増加する精神疾患・過労自殺の労災認定
◆長時間労働や仕事上のストレスによる精神疾患
過労や職場のストレスが原因でうつ病などの精神疾患にかかり過労自殺した(未遂を含む)として、2007年度に労災認定された人は前年度を15人上回る81人となり、 2年連続で過去最悪となりました。過労自殺者を含む精神疾患の労災認定者も268人と、前年度比3割増となっています。
厚生労働省は、「長時間労働に加え、仕事の重圧なども精神疾患の原因になる」として、労働環境の改善を求めています。
◆過労死と過労自殺
過労死や過労自殺の定義を整理してみましょう。
「過労死」は、働き過ぎが原因で、心筋梗塞や脳梗塞など心臓や脳の疾患を発症し死亡するものです。認定基準としては、「発症前1カ月に100時間または2~6カ月間に月80時間を超える時間外労働があれば関連性が強い」とされています。
「過労自殺」は、過労や職場でのストレスからうつ病などの精神疾患となり、自殺に至るものです。原則として発症前6カ月の間に、長時間労働や仕事の量・質の大きな変化、重大なミス、出向やセクハラなどの業務上の強いストレスがあったことが認定の要件となります。
今回の調査では、脳梗塞などの脳・心臓疾患で労災認定された人は前年度から1割増えて392人(うち死亡したのは142人)と、過去最悪となりました。
◆精神疾患増加の理由とその対処法
2007年度は精神疾患の労災申請数が前年度比16.2%増の952人、一方、脳・心臓疾患の申請は0.7%減の931人で、調査開始以来初めて、過労による精神疾患の申請が脳・心臓疾患を上回ることとなりました。
精神疾患の労災認定者の1カ月平均残業時間について、80時間以上だった人は111人でした。一方、20時間未満の人も72人いましたが、「長時間労働だけでなく職場のいじめや過剰なノルマなどで精神疾患になるケースもある」という声もあり、一概に時間外労働の多寡だけでは判断しにくいところです。
労働者の精神疾患が増える背景には、企業が目先の発症者対策に追われ、長時間労働が減らないという根本的問題があります。また、個人主義や「勝ち組」「負け組」といった考え方が横行し、会社の中で連帯して集団的に問題を解決する能力が低下していることも一因といえるでしょう。
精神疾患は薬だけで治るものではありません。ものの見方や感じ方を修正するカウンセリングの実施など、職場や家族が一体となって取り組んでいくことが必要です。
注意すべき職場での電話応対マナー
◆電話の応対でビジネスを円滑に
電話を取り次ぐという経験が少ないために、「○○様でいらっしゃいますか」「あいにく○○は不在でございます」などといった言葉が使えない、いわゆる『携帯電話世代』の社員が増えてきました。電話応対のマナーを知らない社員の姿も目立ちます。
気持ちのよい電話の応対は、ビジネスを円滑に進めるうえで重要な要素です。電話ではなく電子メール等で要件を済ますケースも増えている昨今ですが、職場での電話応対のマナーについて改めて考え直す機会が必要かもしれません。
◆電話を受ける場合の基本的なマナー
電話応対で最も注意すべきなのは、「横柄な受け答えをしたり、面倒くさそうに答えたりしない」ことです。会社の信用をなくしてしまったり、印象が悪化したりしかねません。
次に、「『お待ちください』と言った後、長時間待たせっぱなしにしない」ことも重要です。しばらく時間がかかりそうな場合には、いったん電話を切り、こちらからかけ直す配慮が必要です。当人が不在だったときは、先方が「またかけます」と言った場合でも、電話があった旨のメモを残します。いざ本人が電話を受けた際に、「先ほどは不在で失礼しました」という一言がないと、失礼に当たるからです。
また、電話を受けるときに特に注意したいのは、「他の人に回すのに時間がかかる」、「取り次ぐ途中に切れてしまう」といった、機器操作上の不手際がないようにすることです。そのためには、普段から電話機の操作に慣れておく必要があります。
◆電話をかける場合の基本的なマナー
まずは、「社名や氏名をはっきり名乗る」ことが大切です。また、先方は忙しい時間帯かもしれません。「昼食時間や営業時間外の電話の際は気遣いの言葉を入れる」、「『お時間よろしいでしょうか』と確認する」といったことも重要なポイントです。
電話を切るときは、受話器を静かに置きます。
◆気持ちのよい電話応対のために
電話は対面の場合と違って相手の表情や状況が見えないだけに、受け答えにも工夫をする必要があります。「呼び出し3回以内に出る」「できるだけ丁寧に話す」「はっきり話す」「声のトーンをいつもより高めにする」ことを心がける必要があります。
新入社員が研修等で電話のマナーを学ぶことも大切ですが、ベテラン社員も、先方に不快感を与えていないか、時には意識して振り返ってみることも必要です。
「メタボ健診」で生活習慣病を予防
◆4月からスタート
「太りすぎは健康に悪い」と言われますが、最近では、特に内臓脂肪による肥満が生活習慣病に大きく関わっていることが判明しています。2008年4月から、この内臓脂肪に着目した特定健診・特定保健指導、通称「メタボ健診」が始まりました。
◆メタボ健診とは
「メタボリック・シンドローム」とは、腹囲が男性85センチ以上/女性90センチ以上を基準とする「内臓脂肪による肥満」に加えて、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上が該当する状態を指します。該当者は、糖尿病などの生活習慣病の一歩手前で、脳卒中や心臓病の発症にもつながりやすい状態です。
そこで、健康診断を実施して該当者やその予備軍を探し出し、生活習慣の改善指導を受けてメタボ脱出を目指してもらうこととなります。これが「メタボ健診」です。
◆具体的な内容
メタボ健診の対象は、40~74歳の人です。政管健保をはじめ、企業の健康保険組合、市町村の国民健康保険などの公的医療保険運営者が健診・指導を実施します。
健診の結果、メタボリック・シンドロームに該当した人は、生活習慣の改善指導を受けます。最初に面談や講習を受け、その後も3~6カ月にわたって定期的に専門家から面談や電話でアドバイスを受けることになります。「腹囲は基準以上だったが、そのほかに数値が悪かったのは1項目だけである」メタボ予備軍に該当する場合は、最初の面談だけとなります。
また、各医療保険運営者には、健診結果を電子情報として蓄積することも義務化されました。国民の健康状態が把握しやすくなり、また、健診情報と患者が病院で治療を受けたときの診療情報を併せて分析した総合的な判断もしやすくなります。
◆メタボ健診の狙い
メタボ健診のそもそもの狙いは、生活習慣病の予防による医療費の抑制です。厚生労働省によると、生活習慣病の医療費は国民医療費の3分の1を占めています。医療費抑制のためには、こうした生活習慣病の発症や悪化を予防することが欠かせません。健診・指導費はかかりますが、発症または悪化前の生活指導による改善により、結果的に将来の医療費を抑制する考えです。
始まったばかりの「メタボ健診」。有効であるのか、それとも制度の見直しの必要があるのか、もうしばらく注視する必要がありそうです。
外国人研修制度・技能実習制度の問題点
◆問われる制度のあり方
開発途上国への国際協力のあり方について、今、自衛隊の海外派遣の是非を含め、活発な意見交換がなされています。そんな中にあって、「外国人研修制度・技能実習制度」のあり方も問われています。
◆外国人研修制度・技能実習制度とは
外国人研修制度・技能実習制度は、開発途上国への国際貢献と国際協力を目的として、諸外国の青壮年労働者を受け入れて、日本の技術・技能・知識の習得を支援することを目的とする制度で、財団法人国際研修協力機構が推進団体となり、民間団体や企業に対して総合的な支援・援助や適正実施の助言・指導を行っています。
基本的には、民営または国公営の送出し機関から送り出された研修生(技能実習生)に来日してもらい、日本側の受入れ機関において研修を行って、日本の高い技術の習得を支援します。
研修生は、「研修」の在留資格で入国します。日本国内の受入れ先が決まっていないと入国できません。研修生の滞在期間は原則1年以内。研修の結果、一定以上の技能水準に達したことが認められた場合、在留資格が「研修」から「特定活動」に変わり、新たに受入れ企業と雇用契約を結んで、継続してさらに2年を限度に就労することができます。これが「技能実習」です。技能実習の対象職種には、63職種116作業が認定されています。
◆急増する問題点
外国人研修制度・技能実習制度は、単なる経済援助とは性格の異なる「人材育成協力」に主眼を置いた制度である反面、問題点も含んでいます。受入れ企業・団体による「不正行為」です。
外国人研修・技能実習制度に基づいて外国人を受け入れた企業・団体のうち、不当な低賃金で働かせるなどの「不正行為があった」と認定された件数は、2007年度は449件にのぼりました。これは前年の229件の約2倍で、2003年の調査開始以来、過去最悪の結果です。
不正行為のうち最も多かったのは、賃金不払いなどの「労働関係法規違反」で178件、また、受入れを申請した企業と実際に就労した企業が異なる「名義貸し」も115件にのぼっています。旅券や通帳を取り上げるなど、「悪質な人権侵害行為」も70件ありました。日本人労働者を確保できない企業、外国製品との価格競争にさらされている企業が、本来の目的である国際貢献ではなく、低賃金労働力の確保のために制度を利用しているのです。また、研修生の側でも、出稼ぎのつもりで来日する者がいて、失踪者や不法残留者が増加しています。
こうした問題点に対して、制度の見直しや改善が迫られているのです。
転職が原因で支給漏れの多い企業年金
◆約124万件の支給漏れが発覚
昨今の年金問題で国民年金や厚生年金の公的年金への関心が高まる一方、忘れられがちなのが企業年金です。加入者からの請求がなかったために2007年には約124万件の支給漏れが発覚した企業年金。特に転職時には、特に注意する必要があります。
◆企業年金の種類
企業年金は2種類に大別できます。1つは将来の給付額をあらかじめ約束する「確定給付型」、もう1つは年金資産の運用次第で給付額が変わる「確定拠出型」です。
確定給付型の企業年金には、厚生年金基金や確定給付企業年金、税制適格退職年金(2012年に廃止)などがあります。拠出した掛金の累計額とその運用収益であらかじめ年金額が決定されていることから、加入員が老後の計画を立てやすく、加入員数が伸びていました。福利厚生策として、企業が独自に自社年金を設けるケースもありました。
しかし、バブル崩壊等により運用環境が悪化し、大半の企業が、予定していた運用益を確保できずに積立不足に陥るという問題が発生しました。企業は不足分を補填しなければならず、運用失敗の負担が重くのしかかるケースもしばしば起こりました。
確定拠出型の企業年金は、こうした確定給付型の問題を解決できる特色を持っている制度で、2001年に誕生しました。掛金を誰が拠出するかの違いにより「企業型」と「個人型」がありますが、企業型の場合、企業が掛金を拠出し、運用は従業員が自ら行います。運用を加入者が個々に行うため、企業には確定給付型が持つ補填リスクがありません。
従業員にとっても、年金資産が個人別に区分され、残高の把握や転職時の資産の移行が容易だというメリットがあります。こうしたメリットゆえ、導入企業も徐々に増加する傾向です。
◆転職時の注意事項
さて、転職時には、これらの企業年金に対してどのような注意が必要なのでしょうか。
例えば厚生年金基金の場合、会社の定める一定期間を超えていれば基本的にはその会社で運用を続け、期間が満たないときには運用は企業年金連合会に移ります。転職経験が多く、以前の勤め先の企業年金について覚えていない場合、まずは企業年金連合会に問い合わせれば、どの部分が連合会に移ったのかわかります。それでも不明のときは、各企業の基金に問い合わせることが必要です。
確定給付型の企業年金は、2005年以降、転職先の会社が受け入れる体制を整えていれば、年金資産の移管が可能になりました。また、確定給付型から確定拠出型への移行もできます。
企業型の確定拠出年金は、転職先にも同様の制度があれば、それまでの年金資産を引き継ぐことができます。ただし、転職先に制度がない場合は、個人型の確定拠出年金として、国民年金基金連合会に年金資産を移管する必要があります。退職から半年以内に移管手続をしないと、運用を放棄したとみなされ、運用で得た利益を受け取ることができなくなりますので、注意が必要です。
医師が身近になる!? 健康相談サイト
◆深刻な医師不足・病院不足
地方や過疎化の進む地域を中心に、医師不足や病院不足が深刻化しています。そんな中、インターネットや携帯端末を利用して、医師が医療や健康に関する様々な疑問に答えてくれる、全国保険医団体連合会(保団連)による「健康相談サイト」が4月から開設されました。地域に関係なくいつでも気軽に医師に相談できるこのサイトが、今注目されています。
保団連とは、1969年に結成された医師・歯科医師の団体で、その会員数は10万人以上(2008年5月1日現在)にのぼります。
◆現役医師が答える健康相談
この健康相談サイトでは、無料の会員登録を行った利用者が健康上の悩みをサイトに送って医師に相談できます。また、質問者と医師が承諾した内容は、一般にも公開されます。サイトには「内科」「外科」「小児科」「産婦人科」「歯科」などの16の診療科と「医療制度」「その他」を合わせた、18項目の検索ボタンが設定されており、この検索ボタンの選択をするかキーワードの入力を行えば、該当分野の過去の質問内容と回答(Q&A)について自由に閲覧できる仕組みになっています。
閲覧できるQ&Aの内容がかなり豊富なうえ、質問にはそれぞれの専門分野の医師が答えてくれるので、安心して利用できます。
◆上手なサイトの活用を
このサイトは、保団連が、従来あった相談サイト「バーチャルドクター」をリニューアルし、4月から開設したものです。 保団連は、このサイトの開設趣旨について、「保健医療の枠組みの中でインフォームド・コンセントを推進していきたい」という思いからスタートしたとしています。サイト内で医療や健康に関する助言を行い、利用者が医療や健康に関する情報を得ることによって、医師・患者双方のコミュニケーションが高まり、インフォームド・コンセントの定着の一助となればとの思いから始まったものです。
もちろん、このサイトの助言のみを頼りに、医師の診察を受けることなく自己判断してしまうべきではありませんが、気軽にいつでも医師に相談できるというメリットは計り知れないものがあります。「健康上の悩みはあるが、病院に行くほどではない」、「近くに病院が少なく気軽に行きにくい」といった場合や、「医師の治療や診察を受けているが、病状や治療方法について尋ねにくいことがある」といった場合に、有効に活用できそうです。
最近の年金関係(納付率・年金記録問題等)の動向
◆国民年金納付率がさらに低下
社会保険庁は、2007年度における国民年金保険料の納付率が約64%となり、前年度の約66%を下回って2年連続低下となるとする見通しを明らかにしました。同庁では、近年、未納者対策としての強制徴収などに力を入れていますが、なかなか効果が現れていません。年金記録問題を背景に、制度自体への不信感が増しており、納付しない人が増えていると思われます。
低所得者に対する保険料の全額免除・一部免除の徹底などの対策を進めていった場合、納付率が「最大で24.8ポイント上昇する」とする試算結果を政府は発表していますが、納付率の上昇は現状ではなかなか難しいようです。
◆「ねんきん特別便」回答者は約半分
また、社会保険庁は、年金記録に漏れがある可能性が高い約1,030万人に3月末までに送付した「ねんきん特別便」への回答者数が、4月28日現在で約510万人であると発表しました。これは、全体の49.5%に相当します。
510万人の内訳は、年金受給者218万人(回答率73%)、現役加入者292万人(回答率40%)となっており、特別便が届いてもほったらかしにしている人が多いという実態が明らかになっています。
今月(6月23日)からは、現役の会社員などにも特別便の送付が始まる予定です。同庁の調査によれば、全体の55.7%に相当する約2,200万通は企業を経由して従業員に配布されるようです。大企業を中心に全事業所のうちの22.3%が配布に協力するとしていますが、中小企業では、事務負担から協力要請を拒んだところも多いようです。こうした場合には、直接従業員本人の住所に特別便が郵送されることになっています。◆一度却下されても新証拠があれば再審査 総務省の「年金記録確認第三者委員会」では、一度給付を却下した案件についても、その後に新たな証拠が見つかった場合には再審査を行う方針を発表しました。再審査を導入するのは、1件当たりの審査に時間をかけられないためだそうです。
一度却下されてしまった方でも、あきらめずに証拠となるものを根気よく探してみると良いかもしれません。
中小企業でも義務化! 長時間労働者に対する医師の面接指導
◆4月からは中小企業でも義務化
「長時間労働者を対象とした医師による面接指導等の実施」については、平成18年に改正された労働安全衛生法で義務化されました(同法第66条の8)。過重労働による健康障害を防止し、労働者の安全と健康の確保を推進するためです。
この面接指導等の実施については、従業員が常時50人未満の事業場についてはこれまで2年間猶予されていましたが,今年の4月からは義務化されています。つまり、すべての事業場において長時間労働者に面接指導を実施し,医師の意見を聴いて措置を講じなければならなくなったのです。
◆どんなことを行わなければならないか
面接指導は「問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うこと」とされており、対象となるのは「時間外・休日労働時間が1カ月当たり100時間を超え,かつ,疲労の蓄積が認められる者」であって、会社に申出を行った労働者です(ただし,1カ月以内に面接指導を受けた労働者で医師が面接指導を受ける必要がないと認めた場合は除かれます)。
基本的には、会社が指定した医師が行う面接指導を受けることになりますが、労働者が希望する場合は、他の医師の行う面接指導を受けることもでき、その場合は結果を証明する書面を会社に提出する必要があります。 そして、会社はその結果を記録しておく必要があります。
また、会社は、医師の意見を聴いて、必要があると認められたときは、労働者の実情を考慮しながら、以下のような措置を講じなければなりません。この考え方は健康診断(安衛法第66条の5)と同様のものです。
・就業場所の変更
・作業の転換
・労働時間の短縮
・深夜業の回数の減少
・医師の意見の衛生委員会もしくは安全衛生委員会または労働時間等設定改善委員会への報告
◆その他の留意点
なお、(1)時間外・休日労働時間が1カ月あたり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者、(2)事業場において定めた基準に該当する(時間外・休日労働時間が1カ月45時間を超えた者は対象とすることが望ましい)者についても、努力義務としての面接指導の対象となります。面接指導の対象となる労働者以外の労働者であっても、予防的な意味から、会社は必要な措置を講ずることが重要とされています。
「後期高齢者医療制度」の見直しについて
◆廃止法案が参議院で可決
75歳以上を対象に4月から導入され何かと話題になっている「後期高齢者医療制度」ですが、民主、共産、社民、国民新の野党4党は「後期高齢者医療制度廃止法案」を参議院に提出し、6月上旬の本会議で賛成多数で可決され、衆議院に送られました。これに対し、与党は、衆議院で否決や廃案とはせずに継続審議とする方針を示しています。世論に配慮するためだといわれています。
◆政府・与党の見直し・改善策が決定
政府・与党は、後期高齢者医療制度の見直し策を決めました。主な見直しの内容は以下の通りです。
<保険料軽減措置の拡充>
被保険者全員が年金収入年80万円以下の世帯については、来年度からは均等割部分の9割(今年度は8割5分)が軽減されます。
また、年金収入が153万円から210万円については、来年度からは保険料の所得比例部分を5割程度軽減するとしています。
<年金からの保険料天引きの一部見直し>
国民健康保険料を滞納せずに確実に納付してきた人については、本人口座からの引き落としが認められます。
また、年金収入が年180万円未満の人については、世帯主や配偶者らが肩代わりして口座引き落としを選択できるようになります。
天引きの見直しの実施時期については、早くても今年の10月以降のようです。
◆財源は不明確
上記の見直し・改善策は正式に決定されたものですが、今年度560億円、来年度以降360億円ともいわれる財源については、不明確との指摘があります。
また、先送りされた事項(保険料の軽減を判定する年収基準、年金天引きを免除する要件など)もあり、今後の動向が注目されるところです。
非正社員を正社員に転換させた場合に支給される助成金
◆改正パート労働法と正社員への転換
今年4月1日から施行されている改正パート労働法では、パート労働者の通常の労働者(正社員)への転換を推進するための措置を講ずるよう、事業主に義務付けています。最近では、製造業、飲食店、宿泊業、サービス業などでパート労働者を正社員へ転換させる企業も増えています。
改正法の施行を機に、非正社員を正社員化する動きはますます広がっていきそうですが、この改正にあわせて新たな助成金が創設されています。
◆非正社員の正社員化で助成金
厚生労働省は、「中小企業雇用安定化奨励金制度」を創設しました。
中小企業の事業主が、パート労働者や契約社員などの契約労働者(非正規社員)を新たに正社員として転換させる制度を就業規則などに定めて、実際に正社員に転換させた場合に、一定の金額が奨励金として支給されるものです。
◆支給額の2つのパターン <転換制度導入事業主>
新たに転換制度を導入し、かつ、この制度を利用して、直接雇用する有期契約労働者を1人以上正社員に転換させた場合に、一事業主について35万円が支給されます。 <転換促進事業主>
転換制度を導入した日から3年以内に、直接雇用する有期契約労働者を3人以上正社員に転換させた場合に、対象労働者1人について10万円が支給されます(10人を限度)。
◆支給対象となる事業主、要件
中小企業事業主で、雇用保険適用事業主であることが必要です。そして非正社員を正社員に転換させる制度を、新た(平成20年4月1日以降)に労働協約または就業規則に定め、かつ、1人以上正社員に転換させる必要があります。
なお、取扱機関は、都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)となっています。
畑中社労士事務所では顧問先の企業様を対象に 毎月事務所便りを発行しています。 内容は法改正情報や人事労務に関する時事ニュース等を中心に会社を 経営する上で欠かせない情報をお伝えしています。 このページでは今までに発行した事務所便りの 概要をご紹介させて頂きます。
2008/06/27
2008/06/02
6月の事務所便り
新たに導入された「診療5分ルール」
◆4月からスタート
「3分診療」という言葉にあるように、医師の診察時間が短いことに不満を持つ患者さんは多いようです。こうした状況を変えようと、2008年の4月からいわゆる「診療5分ルール」がスタートしました。診療時間が5分を超えるかどうかにより、医療費が変わることになります。
◆診療所や中小病院が対象
手術や検査など、すべての医療行為には「診療報酬」という全国共通の価格がついています。この診療報酬は2年ごとに見直されますが、「5分ルール」は4月に行われた診療報酬改定に盛り込まれました。
対象となるのは、診療所や一般病床数が200床未満の中小病院です。2回目以降の受診(再診)の場合、従来は基本の再診料(病院600円、診療所710円)に外来管理加算(520円)を診療時間に関係なく上乗せできましたが、改定後は「診察時間が5分以上」という条件がつきました。例えば、会話がほとんどなく常用薬の処方箋を出すような「薬だけ診療」には加算がつかず、現役世代の患者なら、自己負担(3割)は約150円安くなります。
◆「5分」の算定方法は?
では、どうやって「5分」という時間を計るのでしょうか。厚生労働省は「丁寧な診察を求めることが狙いであり、ストップウォッチや砂時計などを使って厳密に計ることを求めているわけではない」と説明しています。
不正を防ぐため、医師には診察内容や所要時間をカルテに記載させます。1時間に12人以上の患者を診察したり、5分以上を要したりする診察内容だったかどうかがチェックの対象になります。また、今回の診療報酬改定では、精神科外来の再診にも時間制が導入されました。カウンセリングなどの精神療法が「5分未満」、「5分以上30分未満」、「30分以上」で医療費が変わるようになっています。
◆制度導入で何が変わるか?
「5分ルール」に関しては、「丁寧な診療が期待できる」という患者側の期待に対して、医師側からは、「時間要件を満たして診療時間内に診察を終えようとすれば、1日に診察する患者数を削減せざるを得なくなる」といった意見や、「患者数を減らせば経営が悪化するし、時間要件を満たしてすべての患者を診察しようとすれば診察時間を大幅に延ばさねばならなくなり、医師の疲弊や看護師の労働強化につながる」といった意見も出ています。
賛否両論の中でスタートした「5分ルール」。いずれにせよ、新しい医療のあり方に一石を投じることになりそうです。
「新型インフルエンザ」への対策
◆政府による対策は?
新型インフルエンザへの政府の対策づくりが急ピッチで進んでいます。海外からの流入を防ぐ水際対策や国民へのワクチン事前摂取計画等を公表し、4月下旬には対策を実行に移す改正法も成立しています。
◆行動計画と具体的な対策
政府は2005年に新型インフルエンザに備えた行動計画を策定しました。また、2007年3月には、その計画に基づくガイドラインも公表しています。
2005年以降の取組みの内容は以下の通りです。
1.都道府県における対策本部の設置、行動計画の策定
2.厚生労働省を中心とした関係府省庁による対策を迅速・確実に実施するためのガイドラインの策定 3.農林水産省による主要国際空港における鳥インフルエンザ発生国からの入国者に対する靴底消 毒の徹底
4.新型インフルエンザ・ワクチンの生産に関する緊急調査研究
5.タミフル等必要物資の備蓄・配付、研究者・医療関係者・動物衛生専門家の能力強化、インフルエンザ・ワクチン開発支援の国際協力の推進
◆なぜ急に対策が進んだのか?
インフルエンザ流行の危機は、急に差し迫ったわけではありません。鳥インフルエンザウイルス「H5N1型」の人への感染も2006年がピークでした。ではなぜ、政府の対策が一気に進んだのでしょうか。
「国家の安全保障の問題である」という認識を欠き、欧米よりも鈍い政府の反応にしびれを切らした専門家らが、様々な手法で問題提起し、今年になってやっと政府の動きが活発になった感があります。
◆これからの課題は?
今後の課題としては、水際対策で流入を遅らせることはできても、被害を免れることは難しいことが挙げられます。「H5N1型」の鳥インフルエンザの流行が、インドネシアやベトナム、中国などに集中しているため、大流行が起きれば、先進国では日本が欧米より先に巻き込まれる可能性は高いです。ワクチンの事前摂取もどれだけ効果があるのか未知数です。
流行時に医師やベッド、人工呼吸器などをどのように確保するのか、また、備蓄量に限りのあるワクチンや抗ウイルス薬をどのような順番で投与していくのか、具体策の策定が急がれます。
注目を集める「キャリア形成促進助成金」
◆4月から制度改正
キャリア形成促進助成金制度とは、企業内における労働者のキャリア形成の効果的な促進のため、その雇用する労働者を対象として、目標が明確化された職業訓練や職業能力評価の実施、またキャリア・コンサルティングの機会の確保を行う事業主に対して助成される制度です。
2008年度4月よりこの制度が改正され、にわかに注目を集めています。
◆助成率の引上げと対象者の拡充
今回の改正の主な目的は、職業訓練等を実施するにあたり費用面の負担が大きい中小企業に対する支援の強化、および職業能力形成機会に恵まれない者を新たに有期雇用に雇い入れ有期実習型による組合せ訓練を実施する事業主への支援です。
まず、専門的な訓練への助成率が3分の1から2分の1(中小企業)へと引き上げられました。併せて、認定実習併用職業訓練への助成率も中小企業が3分の1から2分の1、大企業は4分の1から3分の1へと、それぞれ引き上げられました。
対象者も拡充され、短時間等労働者への訓練に対する助成および認定実習併用職業訓練に対する助成について、それぞれ、雇用保険被保険者だけでなくこれから雇用保険者になろうとする者もその範囲となりました。
また、新たな制度として、正社員になるには当該有期実習型訓練を受講することが適切であり、職業能力形成機会に恵まれなかった者として、キャリア・コンサルタントが認めた者を対象とした有期実習型訓練に対する助成も実施されることとなりました。
◆活用のための注意点
上記の助成金制度を活用するためには、様々な条件を満たしている必要があります。代表的なものとしては、「雇用保険の適用事業主であること」、「職業能力開発推進者を選任・届出していること」、「労働組合等の意見を聴いて計画を作成し労働者に周知していること」「過去2年間の労働保険料滞納や過去3年間の助成金の不正受給がないこと」等があります。
また、「職業能力開発休暇を与える場合は、その期間中に労働協約または就業規則に定めた賃金を支払っていること」や「事業主命令による職業訓練については、通常の賃金を支払っていること」も定められています。短時間労働者に対する訓練では「正社員への転換を行うこと」も条件となります。
訓練内容に関しては、あくまでも労働者個人のキャリア形成促進に役立つものが対象です。一般的なマナー研修や新入社員研修、またOJTで実施するもの等は対象になりませんので注意が必要です。
未成年者をアルバイトなどで雇う場合の注意点
◆雇用に関するトラブルに注意!
人材難と言われる昨今、高校生などの年少者や未成年者のアルバイト等は、貴重な労働力となっています。しかし、社会的経験の浅い年少者や未成年者の雇用はトラブルにつながりやすい危険性もあります。
採用の際や労働に関して、どのようなことに注意しなければならないのでしょうか。
◆親の許可が必要なのか?
ある会社からの質問で、「高校生のアルバイトを採用するにあたり、履歴書の親権者の署名捺印欄が空白ですが、何か問題があるでしょうか?」という相談がありました。
未成年者の雇用についてはまず、労働基準法第58条第1項 の「親権者又は後見人は、未成年者に代って労働契約を締結してはならない」といった部分が思い浮かびます。また、賃金についても、未成年者であっても独立して受け取ることができます。そう考えると、特に親権者の承認が必要とは考えにくいものです。
しかし、労働基準法第58条第2項では、「親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向ってこれを解除することができる」とあります。また。民法第5条第1項では「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」とあり、そして第2項では「前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる」とあります。つまり、親権者(法定代理人)の同意がない労働契約は、親権者によって取り消す(結果として、突然アルバイトを辞めてしまい会社に迷惑がかかる)ことがあり得るのです。したがって、履歴書の親権者の署名捺印は、トラブル防止のためにも記入してもらい、親権者の同意を得ておいたほうがよいでしょう。
◆年齢を証明する書面、身元保証人
また、年少者(18歳未満)の場合、年齢を証明する書面(住民票記載事項証明書など)を、事業場に備え付ける必要があります。また、万一の際のトラブル防止に備え、身元保証人をつける(できれば複数)ことも大切です。併せて身元保証人の連絡先も把握しておき、万一の際に連絡できる体制を作っておいたほうがよいでしょう。
◆その他の注意点
他に注意するポイントとしては、年少者はほとんどの変形労働時間制(例外あり)や午後10時以降の業務等も禁止されており、注意が必要です。そして、未成年者の場合、特に注意しなくてはならないのが、飲酒や喫煙です。飲酒や喫煙が発覚した際にどのような処置をとるかといったことは、労働契約時に書面および口頭でしっかり確認しておくことが望ましいでしょう。
違法派遣・偽装請負の一掃へ向けた取組み
◆「緊急違法派遣一掃プラン」がスタート
厚生労働省は、社会問題化している違法派遣や偽装請負を一掃するため、「緊急違法派遣一掃プラン」を4月からスタートさせました。新たに制定した「日雇派遣指針」や「労働者派遣法施行規則の改正」等をもとに、労働者派遣制度の周知と指導を強化していく方針です。
◆「労働者派遣法施行規則」のポイント
労働者派遣法施行規則の改正では、まず、派遣元が年1回労働局に提出する事業報告書の様式に、「日雇派遣労働者の数」、「従事した業務にかかる派遣料金」、「日雇派遣労働者の賃金」等を追加しました。また、派遣先責任者については、労働者派遣が1日を超えない場合でも選任を義務化し、派遣先管理台帳の作成も義務化しています。
その他にも、派遣先管理台帳の記載事項に、「派遣労働者が従事した事業所の名称及び所在地その他派遣就業した場所」を追加し、また、派遣元事業主への通知事項には、それらに加え「従事した業務の種類」も追加しました。
◆「日雇派遣指針」のポイント
日雇派遣指針は、日々または30日以内の期間を定めて雇用される者(30日以内の期間を定めた雇用契約を更新して通算30日を超えるような場合も対象となる)を対象とした、派遣元事業主および派遣先が講ずべき措置を定めたものです。
今回、厚生労働省から発表された指針は10項目ほどです。主なものとしては、まず「日雇派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置」として、事前の就業条件の確認や雇用契約の期間の長期化、契約解除の際に就業のあっせんや損害賠償等の適切な措置を図ること等が挙げられます。また、「労働者派遣契約に定める就業条件の確保」では、派遣先の巡回や就業状況の報告により、契約に定められた就業条件の確保が望まれています。
また、「労働・社会保険の適用の促進」「教育訓練機会の確保」「関係法令等の関係者への周知」「安全衛生に係る措置」などの、いずれも「派遣労働者や日雇労働者だから」という理由でおざなりにされがちだった分野についても、今回の指針では着目されています。「情報の公開」では、労働者派遣の実績、派遣料金の額、派遣労働者の賃金等の事業運営の状況に関する情報の公開が求められ、これにより、派遣労働者側も情報による選択をしやすくなると思われます。
◆今後の動きは?
今回の改正の多くは、日雇派遣に関するものですが、厚生労働省はこれを機会に期間制限業務や26業務の適正な運用等を含め、従来の違法派遣についても指導と監督を強化する方針を打ち出しています。
各自治体で広がる子供の医療費助成
◆少子化対策・子育て支援の一環
少子化対策の一環として、小中学生などに対して医療費の自己負担が軽くなるよう助成金を出し、子育てを支援する自治体が増えてきています。
助成の対象年齢や条件などの内容が自治体ごとに異なるうえ、制度の拡充が急速に進んでいるため、住んでいる自治体の助成メニューを把握しておく必要があります。
◆子育て支援対策として
東京都港区では、独自の助成制度に基づき、2005年4月から小中学生の入院費と通院費を無料にしています。健康保険に加入する区民であれば、外国人でも助成を受けられます。助成を受けるには区役所に「子ども医療証」の交付を申請し、医療機関で保険証とともに提示します。この医療費助成をはじめとする子育て支援対策の充実により、2004年度には0.78%と低かった合計特殊出生率は2006年度には0.97%まで持ち直しました。
このような子供の自己負担が軽くなるよう独自の助成制度を設ける自治体は増えています。名古屋市では、2008年1月から小学校高学年の入院費が無料となり、さらに8月からは中学生までその範囲が広がります。
◆各地域で内容に差
助成内容については、各自治体の財政状況やトップの方針によってまったく異なります。また、基本的な内容以外に、助成対象年齢が入院と通院で異なるケース(前述の名古屋市など)や、国が定める児童手当の支給要件に準拠した所得制限があったり、一部自己負担金が必要になったりする自治体もあります。例えば浜松市では、未就学児が対象の入院費への助成を4月から小中学生まで拡大しましたが、入院1日当たり500円の自己負担が求められています。また、窓口での支払いがない「現物給付」方式なのか、窓口で支払いを済ませたうえで自治体に申請して払い戻しを受ける「償還払い」方式なのかも、注意するポイントです。
住民が歓迎する医療費助成制度ですが、課題もあります。自己負担の無料化は安易な受診を助長し医療費の膨張を招くおそれがあります。また、助成を拡充し過ぎると、本当に医療が必要な子供の診療が後回しにされかねない危険性も含んでいます。
せっかく拡充された自治体の助成制度の恩恵を、多くの住民が長期的に公平に受けられるようにするには、住民側にも「軽症なら様子を見る」「家庭での健康作りを行う」などの姿勢が求められるといえるでしょう。
夫の年金を強制的に分割する「3号分割制度」
◆「離婚分割」とは異なる「3号分割」
平成19年4月から、夫婦が離婚した場合に厚生年金を分割する制度(「離婚分割制度」)が始まって大きな話題を呼びましたが、平成20年4月からは新たに「3号分割制度」がスタートしました。
「3号分割制度」は「夫が厚生年金保険の被保険者、妻が第3号被保険者」という夫婦が離婚した場合、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間について、妻からの請求により、夫の特定期間(特定被保険者が被保険者であった期間であり、かつ、その被扶養配偶者が当該特定被保険者の配偶者として第3号被保険者であった期間)中の被保険者期間の標準報酬を自動的に2分の1に分割するというものです。
この「3号分割」は、「離婚分割」のように夫婦間の合意は必要ないのが大きな特徴です(なお「離婚分割」の場合であっても、按分割合等についての合意は必要です)。
◆保険料は夫婦が共同して負担したもの
標準報酬を自動的に2分の1にするという考え方は、「第3号被保険者を配偶者とする第2号被保険者の保険料は夫婦が共同して負担したものである」という基本的認識を根拠にしています。
なお、平成20年4月以後の「離婚分割」についてですが、「3号分割」をまず行ったうえで「離婚分割」を行う必要があります。「3号分割」のみの請求も可能とされています。
また、複数回結婚・離婚等をした場合には、それらの特定期間を通算して3号分割の請求を行うことはできません。それぞれの離婚等ごとにその請求期限内に3号分割の請求を行わなければならないのです。
◆「離婚分割」の申立てはどのぐらいあったか?
「離婚分割」の申立ては、制度開始時から昨年末までの9カ月間で8,322件あったことが最高裁判所の集計で明らかになっています。1カ月平均800~1,000件で推移しており、離婚調停・訴訟に合わせて申し立てられたケースが7,479件あり、合意に至らずに審判などに持ち込まれたケースが843件あったそうです。
今後、果たして「3号分割」の申立てはどのぐらいあるのでしょうか? また、この制度のスタートにより離婚の件数にも影響を与えるのか、注目したいところです。
若手社員はどんなことを考えているのか?
◆「今の会社に定年まで!」
社会経済生産性本部が今年入社した新入社員を対象に行った意識調査(約2,700人が回答)で、「今の会社に一生勤めようと思っている」と回答した人が5割近く(47.1%)もいたそうです。この数字は1990年の調査開始以来、最も高い数字とのことです。
◆「3年以内に辞める!」
これに対し、カシオ計算機が25歳の会社員を対象にインターネット上で行った調査(596人が回答)で、3年以内に今いる会社を辞めようと思っている若手会社員が約4割いることが明らかになりました。「定年まで辞めない」と回答した人はわずか12%だったそうです。
調査の仕方や回答者数が異なるため、上記2つの調査結果を単純に比較することはできないかもしれませんが、新入社員の意識と数年働いた社員の意識とでは、かなり異なってくるということでしょうか。
あなたの会社の若手社員は、「今の会社に定年まで!」「3年以内に辞める!」どちらの考え方が多いでしょうか?
◆上司とのコミュニケーション
また、日本能率協会が新入社員を対象に行った意識調査(1,334人が回答)では、「上司との人間関係構築のために有効だと思うこと」(複数回答)という問いに対して、上位から「飲み会への参加」(89%)、「社員旅行」(70%)、「運動会」(50%)という結果が出たそうです。
社員旅行や運動会を行う企業は以前と比べると少なくなっていると思いますが、社内コミュニケーションを図るために、これらを復活させる動きも一部の企業であるようです。
問題噴出の「後期高齢者医療制度」
◆低所得なのに保険料増!?
後期高齢者医療制度(長寿医療制度)に関するマスコミ報道が跡を絶ちません。
厚生労働省は当初、「低所得者は保険料負担が軽くなる」と説明してきましたが、国民健康保険(国保)から移行した低所得の夫婦世帯の多くで、保険料負担が増えている可能性が高いことが明らかになりました。
これまで同省は、全国の市町村の8割が採用している算定方式を用いた試算により、同制度の保険料は国保のときよりも減ると説明していましたが、この算定方式が適用されるのは国保の加入者数で見ると5割に満たないことから、試算方法を見直すほか、市区町村ごとの実態調査を実施するようです。
◆1万2,000人に新保険証が届かない
保険証の問題も深刻です。厚生労働省は、新たな保険証が届いていない高齢者が5月1日の時点で約1万2,000人いることを発表しました。
転居の届出をしていないために行方がわからなくなっている人も多いそうで、同省では、未着の場合には引き続き古い保険証や免許証で医療が受けられるように医療機関に要請するとしていますが、すべての保険証が届くのはまだまだ先のことのようです。
◆障害者が事実上「強制加入」
寝たきりなどの理由から障害者と認定された人が後期高齢者医療制度に加入しないと医療費補助を打ち切る措置をとっている自治体があることもわかっています。
この措置をとっているのは10道県(北海道、青森、山形、茨城、栃木、富山、愛知、山口、徳島、福岡)で、任意とされているはずの障害者の加入が「事実上強制となっている」との批判が起きつつあるようです。
◆保険料は7年後に4割増!
厚生労働省は、本人負担の保険料が7年後には約4割も増えると試算しています。現役世代の負担が大きくならないよう、高齢者の負担割合を引き上げるのがその理由であり、2008年度は年額6万1,000円の保険料が2015年度には約39%増の8万5,000円になると見込まれています。
◆果たして制度の見直しはあるのか?
野党4党は、後期高齢者医療制度の廃止法案を共同で参議院に提出し、早期可決を目指す意向を示しています。また、与党である公明党でも制度の見直し(低所得者の保険料引下げ、保険料天引きの廃止など)に着手しているといわれています。
「年金記録問題」関連での新たな動き
◆年金記録訂正後の見込額を示す「仮計算書」を発行へ
先日、舛添厚生労働大臣は、「ねんきん特別便」が到着した受給者が社会保険事務所で年金記録を訂正した際に、訂正後はどのぐらい年金額が変動するかの試算結果を示した「仮計算書」を発行することを明らかにしました。
今月からこの「仮計算書」を発行するとしており、すでに訂正が終了している人にも発行されるそうです。
◆記録訂正で年金減額となる場合の対応
新たに年金記録が判明した場合、年金記録を訂正することにより「年金増額」となるのが一般的ですが、「年金減額」となる場合もあります。そのような場合、これまでは窓口の職員により、減額したりしなかったりと対応がまちまちだったようですが、「減額とするのは合理性に欠ける」との理由から、基準が統一されることになりました。
社会保険庁は、上記のように減額となる場合には「修正なし」として取り扱って受給額が減らないようにする方針を決定しました。同庁は、今月からこの措置を実施するよう全国の社会保険事務所に指示を出したそうです。
◆年金保険料の過払いを通知へ
また、社会保険庁は、年金を満額受給するのに必要な期間を超えて保険料を支払った人に対して、何らかの通知を行うことを検討しているようです。
今月から、過払いの申出をした人に対しては過払い分の保険料の返還を開始しましたが、申出を前提とした対応自体を改めることとしました。しかし、現行のシステムを改善するのには1年程度かかるため、実施されるのはまだ先になりそうです。
◆「ねんきん特別便」いまだに55万通が未着
上記のように、受給者や被保険者のための対策がいろいろと講じられています。
しかし、「宙に浮いた年金記録」の持ち主である可能性が非常に高い約1,030万人に送付された「ねんきん特別便」については、全体の約5.3%に相当する約55万通が未着となっているそうです。「年金記録問題」の収束にはまだまだ時間がかかりそうです。
今国会に提出されている主な労働関係改正法案
◆通常国会の会期は6月15日まで
ここでは、現在開会中の通常国会に提出されている、企業に影響を与えると思われる労働関係の改正法案についてみていきます。
◆中小企業にも障害者雇用納付金を義務化
障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)の一部を改正する法律案が提出されています。
主な内容は、現在は障害者の雇用者数が法定雇用率(1.8%)に満たない従業員「301人以上」企業に課されている納付金の支払義務を、順次「201人以上」、「101人以上」の企業へも拡大するという内容です。また、障害者雇用義務の対象となる労働者に、週の労働時間が20時間以上30時間未満の「短時間労働者」も追加されることとされています。
この法案が可決されれば、2009年4月1日の施行予定です。ただし、納付金支払義務が課される企業の拡大については、「201人以上」へは2010年7月、「101人以上」へは2015年7月とされています。
◆「行動計画」提出義務付け企業を拡大へ
「ワークライフバランス」の実現に向けて、次世代育成支援対策推進法(次世代法)の改正案も今国会に提出されています。
従業員の子育てを支援する「仕事と育児の両立支援に関する行動計画」(一般事業主行動計画)の策定・届出を義務付ける対象企業を、現行の従業員「301人以上」の企業から「101人以上」の企業に拡大するのが主な内容です。この改正により、約4万2,000社が新たに策定・届出義務を負うことになると推計されています。また、「行動計画」の公表・従業員への周知も義務付けられるようになります(策定・届出義務のある事業主のみ)。
この改正法案自体の施行予定日は2009年4月1日となっていますが、「行動計画」の策定・届出義務付け企業の拡大は、2011年4月1日の予定です。
◆労働基準法の改正案
月の時間外労働が一定の時間を超えた場合に、高い割増賃金率を適用することなどを内容とする労働基準法の一部改正案も国会で審議中です。主な内容は以下の通りです。
・月の時間外労働時間が45時間を超え80時間までの場合の割増賃金率については、2割5分以上の率で労使協定で定める率とする(努力義務)。
・月の時間外労働時間が80時間を超えた場合の割増賃金については、5割増とする。
2008/05/02
5月の事務所便り
処分決定前の自宅謹慎期間を無給扱いにできるか?
