相談窓口としては、厚生労働省が指定した「次世代育成対策推進センター」や各都道府県の労働局があります。 
人余りから、一転して団塊の世代の大量定年退職と少子化への取組みが問題になっています。まずは、次世代法に詳しい身近な社会保険労務士にご相談されてはいかがでしょうか。


ゆとり教育と労働時間の削減

大阪労働局の割増賃金の遡及是正支払件数等の推移を見ると、ここ数年で割増賃金支払額が急増しています。
平成14年度の是正支払い件数が52件で、割増賃金支払額は約8億4,000万円。平成15年度には、102件と倍増し、割増賃金支払額は約4倍の約21億1,000万円になりました。そして、平成16年度では、件数に関しては横ばいなものの(98件)、割増賃金支払額は約1.8倍に増え、37億4,000万円でした。
割増賃金支払額は、本来企業が従業員に支払うべきであった時間外勤務手当・休日出勤手当の未払い額の支払いを命じるものです。サービス残業は従業員にただ働きを強いるものであり、未払い残業代をさかのぼって是正するのは労働局として当然の指導でしょう。
OECD(経済協力機構)の統計によると、1979年から1983年にかけてすべての国で平均労働時間が減少しました。ところが、1983年から1999年にかけてで比較すると、統計がわかっている16ヵ国のうち6ヵ国で、その16年間に平均労働時間が増加しているのです。(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなどのアングロ・サクソン諸国、およびギリシアとスウェーデン)。この背景には、サッチャー革命やレーガノミックスによる政策の優先課題が完全雇用から国際競争力に変化したことがあります。製造業の統計を見ると、1980年代に平均労働時間は減少から増加に転じています。
逆に、戦後驚異的な復興を遂げ繁栄を誇った日本とドイツは、1990年代半ばまで労働時間が減少しました。例えば、1950年のドイツ人はアメリカ人よりも年間380時間多く働いていました。しかし、1996年の労働時間をみると、ドイツ人はアメリカ人よりも447時間少ないのです。その結果、現在のドイツは景気停滞と失業に苦しんでいます。労働時間とドイツ経済は正の相関関係にあるといえます。働き者の国が栄え、怠け者の国は滅びるという簡単な道理がうかがえます。
数学教育に力を入れたインドが21世紀のIT産業をリードする一方で、詰め込み教育からゆとり教育に転じた日本では、高校生の学習時間が先進国で1、2を競う短さとなり、ニート問題に苦悩しています。
労働時間の削減が、企業の活力と日本の競争力を殺してしまわなければいいのですが。

【トピック】

●国民年金保険料のカード払いが可能になる
社会保険庁は国民年金保険料の納付率を高めるために、2006年度からクレジットカードによる納付を可能にする。カード払いにすることで、一度の手続きで毎月カード会社からの請求が届くことになり、納付率の向上が見込めるとしている。なお、同庁は2004年度に63.6%だった
納付率を2007年度に80%にすることを目標としている。

●育児休業取得で100万円の助成
厚労省は、育児休業を取得させた企業に100万円の助成金を支給する方針を決めた。支給要件は、
・従業員が100人未満の中小企業であること
・初めての取得者であること(2人目は60万円、3人目以降はなし)
・就業規則に育児休業の規定を設けていること
・半年以上の休業の後、職場復帰したこと
など。来年度予算で概算要求し、5年間の時限措置とする。

2005/07/29

平成17年8月号

労働基準監督署の臨検に必要なもの

労働基準監督官が事業場に立入調査をすることを「臨検」といいます。臨検には、1労期監督・2申告監督・3再監督の3種類があります。労働安全衛生法関係の臨検は予告なしの抜き打ちが多く、労働基準法の関係は帳簿の確認や聞き取りが必要なので、大抵は予告があります。
では、労働基準法関係では、どのような書類の確認が行われるでしょうか。以下は、実際の臨検で提出が求められたものです。できれば、今からでも整備しておくことをお勧めします。
1就業規則(別規程もすべて)
2時間外休日労働に関する協定届(控)
3時間外休日労働に関する協定書(写)
4のほか労働基準法に関する協定書(写)、協定届(控)
5労働時間管理の為に作成している書類(賃金台帳と突合せができるもの)
6賃金台帳(直近3箇月分)
7年次有給休暇管理台帳
8衛生委員会の議事録
9衛生管理体制(衛生管理者・産業医等)に関する選任報告書(控)
10健康診断の個人票
11健康診断結果報告書(控)
12労働条件の明示の為、採用時に労働者に交付しているもの(労働条件通知書等の)サンプル
13会社の概要のわかるもの(パンフレット等)
14会社の組織図


