社会保障協定の効力を持つ相手国が10カ国に
◆保険料の二重払い防止
二国間における公的年金保険料の二重払いなどを防止することを目的とした「社会保障協定」に関して、日本との締結相手国が10カ国になりました。平成12年2月のドイツを皮切りに、英国・韓国・米国・ベルギー・フランス・カナダ・オーストラリア・オランダと協定を結び、今年6月よりチェコが加わりました。
国際間の人的移動の増えた現代では、国民皆保険制度の日本にとって歓迎される協定です。
◆社会保障協定の仕組み
外国に派遣され就労している人は、派遣中でも自国の社会保険制度に継続して加入している場合が多く、自国の制度と外国の制度に対して二重に保険料を支払うことを余儀なくされます。また、日本の公的年金制度に限らず、外国の公的年金制度についても、老齢年金の受給資格の1つとして、制度への一定期間の加入を要求している場合がありますが、外国に短期間派遣され、その期間だけその国の公的年金制度に加入したとしても、老齢年金の受給資格要件としての一定の加入年数を満たすことができない場合が多いため、外国で負担した保険料が掛捨てになります。
社会保障協定は、これらの問題を解決するために相手国と締結する協定であり、「社会保険制度への二重加入の防止」と「年金加入期間の通算」が主な内容です。
◆今後の見通し
海外赴任者の場合、その保険料は企業が負担することが多いため、この協定を結ぶと、一般的には海外進出企業の保険料負担の軽減につながります。
海外に長期滞在する日本人は約74万6,000人と言われ、チェコを含む協定発効先10カ国にその約6割(約43万人)がいます。厚生労働省の試算では、これらの国に進出している日本企業の負担は年間1,000億円程度軽減でき、そのうち米国向けが半分以上を占めるとみられています。
今後も、多くの日本企業が進出しており、社会保障制度の比較的進んでいる国に的を絞って協定を結ぶことで、この先5年程度の間に協定国は20カ国を超えるとみられています。
年金受給は私達の将来にわたって関わりのあるものです。保険料の支払金額は将来の年金額に影響をもたらすものであり、このような協定は大いに歓迎したいものです。
労働相談件数が過去最多を更新!
◆急激な景気悪化を反映
労働者と企業間のトラブルを裁判に持ち込まずに迅速に解決することを目指す「個別労働紛争解決制度」に基づく2008年度の「民事上の個別労働紛争相談件数」が、過去最多の約23万7,000件に上りました。厚生労働省は、「急激な景気悪化を反映し、解雇や雇止めをめぐる非正規労働者からの相談が目立っている」としています。
◆2001年にスタートした個別労働紛争解決制度
個別労働紛争解決制度は2001年10月にスタートし、全国の労働局などの「総合労働相談コーナー」で相談を受け付けています。
全体の「総合労働相談件数」は107万5,021件(前年度比7.8%増)と初めて100万件を突破し、このうち、労働基準法や労働者派遣法などに明確に違反しているものを除く、民事上の労働紛争に関するものは23万6,993件(同19.8%増)でした。
◆「解雇」関連の相談が最多
紛争内容については、「解雇」関連が25.0%と最も多く、経済的な理由による「整理解雇」の相談件数は前年度の2倍以上になりました。また、「労働条件の引下げ」が13.1%、「いじめ・嫌がらせ」が12.0%でした。
相談を受け、実際に労働局が企業側に指導・助言をしたのは7,592件(同14.1%増)、専門家で構成される紛争調整委員会があっせんに乗り出したケースは8,457件(同18.3%増)となっています。
厚生労働省紛争処理業務室では、「景気悪化で労働トラブルに遭う労働者が増えている。不利益な取扱いを受けたり、疑問を感じたりしたら、最寄りの労働局に相談してほしい」としています。
◆トラブルを一歩手前で防ぐ
都道府県労働局長による助言・指導の申出件数が多かったものは、2007年は「解雇」、「労働条件の引下げ」、「いじめ・嫌がらせ」と続き、2008年は「解雇」、「いじめ・嫌がらせ」、「労働条件の引下げ」でした。一方、紛争調整委員会によるあっせん申請件数が多かったものは、2007・2008年ともに「解雇」、「いじめ・嫌がらせ」、「労働条件の引下げ」と続き、上位3件は顔ぶれが同じとなっています。
もう一歩踏み込んで、個別労働紛争解決制度を利用する手前で、労使トラブルを未然に防ぐためには、「労使間でコミュニケーションをとっていく」、「細やかな就業規則を作成する」といったような努力が必要なのではないでしょうか。
災害・事故などに対応する「事業継続計画(BCP)」
◆強毒性だけでなく弱毒性にも対応
最近の新型インフルエンザの流行の影響もあり、大手企業を中心に、重要業務への影響を最小限に抑えるための「事業継続計画(BCP)」の拡充が進んでいます。
企業が持つBCPの多くは自然災害や強毒性の鳥インフルエンザの流行を想定していたため、大手通信社や流通企業などは、弱毒性インフルエンザの場合にも対応できる、詳細な計画作りを進めているようです。
◆「BCP」とはどんなものか?