◆重要情報を他社へ漏洩!
ある会社の社員が会社の重要情報を他社へ漏らしてしまい、処分決定まで自宅謹慎するように会社から命じられました。1週間の謹慎後、減給処分となりましたが、会社は「謹慎中は無給」と言い渡しました。就業規則には謹慎に関する規定は特になく、社員は納得できない様子です。
◆規定がなくても謹慎処分に付すことは可能
社員の行為が就業規則で定めた懲戒事由に該当する場合、会社は処分内容を決定します。処分決定をする前の段階として「自宅謹慎」や「自宅待機」を命じることがありますが、就業規則にこれらの扱いに関する規定がない場合、そのような謹慎・待機命令を下せるのかという問題が生じます。
大企業に比べ中小企業では、就業規則に謹慎に関する扱いを明記していないところが多いかもしれません。結論から言うと、そのような規定がなくても、処分決定前の自宅謹慎を命じることは、会社の指揮命令権の一環である業務命令として可能です。
会社の業務命令として自宅謹慎を命じた場合、社員が「働きたい」と言っても会社はこれを拒否することができます。会社には社員の行為が懲戒事由に当たるのか調査する必要があり、職場秩序を維持するためであれば当該社員に自宅謹慎を命じることもやむを得ないと認められるためです。
◆「謹慎」の付与名目によって異なる賃金支払義務
処分決定前に自宅謹慎を命じる場合の扱いをめぐる裁判には、「懲戒処分ではなくても、会社側に職場秩序維持の理由などがある場合」に謹慎を命じることができるとしたものの、このような場合の自宅謹慎は当面の職場秩序維持の観点からとられる一種の職務命令であることから、使用者には謹慎期間中の賃金の支払義務があると判断したものがあります(日通名古屋製鉄作業事件・平成3年7月22日名古屋地裁判決)。
他方、謹慎命令が、懲戒規定に基づいた「処分」として出されたものならば、謹慎期間中は無給でもよいとされています。例えば、調査のために1週間休むように命じた後、懲戒処分として再び1週間休むように命じた場合、後者の期間は無給となります。
しかし、処分対象の社員に会社内で強い権限があれば、安易に証拠をもみ消すことができるおそれもあります。前述の名古屋地裁判決は、このような場合には「不正行為の再発、証拠隠滅のおそれなどの緊急かつ合理的な理由」があるとして、例外的に処分決定前の謹慎でも無給にできると判断しています。ただし、この要件は厳格で、該当するケースはかなり限られます。
◆この問題に関するポイントは?
ポイントは次の通りです。
1.規定がなくても、会社は業務命令として自宅謹慎を命じることができる。
2.自宅謹慎が懲戒処分として会社が命じたものである場合は、当該期間は無給でよい。
保護される企業の「営業秘密」の範囲が拡大する可能性
◆年内にも指針を抜本的に見直し
経済産業省は、法律で保護する企業の「営業秘密」の管理手法の目安を示す指針を抜本的に見直し、年内にも改定する方針です。この見直しにより、これまでよりも幅広い範囲の情報が営業秘密として認められる可能性があります。
◆現在の「営業秘密」事情
不正競争防止法では、従業員が営業秘密を故意に漏らした場合などに刑事罰を科すことができるほか、被害を受けた企業が損害賠償や差止請求をできるとしています。保護の対象になる営業秘密については、経済産業省の「営業秘密管理指針」で定義された、以下の3つの要件を満たす必要があるとされています。
(1)機密管理性:施錠保管するなど秘密として管理している
(2)有用性:事業に有用な技術・営業上の情報である
(3)非公知性:公然と知られていない
法律だけでは営業秘密として保護される情報の範囲がはっきりしないため、2003年に、営業秘密と認められるのに必要な企業の管理手法などを例示した指針がつくられました。この指針では、営業秘密の「望ましい管理水準」として、情報へのアクセス制限や特定の管理者による施錠、パソコン保管時のパスワード管理などが列挙されています。
指針に法的拘束力はありませんが、秘密漏洩事件に関する裁判では、企業が指針に基づいた管理をしていたかどうかが、営業秘密と認定されるための重要な判断材料となります。指針に沿った管理をしていなかったため、漏れた情報が営業秘密と認められなかった例も多くあります。
◆見直しの内容
今回の見直しでは、企業側からの「これまでの指針は一律に高い管理水準を求めすぎている」との批判を受け、業種や企業規模に応じた弾力的な基準に改めることが検討されています。
具体的には、商品の研究開発や試験に長い時間がかかり、開発に失敗するリスクも高く、情報を幅広く企業秘密として認めて保護しなければ研究開発意欲をそぐおそれのあるバイオテクノロジー・医療分野などでは管理水準が下げられます。
また、中小零細企業も緩和の対象となる見通しです。特に中小企業などから不満の大きかった、管理の際の施錠やパスワード設定、社内での独立した秘密管理部署の設置などについては、削除したり条件を付けたりするなどして管理水準を緩和することが検討されています。
こうした見直しにより、従来よりも幅広い範囲の企業情報が営業秘密として保護される効果が期待されていますが、一方で、他社の企業情報等について、これまで以上に慎重に取り扱う必要が出てくるかもしれません。
未払い賃金に関する従業員救済制度
◆勤務先が経営破たん
勤めていた会社が経営破たんしてしまい、「もう少し待ってもらえないか」と言われていた先月分の給与も支払われなくなってしまった。このままでは生活が立ち行かなくなってしまう…。このようなケースでは、従業員救済のため、労働者に対して未払い賃金の一部を立替払いする「未払い賃金の立替払い制度」がセーフティネットとして用意されています。
◆未払い賃金の立替払い制度とは
未払い賃金の立替払い制度では、「賃金の支払いの確保等に関する法律」に基づいて、労働者健康福祉機構(旧労働福祉事業団)が未払い賃金の一定範囲を立替払いします。機構は労働者が持つ賃金請求権を代わりに取得し、もし事業者に資産があれば、そこから立替払いした賃金を回収します。
立替払いの請求は、未払い賃金のある労働者が、破産等の証明者から証明書の交付を受け、機構に提出して行います。証明者は、会社の倒産が破産などの法的手続による倒産なのか事業停止などの事実上の倒産なのかにより異なります。法的手続による倒産の場合は裁判所が選任した管財人や清算人、事実上の倒産の場合は会社所在地を管轄する労働基準監督署長が証明者となります。
立替払いの金額は、退職前6カ月間に未払いになった給与や退職金の80%です。賞与や総額2万円未満の未払い賃金については対象とはなりません。また、退職時の年齢に応じて支払われる金額に上限が設けられており、30歳未満は88万円、30歳以上45歳未満は176万円、45歳以上は296万円とされています。
◆対象は中小企業、パートやアルバイトも対象者
この制度の特徴の1つとして、対象は中小企業に限定されるということが挙げられます。中小企業の範囲については、業種別に4つの区分に分けられていますが、一例を挙げると、一般的な産業であれば「資本金3億円以下または労働者300人以下」、サービス業であれば「資本金5,000万円以下または労働者100人以下」などとなっています。
また、この制度は正社員だけを対象者にしたものではありません。パートやアルバイト、外国人労働者等、労災保険の適用事業場に雇われて賃金を得ていた労働者であれば、雇用形態・国籍等を問わず、未払い賃金の立替払いの対象となります。
企業の外国人雇用をめぐる状況,制度改正の動向
◆昨年10月から改正雇用対策法が施行
改正雇用対策法が昨年10月1日から施行されていますが、この改正の目的の1つは、今後見込まれる労働力不足に対応するため、若者や外国人を積極的に活用していくということにあります。
上記改正法には、外国人労働者に関する雇用管理等に関する事項が盛り込まれており、外国人労働者の適正な雇用管理の推進のために、事業主に外国人の雇用状況等の届出義務を課し、国に外国人の雇用管理の改善等について努力義務を求めているのが大きなポイントです。
◆「在留カード」発行で外国人情報を一元管理へ
外国人に関しては、現在、「在留カード」(仮称)の発行が検討されています。
鳩山法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会は、現行の「外国人登録証」を廃止し、新たに「在留カード」を発行して外国人の情報を一元管理できるようにする在留管理制度の見直し案を提言しています。また、この見直し案には、在留期間の上限を現在の原則3年から5年に延長することも盛り込まれており、法務省は、来年の通常国会に関連法改正案を提出する方針とのことです。
これらの改正が行われた場合、企業における外国人雇用にも影響していくでしょうか。
◆外国人研修生・技能実習生の保護拡大へ
また、政府は、外国人研修・技能実習生の保護を拡大する方針を明らかにしています。
母国語で相談できる電話窓口を設置したり、受入れ先企業が倒産した場合であっても研修を続けられるよう支援したりするほか、労働環境を改善するための新たな在留資格の導入などが検討されています。
これらの施策については、法務省、厚生労働省、経済産業省などの関係省庁が連携して、2008年度から順次着手していくそうです。
◆ハードルが高い外国人留学生のフルタイム採用
独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査によれば、卒業後の外国人留学生を過去3年間にフルタイム社員として採用したことのある企業の割合は9.6%だったそうです。従業員300人以上の企業では36.3%でしたが、中小企業ではこの割合が大きく下がります。
採用企業の理由は、上から順に「国籍に関係なく優秀な人材を確保」「職務上の外国語の必要性」「事業の国際化」となっています。
政府管掌健康保険が1,577億円の赤字を計上
◆なぜこれほどの赤字になった?
主に中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険(以下、「政管健保」という)の医療費収支が、2007年度決算で1,577億円程度の赤字を計上する見通しとなりました。5年ぶりの赤字転落となりますが、社会保険庁では、2008年度も1,700億円程度の赤字が見込まれるとしています。
4年連続で黒字となるなど収支状況を回復していましたが、それがなぜこれほどの赤字を計上することとなったのでしょうか。
◆医療費の増加で採算が悪化
2007年度の政管健保の医療費収支見通しは、支出が前年度より4,000億円程度多い7兆2,744億円、収入が7兆1,167億円で、1,577億円の赤字となる模様です。
政府は、慢性的・構造的な赤字体質を改善すべく、2003年度に医療費の患者負担の割合を2割から3割へと引き上げました。これにより収支状況は改善しましたが、わずか4年間で再び赤字体質に陥ることとなりました。
また、2008年度には、メタボリック症候群を予防する特定健診・特定保健指導の開始で、新たに700億円の負担が発生します。そのため、2008年度も赤字となることが確実とみられています。
こうした赤字の背景には、政管健保の採算の急速な悪化があります。高齢化で医療費が大きく膨らむ一方、賃金の伸び悩みなどで保険料収入は微増にとどまっており、再び構造的な赤字体質に陥りつつあるのです。今後、大企業の社員等に、保険料引上げなどの形で負担が付け回される懸念もあります。
◆一時的な対策でなく抜本的改革が必要
社会保険庁では、財政の安定運営を目的に積み立ててきた「事業運営安定資金」を取り崩して赤字を穴埋めしますが、この残高は2006年末時点で約5,000億円程度。現在と同程度の赤字が今後も続けば、2009年度にも底をつきます。
厚生労働省は、社会保障費の伸びを抑制する観点から、政管健保に対する国庫負担金を1,000億円程度削減し、これを大企業の社員が加入する健康保険組合と公務員が加入する共済組合に肩代わりさせる特例法を国会に提出しました。これは2008年度の特例措置ですが、赤字が続けば、2009年度以降もこの肩代わりが行われる可能性もあります。ただ、負担を肩代わりさせるような対策では、根本的な解決にはつながりません。
現在、社会保険庁が運営する政管健保は、2008年10月より、全国健康保険協会管掌の通称「協会けんぽ」となり、国から独立した新たな健康保険として発足します。組織の移行だけではなく、制度自体の抜本的改革も望まれるところです。
各業種に広がるパート・契約社員等の正社員化の動き
◆改正パート労働法が施行
非正規雇用労働者が働く人の3人に1人を占めるまでに拡大しているなか、4月1日から改正パート労働法が施行されました。同法では、パート労働者の通常の労働者(正社員)への転換を推進するための措置を講ずるように事業主に義務付けています。
厚生労働省が発表した「労働経済動向調査」(2月)の結果によれば、過去1年間に正社員以外から正社員に登用した実績のある事業所の割合は41%となっており、特に製造業、飲食店、宿泊業、サービス業などでその割合が高くなっています。今後の方針については、64%の企業が「正社員に登用していきたい」としています。
改正法の施行を機に、非正社員を正社員化する動きはますます広がっていきそうです。
◆パート・契約社員を正社員に
東京都に本社を持つ日用雑貨販売大手の株式会社ロフトでは、パート社員・契約社員のうち、今後、希望する者を正社員としていくそうです。同社が雇用しているスタッフは約3,300人で、そのうち正社員は約400人。1年契約の社員は280人、半年契約の社員は2,650人で、そのうちの2,350人が正社員になることを希望しているそうです。
なお、新規採用者については、6カ月間の見習い期間を経て、正社員か有期雇用かの選択を行います。
ちなみに、正社員化に伴う同社の総額人件費は、約1割程度増加する見込みだそうです。
◆製造大手では派遣社員を直接雇用などに切替え
また、派遣社員を多く抱えるキヤノン本体・グループ18社では、子会社を含めた工場などの製造現場で働く約1万2,000人の派遣社員の受入れを年内にも全面的に打ち切り、半数を直接雇用の期間社員、残りの半数を請負会社との契約に切り替えること発表しました。
同社は以前から『偽装請負』があるとして労働局などから指導を受けており、派遣契約への切替えをすすめていましたが、直接雇用と請負とに再編する方針を決めたようです。
建機製造トップのコマツでも、2009年3月末までに工場で働く派遣社員全員を期間社員に切り替える方針を明らかにしています。
フリーターの就職は依然として厳しい?
◆4年連続でフリーターが減少
2007年のフリーターの人数は、前年比6万人減の181万人となっており、ピークを迎えた2003年から4年連続で減少しています(総務省発表)。雇用環境の改善によるものとも言われていますが、25-34歳のいわゆる「年長フリーター」の人数は、前年と横ばいの92万人となっており、依然として状況は厳しいようです。
フリーターを積極的に採用したいと考えている企業はまだまだ多くはないようですが、フリーターを採用する場合、企業はどのようなことを重視しているのでしょうか。
◆採用時の面接では「熱意・意欲」などを重視
独立行政法人労働政策研究・研修機構による調査(「企業における若年層の募集・採用等に関する実態調査」)では、フリーターの正社員採用について、過去1年間にフリーターを正社員として採用した企業の担当者が採用する際の面接で最も重視したポイントは「熱意・意欲」であるという結果が出ており、以下、「コミュニケーション力」「忍耐力」と続いています。
また、既卒者(学校卒業後すぐに就職する者以外で35歳未満の者。勤務経験の有無は問わない)を募集した理由について、新規学卒者枠で募集した企業では「新卒者と変わらないから」、中途採用枠で募集した企業では「即戦力になるから」という理由が多く挙がっています。
しかし、フリーター経験を「マイナスに評価する」とした企業が約40%に上るなど、フリーターの就職は依然として厳しい状況であることも明らかになっています。
◆今年度から導入される「ジョブ・カード制度」で変化は?
政府は、フリーターなどの就職を支援するため、今年度から「ジョブ・カード制度」を導入する方針です。職業訓練を受講した者にハローワークから職歴や職業訓練の受講歴を記載した「職業能力証明書」が発行されるもので、就職活動に活用してもらうのがねらいだそうです。
同制度は、企業が一定期間、フリーターなどを雇用しながら職業訓練を実施し、訓練実績や資格を記載した証明書を公的機関が発行する仕組みですが、職業訓練を行う企業には助成金や税制優遇などの経済支援が検討されています。
政府は2008年度からの5年間で100万人程度の同制度の利用を目指していますが、制度導入によりフリーターの就職状況は改善されていくのでしょうか。
『年金記録問題』『ねんきん特別便』をめぐる状況
◆全受給者・加入者9,500万人に発送開始
4月2日から、記録漏れの可能性が高い人以外の全受給者・加入者計9,500万人に向けて「ねんきん特別便」の発送が始まりました。6月以降には事業所経由での送付も予定されています。社会保険庁でも、社会保険事務所における休日の相談日を増やすなどして、相談体制を強化する方針を明らかにしています。
◆民主党が「ヒント付き特別便」の独自法案提出へ
しかし、社会保険庁の発表によれば、これまでに「特別便」を送付した受給者の約4割に相当する約90万人が未回答であり、回答した約141万人のうち約103万人は「訂正なし」と答えていますが、実際には記録漏れの事例が相当数あるそうです(3月18日現在)。「特別便」を受け取っても、「具体的な情報が載っていないのでわかりにくい」「昔のことで思い出せない」という人が多いようです。
民主党では、「特別便」が届いても記録漏れに気付かないとみられる人(3月末までに特別便が届いた記録漏れの可能性が高い年金受給者・現役加入者のうち記録を訂正した人を除く)を対象に、記録漏れがあるとみられる記録やヒントを同封して「特別便」を再送する独自の法案(ねんきん特別便緊急支援法案)を今国会に提出する方針を示しています。
◆物証があれば社会保険事務所でも審査
またこれまで、自分の記録に誤り等があると思う人は、「年金記録確認第三者委員会」に申し出る必要がありましたが、家計簿や確定申告書のコピーなど、保険料を納付していた物的証拠があることで判断しやすい案件については、社会保険事務所に申し出て年金支給の是非を審査してもらえるようになりました。
審査が進まない「年金記録確認第三者委員会」の審査を省略して記録回復のペースを上げるのがねらいだそうです。
労災が認定された最近の事例から
◆保護者の要求でうつ病の保育士に労災認定
兵庫県の私立保育園で、園児の保護者から執拗なクレームを受けたことが原因でうつ病やストレス障害となった女性保育士2人が、西宮労働基準監督署に労災認定されていたことが明らかになりました。
保護者の父親は、担任を代えることなどを強く要求していました。保育園では謝罪したり話合いの機会を設けたりしていましたが、父親の要求はますますエスカレートしていったそうです。
これにより、担任の保育士3人のうち2人が休職し、うつ病やストレス障害と診断されました。2人は昨年4月に、西宮労基署に労災を申請して同年 11月に労災認定されました。認定された2人のうち1人は退職してしまったそうです。
◆過労が原因で自殺した外科医に労災認定
栃木県の病院に勤務していた男性外科医が自殺したのは過労が原因だったとして、鹿沼労働基準監督署がこの医師を労災認定していたことが明らかになりました。このケースでは、過重労働のほか転勤や医療ミスによるストレスが原因でうつ病を発症したと認定されています。
この医師は大学卒業後の2000年 12月から埼玉県内の公立病院に勤務し、2002年5月から栃木県内の病院に移ってからうつ病を発症して同年6月に自殺しました。前任地では月 80時間を超える時間外労働が恒常的に行われ、転勤後の2002年5月下旬には医療ミスを起こしたことに悩んでいたそうです。
代理人の弁護士は「激務が問題となっている外科医の過重労働が認められた意義は大きい。国は早急に勤務条件の改善に務めるべきだ。」と指摘しています。
◆重要情報を他社へ漏洩!
ある会社の社員が会社の重要情報を他社へ漏らしてしまい、処分決定まで自宅謹慎するように会社から命じられました。1週間の謹慎後、減給処分となりましたが、会社は「謹慎中は無給」と言い渡しました。就業規則には謹慎に関する規定は特になく、社員は納得できない様子です。
◆規定がなくても謹慎処分に付すことは可能
社員の行為が就業規則で定めた懲戒事由に該当する場合、会社は処分内容を決定します。処分決定をする前の段階として「自宅謹慎」や「自宅待機」を命じることがありますが、就業規則にこれらの扱いに関する規定がない場合、そのような謹慎・待機命令を下せるのかという問題が生じます。
大企業に比べ中小企業では、就業規則に謹慎に関する扱いを明記していないところが多いかもしれません。結論から言うと、そのような規定がなくても、処分決定前の自宅謹慎を命じることは、会社の指揮命令権の一環である業務命令として可能です。
会社の業務命令として自宅謹慎を命じた場合、社員が「働きたい」と言っても会社はこれを拒否することができます。会社には社員の行為が懲戒事由に当たるのか調査する必要があり、職場秩序を維持するためであれば当該社員に自宅謹慎を命じることもやむを得ないと認められるためです。
◆「謹慎」の付与名目によって異なる賃金支払義務
処分決定前に自宅謹慎を命じる場合の扱いをめぐる裁判には、「懲戒処分ではなくても、会社側に職場秩序維持の理由などがある場合」に謹慎を命じることができるとしたものの、このような場合の自宅謹慎は当面の職場秩序維持の観点からとられる一種の職務命令であることから、使用者には謹慎期間中の賃金の支払義務があると判断したものがあります(日通名古屋製鉄作業事件・平成3年7月22日名古屋地裁判決)。
他方、謹慎命令が、懲戒規定に基づいた「処分」として出されたものならば、謹慎期間中は無給でもよいとされています。例えば、調査のために1週間休むように命じた後、懲戒処分として再び1週間休むように命じた場合、後者の期間は無給となります。
しかし、処分対象の社員に会社内で強い権限があれば、安易に証拠をもみ消すことができるおそれもあります。前述の名古屋地裁判決は、このような場合には「不正行為の再発、証拠隠滅のおそれなどの緊急かつ合理的な理由」があるとして、例外的に処分決定前の謹慎でも無給にできると判断しています。ただし、この要件は厳格で、該当するケースはかなり限られます。
◆この問題に関するポイントは?
ポイントは次の通りです。
1.規定がなくても、会社は業務命令として自宅謹慎を命じることができる。
2.自宅謹慎が懲戒処分として会社が命じたものである場合は、当該期間は無給でよい。
保護される企業の「営業秘密」の範囲が拡大する可能性
◆年内にも指針を抜本的に見直し
経済産業省は、法律で保護する企業の「営業秘密」の管理手法の目安を示す指針を抜本的に見直し、年内にも改定する方針です。この見直しにより、これまでよりも幅広い範囲の情報が営業秘密として認められる可能性があります。
◆現在の「営業秘密」事情
不正競争防止法では、従業員が営業秘密を故意に漏らした場合などに刑事罰を科すことができるほか、被害を受けた企業が損害賠償や差止請求をできるとしています。保護の対象になる営業秘密については、経済産業省の「営業秘密管理指針」で定義された、以下の3つの要件を満たす必要があるとされています。
(1)機密管理性:施錠保管するなど秘密として管理している
(2)有用性:事業に有用な技術・営業上の情報である
(3)非公知性:公然と知られていない
法律だけでは営業秘密として保護される情報の範囲がはっきりしないため、2003年に、営業秘密と認められるのに必要な企業の管理手法などを例示した指針がつくられました。この指針では、営業秘密の「望ましい管理水準」として、情報へのアクセス制限や特定の管理者による施錠、パソコン保管時のパスワード管理などが列挙されています。
指針に法的拘束力はありませんが、秘密漏洩事件に関する裁判では、企業が指針に基づいた管理をしていたかどうかが、営業秘密と認定されるための重要な判断材料となります。指針に沿った管理をしていなかったため、漏れた情報が営業秘密と認められなかった例も多くあります。
◆見直しの内容
今回の見直しでは、企業側からの「これまでの指針は一律に高い管理水準を求めすぎている」との批判を受け、業種や企業規模に応じた弾力的な基準に改めることが検討されています。
具体的には、商品の研究開発や試験に長い時間がかかり、開発に失敗するリスクも高く、情報を幅広く企業秘密として認めて保護しなければ研究開発意欲をそぐおそれのあるバイオテクノロジー・医療分野などでは管理水準が下げられます。
また、中小零細企業も緩和の対象となる見通しです。特に中小企業などから不満の大きかった、管理の際の施錠やパスワード設定、社内での独立した秘密管理部署の設置などについては、削除したり条件を付けたりするなどして管理水準を緩和することが検討されています。
こうした見直しにより、従来よりも幅広い範囲の企業情報が営業秘密として保護される効果が期待されていますが、一方で、他社の企業情報等について、これまで以上に慎重に取り扱う必要が出てくるかもしれません。
未払い賃金に関する従業員救済制度
◆勤務先が経営破たん
勤めていた会社が経営破たんしてしまい、「もう少し待ってもらえないか」と言われていた先月分の給与も支払われなくなってしまった。このままでは生活が立ち行かなくなってしまう…。このようなケースでは、従業員救済のため、労働者に対して未払い賃金の一部を立替払いする「未払い賃金の立替払い制度」がセーフティネットとして用意されています。
◆未払い賃金の立替払い制度とは
未払い賃金の立替払い制度では、「賃金の支払いの確保等に関する法律」に基づいて、労働者健康福祉機構(旧労働福祉事業団)が未払い賃金の一定範囲を立替払いします。機構は労働者が持つ賃金請求権を代わりに取得し、もし事業者に資産があれば、そこから立替払いした賃金を回収します。
立替払いの請求は、未払い賃金のある労働者が、破産等の証明者から証明書の交付を受け、機構に提出して行います。証明者は、会社の倒産が破産などの法的手続による倒産なのか事業停止などの事実上の倒産なのかにより異なります。法的手続による倒産の場合は裁判所が選任した管財人や清算人、事実上の倒産の場合は会社所在地を管轄する労働基準監督署長が証明者となります。
立替払いの金額は、退職前6カ月間に未払いになった給与や退職金の80%です。賞与や総額2万円未満の未払い賃金については対象とはなりません。また、退職時の年齢に応じて支払われる金額に上限が設けられており、30歳未満は88万円、30歳以上45歳未満は176万円、45歳以上は296万円とされています。
◆対象は中小企業、パートやアルバイトも対象者
この制度の特徴の1つとして、対象は中小企業に限定されるということが挙げられます。中小企業の範囲については、業種別に4つの区分に分けられていますが、一例を挙げると、一般的な産業であれば「資本金3億円以下または労働者300人以下」、サービス業であれば「資本金5,000万円以下または労働者100人以下」などとなっています。
また、この制度は正社員だけを対象者にしたものではありません。パートやアルバイト、外国人労働者等、労災保険の適用事業場に雇われて賃金を得ていた労働者であれば、雇用形態・国籍等を問わず、未払い賃金の立替払いの対象となります。
企業の外国人雇用をめぐる状況,制度改正の動向
◆昨年10月から改正雇用対策法が施行
改正雇用対策法が昨年10月1日から施行されていますが、この改正の目的の1つは、今後見込まれる労働力不足に対応するため、若者や外国人を積極的に活用していくということにあります。
上記改正法には、外国人労働者に関する雇用管理等に関する事項が盛り込まれており、外国人労働者の適正な雇用管理の推進のために、事業主に外国人の雇用状況等の届出義務を課し、国に外国人の雇用管理の改善等について努力義務を求めているのが大きなポイントです。
◆「在留カード」発行で外国人情報を一元管理へ
外国人に関しては、現在、「在留カード」(仮称)の発行が検討されています。
鳩山法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会は、現行の「外国人登録証」を廃止し、新たに「在留カード」を発行して外国人の情報を一元管理できるようにする在留管理制度の見直し案を提言しています。また、この見直し案には、在留期間の上限を現在の原則3年から5年に延長することも盛り込まれており、法務省は、来年の通常国会に関連法改正案を提出する方針とのことです。
これらの改正が行われた場合、企業における外国人雇用にも影響していくでしょうか。
◆外国人研修生・技能実習生の保護拡大へ
また、政府は、外国人研修・技能実習生の保護を拡大する方針を明らかにしています。
母国語で相談できる電話窓口を設置したり、受入れ先企業が倒産した場合であっても研修を続けられるよう支援したりするほか、労働環境を改善するための新たな在留資格の導入などが検討されています。
これらの施策については、法務省、厚生労働省、経済産業省などの関係省庁が連携して、2008年度から順次着手していくそうです。
◆ハードルが高い外国人留学生のフルタイム採用
独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査によれば、卒業後の外国人留学生を過去3年間にフルタイム社員として採用したことのある企業の割合は9.6%だったそうです。従業員300人以上の企業では36.3%でしたが、中小企業ではこの割合が大きく下がります。
採用企業の理由は、上から順に「国籍に関係なく優秀な人材を確保」「職務上の外国語の必要性」「事業の国際化」となっています。
政府管掌健康保険が1,577億円の赤字を計上
◆なぜこれほどの赤字になった?
主に中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険(以下、「政管健保」という)の医療費収支が、2007年度決算で1,577億円程度の赤字を計上する見通しとなりました。5年ぶりの赤字転落となりますが、社会保険庁では、2008年度も1,700億円程度の赤字が見込まれるとしています。
4年連続で黒字となるなど収支状況を回復していましたが、それがなぜこれほどの赤字を計上することとなったのでしょうか。
◆医療費の増加で採算が悪化
2007年度の政管健保の医療費収支見通しは、支出が前年度より4,000億円程度多い7兆2,744億円、収入が7兆1,167億円で、1,577億円の赤字となる模様です。
政府は、慢性的・構造的な赤字体質を改善すべく、2003年度に医療費の患者負担の割合を2割から3割へと引き上げました。これにより収支状況は改善しましたが、わずか4年間で再び赤字体質に陥ることとなりました。
また、2008年度には、メタボリック症候群を予防する特定健診・特定保健指導の開始で、新たに700億円の負担が発生します。そのため、2008年度も赤字となることが確実とみられています。
こうした赤字の背景には、政管健保の採算の急速な悪化があります。高齢化で医療費が大きく膨らむ一方、賃金の伸び悩みなどで保険料収入は微増にとどまっており、再び構造的な赤字体質に陥りつつあるのです。今後、大企業の社員等に、保険料引上げなどの形で負担が付け回される懸念もあります。
◆一時的な対策でなく抜本的改革が必要
社会保険庁では、財政の安定運営を目的に積み立ててきた「事業運営安定資金」を取り崩して赤字を穴埋めしますが、この残高は2006年末時点で約5,000億円程度。現在と同程度の赤字が今後も続けば、2009年度にも底をつきます。
厚生労働省は、社会保障費の伸びを抑制する観点から、政管健保に対する国庫負担金を1,000億円程度削減し、これを大企業の社員が加入する健康保険組合と公務員が加入する共済組合に肩代わりさせる特例法を国会に提出しました。これは2008年度の特例措置ですが、赤字が続けば、2009年度以降もこの肩代わりが行われる可能性もあります。ただ、負担を肩代わりさせるような対策では、根本的な解決にはつながりません。
現在、社会保険庁が運営する政管健保は、2008年10月より、全国健康保険協会管掌の通称「協会けんぽ」となり、国から独立した新たな健康保険として発足します。組織の移行だけではなく、制度自体の抜本的改革も望まれるところです。
各業種に広がるパート・契約社員等の正社員化の動き
◆改正パート労働法が施行
非正規雇用労働者が働く人の3人に1人を占めるまでに拡大しているなか、4月1日から改正パート労働法が施行されました。同法では、パート労働者の通常の労働者(正社員)への転換を推進するための措置を講ずるように事業主に義務付けています。
厚生労働省が発表した「労働経済動向調査」(2月)の結果によれば、過去1年間に正社員以外から正社員に登用した実績のある事業所の割合は41%となっており、特に製造業、飲食店、宿泊業、サービス業などでその割合が高くなっています。今後の方針については、64%の企業が「正社員に登用していきたい」としています。
改正法の施行を機に、非正社員を正社員化する動きはますます広がっていきそうです。
◆パート・契約社員を正社員に
東京都に本社を持つ日用雑貨販売大手の株式会社ロフトでは、パート社員・契約社員のうち、今後、希望する者を正社員としていくそうです。同社が雇用しているスタッフは約3,300人で、そのうち正社員は約400人。1年契約の社員は280人、半年契約の社員は2,650人で、そのうちの2,350人が正社員になることを希望しているそうです。
なお、新規採用者については、6カ月間の見習い期間を経て、正社員か有期雇用かの選択を行います。
ちなみに、正社員化に伴う同社の総額人件費は、約1割程度増加する見込みだそうです。
◆製造大手では派遣社員を直接雇用などに切替え
また、派遣社員を多く抱えるキヤノン本体・グループ18社では、子会社を含めた工場などの製造現場で働く約1万2,000人の派遣社員の受入れを年内にも全面的に打ち切り、半数を直接雇用の期間社員、残りの半数を請負会社との契約に切り替えること発表しました。
同社は以前から『偽装請負』があるとして労働局などから指導を受けており、派遣契約への切替えをすすめていましたが、直接雇用と請負とに再編する方針を決めたようです。
建機製造トップのコマツでも、2009年3月末までに工場で働く派遣社員全員を期間社員に切り替える方針を明らかにしています。
フリーターの就職は依然として厳しい?
◆4年連続でフリーターが減少
2007年のフリーターの人数は、前年比6万人減の181万人となっており、ピークを迎えた2003年から4年連続で減少しています(総務省発表)。雇用環境の改善によるものとも言われていますが、25-34歳のいわゆる「年長フリーター」の人数は、前年と横ばいの92万人となっており、依然として状況は厳しいようです。
フリーターを積極的に採用したいと考えている企業はまだまだ多くはないようですが、フリーターを採用する場合、企業はどのようなことを重視しているのでしょうか。
◆採用時の面接では「熱意・意欲」などを重視
独立行政法人労働政策研究・研修機構による調査(「企業における若年層の募集・採用等に関する実態調査」)では、フリーターの正社員採用について、過去1年間にフリーターを正社員として採用した企業の担当者が採用する際の面接で最も重視したポイントは「熱意・意欲」であるという結果が出ており、以下、「コミュニケーション力」「忍耐力」と続いています。
また、既卒者(学校卒業後すぐに就職する者以外で35歳未満の者。勤務経験の有無は問わない)を募集した理由について、新規学卒者枠で募集した企業では「新卒者と変わらないから」、中途採用枠で募集した企業では「即戦力になるから」という理由が多く挙がっています。
しかし、フリーター経験を「マイナスに評価する」とした企業が約40%に上るなど、フリーターの就職は依然として厳しい状況であることも明らかになっています。
◆今年度から導入される「ジョブ・カード制度」で変化は?
政府は、フリーターなどの就職を支援するため、今年度から「ジョブ・カード制度」を導入する方針です。職業訓練を受講した者にハローワークから職歴や職業訓練の受講歴を記載した「職業能力証明書」が発行されるもので、就職活動に活用してもらうのがねらいだそうです。
同制度は、企業が一定期間、フリーターなどを雇用しながら職業訓練を実施し、訓練実績や資格を記載した証明書を公的機関が発行する仕組みですが、職業訓練を行う企業には助成金や税制優遇などの経済支援が検討されています。
政府は2008年度からの5年間で100万人程度の同制度の利用を目指していますが、制度導入によりフリーターの就職状況は改善されていくのでしょうか。
『年金記録問題』『ねんきん特別便』をめぐる状況
◆全受給者・加入者9,500万人に発送開始
4月2日から、記録漏れの可能性が高い人以外の全受給者・加入者計9,500万人に向けて「ねんきん特別便」の発送が始まりました。6月以降には事業所経由での送付も予定されています。社会保険庁でも、社会保険事務所における休日の相談日を増やすなどして、相談体制を強化する方針を明らかにしています。
◆民主党が「ヒント付き特別便」の独自法案提出へ
しかし、社会保険庁の発表によれば、これまでに「特別便」を送付した受給者の約4割に相当する約90万人が未回答であり、回答した約141万人のうち約103万人は「訂正なし」と答えていますが、実際には記録漏れの事例が相当数あるそうです(3月18日現在)。「特別便」を受け取っても、「具体的な情報が載っていないのでわかりにくい」「昔のことで思い出せない」という人が多いようです。
民主党では、「特別便」が届いても記録漏れに気付かないとみられる人(3月末までに特別便が届いた記録漏れの可能性が高い年金受給者・現役加入者のうち記録を訂正した人を除く)を対象に、記録漏れがあるとみられる記録やヒントを同封して「特別便」を再送する独自の法案(ねんきん特別便緊急支援法案)を今国会に提出する方針を示しています。
◆物証があれば社会保険事務所でも審査
またこれまで、自分の記録に誤り等があると思う人は、「年金記録確認第三者委員会」に申し出る必要がありましたが、家計簿や確定申告書のコピーなど、保険料を納付していた物的証拠があることで判断しやすい案件については、社会保険事務所に申し出て年金支給の是非を審査してもらえるようになりました。
審査が進まない「年金記録確認第三者委員会」の審査を省略して記録回復のペースを上げるのがねらいだそうです。
労災が認定された最近の事例から
◆保護者の要求でうつ病の保育士に労災認定
兵庫県の私立保育園で、園児の保護者から執拗なクレームを受けたことが原因でうつ病やストレス障害となった女性保育士2人が、西宮労働基準監督署に労災認定されていたことが明らかになりました。
保護者の父親は、担任を代えることなどを強く要求していました。保育園では謝罪したり話合いの機会を設けたりしていましたが、父親の要求はますますエスカレートしていったそうです。
これにより、担任の保育士3人のうち2人が休職し、うつ病やストレス障害と診断されました。2人は昨年4月に、西宮労基署に労災を申請して同年 11月に労災認定されました。認定された2人のうち1人は退職してしまったそうです。
◆過労が原因で自殺した外科医に労災認定
栃木県の病院に勤務していた男性外科医が自殺したのは過労が原因だったとして、鹿沼労働基準監督署がこの医師を労災認定していたことが明らかになりました。このケースでは、過重労働のほか転勤や医療ミスによるストレスが原因でうつ病を発症したと認定されています。
この医師は大学卒業後の2000年 12月から埼玉県内の公立病院に勤務し、2002年5月から栃木県内の病院に移ってからうつ病を発症して同年6月に自殺しました。前任地では月 80時間を超える時間外労働が恒常的に行われ、転勤後の2002年5月下旬には医療ミスを起こしたことに悩んでいたそうです。
代理人の弁護士は「激務が問題となっている外科医の過重労働が認められた意義は大きい。国は早急に勤務条件の改善に務めるべきだ。」と指摘しています。
2008/03/31
4月の事務所便り
異動の季節 業務引継ぎを円滑に進めるには?
すっかり春めいてきました。フレッシュな新入社員がやってくる時期であるとともに、異動の時期でもあります。部署を異動する人、担当替えとなる人は、後任者に業務を引き継ぐことになりますが、この引継ぎがうまくいかないと、社内だけではなく取引先などにも迷惑をかけるおそれがあります。引継ぎを円滑に進める極意はないものでしょうか?
◆上手に仕事内容を伝達する
引継ぎは、これまで携わってきた仕事内容や仕事の進め方を後任者に伝達することです。後任者が困らないように、上手に伝達することが求められます。後任者に伝えたいのは、まずは1週間などの一定時間軸でのおおまかな仕事の流れで、取引先との商談中によく出る話題や取引先が気にする点などの情報も重要です。
後任者に伝達する際のコツは、1度に伝えるのは話したいことの8割程度にとどめること。1度にすべてを話しても、伝わりにくかったり、後任者の理解が追いつかなかったりするためです。仕事を引き継いだ後、後任者から疑問や質問が寄せられたときに随時対応したほうが効率的です。
営業担当などの場合、資料の引継ぎや取引先の紹介などに十分な時間が割けないこともあるでしょう。短時間でおおまかなことしか伝達できない場合は、過去の付き合いや取引の経緯などを優先的に伝えることが大切です。
また、名刺なども含め、付き合いの中で得た情報は、後任者が仕事しやすいように提供するのが原則です。相手先の特徴、現在の仕事の進捗状況などについては、後任者だけでなく、社内の上司にもきちんと伝えます。上司が後任者のサポート役に回ることが多いからです。
◆業務のマニュアルやバイブルを作成する
会社組織には異動が付きものですが、仕事を引き継ぐ側も引き継がれる側も、本来の業務の傍ら、引継ぎ業務を十分にできるとは限りません。そこで、仕事のやり方を誰にでもすぐ伝えられるように、日頃から業務のマニュアルやバイブルを作っておくのが効率的です。これらには、普段の仕事の流れや相手先の特徴、必要とされる知識、業界の最新動向などをまとめておきます。
◆引継ぎ後にフォローを入れることも大切
業務を引き継いだ後、後任者が困ったときなどは、自分の新しい業務に支障が出ない範囲で後任者を手助けすることも必要です。例えば、担当を外れた後、かつての取引先と出会ったときなどにフォローを入れておくことは、後任者にとってありがたいものです。
なお、担当を外れた後に、取引先との付き合いが仕事を超えたものに発展することは問題ありませんが、そこでの付き合いで仕事に関係する話が出たら、後任者にきちんと伝えるなどの配慮が必要です。
障害年金の受給に立ちはだかる高い壁
「年金は老後のためだけではありません」。これは、国が若年層への公的年金加入を呼びかける際のうたい文句となっています。実際、ケガや病気で障害を負った人を対象とする障害年金は、現役世代でもお世話になる可能性のある年金です。
しかし、制度の認知度が低いためか、請求漏れが起こりやすく、請求後も受給の可否や金額をめぐって思わぬ壁にぶつかるケースも多いようです。
◆申請主義ゆえの問題点
18歳の時に交通事故により右足膝下を失い、30歳になってから障害年金の障害等級2級に該当することを知り、申請をした。
こんなケースを想定してみましょう。年金の時効は5年ですから、20~25歳までに受給できたはずの年金利益を取り戻すことはできません。逸失利益は、2級792,100円の5年分で、約400万円に達することになります。
公的年金は「申請主義」ですが、老齢年金では58歳には「年金加入記録のお知らせ」、年金が受け取れる年齢には「裁定請求書」が届くなど、保険者からの注意喚起があり、報道等によりその存在は広く認知されてきています。しかし、障害年金にはこのような仕組みもなく、制度の存在を知らない障害者が多いといわれています。
障害年金の対象自体はかなり幅広く、視力や聴力はもちろん、精神や肢体の障害、内臓疾患まで含まれます。また、腎不全で人工透析を受けている人やがん患者なども受給できる可能性があります。
公的福祉サービスを受ける際に必要な「身体障害者手帳」の等級とは、基準が異なることにも注意が必要です。対象自体が幅広いゆえに、請求漏れを起こしているケースも多いものと思われます。
◆あいまいな等級認定と医師の不慣れに問題も
公的年金の中でも、適切な書類を準備し、適宜申請するのが最も難しいのが障害年金だといわれています。
障害年金の場合、初診日の証明が重要なポイントになりますが、医師法上のカルテ保存期間は5年であるために、病院を転々とした人などは記録が廃棄されていて初診日の証明ができないことがあります。
また、等級認定は、視力と聴力以外は基準があいまいで、判断する人によってぶれやすいといえるほか、主治医が障害年金の請求に不慣れで認定の根拠となる診断書に重要事項の記入漏れなどのミスをしてしまっているケースも少なくありません。
これらのことを考えると、障害年金を正しく受給するうえで重要なポイントになってくるのは以下の点でしょう。
・診察券など、初診日の根拠となるものをきちんと保管すること
・申請者側が診断書の隅々まで目を通し、確認すること
・事前によく情報を集め、不本意な裁定を受けても簡単に受給をあきらめないこと
リース会計の基準の改正が企業に及ぼす影響は?
