畑中社労士事務所では顧問先の企業様を対象に 毎月事務所便りを発行しています。 内容は法改正情報や人事労務に関する時事ニュース等を中心に会社を 経営する上で欠かせない情報をお伝えしています。 このページでは今までに発行した事務所便りの 概要をご紹介させて頂きます。
2008/09/25
10月の事務所便り
平均寿命と「三大疾患」の関係
◆ 男女ともに過去最高に
女性は前年よりも0.18歳延びて85.99歳、男性は0.19歳延びて79.19歳。日本人の平均寿命が、男女ともに過去最高を更新したことが、厚生労働省が発表した平成19年版「簡易生命表」で明らかになりました。
◆ 世界トップクラスの平均寿命
平成19年版「簡易生命表」は、平成19年における死亡状況が今後変化しないと仮定したときに、各年齢の者が1年以内に死亡する確率や平均してあと何年生きられるかという期待値などを指標によって表したものです。そのうち、0歳の平均余命は「平均寿命」として捉えられ、保健福祉水準を総合的に示す指標として活用されます。
平成19年に生まれた赤ちゃんのうち、65歳まで生きる割合の推計は、女性で93.3%、男性で86.4%。75歳以上では、女性で85.8%、男性で70.8%。さらに90歳以上となると、女性で44.5%、男性で21.0%となります。
日本人の平均寿命は、世界トップクラスです。女性の平均寿命は23年連続で世界一となりました。また、男性も、今回2006年の2位からは後退したものの、3位となっています。
国際的にみると、女性の2位は香港の85.4歳(2007年)、3位はフランスの84.1歳(2006年)です。また、男性の1位はアイスランドの79.4歳(2007年)、2位は香港の79.3歳(2007年)となっています。
◆ 三大疾患との関連は
厚生労働省の人口動態・保健統計課は、「日本人の三大疾患である、がん、心臓病、脳卒中の患者の治療成績が上がったことで平均寿命が延びた」と分析しており、今後もこの傾向が続くとしています。
厚生労働省では、特定の死因が克服された場合の平均寿命の延びも試算しています。がんが根治できるようになったり、発症しなくなったりした場合、女性で3.01歳、男性で4.04歳、平均寿命が延びるとされています。同じように、心疾患が克服された場合の延びは、女性が1.65歳、男性が1.55歳、脳血管疾患では女性1.15歳、男性1.06歳となっています。また、三大死因のすべてが克服された場合、女性は7.12歳、男性は8.25歳、平均寿命が延びることも判明しています。
地方の医師や小児科医などの不足に悩む我が国において、順調に三大疾患の治療成績が上がっている現在の医療体制をいかにして維持し、さらに充実させていくのか、今後も注視する必要があるでしょう。
小中学生の学力低下と教育格差
◆ 「全国学力テスト」の実施結果
文部科学省が、小学6年生と中学3年生の原則全員を対象に、昨年に引き続き4月に実施した「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)。これは、全国的な義務教育の機会均等と、その水準の維持向上を目的として実施されています。
この度、その結果が公表されました。今、小中学生の教育はどのような課題を抱えているのでしょうか。
◆ 応用力に課題あり
全国学力テストでは、国語と算数/数学について、基礎知識を問う「A問題」と、応用力を測る「B問題」が出題されています。平均正答率は、A問題で60~70%台、B問題では50~60%台と、昨年に比べ約8~16ポイント低下しました。科目別で平均正答率が最も高かったのは中学3年の「国語A問題」の74.1%、最も低かったのは中学3年の「数学B問題」の50.0%でした。正答率は全科目で昨年より下がっています。
「B問題」の正答率の落込みから、応用力に課題があることがみてとれます。文部科学省では、「正答率の経年比較はできないが、今回は問題がやや難しかったために下がった」と説明しており、「知識を活用する力に課題があるほか、知識の定着にも一部課題がある」としています。
◆ 地域別学力格差/公・私立間格差の存在
公立校のみ、都道府県別の正答率も集計されています。最も差が開いた「数学A問題」では、最も高い福井県の72.1%に対し、最も低い沖縄県では49.6%にとどまっており、学力格差が懸念されます。
また、昨年上位だった県は、今回も高い正答率を記録しました。その反面、昨年下位だった県では今回も正答率が低く、多くの都道府県の成績が前回と同様の傾向を示したことから、「学力格差の固定化」を指摘する声も出ています。下位の地域の中には、テストと同時に実施したアンケートで、学習意欲の低さや生活の乱れが明らかになった都道府県もあり、今後の取組みが注目されます。
また、国私立校は国語、算数/数学とも「A問題」で8割前後、「B問題」で6~8割の正答率となり、いずれも公立校の平均を大幅に上回る結果となりました。
◆ 調査結果を生かして今後の教育の充実を
今回のテストには、小学校の99.4%、中学校の96.4%が参加し、計約223万8,000人が受けました。この膨大なデータを積極的に公開・活用していくことが望まれます。この調査結果を今後の教育の充実にいかに活かしていけるかが、何より重要なテーマとなります。
電子マネーの現状と今後の方向性
◆ 電子マネーの魅力
小売店・鉄道・インターネット通販など、様々な場面で手早く支払処理を行うことができるのが魅力の「電子マネー」。目新しさやポイント付与などの魅力により普及が急速に進み、今や利用者は数千万人規模、対応する交通機関や店舗は日増しに増えています。
◆ 電子マネーとは?
電子マネーとは、貨幣価値をデジタルデータで表現したものです。お金の電子情報を蓄積したICチップを搭載したカード・携帯電話を支払い時に読取端末にかざすことで、通貨の代わりに仮想のお金として使用することができます。事前にカードや携帯電話に入金しておいて利用する「プリペイド(前払い)型」と、支払い後にクレジットカードで使用料金を決済する「ポストペイ型」に大別されます。
近年では、カード媒体を使わずに、残高情報を専用サーバーで管理し、プリペイド番号の入力により決済を行う「サーバー管理型電子マネー」も普及してきています。
◆ 急速な普及の要因は?
電子マネーの普及規模は、プリペイド型の発行枚数が9,000万枚近く、ポストペイ型の会員数が関西圏の私鉄・地下鉄の「ピタパ」を含め約1,400万人といわれています。
電子マネーがこれほど普及した要因はいくつか考えられますが、小銭のやり取りをせずに素早く支払いを終えられる利点が認識されたことが大きいと思われます。比較的安価で安定したIC技術が確立したことに加え、早い段階でコンビニに端末が設置され、利便性が向上したことも大きなポイントです。
◆ 今後の方向性
普及が目覚ましい電子マネーですが、規格が乱立しているうえ、共用端末の普及が進んでおらず、今後の課題といえます。また、法整備に向けた動きも注目されます。
特に重要なのは、補償や保護の問題です。現在、ポストペイ型は一般のクレジットカードと同じ補償サービスを受けることができます。プリペイド型は、未使用残高の半額を国に供託しているため、発行企業が倒産しても少なくとも半額は保護されます。ただし、サーバー管理型電子マネーは対象外です。また、ポイントについては法的には保護されていません。
これらの問題に関し、金融庁では、電子マネーやポイントの利用者保護に関する法整備を検討しています。サーバー管理型電子マネーやポイントを規制の対象とするか、プリペイド型電子マネーの利用者保護を強化するかなどが焦点になりそうです。
「最低賃金」時給700円台に突入へ
◆ 2008年度の引上げ額の目安は?
原則としてすべての労働者に適用される「最低賃金」。その額は都道府県ごとに決められており、現在の全国平均額は687円です。
2008年度の引上げ額の目安を議論していた中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は、全国平均で時給を15円程度引き上げることを決定しました。この結果、全国平均の最低賃金額は、初めて700円を超えることになる見通しです。
◆ 都道府県別最低賃金額の引上げと生活保護政策
今回の最低賃金額の引上げに関する議論では、7月に施行された改正最低賃金法の趣旨を、引上げ額にどう反映するかが焦点となりました。同改正法では、生活保護並みの時給を求めています。地域によっては最低賃金が生活保護費を下回り、「働く意欲をそぎかねない」との批判が強かったため、現時点で生じている生活保護との大幅な差を解消することになりました。
地域ごとの引上げ額は、中央最低賃金審議会が定めた目安を受けて、都道府県ごとに正式な金額が決定され、10月中に適用される予定です。これに加えて、最低賃金額が生活保護を下回っている12の都道府県については、生活保護との差を「原則2年(引上げ額が例を見ないほど大幅な場合は3年)」で解消することを求められました。
例えば、生活保護との差が時給80円あるとされる東京都の場合、3年で差を埋めるとすると1年当たり25円超の引上げが必要となるなど、逆転解消のためには前年度以上の大幅な引上げが必要となります。
◆ 引上げ反対の声も
最低賃金額の大幅な引上げは、低所得者の生活の下支えとなります。しかし、原油や食料の価格高騰の影響などで物価も上昇しているため、消費拡大効果は限定的とみられています。
人件費の増加は中小企業の存続に関わるとして、最低賃金額の大幅引上げに反対する声もあります。最悪の場合は中小企業の倒産を誘発し、かえって中小企業の雇用に悪影響を与えることも懸念されています。生産性向上や価格転嫁が進まなければ、中小・零細企業の雇用には悪影響を与えます。
生活保護との差を解消するため、来年度以降も最低賃金額は2ケタの引上げとなる予定ですが、今後の経済・雇用情勢によっては、方向性が変わる可能性もあるかもしれません。
非正社員雇用の現状は?
◆ 非正社員雇用が頭打ち
景気停滞局面の中、拡大が続いてきた派遣やパート・アルバイトなどの非正社員の雇用に、頭打ち感が強まってきました。企業は中長期的な人材確保のための正社員採用には積極的ですが、非正社員については絞り込む傾向が強くなっているようです。
◆ 非正社員の雇用の現状
総務省「労働力調査」で、雇用者数の内訳をみてみましょう。
正社員などの「常用雇用」は今年6月まで3年4カ月連続で前年同月実績を上回りました。しかし、その一方で、日雇いを除く1年以内の有期雇用を示す「臨時雇用」は、今年に入り6カ月連続でマイナスとなっています。これは、原材料の高騰や米国経済の低迷など経営環境の急速な悪化を受け、派遣社員や期間従業員の数が減らされたことによるものと考えられます。昨年の10月まで1.4倍台を維持していたパートの有効求人倍率は今年6月には1.25倍(季節調整値)にまで低下し、約6年ぶりの低さとなっています。
アルバイトも頭打ち傾向です。求人広告などから集計された6月の全国平均時給は968円で、前年同月を2%下回りました。人手不足を反映して上昇が続いてきたアルバイトの時給ですが、これで3カ月連続でのマイナスです。
◆ 人材派遣業界の現状
また、人材派遣業界も転機を迎えています。人材派遣業界は、固定費の増加を避けたい企業の需要拡大により急成長を続けてきましたが、日本人材派遣協会が107社を対象に集計している人材派遣の平均実稼動者数は今年4~6月で前年同期比1%増にとどまり、比較可能な2003年以降で最も低い伸びとなりました。
◆ 柔軟な雇用環境の確保が大切
正社員採用については、「団塊の世代」の大量退職が始まり、長期的にも少子化の影響で人手不足が続くことが予想されることから、中長期的な人材確保のため、企業は積極的な姿勢を維持しています。
一方で、非正社員については、改正パートタイム労働法の施行や日雇い派遣の原則禁止といった規制強化の動きも重しとなり、雇用が頭打ちになっていると考えられます。非正社員の待遇改善はもちろん大切ですが、待遇改善を目指す法律がかえって企業の慎重姿勢を強めてしまうことのないよう、柔軟な雇用環境を確保していくことが大切であるといえます。
働きながら年金を満額もらうには?
◆ 在職老齢年金制度
厚生年金は働きながら受け取ることもできますが、「在職老齢年金制度」により、賃金・年金額に応じて受給額が減額されてしまいます。これには釈然としない人も多いようですね。
厚生年金を満額受け取って働くにはどうすればよいか、対策を考えてみます。
◆ 対策その1:個人事業主になる
在職老齢年金の仕組みでは、給料と年金を組み合わせた収入が多い人について、厚生年金の支給額が減額されます。ポイントは、これらの計算対象となる収入とは、あくまで「給料と賞与」である、ということです。
減額制度は、厚生年金に加入し続けて働く人が対象です。個人事業主として独立すれば、雇われて給料をもらうことはないので厚生年金から外れ、支給される年金が減額されることも年金保険料を負担する必要もなくなります。また、勤めていた会社で働き続ける場合でも、個人事業主として業務委託契約を結べば、満額もらうことができることがあります。
◆ 対策その2:厚生年金に加入しなくても済む形態で働く
独立できるだけの専門的知識と技能がない場合、最も現実的なのは、厚生年金に加入しなくても済む、非正規のパートやアルバイトとして働くことでしょう。原則、勤務日数か勤務時間のどちらかが正社員の4分の3未満であれば、厚生年金の加入義務はありません。
また、従業員5人未満の個人事業所に就職することも1つの方法です。業種にもよりますが、勤務先の事業所が厚生年金に加入しなくてもよいので、働く人も減額の仕組みから外れます。
◆ 気をつけたいポイント
厚生年金に加入せずに働く場合、落とし穴もあります。妻が専業主婦の場合、夫が厚生年金保険から外れれば、妻も国民年金の第1号被保険者となります。60歳未満であれば国民年金保険料を支払う必要が生じ、保険料負担が増えて世帯収入が減るおそれもあります。また、厚生年金保険料を支払い続ければ、当然退職後に受け取る年金総額が増えます。目先の年金額に目を奪われすぎると、かえって損につながる恐れもあるのです。
満額支給にこだわって手取り総額の減少を我慢するか、減額されても手取り総額を増やすか、あるいは満額受給しつつ起業に挑戦するか、様々な選択肢が広がります。年金の受取り方は、働き方やライフスタイルといった、老後生活全体を考えることにつながりますので、よく考えて選択するべきといえます。
10月から発足する「協会けんぽ」で何が変わる?
◆ 「政管健保」から「協会けんぽ」へ
現在、主に中小企業の従業員やその家族など約1,990万人が加入している「政府管掌健康保険」は国によって運営されていますが、今年の10月1日からは、国から独立した新たな健康保険として発足する「全国健康保険協会」(通称:協会けんぽ)が運営を引き継ぐことになっています。
協会けんぽは、「非公務員型」の法人として新設される機関であり、そこで働く職員は公務員ではなく民間の職員となります。理事長や各都道府県における支部長なども民間から登用され、「民間のノウハウを積極的に採り入れていく」そうです。
◆ 新たな保険証への切替え
政府管掌健康保険に加入していた人は、10月1日以降、順次、新たな被保険者証(保険証)に切り替えられます。保険証の切替手続は会社を通じて行われますが、任意継続被保険者の人には直接自宅に保険証が郵送されます。10月以降に新たに協会けんぽに加入する人や保険証の再交付の手続きをした人には、新たな保険証が発行されます。
なお、保険証の切替えが完了するまでの間は、従来の保険証も引き続き医療機関等で使用することができます。
◆ 保険料は都道府県ごとに設定
健康保険の保険料率は、9月30日までの政府管掌健康保険の保険料率(8.2%)が適用されます。しかし、協会けんぽの設立後1年以内に、都道府県ごとに、地域の医療費が反映された保険料率が設定されることとなっています。
都道府県単位の保険料率は、年齢構成や所得水準に応じて、都道府県間で調整を行ったうえで設定されるようです。都道府県別の保険料率への移行にあたっては、大幅に上昇する場合には「激変緩和措置」が講じられることになっています。
なお、政管健保は高齢者医療への拠出金や医療給付費などの増加による影響から2007年には赤字に転落しており、厚生労働省は、0.1~0.3%程度の引上げが必要との試算結果を発表しています。
◆ 給付内容等は変更なし
医療機関で受診する場合の自己負担割合や高額療養費の負担限度額、傷病手当金などの給付の金額や要件などは、これまでと変わりありません。
厚生労働省が示した「名ばかり管理職」の基準
◆ 飲食業・小売業の店長などが対象
昨今、大きな社会問題となっている「名ばかり管理職」(職務権限や待遇が不十分にもかかわらず管理監督者とみなされて残業代が支払われない労働者)について、新たな動きがありました。
厚生労働省は、チェーン展開している飲食業・小売業の店長などが労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかの具体的な判断基準を盛り込んだ通達を、都道府県労働局長あてに出しました(平成20年9月9日)。個別の業種・業態について詳細な基準を示したのは、異例のことです。
◆ 具体的な判断基準は?
この通達(「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」)では、「名ばかり管理職」の判断基準として、以下のことなどが挙げられています。
(1)職務内容や権限について、「パートやアルバイトなどの採用権限がない」ことや「パートらに残業を命じる権限がない」こと。
(2)勤務時間について、「遅刻や早退をした場合に減給などの制裁がある」ことや「長時間労働を余儀なくされるなど、実際には労働時間の裁量がほとんどない」こと。
(3)賃金について、「時間あたりの賃金がパートらを下回る」ことや「役職手当などが不十分である」こと。
◆ 「名ばかり管理職」最近の事例
紳士服大手「コナカ」の店長2人が「名ばかり管理職」だったとして、未払い残業代(計約1,280万円)を求めて申し立てていた労働審判において、横浜地裁は8月22日、原告の主張を認めました。同社の店長が司法の場で「名ばかり管理職」だと認定されたのは初めてのことだそうです。
また、昨年10月に死亡した日本マクドナルドの元店長の女性(当時41歳)の遺族らが、死亡したのは長時間労働による過労が原因だったとして、横浜南労働基準監督署に労災申請を行いました。遺族を支援している連合によれば、元店長の1カ月の残業時間は多い月で120時間にも及んでいたそうです。
厚生労働省では、上記の通達を出すにあたって「適切な監督指導を行い、管理監督者の範囲の適正化を図りたい」としており、今後の実務や裁判等にも大きな影響を与えそうです。
迫り来る「2009年問題」にどう対応するか?
◆ 製造派遣の「2009年問題」とは?
2004年の労働者派遣法改正において、それまで認められていなかった製造業への労働者派遣(製造派遣)が「1年間」に限って解禁され、2007年にはこれが最長「3年間」に延長されました。2007年3月の時点で契約1年以内であった労働者派遣については、手続きを踏むことより契約期間を2年間延長することができるようになりました。
「2009年問題」とは、2006年3月1日以降に締結された派遣契約が2009年3月1日以降に契約期間の上限を迎え、その際に企業はどのように対応するかという問題です。
もっとも、2006年夏の“偽装請負騒動”以降に請負から労働者派遣に切り替えた企業も多いため、派遣社員の契約期間の上限到達が本格化するのは2009年秋以降だとも言われています。
◆ 企業はどのように対応するか?
労働者派遣法においては、契約期間が3年間を超えた場合に再度派遣契約を締結する際には、3カ月間以上期間を空けなければいけないとされています。そこで、派遣先企業の対応の選択肢としては、(1)派遣から請負に切り替える、(2)派遣から直接雇用に切り替える、ことが考えられています。
(1)の請負への切替えについては、業務内容を検討しながら、「区分基準」(昭和61年労働省告示第37号)で示されている条件等をクリアしていく必要があります。その際には厚生労働省から発表されている「製造業の請負事業の適正化及び雇用管理の改善に関する研究会報告書」(2007年6月29日)にあるチェックシートが参考になると思われます。(2)の直接雇用への切替えについては、人件費の増加などが特に中小企業を悩ます問題となります。
いずれにしても、派遣先企業としては自社におけるリスクを考えながら、適切に対応していかなければなりません。
◆ 大手企業における対応策は?
キヤノンは今年3月に、子会社を含めた工場などの製造現場で働く派遣社員(約1万2,000人)の受入れを年内に全面的に打ち切り、半数を直接雇用の期間社員、残りの半数を請負会社との契約に切り替えることを明らかにしました。同社は偽装請負があるとして労働局などから指導を受け、派遣契約への切替えを順次すすめていましたが、直接雇用と請負とに再編する方針のようです。
もうお済みですか? 「外国人雇用状況」の届出
◆ 10月1日までに届出が必要
昨年10月1日に改正雇用対策法が施行され、すべての事業主に「外国人雇用状況の届出」が義務化されました。
具体的には、外国人労働者(特別永住者および在留資格が「外交」「公用」の者を除く)の雇入れまたは離職の際に、当該外国人労働者の氏名・在留資格・在留期間等について確認し、厚生労働大臣(実際にはハローワーク)へ届け出ることが必要となりました。これは、アルバイトなど臨時に雇用する場合の届出についても同様です。
上記の届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合には、罰金(30万円以下)が科せられますが、改正法の施行前から継続雇用していた外国人労働者の届出については、今年の10月1日まで猶予されていました。そして、いよいよその期限が迫っています。
もう届出はお済みでしょうか?
◆ 外国人労働者数は約34万人
厚生労働省は、改正雇用対策法の施行を受けて外国人の雇用状況を集計し、先日その結果を公表しました。今年6月末時点における外国人労働者数(特別永住者を除く)は33万8,813人でした。
なお、前回調査時(2006年6月)は約22万人3,000人で、2年で約11万5,000人増加した計算になりますが、前回調査時までは企業の任意による報告に基づいていたため、この数だけ増加したとは一概にはいえません。
◆ 今後も増加が予想される外国人労働者
今年7月、自民党の「外国人労働者問題プロジェクトチーム」は、原則としてすべての業種において外国人労働者を受け入れることなどを盛り込んだ「外国人労働者短期就労制度」の創設を提言する方針を固めたと発表しました。
また、大学などを卒業して日本国内で就職した外国人留学生の数は2007年に過去最高の1万262人(前年比24%増)となったというデータもあり、今後も外国人労働者は増加していくものと予想されます。
2008/08/29
9月の事務所便り
導入なるか?「サマータイム制度」
◆次期臨時国会に提出か
夏の間、時計の針を1時間進める「サマータイム制度」について、導入が議論されています。政府は6月末に決めた、経済財政運営の指針となる「骨太方針2008」に明記し、超党派の「サマータイム制度推進議員連盟」は次期臨時国会への関連法案提出を目指しています。根強い反対論や課題も多く、浮かんでは消えるサマータイム制度について考えてみましょう。
◆サマータイム制度のメリットは?
サマータイム制度は、日照時間が長い夏に時計を1時間進めて、明るい時間を有効に使う制度です。利点としては照明の使用時間を短くできるほか、朝の比較的涼しい時間帯から仕事を始められるため、冷房の使用が減り、省エネ効果が高まり、世界的に関心が高まっている地球温暖化対策としても注目を集めています。1年に2回時計を直す手間も生じますが、これにより省エネ意識を喚起できるという効果も期待できます。
また、明るいうちに仕事が終わって余暇を楽しむ時間が増えれば、消費が拡大する可能性もあり、その経済波及効果にも期待が集まっています。
サマータイム制度は世界で70カ国以上が採用し、経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国のうち、導入していないのは日本と韓国、アイスランド(夏が白夜のため導入の必要がない)だけです。
◆労働時間が増えることも
日本でも戦後間もない1948年に、サマータイム制度を取り入れたことがあります。電力供給不足の解消のため、GHQ(連合国軍総司令部)の指示で実施されましたが、「労働時間が増えた」として不評を買い、1951年に終わっています。
制度の導入が再び議論され始めたのは1990年代前半からで、省エネと経済効果を期待する経済界から声が上がりました。しかし、法案提出には至っておらず、「夏前に法案提出の動き→断念」という光景がお決まりのパターンとなっています。
代表的な反対の理由は、労働時間が増すという懸念です。定時退社が定着している職場が少ないため、始業が1時間早まるだけであって、労働時間が増えかねないからです。また、昨今の原油高や食料の物価高で家計や財布のヒモは固くなっており、夕方を余暇にあてられるかどうかは不透明です。早めに家に帰って冷房をつければ、エネルギー消費が増すおそれさえあります。
また、「時計合わせの手間がたいへんである」との見方もあります。掛け時計や腕時計の針を進めるだけでなく、時間調整のためのコンピューターシステムの修正には相当の手間とコストがかかると予想されます。他にも、睡眠障害等への悪影響など健康被害への懸念もあり、導入のためにはこれらの反対論や懸念を押し切れるだけのメリットを実証する必要があるようです。
「パワー・ハラスメント」の基準は?
◆法的定義のないパワハラ
職権を使ったいじめや嫌がらせである「パワー・ハラスメント」(パワハラ)が、会社の業務に大きな影響を与えるようになってきました。社員の士気や会社の評判を落とさないように対策に乗り出している企業もありますが、「セクシュアル・ハラスメント」(セクハラ)と違って法的定義がなく、あいまいな基準が対応を難しくしています。
◆パワハラに関する裁判例
企業内で上司などから暴力や暴言、無視されるなどのパワハラ行為を受けて悩む社員は多く、年々増加傾向にあると言われています。2007年10月の医薬品販売会社社員の自殺について、東京地裁がパワハラとの因果関係を認めて労災と認める判決を出しました。
また、2008年7月には道路会社社員の自殺をめぐり、被害者がうつ病で自殺したのはパワハラが原因であるとして、遺族が慰謝料などの損害賠償を求めた訴訟の判決で、松山地裁は自殺との因果関係を認め、約3,100万円の賠償を命じました。裁判長は、上司による過剰なノルマ達成の強要や度重なる叱責は「違法と評価せざるを得ない」と指摘し、「自殺は予見可能だった」として会社の責任を認めています。
また、企業のトップがパワハラ体質であるために社員が相次ぎ辞めていく会社もあると言われており、パワハラに対する社会の見方は厳しさを増していると言えるでしょう。
◆「パワハラ上司」のタイプ
パワハラに関し、研修の主要テーマに据えるなど、何らかの予防策を模索する企業は増えています。パワハラに関する研究を行っている有識者によると、主に「パワハラ上司」は、以下の4つのタイプに分けられるとしています。
(1)怒鳴るなどの威嚇をする「自己中心型」
(2)細かく指示する「過干渉型」
(3)自分の上司頼みで責任を回避する「無責任型」
(4)意欲に乏しく部下に負担をかける「事なかれ主義型」
◆世代間で認識にギャップも
パワハラについては、世代間の認識の差なども大きく、特に年長社員には先輩社員に怒鳴られながら仕事を覚えた経験を持つ人も多く、「部下に熱心に注文をつけて何が悪いのか」といった反応もあるようです。
暴力を振るう、到底達成できないノルマを課すなどの行為は典型的なパワハラですが、一方で、部下の成長を願って強く注意するといった行為がパワハラなのか、基準は受け止める側によってまったく変わってきます。ただ、パワハラ対策に真剣に取り組むことにより、必然的に、上司と部下の関係や、職場の雰囲気などが改善されていく可能性は大いにあると言えるでしょう。
創設目指す「消費者庁」とはどんな省庁!?
◆食品偽装や物品事故などへの懸念
福田内閣が来年度の創設を目指しているのが「消費者庁」です。食品の偽装や製品事故などへの懸念が増大するなかで、どのような役割が期待されているのでしょうか。また一般消費者にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
◆消費者庁の狙い
消費者庁とは、消費者の視点に立って政策全般を監視し、必要があれば法律を企画立案したり他省庁に適切な対応をするように勧告したりする「消費者行政のかじ取り役」となる組織で、設置に向けた準備が進んでいます。具体的には表示、安全、取引など消費者に身近な問題を広く扱い、物価行政も担当することになります。全国の消費生活センターなどを使って相談窓口を整備し、情報を一元的に吸い上げて他省庁に適切な対応を勧告したりもするようです。
設置の背景として、近年、消費者が巻き込まれる事件や事故が相次いでいることが挙げられます。報道で取り上げられる各種の食品偽装事件は、まったく後を絶ちません。また、ガス瞬間湯沸かし器による死亡事故は約20年前から、家庭用シュレッダーによる子供の指の損傷や経営破たんした英会話学校への苦情なども、かなり前から問題になっていたにもかかわらず、行政は有効な手を打てませんでした。
日本の行政はこれまで、「いかに国を豊かにするか」を重視し、消費者行政はいわば二の次とされてきました。消費者庁は成熟社会を迎え、産業育成優先から消費者の権利保護を優先させる行政に転換する象徴として位置付ける狙いがあるようです。
◆機能するための課題は?
政府は秋の臨時国会に消費者庁設置のための法案を提出し、来年度からの発足を目指しています。
仮に順調に発足したとして、消費者庁がしっかりと機能するためには、いくつかの課題があります。まずは、他省庁との役割分担や責任の所在の問題です。所管する法律の半分以上が他省庁との共管や一部移管です。したがって、しっかりと役割分担をしておかないと、現場が混乱し行政サービスの低下を招きかねません。
また、財政難にあえぐ地方の消費者窓口をどう強化するか、幅広い業務を適切にこなせる専門性を備えた有能な人材をどうやって確保するのか、といったことも課題として挙げられます。他にも、巨大規制官庁ができることにより、消費者保護を理由に過剰な規制をして健全な経済活動を阻害してしまっては消費者のためにならない、という意見もあります。
消費者庁構想実現のためには、まだまだ議論すべき点は多いと言えるでしょう。
「冠休暇」の活用で有給休暇取得を促進
◆有給休暇の取得促進を目指して
「プロジェクト休暇」や「アニバーサリー休暇」など、特別な冠をつけた有給休暇制度を設ける企業が目立ちはじめました。ワークライフバランス(仕事と生活の調和)向上の機運が高まる一方で、高まらない有給休暇の取得率向上のために、各企業で新たな促進策が打ち出されています。
◆国を挙げての取組み
有給休暇の取得率向上は、国も大きな課題として取組みを始めています。内閣府が2007年にまとめたワークライフバランスに関する「行動指針」では、有給休暇取得率を、2012年には60%、2017年には100%にまで引き上げることを目標にしています。
しかし、国を挙げてワークライフバランス向上への取組みを進めているにもかかわらず、有給休暇取得率は低迷したままです。厚生労働省の調査によると、2006年に企業が社員に与えた有給休暇は年平均17.7日。一方、社員の取得日数は8.3日と、有給休暇取得率は40%台にとどまります。
就業形態の変化によって正社員が減り、1人当たりの仕事が増えたことで、結果的に多くの職場で長時間労働を余儀なくされ、有給休暇が取りにくくなっているとも考えられます。また、同僚との競争や上司の評価を気にして積極的に休まない人も多いようです。
◆「冠休暇」の効果は?
過労死の増加などで社員の健康管理がより問われるようになった今、企業も社員に休みを取らせるために、様々な知恵を絞っています。
ある企業では、「プロジェクト休暇」を導入しました。これは、1つのプロジェクトが終わるたび、最低1日の有給休暇が取れる仕組みです。1つのプロジェクトに対して複数の人間で対応するため、個人の都合で休むのは難しいことから、プロジェクト終了ごとに同僚と調整しながら休むとしています。
また「アニバーサリー休暇」として、自分や家族の記念日に休むことを促進する企業もあります。導入したある企業では、有給休暇取得のための意識が高まることで、仕事を1人で抱え込まずに周囲と情報交換したり、効率的に仕事をする同僚のやり方を参考にしたりと、別の部分でも波及効果が出ているようです。
もっとも、新たな休暇制度を設けていても、休みやすいように人員や仕事を適正化することが重要であり、それなくしては休みたくても休めない現実に変わりはありません。国、企業、そして労働者が一体となった取組みを続けていくことが大切でしょう。
公的年金の運用損失が過去最大に
◆運用利回りがマイナス6.41%に
公的年金の積立金を市場運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2007年度の運用利回りがマイナス6.41%になったことを発表しました。少子高齢化により、給付と負担のバランスが年々崩れていくなか、公的年金の運用損失が過去最大となったことで、より厳しい現実を認識せざるを得ない状況となりました。
◆世界株安の影響
2007年度は、米国の低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)問題に端を発した世界的な株安により、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用損失は、過去最大の5兆8,000億円に膨らみました。マイナス運用になったのは2002年度にマイナス8.46%となって以来です。ただ、当時よりも運用金額が3倍近くあるため、損失は2007年度のほうが大きくなっています。
GPIF側は、「運用成績を長期的にみれば2007年度のマイナスを勘案しても与えられた運用目標は達成されている」としています。しかし、現在の積立金運用は硬直的であるとの批判が多く、運用を効率化する必要も指摘されています。
◆日本の運用成績は
企業の格付や年金資産等の運用成果の分析評価を行う格付投資情報センターが、約130の企業年金を対象に実施した調査によると、2007年度の運用利回りはマイナス10%弱でした。それに比べると、公的年金は株式の比率が低い分、マイナス幅は小さかったと言えます。ただ、中期的にみると、日本の公的年金の運用成績は海外の年金基金に比べて見劣りします。2006年度までの直近5年の運用成績を比較すると、日本の3.5%に対し、カナダ10.4%、オランダ7.2%、ノルウェー6.9%と、日本の運用成績の悪さが目立ちます。
しかし、日本の運用利回りが海外に比べて低いのは、債券の運用比率が60%以上と突出して高いことも理由の1つです。低リスクで低リターンの債券での運用は、投資においてリスクを嫌う日本人の気質にあった運用方法とも言えますが、債券への過度の傾斜は逆にリスクが大きいとの指摘もあります。
国内外の株式や債券という伝統的な資産のほかに、商品(コモディティー)や不動産など代替資産に分散投資することによって運用を効率化すべきだとの声も多く、今こそ大切な積立金の運用について再考するべき時期に来ていると思われます。
運転慣習にみられるローカル色
◆独自の慣習が横行!?
運転ルールは全国共通のはずですが、地域によって独自の慣習が横行しています。交差点で直進車を差し置いて強引に右折するなど、交通法規に違反する例も多く、観光客や転勤者の目には危険な行為と映ります。長らく「慣行」と受け止めていた地元の人の間でも、見直し機運が高まってきているようです。
◆全国各地の交通慣習
ある新聞によると、「街角で左折しようとしたら対向車も同時に右折し始め、ぶつかりそうになる…」長野県松本市ではこのような光景がよく見られるそうです。地元ドライバーの一部には、交差点で強引に右折する交通慣習があり、県内外では「松本ルール」と呼ばれているのだそうです。地元の人によれば、もともとこの松本ルールは車同士の道の譲り合い精神から生まれたといいます。城下町であった松本市は細い道が多く、右折待ちの後続車は渋滞しがちです。そこで、対向車が渋滞防止のため右折車を優先させていたのが始まりとのことです。それが、いつしか右折車の「先を急ぐため」の慣行となってしまいました。
片側4車線の幹線道路が貫く名古屋市内では、「名古屋走り」と呼ばれる慣行があるそうです。ウインカーをしっかり出さない車線変更や、交差点で黄色信号になったら速度を上げて通過するなどの荒っぽい運転の総称とされています。
また、愛媛県では松山市を中心に、信号が青になった瞬間に直進してくる対向車の前に右折車が割り込む「伊予の早曲がり」と呼ばれる交通慣習が存在するそうです。
このような独自の交通慣習は各地で見られ、関東では「道を譲る」合図に使われることが多いパッシング(車のライトの点滅)が、関西では「自分が先に行く」という意思表示に使われることが多いようです。
◆マナー向上と譲り合いを
なぜ、地域慣習が存続し続けるのでしょうか。地元ドライバーの「便利だから」という意識が根強く、「染みついた癖なのでなかなか治せない」という意見があります。また、強引な車線変更や早曲がりなどを、素早くてうまい運転技術の証しとみなす勘違いも、原因の1つと言われています。
これらの交通慣習には、転勤などによる転入者や観光客を中心に批判が高まり、各地で対策も始まっています。前述の松本市では、交通マナー向上に関するステッカーを市内のバスやタクシー会社に配布するなどしています。多くの車が行き交う路上では、初心者や運転技術の未熟な人にも配慮できる運転こそが大切であり、譲り合いなど気持ちにゆとりを持った運転方法こそを地域慣習とする視点を持つべきだと言えるでしょう。
人材が不足する介護労働者の確保対策
◆介護労働者の離職率は21.6%
「2007年度介護労働実態調査結果」(財団法人介護労働安定センター発表,4,783事業所と事業所で働く1万3,089人の介護労働者が回答)によると、2007年度における介護労働者の離職率は「21.6%」となったそうです。また、平均勤続年数は「3.1年」となっています。働くうえでの不満に関する質問に対しては、「仕事内容の割に賃金が低い」「業務に対する社会的評価が低い」「精神的にきつい」という回答が上位を占めました。
厚生労働省は、これらの理由などから慢性的に人手不足となっている介護分野における人材を安定的に確保するため、様々な対策を検討しています。
◆厚生労働省による介護労働者の確保・定着策
厚生労働省は7月下旬に、「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」の中間とりまとめを発表しました。介護サービスへのニーズが増大する一方で、介護労働者の確保・定着が困難な現状を指摘しています。
「介護労働者が意欲と誇りを持って働くことができる社会の実現」を目指して、事業主に対して介護労働者の雇用管理の重要性を訴えるとともに、処遇改善や能力開発、多様な就業形態やメンタルヘルス対策など、働きやすい労働環境の整備が求められるとしています。
◆介護職専門のハローワークを設置の方針
同省では、2009年度から介護職専門のハローワークを設置する方針を示しています。人手不足が特に深刻な状況となっている大都市圏に数カ所程度設置して、介護分野への就労を希望する人に対する職業相談を行うなど、現役の介護福祉士やホームヘルパーのスタッフによる支援を実施するとしています。
◆「介護の日」の制定を検討
介護に対する国民の理解と認識を深めて、介護労働者や介護サービスの利用者、その家族などを支援するため、「介護の日」の制定も同省では検討しているそうです。同省の検討会で決定した複数の候補日・名称に対する国民からのパブリックコメントを踏まえたうえで、検討を進めていくとしています。
上記のような対策が果たして介護労働者の人手不足解消につながるのか、注目していきたいところです。
世界的大流行の可能性がある「新型インフルエンザ」
◆厚生労働省が対策ガイドラインを公表
厚生労働省は、「新型インフルエンザ」が国内で大流行した場合に想定される社会への影響をとりまとめ、民間企業が事業を継続するための注意事項などを盛り込んだガイドラインを公表しました。このガイドラインでは、大流行時には最大で40%の従業員が欠勤することを想定しており、需要の減少などに対応した事業計画を作ることなどを各企業に求めています。
企業の経営に大きな影響を与えなかねないこの「新型インフルエンザ」とは、一体どのようなものなのでしょうか?
◆「新型インフルエンザ」とは?
「新型インフルエンザ」は、鳥インフルエンザのウイルスなどが人間に感染し、人間から人間に感染しやすく変異したウイルスによるインフルエンザとされ、免疫を持っている人間がいないことから、今後、世界的に大流行の可能性があるとされています。発生した場合、日本国内だけで死亡者が最大64万人出るであろうとの専門家の指摘もあるようです。
なお、世界保健機構(WHO)の発表によれば、今年5月下旬時点の鳥インフルエンザの累計発症者は383人ですが、このうちの6割の方が亡くなっているそうです。
◆政府・企業が進めている取組み
政府では、ワクチンを備蓄するなどの取組みを進めているそうです。
また、大手企業を中心に、すでに独自の対策を始めている企業もあるようです。その内容は、「新型インフルエンザ対策アクションプランの作成」(資生堂)、「海外出張者向けの新型インフルエンザ対策」(マイクロソフト日本法人)、「全社的な新型インフルエンザ対策の検討」(味の素)、などです。
◆東京商工会議所は中小企業向けの指針を策定へ
東京商工会議所では、対策が進んでいないとされる中小企業向けの「新型インフルエンザ」対策のための指針を来年3月までに策定するとしています。指針に盛り込まれる予定の内容は次の通りです
(1)基礎知識や治療薬の効能・備蓄方法
(2)従業員や家族に患者が出た場合の対応
(3)事業継続の判断基準
(4)情報入手の方法
今年度の「地域別最低賃金」引上げ額は?
◆地域別最低賃金の新基準は10月中に適用予定 中央最低賃金審議会(厚生労働大臣の諮問機関)の小委員会は、今年度における地域別の最低賃金の引上げ額を7~15円と決定し、厚生労働大臣に答申を行いました。これにより、全国平均の最低賃金額が初めて700円を超える見通しとなったことが明らかになりました。
なお、地域別最低賃金額は、地方最低賃金審議会(公益代表・労働者代表・使用者代表の各同数の委員で構成される)での審議を経て、地方労働局長により決定されることになっており、今後、同審議会の議論を経て正式決定され、10月中に新基準が適用される予定です。
◆「地域別最低賃金」の定義と法改正
地域別最低賃金は、原則として産業や職種などにかかわりなく、すべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金で、都道府県ごとに決められています。
今年7月1日から施行された改正最低賃金法(平成19年12月5日公布)では、地域別最低賃金を決定する際には、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされました。また、地域別最低賃金を下回った場合の罰金の上限額は、従来の「2万円以下」から「50万円以下」に引き上げられています。
◆都道府県ごとの引上げ額は?