事業継続計画(BCP「Business Continuity Plan」)とは、災害・事故などの非常事態発生時に、企業や自治体が重要業務をできるだけ中断せず継続させるための計画です。仮に中断した場合であっても、目標とする復旧時間内での業務再開を目指します。計画には、地震などの自然災害、情報システム障害、テロなどあらゆるリスクを織り込む必要があります。欧米では1990年代以降、社員の不祥事なども想定リスクに加えてBCPを作成する企業が増えました。
日本でも大手企業を中心に導入事例が増えつつありますが、地震や台風などの対策を主眼としているケースが多く見られます。ある新聞社が「人と防災未来センター」(神戸市)と共同で2008年11月下旬から12月中旬にかけて実施した調査では、新型インフルエンザの大流行に備えてBCPの策定に動いている大企業は62%で、このうち「策定済み」は15%、「策定予定」は47%でした。
◆企業により異なる対応
これまでのほとんどの企業のBCPは、「強毒性」の鳥インフルエンザを想定しています。そのため、「弱毒性」と言われる今回のインフルエンザに対しては機械的な運用を避けて柔軟に対応しています。業務を停止すれば市民生活に大きな影響を与えることになる電力・ガス、医薬品業界などは、詳細な行動計画を策定しており、それに基づいて段階的に対策を進める考えです。
一方、多くの人が集まる鉄道や流通業などでは対応が分かれています。ある鉄道会社は、まとまったBCPは策定せず、防災対策など、個々にマニュアルを用意し、今回は職員に予防の手引きを配付しましたが、大流行時の対応は盛り込まれておらず、「運行については国からの指示に従う」方針です。
遊園地を運営する企業では新型インフルエンザ対策も含めたBCPの策定を検討していますが、休業するかどうかの判断基準はまったく未定で、「行政の指導を仰ぎながら柔軟に対応する」としています。また、空港と都心を結ぶ鉄道を運行する企業は「業務の優先順位付けなどを検討中で、早急に対応策を完成させる」方針です。
◆大手だけでは意味がない
大手企業では進み始めたBCPの策定ですが、大手企業は多くの業務で中小企業に依存しています。そのため、感染拡大を防ぐにはサプライチェーン全体に予防措置を徹底する必要があります。今後は、中小企業でも対応策が必要になりそうです。
母親の4割超が「子どものため自分は犠牲に」
◆親は子どもの犠牲に?
「自分の生き方より子育てを優先」。新聞報道によると、大手通信教育社が幼稚園児や保育園児の子どもを持つ母親を対象に行った調査で、「子どものために自分が犠牲になるのは仕方ない」と回答した人の割合が5年前より増え(全体の40%超)、このような考え方が増えていることがわかったそうです。一方で「自分の生き方も大事にしたい」と考える母親の割合は減っています。
◆子育ての意識が高まる
「子育ても大事だが自分の生き方も大切にしたい」と答えた母親は5年間で7.1ポイント減少して56.7%となりました。
家庭でのしつけについては、起床や就寝時間など「規則正しい生活リズムが身につくようにしつけている」と回答した母親が14.3ポイント増加して70.7%となっています。学力面では、「小学校入学までに読み書きができるように心がけている」と答えた母親が5.1ポイント増えて25.3%になりました。過半数が週に1~2回以上、「一緒にひらがなやカタカナの学習をする」と答えたほか、40%近くが「一緒に数や算数の学習をする」といい、しつけや教育への関心の高まりがうかがえます。
◆家庭の事情に応じた支援策を
母親の就業別に回答を求めた質問では、専業主婦の48.4%が「自分は子育てに向いている」と回答したのに対し、フルタイムで働く母親は40.8%でした。また、フルタイム勤務の人の14.6%が「良い母親であろうとして、かなり無理をしている」と答えています。
夫婦でお互いの関心事を話し合うフルタイム勤務の母親は58.0%で、専業主婦(75.5%)に比べると大きく下回り、調査を行った会社では「常勤の母親にとっては育児と仕事の両立が難しい状況が生まれている。個々の家庭の実情に応じた支援策が必要になってくるだろう」としています。
「短時間正社員」定着促進のための助成金拡充へ
◆就業意識・価値観の変化
厚生労働省は、子育てや介護などで就業時間に制約があっても正社員として働くことができる「短時間正社員」を定着させるため、助成金制度を今夏にも拡充する構えです。
様々な雇用形態が入り混じる現代で、就業意識や価値観の変化により、個人の希望に応じた働き方を選択したいという労働者が増加しています。
◆「短時間正社員」の働き方
短時間正社員は、「正社員」としての身分は変わりません。1日の労働時間や1週間の労働日数をフルタイム正社員より短くするものの、仕事はフルタイム正社員と同じで、給与や賞与は働いた時間に比例して支払われ、昇進は通常の正社員と同等に扱うなど、これらの点で非正社員とは区別されるものです。
現代では、個人の希望に応じた働き方を選択したいという労働者が増加しており、中でも育児や介護の課題を解決し、就業を継続しながら仕事と家庭の両立を目指す手段としては有効な働き方と言えるでしょう。
◆ワークシェアとの違い
時短で働く方法としては「ワークシェアリング」の名称が知られていますが、これは、仕事の総量を労働者で分かち合うというもので、1人当たりの労働時間を減らすことによって企業全体での雇用を維持したり、様々な業務ごとの短時間労働を組み合わせることによって雇用機会を増やしたりすることにつながるというものです。
これに対して、短時間正社員制度は、労働者の地位を正社員と同じにするというもので、特に現在就労中の人にとっては、現状の業務を続けやすいと言えるでしょう。
◆国や企業に期待されること
現在、企業が短時間正社員を導入する際、「短時間労働者均衡待遇推進助成金」(パートタイマー均衡待遇推進助成金)として最大40万円を支給される制度があります。この制度は、従来、短時間正社員を導入する際に、1人でも複数人でも助成金額は同じでしたが、厚生労働省は、今夏にも、人数に応じて金額を増やす仕組みを検討しています。追加人数の上限は10人を想定しているようです。
豊富な業務経験を持っていても就労条件が合わないために働き続けることができなければ、労働者のみならず企業にとっても大きな損失になりかねません。労働力を有効に活用するために、国や企業には柔軟な対応が望まれるのではないでしょうか。
中小企業の生き残り策として注目を集める
「第二会社方式」
◆「第二会社方式」とは?