養育期間標準報酬月額特例制度

3歳未満の子を養育している期間、申出手続(従業員の申出により、事業主が社会保険事務所に提出)をしておけば、標準報酬月額が下がった場合でも、年金額の計算については子が生まれる前の高い標準報酬月額(従前標準報酬月額)で計算するという制度です。
この申出は、子が3歳に達するまでの間で、子が生まれたとき、育児休業等が終わったとき、転職したとき等に行います。つまり、このようなときに申出手続をしておけば、その後に標準報酬月額が下がったときに適用されるのです。
たとえば、3歳未満の子がいる社員について
1意識的に残業をしないようにしているので残業代が少なくなった
2引越しによって通勤定期代が下がった
3 管理職になった関係で残業代がでなくなり、結果的に給与が下がった
4 転勤により手当が無くなり給与が下がった
5 妻が働くことになり配偶者手当がなくなり給与が下がった
など、標準報酬月額が下がる可能性のある場合はいろいろ考えられます。
これらの場合、申出をしておけば、将来の年金計算だけは養育期間前の標準報酬月額が適用にされるのです。
しかも、この制度は、専業主婦の妻がいる場合の夫にも適用され、また共働きの場合には夫婦そろって適用されるという点は要チェックです。
逆に、この制度を会社がよく理解し、社員に周知しておかないと、その対象になるはずだった元社員から「手続きミスだ!本来もらえるべきだった年金額との差額を払ってくれ!」などということを言われる日が来ないとも限らないのです。

【トピック】

●サラリーマンの給与所得控除を縮小
政府税制調査会は「個人所得課税に関する論点整理」をまとめ、この中でサラリーマンに対する個人所得課税のあり方についての方向性を
明らかにした。サラリーマンの給与所得控除を縮小する代わりに、確定申告をすることで交通費や語学学校の授業料などを必要経費として課税対象所得から控除する。また、育児をしている世帯には税額控除をするなどもあわせて検討している。消費税の改正と平行して議論を進め、数年内での実現を目指す。

●精神障害による労災が過去最多
厚労省は2004年度の労災補償状況を発表した。これによると、うつ病などの精神障害による労災請求が524件(前年度比77件増)、労災認定は130件(同22件増)でそれぞれ過去最多を更新した。労災認定のうち、3分の1にあたる45件は自殺・自殺未遂で、これも過去最多。認定の内訳は急性ストレス障害と心的外傷後ストレス障害が計71件、うつ病が59件。
業種では製造業が最も多く33件、職種ではシステムエンジニアなどの専門技術職が最も多く43件だった。年齢別では30代が53件、40代が31件で働き盛りでの発症が目立つ。

2005/07/01

平成17年7月分

労働基準監督署の監督指導

労働基準監督官が事業場に立入調査をすることを「臨検」といいます。労働基準法第101条では、労働基準監督官が事業場等に臨検を行い、帳簿や書類の提出を求め、または使用者や従業員に対して尋問を行う権限をもつことが定められています。
臨検には、1定期監督、2申告監督、3再監督の3種類があります。1の定期監督とは、労働基準監督署が計画を定め、その定期的な計画に基づく監督です。2の申告監督とは、労働基準監督署に対し、従業員等から法令違反の申告があった場合に実施されるものです。3の再監督とは、定期監督等のその後の実施状況を確認するためのものです。最近増加しているのは、2の申告監督です。
ところで、労働基準法第102条は刑罰法規であり、ここでは労働基準監督官は司法警察官の職務を行うことが定められています。ですから、労働基準監督官の監督指導に従わない悪質な場合は、送検・起訴に及ぶことも可能なのです。
因みに、労働安全衛生法関係の臨検は予告なしの抜き打ちが多いのに対し、労働基準法関係は、帳簿の確認や聞き取りが必要なために大抵予告があります。
臨検で問題があった場合は、「是正勧告書」か「指導票」が交付されます。是正報告書には、法令違反事項と是正期日が記載されており、期日までに是正して、是正報告書を提出しなければなりません。一方の指導票は、法令違反ではないが労務管理や労働安全衛生法上改善すべき点があると判断された場合に交付されます。これも期日までに報告しなければなりません。
是正監督・指導を無視する場合や虚偽の報告をする場合は、改善の意思がない悪質な事業主と判断されて、送検されることもあります。労働基準監督官の監督・指導は、真摯に受け止めるべきでしょう。
  