平成19年度の税制改正で、新しいリース取引に係る税務上の取扱いが規定されました。これにより、平成20年4月1日以降、リースに関する会計基準が変更になります。
この改正は、一般報道等ではあまり注目されていません。ところが、今後の企業経営に大きく影響する可能性があるようです。
◆リース会計基準改正が持つ意味
リース取引は、中途解約ができる「オペレーティング・リース取引」と、中途解約できない「ファイナンス・リース取引」に分類されます。さらに後者は、いずれ所有権が移転する「所有権移転ファイナンス・リース」と、移転しない「所有権移転外ファイナンス・リース」に分けられます。
どちらのファイナンス・リースも、固定資産を購入したときと同様に、貸借対照表にリース資産とリース債務を計上し、損益計算書では減価償却費と支払い利息相当額を費用として落とす、いわゆる売買処理が原則的な処理方法になります。
ところが、現行、所有権移転外ファイナンス・リースにおいては、原則の売買処理のほかに、例外処理として賃貸借処理が認められています。この例外処理は日本国内では非常に多く利用され、とても“例外”と呼べる状況ではないのです。この処理は、「投資家等から財務状況が見にくい」「違う会計基準を採用していることにより、財務諸表の比較がしにくい」「国際的には所有権移転外ファイナンス・リースについては売買処理を行っており、国際的な比較がしにくい」など、多くの問題点が指摘されていました。
そこで、今回の改正により、この例外処理が廃止され、ファイナンス・リースについては、一律、売買処理が適用されることになるのです。
◆改正後の影響と対応策
リース取引の中でも、所有権移転外ファイナンス・リースは、「設備投資時に多額の資金を必要としない」「事務処理が簡単」などの理由から、日本国内では多く利用されています。しかし、今回の改正を受け、今後は貸借対照表上にリース資産・リース債務が計上されるため、自己資本比率の低下などが起こります。
また、リースにするか、借入金で購入するかは、財務諸表上での違いはほとんどなくなり、購入資金を銀行から借りるかリース会社から借りるか、といっただけの差になってしまうともいえます。企業としては、設備投資を行う際、貸借対照表に及ぼす影響や資金繰り、その他のリスク等を考慮したうえで、購入にするのか、リースにするのかを検討していかなくてはならないでしょう。
今後は、毎年引き上げられる社会保険料や、度々引き上げられる雇用保険料等ばかりではなく、今回のリース会計基準改正のような税制面の細かい改正も念頭に置いておかなくてはなりません。そのうえでの総合的な資産管理が、先を読む企業経営には必要なのかもしれません。
“名ばかり管理職”問題-マクドナルド判決のその後
◆マクドナルド判決後の同社関連の動き
日本マクドナルドが直営店の店長を管理職とみなして残業代を支払っていないのは違法だとして、埼玉県内の男性店長(46歳)が未払い残業代など約1,350万円の支払いを求めていた訴訟において、1月下旬に東京地裁は「店長の職務内容から管理職とはいえない」として同社に約755万円の支払いを命じる判決を下し、新聞やテレビなどで大きく報道されました。
その後、マクドナルドの元店長3人が残業代の支払いを求めて東京地裁へ提訴することも明らかとなっており、さらには別の元店長数人も訴訟提起を検討しているとのことで、今後同様の動きが広がっていけば、約1,700人の店長を抱えている同社の経営に大きく影響を与えかねないと思われます。
◆他の業界でも制度見直しの動きが
他の業界でも、上記判決の影響を受けてか、様々な動きがみられました。
2月上旬に、コンビニエンスストア最大手のセブンイレブン・ジャパンは、管理職と位置付けている直営店の店長に対して3月から残業代を支払う方針を示しました。大手小売業や外食業で制度を見直したのは、マクドナルドに残業代の支払いを命じた東京地裁の判決後、初めてのことだそうです。
また、2月下旬には、東日本でレストランチェーン店を運営するカルラも、店長の職務内容を洗い直して管理職から外し、手当等を変更して残業代を支払うことを決定しました。これもマクドナルド判決を受けたものとみられており、同社以外にも追随する外食企業が出てくる可能性があるかもしれません。
◆まだまだ出てくる!?「名ばかり管理職」「偽装管理職」
労働者や労働組合の権利擁護活動を行っている日本労働弁護団(http://homepage1.nifty.com/rouben/)では、2月中旬に「名ばかり管理職」(十分な裁量や手当がない肩書きだけの管理職)に関する電話相談を初めて実施したところ、1日だけで130件以上の相談が寄せられたそうです。「管理職なのに部下がまったくいない」「高卒1年目ですぐに管理職にさせられた」「遅刻をすると減給されてしまう」「管理職候補だという理由だけで残業代が支払われない」などといった事例があったようです。
「名ばかり管理職」「偽装管理職」の問題はたいへん根が深く、まだまだ終わらないようです。
今年度から新設される助成金関連情報
◆非正社員の正社員化を支援する「中小企業雇用安定化奨励金」
厚生労働省は、中小企業によるパート社員・契約社員・派遣社員などの正社員化を支援するための助成制度を今年度から開始することを明らかにしました。非正社員は、今や働く人の3人に1人まで増加し、正社員との待遇格差が問題となっています。同省では、雇用の安定化を図りたいとしています。
この助成制度の名称は「中小企業雇用安定化奨励金」(仮称)です。4月の時点で従業員が原則300人以下の中小企業を対象としており、非正社員を正社員化する制度を就業規則に盛り込み、実際に正社員化すれば35万円が支給されるものです。さらに、正社員になった人が3人以上出た場合、10人を限度に1人につき10万円が支給されます。
また、同省では、非正社員の待遇改善に向けた指針の策定や、日雇い派遣の規制強化を含む労働者派遣法の改正も検討するとしています。
◆長時間労働の是正などを図る「職場意識改善助成金」
厚生労働省は、労働時間等の設定の改善(過重労働の是正、年次有給休暇の取得促進等)に向けた職場意識の改善に積極的に取り組む中小企業に対して、「職場意識改善助成金」を創設する方針を明らかにしました。
中小企業が、職場の意識改善を図るために「職場意識改善計画」(実施体制の整備、職場意識改善の措置、労働時間等の設定の改善のための措置を盛り込むことが必要。実施期間は2年間)を策定し、効果的に実施したと認められる場合に、総額で150万円支給されるものです。
なお、支給される中小企業は、以下のいずれかに該当するものです。
・資本金の額または出資の総額が3億円(小売業またはサービス業を主たる事業とする事業主については5,000万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主
・常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業またはサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主
相次いで明らかになった残業代不払いの事例
◆ミズノは18億円以上の不払いが発覚
残業代不払いの疑いで是正勧告を受けて社内調査に乗り出していたスポーツ用品大手のミズノは、従業員約2,000人に対する残業代の不払いが、過去2年間で合計18億6,000万円あったと3月初めに発表しました。
同社では「労働時間改善委員会」を設置して勤務時間を適正に把握する体制を整えるほか、不払い分の残業代を3月の給与振込み時に一括で支払うとしています。
◆近畿大学は1億円不払いで書類送検
近畿大学は、2007年1月から半年間にわたって事務職員の残業代不払い(総額約1億円)を続けていたとして、同大学と元人事部長が労働基準法違反容疑で大阪労働局に書類送検されました。
不払いは元部長の独断によるものだったとされていますが、同大学が2003年にも是正勧告を受けていることから刑事責任を問うべきだと判断され、法人にも罰則を科す両罰規定が適用されました。
◆いっこうになくならないサービス残業
厚生労働省の発表によると、2006年度に労働基準監督署からサービス残業があったとして是正指導を受けた企業数(その支払額が1企業当たり合計100万円以上となったもののみ)は1,679社で、対象労働者数は182,561人、支払われた残業代は総額で227億円1,485万円(企業平均1,353万円、労働者平均12万円)となっています。企業数は前年度比155社増で過去最高でした。
なお、1企業当たり1,000万円以上の支払いが行われた企業数は317企業(全体の18.9%)、対象労働者数は120,123人(全体の65.8%)、支払われた合計額は181億5,200万円(全体の79.9%)です。
是正指導が繰り返し行われているにもかかわらず、サービス残業はいっこうになくなっていないようです。
すっかり春めいてきました。フレッシュな新入社員がやってくる時期であるとともに、異動の時期でもあります。部署を異動する人、担当替えとなる人は、後任者に業務を引き継ぐことになりますが、この引継ぎがうまくいかないと、社内だけではなく取引先などにも迷惑をかけるおそれがあります。引継ぎを円滑に進める極意はないものでしょうか?
◆上手に仕事内容を伝達する
引継ぎは、これまで携わってきた仕事内容や仕事の進め方を後任者に伝達することです。後任者が困らないように、上手に伝達することが求められます。後任者に伝えたいのは、まずは1週間などの一定時間軸でのおおまかな仕事の流れで、取引先との商談中によく出る話題や取引先が気にする点などの情報も重要です。
後任者に伝達する際のコツは、1度に伝えるのは話したいことの8割程度にとどめること。1度にすべてを話しても、伝わりにくかったり、後任者の理解が追いつかなかったりするためです。仕事を引き継いだ後、後任者から疑問や質問が寄せられたときに随時対応したほうが効率的です。
営業担当などの場合、資料の引継ぎや取引先の紹介などに十分な時間が割けないこともあるでしょう。短時間でおおまかなことしか伝達できない場合は、過去の付き合いや取引の経緯などを優先的に伝えることが大切です。
また、名刺なども含め、付き合いの中で得た情報は、後任者が仕事しやすいように提供するのが原則です。相手先の特徴、現在の仕事の進捗状況などについては、後任者だけでなく、社内の上司にもきちんと伝えます。上司が後任者のサポート役に回ることが多いからです。
◆業務のマニュアルやバイブルを作成する
会社組織には異動が付きものですが、仕事を引き継ぐ側も引き継がれる側も、本来の業務の傍ら、引継ぎ業務を十分にできるとは限りません。そこで、仕事のやり方を誰にでもすぐ伝えられるように、日頃から業務のマニュアルやバイブルを作っておくのが効率的です。これらには、普段の仕事の流れや相手先の特徴、必要とされる知識、業界の最新動向などをまとめておきます。
◆引継ぎ後にフォローを入れることも大切
業務を引き継いだ後、後任者が困ったときなどは、自分の新しい業務に支障が出ない範囲で後任者を手助けすることも必要です。例えば、担当を外れた後、かつての取引先と出会ったときなどにフォローを入れておくことは、後任者にとってありがたいものです。
なお、担当を外れた後に、取引先との付き合いが仕事を超えたものに発展することは問題ありませんが、そこでの付き合いで仕事に関係する話が出たら、後任者にきちんと伝えるなどの配慮が必要です。
障害年金の受給に立ちはだかる高い壁
「年金は老後のためだけではありません」。これは、国が若年層への公的年金加入を呼びかける際のうたい文句となっています。実際、ケガや病気で障害を負った人を対象とする障害年金は、現役世代でもお世話になる可能性のある年金です。
しかし、制度の認知度が低いためか、請求漏れが起こりやすく、請求後も受給の可否や金額をめぐって思わぬ壁にぶつかるケースも多いようです。
◆申請主義ゆえの問題点
18歳の時に交通事故により右足膝下を失い、30歳になってから障害年金の障害等級2級に該当することを知り、申請をした。
こんなケースを想定してみましょう。年金の時効は5年ですから、20~25歳までに受給できたはずの年金利益を取り戻すことはできません。逸失利益は、2級792,100円の5年分で、約400万円に達することになります。
公的年金は「申請主義」ですが、老齢年金では58歳には「年金加入記録のお知らせ」、年金が受け取れる年齢には「裁定請求書」が届くなど、保険者からの注意喚起があり、報道等によりその存在は広く認知されてきています。しかし、障害年金にはこのような仕組みもなく、制度の存在を知らない障害者が多いといわれています。
障害年金の対象自体はかなり幅広く、視力や聴力はもちろん、精神や肢体の障害、内臓疾患まで含まれます。また、腎不全で人工透析を受けている人やがん患者なども受給できる可能性があります。
公的福祉サービスを受ける際に必要な「身体障害者手帳」の等級とは、基準が異なることにも注意が必要です。対象自体が幅広いゆえに、請求漏れを起こしているケースも多いものと思われます。
◆あいまいな等級認定と医師の不慣れに問題も
公的年金の中でも、適切な書類を準備し、適宜申請するのが最も難しいのが障害年金だといわれています。
障害年金の場合、初診日の証明が重要なポイントになりますが、医師法上のカルテ保存期間は5年であるために、病院を転々とした人などは記録が廃棄されていて初診日の証明ができないことがあります。
また、等級認定は、視力と聴力以外は基準があいまいで、判断する人によってぶれやすいといえるほか、主治医が障害年金の請求に不慣れで認定の根拠となる診断書に重要事項の記入漏れなどのミスをしてしまっているケースも少なくありません。
これらのことを考えると、障害年金を正しく受給するうえで重要なポイントになってくるのは以下の点でしょう。
・診察券など、初診日の根拠となるものをきちんと保管すること
・申請者側が診断書の隅々まで目を通し、確認すること
・事前によく情報を集め、不本意な裁定を受けても簡単に受給をあきらめないこと
リース会計の基準の改正が企業に及ぼす影響は?
平成19年度の税制改正で、新しいリース取引に係る税務上の取扱いが規定されました。これにより、平成20年4月1日以降、リースに関する会計基準が変更になります。
この改正は、一般報道等ではあまり注目されていません。ところが、今後の企業経営に大きく影響する可能性があるようです。
◆リース会計基準改正が持つ意味
リース取引は、中途解約ができる「オペレーティング・リース取引」と、中途解約できない「ファイナンス・リース取引」に分類されます。さらに後者は、いずれ所有権が移転する「所有権移転ファイナンス・リース」と、移転しない「所有権移転外ファイナンス・リース」に分けられます。
どちらのファイナンス・リースも、固定資産を購入したときと同様に、貸借対照表にリース資産とリース債務を計上し、損益計算書では減価償却費と支払い利息相当額を費用として落とす、いわゆる売買処理が原則的な処理方法になります。
ところが、現行、所有権移転外ファイナンス・リースにおいては、原則の売買処理のほかに、例外処理として賃貸借処理が認められています。この例外処理は日本国内では非常に多く利用され、とても“例外”と呼べる状況ではないのです。この処理は、「投資家等から財務状況が見にくい」「違う会計基準を採用していることにより、財務諸表の比較がしにくい」「国際的には所有権移転外ファイナンス・リースについては売買処理を行っており、国際的な比較がしにくい」など、多くの問題点が指摘されていました。
そこで、今回の改正により、この例外処理が廃止され、ファイナンス・リースについては、一律、売買処理が適用されることになるのです。
◆改正後の影響と対応策
リース取引の中でも、所有権移転外ファイナンス・リースは、「設備投資時に多額の資金を必要としない」「事務処理が簡単」などの理由から、日本国内では多く利用されています。しかし、今回の改正を受け、今後は貸借対照表上にリース資産・リース債務が計上されるため、自己資本比率の低下などが起こります。
また、リースにするか、借入金で購入するかは、財務諸表上での違いはほとんどなくなり、購入資金を銀行から借りるかリース会社から借りるか、といっただけの差になってしまうともいえます。企業としては、設備投資を行う際、貸借対照表に及ぼす影響や資金繰り、その他のリスク等を考慮したうえで、購入にするのか、リースにするのかを検討していかなくてはならないでしょう。
今後は、毎年引き上げられる社会保険料や、度々引き上げられる雇用保険料等ばかりではなく、今回のリース会計基準改正のような税制面の細かい改正も念頭に置いておかなくてはなりません。そのうえでの総合的な資産管理が、先を読む企業経営には必要なのかもしれません。
“名ばかり管理職”問題-マクドナルド判決のその後
◆マクドナルド判決後の同社関連の動き
日本マクドナルドが直営店の店長を管理職とみなして残業代を支払っていないのは違法だとして、埼玉県内の男性店長(46歳)が未払い残業代など約1,350万円の支払いを求めていた訴訟において、1月下旬に東京地裁は「店長の職務内容から管理職とはいえない」として同社に約755万円の支払いを命じる判決を下し、新聞やテレビなどで大きく報道されました。
その後、マクドナルドの元店長3人が残業代の支払いを求めて東京地裁へ提訴することも明らかとなっており、さらには別の元店長数人も訴訟提起を検討しているとのことで、今後同様の動きが広がっていけば、約1,700人の店長を抱えている同社の経営に大きく影響を与えかねないと思われます。
◆他の業界でも制度見直しの動きが
他の業界でも、上記判決の影響を受けてか、様々な動きがみられました。
2月上旬に、コンビニエンスストア最大手のセブンイレブン・ジャパンは、管理職と位置付けている直営店の店長に対して3月から残業代を支払う方針を示しました。大手小売業や外食業で制度を見直したのは、マクドナルドに残業代の支払いを命じた東京地裁の判決後、初めてのことだそうです。
また、2月下旬には、東日本でレストランチェーン店を運営するカルラも、店長の職務内容を洗い直して管理職から外し、手当等を変更して残業代を支払うことを決定しました。これもマクドナルド判決を受けたものとみられており、同社以外にも追随する外食企業が出てくる可能性があるかもしれません。
◆まだまだ出てくる!?「名ばかり管理職」「偽装管理職」
労働者や労働組合の権利擁護活動を行っている日本労働弁護団(http://homepage1.nifty.com/rouben/)では、2月中旬に「名ばかり管理職」(十分な裁量や手当がない肩書きだけの管理職)に関する電話相談を初めて実施したところ、1日だけで130件以上の相談が寄せられたそうです。「管理職なのに部下がまったくいない」「高卒1年目ですぐに管理職にさせられた」「遅刻をすると減給されてしまう」「管理職候補だという理由だけで残業代が支払われない」などといった事例があったようです。
「名ばかり管理職」「偽装管理職」の問題はたいへん根が深く、まだまだ終わらないようです。
今年度から新設される助成金関連情報
◆非正社員の正社員化を支援する「中小企業雇用安定化奨励金」
厚生労働省は、中小企業によるパート社員・契約社員・派遣社員などの正社員化を支援するための助成制度を今年度から開始することを明らかにしました。非正社員は、今や働く人の3人に1人まで増加し、正社員との待遇格差が問題となっています。同省では、雇用の安定化を図りたいとしています。
この助成制度の名称は「中小企業雇用安定化奨励金」(仮称)です。4月の時点で従業員が原則300人以下の中小企業を対象としており、非正社員を正社員化する制度を就業規則に盛り込み、実際に正社員化すれば35万円が支給されるものです。さらに、正社員になった人が3人以上出た場合、10人を限度に1人につき10万円が支給されます。
また、同省では、非正社員の待遇改善に向けた指針の策定や、日雇い派遣の規制強化を含む労働者派遣法の改正も検討するとしています。
◆長時間労働の是正などを図る「職場意識改善助成金」
厚生労働省は、労働時間等の設定の改善(過重労働の是正、年次有給休暇の取得促進等)に向けた職場意識の改善に積極的に取り組む中小企業に対して、「職場意識改善助成金」を創設する方針を明らかにしました。
中小企業が、職場の意識改善を図るために「職場意識改善計画」(実施体制の整備、職場意識改善の措置、労働時間等の設定の改善のための措置を盛り込むことが必要。実施期間は2年間)を策定し、効果的に実施したと認められる場合に、総額で150万円支給されるものです。
なお、支給される中小企業は、以下のいずれかに該当するものです。
・資本金の額または出資の総額が3億円(小売業またはサービス業を主たる事業とする事業主については5,000万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主
・常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業またはサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主
相次いで明らかになった残業代不払いの事例
◆ミズノは18億円以上の不払いが発覚
残業代不払いの疑いで是正勧告を受けて社内調査に乗り出していたスポーツ用品大手のミズノは、従業員約2,000人に対する残業代の不払いが、過去2年間で合計18億6,000万円あったと3月初めに発表しました。
同社では「労働時間改善委員会」を設置して勤務時間を適正に把握する体制を整えるほか、不払い分の残業代を3月の給与振込み時に一括で支払うとしています。
◆近畿大学は1億円不払いで書類送検
近畿大学は、2007年1月から半年間にわたって事務職員の残業代不払い(総額約1億円)を続けていたとして、同大学と元人事部長が労働基準法違反容疑で大阪労働局に書類送検されました。
不払いは元部長の独断によるものだったとされていますが、同大学が2003年にも是正勧告を受けていることから刑事責任を問うべきだと判断され、法人にも罰則を科す両罰規定が適用されました。
◆いっこうになくならないサービス残業
厚生労働省の発表によると、2006年度に労働基準監督署からサービス残業があったとして是正指導を受けた企業数(その支払額が1企業当たり合計100万円以上となったもののみ)は1,679社で、対象労働者数は182,561人、支払われた残業代は総額で227億円1,485万円(企業平均1,353万円、労働者平均12万円)となっています。企業数は前年度比155社増で過去最高でした。
なお、1企業当たり1,000万円以上の支払いが行われた企業数は317企業(全体の18.9%)、対象労働者数は120,123人(全体の65.8%)、支払われた合計額は181億5,200万円(全体の79.9%)です。
是正指導が繰り返し行われているにもかかわらず、サービス残業はいっこうになくなっていないようです。
2008/03/03
3月の事務所便り
◇ねんきん特別便 記録訂正わずか7%◇
誰のものかわからない、宙に浮いた年金記録。およそ5,000万件もある公的年金の記録漏れ問題の解明作業が、出足からつまずいています。年金記録の確認を促す「ねんきん特別便」を送り始めてから約2カ月がたちますが、持ち主が確認された記録は1割足らずです。全容解明の道筋がまったく見えてきません。
◆ 全面解決ほど遠く…
年金記録の統合作業はとても順調とはいえません。社会保険庁では昨年12月末までに約48万通のねんきん特別便を送付しましたが、記録訂正の申出があったのは2月初旬頃までで約3万6,000件。全体のわずか7%程度です。
ねんきん特別便は、まずは名寄せ作業の結果、基礎年金番号の記録と結びつく可能性のある記録が出てきた人を対象に送られました。この人たちは、「記録漏れ濃厚」と社会保険庁が見込んだ受給者で、記録が回復されれば受け取る年金額も増えるのですから、申出も多く寄せられるだろうと見込んでいたわけです。ところが、申出件数が予想外に少なかったことに加え、専用の電話相談も5万数千件程度にとどまっているなど、記録漏れ問題の全面解決にはほど遠い状態です。
また、保険料を納めた証拠がない人への年金給付を審査する、総務省の年金記録確認第三者委員会の作業も遅れ気味です。昨年末の時点で約3万5,000件の異議申立てがありましたが、何らかの結果が出たものは4%程度にとどまっています。慎重に審議を進めていることもあり、判定作業に時間がかかっているのです。
◆ 複雑な制度・申請主義が解決の壁に…
ねんきん特別便の予想外の低調ぶりについて、社会保険庁は「年末年始で出足が鈍かった」と分析していますが、果たして理由はそれだけでしょうか。
該当者の反応が鈍い背景には、年金制度の運営方法がわかりにくいという側面があります。
年金記録が正しいかどうかは、自ら確認する必要があります。記録を訂正する場合には、抜けている記録を修正するための証拠を添えて、社会保険事務所に修正手続を求める必要があります。年金制度の仕組みがわかりにくいため、理解できずに放置している高齢者が相当数いるとみられているのです。ねんきん特別便は受け取ったものの、記録統合をあきらめているケースもあります。
今なお、社会保険庁は年金の申立てについて「申請主義」を原則としていますが、このままの「待ちの姿勢」では全面解決はおぼつきません。当事者らしからぬ社会保険庁の体質には、批判が集まっています。
制度の運営や管理の体制を立て直さなければ、延々と同じ混乱を繰り返しかねません。再考が望まれるところです。
◇精神障害者の就労問題◇
15-64歳の精神障害者のうち、授産施設や企業などで働いている人は17.3%にとどまることが、厚生労働省の実態調査で明らかになりました。厚生労働省では、5年ごとに身体・知的障害者について就業状況を抽出調査していますが、今回初めて精神障害者も調査対象となったものです。
調査は、昨年7月1日時点で15-64歳の身体・知的・精神障害者計約21,300人を対象に実施、計約7,100人から回答を得ました。精神障害者は、うち約1,200人です。
◆ 就業実態調査結果の概要
全国の15-64歳の精神障害者は、35万1,000人と推計されますが、このうち、就業している者が6万1,000人(17.3%)となっています。就業状況を就業形態別にみると、常用雇用は18.8%、常用雇用以外の形態での雇用は59.7%です。
現在不就労の人のうち、62.3%が就労を希望し、うち50.7%が求職活動をしています。休職活動の内容をみると、「広告、ちらし等」が53.5%と最も多く、次いで「公共職業安定所に申込み」、「就業・生活支援センターに相談」、「知人、友人に相談」の割合が高くなっています。
◆ 精神障害者就労の課題
同調査では、身体障害者は全体の43%に当たる57万8,000人が、知的障害者は全体の53%に当たる18万7,000人が就労していることが明らかになっています。今回の調査により、精神障害者の就労割合は身体・知的障害者の就労割合を大幅に下回り、精神障害者がなかなか仕事につけない実態が浮き彫りとなりました。
ハローワークなどへの相談では、精神障害者の就労希望者は増えています。厚生労働省障害者雇用対策課では、働きたいのに働けない精神障害者が多いことから、「企業に奨励金を出すなど支援を強めたい」としています。
◇労働者派遣事業に対する文書指導◇
派遣業界の不祥事が急増しています。
今年1月、厚生労働省は日雇い派遣最大手の会社に対し、違法な二重派遣や港湾運送業務への派遣を行っていたとして、労働者派遣法に基づき事業停止命令を出しました。また、昨年8月には、日雇い派遣業界2位の会社も、港湾運送業務への派遣で事業停止処分を受けています。
◆ 文書指導件数62,081件 4年間で10倍に増加
厚生労働省によると、労働者派遣事業に関連して法令違反があるとして同省が文書で指導した件数は2006年度では62,081件にのぼります。2002年度の同件数は600件、単純に比較すると、4年間で10倍に増加していることになります。
文書指導件数が急増した背景には、労働者を派遣する事業所数の大幅な増加があります。2004年に製造業への派遣が解禁されたこともあり、2002年度には全国で19,000強だった派遣事業所数は、2006年度には50,000を超えています。
また、厚生労働省が派遣業界への監視を強めたことも文書指導件数の急増に影響しています。製造業などで「偽装請負」の問題が表面化したことを受け、同省では、指導監督方針として、派遣と請負の区分基準を周知し、偽装請負の解消等に努めていくことを明確にしています。
◆ 「二重派遣」問題
最近は、偽装請負の問題のほか、「二重派遣」問題も増えています。これは、労働者の派遣を受けた企業がその労働者をさらに別の企業に派遣するもので、労働者と企業の間の雇用・指揮関係があいまいになり、仲介料や手数料が増えて賃金が減る可能性があるため、労働者派遣法で禁じられているものです。
厚生労働省では、二重派遣の防止に向け、派遣先の企業に派遣労働者が働いた場所などを記録する管理台帳の作成を義務づける方針です。労働者派遣法の施行規則を改正し、4月からの実施を目指しています。
◇生活保護が年金の代わり!? 高齢無年金者問題◇
「無年金者」「低年金者」と呼ばれる人たちがいます。保険料未納等により受給要件を満たさないために年金をまったく受け取ることのできない人、加入期間が短い等の理由のために年金額が低い人のことです。
高齢期に低所得となり、年金や貯蓄では生活を賄えない人の最後の拠り所となるのが、生活保護です。2005年時点で生活保護を受けている65歳以上の高齢者のうち、50%以上が「無年金者」であるといわれています。これは、公的年金の役割を生活保護が事実上肩代わりしている実態を表しているといえるでしょう。
◆ 高齢無年金者の現状
生活保護を受けている無年金者は2005年時点で約29万4,000人、1998年度の14万4,000人から7年間で2倍以上に増えています。
低年金のため、年金と生活保護を合わせて受給している高齢者も増加しています。自営業者等と異なり、年金以外に収入を持たないような人は、基礎年金額のみでは生活は困難だからです。調査によると、こうした人の平均年金受給額は月4万6,000円で、生活保護を受けていない人の平均額11万円強の半分以下です。
保険料の納付率低下が問題となっていますが、これにより、将来の無年金者・低年金者の増加や、それに伴う生活保護受給者の増加を懸念する声もあります。現在、生活保護予算は増加の一途をたどる見通しで、2007年度の生活保護予算は2兆6,000億円、15年前の約2倍にふくらんでいます。
◆ 年金と生活保護の関係
年金額が生活するのに十分でない場合、預貯金がない、勤労が困難である、親類の支援がない、等の条件を満たせば、生活保護の受給対象となります。無年金者・低年金者の多くが、この条件を満たし、生活保護の受給対象となっているのが現実です。
現行の年金制度は、無年金・低年金の高齢者が生活保護に流れることで、「国民皆年金」の前提が崩れ始めています。また、将来の年金給付額の水準が生活保護よりも低い場合に納付意欲に影響を与えるおそれがあること、保険料を納めずに生活保護を受ける人に対する不公平感など、問題点も挙げられています。
無年金者・低年金者の発生を防ぐための一番の対策は、国民年金の保険料納付率向上のための対策をとることです。年金制度改革において、高齢者に対して一定額の所得を保障する制度を設けるといった案も提案されています。無年金者・低年金者の問題は、年金改革論議にも一石を投じることとなりそうです。
◇管理監督者の定義とは◇
大手ファーストフードチェーンの店長が未払い残業代の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は原告の訴えを認め、会社側に755万円の未払い残業代の支払いを命じました。チェーン店の店長を管理職として扱うべきか、それとも非管理職として扱うべきか、判決は、同種の企業各社に影響を与えそうです。
今回の訴訟は、世間的に関心も高く注目されていました。今、管理監督者の定義が再び問われ始めているといえます。
◆ 管理監督者の残業代訴訟
過去にも、このような訴訟は数多くありました。
代表的なものとしては、「レストラン・ビュッフェ事件」(昭和60年・大阪地裁判決)や「三栄珈琲事件」(平成元年・東京地裁判決)等が挙げられます。いずれの事件も、店長が管理監督者に該当するかどうかが争われましたが、店長がタイムカードなどで出退勤を管理されていたこと、経営方針など重要事項の決定に参画の余地がなかったことなどから、「管理監督者には該当しない」という判決が出ています。
新しいところでは、大手紳士服店店長の残業代請求訴訟で、会社側が600万円の解決金を支払ったケースもあります。
今回の訴訟では、「店長が管理職として経営者と一体的な立場にあり、出退勤の自由や賃金などで一般労働者に比べて優遇されているか否か」が争点になりました。判決は、(1)店長の権限が店舗内に限られる、(2)営業の必要上相当の長時間労働が必要となり勤務時間の自己決定権はない、(3)年収が管理職の待遇としては不十分、との理由から、「店長は権限や処遇からみても管理職とはいえない」としました。
◆ 管理監督者の明確な定義
厚生労働省の通達によると、管理監督者に当たるかは、(1)労務管理などで経営側と一体の立場にあるか、(2)賃金や勤務形態が優遇されているか等の、職務・職責・待遇を基準として判断されます。明確な線引きがしにくく、総合的な判断が必要になります。
名目的に就業規則や社内規程に定めるだけではなく、現実的に管理監督者といえるかどうか、大局的な立場に立った判断が必要とされているといえます。
◇勤務医減少に歯止めを! 2008年度診療報酬改定◇
小規模な公立病院を中心に、病院の医師(以下、「勤務医」)の確保が困難となってきています。勤務医不足により、病院の存続が危ぶまれるケースも増加傾向にあります。医師が安易に開業に走る例が増えているためです。その一因として、勤務医は救急や夜間の産科などの激務が多いわりに、一般的に収入が開業医より低いことが挙げられます。
勤務医の不足は、われわれの生活の安心に直結する問題です。勤務医と開業医の格差是正と、それによる勤務医不足解消を課題とした「2008年度診療報酬改定」について、その原案が明らかになりました。
◆ 勤務医の報酬引上げ
勤務医に関する報酬が総額1,500億円規模で引き上げられます。開業医から勤務医への所得移転を図り、給与面を改善することで、医師確保につなげようとの考えです。
まず、医科の診療報酬本体部分(医師の技術料などがこれに当たります)が0.42%引き上げられます。これにより、約1,100億円、報酬が上乗せされることになります。さらに、開業医向けの診療報酬から、約400億円程度が委譲されて、勤務医向けの財源に充てられます。
◆ 開業医の再診料引下げ
現在、同じ病気で2回目以降の診察を受ける場合にかかる再診料は、勤務医が570円(ベッド数200床未満)、開業医は710円です。患者としては、自己負担が少なくて済む病院にかかりたいところですから、勤務医のほうにかかる傾向が強まります。これが勤務医の過重労働につながっているとの批判がありました。
そこで議論の焦点となったのが、開業医の再診料の引下げです。再診料を同程度にすることで、これまで勤務医にかかっていた患者を分散させようという狙いです。
しかし、医師会の反発に考慮し、再診料は下げない中途半端な決着となりました。再診料引下げに代わり、軽度の治療に対する報酬廃止、外来管理加算の適正化、コンタクトレンズ検査料の引下げが提示され、合わせて800億円弱程度の財源が提示されています。
◆ 格差是正効果はどれほどあるか?
これらの対策により、300床の病院で年間5,000万円の収入増が見込まれます。
しかし、再診料こそが勤務医と開業医の不均衡の象徴ともいわれており、この差額をそのまま残していたのでは、「開業医の再診料に手を付けずに済む範囲で対策をまとめた」との批判が出る可能性もあります。想定した収入増が果たされなければ、今回の中途半端な決着に批判が集まるのは避けられません。
今回の改定が勤務医の減少対策となり得るか、さらなる議論が必要になるといえそうです。
◇メタボリック・シンドローム あなたは大丈夫?◇
肥満症、高血圧、高脂血症、糖尿病、……こうした生活習慣病は、それぞれが独立した病気ではなく、肥満(特に内臓に死亡が蓄積した「内臓脂肪型肥満」)が原因となって惹き起こされるものだということがわかってきました。内臓脂肪型肥満によってさまざまな病気が起きやすくなった状態を「メタボリック・シンドローム」といい、今では治療の対象として考えられるようになっています。
厚生労働省の平成17年国民健康・栄養調査によると、40-74歳の男性の2人に1人、同女性の5人に1人がメタボリック・シンドロームか、その予備軍であることが報告されています。
◆ メタボリック・シンドロームの診断基準
メタボリック・シンドロームを構成する因子の中でも重要視されているのは内臓脂肪の蓄積で、内臓脂肪の蓄積を必須項目とした診断基準が各国で整いつつあります。
内臓脂肪の蓄積は、具体的には、ウエスト径で判断されます。男性85㎝以上、女性90㎝以上であれば、内臓脂肪の蓄積が疑われます。そのほかに血圧・血糖・血中脂質の判定項目が定められており、2項目に該当した場合は、メタボリック・シンドロームと診断されます。
◆ 特定健康診査の開始
平成20年4月からは、生活習慣病対策の強化を医療費抑制の重要な柱に位置づけた医療制度改革関連法により、メタボリック・シンドロームに着目した新しい特定健康診査・保健指導が始まります。これは、毎年、健康診査によってメタボリック・シンドロームの該当者・予備軍などを抽出し、リスクの高いグループに対し、効果的・効率的な保健指導を行うものです。
◆ メタボリック・シンドロームの改善策
メタボリック・シンドロームには、生活習慣が密接に関係しています。生活習慣をちょっと見直すだけで、メタボリック・シンドロームを改善することができます。メタボリック・シンドロームと診断されたら、まずは生活習慣を振り返り改善するところから始めましょう。
たとえば、食事は満腹になるまで食べてはいませんか? 間食をよくとっていませんか? 濃い味付けが好き、緑黄色野菜をあまり食べない、という食生活ではありませんか?また、日頃から運動をあまりしていないのではないですか? アルコールやタバコなどの嗜好品をとりすぎてはいませんか?当てはまる項目が多い人は要注意です。まずは、腹八分目でやめる、階段を利用するようにするなど、簡単なところから改善していきましょう。
食事療法や運動療法を3~4カ月続けても改善がみられない場合は、医師と相談の上、薬物治療が導入されることもあります。 生き生きと働き続けるためにも、自分の体について、ちょっと考えてみませんか?