都道府県ごとの引上げ額は以下の通りとなっています。
・Aランク(15円)…千葉・東京・神奈川・愛知・大阪
・Bランク(11円)…栃木・埼玉・富山・長野・静岡・三重・滋賀・京都・兵庫・広島
・Cランク(10円)…北海道・宮城・福島・茨城・群馬・新潟・石川・福井・山梨・岐阜・奈良・和歌山・岡山・山口・香川・福岡
・Dランク(7円)…青森・岩手・秋田・山形・鳥取・島根・徳島・愛媛・高知・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄
「ワークライフバランス」の実現に向けて
◆意外と知られていない「ワークライフバランス」の意味
内閣府が行った調査(20歳以上の男女3,000人が対象。1,839人が回答)で、「ワークライフバランス」(仕事と生活の調和)の意味を知らない人が9割近くに上ることがわかりました。「名前も内容も知らない」と答えた人が60.1%、「名前は聞いたことがあるが内容までは知らない」と答えた人が26.6%に上りました。
「ワークライフバランス」の実現に向けて政府・厚生労働省は様々な対策を講じたり、検討したりしていますが、なかなか浸透していないのが実状のようです。
◆政府・厚生労働省が検討している施策
先日、社会保障政策を強化して少子高齢化社会に対応することを目的として、政府が取り組むべき対策をまとめた「5つの安心プラン」の原案が明らかになりました。その中の1つとして、「子育て支援」が挙げられています(その他の4つは「高齢化社会への対応」「医療体制の強化」「非正規労働者の支援」「厚生労働行政の信頼回復」)。
また、厚生労働省は、子育てと仕事の両立支援のため、企業に「短時間勤務制度」と「残業免除制度」の導入を義務付ける方針を明らかにしています。育児休業を取得した後も働き続けられる環境を整備するのが目的で、来年の通常国会に育児・介護休業法の改正案を提出するとしています。
◆厚労省研究会の「報告書」では
厚生労働省が先日とりまとめた「今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会」の報告書では、育児休業後の仕事と育児の両立が難しい現状、男性の育児への関わりの不十分さなどを指摘しています。
また、労働者が「短時間勤務」と「残業免除」を選択することのできる制度の整備や、出産後8週間に父親が取得する育児休業を「パパ休暇」として普及・促進することなどを求めています。
◆「ワークライフバランス」に関する民間資格新設へ
また、厚生労働省は、ワークライフバランスへの取組みを企業に広げるために、新たな民間資格である「仕事と生活の調和推進アドバイザー」を2009年度にも新設する方針を発表しました。新聞報道によれば、5年間で5,000人程度を養成したい考えで、同アドバイザーの利用促進のため、企業が助言に基づいて必要な行動計画を作成した場合の助成金の支給も検討しているようです。
◆次期臨時国会に提出か
夏の間、時計の針を1時間進める「サマータイム制度」について、導入が議論されています。政府は6月末に決めた、経済財政運営の指針となる「骨太方針2008」に明記し、超党派の「サマータイム制度推進議員連盟」は次期臨時国会への関連法案提出を目指しています。根強い反対論や課題も多く、浮かんでは消えるサマータイム制度について考えてみましょう。
◆サマータイム制度のメリットは?
サマータイム制度は、日照時間が長い夏に時計を1時間進めて、明るい時間を有効に使う制度です。利点としては照明の使用時間を短くできるほか、朝の比較的涼しい時間帯から仕事を始められるため、冷房の使用が減り、省エネ効果が高まり、世界的に関心が高まっている地球温暖化対策としても注目を集めています。1年に2回時計を直す手間も生じますが、これにより省エネ意識を喚起できるという効果も期待できます。
また、明るいうちに仕事が終わって余暇を楽しむ時間が増えれば、消費が拡大する可能性もあり、その経済波及効果にも期待が集まっています。
サマータイム制度は世界で70カ国以上が採用し、経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国のうち、導入していないのは日本と韓国、アイスランド(夏が白夜のため導入の必要がない)だけです。
◆労働時間が増えることも
日本でも戦後間もない1948年に、サマータイム制度を取り入れたことがあります。電力供給不足の解消のため、GHQ(連合国軍総司令部)の指示で実施されましたが、「労働時間が増えた」として不評を買い、1951年に終わっています。
制度の導入が再び議論され始めたのは1990年代前半からで、省エネと経済効果を期待する経済界から声が上がりました。しかし、法案提出には至っておらず、「夏前に法案提出の動き→断念」という光景がお決まりのパターンとなっています。
代表的な反対の理由は、労働時間が増すという懸念です。定時退社が定着している職場が少ないため、始業が1時間早まるだけであって、労働時間が増えかねないからです。また、昨今の原油高や食料の物価高で家計や財布のヒモは固くなっており、夕方を余暇にあてられるかどうかは不透明です。早めに家に帰って冷房をつければ、エネルギー消費が増すおそれさえあります。
また、「時計合わせの手間がたいへんである」との見方もあります。掛け時計や腕時計の針を進めるだけでなく、時間調整のためのコンピューターシステムの修正には相当の手間とコストがかかると予想されます。他にも、睡眠障害等への悪影響など健康被害への懸念もあり、導入のためにはこれらの反対論や懸念を押し切れるだけのメリットを実証する必要があるようです。
「パワー・ハラスメント」の基準は?
◆法的定義のないパワハラ
職権を使ったいじめや嫌がらせである「パワー・ハラスメント」(パワハラ)が、会社の業務に大きな影響を与えるようになってきました。社員の士気や会社の評判を落とさないように対策に乗り出している企業もありますが、「セクシュアル・ハラスメント」(セクハラ)と違って法的定義がなく、あいまいな基準が対応を難しくしています。
◆パワハラに関する裁判例
企業内で上司などから暴力や暴言、無視されるなどのパワハラ行為を受けて悩む社員は多く、年々増加傾向にあると言われています。2007年10月の医薬品販売会社社員の自殺について、東京地裁がパワハラとの因果関係を認めて労災と認める判決を出しました。
また、2008年7月には道路会社社員の自殺をめぐり、被害者がうつ病で自殺したのはパワハラが原因であるとして、遺族が慰謝料などの損害賠償を求めた訴訟の判決で、松山地裁は自殺との因果関係を認め、約3,100万円の賠償を命じました。裁判長は、上司による過剰なノルマ達成の強要や度重なる叱責は「違法と評価せざるを得ない」と指摘し、「自殺は予見可能だった」として会社の責任を認めています。
また、企業のトップがパワハラ体質であるために社員が相次ぎ辞めていく会社もあると言われており、パワハラに対する社会の見方は厳しさを増していると言えるでしょう。
◆「パワハラ上司」のタイプ
パワハラに関し、研修の主要テーマに据えるなど、何らかの予防策を模索する企業は増えています。パワハラに関する研究を行っている有識者によると、主に「パワハラ上司」は、以下の4つのタイプに分けられるとしています。
(1)怒鳴るなどの威嚇をする「自己中心型」
(2)細かく指示する「過干渉型」
(3)自分の上司頼みで責任を回避する「無責任型」
(4)意欲に乏しく部下に負担をかける「事なかれ主義型」
◆世代間で認識にギャップも
パワハラについては、世代間の認識の差なども大きく、特に年長社員には先輩社員に怒鳴られながら仕事を覚えた経験を持つ人も多く、「部下に熱心に注文をつけて何が悪いのか」といった反応もあるようです。
暴力を振るう、到底達成できないノルマを課すなどの行為は典型的なパワハラですが、一方で、部下の成長を願って強く注意するといった行為がパワハラなのか、基準は受け止める側によってまったく変わってきます。ただ、パワハラ対策に真剣に取り組むことにより、必然的に、上司と部下の関係や、職場の雰囲気などが改善されていく可能性は大いにあると言えるでしょう。
創設目指す「消費者庁」とはどんな省庁!?
◆食品偽装や物品事故などへの懸念
福田内閣が来年度の創設を目指しているのが「消費者庁」です。食品の偽装や製品事故などへの懸念が増大するなかで、どのような役割が期待されているのでしょうか。また一般消費者にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
◆消費者庁の狙い
消費者庁とは、消費者の視点に立って政策全般を監視し、必要があれば法律を企画立案したり他省庁に適切な対応をするように勧告したりする「消費者行政のかじ取り役」となる組織で、設置に向けた準備が進んでいます。具体的には表示、安全、取引など消費者に身近な問題を広く扱い、物価行政も担当することになります。全国の消費生活センターなどを使って相談窓口を整備し、情報を一元的に吸い上げて他省庁に適切な対応を勧告したりもするようです。
設置の背景として、近年、消費者が巻き込まれる事件や事故が相次いでいることが挙げられます。報道で取り上げられる各種の食品偽装事件は、まったく後を絶ちません。また、ガス瞬間湯沸かし器による死亡事故は約20年前から、家庭用シュレッダーによる子供の指の損傷や経営破たんした英会話学校への苦情なども、かなり前から問題になっていたにもかかわらず、行政は有効な手を打てませんでした。
日本の行政はこれまで、「いかに国を豊かにするか」を重視し、消費者行政はいわば二の次とされてきました。消費者庁は成熟社会を迎え、産業育成優先から消費者の権利保護を優先させる行政に転換する象徴として位置付ける狙いがあるようです。
◆機能するための課題は?
政府は秋の臨時国会に消費者庁設置のための法案を提出し、来年度からの発足を目指しています。
仮に順調に発足したとして、消費者庁がしっかりと機能するためには、いくつかの課題があります。まずは、他省庁との役割分担や責任の所在の問題です。所管する法律の半分以上が他省庁との共管や一部移管です。したがって、しっかりと役割分担をしておかないと、現場が混乱し行政サービスの低下を招きかねません。
また、財政難にあえぐ地方の消費者窓口をどう強化するか、幅広い業務を適切にこなせる専門性を備えた有能な人材をどうやって確保するのか、といったことも課題として挙げられます。他にも、巨大規制官庁ができることにより、消費者保護を理由に過剰な規制をして健全な経済活動を阻害してしまっては消費者のためにならない、という意見もあります。
消費者庁構想実現のためには、まだまだ議論すべき点は多いと言えるでしょう。
「冠休暇」の活用で有給休暇取得を促進
◆有給休暇の取得促進を目指して
「プロジェクト休暇」や「アニバーサリー休暇」など、特別な冠をつけた有給休暇制度を設ける企業が目立ちはじめました。ワークライフバランス(仕事と生活の調和)向上の機運が高まる一方で、高まらない有給休暇の取得率向上のために、各企業で新たな促進策が打ち出されています。
◆国を挙げての取組み
有給休暇の取得率向上は、国も大きな課題として取組みを始めています。内閣府が2007年にまとめたワークライフバランスに関する「行動指針」では、有給休暇取得率を、2012年には60%、2017年には100%にまで引き上げることを目標にしています。
しかし、国を挙げてワークライフバランス向上への取組みを進めているにもかかわらず、有給休暇取得率は低迷したままです。厚生労働省の調査によると、2006年に企業が社員に与えた有給休暇は年平均17.7日。一方、社員の取得日数は8.3日と、有給休暇取得率は40%台にとどまります。
就業形態の変化によって正社員が減り、1人当たりの仕事が増えたことで、結果的に多くの職場で長時間労働を余儀なくされ、有給休暇が取りにくくなっているとも考えられます。また、同僚との競争や上司の評価を気にして積極的に休まない人も多いようです。
◆「冠休暇」の効果は?
過労死の増加などで社員の健康管理がより問われるようになった今、企業も社員に休みを取らせるために、様々な知恵を絞っています。
ある企業では、「プロジェクト休暇」を導入しました。これは、1つのプロジェクトが終わるたび、最低1日の有給休暇が取れる仕組みです。1つのプロジェクトに対して複数の人間で対応するため、個人の都合で休むのは難しいことから、プロジェクト終了ごとに同僚と調整しながら休むとしています。
また「アニバーサリー休暇」として、自分や家族の記念日に休むことを促進する企業もあります。導入したある企業では、有給休暇取得のための意識が高まることで、仕事を1人で抱え込まずに周囲と情報交換したり、効率的に仕事をする同僚のやり方を参考にしたりと、別の部分でも波及効果が出ているようです。
もっとも、新たな休暇制度を設けていても、休みやすいように人員や仕事を適正化することが重要であり、それなくしては休みたくても休めない現実に変わりはありません。国、企業、そして労働者が一体となった取組みを続けていくことが大切でしょう。
公的年金の運用損失が過去最大に
◆運用利回りがマイナス6.41%に
公的年金の積立金を市場運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2007年度の運用利回りがマイナス6.41%になったことを発表しました。少子高齢化により、給付と負担のバランスが年々崩れていくなか、公的年金の運用損失が過去最大となったことで、より厳しい現実を認識せざるを得ない状況となりました。
◆世界株安の影響
2007年度は、米国の低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)問題に端を発した世界的な株安により、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用損失は、過去最大の5兆8,000億円に膨らみました。マイナス運用になったのは2002年度にマイナス8.46%となって以来です。ただ、当時よりも運用金額が3倍近くあるため、損失は2007年度のほうが大きくなっています。
GPIF側は、「運用成績を長期的にみれば2007年度のマイナスを勘案しても与えられた運用目標は達成されている」としています。しかし、現在の積立金運用は硬直的であるとの批判が多く、運用を効率化する必要も指摘されています。
◆日本の運用成績は
企業の格付や年金資産等の運用成果の分析評価を行う格付投資情報センターが、約130の企業年金を対象に実施した調査によると、2007年度の運用利回りはマイナス10%弱でした。それに比べると、公的年金は株式の比率が低い分、マイナス幅は小さかったと言えます。ただ、中期的にみると、日本の公的年金の運用成績は海外の年金基金に比べて見劣りします。2006年度までの直近5年の運用成績を比較すると、日本の3.5%に対し、カナダ10.4%、オランダ7.2%、ノルウェー6.9%と、日本の運用成績の悪さが目立ちます。
しかし、日本の運用利回りが海外に比べて低いのは、債券の運用比率が60%以上と突出して高いことも理由の1つです。低リスクで低リターンの債券での運用は、投資においてリスクを嫌う日本人の気質にあった運用方法とも言えますが、債券への過度の傾斜は逆にリスクが大きいとの指摘もあります。
国内外の株式や債券という伝統的な資産のほかに、商品(コモディティー)や不動産など代替資産に分散投資することによって運用を効率化すべきだとの声も多く、今こそ大切な積立金の運用について再考するべき時期に来ていると思われます。
運転慣習にみられるローカル色
◆独自の慣習が横行!?
運転ルールは全国共通のはずですが、地域によって独自の慣習が横行しています。交差点で直進車を差し置いて強引に右折するなど、交通法規に違反する例も多く、観光客や転勤者の目には危険な行為と映ります。長らく「慣行」と受け止めていた地元の人の間でも、見直し機運が高まってきているようです。
◆全国各地の交通慣習
ある新聞によると、「街角で左折しようとしたら対向車も同時に右折し始め、ぶつかりそうになる…」長野県松本市ではこのような光景がよく見られるそうです。地元ドライバーの一部には、交差点で強引に右折する交通慣習があり、県内外では「松本ルール」と呼ばれているのだそうです。地元の人によれば、もともとこの松本ルールは車同士の道の譲り合い精神から生まれたといいます。城下町であった松本市は細い道が多く、右折待ちの後続車は渋滞しがちです。そこで、対向車が渋滞防止のため右折車を優先させていたのが始まりとのことです。それが、いつしか右折車の「先を急ぐため」の慣行となってしまいました。
片側4車線の幹線道路が貫く名古屋市内では、「名古屋走り」と呼ばれる慣行があるそうです。ウインカーをしっかり出さない車線変更や、交差点で黄色信号になったら速度を上げて通過するなどの荒っぽい運転の総称とされています。
また、愛媛県では松山市を中心に、信号が青になった瞬間に直進してくる対向車の前に右折車が割り込む「伊予の早曲がり」と呼ばれる交通慣習が存在するそうです。
このような独自の交通慣習は各地で見られ、関東では「道を譲る」合図に使われることが多いパッシング(車のライトの点滅)が、関西では「自分が先に行く」という意思表示に使われることが多いようです。
◆マナー向上と譲り合いを
なぜ、地域慣習が存続し続けるのでしょうか。地元ドライバーの「便利だから」という意識が根強く、「染みついた癖なのでなかなか治せない」という意見があります。また、強引な車線変更や早曲がりなどを、素早くてうまい運転技術の証しとみなす勘違いも、原因の1つと言われています。
これらの交通慣習には、転勤などによる転入者や観光客を中心に批判が高まり、各地で対策も始まっています。前述の松本市では、交通マナー向上に関するステッカーを市内のバスやタクシー会社に配布するなどしています。多くの車が行き交う路上では、初心者や運転技術の未熟な人にも配慮できる運転こそが大切であり、譲り合いなど気持ちにゆとりを持った運転方法こそを地域慣習とする視点を持つべきだと言えるでしょう。
人材が不足する介護労働者の確保対策
◆介護労働者の離職率は21.6%
「2007年度介護労働実態調査結果」(財団法人介護労働安定センター発表,4,783事業所と事業所で働く1万3,089人の介護労働者が回答)によると、2007年度における介護労働者の離職率は「21.6%」となったそうです。また、平均勤続年数は「3.1年」となっています。働くうえでの不満に関する質問に対しては、「仕事内容の割に賃金が低い」「業務に対する社会的評価が低い」「精神的にきつい」という回答が上位を占めました。
厚生労働省は、これらの理由などから慢性的に人手不足となっている介護分野における人材を安定的に確保するため、様々な対策を検討しています。
◆厚生労働省による介護労働者の確保・定着策
厚生労働省は7月下旬に、「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」の中間とりまとめを発表しました。介護サービスへのニーズが増大する一方で、介護労働者の確保・定着が困難な現状を指摘しています。
「介護労働者が意欲と誇りを持って働くことができる社会の実現」を目指して、事業主に対して介護労働者の雇用管理の重要性を訴えるとともに、処遇改善や能力開発、多様な就業形態やメンタルヘルス対策など、働きやすい労働環境の整備が求められるとしています。
◆介護職専門のハローワークを設置の方針
同省では、2009年度から介護職専門のハローワークを設置する方針を示しています。人手不足が特に深刻な状況となっている大都市圏に数カ所程度設置して、介護分野への就労を希望する人に対する職業相談を行うなど、現役の介護福祉士やホームヘルパーのスタッフによる支援を実施するとしています。
◆「介護の日」の制定を検討
介護に対する国民の理解と認識を深めて、介護労働者や介護サービスの利用者、その家族などを支援するため、「介護の日」の制定も同省では検討しているそうです。同省の検討会で決定した複数の候補日・名称に対する国民からのパブリックコメントを踏まえたうえで、検討を進めていくとしています。
上記のような対策が果たして介護労働者の人手不足解消につながるのか、注目していきたいところです。
世界的大流行の可能性がある「新型インフルエンザ」
◆厚生労働省が対策ガイドラインを公表
厚生労働省は、「新型インフルエンザ」が国内で大流行した場合に想定される社会への影響をとりまとめ、民間企業が事業を継続するための注意事項などを盛り込んだガイドラインを公表しました。このガイドラインでは、大流行時には最大で40%の従業員が欠勤することを想定しており、需要の減少などに対応した事業計画を作ることなどを各企業に求めています。
企業の経営に大きな影響を与えなかねないこの「新型インフルエンザ」とは、一体どのようなものなのでしょうか?
◆「新型インフルエンザ」とは?
「新型インフルエンザ」は、鳥インフルエンザのウイルスなどが人間に感染し、人間から人間に感染しやすく変異したウイルスによるインフルエンザとされ、免疫を持っている人間がいないことから、今後、世界的に大流行の可能性があるとされています。発生した場合、日本国内だけで死亡者が最大64万人出るであろうとの専門家の指摘もあるようです。
なお、世界保健機構(WHO)の発表によれば、今年5月下旬時点の鳥インフルエンザの累計発症者は383人ですが、このうちの6割の方が亡くなっているそうです。
◆政府・企業が進めている取組み
政府では、ワクチンを備蓄するなどの取組みを進めているそうです。
また、大手企業を中心に、すでに独自の対策を始めている企業もあるようです。その内容は、「新型インフルエンザ対策アクションプランの作成」(資生堂)、「海外出張者向けの新型インフルエンザ対策」(マイクロソフト日本法人)、「全社的な新型インフルエンザ対策の検討」(味の素)、などです。
◆東京商工会議所は中小企業向けの指針を策定へ
東京商工会議所では、対策が進んでいないとされる中小企業向けの「新型インフルエンザ」対策のための指針を来年3月までに策定するとしています。指針に盛り込まれる予定の内容は次の通りです
(1)基礎知識や治療薬の効能・備蓄方法
(2)従業員や家族に患者が出た場合の対応
(3)事業継続の判断基準
(4)情報入手の方法
今年度の「地域別最低賃金」引上げ額は?
◆地域別最低賃金の新基準は10月中に適用予定 中央最低賃金審議会(厚生労働大臣の諮問機関)の小委員会は、今年度における地域別の最低賃金の引上げ額を7~15円と決定し、厚生労働大臣に答申を行いました。これにより、全国平均の最低賃金額が初めて700円を超える見通しとなったことが明らかになりました。
なお、地域別最低賃金額は、地方最低賃金審議会(公益代表・労働者代表・使用者代表の各同数の委員で構成される)での審議を経て、地方労働局長により決定されることになっており、今後、同審議会の議論を経て正式決定され、10月中に新基準が適用される予定です。
◆「地域別最低賃金」の定義と法改正
地域別最低賃金は、原則として産業や職種などにかかわりなく、すべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金で、都道府県ごとに決められています。
今年7月1日から施行された改正最低賃金法(平成19年12月5日公布)では、地域別最低賃金を決定する際には、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされました。また、地域別最低賃金を下回った場合の罰金の上限額は、従来の「2万円以下」から「50万円以下」に引き上げられています。
◆都道府県ごとの引上げ額は?
都道府県ごとの引上げ額は以下の通りとなっています。
・Aランク(15円)…千葉・東京・神奈川・愛知・大阪
・Bランク(11円)…栃木・埼玉・富山・長野・静岡・三重・滋賀・京都・兵庫・広島
・Cランク(10円)…北海道・宮城・福島・茨城・群馬・新潟・石川・福井・山梨・岐阜・奈良・和歌山・岡山・山口・香川・福岡
・Dランク(7円)…青森・岩手・秋田・山形・鳥取・島根・徳島・愛媛・高知・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄
「ワークライフバランス」の実現に向けて
◆意外と知られていない「ワークライフバランス」の意味
内閣府が行った調査(20歳以上の男女3,000人が対象。1,839人が回答)で、「ワークライフバランス」(仕事と生活の調和)の意味を知らない人が9割近くに上ることがわかりました。「名前も内容も知らない」と答えた人が60.1%、「名前は聞いたことがあるが内容までは知らない」と答えた人が26.6%に上りました。
「ワークライフバランス」の実現に向けて政府・厚生労働省は様々な対策を講じたり、検討したりしていますが、なかなか浸透していないのが実状のようです。
◆政府・厚生労働省が検討している施策
先日、社会保障政策を強化して少子高齢化社会に対応することを目的として、政府が取り組むべき対策をまとめた「5つの安心プラン」の原案が明らかになりました。その中の1つとして、「子育て支援」が挙げられています(その他の4つは「高齢化社会への対応」「医療体制の強化」「非正規労働者の支援」「厚生労働行政の信頼回復」)。
また、厚生労働省は、子育てと仕事の両立支援のため、企業に「短時間勤務制度」と「残業免除制度」の導入を義務付ける方針を明らかにしています。育児休業を取得した後も働き続けられる環境を整備するのが目的で、来年の通常国会に育児・介護休業法の改正案を提出するとしています。
◆厚労省研究会の「報告書」では
厚生労働省が先日とりまとめた「今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会」の報告書では、育児休業後の仕事と育児の両立が難しい現状、男性の育児への関わりの不十分さなどを指摘しています。
また、労働者が「短時間勤務」と「残業免除」を選択することのできる制度の整備や、出産後8週間に父親が取得する育児休業を「パパ休暇」として普及・促進することなどを求めています。
◆「ワークライフバランス」に関する民間資格新設へ
また、厚生労働省は、ワークライフバランスへの取組みを企業に広げるために、新たな民間資格である「仕事と生活の調和推進アドバイザー」を2009年度にも新設する方針を発表しました。新聞報道によれば、5年間で5,000人程度を養成したい考えで、同アドバイザーの利用促進のため、企業が助言に基づいて必要な行動計画を作成した場合の助成金の支給も検討しているようです。
2008/07/30
8月の事務所便り
企業を悩ますインターネットトラブル
◆企業を誹謗中傷する内容も
インターネット対策に頭を悩ます企業が増えています。ネットに書き込まれた情報は瞬時に多くの人の目に触れることになりますが、それが企業を中傷するような内容であれば、企業にとってはイメージ低下につながるおそれもあります。とはいえ、サービスの利便性やプライバシーとの兼合いもあり、情報の規制には困難が伴うのが実情のようです。
◆対応の難しい検索サービスによるトラブル
ある会社が、自社名を入力すると関連検索の欄に「悪徳商法」という単語が自動表示されることに困惑し、大手検索サービス会社に対して表示の差止めを求める仮処分を裁判所に申し立てた事例があります。
昨今問題とされているのが、こうした検索サービスによるトラブルです。検索サービスの画面で、入力したキーワードと一緒に打ちこまれる可能性の高い単語を自動的に並べて表示する「関連検索」という項目があります。利用者がサイトを絞り込んで検索できる便利な機能ですが、会社名や商品名を入力すると、「被害」「悪徳」など、イメージ低下につながる単語が自動表示されることがあります。企業にとっては、たまったものではありません。
先の事例では、企業側が「イメージが低下して売上にも悪影響が出た」と主張したのに対し、検索サービス側は「利用者の検索パターンを事実として表示しているだけ」と反論し、最終的に、裁判所は企業側の請求を退けました。「利用者は悪徳商法という単語を、同社名と併せて検索する頻度の高い単語と認識するだけである」と判断し、名誉毀損には当たらないとしたのです。
◆行政側の対応は?
もっとも、行政もネット上の名誉棄損問題に手をこまねいてきたわけではありません。2002年には「プロバイダー責任制限法」が施行され、一定の要件を満たした場合、プロバイダーは被害者の請求に応じて、違法な書込みをした発信者の情報を開示できるようになりました。
法務省の統計によれば、ネット上のプライバシー侵害などの報告件数は年々増加傾向にあるようです。これは、法律の施行により、一定の要件を満たせば内容を削除できるようになったほか、相手に損害賠償請求もしやすくなって、これまで泣き寝入りしていた被害が表面化したためだと思われます。しかし、同法は掲示板やホームページなどが対象であり、メールのような通信は含まれません。そのため、一斉メールでの中傷などに関しては、「通信の秘密を守る」という観点からも法的に対抗するのは難しいのが現状です。
今後、日常生活に不可欠となったネットサービスの利便性を損なわずに、どうやって個人や企業の権利を守って行くのか、ルールのあり方が問われています。
深刻な少子化問題とこれからの対策
◆「合計特殊出生率」は上昇
高齢化と同時に少子化が進む現代の日本。今後、年金給付水準切下げなどの形で国民生活に影響が出ることが懸念されており、深刻な問題です。
少子化の指標として一般的に用いられている「合計特殊出生率」は、2007年度は1.34%に上昇しました。しかし、これで少子化に歯止めがかけられたというわけではありません。この指標を通して、これからの少子化対策について考えてみます。
◆増える未婚者、進む晩婚化
合計特殊出生率の意味するものは、一夫婦当たりの平均出生児数ではなく、未婚者や離別者を含む女子全体についての平均出生児数です。そのため、独身で暮らす人の増加、晩婚化の進行など、結婚の動向によって変化します。
近年、出生率の低下が問題となっていますが、実は一夫婦当たりの出生率はほぼ横ばいです。真に問題なのは、未婚率・晩婚率の上昇により、第1子がいない家庭が増えていることだといわれています。
厚生労働省の発表によれば、2007年度の出生数のうち第1子は約52万人、第2子は約40万人と、それぞれ前年比1%余り減少し、全体数も2年ぶりに減少しました。婚姻数は約72万件と2年ぶりに減少、未婚者が増えています。平均初婚年齢は、夫・妻ともに0.1歳上昇し、晩婚化に伴う晩産の影響で、第1子を産む母親の平均年齢は29.4歳と過去最高を更新しています。
一方、第3子以上は約47万人で前年比4%の増加となりました。2007年は景気が底堅く推移し、家計に余裕が出たことで、30歳代後半の層を中心に「もう1人産みたい」という夫婦が増えたためと思われます。
◆少子化には国をあげての対策が必要
少子化の背景には、働き方の変化も関連しています。生活不安を抱える男女が結婚・出産に踏み切れないケースも多く、第2次ベビーブーム(1971年~74年)に続く第3次ベビーブームが起きる兆しはありません。30歳代半ばの団塊ジュニア世代の結婚・出産による押上げ効果がなくなれば、出生率の減少幅が拡大する可能性もあります。
少子化に歯止めをかけるためには、国をあげての対策が必要です。日本は出生率が2.0を超えるフランスなどの先進国に比べて、少子化対策関連の予算が少ないのが現状です。家族関係支出の国内総生産に対する割合は、イギリスの3.02%に対して0.75%に過ぎません。後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の見直しで追加負担が生じるなど財源が限られる中、少子化対策予算をどう増やしていくのか、課題となっています。
子供の金銭感覚を磨く「お小遣い」
◆金銭感覚がない子供が増加!?
クレジットカードや電子マネーの普及によりお金の流れが見えにくくなり、金銭感覚の乱れた子供が増えているようです。子供の頃から投資センスを育む必要性が指摘されていますが、投資教育の前に、生活に必要な金銭管理能力を身につけさせなければなりません。
お金の価値や金銭管理の厳しさ、借金の怖さなどを子供にどう教えるのか、家庭での金銭教育への関心が高まっています。
◆「お小遣い」を活用した金銭教育
家庭での身近な金銭教育のツールとして「お小遣い」の活用が挙げられます。毎月一定額のお小遣いを子供に渡し、欲しい物、学用品などを買わせます。家計のやりくりと類似しています。子供は最初、喜んで欲しい物ばかり買ってしまいがちです。その結果、必要な文房具などが買えなくなっても、安易に援助せず、次のお小遣いまで我慢させます。この繰返しにより、金銭感覚や我慢する心を身につけさせるのです。お小遣い帳をつけさせて、親が適宜助言するのも効果的です。
自立心や責任感を養い、必要なものを買ったうえで欲しい物を手に入れるにはどうしたらよいかを考えさせるのが、「お小遣い教育」の狙いです。
高校生くらいになって日常の行動範囲が広がるにつれ、携帯電話代や交遊費など、使うお金も増えていきます。そこで、ある程度まとまったお金を渡して自ら管理させる「予算制」や「年俸制」を取り入れるのもひとつの方法です。
◆お小遣い教育を成功させるために
金銭教育の手法は家庭ごとに様々と思われますが、大切なのは「家族全員が納得したうえでルールを作る」ことです。
例えば、お小遣い教育で悩ましいのが祖父母の関与です。お小遣い教育について説明したうえで、祖父母にも満足してもらえる工夫をすることが必要です。祖父母が子供にお小遣いをくれたときは、それを断るのではなく、まずは子供と一緒に喜びましょう。そのうえで、臨時収入としていったん貯金する、おもちゃを買ってもらうよりも遊園地に連れて行ってもらうような「物より思い出」方式にするなどのやり方を、祖父母を交えて考えます。
また、お金にまつわる情操教育の一環として、お年玉やプレゼントをもらったらお礼に手紙や絵を書いて贈ることにする、クリスマスは自分がもらうだけでなく人にも贈り物をすることにするなど、心の教育への取組みも大切なポイントです。
さらに、お金の管理について子供が間違いを犯したときに、なぜ間違えたのか、どう解決すればいいか、一緒に考えることで家族の対話も増えれば一挙両得だといえるでしょう。
2010年発足予定「日本年金機構」の組織改革
◆社会保険庁の組織改革
抜本的な組織改革を行っている社会保険庁。2008年10月には政府管掌健康保険の運営を「全国健康保険協会」という新しい公法人に分離し、2010年1月には社会保険庁を廃止して「日本年金機構」という新しい公法人が設立されます。とりわけ日本年金機構は、社会保険庁の相次ぐ不祥事と年金問題に対応するために、徹底した改革を迫られています。
◆人員削減と懲戒処分者の排除
政府の「年金業務・組織再生会議」がまとめる、社会保険庁組織改革の最終報告書案をみてみましょう。
同会議は、業務の外部委託や情報技術(IT)の活用で、大幅な人員削減が可能と判断。日本年金機構の発足時の正規職員数を約10,900人とし、現行比17%減とすることが決定しています。一方で、民間からの採用を拡大し、機構発足時に外部から1,000人を採用するため、社会保険庁から正規職員として移行するのは約9,900人にとどまります。
個人情報の覗き見などで懲戒処分を受けた職員の排除も重視し、懲戒を受けたことのある職員は正規職員として採用されません。懲戒処分者については有期雇用とし、退職金にも差をつけることとしています。こうした方向性が明らかになるにつれ、退職の意向を示す、過去に処分を受けた職員が続出しているそうです。
これまで、社会保険庁では、「厚生労働省採用のキャリア組」「社会保険庁採用のノンキャリア組」「地方採用のノンキャリア組」という3層構造を維持してきました。各層間で問題を共有しない一体感を欠いた運営が、今日の年金記録問題につながったとも言われています。この反省から、人事権を本部に集約すると同時に、年金機構の幹部に厚生労働省出身のキャリアを充てる場合には本省には戻さない「ノーリターンルール」を適用し、現場への監督責任を明確化するそうです。
◆今後の課題は?
今回の改革では、「数減らし」にこだわり過ぎた感があることも否めません。全国の社会保険事務所の窓口には年金記録関連の相談者が殺到しており、慢性的に人手が足りない状況が続いています。今後も増大する業務量に改革後の人員数でどのように対応するかなど、実務面での課題は多く残っているといえます。結局、非正規雇用などで穴埋めすることになれば、相談などの業務でサービスの質が保てるか不透明です。
数は減らしながらもいかにサービスの質の向上を目指すか、一見矛盾したようにも見えるこのテーマにどう取り組むかが、今後の課題です。
高止まりする自殺者数と急がれる対策
◆急がれる自殺防止への取組み
昨年1年間に自殺した人は全国で3万3,093人。10年連続で3万人を超えたことが、警察庁のまとめで判明しました。こうした現状を踏まえ、自殺防止への取組みが急務となっています。
◆警察庁の自殺統計データから
昨年の自殺者数は前年よりも2.9%増加し、2003年の3万4,427人に次いで過去2番目の高水準となりました。男性が全体の約7割を占める2万3,478人で、女性は9,615人でした。30歳代と60歳以上は過去最多となり、特に60歳以上は自殺者全体の36.6%と3分の1を超えました。人口10万人当たりの自殺者を示す「自殺率」は、50歳代が38.1%と最も高くなっています。
また、警察庁は昨年、自殺統計原票の原因動機や職業分類を見直し、自殺防止対策に役立てるために今年から詳細なデータを発表しています。細かな項目では「うつ病」(6,060人)が全体の18%を占め最多となり、「身体の病気」(5,240人)、「多重債務」(1,973人)の順となっています。また、介護や看病疲れが理由とみられる265人の内分けについては、60歳以上が153人を占めました。
職業別では、無職が全体の半数以上に上る1万8,990人、会社員などの被雇用者が9,154人、自営業者が3,278人、学生や生徒は873人となっています。都道府県別の自殺者数は、東京都が最も多く、次いで大阪府、神奈川県の順となっています。
なお、警察庁の自殺統計は、死亡届をもとに集計する厚生労働省の人口動態統計より、人数が多くなる傾向があります。これは、死亡届を出した後に警察の調べで自殺と判明したケースや、日本国内で自殺した外国人なども数に含まれるためです。
◆「自殺対策基本法」と「自殺総合対策大綱」
政府は、自殺者数を減少しようと、相談体制の整備、自殺防止のための啓発、調査研究の推進等に取り組んできました。そこで2006年に制定されたのが「自殺対策基本法」です。この法律は、自殺を個人的な問題としてのみ捉えるのではなく、社会的要因を踏まえ、社会的な取組みとして対策を実施するべきであるという理念のもと、自殺の防止を図り、併せて自殺者の親族等に対する支援の充実を図ることを目的としています。
さらに、この基本法に基づき、政府が推進すべき自殺対策の指針として「自殺総合対策大綱」が策定されました。
しかし、自殺者数の減少傾向はみられないのが現状です。スタートして間もない法律でもあり、具体的な形での効果はまだ出ていないといえます。今後に向けて、早急な対策が急がれます。
医療崩壊の歯止めに厚生労働省が対策検討
◆医師数の抑制は政策の誤りだった?
厚生労働省は、医師不足による医療崩壊に歯止めをかけるため、大学医学部の定員削減を定めた閣議決定を撤回し、医師の養成数を増やす方針を決定しました。「医師は全体としては余っている」として医師数の抑制を続けてきた政策の誤りを認めた格好です。
◆「数は増えても医師不足」の現状
現在の医師数は約27万人で、毎年3,500人程度の純増が続き、全医師数でみると増加が続いています。しかし、医師は設備の整った都市部の大病院や皮膚科など特定の診療科に集中しているのが現状です。へき地などの地方は医師数が足りず、地域間の格差が非常に大きくなっています。
また、産科・小児科・救急病院などは激務のため敬遠され、なり手が見つかりません。地域・診療科によっては、医療崩壊が深刻化しているのが現状なのです。加えて、近年、高齢化による患者増や医療の高度化・専門化が進み、医師総数が不足しているとの声が強まっていました。
◆検討されている様々な対策
大学医学部の定員数を増やして養成数を増やすことに加え、厚生労働省では様々な対策を検討しています。
診療科の偏在については、まず、産科・小児科の医師不足解消のために、女性医師の積極活用が進められます。女性医師は産科・小児科で主力を担いますが、結婚や出産を機に辞めるケースが多いのが現状でした。そこで、短時間だけ働く正職員制度の導入や病院内の保育所の充実などを進めるほか、助産師を増やして体制を整える方針です。また、救急医療の体制整備に向けて、診療所の医師が夜間や休日も外来患者を受け入れられるように支援することも検討項目です。
地域の偏在については、都市部や特定の病院に集中しないような対策が必要です。現在の、研修医が研修先の病院を選ぶことのできる仕組みの変更が必要になるかもしれません。医師不足の診療科や病院に積極的に医師を派遣した医療機関に手厚く補助金を配分する仕組みを導入することや、狭い専門分野だけでなく1人で幅広い診察ができる「総合医」の育成も重要となっています。
大学の医学部定員を増やしても、現場の医師数が増えるのには10年程度の期間がかかるといわれています。社会保障費を抑制する努力を怠ったまま医師不足対策ばかりを優先していては、財政的に次世代にツケを回すことにもなりかねません。医師不足の解消とともに、医療のムダを減らす効率化を一段と進める必要もありそうです。
注目される「労働者派遣法」改正への動き
◆派遣法改正に関する与党案の内容
先日、自民・公明両党でつくる「新雇用対策に関するプロジェクトチーム」が、労働者派遣制度の見直しに関する基本方針を決定、発表しました。同チームでは、この基本方針を踏まえ、今秋に開かれる予定の臨時国会において労働者派遣法の改正を求めており、厚生労働省でも、改正案を提出する準備を進めているようです。
ここでは、同チームで決定された基本方針をご紹介します。主な内容は、以下の通りです。
◆「日雇い派遣」の原則禁止
低賃金や不安定な身分などが社会問題化している「日雇い派遣」については、通訳などの専門性の高い一部の業務を除いて(ポジティブリスト化して)、原則として禁止する方針です。しかし、派遣会社をはじめとする産業界からは、反対の声が上がっているようです。
◆グループ企業内での「専ら派遣」の規制強化
大手企業グループの派遣会社で働く派遣労働者のうち、約8割の人が同じグループ企業内への派遣となっており、また、3割を超える派遣会社がグループ内の企業のみに労働者を派遣していることが、厚生労働省の調査で明らかになっています。
これらは、労働者派遣法で禁止されている「専ら派遣」となっているのではないかとの指摘があり、何らかの規制が必要との意見が以前から上がっていました。このグループ内での「専ら派遣」について、規制を強化していく方針です。
◆偽装請負の派遣先に直接雇用の行政勧告
請負契約であるのに派遣労働者のように働かせたり(いわゆる偽装請負)、建設・港湾などといった禁止業務で派遣労働者を受け入れたりするなど、派遣労働者を違法に受け入れた企業を対象に、派遣労働者の直接雇用を行政官庁が勧告できるようにする(勧告に従わない場合は企業名を公表する)制度も検討されています。
これまで違法派遣については、派遣元に対する罰則しかなかったため、派遣先にもその対象を広げることにより、違法派遣を抑制したい考えです。
◆その他の内容
上記の内容以外にも、派遣先の労災責任の明確化、派遣元の手数料(マージン率)の公開義務付け等も方針として挙げられており、今後の法改正への動きが注目されるところです。
就職・会社・仕事に関する若手社員の意識は?
◆就職活動に欠かせない「インターネット」
社会経済生産性本部と日本経済青年協議会は、今春入社した新入社員を対象に「働くことの意識」に関して行った調査結果を発表しました。
就職活動で利用した情報源(複数回答)については、「インターネットの企業ホームページ」(86%)が「会社説明会」(83%)を初めて上回る結果が出ました。今や、ほとんどの企業が自社のホームページを持っていると思われますが、そこに掲載されている内容を参考にする学生が大変多くなっているようです。
また、新入社員が就職先を選んだ基準としては、上位から、「自分の能力や個性が活かせるから」(28%)、「仕事が面白いから」(24%)、「技術が覚えられるから」(14%)となっています。これに対して、「会社の将来性」(9%)や「一流会社だから」(5%)といった理由は、以前に比べると大きく落ち込んでいるようです。
◆「働き方は人並みで十分」!?
また、同じ調査によれば、「働き方は人並みで十分」と考えている人は51.9%(前年比4ポイント増)、「人並み以上に働きたい」と考える人は38.5%(前年比4.3ポイント減)という結果が出たそうです。「人並みで十分」と考える人の割合は1992年以来の高水準となったそうですが、仕事に対する意欲や熱意の少ない若者が増えているのでしょうか?
◆「取締役にはなりたくない」!?