JISQ15001

個人情報保護法が完全施行されてから、個人情報漏洩に関する報道が続いています。去る5月24日には、大手情報通信会社による全社員(1万1,835人)の個人情報の紛失が公表されました。
同社によると、4月下旬、社員1人が自宅で作業を続けるため、会社のパソコンから上司の許可を得ずに、社員の所属や役職など約20項目の情報をUSBメモリーにコピーし、持ち帰りました。しかし、帰宅途中にこのUSBメモリーを入れた鞄を紛失してしまったとのことです。同社では、無断で社内情報を持ち出すことを禁じていました。同社は以前にも、運営する不動産売買の情報サイトの顧客4,312人分の個人情報を外部に流出させています。サイト運営を委託した企業の社員が、顧客情報を記録したパソコンを入れた鞄を通勤中の電車の網棚に置き忘れたとのことです。かつて委託企業が犯したミスを、今回は本社の社員が犯したことになります。
個人情報漏洩事件では、悪意・出来心による場合よりも、今回のような不注意やスキル不足、無知による場合が圧倒的に多いと言われています。
個人情報保護に関する第三者認証のわかりやすい仕組みとして、プライバシーマークがあります。プライバシーマーク制度とは、JIS規格のQ15001「個人情報保護に関するコンプライアンス・プログラムの要求事項」に準拠して個人情報の取扱いを適切に行っている民間事業者に対し、プライバシーマークの使用を認める制度です。JISQ15001の要求事項では、個人情報に関するリスク(個人情報への不正アクセス、個人情報の紛失、破壊、改ざんおよび漏洩など)に対して、合理的な安全対策を講じなければならないとしています。これは、経済的に実行可能な最良の技術の適用に配慮する必要があるということです。その会社にとって経済的に実行可能な最良の技術とは、客観的に定められているわけではなく、社長がセキュリティレベルを決定しています。つまり、プライバシーマークを取得していても、一定の基準をクリアしているだけで、漏洩事件を起こす可能性は十分にあるのです。実際に、上述したような漏洩事故が起きています。  
今回、個人情報を紛失した大手通信会社では、指紋認証装置を使った入退室管理を実施していました。しかし、たった1人の社員の行動が元となり、会社に対する信頼を失墜させることになってしまったのです。結局は、人の問題ということでしょうか。

【トピック】
●厚労省が厚生年金への未加入企業の求人紹介停止
厚労省は、全国のハローワークで、厚生年金未加入企業が求人を希望しても、同年金への加入指導に応じない場合には求人紹介を停止する措置を始めた。この措置では、厚生年金に未加入の場合、まずはハローワーク窓口で加入を促す。これに応じない場合、求人票へ社保未加入の旨の明記をするとともに社会保険庁事務所からの指導を要請、改善がなければ、求人を停止する。

●来年度から徴収一元化を一部実施する見込
厚労省は労働保険と社会保険の徴収一元化の実施に先駆けて、早ければ来年度にも保険料滞納・未払い対策を一元化する方針を固めた。労働保険を滞納した企業への督促は年間約36万件(2003年度、年3回分の合計)、厚生年金の滞納は現在(2002年5月)約14万事業所に上る。現在は労働局・社保事務所それぞれで対応しているが、最も手間がかかり、切迫しているこの問題でとりあえず一元化を実施し、次段階へのステップとする構えだ。