近年、経営状態が厳しくなった中小企業による「第二会社方式」の活用件数が増加傾向にあるようです。
この「第二会社方式」とは、経営困難に陥っている企業の中でも収益性のある事業部門について、事業譲渡や会社分割の方法によって別法人(第二会社)に分離し、赤字部門を残した旧会社を清算することにより事業の継続を図るものです。
この方式を活用した事業再生は、不良債権のリスクを負わずに損金算入の手続きが容易なことから、金融機関やスポンサーの協力が得やすいというメリットが大きく、非常に注目されています。
◆デメリットはないのか?
上記の「第二会社方式」については、これまで、以下のようなデメリットが指摘されていました。
(1)第二会社において事業継続に必要な運転資金を確保するために、多額の資金調達を必要とすること。
(2)事業の継続に必要な資産の移転にあたって、税負担が発生すること。
(3)第二会社により継続を図る事業が行政官庁の許認可等の対象となっている場合、改めて許認可等の取得申請が必要となること。
◆デメリット解消のための法改正
今年の4月22日に成立した「改正産業活力再生特別措置法」により、上記のデメリットが解消されることになりました。つまり、「必要な事業資金に対する金融支援」、「登録免許税・不動産取得税負担の軽減」、「特例による営業上必要な許認可の承継」が認められるようになったのです。
改正法はすでに4月30日に公布され一部施行されていますが、主要事項の施行は今年7月以降になるとみられており、今後、指針等も発表される予定です。これから、この「第二会社方式」を活用する中小企業がますます増えてくるかもしれません。
企業の「営業秘密」を保護するための改正不正競争防止法
◆改正不正競争防止法が成立
この度、「不正競争防止法の一部を改正する法律案」が可決・成立し、4月30日に公布されました(施行は来年の4月以降となる予定)。
この法改正は、「企業間の公正な競争の確保」の観点から、企業が保有する営業秘密の保護を図るための措置を設けたものであり、一般企業にも大きな影響を与えるものと思われます。特に以下の(3)については、自社の従業員や取引先にも関係がありますから、特に注意が必要です。
以下、法改正の内容を簡単にご紹介します。
◆主要な改正内容
(1)営業秘密侵害罪の目的要件の変更
これまで、営業秘密を侵害したとして罰するには、「不正競争の目的で」侵害することが必要とされていました。これが改正され、「不正の利益を得る目的で、またはその保有者に損害を加える目的で」侵害することで足りるようになりました。
この改正により、これまでは罰することのできなかった「不正な利益を得るため、海外政府などに営業秘密を開示する行為」や「営業秘密の保有者を単に害するため、営業秘密をネット上の掲示板に書き込む愉快犯的な行為」も罰せられるようになるため、結果的に、営業秘密を保有する企業がこれまでよりも保護されるようになります。
(2)処罰対象行為の見直し
これまで、処罰の対象となるのは、第三者などが違法性の高い行為(詐欺的行為や管理侵害行為など)を行ったうえで、「営業秘密記録媒体などを介した方法により」不正に営業秘密を取得した場合だけでした。これが改正され、営業秘密の取得方法が記録媒体などを介していない場合でも罰せられるようになりました。
この改正により、「営業秘密を記憶する場合」や「記録媒体などに記録されていない営業秘密(会議における会話)を盗聴する場合」も処罰の対象となります。
(3)従業員等による営業秘密取得自体への刑事罰の導入
これまで、営業秘密の保有者から秘密を示された者(従業員や取引先など)については、秘密の使用・開示に至った段階で初めて刑事罰の対象となっていました。これが改正され、「記録媒体などの横領」「記録媒体などの記録の複製作成」「記録の消去義務に違反したうえで消去したように偽装する行為」という方法で営業秘密を取得した場合に罰せられるようになりました。
政府による取組みの効果? 出生率が3年連続上昇
◆3年連続で「合計特殊出生率」が上昇
先日、厚生労働省から「人口動態統計」が発表されましたが、これによると、2008年における合計特殊出生率(女性が生涯に産む子どもの数)は「1.37」となり、2007年の「1.34」を上回ったそうです。2006年に6年ぶりに上昇して以来、これで3年連続の上昇となりました。出生数は109万1,150人(前年比1,332人)でした。
同省では、晩婚化を背景に30歳代の出産が増えていることや、減少していた20歳代の出産が下げ止まり傾向にあると分析していますが、これまでの政府による「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」への取組みが、いくらか功を奏しているようです。
◆これまでの取組み
政府はこれまで、「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」を設け、「ワーク・ライフ・バランス憲章」や「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を策定するなど、積極的に少子化対策に取り組んできました。
そして昨年の7月には「仕事と生活の調和の実現に向け当面取り組むべき事項」(http://www8.cao.go.jp/wlb/government/top/toumen/pdf/s1.pdf)を発表し、以下の項目を掲げました。
(1)企業の取組みの見える化……企業が策定の「一般事業主行動計画」の公表促進
(2)企業向けアドバイザー養成……「仕事と生活の調和アドバイザー」養成の支援
(3)推進企業ネットワークの構築……企業における推進者によるネットワーク作り
(4)男性の働き方を変える……男性の育児休暇取得の促進、実践事例の提供・紹介
(5)データベースの構築……好事例の収集および内閣府ホームページにおける掲載