また、日本経済新聞とNTTレゾナントが、22歳から29歳の若手社員を対象に行ったアンケート調査では、「会社の取締役になりたいですか?」という質問に対し、「なりたくない」と回答した人(65.7%)が「なりたい」と回答した人(34.3)を大きく上回る結果が出たそうです。
「なりたくない」と答えた人の理由(複数回答)としては、「責任を負うのが面倒」(60.8%)、「取締役になる年次まで今の会社にいるつもりはない」(41.0%)、「他人を蹴落としてまで出世したくない」(26.2%)、「株主代表訴訟で負ければ多額の賠償金を払わなければならない」(7.2%)、「社会的なステータスが下がった」(5.4%)などといったことが挙げられていました。
会社内での出世願望、上昇志向を持つ若手社員も、以前に比べると少なくなくなってきている傾向にあるようです。
継続審議となっている労働関係の法案
◆2つの重要法案が継続審議に
通常国会が6月21日に閉会となりましたが、そこで提出されていた「改正労働基準法案」、「改正障害者雇用促進法案」は成立せずに、継続審議となっています。
この2つの重要法案は、秋の臨時国会に提出され審議されると思われますので、改めてその内容を確認しておきたいと思います。
◆改正労働基準法案の内容(1)
この改正案における大きな柱は、何といっても「月の時間外労働が一定の時間を超えた場合の割増率のアップ」です。
月の時間外労働時間が45時間を超え80時間までの場合の割増賃金率については2割5分以上の率で労使協定で定める率とし(努力義務)、80時間を超えた場合の割増賃金については5割増とする、というのがその内容です。
なお、上記の「80時間」の部分については、「60時間」に修正されるような動きもありますので、注目しておくべきでしょう。
◆改正労働基準法案の内容(2)
改正労働基準法案のもう1つの柱は、「年次有給休暇の時間単位での取得」です。
現在、有給休暇については、最低取得単位が原則として「1日」とされていますが、時間単位で細かく取得できるようにして、近年落ち込んでいる有給休暇の取得率アップにつなげるのがねらいです。また、細かい単位で取得できることが子育て支援につながるという考えもあります。
なお、この改正内容については、労働者の過半数で組織する労働組合(ないときは労働者の過半数を代表する者)との書面による協定により、時間単位で有給休暇を与える労働者の範囲、時間を単位として与えることができる有給休暇の日数(5日以内)などを定めることとされています。
◆改正障害者雇用促進法案の内容
現在は障害者の雇用者数が法定雇用率(1.8%)に満たない従業員「301人以上」の企業に課されている納付金の支払義務について、順次「201人以上」、「101人以上」の企業へ拡大するということがこの改正案の大きな内容です。
また、障害者雇用義務の対象労働者に、「短時間労働者」(週の労働時間が20時間以上30時間未満)も追加されることも盛り込まれています。
なお、この改正案は2009年4月1日施行予定ですが、納付金支払義務が課される企業の拡大については、「201人以上」へは2010年7月、「101人以上」へは2015年7月とされています。
年金をめぐる最近のトピックス
◆年金運用赤字が過去最大の5兆円に
公的年金の積立金の2007年度における運用実績の赤字が5兆円を超え、過去最悪となったことが明らかになりました。米国のサブプライムローン問題による世界的株安や円高の進行が大きく影響して運用利回りがマイナス約6%にまで落ち込み、単年度での赤字は2002年度以来5年ぶりとなりました。
社会保険庁では、国民年金保険料の2007年度の納付率が64%前後(同庁の目標は「80%」)となり、2年連続低下する見通しを明らかにしていますが、上記の運用赤字の報道等により、ますます年金制度に対する不信感が高まり、納付率が今後さらに低下することも懸念されます。
◆年金第三者委員会への申立ては1年で約6万件
総務省の「年金記録確認第三者委員会」では、同委員会発足後の1年間の申立てが6万490件あったと発表しました。このうち審査が終了したものは1万5,594件(全体の25.8%)で、そのうち記録訂正が認められたものは6,847件となっています。
また、同委員会では、企業が従業員の厚生年金保険料を着服していたと思われるケースが、2007年度中に202件あったと認定したそうです。従業員の給与から保険料を天引きしておきながら納付していなかったようであり、このような事例はまだまだ他にもあるとみられています。
◆「ねんきん特別便」で記載ミス1,857件発覚
社会保険庁は、6月23・25両日に発送を行った「ねんきん特別便」で、1,857件の記載ミスがあったことを明らかにしました。これらは、企業を通じて厚生年金加入者に送付されたものであり、国民年金の記録の「納付済月数」などの合計欄と「加入月数」の合計欄の数字が逆に印刷されていたようです。このミスを受け、同庁では訂正版を送付するそうです。
◆ネット上での記録照会が受給者でも可能に
社会保険庁は、現在は約6,200万人の年金加入者に限定されているインターネット上での年金記録照会について、約3,300万人の年金受給者にもサービスを拡大する方針を明らかにしました。
2008年度中にも、「ねんきん特別便」に関する情報、過去の標準報酬月額や保険料納付履歴などを確認できるようにするそうです。
◆企業を誹謗中傷する内容も
インターネット対策に頭を悩ます企業が増えています。ネットに書き込まれた情報は瞬時に多くの人の目に触れることになりますが、それが企業を中傷するような内容であれば、企業にとってはイメージ低下につながるおそれもあります。とはいえ、サービスの利便性やプライバシーとの兼合いもあり、情報の規制には困難が伴うのが実情のようです。
◆対応の難しい検索サービスによるトラブル
ある会社が、自社名を入力すると関連検索の欄に「悪徳商法」という単語が自動表示されることに困惑し、大手検索サービス会社に対して表示の差止めを求める仮処分を裁判所に申し立てた事例があります。
昨今問題とされているのが、こうした検索サービスによるトラブルです。検索サービスの画面で、入力したキーワードと一緒に打ちこまれる可能性の高い単語を自動的に並べて表示する「関連検索」という項目があります。利用者がサイトを絞り込んで検索できる便利な機能ですが、会社名や商品名を入力すると、「被害」「悪徳」など、イメージ低下につながる単語が自動表示されることがあります。企業にとっては、たまったものではありません。
先の事例では、企業側が「イメージが低下して売上にも悪影響が出た」と主張したのに対し、検索サービス側は「利用者の検索パターンを事実として表示しているだけ」と反論し、最終的に、裁判所は企業側の請求を退けました。「利用者は悪徳商法という単語を、同社名と併せて検索する頻度の高い単語と認識するだけである」と判断し、名誉毀損には当たらないとしたのです。
◆行政側の対応は?
もっとも、行政もネット上の名誉棄損問題に手をこまねいてきたわけではありません。2002年には「プロバイダー責任制限法」が施行され、一定の要件を満たした場合、プロバイダーは被害者の請求に応じて、違法な書込みをした発信者の情報を開示できるようになりました。
法務省の統計によれば、ネット上のプライバシー侵害などの報告件数は年々増加傾向にあるようです。これは、法律の施行により、一定の要件を満たせば内容を削除できるようになったほか、相手に損害賠償請求もしやすくなって、これまで泣き寝入りしていた被害が表面化したためだと思われます。しかし、同法は掲示板やホームページなどが対象であり、メールのような通信は含まれません。そのため、一斉メールでの中傷などに関しては、「通信の秘密を守る」という観点からも法的に対抗するのは難しいのが現状です。
今後、日常生活に不可欠となったネットサービスの利便性を損なわずに、どうやって個人や企業の権利を守って行くのか、ルールのあり方が問われています。
深刻な少子化問題とこれからの対策
◆「合計特殊出生率」は上昇
高齢化と同時に少子化が進む現代の日本。今後、年金給付水準切下げなどの形で国民生活に影響が出ることが懸念されており、深刻な問題です。
少子化の指標として一般的に用いられている「合計特殊出生率」は、2007年度は1.34%に上昇しました。しかし、これで少子化に歯止めがかけられたというわけではありません。この指標を通して、これからの少子化対策について考えてみます。
◆増える未婚者、進む晩婚化
合計特殊出生率の意味するものは、一夫婦当たりの平均出生児数ではなく、未婚者や離別者を含む女子全体についての平均出生児数です。そのため、独身で暮らす人の増加、晩婚化の進行など、結婚の動向によって変化します。
近年、出生率の低下が問題となっていますが、実は一夫婦当たりの出生率はほぼ横ばいです。真に問題なのは、未婚率・晩婚率の上昇により、第1子がいない家庭が増えていることだといわれています。
厚生労働省の発表によれば、2007年度の出生数のうち第1子は約52万人、第2子は約40万人と、それぞれ前年比1%余り減少し、全体数も2年ぶりに減少しました。婚姻数は約72万件と2年ぶりに減少、未婚者が増えています。平均初婚年齢は、夫・妻ともに0.1歳上昇し、晩婚化に伴う晩産の影響で、第1子を産む母親の平均年齢は29.4歳と過去最高を更新しています。
一方、第3子以上は約47万人で前年比4%の増加となりました。2007年は景気が底堅く推移し、家計に余裕が出たことで、30歳代後半の層を中心に「もう1人産みたい」という夫婦が増えたためと思われます。
◆少子化には国をあげての対策が必要
少子化の背景には、働き方の変化も関連しています。生活不安を抱える男女が結婚・出産に踏み切れないケースも多く、第2次ベビーブーム(1971年~74年)に続く第3次ベビーブームが起きる兆しはありません。30歳代半ばの団塊ジュニア世代の結婚・出産による押上げ効果がなくなれば、出生率の減少幅が拡大する可能性もあります。
少子化に歯止めをかけるためには、国をあげての対策が必要です。日本は出生率が2.0を超えるフランスなどの先進国に比べて、少子化対策関連の予算が少ないのが現状です。家族関係支出の国内総生産に対する割合は、イギリスの3.02%に対して0.75%に過ぎません。後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の見直しで追加負担が生じるなど財源が限られる中、少子化対策予算をどう増やしていくのか、課題となっています。
子供の金銭感覚を磨く「お小遣い」
◆金銭感覚がない子供が増加!?
クレジットカードや電子マネーの普及によりお金の流れが見えにくくなり、金銭感覚の乱れた子供が増えているようです。子供の頃から投資センスを育む必要性が指摘されていますが、投資教育の前に、生活に必要な金銭管理能力を身につけさせなければなりません。
お金の価値や金銭管理の厳しさ、借金の怖さなどを子供にどう教えるのか、家庭での金銭教育への関心が高まっています。
◆「お小遣い」を活用した金銭教育
家庭での身近な金銭教育のツールとして「お小遣い」の活用が挙げられます。毎月一定額のお小遣いを子供に渡し、欲しい物、学用品などを買わせます。家計のやりくりと類似しています。子供は最初、喜んで欲しい物ばかり買ってしまいがちです。その結果、必要な文房具などが買えなくなっても、安易に援助せず、次のお小遣いまで我慢させます。この繰返しにより、金銭感覚や我慢する心を身につけさせるのです。お小遣い帳をつけさせて、親が適宜助言するのも効果的です。
自立心や責任感を養い、必要なものを買ったうえで欲しい物を手に入れるにはどうしたらよいかを考えさせるのが、「お小遣い教育」の狙いです。
高校生くらいになって日常の行動範囲が広がるにつれ、携帯電話代や交遊費など、使うお金も増えていきます。そこで、ある程度まとまったお金を渡して自ら管理させる「予算制」や「年俸制」を取り入れるのもひとつの方法です。
◆お小遣い教育を成功させるために
金銭教育の手法は家庭ごとに様々と思われますが、大切なのは「家族全員が納得したうえでルールを作る」ことです。
例えば、お小遣い教育で悩ましいのが祖父母の関与です。お小遣い教育について説明したうえで、祖父母にも満足してもらえる工夫をすることが必要です。祖父母が子供にお小遣いをくれたときは、それを断るのではなく、まずは子供と一緒に喜びましょう。そのうえで、臨時収入としていったん貯金する、おもちゃを買ってもらうよりも遊園地に連れて行ってもらうような「物より思い出」方式にするなどのやり方を、祖父母を交えて考えます。
また、お金にまつわる情操教育の一環として、お年玉やプレゼントをもらったらお礼に手紙や絵を書いて贈ることにする、クリスマスは自分がもらうだけでなく人にも贈り物をすることにするなど、心の教育への取組みも大切なポイントです。
さらに、お金の管理について子供が間違いを犯したときに、なぜ間違えたのか、どう解決すればいいか、一緒に考えることで家族の対話も増えれば一挙両得だといえるでしょう。
2010年発足予定「日本年金機構」の組織改革
◆社会保険庁の組織改革
抜本的な組織改革を行っている社会保険庁。2008年10月には政府管掌健康保険の運営を「全国健康保険協会」という新しい公法人に分離し、2010年1月には社会保険庁を廃止して「日本年金機構」という新しい公法人が設立されます。とりわけ日本年金機構は、社会保険庁の相次ぐ不祥事と年金問題に対応するために、徹底した改革を迫られています。
◆人員削減と懲戒処分者の排除
政府の「年金業務・組織再生会議」がまとめる、社会保険庁組織改革の最終報告書案をみてみましょう。
同会議は、業務の外部委託や情報技術(IT)の活用で、大幅な人員削減が可能と判断。日本年金機構の発足時の正規職員数を約10,900人とし、現行比17%減とすることが決定しています。一方で、民間からの採用を拡大し、機構発足時に外部から1,000人を採用するため、社会保険庁から正規職員として移行するのは約9,900人にとどまります。
個人情報の覗き見などで懲戒処分を受けた職員の排除も重視し、懲戒を受けたことのある職員は正規職員として採用されません。懲戒処分者については有期雇用とし、退職金にも差をつけることとしています。こうした方向性が明らかになるにつれ、退職の意向を示す、過去に処分を受けた職員が続出しているそうです。
これまで、社会保険庁では、「厚生労働省採用のキャリア組」「社会保険庁採用のノンキャリア組」「地方採用のノンキャリア組」という3層構造を維持してきました。各層間で問題を共有しない一体感を欠いた運営が、今日の年金記録問題につながったとも言われています。この反省から、人事権を本部に集約すると同時に、年金機構の幹部に厚生労働省出身のキャリアを充てる場合には本省には戻さない「ノーリターンルール」を適用し、現場への監督責任を明確化するそうです。
◆今後の課題は?
今回の改革では、「数減らし」にこだわり過ぎた感があることも否めません。全国の社会保険事務所の窓口には年金記録関連の相談者が殺到しており、慢性的に人手が足りない状況が続いています。今後も増大する業務量に改革後の人員数でどのように対応するかなど、実務面での課題は多く残っているといえます。結局、非正規雇用などで穴埋めすることになれば、相談などの業務でサービスの質が保てるか不透明です。
数は減らしながらもいかにサービスの質の向上を目指すか、一見矛盾したようにも見えるこのテーマにどう取り組むかが、今後の課題です。
高止まりする自殺者数と急がれる対策
◆急がれる自殺防止への取組み
昨年1年間に自殺した人は全国で3万3,093人。10年連続で3万人を超えたことが、警察庁のまとめで判明しました。こうした現状を踏まえ、自殺防止への取組みが急務となっています。
◆警察庁の自殺統計データから
昨年の自殺者数は前年よりも2.9%増加し、2003年の3万4,427人に次いで過去2番目の高水準となりました。男性が全体の約7割を占める2万3,478人で、女性は9,615人でした。30歳代と60歳以上は過去最多となり、特に60歳以上は自殺者全体の36.6%と3分の1を超えました。人口10万人当たりの自殺者を示す「自殺率」は、50歳代が38.1%と最も高くなっています。
また、警察庁は昨年、自殺統計原票の原因動機や職業分類を見直し、自殺防止対策に役立てるために今年から詳細なデータを発表しています。細かな項目では「うつ病」(6,060人)が全体の18%を占め最多となり、「身体の病気」(5,240人)、「多重債務」(1,973人)の順となっています。また、介護や看病疲れが理由とみられる265人の内分けについては、60歳以上が153人を占めました。
職業別では、無職が全体の半数以上に上る1万8,990人、会社員などの被雇用者が9,154人、自営業者が3,278人、学生や生徒は873人となっています。都道府県別の自殺者数は、東京都が最も多く、次いで大阪府、神奈川県の順となっています。
なお、警察庁の自殺統計は、死亡届をもとに集計する厚生労働省の人口動態統計より、人数が多くなる傾向があります。これは、死亡届を出した後に警察の調べで自殺と判明したケースや、日本国内で自殺した外国人なども数に含まれるためです。
◆「自殺対策基本法」と「自殺総合対策大綱」
政府は、自殺者数を減少しようと、相談体制の整備、自殺防止のための啓発、調査研究の推進等に取り組んできました。そこで2006年に制定されたのが「自殺対策基本法」です。この法律は、自殺を個人的な問題としてのみ捉えるのではなく、社会的要因を踏まえ、社会的な取組みとして対策を実施するべきであるという理念のもと、自殺の防止を図り、併せて自殺者の親族等に対する支援の充実を図ることを目的としています。
さらに、この基本法に基づき、政府が推進すべき自殺対策の指針として「自殺総合対策大綱」が策定されました。
しかし、自殺者数の減少傾向はみられないのが現状です。スタートして間もない法律でもあり、具体的な形での効果はまだ出ていないといえます。今後に向けて、早急な対策が急がれます。
医療崩壊の歯止めに厚生労働省が対策検討
◆医師数の抑制は政策の誤りだった?
厚生労働省は、医師不足による医療崩壊に歯止めをかけるため、大学医学部の定員削減を定めた閣議決定を撤回し、医師の養成数を増やす方針を決定しました。「医師は全体としては余っている」として医師数の抑制を続けてきた政策の誤りを認めた格好です。
◆「数は増えても医師不足」の現状
現在の医師数は約27万人で、毎年3,500人程度の純増が続き、全医師数でみると増加が続いています。しかし、医師は設備の整った都市部の大病院や皮膚科など特定の診療科に集中しているのが現状です。へき地などの地方は医師数が足りず、地域間の格差が非常に大きくなっています。
また、産科・小児科・救急病院などは激務のため敬遠され、なり手が見つかりません。地域・診療科によっては、医療崩壊が深刻化しているのが現状なのです。加えて、近年、高齢化による患者増や医療の高度化・専門化が進み、医師総数が不足しているとの声が強まっていました。
◆検討されている様々な対策
大学医学部の定員数を増やして養成数を増やすことに加え、厚生労働省では様々な対策を検討しています。
診療科の偏在については、まず、産科・小児科の医師不足解消のために、女性医師の積極活用が進められます。女性医師は産科・小児科で主力を担いますが、結婚や出産を機に辞めるケースが多いのが現状でした。そこで、短時間だけ働く正職員制度の導入や病院内の保育所の充実などを進めるほか、助産師を増やして体制を整える方針です。また、救急医療の体制整備に向けて、診療所の医師が夜間や休日も外来患者を受け入れられるように支援することも検討項目です。
地域の偏在については、都市部や特定の病院に集中しないような対策が必要です。現在の、研修医が研修先の病院を選ぶことのできる仕組みの変更が必要になるかもしれません。医師不足の診療科や病院に積極的に医師を派遣した医療機関に手厚く補助金を配分する仕組みを導入することや、狭い専門分野だけでなく1人で幅広い診察ができる「総合医」の育成も重要となっています。
大学の医学部定員を増やしても、現場の医師数が増えるのには10年程度の期間がかかるといわれています。社会保障費を抑制する努力を怠ったまま医師不足対策ばかりを優先していては、財政的に次世代にツケを回すことにもなりかねません。医師不足の解消とともに、医療のムダを減らす効率化を一段と進める必要もありそうです。
注目される「労働者派遣法」改正への動き
◆派遣法改正に関する与党案の内容
先日、自民・公明両党でつくる「新雇用対策に関するプロジェクトチーム」が、労働者派遣制度の見直しに関する基本方針を決定、発表しました。同チームでは、この基本方針を踏まえ、今秋に開かれる予定の臨時国会において労働者派遣法の改正を求めており、厚生労働省でも、改正案を提出する準備を進めているようです。
ここでは、同チームで決定された基本方針をご紹介します。主な内容は、以下の通りです。
◆「日雇い派遣」の原則禁止
低賃金や不安定な身分などが社会問題化している「日雇い派遣」については、通訳などの専門性の高い一部の業務を除いて(ポジティブリスト化して)、原則として禁止する方針です。しかし、派遣会社をはじめとする産業界からは、反対の声が上がっているようです。
◆グループ企業内での「専ら派遣」の規制強化
大手企業グループの派遣会社で働く派遣労働者のうち、約8割の人が同じグループ企業内への派遣となっており、また、3割を超える派遣会社がグループ内の企業のみに労働者を派遣していることが、厚生労働省の調査で明らかになっています。
これらは、労働者派遣法で禁止されている「専ら派遣」となっているのではないかとの指摘があり、何らかの規制が必要との意見が以前から上がっていました。このグループ内での「専ら派遣」について、規制を強化していく方針です。
◆偽装請負の派遣先に直接雇用の行政勧告
請負契約であるのに派遣労働者のように働かせたり(いわゆる偽装請負)、建設・港湾などといった禁止業務で派遣労働者を受け入れたりするなど、派遣労働者を違法に受け入れた企業を対象に、派遣労働者の直接雇用を行政官庁が勧告できるようにする(勧告に従わない場合は企業名を公表する)制度も検討されています。
これまで違法派遣については、派遣元に対する罰則しかなかったため、派遣先にもその対象を広げることにより、違法派遣を抑制したい考えです。
◆その他の内容
上記の内容以外にも、派遣先の労災責任の明確化、派遣元の手数料(マージン率)の公開義務付け等も方針として挙げられており、今後の法改正への動きが注目されるところです。
就職・会社・仕事に関する若手社員の意識は?
◆就職活動に欠かせない「インターネット」
社会経済生産性本部と日本経済青年協議会は、今春入社した新入社員を対象に「働くことの意識」に関して行った調査結果を発表しました。
就職活動で利用した情報源(複数回答)については、「インターネットの企業ホームページ」(86%)が「会社説明会」(83%)を初めて上回る結果が出ました。今や、ほとんどの企業が自社のホームページを持っていると思われますが、そこに掲載されている内容を参考にする学生が大変多くなっているようです。
また、新入社員が就職先を選んだ基準としては、上位から、「自分の能力や個性が活かせるから」(28%)、「仕事が面白いから」(24%)、「技術が覚えられるから」(14%)となっています。これに対して、「会社の将来性」(9%)や「一流会社だから」(5%)といった理由は、以前に比べると大きく落ち込んでいるようです。
◆「働き方は人並みで十分」!?
また、同じ調査によれば、「働き方は人並みで十分」と考えている人は51.9%(前年比4ポイント増)、「人並み以上に働きたい」と考える人は38.5%(前年比4.3ポイント減)という結果が出たそうです。「人並みで十分」と考える人の割合は1992年以来の高水準となったそうですが、仕事に対する意欲や熱意の少ない若者が増えているのでしょうか?
◆「取締役にはなりたくない」!?
また、日本経済新聞とNTTレゾナントが、22歳から29歳の若手社員を対象に行ったアンケート調査では、「会社の取締役になりたいですか?」という質問に対し、「なりたくない」と回答した人(65.7%)が「なりたい」と回答した人(34.3)を大きく上回る結果が出たそうです。
「なりたくない」と答えた人の理由(複数回答)としては、「責任を負うのが面倒」(60.8%)、「取締役になる年次まで今の会社にいるつもりはない」(41.0%)、「他人を蹴落としてまで出世したくない」(26.2%)、「株主代表訴訟で負ければ多額の賠償金を払わなければならない」(7.2%)、「社会的なステータスが下がった」(5.4%)などといったことが挙げられていました。
会社内での出世願望、上昇志向を持つ若手社員も、以前に比べると少なくなくなってきている傾向にあるようです。
継続審議となっている労働関係の法案
◆2つの重要法案が継続審議に
通常国会が6月21日に閉会となりましたが、そこで提出されていた「改正労働基準法案」、「改正障害者雇用促進法案」は成立せずに、継続審議となっています。
この2つの重要法案は、秋の臨時国会に提出され審議されると思われますので、改めてその内容を確認しておきたいと思います。
◆改正労働基準法案の内容(1)
この改正案における大きな柱は、何といっても「月の時間外労働が一定の時間を超えた場合の割増率のアップ」です。
月の時間外労働時間が45時間を超え80時間までの場合の割増賃金率については2割5分以上の率で労使協定で定める率とし(努力義務)、80時間を超えた場合の割増賃金については5割増とする、というのがその内容です。
なお、上記の「80時間」の部分については、「60時間」に修正されるような動きもありますので、注目しておくべきでしょう。
◆改正労働基準法案の内容(2)
改正労働基準法案のもう1つの柱は、「年次有給休暇の時間単位での取得」です。
現在、有給休暇については、最低取得単位が原則として「1日」とされていますが、時間単位で細かく取得できるようにして、近年落ち込んでいる有給休暇の取得率アップにつなげるのがねらいです。また、細かい単位で取得できることが子育て支援につながるという考えもあります。
なお、この改正内容については、労働者の過半数で組織する労働組合(ないときは労働者の過半数を代表する者)との書面による協定により、時間単位で有給休暇を与える労働者の範囲、時間を単位として与えることができる有給休暇の日数(5日以内)などを定めることとされています。
◆改正障害者雇用促進法案の内容
現在は障害者の雇用者数が法定雇用率(1.8%)に満たない従業員「301人以上」の企業に課されている納付金の支払義務について、順次「201人以上」、「101人以上」の企業へ拡大するということがこの改正案の大きな内容です。
また、障害者雇用義務の対象労働者に、「短時間労働者」(週の労働時間が20時間以上30時間未満)も追加されることも盛り込まれています。
なお、この改正案は2009年4月1日施行予定ですが、納付金支払義務が課される企業の拡大については、「201人以上」へは2010年7月、「101人以上」へは2015年7月とされています。
年金をめぐる最近のトピックス
◆年金運用赤字が過去最大の5兆円に
公的年金の積立金の2007年度における運用実績の赤字が5兆円を超え、過去最悪となったことが明らかになりました。米国のサブプライムローン問題による世界的株安や円高の進行が大きく影響して運用利回りがマイナス約6%にまで落ち込み、単年度での赤字は2002年度以来5年ぶりとなりました。
社会保険庁では、国民年金保険料の2007年度の納付率が64%前後(同庁の目標は「80%」)となり、2年連続低下する見通しを明らかにしていますが、上記の運用赤字の報道等により、ますます年金制度に対する不信感が高まり、納付率が今後さらに低下することも懸念されます。
◆年金第三者委員会への申立ては1年で約6万件
総務省の「年金記録確認第三者委員会」では、同委員会発足後の1年間の申立てが6万490件あったと発表しました。このうち審査が終了したものは1万5,594件(全体の25.8%)で、そのうち記録訂正が認められたものは6,847件となっています。
また、同委員会では、企業が従業員の厚生年金保険料を着服していたと思われるケースが、2007年度中に202件あったと認定したそうです。従業員の給与から保険料を天引きしておきながら納付していなかったようであり、このような事例はまだまだ他にもあるとみられています。
◆「ねんきん特別便」で記載ミス1,857件発覚
社会保険庁は、6月23・25両日に発送を行った「ねんきん特別便」で、1,857件の記載ミスがあったことを明らかにしました。これらは、企業を通じて厚生年金加入者に送付されたものであり、国民年金の記録の「納付済月数」などの合計欄と「加入月数」の合計欄の数字が逆に印刷されていたようです。このミスを受け、同庁では訂正版を送付するそうです。
◆ネット上での記録照会が受給者でも可能に
社会保険庁は、現在は約6,200万人の年金加入者に限定されているインターネット上での年金記録照会について、約3,300万人の年金受給者にもサービスを拡大する方針を明らかにしました。
2008年度中にも、「ねんきん特別便」に関する情報、過去の標準報酬月額や保険料納付履歴などを確認できるようにするそうです。
2008/06/27
7月の事務所便り
増加する精神疾患・過労自殺の労災認定
◆長時間労働や仕事上のストレスによる精神疾患
過労や職場のストレスが原因でうつ病などの精神疾患にかかり過労自殺した(未遂を含む)として、2007年度に労災認定された人は前年度を15人上回る81人となり、 2年連続で過去最悪となりました。過労自殺者を含む精神疾患の労災認定者も268人と、前年度比3割増となっています。
厚生労働省は、「長時間労働に加え、仕事の重圧なども精神疾患の原因になる」として、労働環境の改善を求めています。
◆過労死と過労自殺
過労死や過労自殺の定義を整理してみましょう。
「過労死」は、働き過ぎが原因で、心筋梗塞や脳梗塞など心臓や脳の疾患を発症し死亡するものです。認定基準としては、「発症前1カ月に100時間または2~6カ月間に月80時間を超える時間外労働があれば関連性が強い」とされています。
「過労自殺」は、過労や職場でのストレスからうつ病などの精神疾患となり、自殺に至るものです。原則として発症前6カ月の間に、長時間労働や仕事の量・質の大きな変化、重大なミス、出向やセクハラなどの業務上の強いストレスがあったことが認定の要件となります。
今回の調査では、脳梗塞などの脳・心臓疾患で労災認定された人は前年度から1割増えて392人(うち死亡したのは142人)と、過去最悪となりました。
◆精神疾患増加の理由とその対処法
2007年度は精神疾患の労災申請数が前年度比16.2%増の952人、一方、脳・心臓疾患の申請は0.7%減の931人で、調査開始以来初めて、過労による精神疾患の申請が脳・心臓疾患を上回ることとなりました。
精神疾患の労災認定者の1カ月平均残業時間について、80時間以上だった人は111人でした。一方、20時間未満の人も72人いましたが、「長時間労働だけでなく職場のいじめや過剰なノルマなどで精神疾患になるケースもある」という声もあり、一概に時間外労働の多寡だけでは判断しにくいところです。
労働者の精神疾患が増える背景には、企業が目先の発症者対策に追われ、長時間労働が減らないという根本的問題があります。また、個人主義や「勝ち組」「負け組」といった考え方が横行し、会社の中で連帯して集団的に問題を解決する能力が低下していることも一因といえるでしょう。
精神疾患は薬だけで治るものではありません。ものの見方や感じ方を修正するカウンセリングの実施など、職場や家族が一体となって取り組んでいくことが必要です。
注意すべき職場での電話応対マナー
◆電話の応対でビジネスを円滑に
電話を取り次ぐという経験が少ないために、「○○様でいらっしゃいますか」「あいにく○○は不在でございます」などといった言葉が使えない、いわゆる『携帯電話世代』の社員が増えてきました。電話応対のマナーを知らない社員の姿も目立ちます。
気持ちのよい電話の応対は、ビジネスを円滑に進めるうえで重要な要素です。電話ではなく電子メール等で要件を済ますケースも増えている昨今ですが、職場での電話応対のマナーについて改めて考え直す機会が必要かもしれません。
◆電話を受ける場合の基本的なマナー
電話応対で最も注意すべきなのは、「横柄な受け答えをしたり、面倒くさそうに答えたりしない」ことです。会社の信用をなくしてしまったり、印象が悪化したりしかねません。
次に、「『お待ちください』と言った後、長時間待たせっぱなしにしない」ことも重要です。しばらく時間がかかりそうな場合には、いったん電話を切り、こちらからかけ直す配慮が必要です。当人が不在だったときは、先方が「またかけます」と言った場合でも、電話があった旨のメモを残します。いざ本人が電話を受けた際に、「先ほどは不在で失礼しました」という一言がないと、失礼に当たるからです。
また、電話を受けるときに特に注意したいのは、「他の人に回すのに時間がかかる」、「取り次ぐ途中に切れてしまう」といった、機器操作上の不手際がないようにすることです。そのためには、普段から電話機の操作に慣れておく必要があります。
◆電話をかける場合の基本的なマナー
まずは、「社名や氏名をはっきり名乗る」ことが大切です。また、先方は忙しい時間帯かもしれません。「昼食時間や営業時間外の電話の際は気遣いの言葉を入れる」、「『お時間よろしいでしょうか』と確認する」といったことも重要なポイントです。
電話を切るときは、受話器を静かに置きます。
◆気持ちのよい電話応対のために
電話は対面の場合と違って相手の表情や状況が見えないだけに、受け答えにも工夫をする必要があります。「呼び出し3回以内に出る」「できるだけ丁寧に話す」「はっきり話す」「声のトーンをいつもより高めにする」ことを心がける必要があります。
新入社員が研修等で電話のマナーを学ぶことも大切ですが、ベテラン社員も、先方に不快感を与えていないか、時には意識して振り返ってみることも必要です。
「メタボ健診」で生活習慣病を予防
◆4月からスタート
「太りすぎは健康に悪い」と言われますが、最近では、特に内臓脂肪による肥満が生活習慣病に大きく関わっていることが判明しています。2008年4月から、この内臓脂肪に着目した特定健診・特定保健指導、通称「メタボ健診」が始まりました。
◆メタボ健診とは
「メタボリック・シンドローム」とは、腹囲が男性85センチ以上/女性90センチ以上を基準とする「内臓脂肪による肥満」に加えて、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上が該当する状態を指します。該当者は、糖尿病などの生活習慣病の一歩手前で、脳卒中や心臓病の発症にもつながりやすい状態です。
そこで、健康診断を実施して該当者やその予備軍を探し出し、生活習慣の改善指導を受けてメタボ脱出を目指してもらうこととなります。これが「メタボ健診」です。
◆具体的な内容
メタボ健診の対象は、40~74歳の人です。政管健保をはじめ、企業の健康保険組合、市町村の国民健康保険などの公的医療保険運営者が健診・指導を実施します。
健診の結果、メタボリック・シンドロームに該当した人は、生活習慣の改善指導を受けます。最初に面談や講習を受け、その後も3~6カ月にわたって定期的に専門家から面談や電話でアドバイスを受けることになります。「腹囲は基準以上だったが、そのほかに数値が悪かったのは1項目だけである」メタボ予備軍に該当する場合は、最初の面談だけとなります。
また、各医療保険運営者には、健診結果を電子情報として蓄積することも義務化されました。国民の健康状態が把握しやすくなり、また、健診情報と患者が病院で治療を受けたときの診療情報を併せて分析した総合的な判断もしやすくなります。
◆メタボ健診の狙い
メタボ健診のそもそもの狙いは、生活習慣病の予防による医療費の抑制です。厚生労働省によると、生活習慣病の医療費は国民医療費の3分の1を占めています。医療費抑制のためには、こうした生活習慣病の発症や悪化を予防することが欠かせません。健診・指導費はかかりますが、発症または悪化前の生活指導による改善により、結果的に将来の医療費を抑制する考えです。
始まったばかりの「メタボ健診」。有効であるのか、それとも制度の見直しの必要があるのか、もうしばらく注視する必要がありそうです。
外国人研修制度・技能実習制度の問題点
◆問われる制度のあり方
開発途上国への国際協力のあり方について、今、自衛隊の海外派遣の是非を含め、活発な意見交換がなされています。そんな中にあって、「外国人研修制度・技能実習制度」のあり方も問われています。
◆外国人研修制度・技能実習制度とは
外国人研修制度・技能実習制度は、開発途上国への国際貢献と国際協力を目的として、諸外国の青壮年労働者を受け入れて、日本の技術・技能・知識の習得を支援することを目的とする制度で、財団法人国際研修協力機構が推進団体となり、民間団体や企業に対して総合的な支援・援助や適正実施の助言・指導を行っています。
基本的には、民営または国公営の送出し機関から送り出された研修生(技能実習生)に来日してもらい、日本側の受入れ機関において研修を行って、日本の高い技術の習得を支援します。
研修生は、「研修」の在留資格で入国します。日本国内の受入れ先が決まっていないと入国できません。研修生の滞在期間は原則1年以内。研修の結果、一定以上の技能水準に達したことが認められた場合、在留資格が「研修」から「特定活動」に変わり、新たに受入れ企業と雇用契約を結んで、継続してさらに2年を限度に就労することができます。これが「技能実習」です。技能実習の対象職種には、63職種116作業が認定されています。
◆急増する問題点
外国人研修制度・技能実習制度は、単なる経済援助とは性格の異なる「人材育成協力」に主眼を置いた制度である反面、問題点も含んでいます。受入れ企業・団体による「不正行為」です。
外国人研修・技能実習制度に基づいて外国人を受け入れた企業・団体のうち、不当な低賃金で働かせるなどの「不正行為があった」と認定された件数は、2007年度は449件にのぼりました。これは前年の229件の約2倍で、2003年の調査開始以来、過去最悪の結果です。
不正行為のうち最も多かったのは、賃金不払いなどの「労働関係法規違反」で178件、また、受入れを申請した企業と実際に就労した企業が異なる「名義貸し」も115件にのぼっています。旅券や通帳を取り上げるなど、「悪質な人権侵害行為」も70件ありました。日本人労働者を確保できない企業、外国製品との価格競争にさらされている企業が、本来の目的である国際貢献ではなく、低賃金労働力の確保のために制度を利用しているのです。また、研修生の側でも、出稼ぎのつもりで来日する者がいて、失踪者や不法残留者が増加しています。
こうした問題点に対して、制度の見直しや改善が迫られているのです。
転職が原因で支給漏れの多い企業年金
◆約124万件の支給漏れが発覚
昨今の年金問題で国民年金や厚生年金の公的年金への関心が高まる一方、忘れられがちなのが企業年金です。加入者からの請求がなかったために2007年には約124万件の支給漏れが発覚した企業年金。特に転職時には、特に注意する必要があります。
◆企業年金の種類
企業年金は2種類に大別できます。1つは将来の給付額をあらかじめ約束する「確定給付型」、もう1つは年金資産の運用次第で給付額が変わる「確定拠出型」です。
確定給付型の企業年金には、厚生年金基金や確定給付企業年金、税制適格退職年金(2012年に廃止)などがあります。拠出した掛金の累計額とその運用収益であらかじめ年金額が決定されていることから、加入員が老後の計画を立てやすく、加入員数が伸びていました。福利厚生策として、企業が独自に自社年金を設けるケースもありました。
しかし、バブル崩壊等により運用環境が悪化し、大半の企業が、予定していた運用益を確保できずに積立不足に陥るという問題が発生しました。企業は不足分を補填しなければならず、運用失敗の負担が重くのしかかるケースもしばしば起こりました。
確定拠出型の企業年金は、こうした確定給付型の問題を解決できる特色を持っている制度で、2001年に誕生しました。掛金を誰が拠出するかの違いにより「企業型」と「個人型」がありますが、企業型の場合、企業が掛金を拠出し、運用は従業員が自ら行います。運用を加入者が個々に行うため、企業には確定給付型が持つ補填リスクがありません。
従業員にとっても、年金資産が個人別に区分され、残高の把握や転職時の資産の移行が容易だというメリットがあります。こうしたメリットゆえ、導入企業も徐々に増加する傾向です。
◆転職時の注意事項
さて、転職時には、これらの企業年金に対してどのような注意が必要なのでしょうか。
例えば厚生年金基金の場合、会社の定める一定期間を超えていれば基本的にはその会社で運用を続け、期間が満たないときには運用は企業年金連合会に移ります。転職経験が多く、以前の勤め先の企業年金について覚えていない場合、まずは企業年金連合会に問い合わせれば、どの部分が連合会に移ったのかわかります。それでも不明のときは、各企業の基金に問い合わせることが必要です。
確定給付型の企業年金は、2005年以降、転職先の会社が受け入れる体制を整えていれば、年金資産の移管が可能になりました。また、確定給付型から確定拠出型への移行もできます。
企業型の確定拠出年金は、転職先にも同様の制度があれば、それまでの年金資産を引き継ぐことができます。ただし、転職先に制度がない場合は、個人型の確定拠出年金として、国民年金基金連合会に年金資産を移管する必要があります。退職から半年以内に移管手続をしないと、運用を放棄したとみなされ、運用で得た利益を受け取ることができなくなりますので、注意が必要です。
医師が身近になる!? 健康相談サイト
◆深刻な医師不足・病院不足
地方や過疎化の進む地域を中心に、医師不足や病院不足が深刻化しています。そんな中、インターネットや携帯端末を利用して、医師が医療や健康に関する様々な疑問に答えてくれる、全国保険医団体連合会(保団連)による「健康相談サイト」が4月から開設されました。地域に関係なくいつでも気軽に医師に相談できるこのサイトが、今注目されています。
保団連とは、1969年に結成された医師・歯科医師の団体で、その会員数は10万人以上(2008年5月1日現在)にのぼります。
◆現役医師が答える健康相談
この健康相談サイトでは、無料の会員登録を行った利用者が健康上の悩みをサイトに送って医師に相談できます。また、質問者と医師が承諾した内容は、一般にも公開されます。サイトには「内科」「外科」「小児科」「産婦人科」「歯科」などの16の診療科と「医療制度」「その他」を合わせた、18項目の検索ボタンが設定されており、この検索ボタンの選択をするかキーワードの入力を行えば、該当分野の過去の質問内容と回答(Q&A)について自由に閲覧できる仕組みになっています。
閲覧できるQ&Aの内容がかなり豊富なうえ、質問にはそれぞれの専門分野の医師が答えてくれるので、安心して利用できます。
◆上手なサイトの活用を
このサイトは、保団連が、従来あった相談サイト「バーチャルドクター」をリニューアルし、4月から開設したものです。 保団連は、このサイトの開設趣旨について、「保健医療の枠組みの中でインフォームド・コンセントを推進していきたい」という思いからスタートしたとしています。サイト内で医療や健康に関する助言を行い、利用者が医療や健康に関する情報を得ることによって、医師・患者双方のコミュニケーションが高まり、インフォームド・コンセントの定着の一助となればとの思いから始まったものです。
もちろん、このサイトの助言のみを頼りに、医師の診察を受けることなく自己判断してしまうべきではありませんが、気軽にいつでも医師に相談できるというメリットは計り知れないものがあります。「健康上の悩みはあるが、病院に行くほどではない」、「近くに病院が少なく気軽に行きにくい」といった場合や、「医師の治療や診察を受けているが、病状や治療方法について尋ねにくいことがある」といった場合に、有効に活用できそうです。
最近の年金関係(納付率・年金記録問題等)の動向
◆国民年金納付率がさらに低下
社会保険庁は、2007年度における国民年金保険料の納付率が約64%となり、前年度の約66%を下回って2年連続低下となるとする見通しを明らかにしました。同庁では、近年、未納者対策としての強制徴収などに力を入れていますが、なかなか効果が現れていません。年金記録問題を背景に、制度自体への不信感が増しており、納付しない人が増えていると思われます。
低所得者に対する保険料の全額免除・一部免除の徹底などの対策を進めていった場合、納付率が「最大で24.8ポイント上昇する」とする試算結果を政府は発表していますが、納付率の上昇は現状ではなかなか難しいようです。
◆「ねんきん特別便」回答者は約半分
また、社会保険庁は、年金記録に漏れがある可能性が高い約1,030万人に3月末までに送付した「ねんきん特別便」への回答者数が、4月28日現在で約510万人であると発表しました。これは、全体の49.5%に相当します。
510万人の内訳は、年金受給者218万人(回答率73%)、現役加入者292万人(回答率40%)となっており、特別便が届いてもほったらかしにしている人が多いという実態が明らかになっています。