◇「失恋休暇」「バーゲン半休」…ユニークな福利厚生制度◇
少し難しい、お堅いことばかりが書いてあるというイメージを持ちがちな、「就業規則」。ここに会社のオリジナリティーを盛り込んでみると、従業員の働く意欲のアップに貢献できるかもしれません。
ユニークな休暇制度を採用しているのは、女性を対象にしたマーケティング会社「ヒメ&カンパニー」です。この会社の休暇制度は各種新聞・雑誌等でも多く取り上げられ、注目されていますから、ご存じの方も多いかもしれません。
◆ 失恋から気持ちを切り替えて仕事を 「失恋休暇制度」
ヒメ&カンパニーの就業規則第39条では、失恋のために業務に従事困難な未婚の社員が申し出たときは、年に1回、休暇を与えることが定められています。
この規則は、仕事が手につかなくて失敗するよりはましだ、との発想から、3年前に生まれました。年齢が上になればなるほど失恋時のダメージが大きくなるのが女性心というもの……失恋すると、25歳未満の女性は1日、30歳以上の女性であれば3日の有休を取得することができます。
◆ 良い物ゲットでモチベーションアップ 「バーゲン半休制度」
また、同社の就業規則第38条では、「バーゲン半休」なるものも定められています。その名の通り、バーゲンに行くという理由で半休が取得できるという制度で、良い物を手に入れてもらい、仕事へのモチベーションにつなげてもらおうという趣旨で設けられた規定です。
初日の早い時間に出かけて行って良い物を手に入れ、それを自慢するのがバーゲンの醍醐味です。会社を休んでバーゲンに行くのは気が引けるという人もいると思いますが、大手を振って会社を休むことができるこの制度は従業員にも好評で、取得率は非常に高いそうです。
◆ 福利厚生を企業のイメージアップに生かす
これらの制度は、同社の平舘美木社長の「女性が喜ぶものを追求する会社としては、ごく自然な」発想から生まれました。今では、「柔軟な発想をする会社」との評判につながり、より優秀な女性が従業員として集まるようになっています。
結果として、これらの条文は、「女性をターゲットとする」という社のスタンスを示す格好のメッセージとなったのです。
このようなユニークな福利厚生制度が、必ずしもいい結果を生み出すとは限りませんが、従業員のモチベーションアップ、企業イメージの向上に何らかの好影響が出るのであれば、参考にしてみる価値はありそうです。
◇物価の値上げは賃金値上げにつながるか?◇
株価の不安定な動きが続いています。株式市場の混乱を嫌った投機資金が商品市場へ流れ込み、原油価格や金の価格は史上最高の高値をつけました。原油や農産物の国際価格上昇は、日本国内の物価にも強い影響を与えています。
心配なのは、物価の上昇に対し、賃金の伸びが鈍い点です。今後、物価の値上げは賃金の値上げにつながっていくでしょうか。
◆ 物価上昇
原油の高騰、食品の値上げ、電気・ガスなどの値上げ……。原油のみならず、食品の大半も輸入に頼っている日本では、生活の必需品となっているすべてのものが値上げ傾向にあります。
例えば、平成19年12月25日付のレギュラーガソリン価格は過去最高値を記録し、1リットル当たり全国平均155円となりました。今後これを上回ることも懸念されています。
これらの値上げが、ますます家計を圧迫していくことが予想されます。値上げがどれだけ家計に影響を与えるかを試算したところによると、平均的な世帯で年間15,000円の支出増加が見込まれています。
◆ 賃金値上げは果たされるか
2008年の春闘では、こうした物価上昇を受け、労働組合はなんとか値上げによる家計負担増を軽減しようと、毎月の賃金額の改善要求を鮮明にしています。
企業側にも、賃上げの条件がそろいつつあります。賃金の高かった団塊世代の大量退職で、現役世代の賃金を上げるための資金は確保しやすくなりました。また、人材獲得競争で、新入社員の初任給を引き上げざるを得ないことから、すでに勤めている社員の給料も抑えにくくなっています。そのため、好業績企業では、賃上げ交渉に前向きに対応していく方針のようです。
とはいえ、日本経団連副会長の草刈隆郎経営労働政策委員長は、「賃金などの労働条件の決定は、個別労使で行うのが大原則」と強調、賃上げの広がりは限定的になるとの見通しを示しました。業績の良い企業は給料を上げ、そうでない企業は無理に賃上げすべきではないとの立場です。中小企業に関しては、「家計への配慮」の姿勢はトーンダウンしています。
◆ 暮らしやすい社会を目指して
収入が増えない中で生活必需品の値上げが続けば、消費が冷え込むことは目に見えています。低収入世帯では、賃金額が上がらないとなると、ますます生活が厳しい状況となっていくことが懸念されます。
中小企業の業況悪化には、原材料費の上昇を製品価格に転嫁しにくい状況があるようです。物価が緩やかに上昇し、中小企業も価格転嫁がしやすくなって業況が良くなり、従業員の賃金額も上がる。そんな状況を実現できるかが、これからの経済政策のかぎとなりそうです。
若年層の雇用状況について
◇若者の雇用情勢が改善されてきています。◇
2007年の完全失業率は3.9%となり、10年ぶりに3%台まで改善しました。これは、15-34歳の若年層の失業者が減ったことが大きな要因となっています。
◆ 完全失業者数、低水準に
2007年の若年者(15-34歳)の完全失業者数は、前年比10万人減の117万人で、5年連続で前年を下回りました。団塊の世代の退職で、人手不足感の強い企業が若者を中心に雇用を増やしているためです。これで、若者の完全失業者数はほぼ10年前の水準に戻りました。
◆ 雇用情勢
しかし、新規の求人数は伸び悩んでおり、雇用情勢の先行きは予断を許さない状態です。
昨年12月の新規求人数は前年同月比15.1%減と、大幅なマイナスとなりました。有効求人倍率は0.9倍、2か月連続で1倍を下回っています。厚生労働省が水増し求人の是正に乗り出したために求人が減少したためでもありますが、原油高を背景とした原材料コスト上昇で収益が圧迫され、企業が雇用意欲を減退させているとの指摘もあります。
また、若年無業者(ニート)は62万人と、前年比横ばいとなっています。
◇「社会的弱者」の就業支援を強化◇
厚生労働省では、「社会的弱者」と呼ばれる、障害者や母子家庭の母親等の就職を支援するための対策を強化します。
国は、こうした人たちに対し、手当や生活保護の支給などで経済的支援を行ってきました。しかし、高齢化で社会保障費は増える一方であり、支援の受け手が増えれば制度維持自体が困難になることが懸念され始めていました。今回の就業支援強化には、「社会的弱者」と呼ばれる人たちの経済的自立を後押しすることで、社会保障費を圧縮する狙いがあります。また、働く意欲と能力のある人が自立できれば、今後減ることが確実な労働力の確保にもつながると考えられています。
◆ 障害者の就業支援
厚生労働省は、障害者雇用促進法の改正案を今国会に提出する方針です。具体的には、(1)障害者の法定雇用率を遵守しないと罰金の対象となる企業の範囲を段階的に広げる、(2)障害者就業・生活支援センターを現在の135か所から2011年度までに400カ所に増設する、(3)社会福祉法人職員などが職場を訪問して障害者と起業に助言するジョブコーチの数を2011年度までに現在の3倍以上の5,000人に増やす、といった内容が盛り込まれることになります。
障害者雇用促進法では、従業員56人以上の企業の場合、従業員数の1.8%以上の障害者を雇用するよう義務づけています。現行法では、目標に達しない場合、従業員数301人以上の大企業には罰金が科されます。この対象範囲が、段階的に従業員数101人以上の中小企業にまで広げられることになります。現在、目標未達の場合に罰則対象となる企業数は約1万2,000社、うち約7,600社が実際に罰金を科されています。対象が改正案どおりに拡大されれば、現状の雇用率が維持された場合、新たに約1万7,000社が罰金を科されることになる見込みです。
◆ 母子家庭の母親の就業支援
母子家庭の母親の85%は仕事をしていますが、約半数はパート勤務です。世帯収入の平均も年200万円程度と低いため、正社員登用への足がかりが必要視されていました。
2008年度から、母子家庭の母親の就業形態をパートから正社員に切り替えた中小企業に、一時金として15万円が支給される制度が導入され、正社員登用への支援が始まります。また、収入のない職業訓練中に生活費を無利子で貸す制度が拡充され、就職後の返済期間が現行の10年から20年に延ばされます。
◆ 生活保護受給者の就業支援
福祉事務所やハローワークの担当者と連携して職業訓練などの計画を作り、就労を支援する事業を積極化していくとしています。
◇派遣社員 2008年の動向◇
4月の改正パートタイム労働法の施行、非正社員を正社員へ登用しようとする世の中の流れなどで、派遣社員のなり手が少なくなっているようです。そのため、派遣業界では売り手市場で人手不足が深刻化しています。
◆ 人材派遣大手の研修メニュー
派遣会社各社では、優秀な派遣スタッフの囲い込みに躍起になっています。各社とも、派遣社員にとってのメリットのアピールに余念がありません。教育・研修メニューを充実させ、派遣スタッフへの無料研修を拡充してきています。
例えば、パソナグループでは、自社が派遣している店頭販売員向けの研修プログラムを新設。販売キャリアセンターを開設し、店長経験者による無料講座、無料セミナーを実施しています。また、カラーコーディネート、歩き方等のセミナーや、お茶・お花等の講座も行っています。
また、テンプスタッフでは、登録者のためのCAD技術の講習会を開講。3日間のコースで、操作方法を習得するとしています。
◆ 派遣社員を取り巻く環境
日本人材派遣協会が全国の派遣社員を対象に行ったアンケート調査により、2007年の派遣社員の平均時給が1,417円であったことが明らかになりました。正社員の1日の労働時間=8時間に換算すると、1万1,336円となります。
厚生労働省がまとめた2006年度調査では、派遣社員の平均日給は1万571円でした。調査対象が異なることも考慮に入れなければなりませんが、最近の人手不足を受けて派遣社員の賃金が上昇しているのは間違いありません。派遣社員の賃金の上昇傾向は、2008年も続くと思われます。
日本人材派遣協会のアンケート調査によると、派遣で働いている人の93.4%が女性、平均年齢は34.5歳となっています。時給は1,200円から1,400円未満が最も多く、次いで1,400円から1,600円未満、1,600円から1,800円未満と続きます。もっとも、時給は都道府県によって開きがあります。たとえば、都道府県別では東京が最も高い時給となっており、平均時給は1,604円です。
◇人材不足は再雇用者にも恩恵?◇
定年退職者の再雇用制度。以前は再雇用者の仕事は補助的なものが多かったのですが、団塊の世代が退職期に入り人手不足や技能伝承の懸念が強まる中、有能なベテランを本格戦力として定着させて最大限に活用するために、給与や働き方を見直して企業内における中核業務に配置する動きが出てきました。
◆ 改正高年齢者雇用安定法
2006年に施行された改正高年齢者雇用安定法は、企業に社員の雇用期間を段階的に65歳まで引き上げるよう義務づけました。引上げの方法としては、再雇用を中心とした「継続雇用」のほか、「定年延長」、「定年廃止」の3つがあります。このうち、一般的にとられているのが、定年でいったん従業員を退職させた後、一定の能力があることなどを条件に再雇用するものです。厚生労働省が昨年6月に約8万2,000社を対象に行った調査では、改正法には「継続雇用で対応する」と答えた企業が86%を占めました。
ただし、その待遇は、再雇用では賃金が大幅に減額される上、年金の支給が減額されてしまうケースもあり、働き続けるメリットは小さいと考える退職者も多かったようです。
◆ 定年退職者再雇用の最近の動き
定年退職者の再雇用制度を導入した大手企業の間で、再雇用者の待遇を改善し、本格戦力として活用する動きが広がってきています。少子高齢化で労働力人口の大幅な減少が予想される中、有能な高齢者の雇用を促進する必要が出てきたためです。
たとえば、ある企業では、再雇用者の年収を最大で従来の2倍の1,000万円に引き上げています。また、1日5時間程度の短時間勤務を可能にする企業もあります。働きやすさを重視する人が退職後も同じ会社で勤められるような、柔軟な勤務体系を導入する動きも広がってきました。
こうした待遇改善の動きが広がれば、昨年初めて1,000万人を超えた60歳以上の就業者がさらに拡大しそうです。少子高齢化問題や、技術継承に課題が残る昨今、各企業が高度な技術を持った有能な人材を有効に活用していく方法を考えていく必要があるといえます。
誰のものかわからない、宙に浮いた年金記録。およそ5,000万件もある公的年金の記録漏れ問題の解明作業が、出足からつまずいています。年金記録の確認を促す「ねんきん特別便」を送り始めてから約2カ月がたちますが、持ち主が確認された記録は1割足らずです。全容解明の道筋がまったく見えてきません。
◆ 全面解決ほど遠く…
年金記録の統合作業はとても順調とはいえません。社会保険庁では昨年12月末までに約48万通のねんきん特別便を送付しましたが、記録訂正の申出があったのは2月初旬頃までで約3万6,000件。全体のわずか7%程度です。
ねんきん特別便は、まずは名寄せ作業の結果、基礎年金番号の記録と結びつく可能性のある記録が出てきた人を対象に送られました。この人たちは、「記録漏れ濃厚」と社会保険庁が見込んだ受給者で、記録が回復されれば受け取る年金額も増えるのですから、申出も多く寄せられるだろうと見込んでいたわけです。ところが、申出件数が予想外に少なかったことに加え、専用の電話相談も5万数千件程度にとどまっているなど、記録漏れ問題の全面解決にはほど遠い状態です。
また、保険料を納めた証拠がない人への年金給付を審査する、総務省の年金記録確認第三者委員会の作業も遅れ気味です。昨年末の時点で約3万5,000件の異議申立てがありましたが、何らかの結果が出たものは4%程度にとどまっています。慎重に審議を進めていることもあり、判定作業に時間がかかっているのです。
◆ 複雑な制度・申請主義が解決の壁に…
ねんきん特別便の予想外の低調ぶりについて、社会保険庁は「年末年始で出足が鈍かった」と分析していますが、果たして理由はそれだけでしょうか。
該当者の反応が鈍い背景には、年金制度の運営方法がわかりにくいという側面があります。
年金記録が正しいかどうかは、自ら確認する必要があります。記録を訂正する場合には、抜けている記録を修正するための証拠を添えて、社会保険事務所に修正手続を求める必要があります。年金制度の仕組みがわかりにくいため、理解できずに放置している高齢者が相当数いるとみられているのです。ねんきん特別便は受け取ったものの、記録統合をあきらめているケースもあります。
今なお、社会保険庁は年金の申立てについて「申請主義」を原則としていますが、このままの「待ちの姿勢」では全面解決はおぼつきません。当事者らしからぬ社会保険庁の体質には、批判が集まっています。
制度の運営や管理の体制を立て直さなければ、延々と同じ混乱を繰り返しかねません。再考が望まれるところです。
◇精神障害者の就労問題◇
15-64歳の精神障害者のうち、授産施設や企業などで働いている人は17.3%にとどまることが、厚生労働省の実態調査で明らかになりました。厚生労働省では、5年ごとに身体・知的障害者について就業状況を抽出調査していますが、今回初めて精神障害者も調査対象となったものです。
調査は、昨年7月1日時点で15-64歳の身体・知的・精神障害者計約21,300人を対象に実施、計約7,100人から回答を得ました。精神障害者は、うち約1,200人です。
◆ 就業実態調査結果の概要
全国の15-64歳の精神障害者は、35万1,000人と推計されますが、このうち、就業している者が6万1,000人(17.3%)となっています。就業状況を就業形態別にみると、常用雇用は18.8%、常用雇用以外の形態での雇用は59.7%です。
現在不就労の人のうち、62.3%が就労を希望し、うち50.7%が求職活動をしています。休職活動の内容をみると、「広告、ちらし等」が53.5%と最も多く、次いで「公共職業安定所に申込み」、「就業・生活支援センターに相談」、「知人、友人に相談」の割合が高くなっています。
◆ 精神障害者就労の課題
同調査では、身体障害者は全体の43%に当たる57万8,000人が、知的障害者は全体の53%に当たる18万7,000人が就労していることが明らかになっています。今回の調査により、精神障害者の就労割合は身体・知的障害者の就労割合を大幅に下回り、精神障害者がなかなか仕事につけない実態が浮き彫りとなりました。
ハローワークなどへの相談では、精神障害者の就労希望者は増えています。厚生労働省障害者雇用対策課では、働きたいのに働けない精神障害者が多いことから、「企業に奨励金を出すなど支援を強めたい」としています。
◇労働者派遣事業に対する文書指導◇
派遣業界の不祥事が急増しています。
今年1月、厚生労働省は日雇い派遣最大手の会社に対し、違法な二重派遣や港湾運送業務への派遣を行っていたとして、労働者派遣法に基づき事業停止命令を出しました。また、昨年8月には、日雇い派遣業界2位の会社も、港湾運送業務への派遣で事業停止処分を受けています。
◆ 文書指導件数62,081件 4年間で10倍に増加
厚生労働省によると、労働者派遣事業に関連して法令違反があるとして同省が文書で指導した件数は2006年度では62,081件にのぼります。2002年度の同件数は600件、単純に比較すると、4年間で10倍に増加していることになります。
文書指導件数が急増した背景には、労働者を派遣する事業所数の大幅な増加があります。2004年に製造業への派遣が解禁されたこともあり、2002年度には全国で19,000強だった派遣事業所数は、2006年度には50,000を超えています。
また、厚生労働省が派遣業界への監視を強めたことも文書指導件数の急増に影響しています。製造業などで「偽装請負」の問題が表面化したことを受け、同省では、指導監督方針として、派遣と請負の区分基準を周知し、偽装請負の解消等に努めていくことを明確にしています。
◆ 「二重派遣」問題
最近は、偽装請負の問題のほか、「二重派遣」問題も増えています。これは、労働者の派遣を受けた企業がその労働者をさらに別の企業に派遣するもので、労働者と企業の間の雇用・指揮関係があいまいになり、仲介料や手数料が増えて賃金が減る可能性があるため、労働者派遣法で禁じられているものです。
厚生労働省では、二重派遣の防止に向け、派遣先の企業に派遣労働者が働いた場所などを記録する管理台帳の作成を義務づける方針です。労働者派遣法の施行規則を改正し、4月からの実施を目指しています。
◇生活保護が年金の代わり!? 高齢無年金者問題◇
「無年金者」「低年金者」と呼ばれる人たちがいます。保険料未納等により受給要件を満たさないために年金をまったく受け取ることのできない人、加入期間が短い等の理由のために年金額が低い人のことです。
高齢期に低所得となり、年金や貯蓄では生活を賄えない人の最後の拠り所となるのが、生活保護です。2005年時点で生活保護を受けている65歳以上の高齢者のうち、50%以上が「無年金者」であるといわれています。これは、公的年金の役割を生活保護が事実上肩代わりしている実態を表しているといえるでしょう。
◆ 高齢無年金者の現状
生活保護を受けている無年金者は2005年時点で約29万4,000人、1998年度の14万4,000人から7年間で2倍以上に増えています。
低年金のため、年金と生活保護を合わせて受給している高齢者も増加しています。自営業者等と異なり、年金以外に収入を持たないような人は、基礎年金額のみでは生活は困難だからです。調査によると、こうした人の平均年金受給額は月4万6,000円で、生活保護を受けていない人の平均額11万円強の半分以下です。
保険料の納付率低下が問題となっていますが、これにより、将来の無年金者・低年金者の増加や、それに伴う生活保護受給者の増加を懸念する声もあります。現在、生活保護予算は増加の一途をたどる見通しで、2007年度の生活保護予算は2兆6,000億円、15年前の約2倍にふくらんでいます。
◆ 年金と生活保護の関係
年金額が生活するのに十分でない場合、預貯金がない、勤労が困難である、親類の支援がない、等の条件を満たせば、生活保護の受給対象となります。無年金者・低年金者の多くが、この条件を満たし、生活保護の受給対象となっているのが現実です。
現行の年金制度は、無年金・低年金の高齢者が生活保護に流れることで、「国民皆年金」の前提が崩れ始めています。また、将来の年金給付額の水準が生活保護よりも低い場合に納付意欲に影響を与えるおそれがあること、保険料を納めずに生活保護を受ける人に対する不公平感など、問題点も挙げられています。
無年金者・低年金者の発生を防ぐための一番の対策は、国民年金の保険料納付率向上のための対策をとることです。年金制度改革において、高齢者に対して一定額の所得を保障する制度を設けるといった案も提案されています。無年金者・低年金者の問題は、年金改革論議にも一石を投じることとなりそうです。
◇管理監督者の定義とは◇
大手ファーストフードチェーンの店長が未払い残業代の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は原告の訴えを認め、会社側に755万円の未払い残業代の支払いを命じました。チェーン店の店長を管理職として扱うべきか、それとも非管理職として扱うべきか、判決は、同種の企業各社に影響を与えそうです。
今回の訴訟は、世間的に関心も高く注目されていました。今、管理監督者の定義が再び問われ始めているといえます。
◆ 管理監督者の残業代訴訟
過去にも、このような訴訟は数多くありました。
代表的なものとしては、「レストラン・ビュッフェ事件」(昭和60年・大阪地裁判決)や「三栄珈琲事件」(平成元年・東京地裁判決)等が挙げられます。いずれの事件も、店長が管理監督者に該当するかどうかが争われましたが、店長がタイムカードなどで出退勤を管理されていたこと、経営方針など重要事項の決定に参画の余地がなかったことなどから、「管理監督者には該当しない」という判決が出ています。
新しいところでは、大手紳士服店店長の残業代請求訴訟で、会社側が600万円の解決金を支払ったケースもあります。
今回の訴訟では、「店長が管理職として経営者と一体的な立場にあり、出退勤の自由や賃金などで一般労働者に比べて優遇されているか否か」が争点になりました。判決は、(1)店長の権限が店舗内に限られる、(2)営業の必要上相当の長時間労働が必要となり勤務時間の自己決定権はない、(3)年収が管理職の待遇としては不十分、との理由から、「店長は権限や処遇からみても管理職とはいえない」としました。
◆ 管理監督者の明確な定義
厚生労働省の通達によると、管理監督者に当たるかは、(1)労務管理などで経営側と一体の立場にあるか、(2)賃金や勤務形態が優遇されているか等の、職務・職責・待遇を基準として判断されます。明確な線引きがしにくく、総合的な判断が必要になります。
名目的に就業規則や社内規程に定めるだけではなく、現実的に管理監督者といえるかどうか、大局的な立場に立った判断が必要とされているといえます。
◇勤務医減少に歯止めを! 2008年度診療報酬改定◇
小規模な公立病院を中心に、病院の医師(以下、「勤務医」)の確保が困難となってきています。勤務医不足により、病院の存続が危ぶまれるケースも増加傾向にあります。医師が安易に開業に走る例が増えているためです。その一因として、勤務医は救急や夜間の産科などの激務が多いわりに、一般的に収入が開業医より低いことが挙げられます。
勤務医の不足は、われわれの生活の安心に直結する問題です。勤務医と開業医の格差是正と、それによる勤務医不足解消を課題とした「2008年度診療報酬改定」について、その原案が明らかになりました。
◆ 勤務医の報酬引上げ
勤務医に関する報酬が総額1,500億円規模で引き上げられます。開業医から勤務医への所得移転を図り、給与面を改善することで、医師確保につなげようとの考えです。
まず、医科の診療報酬本体部分(医師の技術料などがこれに当たります)が0.42%引き上げられます。これにより、約1,100億円、報酬が上乗せされることになります。さらに、開業医向けの診療報酬から、約400億円程度が委譲されて、勤務医向けの財源に充てられます。
◆ 開業医の再診料引下げ
現在、同じ病気で2回目以降の診察を受ける場合にかかる再診料は、勤務医が570円(ベッド数200床未満)、開業医は710円です。患者としては、自己負担が少なくて済む病院にかかりたいところですから、勤務医のほうにかかる傾向が強まります。これが勤務医の過重労働につながっているとの批判がありました。
そこで議論の焦点となったのが、開業医の再診料の引下げです。再診料を同程度にすることで、これまで勤務医にかかっていた患者を分散させようという狙いです。
しかし、医師会の反発に考慮し、再診料は下げない中途半端な決着となりました。再診料引下げに代わり、軽度の治療に対する報酬廃止、外来管理加算の適正化、コンタクトレンズ検査料の引下げが提示され、合わせて800億円弱程度の財源が提示されています。
◆ 格差是正効果はどれほどあるか?
これらの対策により、300床の病院で年間5,000万円の収入増が見込まれます。
しかし、再診料こそが勤務医と開業医の不均衡の象徴ともいわれており、この差額をそのまま残していたのでは、「開業医の再診料に手を付けずに済む範囲で対策をまとめた」との批判が出る可能性もあります。想定した収入増が果たされなければ、今回の中途半端な決着に批判が集まるのは避けられません。
今回の改定が勤務医の減少対策となり得るか、さらなる議論が必要になるといえそうです。
◇メタボリック・シンドローム あなたは大丈夫?◇
肥満症、高血圧、高脂血症、糖尿病、……こうした生活習慣病は、それぞれが独立した病気ではなく、肥満(特に内臓に死亡が蓄積した「内臓脂肪型肥満」)が原因となって惹き起こされるものだということがわかってきました。内臓脂肪型肥満によってさまざまな病気が起きやすくなった状態を「メタボリック・シンドローム」といい、今では治療の対象として考えられるようになっています。
厚生労働省の平成17年国民健康・栄養調査によると、40-74歳の男性の2人に1人、同女性の5人に1人がメタボリック・シンドロームか、その予備軍であることが報告されています。
◆ メタボリック・シンドロームの診断基準
メタボリック・シンドロームを構成する因子の中でも重要視されているのは内臓脂肪の蓄積で、内臓脂肪の蓄積を必須項目とした診断基準が各国で整いつつあります。
内臓脂肪の蓄積は、具体的には、ウエスト径で判断されます。男性85㎝以上、女性90㎝以上であれば、内臓脂肪の蓄積が疑われます。そのほかに血圧・血糖・血中脂質の判定項目が定められており、2項目に該当した場合は、メタボリック・シンドロームと診断されます。
◆ 特定健康診査の開始
平成20年4月からは、生活習慣病対策の強化を医療費抑制の重要な柱に位置づけた医療制度改革関連法により、メタボリック・シンドロームに着目した新しい特定健康診査・保健指導が始まります。これは、毎年、健康診査によってメタボリック・シンドロームの該当者・予備軍などを抽出し、リスクの高いグループに対し、効果的・効率的な保健指導を行うものです。
◆ メタボリック・シンドロームの改善策
メタボリック・シンドロームには、生活習慣が密接に関係しています。生活習慣をちょっと見直すだけで、メタボリック・シンドロームを改善することができます。メタボリック・シンドロームと診断されたら、まずは生活習慣を振り返り改善するところから始めましょう。
たとえば、食事は満腹になるまで食べてはいませんか? 間食をよくとっていませんか? 濃い味付けが好き、緑黄色野菜をあまり食べない、という食生活ではありませんか?また、日頃から運動をあまりしていないのではないですか? アルコールやタバコなどの嗜好品をとりすぎてはいませんか?当てはまる項目が多い人は要注意です。まずは、腹八分目でやめる、階段を利用するようにするなど、簡単なところから改善していきましょう。
食事療法や運動療法を3~4カ月続けても改善がみられない場合は、医師と相談の上、薬物治療が導入されることもあります。 生き生きと働き続けるためにも、自分の体について、ちょっと考えてみませんか?
◇「失恋休暇」「バーゲン半休」…ユニークな福利厚生制度◇
少し難しい、お堅いことばかりが書いてあるというイメージを持ちがちな、「就業規則」。ここに会社のオリジナリティーを盛り込んでみると、従業員の働く意欲のアップに貢献できるかもしれません。
ユニークな休暇制度を採用しているのは、女性を対象にしたマーケティング会社「ヒメ&カンパニー」です。この会社の休暇制度は各種新聞・雑誌等でも多く取り上げられ、注目されていますから、ご存じの方も多いかもしれません。
◆ 失恋から気持ちを切り替えて仕事を 「失恋休暇制度」
ヒメ&カンパニーの就業規則第39条では、失恋のために業務に従事困難な未婚の社員が申し出たときは、年に1回、休暇を与えることが定められています。
この規則は、仕事が手につかなくて失敗するよりはましだ、との発想から、3年前に生まれました。年齢が上になればなるほど失恋時のダメージが大きくなるのが女性心というもの……失恋すると、25歳未満の女性は1日、30歳以上の女性であれば3日の有休を取得することができます。
◆ 良い物ゲットでモチベーションアップ 「バーゲン半休制度」
また、同社の就業規則第38条では、「バーゲン半休」なるものも定められています。その名の通り、バーゲンに行くという理由で半休が取得できるという制度で、良い物を手に入れてもらい、仕事へのモチベーションにつなげてもらおうという趣旨で設けられた規定です。
初日の早い時間に出かけて行って良い物を手に入れ、それを自慢するのがバーゲンの醍醐味です。会社を休んでバーゲンに行くのは気が引けるという人もいると思いますが、大手を振って会社を休むことができるこの制度は従業員にも好評で、取得率は非常に高いそうです。
◆ 福利厚生を企業のイメージアップに生かす
これらの制度は、同社の平舘美木社長の「女性が喜ぶものを追求する会社としては、ごく自然な」発想から生まれました。今では、「柔軟な発想をする会社」との評判につながり、より優秀な女性が従業員として集まるようになっています。
結果として、これらの条文は、「女性をターゲットとする」という社のスタンスを示す格好のメッセージとなったのです。
このようなユニークな福利厚生制度が、必ずしもいい結果を生み出すとは限りませんが、従業員のモチベーションアップ、企業イメージの向上に何らかの好影響が出るのであれば、参考にしてみる価値はありそうです。
◇物価の値上げは賃金値上げにつながるか?◇
株価の不安定な動きが続いています。株式市場の混乱を嫌った投機資金が商品市場へ流れ込み、原油価格や金の価格は史上最高の高値をつけました。原油や農産物の国際価格上昇は、日本国内の物価にも強い影響を与えています。
心配なのは、物価の上昇に対し、賃金の伸びが鈍い点です。今後、物価の値上げは賃金の値上げにつながっていくでしょうか。
◆ 物価上昇
原油の高騰、食品の値上げ、電気・ガスなどの値上げ……。原油のみならず、食品の大半も輸入に頼っている日本では、生活の必需品となっているすべてのものが値上げ傾向にあります。
例えば、平成19年12月25日付のレギュラーガソリン価格は過去最高値を記録し、1リットル当たり全国平均155円となりました。今後これを上回ることも懸念されています。
これらの値上げが、ますます家計を圧迫していくことが予想されます。値上げがどれだけ家計に影響を与えるかを試算したところによると、平均的な世帯で年間15,000円の支出増加が見込まれています。
◆ 賃金値上げは果たされるか
2008年の春闘では、こうした物価上昇を受け、労働組合はなんとか値上げによる家計負担増を軽減しようと、毎月の賃金額の改善要求を鮮明にしています。
企業側にも、賃上げの条件がそろいつつあります。賃金の高かった団塊世代の大量退職で、現役世代の賃金を上げるための資金は確保しやすくなりました。また、人材獲得競争で、新入社員の初任給を引き上げざるを得ないことから、すでに勤めている社員の給料も抑えにくくなっています。そのため、好業績企業では、賃上げ交渉に前向きに対応していく方針のようです。
とはいえ、日本経団連副会長の草刈隆郎経営労働政策委員長は、「賃金などの労働条件の決定は、個別労使で行うのが大原則」と強調、賃上げの広がりは限定的になるとの見通しを示しました。業績の良い企業は給料を上げ、そうでない企業は無理に賃上げすべきではないとの立場です。中小企業に関しては、「家計への配慮」の姿勢はトーンダウンしています。
◆ 暮らしやすい社会を目指して
収入が増えない中で生活必需品の値上げが続けば、消費が冷え込むことは目に見えています。低収入世帯では、賃金額が上がらないとなると、ますます生活が厳しい状況となっていくことが懸念されます。
中小企業の業況悪化には、原材料費の上昇を製品価格に転嫁しにくい状況があるようです。物価が緩やかに上昇し、中小企業も価格転嫁がしやすくなって業況が良くなり、従業員の賃金額も上がる。そんな状況を実現できるかが、これからの経済政策のかぎとなりそうです。
若年層の雇用状況について
◇若者の雇用情勢が改善されてきています。◇
2007年の完全失業率は3.9%となり、10年ぶりに3%台まで改善しました。これは、15-34歳の若年層の失業者が減ったことが大きな要因となっています。
◆ 完全失業者数、低水準に
2007年の若年者(15-34歳)の完全失業者数は、前年比10万人減の117万人で、5年連続で前年を下回りました。団塊の世代の退職で、人手不足感の強い企業が若者を中心に雇用を増やしているためです。これで、若者の完全失業者数はほぼ10年前の水準に戻りました。
◆ 雇用情勢
しかし、新規の求人数は伸び悩んでおり、雇用情勢の先行きは予断を許さない状態です。
昨年12月の新規求人数は前年同月比15.1%減と、大幅なマイナスとなりました。有効求人倍率は0.9倍、2か月連続で1倍を下回っています。厚生労働省が水増し求人の是正に乗り出したために求人が減少したためでもありますが、原油高を背景とした原材料コスト上昇で収益が圧迫され、企業が雇用意欲を減退させているとの指摘もあります。
また、若年無業者(ニート)は62万人と、前年比横ばいとなっています。
◇「社会的弱者」の就業支援を強化◇
厚生労働省では、「社会的弱者」と呼ばれる、障害者や母子家庭の母親等の就職を支援するための対策を強化します。
国は、こうした人たちに対し、手当や生活保護の支給などで経済的支援を行ってきました。しかし、高齢化で社会保障費は増える一方であり、支援の受け手が増えれば制度維持自体が困難になることが懸念され始めていました。今回の就業支援強化には、「社会的弱者」と呼ばれる人たちの経済的自立を後押しすることで、社会保障費を圧縮する狙いがあります。また、働く意欲と能力のある人が自立できれば、今後減ることが確実な労働力の確保にもつながると考えられています。
◆ 障害者の就業支援
厚生労働省は、障害者雇用促進法の改正案を今国会に提出する方針です。具体的には、(1)障害者の法定雇用率を遵守しないと罰金の対象となる企業の範囲を段階的に広げる、(2)障害者就業・生活支援センターを現在の135か所から2011年度までに400カ所に増設する、(3)社会福祉法人職員などが職場を訪問して障害者と起業に助言するジョブコーチの数を2011年度までに現在の3倍以上の5,000人に増やす、といった内容が盛り込まれることになります。
障害者雇用促進法では、従業員56人以上の企業の場合、従業員数の1.8%以上の障害者を雇用するよう義務づけています。現行法では、目標に達しない場合、従業員数301人以上の大企業には罰金が科されます。この対象範囲が、段階的に従業員数101人以上の中小企業にまで広げられることになります。現在、目標未達の場合に罰則対象となる企業数は約1万2,000社、うち約7,600社が実際に罰金を科されています。対象が改正案どおりに拡大されれば、現状の雇用率が維持された場合、新たに約1万7,000社が罰金を科されることになる見込みです。
◆ 母子家庭の母親の就業支援
母子家庭の母親の85%は仕事をしていますが、約半数はパート勤務です。世帯収入の平均も年200万円程度と低いため、正社員登用への足がかりが必要視されていました。
2008年度から、母子家庭の母親の就業形態をパートから正社員に切り替えた中小企業に、一時金として15万円が支給される制度が導入され、正社員登用への支援が始まります。また、収入のない職業訓練中に生活費を無利子で貸す制度が拡充され、就職後の返済期間が現行の10年から20年に延ばされます。
◆ 生活保護受給者の就業支援
福祉事務所やハローワークの担当者と連携して職業訓練などの計画を作り、就労を支援する事業を積極化していくとしています。
◇派遣社員 2008年の動向◇
4月の改正パートタイム労働法の施行、非正社員を正社員へ登用しようとする世の中の流れなどで、派遣社員のなり手が少なくなっているようです。そのため、派遣業界では売り手市場で人手不足が深刻化しています。
◆ 人材派遣大手の研修メニュー
派遣会社各社では、優秀な派遣スタッフの囲い込みに躍起になっています。各社とも、派遣社員にとってのメリットのアピールに余念がありません。教育・研修メニューを充実させ、派遣スタッフへの無料研修を拡充してきています。
例えば、パソナグループでは、自社が派遣している店頭販売員向けの研修プログラムを新設。販売キャリアセンターを開設し、店長経験者による無料講座、無料セミナーを実施しています。また、カラーコーディネート、歩き方等のセミナーや、お茶・お花等の講座も行っています。
また、テンプスタッフでは、登録者のためのCAD技術の講習会を開講。3日間のコースで、操作方法を習得するとしています。
◆ 派遣社員を取り巻く環境
日本人材派遣協会が全国の派遣社員を対象に行ったアンケート調査により、2007年の派遣社員の平均時給が1,417円であったことが明らかになりました。正社員の1日の労働時間=8時間に換算すると、1万1,336円となります。
厚生労働省がまとめた2006年度調査では、派遣社員の平均日給は1万571円でした。調査対象が異なることも考慮に入れなければなりませんが、最近の人手不足を受けて派遣社員の賃金が上昇しているのは間違いありません。派遣社員の賃金の上昇傾向は、2008年も続くと思われます。
日本人材派遣協会のアンケート調査によると、派遣で働いている人の93.4%が女性、平均年齢は34.5歳となっています。時給は1,200円から1,400円未満が最も多く、次いで1,400円から1,600円未満、1,600円から1,800円未満と続きます。もっとも、時給は都道府県によって開きがあります。たとえば、都道府県別では東京が最も高い時給となっており、平均時給は1,604円です。
◇人材不足は再雇用者にも恩恵?◇
定年退職者の再雇用制度。以前は再雇用者の仕事は補助的なものが多かったのですが、団塊の世代が退職期に入り人手不足や技能伝承の懸念が強まる中、有能なベテランを本格戦力として定着させて最大限に活用するために、給与や働き方を見直して企業内における中核業務に配置する動きが出てきました。
◆ 改正高年齢者雇用安定法
2006年に施行された改正高年齢者雇用安定法は、企業に社員の雇用期間を段階的に65歳まで引き上げるよう義務づけました。引上げの方法としては、再雇用を中心とした「継続雇用」のほか、「定年延長」、「定年廃止」の3つがあります。このうち、一般的にとられているのが、定年でいったん従業員を退職させた後、一定の能力があることなどを条件に再雇用するものです。厚生労働省が昨年6月に約8万2,000社を対象に行った調査では、改正法には「継続雇用で対応する」と答えた企業が86%を占めました。
ただし、その待遇は、再雇用では賃金が大幅に減額される上、年金の支給が減額されてしまうケースもあり、働き続けるメリットは小さいと考える退職者も多かったようです。
◆ 定年退職者再雇用の最近の動き
定年退職者の再雇用制度を導入した大手企業の間で、再雇用者の待遇を改善し、本格戦力として活用する動きが広がってきています。少子高齢化で労働力人口の大幅な減少が予想される中、有能な高齢者の雇用を促進する必要が出てきたためです。
たとえば、ある企業では、再雇用者の年収を最大で従来の2倍の1,000万円に引き上げています。また、1日5時間程度の短時間勤務を可能にする企業もあります。働きやすさを重視する人が退職後も同じ会社で勤められるような、柔軟な勤務体系を導入する動きも広がってきました。
こうした待遇改善の動きが広がれば、昨年初めて1,000万人を超えた60歳以上の就業者がさらに拡大しそうです。少子高齢化問題や、技術継承に課題が残る昨今、各企業が高度な技術を持った有能な人材を有効に活用していく方法を考えていく必要があるといえます。
2008/01/29
2月の事務所便り
「日雇い派遣」の規制が強化されます
◆派遣法に基づく事業停止命令
大手日雇い派遣の企業が、偽装請負の状態で、都内の港湾地区に派遣した男性を労働者派遣法で禁止されている港湾での荷物の積み下ろし作業に従事させていたことが判明しました。同社が労働者派遣法で禁止されている港湾業への派遣などの行為を繰り返していたとして、厚生労働省は、労働者派遣法に基づく事業停止命令を出しました。
◆料金や条件明示を徹底
厚生労働省は、「労働者保護が不十分」との指摘が出ている日雇い派遣制度を2008年度中にも見直し、規制を強化する方針を固めました。派遣先企業が支払う料金を公開させることにより派遣会社が極端に多額の手数料を取ることを防止し、業務内容など労働条件の事前明示を徹底することが柱です。
日雇い派遣は、派遣会社と1日単位の雇用契約を繰り返し、条件も契約ごとに変わる仕組みで、同省は派遣先企業が支払う料金が公開されれば、労働者が派遣会社に賃金の引上げを要求しやすくなるとみています。また、業務内容が明示されていれば、派遣労働者が過酷な契約を避けることが可能になり、労働条件の改善につながると期待しています。
◆派遣労働の規制緩和は見送り
労働政策審議会は、2007年12月に派遣労働に関する中間報告をまとめ、規制緩和の早期実施の見送りを決めました。派遣労働力を効率的に活用したいという企業や規制改革会議の要望は退けられた形になりました。厚生労働省は規制緩和を盛り込んだ労働者派遣法改正案の2008年の通常国会への提出を断念しましたが、一方で、日雇い派遣は規制を強化する方針を正式に決定しました。
政府は当初、柔軟な働き方を広げるため、規制緩和に前向きでした。規制改革会議などでの議論を踏まえて受け入れ企業が採用前に直接面接する「事前面接」の解禁や、派遣社員を一定期間以上雇うと派遣先企業が直接雇入れを申し出なければならないという「直接雇用義務」の撤廃などの方向を打ち出していました。
働いても生活保護水準以下の収入しか得られない「ワーキング・プア」の問題などが表面化し、「不安定な派遣労働者には規制強化が必要」という労働者側の意見が勢いを増しました。労働者派遣は徐々に規制が緩和されてきましたが、労働者保護のための派遣期間や業種などに制限が残ります。
「規制が逆に派遣の雇用を不安定にしている」との批判もあります。厚生労働省は大学教授ら有識者5~6人で組織する研究会を立ち上げ議論の打開を目指す考えで、今年はじめに研究会の第1回会合を開き、来夏をメドに報告書をまとめ、労働政策審議会で再度議論する予定です。
「ジョブカード制度」でフリーターなどを支援
◆「ジョブカード」の活用
政府の「ジョブカード構想委員会」は、2007年12月にフリーターなどの求職を支援するジョブカードの計画をまとめました。フリーターや子育て後の女性らを対象とする新たな職業訓練制度を2008年度に創設し、訓練で得た能力を専門家が評価してカードに記録します。求職者が就職活動の際に携帯すれば、企業側も人材を評価しやすく、円滑な採用につながると政府はみています。
◆訓練機会提供して成果を公的認証
「ジョブカード制度」の基本は、これまでの実践的な職業能力開発の機会に恵まれなかったフリーターや子育てから手が離れた女性、母子家庭の母親などに、企業現場や教育機関などでの実践的な職業訓練の機会を提供し、その教育訓練の成果を公的に認証して就職活動などに役立ててもらうようにすることにあります。具体的には「ジョブプログラム」を受けることで「職業能力証明書」が発行されます。
ジョブカードは、この証明書のほか、自分の職歴や教育訓練講座、取得資格などの情報を一体的にまとめたものの総称であり、ジョブプログラムを受けない場合も、求職者が職務経歴などのわかる記録をキャリアコンサルタントに提出して確認されれば、職歴部分は交付されることになっています。
◆多くの先進国が多様な政策を実施
訓練経費などについては、訓練実施企業にとって過度な負担にならないような助成の仕組みが、また、訓練受講者へは資金融資などの経済的支援が組み込まれる構想です。訓練終了後は、同企業で正式採用になる場合とならない場合の両方が想定されています。
現場で実際の仕事を目の前にして学ぶことが効果的であることは間違いありません。わが国の企業は現場主義での能力開発に長けているといわれます。実際、中途採用の場合、ほとんどの企業が他社での経験を評価していると思われます。それだけ現場の力を皆が信じている社会なのです。がんばる力を持った人たちにとって、機会がないためにその力を発揮できないとしたら、人材不足の企業にも高齢化が進む社会にとってももったいない話です。途中参入する人たちに対して、職業能力向上の目標を明示し、そのための手段を提供することは重要です。
現在、多くの先進諸国が、職場での必要な能力の基準を明らかにし、それを獲得するための教育訓練の機会を提供する政策をとっています。
終了期限が迫る!「人財投資促進税制」
◆社員の成長が会社の成長に
企業にとっての経営資源は「人・もの・お金・情報」であると言われています。とはいっても、「人」以外の要素に意志や想像力はありません。こうした資源を活用して新たな付加価値を生み出すことができるのは「人」そのものといえます。
「企業=人材」の言葉のとおり、社員の成長なくして、企業の成長はありえません。
◆人材育成の形態
企業における代表的な人材育成の形態には、「OJT」(職場内訓練)と「OFF・JT」(職場外訓練)の2種類があります。OJTは、上司が日常の業務を通じて、部下に対し、業務に必要な知識や技能を育成指導する形態です。OFF・JTは、社員を仕事から切り離して勤務外の時間に行うため、教育を集中して体系的に行えるのがメリットです。
いずれにしても、効率的に人材育成を行い社員の戦力化を図るためには、計画的にOJTとOFF・JTを併用していくことが大切であると考えられています。
◆「人材投資促進税制」の活用
中長期的な投資とも考えられる人材育成に日本の企業がかける費用は、諸外国の企業と比較すると、まだ少額であるといわれています。
「人材投資促進税制」は産業競争力の基盤である産業人材を育成・強化する観点から、従業員の人材育成に積極的に取り組む企業・個人事業者を支援するため、平成17年4月に創設されました。業種や規模を問わず、すべての企業が対象となり、教育訓練費の一定割合を法人税・所得税から税金控除するものです。
この特別税額控除は、3年間の時限措置です。適用期間は、平成17年4月1日から平成20年3月31日までに開始される事業年度であることから、終了期限が間近となっていますが、ぜひとも利用を検討したい制度です。
◆人財投資促進税制の効果
人財投資促進税制は、税額控除ですので所得控除とは異なり、税額を直接減らすことができるため、上手に利用すれば非常に大きな節税効果を得ることができます。また、経営計画を人事制度に反映させて、計画的に人材育成を実施すれば、企業の成長につながる社員を育成できる効果が期待できます。さらに、人材教育に力を入れている企業の姿勢をアピールすることで、優秀な人材が確保しやすくなり、企業の活性化や社員のモチベーションアップを図ることができると考えられます。
人財投資促進税制を活用しながら、会社と社員の成長に役立つ定期的な人材教育の実施を検討されてみてはいかがでしょうか。
まもなく施行される「改正パートタイム労働法」
◆4月1日から施行
改正パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が、4月1日から施行されます。
◆「パートタイム労働者」とは?
パートタイム労働法の対象である「短時間労働者」(パートタイム労働者)は、「1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間における所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。
◆改正パートタイム労働法の概要
1.労働条件の文書交付等
2.待遇の決定についての説明義務
3.均衡のとれた待遇の確保の推進
4.通常の労働者への転換の推進
5.苦情処理・紛争解決の援助
3.については、パートタイム労働者の待遇を通常の労働者との働き方の違いに応じて均衡(バランス)を図るための措置を講じる内容です。具体的には、「職務の内容(業務の内容および責任の程度)」「人材活用の仕組みや運用など」「契約期間」の3つの要件が通常の労働者と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いについて規定しています。
◆「差別的取扱いの禁止」とは?
「職務の内容(業務の内容および責任の程度)」が同じ、「人材活用の仕組みや運用(人事異動の有無および範囲)など」が全雇用期間を通じて同じ、「契約期間」が実質的に無期契約となっているパートタイム労働者は、通常の労働者と就業の状態が同じと判断され、賃金の決定をはじめ教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、その他のすべての待遇について、パートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止されます。「人材活用の仕組みや運用などが全雇用期間を通じて同じ」とは、パートタイム労働者が通常の労働者と職務が同一になってから、退職までの期間において、事業所の人事システムから判断して同じ、となる場合です。「契約期間が実質的に無期契約」とは、期間の定めのない労働契約を結んでいる場合や、期間を定めて労働契約を結んでいても、期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当とされる場合などです。
「国民年金任意加入」の損得勘定
◆団塊世代の老後の資産形成
会社人生が終わりつつある団塊世代の男性が老後の資産づくりに躍起になっています。専業主婦だった妻も人ごとではありません。「自分のお金を少しでも有利に運用したい」という思いから、国民年金の「任意加入」が注目されています。ただ、金融商品と公的年金では仕組みが異なりますので、注意が必要になります。
◆国民年金任意加入の損得
仮に、年上の夫が定年退職し、専業主婦だった妻のA子さん(57歳)が、国民年金の「第3号被保険者」という立場から外れ、あと3年保険料を払って国民年金に加入しなければならなくなったとします。この3年とかつての国民年金の任意加入時代に6年加入した分を合わせて保険料を払う期間は9年になります。
「第3号」期間が22年で、60歳になった時点で合計加入期間は31年、65歳からの老齢基礎年金(加算を含まず)は年約61万円になります。「もうちょっと増やせないか」と考えたとき、65歳になるまで国民年金に任意加入できることを知りました。任意加入分だけ年金も増えますが、そこで気になることが出てきました。
◆何歳まで生きれば払った保険料の元が取れる?
例えば60歳以降で5年任意加入(5年分の保険料約84万円)すると、65歳からの年金は約71万円になり、73歳を少し超えて長生きすれば得になります。ただ、任意加入しても65歳からの年金を貰う前に死亡すると悲劇です。4年任意加入した時点でA子さんが亡くなったとすると、保険料を払った期間が計13年なので、夫に死亡一時金12万円が払われます。A子さんが任意加入せずに64歳で亡くなった場合の保険料納付期間は9年になり、このときの一時金も12万円です。4年分の保険料約67万円は水の泡になってしまいます。
金融商品でも損失が出るリスクはありますが、一般的には資産が残ります。しかし、公的年金は「相互扶助」が原則なので、払った分に見合う金額が必ず戻るとは限りません。
公的年金は原則25年、制度に加入しないと老後の年金はもらえないので、すでにこの要件を満たしているとき、さらに任意加入するかどうか検討するときには、公的年金のこのような仕組みも知っておきたいところです。
経済的にゆとりがあるなら、任意加入する分を投資に回したり、貯蓄に回したりしたほうがいいかもしれません。
「昇進志向」控えめな日本人
◆出世に燃えていた時代
生活を犠牲にして出世に燃える…。高度成長期に多くの人が思い描いた日本のビジネスマン像は過去のものになりつつあるようです。働く人の意識に関する最近の国際比較では、日本人の「ほどほど志向」に拍車がかかっているようです。
◆仕事と生活のバランスを重視
ある新聞によりますと、米コンサルティング大手のタワーズペリンが調査を実施し、世界19カ国・地域で魅力的な職場の条件を聞いたそうです。
日本の従業員には仕事と生活のバランスを重視する傾向がみえます。「充実した休暇」「適正な仕事量」「福利厚生の充実」がそれぞれ3位、4位、6位と上位に来ました。ところが19カ国・地域の平均値だと、この3項目は7位、9位、圏外と優先度が低くなっています。
世界平均では2位が「キャリア向上の機会」、6位が「教育・研修の機会」です。働く現場で自分自身を磨くことへの関心が強いようです。
調査には日米欧のほかブラジル、中国など経済成長が活発な新興国も入っています。自分の将来を見据えた野心の強さも感じられます。日本でも仕事への潜在的な意欲は決して低くはありません。
国際平均で3位の「やりがいのある仕事」が日本は首位です。タワーズペリンは「日本人は怠惰になったのではなく、目先の仕事に疲れ、合理的なワークライフバランス(仕事と生活の調和)を求める意識が強まったのではないか」と見ています。
昇進というニンジンで社員をひたすら競わせる「同属職場」の時代は終わりました。個の自主性と意欲を伸ばし、質の高い働きを引き出す企業の知恵が問われています。
公的手続がインターネットで簡単に
◆新システムを開発・導入へ
経済産業省など5省庁は、NTTデータなどの民間企業と組み、企業が納税申告などの公的な手続きをインターネットで簡単に行うことができる新システムを開発するそうです。
2009年1月を目途に導入される予定で、企業にとっては、コスト削減に役立つ仕組みとして期待されています。
◆中小企業のコスト削減に
中小企業では、公的申請を担当者数人がかり行っていることが多いようですが、新システムの導入により、手間が減り、経営の効率化が高まると見込まれます。
対象となる公的申請は、従業員の納税や商業登記、年金、雇用保険などであり、経済産業省、厚生労働省、法務省、社会保険庁、国税庁の5省がネット上に専用のページを作成するそうです。
例えば、納税申告であれば、専用のパスワードやIDを入力し、サイト内で売上高や従業員数、給料などの数字を入力すれば、法人税額や所得税額などが簡単に算出されます。計算結果は自動的に電子申請書に転記され、ネット上で各省庁への手続きが完了します。
企業が支払うシステム利用料は一般のソフトと比較して、2分の1から3分の1に抑えられる予定です。
◆政府も普及率のアップでコスト削減を期待
政府は国や地方自治体への申請手続のオンライン利用率を2010年度までに50%にする目標を打ち出してはいますが、現状ではわずか3%の利用にとどまっています。政府は、新システムの導入により、普及率のアップと窓口対応のコスト削減を期待しています。
どうなる? 個人向け住宅優遇税制
◆「個人向け住宅優遇税制」延長・拡充へ
自民党の税制調査会は、2008年度税制改正において、「個人向け住宅優遇税制」を延長・拡充する方針を固めています。耐震偽装の再発防止のために審査基準を厳しくした改正建築基準法施行の影響により住宅投資が低迷していることなどの影響もあり、「200年住宅」等への税優遇導入などを含め、改正案が検討されています。
◆固定資産税等の延長へ
新築住宅の固定資産税を半減する特例は、1964年に法整備されてから延長を繰り返し、2008年3月末で期限切れになる予定でしたが、2年間延長されることとなっています。ただし、対象物件は2008年3月末までに購入した新築物件となっています。
また、土地売買で所有権の移転登記などにかかる登録免許税を半減する特例措置も2008年3月末で期限が切れることになっていますが、こちらも延長される方向です。
住宅購入の目的で親から生前贈与を受ける場合に限り、3,500万円まで贈与税を非課税とする特例も2007年12月末で期限切れとなっていますが、延長する方向で検討されています。
このような特例措置がなされない場合、個人の税負担は全体で約3,000億円発生すると推計されています。
◆どういった法案が検討されているのか?