(6)国家公務員の取組み(隗より始める)……政府全体として労働時間の短縮推進
◆今後の法改正の動き
現在、以下の内容を盛り込んだ「改正育児・介護休業法案」が国会にて審議されています。この法律が成立して施行されれば、各企業の取組み方にもよりますが、さらに「ワーク・ライフ・バランス」が進んでいくかもしれません。
・短時間勤務制度の義務化
・所定外労働の免除の義務化
・子の看護休暇制度の拡充
・パパ・ママ育休プラス(仮称)
・父親の育児休業取得の促進
・労使協定による専業主婦(夫)除外規定の廃止
・介護のための短期休暇制度の創設
・紛争解決の援助・調停の仕組み等の創設
・公表制度・過料の創設
社員の副業・アルバイトを認める場合の留意点
◆不況による影響
金融危機に端を発する昨年来の不況により、各企業における「派遣社員の解雇」、「有期契約労働者の雇止め」、「一時帰休」、「希望退職・早期退職」、「退職勧奨」「整理解雇」の実施などが数多く報じられています。また、「給与カット」「賞与カット」などを実施するところもあり、これらは社員の生活に関わるため、大きな問題となっています。
給与カット・賞与カットによる社員の収入減に対応する施策の1つとして、従来は認めていなかった「副業」や「アルバイト」を容認する企業が徐々に増えているようです。社員に副業・アルバイトを認めることにより、減った分の給与を補填してもらうのが狙いです。
◆会社にとっての選択肢
これまで社員に副業・アルバイトを認めていなかった(いわゆる「兼業禁止規定」を置いていた)会社がこれらを認める場合の選択肢としては、以下の3つが考えられます。
(1)「会社による許可制」として認める。
(2)「会社への届出制」として認める。
(3)「完全解禁」として認める。
上記のいずれを選択するにしても、会社の就業規則や社内規定を整備し、社員の副業・アルバイトを認める場合の基準をはっきりと社員に示しておかなければなりません。
また、副業・アルバイトを認める場合でも、期限を決めて認めるのか、今後はずっと認めるのかを決めておくべきです。
◆認める場合の留意点
副業・アルバイトを認めるとしても、注意しなければならない点がいくつかあります。
1つは、「自社の業務と競合するような会社での副業・アルバイトは禁止する」ということが考えられます。自社の社員を競合会社で働かせることにより、自社の営業秘密やノウハウなどが他社に漏れる可能性があるからです。
もう1つは、「疲労やストレスなどを溜めさせない」ということです。副業・アルバイトを認めてトータルの労働時間が長くなることによって、社員に疲労・ストレスが溜まり、それにより自社での仕事がおろそかになってしまっては、本末転倒です。
これらのリスク等も十分に検討したうえで、会社の方針を決定しましょう。
畑中社労士事務所では顧問先の企業様を対象に 毎月事務所便りを発行しています。 内容は法改正情報や人事労務に関する時事ニュース等を中心に会社を 経営する上で欠かせない情報をお伝えしています。 このページでは今までに発行した事務所便りの 概要をご紹介させて頂きます。
2009/06/29
2009/05/27
6月の事務所便り
中小企業と求職者との“お見合い”バスツアー
◆「雇用確保」と「地域活性化」
中小企業庁は、仕事を探す人たちに中小企業を案内し、雇用の確保と地域の活性化につなげようと、「地域魅力発見バスツアー」(愛称“ちいバス”http://chi-bus.net/)を開始すると発表しました。2009年度中に全国で100ツアーを開催し、3,000人の参加を見込んでいます。
◆ツアーの概要
「地域魅力発見バスツアー」は、優秀な人材を求める中小企業と参加者(求職者)が直接じっくりと話をする場を持ち、関心を持ち合った同士をつないで、就職につなげるというものです。1つの都道府県を2泊3日でまわり、7社程度を訪問するツアーを中心に、日帰りや5泊6日など、5種類を用意しています。
雇用に積極的な全国1,400社が訪問先で、1回あたりの参加者は約30人を予定しています。宿泊費やバス代は同庁が負担しますが、ツアー中の食事代や集合場所への交通費は参加者が負担します。行き先が地方の場合、東京など大都市圏からの出発と現地出発の両方が用意されています。参加者の年齢や居住地域の制限はありませんが、応募多数の場合は抽選となります。
1回目は4月22~24日に千葉県で開催され、2回目は5月26~29日に大分県で開催される予定です。この2つのツアーを含め、今年の年末までに75のツアーが計画されています。出発地点は、仙台、東京、名古屋、静岡、愛知、大阪、広島、福岡など、不況で仕事を失った方が多い地域が中心となっています。
◆ツアーが新たな雇用の機会に
大企業がリストラを実施したり、新卒採用を絞ったりしている今こそ、優秀な人材を獲得するチャンスと捉えている中小企業は多いと言われています。仕事を探している求職者にとっては、地方に関心を持っても就職活動に行くのはなかなか難しいという声もあります。
就職フェアなど、求人側が同じ場所に集まって求職者と顔合わせをするという今までの形ではなく、バスツアーで各地を訪れ、実際に働く現場を自分の目で見ることができ、そこで働く人ともじっくりと話ができるこの新たな形態が、優秀な人材を求める中小企業と求職者とを結ぶ新たな雇用の機会として確立することに期待したいものです。
国民年金納付率が過去最低を更新
◆3年連続で低下
2008年度の国民年金保険料の納付率は62%前後となり、過去最低だった2002年度を下回りました。3年連続の低下で、政府が目標とする80%との乖離が広がっています。
◆納付率低下が与える影響