今月(6月23日)からは、現役の会社員などにも特別便の送付が始まる予定です。同庁の調査によれば、全体の55.7%に相当する約2,200万通は企業を経由して従業員に配布されるようです。大企業を中心に全事業所のうちの22.3%が配布に協力するとしていますが、中小企業では、事務負担から協力要請を拒んだところも多いようです。こうした場合には、直接従業員本人の住所に特別便が郵送されることになっています。◆一度却下されても新証拠があれば再審査 総務省の「年金記録確認第三者委員会」では、一度給付を却下した案件についても、その後に新たな証拠が見つかった場合には再審査を行う方針を発表しました。再審査を導入するのは、1件当たりの審査に時間をかけられないためだそうです。
一度却下されてしまった方でも、あきらめずに証拠となるものを根気よく探してみると良いかもしれません。
中小企業でも義務化! 長時間労働者に対する医師の面接指導
◆4月からは中小企業でも義務化
「長時間労働者を対象とした医師による面接指導等の実施」については、平成18年に改正された労働安全衛生法で義務化されました(同法第66条の8)。過重労働による健康障害を防止し、労働者の安全と健康の確保を推進するためです。
この面接指導等の実施については、従業員が常時50人未満の事業場についてはこれまで2年間猶予されていましたが,今年の4月からは義務化されています。つまり、すべての事業場において長時間労働者に面接指導を実施し,医師の意見を聴いて措置を講じなければならなくなったのです。
◆どんなことを行わなければならないか
面接指導は「問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うこと」とされており、対象となるのは「時間外・休日労働時間が1カ月当たり100時間を超え,かつ,疲労の蓄積が認められる者」であって、会社に申出を行った労働者です(ただし,1カ月以内に面接指導を受けた労働者で医師が面接指導を受ける必要がないと認めた場合は除かれます)。
基本的には、会社が指定した医師が行う面接指導を受けることになりますが、労働者が希望する場合は、他の医師の行う面接指導を受けることもでき、その場合は結果を証明する書面を会社に提出する必要があります。 そして、会社はその結果を記録しておく必要があります。
また、会社は、医師の意見を聴いて、必要があると認められたときは、労働者の実情を考慮しながら、以下のような措置を講じなければなりません。この考え方は健康診断(安衛法第66条の5)と同様のものです。
・就業場所の変更
・作業の転換
・労働時間の短縮
・深夜業の回数の減少
・医師の意見の衛生委員会もしくは安全衛生委員会または労働時間等設定改善委員会への報告
◆その他の留意点
なお、(1)時間外・休日労働時間が1カ月あたり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者、(2)事業場において定めた基準に該当する(時間外・休日労働時間が1カ月45時間を超えた者は対象とすることが望ましい)者についても、努力義務としての面接指導の対象となります。面接指導の対象となる労働者以外の労働者であっても、予防的な意味から、会社は必要な措置を講ずることが重要とされています。
「後期高齢者医療制度」の見直しについて
◆廃止法案が参議院で可決
75歳以上を対象に4月から導入され何かと話題になっている「後期高齢者医療制度」ですが、民主、共産、社民、国民新の野党4党は「後期高齢者医療制度廃止法案」を参議院に提出し、6月上旬の本会議で賛成多数で可決され、衆議院に送られました。これに対し、与党は、衆議院で否決や廃案とはせずに継続審議とする方針を示しています。世論に配慮するためだといわれています。
◆政府・与党の見直し・改善策が決定
政府・与党は、後期高齢者医療制度の見直し策を決めました。主な見直しの内容は以下の通りです。
<保険料軽減措置の拡充>
被保険者全員が年金収入年80万円以下の世帯については、来年度からは均等割部分の9割(今年度は8割5分)が軽減されます。
また、年金収入が153万円から210万円については、来年度からは保険料の所得比例部分を5割程度軽減するとしています。
<年金からの保険料天引きの一部見直し>
国民健康保険料を滞納せずに確実に納付してきた人については、本人口座からの引き落としが認められます。
また、年金収入が年180万円未満の人については、世帯主や配偶者らが肩代わりして口座引き落としを選択できるようになります。
天引きの見直しの実施時期については、早くても今年の10月以降のようです。
◆財源は不明確
上記の見直し・改善策は正式に決定されたものですが、今年度560億円、来年度以降360億円ともいわれる財源については、不明確との指摘があります。
また、先送りされた事項(保険料の軽減を判定する年収基準、年金天引きを免除する要件など)もあり、今後の動向が注目されるところです。
非正社員を正社員に転換させた場合に支給される助成金
◆改正パート労働法と正社員への転換
今年4月1日から施行されている改正パート労働法では、パート労働者の通常の労働者(正社員)への転換を推進するための措置を講ずるよう、事業主に義務付けています。最近では、製造業、飲食店、宿泊業、サービス業などでパート労働者を正社員へ転換させる企業も増えています。
改正法の施行を機に、非正社員を正社員化する動きはますます広がっていきそうですが、この改正にあわせて新たな助成金が創設されています。
◆非正社員の正社員化で助成金
厚生労働省は、「中小企業雇用安定化奨励金制度」を創設しました。
中小企業の事業主が、パート労働者や契約社員などの契約労働者(非正規社員)を新たに正社員として転換させる制度を就業規則などに定めて、実際に正社員に転換させた場合に、一定の金額が奨励金として支給されるものです。
◆支給額の2つのパターン <転換制度導入事業主>
新たに転換制度を導入し、かつ、この制度を利用して、直接雇用する有期契約労働者を1人以上正社員に転換させた場合に、一事業主について35万円が支給されます。 <転換促進事業主>
転換制度を導入した日から3年以内に、直接雇用する有期契約労働者を3人以上正社員に転換させた場合に、対象労働者1人について10万円が支給されます(10人を限度)。
◆支給対象となる事業主、要件
中小企業事業主で、雇用保険適用事業主であることが必要です。そして非正社員を正社員に転換させる制度を、新た(平成20年4月1日以降)に労働協約または就業規則に定め、かつ、1人以上正社員に転換させる必要があります。
なお、取扱機関は、都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)となっています。
◆長時間労働や仕事上のストレスによる精神疾患
過労や職場のストレスが原因でうつ病などの精神疾患にかかり過労自殺した(未遂を含む)として、2007年度に労災認定された人は前年度を15人上回る81人となり、 2年連続で過去最悪となりました。過労自殺者を含む精神疾患の労災認定者も268人と、前年度比3割増となっています。
厚生労働省は、「長時間労働に加え、仕事の重圧なども精神疾患の原因になる」として、労働環境の改善を求めています。
◆過労死と過労自殺
過労死や過労自殺の定義を整理してみましょう。
「過労死」は、働き過ぎが原因で、心筋梗塞や脳梗塞など心臓や脳の疾患を発症し死亡するものです。認定基準としては、「発症前1カ月に100時間または2~6カ月間に月80時間を超える時間外労働があれば関連性が強い」とされています。
「過労自殺」は、過労や職場でのストレスからうつ病などの精神疾患となり、自殺に至るものです。原則として発症前6カ月の間に、長時間労働や仕事の量・質の大きな変化、重大なミス、出向やセクハラなどの業務上の強いストレスがあったことが認定の要件となります。
今回の調査では、脳梗塞などの脳・心臓疾患で労災認定された人は前年度から1割増えて392人(うち死亡したのは142人)と、過去最悪となりました。
◆精神疾患増加の理由とその対処法
2007年度は精神疾患の労災申請数が前年度比16.2%増の952人、一方、脳・心臓疾患の申請は0.7%減の931人で、調査開始以来初めて、過労による精神疾患の申請が脳・心臓疾患を上回ることとなりました。
精神疾患の労災認定者の1カ月平均残業時間について、80時間以上だった人は111人でした。一方、20時間未満の人も72人いましたが、「長時間労働だけでなく職場のいじめや過剰なノルマなどで精神疾患になるケースもある」という声もあり、一概に時間外労働の多寡だけでは判断しにくいところです。
労働者の精神疾患が増える背景には、企業が目先の発症者対策に追われ、長時間労働が減らないという根本的問題があります。また、個人主義や「勝ち組」「負け組」といった考え方が横行し、会社の中で連帯して集団的に問題を解決する能力が低下していることも一因といえるでしょう。
精神疾患は薬だけで治るものではありません。ものの見方や感じ方を修正するカウンセリングの実施など、職場や家族が一体となって取り組んでいくことが必要です。
注意すべき職場での電話応対マナー
◆電話の応対でビジネスを円滑に
電話を取り次ぐという経験が少ないために、「○○様でいらっしゃいますか」「あいにく○○は不在でございます」などといった言葉が使えない、いわゆる『携帯電話世代』の社員が増えてきました。電話応対のマナーを知らない社員の姿も目立ちます。
気持ちのよい電話の応対は、ビジネスを円滑に進めるうえで重要な要素です。電話ではなく電子メール等で要件を済ますケースも増えている昨今ですが、職場での電話応対のマナーについて改めて考え直す機会が必要かもしれません。
◆電話を受ける場合の基本的なマナー
電話応対で最も注意すべきなのは、「横柄な受け答えをしたり、面倒くさそうに答えたりしない」ことです。会社の信用をなくしてしまったり、印象が悪化したりしかねません。
次に、「『お待ちください』と言った後、長時間待たせっぱなしにしない」ことも重要です。しばらく時間がかかりそうな場合には、いったん電話を切り、こちらからかけ直す配慮が必要です。当人が不在だったときは、先方が「またかけます」と言った場合でも、電話があった旨のメモを残します。いざ本人が電話を受けた際に、「先ほどは不在で失礼しました」という一言がないと、失礼に当たるからです。
また、電話を受けるときに特に注意したいのは、「他の人に回すのに時間がかかる」、「取り次ぐ途中に切れてしまう」といった、機器操作上の不手際がないようにすることです。そのためには、普段から電話機の操作に慣れておく必要があります。
◆電話をかける場合の基本的なマナー
まずは、「社名や氏名をはっきり名乗る」ことが大切です。また、先方は忙しい時間帯かもしれません。「昼食時間や営業時間外の電話の際は気遣いの言葉を入れる」、「『お時間よろしいでしょうか』と確認する」といったことも重要なポイントです。
電話を切るときは、受話器を静かに置きます。
◆気持ちのよい電話応対のために
電話は対面の場合と違って相手の表情や状況が見えないだけに、受け答えにも工夫をする必要があります。「呼び出し3回以内に出る」「できるだけ丁寧に話す」「はっきり話す」「声のトーンをいつもより高めにする」ことを心がける必要があります。
新入社員が研修等で電話のマナーを学ぶことも大切ですが、ベテラン社員も、先方に不快感を与えていないか、時には意識して振り返ってみることも必要です。
「メタボ健診」で生活習慣病を予防
◆4月からスタート
「太りすぎは健康に悪い」と言われますが、最近では、特に内臓脂肪による肥満が生活習慣病に大きく関わっていることが判明しています。2008年4月から、この内臓脂肪に着目した特定健診・特定保健指導、通称「メタボ健診」が始まりました。
◆メタボ健診とは
「メタボリック・シンドローム」とは、腹囲が男性85センチ以上/女性90センチ以上を基準とする「内臓脂肪による肥満」に加えて、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上が該当する状態を指します。該当者は、糖尿病などの生活習慣病の一歩手前で、脳卒中や心臓病の発症にもつながりやすい状態です。
そこで、健康診断を実施して該当者やその予備軍を探し出し、生活習慣の改善指導を受けてメタボ脱出を目指してもらうこととなります。これが「メタボ健診」です。
◆具体的な内容
メタボ健診の対象は、40~74歳の人です。政管健保をはじめ、企業の健康保険組合、市町村の国民健康保険などの公的医療保険運営者が健診・指導を実施します。
健診の結果、メタボリック・シンドロームに該当した人は、生活習慣の改善指導を受けます。最初に面談や講習を受け、その後も3~6カ月にわたって定期的に専門家から面談や電話でアドバイスを受けることになります。「腹囲は基準以上だったが、そのほかに数値が悪かったのは1項目だけである」メタボ予備軍に該当する場合は、最初の面談だけとなります。
また、各医療保険運営者には、健診結果を電子情報として蓄積することも義務化されました。国民の健康状態が把握しやすくなり、また、健診情報と患者が病院で治療を受けたときの診療情報を併せて分析した総合的な判断もしやすくなります。
◆メタボ健診の狙い
メタボ健診のそもそもの狙いは、生活習慣病の予防による医療費の抑制です。厚生労働省によると、生活習慣病の医療費は国民医療費の3分の1を占めています。医療費抑制のためには、こうした生活習慣病の発症や悪化を予防することが欠かせません。健診・指導費はかかりますが、発症または悪化前の生活指導による改善により、結果的に将来の医療費を抑制する考えです。
始まったばかりの「メタボ健診」。有効であるのか、それとも制度の見直しの必要があるのか、もうしばらく注視する必要がありそうです。
外国人研修制度・技能実習制度の問題点
◆問われる制度のあり方
開発途上国への国際協力のあり方について、今、自衛隊の海外派遣の是非を含め、活発な意見交換がなされています。そんな中にあって、「外国人研修制度・技能実習制度」のあり方も問われています。
◆外国人研修制度・技能実習制度とは
外国人研修制度・技能実習制度は、開発途上国への国際貢献と国際協力を目的として、諸外国の青壮年労働者を受け入れて、日本の技術・技能・知識の習得を支援することを目的とする制度で、財団法人国際研修協力機構が推進団体となり、民間団体や企業に対して総合的な支援・援助や適正実施の助言・指導を行っています。
基本的には、民営または国公営の送出し機関から送り出された研修生(技能実習生)に来日してもらい、日本側の受入れ機関において研修を行って、日本の高い技術の習得を支援します。
研修生は、「研修」の在留資格で入国します。日本国内の受入れ先が決まっていないと入国できません。研修生の滞在期間は原則1年以内。研修の結果、一定以上の技能水準に達したことが認められた場合、在留資格が「研修」から「特定活動」に変わり、新たに受入れ企業と雇用契約を結んで、継続してさらに2年を限度に就労することができます。これが「技能実習」です。技能実習の対象職種には、63職種116作業が認定されています。
◆急増する問題点
外国人研修制度・技能実習制度は、単なる経済援助とは性格の異なる「人材育成協力」に主眼を置いた制度である反面、問題点も含んでいます。受入れ企業・団体による「不正行為」です。
外国人研修・技能実習制度に基づいて外国人を受け入れた企業・団体のうち、不当な低賃金で働かせるなどの「不正行為があった」と認定された件数は、2007年度は449件にのぼりました。これは前年の229件の約2倍で、2003年の調査開始以来、過去最悪の結果です。
不正行為のうち最も多かったのは、賃金不払いなどの「労働関係法規違反」で178件、また、受入れを申請した企業と実際に就労した企業が異なる「名義貸し」も115件にのぼっています。旅券や通帳を取り上げるなど、「悪質な人権侵害行為」も70件ありました。日本人労働者を確保できない企業、外国製品との価格競争にさらされている企業が、本来の目的である国際貢献ではなく、低賃金労働力の確保のために制度を利用しているのです。また、研修生の側でも、出稼ぎのつもりで来日する者がいて、失踪者や不法残留者が増加しています。
こうした問題点に対して、制度の見直しや改善が迫られているのです。
転職が原因で支給漏れの多い企業年金
◆約124万件の支給漏れが発覚
昨今の年金問題で国民年金や厚生年金の公的年金への関心が高まる一方、忘れられがちなのが企業年金です。加入者からの請求がなかったために2007年には約124万件の支給漏れが発覚した企業年金。特に転職時には、特に注意する必要があります。
◆企業年金の種類
企業年金は2種類に大別できます。1つは将来の給付額をあらかじめ約束する「確定給付型」、もう1つは年金資産の運用次第で給付額が変わる「確定拠出型」です。
確定給付型の企業年金には、厚生年金基金や確定給付企業年金、税制適格退職年金(2012年に廃止)などがあります。拠出した掛金の累計額とその運用収益であらかじめ年金額が決定されていることから、加入員が老後の計画を立てやすく、加入員数が伸びていました。福利厚生策として、企業が独自に自社年金を設けるケースもありました。
しかし、バブル崩壊等により運用環境が悪化し、大半の企業が、予定していた運用益を確保できずに積立不足に陥るという問題が発生しました。企業は不足分を補填しなければならず、運用失敗の負担が重くのしかかるケースもしばしば起こりました。
確定拠出型の企業年金は、こうした確定給付型の問題を解決できる特色を持っている制度で、2001年に誕生しました。掛金を誰が拠出するかの違いにより「企業型」と「個人型」がありますが、企業型の場合、企業が掛金を拠出し、運用は従業員が自ら行います。運用を加入者が個々に行うため、企業には確定給付型が持つ補填リスクがありません。
従業員にとっても、年金資産が個人別に区分され、残高の把握や転職時の資産の移行が容易だというメリットがあります。こうしたメリットゆえ、導入企業も徐々に増加する傾向です。
◆転職時の注意事項
さて、転職時には、これらの企業年金に対してどのような注意が必要なのでしょうか。
例えば厚生年金基金の場合、会社の定める一定期間を超えていれば基本的にはその会社で運用を続け、期間が満たないときには運用は企業年金連合会に移ります。転職経験が多く、以前の勤め先の企業年金について覚えていない場合、まずは企業年金連合会に問い合わせれば、どの部分が連合会に移ったのかわかります。それでも不明のときは、各企業の基金に問い合わせることが必要です。
確定給付型の企業年金は、2005年以降、転職先の会社が受け入れる体制を整えていれば、年金資産の移管が可能になりました。また、確定給付型から確定拠出型への移行もできます。
企業型の確定拠出年金は、転職先にも同様の制度があれば、それまでの年金資産を引き継ぐことができます。ただし、転職先に制度がない場合は、個人型の確定拠出年金として、国民年金基金連合会に年金資産を移管する必要があります。退職から半年以内に移管手続をしないと、運用を放棄したとみなされ、運用で得た利益を受け取ることができなくなりますので、注意が必要です。
医師が身近になる!? 健康相談サイト
◆深刻な医師不足・病院不足
地方や過疎化の進む地域を中心に、医師不足や病院不足が深刻化しています。そんな中、インターネットや携帯端末を利用して、医師が医療や健康に関する様々な疑問に答えてくれる、全国保険医団体連合会(保団連)による「健康相談サイト」が4月から開設されました。地域に関係なくいつでも気軽に医師に相談できるこのサイトが、今注目されています。
保団連とは、1969年に結成された医師・歯科医師の団体で、その会員数は10万人以上(2008年5月1日現在)にのぼります。
◆現役医師が答える健康相談
この健康相談サイトでは、無料の会員登録を行った利用者が健康上の悩みをサイトに送って医師に相談できます。また、質問者と医師が承諾した内容は、一般にも公開されます。サイトには「内科」「外科」「小児科」「産婦人科」「歯科」などの16の診療科と「医療制度」「その他」を合わせた、18項目の検索ボタンが設定されており、この検索ボタンの選択をするかキーワードの入力を行えば、該当分野の過去の質問内容と回答(Q&A)について自由に閲覧できる仕組みになっています。
閲覧できるQ&Aの内容がかなり豊富なうえ、質問にはそれぞれの専門分野の医師が答えてくれるので、安心して利用できます。
◆上手なサイトの活用を
このサイトは、保団連が、従来あった相談サイト「バーチャルドクター」をリニューアルし、4月から開設したものです。 保団連は、このサイトの開設趣旨について、「保健医療の枠組みの中でインフォームド・コンセントを推進していきたい」という思いからスタートしたとしています。サイト内で医療や健康に関する助言を行い、利用者が医療や健康に関する情報を得ることによって、医師・患者双方のコミュニケーションが高まり、インフォームド・コンセントの定着の一助となればとの思いから始まったものです。
もちろん、このサイトの助言のみを頼りに、医師の診察を受けることなく自己判断してしまうべきではありませんが、気軽にいつでも医師に相談できるというメリットは計り知れないものがあります。「健康上の悩みはあるが、病院に行くほどではない」、「近くに病院が少なく気軽に行きにくい」といった場合や、「医師の治療や診察を受けているが、病状や治療方法について尋ねにくいことがある」といった場合に、有効に活用できそうです。
最近の年金関係(納付率・年金記録問題等)の動向
◆国民年金納付率がさらに低下
社会保険庁は、2007年度における国民年金保険料の納付率が約64%となり、前年度の約66%を下回って2年連続低下となるとする見通しを明らかにしました。同庁では、近年、未納者対策としての強制徴収などに力を入れていますが、なかなか効果が現れていません。年金記録問題を背景に、制度自体への不信感が増しており、納付しない人が増えていると思われます。
低所得者に対する保険料の全額免除・一部免除の徹底などの対策を進めていった場合、納付率が「最大で24.8ポイント上昇する」とする試算結果を政府は発表していますが、納付率の上昇は現状ではなかなか難しいようです。
◆「ねんきん特別便」回答者は約半分
また、社会保険庁は、年金記録に漏れがある可能性が高い約1,030万人に3月末までに送付した「ねんきん特別便」への回答者数が、4月28日現在で約510万人であると発表しました。これは、全体の49.5%に相当します。
510万人の内訳は、年金受給者218万人(回答率73%)、現役加入者292万人(回答率40%)となっており、特別便が届いてもほったらかしにしている人が多いという実態が明らかになっています。
今月(6月23日)からは、現役の会社員などにも特別便の送付が始まる予定です。同庁の調査によれば、全体の55.7%に相当する約2,200万通は企業を経由して従業員に配布されるようです。大企業を中心に全事業所のうちの22.3%が配布に協力するとしていますが、中小企業では、事務負担から協力要請を拒んだところも多いようです。こうした場合には、直接従業員本人の住所に特別便が郵送されることになっています。◆一度却下されても新証拠があれば再審査 総務省の「年金記録確認第三者委員会」では、一度給付を却下した案件についても、その後に新たな証拠が見つかった場合には再審査を行う方針を発表しました。再審査を導入するのは、1件当たりの審査に時間をかけられないためだそうです。
一度却下されてしまった方でも、あきらめずに証拠となるものを根気よく探してみると良いかもしれません。
中小企業でも義務化! 長時間労働者に対する医師の面接指導
◆4月からは中小企業でも義務化
「長時間労働者を対象とした医師による面接指導等の実施」については、平成18年に改正された労働安全衛生法で義務化されました(同法第66条の8)。過重労働による健康障害を防止し、労働者の安全と健康の確保を推進するためです。
この面接指導等の実施については、従業員が常時50人未満の事業場についてはこれまで2年間猶予されていましたが,今年の4月からは義務化されています。つまり、すべての事業場において長時間労働者に面接指導を実施し,医師の意見を聴いて措置を講じなければならなくなったのです。
◆どんなことを行わなければならないか
面接指導は「問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うこと」とされており、対象となるのは「時間外・休日労働時間が1カ月当たり100時間を超え,かつ,疲労の蓄積が認められる者」であって、会社に申出を行った労働者です(ただし,1カ月以内に面接指導を受けた労働者で医師が面接指導を受ける必要がないと認めた場合は除かれます)。
基本的には、会社が指定した医師が行う面接指導を受けることになりますが、労働者が希望する場合は、他の医師の行う面接指導を受けることもでき、その場合は結果を証明する書面を会社に提出する必要があります。 そして、会社はその結果を記録しておく必要があります。
また、会社は、医師の意見を聴いて、必要があると認められたときは、労働者の実情を考慮しながら、以下のような措置を講じなければなりません。この考え方は健康診断(安衛法第66条の5)と同様のものです。
・就業場所の変更
・作業の転換
・労働時間の短縮
・深夜業の回数の減少
・医師の意見の衛生委員会もしくは安全衛生委員会または労働時間等設定改善委員会への報告
◆その他の留意点
なお、(1)時間外・休日労働時間が1カ月あたり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者、(2)事業場において定めた基準に該当する(時間外・休日労働時間が1カ月45時間を超えた者は対象とすることが望ましい)者についても、努力義務としての面接指導の対象となります。面接指導の対象となる労働者以外の労働者であっても、予防的な意味から、会社は必要な措置を講ずることが重要とされています。
「後期高齢者医療制度」の見直しについて
◆廃止法案が参議院で可決
75歳以上を対象に4月から導入され何かと話題になっている「後期高齢者医療制度」ですが、民主、共産、社民、国民新の野党4党は「後期高齢者医療制度廃止法案」を参議院に提出し、6月上旬の本会議で賛成多数で可決され、衆議院に送られました。これに対し、与党は、衆議院で否決や廃案とはせずに継続審議とする方針を示しています。世論に配慮するためだといわれています。
◆政府・与党の見直し・改善策が決定
政府・与党は、後期高齢者医療制度の見直し策を決めました。主な見直しの内容は以下の通りです。
<保険料軽減措置の拡充>
被保険者全員が年金収入年80万円以下の世帯については、来年度からは均等割部分の9割(今年度は8割5分)が軽減されます。
また、年金収入が153万円から210万円については、来年度からは保険料の所得比例部分を5割程度軽減するとしています。
<年金からの保険料天引きの一部見直し>
国民健康保険料を滞納せずに確実に納付してきた人については、本人口座からの引き落としが認められます。
また、年金収入が年180万円未満の人については、世帯主や配偶者らが肩代わりして口座引き落としを選択できるようになります。
天引きの見直しの実施時期については、早くても今年の10月以降のようです。
◆財源は不明確
上記の見直し・改善策は正式に決定されたものですが、今年度560億円、来年度以降360億円ともいわれる財源については、不明確との指摘があります。
また、先送りされた事項(保険料の軽減を判定する年収基準、年金天引きを免除する要件など)もあり、今後の動向が注目されるところです。
非正社員を正社員に転換させた場合に支給される助成金
◆改正パート労働法と正社員への転換
今年4月1日から施行されている改正パート労働法では、パート労働者の通常の労働者(正社員)への転換を推進するための措置を講ずるよう、事業主に義務付けています。最近では、製造業、飲食店、宿泊業、サービス業などでパート労働者を正社員へ転換させる企業も増えています。
改正法の施行を機に、非正社員を正社員化する動きはますます広がっていきそうですが、この改正にあわせて新たな助成金が創設されています。
◆非正社員の正社員化で助成金
厚生労働省は、「中小企業雇用安定化奨励金制度」を創設しました。
中小企業の事業主が、パート労働者や契約社員などの契約労働者(非正規社員)を新たに正社員として転換させる制度を就業規則などに定めて、実際に正社員に転換させた場合に、一定の金額が奨励金として支給されるものです。
◆支給額の2つのパターン <転換制度導入事業主>
新たに転換制度を導入し、かつ、この制度を利用して、直接雇用する有期契約労働者を1人以上正社員に転換させた場合に、一事業主について35万円が支給されます。 <転換促進事業主>
転換制度を導入した日から3年以内に、直接雇用する有期契約労働者を3人以上正社員に転換させた場合に、対象労働者1人について10万円が支給されます(10人を限度)。
◆支給対象となる事業主、要件
中小企業事業主で、雇用保険適用事業主であることが必要です。そして非正社員を正社員に転換させる制度を、新た(平成20年4月1日以降)に労働協約または就業規則に定め、かつ、1人以上正社員に転換させる必要があります。
なお、取扱機関は、都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)となっています。
2008/06/02
6月の事務所便り
新たに導入された「診療5分ルール」
◆4月からスタート
「3分診療」という言葉にあるように、医師の診察時間が短いことに不満を持つ患者さんは多いようです。こうした状況を変えようと、2008年の4月からいわゆる「診療5分ルール」がスタートしました。診療時間が5分を超えるかどうかにより、医療費が変わることになります。
◆診療所や中小病院が対象
手術や検査など、すべての医療行為には「診療報酬」という全国共通の価格がついています。この診療報酬は2年ごとに見直されますが、「5分ルール」は4月に行われた診療報酬改定に盛り込まれました。
対象となるのは、診療所や一般病床数が200床未満の中小病院です。2回目以降の受診(再診)の場合、従来は基本の再診料(病院600円、診療所710円)に外来管理加算(520円)を診療時間に関係なく上乗せできましたが、改定後は「診察時間が5分以上」という条件がつきました。例えば、会話がほとんどなく常用薬の処方箋を出すような「薬だけ診療」には加算がつかず、現役世代の患者なら、自己負担(3割)は約150円安くなります。
◆「5分」の算定方法は?
では、どうやって「5分」という時間を計るのでしょうか。厚生労働省は「丁寧な診察を求めることが狙いであり、ストップウォッチや砂時計などを使って厳密に計ることを求めているわけではない」と説明しています。
不正を防ぐため、医師には診察内容や所要時間をカルテに記載させます。1時間に12人以上の患者を診察したり、5分以上を要したりする診察内容だったかどうかがチェックの対象になります。また、今回の診療報酬改定では、精神科外来の再診にも時間制が導入されました。カウンセリングなどの精神療法が「5分未満」、「5分以上30分未満」、「30分以上」で医療費が変わるようになっています。
◆制度導入で何が変わるか?
「5分ルール」に関しては、「丁寧な診療が期待できる」という患者側の期待に対して、医師側からは、「時間要件を満たして診療時間内に診察を終えようとすれば、1日に診察する患者数を削減せざるを得なくなる」といった意見や、「患者数を減らせば経営が悪化するし、時間要件を満たしてすべての患者を診察しようとすれば診察時間を大幅に延ばさねばならなくなり、医師の疲弊や看護師の労働強化につながる」といった意見も出ています。
賛否両論の中でスタートした「5分ルール」。いずれにせよ、新しい医療のあり方に一石を投じることになりそうです。
「新型インフルエンザ」への対策
◆政府による対策は?
新型インフルエンザへの政府の対策づくりが急ピッチで進んでいます。海外からの流入を防ぐ水際対策や国民へのワクチン事前摂取計画等を公表し、4月下旬には対策を実行に移す改正法も成立しています。
◆行動計画と具体的な対策
政府は2005年に新型インフルエンザに備えた行動計画を策定しました。また、2007年3月には、その計画に基づくガイドラインも公表しています。
2005年以降の取組みの内容は以下の通りです。
1.都道府県における対策本部の設置、行動計画の策定
2.厚生労働省を中心とした関係府省庁による対策を迅速・確実に実施するためのガイドラインの策定 3.農林水産省による主要国際空港における鳥インフルエンザ発生国からの入国者に対する靴底消 毒の徹底
4.新型インフルエンザ・ワクチンの生産に関する緊急調査研究
5.タミフル等必要物資の備蓄・配付、研究者・医療関係者・動物衛生専門家の能力強化、インフルエンザ・ワクチン開発支援の国際協力の推進
◆なぜ急に対策が進んだのか?
インフルエンザ流行の危機は、急に差し迫ったわけではありません。鳥インフルエンザウイルス「H5N1型」の人への感染も2006年がピークでした。ではなぜ、政府の対策が一気に進んだのでしょうか。
「国家の安全保障の問題である」という認識を欠き、欧米よりも鈍い政府の反応にしびれを切らした専門家らが、様々な手法で問題提起し、今年になってやっと政府の動きが活発になった感があります。
◆これからの課題は?
今後の課題としては、水際対策で流入を遅らせることはできても、被害を免れることは難しいことが挙げられます。「H5N1型」の鳥インフルエンザの流行が、インドネシアやベトナム、中国などに集中しているため、大流行が起きれば、先進国では日本が欧米より先に巻き込まれる可能性は高いです。ワクチンの事前摂取もどれだけ効果があるのか未知数です。
流行時に医師やベッド、人工呼吸器などをどのように確保するのか、また、備蓄量に限りのあるワクチンや抗ウイルス薬をどのような順番で投与していくのか、具体策の策定が急がれます。
注目を集める「キャリア形成促進助成金」
◆4月から制度改正
キャリア形成促進助成金制度とは、企業内における労働者のキャリア形成の効果的な促進のため、その雇用する労働者を対象として、目標が明確化された職業訓練や職業能力評価の実施、またキャリア・コンサルティングの機会の確保を行う事業主に対して助成される制度です。
2008年度4月よりこの制度が改正され、にわかに注目を集めています。
◆助成率の引上げと対象者の拡充
今回の改正の主な目的は、職業訓練等を実施するにあたり費用面の負担が大きい中小企業に対する支援の強化、および職業能力形成機会に恵まれない者を新たに有期雇用に雇い入れ有期実習型による組合せ訓練を実施する事業主への支援です。
まず、専門的な訓練への助成率が3分の1から2分の1(中小企業)へと引き上げられました。併せて、認定実習併用職業訓練への助成率も中小企業が3分の1から2分の1、大企業は4分の1から3分の1へと、それぞれ引き上げられました。
対象者も拡充され、短時間等労働者への訓練に対する助成および認定実習併用職業訓練に対する助成について、それぞれ、雇用保険被保険者だけでなくこれから雇用保険者になろうとする者もその範囲となりました。
また、新たな制度として、正社員になるには当該有期実習型訓練を受講することが適切であり、職業能力形成機会に恵まれなかった者として、キャリア・コンサルタントが認めた者を対象とした有期実習型訓練に対する助成も実施されることとなりました。
◆活用のための注意点
上記の助成金制度を活用するためには、様々な条件を満たしている必要があります。代表的なものとしては、「雇用保険の適用事業主であること」、「職業能力開発推進者を選任・届出していること」、「労働組合等の意見を聴いて計画を作成し労働者に周知していること」「過去2年間の労働保険料滞納や過去3年間の助成金の不正受給がないこと」等があります。
また、「職業能力開発休暇を与える場合は、その期間中に労働協約または就業規則に定めた賃金を支払っていること」や「事業主命令による職業訓練については、通常の賃金を支払っていること」も定められています。短時間労働者に対する訓練では「正社員への転換を行うこと」も条件となります。
訓練内容に関しては、あくまでも労働者個人のキャリア形成促進に役立つものが対象です。一般的なマナー研修や新入社員研修、またOJTで実施するもの等は対象になりませんので注意が必要です。
未成年者をアルバイトなどで雇う場合の注意点
◆雇用に関するトラブルに注意!
人材難と言われる昨今、高校生などの年少者や未成年者のアルバイト等は、貴重な労働力となっています。しかし、社会的経験の浅い年少者や未成年者の雇用はトラブルにつながりやすい危険性もあります。
採用の際や労働に関して、どのようなことに注意しなければならないのでしょうか。
◆親の許可が必要なのか?
ある会社からの質問で、「高校生のアルバイトを採用するにあたり、履歴書の親権者の署名捺印欄が空白ですが、何か問題があるでしょうか?」という相談がありました。
未成年者の雇用についてはまず、労働基準法第58条第1項 の「親権者又は後見人は、未成年者に代って労働契約を締結してはならない」といった部分が思い浮かびます。また、賃金についても、未成年者であっても独立して受け取ることができます。そう考えると、特に親権者の承認が必要とは考えにくいものです。
しかし、労働基準法第58条第2項では、「親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向ってこれを解除することができる」とあります。また。民法第5条第1項では「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」とあり、そして第2項では「前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる」とあります。つまり、親権者(法定代理人)の同意がない労働契約は、親権者によって取り消す(結果として、突然アルバイトを辞めてしまい会社に迷惑がかかる)ことがあり得るのです。したがって、履歴書の親権者の署名捺印は、トラブル防止のためにも記入してもらい、親権者の同意を得ておいたほうがよいでしょう。
◆年齢を証明する書面、身元保証人
また、年少者(18歳未満)の場合、年齢を証明する書面(住民票記載事項証明書など)を、事業場に備え付ける必要があります。また、万一の際のトラブル防止に備え、身元保証人をつける(できれば複数)ことも大切です。併せて身元保証人の連絡先も把握しておき、万一の際に連絡できる体制を作っておいたほうがよいでしょう。
◆その他の注意点
他に注意するポイントとしては、年少者はほとんどの変形労働時間制(例外あり)や午後10時以降の業務等も禁止されており、注意が必要です。そして、未成年者の場合、特に注意しなくてはならないのが、飲酒や喫煙です。飲酒や喫煙が発覚した際にどのような処置をとるかといったことは、労働契約時に書面および口頭でしっかり確認しておくことが望ましいでしょう。
違法派遣・偽装請負の一掃へ向けた取組み
◆「緊急違法派遣一掃プラン」がスタート
厚生労働省は、社会問題化している違法派遣や偽装請負を一掃するため、「緊急違法派遣一掃プラン」を4月からスタートさせました。新たに制定した「日雇派遣指針」や「労働者派遣法施行規則の改正」等をもとに、労働者派遣制度の周知と指導を強化していく方針です。
◆「労働者派遣法施行規則」のポイント
労働者派遣法施行規則の改正では、まず、派遣元が年1回労働局に提出する事業報告書の様式に、「日雇派遣労働者の数」、「従事した業務にかかる派遣料金」、「日雇派遣労働者の賃金」等を追加しました。また、派遣先責任者については、労働者派遣が1日を超えない場合でも選任を義務化し、派遣先管理台帳の作成も義務化しています。
その他にも、派遣先管理台帳の記載事項に、「派遣労働者が従事した事業所の名称及び所在地その他派遣就業した場所」を追加し、また、派遣元事業主への通知事項には、それらに加え「従事した業務の種類」も追加しました。
◆「日雇派遣指針」のポイント
日雇派遣指針は、日々または30日以内の期間を定めて雇用される者(30日以内の期間を定めた雇用契約を更新して通算30日を超えるような場合も対象となる)を対象とした、派遣元事業主および派遣先が講ずべき措置を定めたものです。
今回、厚生労働省から発表された指針は10項目ほどです。主なものとしては、まず「日雇派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置」として、事前の就業条件の確認や雇用契約の期間の長期化、契約解除の際に就業のあっせんや損害賠償等の適切な措置を図ること等が挙げられます。また、「労働者派遣契約に定める就業条件の確保」では、派遣先の巡回や就業状況の報告により、契約に定められた就業条件の確保が望まれています。
また、「労働・社会保険の適用の促進」「教育訓練機会の確保」「関係法令等の関係者への周知」「安全衛生に係る措置」などの、いずれも「派遣労働者や日雇労働者だから」という理由でおざなりにされがちだった分野についても、今回の指針では着目されています。「情報の公開」では、労働者派遣の実績、派遣料金の額、派遣労働者の賃金等の事業運営の状況に関する情報の公開が求められ、これにより、派遣労働者側も情報による選択をしやすくなると思われます。
◆今後の動きは?
今回の改正の多くは、日雇派遣に関するものですが、厚生労働省はこれを機会に期間制限業務や26業務の適正な運用等を含め、従来の違法派遣についても指導と監督を強化する方針を打ち出しています。
各自治体で広がる子供の医療費助成
◆少子化対策・子育て支援の一環
少子化対策の一環として、小中学生などに対して医療費の自己負担が軽くなるよう助成金を出し、子育てを支援する自治体が増えてきています。
助成の対象年齢や条件などの内容が自治体ごとに異なるうえ、制度の拡充が急速に進んでいるため、住んでいる自治体の助成メニューを把握しておく必要があります。
◆子育て支援対策として
東京都港区では、独自の助成制度に基づき、2005年4月から小中学生の入院費と通院費を無料にしています。健康保険に加入する区民であれば、外国人でも助成を受けられます。助成を受けるには区役所に「子ども医療証」の交付を申請し、医療機関で保険証とともに提示します。この医療費助成をはじめとする子育て支援対策の充実により、2004年度には0.78%と低かった合計特殊出生率は2006年度には0.97%まで持ち直しました。
このような子供の自己負担が軽くなるよう独自の助成制度を設ける自治体は増えています。名古屋市では、2008年1月から小学校高学年の入院費が無料となり、さらに8月からは中学生までその範囲が広がります。
◆各地域で内容に差
助成内容については、各自治体の財政状況やトップの方針によってまったく異なります。また、基本的な内容以外に、助成対象年齢が入院と通院で異なるケース(前述の名古屋市など)や、国が定める児童手当の支給要件に準拠した所得制限があったり、一部自己負担金が必要になったりする自治体もあります。例えば浜松市では、未就学児が対象の入院費への助成を4月から小中学生まで拡大しましたが、入院1日当たり500円の自己負担が求められています。また、窓口での支払いがない「現物給付」方式なのか、窓口で支払いを済ませたうえで自治体に申請して払い戻しを受ける「償還払い」方式なのかも、注意するポイントです。
住民が歓迎する医療費助成制度ですが、課題もあります。自己負担の無料化は安易な受診を助長し医療費の膨張を招くおそれがあります。また、助成を拡充し過ぎると、本当に医療が必要な子供の診療が後回しにされかねない危険性も含んでいます。
せっかく拡充された自治体の助成制度の恩恵を、多くの住民が長期的に公平に受けられるようにするには、住民側にも「軽症なら様子を見る」「家庭での健康作りを行う」などの姿勢が求められるといえるでしょう。
夫の年金を強制的に分割する「3号分割制度」
◆「離婚分割」とは異なる「3号分割」
平成19年4月から、夫婦が離婚した場合に厚生年金を分割する制度(「離婚分割制度」)が始まって大きな話題を呼びましたが、平成20年4月からは新たに「3号分割制度」がスタートしました。
「3号分割制度」は「夫が厚生年金保険の被保険者、妻が第3号被保険者」という夫婦が離婚した場合、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間について、妻からの請求により、夫の特定期間(特定被保険者が被保険者であった期間であり、かつ、その被扶養配偶者が当該特定被保険者の配偶者として第3号被保険者であった期間)中の被保険者期間の標準報酬を自動的に2分の1に分割するというものです。
この「3号分割」は、「離婚分割」のように夫婦間の合意は必要ないのが大きな特徴です(なお「離婚分割」の場合であっても、按分割合等についての合意は必要です)。
◆保険料は夫婦が共同して負担したもの
標準報酬を自動的に2分の1にするという考え方は、「第3号被保険者を配偶者とする第2号被保険者の保険料は夫婦が共同して負担したものである」という基本的認識を根拠にしています。
なお、平成20年4月以後の「離婚分割」についてですが、「3号分割」をまず行ったうえで「離婚分割」を行う必要があります。「3号分割」のみの請求も可能とされています。
また、複数回結婚・離婚等をした場合には、それらの特定期間を通算して3号分割の請求を行うことはできません。それぞれの離婚等ごとにその請求期限内に3号分割の請求を行わなければならないのです。
◆「離婚分割」の申立てはどのぐらいあったか?