数世代にわたって暮らせる「200年住宅」は、耐久性など国の認定基準を満たせば固定資産税を築後3年間は4分の1にする案を軸として調整する方向で進められています。
また、登録免許税や不動産取得税も控除対象にできるように検討しています。
省エネルギーを促すための改修費用を支援する優遇税制も検討中です。改修にかかった費用の10パーセント相当を税額控除できるようにしたり、固定資産税を3年間半減できるようにしたりする案が検討されています。しかし、財務・総務両省は消極的であり、こちらの優遇税制の創設は難航しそうです。
昨年末の定率減税廃止等で個人の増税感を薄めるためにも、住宅優遇税制の延長・創設に期待したいものです。
後期高齢者医療で「外来主治医制度」導入へ
◆「外来主治医」制度とは
2008年4月からスタートする後期高齢者医療制度において、75歳以上の患者の心身状態を1人の医師が総合的に診察する「外来主治医」(仮称)制度が導入されます。
複数の病気にかかっていても、原則として患者1人に1人の主治医とし、高齢者が複数の医療機関にかからないようにして、医療費を抑えることが狙いです。
◆研修を受けた医師が「外来主治医」に
外来主治医の資格は、お年寄りの日常生活能力を判定する機能評価の演習など4日間程度の研修を受け、厚生労働省に届け出た医師に与えられます。研修では、日本医師会と学会でつくる組織が受け持ち、高齢者の薬物療法、認知症の診療、家族や介護者への指導方法などを習得するそうです。
患者は、外来主治医から1年間の治療・検査計画を記した「高齢者総合診療計画書」を示され、糖尿病や脳血管疾患などの診療を受けるには、計画書に患者の同意署名が必要となります。また、患者には月初めの受診時に、検査結果や次の受診日時などを記した文書が渡される予定です。
◆患者にはどんなメリットがある?
患者1人ひとりが信頼できる医師を持つことにより、複数の医療機関を渡り歩いて検査や投薬が重複することを防止し、外来医療から入院、在宅療養へ移ることがスムーズになります。ただし、主治医を持つことは義務ではなく、また、どの医師を選ぶのかは患者自身が決めることになります。
◆診療報酬に「定額制」導入
新制度の導入に伴い、75歳以上を対象とした診療報酬に「医学管理料」が新設され、外来主治医が請求できるようにし、一部を除く検査、画像診断などについては何度実施しても一定の報酬しか払わない「定額制」が導入されます。また、外来主治医には、毎回患者に服薬状況を確認することも義務付けられるそうです。
実現されるか? 年金負担の平等化
◆基礎年金の税方式化とは?
納付率の低下や年金記録漏れ問題などにより、基礎年金の保険料を徴収する現行の「社会保険方式」への国民の信頼が失われつつあります。制度の維持が難しくなっているなか、解決策として、消費税で賄う「基礎年金の税方式化」が検討されています。
◆税方式にするとどんなメリットがある?
年金制度改革研究会が、税方式の案の利点であるとして提案している「共通年金(厚生・共済年金の基礎年金部分を含む国民年金を65歳以上の人に原則同じ額だけ給付するというもの)」は、1.財源を保険料から消費税に転換して徴収、2.国内居住10年で受給権が発生、3.移行期間は新旧両制度から加入期間に応じて給付するなどの特徴があります。
大きな利点の1つは、現行制度の存続を危うくしている未納・未加入の問題をほぼ解消できることです。年金記録の管理も単純になり、記録漏れ問題の是正も期待できます。例えば、日本に最低10年間居住すれば誰でも年金を受け取れるようになると、「国民皆年金」の姿に近くなります。40年で満額となるように居住期間に比例して支給する方法を想定しています。
現行の基礎年金制度は保険料を納めた期間に応じて受給額が決まります。最低加入期間の25年(保険料を免除、猶予された期間も含む)に1カ月でも届かなければ無年金となります。満額を受給するには40年間、保険料を払い続けなければならないのが原則です。
居住年数に応じて給付を受けられるようになれば、専業主婦やフリーターなど雇用形態や生活様式の多様性にも柔軟に対応できます。また、受給要件を拠出期間25年から例えば居住期間10年にすることで、無年金者を救う効果も期待しています。
現行制度の「社会保険方式」も年間約19兆4,000億円の給付額の3分の1近くはすでに税に依存しています。「税方式」への転換は、残りの12兆円の保険料負担をなくす代わりに税に置き換える方法です。
◆世代間の不公平感解消にもなるが…
日本で生活している限り、必ず消費税の負担が生じます。高齢者も相応の負担をするので、現行制度に比べて世代間の公平さの面で優れていますが、半面、年金受給者の側からみれば、引退後も消費税の形で年金制度に追加拠出することになるので、年金の受給額が実質的に減ってしまいます。
給付と負担の関係も不明確となり、「生活保護」と似た性格を持つことも問題となり得ます。最低10年居住を受給条件とすれば、現行制度に比べて財源が膨らむ可能性もあります。
いずれにしろ、国民の負担は免れないのであれば、政府のスリム化、企業の効率化を通じて、国民が安心してお金を消費に回せるように、社会保障全体の信頼を高めなければなりません。
◆派遣法に基づく事業停止命令
大手日雇い派遣の企業が、偽装請負の状態で、都内の港湾地区に派遣した男性を労働者派遣法で禁止されている港湾での荷物の積み下ろし作業に従事させていたことが判明しました。同社が労働者派遣法で禁止されている港湾業への派遣などの行為を繰り返していたとして、厚生労働省は、労働者派遣法に基づく事業停止命令を出しました。
◆料金や条件明示を徹底
厚生労働省は、「労働者保護が不十分」との指摘が出ている日雇い派遣制度を2008年度中にも見直し、規制を強化する方針を固めました。派遣先企業が支払う料金を公開させることにより派遣会社が極端に多額の手数料を取ることを防止し、業務内容など労働条件の事前明示を徹底することが柱です。
日雇い派遣は、派遣会社と1日単位の雇用契約を繰り返し、条件も契約ごとに変わる仕組みで、同省は派遣先企業が支払う料金が公開されれば、労働者が派遣会社に賃金の引上げを要求しやすくなるとみています。また、業務内容が明示されていれば、派遣労働者が過酷な契約を避けることが可能になり、労働条件の改善につながると期待しています。
◆派遣労働の規制緩和は見送り
労働政策審議会は、2007年12月に派遣労働に関する中間報告をまとめ、規制緩和の早期実施の見送りを決めました。派遣労働力を効率的に活用したいという企業や規制改革会議の要望は退けられた形になりました。厚生労働省は規制緩和を盛り込んだ労働者派遣法改正案の2008年の通常国会への提出を断念しましたが、一方で、日雇い派遣は規制を強化する方針を正式に決定しました。
政府は当初、柔軟な働き方を広げるため、規制緩和に前向きでした。規制改革会議などでの議論を踏まえて受け入れ企業が採用前に直接面接する「事前面接」の解禁や、派遣社員を一定期間以上雇うと派遣先企業が直接雇入れを申し出なければならないという「直接雇用義務」の撤廃などの方向を打ち出していました。
働いても生活保護水準以下の収入しか得られない「ワーキング・プア」の問題などが表面化し、「不安定な派遣労働者には規制強化が必要」という労働者側の意見が勢いを増しました。労働者派遣は徐々に規制が緩和されてきましたが、労働者保護のための派遣期間や業種などに制限が残ります。
「規制が逆に派遣の雇用を不安定にしている」との批判もあります。厚生労働省は大学教授ら有識者5~6人で組織する研究会を立ち上げ議論の打開を目指す考えで、今年はじめに研究会の第1回会合を開き、来夏をメドに報告書をまとめ、労働政策審議会で再度議論する予定です。
「ジョブカード制度」でフリーターなどを支援
◆「ジョブカード」の活用
政府の「ジョブカード構想委員会」は、2007年12月にフリーターなどの求職を支援するジョブカードの計画をまとめました。フリーターや子育て後の女性らを対象とする新たな職業訓練制度を2008年度に創設し、訓練で得た能力を専門家が評価してカードに記録します。求職者が就職活動の際に携帯すれば、企業側も人材を評価しやすく、円滑な採用につながると政府はみています。
◆訓練機会提供して成果を公的認証
「ジョブカード制度」の基本は、これまでの実践的な職業能力開発の機会に恵まれなかったフリーターや子育てから手が離れた女性、母子家庭の母親などに、企業現場や教育機関などでの実践的な職業訓練の機会を提供し、その教育訓練の成果を公的に認証して就職活動などに役立ててもらうようにすることにあります。具体的には「ジョブプログラム」を受けることで「職業能力証明書」が発行されます。
ジョブカードは、この証明書のほか、自分の職歴や教育訓練講座、取得資格などの情報を一体的にまとめたものの総称であり、ジョブプログラムを受けない場合も、求職者が職務経歴などのわかる記録をキャリアコンサルタントに提出して確認されれば、職歴部分は交付されることになっています。
◆多くの先進国が多様な政策を実施
訓練経費などについては、訓練実施企業にとって過度な負担にならないような助成の仕組みが、また、訓練受講者へは資金融資などの経済的支援が組み込まれる構想です。訓練終了後は、同企業で正式採用になる場合とならない場合の両方が想定されています。
現場で実際の仕事を目の前にして学ぶことが効果的であることは間違いありません。わが国の企業は現場主義での能力開発に長けているといわれます。実際、中途採用の場合、ほとんどの企業が他社での経験を評価していると思われます。それだけ現場の力を皆が信じている社会なのです。がんばる力を持った人たちにとって、機会がないためにその力を発揮できないとしたら、人材不足の企業にも高齢化が進む社会にとってももったいない話です。途中参入する人たちに対して、職業能力向上の目標を明示し、そのための手段を提供することは重要です。
現在、多くの先進諸国が、職場での必要な能力の基準を明らかにし、それを獲得するための教育訓練の機会を提供する政策をとっています。
終了期限が迫る!「人財投資促進税制」
◆社員の成長が会社の成長に
企業にとっての経営資源は「人・もの・お金・情報」であると言われています。とはいっても、「人」以外の要素に意志や想像力はありません。こうした資源を活用して新たな付加価値を生み出すことができるのは「人」そのものといえます。
「企業=人材」の言葉のとおり、社員の成長なくして、企業の成長はありえません。
◆人材育成の形態
企業における代表的な人材育成の形態には、「OJT」(職場内訓練)と「OFF・JT」(職場外訓練)の2種類があります。OJTは、上司が日常の業務を通じて、部下に対し、業務に必要な知識や技能を育成指導する形態です。OFF・JTは、社員を仕事から切り離して勤務外の時間に行うため、教育を集中して体系的に行えるのがメリットです。
いずれにしても、効率的に人材育成を行い社員の戦力化を図るためには、計画的にOJTとOFF・JTを併用していくことが大切であると考えられています。
◆「人材投資促進税制」の活用
中長期的な投資とも考えられる人材育成に日本の企業がかける費用は、諸外国の企業と比較すると、まだ少額であるといわれています。
「人材投資促進税制」は産業競争力の基盤である産業人材を育成・強化する観点から、従業員の人材育成に積極的に取り組む企業・個人事業者を支援するため、平成17年4月に創設されました。業種や規模を問わず、すべての企業が対象となり、教育訓練費の一定割合を法人税・所得税から税金控除するものです。
この特別税額控除は、3年間の時限措置です。適用期間は、平成17年4月1日から平成20年3月31日までに開始される事業年度であることから、終了期限が間近となっていますが、ぜひとも利用を検討したい制度です。
◆人財投資促進税制の効果
人財投資促進税制は、税額控除ですので所得控除とは異なり、税額を直接減らすことができるため、上手に利用すれば非常に大きな節税効果を得ることができます。また、経営計画を人事制度に反映させて、計画的に人材育成を実施すれば、企業の成長につながる社員を育成できる効果が期待できます。さらに、人材教育に力を入れている企業の姿勢をアピールすることで、優秀な人材が確保しやすくなり、企業の活性化や社員のモチベーションアップを図ることができると考えられます。
人財投資促進税制を活用しながら、会社と社員の成長に役立つ定期的な人材教育の実施を検討されてみてはいかがでしょうか。
まもなく施行される「改正パートタイム労働法」
◆4月1日から施行
改正パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が、4月1日から施行されます。
◆「パートタイム労働者」とは?
パートタイム労働法の対象である「短時間労働者」(パートタイム労働者)は、「1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間における所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。
◆改正パートタイム労働法の概要
1.労働条件の文書交付等
2.待遇の決定についての説明義務
3.均衡のとれた待遇の確保の推進
4.通常の労働者への転換の推進
5.苦情処理・紛争解決の援助
3.については、パートタイム労働者の待遇を通常の労働者との働き方の違いに応じて均衡(バランス)を図るための措置を講じる内容です。具体的には、「職務の内容(業務の内容および責任の程度)」「人材活用の仕組みや運用など」「契約期間」の3つの要件が通常の労働者と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いについて規定しています。
◆「差別的取扱いの禁止」とは?
「職務の内容(業務の内容および責任の程度)」が同じ、「人材活用の仕組みや運用(人事異動の有無および範囲)など」が全雇用期間を通じて同じ、「契約期間」が実質的に無期契約となっているパートタイム労働者は、通常の労働者と就業の状態が同じと判断され、賃金の決定をはじめ教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、その他のすべての待遇について、パートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止されます。「人材活用の仕組みや運用などが全雇用期間を通じて同じ」とは、パートタイム労働者が通常の労働者と職務が同一になってから、退職までの期間において、事業所の人事システムから判断して同じ、となる場合です。「契約期間が実質的に無期契約」とは、期間の定めのない労働契約を結んでいる場合や、期間を定めて労働契約を結んでいても、期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当とされる場合などです。
「国民年金任意加入」の損得勘定
◆団塊世代の老後の資産形成
会社人生が終わりつつある団塊世代の男性が老後の資産づくりに躍起になっています。専業主婦だった妻も人ごとではありません。「自分のお金を少しでも有利に運用したい」という思いから、国民年金の「任意加入」が注目されています。ただ、金融商品と公的年金では仕組みが異なりますので、注意が必要になります。
◆国民年金任意加入の損得
仮に、年上の夫が定年退職し、専業主婦だった妻のA子さん(57歳)が、国民年金の「第3号被保険者」という立場から外れ、あと3年保険料を払って国民年金に加入しなければならなくなったとします。この3年とかつての国民年金の任意加入時代に6年加入した分を合わせて保険料を払う期間は9年になります。
「第3号」期間が22年で、60歳になった時点で合計加入期間は31年、65歳からの老齢基礎年金(加算を含まず)は年約61万円になります。「もうちょっと増やせないか」と考えたとき、65歳になるまで国民年金に任意加入できることを知りました。任意加入分だけ年金も増えますが、そこで気になることが出てきました。
◆何歳まで生きれば払った保険料の元が取れる?
例えば60歳以降で5年任意加入(5年分の保険料約84万円)すると、65歳からの年金は約71万円になり、73歳を少し超えて長生きすれば得になります。ただ、任意加入しても65歳からの年金を貰う前に死亡すると悲劇です。4年任意加入した時点でA子さんが亡くなったとすると、保険料を払った期間が計13年なので、夫に死亡一時金12万円が払われます。A子さんが任意加入せずに64歳で亡くなった場合の保険料納付期間は9年になり、このときの一時金も12万円です。4年分の保険料約67万円は水の泡になってしまいます。
金融商品でも損失が出るリスクはありますが、一般的には資産が残ります。しかし、公的年金は「相互扶助」が原則なので、払った分に見合う金額が必ず戻るとは限りません。
公的年金は原則25年、制度に加入しないと老後の年金はもらえないので、すでにこの要件を満たしているとき、さらに任意加入するかどうか検討するときには、公的年金のこのような仕組みも知っておきたいところです。
経済的にゆとりがあるなら、任意加入する分を投資に回したり、貯蓄に回したりしたほうがいいかもしれません。
「昇進志向」控えめな日本人
◆出世に燃えていた時代
生活を犠牲にして出世に燃える…。高度成長期に多くの人が思い描いた日本のビジネスマン像は過去のものになりつつあるようです。働く人の意識に関する最近の国際比較では、日本人の「ほどほど志向」に拍車がかかっているようです。
◆仕事と生活のバランスを重視
ある新聞によりますと、米コンサルティング大手のタワーズペリンが調査を実施し、世界19カ国・地域で魅力的な職場の条件を聞いたそうです。
日本の従業員には仕事と生活のバランスを重視する傾向がみえます。「充実した休暇」「適正な仕事量」「福利厚生の充実」がそれぞれ3位、4位、6位と上位に来ました。ところが19カ国・地域の平均値だと、この3項目は7位、9位、圏外と優先度が低くなっています。
世界平均では2位が「キャリア向上の機会」、6位が「教育・研修の機会」です。働く現場で自分自身を磨くことへの関心が強いようです。
調査には日米欧のほかブラジル、中国など経済成長が活発な新興国も入っています。自分の将来を見据えた野心の強さも感じられます。日本でも仕事への潜在的な意欲は決して低くはありません。
国際平均で3位の「やりがいのある仕事」が日本は首位です。タワーズペリンは「日本人は怠惰になったのではなく、目先の仕事に疲れ、合理的なワークライフバランス(仕事と生活の調和)を求める意識が強まったのではないか」と見ています。
昇進というニンジンで社員をひたすら競わせる「同属職場」の時代は終わりました。個の自主性と意欲を伸ばし、質の高い働きを引き出す企業の知恵が問われています。
公的手続がインターネットで簡単に
◆新システムを開発・導入へ
経済産業省など5省庁は、NTTデータなどの民間企業と組み、企業が納税申告などの公的な手続きをインターネットで簡単に行うことができる新システムを開発するそうです。
2009年1月を目途に導入される予定で、企業にとっては、コスト削減に役立つ仕組みとして期待されています。
◆中小企業のコスト削減に
中小企業では、公的申請を担当者数人がかり行っていることが多いようですが、新システムの導入により、手間が減り、経営の効率化が高まると見込まれます。
対象となる公的申請は、従業員の納税や商業登記、年金、雇用保険などであり、経済産業省、厚生労働省、法務省、社会保険庁、国税庁の5省がネット上に専用のページを作成するそうです。
例えば、納税申告であれば、専用のパスワードやIDを入力し、サイト内で売上高や従業員数、給料などの数字を入力すれば、法人税額や所得税額などが簡単に算出されます。計算結果は自動的に電子申請書に転記され、ネット上で各省庁への手続きが完了します。
企業が支払うシステム利用料は一般のソフトと比較して、2分の1から3分の1に抑えられる予定です。
◆政府も普及率のアップでコスト削減を期待
政府は国や地方自治体への申請手続のオンライン利用率を2010年度までに50%にする目標を打ち出してはいますが、現状ではわずか3%の利用にとどまっています。政府は、新システムの導入により、普及率のアップと窓口対応のコスト削減を期待しています。
どうなる? 個人向け住宅優遇税制
◆「個人向け住宅優遇税制」延長・拡充へ
自民党の税制調査会は、2008年度税制改正において、「個人向け住宅優遇税制」を延長・拡充する方針を固めています。耐震偽装の再発防止のために審査基準を厳しくした改正建築基準法施行の影響により住宅投資が低迷していることなどの影響もあり、「200年住宅」等への税優遇導入などを含め、改正案が検討されています。
◆固定資産税等の延長へ
新築住宅の固定資産税を半減する特例は、1964年に法整備されてから延長を繰り返し、2008年3月末で期限切れになる予定でしたが、2年間延長されることとなっています。ただし、対象物件は2008年3月末までに購入した新築物件となっています。
また、土地売買で所有権の移転登記などにかかる登録免許税を半減する特例措置も2008年3月末で期限が切れることになっていますが、こちらも延長される方向です。
住宅購入の目的で親から生前贈与を受ける場合に限り、3,500万円まで贈与税を非課税とする特例も2007年12月末で期限切れとなっていますが、延長する方向で検討されています。
このような特例措置がなされない場合、個人の税負担は全体で約3,000億円発生すると推計されています。
◆どういった法案が検討されているのか?
数世代にわたって暮らせる「200年住宅」は、耐久性など国の認定基準を満たせば固定資産税を築後3年間は4分の1にする案を軸として調整する方向で進められています。
また、登録免許税や不動産取得税も控除対象にできるように検討しています。
省エネルギーを促すための改修費用を支援する優遇税制も検討中です。改修にかかった費用の10パーセント相当を税額控除できるようにしたり、固定資産税を3年間半減できるようにしたりする案が検討されています。しかし、財務・総務両省は消極的であり、こちらの優遇税制の創設は難航しそうです。
昨年末の定率減税廃止等で個人の増税感を薄めるためにも、住宅優遇税制の延長・創設に期待したいものです。
後期高齢者医療で「外来主治医制度」導入へ
◆「外来主治医」制度とは
2008年4月からスタートする後期高齢者医療制度において、75歳以上の患者の心身状態を1人の医師が総合的に診察する「外来主治医」(仮称)制度が導入されます。
複数の病気にかかっていても、原則として患者1人に1人の主治医とし、高齢者が複数の医療機関にかからないようにして、医療費を抑えることが狙いです。
◆研修を受けた医師が「外来主治医」に
外来主治医の資格は、お年寄りの日常生活能力を判定する機能評価の演習など4日間程度の研修を受け、厚生労働省に届け出た医師に与えられます。研修では、日本医師会と学会でつくる組織が受け持ち、高齢者の薬物療法、認知症の診療、家族や介護者への指導方法などを習得するそうです。
患者は、外来主治医から1年間の治療・検査計画を記した「高齢者総合診療計画書」を示され、糖尿病や脳血管疾患などの診療を受けるには、計画書に患者の同意署名が必要となります。また、患者には月初めの受診時に、検査結果や次の受診日時などを記した文書が渡される予定です。
◆患者にはどんなメリットがある?
患者1人ひとりが信頼できる医師を持つことにより、複数の医療機関を渡り歩いて検査や投薬が重複することを防止し、外来医療から入院、在宅療養へ移ることがスムーズになります。ただし、主治医を持つことは義務ではなく、また、どの医師を選ぶのかは患者自身が決めることになります。
◆診療報酬に「定額制」導入
新制度の導入に伴い、75歳以上を対象とした診療報酬に「医学管理料」が新設され、外来主治医が請求できるようにし、一部を除く検査、画像診断などについては何度実施しても一定の報酬しか払わない「定額制」が導入されます。また、外来主治医には、毎回患者に服薬状況を確認することも義務付けられるそうです。
実現されるか? 年金負担の平等化
◆基礎年金の税方式化とは?
納付率の低下や年金記録漏れ問題などにより、基礎年金の保険料を徴収する現行の「社会保険方式」への国民の信頼が失われつつあります。制度の維持が難しくなっているなか、解決策として、消費税で賄う「基礎年金の税方式化」が検討されています。
◆税方式にするとどんなメリットがある?
年金制度改革研究会が、税方式の案の利点であるとして提案している「共通年金(厚生・共済年金の基礎年金部分を含む国民年金を65歳以上の人に原則同じ額だけ給付するというもの)」は、1.財源を保険料から消費税に転換して徴収、2.国内居住10年で受給権が発生、3.移行期間は新旧両制度から加入期間に応じて給付するなどの特徴があります。
大きな利点の1つは、現行制度の存続を危うくしている未納・未加入の問題をほぼ解消できることです。年金記録の管理も単純になり、記録漏れ問題の是正も期待できます。例えば、日本に最低10年間居住すれば誰でも年金を受け取れるようになると、「国民皆年金」の姿に近くなります。40年で満額となるように居住期間に比例して支給する方法を想定しています。
現行の基礎年金制度は保険料を納めた期間に応じて受給額が決まります。最低加入期間の25年(保険料を免除、猶予された期間も含む)に1カ月でも届かなければ無年金となります。満額を受給するには40年間、保険料を払い続けなければならないのが原則です。
居住年数に応じて給付を受けられるようになれば、専業主婦やフリーターなど雇用形態や生活様式の多様性にも柔軟に対応できます。また、受給要件を拠出期間25年から例えば居住期間10年にすることで、無年金者を救う効果も期待しています。
現行制度の「社会保険方式」も年間約19兆4,000億円の給付額の3分の1近くはすでに税に依存しています。「税方式」への転換は、残りの12兆円の保険料負担をなくす代わりに税に置き換える方法です。
◆世代間の不公平感解消にもなるが…
日本で生活している限り、必ず消費税の負担が生じます。高齢者も相応の負担をするので、現行制度に比べて世代間の公平さの面で優れていますが、半面、年金受給者の側からみれば、引退後も消費税の形で年金制度に追加拠出することになるので、年金の受給額が実質的に減ってしまいます。
給付と負担の関係も不明確となり、「生活保護」と似た性格を持つことも問題となり得ます。最低10年居住を受給条件とすれば、現行制度に比べて財源が膨らむ可能性もあります。
いずれにしろ、国民の負担は免れないのであれば、政府のスリム化、企業の効率化を通じて、国民が安心してお金を消費に回せるように、社会保障全体の信頼を高めなければなりません。
2007/12/20
1月の事務所便り
派遣先から出向いた小売店で本来業務以外の指示を受けた!
人材派遣会社に登録し、ある食品メーカーで働き始めた派遣販売員。スーパーの店頭で新商品をお客様に推奨する仕事ですが、売り場の担当者に他社商品の陳列までを手伝うように言われました。これには従わなくてはいけないのでしょうか。
◆二重派遣で違法
労働者派遣法の規定では、派遣元の人材派遣会社が労働者を雇い、派遣先の事業主と労働者派遣契約を結ぶことで、派遣先は派遣労働者に指揮命令をすることできます。
上記相談事例では派遣労働者が派遣先からさらに別の事業者に送り込まれています。派遣先が派遣労働者を別の事業者に再び派遣するのは、職業安定法が禁じるいわゆる「二重派遣」です。
ただ、厚生労働省は、「小売店が場所を貸すだけで、派遣販売員が派遣元の販売員メーカーの指示だけに従い、商品を推奨しているなら問題はない」としています。二重派遣に当たるか否かは、勤務場所より、出向いた先の従業員らが何らかの指示を出したかどうかで判断されます。
上記相談例では、派遣労働者が食品メーカーの指示にない陳列業務などを命じられており、二重派遣に当たります。派遣労働者はこのような指示について断わることができます。
◆罰則もあり!
自分の雇用への悪影響が不安な派遣社員が派遣元に相談することがあります。労働者派遣法は派遣元の責任者に労働者からの苦情への対応などを義務付けています。
状況が改善されなければ各都道府県の労働局に相談することも可能です。労働局は事実関係を確認、違法行為には是正指導します。派遣先などに職業安定法違反があれば、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が定められています。ただ、実際には指導段階で改善され、告発に至る例はまずないようです。
二重派遣を巡るトラブルは労働局などへの相談によって解消されることも多く、裁判例もほとんどないようです。厚生労働省も「それぞれの契約内容にもよる」としており、個別判断が必要なようです。
◆ポイントは?
① 勤務場所が異なるだけでは二重派遣とまではいえない。
② 派遣先の指示に従うだけなら問題はない。
労働力人口 2030年に1,000万人減
厚生労働省の雇用政策研究会がまとめた推計によると、日本の2030年の労働力人口(15歳以上の就業者と求職者)は、現在の6,657万人から1,070万人も減ってしまいます。少子化と高齢化は世界最速で進んでおり、先陣を切って人口減社会に突入します。また、働き手の減少ペースも類をみませんので、“昔ながら”の仕組みでは社会の形を保つのが難しくなっていくことが予想されます。
◆働く仕組み 変革必要に
日本の制度には働ける人まで働けなくしている面があります。例えば、厚生年金では60歳以降も正社員などとして働くと賃金に応じて年金が減ってしまいます。また、企業の採用は新卒の若者が中心。女性パートタイマーの多くは夫の被扶養者にとどまるため、年収130万円未満に仕事を減らすなどしています。新聞によれば、人口増の時代から残る日本流を見直せば約1,000万人分の人材力を引き出せるかもしれないとのことです。
【高齢者1割で300万人】…65歳以上の高齢者は現在約2,700万人で、今後も増え続けます。現在65歳以上で働いている人は約500万人。2,700万人のうち、あと1割が仕事に就いたとすると、約300万人近い働き手が労働力不足を埋めてくれます。
【女性の潜在労働力350万人】…日本は女性の力を十分に活かしきれていません。出産を機に女性の7割が仕事を辞めてしまいます。これは世界でも特有なことです。在宅勤務や短時間勤務の充実で柔軟な働き方を用意し、引き留めることが第一歩となります。家事や子育てで仕事をあきらめている女性は350万人。柔軟な働き方ができれば潜在力が動き出すことができます。
【ニートは60万人】…18~34歳の働き盛りの人口は現在約2,800万人。これが2030年には約1,900万人と3割以上減ります。仕事や学校にも行かず職業訓練も受けていないニートは約62万人。定職に就かない若者のフリーターは約187万人。ニートは定職に就けるよう、フリーターは正社員など失業の心配なく働けるよう、再チャレンジの後押し策をもう一度盛り上げるときがきています。
【先端技術磨けば百人力】…人間に代わる労働力として期待されているロボット。すでに産業分野で日本は世界一のロボット大国です。日本の産業用ロボット稼動台数は約37万台で北米やドイツを大きく上回ります。介護や医療ロボットに商機を見出す会社も増えています。
【外国人向け制度づくり】…高齢化で需要が高まる介護分野。厚生労働省によると政府はフィリピン人の看護師・介護士を受け入れる計画を進めていましたが、フィリピン国会でいまだ認められず、まったくメドがたたないようです。
経済協力開発機構(OECD)は日本が現在と同じ生産年齢人口を保つには年間約50万人の外国人の受け入れが必要であると試算しています。実際に日本で長期就業が認められた外国人は2005年で約2万人。日本は優秀な外国人が働けるインフラを整えなければ、世界の人材争奪に出遅れてしまいます。
同僚のうつ どう見守ればよい?
厚生労働省によると、うつ病などの気分障害の患者数は約92万人(2005年)です。1996年に比べ2倍以上と増加傾向にあります。職場内にうつ症状と思われる人がいる場合、周囲はどのように対応し、何を心がけるべきなのでしょうか。
◆身体の症状に絞り、医師へのつなぎを
NPO法人MDA(打つ・気分障害協会)は「声をかける際は身体の症状に絞るべき」と忠告しています。
うつ病の人は、睡眠障害や疲労、頭痛などがあることが多く、「寝不足?」などと症状面に絞って声をかければ抵抗感もありません。必要に応じてかかりつけの医師や心療内科の受診を勧めれば自然です。しかし、精神面の症状は本人が自覚していないことが多く、「気晴らしに旅行でも?(お酒でも?)」などの声かけは、「それどころではないのに」と失望し、症状が悪化することがあります。また「うつ」と決めつけての対応もいけません。
また、元気になったように見えても、猛烈に頑張り続けることと症状を繰り返す「双極性障害」等の場合がありますので、あくまでも専門の医師やカウンセラーの診断や治療につなげていくことが大切です。
◆職場の見直しがポイント
うつ病は、気配りやコミュニケーションの乏しい職場で起こりやすく、「職場の人間関係や長時間労働を引き起こすような業務遂行上の問題が重なって起きるケース」が多いです。職場でのコミュニケーションの機会を増やし、また日頃から上司が部下を見守るような関係づくりがポイントになってきます。
企業によっては、社員が年一回心身の健康について産業医や保健士と面談したり、管理職が部下の話を上手に聞く「傾聴法」の研修をしたりするなどの対策を実施しています。また、会議で各メンバーが発言する機会を増やすことや毎日5分間の昼礼を開くといった取り組みもあります。いずれにせよ、社内でのコミュニケーションを促すための工夫を積み重ねることがカギと言えるでしょう。
◆ポイントは?
① 身体の症状に絞った声かけをし、精神面での症状の指摘は避ける。
② 医師へのつなぎに徹する。
③ 「うつ病」などと決めつけない。
④ 社内コミュニケーション促進への取り組みをする。
年金財源の税方式化は可能か
現在、全国民が老後に受け取れるはずの基礎(国民)年金の財源について、保険料ではなく、すべて税金で賄ってはどうかとの議論が盛んになっています。保険料の未納という現行制度の大問題が解決されることは魅力的なのですが、現実には解決されねばならない問題があります。
◆保険料に応じた支給が困難
基礎年金の財源をすべて税金にすれば、保険料を支払う必要はなくなり、未納問題は一応解決することになります。しかし、現行制度は保険料を払った期間に応じて年金を受け取る仕組みで、現実問題として、現在の制度と新しい制度をどう結びつけるのか、という問題が生じます。
まず、保険料納付記録を無視して全員に一定の年金を支給する方法があります。しかし、これは不公平感があまりに強すぎます。
次に、全員に一定の年金を支給し、その上に過去の保険料納付に基づく年金も支給する方法があります。この場合では、財源が余計に必要になります。
また、ある日を境に、それ以前は現行制度、それ以降は新制度とし、数十年という時間をかけてゆっくり新制度に移行する方法があります。これが最も常識的なやり方だと思いますがこれにも問題があります。これまでずっと未納で切り替え時にはすでに中高齢になっている人の場合は、無年金や低年金のまま生涯を過ごすということになってしまうのです。未納をなくし無年金をなくすという目的も達成できません。
◆現実を見つめつつも、早々の取組みが必要
実は今も国民年金の財源の3分の1は税金で賄っています。政府は2004年度の制度改革でこの割合を2009年度までに2分の1まで引き上げることを決定しました。このためだけでも消費税率にして1%程度もの税が必要になっています。
年金財源の税方式化は過去に何度も議論されてきましたが、結論はでないまま今日に至っています。また、社会保障制度全体において、医師や介護職員などの不足を解決するため、医療や介護等においても税財源は必要とされている状況の中、現実を見つめつつも早々の議論と新制度への取組みが必要であることは間違いありません。
女性上司が部下を誘惑。セクハラでは?
20代の男性会社員が女性の上司から度々飲みに誘われ、体を触られたうえ交際を求められています。誘いを断ったところ残業を押しつけるなど仕事上厳しく当たるようになったような場合、セクハラ(性的嫌がらせ)として訴えられるのでしょうか。
◆法改正で男性も保護対象に
従来は女性による男性へのセクハラの法的扱いは明確ではありませんでした。平成19年4月施行の改正男女雇用機会均等法でセクハラの範囲が男性にも広げられ、調停対象となりました。
問題は男性へのセクハラの認定基準が確立されていないことにあります。女性へのセクハラに比べ男性への事例はまだ裁判例が蓄積されておらず、平均的な男性が性的羞恥心(しゅうち)心を感じるか否かで判断されているのが現状です。
◆「行動や発言に性的な要素が含まれるか」がポイント
例えば性交渉を持ちかけたり、身体に触れてきたりする場合、セクハラと認定される傾向にあります。一方、単にしつこく酒席に誘ったり、恋人の有無を聞いたり、というケースでは、女性への場合と異なり認定されない公算が大きいといわれています。
裁判例もまだ多くないため認定基準を見極めるのは難しいのが現状です。防犯パトロール中の女性職員が、同僚男性がいる浴室に入った行為がセクハラかどうかについて争われた訴訟では、一審では女性のセクハラ行為を認定しました(大阪地裁2004年9月3日判決)が、二審は女性に職務上の目的があったとして男性側の訴えを棄却しました(大阪高裁 2005年6月7日判決)。
セクハラとして認定されない場合は「パワー・ハラスメント」として対処することになりますが、パワハラには法的規制がないため裁量権を大幅に逸脱した事例でない限り救済は難しいようです。
均等法改正で男性へのセクハラについても相談窓口を設置するなど、防止に必要な措置が企業に求められるようになりました。企業がこうした措置をとらないと違法とされ、裁判で使用者責任が問われます。男性へのセクハラはあり得ないと企業側が放置していると、手痛いしっぺ返しを食うことになります。
「男性へのセクハラも、女性へのものと同様と認識することが必要」で、企業はさらにセクハラ防止の意識をとぎすませる必要がありそうです。
◆ポイントは?
① 女性へのセクハラに比べ、認定基準が不明確な面もある。
② 男性に対するセクハラも企業の防止処置が必要である。
平成18年「パート労働者総合実態調査」結果
◆5年前に比べ、パート労働者は45万人増加
調査では「正社員」「パート」「その他」に分けていますが、平成13年の前回調査に比べ、正社員が約34万人減少し、パート・その他の労働者が約90万人増加しました。また、パートだけでは約45万人が増加しており、飲食店・宿泊業、医療・福祉、教育・学習支援業においては、パートの依存度が高い状況になっています。
◆パートを雇用する理由
「人件費が割安」が71.0%の断トツで、前回調査の65%を上回っており、労務コストの効率化が強く意識されています。
職務が正社員とほとんど同じパートがいる事業所で、1時間当たりの賃金が正社員よりパートの方が低い割合は77.2%。その理由としては、「勤務時間の自由度が違う」が約73%、「正社員の方が企業への貢献が期待できる」33%などが多いです。
◆一方でパート戦力化の実態
職務が正社員とほとんど同じパートがいるところは約52%。正社員が行っていた業務を半分以上のパートに充てたところが22.3%、1~5割未満のパートに充てたのが19.8%であわせて4割強に上っています。
◆各種の手当や制度の実施状況
通勤手当の支給、定期健康診断、社内行事への参加、慶弔見舞金の支給の実施率が正社員の実施率と比べ低く、顕著な差がみられます。
◆正社員への転換制度
また正社員への転換制度があるのは45.8%で、パート依存率の高い飲食店・宿泊業や医療・福祉では半数を超えていますが、製造業、情報通信業では転換制度を持たない企業が6割を超えています。
労働契約法が成立!
◆法律の目的は?
近年増加傾向にある個別労働紛争の抑制や未然防止に資するため、労働契約に関するルールを整え、個別労使の自主的な交渉の下で、労働契約を円滑に継続させながら、労働者の保護を図るのを目的としています。ただし、罰則はなく、労働基準監督署の行政指導対象にもなりません。
◆労働契約の締結
労働契約締結の場面において、労使間に交渉力の差があったり、契約内容が不明確なことが多かったりするため、対等の立場で合意原則を明らかにし、できる限り書面による契約内容の確認を行うように求めています。使用者による安全配慮義務も明文化しました。
◆労働契約の変更
就業規則との関係を確認し、原則は就業規則の変更により労働条件を一方的に不利益変更できないとし、その変更に合理性が認められる場合にはこの限りではないとしました。「合理性」が認められる場合とは、労働者の受ける不利益の程度、労働条件変更の必要性、変更後の就業規則の内容の正当性、労働組合などとの交渉の状況を中心にその他の事情を考慮して判断をします。就業規則の変更に関しては、労働基準法上の手続規定しかなく、一般には極めて不明確なのが現状です。
◆労働契約の終了
合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない解雇を無効とする労働基準法の規定を移設し、有期契約労働者の期間中の解雇は、やむを得ない事由がある場合でないと認められなくなりました。
障害者受け入れ派遣先に助成金支給へ
◆障害者雇用に基づく助成金制度の大幅見直し
厚生労働省は、障害者の派遣労働への参入を促進するため、障害者雇用納付金に基づく助成金制度を大幅に見直す方針を打ち出しました。
派遣元への支援に加え、障害者である派遣労働者を受け入れた派遣先に対しても、施設の整備などを念頭に置いた助成策を検討する必要があるとしています。
◆障害者雇用の拡大
平成19年6月1日現在の最新の障害者実雇用率は1.55%で、100人~299人の中小企業に絞ると1.30%(1,000人以上規模1.74%)に留まり依然として低い水準にあります。これを受けて、厚生労働省は、障害者雇用促進法の改正とともに助成金制度見直しの方向で検討に入っています。派遣元・派遣先事業主や短時間労働障害者を雇用する事業主への支援を強化する一方、中小企業へ重点を置いた配分を行い、雇用の拡大につなげたいと考えている模様です。
◆直接雇用者と合算可能
具体的には、各助成金の派遣元に対する支給の考え方を明確化して活用を促すとともに、派遣先が障害者を円滑に受け入れることができるよう態勢整備に向けた支援策を検討するとしています。派遣先は、直接雇用する障害者と受け入れた派遣労働者を合算して助成金を受給できる形とするとしています。
中小企業に対しては、これまで障害者雇用の実績がないケースを考慮して、初めての受け入れの際には一定期間にわたり集中的な支援強化を行い、抵抗感をなくしたいとしています。
労働力不足が深刻化
◆高齢者雇用
少子高齢化の進展、高年齢者の雇用の安定に関する法律の改正を受け、高齢者活用が、企業の大きな課題となっています。今回紹介するのは、厚生労働省「平成19年度高齢者雇用開発コンテスト」最優秀賞を受賞した「部品工業㈱」は、定年のない、勤務形態も自由に設定できるエージレス雇用を実現した事例です。
◆弱者に優しい改善策が奏効
建機車体部品の製造を主とする部品工業株式会社は、少量多品種注文への対応力と製品精度の高さによりメーカー各社からの厚い信頼を得ています。これを支えているのがエージレスで働く高齢熟練社員です。同社は、全社員137人のうち、50歳以上が6割近くを占め、60歳以上の比率は33%と3人に1人以上が高齢者という状況です。また、70歳以上者も6人在職しています。
背景には、新卒者の採用・育成が困難ななか、即戦力確保のため中途採用を活発化させてきたことがあります。技術者の高齢化は深刻で、30~40歳代の熟練工の採用は困難な状況にあったのです。そこで、退職した高齢者で再就職を希望した者を積極的に採用して、これに伴い退職金制度を廃止し、退職金原資は月例給与に組み入れるということを行いました。雇用形態については、正社員(月給制)と準社員(パートかフルタイムの時給契約社員)があり、60歳代の8割は準社員となっています。また、不足する労働力を確保するためには、高齢者を準社員として採用し、高度熟練者から高齢一般工へOJTによる技術指導を実施することで、労働力不足と人件費上昇の問題を同時に解決しています。60歳以降も、いずれも定年とは無関係に、身分を維持できますが、正社員が60歳以降に短時間就労を希望した場合には準社員へ転換できるようにしています。
◆エージレス雇用とは?
勤務形態については、フルに働きたいか、年金併給で余裕を持って勤めたいかなど、ライフスタイルの違いにより選択できるものになっています。月間所定労働時間を正社員=173時間、準社員=173時間もしくは130時間未満から選べ、130時間未満の場合は、週3~5日勤務、月50時間以上~130時間未満という自由度の高い勤務シフトが組めます。
エージレス雇用の推進で大きなポイントを占めるのが職場改善の取組みです。治具・工具をそれぞれの持ち場で工夫したり、ロボットの導入などにより作業能力・スピードアップをもたらし、作業の省力化と安全性と同時に高齢者の働ける職場を拡大しました。熟練者の作業に余裕が出てきたことによって、若手への技術伝承機会も確保できるようになってきました。
2030年までは、若年者、女性、高齢者などが労働市場参加を実現することで、労働力減少を一定程度緩和できますといわれていますが、同年以降は現在の少子化の影響で若年人口が「激減」する見通しで、今後ますます「熟練労働力」の不足が懸念されます。
人材派遣会社に登録し、ある食品メーカーで働き始めた派遣販売員。スーパーの店頭で新商品をお客様に推奨する仕事ですが、売り場の担当者に他社商品の陳列までを手伝うように言われました。これには従わなくてはいけないのでしょうか。
◆二重派遣で違法
労働者派遣法の規定では、派遣元の人材派遣会社が労働者を雇い、派遣先の事業主と労働者派遣契約を結ぶことで、派遣先は派遣労働者に指揮命令をすることできます。
上記相談事例では派遣労働者が派遣先からさらに別の事業者に送り込まれています。派遣先が派遣労働者を別の事業者に再び派遣するのは、職業安定法が禁じるいわゆる「二重派遣」です。
ただ、厚生労働省は、「小売店が場所を貸すだけで、派遣販売員が派遣元の販売員メーカーの指示だけに従い、商品を推奨しているなら問題はない」としています。二重派遣に当たるか否かは、勤務場所より、出向いた先の従業員らが何らかの指示を出したかどうかで判断されます。
上記相談例では、派遣労働者が食品メーカーの指示にない陳列業務などを命じられており、二重派遣に当たります。派遣労働者はこのような指示について断わることができます。
◆罰則もあり!