国民年金の納付率が低下した原因として、年金記録問題への対応に人手を割かれて保険料収納担当は人員削減となり、収納が効率よくできなかったことや、記録漏れ問題への不信感から意図的に支払われなかった人が増えたことなどが挙げられます。そして、雇用情勢の悪化も追い討ちをかけ、リストラなどで離職者が増え、厚生年金から国民年金に切り替わるケースが増加し、生活費の確保を優先して滞納する人も増えていると指摘されています。
厚生労働省がまとめた公的年金の財政検証によれば、国民年金の納付率が80%で推移すれば、現役世代の手取り収入に対する厚生年金の給付水準は「50.1%」に下げ止まると試算しています。しかし、納付率が低下すれば積立金が減るなどして前提条件が崩れ、政府が約束する「50%給付」は難しくなると言われています。
さらに、国民年金未加入者や未納者が加入期間を満たすことができず、将来年金を受け取ることができない無年金者が増えると、生活保護者を増やすことにもつながり、国の負担はますます増えることが懸念されています。
◆納付率アップへの取組み
社会保険庁は、1990年代前半に80%台を維持していた納付率を回復させようと、クレジットカードやインターネットで納付ができるように環境を整備しているほか、収納業務の民間委託対象を増やすなど強制的な徴収の枠組みづくりなどにも力を入れ、納付率の向上を目指してきました。
そして、今年11月からは「住民基本台帳ネットワーク」を活用し、国民年金のみ加入者を把握し、34歳と44歳に達した人を対象に国民年金への加入を勧奨するそうです。ねらいは、通知を送ることで未加入者を効率的に減らすことです。
納付率の低さが、将来我々の受け取ることができる年金に響いてくるという現在の年金制度にも問題があるように思いますが、何よりも、なぜ国民年金を払う必要があるのかということ、加入することのメリット、年金を受給するためには必ず加入期間が25年必要であることなど、国民に対してわかりやすい制度の説明を十分に行うことが必要でしょう。
年金への不安や不信感が高まる中、年金に対する意識を変えることが納付率向上の一番の近道になるように思います。
労働基準監督署への申立て件数が増加
◆雇用情勢悪化の中…
景気後退で雇用情勢が悪化し、労働基準監督署に不服を申し立てる労働者が急増しているようです。不当な解雇や賃金不払いなどを不満とするケースが多くみられ、2008年の申立て件数は39,384件となり、1955年以来、53年ぶりの高水準となりました。
◆申立て内容の検討
全国約320の労働基準監督署では、雇用問題に関する労働者からの相談や申告を受けつけています。これをもとに調査を実施し、労働基準法などの法律違反が判明すれば、企業に是正勧告がなされます。勧告に従わない企業は送検されることもあります。
2008年の申立て件数は前年比11%増え、厳しい不況に見舞われた直後の昭和55年(55,999件)以来の高水準となりました。2009年に入っても1月は3,647件、2月は3,811件と高水準で推移しています。
2008年の内訳をみると、最も多いのは賃金不払い(28,955件)で、経営不振の企業から賃金をもらえなくても数カ月間辛抱して働き、我慢できなくなって最後に申し立てる労働者が目立っています。一方、職場に突然来なくなるなど、賃金不払いの責任が労働者にあるケースもみられます。
解雇は7,360件で、解雇に至るまでの手続きが十分でない企業が多くみられます。企業が労働者を解雇する場合、30日以上前に予告する必要がありますが、予告しないときには30日分以上の賃金(解雇予告手当)を支払わなければいけません。こうした手続きを知らない企業の増加が不服を申し立てる件数を押し上げているとみられています。
◆労使トラブルに発展する前に
現在、やむなく労働条件の引下げや希望退職者の募集、解雇など雇用調整を行わざるを得ないとする企業が多くみられます。労働条件引下げや解雇などを行うことがやむを得ない場合であっても、実施に当たっては、法律で定められている手続き、労使間で定めた必要な手続き等を遵守するとともに、事前に労使間での話合いや労働者への説明を行うことが必要です。これらを怠ると労使のトラブルに発展します。
厚生労働省では、労働条件引下げや解雇をやむを得ず検討しなければならない場合であっても守らなければならない法令の概要や、労務管理上参考となる裁判例の主なものを取りまとめた「厳しい経済情勢下での 労務管理のポイント」(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/081218-1.pdf)というリーフレットを作成しました。 このリーフレットで労務管理のポイントを自社と照らし合わせ、適正な手続きのもと労使トラブルに発展することを回避したいものです。
「メタボ検診」伸び悩む受診率
◆受診率の低さ
40歳から74歳までの人を対象に行う、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)かどうかを調べる「特定健康診査・特定保健指導」(メタボ検診)の受診率の低さが問題視されています。
◆各市町村の取組み
生活習慣病を減らして医療費削減につなげる、世界でも例を見ない取組みとしてスタートし、1年が経過しました。国民健康保険の加入者を対象にメタボ健診を実施する市町村の多くは受診率の低さに頭を悩ませており、受診率が目標に届かない自治体が続出しています。
メタボ健診は、メタボリックシンドロームに着目した健康診断のことです。メタボリック症候群やその予備軍の人に対し、早期に治療や生活指導を徹底して、増大する医療費を削減することが目的の新健診です。健康保険組合や市町村などの保険者に実施が義務付けられており、健康保険組合の場合、従業員(被保険者)だけでなく、被扶養者も対象となります。
国は市町村国保について、2012年度の特定健診の受診率を「65%」、特定保健指導の実施率を「45%」とする目標を設定しています。市町村はこれを達成できないと、75歳以上の医療費への拠出金が最大10%増えるというペナルティを課されることもあり、受診率アップのために様々な独自の工夫を行っています。