「離婚分割」の申立ては、制度開始時から昨年末までの9カ月間で8,322件あったことが最高裁判所の集計で明らかになっています。1カ月平均800~1,000件で推移しており、離婚調停・訴訟に合わせて申し立てられたケースが7,479件あり、合意に至らずに審判などに持ち込まれたケースが843件あったそうです。
今後、果たして「3号分割」の申立てはどのぐらいあるのでしょうか? また、この制度のスタートにより離婚の件数にも影響を与えるのか、注目したいところです。
若手社員はどんなことを考えているのか?
◆「今の会社に定年まで!」
社会経済生産性本部が今年入社した新入社員を対象に行った意識調査(約2,700人が回答)で、「今の会社に一生勤めようと思っている」と回答した人が5割近く(47.1%)もいたそうです。この数字は1990年の調査開始以来、最も高い数字とのことです。
◆「3年以内に辞める!」
これに対し、カシオ計算機が25歳の会社員を対象にインターネット上で行った調査(596人が回答)で、3年以内に今いる会社を辞めようと思っている若手会社員が約4割いることが明らかになりました。「定年まで辞めない」と回答した人はわずか12%だったそうです。
調査の仕方や回答者数が異なるため、上記2つの調査結果を単純に比較することはできないかもしれませんが、新入社員の意識と数年働いた社員の意識とでは、かなり異なってくるということでしょうか。
あなたの会社の若手社員は、「今の会社に定年まで!」「3年以内に辞める!」どちらの考え方が多いでしょうか?
◆上司とのコミュニケーション
また、日本能率協会が新入社員を対象に行った意識調査(1,334人が回答)では、「上司との人間関係構築のために有効だと思うこと」(複数回答)という問いに対して、上位から「飲み会への参加」(89%)、「社員旅行」(70%)、「運動会」(50%)という結果が出たそうです。
社員旅行や運動会を行う企業は以前と比べると少なくなっていると思いますが、社内コミュニケーションを図るために、これらを復活させる動きも一部の企業であるようです。
問題噴出の「後期高齢者医療制度」
◆低所得なのに保険料増!?
後期高齢者医療制度(長寿医療制度)に関するマスコミ報道が跡を絶ちません。
厚生労働省は当初、「低所得者は保険料負担が軽くなる」と説明してきましたが、国民健康保険(国保)から移行した低所得の夫婦世帯の多くで、保険料負担が増えている可能性が高いことが明らかになりました。
これまで同省は、全国の市町村の8割が採用している算定方式を用いた試算により、同制度の保険料は国保のときよりも減ると説明していましたが、この算定方式が適用されるのは国保の加入者数で見ると5割に満たないことから、試算方法を見直すほか、市区町村ごとの実態調査を実施するようです。
◆1万2,000人に新保険証が届かない
保険証の問題も深刻です。厚生労働省は、新たな保険証が届いていない高齢者が5月1日の時点で約1万2,000人いることを発表しました。
転居の届出をしていないために行方がわからなくなっている人も多いそうで、同省では、未着の場合には引き続き古い保険証や免許証で医療が受けられるように医療機関に要請するとしていますが、すべての保険証が届くのはまだまだ先のことのようです。
◆障害者が事実上「強制加入」
寝たきりなどの理由から障害者と認定された人が後期高齢者医療制度に加入しないと医療費補助を打ち切る措置をとっている自治体があることもわかっています。
この措置をとっているのは10道県(北海道、青森、山形、茨城、栃木、富山、愛知、山口、徳島、福岡)で、任意とされているはずの障害者の加入が「事実上強制となっている」との批判が起きつつあるようです。
◆保険料は7年後に4割増!
厚生労働省は、本人負担の保険料が7年後には約4割も増えると試算しています。現役世代の負担が大きくならないよう、高齢者の負担割合を引き上げるのがその理由であり、2008年度は年額6万1,000円の保険料が2015年度には約39%増の8万5,000円になると見込まれています。
◆果たして制度の見直しはあるのか?
野党4党は、後期高齢者医療制度の廃止法案を共同で参議院に提出し、早期可決を目指す意向を示しています。また、与党である公明党でも制度の見直し(低所得者の保険料引下げ、保険料天引きの廃止など)に着手しているといわれています。
「年金記録問題」関連での新たな動き
◆年金記録訂正後の見込額を示す「仮計算書」を発行へ
先日、舛添厚生労働大臣は、「ねんきん特別便」が到着した受給者が社会保険事務所で年金記録を訂正した際に、訂正後はどのぐらい年金額が変動するかの試算結果を示した「仮計算書」を発行することを明らかにしました。
今月からこの「仮計算書」を発行するとしており、すでに訂正が終了している人にも発行されるそうです。
◆記録訂正で年金減額となる場合の対応
新たに年金記録が判明した場合、年金記録を訂正することにより「年金増額」となるのが一般的ですが、「年金減額」となる場合もあります。そのような場合、これまでは窓口の職員により、減額したりしなかったりと対応がまちまちだったようですが、「減額とするのは合理性に欠ける」との理由から、基準が統一されることになりました。
社会保険庁は、上記のように減額となる場合には「修正なし」として取り扱って受給額が減らないようにする方針を決定しました。同庁は、今月からこの措置を実施するよう全国の社会保険事務所に指示を出したそうです。
◆年金保険料の過払いを通知へ
また、社会保険庁は、年金を満額受給するのに必要な期間を超えて保険料を支払った人に対して、何らかの通知を行うことを検討しているようです。
今月から、過払いの申出をした人に対しては過払い分の保険料の返還を開始しましたが、申出を前提とした対応自体を改めることとしました。しかし、現行のシステムを改善するのには1年程度かかるため、実施されるのはまだ先になりそうです。
◆「ねんきん特別便」いまだに55万通が未着
上記のように、受給者や被保険者のための対策がいろいろと講じられています。
しかし、「宙に浮いた年金記録」の持ち主である可能性が非常に高い約1,030万人に送付された「ねんきん特別便」については、全体の約5.3%に相当する約55万通が未着となっているそうです。「年金記録問題」の収束にはまだまだ時間がかかりそうです。
今国会に提出されている主な労働関係改正法案
◆通常国会の会期は6月15日まで
ここでは、現在開会中の通常国会に提出されている、企業に影響を与えると思われる労働関係の改正法案についてみていきます。
◆中小企業にも障害者雇用納付金を義務化
障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)の一部を改正する法律案が提出されています。
主な内容は、現在は障害者の雇用者数が法定雇用率(1.8%)に満たない従業員「301人以上」企業に課されている納付金の支払義務を、順次「201人以上」、「101人以上」の企業へも拡大するという内容です。また、障害者雇用義務の対象となる労働者に、週の労働時間が20時間以上30時間未満の「短時間労働者」も追加されることとされています。
この法案が可決されれば、2009年4月1日の施行予定です。ただし、納付金支払義務が課される企業の拡大については、「201人以上」へは2010年7月、「101人以上」へは2015年7月とされています。
◆「行動計画」提出義務付け企業を拡大へ
「ワークライフバランス」の実現に向けて、次世代育成支援対策推進法(次世代法)の改正案も今国会に提出されています。
従業員の子育てを支援する「仕事と育児の両立支援に関する行動計画」(一般事業主行動計画)の策定・届出を義務付ける対象企業を、現行の従業員「301人以上」の企業から「101人以上」の企業に拡大するのが主な内容です。この改正により、約4万2,000社が新たに策定・届出義務を負うことになると推計されています。また、「行動計画」の公表・従業員への周知も義務付けられるようになります(策定・届出義務のある事業主のみ)。
この改正法案自体の施行予定日は2009年4月1日となっていますが、「行動計画」の策定・届出義務付け企業の拡大は、2011年4月1日の予定です。
◆労働基準法の改正案
月の時間外労働が一定の時間を超えた場合に、高い割増賃金率を適用することなどを内容とする労働基準法の一部改正案も国会で審議中です。主な内容は以下の通りです。
・月の時間外労働時間が45時間を超え80時間までの場合の割増賃金率については、2割5分以上の率で労使協定で定める率とする(努力義務)。
・月の時間外労働時間が80時間を超えた場合の割増賃金については、5割増とする。
2008/05/02
5月の事務所便り
処分決定前の自宅謹慎期間を無給扱いにできるか?
◆重要情報を他社へ漏洩!
ある会社の社員が会社の重要情報を他社へ漏らしてしまい、処分決定まで自宅謹慎するように会社から命じられました。1週間の謹慎後、減給処分となりましたが、会社は「謹慎中は無給」と言い渡しました。就業規則には謹慎に関する規定は特になく、社員は納得できない様子です。
◆規定がなくても謹慎処分に付すことは可能
社員の行為が就業規則で定めた懲戒事由に該当する場合、会社は処分内容を決定します。処分決定をする前の段階として「自宅謹慎」や「自宅待機」を命じることがありますが、就業規則にこれらの扱いに関する規定がない場合、そのような謹慎・待機命令を下せるのかという問題が生じます。
大企業に比べ中小企業では、就業規則に謹慎に関する扱いを明記していないところが多いかもしれません。結論から言うと、そのような規定がなくても、処分決定前の自宅謹慎を命じることは、会社の指揮命令権の一環である業務命令として可能です。
会社の業務命令として自宅謹慎を命じた場合、社員が「働きたい」と言っても会社はこれを拒否することができます。会社には社員の行為が懲戒事由に当たるのか調査する必要があり、職場秩序を維持するためであれば当該社員に自宅謹慎を命じることもやむを得ないと認められるためです。
◆「謹慎」の付与名目によって異なる賃金支払義務
処分決定前に自宅謹慎を命じる場合の扱いをめぐる裁判には、「懲戒処分ではなくても、会社側に職場秩序維持の理由などがある場合」に謹慎を命じることができるとしたものの、このような場合の自宅謹慎は当面の職場秩序維持の観点からとられる一種の職務命令であることから、使用者には謹慎期間中の賃金の支払義務があると判断したものがあります(日通名古屋製鉄作業事件・平成3年7月22日名古屋地裁判決)。
他方、謹慎命令が、懲戒規定に基づいた「処分」として出されたものならば、謹慎期間中は無給でもよいとされています。例えば、調査のために1週間休むように命じた後、懲戒処分として再び1週間休むように命じた場合、後者の期間は無給となります。
しかし、処分対象の社員に会社内で強い権限があれば、安易に証拠をもみ消すことができるおそれもあります。前述の名古屋地裁判決は、このような場合には「不正行為の再発、証拠隠滅のおそれなどの緊急かつ合理的な理由」があるとして、例外的に処分決定前の謹慎でも無給にできると判断しています。ただし、この要件は厳格で、該当するケースはかなり限られます。
◆この問題に関するポイントは?
ポイントは次の通りです。
1.規定がなくても、会社は業務命令として自宅謹慎を命じることができる。
2.自宅謹慎が懲戒処分として会社が命じたものである場合は、当該期間は無給でよい。
保護される企業の「営業秘密」の範囲が拡大する可能性
◆年内にも指針を抜本的に見直し
経済産業省は、法律で保護する企業の「営業秘密」の管理手法の目安を示す指針を抜本的に見直し、年内にも改定する方針です。この見直しにより、これまでよりも幅広い範囲の情報が営業秘密として認められる可能性があります。
◆現在の「営業秘密」事情
不正競争防止法では、従業員が営業秘密を故意に漏らした場合などに刑事罰を科すことができるほか、被害を受けた企業が損害賠償や差止請求をできるとしています。保護の対象になる営業秘密については、経済産業省の「営業秘密管理指針」で定義された、以下の3つの要件を満たす必要があるとされています。
(1)機密管理性:施錠保管するなど秘密として管理している
(2)有用性:事業に有用な技術・営業上の情報である
(3)非公知性:公然と知られていない
法律だけでは営業秘密として保護される情報の範囲がはっきりしないため、2003年に、営業秘密と認められるのに必要な企業の管理手法などを例示した指針がつくられました。この指針では、営業秘密の「望ましい管理水準」として、情報へのアクセス制限や特定の管理者による施錠、パソコン保管時のパスワード管理などが列挙されています。
指針に法的拘束力はありませんが、秘密漏洩事件に関する裁判では、企業が指針に基づいた管理をしていたかどうかが、営業秘密と認定されるための重要な判断材料となります。指針に沿った管理をしていなかったため、漏れた情報が営業秘密と認められなかった例も多くあります。
◆見直しの内容
今回の見直しでは、企業側からの「これまでの指針は一律に高い管理水準を求めすぎている」との批判を受け、業種や企業規模に応じた弾力的な基準に改めることが検討されています。
具体的には、商品の研究開発や試験に長い時間がかかり、開発に失敗するリスクも高く、情報を幅広く企業秘密として認めて保護しなければ研究開発意欲をそぐおそれのあるバイオテクノロジー・医療分野などでは管理水準が下げられます。
また、中小零細企業も緩和の対象となる見通しです。特に中小企業などから不満の大きかった、管理の際の施錠やパスワード設定、社内での独立した秘密管理部署の設置などについては、削除したり条件を付けたりするなどして管理水準を緩和することが検討されています。
こうした見直しにより、従来よりも幅広い範囲の企業情報が営業秘密として保護される効果が期待されていますが、一方で、他社の企業情報等について、これまで以上に慎重に取り扱う必要が出てくるかもしれません。
未払い賃金に関する従業員救済制度
◆勤務先が経営破たん
勤めていた会社が経営破たんしてしまい、「もう少し待ってもらえないか」と言われていた先月分の給与も支払われなくなってしまった。このままでは生活が立ち行かなくなってしまう…。このようなケースでは、従業員救済のため、労働者に対して未払い賃金の一部を立替払いする「未払い賃金の立替払い制度」がセーフティネットとして用意されています。
◆未払い賃金の立替払い制度とは
未払い賃金の立替払い制度では、「賃金の支払いの確保等に関する法律」に基づいて、労働者健康福祉機構(旧労働福祉事業団)が未払い賃金の一定範囲を立替払いします。機構は労働者が持つ賃金請求権を代わりに取得し、もし事業者に資産があれば、そこから立替払いした賃金を回収します。
立替払いの請求は、未払い賃金のある労働者が、破産等の証明者から証明書の交付を受け、機構に提出して行います。証明者は、会社の倒産が破産などの法的手続による倒産なのか事業停止などの事実上の倒産なのかにより異なります。法的手続による倒産の場合は裁判所が選任した管財人や清算人、事実上の倒産の場合は会社所在地を管轄する労働基準監督署長が証明者となります。
立替払いの金額は、退職前6カ月間に未払いになった給与や退職金の80%です。賞与や総額2万円未満の未払い賃金については対象とはなりません。また、退職時の年齢に応じて支払われる金額に上限が設けられており、30歳未満は88万円、30歳以上45歳未満は176万円、45歳以上は296万円とされています。
◆対象は中小企業、パートやアルバイトも対象者
この制度の特徴の1つとして、対象は中小企業に限定されるということが挙げられます。中小企業の範囲については、業種別に4つの区分に分けられていますが、一例を挙げると、一般的な産業であれば「資本金3億円以下または労働者300人以下」、サービス業であれば「資本金5,000万円以下または労働者100人以下」などとなっています。
また、この制度は正社員だけを対象者にしたものではありません。パートやアルバイト、外国人労働者等、労災保険の適用事業場に雇われて賃金を得ていた労働者であれば、雇用形態・国籍等を問わず、未払い賃金の立替払いの対象となります。
企業の外国人雇用をめぐる状況,制度改正の動向
◆昨年10月から改正雇用対策法が施行
改正雇用対策法が昨年10月1日から施行されていますが、この改正の目的の1つは、今後見込まれる労働力不足に対応するため、若者や外国人を積極的に活用していくということにあります。
上記改正法には、外国人労働者に関する雇用管理等に関する事項が盛り込まれており、外国人労働者の適正な雇用管理の推進のために、事業主に外国人の雇用状況等の届出義務を課し、国に外国人の雇用管理の改善等について努力義務を求めているのが大きなポイントです。
◆「在留カード」発行で外国人情報を一元管理へ
外国人に関しては、現在、「在留カード」(仮称)の発行が検討されています。
鳩山法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会は、現行の「外国人登録証」を廃止し、新たに「在留カード」を発行して外国人の情報を一元管理できるようにする在留管理制度の見直し案を提言しています。また、この見直し案には、在留期間の上限を現在の原則3年から5年に延長することも盛り込まれており、法務省は、来年の通常国会に関連法改正案を提出する方針とのことです。
これらの改正が行われた場合、企業における外国人雇用にも影響していくでしょうか。
◆外国人研修生・技能実習生の保護拡大へ
また、政府は、外国人研修・技能実習生の保護を拡大する方針を明らかにしています。
母国語で相談できる電話窓口を設置したり、受入れ先企業が倒産した場合であっても研修を続けられるよう支援したりするほか、労働環境を改善するための新たな在留資格の導入などが検討されています。
これらの施策については、法務省、厚生労働省、経済産業省などの関係省庁が連携して、2008年度から順次着手していくそうです。
◆ハードルが高い外国人留学生のフルタイム採用
独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査によれば、卒業後の外国人留学生を過去3年間にフルタイム社員として採用したことのある企業の割合は9.6%だったそうです。従業員300人以上の企業では36.3%でしたが、中小企業ではこの割合が大きく下がります。
採用企業の理由は、上から順に「国籍に関係なく優秀な人材を確保」「職務上の外国語の必要性」「事業の国際化」となっています。
政府管掌健康保険が1,577億円の赤字を計上
◆なぜこれほどの赤字になった?
主に中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険(以下、「政管健保」という)の医療費収支が、2007年度決算で1,577億円程度の赤字を計上する見通しとなりました。5年ぶりの赤字転落となりますが、社会保険庁では、2008年度も1,700億円程度の赤字が見込まれるとしています。
4年連続で黒字となるなど収支状況を回復していましたが、それがなぜこれほどの赤字を計上することとなったのでしょうか。
◆医療費の増加で採算が悪化
2007年度の政管健保の医療費収支見通しは、支出が前年度より4,000億円程度多い7兆2,744億円、収入が7兆1,167億円で、1,577億円の赤字となる模様です。
政府は、慢性的・構造的な赤字体質を改善すべく、2003年度に医療費の患者負担の割合を2割から3割へと引き上げました。これにより収支状況は改善しましたが、わずか4年間で再び赤字体質に陥ることとなりました。
また、2008年度には、メタボリック症候群を予防する特定健診・特定保健指導の開始で、新たに700億円の負担が発生します。そのため、2008年度も赤字となることが確実とみられています。
こうした赤字の背景には、政管健保の採算の急速な悪化があります。高齢化で医療費が大きく膨らむ一方、賃金の伸び悩みなどで保険料収入は微増にとどまっており、再び構造的な赤字体質に陥りつつあるのです。今後、大企業の社員等に、保険料引上げなどの形で負担が付け回される懸念もあります。
◆一時的な対策でなく抜本的改革が必要
社会保険庁では、財政の安定運営を目的に積み立ててきた「事業運営安定資金」を取り崩して赤字を穴埋めしますが、この残高は2006年末時点で約5,000億円程度。現在と同程度の赤字が今後も続けば、2009年度にも底をつきます。
厚生労働省は、社会保障費の伸びを抑制する観点から、政管健保に対する国庫負担金を1,000億円程度削減し、これを大企業の社員が加入する健康保険組合と公務員が加入する共済組合に肩代わりさせる特例法を国会に提出しました。これは2008年度の特例措置ですが、赤字が続けば、2009年度以降もこの肩代わりが行われる可能性もあります。ただ、負担を肩代わりさせるような対策では、根本的な解決にはつながりません。
現在、社会保険庁が運営する政管健保は、2008年10月より、全国健康保険協会管掌の通称「協会けんぽ」となり、国から独立した新たな健康保険として発足します。組織の移行だけではなく、制度自体の抜本的改革も望まれるところです。
各業種に広がるパート・契約社員等の正社員化の動き
◆改正パート労働法が施行
非正規雇用労働者が働く人の3人に1人を占めるまでに拡大しているなか、4月1日から改正パート労働法が施行されました。同法では、パート労働者の通常の労働者(正社員)への転換を推進するための措置を講ずるように事業主に義務付けています。
厚生労働省が発表した「労働経済動向調査」(2月)の結果によれば、過去1年間に正社員以外から正社員に登用した実績のある事業所の割合は41%となっており、特に製造業、飲食店、宿泊業、サービス業などでその割合が高くなっています。今後の方針については、64%の企業が「正社員に登用していきたい」としています。
改正法の施行を機に、非正社員を正社員化する動きはますます広がっていきそうです。
◆パート・契約社員を正社員に
東京都に本社を持つ日用雑貨販売大手の株式会社ロフトでは、パート社員・契約社員のうち、今後、希望する者を正社員としていくそうです。同社が雇用しているスタッフは約3,300人で、そのうち正社員は約400人。1年契約の社員は280人、半年契約の社員は2,650人で、そのうちの2,350人が正社員になることを希望しているそうです。
なお、新規採用者については、6カ月間の見習い期間を経て、正社員か有期雇用かの選択を行います。
ちなみに、正社員化に伴う同社の総額人件費は、約1割程度増加する見込みだそうです。
◆製造大手では派遣社員を直接雇用などに切替え
また、派遣社員を多く抱えるキヤノン本体・グループ18社では、子会社を含めた工場などの製造現場で働く約1万2,000人の派遣社員の受入れを年内にも全面的に打ち切り、半数を直接雇用の期間社員、残りの半数を請負会社との契約に切り替えること発表しました。
同社は以前から『偽装請負』があるとして労働局などから指導を受けており、派遣契約への切替えをすすめていましたが、直接雇用と請負とに再編する方針を決めたようです。
建機製造トップのコマツでも、2009年3月末までに工場で働く派遣社員全員を期間社員に切り替える方針を明らかにしています。
フリーターの就職は依然として厳しい?
◆4年連続でフリーターが減少
2007年のフリーターの人数は、前年比6万人減の181万人となっており、ピークを迎えた2003年から4年連続で減少しています(総務省発表)。雇用環境の改善によるものとも言われていますが、25-34歳のいわゆる「年長フリーター」の人数は、前年と横ばいの92万人となっており、依然として状況は厳しいようです。
フリーターを積極的に採用したいと考えている企業はまだまだ多くはないようですが、フリーターを採用する場合、企業はどのようなことを重視しているのでしょうか。
◆採用時の面接では「熱意・意欲」などを重視
独立行政法人労働政策研究・研修機構による調査(「企業における若年層の募集・採用等に関する実態調査」)では、フリーターの正社員採用について、過去1年間にフリーターを正社員として採用した企業の担当者が採用する際の面接で最も重視したポイントは「熱意・意欲」であるという結果が出ており、以下、「コミュニケーション力」「忍耐力」と続いています。
また、既卒者(学校卒業後すぐに就職する者以外で35歳未満の者。勤務経験の有無は問わない)を募集した理由について、新規学卒者枠で募集した企業では「新卒者と変わらないから」、中途採用枠で募集した企業では「即戦力になるから」という理由が多く挙がっています。
しかし、フリーター経験を「マイナスに評価する」とした企業が約40%に上るなど、フリーターの就職は依然として厳しい状況であることも明らかになっています。
◆今年度から導入される「ジョブ・カード制度」で変化は?
政府は、フリーターなどの就職を支援するため、今年度から「ジョブ・カード制度」を導入する方針です。職業訓練を受講した者にハローワークから職歴や職業訓練の受講歴を記載した「職業能力証明書」が発行されるもので、就職活動に活用してもらうのがねらいだそうです。
同制度は、企業が一定期間、フリーターなどを雇用しながら職業訓練を実施し、訓練実績や資格を記載した証明書を公的機関が発行する仕組みですが、職業訓練を行う企業には助成金や税制優遇などの経済支援が検討されています。
政府は2008年度からの5年間で100万人程度の同制度の利用を目指していますが、制度導入によりフリーターの就職状況は改善されていくのでしょうか。
『年金記録問題』『ねんきん特別便』をめぐる状況
◆全受給者・加入者9,500万人に発送開始
4月2日から、記録漏れの可能性が高い人以外の全受給者・加入者計9,500万人に向けて「ねんきん特別便」の発送が始まりました。6月以降には事業所経由での送付も予定されています。社会保険庁でも、社会保険事務所における休日の相談日を増やすなどして、相談体制を強化する方針を明らかにしています。
◆民主党が「ヒント付き特別便」の独自法案提出へ
しかし、社会保険庁の発表によれば、これまでに「特別便」を送付した受給者の約4割に相当する約90万人が未回答であり、回答した約141万人のうち約103万人は「訂正なし」と答えていますが、実際には記録漏れの事例が相当数あるそうです(3月18日現在)。「特別便」を受け取っても、「具体的な情報が載っていないのでわかりにくい」「昔のことで思い出せない」という人が多いようです。
民主党では、「特別便」が届いても記録漏れに気付かないとみられる人(3月末までに特別便が届いた記録漏れの可能性が高い年金受給者・現役加入者のうち記録を訂正した人を除く)を対象に、記録漏れがあるとみられる記録やヒントを同封して「特別便」を再送する独自の法案(ねんきん特別便緊急支援法案)を今国会に提出する方針を示しています。
◆物証があれば社会保険事務所でも審査
またこれまで、自分の記録に誤り等があると思う人は、「年金記録確認第三者委員会」に申し出る必要がありましたが、家計簿や確定申告書のコピーなど、保険料を納付していた物的証拠があることで判断しやすい案件については、社会保険事務所に申し出て年金支給の是非を審査してもらえるようになりました。
審査が進まない「年金記録確認第三者委員会」の審査を省略して記録回復のペースを上げるのがねらいだそうです。
労災が認定された最近の事例から
◆保護者の要求でうつ病の保育士に労災認定
兵庫県の私立保育園で、園児の保護者から執拗なクレームを受けたことが原因でうつ病やストレス障害となった女性保育士2人が、西宮労働基準監督署に労災認定されていたことが明らかになりました。
保護者の父親は、担任を代えることなどを強く要求していました。保育園では謝罪したり話合いの機会を設けたりしていましたが、父親の要求はますますエスカレートしていったそうです。
これにより、担任の保育士3人のうち2人が休職し、うつ病やストレス障害と診断されました。2人は昨年4月に、西宮労基署に労災を申請して同年 11月に労災認定されました。認定された2人のうち1人は退職してしまったそうです。
◆過労が原因で自殺した外科医に労災認定
栃木県の病院に勤務していた男性外科医が自殺したのは過労が原因だったとして、鹿沼労働基準監督署がこの医師を労災認定していたことが明らかになりました。このケースでは、過重労働のほか転勤や医療ミスによるストレスが原因でうつ病を発症したと認定されています。
この医師は大学卒業後の2000年 12月から埼玉県内の公立病院に勤務し、2002年5月から栃木県内の病院に移ってからうつ病を発症して同年6月に自殺しました。前任地では月 80時間を超える時間外労働が恒常的に行われ、転勤後の2002年5月下旬には医療ミスを起こしたことに悩んでいたそうです。
代理人の弁護士は「激務が問題となっている外科医の過重労働が認められた意義は大きい。国は早急に勤務条件の改善に務めるべきだ。」と指摘しています。
◆重要情報を他社へ漏洩!
ある会社の社員が会社の重要情報を他社へ漏らしてしまい、処分決定まで自宅謹慎するように会社から命じられました。1週間の謹慎後、減給処分となりましたが、会社は「謹慎中は無給」と言い渡しました。就業規則には謹慎に関する規定は特になく、社員は納得できない様子です。
◆規定がなくても謹慎処分に付すことは可能
社員の行為が就業規則で定めた懲戒事由に該当する場合、会社は処分内容を決定します。処分決定をする前の段階として「自宅謹慎」や「自宅待機」を命じることがありますが、就業規則にこれらの扱いに関する規定がない場合、そのような謹慎・待機命令を下せるのかという問題が生じます。
大企業に比べ中小企業では、就業規則に謹慎に関する扱いを明記していないところが多いかもしれません。結論から言うと、そのような規定がなくても、処分決定前の自宅謹慎を命じることは、会社の指揮命令権の一環である業務命令として可能です。
会社の業務命令として自宅謹慎を命じた場合、社員が「働きたい」と言っても会社はこれを拒否することができます。会社には社員の行為が懲戒事由に当たるのか調査する必要があり、職場秩序を維持するためであれば当該社員に自宅謹慎を命じることもやむを得ないと認められるためです。
◆「謹慎」の付与名目によって異なる賃金支払義務
処分決定前に自宅謹慎を命じる場合の扱いをめぐる裁判には、「懲戒処分ではなくても、会社側に職場秩序維持の理由などがある場合」に謹慎を命じることができるとしたものの、このような場合の自宅謹慎は当面の職場秩序維持の観点からとられる一種の職務命令であることから、使用者には謹慎期間中の賃金の支払義務があると判断したものがあります(日通名古屋製鉄作業事件・平成3年7月22日名古屋地裁判決)。
他方、謹慎命令が、懲戒規定に基づいた「処分」として出されたものならば、謹慎期間中は無給でもよいとされています。例えば、調査のために1週間休むように命じた後、懲戒処分として再び1週間休むように命じた場合、後者の期間は無給となります。
しかし、処分対象の社員に会社内で強い権限があれば、安易に証拠をもみ消すことができるおそれもあります。前述の名古屋地裁判決は、このような場合には「不正行為の再発、証拠隠滅のおそれなどの緊急かつ合理的な理由」があるとして、例外的に処分決定前の謹慎でも無給にできると判断しています。ただし、この要件は厳格で、該当するケースはかなり限られます。
◆この問題に関するポイントは?
ポイントは次の通りです。
1.規定がなくても、会社は業務命令として自宅謹慎を命じることができる。
2.自宅謹慎が懲戒処分として会社が命じたものである場合は、当該期間は無給でよい。
保護される企業の「営業秘密」の範囲が拡大する可能性
◆年内にも指針を抜本的に見直し
経済産業省は、法律で保護する企業の「営業秘密」の管理手法の目安を示す指針を抜本的に見直し、年内にも改定する方針です。この見直しにより、これまでよりも幅広い範囲の情報が営業秘密として認められる可能性があります。
◆現在の「営業秘密」事情
不正競争防止法では、従業員が営業秘密を故意に漏らした場合などに刑事罰を科すことができるほか、被害を受けた企業が損害賠償や差止請求をできるとしています。保護の対象になる営業秘密については、経済産業省の「営業秘密管理指針」で定義された、以下の3つの要件を満たす必要があるとされています。
(1)機密管理性:施錠保管するなど秘密として管理している
(2)有用性:事業に有用な技術・営業上の情報である
(3)非公知性:公然と知られていない
法律だけでは営業秘密として保護される情報の範囲がはっきりしないため、2003年に、営業秘密と認められるのに必要な企業の管理手法などを例示した指針がつくられました。この指針では、営業秘密の「望ましい管理水準」として、情報へのアクセス制限や特定の管理者による施錠、パソコン保管時のパスワード管理などが列挙されています。
指針に法的拘束力はありませんが、秘密漏洩事件に関する裁判では、企業が指針に基づいた管理をしていたかどうかが、営業秘密と認定されるための重要な判断材料となります。指針に沿った管理をしていなかったため、漏れた情報が営業秘密と認められなかった例も多くあります。
◆見直しの内容
今回の見直しでは、企業側からの「これまでの指針は一律に高い管理水準を求めすぎている」との批判を受け、業種や企業規模に応じた弾力的な基準に改めることが検討されています。
具体的には、商品の研究開発や試験に長い時間がかかり、開発に失敗するリスクも高く、情報を幅広く企業秘密として認めて保護しなければ研究開発意欲をそぐおそれのあるバイオテクノロジー・医療分野などでは管理水準が下げられます。
また、中小零細企業も緩和の対象となる見通しです。特に中小企業などから不満の大きかった、管理の際の施錠やパスワード設定、社内での独立した秘密管理部署の設置などについては、削除したり条件を付けたりするなどして管理水準を緩和することが検討されています。
こうした見直しにより、従来よりも幅広い範囲の企業情報が営業秘密として保護される効果が期待されていますが、一方で、他社の企業情報等について、これまで以上に慎重に取り扱う必要が出てくるかもしれません。
未払い賃金に関する従業員救済制度
◆勤務先が経営破たん
勤めていた会社が経営破たんしてしまい、「もう少し待ってもらえないか」と言われていた先月分の給与も支払われなくなってしまった。このままでは生活が立ち行かなくなってしまう…。このようなケースでは、従業員救済のため、労働者に対して未払い賃金の一部を立替払いする「未払い賃金の立替払い制度」がセーフティネットとして用意されています。
◆未払い賃金の立替払い制度とは
未払い賃金の立替払い制度では、「賃金の支払いの確保等に関する法律」に基づいて、労働者健康福祉機構(旧労働福祉事業団)が未払い賃金の一定範囲を立替払いします。機構は労働者が持つ賃金請求権を代わりに取得し、もし事業者に資産があれば、そこから立替払いした賃金を回収します。
立替払いの請求は、未払い賃金のある労働者が、破産等の証明者から証明書の交付を受け、機構に提出して行います。証明者は、会社の倒産が破産などの法的手続による倒産なのか事業停止などの事実上の倒産なのかにより異なります。法的手続による倒産の場合は裁判所が選任した管財人や清算人、事実上の倒産の場合は会社所在地を管轄する労働基準監督署長が証明者となります。
立替払いの金額は、退職前6カ月間に未払いになった給与や退職金の80%です。賞与や総額2万円未満の未払い賃金については対象とはなりません。また、退職時の年齢に応じて支払われる金額に上限が設けられており、30歳未満は88万円、30歳以上45歳未満は176万円、45歳以上は296万円とされています。
◆対象は中小企業、パートやアルバイトも対象者
この制度の特徴の1つとして、対象は中小企業に限定されるということが挙げられます。中小企業の範囲については、業種別に4つの区分に分けられていますが、一例を挙げると、一般的な産業であれば「資本金3億円以下または労働者300人以下」、サービス業であれば「資本金5,000万円以下または労働者100人以下」などとなっています。
また、この制度は正社員だけを対象者にしたものではありません。パートやアルバイト、外国人労働者等、労災保険の適用事業場に雇われて賃金を得ていた労働者であれば、雇用形態・国籍等を問わず、未払い賃金の立替払いの対象となります。
企業の外国人雇用をめぐる状況,制度改正の動向
◆昨年10月から改正雇用対策法が施行
改正雇用対策法が昨年10月1日から施行されていますが、この改正の目的の1つは、今後見込まれる労働力不足に対応するため、若者や外国人を積極的に活用していくということにあります。
上記改正法には、外国人労働者に関する雇用管理等に関する事項が盛り込まれており、外国人労働者の適正な雇用管理の推進のために、事業主に外国人の雇用状況等の届出義務を課し、国に外国人の雇用管理の改善等について努力義務を求めているのが大きなポイントです。
◆「在留カード」発行で外国人情報を一元管理へ
外国人に関しては、現在、「在留カード」(仮称)の発行が検討されています。
鳩山法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会は、現行の「外国人登録証」を廃止し、新たに「在留カード」を発行して外国人の情報を一元管理できるようにする在留管理制度の見直し案を提言しています。また、この見直し案には、在留期間の上限を現在の原則3年から5年に延長することも盛り込まれており、法務省は、来年の通常国会に関連法改正案を提出する方針とのことです。
これらの改正が行われた場合、企業における外国人雇用にも影響していくでしょうか。
◆外国人研修生・技能実習生の保護拡大へ
また、政府は、外国人研修・技能実習生の保護を拡大する方針を明らかにしています。
母国語で相談できる電話窓口を設置したり、受入れ先企業が倒産した場合であっても研修を続けられるよう支援したりするほか、労働環境を改善するための新たな在留資格の導入などが検討されています。
これらの施策については、法務省、厚生労働省、経済産業省などの関係省庁が連携して、2008年度から順次着手していくそうです。
◆ハードルが高い外国人留学生のフルタイム採用
独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査によれば、卒業後の外国人留学生を過去3年間にフルタイム社員として採用したことのある企業の割合は9.6%だったそうです。従業員300人以上の企業では36.3%でしたが、中小企業ではこの割合が大きく下がります。
採用企業の理由は、上から順に「国籍に関係なく優秀な人材を確保」「職務上の外国語の必要性」「事業の国際化」となっています。
政府管掌健康保険が1,577億円の赤字を計上
◆なぜこれほどの赤字になった?
主に中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険(以下、「政管健保」という)の医療費収支が、2007年度決算で1,577億円程度の赤字を計上する見通しとなりました。5年ぶりの赤字転落となりますが、社会保険庁では、2008年度も1,700億円程度の赤字が見込まれるとしています。
4年連続で黒字となるなど収支状況を回復していましたが、それがなぜこれほどの赤字を計上することとなったのでしょうか。
◆医療費の増加で採算が悪化
2007年度の政管健保の医療費収支見通しは、支出が前年度より4,000億円程度多い7兆2,744億円、収入が7兆1,167億円で、1,577億円の赤字となる模様です。
政府は、慢性的・構造的な赤字体質を改善すべく、2003年度に医療費の患者負担の割合を2割から3割へと引き上げました。これにより収支状況は改善しましたが、わずか4年間で再び赤字体質に陥ることとなりました。
また、2008年度には、メタボリック症候群を予防する特定健診・特定保健指導の開始で、新たに700億円の負担が発生します。そのため、2008年度も赤字となることが確実とみられています。
こうした赤字の背景には、政管健保の採算の急速な悪化があります。高齢化で医療費が大きく膨らむ一方、賃金の伸び悩みなどで保険料収入は微増にとどまっており、再び構造的な赤字体質に陥りつつあるのです。今後、大企業の社員等に、保険料引上げなどの形で負担が付け回される懸念もあります。
◆一時的な対策でなく抜本的改革が必要
社会保険庁では、財政の安定運営を目的に積み立ててきた「事業運営安定資金」を取り崩して赤字を穴埋めしますが、この残高は2006年末時点で約5,000億円程度。現在と同程度の赤字が今後も続けば、2009年度にも底をつきます。
厚生労働省は、社会保障費の伸びを抑制する観点から、政管健保に対する国庫負担金を1,000億円程度削減し、これを大企業の社員が加入する健康保険組合と公務員が加入する共済組合に肩代わりさせる特例法を国会に提出しました。これは2008年度の特例措置ですが、赤字が続けば、2009年度以降もこの肩代わりが行われる可能性もあります。ただ、負担を肩代わりさせるような対策では、根本的な解決にはつながりません。
現在、社会保険庁が運営する政管健保は、2008年10月より、全国健康保険協会管掌の通称「協会けんぽ」となり、国から独立した新たな健康保険として発足します。組織の移行だけではなく、制度自体の抜本的改革も望まれるところです。
各業種に広がるパート・契約社員等の正社員化の動き
◆改正パート労働法が施行
非正規雇用労働者が働く人の3人に1人を占めるまでに拡大しているなか、4月1日から改正パート労働法が施行されました。同法では、パート労働者の通常の労働者(正社員)への転換を推進するための措置を講ずるように事業主に義務付けています。
厚生労働省が発表した「労働経済動向調査」(2月)の結果によれば、過去1年間に正社員以外から正社員に登用した実績のある事業所の割合は41%となっており、特に製造業、飲食店、宿泊業、サービス業などでその割合が高くなっています。今後の方針については、64%の企業が「正社員に登用していきたい」としています。
改正法の施行を機に、非正社員を正社員化する動きはますます広がっていきそうです。
◆パート・契約社員を正社員に
東京都に本社を持つ日用雑貨販売大手の株式会社ロフトでは、パート社員・契約社員のうち、今後、希望する者を正社員としていくそうです。同社が雇用しているスタッフは約3,300人で、そのうち正社員は約400人。1年契約の社員は280人、半年契約の社員は2,650人で、そのうちの2,350人が正社員になることを希望しているそうです。
なお、新規採用者については、6カ月間の見習い期間を経て、正社員か有期雇用かの選択を行います。
ちなみに、正社員化に伴う同社の総額人件費は、約1割程度増加する見込みだそうです。
◆製造大手では派遣社員を直接雇用などに切替え
また、派遣社員を多く抱えるキヤノン本体・グループ18社では、子会社を含めた工場などの製造現場で働く約1万2,000人の派遣社員の受入れを年内にも全面的に打ち切り、半数を直接雇用の期間社員、残りの半数を請負会社との契約に切り替えること発表しました。
同社は以前から『偽装請負』があるとして労働局などから指導を受けており、派遣契約への切替えをすすめていましたが、直接雇用と請負とに再編する方針を決めたようです。
建機製造トップのコマツでも、2009年3月末までに工場で働く派遣社員全員を期間社員に切り替える方針を明らかにしています。
フリーターの就職は依然として厳しい?