自分の雇用への悪影響が不安な派遣社員が派遣元に相談することがあります。労働者派遣法は派遣元の責任者に労働者からの苦情への対応などを義務付けています。
状況が改善されなければ各都道府県の労働局に相談することも可能です。労働局は事実関係を確認、違法行為には是正指導します。派遣先などに職業安定法違反があれば、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が定められています。ただ、実際には指導段階で改善され、告発に至る例はまずないようです。
二重派遣を巡るトラブルは労働局などへの相談によって解消されることも多く、裁判例もほとんどないようです。厚生労働省も「それぞれの契約内容にもよる」としており、個別判断が必要なようです。
◆ポイントは?
① 勤務場所が異なるだけでは二重派遣とまではいえない。
② 派遣先の指示に従うだけなら問題はない。
労働力人口 2030年に1,000万人減
厚生労働省の雇用政策研究会がまとめた推計によると、日本の2030年の労働力人口(15歳以上の就業者と求職者)は、現在の6,657万人から1,070万人も減ってしまいます。少子化と高齢化は世界最速で進んでおり、先陣を切って人口減社会に突入します。また、働き手の減少ペースも類をみませんので、“昔ながら”の仕組みでは社会の形を保つのが難しくなっていくことが予想されます。
◆働く仕組み 変革必要に
日本の制度には働ける人まで働けなくしている面があります。例えば、厚生年金では60歳以降も正社員などとして働くと賃金に応じて年金が減ってしまいます。また、企業の採用は新卒の若者が中心。女性パートタイマーの多くは夫の被扶養者にとどまるため、年収130万円未満に仕事を減らすなどしています。新聞によれば、人口増の時代から残る日本流を見直せば約1,000万人分の人材力を引き出せるかもしれないとのことです。
【高齢者1割で300万人】…65歳以上の高齢者は現在約2,700万人で、今後も増え続けます。現在65歳以上で働いている人は約500万人。2,700万人のうち、あと1割が仕事に就いたとすると、約300万人近い働き手が労働力不足を埋めてくれます。
【女性の潜在労働力350万人】…日本は女性の力を十分に活かしきれていません。出産を機に女性の7割が仕事を辞めてしまいます。これは世界でも特有なことです。在宅勤務や短時間勤務の充実で柔軟な働き方を用意し、引き留めることが第一歩となります。家事や子育てで仕事をあきらめている女性は350万人。柔軟な働き方ができれば潜在力が動き出すことができます。
【ニートは60万人】…18~34歳の働き盛りの人口は現在約2,800万人。これが2030年には約1,900万人と3割以上減ります。仕事や学校にも行かず職業訓練も受けていないニートは約62万人。定職に就かない若者のフリーターは約187万人。ニートは定職に就けるよう、フリーターは正社員など失業の心配なく働けるよう、再チャレンジの後押し策をもう一度盛り上げるときがきています。
【先端技術磨けば百人力】…人間に代わる労働力として期待されているロボット。すでに産業分野で日本は世界一のロボット大国です。日本の産業用ロボット稼動台数は約37万台で北米やドイツを大きく上回ります。介護や医療ロボットに商機を見出す会社も増えています。
【外国人向け制度づくり】…高齢化で需要が高まる介護分野。厚生労働省によると政府はフィリピン人の看護師・介護士を受け入れる計画を進めていましたが、フィリピン国会でいまだ認められず、まったくメドがたたないようです。
経済協力開発機構(OECD)は日本が現在と同じ生産年齢人口を保つには年間約50万人の外国人の受け入れが必要であると試算しています。実際に日本で長期就業が認められた外国人は2005年で約2万人。日本は優秀な外国人が働けるインフラを整えなければ、世界の人材争奪に出遅れてしまいます。
同僚のうつ どう見守ればよい?
厚生労働省によると、うつ病などの気分障害の患者数は約92万人(2005年)です。1996年に比べ2倍以上と増加傾向にあります。職場内にうつ症状と思われる人がいる場合、周囲はどのように対応し、何を心がけるべきなのでしょうか。
◆身体の症状に絞り、医師へのつなぎを
NPO法人MDA(打つ・気分障害協会)は「声をかける際は身体の症状に絞るべき」と忠告しています。
うつ病の人は、睡眠障害や疲労、頭痛などがあることが多く、「寝不足?」などと症状面に絞って声をかければ抵抗感もありません。必要に応じてかかりつけの医師や心療内科の受診を勧めれば自然です。しかし、精神面の症状は本人が自覚していないことが多く、「気晴らしに旅行でも?(お酒でも?)」などの声かけは、「それどころではないのに」と失望し、症状が悪化することがあります。また「うつ」と決めつけての対応もいけません。
また、元気になったように見えても、猛烈に頑張り続けることと症状を繰り返す「双極性障害」等の場合がありますので、あくまでも専門の医師やカウンセラーの診断や治療につなげていくことが大切です。
◆職場の見直しがポイント
うつ病は、気配りやコミュニケーションの乏しい職場で起こりやすく、「職場の人間関係や長時間労働を引き起こすような業務遂行上の問題が重なって起きるケース」が多いです。職場でのコミュニケーションの機会を増やし、また日頃から上司が部下を見守るような関係づくりがポイントになってきます。
企業によっては、社員が年一回心身の健康について産業医や保健士と面談したり、管理職が部下の話を上手に聞く「傾聴法」の研修をしたりするなどの対策を実施しています。また、会議で各メンバーが発言する機会を増やすことや毎日5分間の昼礼を開くといった取り組みもあります。いずれにせよ、社内でのコミュニケーションを促すための工夫を積み重ねることがカギと言えるでしょう。
◆ポイントは?
① 身体の症状に絞った声かけをし、精神面での症状の指摘は避ける。
② 医師へのつなぎに徹する。
③ 「うつ病」などと決めつけない。
④ 社内コミュニケーション促進への取り組みをする。
年金財源の税方式化は可能か
現在、全国民が老後に受け取れるはずの基礎(国民)年金の財源について、保険料ではなく、すべて税金で賄ってはどうかとの議論が盛んになっています。保険料の未納という現行制度の大問題が解決されることは魅力的なのですが、現実には解決されねばならない問題があります。
◆保険料に応じた支給が困難
基礎年金の財源をすべて税金にすれば、保険料を支払う必要はなくなり、未納問題は一応解決することになります。しかし、現行制度は保険料を払った期間に応じて年金を受け取る仕組みで、現実問題として、現在の制度と新しい制度をどう結びつけるのか、という問題が生じます。
まず、保険料納付記録を無視して全員に一定の年金を支給する方法があります。しかし、これは不公平感があまりに強すぎます。
次に、全員に一定の年金を支給し、その上に過去の保険料納付に基づく年金も支給する方法があります。この場合では、財源が余計に必要になります。
また、ある日を境に、それ以前は現行制度、それ以降は新制度とし、数十年という時間をかけてゆっくり新制度に移行する方法があります。これが最も常識的なやり方だと思いますがこれにも問題があります。これまでずっと未納で切り替え時にはすでに中高齢になっている人の場合は、無年金や低年金のまま生涯を過ごすということになってしまうのです。未納をなくし無年金をなくすという目的も達成できません。
◆現実を見つめつつも、早々の取組みが必要
実は今も国民年金の財源の3分の1は税金で賄っています。政府は2004年度の制度改革でこの割合を2009年度までに2分の1まで引き上げることを決定しました。このためだけでも消費税率にして1%程度もの税が必要になっています。
年金財源の税方式化は過去に何度も議論されてきましたが、結論はでないまま今日に至っています。また、社会保障制度全体において、医師や介護職員などの不足を解決するため、医療や介護等においても税財源は必要とされている状況の中、現実を見つめつつも早々の議論と新制度への取組みが必要であることは間違いありません。
女性上司が部下を誘惑。セクハラでは?
20代の男性会社員が女性の上司から度々飲みに誘われ、体を触られたうえ交際を求められています。誘いを断ったところ残業を押しつけるなど仕事上厳しく当たるようになったような場合、セクハラ(性的嫌がらせ)として訴えられるのでしょうか。
◆法改正で男性も保護対象に
従来は女性による男性へのセクハラの法的扱いは明確ではありませんでした。平成19年4月施行の改正男女雇用機会均等法でセクハラの範囲が男性にも広げられ、調停対象となりました。
問題は男性へのセクハラの認定基準が確立されていないことにあります。女性へのセクハラに比べ男性への事例はまだ裁判例が蓄積されておらず、平均的な男性が性的羞恥心(しゅうち)心を感じるか否かで判断されているのが現状です。
◆「行動や発言に性的な要素が含まれるか」がポイント
例えば性交渉を持ちかけたり、身体に触れてきたりする場合、セクハラと認定される傾向にあります。一方、単にしつこく酒席に誘ったり、恋人の有無を聞いたり、というケースでは、女性への場合と異なり認定されない公算が大きいといわれています。
裁判例もまだ多くないため認定基準を見極めるのは難しいのが現状です。防犯パトロール中の女性職員が、同僚男性がいる浴室に入った行為がセクハラかどうかについて争われた訴訟では、一審では女性のセクハラ行為を認定しました(大阪地裁2004年9月3日判決)が、二審は女性に職務上の目的があったとして男性側の訴えを棄却しました(大阪高裁 2005年6月7日判決)。
セクハラとして認定されない場合は「パワー・ハラスメント」として対処することになりますが、パワハラには法的規制がないため裁量権を大幅に逸脱した事例でない限り救済は難しいようです。
均等法改正で男性へのセクハラについても相談窓口を設置するなど、防止に必要な措置が企業に求められるようになりました。企業がこうした措置をとらないと違法とされ、裁判で使用者責任が問われます。男性へのセクハラはあり得ないと企業側が放置していると、手痛いしっぺ返しを食うことになります。
「男性へのセクハラも、女性へのものと同様と認識することが必要」で、企業はさらにセクハラ防止の意識をとぎすませる必要がありそうです。
◆ポイントは?
① 女性へのセクハラに比べ、認定基準が不明確な面もある。
② 男性に対するセクハラも企業の防止処置が必要である。
平成18年「パート労働者総合実態調査」結果
◆5年前に比べ、パート労働者は45万人増加
調査では「正社員」「パート」「その他」に分けていますが、平成13年の前回調査に比べ、正社員が約34万人減少し、パート・その他の労働者が約90万人増加しました。また、パートだけでは約45万人が増加しており、飲食店・宿泊業、医療・福祉、教育・学習支援業においては、パートの依存度が高い状況になっています。
◆パートを雇用する理由
「人件費が割安」が71.0%の断トツで、前回調査の65%を上回っており、労務コストの効率化が強く意識されています。
職務が正社員とほとんど同じパートがいる事業所で、1時間当たりの賃金が正社員よりパートの方が低い割合は77.2%。その理由としては、「勤務時間の自由度が違う」が約73%、「正社員の方が企業への貢献が期待できる」33%などが多いです。
◆一方でパート戦力化の実態
職務が正社員とほとんど同じパートがいるところは約52%。正社員が行っていた業務を半分以上のパートに充てたところが22.3%、1~5割未満のパートに充てたのが19.8%であわせて4割強に上っています。
◆各種の手当や制度の実施状況
通勤手当の支給、定期健康診断、社内行事への参加、慶弔見舞金の支給の実施率が正社員の実施率と比べ低く、顕著な差がみられます。
◆正社員への転換制度
また正社員への転換制度があるのは45.8%で、パート依存率の高い飲食店・宿泊業や医療・福祉では半数を超えていますが、製造業、情報通信業では転換制度を持たない企業が6割を超えています。
労働契約法が成立!
◆法律の目的は?
近年増加傾向にある個別労働紛争の抑制や未然防止に資するため、労働契約に関するルールを整え、個別労使の自主的な交渉の下で、労働契約を円滑に継続させながら、労働者の保護を図るのを目的としています。ただし、罰則はなく、労働基準監督署の行政指導対象にもなりません。
◆労働契約の締結
労働契約締結の場面において、労使間に交渉力の差があったり、契約内容が不明確なことが多かったりするため、対等の立場で合意原則を明らかにし、できる限り書面による契約内容の確認を行うように求めています。使用者による安全配慮義務も明文化しました。
◆労働契約の変更
就業規則との関係を確認し、原則は就業規則の変更により労働条件を一方的に不利益変更できないとし、その変更に合理性が認められる場合にはこの限りではないとしました。「合理性」が認められる場合とは、労働者の受ける不利益の程度、労働条件変更の必要性、変更後の就業規則の内容の正当性、労働組合などとの交渉の状況を中心にその他の事情を考慮して判断をします。就業規則の変更に関しては、労働基準法上の手続規定しかなく、一般には極めて不明確なのが現状です。
◆労働契約の終了
合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない解雇を無効とする労働基準法の規定を移設し、有期契約労働者の期間中の解雇は、やむを得ない事由がある場合でないと認められなくなりました。
障害者受け入れ派遣先に助成金支給へ
◆障害者雇用に基づく助成金制度の大幅見直し
厚生労働省は、障害者の派遣労働への参入を促進するため、障害者雇用納付金に基づく助成金制度を大幅に見直す方針を打ち出しました。
派遣元への支援に加え、障害者である派遣労働者を受け入れた派遣先に対しても、施設の整備などを念頭に置いた助成策を検討する必要があるとしています。
◆障害者雇用の拡大
平成19年6月1日現在の最新の障害者実雇用率は1.55%で、100人~299人の中小企業に絞ると1.30%(1,000人以上規模1.74%)に留まり依然として低い水準にあります。これを受けて、厚生労働省は、障害者雇用促進法の改正とともに助成金制度見直しの方向で検討に入っています。派遣元・派遣先事業主や短時間労働障害者を雇用する事業主への支援を強化する一方、中小企業へ重点を置いた配分を行い、雇用の拡大につなげたいと考えている模様です。
◆直接雇用者と合算可能
具体的には、各助成金の派遣元に対する支給の考え方を明確化して活用を促すとともに、派遣先が障害者を円滑に受け入れることができるよう態勢整備に向けた支援策を検討するとしています。派遣先は、直接雇用する障害者と受け入れた派遣労働者を合算して助成金を受給できる形とするとしています。
中小企業に対しては、これまで障害者雇用の実績がないケースを考慮して、初めての受け入れの際には一定期間にわたり集中的な支援強化を行い、抵抗感をなくしたいとしています。
労働力不足が深刻化
◆高齢者雇用
少子高齢化の進展、高年齢者の雇用の安定に関する法律の改正を受け、高齢者活用が、企業の大きな課題となっています。今回紹介するのは、厚生労働省「平成19年度高齢者雇用開発コンテスト」最優秀賞を受賞した「部品工業㈱」は、定年のない、勤務形態も自由に設定できるエージレス雇用を実現した事例です。
◆弱者に優しい改善策が奏効
建機車体部品の製造を主とする部品工業株式会社は、少量多品種注文への対応力と製品精度の高さによりメーカー各社からの厚い信頼を得ています。これを支えているのがエージレスで働く高齢熟練社員です。同社は、全社員137人のうち、50歳以上が6割近くを占め、60歳以上の比率は33%と3人に1人以上が高齢者という状況です。また、70歳以上者も6人在職しています。
背景には、新卒者の採用・育成が困難ななか、即戦力確保のため中途採用を活発化させてきたことがあります。技術者の高齢化は深刻で、30~40歳代の熟練工の採用は困難な状況にあったのです。そこで、退職した高齢者で再就職を希望した者を積極的に採用して、これに伴い退職金制度を廃止し、退職金原資は月例給与に組み入れるということを行いました。雇用形態については、正社員(月給制)と準社員(パートかフルタイムの時給契約社員)があり、60歳代の8割は準社員となっています。また、不足する労働力を確保するためには、高齢者を準社員として採用し、高度熟練者から高齢一般工へOJTによる技術指導を実施することで、労働力不足と人件費上昇の問題を同時に解決しています。60歳以降も、いずれも定年とは無関係に、身分を維持できますが、正社員が60歳以降に短時間就労を希望した場合には準社員へ転換できるようにしています。
◆エージレス雇用とは?
勤務形態については、フルに働きたいか、年金併給で余裕を持って勤めたいかなど、ライフスタイルの違いにより選択できるものになっています。月間所定労働時間を正社員=173時間、準社員=173時間もしくは130時間未満から選べ、130時間未満の場合は、週3~5日勤務、月50時間以上~130時間未満という自由度の高い勤務シフトが組めます。
エージレス雇用の推進で大きなポイントを占めるのが職場改善の取組みです。治具・工具をそれぞれの持ち場で工夫したり、ロボットの導入などにより作業能力・スピードアップをもたらし、作業の省力化と安全性と同時に高齢者の働ける職場を拡大しました。熟練者の作業に余裕が出てきたことによって、若手への技術伝承機会も確保できるようになってきました。
2030年までは、若年者、女性、高齢者などが労働市場参加を実現することで、労働力減少を一定程度緩和できますといわれていますが、同年以降は現在の少子化の影響で若年人口が「激減」する見通しで、今後ますます「熟練労働力」の不足が懸念されます。
2007/11/02
平成19年11月号
「日雇い派遣労働者」にも雇用保険を適用
◆厚生労働省が方針決定
厚生労働省は、1日単位で日払いの仕事に派遣される「日雇い派遣労働者」「スポット派遣労働者」に対しても「日雇い雇用保険」を適用し、日雇い労働者向けの失業手当を支給する方針を固めました。
◆「日雇い雇用保険」とは
もともと「日雇い雇用保険」は、建設作業員など、日替わりで複数の事業所で直接雇用される日雇い労働者の失業対策として始まった制度です。
派遣会社に雇われる日雇い派遣労働者については、職場に直接雇用されるわけではないことから、「制度創設時に想定していない働き方」としてこれまで適用対象となっていませんでした。
◆日雇い派遣労働者の実態
いま、この日雇い派遣が、ワーキングプアの温床となっているといわれています。不安定な雇用実態のため、低収入からいつまでも抜け出せないのです。
日雇い派遣労働者の多くは、前日に携帯電話やメール等で仕事を予約し、直接派遣先に出向いて就労し、日給を手にしています。仕事は毎日保証されず、収入は不安定です。また、多くの仕事は日給が6,000円程度、1カ月フルに働いても月収は12~13万円程度にしかなりません。こうした人々が、現在、家賃が払えないためにインターネットカフェ等に寝泊りする「ネットカフェ難民」としてクローズアップされています。
今回の雇用保険の適用は、不安定な日雇い派遣労働者のセーフティーネットの役割を果たすことになると期待されています。
◆失業手当をもらうには
実際に手当が支給されるためには、1.複数の派遣会社に登録し、職場を転々として不安定な雇用状態にある、2.ハローワークで求職しているなどの条件を満たし、職業安定所で勤務実態が日雇い労働者並みに不安定であると認められる必要があります。受給月の直前2カ月間で、複数の派遣会社から派遣されて26日以上仕事をしていれば、仕事がない日に、勤務状況に応じて日額4,100~7,500円の失業手当を受け取ることができます。
◆今後の課題は?
雇用保険の適用が広がったことは、これまで不安定な雇用状況に置かれていた日雇い派遣労働者にとってよいことでしょう。しかし、このまま不安定な日雇い派遣労働者のままでいてよいのか、という問題は未解決です。
厚生労働省では、「安易な給付は不安定就労を定着させるおそれがある」として、失業認定の際には安定的な職業の紹介にも力を入れていく考えです。
「職場意識改善助成金」新設へ―残業削減などで総額150万円支給
◆職場意識改善の取組みに助成
働き盛りの30代の過労死が社会問題になっています。この問題に関連し、厚生労働省では、平成20年度から「職場意識改善助成金」を新設する方針を固めました。これまでにも施設設備や制度導入に関しての助成金はありましたが、職場意識改善の取組みが助成の対象となるのは、これが初めてとなります。
◆「職場意識改善助成金」とは?
厚生労働省では、平成20年度の重点施策として、「ワーク・ライフ・バランス」の実現を掲げています。仕事と生活の両立が可能となるよう、企業の取組みに対する支援と社会的気運の醸成に力を入れる方針です。
今回の職場意識改善助成金の新設もその一環です。労働時間を減らしたり、有給休暇の取得促進を行ったりすることを目的として打ち出されました。中小企業が、労働時間等設定改善法に基づいて労働時間の適正化・職場の意識改善などを進めるなど業務管理の改善を行い、かつ、年休取得率60%以上または所定外労働を20%削減するなど一定レベル以上の数値目標を達成した場合、助成金が支給される予定です。
◆支給までの流れ
支給対象となるのは、2年間にわたり労働時間などの設定改善に積極的に取り組む意欲があり、しかも一定の成果が期待できる、常時使用する労働者数300人以下の中小企業です。
この助成金を受けたい企業は、まず、労働時間などの設定改善に向けた取組み計画を作成し、「事業主が講ずべき労働時間等の設定の改善のための措置」に基づき、労働時間等設定改善委員会の設置・開催と、取り組み方針などの内外への公表を行うことが必要です。その後、年度終了時に設定改善指標の確認を行い、向上していた場合には助成金が支給される予定です。
◆助成額
以下の額が支給される予定です。総支給額は、最大150万円となります。
1.1年度目終了後に、設定改善指標が少しでも向上した場合に50万円
2.2年度目終了後に、さらに同指標が向上した場合に50万円
3.2年度目終了時点で、一定の数値目標をクリアしている場合に50万円
国民年金・国民年金基金をめぐる状況
◆国民年金保険料の納付状況
社会保険庁は、2006年度の国民年金保険料の年齢層別の実質納付率を明らかにしました。これは、納付を免除されている失業者や、納付猶予を受けている学生も分母に加えて算出した納付率です。これまでは免除・猶予者を分母から除外して納付率を算出してきましたが、「実態を反映していない」という指摘を受け、初めて実質納付率が算出されました。
社会保険庁の発表によると、全年齢層平均の納付率は49%。年齢層が下がるにつれて納付率は低くなり、40-44歳から下の年齢層はすべて50%を割り込んでいます。
国民年金加入者の2人に1人が保険料を納めていない計算となり、国民年金の空洞化が一段と進んでいる実態が浮かび上がっています。特に、20-24歳の層では26.9%、25-29歳の層では40.4%と、若くなるほど未納が深刻です。
未納分については将来年金が給付されませんから、未納が与える年金財政への影響は少ないものと見込まれますが、今後、無年金で生活保護に頼る人が増えることが懸念されます。
なお、社会保険庁が従来公表してきた公式納付率では、平均が66.3%、最も低い20-24歳の層でも56.2%となっていました。
◆国民年金基金加入の見直し
ところで、国民年金に上乗せして厚生年金に加入しているサラリーマンなどの給与所得者と、国民年金だけにしか加入していない第1号被保険者とでは、将来受け取る年金額に大きな差が生じます。この年金額の差を解消するための上乗せ制度として、第1号被保険者が加入できる「国民年金基金」があります。
厚生労働大臣は、この基金の加入資格を見直し、60~64歳で国民年金に任意加入している人も基金に入ることができるよう検討することを表明しました。実現すれば、満60歳時点で保険料納付期間が40年に足りず、給付を増やすために国民年金に任意加入している60~64歳の約25万人が、基金への加入を認められることになります。併せて、掛け金の最低額の引下げも検討されます。現在、20歳男性で月額9,000円となっている掛け金ですが、6,000円程度まで引き下げられる見込みです。
国民年金基金制度の加入者数は、国民年金加入者の3.3%にとどまっています。今回の見直しは、利用しやすい仕組みにして基金の加入者数を増やし、国民年金の受給者が受け取ることのできる年金水準をかさ上げすることをねらいとしています。
育児休業中の「eラーニング」は労働時間に含まれる?
◆復職者向けプログラムの活用
育児休業中の30歳代女性社員。1年半ぶりに職場復帰しますが、会社にインターネットを通じた復職者向け教育プログラムがあることを知りました。ブランクを埋めるため利用したいと思っていますが、取り組む時間は労働時間として賃金は支払われるのでしょうか。
◆任意による取組みが前提、労働に当たらず
育児・介護休業法で定められている育児休業は、原則、子の出生した日から1歳になる誕生日の前日まで取得できます。2005年施行の法改正で、保育所に入所を希望しながら入れない場合などには子が1歳6カ月に達するまで休業できるようになり、子育てに専念できる時間が長くなりました。半面、職場を長期間離れていたことで、復帰を前に不安に思う女性も少なくありません。
こうした中、スムーズな復帰を目指し、ネットを通じて自宅で新しいパソコンソフトの使い方や英会話、経理知識などを学ぶことのできる「eラーニング」のプログラムを提供する企業も出てきています。プログラムの中には、復帰する職場の同僚や上司のほか、同じ休職者とブログを使ってやりとりできる機能があるものもあります。こうしたプログラムに取り組むことは、労働者側にも有効です。
ただ、「eラーニング」に取り組む時間は、労働時間と認められるのは難しいようです。一見、在宅勤務のように見えますが、あくまで休業中ですから、会社が提供したプログラムであっても、労働者側の任意による取組みが前提とされるためです。
◆プログラムの提供は可、不利益な取扱いは不可
円滑な職場復帰は会社側にもメリットがあるだけに、積極的に活用したいという企業もあります。しかし、厚生労働省職業家庭両立課は、「育児休業法は会社側に、必要な措置を講ずる努力義務を課していますが、労働者側に職場復帰用のプログラムを強制して実施させることはできない」と指摘しています。また、手続上は任意としながら、受講しない女性に職場復帰後に不利益な人事上の取扱いを行うことも、「育児休業法の趣旨に反するものとして許されない」(同課)と注意喚起しています。
◆ポイントは?
1.受講の強制はできないが、プログラムの提供は可
2.受講しない労働者への不利益な取扱いは不可
会社での研究を無断で公表したらどうなる?
◆研究の成果を論文に
メーカー会社勤務の研究職。研究成果が製品にならず気をもんでいたところ、出版社から「成果を論文にして発表しないか」と持ちかけられました。会社を辞めてでも発表したいのですが、会社に無断で大丈夫でしょうか。
◆懲戒や賠償請求のおそれ
研究開発を行う企業は、通常、「実験データなどを会社の事前了解なしに第三者に開示してはならない」などと、就業規則や入社時の誓約書で研究やノウハウの公表を禁じています。「会社に不利な行為はしない」という包括的な懲戒事由は、ほとんどの企業が規則に盛り込んでいます。
会社に無断で研究を公表したり第三者に漏らしたりすれば、就業規則違反で解雇も含む懲戒処分の対象となり得ます。会社を辞めてからの公表であっても、研究の公表に伴う会社の逸失利益について、賠償を求められるおそれがあります。
◆不正競争防止法の営業秘密に当たる可能性も
研究内容の社内での取扱い次第では、不正競争防止法(不競法)上の「営業秘密」に当たる可能性もあります。経済産業省によると、研究データなどが同法の営業秘密となるのは、1.データにマル秘マークを付すなど秘密として管理している、2.企業に役立つ、3.一般に知られていない、といった条件をすべて満たす場合とされています。製品開発などに絡み、社員が業務として取り組んできた研究であれば、通常は営業秘密に該当すると考えられます。その技術を生かした製品の独占販売ができなくなるなど、会社が損害を受けるとわかっているのに研究内容を明かせば、不競法違反に問われかねません。
不競法に違反すると損害賠償と差止請求の対象となるほか、5年以下の懲役、500万円以下の罰金が科せられる可能性があります。同法は損害賠償額算定方法を明示しており、研究内容が営業秘密であれば、そうでない場合より会社側は賠償を求めやすいとされています。
◆ポイントは?
1.無断公表は懲戒処分相当、会社から賠償請求の恐れもある
2.内容が営業秘密に該当すれば刑事罰の可能性もある
医療保険・介護保険自己負担に上限設定
◆医療制度改革の一環
2008年4月から、医療制度改革の一環として、「高額医療・高額介護合算制度」が新たに導入される予定です。これは、医療保険と介護保険の両方を利用する世帯の自己負担が重くなり過ぎないよう、合計額に上限を設けるものです。
◆利用者の負担を軽減
「高額医療・高額介護合算制度」は、国民健康保険・健保組合といった健康保険ごとに、加入者本人と扶養家族の医療と介護サービスの利用額を合計し、一定の負担限度額を超えた分を払い戻す仕組みです。
現在は医療と介護、それぞれで限度額を定めています。このため、例えば同じ世帯に手厚い介護が必要な高齢者と病気などで長期入院する患者がいるような場合、自己負担の合計額が膨らんで負担が過度に重くなることがありました。新制度では医療と介護を合算した負担上限額を設けるため、患者負担額は軽減されます。
負担限度額は、年齢や所得に応じて7段階で設定されており、所得が少ないほど、高齢になるほど、負担が軽くなるように設定されています。75歳以上の人がいる一般所得世帯の年56万円を基本として、年19万円から年126万円まで分けられています。
例えば75歳以上の一般所得者の場合、現在は医療・介護を合わせると最大で年98万円の負担になる可能性がありましたので、新制度の導入後はこの6割程度の負担で済むことになります。
◆保険料引上げにつながる可能性も
利用者の負担が減る一方、高齢化で該当者が急増すると財政負担が増す可能性もあります。
新制度によって高齢者世帯などの負担が減る分は国民健康保険や健保組合などの各健康保険や介護保険の財源から追加で拠出することになりますが、厚生労働省は当面はいまの財源で吸収できる規模とみています。
ただ、日本では高齢化が加速しており、医療や介護にかかる費用はこれからも増えるのが確実です。政府は医療コストの削減や要介護者の減少などをにらんだ取組みを進めていますが、新制度の該当者が増えれば、中長期的には医療や介護の保険料の引上げにつながる可能性もあります。
社会保険加入手続を怠った会社に賠償請求できるか
◆将来受け取る年金額が少なくなる
会社が社会保険の加入手続をしていないことがあります。労働者がそのことを知らないでいると、その期間は保険料を納めていないことになりますから、退職後に受け取る年金も少なくなってしまいます。
こういった場合、加入手続をとらなかった会社に対して、損害賠償を請求できるのでしょうか。
◆「社会保険」とは
健康保険と厚生年金保険を合わせて「社会保険」と呼びます。健康保険法と厚生年金保険法の「適用事業所」に該当する会社の事業主は、雇用者のために社会保険の加入手続を行うことが義務付けられています。
社会保険料は労働者と会社が折半で支払うため、労働者にとって加入のメリットは大きいものです。一方、経営状態が苦しい会社には大きな負担となります。そのため、保険料の支払いを免れようと、加入手続をとらない会社があるのです。しかし、社会保険庁に対して労働者の「被保険者資格取得」の届出をしなかったり、ウソの届出をしたりした会社は、健康保険法と厚生年金保険法の罰則対象になります。
◆損害の立証が難しいことも
では、未加入によって、会社側は民事上の賠償義務を負うのでしょうか。事業主が届出を怠ることは、労働者の法益を直接に侵害する違法なもので、労働契約上の不履行とされる場合もありえます。
ただ、若い労働者の場合、提訴時点では年金受給資格を得られるまで働き続けるかわからず、損害立証が難しくなります。退職して年金を受給している場合は、受けられたはずの年金額の計算ができ、損害額算定が比較的容易です。
◆自ら確認を
「確認しなかった労働者の過失」とされないように、加入手続がとられているかどうか確認することが大切です。社会保険事務所に問い合わせれば、「誰が」「いつから」社会保険の被保険者として届けられているか確認することができます。
また、「年齢制限がある」等の虚偽の説明をして、「社会保険への加入資格がない」と言う会社もあります。おかしいと感じたら社会保険事務所や社会保険労務士に相談することが大切です。
4分野を1枚に統一する「社会保障カード」
◆様々な履歴を一元管理
厚生労働省は、社会保障の履歴を一元管理する「社会保障カード」の導入を議論する有識者検討会の初会合を開き、年金・医療・介護・雇用の4つの制度の被保険者証を1枚のICカードに統一することで合意しました。将来は健康診断の結果などの医療情報も閲覧できるようにすることでも合意しています。この社会保障カードは、2011年度をメドに導入される予定です。
◆年金・医療・介護・雇用の4分野
これまで、社会保障カードでどの制度の情報を一元管理するかがあいまいでした。会合では、まず年金・医療・介護・雇用の4分野を管理対象にする方針を確認しました。
社会保障カードは原則国民1人に1枚発行し、年金手帳や健康保険証、介護保険証などの役割を兼ねます。これまで何種類もの証書が必要だったところ、1枚のICカードを持ち運ぶだけでよくなりますから、便利になります。また、パソコンで年金の加入履歴などを確認できるようになるため、公的年金の納付記録漏れなどの不祥事が起きても、加入者が自ら発見できるようになります。
また、将来はICカードで自分の医療情報を見られるようにするなど、柔軟な制度設計にすることとなっています。
◆今後の焦点は?
今後の焦点は、4つの社会保障制度が個人にそれぞれ割り当てている番号の統一の問題です。基礎年金番号や住民票コードを使う案、新しい番号で統一する案が浮上していますが、会合では意見がまとまりませんでした。番号を統一せず、1枚のICカードに4つの個人番号を併記する案も出ています。
また、雇用保険が被保険者資格の管理に氏名・生年月日・性別を使っているのに対し、年金ではこれに住所も加えるなど、制度によって必要な管理情報が異なっています。これをどう統一するかも課題となります。
さらに、セキュリティー面の問題もあります。情報管理が甘いと、膨大な情報が一気に流出する危険があります。この点については、内閣官房情報セキュリティーセンターと協力し、セキュリティーを強化するとのことです。
◆厚生労働省が方針決定
厚生労働省は、1日単位で日払いの仕事に派遣される「日雇い派遣労働者」「スポット派遣労働者」に対しても「日雇い雇用保険」を適用し、日雇い労働者向けの失業手当を支給する方針を固めました。
◆「日雇い雇用保険」とは
もともと「日雇い雇用保険」は、建設作業員など、日替わりで複数の事業所で直接雇用される日雇い労働者の失業対策として始まった制度です。
派遣会社に雇われる日雇い派遣労働者については、職場に直接雇用されるわけではないことから、「制度創設時に想定していない働き方」としてこれまで適用対象となっていませんでした。
◆日雇い派遣労働者の実態
いま、この日雇い派遣が、ワーキングプアの温床となっているといわれています。不安定な雇用実態のため、低収入からいつまでも抜け出せないのです。
日雇い派遣労働者の多くは、前日に携帯電話やメール等で仕事を予約し、直接派遣先に出向いて就労し、日給を手にしています。仕事は毎日保証されず、収入は不安定です。また、多くの仕事は日給が6,000円程度、1カ月フルに働いても月収は12~13万円程度にしかなりません。こうした人々が、現在、家賃が払えないためにインターネットカフェ等に寝泊りする「ネットカフェ難民」としてクローズアップされています。
今回の雇用保険の適用は、不安定な日雇い派遣労働者のセーフティーネットの役割を果たすことになると期待されています。
◆失業手当をもらうには
実際に手当が支給されるためには、1.複数の派遣会社に登録し、職場を転々として不安定な雇用状態にある、2.ハローワークで求職しているなどの条件を満たし、職業安定所で勤務実態が日雇い労働者並みに不安定であると認められる必要があります。受給月の直前2カ月間で、複数の派遣会社から派遣されて26日以上仕事をしていれば、仕事がない日に、勤務状況に応じて日額4,100~7,500円の失業手当を受け取ることができます。
◆今後の課題は?
雇用保険の適用が広がったことは、これまで不安定な雇用状況に置かれていた日雇い派遣労働者にとってよいことでしょう。しかし、このまま不安定な日雇い派遣労働者のままでいてよいのか、という問題は未解決です。
厚生労働省では、「安易な給付は不安定就労を定着させるおそれがある」として、失業認定の際には安定的な職業の紹介にも力を入れていく考えです。
「職場意識改善助成金」新設へ―残業削減などで総額150万円支給
◆職場意識改善の取組みに助成
働き盛りの30代の過労死が社会問題になっています。この問題に関連し、厚生労働省では、平成20年度から「職場意識改善助成金」を新設する方針を固めました。これまでにも施設設備や制度導入に関しての助成金はありましたが、職場意識改善の取組みが助成の対象となるのは、これが初めてとなります。
◆「職場意識改善助成金」とは?
厚生労働省では、平成20年度の重点施策として、「ワーク・ライフ・バランス」の実現を掲げています。仕事と生活の両立が可能となるよう、企業の取組みに対する支援と社会的気運の醸成に力を入れる方針です。
今回の職場意識改善助成金の新設もその一環です。労働時間を減らしたり、有給休暇の取得促進を行ったりすることを目的として打ち出されました。中小企業が、労働時間等設定改善法に基づいて労働時間の適正化・職場の意識改善などを進めるなど業務管理の改善を行い、かつ、年休取得率60%以上または所定外労働を20%削減するなど一定レベル以上の数値目標を達成した場合、助成金が支給される予定です。
◆支給までの流れ
支給対象となるのは、2年間にわたり労働時間などの設定改善に積極的に取り組む意欲があり、しかも一定の成果が期待できる、常時使用する労働者数300人以下の中小企業です。
この助成金を受けたい企業は、まず、労働時間などの設定改善に向けた取組み計画を作成し、「事業主が講ずべき労働時間等の設定の改善のための措置」に基づき、労働時間等設定改善委員会の設置・開催と、取り組み方針などの内外への公表を行うことが必要です。その後、年度終了時に設定改善指標の確認を行い、向上していた場合には助成金が支給される予定です。
◆助成額
以下の額が支給される予定です。総支給額は、最大150万円となります。
1.1年度目終了後に、設定改善指標が少しでも向上した場合に50万円
2.2年度目終了後に、さらに同指標が向上した場合に50万円
3.2年度目終了時点で、一定の数値目標をクリアしている場合に50万円
国民年金・国民年金基金をめぐる状況
◆国民年金保険料の納付状況
社会保険庁は、2006年度の国民年金保険料の年齢層別の実質納付率を明らかにしました。これは、納付を免除されている失業者や、納付猶予を受けている学生も分母に加えて算出した納付率です。これまでは免除・猶予者を分母から除外して納付率を算出してきましたが、「実態を反映していない」という指摘を受け、初めて実質納付率が算出されました。
社会保険庁の発表によると、全年齢層平均の納付率は49%。年齢層が下がるにつれて納付率は低くなり、40-44歳から下の年齢層はすべて50%を割り込んでいます。
国民年金加入者の2人に1人が保険料を納めていない計算となり、国民年金の空洞化が一段と進んでいる実態が浮かび上がっています。特に、20-24歳の層では26.9%、25-29歳の層では40.4%と、若くなるほど未納が深刻です。
未納分については将来年金が給付されませんから、未納が与える年金財政への影響は少ないものと見込まれますが、今後、無年金で生活保護に頼る人が増えることが懸念されます。
なお、社会保険庁が従来公表してきた公式納付率では、平均が66.3%、最も低い20-24歳の層でも56.2%となっていました。
◆国民年金基金加入の見直し
ところで、国民年金に上乗せして厚生年金に加入しているサラリーマンなどの給与所得者と、国民年金だけにしか加入していない第1号被保険者とでは、将来受け取る年金額に大きな差が生じます。この年金額の差を解消するための上乗せ制度として、第1号被保険者が加入できる「国民年金基金」があります。
厚生労働大臣は、この基金の加入資格を見直し、60~64歳で国民年金に任意加入している人も基金に入ることができるよう検討することを表明しました。実現すれば、満60歳時点で保険料納付期間が40年に足りず、給付を増やすために国民年金に任意加入している60~64歳の約25万人が、基金への加入を認められることになります。併せて、掛け金の最低額の引下げも検討されます。現在、20歳男性で月額9,000円となっている掛け金ですが、6,000円程度まで引き下げられる見込みです。
国民年金基金制度の加入者数は、国民年金加入者の3.3%にとどまっています。今回の見直しは、利用しやすい仕組みにして基金の加入者数を増やし、国民年金の受給者が受け取ることのできる年金水準をかさ上げすることをねらいとしています。
育児休業中の「eラーニング」は労働時間に含まれる?
◆復職者向けプログラムの活用
育児休業中の30歳代女性社員。1年半ぶりに職場復帰しますが、会社にインターネットを通じた復職者向け教育プログラムがあることを知りました。ブランクを埋めるため利用したいと思っていますが、取り組む時間は労働時間として賃金は支払われるのでしょうか。
◆任意による取組みが前提、労働に当たらず
育児・介護休業法で定められている育児休業は、原則、子の出生した日から1歳になる誕生日の前日まで取得できます。2005年施行の法改正で、保育所に入所を希望しながら入れない場合などには子が1歳6カ月に達するまで休業できるようになり、子育てに専念できる時間が長くなりました。半面、職場を長期間離れていたことで、復帰を前に不安に思う女性も少なくありません。
こうした中、スムーズな復帰を目指し、ネットを通じて自宅で新しいパソコンソフトの使い方や英会話、経理知識などを学ぶことのできる「eラーニング」のプログラムを提供する企業も出てきています。プログラムの中には、復帰する職場の同僚や上司のほか、同じ休職者とブログを使ってやりとりできる機能があるものもあります。こうしたプログラムに取り組むことは、労働者側にも有効です。
ただ、「eラーニング」に取り組む時間は、労働時間と認められるのは難しいようです。一見、在宅勤務のように見えますが、あくまで休業中ですから、会社が提供したプログラムであっても、労働者側の任意による取組みが前提とされるためです。
◆プログラムの提供は可、不利益な取扱いは不可
円滑な職場復帰は会社側にもメリットがあるだけに、積極的に活用したいという企業もあります。しかし、厚生労働省職業家庭両立課は、「育児休業法は会社側に、必要な措置を講ずる努力義務を課していますが、労働者側に職場復帰用のプログラムを強制して実施させることはできない」と指摘しています。また、手続上は任意としながら、受講しない女性に職場復帰後に不利益な人事上の取扱いを行うことも、「育児休業法の趣旨に反するものとして許されない」(同課)と注意喚起しています。
◆ポイントは?
1.受講の強制はできないが、プログラムの提供は可
2.受講しない労働者への不利益な取扱いは不可
会社での研究を無断で公表したらどうなる?
◆研究の成果を論文に
メーカー会社勤務の研究職。研究成果が製品にならず気をもんでいたところ、出版社から「成果を論文にして発表しないか」と持ちかけられました。会社を辞めてでも発表したいのですが、会社に無断で大丈夫でしょうか。
◆懲戒や賠償請求のおそれ
研究開発を行う企業は、通常、「実験データなどを会社の事前了解なしに第三者に開示してはならない」などと、就業規則や入社時の誓約書で研究やノウハウの公表を禁じています。「会社に不利な行為はしない」という包括的な懲戒事由は、ほとんどの企業が規則に盛り込んでいます。
会社に無断で研究を公表したり第三者に漏らしたりすれば、就業規則違反で解雇も含む懲戒処分の対象となり得ます。会社を辞めてからの公表であっても、研究の公表に伴う会社の逸失利益について、賠償を求められるおそれがあります。
◆不正競争防止法の営業秘密に当たる可能性も
研究内容の社内での取扱い次第では、不正競争防止法(不競法)上の「営業秘密」に当たる可能性もあります。経済産業省によると、研究データなどが同法の営業秘密となるのは、1.データにマル秘マークを付すなど秘密として管理している、2.企業に役立つ、3.一般に知られていない、といった条件をすべて満たす場合とされています。製品開発などに絡み、社員が業務として取り組んできた研究であれば、通常は営業秘密に該当すると考えられます。その技術を生かした製品の独占販売ができなくなるなど、会社が損害を受けるとわかっているのに研究内容を明かせば、不競法違反に問われかねません。
不競法に違反すると損害賠償と差止請求の対象となるほか、5年以下の懲役、500万円以下の罰金が科せられる可能性があります。同法は損害賠償額算定方法を明示しており、研究内容が営業秘密であれば、そうでない場合より会社側は賠償を求めやすいとされています。
◆ポイントは?