例えば、平日は忙しくて受診できない人を呼び込もうと休日や夜間に健診日を設定した「ナイト健診」を実施したり、女性の受診率アップを目指した「レディースデー」を設けたり、受診を促しています。
◆受診率アップにむけて
2008年11月末時点での市町村国保の受診率の平均値は28.8%にとどまり、2008年度の目標値として掲げる「35%」を下回っている現状です。
受診率をアップさせるため様々な取組みを行っていますが、何よりも、メタボリックシンドロームが肥満症や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病をひき起こす原因となっていること、生活習慣病発症を予防するための検診がメタボ検診であることをもっと周知させる必要があるように思います。発症する前に予防することの大切さをもっと伝えるべきではないでしょうか。
障害者雇用促進法の改正
◆改正のポイント
障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律(改正障害者雇用促進法)が成立し、平成21年4月から段階的に施行されています。
(1)「障害者雇用納付金制度」の対象事業主の拡大
障害者雇用納付金制度は、雇用障害者数が法定雇用率の1.8%に満たない事業主から、その雇用する障害者が1人不足するごとに1月当たり5万円を徴収し、法定雇用率を超えて障害者を雇用する事業主に対し、障害者雇用調整金(超過1人につき1月当たり2万7,000円)や助成金を支給する仕組みです。
これまでは常用雇用労働者を301人以上雇用する事業主のみを対象としてきましたが、障害者の身近な雇用の場である中小企業における障害者雇用の促進を図るため、平成22年7月から常用雇用労働者201人以上300人以下の事業主、平成27年4月から常用雇用労働者101人以上200人以下の事業主に、制度の対象が拡大されます。
(2)障害者の短時間労働への対応
現在、原則として、週所定労働時間が30時間以上の労働者を実雇用率や法定雇用障害者数の算定の基礎としています。短時間労働については、障害者によっては、障害の特性や程度、加齢に伴う体力の低下等により、長時間労働が難しい場合があるほか、障害者が福祉的就労から一般雇用へ移行していくための段階的な就労形態として有効であるなどの理由から、障害者に一定のニーズがあります。
こうしたニーズへの対応として、平成22年7月からは障害者雇用率制度における実雇用障害者数や実雇用率のカウントの際に、身体障害者または知的障害者である短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満)を「0.5」としてカウントすることとなりました。
◆法改正の一方で
法改正が行われ、障害者雇用の拡大と安定が図られる一方、昨秋以降の世界同時不況の影響で障害者が解雇されるケースが急増しています。不況になると、非正規社員や障害者、育児休業者などの社会的弱者が解雇の標的となり、失業者が急増して問題視されています。
政府の対策として、失業給付の拡充などの救済策はすぐに打ち出されましたが、解雇に至らないケースへの対策も充実させ、雇用が安定することを期待したいものです。
育児・介護休業法改正案のポイント
◆平成22年4月の施行予定
3歳未満の子どもを持つ従業員に対する「短時間勤務制度」の導入を企業に義務付けることや、父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2カ月までの間に1年間育児休業を取得可能とする「パパ・ママ育休プラス」の創設などを盛り込んだ育児・介護休業法の改正案が閣議決定されました。国会審議が順調に進めば、来年4月施行の予定です。
◆改正案のポイント
(1)子育て期間中の働き方の見直し
・3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度(1日6時間)を設けることを事業主の義務とし、労働者からの請求があったときの所定外労働の免除を制度化する。
・子の看護休暇制度を拡充する
(小学校就学前の子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日)。
(2)父親も子育てができる働き方の実現
・父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2カ月(現行1歳)までの間に、1年間育児休業を取得可能とする。
・父親が出産後8週間以内に育児休業を取得した後に復帰した場合、再度育児休業を取得可能とする。
・配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得不可とすることができる制度を廃止する。
(3)仕事と介護の両立支援
・介護のための短期の休暇制度を創設する
(要介護状態の対象家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日)。
(4)実効性の確保
・苦情処理・紛争解決の援助および調停の仕組みを創設する。
・勧告に従わない場合の公表制度、および報告を求めた場合に報告をせず、または虚偽の報告をした者に対する過料を創設する。
◆仕事と家庭の両立に向けて
上記内容は、いずれも企業の取組み強化を迫るものとなっています。しかし、制度は整ったとしても、現実は利用しにくい雰囲気が、育休取得が進まない原因となっており、中小企業では、仕事と家庭を両立させ、育児休業を取得するには難しい状況であると言われています。
改正法が成立しても、両立支援が実効性あるものになるかどうかは、職場の意識改革を進めて育児休業を利用しやすい職場環境を作れるか、そして何よりも経営者の取組みがカギとなるでしょう。
利用が増加する「未払賃金立替払制度」とは?