◆4年連続でフリーターが減少
2007年のフリーターの人数は、前年比6万人減の181万人となっており、ピークを迎えた2003年から4年連続で減少しています(総務省発表)。雇用環境の改善によるものとも言われていますが、25-34歳のいわゆる「年長フリーター」の人数は、前年と横ばいの92万人となっており、依然として状況は厳しいようです。
フリーターを積極的に採用したいと考えている企業はまだまだ多くはないようですが、フリーターを採用する場合、企業はどのようなことを重視しているのでしょうか。
◆採用時の面接では「熱意・意欲」などを重視
独立行政法人労働政策研究・研修機構による調査(「企業における若年層の募集・採用等に関する実態調査」)では、フリーターの正社員採用について、過去1年間にフリーターを正社員として採用した企業の担当者が採用する際の面接で最も重視したポイントは「熱意・意欲」であるという結果が出ており、以下、「コミュニケーション力」「忍耐力」と続いています。
また、既卒者(学校卒業後すぐに就職する者以外で35歳未満の者。勤務経験の有無は問わない)を募集した理由について、新規学卒者枠で募集した企業では「新卒者と変わらないから」、中途採用枠で募集した企業では「即戦力になるから」という理由が多く挙がっています。
しかし、フリーター経験を「マイナスに評価する」とした企業が約40%に上るなど、フリーターの就職は依然として厳しい状況であることも明らかになっています。
◆今年度から導入される「ジョブ・カード制度」で変化は?
政府は、フリーターなどの就職を支援するため、今年度から「ジョブ・カード制度」を導入する方針です。職業訓練を受講した者にハローワークから職歴や職業訓練の受講歴を記載した「職業能力証明書」が発行されるもので、就職活動に活用してもらうのがねらいだそうです。
同制度は、企業が一定期間、フリーターなどを雇用しながら職業訓練を実施し、訓練実績や資格を記載した証明書を公的機関が発行する仕組みですが、職業訓練を行う企業には助成金や税制優遇などの経済支援が検討されています。
政府は2008年度からの5年間で100万人程度の同制度の利用を目指していますが、制度導入によりフリーターの就職状況は改善されていくのでしょうか。
『年金記録問題』『ねんきん特別便』をめぐる状況
◆全受給者・加入者9,500万人に発送開始
4月2日から、記録漏れの可能性が高い人以外の全受給者・加入者計9,500万人に向けて「ねんきん特別便」の発送が始まりました。6月以降には事業所経由での送付も予定されています。社会保険庁でも、社会保険事務所における休日の相談日を増やすなどして、相談体制を強化する方針を明らかにしています。
◆民主党が「ヒント付き特別便」の独自法案提出へ
しかし、社会保険庁の発表によれば、これまでに「特別便」を送付した受給者の約4割に相当する約90万人が未回答であり、回答した約141万人のうち約103万人は「訂正なし」と答えていますが、実際には記録漏れの事例が相当数あるそうです(3月18日現在)。「特別便」を受け取っても、「具体的な情報が載っていないのでわかりにくい」「昔のことで思い出せない」という人が多いようです。
民主党では、「特別便」が届いても記録漏れに気付かないとみられる人(3月末までに特別便が届いた記録漏れの可能性が高い年金受給者・現役加入者のうち記録を訂正した人を除く)を対象に、記録漏れがあるとみられる記録やヒントを同封して「特別便」を再送する独自の法案(ねんきん特別便緊急支援法案)を今国会に提出する方針を示しています。
◆物証があれば社会保険事務所でも審査
またこれまで、自分の記録に誤り等があると思う人は、「年金記録確認第三者委員会」に申し出る必要がありましたが、家計簿や確定申告書のコピーなど、保険料を納付していた物的証拠があることで判断しやすい案件については、社会保険事務所に申し出て年金支給の是非を審査してもらえるようになりました。
審査が進まない「年金記録確認第三者委員会」の審査を省略して記録回復のペースを上げるのがねらいだそうです。
労災が認定された最近の事例から
◆保護者の要求でうつ病の保育士に労災認定
兵庫県の私立保育園で、園児の保護者から執拗なクレームを受けたことが原因でうつ病やストレス障害となった女性保育士2人が、西宮労働基準監督署に労災認定されていたことが明らかになりました。
保護者の父親は、担任を代えることなどを強く要求していました。保育園では謝罪したり話合いの機会を設けたりしていましたが、父親の要求はますますエスカレートしていったそうです。
これにより、担任の保育士3人のうち2人が休職し、うつ病やストレス障害と診断されました。2人は昨年4月に、西宮労基署に労災を申請して同年 11月に労災認定されました。認定された2人のうち1人は退職してしまったそうです。
◆過労が原因で自殺した外科医に労災認定
栃木県の病院に勤務していた男性外科医が自殺したのは過労が原因だったとして、鹿沼労働基準監督署がこの医師を労災認定していたことが明らかになりました。このケースでは、過重労働のほか転勤や医療ミスによるストレスが原因でうつ病を発症したと認定されています。
この医師は大学卒業後の2000年 12月から埼玉県内の公立病院に勤務し、2002年5月から栃木県内の病院に移ってからうつ病を発症して同年6月に自殺しました。前任地では月 80時間を超える時間外労働が恒常的に行われ、転勤後の2002年5月下旬には医療ミスを起こしたことに悩んでいたそうです。
代理人の弁護士は「激務が問題となっている外科医の過重労働が認められた意義は大きい。国は早急に勤務条件の改善に務めるべきだ。」と指摘しています。
2008/03/31
4月の事務所便り
異動の季節 業務引継ぎを円滑に進めるには?
すっかり春めいてきました。フレッシュな新入社員がやってくる時期であるとともに、異動の時期でもあります。部署を異動する人、担当替えとなる人は、後任者に業務を引き継ぐことになりますが、この引継ぎがうまくいかないと、社内だけではなく取引先などにも迷惑をかけるおそれがあります。引継ぎを円滑に進める極意はないものでしょうか?
◆上手に仕事内容を伝達する
引継ぎは、これまで携わってきた仕事内容や仕事の進め方を後任者に伝達することです。後任者が困らないように、上手に伝達することが求められます。後任者に伝えたいのは、まずは1週間などの一定時間軸でのおおまかな仕事の流れで、取引先との商談中によく出る話題や取引先が気にする点などの情報も重要です。
後任者に伝達する際のコツは、1度に伝えるのは話したいことの8割程度にとどめること。1度にすべてを話しても、伝わりにくかったり、後任者の理解が追いつかなかったりするためです。仕事を引き継いだ後、後任者から疑問や質問が寄せられたときに随時対応したほうが効率的です。
営業担当などの場合、資料の引継ぎや取引先の紹介などに十分な時間が割けないこともあるでしょう。短時間でおおまかなことしか伝達できない場合は、過去の付き合いや取引の経緯などを優先的に伝えることが大切です。
また、名刺なども含め、付き合いの中で得た情報は、後任者が仕事しやすいように提供するのが原則です。相手先の特徴、現在の仕事の進捗状況などについては、後任者だけでなく、社内の上司にもきちんと伝えます。上司が後任者のサポート役に回ることが多いからです。
◆業務のマニュアルやバイブルを作成する
会社組織には異動が付きものですが、仕事を引き継ぐ側も引き継がれる側も、本来の業務の傍ら、引継ぎ業務を十分にできるとは限りません。そこで、仕事のやり方を誰にでもすぐ伝えられるように、日頃から業務のマニュアルやバイブルを作っておくのが効率的です。これらには、普段の仕事の流れや相手先の特徴、必要とされる知識、業界の最新動向などをまとめておきます。
◆引継ぎ後にフォローを入れることも大切
業務を引き継いだ後、後任者が困ったときなどは、自分の新しい業務に支障が出ない範囲で後任者を手助けすることも必要です。例えば、担当を外れた後、かつての取引先と出会ったときなどにフォローを入れておくことは、後任者にとってありがたいものです。
なお、担当を外れた後に、取引先との付き合いが仕事を超えたものに発展することは問題ありませんが、そこでの付き合いで仕事に関係する話が出たら、後任者にきちんと伝えるなどの配慮が必要です。
障害年金の受給に立ちはだかる高い壁
「年金は老後のためだけではありません」。これは、国が若年層への公的年金加入を呼びかける際のうたい文句となっています。実際、ケガや病気で障害を負った人を対象とする障害年金は、現役世代でもお世話になる可能性のある年金です。
しかし、制度の認知度が低いためか、請求漏れが起こりやすく、請求後も受給の可否や金額をめぐって思わぬ壁にぶつかるケースも多いようです。
◆申請主義ゆえの問題点
18歳の時に交通事故により右足膝下を失い、30歳になってから障害年金の障害等級2級に該当することを知り、申請をした。
こんなケースを想定してみましょう。年金の時効は5年ですから、20~25歳までに受給できたはずの年金利益を取り戻すことはできません。逸失利益は、2級792,100円の5年分で、約400万円に達することになります。
公的年金は「申請主義」ですが、老齢年金では58歳には「年金加入記録のお知らせ」、年金が受け取れる年齢には「裁定請求書」が届くなど、保険者からの注意喚起があり、報道等によりその存在は広く認知されてきています。しかし、障害年金にはこのような仕組みもなく、制度の存在を知らない障害者が多いといわれています。
障害年金の対象自体はかなり幅広く、視力や聴力はもちろん、精神や肢体の障害、内臓疾患まで含まれます。また、腎不全で人工透析を受けている人やがん患者なども受給できる可能性があります。
公的福祉サービスを受ける際に必要な「身体障害者手帳」の等級とは、基準が異なることにも注意が必要です。対象自体が幅広いゆえに、請求漏れを起こしているケースも多いものと思われます。
◆あいまいな等級認定と医師の不慣れに問題も
公的年金の中でも、適切な書類を準備し、適宜申請するのが最も難しいのが障害年金だといわれています。
障害年金の場合、初診日の証明が重要なポイントになりますが、医師法上のカルテ保存期間は5年であるために、病院を転々とした人などは記録が廃棄されていて初診日の証明ができないことがあります。
また、等級認定は、視力と聴力以外は基準があいまいで、判断する人によってぶれやすいといえるほか、主治医が障害年金の請求に不慣れで認定の根拠となる診断書に重要事項の記入漏れなどのミスをしてしまっているケースも少なくありません。
これらのことを考えると、障害年金を正しく受給するうえで重要なポイントになってくるのは以下の点でしょう。
・診察券など、初診日の根拠となるものをきちんと保管すること
・申請者側が診断書の隅々まで目を通し、確認すること
・事前によく情報を集め、不本意な裁定を受けても簡単に受給をあきらめないこと
リース会計の基準の改正が企業に及ぼす影響は?
平成19年度の税制改正で、新しいリース取引に係る税務上の取扱いが規定されました。これにより、平成20年4月1日以降、リースに関する会計基準が変更になります。
この改正は、一般報道等ではあまり注目されていません。ところが、今後の企業経営に大きく影響する可能性があるようです。
◆リース会計基準改正が持つ意味
リース取引は、中途解約ができる「オペレーティング・リース取引」と、中途解約できない「ファイナンス・リース取引」に分類されます。さらに後者は、いずれ所有権が移転する「所有権移転ファイナンス・リース」と、移転しない「所有権移転外ファイナンス・リース」に分けられます。
どちらのファイナンス・リースも、固定資産を購入したときと同様に、貸借対照表にリース資産とリース債務を計上し、損益計算書では減価償却費と支払い利息相当額を費用として落とす、いわゆる売買処理が原則的な処理方法になります。
ところが、現行、所有権移転外ファイナンス・リースにおいては、原則の売買処理のほかに、例外処理として賃貸借処理が認められています。この例外処理は日本国内では非常に多く利用され、とても“例外”と呼べる状況ではないのです。この処理は、「投資家等から財務状況が見にくい」「違う会計基準を採用していることにより、財務諸表の比較がしにくい」「国際的には所有権移転外ファイナンス・リースについては売買処理を行っており、国際的な比較がしにくい」など、多くの問題点が指摘されていました。
そこで、今回の改正により、この例外処理が廃止され、ファイナンス・リースについては、一律、売買処理が適用されることになるのです。
◆改正後の影響と対応策
リース取引の中でも、所有権移転外ファイナンス・リースは、「設備投資時に多額の資金を必要としない」「事務処理が簡単」などの理由から、日本国内では多く利用されています。しかし、今回の改正を受け、今後は貸借対照表上にリース資産・リース債務が計上されるため、自己資本比率の低下などが起こります。
また、リースにするか、借入金で購入するかは、財務諸表上での違いはほとんどなくなり、購入資金を銀行から借りるかリース会社から借りるか、といっただけの差になってしまうともいえます。企業としては、設備投資を行う際、貸借対照表に及ぼす影響や資金繰り、その他のリスク等を考慮したうえで、購入にするのか、リースにするのかを検討していかなくてはならないでしょう。
今後は、毎年引き上げられる社会保険料や、度々引き上げられる雇用保険料等ばかりではなく、今回のリース会計基準改正のような税制面の細かい改正も念頭に置いておかなくてはなりません。そのうえでの総合的な資産管理が、先を読む企業経営には必要なのかもしれません。
“名ばかり管理職”問題-マクドナルド判決のその後
◆マクドナルド判決後の同社関連の動き
日本マクドナルドが直営店の店長を管理職とみなして残業代を支払っていないのは違法だとして、埼玉県内の男性店長(46歳)が未払い残業代など約1,350万円の支払いを求めていた訴訟において、1月下旬に東京地裁は「店長の職務内容から管理職とはいえない」として同社に約755万円の支払いを命じる判決を下し、新聞やテレビなどで大きく報道されました。
その後、マクドナルドの元店長3人が残業代の支払いを求めて東京地裁へ提訴することも明らかとなっており、さらには別の元店長数人も訴訟提起を検討しているとのことで、今後同様の動きが広がっていけば、約1,700人の店長を抱えている同社の経営に大きく影響を与えかねないと思われます。
◆他の業界でも制度見直しの動きが
他の業界でも、上記判決の影響を受けてか、様々な動きがみられました。
2月上旬に、コンビニエンスストア最大手のセブンイレブン・ジャパンは、管理職と位置付けている直営店の店長に対して3月から残業代を支払う方針を示しました。大手小売業や外食業で制度を見直したのは、マクドナルドに残業代の支払いを命じた東京地裁の判決後、初めてのことだそうです。
また、2月下旬には、東日本でレストランチェーン店を運営するカルラも、店長の職務内容を洗い直して管理職から外し、手当等を変更して残業代を支払うことを決定しました。これもマクドナルド判決を受けたものとみられており、同社以外にも追随する外食企業が出てくる可能性があるかもしれません。
◆まだまだ出てくる!?「名ばかり管理職」「偽装管理職」
労働者や労働組合の権利擁護活動を行っている日本労働弁護団(http://homepage1.nifty.com/rouben/)では、2月中旬に「名ばかり管理職」(十分な裁量や手当がない肩書きだけの管理職)に関する電話相談を初めて実施したところ、1日だけで130件以上の相談が寄せられたそうです。「管理職なのに部下がまったくいない」「高卒1年目ですぐに管理職にさせられた」「遅刻をすると減給されてしまう」「管理職候補だという理由だけで残業代が支払われない」などといった事例があったようです。
「名ばかり管理職」「偽装管理職」の問題はたいへん根が深く、まだまだ終わらないようです。
今年度から新設される助成金関連情報
◆非正社員の正社員化を支援する「中小企業雇用安定化奨励金」
厚生労働省は、中小企業によるパート社員・契約社員・派遣社員などの正社員化を支援するための助成制度を今年度から開始することを明らかにしました。非正社員は、今や働く人の3人に1人まで増加し、正社員との待遇格差が問題となっています。同省では、雇用の安定化を図りたいとしています。
この助成制度の名称は「中小企業雇用安定化奨励金」(仮称)です。4月の時点で従業員が原則300人以下の中小企業を対象としており、非正社員を正社員化する制度を就業規則に盛り込み、実際に正社員化すれば35万円が支給されるものです。さらに、正社員になった人が3人以上出た場合、10人を限度に1人につき10万円が支給されます。
また、同省では、非正社員の待遇改善に向けた指針の策定や、日雇い派遣の規制強化を含む労働者派遣法の改正も検討するとしています。
◆長時間労働の是正などを図る「職場意識改善助成金」
厚生労働省は、労働時間等の設定の改善(過重労働の是正、年次有給休暇の取得促進等)に向けた職場意識の改善に積極的に取り組む中小企業に対して、「職場意識改善助成金」を創設する方針を明らかにしました。
中小企業が、職場の意識改善を図るために「職場意識改善計画」(実施体制の整備、職場意識改善の措置、労働時間等の設定の改善のための措置を盛り込むことが必要。実施期間は2年間)を策定し、効果的に実施したと認められる場合に、総額で150万円支給されるものです。
なお、支給される中小企業は、以下のいずれかに該当するものです。
・資本金の額または出資の総額が3億円(小売業またはサービス業を主たる事業とする事業主については5,000万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主
・常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業またはサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主
相次いで明らかになった残業代不払いの事例
◆ミズノは18億円以上の不払いが発覚
残業代不払いの疑いで是正勧告を受けて社内調査に乗り出していたスポーツ用品大手のミズノは、従業員約2,000人に対する残業代の不払いが、過去2年間で合計18億6,000万円あったと3月初めに発表しました。
同社では「労働時間改善委員会」を設置して勤務時間を適正に把握する体制を整えるほか、不払い分の残業代を3月の給与振込み時に一括で支払うとしています。
◆近畿大学は1億円不払いで書類送検
近畿大学は、2007年1月から半年間にわたって事務職員の残業代不払い(総額約1億円)を続けていたとして、同大学と元人事部長が労働基準法違反容疑で大阪労働局に書類送検されました。
不払いは元部長の独断によるものだったとされていますが、同大学が2003年にも是正勧告を受けていることから刑事責任を問うべきだと判断され、法人にも罰則を科す両罰規定が適用されました。
◆いっこうになくならないサービス残業
厚生労働省の発表によると、2006年度に労働基準監督署からサービス残業があったとして是正指導を受けた企業数(その支払額が1企業当たり合計100万円以上となったもののみ)は1,679社で、対象労働者数は182,561人、支払われた残業代は総額で227億円1,485万円(企業平均1,353万円、労働者平均12万円)となっています。企業数は前年度比155社増で過去最高でした。
なお、1企業当たり1,000万円以上の支払いが行われた企業数は317企業(全体の18.9%)、対象労働者数は120,123人(全体の65.8%)、支払われた合計額は181億5,200万円(全体の79.9%)です。
是正指導が繰り返し行われているにもかかわらず、サービス残業はいっこうになくなっていないようです。
すっかり春めいてきました。フレッシュな新入社員がやってくる時期であるとともに、異動の時期でもあります。部署を異動する人、担当替えとなる人は、後任者に業務を引き継ぐことになりますが、この引継ぎがうまくいかないと、社内だけではなく取引先などにも迷惑をかけるおそれがあります。引継ぎを円滑に進める極意はないものでしょうか?
◆上手に仕事内容を伝達する
引継ぎは、これまで携わってきた仕事内容や仕事の進め方を後任者に伝達することです。後任者が困らないように、上手に伝達することが求められます。後任者に伝えたいのは、まずは1週間などの一定時間軸でのおおまかな仕事の流れで、取引先との商談中によく出る話題や取引先が気にする点などの情報も重要です。
後任者に伝達する際のコツは、1度に伝えるのは話したいことの8割程度にとどめること。1度にすべてを話しても、伝わりにくかったり、後任者の理解が追いつかなかったりするためです。仕事を引き継いだ後、後任者から疑問や質問が寄せられたときに随時対応したほうが効率的です。
営業担当などの場合、資料の引継ぎや取引先の紹介などに十分な時間が割けないこともあるでしょう。短時間でおおまかなことしか伝達できない場合は、過去の付き合いや取引の経緯などを優先的に伝えることが大切です。
また、名刺なども含め、付き合いの中で得た情報は、後任者が仕事しやすいように提供するのが原則です。相手先の特徴、現在の仕事の進捗状況などについては、後任者だけでなく、社内の上司にもきちんと伝えます。上司が後任者のサポート役に回ることが多いからです。
◆業務のマニュアルやバイブルを作成する
会社組織には異動が付きものですが、仕事を引き継ぐ側も引き継がれる側も、本来の業務の傍ら、引継ぎ業務を十分にできるとは限りません。そこで、仕事のやり方を誰にでもすぐ伝えられるように、日頃から業務のマニュアルやバイブルを作っておくのが効率的です。これらには、普段の仕事の流れや相手先の特徴、必要とされる知識、業界の最新動向などをまとめておきます。
◆引継ぎ後にフォローを入れることも大切
業務を引き継いだ後、後任者が困ったときなどは、自分の新しい業務に支障が出ない範囲で後任者を手助けすることも必要です。例えば、担当を外れた後、かつての取引先と出会ったときなどにフォローを入れておくことは、後任者にとってありがたいものです。
なお、担当を外れた後に、取引先との付き合いが仕事を超えたものに発展することは問題ありませんが、そこでの付き合いで仕事に関係する話が出たら、後任者にきちんと伝えるなどの配慮が必要です。
障害年金の受給に立ちはだかる高い壁
「年金は老後のためだけではありません」。これは、国が若年層への公的年金加入を呼びかける際のうたい文句となっています。実際、ケガや病気で障害を負った人を対象とする障害年金は、現役世代でもお世話になる可能性のある年金です。
しかし、制度の認知度が低いためか、請求漏れが起こりやすく、請求後も受給の可否や金額をめぐって思わぬ壁にぶつかるケースも多いようです。
◆申請主義ゆえの問題点
18歳の時に交通事故により右足膝下を失い、30歳になってから障害年金の障害等級2級に該当することを知り、申請をした。
こんなケースを想定してみましょう。年金の時効は5年ですから、20~25歳までに受給できたはずの年金利益を取り戻すことはできません。逸失利益は、2級792,100円の5年分で、約400万円に達することになります。
公的年金は「申請主義」ですが、老齢年金では58歳には「年金加入記録のお知らせ」、年金が受け取れる年齢には「裁定請求書」が届くなど、保険者からの注意喚起があり、報道等によりその存在は広く認知されてきています。しかし、障害年金にはこのような仕組みもなく、制度の存在を知らない障害者が多いといわれています。
障害年金の対象自体はかなり幅広く、視力や聴力はもちろん、精神や肢体の障害、内臓疾患まで含まれます。また、腎不全で人工透析を受けている人やがん患者なども受給できる可能性があります。
公的福祉サービスを受ける際に必要な「身体障害者手帳」の等級とは、基準が異なることにも注意が必要です。対象自体が幅広いゆえに、請求漏れを起こしているケースも多いものと思われます。
◆あいまいな等級認定と医師の不慣れに問題も
公的年金の中でも、適切な書類を準備し、適宜申請するのが最も難しいのが障害年金だといわれています。
障害年金の場合、初診日の証明が重要なポイントになりますが、医師法上のカルテ保存期間は5年であるために、病院を転々とした人などは記録が廃棄されていて初診日の証明ができないことがあります。
また、等級認定は、視力と聴力以外は基準があいまいで、判断する人によってぶれやすいといえるほか、主治医が障害年金の請求に不慣れで認定の根拠となる診断書に重要事項の記入漏れなどのミスをしてしまっているケースも少なくありません。
これらのことを考えると、障害年金を正しく受給するうえで重要なポイントになってくるのは以下の点でしょう。
・診察券など、初診日の根拠となるものをきちんと保管すること
・申請者側が診断書の隅々まで目を通し、確認すること
・事前によく情報を集め、不本意な裁定を受けても簡単に受給をあきらめないこと
リース会計の基準の改正が企業に及ぼす影響は?
平成19年度の税制改正で、新しいリース取引に係る税務上の取扱いが規定されました。これにより、平成20年4月1日以降、リースに関する会計基準が変更になります。
この改正は、一般報道等ではあまり注目されていません。ところが、今後の企業経営に大きく影響する可能性があるようです。
◆リース会計基準改正が持つ意味
リース取引は、中途解約ができる「オペレーティング・リース取引」と、中途解約できない「ファイナンス・リース取引」に分類されます。さらに後者は、いずれ所有権が移転する「所有権移転ファイナンス・リース」と、移転しない「所有権移転外ファイナンス・リース」に分けられます。
どちらのファイナンス・リースも、固定資産を購入したときと同様に、貸借対照表にリース資産とリース債務を計上し、損益計算書では減価償却費と支払い利息相当額を費用として落とす、いわゆる売買処理が原則的な処理方法になります。
ところが、現行、所有権移転外ファイナンス・リースにおいては、原則の売買処理のほかに、例外処理として賃貸借処理が認められています。この例外処理は日本国内では非常に多く利用され、とても“例外”と呼べる状況ではないのです。この処理は、「投資家等から財務状況が見にくい」「違う会計基準を採用していることにより、財務諸表の比較がしにくい」「国際的には所有権移転外ファイナンス・リースについては売買処理を行っており、国際的な比較がしにくい」など、多くの問題点が指摘されていました。
そこで、今回の改正により、この例外処理が廃止され、ファイナンス・リースについては、一律、売買処理が適用されることになるのです。
◆改正後の影響と対応策
リース取引の中でも、所有権移転外ファイナンス・リースは、「設備投資時に多額の資金を必要としない」「事務処理が簡単」などの理由から、日本国内では多く利用されています。しかし、今回の改正を受け、今後は貸借対照表上にリース資産・リース債務が計上されるため、自己資本比率の低下などが起こります。
また、リースにするか、借入金で購入するかは、財務諸表上での違いはほとんどなくなり、購入資金を銀行から借りるかリース会社から借りるか、といっただけの差になってしまうともいえます。企業としては、設備投資を行う際、貸借対照表に及ぼす影響や資金繰り、その他のリスク等を考慮したうえで、購入にするのか、リースにするのかを検討していかなくてはならないでしょう。
今後は、毎年引き上げられる社会保険料や、度々引き上げられる雇用保険料等ばかりではなく、今回のリース会計基準改正のような税制面の細かい改正も念頭に置いておかなくてはなりません。そのうえでの総合的な資産管理が、先を読む企業経営には必要なのかもしれません。
“名ばかり管理職”問題-マクドナルド判決のその後
◆マクドナルド判決後の同社関連の動き
日本マクドナルドが直営店の店長を管理職とみなして残業代を支払っていないのは違法だとして、埼玉県内の男性店長(46歳)が未払い残業代など約1,350万円の支払いを求めていた訴訟において、1月下旬に東京地裁は「店長の職務内容から管理職とはいえない」として同社に約755万円の支払いを命じる判決を下し、新聞やテレビなどで大きく報道されました。
その後、マクドナルドの元店長3人が残業代の支払いを求めて東京地裁へ提訴することも明らかとなっており、さらには別の元店長数人も訴訟提起を検討しているとのことで、今後同様の動きが広がっていけば、約1,700人の店長を抱えている同社の経営に大きく影響を与えかねないと思われます。
◆他の業界でも制度見直しの動きが
他の業界でも、上記判決の影響を受けてか、様々な動きがみられました。
2月上旬に、コンビニエンスストア最大手のセブンイレブン・ジャパンは、管理職と位置付けている直営店の店長に対して3月から残業代を支払う方針を示しました。大手小売業や外食業で制度を見直したのは、マクドナルドに残業代の支払いを命じた東京地裁の判決後、初めてのことだそうです。
また、2月下旬には、東日本でレストランチェーン店を運営するカルラも、店長の職務内容を洗い直して管理職から外し、手当等を変更して残業代を支払うことを決定しました。これもマクドナルド判決を受けたものとみられており、同社以外にも追随する外食企業が出てくる可能性があるかもしれません。
◆まだまだ出てくる!?「名ばかり管理職」「偽装管理職」
労働者や労働組合の権利擁護活動を行っている日本労働弁護団(http://homepage1.nifty.com/rouben/)では、2月中旬に「名ばかり管理職」(十分な裁量や手当がない肩書きだけの管理職)に関する電話相談を初めて実施したところ、1日だけで130件以上の相談が寄せられたそうです。「管理職なのに部下がまったくいない」「高卒1年目ですぐに管理職にさせられた」「遅刻をすると減給されてしまう」「管理職候補だという理由だけで残業代が支払われない」などといった事例があったようです。
「名ばかり管理職」「偽装管理職」の問題はたいへん根が深く、まだまだ終わらないようです。
今年度から新設される助成金関連情報
◆非正社員の正社員化を支援する「中小企業雇用安定化奨励金」
厚生労働省は、中小企業によるパート社員・契約社員・派遣社員などの正社員化を支援するための助成制度を今年度から開始することを明らかにしました。非正社員は、今や働く人の3人に1人まで増加し、正社員との待遇格差が問題となっています。同省では、雇用の安定化を図りたいとしています。
この助成制度の名称は「中小企業雇用安定化奨励金」(仮称)です。4月の時点で従業員が原則300人以下の中小企業を対象としており、非正社員を正社員化する制度を就業規則に盛り込み、実際に正社員化すれば35万円が支給されるものです。さらに、正社員になった人が3人以上出た場合、10人を限度に1人につき10万円が支給されます。
また、同省では、非正社員の待遇改善に向けた指針の策定や、日雇い派遣の規制強化を含む労働者派遣法の改正も検討するとしています。
◆長時間労働の是正などを図る「職場意識改善助成金」
厚生労働省は、労働時間等の設定の改善(過重労働の是正、年次有給休暇の取得促進等)に向けた職場意識の改善に積極的に取り組む中小企業に対して、「職場意識改善助成金」を創設する方針を明らかにしました。
中小企業が、職場の意識改善を図るために「職場意識改善計画」(実施体制の整備、職場意識改善の措置、労働時間等の設定の改善のための措置を盛り込むことが必要。実施期間は2年間)を策定し、効果的に実施したと認められる場合に、総額で150万円支給されるものです。
なお、支給される中小企業は、以下のいずれかに該当するものです。
・資本金の額または出資の総額が3億円(小売業またはサービス業を主たる事業とする事業主については5,000万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主
・常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業またはサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主
相次いで明らかになった残業代不払いの事例
◆ミズノは18億円以上の不払いが発覚
残業代不払いの疑いで是正勧告を受けて社内調査に乗り出していたスポーツ用品大手のミズノは、従業員約2,000人に対する残業代の不払いが、過去2年間で合計18億6,000万円あったと3月初めに発表しました。
同社では「労働時間改善委員会」を設置して勤務時間を適正に把握する体制を整えるほか、不払い分の残業代を3月の給与振込み時に一括で支払うとしています。
◆近畿大学は1億円不払いで書類送検
近畿大学は、2007年1月から半年間にわたって事務職員の残業代不払い(総額約1億円)を続けていたとして、同大学と元人事部長が労働基準法違反容疑で大阪労働局に書類送検されました。
不払いは元部長の独断によるものだったとされていますが、同大学が2003年にも是正勧告を受けていることから刑事責任を問うべきだと判断され、法人にも罰則を科す両罰規定が適用されました。
◆いっこうになくならないサービス残業
厚生労働省の発表によると、2006年度に労働基準監督署からサービス残業があったとして是正指導を受けた企業数(その支払額が1企業当たり合計100万円以上となったもののみ)は1,679社で、対象労働者数は182,561人、支払われた残業代は総額で227億円1,485万円(企業平均1,353万円、労働者平均12万円)となっています。企業数は前年度比155社増で過去最高でした。
なお、1企業当たり1,000万円以上の支払いが行われた企業数は317企業(全体の18.9%)、対象労働者数は120,123人(全体の65.8%)、支払われた合計額は181億5,200万円(全体の79.9%)です。
是正指導が繰り返し行われているにもかかわらず、サービス残業はいっこうになくなっていないようです。
2008/03/03
3月の事務所便り
◇ねんきん特別便 記録訂正わずか7%◇
誰のものかわからない、宙に浮いた年金記録。およそ5,000万件もある公的年金の記録漏れ問題の解明作業が、出足からつまずいています。年金記録の確認を促す「ねんきん特別便」を送り始めてから約2カ月がたちますが、持ち主が確認された記録は1割足らずです。全容解明の道筋がまったく見えてきません。
◆ 全面解決ほど遠く…
年金記録の統合作業はとても順調とはいえません。社会保険庁では昨年12月末までに約48万通のねんきん特別便を送付しましたが、記録訂正の申出があったのは2月初旬頃までで約3万6,000件。全体のわずか7%程度です。
ねんきん特別便は、まずは名寄せ作業の結果、基礎年金番号の記録と結びつく可能性のある記録が出てきた人を対象に送られました。この人たちは、「記録漏れ濃厚」と社会保険庁が見込んだ受給者で、記録が回復されれば受け取る年金額も増えるのですから、申出も多く寄せられるだろうと見込んでいたわけです。ところが、申出件数が予想外に少なかったことに加え、専用の電話相談も5万数千件程度にとどまっているなど、記録漏れ問題の全面解決にはほど遠い状態です。
また、保険料を納めた証拠がない人への年金給付を審査する、総務省の年金記録確認第三者委員会の作業も遅れ気味です。昨年末の時点で約3万5,000件の異議申立てがありましたが、何らかの結果が出たものは4%程度にとどまっています。慎重に審議を進めていることもあり、判定作業に時間がかかっているのです。
◆ 複雑な制度・申請主義が解決の壁に…
ねんきん特別便の予想外の低調ぶりについて、社会保険庁は「年末年始で出足が鈍かった」と分析していますが、果たして理由はそれだけでしょうか。
該当者の反応が鈍い背景には、年金制度の運営方法がわかりにくいという側面があります。
年金記録が正しいかどうかは、自ら確認する必要があります。記録を訂正する場合には、抜けている記録を修正するための証拠を添えて、社会保険事務所に修正手続を求める必要があります。年金制度の仕組みがわかりにくいため、理解できずに放置している高齢者が相当数いるとみられているのです。ねんきん特別便は受け取ったものの、記録統合をあきらめているケースもあります。
今なお、社会保険庁は年金の申立てについて「申請主義」を原則としていますが、このままの「待ちの姿勢」では全面解決はおぼつきません。当事者らしからぬ社会保険庁の体質には、批判が集まっています。
制度の運営や管理の体制を立て直さなければ、延々と同じ混乱を繰り返しかねません。再考が望まれるところです。
◇精神障害者の就労問題◇
15-64歳の精神障害者のうち、授産施設や企業などで働いている人は17.3%にとどまることが、厚生労働省の実態調査で明らかになりました。厚生労働省では、5年ごとに身体・知的障害者について就業状況を抽出調査していますが、今回初めて精神障害者も調査対象となったものです。
調査は、昨年7月1日時点で15-64歳の身体・知的・精神障害者計約21,300人を対象に実施、計約7,100人から回答を得ました。精神障害者は、うち約1,200人です。
◆ 就業実態調査結果の概要
全国の15-64歳の精神障害者は、35万1,000人と推計されますが、このうち、就業している者が6万1,000人(17.3%)となっています。就業状況を就業形態別にみると、常用雇用は18.8%、常用雇用以外の形態での雇用は59.7%です。
現在不就労の人のうち、62.3%が就労を希望し、うち50.7%が求職活動をしています。休職活動の内容をみると、「広告、ちらし等」が53.5%と最も多く、次いで「公共職業安定所に申込み」、「就業・生活支援センターに相談」、「知人、友人に相談」の割合が高くなっています。
◆ 精神障害者就労の課題
同調査では、身体障害者は全体の43%に当たる57万8,000人が、知的障害者は全体の53%に当たる18万7,000人が就労していることが明らかになっています。今回の調査により、精神障害者の就労割合は身体・知的障害者の就労割合を大幅に下回り、精神障害者がなかなか仕事につけない実態が浮き彫りとなりました。
ハローワークなどへの相談では、精神障害者の就労希望者は増えています。厚生労働省障害者雇用対策課では、働きたいのに働けない精神障害者が多いことから、「企業に奨励金を出すなど支援を強めたい」としています。
◇労働者派遣事業に対する文書指導◇
派遣業界の不祥事が急増しています。
今年1月、厚生労働省は日雇い派遣最大手の会社に対し、違法な二重派遣や港湾運送業務への派遣を行っていたとして、労働者派遣法に基づき事業停止命令を出しました。また、昨年8月には、日雇い派遣業界2位の会社も、港湾運送業務への派遣で事業停止処分を受けています。
◆ 文書指導件数62,081件 4年間で10倍に増加
厚生労働省によると、労働者派遣事業に関連して法令違反があるとして同省が文書で指導した件数は2006年度では62,081件にのぼります。2002年度の同件数は600件、単純に比較すると、4年間で10倍に増加していることになります。
文書指導件数が急増した背景には、労働者を派遣する事業所数の大幅な増加があります。2004年に製造業への派遣が解禁されたこともあり、2002年度には全国で19,000強だった派遣事業所数は、2006年度には50,000を超えています。
また、厚生労働省が派遣業界への監視を強めたことも文書指導件数の急増に影響しています。製造業などで「偽装請負」の問題が表面化したことを受け、同省では、指導監督方針として、派遣と請負の区分基準を周知し、偽装請負の解消等に努めていくことを明確にしています。
◆ 「二重派遣」問題
最近は、偽装請負の問題のほか、「二重派遣」問題も増えています。これは、労働者の派遣を受けた企業がその労働者をさらに別の企業に派遣するもので、労働者と企業の間の雇用・指揮関係があいまいになり、仲介料や手数料が増えて賃金が減る可能性があるため、労働者派遣法で禁じられているものです。
厚生労働省では、二重派遣の防止に向け、派遣先の企業に派遣労働者が働いた場所などを記録する管理台帳の作成を義務づける方針です。労働者派遣法の施行規則を改正し、4月からの実施を目指しています。
◇生活保護が年金の代わり!? 高齢無年金者問題◇
「無年金者」「低年金者」と呼ばれる人たちがいます。保険料未納等により受給要件を満たさないために年金をまったく受け取ることのできない人、加入期間が短い等の理由のために年金額が低い人のことです。
高齢期に低所得となり、年金や貯蓄では生活を賄えない人の最後の拠り所となるのが、生活保護です。2005年時点で生活保護を受けている65歳以上の高齢者のうち、50%以上が「無年金者」であるといわれています。これは、公的年金の役割を生活保護が事実上肩代わりしている実態を表しているといえるでしょう。
◆ 高齢無年金者の現状
生活保護を受けている無年金者は2005年時点で約29万4,000人、1998年度の14万4,000人から7年間で2倍以上に増えています。
低年金のため、年金と生活保護を合わせて受給している高齢者も増加しています。自営業者等と異なり、年金以外に収入を持たないような人は、基礎年金額のみでは生活は困難だからです。調査によると、こうした人の平均年金受給額は月4万6,000円で、生活保護を受けていない人の平均額11万円強の半分以下です。
保険料の納付率低下が問題となっていますが、これにより、将来の無年金者・低年金者の増加や、それに伴う生活保護受給者の増加を懸念する声もあります。現在、生活保護予算は増加の一途をたどる見通しで、2007年度の生活保護予算は2兆6,000億円、15年前の約2倍にふくらんでいます。
◆ 年金と生活保護の関係
年金額が生活するのに十分でない場合、預貯金がない、勤労が困難である、親類の支援がない、等の条件を満たせば、生活保護の受給対象となります。無年金者・低年金者の多くが、この条件を満たし、生活保護の受給対象となっているのが現実です。
現行の年金制度は、無年金・低年金の高齢者が生活保護に流れることで、「国民皆年金」の前提が崩れ始めています。また、将来の年金給付額の水準が生活保護よりも低い場合に納付意欲に影響を与えるおそれがあること、保険料を納めずに生活保護を受ける人に対する不公平感など、問題点も挙げられています。
無年金者・低年金者の発生を防ぐための一番の対策は、国民年金の保険料納付率向上のための対策をとることです。年金制度改革において、高齢者に対して一定額の所得を保障する制度を設けるといった案も提案されています。無年金者・低年金者の問題は、年金改革論議にも一石を投じることとなりそうです。
◇管理監督者の定義とは◇
大手ファーストフードチェーンの店長が未払い残業代の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は原告の訴えを認め、会社側に755万円の未払い残業代の支払いを命じました。チェーン店の店長を管理職として扱うべきか、それとも非管理職として扱うべきか、判決は、同種の企業各社に影響を与えそうです。
今回の訴訟は、世間的に関心も高く注目されていました。今、管理監督者の定義が再び問われ始めているといえます。
◆ 管理監督者の残業代訴訟
過去にも、このような訴訟は数多くありました。
代表的なものとしては、「レストラン・ビュッフェ事件」(昭和60年・大阪地裁判決)や「三栄珈琲事件」(平成元年・東京地裁判決)等が挙げられます。いずれの事件も、店長が管理監督者に該当するかどうかが争われましたが、店長がタイムカードなどで出退勤を管理されていたこと、経営方針など重要事項の決定に参画の余地がなかったことなどから、「管理監督者には該当しない」という判決が出ています。
新しいところでは、大手紳士服店店長の残業代請求訴訟で、会社側が600万円の解決金を支払ったケースもあります。
今回の訴訟では、「店長が管理職として経営者と一体的な立場にあり、出退勤の自由や賃金などで一般労働者に比べて優遇されているか否か」が争点になりました。判決は、(1)店長の権限が店舗内に限られる、(2)営業の必要上相当の長時間労働が必要となり勤務時間の自己決定権はない、(3)年収が管理職の待遇としては不十分、との理由から、「店長は権限や処遇からみても管理職とはいえない」としました。
◆ 管理監督者の明確な定義
厚生労働省の通達によると、管理監督者に当たるかは、(1)労務管理などで経営側と一体の立場にあるか、(2)賃金や勤務形態が優遇されているか等の、職務・職責・待遇を基準として判断されます。明確な線引きがしにくく、総合的な判断が必要になります。
名目的に就業規則や社内規程に定めるだけではなく、現実的に管理監督者といえるかどうか、大局的な立場に立った判断が必要とされているといえます。
◇勤務医減少に歯止めを! 2008年度診療報酬改定◇
小規模な公立病院を中心に、病院の医師(以下、「勤務医」)の確保が困難となってきています。勤務医不足により、病院の存続が危ぶまれるケースも増加傾向にあります。医師が安易に開業に走る例が増えているためです。その一因として、勤務医は救急や夜間の産科などの激務が多いわりに、一般的に収入が開業医より低いことが挙げられます。
勤務医の不足は、われわれの生活の安心に直結する問題です。勤務医と開業医の格差是正と、それによる勤務医不足解消を課題とした「2008年度診療報酬改定」について、その原案が明らかになりました。
◆ 勤務医の報酬引上げ
勤務医に関する報酬が総額1,500億円規模で引き上げられます。開業医から勤務医への所得移転を図り、給与面を改善することで、医師確保につなげようとの考えです。
まず、医科の診療報酬本体部分(医師の技術料などがこれに当たります)が0.42%引き上げられます。これにより、約1,100億円、報酬が上乗せされることになります。さらに、開業医向けの診療報酬から、約400億円程度が委譲されて、勤務医向けの財源に充てられます。
◆ 開業医の再診料引下げ
現在、同じ病気で2回目以降の診察を受ける場合にかかる再診料は、勤務医が570円(ベッド数200床未満)、開業医は710円です。患者としては、自己負担が少なくて済む病院にかかりたいところですから、勤務医のほうにかかる傾向が強まります。これが勤務医の過重労働につながっているとの批判がありました。
そこで議論の焦点となったのが、開業医の再診料の引下げです。再診料を同程度にすることで、これまで勤務医にかかっていた患者を分散させようという狙いです。
しかし、医師会の反発に考慮し、再診料は下げない中途半端な決着となりました。再診料引下げに代わり、軽度の治療に対する報酬廃止、外来管理加算の適正化、コンタクトレンズ検査料の引下げが提示され、合わせて800億円弱程度の財源が提示されています。
◆ 格差是正効果はどれほどあるか?