2005/06/01

平成17年6月号

成果型退職金制度をご存知ですか

従来の一般的な退職金制度は、退社時の賃金と勤続年数をもとに計算されました。支払い総額は退職時の基本給に、勤続年数が長くなるほど有利となる係数を掛け合わせて算出されます。つまり、一人ひとりの仕事の成果よりも長く勤め上げたことを評価する退職金の仕組みといえます。
しかし、バブル崩壊の影響等により売上が停滞ぎみの企業にとっては、どの社員にも同じように高水準の退職金を約束するのは負担である、と考えるようになってきました。
そこで「成果型退職金制度」が最近になって急速に広がり、厚生労働省によるとすでに大企業の36%が当制度を採用し、今年も大手企業の導入が続いています。
◆成果型退職金制度とは
成果型退職金とは、社員の能力や貢献度、勤続年数を点数に換算し、それをもとに退職時の一時金を算出する方法です。これは、ポイント制退職金とも呼ばれており、毎年の点数を累積し、退社時に一定の係数をかけたものが支払額になります。
◆成果型退職金制度の特徴
成果型退職金は基本給と連動せず、勤続年数による係数の傾斜は緩やかになっています。毎年の成果や役職を反映してポイントを積み上げるため、同じ勤続年数であってもより上の等級に格付けされた者、または早く昇格した者が退職金の額も多くなり、その意味で能力主義賃金を反映したものであるといえます。そのため、企業によっては、仕事で高い成果を上げることで退職金も増える、と強調して社員のやる気を促そうとしています。
◆成果型退職金制度のメリット
成果型退職金制度は、企業からみて以下のようなメリットがあります。
1 昇給による退職金の自然増加を回避することができるため、人件費の削減につなげることができる
2 企業への貢献度を反映させた制度であるため、社員の意欲・モラールの向上が期待できる
3 人材流動化に対応しやすいため、中途入社員にとって不利にならない
◆成果型退職金制度を導入する際の留意点
成果型退職金は「成果を上げた人には報いる」のが前提であるため、毎年の査定を公平に運用できるかが重要になります。評価結果に社員が納得できなければ、不満や不公平感が高まって士気に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。そのため、管理職に対して人事評価の研修を実施する企業もあります。

高年齢者雇用安定法

高年齢者雇用安定法が改正されました。65歳未満の定年を定めている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、1定年年齢の引上げ、2継続雇用制度の導入、3定年の定めの廃止のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません。
この高年齢者雇用確保措置の年齢は、年金(定額部分)の支給開始年齢の引上げスケジュールに合わせ、平成25(2013)年4月1日までに、62歳から65歳まで段階的に引き上げられます。ただし、事業主は労使協定により、2の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、2の措置を講じたものとみなされます。
高年齢者雇用確保措置のうち継続雇用制度には、勤務延長制度と再雇用制度があります。勤務延長制度とは、定年年齢が設定されたまま、その定年年齢に到達した者を退職させることなく引き続き雇用する制度です。一方、再雇用制度とは、定年年齢に達した者をいったん退職させた後再び雇用する制度です。
継続雇用制度の雇用条件については、高年齢者の安定した雇用の確保が図られたものであれば、必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用でなくてもよいとされています。また、常用雇用のみならず、短時間勤務や隔日勤務なども含まれます。
また、継続雇用制度の対象者に係る「基準」については、労使協定で基準を定めることとされました。これは、継続雇用の対象者の選定にあたって、企業によって必要とする能力や経験等が様々であると考えられ、労使間で十分に話し合い、その企業に最もふさわしい基準を労使納得の上で策定するという仕組みを作ることが適当だからです。
ただし、労使で十分に協議の上、定められたものであっても、事業主が恣意的に継続雇用を排除しようとするなど、本改正や他の労働関連法規に反する、あるいは公序良俗に反するものは認められません。
 継続雇用制度の対象者に係る望ましい「基準」は、1意欲、能力等をできる限り具体的に測るものであること(具体性)、2必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見が可能であること(客観性)の2つの観点に留意して策定されたものとされています。ちなみに、望ましい例とは具体的には、1社内技能検定レベルAレベル、2営業経験が豊富な者(全国の営業所を3カ所以上経験)、3過去3年間の勤務評定がC(平均)以上の者(勤務評定が開示されている企業の場合)などが挙げられます。
基準にかかる経過措置として、事業主が労使協定のために努力したにもかかわらず協議が調わないときは、大企業の事業主は平成21年3月31日まで、中小企業の事業主(常時雇用する労働者の数が300人以下である事業主のことをいう)は平成23年3月31日までの間は、就業規則等により継続雇用制度の対象となる高年齢者にかかる基準を定め、当該基準に基づく制度を導入できることとしています。