1.無断公表は懲戒処分相当、会社から賠償請求の恐れもある
2.内容が営業秘密に該当すれば刑事罰の可能性もある
医療保険・介護保険自己負担に上限設定
◆医療制度改革の一環
2008年4月から、医療制度改革の一環として、「高額医療・高額介護合算制度」が新たに導入される予定です。これは、医療保険と介護保険の両方を利用する世帯の自己負担が重くなり過ぎないよう、合計額に上限を設けるものです。
◆利用者の負担を軽減
「高額医療・高額介護合算制度」は、国民健康保険・健保組合といった健康保険ごとに、加入者本人と扶養家族の医療と介護サービスの利用額を合計し、一定の負担限度額を超えた分を払い戻す仕組みです。
現在は医療と介護、それぞれで限度額を定めています。このため、例えば同じ世帯に手厚い介護が必要な高齢者と病気などで長期入院する患者がいるような場合、自己負担の合計額が膨らんで負担が過度に重くなることがありました。新制度では医療と介護を合算した負担上限額を設けるため、患者負担額は軽減されます。
負担限度額は、年齢や所得に応じて7段階で設定されており、所得が少ないほど、高齢になるほど、負担が軽くなるように設定されています。75歳以上の人がいる一般所得世帯の年56万円を基本として、年19万円から年126万円まで分けられています。
例えば75歳以上の一般所得者の場合、現在は医療・介護を合わせると最大で年98万円の負担になる可能性がありましたので、新制度の導入後はこの6割程度の負担で済むことになります。
◆保険料引上げにつながる可能性も
利用者の負担が減る一方、高齢化で該当者が急増すると財政負担が増す可能性もあります。
新制度によって高齢者世帯などの負担が減る分は国民健康保険や健保組合などの各健康保険や介護保険の財源から追加で拠出することになりますが、厚生労働省は当面はいまの財源で吸収できる規模とみています。
ただ、日本では高齢化が加速しており、医療や介護にかかる費用はこれからも増えるのが確実です。政府は医療コストの削減や要介護者の減少などをにらんだ取組みを進めていますが、新制度の該当者が増えれば、中長期的には医療や介護の保険料の引上げにつながる可能性もあります。
社会保険加入手続を怠った会社に賠償請求できるか
◆将来受け取る年金額が少なくなる
会社が社会保険の加入手続をしていないことがあります。労働者がそのことを知らないでいると、その期間は保険料を納めていないことになりますから、退職後に受け取る年金も少なくなってしまいます。
こういった場合、加入手続をとらなかった会社に対して、損害賠償を請求できるのでしょうか。
◆「社会保険」とは
健康保険と厚生年金保険を合わせて「社会保険」と呼びます。健康保険法と厚生年金保険法の「適用事業所」に該当する会社の事業主は、雇用者のために社会保険の加入手続を行うことが義務付けられています。
社会保険料は労働者と会社が折半で支払うため、労働者にとって加入のメリットは大きいものです。一方、経営状態が苦しい会社には大きな負担となります。そのため、保険料の支払いを免れようと、加入手続をとらない会社があるのです。しかし、社会保険庁に対して労働者の「被保険者資格取得」の届出をしなかったり、ウソの届出をしたりした会社は、健康保険法と厚生年金保険法の罰則対象になります。
◆損害の立証が難しいことも
では、未加入によって、会社側は民事上の賠償義務を負うのでしょうか。事業主が届出を怠ることは、労働者の法益を直接に侵害する違法なもので、労働契約上の不履行とされる場合もありえます。
ただ、若い労働者の場合、提訴時点では年金受給資格を得られるまで働き続けるかわからず、損害立証が難しくなります。退職して年金を受給している場合は、受けられたはずの年金額の計算ができ、損害額算定が比較的容易です。
◆自ら確認を
「確認しなかった労働者の過失」とされないように、加入手続がとられているかどうか確認することが大切です。社会保険事務所に問い合わせれば、「誰が」「いつから」社会保険の被保険者として届けられているか確認することができます。
また、「年齢制限がある」等の虚偽の説明をして、「社会保険への加入資格がない」と言う会社もあります。おかしいと感じたら社会保険事務所や社会保険労務士に相談することが大切です。
4分野を1枚に統一する「社会保障カード」
◆様々な履歴を一元管理
厚生労働省は、社会保障の履歴を一元管理する「社会保障カード」の導入を議論する有識者検討会の初会合を開き、年金・医療・介護・雇用の4つの制度の被保険者証を1枚のICカードに統一することで合意しました。将来は健康診断の結果などの医療情報も閲覧できるようにすることでも合意しています。この社会保障カードは、2011年度をメドに導入される予定です。
◆年金・医療・介護・雇用の4分野
これまで、社会保障カードでどの制度の情報を一元管理するかがあいまいでした。会合では、まず年金・医療・介護・雇用の4分野を管理対象にする方針を確認しました。
社会保障カードは原則国民1人に1枚発行し、年金手帳や健康保険証、介護保険証などの役割を兼ねます。これまで何種類もの証書が必要だったところ、1枚のICカードを持ち運ぶだけでよくなりますから、便利になります。また、パソコンで年金の加入履歴などを確認できるようになるため、公的年金の納付記録漏れなどの不祥事が起きても、加入者が自ら発見できるようになります。
また、将来はICカードで自分の医療情報を見られるようにするなど、柔軟な制度設計にすることとなっています。
◆今後の焦点は?
今後の焦点は、4つの社会保障制度が個人にそれぞれ割り当てている番号の統一の問題です。基礎年金番号や住民票コードを使う案、新しい番号で統一する案が浮上していますが、会合では意見がまとまりませんでした。番号を統一せず、1枚のICカードに4つの個人番号を併記する案も出ています。
また、雇用保険が被保険者資格の管理に氏名・生年月日・性別を使っているのに対し、年金ではこれに住所も加えるなど、制度によって必要な管理情報が異なっています。これをどう統一するかも課題となります。
さらに、セキュリティー面の問題もあります。情報管理が甘いと、膨大な情報が一気に流出する危険があります。この点については、内閣官房情報セキュリティーセンターと協力し、セキュリティーを強化するとのことです。
2007/09/29
平成19年10月号
外国人雇用のルールが変わります!
◆改正雇用対策法が10月1日より施行
「雇用対策法の一部を改正する法律」が平成19年10月1日から施行されます。外国人雇用に関する改正内容は以下の通りです。
◆外国人雇用状況の届出が義務化
平成19年10月1日から、すべての事業主に、外国人労働者(特別永住者および在留資格が「外交」・「公用」の者を除く)の雇用または離職の際に、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期限、国籍等を記載してハローワークへ届け出ることが義務付けられます。
この届出は、雇用保険の被保険者に該当するしないにかかわらず届け出なければならず、届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合には、30万円以下の罰金の対象となります。
また、平成19年10月1日時点ですでに雇用されている外国人労働者についても、改正法施行後1年間(平成20年10月1日まで)に届出の提出が必要となります。これにより、例年行っていた6月1日時点での雇用状況報告書の提出がなくなります。
※上記内容の確認方法は?
〔氏名、在留資格、在留期限、生年月日、性別、国籍〕
→「外国人登録証明書」または「旅券(パスポート)」
〔資格外活動許可の有無〕
→「資格外活動許可証」または「就労資格証明書」
◆外国人労働者の雇用管理の改善が事業主の努力義務に
事業主は、外国人労働者について労働関係法令および社会保険関係法令を遵守し、外国人労働者が適切な労働条件および安全衛生の下、在留資格の範囲内で能力を発揮しつつ就労できるように、次に定める事項について、適切な措置を講ずるように努めなければなりません。
1.外国人労働者の募集および採用の適正化2適正な労働条件の確保3.安全衛生の確保4.雇用保険、労災保険、健康保険および厚生年金保険の適用5.適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等6.解雇の予防および再就職援助
6.4%の事業所が最低賃金法違反
◆全国1万1,120事業所を一斉監督
厚生労働省は、2007年6月に全国1万1,120事業所に実施した最低賃金に関する一斉監督の結果、約6.4%にあたる707事業所で最低賃金法違反が見つかったと発表しました。
◆業種別では「衣服その他の繊維製品製造業」がトップ
地域別最低賃金適用事業場のうち、違反が多くみられた業種は、順に、衣服その他の繊維製品製造業(違反事業場数110、監督実施事業場に対する違反率7.7%)、クリーニング業(同86、9.3%)、食料品製造業(同86、7.1%)、繊維工業(同43、7.1%)、飲食店(同43、3.9%)、理美容業(同38、5.4%)、ハイヤー・タクシー業(同18、16.8%)でした。
◆最低賃金に満たない労働者の7割は女性
監督実施事業場において最低賃金額未満の賃金しか支払いを受けていない労働者数は2,051人であり、監督実施事業場の労働者数に占める割合は1.2%でした。
このうち女性が1,384人(67.5%)、パート・アルバイトが1,168人(56.9%)、障害者が284人(13.8%)、外国人が150人(7.3%)となっています。
◆違反率はわずかに改善
2007年1月~3月に監督指導を実施したのは9,102事業場であり、そのうち最低賃金法に違反した事業場は666事業場で、違反率は7.3%でした。また、監督実施事業場において、最低賃金額未満の賃金しか支払いを受けていない労働者数は2,150人であり、監督実施事業場の労働者数に占める割合は1.7%でした。今回の結果より、わずかに減少したことがわかります。
厚生労働省では、最低賃金遵守のための、今後とも事業所に対する指導の強化に努め、最低賃金の周知徹底を図るとしています。
製造業の「偽装請負」防止へガイドライン
◆発注者と下請会社が取り組むべき措置
製造業の工場における構内下請けなどをめぐっては、「偽装請負」などの法令違反や、労働者が勤続を重ねて技能や技術を習得しても賃金が増えないなどの問題が指摘されています。
◆チェックシートも盛り込む
厚生労働省は、下請会社(請負事業者)・発注者それぞれが取り組むべき措置に関するガイドラインおよびチェックシートを作成し、その周知・啓発を6月下旬に都道府県労働局長に通達しています。
通達で示されたのは、以下の5つとなっています。
製造業の請負事業の雇用管理の改善および適正化の促進に取り組む・・・
・請負事業主が講ずるべき措置に関するガイドライン
・発注者が講ずるべき措置に関するガイドライン
・請負事業主が講ずるべき措置に関するガイドラインのチェックシート
・発注者が講ずるべき措置に関するガイドラインのチェックシート
・請負事業主および発注者が講ずるべき措置に関するガイドライン
◆労働力の貸し借りは原則禁止
製造業で一般に利用されている労働形態には、主に、1.出向(在籍型)、2.労働者派遣、3.請負契約による外注、4.業務委託契約による外注の4つがあります。
職業安定法44条により、労働者派遣と厚生労働大臣の許可を得て労働組合などが無料の労働供給事業を行う場合を除き、労働者供給事業を行うことおよびこうした業者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させることは禁止されています。
◆発注者が指揮命令すれば「偽装請負」に
請負か業務委託かは、契約の目的が仕事の完成にあるか、それとも業務の処理にあるのかによって異なりますが、どちらも製造業が下請業者の労働者を使用すること、すなわち、指揮命令を行うことが許されない点では同様です。
形式的に請負契約や業務委託契約を締結していても、実態は、発注者が請負業者・受託業者の労働者を指揮命令しているなど、請負・受託の基準を満たさない場合、実態は労働者派遣とみなされ、「偽装請負」とされることになります。
「適年廃止」まで5年を切っています
◆平成18年度の適年解約企業の44.8%が中退共を選択
平成18年度における、税制適格退職年金制度(適年)から中小企業退職金共済制度(中退共)への移行企業数は2,779社(前年度比30.3%減)、従業員数は78,686人(前年度比37.1%減)でした。減少の原因は、平成17年4月から適年資産の全額移換が可能となったことにより、平成17年度の移行企業数が一時的に増加したこととみられます。
なお、平成18年度中に適年を解約した企業のうち、中退共に移行した企業の割合は44.8%、平成14年度から18年度までの5年間では33.6%となっています。
◆適年は平成24年3月末で廃止
適年は平成24年3月末で廃止されることから、企業に残された期限はあと5年を切っています。加入企業としてはそれまでに他の企業年金制度に移行するなどの対応が必要であり、中退共は有力な移行先の1つになっています。
平成16年度までは適年資産移換限度額(378万円)があったため、限度額を超え移換できない金額が従業員に返戻(一時所得)されてしまうことが、移行を妨げる要因の1つになっていましたが、前述の通り、平成17年4月より適年試算を全額移換できるようになりました。
平成18年度に入ってからは月平均231社が中退共に加入しています。この結果、平成18年8月には適年から中退共への移行企業数は1万社を突破し、平成14年4月から平成19年3月末までの5年間で移行企業総数は11,780社、従業員総数は338,581人となっています。
「裁判員制度」スタートで企業の対応は?
◆大手企業では「裁判員休暇制度」導入を検討も
2009年(予定)に「裁判員制度」(「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」に基づき一般国民が刑事裁判に参加する制度)がスタートするのを控え、社員が裁判員に選ばれて裁判手続に参加する場合に有給休暇として扱う「裁判員休暇制度」の導入を検討している大手企業が増えているようです。
◆有給か無給かは企業の考え方次第
裁判所では、審理にかかる日数については「概ね1週間程度」との見通しを示していますが、それ以上に長引くケースが出てくることも考えられます。原則として、選ばれた国民は辞退はできません。やむを得ない理由がある場合は辞退を認められますが、その基準についてはまだ不透明な部分があります。
労働者が裁判員となるために休みを取ることは、公民権の行使として法律上認められ、仕事を休んだことを理由に会社が不利益な扱いをすることは禁じられています。ただし、有給とするか無給とするか、就業規則での規定化などは企業に任されているため、どのような支援体制を設けるかは企業の考え方次第といえます。
◆有給休暇制度創設は企業の社会的責任?
確率的に多くの社員が裁判員やその候補になる可能性が高い大企業では、CSR(企業の社会的責任)の一環として、「特別有給休暇」を創設する方向性を打ち出しているところが多いようです。人員体制に余裕のない中小企業では頭の痛い問題といえるでしょう。
◆裁判員の選出方法
1.選挙人名簿から1年分ずつ、くじで裁判員の候補者が選ばれます。名簿に載った時点で本人に通知がきます。
2.事件ごとに候補者の中からまた50~100人程度がくじで選ばれ、裁判所に呼び出されます。
3.その中から裁判員6人を選出します。
年間で3,500人に1人が裁判員または補充裁判員になり、候補者として裁判所に呼び出される人数はその10倍とみられています。
特定求職者雇用開発助成金が変わります
◆「特定求職者雇用開発助成金」とは?
特定求職者雇用開発助成金とは、高年齢者や障害者などの就職困難者をハローワークまたは適切な運用を期すことができる有料・無料職業紹介事業者の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して、賃金相当額の一部の助成が行われるものです。
◆現行の制度(定率方式…一定割合を助成)
1.高年齢者、障害者、母子家庭の母等(2以外の対象者)
・助成率…(大企業)4分の1(中小企業)3分の1
・助成期間…1年(6カ月ごとに2回)
2.重度障害者等(重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者)※短時間労働者を除く
・助成率…(大企業)3分の1(中小企業)2分の1
・助成期間・・・1年6カ月(6カ月ごとに3回)
※短時間労働者は上記1の助成率に3分の2を乗じます。
◆平成19年10月からの変更後(定額方式…一定額を助成)
1.高年齢者、障害者、母子家庭の母等(2、3以外の対象者)
・助成額…(大企業)50万円(25万円+25万円)(中小企業)60万円(30万円+30万円)
・助成期間…1年(6カ月ごとに2回)
2.高年齢者、障害者、母子家庭の母等(短時間労働者)
・助成額…(大企業)30万円(15万円+15万円)(中小企業)40万円(20万円+20万円)
・助成期間…1年(6カ月ごとに2回)
3.重度障害者等(重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者)※短時間労働者を除く
・助成額…(大企業)100万円(33万円+33万円+34万円)(中小企業)120万円(40万円+40万円+40万円)
・助成期間…1年6カ月(6カ月毎に3回)
パートタイム労働法の改正内容
◆来年4月から施行されます
少子高齢化、労働力人口減少の状況を踏まえ、パート労働者が能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため、パートタイム労働法が改正されました。
施行までに、改正法に沿った対応が必要となります。以下、改正のポイントをまとめてみました。
◆雇入れの際は労働条件を文書などで明確に
一定の労働条件について、明示が義務化されます(改正法6条)。また、待遇の決定にあたって考慮した事項について説明することが義務化されます(改正法13条)。
◆パート労働者の待遇は働き方に応じて決定を
パート労働者は、繁忙期に一時的に働く方から正社員と同様の仕事に従事し長期間働く方まで、その働き方は様々です。このため改正法では、パート労働者の待遇について、正社員との働き方の違いに応じて均衡(バランス)を図るための措置を講じるよう規定しています。
具体的には、「職務」、「人材活用の仕組み」、「契約期間」の3つの要件が正社員と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いをそれぞれ規定しています。
◆パート労働者から正社員へ転換するチャンスを
正社員への転換を推進するための措置(以下の措置またはこれらに準じた措置)を講じることが義務化されます(改正法12条)。
<講じる措置の例>
・正社員を募集する場合、その募集内容をすでに雇っているパート労働者にも通知する。
・正社員のポストを社内公募する場合、すでに雇っているパート労働者にも応募する機会を与える。
・パート労働者が正社員へ転換するための試験制度を設けるなどの転換制度を導入する。
◆パート労働者からの苦情の申出に対応を
パート労働者から苦情の申出を受けたときは、事業所内で自主的な解決を図ることが努力義務とされます(改正法19条)。
紛争解決援助の仕組みとして、都道府県労働局長による助言、指導、勧告、紛争調整委員会による調停が設けられます(改正法21、22条)。
◆改正雇用対策法が10月1日より施行
「雇用対策法の一部を改正する法律」が平成19年10月1日から施行されます。外国人雇用に関する改正内容は以下の通りです。
◆外国人雇用状況の届出が義務化
平成19年10月1日から、すべての事業主に、外国人労働者(特別永住者および在留資格が「外交」・「公用」の者を除く)の雇用または離職の際に、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期限、国籍等を記載してハローワークへ届け出ることが義務付けられます。
この届出は、雇用保険の被保険者に該当するしないにかかわらず届け出なければならず、届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合には、30万円以下の罰金の対象となります。
また、平成19年10月1日時点ですでに雇用されている外国人労働者についても、改正法施行後1年間(平成20年10月1日まで)に届出の提出が必要となります。これにより、例年行っていた6月1日時点での雇用状況報告書の提出がなくなります。
※上記内容の確認方法は?
〔氏名、在留資格、在留期限、生年月日、性別、国籍〕
→「外国人登録証明書」または「旅券(パスポート)」
〔資格外活動許可の有無〕
→「資格外活動許可証」または「就労資格証明書」
◆外国人労働者の雇用管理の改善が事業主の努力義務に
事業主は、外国人労働者について労働関係法令および社会保険関係法令を遵守し、外国人労働者が適切な労働条件および安全衛生の下、在留資格の範囲内で能力を発揮しつつ就労できるように、次に定める事項について、適切な措置を講ずるように努めなければなりません。
1.外国人労働者の募集および採用の適正化2適正な労働条件の確保3.安全衛生の確保4.雇用保険、労災保険、健康保険および厚生年金保険の適用5.適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等6.解雇の予防および再就職援助
6.4%の事業所が最低賃金法違反
◆全国1万1,120事業所を一斉監督
厚生労働省は、2007年6月に全国1万1,120事業所に実施した最低賃金に関する一斉監督の結果、約6.4%にあたる707事業所で最低賃金法違反が見つかったと発表しました。
◆業種別では「衣服その他の繊維製品製造業」がトップ
地域別最低賃金適用事業場のうち、違反が多くみられた業種は、順に、衣服その他の繊維製品製造業(違反事業場数110、監督実施事業場に対する違反率7.7%)、クリーニング業(同86、9.3%)、食料品製造業(同86、7.1%)、繊維工業(同43、7.1%)、飲食店(同43、3.9%)、理美容業(同38、5.4%)、ハイヤー・タクシー業(同18、16.8%)でした。
◆最低賃金に満たない労働者の7割は女性
監督実施事業場において最低賃金額未満の賃金しか支払いを受けていない労働者数は2,051人であり、監督実施事業場の労働者数に占める割合は1.2%でした。
このうち女性が1,384人(67.5%)、パート・アルバイトが1,168人(56.9%)、障害者が284人(13.8%)、外国人が150人(7.3%)となっています。
◆違反率はわずかに改善
2007年1月~3月に監督指導を実施したのは9,102事業場であり、そのうち最低賃金法に違反した事業場は666事業場で、違反率は7.3%でした。また、監督実施事業場において、最低賃金額未満の賃金しか支払いを受けていない労働者数は2,150人であり、監督実施事業場の労働者数に占める割合は1.7%でした。今回の結果より、わずかに減少したことがわかります。
厚生労働省では、最低賃金遵守のための、今後とも事業所に対する指導の強化に努め、最低賃金の周知徹底を図るとしています。
製造業の「偽装請負」防止へガイドライン
◆発注者と下請会社が取り組むべき措置
製造業の工場における構内下請けなどをめぐっては、「偽装請負」などの法令違反や、労働者が勤続を重ねて技能や技術を習得しても賃金が増えないなどの問題が指摘されています。
◆チェックシートも盛り込む
厚生労働省は、下請会社(請負事業者)・発注者それぞれが取り組むべき措置に関するガイドラインおよびチェックシートを作成し、その周知・啓発を6月下旬に都道府県労働局長に通達しています。
通達で示されたのは、以下の5つとなっています。
製造業の請負事業の雇用管理の改善および適正化の促進に取り組む・・・
・請負事業主が講ずるべき措置に関するガイドライン
・発注者が講ずるべき措置に関するガイドライン
・請負事業主が講ずるべき措置に関するガイドラインのチェックシート
・発注者が講ずるべき措置に関するガイドラインのチェックシート
・請負事業主および発注者が講ずるべき措置に関するガイドライン
◆労働力の貸し借りは原則禁止
製造業で一般に利用されている労働形態には、主に、1.出向(在籍型)、2.労働者派遣、3.請負契約による外注、4.業務委託契約による外注の4つがあります。
職業安定法44条により、労働者派遣と厚生労働大臣の許可を得て労働組合などが無料の労働供給事業を行う場合を除き、労働者供給事業を行うことおよびこうした業者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させることは禁止されています。
◆発注者が指揮命令すれば「偽装請負」に
請負か業務委託かは、契約の目的が仕事の完成にあるか、それとも業務の処理にあるのかによって異なりますが、どちらも製造業が下請業者の労働者を使用すること、すなわち、指揮命令を行うことが許されない点では同様です。
形式的に請負契約や業務委託契約を締結していても、実態は、発注者が請負業者・受託業者の労働者を指揮命令しているなど、請負・受託の基準を満たさない場合、実態は労働者派遣とみなされ、「偽装請負」とされることになります。
「適年廃止」まで5年を切っています
◆平成18年度の適年解約企業の44.8%が中退共を選択
平成18年度における、税制適格退職年金制度(適年)から中小企業退職金共済制度(中退共)への移行企業数は2,779社(前年度比30.3%減)、従業員数は78,686人(前年度比37.1%減)でした。減少の原因は、平成17年4月から適年資産の全額移換が可能となったことにより、平成17年度の移行企業数が一時的に増加したこととみられます。
なお、平成18年度中に適年を解約した企業のうち、中退共に移行した企業の割合は44.8%、平成14年度から18年度までの5年間では33.6%となっています。
◆適年は平成24年3月末で廃止
適年は平成24年3月末で廃止されることから、企業に残された期限はあと5年を切っています。加入企業としてはそれまでに他の企業年金制度に移行するなどの対応が必要であり、中退共は有力な移行先の1つになっています。
平成16年度までは適年資産移換限度額(378万円)があったため、限度額を超え移換できない金額が従業員に返戻(一時所得)されてしまうことが、移行を妨げる要因の1つになっていましたが、前述の通り、平成17年4月より適年試算を全額移換できるようになりました。
平成18年度に入ってからは月平均231社が中退共に加入しています。この結果、平成18年8月には適年から中退共への移行企業数は1万社を突破し、平成14年4月から平成19年3月末までの5年間で移行企業総数は11,780社、従業員総数は338,581人となっています。
「裁判員制度」スタートで企業の対応は?
◆大手企業では「裁判員休暇制度」導入を検討も
2009年(予定)に「裁判員制度」(「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」に基づき一般国民が刑事裁判に参加する制度)がスタートするのを控え、社員が裁判員に選ばれて裁判手続に参加する場合に有給休暇として扱う「裁判員休暇制度」の導入を検討している大手企業が増えているようです。
◆有給か無給かは企業の考え方次第
裁判所では、審理にかかる日数については「概ね1週間程度」との見通しを示していますが、それ以上に長引くケースが出てくることも考えられます。原則として、選ばれた国民は辞退はできません。やむを得ない理由がある場合は辞退を認められますが、その基準についてはまだ不透明な部分があります。
労働者が裁判員となるために休みを取ることは、公民権の行使として法律上認められ、仕事を休んだことを理由に会社が不利益な扱いをすることは禁じられています。ただし、有給とするか無給とするか、就業規則での規定化などは企業に任されているため、どのような支援体制を設けるかは企業の考え方次第といえます。
◆有給休暇制度創設は企業の社会的責任?
確率的に多くの社員が裁判員やその候補になる可能性が高い大企業では、CSR(企業の社会的責任)の一環として、「特別有給休暇」を創設する方向性を打ち出しているところが多いようです。人員体制に余裕のない中小企業では頭の痛い問題といえるでしょう。
◆裁判員の選出方法
1.選挙人名簿から1年分ずつ、くじで裁判員の候補者が選ばれます。名簿に載った時点で本人に通知がきます。
2.事件ごとに候補者の中からまた50~100人程度がくじで選ばれ、裁判所に呼び出されます。
3.その中から裁判員6人を選出します。
年間で3,500人に1人が裁判員または補充裁判員になり、候補者として裁判所に呼び出される人数はその10倍とみられています。
特定求職者雇用開発助成金が変わります
◆「特定求職者雇用開発助成金」とは?
特定求職者雇用開発助成金とは、高年齢者や障害者などの就職困難者をハローワークまたは適切な運用を期すことができる有料・無料職業紹介事業者の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して、賃金相当額の一部の助成が行われるものです。
◆現行の制度(定率方式…一定割合を助成)
1.高年齢者、障害者、母子家庭の母等(2以外の対象者)
・助成率…(大企業)4分の1(中小企業)3分の1
・助成期間…1年(6カ月ごとに2回)
2.重度障害者等(重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者)※短時間労働者を除く
・助成率…(大企業)3分の1(中小企業)2分の1
・助成期間・・・1年6カ月(6カ月ごとに3回)
※短時間労働者は上記1の助成率に3分の2を乗じます。
◆平成19年10月からの変更後(定額方式…一定額を助成)
1.高年齢者、障害者、母子家庭の母等(2、3以外の対象者)
・助成額…(大企業)50万円(25万円+25万円)(中小企業)60万円(30万円+30万円)
・助成期間…1年(6カ月ごとに2回)
2.高年齢者、障害者、母子家庭の母等(短時間労働者)
・助成額…(大企業)30万円(15万円+15万円)(中小企業)40万円(20万円+20万円)
・助成期間…1年(6カ月ごとに2回)
3.重度障害者等(重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者)※短時間労働者を除く
・助成額…(大企業)100万円(33万円+33万円+34万円)(中小企業)120万円(40万円+40万円+40万円)
・助成期間…1年6カ月(6カ月毎に3回)
パートタイム労働法の改正内容
◆来年4月から施行されます
少子高齢化、労働力人口減少の状況を踏まえ、パート労働者が能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため、パートタイム労働法が改正されました。
施行までに、改正法に沿った対応が必要となります。以下、改正のポイントをまとめてみました。
◆雇入れの際は労働条件を文書などで明確に
一定の労働条件について、明示が義務化されます(改正法6条)。また、待遇の決定にあたって考慮した事項について説明することが義務化されます(改正法13条)。
◆パート労働者の待遇は働き方に応じて決定を
パート労働者は、繁忙期に一時的に働く方から正社員と同様の仕事に従事し長期間働く方まで、その働き方は様々です。このため改正法では、パート労働者の待遇について、正社員との働き方の違いに応じて均衡(バランス)を図るための措置を講じるよう規定しています。
具体的には、「職務」、「人材活用の仕組み」、「契約期間」の3つの要件が正社員と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いをそれぞれ規定しています。
◆パート労働者から正社員へ転換するチャンスを
正社員への転換を推進するための措置(以下の措置またはこれらに準じた措置)を講じることが義務化されます(改正法12条)。
<講じる措置の例>
・正社員を募集する場合、その募集内容をすでに雇っているパート労働者にも通知する。
・正社員のポストを社内公募する場合、すでに雇っているパート労働者にも応募する機会を与える。
・パート労働者が正社員へ転換するための試験制度を設けるなどの転換制度を導入する。
◆パート労働者からの苦情の申出に対応を
パート労働者から苦情の申出を受けたときは、事業所内で自主的な解決を図ることが努力義務とされます(改正法19条)。
紛争解決援助の仕組みとして、都道府県労働局長による助言、指導、勧告、紛争調整委員会による調停が設けられます(改正法21、22条)。
2007/08/30
平成19年9月号
社会保険審査請求が10年で約3倍に
◆不服申立て件数が急増
年金など社会保険をめぐり都道府県社会保険事務局の社会保険審査官に寄せられた不服申立件数は、過去10年で約3倍に急増しているそうです。厚生労働省は詳細な内訳を公表していませんが、多くは障害年金をめぐる不服とみられています。
5,000万件に上る年金記録漏れ問題の発覚前から、年金制度全体への不信が強かったことの裏付けともいえるでしょうか。
◆増加の原因は「よくわからない」?
年金や健康保険など社会保険に対する不服申立ては、社会保険審査官と社会保険審査会の二審制がとられています。不服申立て件数の急増について、厚生労働省や社会保険庁は「原因はよくわからない」としています。
厚生労働省によると、全国の社会保険審査官に対する申立件数は、1997年度の受付け分と前年度からの繰越し分を合わせた合計は1,637件でしたが、2006年度は5,076件と約3.1倍に急増し、過去10年間増加し続けています。
◆多くは障害年金関連
これまで厚生労働省は、申立て理由ごとの詳細な内訳は公表していませんでしたが、2004~2006年度の処理済み案件について、その内訳を明らかにしました。2006年度の処理状況をみると、申立て5,076件のうち、同年度内に3,542件の処理が行われ、年金関連は約75%にあたる2,639件でした。そのうち障害年金をめぐる処理は2,349件で、処理済み件数全体の約66%に上っており、不服申立ての多くは障害年金です。障害年金については各年度2,000件前後が処理されており、主に障害認定などについて不服が寄せられているとみられています。
対象者がわからない年金支払記録が約5,000万件に上っている問題に密接に絡むと思われる老齢年金についても、各年度160件前後の処理がなされているそうです。
仕事で手に入れた名刺は誰のもの?
◆転職時に返却を求められた
営業職の会社員。転職しようと思い会社に申し出たら、「業務上手に入れた名刺はすべて置いていけ」と言われました。自分が汗水流して手に入れた顧客の名刺は自分のものではないのでしょうか。
◆秘密指定外なら個人のもの
退職者に対し、秘密漏洩の防止策などを講じている会社は少なくありません。不正競争防止法では、企業の内部情報が「営業秘密」として保護されるための要件として、1.施錠できる場所で保管するなど秘密として管理されている、2.事業活動に有用な技術上・営業上の情報である、3.公然と知られていない事柄であることを挙げています。
問題は、「名刺といえども職務上入手した情報は営業の秘密といえるのか」、「漏洩防止策など会社の意向を書面などで周知させる必要があるのか」どうかということです。
◆裁判所の判断は?
労働者が職務上手に入れた名刺が営業秘密でない場合、退職後も自由に使えることができ、ライバル社への転職禁止契約が労使間にない場合は労働者には転職の自由があり、前職で培われた能力や情報を使用できるとされています。
前職で入手した名刺などを転職後も利用した元社員に会社側が損害賠償などを求めた裁判例があります。2001年、東京地裁は「保管、利用などを制約する労使間の取り決めがない」として名刺を営業秘密とは認めませんでした(一審で確定)。実際、名刺は労働者が各自で管理することが多く、名刺を営業秘密として会社が管理するのは難しいだろうとしています。
◆秘密扱いにするには契約や規定での周知が必要
職務上知り得た情報を、個人情報保護などを理由に労使間で秘密保持契約を結んでいたり、社内の秘密管理規定などで社員に周知したりしている場合、会社が名刺などの返却を強制しても問題はないとされるようです。
書面で取り決めがない場合はどうでしょうか。2007年、大阪地裁は「内部情報のすべてを『営業秘密』とする労働者の職業選択の自由を過度に制限する」として、職務上、入手した情報などを営業秘密だと会社が規定するには、その情報が営業秘密であることを認識できるようにし、アクセスできる者が制限されていることが必要と判断しました(現在、原告企業側が控訴中)。
失敗しない介護事業者選びのポイントは?
◆相次ぐ介護事業者の不祥事
このところ、介護事業者をめぐる法令違反が相次いで報道されています。事業者が自治体から指定取消しなどの処分を受けた場合に不利益を被るのは、施設の移動やヘルパーの変更などを余儀なくされる利用者自身です。優良な事業者をきちんと選ぶためのポイントをおさえておきましょう。
◆施設選びでチェックすべきこと
華美で明るい施設はどうしても良く見えますが、「見掛け倒しにだまされない」ことが肝心で、優良事業者を見抜く目を養うにはできるだけ多くの施設を見て回ることが大事です。
施設選びのチェックポイントとして、いす・テーブルの高さやベッドの幅があります。食堂をよく見ると様子がわかります。小柄な高齢者が、高すぎるテーブルで食事をしていれば、家具が体に合っていない証拠です。ベッドの幅が狭ければ、寝返りを打つスペースが確保できず、起き上がるのが困難になります。いずれも自力での生活を阻害する要因となり、事業者の真心と優しさが具体化されているかいないかがわかります。
電話の対応の仕方だけをとってもかなりの判断材料になります。
◆積極的な情報収集を
利用する前に必要なケアについて話し合うなど、自から積極的に情報を集めていくしかありません。そうして初めてわかることは少なくありません。また、問題のある事業者を避けるためには、ヘルパー交代の際に引継ぎがうまくいっているかどうかを見る必要があります。引継ぎがうまくいかないのは、事業所で監督的な立場にある人の能力がなかったり、不在だったりして、ヘルパーへの指導が行き届いていない可能性があるからです。その他、ケアマネージャーが作ったプランにのみ頼る事業者も注意が必要です。
入所後に、法令違反を感じたり、サービスに納得できなかったりする場合は、遠慮せずに解除や変更を申し出ることも大切です。
「中小企業労働時間適正化促進助成金」について
◆労働時間適正化の取組みに対して支給
厚生労働省は「特別条項付き時間外労働協定」を締結している中小事業主が、労働時間の適正化に取り組んだ場合に支給する助成金(中小企業労働時間適正化促進助成金)を創設しました。
◆助成金創設の背景
近年、労働時間が週35時間未満の労働者と週60時間以上の労働者がともに増加する「労働時間分布の二極化」の傾向がみられ、また、年次有給休暇の取得率は9年連続で低下しています。こうした中、過重労働による脳・心臓疾患の労災認定件数が高水準で推移し、精神障害等の労災認定件数も増加するなど、長時間労働による健康障害が社会問題化しています。
労働者1人ひとりの心身の健康が保持されるとともに、家庭生活、地域活動、自己啓発等に必要とされる時間と労働時間を柔軟に組み合わせ、心身ともに充実した状態で意欲と能力を発揮できるような環境を整備していくことが重要となっています。
◆対象となる事業主は?
「特別条項付きの時間外労働協定」を締結し、決められた目標を盛り込んだ「働き方改革プラン」(実施期間1年間)を作成し、都道府県労働局長の認定を受け、そのプランの措置を完了した事業主が対象です。
◆「特別条項付きの時間外労働協定」とは?
36協定(時間外労働および休日労働に関する協定)で定める延長時間は「限度時間を超えないもの」としなければなりませんが、限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない「特別の事情」が生じたときは、限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨を協定すれば一定期間についての延長時間は限度時間を超える時間とすることができます。この協定を「特別条項付き協定」といいます。
◆支給額は?
都道府県労働局長の認定を受けた「働き方改革プラン」に従い、1.特別条項付き時間外労働協定や就業規則等の整備を行った段階で50万円、2.時間外労働削減等の措置および省力化投資等の措置または雇入措置を完了した段階で50万円の合計100万円が支給されます(ただし、2.を完了しなかった場合、1.は全額返還しなければならない)。
助成金の詳細については、都道府県労働局労働基準部監督課にお問い合わせください。
企業の「生産性向上」には何が必要?
◆企業の生産性向上に向けての課題
先ごろ政府が了承した2007年度の「経済財政白書」(年次経済財政報告─生産性上昇に向けた挑戦─)では、「生産性の上昇」に焦点をあて、企業に積極的な対応を求めている点が大きな特徴となっています。白書では、企業がITを導入しても有効に活用できていないため生産性向上につながらず、組織改革が遅れていると分析しています。
◆M&Aは生産性向上の有効な手段?
白書では、M&A(企業の合併・買収)が生産性向上の有効な手段の1つであると位置付けています。日本ではコスト削減を目的としたM&Aが主流で、高収益企業ほどM&Aに積極的に関与していると言われていますが、白書では生産性を意識したM&Aの展開を促しています。
◆賃金伸び悩みの理由はどこに?
白書では、景気拡大が続く中にあって従業員の賃金が伸び悩んでいる理由について、複数の要因が複合的に作用しているとしています。「景気回復が進めば所得格差が縮まる」という、従来の考えが信頼できなくなっている現状も報告されています。
内閣府は、専門家の間で通説となっている「賃金の低い非正社員の増加」、「高額所得者である団塊世代の一斉退職」、「高所得産業から低所得産業への転職」、「地方公務員の賃金の低下」の4つを検証しましたが、「いずれの要因も単独では賃金動向を説明しきれないが、押し下げる方向に作用している点は確認できた」と結論付けています。
◆政府の目標は「労働生産性の伸び率を5割アップ」
政府は、1人あたりの労働生産性の伸び率を5割アップさせることを目標に掲げています。目標の達成には格差是正への対策も求められ、政府の役割が一層大きくなっているといえるでしょう。
「年金時効撤廃特例法」とは?
◆時効撤廃で未支給分も全額支給に
これまで、年金記録が訂正されて年金が増額した場合であっても、時効消滅により直近5年間分の年金しか受け取ることができませんでしたが、年金時効撤廃特例法(厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律)の成立(7月6日公布・施行)により、5年より前の期間分の年金についても遡って受け取ることができるようになりました。
施行日以降の手続受付状況は、7月6日~31日までで7,896件となっています(社会保険庁8月1日発表)。
◆対象となる人は?
すでに年金記録の訂正により年金額が増えた人や、年金の受給資格が確認されて新たに年金を受け取ることができるようになった人は、年金(老齢、障害、遺族)の時効消滅分について、全期間遡って受け取ることができます。
また、遡って受け取れる人が亡くなっている場合は、その遺族(亡くなられた当時、生計を同じくされていた人に限り、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順となります)に、未支給年金の時効消滅分が支払われます。
◆これまでに適用が認められた人は?
社会保険庁は、7月19日に145人(平均支給額約51万円)について同法の適用を初めて認め、さらに7月24日に108人(平均支給額約84万円)に適用を認めました。これらの人には8月15日に未支給分が銀行口座などに振り込まれる予定で、同庁では、今後も額が確定した人から順次支給していくとしています。
「ワーク・ライフ・バランス」で従業員の満足度アップ?
◆「ワーク・ライフ・バランス」とは?
「ワーク・ライフ・バランス」とは、仕事と家庭生活を調和させることで、働く人が、仕事上の責任と、仕事以外の生活でやりたいことの両者を無理なく実現できる状態のことです。1980年代に欧米で起こった考え方であり、「働き手の確保や少子化対策、着実な経済発展を続けるために重要である」と、厚生労働省が発表した今年の「労働経済白書」でも唱えています。
◆「ワーク・ライフ・バランス」の効果
労働者にとっては、安心・納得できる働き方を選択することにより、心身ともに充実した状態で働くことができます。
一方、企業にとっては、従業員の満足度を高めることにより、優秀な人材の確保・定着を図ることができるといわれています。
◆「ワーク・ライフ・バランス」と今後の雇用システムの展望
仕事と仕事以外の時間の両方を充実させたいと考えていても、雇用が安定せず、時間や給与額に余裕がなければ、現実には実現はなかなか難しいものです。
日本の雇用システムは長期雇用を基本としながら、労働関係の個別化が進んでいます。働く人一人ひとりが、職業生活における各々の段階において仕事と生活を様々に組み合わせ、バランスの取れた働き方を安心・納得して選択できるような柔軟な働き方の実現が、今後ますます重要な課題になっていくでしょう。
中途採用人数が増加傾向に
◆企業、中途採用に意欲?
リクルートが行った調査結果によると、2007年度の企業の中途採用予定人数が、前年度を4.4%上回ったそうです。
中途採用予定人数を企業規模別でみると、従業員300~999人規模(前年比8.0%増)、1,000~4,999人規模(同3.0%増)、5,000人以上規模(同8.2%増)で増加している一方、5~99人規模(同13.9%減)や100~299人規模(同0.7%減)では減少しており、従業員数300人を境に差がみられました。
また、業種別では、不動産業(同37.3人増)、情報通信業(同23.3人増)、機械製造業(同19.9人増)など、専門知識や経験が求められる業種で中途採用予定人数が増えています。
◆業種別に見た傾向
業種別では、1位は不動産業(前年比31.7%増)でした。中途採用予定の伸び率は大幅なプラスとなっていますが、新卒採用予定の伸び率は全体の平均を下回っていることから、中途採用に対する強い意欲がうかがわれます。
一方、サービス業では中途採用予定の伸び率はマイナスとなったものの、新卒採用予定の伸び率は11.5%増と平均以上で、中途よりも新卒採用に強い意欲を示す企業が多いと考えられます。
建設業や運輸業では、中途・新卒採用予定の伸び率ともに大幅なプラスとなった一方で、機械以外の製造業では、伸び率は大幅なマイナスとなり、業種によるばらつきがみられました。
◆不服申立て件数が急増
年金など社会保険をめぐり都道府県社会保険事務局の社会保険審査官に寄せられた不服申立件数は、過去10年で約3倍に急増しているそうです。厚生労働省は詳細な内訳を公表していませんが、多くは障害年金をめぐる不服とみられています。
5,000万件に上る年金記録漏れ問題の発覚前から、年金制度全体への不信が強かったことの裏付けともいえるでしょうか。
◆増加の原因は「よくわからない」?
年金や健康保険など社会保険に対する不服申立ては、社会保険審査官と社会保険審査会の二審制がとられています。不服申立て件数の急増について、厚生労働省や社会保険庁は「原因はよくわからない」としています。
厚生労働省によると、全国の社会保険審査官に対する申立件数は、1997年度の受付け分と前年度からの繰越し分を合わせた合計は1,637件でしたが、2006年度は5,076件と約3.1倍に急増し、過去10年間増加し続けています。
◆多くは障害年金関連
これまで厚生労働省は、申立て理由ごとの詳細な内訳は公表していませんでしたが、2004~2006年度の処理済み案件について、その内訳を明らかにしました。2006年度の処理状況をみると、申立て5,076件のうち、同年度内に3,542件の処理が行われ、年金関連は約75%にあたる2,639件でした。そのうち障害年金をめぐる処理は2,349件で、処理済み件数全体の約66%に上っており、不服申立ての多くは障害年金です。障害年金については各年度2,000件前後が処理されており、主に障害認定などについて不服が寄せられているとみられています。
対象者がわからない年金支払記録が約5,000万件に上っている問題に密接に絡むと思われる老齢年金についても、各年度160件前後の処理がなされているそうです。
仕事で手に入れた名刺は誰のもの?
◆転職時に返却を求められた
営業職の会社員。転職しようと思い会社に申し出たら、「業務上手に入れた名刺はすべて置いていけ」と言われました。自分が汗水流して手に入れた顧客の名刺は自分のものではないのでしょうか。
◆秘密指定外なら個人のもの
退職者に対し、秘密漏洩の防止策などを講じている会社は少なくありません。不正競争防止法では、企業の内部情報が「営業秘密」として保護されるための要件として、1.施錠できる場所で保管するなど秘密として管理されている、2.事業活動に有用な技術上・営業上の情報である、3.公然と知られていない事柄であることを挙げています。
問題は、「名刺といえども職務上入手した情報は営業の秘密といえるのか」、「漏洩防止策など会社の意向を書面などで周知させる必要があるのか」どうかということです。
◆裁判所の判断は?