これらの対策により、300床の病院で年間5,000万円の収入増が見込まれます。
しかし、再診料こそが勤務医と開業医の不均衡の象徴ともいわれており、この差額をそのまま残していたのでは、「開業医の再診料に手を付けずに済む範囲で対策をまとめた」との批判が出る可能性もあります。想定した収入増が果たされなければ、今回の中途半端な決着に批判が集まるのは避けられません。
今回の改定が勤務医の減少対策となり得るか、さらなる議論が必要になるといえそうです。
◇メタボリック・シンドローム あなたは大丈夫?◇
肥満症、高血圧、高脂血症、糖尿病、……こうした生活習慣病は、それぞれが独立した病気ではなく、肥満(特に内臓に死亡が蓄積した「内臓脂肪型肥満」)が原因となって惹き起こされるものだということがわかってきました。内臓脂肪型肥満によってさまざまな病気が起きやすくなった状態を「メタボリック・シンドローム」といい、今では治療の対象として考えられるようになっています。
厚生労働省の平成17年国民健康・栄養調査によると、40-74歳の男性の2人に1人、同女性の5人に1人がメタボリック・シンドロームか、その予備軍であることが報告されています。
◆ メタボリック・シンドロームの診断基準
メタボリック・シンドロームを構成する因子の中でも重要視されているのは内臓脂肪の蓄積で、内臓脂肪の蓄積を必須項目とした診断基準が各国で整いつつあります。
内臓脂肪の蓄積は、具体的には、ウエスト径で判断されます。男性85㎝以上、女性90㎝以上であれば、内臓脂肪の蓄積が疑われます。そのほかに血圧・血糖・血中脂質の判定項目が定められており、2項目に該当した場合は、メタボリック・シンドロームと診断されます。
◆ 特定健康診査の開始
平成20年4月からは、生活習慣病対策の強化を医療費抑制の重要な柱に位置づけた医療制度改革関連法により、メタボリック・シンドロームに着目した新しい特定健康診査・保健指導が始まります。これは、毎年、健康診査によってメタボリック・シンドロームの該当者・予備軍などを抽出し、リスクの高いグループに対し、効果的・効率的な保健指導を行うものです。
◆ メタボリック・シンドロームの改善策
メタボリック・シンドロームには、生活習慣が密接に関係しています。生活習慣をちょっと見直すだけで、メタボリック・シンドロームを改善することができます。メタボリック・シンドロームと診断されたら、まずは生活習慣を振り返り改善するところから始めましょう。
たとえば、食事は満腹になるまで食べてはいませんか? 間食をよくとっていませんか? 濃い味付けが好き、緑黄色野菜をあまり食べない、という食生活ではありませんか?また、日頃から運動をあまりしていないのではないですか? アルコールやタバコなどの嗜好品をとりすぎてはいませんか?当てはまる項目が多い人は要注意です。まずは、腹八分目でやめる、階段を利用するようにするなど、簡単なところから改善していきましょう。
食事療法や運動療法を3~4カ月続けても改善がみられない場合は、医師と相談の上、薬物治療が導入されることもあります。 生き生きと働き続けるためにも、自分の体について、ちょっと考えてみませんか?
◇「失恋休暇」「バーゲン半休」…ユニークな福利厚生制度◇
少し難しい、お堅いことばかりが書いてあるというイメージを持ちがちな、「就業規則」。ここに会社のオリジナリティーを盛り込んでみると、従業員の働く意欲のアップに貢献できるかもしれません。
ユニークな休暇制度を採用しているのは、女性を対象にしたマーケティング会社「ヒメ&カンパニー」です。この会社の休暇制度は各種新聞・雑誌等でも多く取り上げられ、注目されていますから、ご存じの方も多いかもしれません。
◆ 失恋から気持ちを切り替えて仕事を 「失恋休暇制度」
ヒメ&カンパニーの就業規則第39条では、失恋のために業務に従事困難な未婚の社員が申し出たときは、年に1回、休暇を与えることが定められています。
この規則は、仕事が手につかなくて失敗するよりはましだ、との発想から、3年前に生まれました。年齢が上になればなるほど失恋時のダメージが大きくなるのが女性心というもの……失恋すると、25歳未満の女性は1日、30歳以上の女性であれば3日の有休を取得することができます。
◆ 良い物ゲットでモチベーションアップ 「バーゲン半休制度」
また、同社の就業規則第38条では、「バーゲン半休」なるものも定められています。その名の通り、バーゲンに行くという理由で半休が取得できるという制度で、良い物を手に入れてもらい、仕事へのモチベーションにつなげてもらおうという趣旨で設けられた規定です。
初日の早い時間に出かけて行って良い物を手に入れ、それを自慢するのがバーゲンの醍醐味です。会社を休んでバーゲンに行くのは気が引けるという人もいると思いますが、大手を振って会社を休むことができるこの制度は従業員にも好評で、取得率は非常に高いそうです。
◆ 福利厚生を企業のイメージアップに生かす
これらの制度は、同社の平舘美木社長の「女性が喜ぶものを追求する会社としては、ごく自然な」発想から生まれました。今では、「柔軟な発想をする会社」との評判につながり、より優秀な女性が従業員として集まるようになっています。
結果として、これらの条文は、「女性をターゲットとする」という社のスタンスを示す格好のメッセージとなったのです。
このようなユニークな福利厚生制度が、必ずしもいい結果を生み出すとは限りませんが、従業員のモチベーションアップ、企業イメージの向上に何らかの好影響が出るのであれば、参考にしてみる価値はありそうです。
◇物価の値上げは賃金値上げにつながるか?◇
株価の不安定な動きが続いています。株式市場の混乱を嫌った投機資金が商品市場へ流れ込み、原油価格や金の価格は史上最高の高値をつけました。原油や農産物の国際価格上昇は、日本国内の物価にも強い影響を与えています。
心配なのは、物価の上昇に対し、賃金の伸びが鈍い点です。今後、物価の値上げは賃金の値上げにつながっていくでしょうか。
◆ 物価上昇
原油の高騰、食品の値上げ、電気・ガスなどの値上げ……。原油のみならず、食品の大半も輸入に頼っている日本では、生活の必需品となっているすべてのものが値上げ傾向にあります。
例えば、平成19年12月25日付のレギュラーガソリン価格は過去最高値を記録し、1リットル当たり全国平均155円となりました。今後これを上回ることも懸念されています。
これらの値上げが、ますます家計を圧迫していくことが予想されます。値上げがどれだけ家計に影響を与えるかを試算したところによると、平均的な世帯で年間15,000円の支出増加が見込まれています。
◆ 賃金値上げは果たされるか
2008年の春闘では、こうした物価上昇を受け、労働組合はなんとか値上げによる家計負担増を軽減しようと、毎月の賃金額の改善要求を鮮明にしています。
企業側にも、賃上げの条件がそろいつつあります。賃金の高かった団塊世代の大量退職で、現役世代の賃金を上げるための資金は確保しやすくなりました。また、人材獲得競争で、新入社員の初任給を引き上げざるを得ないことから、すでに勤めている社員の給料も抑えにくくなっています。そのため、好業績企業では、賃上げ交渉に前向きに対応していく方針のようです。
とはいえ、日本経団連副会長の草刈隆郎経営労働政策委員長は、「賃金などの労働条件の決定は、個別労使で行うのが大原則」と強調、賃上げの広がりは限定的になるとの見通しを示しました。業績の良い企業は給料を上げ、そうでない企業は無理に賃上げすべきではないとの立場です。中小企業に関しては、「家計への配慮」の姿勢はトーンダウンしています。
◆ 暮らしやすい社会を目指して
収入が増えない中で生活必需品の値上げが続けば、消費が冷え込むことは目に見えています。低収入世帯では、賃金額が上がらないとなると、ますます生活が厳しい状況となっていくことが懸念されます。
中小企業の業況悪化には、原材料費の上昇を製品価格に転嫁しにくい状況があるようです。物価が緩やかに上昇し、中小企業も価格転嫁がしやすくなって業況が良くなり、従業員の賃金額も上がる。そんな状況を実現できるかが、これからの経済政策のかぎとなりそうです。
若年層の雇用状況について
◇若者の雇用情勢が改善されてきています。◇
2007年の完全失業率は3.9%となり、10年ぶりに3%台まで改善しました。これは、15-34歳の若年層の失業者が減ったことが大きな要因となっています。
◆ 完全失業者数、低水準に
2007年の若年者(15-34歳)の完全失業者数は、前年比10万人減の117万人で、5年連続で前年を下回りました。団塊の世代の退職で、人手不足感の強い企業が若者を中心に雇用を増やしているためです。これで、若者の完全失業者数はほぼ10年前の水準に戻りました。
◆ 雇用情勢
しかし、新規の求人数は伸び悩んでおり、雇用情勢の先行きは予断を許さない状態です。
昨年12月の新規求人数は前年同月比15.1%減と、大幅なマイナスとなりました。有効求人倍率は0.9倍、2か月連続で1倍を下回っています。厚生労働省が水増し求人の是正に乗り出したために求人が減少したためでもありますが、原油高を背景とした原材料コスト上昇で収益が圧迫され、企業が雇用意欲を減退させているとの指摘もあります。
また、若年無業者(ニート)は62万人と、前年比横ばいとなっています。
◇「社会的弱者」の就業支援を強化◇
厚生労働省では、「社会的弱者」と呼ばれる、障害者や母子家庭の母親等の就職を支援するための対策を強化します。
国は、こうした人たちに対し、手当や生活保護の支給などで経済的支援を行ってきました。しかし、高齢化で社会保障費は増える一方であり、支援の受け手が増えれば制度維持自体が困難になることが懸念され始めていました。今回の就業支援強化には、「社会的弱者」と呼ばれる人たちの経済的自立を後押しすることで、社会保障費を圧縮する狙いがあります。また、働く意欲と能力のある人が自立できれば、今後減ることが確実な労働力の確保にもつながると考えられています。
◆ 障害者の就業支援
厚生労働省は、障害者雇用促進法の改正案を今国会に提出する方針です。具体的には、(1)障害者の法定雇用率を遵守しないと罰金の対象となる企業の範囲を段階的に広げる、(2)障害者就業・生活支援センターを現在の135か所から2011年度までに400カ所に増設する、(3)社会福祉法人職員などが職場を訪問して障害者と起業に助言するジョブコーチの数を2011年度までに現在の3倍以上の5,000人に増やす、といった内容が盛り込まれることになります。
障害者雇用促進法では、従業員56人以上の企業の場合、従業員数の1.8%以上の障害者を雇用するよう義務づけています。現行法では、目標に達しない場合、従業員数301人以上の大企業には罰金が科されます。この対象範囲が、段階的に従業員数101人以上の中小企業にまで広げられることになります。現在、目標未達の場合に罰則対象となる企業数は約1万2,000社、うち約7,600社が実際に罰金を科されています。対象が改正案どおりに拡大されれば、現状の雇用率が維持された場合、新たに約1万7,000社が罰金を科されることになる見込みです。
◆ 母子家庭の母親の就業支援
母子家庭の母親の85%は仕事をしていますが、約半数はパート勤務です。世帯収入の平均も年200万円程度と低いため、正社員登用への足がかりが必要視されていました。
2008年度から、母子家庭の母親の就業形態をパートから正社員に切り替えた中小企業に、一時金として15万円が支給される制度が導入され、正社員登用への支援が始まります。また、収入のない職業訓練中に生活費を無利子で貸す制度が拡充され、就職後の返済期間が現行の10年から20年に延ばされます。
◆ 生活保護受給者の就業支援
福祉事務所やハローワークの担当者と連携して職業訓練などの計画を作り、就労を支援する事業を積極化していくとしています。
◇派遣社員 2008年の動向◇
4月の改正パートタイム労働法の施行、非正社員を正社員へ登用しようとする世の中の流れなどで、派遣社員のなり手が少なくなっているようです。そのため、派遣業界では売り手市場で人手不足が深刻化しています。
◆ 人材派遣大手の研修メニュー
派遣会社各社では、優秀な派遣スタッフの囲い込みに躍起になっています。各社とも、派遣社員にとってのメリットのアピールに余念がありません。教育・研修メニューを充実させ、派遣スタッフへの無料研修を拡充してきています。
例えば、パソナグループでは、自社が派遣している店頭販売員向けの研修プログラムを新設。販売キャリアセンターを開設し、店長経験者による無料講座、無料セミナーを実施しています。また、カラーコーディネート、歩き方等のセミナーや、お茶・お花等の講座も行っています。
また、テンプスタッフでは、登録者のためのCAD技術の講習会を開講。3日間のコースで、操作方法を習得するとしています。
◆ 派遣社員を取り巻く環境
日本人材派遣協会が全国の派遣社員を対象に行ったアンケート調査により、2007年の派遣社員の平均時給が1,417円であったことが明らかになりました。正社員の1日の労働時間=8時間に換算すると、1万1,336円となります。
厚生労働省がまとめた2006年度調査では、派遣社員の平均日給は1万571円でした。調査対象が異なることも考慮に入れなければなりませんが、最近の人手不足を受けて派遣社員の賃金が上昇しているのは間違いありません。派遣社員の賃金の上昇傾向は、2008年も続くと思われます。
日本人材派遣協会のアンケート調査によると、派遣で働いている人の93.4%が女性、平均年齢は34.5歳となっています。時給は1,200円から1,400円未満が最も多く、次いで1,400円から1,600円未満、1,600円から1,800円未満と続きます。もっとも、時給は都道府県によって開きがあります。たとえば、都道府県別では東京が最も高い時給となっており、平均時給は1,604円です。
◇人材不足は再雇用者にも恩恵?◇
定年退職者の再雇用制度。以前は再雇用者の仕事は補助的なものが多かったのですが、団塊の世代が退職期に入り人手不足や技能伝承の懸念が強まる中、有能なベテランを本格戦力として定着させて最大限に活用するために、給与や働き方を見直して企業内における中核業務に配置する動きが出てきました。
◆ 改正高年齢者雇用安定法
2006年に施行された改正高年齢者雇用安定法は、企業に社員の雇用期間を段階的に65歳まで引き上げるよう義務づけました。引上げの方法としては、再雇用を中心とした「継続雇用」のほか、「定年延長」、「定年廃止」の3つがあります。このうち、一般的にとられているのが、定年でいったん従業員を退職させた後、一定の能力があることなどを条件に再雇用するものです。厚生労働省が昨年6月に約8万2,000社を対象に行った調査では、改正法には「継続雇用で対応する」と答えた企業が86%を占めました。
ただし、その待遇は、再雇用では賃金が大幅に減額される上、年金の支給が減額されてしまうケースもあり、働き続けるメリットは小さいと考える退職者も多かったようです。
◆ 定年退職者再雇用の最近の動き
定年退職者の再雇用制度を導入した大手企業の間で、再雇用者の待遇を改善し、本格戦力として活用する動きが広がってきています。少子高齢化で労働力人口の大幅な減少が予想される中、有能な高齢者の雇用を促進する必要が出てきたためです。
たとえば、ある企業では、再雇用者の年収を最大で従来の2倍の1,000万円に引き上げています。また、1日5時間程度の短時間勤務を可能にする企業もあります。働きやすさを重視する人が退職後も同じ会社で勤められるような、柔軟な勤務体系を導入する動きも広がってきました。
こうした待遇改善の動きが広がれば、昨年初めて1,000万人を超えた60歳以上の就業者がさらに拡大しそうです。少子高齢化問題や、技術継承に課題が残る昨今、各企業が高度な技術を持った有能な人材を有効に活用していく方法を考えていく必要があるといえます。
誰のものかわからない、宙に浮いた年金記録。およそ5,000万件もある公的年金の記録漏れ問題の解明作業が、出足からつまずいています。年金記録の確認を促す「ねんきん特別便」を送り始めてから約2カ月がたちますが、持ち主が確認された記録は1割足らずです。全容解明の道筋がまったく見えてきません。
◆ 全面解決ほど遠く…
年金記録の統合作業はとても順調とはいえません。社会保険庁では昨年12月末までに約48万通のねんきん特別便を送付しましたが、記録訂正の申出があったのは2月初旬頃までで約3万6,000件。全体のわずか7%程度です。
ねんきん特別便は、まずは名寄せ作業の結果、基礎年金番号の記録と結びつく可能性のある記録が出てきた人を対象に送られました。この人たちは、「記録漏れ濃厚」と社会保険庁が見込んだ受給者で、記録が回復されれば受け取る年金額も増えるのですから、申出も多く寄せられるだろうと見込んでいたわけです。ところが、申出件数が予想外に少なかったことに加え、専用の電話相談も5万数千件程度にとどまっているなど、記録漏れ問題の全面解決にはほど遠い状態です。
また、保険料を納めた証拠がない人への年金給付を審査する、総務省の年金記録確認第三者委員会の作業も遅れ気味です。昨年末の時点で約3万5,000件の異議申立てがありましたが、何らかの結果が出たものは4%程度にとどまっています。慎重に審議を進めていることもあり、判定作業に時間がかかっているのです。
◆ 複雑な制度・申請主義が解決の壁に…
ねんきん特別便の予想外の低調ぶりについて、社会保険庁は「年末年始で出足が鈍かった」と分析していますが、果たして理由はそれだけでしょうか。
該当者の反応が鈍い背景には、年金制度の運営方法がわかりにくいという側面があります。
年金記録が正しいかどうかは、自ら確認する必要があります。記録を訂正する場合には、抜けている記録を修正するための証拠を添えて、社会保険事務所に修正手続を求める必要があります。年金制度の仕組みがわかりにくいため、理解できずに放置している高齢者が相当数いるとみられているのです。ねんきん特別便は受け取ったものの、記録統合をあきらめているケースもあります。
今なお、社会保険庁は年金の申立てについて「申請主義」を原則としていますが、このままの「待ちの姿勢」では全面解決はおぼつきません。当事者らしからぬ社会保険庁の体質には、批判が集まっています。
制度の運営や管理の体制を立て直さなければ、延々と同じ混乱を繰り返しかねません。再考が望まれるところです。
◇精神障害者の就労問題◇
15-64歳の精神障害者のうち、授産施設や企業などで働いている人は17.3%にとどまることが、厚生労働省の実態調査で明らかになりました。厚生労働省では、5年ごとに身体・知的障害者について就業状況を抽出調査していますが、今回初めて精神障害者も調査対象となったものです。
調査は、昨年7月1日時点で15-64歳の身体・知的・精神障害者計約21,300人を対象に実施、計約7,100人から回答を得ました。精神障害者は、うち約1,200人です。
◆ 就業実態調査結果の概要
全国の15-64歳の精神障害者は、35万1,000人と推計されますが、このうち、就業している者が6万1,000人(17.3%)となっています。就業状況を就業形態別にみると、常用雇用は18.8%、常用雇用以外の形態での雇用は59.7%です。
現在不就労の人のうち、62.3%が就労を希望し、うち50.7%が求職活動をしています。休職活動の内容をみると、「広告、ちらし等」が53.5%と最も多く、次いで「公共職業安定所に申込み」、「就業・生活支援センターに相談」、「知人、友人に相談」の割合が高くなっています。
◆ 精神障害者就労の課題
同調査では、身体障害者は全体の43%に当たる57万8,000人が、知的障害者は全体の53%に当たる18万7,000人が就労していることが明らかになっています。今回の調査により、精神障害者の就労割合は身体・知的障害者の就労割合を大幅に下回り、精神障害者がなかなか仕事につけない実態が浮き彫りとなりました。
ハローワークなどへの相談では、精神障害者の就労希望者は増えています。厚生労働省障害者雇用対策課では、働きたいのに働けない精神障害者が多いことから、「企業に奨励金を出すなど支援を強めたい」としています。
◇労働者派遣事業に対する文書指導◇
派遣業界の不祥事が急増しています。
今年1月、厚生労働省は日雇い派遣最大手の会社に対し、違法な二重派遣や港湾運送業務への派遣を行っていたとして、労働者派遣法に基づき事業停止命令を出しました。また、昨年8月には、日雇い派遣業界2位の会社も、港湾運送業務への派遣で事業停止処分を受けています。
◆ 文書指導件数62,081件 4年間で10倍に増加
厚生労働省によると、労働者派遣事業に関連して法令違反があるとして同省が文書で指導した件数は2006年度では62,081件にのぼります。2002年度の同件数は600件、単純に比較すると、4年間で10倍に増加していることになります。
文書指導件数が急増した背景には、労働者を派遣する事業所数の大幅な増加があります。2004年に製造業への派遣が解禁されたこともあり、2002年度には全国で19,000強だった派遣事業所数は、2006年度には50,000を超えています。
また、厚生労働省が派遣業界への監視を強めたことも文書指導件数の急増に影響しています。製造業などで「偽装請負」の問題が表面化したことを受け、同省では、指導監督方針として、派遣と請負の区分基準を周知し、偽装請負の解消等に努めていくことを明確にしています。
◆ 「二重派遣」問題
最近は、偽装請負の問題のほか、「二重派遣」問題も増えています。これは、労働者の派遣を受けた企業がその労働者をさらに別の企業に派遣するもので、労働者と企業の間の雇用・指揮関係があいまいになり、仲介料や手数料が増えて賃金が減る可能性があるため、労働者派遣法で禁じられているものです。
厚生労働省では、二重派遣の防止に向け、派遣先の企業に派遣労働者が働いた場所などを記録する管理台帳の作成を義務づける方針です。労働者派遣法の施行規則を改正し、4月からの実施を目指しています。
◇生活保護が年金の代わり!? 高齢無年金者問題◇
「無年金者」「低年金者」と呼ばれる人たちがいます。保険料未納等により受給要件を満たさないために年金をまったく受け取ることのできない人、加入期間が短い等の理由のために年金額が低い人のことです。
高齢期に低所得となり、年金や貯蓄では生活を賄えない人の最後の拠り所となるのが、生活保護です。2005年時点で生活保護を受けている65歳以上の高齢者のうち、50%以上が「無年金者」であるといわれています。これは、公的年金の役割を生活保護が事実上肩代わりしている実態を表しているといえるでしょう。
◆ 高齢無年金者の現状
生活保護を受けている無年金者は2005年時点で約29万4,000人、1998年度の14万4,000人から7年間で2倍以上に増えています。
低年金のため、年金と生活保護を合わせて受給している高齢者も増加しています。自営業者等と異なり、年金以外に収入を持たないような人は、基礎年金額のみでは生活は困難だからです。調査によると、こうした人の平均年金受給額は月4万6,000円で、生活保護を受けていない人の平均額11万円強の半分以下です。
保険料の納付率低下が問題となっていますが、これにより、将来の無年金者・低年金者の増加や、それに伴う生活保護受給者の増加を懸念する声もあります。現在、生活保護予算は増加の一途をたどる見通しで、2007年度の生活保護予算は2兆6,000億円、15年前の約2倍にふくらんでいます。
◆ 年金と生活保護の関係
年金額が生活するのに十分でない場合、預貯金がない、勤労が困難である、親類の支援がない、等の条件を満たせば、生活保護の受給対象となります。無年金者・低年金者の多くが、この条件を満たし、生活保護の受給対象となっているのが現実です。
現行の年金制度は、無年金・低年金の高齢者が生活保護に流れることで、「国民皆年金」の前提が崩れ始めています。また、将来の年金給付額の水準が生活保護よりも低い場合に納付意欲に影響を与えるおそれがあること、保険料を納めずに生活保護を受ける人に対する不公平感など、問題点も挙げられています。
無年金者・低年金者の発生を防ぐための一番の対策は、国民年金の保険料納付率向上のための対策をとることです。年金制度改革において、高齢者に対して一定額の所得を保障する制度を設けるといった案も提案されています。無年金者・低年金者の問題は、年金改革論議にも一石を投じることとなりそうです。
◇管理監督者の定義とは◇
大手ファーストフードチェーンの店長が未払い残業代の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は原告の訴えを認め、会社側に755万円の未払い残業代の支払いを命じました。チェーン店の店長を管理職として扱うべきか、それとも非管理職として扱うべきか、判決は、同種の企業各社に影響を与えそうです。
今回の訴訟は、世間的に関心も高く注目されていました。今、管理監督者の定義が再び問われ始めているといえます。
◆ 管理監督者の残業代訴訟
過去にも、このような訴訟は数多くありました。
代表的なものとしては、「レストラン・ビュッフェ事件」(昭和60年・大阪地裁判決)や「三栄珈琲事件」(平成元年・東京地裁判決)等が挙げられます。いずれの事件も、店長が管理監督者に該当するかどうかが争われましたが、店長がタイムカードなどで出退勤を管理されていたこと、経営方針など重要事項の決定に参画の余地がなかったことなどから、「管理監督者には該当しない」という判決が出ています。
新しいところでは、大手紳士服店店長の残業代請求訴訟で、会社側が600万円の解決金を支払ったケースもあります。
今回の訴訟では、「店長が管理職として経営者と一体的な立場にあり、出退勤の自由や賃金などで一般労働者に比べて優遇されているか否か」が争点になりました。判決は、(1)店長の権限が店舗内に限られる、(2)営業の必要上相当の長時間労働が必要となり勤務時間の自己決定権はない、(3)年収が管理職の待遇としては不十分、との理由から、「店長は権限や処遇からみても管理職とはいえない」としました。
◆ 管理監督者の明確な定義
厚生労働省の通達によると、管理監督者に当たるかは、(1)労務管理などで経営側と一体の立場にあるか、(2)賃金や勤務形態が優遇されているか等の、職務・職責・待遇を基準として判断されます。明確な線引きがしにくく、総合的な判断が必要になります。
名目的に就業規則や社内規程に定めるだけではなく、現実的に管理監督者といえるかどうか、大局的な立場に立った判断が必要とされているといえます。
◇勤務医減少に歯止めを! 2008年度診療報酬改定◇
小規模な公立病院を中心に、病院の医師(以下、「勤務医」)の確保が困難となってきています。勤務医不足により、病院の存続が危ぶまれるケースも増加傾向にあります。医師が安易に開業に走る例が増えているためです。その一因として、勤務医は救急や夜間の産科などの激務が多いわりに、一般的に収入が開業医より低いことが挙げられます。
勤務医の不足は、われわれの生活の安心に直結する問題です。勤務医と開業医の格差是正と、それによる勤務医不足解消を課題とした「2008年度診療報酬改定」について、その原案が明らかになりました。
◆ 勤務医の報酬引上げ
勤務医に関する報酬が総額1,500億円規模で引き上げられます。開業医から勤務医への所得移転を図り、給与面を改善することで、医師確保につなげようとの考えです。
まず、医科の診療報酬本体部分(医師の技術料などがこれに当たります)が0.42%引き上げられます。これにより、約1,100億円、報酬が上乗せされることになります。さらに、開業医向けの診療報酬から、約400億円程度が委譲されて、勤務医向けの財源に充てられます。
◆ 開業医の再診料引下げ
現在、同じ病気で2回目以降の診察を受ける場合にかかる再診料は、勤務医が570円(ベッド数200床未満)、開業医は710円です。患者としては、自己負担が少なくて済む病院にかかりたいところですから、勤務医のほうにかかる傾向が強まります。これが勤務医の過重労働につながっているとの批判がありました。
そこで議論の焦点となったのが、開業医の再診料の引下げです。再診料を同程度にすることで、これまで勤務医にかかっていた患者を分散させようという狙いです。
しかし、医師会の反発に考慮し、再診料は下げない中途半端な決着となりました。再診料引下げに代わり、軽度の治療に対する報酬廃止、外来管理加算の適正化、コンタクトレンズ検査料の引下げが提示され、合わせて800億円弱程度の財源が提示されています。
◆ 格差是正効果はどれほどあるか?
これらの対策により、300床の病院で年間5,000万円の収入増が見込まれます。
しかし、再診料こそが勤務医と開業医の不均衡の象徴ともいわれており、この差額をそのまま残していたのでは、「開業医の再診料に手を付けずに済む範囲で対策をまとめた」との批判が出る可能性もあります。想定した収入増が果たされなければ、今回の中途半端な決着に批判が集まるのは避けられません。
今回の改定が勤務医の減少対策となり得るか、さらなる議論が必要になるといえそうです。
◇メタボリック・シンドローム あなたは大丈夫?◇
肥満症、高血圧、高脂血症、糖尿病、……こうした生活習慣病は、それぞれが独立した病気ではなく、肥満(特に内臓に死亡が蓄積した「内臓脂肪型肥満」)が原因となって惹き起こされるものだということがわかってきました。内臓脂肪型肥満によってさまざまな病気が起きやすくなった状態を「メタボリック・シンドローム」といい、今では治療の対象として考えられるようになっています。
厚生労働省の平成17年国民健康・栄養調査によると、40-74歳の男性の2人に1人、同女性の5人に1人がメタボリック・シンドロームか、その予備軍であることが報告されています。
◆ メタボリック・シンドロームの診断基準
メタボリック・シンドロームを構成する因子の中でも重要視されているのは内臓脂肪の蓄積で、内臓脂肪の蓄積を必須項目とした診断基準が各国で整いつつあります。
内臓脂肪の蓄積は、具体的には、ウエスト径で判断されます。男性85㎝以上、女性90㎝以上であれば、内臓脂肪の蓄積が疑われます。そのほかに血圧・血糖・血中脂質の判定項目が定められており、2項目に該当した場合は、メタボリック・シンドロームと診断されます。
◆ 特定健康診査の開始
平成20年4月からは、生活習慣病対策の強化を医療費抑制の重要な柱に位置づけた医療制度改革関連法により、メタボリック・シンドロームに着目した新しい特定健康診査・保健指導が始まります。これは、毎年、健康診査によってメタボリック・シンドロームの該当者・予備軍などを抽出し、リスクの高いグループに対し、効果的・効率的な保健指導を行うものです。
◆ メタボリック・シンドロームの改善策
メタボリック・シンドロームには、生活習慣が密接に関係しています。生活習慣をちょっと見直すだけで、メタボリック・シンドロームを改善することができます。メタボリック・シンドロームと診断されたら、まずは生活習慣を振り返り改善するところから始めましょう。
たとえば、食事は満腹になるまで食べてはいませんか? 間食をよくとっていませんか? 濃い味付けが好き、緑黄色野菜をあまり食べない、という食生活ではありませんか?また、日頃から運動をあまりしていないのではないですか? アルコールやタバコなどの嗜好品をとりすぎてはいませんか?当てはまる項目が多い人は要注意です。まずは、腹八分目でやめる、階段を利用するようにするなど、簡単なところから改善していきましょう。
食事療法や運動療法を3~4カ月続けても改善がみられない場合は、医師と相談の上、薬物治療が導入されることもあります。 生き生きと働き続けるためにも、自分の体について、ちょっと考えてみませんか?
◇「失恋休暇」「バーゲン半休」…ユニークな福利厚生制度◇
少し難しい、お堅いことばかりが書いてあるというイメージを持ちがちな、「就業規則」。ここに会社のオリジナリティーを盛り込んでみると、従業員の働く意欲のアップに貢献できるかもしれません。
ユニークな休暇制度を採用しているのは、女性を対象にしたマーケティング会社「ヒメ&カンパニー」です。この会社の休暇制度は各種新聞・雑誌等でも多く取り上げられ、注目されていますから、ご存じの方も多いかもしれません。
◆ 失恋から気持ちを切り替えて仕事を 「失恋休暇制度」
ヒメ&カンパニーの就業規則第39条では、失恋のために業務に従事困難な未婚の社員が申し出たときは、年に1回、休暇を与えることが定められています。
この規則は、仕事が手につかなくて失敗するよりはましだ、との発想から、3年前に生まれました。年齢が上になればなるほど失恋時のダメージが大きくなるのが女性心というもの……失恋すると、25歳未満の女性は1日、30歳以上の女性であれば3日の有休を取得することができます。
◆ 良い物ゲットでモチベーションアップ 「バーゲン半休制度」
また、同社の就業規則第38条では、「バーゲン半休」なるものも定められています。その名の通り、バーゲンに行くという理由で半休が取得できるという制度で、良い物を手に入れてもらい、仕事へのモチベーションにつなげてもらおうという趣旨で設けられた規定です。
初日の早い時間に出かけて行って良い物を手に入れ、それを自慢するのがバーゲンの醍醐味です。会社を休んでバーゲンに行くのは気が引けるという人もいると思いますが、大手を振って会社を休むことができるこの制度は従業員にも好評で、取得率は非常に高いそうです。
◆ 福利厚生を企業のイメージアップに生かす
これらの制度は、同社の平舘美木社長の「女性が喜ぶものを追求する会社としては、ごく自然な」発想から生まれました。今では、「柔軟な発想をする会社」との評判につながり、より優秀な女性が従業員として集まるようになっています。
結果として、これらの条文は、「女性をターゲットとする」という社のスタンスを示す格好のメッセージとなったのです。
このようなユニークな福利厚生制度が、必ずしもいい結果を生み出すとは限りませんが、従業員のモチベーションアップ、企業イメージの向上に何らかの好影響が出るのであれば、参考にしてみる価値はありそうです。
◇物価の値上げは賃金値上げにつながるか?◇
株価の不安定な動きが続いています。株式市場の混乱を嫌った投機資金が商品市場へ流れ込み、原油価格や金の価格は史上最高の高値をつけました。原油や農産物の国際価格上昇は、日本国内の物価にも強い影響を与えています。
心配なのは、物価の上昇に対し、賃金の伸びが鈍い点です。今後、物価の値上げは賃金の値上げにつながっていくでしょうか。
◆ 物価上昇
原油の高騰、食品の値上げ、電気・ガスなどの値上げ……。原油のみならず、食品の大半も輸入に頼っている日本では、生活の必需品となっているすべてのものが値上げ傾向にあります。
例えば、平成19年12月25日付のレギュラーガソリン価格は過去最高値を記録し、1リットル当たり全国平均155円となりました。今後これを上回ることも懸念されています。
これらの値上げが、ますます家計を圧迫していくことが予想されます。値上げがどれだけ家計に影響を与えるかを試算したところによると、平均的な世帯で年間15,000円の支出増加が見込まれています。
◆ 賃金値上げは果たされるか
2008年の春闘では、こうした物価上昇を受け、労働組合はなんとか値上げによる家計負担増を軽減しようと、毎月の賃金額の改善要求を鮮明にしています。
企業側にも、賃上げの条件がそろいつつあります。賃金の高かった団塊世代の大量退職で、現役世代の賃金を上げるための資金は確保しやすくなりました。また、人材獲得競争で、新入社員の初任給を引き上げざるを得ないことから、すでに勤めている社員の給料も抑えにくくなっています。そのため、好業績企業では、賃上げ交渉に前向きに対応していく方針のようです。
とはいえ、日本経団連副会長の草刈隆郎経営労働政策委員長は、「賃金などの労働条件の決定は、個別労使で行うのが大原則」と強調、賃上げの広がりは限定的になるとの見通しを示しました。業績の良い企業は給料を上げ、そうでない企業は無理に賃上げすべきではないとの立場です。中小企業に関しては、「家計への配慮」の姿勢はトーンダウンしています。
◆ 暮らしやすい社会を目指して
収入が増えない中で生活必需品の値上げが続けば、消費が冷え込むことは目に見えています。低収入世帯では、賃金額が上がらないとなると、ますます生活が厳しい状況となっていくことが懸念されます。
中小企業の業況悪化には、原材料費の上昇を製品価格に転嫁しにくい状況があるようです。物価が緩やかに上昇し、中小企業も価格転嫁がしやすくなって業況が良くなり、従業員の賃金額も上がる。そんな状況を実現できるかが、これからの経済政策のかぎとなりそうです。
若年層の雇用状況について
◇若者の雇用情勢が改善されてきています。◇
2007年の完全失業率は3.9%となり、10年ぶりに3%台まで改善しました。これは、15-34歳の若年層の失業者が減ったことが大きな要因となっています。
◆ 完全失業者数、低水準に
2007年の若年者(15-34歳)の完全失業者数は、前年比10万人減の117万人で、5年連続で前年を下回りました。団塊の世代の退職で、人手不足感の強い企業が若者を中心に雇用を増やしているためです。これで、若者の完全失業者数はほぼ10年前の水準に戻りました。
◆ 雇用情勢
しかし、新規の求人数は伸び悩んでおり、雇用情勢の先行きは予断を許さない状態です。
昨年12月の新規求人数は前年同月比15.1%減と、大幅なマイナスとなりました。有効求人倍率は0.9倍、2か月連続で1倍を下回っています。厚生労働省が水増し求人の是正に乗り出したために求人が減少したためでもありますが、原油高を背景とした原材料コスト上昇で収益が圧迫され、企業が雇用意欲を減退させているとの指摘もあります。
また、若年無業者(ニート)は62万人と、前年比横ばいとなっています。
◇「社会的弱者」の就業支援を強化◇
厚生労働省では、「社会的弱者」と呼ばれる、障害者や母子家庭の母親等の就職を支援するための対策を強化します。
国は、こうした人たちに対し、手当や生活保護の支給などで経済的支援を行ってきました。しかし、高齢化で社会保障費は増える一方であり、支援の受け手が増えれば制度維持自体が困難になることが懸念され始めていました。今回の就業支援強化には、「社会的弱者」と呼ばれる人たちの経済的自立を後押しすることで、社会保障費を圧縮する狙いがあります。また、働く意欲と能力のある人が自立できれば、今後減ることが確実な労働力の確保にもつながると考えられています。
◆ 障害者の就業支援
厚生労働省は、障害者雇用促進法の改正案を今国会に提出する方針です。具体的には、(1)障害者の法定雇用率を遵守しないと罰金の対象となる企業の範囲を段階的に広げる、(2)障害者就業・生活支援センターを現在の135か所から2011年度までに400カ所に増設する、(3)社会福祉法人職員などが職場を訪問して障害者と起業に助言するジョブコーチの数を2011年度までに現在の3倍以上の5,000人に増やす、といった内容が盛り込まれることになります。
障害者雇用促進法では、従業員56人以上の企業の場合、従業員数の1.8%以上の障害者を雇用するよう義務づけています。現行法では、目標に達しない場合、従業員数301人以上の大企業には罰金が科されます。この対象範囲が、段階的に従業員数101人以上の中小企業にまで広げられることになります。現在、目標未達の場合に罰則対象となる企業数は約1万2,000社、うち約7,600社が実際に罰金を科されています。対象が改正案どおりに拡大されれば、現状の雇用率が維持された場合、新たに約1万7,000社が罰金を科されることになる見込みです。
◆ 母子家庭の母親の就業支援
母子家庭の母親の85%は仕事をしていますが、約半数はパート勤務です。世帯収入の平均も年200万円程度と低いため、正社員登用への足がかりが必要視されていました。
2008年度から、母子家庭の母親の就業形態をパートから正社員に切り替えた中小企業に、一時金として15万円が支給される制度が導入され、正社員登用への支援が始まります。また、収入のない職業訓練中に生活費を無利子で貸す制度が拡充され、就職後の返済期間が現行の10年から20年に延ばされます。
◆ 生活保護受給者の就業支援
福祉事務所やハローワークの担当者と連携して職業訓練などの計画を作り、就労を支援する事業を積極化していくとしています。
◇派遣社員 2008年の動向◇
4月の改正パートタイム労働法の施行、非正社員を正社員へ登用しようとする世の中の流れなどで、派遣社員のなり手が少なくなっているようです。そのため、派遣業界では売り手市場で人手不足が深刻化しています。
◆ 人材派遣大手の研修メニュー
派遣会社各社では、優秀な派遣スタッフの囲い込みに躍起になっています。各社とも、派遣社員にとってのメリットのアピールに余念がありません。教育・研修メニューを充実させ、派遣スタッフへの無料研修を拡充してきています。
例えば、パソナグループでは、自社が派遣している店頭販売員向けの研修プログラムを新設。販売キャリアセンターを開設し、店長経験者による無料講座、無料セミナーを実施しています。また、カラーコーディネート、歩き方等のセミナーや、お茶・お花等の講座も行っています。
また、テンプスタッフでは、登録者のためのCAD技術の講習会を開講。3日間のコースで、操作方法を習得するとしています。
◆ 派遣社員を取り巻く環境
日本人材派遣協会が全国の派遣社員を対象に行ったアンケート調査により、2007年の派遣社員の平均時給が1,417円であったことが明らかになりました。正社員の1日の労働時間=8時間に換算すると、1万1,336円となります。
厚生労働省がまとめた2006年度調査では、派遣社員の平均日給は1万571円でした。調査対象が異なることも考慮に入れなければなりませんが、最近の人手不足を受けて派遣社員の賃金が上昇しているのは間違いありません。派遣社員の賃金の上昇傾向は、2008年も続くと思われます。
日本人材派遣協会のアンケート調査によると、派遣で働いている人の93.4%が女性、平均年齢は34.5歳となっています。時給は1,200円から1,400円未満が最も多く、次いで1,400円から1,600円未満、1,600円から1,800円未満と続きます。もっとも、時給は都道府県によって開きがあります。たとえば、都道府県別では東京が最も高い時給となっており、平均時給は1,604円です。
◇人材不足は再雇用者にも恩恵?◇
定年退職者の再雇用制度。以前は再雇用者の仕事は補助的なものが多かったのですが、団塊の世代が退職期に入り人手不足や技能伝承の懸念が強まる中、有能なベテランを本格戦力として定着させて最大限に活用するために、給与や働き方を見直して企業内における中核業務に配置する動きが出てきました。
◆ 改正高年齢者雇用安定法
2006年に施行された改正高年齢者雇用安定法は、企業に社員の雇用期間を段階的に65歳まで引き上げるよう義務づけました。引上げの方法としては、再雇用を中心とした「継続雇用」のほか、「定年延長」、「定年廃止」の3つがあります。このうち、一般的にとられているのが、定年でいったん従業員を退職させた後、一定の能力があることなどを条件に再雇用するものです。厚生労働省が昨年6月に約8万2,000社を対象に行った調査では、改正法には「継続雇用で対応する」と答えた企業が86%を占めました。
ただし、その待遇は、再雇用では賃金が大幅に減額される上、年金の支給が減額されてしまうケースもあり、働き続けるメリットは小さいと考える退職者も多かったようです。
◆ 定年退職者再雇用の最近の動き
定年退職者の再雇用制度を導入した大手企業の間で、再雇用者の待遇を改善し、本格戦力として活用する動きが広がってきています。少子高齢化で労働力人口の大幅な減少が予想される中、有能な高齢者の雇用を促進する必要が出てきたためです。
たとえば、ある企業では、再雇用者の年収を最大で従来の2倍の1,000万円に引き上げています。また、1日5時間程度の短時間勤務を可能にする企業もあります。働きやすさを重視する人が退職後も同じ会社で勤められるような、柔軟な勤務体系を導入する動きも広がってきました。
こうした待遇改善の動きが広がれば、昨年初めて1,000万人を超えた60歳以上の就業者がさらに拡大しそうです。少子高齢化問題や、技術継承に課題が残る昨今、各企業が高度な技術を持った有能な人材を有効に活用していく方法を考えていく必要があるといえます。
2008/01/29
2月の事務所便り
「日雇い派遣」の規制が強化されます
◆派遣法に基づく事業停止命令
大手日雇い派遣の企業が、偽装請負の状態で、都内の港湾地区に派遣した男性を労働者派遣法で禁止されている港湾での荷物の積み下ろし作業に従事させていたことが判明しました。同社が労働者派遣法で禁止されている港湾業への派遣などの行為を繰り返していたとして、厚生労働省は、労働者派遣法に基づく事業停止命令を出しました。
◆料金や条件明示を徹底
厚生労働省は、「労働者保護が不十分」との指摘が出ている日雇い派遣制度を2008年度中にも見直し、規制を強化する方針を固めました。派遣先企業が支払う料金を公開させることにより派遣会社が極端に多額の手数料を取ることを防止し、業務内容など労働条件の事前明示を徹底することが柱です。
日雇い派遣は、派遣会社と1日単位の雇用契約を繰り返し、条件も契約ごとに変わる仕組みで、同省は派遣先企業が支払う料金が公開されれば、労働者が派遣会社に賃金の引上げを要求しやすくなるとみています。また、業務内容が明示されていれば、派遣労働者が過酷な契約を避けることが可能になり、労働条件の改善につながると期待しています。
◆派遣労働の規制緩和は見送り
労働政策審議会は、2007年12月に派遣労働に関する中間報告をまとめ、規制緩和の早期実施の見送りを決めました。派遣労働力を効率的に活用したいという企業や規制改革会議の要望は退けられた形になりました。厚生労働省は規制緩和を盛り込んだ労働者派遣法改正案の2008年の通常国会への提出を断念しましたが、一方で、日雇い派遣は規制を強化する方針を正式に決定しました。
政府は当初、柔軟な働き方を広げるため、規制緩和に前向きでした。規制改革会議などでの議論を踏まえて受け入れ企業が採用前に直接面接する「事前面接」の解禁や、派遣社員を一定期間以上雇うと派遣先企業が直接雇入れを申し出なければならないという「直接雇用義務」の撤廃などの方向を打ち出していました。
働いても生活保護水準以下の収入しか得られない「ワーキング・プア」の問題などが表面化し、「不安定な派遣労働者には規制強化が必要」という労働者側の意見が勢いを増しました。労働者派遣は徐々に規制が緩和されてきましたが、労働者保護のための派遣期間や業種などに制限が残ります。
「規制が逆に派遣の雇用を不安定にしている」との批判もあります。厚生労働省は大学教授ら有識者5~6人で組織する研究会を立ち上げ議論の打開を目指す考えで、今年はじめに研究会の第1回会合を開き、来夏をメドに報告書をまとめ、労働政策審議会で再度議論する予定です。
「ジョブカード制度」でフリーターなどを支援
◆「ジョブカード」の活用
政府の「ジョブカード構想委員会」は、2007年12月にフリーターなどの求職を支援するジョブカードの計画をまとめました。フリーターや子育て後の女性らを対象とする新たな職業訓練制度を2008年度に創設し、訓練で得た能力を専門家が評価してカードに記録します。求職者が就職活動の際に携帯すれば、企業側も人材を評価しやすく、円滑な採用につながると政府はみています。
◆訓練機会提供して成果を公的認証
「ジョブカード制度」の基本は、これまでの実践的な職業能力開発の機会に恵まれなかったフリーターや子育てから手が離れた女性、母子家庭の母親などに、企業現場や教育機関などでの実践的な職業訓練の機会を提供し、その教育訓練の成果を公的に認証して就職活動などに役立ててもらうようにすることにあります。具体的には「ジョブプログラム」を受けることで「職業能力証明書」が発行されます。
ジョブカードは、この証明書のほか、自分の職歴や教育訓練講座、取得資格などの情報を一体的にまとめたものの総称であり、ジョブプログラムを受けない場合も、求職者が職務経歴などのわかる記録をキャリアコンサルタントに提出して確認されれば、職歴部分は交付されることになっています。
◆多くの先進国が多様な政策を実施
訓練経費などについては、訓練実施企業にとって過度な負担にならないような助成の仕組みが、また、訓練受講者へは資金融資などの経済的支援が組み込まれる構想です。訓練終了後は、同企業で正式採用になる場合とならない場合の両方が想定されています。
現場で実際の仕事を目の前にして学ぶことが効果的であることは間違いありません。わが国の企業は現場主義での能力開発に長けているといわれます。実際、中途採用の場合、ほとんどの企業が他社での経験を評価していると思われます。それだけ現場の力を皆が信じている社会なのです。がんばる力を持った人たちにとって、機会がないためにその力を発揮できないとしたら、人材不足の企業にも高齢化が進む社会にとってももったいない話です。途中参入する人たちに対して、職業能力向上の目標を明示し、そのための手段を提供することは重要です。
現在、多くの先進諸国が、職場での必要な能力の基準を明らかにし、それを獲得するための教育訓練の機会を提供する政策をとっています。
終了期限が迫る!「人財投資促進税制」
◆社員の成長が会社の成長に
企業にとっての経営資源は「人・もの・お金・情報」であると言われています。とはいっても、「人」以外の要素に意志や想像力はありません。こうした資源を活用して新たな付加価値を生み出すことができるのは「人」そのものといえます。
「企業=人材」の言葉のとおり、社員の成長なくして、企業の成長はありえません。
◆人材育成の形態
企業における代表的な人材育成の形態には、「OJT」(職場内訓練)と「OFF・JT」(職場外訓練)の2種類があります。OJTは、上司が日常の業務を通じて、部下に対し、業務に必要な知識や技能を育成指導する形態です。OFF・JTは、社員を仕事から切り離して勤務外の時間に行うため、教育を集中して体系的に行えるのがメリットです。
いずれにしても、効率的に人材育成を行い社員の戦力化を図るためには、計画的にOJTとOFF・JTを併用していくことが大切であると考えられています。
◆「人材投資促進税制」の活用
中長期的な投資とも考えられる人材育成に日本の企業がかける費用は、諸外国の企業と比較すると、まだ少額であるといわれています。
「人材投資促進税制」は産業競争力の基盤である産業人材を育成・強化する観点から、従業員の人材育成に積極的に取り組む企業・個人事業者を支援するため、平成17年4月に創設されました。業種や規模を問わず、すべての企業が対象となり、教育訓練費の一定割合を法人税・所得税から税金控除するものです。
この特別税額控除は、3年間の時限措置です。適用期間は、平成17年4月1日から平成20年3月31日までに開始される事業年度であることから、終了期限が間近となっていますが、ぜひとも利用を検討したい制度です。
◆人財投資促進税制の効果
人財投資促進税制は、税額控除ですので所得控除とは異なり、税額を直接減らすことができるため、上手に利用すれば非常に大きな節税効果を得ることができます。また、経営計画を人事制度に反映させて、計画的に人材育成を実施すれば、企業の成長につながる社員を育成できる効果が期待できます。さらに、人材教育に力を入れている企業の姿勢をアピールすることで、優秀な人材が確保しやすくなり、企業の活性化や社員のモチベーションアップを図ることができると考えられます。
人財投資促進税制を活用しながら、会社と社員の成長に役立つ定期的な人材教育の実施を検討されてみてはいかがでしょうか。
まもなく施行される「改正パートタイム労働法」
◆4月1日から施行
改正パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が、4月1日から施行されます。
◆「パートタイム労働者」とは?