2005/05/01

平成17年5月号

労働保険の強制加入の強化

厚生労働省は2005年度から、労働保険(雇用保険と労災保険の総称)に加入していない事業所を強制的に加入させる「職権適用」の強化を決めました。
労働保険は、パート、アルバイトを含む労働者を1人でも雇っていれば、その事業主は加入手続きを行い、労働保険料を納付しなければならないことになっています。
保険料の負担は、労災保険料が全額事業主負担で、雇用保険料は労使折半での負担ですが、コスト負担を嫌うことや事業主の認識不足から、労働保険の加入手続きをしていない中小・零細企業が少なくないという現状があります。
◆事業主が労働保険の加入手続きを怠っていた場合
事業主が労働保険の加入手続きを怠っていた場合であっても、社員が失業や事故にあった際には一定の給付を受けることが可能です。
ただし、故意または重大な過失により加入を怠っていた事業主に対しては、2年間さかのぼった保険料の徴収に加え、罰則として10%の追徴や労災保険給付に要した実際の費用の一部を請求されることになります。
◆未加入事業所の洗い出し
厚生労働省では、現在約2,000人が労働保険の加入促進や徴収業務にあたっていますが、新たに100人の非常勤職員を各地の労働局に配置して、未加入事業所の洗い出しを強化する方針です。
新たに配置される100人には、制度に詳しい社会保険労務士などを「適用指導員」として採用し、地域の業界団体などと協力して未加入事業所の把握や加入指導にあたることになります。
◆それでも加入を拒み続けた場合
度重なる指導や立入検査にもかかわらず、加入を拒み続けた場合には、従業員20人以上の事業所を中心に「職権適用」を発動し、職権で加入手続きをさせて保険料を徴収する方針です。
さらに、2005年10月からは労災保険の未加入に対する事実上の罰則も強化されます。加入指導に応じない悪質な事業所で労災事故が発生した場合には、現状では労災保険給付額の4割を徴収していますが、これを全額負担に改めるということです。
例えば、死亡事故の場合の遺族補償一時金は、賃金の1000日分が支給されますが、この全額負担となると、賃金が10,000円の労働者の場合で1,000万円を負担することになってしまうのです。
※ この「職権適用」の流れは労働保険だけでなく、厚生年金保険の未加入問題についても検討されています。社員にとって老後の生活がかかっている年金問題だけに、より厳しい処置が予想されます。

次世代法の行動計画は策定されましたか?

平成17年4月1日から、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の策定届の受付が、各都道府県労働局で開始されました。
平成15年7月に成立した「次世代育成支援対策推進法」は平成17年から10年間の時限立法のため、1つの行動計画が終了した後も、平成27年3月31日までは次の行動計画を策定する必要があります。
子育てと仕事の両立に必要な環境を整備することで、労働者のモラール上昇による生産力の向上や、出産・育児を理由とする退職者の減少による優秀な人材の確保、定着にもつながります。
◆「一般事業主行動計画」届出の義務
「次世代法」では、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境整備を行う「次世代育成支援対策」を進めるため、事業主に「一般事業主行動計画」を策定し、届け出ることを義務づけています。301人以上の労働者を雇用する事業主は、「行動計画」を策定し、平成17年4月1日以降、速やかに届け出なければなりません。なお、300人以下の事業主に対しては、努力義務となっています。
◆「一般事業主行動計画」とは
労働者が仕事と子育てを両立させ、現在の少子化の流れを変えるために「次世代法」に基づいて事業主が策定する行動計画のことです。1計画期間、2目標、3目標を達成するための対策とその実施時期の3つを定める必要があり、それぞれ下の?)??)の要件があります。
?)一定の目標が達成されるための期間としては2?5年が望ましい
?)アンケート調査等により、労働者のニーズを踏まえた目標で、その達成状況を客観的に判断できるようなもの
?)目標を達成するための対策としていつ、どのようなことに取り組むのか
具体的な内容については、厚生労働省のHPから「行動計画策定指針」が公表されていますので、確認してください。
また、行動計画を策定し届け出た後、一定の認定基準を満たした場合は、都道府県労働局長に申請を行い、認定を受けると、表示(マーク)を広告・商品等につけることができ、企業のイメージUPにつながります。
◆企業の取り組み
「次世代法」の4月施行にあわせて、N社やF社などの大手情報企業が社員の子育て支援策の拡充に乗り出しています。N社は社員が育児のために親の近くに転居する費用などの補助制度を導入し、F社は育児休暇の期間を1年半に延長しています。これらは、子育てと仕事の両立を支援する目的だけではなく、少子化が進むなかで女性戦力を有効に活用するための制度充実を目指しているといえます。