労働者が職務上手に入れた名刺が営業秘密でない場合、退職後も自由に使えることができ、ライバル社への転職禁止契約が労使間にない場合は労働者には転職の自由があり、前職で培われた能力や情報を使用できるとされています。
前職で入手した名刺などを転職後も利用した元社員に会社側が損害賠償などを求めた裁判例があります。2001年、東京地裁は「保管、利用などを制約する労使間の取り決めがない」として名刺を営業秘密とは認めませんでした(一審で確定)。実際、名刺は労働者が各自で管理することが多く、名刺を営業秘密として会社が管理するのは難しいだろうとしています。
◆秘密扱いにするには契約や規定での周知が必要
職務上知り得た情報を、個人情報保護などを理由に労使間で秘密保持契約を結んでいたり、社内の秘密管理規定などで社員に周知したりしている場合、会社が名刺などの返却を強制しても問題はないとされるようです。
書面で取り決めがない場合はどうでしょうか。2007年、大阪地裁は「内部情報のすべてを『営業秘密』とする労働者の職業選択の自由を過度に制限する」として、職務上、入手した情報などを営業秘密だと会社が規定するには、その情報が営業秘密であることを認識できるようにし、アクセスできる者が制限されていることが必要と判断しました(現在、原告企業側が控訴中)。
失敗しない介護事業者選びのポイントは?
◆相次ぐ介護事業者の不祥事
このところ、介護事業者をめぐる法令違反が相次いで報道されています。事業者が自治体から指定取消しなどの処分を受けた場合に不利益を被るのは、施設の移動やヘルパーの変更などを余儀なくされる利用者自身です。優良な事業者をきちんと選ぶためのポイントをおさえておきましょう。
◆施設選びでチェックすべきこと
華美で明るい施設はどうしても良く見えますが、「見掛け倒しにだまされない」ことが肝心で、優良事業者を見抜く目を養うにはできるだけ多くの施設を見て回ることが大事です。
施設選びのチェックポイントとして、いす・テーブルの高さやベッドの幅があります。食堂をよく見ると様子がわかります。小柄な高齢者が、高すぎるテーブルで食事をしていれば、家具が体に合っていない証拠です。ベッドの幅が狭ければ、寝返りを打つスペースが確保できず、起き上がるのが困難になります。いずれも自力での生活を阻害する要因となり、事業者の真心と優しさが具体化されているかいないかがわかります。
電話の対応の仕方だけをとってもかなりの判断材料になります。
◆積極的な情報収集を
利用する前に必要なケアについて話し合うなど、自から積極的に情報を集めていくしかありません。そうして初めてわかることは少なくありません。また、問題のある事業者を避けるためには、ヘルパー交代の際に引継ぎがうまくいっているかどうかを見る必要があります。引継ぎがうまくいかないのは、事業所で監督的な立場にある人の能力がなかったり、不在だったりして、ヘルパーへの指導が行き届いていない可能性があるからです。その他、ケアマネージャーが作ったプランにのみ頼る事業者も注意が必要です。
入所後に、法令違反を感じたり、サービスに納得できなかったりする場合は、遠慮せずに解除や変更を申し出ることも大切です。
「中小企業労働時間適正化促進助成金」について
◆労働時間適正化の取組みに対して支給
厚生労働省は「特別条項付き時間外労働協定」を締結している中小事業主が、労働時間の適正化に取り組んだ場合に支給する助成金(中小企業労働時間適正化促進助成金)を創設しました。
◆助成金創設の背景
近年、労働時間が週35時間未満の労働者と週60時間以上の労働者がともに増加する「労働時間分布の二極化」の傾向がみられ、また、年次有給休暇の取得率は9年連続で低下しています。こうした中、過重労働による脳・心臓疾患の労災認定件数が高水準で推移し、精神障害等の労災認定件数も増加するなど、長時間労働による健康障害が社会問題化しています。
労働者1人ひとりの心身の健康が保持されるとともに、家庭生活、地域活動、自己啓発等に必要とされる時間と労働時間を柔軟に組み合わせ、心身ともに充実した状態で意欲と能力を発揮できるような環境を整備していくことが重要となっています。
◆対象となる事業主は?
「特別条項付きの時間外労働協定」を締結し、決められた目標を盛り込んだ「働き方改革プラン」(実施期間1年間)を作成し、都道府県労働局長の認定を受け、そのプランの措置を完了した事業主が対象です。
◆「特別条項付きの時間外労働協定」とは?
36協定(時間外労働および休日労働に関する協定)で定める延長時間は「限度時間を超えないもの」としなければなりませんが、限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない「特別の事情」が生じたときは、限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨を協定すれば一定期間についての延長時間は限度時間を超える時間とすることができます。この協定を「特別条項付き協定」といいます。
◆支給額は?
都道府県労働局長の認定を受けた「働き方改革プラン」に従い、1.特別条項付き時間外労働協定や就業規則等の整備を行った段階で50万円、2.時間外労働削減等の措置および省力化投資等の措置または雇入措置を完了した段階で50万円の合計100万円が支給されます(ただし、2.を完了しなかった場合、1.は全額返還しなければならない)。
助成金の詳細については、都道府県労働局労働基準部監督課にお問い合わせください。
企業の「生産性向上」には何が必要?
◆企業の生産性向上に向けての課題
先ごろ政府が了承した2007年度の「経済財政白書」(年次経済財政報告─生産性上昇に向けた挑戦─)では、「生産性の上昇」に焦点をあて、企業に積極的な対応を求めている点が大きな特徴となっています。白書では、企業がITを導入しても有効に活用できていないため生産性向上につながらず、組織改革が遅れていると分析しています。
◆M&Aは生産性向上の有効な手段?
白書では、M&A(企業の合併・買収)が生産性向上の有効な手段の1つであると位置付けています。日本ではコスト削減を目的としたM&Aが主流で、高収益企業ほどM&Aに積極的に関与していると言われていますが、白書では生産性を意識したM&Aの展開を促しています。
◆賃金伸び悩みの理由はどこに?
白書では、景気拡大が続く中にあって従業員の賃金が伸び悩んでいる理由について、複数の要因が複合的に作用しているとしています。「景気回復が進めば所得格差が縮まる」という、従来の考えが信頼できなくなっている現状も報告されています。
内閣府は、専門家の間で通説となっている「賃金の低い非正社員の増加」、「高額所得者である団塊世代の一斉退職」、「高所得産業から低所得産業への転職」、「地方公務員の賃金の低下」の4つを検証しましたが、「いずれの要因も単独では賃金動向を説明しきれないが、押し下げる方向に作用している点は確認できた」と結論付けています。
◆政府の目標は「労働生産性の伸び率を5割アップ」
政府は、1人あたりの労働生産性の伸び率を5割アップさせることを目標に掲げています。目標の達成には格差是正への対策も求められ、政府の役割が一層大きくなっているといえるでしょう。
「年金時効撤廃特例法」とは?
◆時効撤廃で未支給分も全額支給に
これまで、年金記録が訂正されて年金が増額した場合であっても、時効消滅により直近5年間分の年金しか受け取ることができませんでしたが、年金時効撤廃特例法(厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律)の成立(7月6日公布・施行)により、5年より前の期間分の年金についても遡って受け取ることができるようになりました。
施行日以降の手続受付状況は、7月6日~31日までで7,896件となっています(社会保険庁8月1日発表)。
◆対象となる人は?
すでに年金記録の訂正により年金額が増えた人や、年金の受給資格が確認されて新たに年金を受け取ることができるようになった人は、年金(老齢、障害、遺族)の時効消滅分について、全期間遡って受け取ることができます。
また、遡って受け取れる人が亡くなっている場合は、その遺族(亡くなられた当時、生計を同じくされていた人に限り、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順となります)に、未支給年金の時効消滅分が支払われます。
◆これまでに適用が認められた人は?
社会保険庁は、7月19日に145人(平均支給額約51万円)について同法の適用を初めて認め、さらに7月24日に108人(平均支給額約84万円)に適用を認めました。これらの人には8月15日に未支給分が銀行口座などに振り込まれる予定で、同庁では、今後も額が確定した人から順次支給していくとしています。
「ワーク・ライフ・バランス」で従業員の満足度アップ?
◆「ワーク・ライフ・バランス」とは?
「ワーク・ライフ・バランス」とは、仕事と家庭生活を調和させることで、働く人が、仕事上の責任と、仕事以外の生活でやりたいことの両者を無理なく実現できる状態のことです。1980年代に欧米で起こった考え方であり、「働き手の確保や少子化対策、着実な経済発展を続けるために重要である」と、厚生労働省が発表した今年の「労働経済白書」でも唱えています。
◆「ワーク・ライフ・バランス」の効果
労働者にとっては、安心・納得できる働き方を選択することにより、心身ともに充実した状態で働くことができます。
一方、企業にとっては、従業員の満足度を高めることにより、優秀な人材の確保・定着を図ることができるといわれています。
◆「ワーク・ライフ・バランス」と今後の雇用システムの展望
仕事と仕事以外の時間の両方を充実させたいと考えていても、雇用が安定せず、時間や給与額に余裕がなければ、現実には実現はなかなか難しいものです。
日本の雇用システムは長期雇用を基本としながら、労働関係の個別化が進んでいます。働く人一人ひとりが、職業生活における各々の段階において仕事と生活を様々に組み合わせ、バランスの取れた働き方を安心・納得して選択できるような柔軟な働き方の実現が、今後ますます重要な課題になっていくでしょう。
中途採用人数が増加傾向に
◆企業、中途採用に意欲?
リクルートが行った調査結果によると、2007年度の企業の中途採用予定人数が、前年度を4.4%上回ったそうです。
中途採用予定人数を企業規模別でみると、従業員300~999人規模(前年比8.0%増)、1,000~4,999人規模(同3.0%増)、5,000人以上規模(同8.2%増)で増加している一方、5~99人規模(同13.9%減)や100~299人規模(同0.7%減)では減少しており、従業員数300人を境に差がみられました。
また、業種別では、不動産業(同37.3人増)、情報通信業(同23.3人増)、機械製造業(同19.9人増)など、専門知識や経験が求められる業種で中途採用予定人数が増えています。
◆業種別に見た傾向
業種別では、1位は不動産業(前年比31.7%増)でした。中途採用予定の伸び率は大幅なプラスとなっていますが、新卒採用予定の伸び率は全体の平均を下回っていることから、中途採用に対する強い意欲がうかがわれます。
一方、サービス業では中途採用予定の伸び率はマイナスとなったものの、新卒採用予定の伸び率は11.5%増と平均以上で、中途よりも新卒採用に強い意欲を示す企業が多いと考えられます。
建設業や運輸業では、中途・新卒採用予定の伸び率ともに大幅なプラスとなった一方で、機械以外の製造業では、伸び率は大幅なマイナスとなり、業種によるばらつきがみられました。
2007/07/25
平成19年8月号
テレワーク(在宅勤務)の拡大に向けた動き
◆テレワーク人口倍増に向けた政府の行動計画
ITを活用して自宅や外出先などで仕事をする「テレワーク」人口の倍増を目指す政府の行動計画がこのほど明らかになりました。雇用保険が適用される在宅勤務の対象を広げるほか、政府でも、2007年度中に全省庁でテレワークを試験導入するそうです。少子高齢化が加速する中で、女性や高齢者などの「眠れる労働力」を活用しやすい環境を整えます。
◆テレワークは労働力確保の切り札?
政府は、テレワークについて、仕事と生活の調和(ライフワークバランス)の実現や人口減少時代における労働力確保などの切り札になると考えています。
テレワークは、情報通信機器などを使って、時間や場所にとらわれず柔軟に働く働き方です。通勤が不要で、労働時間を自由に設定できるなど、育児をする女性などにとっては使い勝手のよい働き方だといえます。
政府の行動計画では、2010年までを「テレワーク集中推進期間」に設定し、テレワーク人口を2005年に比べて2倍に増やし、就業者人口に占める比率も2割に引き上げることを目標としています。
◆テレワーク人口の増加なるか?
テレワーク普及の方策としては、1.制度環境の整備、2.情報通信システム基盤の整備、3.分野別の推進施策の3つが掲げられています。
現在は、在宅勤務者で雇用保険が適用される業務は、新商品開発や編集など特定の業務に限定されていますが、政府の行動計画では適用業種を広げるとしています。
通信システム基盤の整備では、政府が独自にテレワークを試行・体験するシステムを構築するとしています。最先端技術やサービスを活用した先進システムの実証実験も始まります。政府では、テレワークを2007年度中に全省庁で試行し、順次本格導入していく方針だそうです。
日本の人口はこれからどうなる?
◆「人口減少時代」に突入へ
国立社会保障・人口問題研究所が発表した都道府県別の将来推計人口により、2025年からすべての都道府県で人口が減少する見通しが明らかになりました。高齢化も進み、2035年には44都道府県で65歳以上の人口が3割を超えるようです。出生率は上昇していますが、中長期の人口減少は避けられず、都市部への人口集中もいっそう進む見通しです。
◆人口の減少と都市部への人口集中
この調査は、2005年の国勢調査の結果や都道府県ごとの合計特殊出生率(女性が生涯に産む子供の数。中位推計)などをベースに、2005年から2035年までの都道府県別の人口を推計しています。
都道府県別の人口は、2010年から2015年にかけては東京、神奈川、愛知、滋賀、沖縄を除く42都道府県で減少します。2015年から2020年には人口が増えるのは東京と沖縄だけになり、さらに2020年から2025年は沖縄だけになり、2025年以降は人口が増える都道府県がゼロになります。また、都市部への人口集中が進み、日本の総人口に占める東京の人口割合は、2025年の9.8%から2035年には11.5%に上がるとされています。
2005年と比較した人口が2035年時点で増えているのは東京と沖縄のみです。和歌山や秋田ではこの間に約3割も減る見通しです。
◆各都道府県で少子高齢化が進展
今回の推計では、各都道府県での少子・高齢化の進展の見通しも明らかになりました。総人口に占める若年人口(0歳から14歳)の割合は、2005年から2035年までの期間を通じて全都道府県で減少します。
都道府県別では、年少人口の割合は、2005年は18.7%と全国一の沖縄でも2035年には13.3%に低下します。2005年に11.5%で最下位の東京では8.0%に下がります。
65歳以上の高齢者人口の割合は、全国では2005年の20.2%から2035年には33.7%に上がります。特に秋田では41.0%、和歌山では38.6%まで上昇します。2000年から2005年の合計特殊出生率の平均値が1.78%と全国で最も高い沖縄でも、27.7%と3割に迫っています。
2005年に約1億2,700万人だった日本の総人口は、出生率が中位推計(長期平均1.26)で2030年には約1億1,500万人に、高位推計(同1.55)でも約1億1,800万人といずれも減少する見通しです。
改正高年齢者雇用安定法施行から1年、企業の状況は?
◆60歳以降の雇用確保実施企業は約98%
改正高年齢者雇用安定法の施行で60歳以降の雇用確保が事業主に義務付けられた2006年4月以降、約98%の企業で再雇用や定年の引上げなどの措置を講じていることが、労働政策研究・研修機構の調査でわかりました。
高齢者の雇用確保は、改正高年齢者雇用安定法に基づく措置です。定年が65歳未満の企業は、年金の支給開始年齢の段階的引上げに合わせ、1.定年の引上げ、2.再雇用制度や勤務延長制度など継続雇用制度の導入、3.定年廃止のいずれかを選ばなくてはなりません。
◆「元管理職」の処遇に悩む企業
この調査は、2006年10月1日時点における制度の整備状況を各企業に聞いたものです。従業員300人以上の民間企業5,000社に質問票を送付し、1,105社から回答を得たそうです。調査結果では、定年後の再雇用制度を導入している企業が91.3%に上りました。勤務延長制度や定年の引上げなどを導入した企業と合わせると、98.4%の企業が、何らかの措置を講じていました。
継続雇用する対象者については、72.2%が「健康や働く意欲、勤務態度などで基準に適合する者」と条件付きで対象としており、「希望者全員」としている企業は24.6%にとどまりました。高年齢社員の処遇で困る点では「担当する仕事の確保が難しい」(39.6%)、「管理職経験者の扱いが難しい」(38.9%)、「継続雇用後の処遇の決定が難しい」(24.5%)、「高齢社員を活用するノウハウがない」(19.1%)などが上位を占めています。
同機構は、「制度はできあがったが、今後は再雇用した人の活用方法や、現役社員との関係、勤務形態を整備していく必要がある」と指摘しています。
75歳以上を対象とした新・医療保険制度
◆来年4月から「後期高齢者医療制度」がスタート
2008年4月から、75歳以上の高齢者を対象とした医療保険制度(後期高齢者医療制度)が動き出す予定です。開始まで1年を切りましたが、詳細が決まっていない点もあり、中身はよく知られていないようです。保険料負担や医療の内容はどのように変わるのでしょうか。
◆保険料は厚生年金受給者で平均「月約6,200円」か
新制度は、2006年6月に成立した医療改革関連法で導入が決まりました。複数の病気を持つことも珍しくない75歳以上を、現役世代の医療保険と別建てにし、効率化を進めて医療費を抑制するのがねらいです。都道府県ごとに全市町村が参加する広域連合が運営予定のため、保険料も都道府県単位で決定します。
保険料については、各広域連合で保険料を定める条例が今秋以降でないと制定できない見通しで、保険料負担額は今のところ不明です。ただ、厚生労働省が公表している全国平均の保険料の目安が手掛かりとなり、「年208万円」という平均的な厚生年金受給者の場合、保険料の目安は「月約6,200円」となります。また、75歳未満の配偶者がいる場合は別途配偶者の保険料も支払いますので、今よりも負担増になると見られています。
全般的には地域や所得の状況によって負担が増えるか減るかは一概には言えませんが、明確に負担増になる人もいます。会社員の子供の被扶養家族になり、子供の会社の健康保険を利用している高齢者です。従来は高齢者自身は保険料を負担していませんでしたが、新制度では年金収入に応じた保険料を負担する仕組みに変わります。急な負担増を防ぐため、制度加入時から2年間は本来の保険料の最大半額(定額部分)となります。
◆医療保険・介護保険の合計負担額に上限設定
病院や診療所で治療を受けたとき、窓口での患者負担はどうなるのでしょう。75歳以上の場合、かかった医療費の原則1割を負担するというのは従来と同じです。所得が現役並みに多いと判定された場合は、現役世代と同様の3割負担となるところも変わりません。
2008年4月の新制度からは、医療保険と介護保険の患者(自己)負担の合計額に上限が設けられます。これまでは、医療と介護それぞれに1カ月当たりの負担上限などが決まっていましたが、医療と介護の両方を利用している方の負担が著しく高額にならないよう、年間の合計額にも上限を設けることにしました。
一般の合計負担額の上限は年間56万円で、これを超えると超えた分が戻ります。ただし、利用者の側から役所に申請しないと戻ってこない仕組みになりそうです。
6月から住民税がアップ
◆6月は5月より税金が増えている?
6月の給与明細を見ると、税金が5月より増えていることに気が付いた方がいると思います。国(所得税)から地方(住民税)へ税源移譲が行われた結果、多くの家庭で所得税が1月から先行して下がったのに対し、住民税の増加は仕組み上、毎年6月から反映されるためです。定率減税廃止による税負担の増加も重なりました。
◆「税源移譲」とは?
税源移譲とは、補助金に代わる地方公共団体の新たな財源として、国が集めている税金のうちの一定の部分を、地方が集めることができるようにすることです。国と地方の税財政改革(三位一体の改革)の柱の1つです。
国税の一部を減らして地方税を増やすということなので、納税者の負担は増えないとされています。現在の自治体は国から補助金や地方交付税交付金などをもらって行政サービスの財源を補っています。三位一体改革は原則として補助金の削減に見合う額を、国から地方への税源移譲で補うことにしています。ただ、この方法ではもともと住民税の納税額が多い地域に財源が集まるという弊害があり、大都市と地方の自治体で格差がつかないよう、公平に税財源を分け合う方法が求められます。
◆暮らしへの影響は?
所得税は従来の4段階から6段階になり、最低税率は10%から5%に下がりました。住民税は一律10%に変わりました。この結果、大半の世帯で所得税が減り、住民税が増える結果になります。所得税と住民税を合わせた納税者の負担額は原則変わりません。
定率減税の全廃の影響も大きなものです。所得税では所得の20%(上限25万円)、住民税では15%(同4万円)が減税となっていましたが、2006年分からは半減され、2007年分からは全廃となりました。残っていた半分の控除がなくなると、所得税は最大で年12万5,000円、住民税は最大で年2万円増税になります。
ではなぜ、6月から変化が起きたのでしょうか。所得税は1月から変わるのに対し、住民税は前年の所得に応じて翌年の6月以降変化します。このため、大半の世帯では1月から所得税が減っていましたが、6月からは住民税率の上昇と住民税分の定率減税廃止が影響し、税負担が増えることになったわけです。
◆地方によっては国民健康保険料にも影響
東京23区など一部の市区町村では、国民健康保険料を算出する際、住民税額に一定の比率を掛ける方法を用いるため、住民税が上がると保険料も上がってしまいます。このような自治体では緩和措置として控除枠を設けていますが、それでも保険料に変化が出ることがあります。国民保険料も毎年6月に算出されるため、6月分の金額を確認してみましょう。
「再雇用制度」今後も利用拡大なるか?
◆改正高年齢者雇用安定法の内容
2006年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法は、従業員に65歳まで就労機会を提供(雇用確保措置を導入)することを企業に義務付ける法律です。
企業には、1.定年廃止、2.定年年齢の65歳への引上げ、3.定年を迎えた従業員の継続雇用の3つの選択肢があります。定年廃止や定年延長は全従業員が対象となり、賃金や労働時間などの処遇を下げにくい制度ですが、継続雇用は労使協定などで対象者を絞り込むことができます。中でも再雇用制度は、雇用契約を結び直すため処遇を柔軟に変更することができます。
◆主要企業では定年者の半数強を再雇用
日本経済新聞社の調べによると改正高年齢者雇用安定法が施行された2006年度に、主要企業が、定年退職者の5割強を再雇用(トヨタ自動車は56%、JFEスチールとJR東日本は約7割)したことがわかりました。
今年度も再雇用制度の活用は拡大する見通しであり、団塊世代の大量定年や少子化で労働力不足が懸念される中、企業は労働力の確保に様々な対策を講じる必要がありそうです。
◆企業側は「コスト削減」、従業員側は「収入維持」
再雇用後の賃金は定年時の半分程度というケースも多く、企業側は人件費を抑えつつ労働力を確保したいと考えています。
また、従業員側にとっては年金と合わせればそれなりの収入を維持することができるため、活発な制度利用につながっていると思われます。
ニート62万人、フリーター187万人
◆「青少年白書」の結果から
内閣府がまとめた2007年版の「青少年の現状と施策」(青少年白書)によると、就職しても長続きせず、3年以内に離職した率(2003年3月の新卒者)は、中卒で70.4%、高卒で49.3%、大卒で35.7%となり、中、高、大の順に「七五三現象」として定着しつつあるようです。また、学校に行かず、仕事も職業訓練もしない「ニート」が、2006年平均で62万人、「フリーター」が187万人に上るなど依然高水準が続いています。
白書では、「若者に、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力を育てる必要がある」などとして、職業訓練や望ましい職業観を身に付ける「キャリア教育」の必要性を強調しています。
◆ニートの多くがいじめや不登校を経験
ニートのうち約5割が、学校でのいじめ被害や引きこもりの経験があり、約4割は不登校を体験していることが、約400人のニートを対象にした厚生労働省の調査でわかりました。
また、約8割は「仕事をしていく上で人間関係に不安を感じる」と回答しており、専門家は「対人関係の苦手意識が不登校やいじめの体験で増幅され、それが就労の困難にもつながっている」と分析しています。
◆83%が「ニート状態後ろめたい」
就労していないニート状態の期間については、「1年以下」が41%と最多で、「5年超」も12%に上っています。また、連続1カ月以上働いた経験がある人は79%。仕事をしていないことについて83%が「後ろめたい」と感じていますが、同時に80%が「仕事をしていく上で人間関係に不安を感じる」としています。「人と話すのが不得意」な人も64%に上りました。
今年の新入社員の意識調査の結果
◆今時の新入社員は「デート」よりも「仕事」を優先
平成19年度の新入社員を対象に、財団法人社会経済生産性本部と社団法人日本経済青年協議会が「働くことの意識」についての調査を行い、デートの約束があったとき、残業を命じられたら、「デートをやめて仕事をする」という回答が8割に達するなどといった結果が出ました。
◆「バブル入社組」との違い
「あなたは仕事と生活についてどちらを中心に考えますか」という質問に対しては、「仕事と生活の両立」が79.8%を占め、「仕事中心」が9.6%、「生活中心」10.6%となっています。この質問に対して経年変化をみると、「仕事中心」が昭和47年度で15%、平成3年度で5%、平成19年度で10%、「生活中心」が昭和47年度で15%、平成3年度で23%、平成19年度で11%となっており、バブル入社組との違いが鮮明にわかる結果となっています。
◆今年の新入社員のタイプ
今年の新入社員のタイプは『デイトレーダー型』といわれています。どのようなタイプかというと、「景気回復での大量採用は売り手市場を形成し、就職しても細かい損得勘定でネットを活用して銘柄(会社)を物色し続け、売買を繰り返す(転職)恐れがある」という意味のようです。
◆リストラが不安?
戦後最長の好景気と、団塊世代の大量退職に伴う「売り手市場」を反映して、「思っていたよりは満足のいく就職ができた」と希望通りの就職はできたものの、「将来のリストラが不安」という悩みも持っている人も多いようです。
仕事や今後の展望については、「いずれリストラされるのではないか」(38.8%)、「いずれ会社が倒産したり破たんしたりするのではないか」(22.8%)などの回答が前年より増加しています。バブル期の後の「崩壊」が再びあるのでは、という不安が反映されているのでしょうか。
母子家庭の自立支援策
◆年々増加する母子世帯
厚生労働省は、母子家庭の自立支援施策の一環として、自治体における就業支援事業の取組状況を一覧できる母子家庭就業支援マップを作成し、同省のホームページに公表しました(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/koyou/map/index.html)。
母子世帯の割合は年々増加する一方で、母子世帯になってから就業する人の約6割が臨時・パート雇用を余儀なくされています。同省では、母子家庭の就業を促進し、自立した生活を営めるよう、各種支援策を実施しています。
◆厚労省が実施する母子家庭自立支援策
4本柱(1.生活支援策、2.就業支援策、3.養育費の確保策、4.経済的支援策)で総合的な母子家庭の自立支援策を実施しています。
◆母子家庭に対する主な就業支援策
1.母子家庭等就業・自立支援センター
母子家庭の母等に対して、就業相談から就業支援講習会の実施、就業情報の提供等一貫した就業支援サービスの提供を行うとともに、弁護士等のアドバイスを受け養育費の取り決めなどの専門的な相談を行う「母子家庭等就業・自立支援センター事業」を実施しています。
2.母子家庭自立支援給付金事業
(1)自立支援教育訓練給付金事業
地方公共団体が指定する教育訓練講座を受講した母子家庭の母に対して、講座修了後に受講料の一部を支給します。雇用保険の教育訓練給付の受給資格を有していない人が指定教育講座を受講し、修了した場合、経費の40%(20万円を上限)が支給されます。
(2)高等技能訓練促進費事業
母子家庭の母が看護師や介護福祉士等の経済的自立に効果的な資格取得のため、2年以上養成機関等で修業する場合に、就業期間の最後の3分の1に相当する期間(12カ月を上限)、「高等技能訓練促進費」を月額10万3,000円支給することで、生活の負担の軽減を図り、資格取得を容易にするものです。
(3)常用雇用転換奨励金事業
パートタイム等で雇用している母子家庭の母を、OJT実施後、常用雇用に転換した事業主を対象に1人当たり30万円の奨励金を支給します。
◆テレワーク人口倍増に向けた政府の行動計画
ITを活用して自宅や外出先などで仕事をする「テレワーク」人口の倍増を目指す政府の行動計画がこのほど明らかになりました。雇用保険が適用される在宅勤務の対象を広げるほか、政府でも、2007年度中に全省庁でテレワークを試験導入するそうです。少子高齢化が加速する中で、女性や高齢者などの「眠れる労働力」を活用しやすい環境を整えます。
◆テレワークは労働力確保の切り札?
政府は、テレワークについて、仕事と生活の調和(ライフワークバランス)の実現や人口減少時代における労働力確保などの切り札になると考えています。
テレワークは、情報通信機器などを使って、時間や場所にとらわれず柔軟に働く働き方です。通勤が不要で、労働時間を自由に設定できるなど、育児をする女性などにとっては使い勝手のよい働き方だといえます。
政府の行動計画では、2010年までを「テレワーク集中推進期間」に設定し、テレワーク人口を2005年に比べて2倍に増やし、就業者人口に占める比率も2割に引き上げることを目標としています。
◆テレワーク人口の増加なるか?
テレワーク普及の方策としては、1.制度環境の整備、2.情報通信システム基盤の整備、3.分野別の推進施策の3つが掲げられています。
現在は、在宅勤務者で雇用保険が適用される業務は、新商品開発や編集など特定の業務に限定されていますが、政府の行動計画では適用業種を広げるとしています。
通信システム基盤の整備では、政府が独自にテレワークを試行・体験するシステムを構築するとしています。最先端技術やサービスを活用した先進システムの実証実験も始まります。政府では、テレワークを2007年度中に全省庁で試行し、順次本格導入していく方針だそうです。
日本の人口はこれからどうなる?
◆「人口減少時代」に突入へ
国立社会保障・人口問題研究所が発表した都道府県別の将来推計人口により、2025年からすべての都道府県で人口が減少する見通しが明らかになりました。高齢化も進み、2035年には44都道府県で65歳以上の人口が3割を超えるようです。出生率は上昇していますが、中長期の人口減少は避けられず、都市部への人口集中もいっそう進む見通しです。
◆人口の減少と都市部への人口集中
この調査は、2005年の国勢調査の結果や都道府県ごとの合計特殊出生率(女性が生涯に産む子供の数。中位推計)などをベースに、2005年から2035年までの都道府県別の人口を推計しています。
都道府県別の人口は、2010年から2015年にかけては東京、神奈川、愛知、滋賀、沖縄を除く42都道府県で減少します。2015年から2020年には人口が増えるのは東京と沖縄だけになり、さらに2020年から2025年は沖縄だけになり、2025年以降は人口が増える都道府県がゼロになります。また、都市部への人口集中が進み、日本の総人口に占める東京の人口割合は、2025年の9.8%から2035年には11.5%に上がるとされています。
2005年と比較した人口が2035年時点で増えているのは東京と沖縄のみです。和歌山や秋田ではこの間に約3割も減る見通しです。
◆各都道府県で少子高齢化が進展
今回の推計では、各都道府県での少子・高齢化の進展の見通しも明らかになりました。総人口に占める若年人口(0歳から14歳)の割合は、2005年から2035年までの期間を通じて全都道府県で減少します。
都道府県別では、年少人口の割合は、2005年は18.7%と全国一の沖縄でも2035年には13.3%に低下します。2005年に11.5%で最下位の東京では8.0%に下がります。
65歳以上の高齢者人口の割合は、全国では2005年の20.2%から2035年には33.7%に上がります。特に秋田では41.0%、和歌山では38.6%まで上昇します。2000年から2005年の合計特殊出生率の平均値が1.78%と全国で最も高い沖縄でも、27.7%と3割に迫っています。
2005年に約1億2,700万人だった日本の総人口は、出生率が中位推計(長期平均1.26)で2030年には約1億1,500万人に、高位推計(同1.55)でも約1億1,800万人といずれも減少する見通しです。
改正高年齢者雇用安定法施行から1年、企業の状況は?
◆60歳以降の雇用確保実施企業は約98%
改正高年齢者雇用安定法の施行で60歳以降の雇用確保が事業主に義務付けられた2006年4月以降、約98%の企業で再雇用や定年の引上げなどの措置を講じていることが、労働政策研究・研修機構の調査でわかりました。
高齢者の雇用確保は、改正高年齢者雇用安定法に基づく措置です。定年が65歳未満の企業は、年金の支給開始年齢の段階的引上げに合わせ、1.定年の引上げ、2.再雇用制度や勤務延長制度など継続雇用制度の導入、3.定年廃止のいずれかを選ばなくてはなりません。
◆「元管理職」の処遇に悩む企業
この調査は、2006年10月1日時点における制度の整備状況を各企業に聞いたものです。従業員300人以上の民間企業5,000社に質問票を送付し、1,105社から回答を得たそうです。調査結果では、定年後の再雇用制度を導入している企業が91.3%に上りました。勤務延長制度や定年の引上げなどを導入した企業と合わせると、98.4%の企業が、何らかの措置を講じていました。
継続雇用する対象者については、72.2%が「健康や働く意欲、勤務態度などで基準に適合する者」と条件付きで対象としており、「希望者全員」としている企業は24.6%にとどまりました。高年齢社員の処遇で困る点では「担当する仕事の確保が難しい」(39.6%)、「管理職経験者の扱いが難しい」(38.9%)、「継続雇用後の処遇の決定が難しい」(24.5%)、「高齢社員を活用するノウハウがない」(19.1%)などが上位を占めています。
同機構は、「制度はできあがったが、今後は再雇用した人の活用方法や、現役社員との関係、勤務形態を整備していく必要がある」と指摘しています。
75歳以上を対象とした新・医療保険制度
◆来年4月から「後期高齢者医療制度」がスタート
2008年4月から、75歳以上の高齢者を対象とした医療保険制度(後期高齢者医療制度)が動き出す予定です。開始まで1年を切りましたが、詳細が決まっていない点もあり、中身はよく知られていないようです。保険料負担や医療の内容はどのように変わるのでしょうか。
◆保険料は厚生年金受給者で平均「月約6,200円」か
新制度は、2006年6月に成立した医療改革関連法で導入が決まりました。複数の病気を持つことも珍しくない75歳以上を、現役世代の医療保険と別建てにし、効率化を進めて医療費を抑制するのがねらいです。都道府県ごとに全市町村が参加する広域連合が運営予定のため、保険料も都道府県単位で決定します。
保険料については、各広域連合で保険料を定める条例が今秋以降でないと制定できない見通しで、保険料負担額は今のところ不明です。ただ、厚生労働省が公表している全国平均の保険料の目安が手掛かりとなり、「年208万円」という平均的な厚生年金受給者の場合、保険料の目安は「月約6,200円」となります。また、75歳未満の配偶者がいる場合は別途配偶者の保険料も支払いますので、今よりも負担増になると見られています。
全般的には地域や所得の状況によって負担が増えるか減るかは一概には言えませんが、明確に負担増になる人もいます。会社員の子供の被扶養家族になり、子供の会社の健康保険を利用している高齢者です。従来は高齢者自身は保険料を負担していませんでしたが、新制度では年金収入に応じた保険料を負担する仕組みに変わります。急な負担増を防ぐため、制度加入時から2年間は本来の保険料の最大半額(定額部分)となります。
◆医療保険・介護保険の合計負担額に上限設定
病院や診療所で治療を受けたとき、窓口での患者負担はどうなるのでしょう。75歳以上の場合、かかった医療費の原則1割を負担するというのは従来と同じです。所得が現役並みに多いと判定された場合は、現役世代と同様の3割負担となるところも変わりません。
2008年4月の新制度からは、医療保険と介護保険の患者(自己)負担の合計額に上限が設けられます。これまでは、医療と介護それぞれに1カ月当たりの負担上限などが決まっていましたが、医療と介護の両方を利用している方の負担が著しく高額にならないよう、年間の合計額にも上限を設けることにしました。
一般の合計負担額の上限は年間56万円で、これを超えると超えた分が戻ります。ただし、利用者の側から役所に申請しないと戻ってこない仕組みになりそうです。
6月から住民税がアップ
◆6月は5月より税金が増えている?
6月の給与明細を見ると、税金が5月より増えていることに気が付いた方がいると思います。国(所得税)から地方(住民税)へ税源移譲が行われた結果、多くの家庭で所得税が1月から先行して下がったのに対し、住民税の増加は仕組み上、毎年6月から反映されるためです。定率減税廃止による税負担の増加も重なりました。
◆「税源移譲」とは?
税源移譲とは、補助金に代わる地方公共団体の新たな財源として、国が集めている税金のうちの一定の部分を、地方が集めることができるようにすることです。国と地方の税財政改革(三位一体の改革)の柱の1つです。
国税の一部を減らして地方税を増やすということなので、納税者の負担は増えないとされています。現在の自治体は国から補助金や地方交付税交付金などをもらって行政サービスの財源を補っています。三位一体改革は原則として補助金の削減に見合う額を、国から地方への税源移譲で補うことにしています。ただ、この方法ではもともと住民税の納税額が多い地域に財源が集まるという弊害があり、大都市と地方の自治体で格差がつかないよう、公平に税財源を分け合う方法が求められます。
◆暮らしへの影響は?
所得税は従来の4段階から6段階になり、最低税率は10%から5%に下がりました。住民税は一律10%に変わりました。この結果、大半の世帯で所得税が減り、住民税が増える結果になります。所得税と住民税を合わせた納税者の負担額は原則変わりません。
定率減税の全廃の影響も大きなものです。所得税では所得の20%(上限25万円)、住民税では15%(同4万円)が減税となっていましたが、2006年分からは半減され、2007年分からは全廃となりました。残っていた半分の控除がなくなると、所得税は最大で年12万5,000円、住民税は最大で年2万円増税になります。
ではなぜ、6月から変化が起きたのでしょうか。所得税は1月から変わるのに対し、住民税は前年の所得に応じて翌年の6月以降変化します。このため、大半の世帯では1月から所得税が減っていましたが、6月からは住民税率の上昇と住民税分の定率減税廃止が影響し、税負担が増えることになったわけです。
◆地方によっては国民健康保険料にも影響
東京23区など一部の市区町村では、国民健康保険料を算出する際、住民税額に一定の比率を掛ける方法を用いるため、住民税が上がると保険料も上がってしまいます。このような自治体では緩和措置として控除枠を設けていますが、それでも保険料に変化が出ることがあります。国民保険料も毎年6月に算出されるため、6月分の金額を確認してみましょう。
「再雇用制度」今後も利用拡大なるか?
◆改正高年齢者雇用安定法の内容
2006年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法は、従業員に65歳まで就労機会を提供(雇用確保措置を導入)することを企業に義務付ける法律です。
企業には、1.定年廃止、2.定年年齢の65歳への引上げ、3.定年を迎えた従業員の継続雇用の3つの選択肢があります。定年廃止や定年延長は全従業員が対象となり、賃金や労働時間などの処遇を下げにくい制度ですが、継続雇用は労使協定などで対象者を絞り込むことができます。中でも再雇用制度は、雇用契約を結び直すため処遇を柔軟に変更することができます。
◆主要企業では定年者の半数強を再雇用
日本経済新聞社の調べによると改正高年齢者雇用安定法が施行された2006年度に、主要企業が、定年退職者の5割強を再雇用(トヨタ自動車は56%、JFEスチールとJR東日本は約7割)したことがわかりました。
今年度も再雇用制度の活用は拡大する見通しであり、団塊世代の大量定年や少子化で労働力不足が懸念される中、企業は労働力の確保に様々な対策を講じる必要がありそうです。
◆企業側は「コスト削減」、従業員側は「収入維持」
再雇用後の賃金は定年時の半分程度というケースも多く、企業側は人件費を抑えつつ労働力を確保したいと考えています。
また、従業員側にとっては年金と合わせればそれなりの収入を維持することができるため、活発な制度利用につながっていると思われます。
ニート62万人、フリーター187万人
◆「青少年白書」の結果から
内閣府がまとめた2007年版の「青少年の現状と施策」(青少年白書)によると、就職しても長続きせず、3年以内に離職した率(2003年3月の新卒者)は、中卒で70.4%、高卒で49.3%、大卒で35.7%となり、中、高、大の順に「七五三現象」として定着しつつあるようです。また、学校に行かず、仕事も職業訓練もしない「ニート」が、2006年平均で62万人、「フリーター」が187万人に上るなど依然高水準が続いています。
白書では、「若者に、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力を育てる必要がある」などとして、職業訓練や望ましい職業観を身に付ける「キャリア教育」の必要性を強調しています。
◆ニートの多くがいじめや不登校を経験
ニートのうち約5割が、学校でのいじめ被害や引きこもりの経験があり、約4割は不登校を体験していることが、約400人のニートを対象にした厚生労働省の調査でわかりました。
また、約8割は「仕事をしていく上で人間関係に不安を感じる」と回答しており、専門家は「対人関係の苦手意識が不登校やいじめの体験で増幅され、それが就労の困難にもつながっている」と分析しています。
◆83%が「ニート状態後ろめたい」
就労していないニート状態の期間については、「1年以下」が41%と最多で、「5年超」も12%に上っています。また、連続1カ月以上働いた経験がある人は79%。仕事をしていないことについて83%が「後ろめたい」と感じていますが、同時に80%が「仕事をしていく上で人間関係に不安を感じる」としています。「人と話すのが不得意」な人も64%に上りました。
今年の新入社員の意識調査の結果
◆今時の新入社員は「デート」よりも「仕事」を優先
平成19年度の新入社員を対象に、財団法人社会経済生産性本部と社団法人日本経済青年協議会が「働くことの意識」についての調査を行い、デートの約束があったとき、残業を命じられたら、「デートをやめて仕事をする」という回答が8割に達するなどといった結果が出ました。
◆「バブル入社組」との違い
「あなたは仕事と生活についてどちらを中心に考えますか」という質問に対しては、「仕事と生活の両立」が79.8%を占め、「仕事中心」が9.6%、「生活中心」10.6%となっています。この質問に対して経年変化をみると、「仕事中心」が昭和47年度で15%、平成3年度で5%、平成19年度で10%、「生活中心」が昭和47年度で15%、平成3年度で23%、平成19年度で11%となっており、バブル入社組との違いが鮮明にわかる結果となっています。
◆今年の新入社員のタイプ
今年の新入社員のタイプは『デイトレーダー型』といわれています。どのようなタイプかというと、「景気回復での大量採用は売り手市場を形成し、就職しても細かい損得勘定でネットを活用して銘柄(会社)を物色し続け、売買を繰り返す(転職)恐れがある」という意味のようです。
◆リストラが不安?
戦後最長の好景気と、団塊世代の大量退職に伴う「売り手市場」を反映して、「思っていたよりは満足のいく就職ができた」と希望通りの就職はできたものの、「将来のリストラが不安」という悩みも持っている人も多いようです。
仕事や今後の展望については、「いずれリストラされるのではないか」(38.8%)、「いずれ会社が倒産したり破たんしたりするのではないか」(22.8%)などの回答が前年より増加しています。バブル期の後の「崩壊」が再びあるのでは、という不安が反映されているのでしょうか。
母子家庭の自立支援策
◆年々増加する母子世帯
厚生労働省は、母子家庭の自立支援施策の一環として、自治体における就業支援事業の取組状況を一覧できる母子家庭就業支援マップを作成し、同省のホームページに公表しました(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/koyou/map/index.html)。
母子世帯の割合は年々増加する一方で、母子世帯になってから就業する人の約6割が臨時・パート雇用を余儀なくされています。同省では、母子家庭の就業を促進し、自立した生活を営めるよう、各種支援策を実施しています。
◆厚労省が実施する母子家庭自立支援策
4本柱(1.生活支援策、2.就業支援策、3.養育費の確保策、4.経済的支援策)で総合的な母子家庭の自立支援策を実施しています。
◆母子家庭に対する主な就業支援策
1.母子家庭等就業・自立支援センター
母子家庭の母等に対して、就業相談から就業支援講習会の実施、就業情報の提供等一貫した就業支援サービスの提供を行うとともに、弁護士等のアドバイスを受け養育費の取り決めなどの専門的な相談を行う「母子家庭等就業・自立支援センター事業」を実施しています。
2.母子家庭自立支援給付金事業
(1)自立支援教育訓練給付金事業
地方公共団体が指定する教育訓練講座を受講した母子家庭の母に対して、講座修了後に受講料の一部を支給します。雇用保険の教育訓練給付の受給資格を有していない人が指定教育講座を受講し、修了した場合、経費の40%(20万円を上限)が支給されます。
(2)高等技能訓練促進費事業
母子家庭の母が看護師や介護福祉士等の経済的自立に効果的な資格取得のため、2年以上養成機関等で修業する場合に、就業期間の最後の3分の1に相当する期間(12カ月を上限)、「高等技能訓練促進費」を月額10万3,000円支給することで、生活の負担の軽減を図り、資格取得を容易にするものです。
(3)常用雇用転換奨励金事業
パートタイム等で雇用している母子家庭の母を、OJT実施後、常用雇用に転換した事業主を対象に1人当たり30万円の奨励金を支給します。