◆ここに来て利用が急増
不況の影響による企業の倒産が連日のように報道されていますが、倒産に伴う退職労働者に国が未払いの賃金を立替払いする「未払賃金立替払制度」の利用件数も増加しているようです。
2008年度における支給者数は5万4,422人、支給総額は248億円と、ともに前年比6%増となっています。また、企業数は3,639件(前年度比8.7%増加)、支給者1人あたりの平均立替払額は45万6,000円でした。
なお、 2008年度下半期に限ってみると、同年上半期と比較して37%も増加しています。
◆制度の概要
未払賃金の立替払制度は、企業の倒産に伴い、賃金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して、国が未払賃金の一部を事業主に代わって立替払いする制度です。この業務を行っているのは「独立行政法人労働者健康福祉機構」(http://www.rofuku.go.jp/)です。
◆利用の要件
(1)事業主に係る要件
労災保険の適用事業の事業主で、かつ1年以上事業を実施していること、法律上の倒産(破産手続開始の決定、特別清算開始の命令、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定)をしたことが要件となります。
なお、中小企業の場合は、事実上の倒産(事業活動停止、再開見込みなし、賃金支払能力なし)
でもよいとされています。
(2) 労働者に係る要件
破産手続開始等の申立て(事実上の倒産の認定申請)の6カ月前の日から2年間に退職したこと、未払賃金額等について、法律上の倒産の場合には破産管財人等が証明(事実上の倒産の場合には労働基準監督署長が確認)すること、破産手続開始の決定等(事実上の倒産の認定)の日の翌日から2年以内に立替払いの請求を行うことが必要です。
日系外国人の離職・帰国を国がサポート
◆4月から事業スタート
厚生労働省は、「日系人離職者に対する帰国支援事業」を発表し、今年の4月から開始しています。4月だけで1,095人が申請を行ったそうです。
派遣・請負などの不安定な雇用形態にある日系人労働者については、日本語能力が不足していることや日本の雇用慣行に慣れていないことに加え、日本での職務経験が十分ではないことから、一旦離職した場合には再就職が難しいと言われています。
日本で離職した場合、母国で再就職することが有効な選択肢として考えられるため、帰国を希望する日系人に対する帰国支援について、与党を中心に提言がなされていました。
◆「帰国ニーズ」への対応
同省では、これらの「帰国ニーズ」にこたえるため、帰国を決めた離職者に対し、帰国支援金を支給する事業(帰国支援事業)を開始したのです。
なお、引き続き日本で再就職したいと希望する日系外国人に対しては、引き続き、再就職支援、雇用維持のための各種事業、住宅確保支援策の活用などを実施していくとしています。
◆制度の概要
(1)対象者…事業開始以前(平成21年3月31日以前)に入国して就労・離職した日系外国人が対象で
す。日本での再就職を断念して母国に帰国し、同様の身分に基づく在留資格による再度の入国を
行わないこととした者およびその家族に「帰国支援金」が支給されます。
(2)支給額…本人1人当たり30万円、扶養家族については1人当たり20万円が支給されます。なお、
雇用保険受給期間中の者については一定額(支給残日数が30日以上→10万円、同日数が60日
以上→20万円)が上積みされます。
(3)実施主体…ハローワーク(産業雇用安定センターに一部事務を委託)です。
◆日系人の多い地域のハローワーク
日系外国人が多い地域(太田、松本、浜松、美濃加茂、大垣、豊田、刈谷、豊橋、四日市)のハローワークには、「日系人就職促進ナビゲーター」が設置され、細やかな個別就職支援を実施しています。
新型インフル流行で注目浴びるか「在宅勤務」
◆新型インフルエンザ流行による影響
新型インフルエンザの感染が拡大すると、「働き方として在宅勤務(テレワーク)が注目を浴びるのでは?」と言われています。会社員であれば、通勤中の電車やバス内で感染の可能性が高くなるからです。
テレワーク利用者(IT活用により場所と時間を自由に使った柔軟な働き方を週8時間以上利用する人)の数は、「ワーク・ライフ・バランス」などを背景に、2002年に408万人だったのが2005年には674万人と、3年で約65%増加しています。新型インフルエンザの流行によりこの動きがますます加速する可能性があります。
◆導入目的・実施しない理由
労働政策研究・研修機構が2007年に実施した調査によると、企業が考えている「テレワークの導入目的」「テレワークを実施しない理由」は次の通りです。
【導入目的】
・勤務者の移動時間の短縮…66.7%
・仕事と育児・介護など家庭生活の両立…58.3%
・創造的業務の効率・生産性の向上…50.0%
【実施しない理由】
・労働時間の管理が難しい…62.7%
・適した職種(仕事)がない…49.2%
・コミュニケーションに問題がある…45.8%
◆導入には何が必要か?
テレワークを導入するには、まずその職種が導入可能な職種なのかを判断しなければなりません。会社がどのように労働時間を管理するのか、通信費の費用負担はどうするのか、労災が発生した場合はどうするのかなどの問題もクリアしなければなりません。
また、厚生労働省が2008年7月に改訂した「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」などを参考に、「在宅勤務規程」をしっかりと整備しなければならないでしょう。
年金に関する2つの新しい法律
◆2つの法律が成立
年金に関して、2つの新しい法律が成立しました。1つは「年金遅延加算法」、もう1つは「延滞金軽減法」で、いずれも議員立法によるものです。
ここでは、この2つの法律について、その概要を簡単にご紹介します。
◆「年金遅延加算法」の概要
年金遅延加算法(正確には「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律」)は、公的年金制度に対する国民の信頼を回復することを目的として、記録漏れが見つかったことにより年金が増額する人に対し、支給が遅れていた期間の物価上昇率分を上乗せするものです。
初年度においては最大約700億円が見込まれており、法律の施行は来春の予定です。
なお、今年2月の時点で、5年を超す支給の遅れが見つかっているのは約7万3,000件、総額425億円です。
◆「延滞金軽減法」の概要
延滞金軽減法(正確には「社会保険の保険料等に係る延滞金を軽減するための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」)は、社会保険料等の納付が困難な事業主の経済的負担を軽減することを目的として、保険料を滞納した事業主が支払う延滞金の金利(年14.6%)を、3カ月以内の遅れであれば「年7.3%」に引き下げるものです。