パートタイム労働法の対象である「短時間労働者」(パートタイム労働者)は、「1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間における所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。
◆改正パートタイム労働法の概要
1.労働条件の文書交付等
2.待遇の決定についての説明義務
3.均衡のとれた待遇の確保の推進
4.通常の労働者への転換の推進
5.苦情処理・紛争解決の援助
3.については、パートタイム労働者の待遇を通常の労働者との働き方の違いに応じて均衡(バランス)を図るための措置を講じる内容です。具体的には、「職務の内容(業務の内容および責任の程度)」「人材活用の仕組みや運用など」「契約期間」の3つの要件が通常の労働者と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いについて規定しています。
◆「差別的取扱いの禁止」とは?
「職務の内容(業務の内容および責任の程度)」が同じ、「人材活用の仕組みや運用(人事異動の有無および範囲)など」が全雇用期間を通じて同じ、「契約期間」が実質的に無期契約となっているパートタイム労働者は、通常の労働者と就業の状態が同じと判断され、賃金の決定をはじめ教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、その他のすべての待遇について、パートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止されます。「人材活用の仕組みや運用などが全雇用期間を通じて同じ」とは、パートタイム労働者が通常の労働者と職務が同一になってから、退職までの期間において、事業所の人事システムから判断して同じ、となる場合です。「契約期間が実質的に無期契約」とは、期間の定めのない労働契約を結んでいる場合や、期間を定めて労働契約を結んでいても、期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当とされる場合などです。
「国民年金任意加入」の損得勘定
◆団塊世代の老後の資産形成
会社人生が終わりつつある団塊世代の男性が老後の資産づくりに躍起になっています。専業主婦だった妻も人ごとではありません。「自分のお金を少しでも有利に運用したい」という思いから、国民年金の「任意加入」が注目されています。ただ、金融商品と公的年金では仕組みが異なりますので、注意が必要になります。
◆国民年金任意加入の損得
仮に、年上の夫が定年退職し、専業主婦だった妻のA子さん(57歳)が、国民年金の「第3号被保険者」という立場から外れ、あと3年保険料を払って国民年金に加入しなければならなくなったとします。この3年とかつての国民年金の任意加入時代に6年加入した分を合わせて保険料を払う期間は9年になります。
「第3号」期間が22年で、60歳になった時点で合計加入期間は31年、65歳からの老齢基礎年金(加算を含まず)は年約61万円になります。「もうちょっと増やせないか」と考えたとき、65歳になるまで国民年金に任意加入できることを知りました。任意加入分だけ年金も増えますが、そこで気になることが出てきました。
◆何歳まで生きれば払った保険料の元が取れる?
例えば60歳以降で5年任意加入(5年分の保険料約84万円)すると、65歳からの年金は約71万円になり、73歳を少し超えて長生きすれば得になります。ただ、任意加入しても65歳からの年金を貰う前に死亡すると悲劇です。4年任意加入した時点でA子さんが亡くなったとすると、保険料を払った期間が計13年なので、夫に死亡一時金12万円が払われます。A子さんが任意加入せずに64歳で亡くなった場合の保険料納付期間は9年になり、このときの一時金も12万円です。4年分の保険料約67万円は水の泡になってしまいます。
金融商品でも損失が出るリスクはありますが、一般的には資産が残ります。しかし、公的年金は「相互扶助」が原則なので、払った分に見合う金額が必ず戻るとは限りません。
公的年金は原則25年、制度に加入しないと老後の年金はもらえないので、すでにこの要件を満たしているとき、さらに任意加入するかどうか検討するときには、公的年金のこのような仕組みも知っておきたいところです。
経済的にゆとりがあるなら、任意加入する分を投資に回したり、貯蓄に回したりしたほうがいいかもしれません。
「昇進志向」控えめな日本人
◆出世に燃えていた時代
生活を犠牲にして出世に燃える…。高度成長期に多くの人が思い描いた日本のビジネスマン像は過去のものになりつつあるようです。働く人の意識に関する最近の国際比較では、日本人の「ほどほど志向」に拍車がかかっているようです。
◆仕事と生活のバランスを重視
ある新聞によりますと、米コンサルティング大手のタワーズペリンが調査を実施し、世界19カ国・地域で魅力的な職場の条件を聞いたそうです。
日本の従業員には仕事と生活のバランスを重視する傾向がみえます。「充実した休暇」「適正な仕事量」「福利厚生の充実」がそれぞれ3位、4位、6位と上位に来ました。ところが19カ国・地域の平均値だと、この3項目は7位、9位、圏外と優先度が低くなっています。
世界平均では2位が「キャリア向上の機会」、6位が「教育・研修の機会」です。働く現場で自分自身を磨くことへの関心が強いようです。
調査には日米欧のほかブラジル、中国など経済成長が活発な新興国も入っています。自分の将来を見据えた野心の強さも感じられます。日本でも仕事への潜在的な意欲は決して低くはありません。
国際平均で3位の「やりがいのある仕事」が日本は首位です。タワーズペリンは「日本人は怠惰になったのではなく、目先の仕事に疲れ、合理的なワークライフバランス(仕事と生活の調和)を求める意識が強まったのではないか」と見ています。
昇進というニンジンで社員をひたすら競わせる「同属職場」の時代は終わりました。個の自主性と意欲を伸ばし、質の高い働きを引き出す企業の知恵が問われています。
公的手続がインターネットで簡単に
◆新システムを開発・導入へ
経済産業省など5省庁は、NTTデータなどの民間企業と組み、企業が納税申告などの公的な手続きをインターネットで簡単に行うことができる新システムを開発するそうです。
2009年1月を目途に導入される予定で、企業にとっては、コスト削減に役立つ仕組みとして期待されています。
◆中小企業のコスト削減に
中小企業では、公的申請を担当者数人がかり行っていることが多いようですが、新システムの導入により、手間が減り、経営の効率化が高まると見込まれます。
対象となる公的申請は、従業員の納税や商業登記、年金、雇用保険などであり、経済産業省、厚生労働省、法務省、社会保険庁、国税庁の5省がネット上に専用のページを作成するそうです。
例えば、納税申告であれば、専用のパスワードやIDを入力し、サイト内で売上高や従業員数、給料などの数字を入力すれば、法人税額や所得税額などが簡単に算出されます。計算結果は自動的に電子申請書に転記され、ネット上で各省庁への手続きが完了します。
企業が支払うシステム利用料は一般のソフトと比較して、2分の1から3分の1に抑えられる予定です。
◆政府も普及率のアップでコスト削減を期待
政府は国や地方自治体への申請手続のオンライン利用率を2010年度までに50%にする目標を打ち出してはいますが、現状ではわずか3%の利用にとどまっています。政府は、新システムの導入により、普及率のアップと窓口対応のコスト削減を期待しています。
どうなる? 個人向け住宅優遇税制
◆「個人向け住宅優遇税制」延長・拡充へ
自民党の税制調査会は、2008年度税制改正において、「個人向け住宅優遇税制」を延長・拡充する方針を固めています。耐震偽装の再発防止のために審査基準を厳しくした改正建築基準法施行の影響により住宅投資が低迷していることなどの影響もあり、「200年住宅」等への税優遇導入などを含め、改正案が検討されています。
◆固定資産税等の延長へ
新築住宅の固定資産税を半減する特例は、1964年に法整備されてから延長を繰り返し、2008年3月末で期限切れになる予定でしたが、2年間延長されることとなっています。ただし、対象物件は2008年3月末までに購入した新築物件となっています。
また、土地売買で所有権の移転登記などにかかる登録免許税を半減する特例措置も2008年3月末で期限が切れることになっていますが、こちらも延長される方向です。
住宅購入の目的で親から生前贈与を受ける場合に限り、3,500万円まで贈与税を非課税とする特例も2007年12月末で期限切れとなっていますが、延長する方向で検討されています。
このような特例措置がなされない場合、個人の税負担は全体で約3,000億円発生すると推計されています。
◆どういった法案が検討されているのか?
数世代にわたって暮らせる「200年住宅」は、耐久性など国の認定基準を満たせば固定資産税を築後3年間は4分の1にする案を軸として調整する方向で進められています。
また、登録免許税や不動産取得税も控除対象にできるように検討しています。
省エネルギーを促すための改修費用を支援する優遇税制も検討中です。改修にかかった費用の10パーセント相当を税額控除できるようにしたり、固定資産税を3年間半減できるようにしたりする案が検討されています。しかし、財務・総務両省は消極的であり、こちらの優遇税制の創設は難航しそうです。
昨年末の定率減税廃止等で個人の増税感を薄めるためにも、住宅優遇税制の延長・創設に期待したいものです。
後期高齢者医療で「外来主治医制度」導入へ
◆「外来主治医」制度とは
2008年4月からスタートする後期高齢者医療制度において、75歳以上の患者の心身状態を1人の医師が総合的に診察する「外来主治医」(仮称)制度が導入されます。
複数の病気にかかっていても、原則として患者1人に1人の主治医とし、高齢者が複数の医療機関にかからないようにして、医療費を抑えることが狙いです。
◆研修を受けた医師が「外来主治医」に
外来主治医の資格は、お年寄りの日常生活能力を判定する機能評価の演習など4日間程度の研修を受け、厚生労働省に届け出た医師に与えられます。研修では、日本医師会と学会でつくる組織が受け持ち、高齢者の薬物療法、認知症の診療、家族や介護者への指導方法などを習得するそうです。
患者は、外来主治医から1年間の治療・検査計画を記した「高齢者総合診療計画書」を示され、糖尿病や脳血管疾患などの診療を受けるには、計画書に患者の同意署名が必要となります。また、患者には月初めの受診時に、検査結果や次の受診日時などを記した文書が渡される予定です。
◆患者にはどんなメリットがある?
患者1人ひとりが信頼できる医師を持つことにより、複数の医療機関を渡り歩いて検査や投薬が重複することを防止し、外来医療から入院、在宅療養へ移ることがスムーズになります。ただし、主治医を持つことは義務ではなく、また、どの医師を選ぶのかは患者自身が決めることになります。
◆診療報酬に「定額制」導入
新制度の導入に伴い、75歳以上を対象とした診療報酬に「医学管理料」が新設され、外来主治医が請求できるようにし、一部を除く検査、画像診断などについては何度実施しても一定の報酬しか払わない「定額制」が導入されます。また、外来主治医には、毎回患者に服薬状況を確認することも義務付けられるそうです。
実現されるか? 年金負担の平等化
◆基礎年金の税方式化とは?
納付率の低下や年金記録漏れ問題などにより、基礎年金の保険料を徴収する現行の「社会保険方式」への国民の信頼が失われつつあります。制度の維持が難しくなっているなか、解決策として、消費税で賄う「基礎年金の税方式化」が検討されています。
◆税方式にするとどんなメリットがある?
年金制度改革研究会が、税方式の案の利点であるとして提案している「共通年金(厚生・共済年金の基礎年金部分を含む国民年金を65歳以上の人に原則同じ額だけ給付するというもの)」は、1.財源を保険料から消費税に転換して徴収、2.国内居住10年で受給権が発生、3.移行期間は新旧両制度から加入期間に応じて給付するなどの特徴があります。
大きな利点の1つは、現行制度の存続を危うくしている未納・未加入の問題をほぼ解消できることです。年金記録の管理も単純になり、記録漏れ問題の是正も期待できます。例えば、日本に最低10年間居住すれば誰でも年金を受け取れるようになると、「国民皆年金」の姿に近くなります。40年で満額となるように居住期間に比例して支給する方法を想定しています。
現行の基礎年金制度は保険料を納めた期間に応じて受給額が決まります。最低加入期間の25年(保険料を免除、猶予された期間も含む)に1カ月でも届かなければ無年金となります。満額を受給するには40年間、保険料を払い続けなければならないのが原則です。
居住年数に応じて給付を受けられるようになれば、専業主婦やフリーターなど雇用形態や生活様式の多様性にも柔軟に対応できます。また、受給要件を拠出期間25年から例えば居住期間10年にすることで、無年金者を救う効果も期待しています。
現行制度の「社会保険方式」も年間約19兆4,000億円の給付額の3分の1近くはすでに税に依存しています。「税方式」への転換は、残りの12兆円の保険料負担をなくす代わりに税に置き換える方法です。
◆世代間の不公平感解消にもなるが…
日本で生活している限り、必ず消費税の負担が生じます。高齢者も相応の負担をするので、現行制度に比べて世代間の公平さの面で優れていますが、半面、年金受給者の側からみれば、引退後も消費税の形で年金制度に追加拠出することになるので、年金の受給額が実質的に減ってしまいます。
給付と負担の関係も不明確となり、「生活保護」と似た性格を持つことも問題となり得ます。最低10年居住を受給条件とすれば、現行制度に比べて財源が膨らむ可能性もあります。
いずれにしろ、国民の負担は免れないのであれば、政府のスリム化、企業の効率化を通じて、国民が安心してお金を消費に回せるように、社会保障全体の信頼を高めなければなりません。
◆派遣法に基づく事業停止命令
大手日雇い派遣の企業が、偽装請負の状態で、都内の港湾地区に派遣した男性を労働者派遣法で禁止されている港湾での荷物の積み下ろし作業に従事させていたことが判明しました。同社が労働者派遣法で禁止されている港湾業への派遣などの行為を繰り返していたとして、厚生労働省は、労働者派遣法に基づく事業停止命令を出しました。
◆料金や条件明示を徹底
厚生労働省は、「労働者保護が不十分」との指摘が出ている日雇い派遣制度を2008年度中にも見直し、規制を強化する方針を固めました。派遣先企業が支払う料金を公開させることにより派遣会社が極端に多額の手数料を取ることを防止し、業務内容など労働条件の事前明示を徹底することが柱です。
日雇い派遣は、派遣会社と1日単位の雇用契約を繰り返し、条件も契約ごとに変わる仕組みで、同省は派遣先企業が支払う料金が公開されれば、労働者が派遣会社に賃金の引上げを要求しやすくなるとみています。また、業務内容が明示されていれば、派遣労働者が過酷な契約を避けることが可能になり、労働条件の改善につながると期待しています。
◆派遣労働の規制緩和は見送り
労働政策審議会は、2007年12月に派遣労働に関する中間報告をまとめ、規制緩和の早期実施の見送りを決めました。派遣労働力を効率的に活用したいという企業や規制改革会議の要望は退けられた形になりました。厚生労働省は規制緩和を盛り込んだ労働者派遣法改正案の2008年の通常国会への提出を断念しましたが、一方で、日雇い派遣は規制を強化する方針を正式に決定しました。
政府は当初、柔軟な働き方を広げるため、規制緩和に前向きでした。規制改革会議などでの議論を踏まえて受け入れ企業が採用前に直接面接する「事前面接」の解禁や、派遣社員を一定期間以上雇うと派遣先企業が直接雇入れを申し出なければならないという「直接雇用義務」の撤廃などの方向を打ち出していました。
働いても生活保護水準以下の収入しか得られない「ワーキング・プア」の問題などが表面化し、「不安定な派遣労働者には規制強化が必要」という労働者側の意見が勢いを増しました。労働者派遣は徐々に規制が緩和されてきましたが、労働者保護のための派遣期間や業種などに制限が残ります。
「規制が逆に派遣の雇用を不安定にしている」との批判もあります。厚生労働省は大学教授ら有識者5~6人で組織する研究会を立ち上げ議論の打開を目指す考えで、今年はじめに研究会の第1回会合を開き、来夏をメドに報告書をまとめ、労働政策審議会で再度議論する予定です。
「ジョブカード制度」でフリーターなどを支援
◆「ジョブカード」の活用
政府の「ジョブカード構想委員会」は、2007年12月にフリーターなどの求職を支援するジョブカードの計画をまとめました。フリーターや子育て後の女性らを対象とする新たな職業訓練制度を2008年度に創設し、訓練で得た能力を専門家が評価してカードに記録します。求職者が就職活動の際に携帯すれば、企業側も人材を評価しやすく、円滑な採用につながると政府はみています。
◆訓練機会提供して成果を公的認証
「ジョブカード制度」の基本は、これまでの実践的な職業能力開発の機会に恵まれなかったフリーターや子育てから手が離れた女性、母子家庭の母親などに、企業現場や教育機関などでの実践的な職業訓練の機会を提供し、その教育訓練の成果を公的に認証して就職活動などに役立ててもらうようにすることにあります。具体的には「ジョブプログラム」を受けることで「職業能力証明書」が発行されます。
ジョブカードは、この証明書のほか、自分の職歴や教育訓練講座、取得資格などの情報を一体的にまとめたものの総称であり、ジョブプログラムを受けない場合も、求職者が職務経歴などのわかる記録をキャリアコンサルタントに提出して確認されれば、職歴部分は交付されることになっています。
◆多くの先進国が多様な政策を実施
訓練経費などについては、訓練実施企業にとって過度な負担にならないような助成の仕組みが、また、訓練受講者へは資金融資などの経済的支援が組み込まれる構想です。訓練終了後は、同企業で正式採用になる場合とならない場合の両方が想定されています。
現場で実際の仕事を目の前にして学ぶことが効果的であることは間違いありません。わが国の企業は現場主義での能力開発に長けているといわれます。実際、中途採用の場合、ほとんどの企業が他社での経験を評価していると思われます。それだけ現場の力を皆が信じている社会なのです。がんばる力を持った人たちにとって、機会がないためにその力を発揮できないとしたら、人材不足の企業にも高齢化が進む社会にとってももったいない話です。途中参入する人たちに対して、職業能力向上の目標を明示し、そのための手段を提供することは重要です。
現在、多くの先進諸国が、職場での必要な能力の基準を明らかにし、それを獲得するための教育訓練の機会を提供する政策をとっています。
終了期限が迫る!「人財投資促進税制」
◆社員の成長が会社の成長に
企業にとっての経営資源は「人・もの・お金・情報」であると言われています。とはいっても、「人」以外の要素に意志や想像力はありません。こうした資源を活用して新たな付加価値を生み出すことができるのは「人」そのものといえます。
「企業=人材」の言葉のとおり、社員の成長なくして、企業の成長はありえません。
◆人材育成の形態
企業における代表的な人材育成の形態には、「OJT」(職場内訓練)と「OFF・JT」(職場外訓練)の2種類があります。OJTは、上司が日常の業務を通じて、部下に対し、業務に必要な知識や技能を育成指導する形態です。OFF・JTは、社員を仕事から切り離して勤務外の時間に行うため、教育を集中して体系的に行えるのがメリットです。
いずれにしても、効率的に人材育成を行い社員の戦力化を図るためには、計画的にOJTとOFF・JTを併用していくことが大切であると考えられています。
◆「人材投資促進税制」の活用
中長期的な投資とも考えられる人材育成に日本の企業がかける費用は、諸外国の企業と比較すると、まだ少額であるといわれています。
「人材投資促進税制」は産業競争力の基盤である産業人材を育成・強化する観点から、従業員の人材育成に積極的に取り組む企業・個人事業者を支援するため、平成17年4月に創設されました。業種や規模を問わず、すべての企業が対象となり、教育訓練費の一定割合を法人税・所得税から税金控除するものです。
この特別税額控除は、3年間の時限措置です。適用期間は、平成17年4月1日から平成20年3月31日までに開始される事業年度であることから、終了期限が間近となっていますが、ぜひとも利用を検討したい制度です。
◆人財投資促進税制の効果
人財投資促進税制は、税額控除ですので所得控除とは異なり、税額を直接減らすことができるため、上手に利用すれば非常に大きな節税効果を得ることができます。また、経営計画を人事制度に反映させて、計画的に人材育成を実施すれば、企業の成長につながる社員を育成できる効果が期待できます。さらに、人材教育に力を入れている企業の姿勢をアピールすることで、優秀な人材が確保しやすくなり、企業の活性化や社員のモチベーションアップを図ることができると考えられます。
人財投資促進税制を活用しながら、会社と社員の成長に役立つ定期的な人材教育の実施を検討されてみてはいかがでしょうか。
まもなく施行される「改正パートタイム労働法」
◆4月1日から施行
改正パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が、4月1日から施行されます。
◆「パートタイム労働者」とは?
パートタイム労働法の対象である「短時間労働者」(パートタイム労働者)は、「1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間における所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。
◆改正パートタイム労働法の概要
1.労働条件の文書交付等
2.待遇の決定についての説明義務
3.均衡のとれた待遇の確保の推進
4.通常の労働者への転換の推進
5.苦情処理・紛争解決の援助
3.については、パートタイム労働者の待遇を通常の労働者との働き方の違いに応じて均衡(バランス)を図るための措置を講じる内容です。具体的には、「職務の内容(業務の内容および責任の程度)」「人材活用の仕組みや運用など」「契約期間」の3つの要件が通常の労働者と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いについて規定しています。
◆「差別的取扱いの禁止」とは?
「職務の内容(業務の内容および責任の程度)」が同じ、「人材活用の仕組みや運用(人事異動の有無および範囲)など」が全雇用期間を通じて同じ、「契約期間」が実質的に無期契約となっているパートタイム労働者は、通常の労働者と就業の状態が同じと判断され、賃金の決定をはじめ教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、その他のすべての待遇について、パートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止されます。「人材活用の仕組みや運用などが全雇用期間を通じて同じ」とは、パートタイム労働者が通常の労働者と職務が同一になってから、退職までの期間において、事業所の人事システムから判断して同じ、となる場合です。「契約期間が実質的に無期契約」とは、期間の定めのない労働契約を結んでいる場合や、期間を定めて労働契約を結んでいても、期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当とされる場合などです。
「国民年金任意加入」の損得勘定
◆団塊世代の老後の資産形成
会社人生が終わりつつある団塊世代の男性が老後の資産づくりに躍起になっています。専業主婦だった妻も人ごとではありません。「自分のお金を少しでも有利に運用したい」という思いから、国民年金の「任意加入」が注目されています。ただ、金融商品と公的年金では仕組みが異なりますので、注意が必要になります。
◆国民年金任意加入の損得
仮に、年上の夫が定年退職し、専業主婦だった妻のA子さん(57歳)が、国民年金の「第3号被保険者」という立場から外れ、あと3年保険料を払って国民年金に加入しなければならなくなったとします。この3年とかつての国民年金の任意加入時代に6年加入した分を合わせて保険料を払う期間は9年になります。
「第3号」期間が22年で、60歳になった時点で合計加入期間は31年、65歳からの老齢基礎年金(加算を含まず)は年約61万円になります。「もうちょっと増やせないか」と考えたとき、65歳になるまで国民年金に任意加入できることを知りました。任意加入分だけ年金も増えますが、そこで気になることが出てきました。
◆何歳まで生きれば払った保険料の元が取れる?
例えば60歳以降で5年任意加入(5年分の保険料約84万円)すると、65歳からの年金は約71万円になり、73歳を少し超えて長生きすれば得になります。ただ、任意加入しても65歳からの年金を貰う前に死亡すると悲劇です。4年任意加入した時点でA子さんが亡くなったとすると、保険料を払った期間が計13年なので、夫に死亡一時金12万円が払われます。A子さんが任意加入せずに64歳で亡くなった場合の保険料納付期間は9年になり、このときの一時金も12万円です。4年分の保険料約67万円は水の泡になってしまいます。
金融商品でも損失が出るリスクはありますが、一般的には資産が残ります。しかし、公的年金は「相互扶助」が原則なので、払った分に見合う金額が必ず戻るとは限りません。
公的年金は原則25年、制度に加入しないと老後の年金はもらえないので、すでにこの要件を満たしているとき、さらに任意加入するかどうか検討するときには、公的年金のこのような仕組みも知っておきたいところです。
経済的にゆとりがあるなら、任意加入する分を投資に回したり、貯蓄に回したりしたほうがいいかもしれません。
「昇進志向」控えめな日本人
◆出世に燃えていた時代
生活を犠牲にして出世に燃える…。高度成長期に多くの人が思い描いた日本のビジネスマン像は過去のものになりつつあるようです。働く人の意識に関する最近の国際比較では、日本人の「ほどほど志向」に拍車がかかっているようです。
◆仕事と生活のバランスを重視
ある新聞によりますと、米コンサルティング大手のタワーズペリンが調査を実施し、世界19カ国・地域で魅力的な職場の条件を聞いたそうです。
日本の従業員には仕事と生活のバランスを重視する傾向がみえます。「充実した休暇」「適正な仕事量」「福利厚生の充実」がそれぞれ3位、4位、6位と上位に来ました。ところが19カ国・地域の平均値だと、この3項目は7位、9位、圏外と優先度が低くなっています。
世界平均では2位が「キャリア向上の機会」、6位が「教育・研修の機会」です。働く現場で自分自身を磨くことへの関心が強いようです。
調査には日米欧のほかブラジル、中国など経済成長が活発な新興国も入っています。自分の将来を見据えた野心の強さも感じられます。日本でも仕事への潜在的な意欲は決して低くはありません。
国際平均で3位の「やりがいのある仕事」が日本は首位です。タワーズペリンは「日本人は怠惰になったのではなく、目先の仕事に疲れ、合理的なワークライフバランス(仕事と生活の調和)を求める意識が強まったのではないか」と見ています。
昇進というニンジンで社員をひたすら競わせる「同属職場」の時代は終わりました。個の自主性と意欲を伸ばし、質の高い働きを引き出す企業の知恵が問われています。
公的手続がインターネットで簡単に
◆新システムを開発・導入へ
経済産業省など5省庁は、NTTデータなどの民間企業と組み、企業が納税申告などの公的な手続きをインターネットで簡単に行うことができる新システムを開発するそうです。
2009年1月を目途に導入される予定で、企業にとっては、コスト削減に役立つ仕組みとして期待されています。
◆中小企業のコスト削減に
中小企業では、公的申請を担当者数人がかり行っていることが多いようですが、新システムの導入により、手間が減り、経営の効率化が高まると見込まれます。
対象となる公的申請は、従業員の納税や商業登記、年金、雇用保険などであり、経済産業省、厚生労働省、法務省、社会保険庁、国税庁の5省がネット上に専用のページを作成するそうです。
例えば、納税申告であれば、専用のパスワードやIDを入力し、サイト内で売上高や従業員数、給料などの数字を入力すれば、法人税額や所得税額などが簡単に算出されます。計算結果は自動的に電子申請書に転記され、ネット上で各省庁への手続きが完了します。
企業が支払うシステム利用料は一般のソフトと比較して、2分の1から3分の1に抑えられる予定です。
◆政府も普及率のアップでコスト削減を期待
政府は国や地方自治体への申請手続のオンライン利用率を2010年度までに50%にする目標を打ち出してはいますが、現状ではわずか3%の利用にとどまっています。政府は、新システムの導入により、普及率のアップと窓口対応のコスト削減を期待しています。
どうなる? 個人向け住宅優遇税制
◆「個人向け住宅優遇税制」延長・拡充へ
自民党の税制調査会は、2008年度税制改正において、「個人向け住宅優遇税制」を延長・拡充する方針を固めています。耐震偽装の再発防止のために審査基準を厳しくした改正建築基準法施行の影響により住宅投資が低迷していることなどの影響もあり、「200年住宅」等への税優遇導入などを含め、改正案が検討されています。
◆固定資産税等の延長へ
新築住宅の固定資産税を半減する特例は、1964年に法整備されてから延長を繰り返し、2008年3月末で期限切れになる予定でしたが、2年間延長されることとなっています。ただし、対象物件は2008年3月末までに購入した新築物件となっています。
また、土地売買で所有権の移転登記などにかかる登録免許税を半減する特例措置も2008年3月末で期限が切れることになっていますが、こちらも延長される方向です。
住宅購入の目的で親から生前贈与を受ける場合に限り、3,500万円まで贈与税を非課税とする特例も2007年12月末で期限切れとなっていますが、延長する方向で検討されています。
このような特例措置がなされない場合、個人の税負担は全体で約3,000億円発生すると推計されています。
◆どういった法案が検討されているのか?
数世代にわたって暮らせる「200年住宅」は、耐久性など国の認定基準を満たせば固定資産税を築後3年間は4分の1にする案を軸として調整する方向で進められています。
また、登録免許税や不動産取得税も控除対象にできるように検討しています。
省エネルギーを促すための改修費用を支援する優遇税制も検討中です。改修にかかった費用の10パーセント相当を税額控除できるようにしたり、固定資産税を3年間半減できるようにしたりする案が検討されています。しかし、財務・総務両省は消極的であり、こちらの優遇税制の創設は難航しそうです。
昨年末の定率減税廃止等で個人の増税感を薄めるためにも、住宅優遇税制の延長・創設に期待したいものです。
後期高齢者医療で「外来主治医制度」導入へ
◆「外来主治医」制度とは
2008年4月からスタートする後期高齢者医療制度において、75歳以上の患者の心身状態を1人の医師が総合的に診察する「外来主治医」(仮称)制度が導入されます。
複数の病気にかかっていても、原則として患者1人に1人の主治医とし、高齢者が複数の医療機関にかからないようにして、医療費を抑えることが狙いです。
◆研修を受けた医師が「外来主治医」に
外来主治医の資格は、お年寄りの日常生活能力を判定する機能評価の演習など4日間程度の研修を受け、厚生労働省に届け出た医師に与えられます。研修では、日本医師会と学会でつくる組織が受け持ち、高齢者の薬物療法、認知症の診療、家族や介護者への指導方法などを習得するそうです。
患者は、外来主治医から1年間の治療・検査計画を記した「高齢者総合診療計画書」を示され、糖尿病や脳血管疾患などの診療を受けるには、計画書に患者の同意署名が必要となります。また、患者には月初めの受診時に、検査結果や次の受診日時などを記した文書が渡される予定です。
◆患者にはどんなメリットがある?
患者1人ひとりが信頼できる医師を持つことにより、複数の医療機関を渡り歩いて検査や投薬が重複することを防止し、外来医療から入院、在宅療養へ移ることがスムーズになります。ただし、主治医を持つことは義務ではなく、また、どの医師を選ぶのかは患者自身が決めることになります。
◆診療報酬に「定額制」導入
新制度の導入に伴い、75歳以上を対象とした診療報酬に「医学管理料」が新設され、外来主治医が請求できるようにし、一部を除く検査、画像診断などについては何度実施しても一定の報酬しか払わない「定額制」が導入されます。また、外来主治医には、毎回患者に服薬状況を確認することも義務付けられるそうです。
実現されるか? 年金負担の平等化
◆基礎年金の税方式化とは?
納付率の低下や年金記録漏れ問題などにより、基礎年金の保険料を徴収する現行の「社会保険方式」への国民の信頼が失われつつあります。制度の維持が難しくなっているなか、解決策として、消費税で賄う「基礎年金の税方式化」が検討されています。
◆税方式にするとどんなメリットがある?
年金制度改革研究会が、税方式の案の利点であるとして提案している「共通年金(厚生・共済年金の基礎年金部分を含む国民年金を65歳以上の人に原則同じ額だけ給付するというもの)」は、1.財源を保険料から消費税に転換して徴収、2.国内居住10年で受給権が発生、3.移行期間は新旧両制度から加入期間に応じて給付するなどの特徴があります。
大きな利点の1つは、現行制度の存続を危うくしている未納・未加入の問題をほぼ解消できることです。年金記録の管理も単純になり、記録漏れ問題の是正も期待できます。例えば、日本に最低10年間居住すれば誰でも年金を受け取れるようになると、「国民皆年金」の姿に近くなります。40年で満額となるように居住期間に比例して支給する方法を想定しています。
現行の基礎年金制度は保険料を納めた期間に応じて受給額が決まります。最低加入期間の25年(保険料を免除、猶予された期間も含む)に1カ月でも届かなければ無年金となります。満額を受給するには40年間、保険料を払い続けなければならないのが原則です。
居住年数に応じて給付を受けられるようになれば、専業主婦やフリーターなど雇用形態や生活様式の多様性にも柔軟に対応できます。また、受給要件を拠出期間25年から例えば居住期間10年にすることで、無年金者を救う効果も期待しています。
現行制度の「社会保険方式」も年間約19兆4,000億円の給付額の3分の1近くはすでに税に依存しています。「税方式」への転換は、残りの12兆円の保険料負担をなくす代わりに税に置き換える方法です。
◆世代間の不公平感解消にもなるが…
日本で生活している限り、必ず消費税の負担が生じます。高齢者も相応の負担をするので、現行制度に比べて世代間の公平さの面で優れていますが、半面、年金受給者の側からみれば、引退後も消費税の形で年金制度に追加拠出することになるので、年金の受給額が実質的に減ってしまいます。
給付と負担の関係も不明確となり、「生活保護」と似た性格を持つことも問題となり得ます。最低10年居住を受給条件とすれば、現行制度に比べて財源が膨らむ可能性もあります。
いずれにしろ、国民の負担は免れないのであれば、政府のスリム化、企業の効率化を通じて、国民が安心してお金を消費に回せるように、社会保障全体の信頼を高めなければなりません。