ただし、当面は日本銀行が定めている基準割引率に4%をプラスした利息が適用されるため、「年4.5%」となります。
約40億円の負担軽減になるものと見込まれており、法律の施行は2010年1月の予定です。
◆「雇用確保」と「地域活性化」
中小企業庁は、仕事を探す人たちに中小企業を案内し、雇用の確保と地域の活性化につなげようと、「地域魅力発見バスツアー」(愛称“ちいバス”http://chi-bus.net/)を開始すると発表しました。2009年度中に全国で100ツアーを開催し、3,000人の参加を見込んでいます。
◆ツアーの概要
「地域魅力発見バスツアー」は、優秀な人材を求める中小企業と参加者(求職者)が直接じっくりと話をする場を持ち、関心を持ち合った同士をつないで、就職につなげるというものです。1つの都道府県を2泊3日でまわり、7社程度を訪問するツアーを中心に、日帰りや5泊6日など、5種類を用意しています。
雇用に積極的な全国1,400社が訪問先で、1回あたりの参加者は約30人を予定しています。宿泊費やバス代は同庁が負担しますが、ツアー中の食事代や集合場所への交通費は参加者が負担します。行き先が地方の場合、東京など大都市圏からの出発と現地出発の両方が用意されています。参加者の年齢や居住地域の制限はありませんが、応募多数の場合は抽選となります。
1回目は4月22~24日に千葉県で開催され、2回目は5月26~29日に大分県で開催される予定です。この2つのツアーを含め、今年の年末までに75のツアーが計画されています。出発地点は、仙台、東京、名古屋、静岡、愛知、大阪、広島、福岡など、不況で仕事を失った方が多い地域が中心となっています。
◆ツアーが新たな雇用の機会に
大企業がリストラを実施したり、新卒採用を絞ったりしている今こそ、優秀な人材を獲得するチャンスと捉えている中小企業は多いと言われています。仕事を探している求職者にとっては、地方に関心を持っても就職活動に行くのはなかなか難しいという声もあります。
就職フェアなど、求人側が同じ場所に集まって求職者と顔合わせをするという今までの形ではなく、バスツアーで各地を訪れ、実際に働く現場を自分の目で見ることができ、そこで働く人ともじっくりと話ができるこの新たな形態が、優秀な人材を求める中小企業と求職者とを結ぶ新たな雇用の機会として確立することに期待したいものです。
国民年金納付率が過去最低を更新
◆3年連続で低下
2008年度の国民年金保険料の納付率は62%前後となり、過去最低だった2002年度を下回りました。3年連続の低下で、政府が目標とする80%との乖離が広がっています。
◆納付率低下が与える影響
国民年金の納付率が低下した原因として、年金記録問題への対応に人手を割かれて保険料収納担当は人員削減となり、収納が効率よくできなかったことや、記録漏れ問題への不信感から意図的に支払われなかった人が増えたことなどが挙げられます。そして、雇用情勢の悪化も追い討ちをかけ、リストラなどで離職者が増え、厚生年金から国民年金に切り替わるケースが増加し、生活費の確保を優先して滞納する人も増えていると指摘されています。
厚生労働省がまとめた公的年金の財政検証によれば、国民年金の納付率が80%で推移すれば、現役世代の手取り収入に対する厚生年金の給付水準は「50.1%」に下げ止まると試算しています。しかし、納付率が低下すれば積立金が減るなどして前提条件が崩れ、政府が約束する「50%給付」は難しくなると言われています。
さらに、国民年金未加入者や未納者が加入期間を満たすことができず、将来年金を受け取ることができない無年金者が増えると、生活保護者を増やすことにもつながり、国の負担はますます増えることが懸念されています。
◆納付率アップへの取組み
社会保険庁は、1990年代前半に80%台を維持していた納付率を回復させようと、クレジットカードやインターネットで納付ができるように環境を整備しているほか、収納業務の民間委託対象を増やすなど強制的な徴収の枠組みづくりなどにも力を入れ、納付率の向上を目指してきました。
そして、今年11月からは「住民基本台帳ネットワーク」を活用し、国民年金のみ加入者を把握し、34歳と44歳に達した人を対象に国民年金への加入を勧奨するそうです。ねらいは、通知を送ることで未加入者を効率的に減らすことです。
納付率の低さが、将来我々の受け取ることができる年金に響いてくるという現在の年金制度にも問題があるように思いますが、何よりも、なぜ国民年金を払う必要があるのかということ、加入することのメリット、年金を受給するためには必ず加入期間が25年必要であることなど、国民に対してわかりやすい制度の説明を十分に行うことが必要でしょう。
年金への不安や不信感が高まる中、年金に対する意識を変えることが納付率向上の一番の近道になるように思います。
労働基準監督署への申立て件数が増加
◆雇用情勢悪化の中…
景気後退で雇用情勢が悪化し、労働基準監督署に不服を申し立てる労働者が急増しているようです。不当な解雇や賃金不払いなどを不満とするケースが多くみられ、2008年の申立て件数は39,384件となり、1955年以来、53年ぶりの高水準となりました。
◆申立て内容の検討
全国約320の労働基準監督署では、雇用問題に関する労働者からの相談や申告を受けつけています。これをもとに調査を実施し、労働基準法などの法律違反が判明すれば、企業に是正勧告がなされます。勧告に従わない企業は送検されることもあります。
2008年の申立て件数は前年比11%増え、厳しい不況に見舞われた直後の昭和55年(55,999件)以来の高水準となりました。2009年に入っても1月は3,647件、2月は3,811件と高水準で推移しています。
2008年の内訳をみると、最も多いのは賃金不払い(28,955件)で、経営不振の企業から賃金をもらえなくても数カ月間辛抱して働き、我慢できなくなって最後に申し立てる労働者が目立っています。一方、職場に突然来なくなるなど、賃金不払いの責任が労働者にあるケースもみられます。
解雇は7,360件で、解雇に至るまでの手続きが十分でない企業が多くみられます。企業が労働者を解雇する場合、30日以上前に予告する必要がありますが、予告しないときには30日分以上の賃金(解雇予告手当)を支払わなければいけません。こうした手続きを知らない企業の増加が不服を申し立てる件数を押し上げているとみられています。
◆労使トラブルに発展する前に
現在、やむなく労働条件の引下げや希望退職者の募集、解雇など雇用調整を行わざるを得ないとする企業が多くみられます。労働条件引下げや解雇などを行うことがやむを得ない場合であっても、実施に当たっては、法律で定められている手続き、労使間で定めた必要な手続き等を遵守するとともに、事前に労使間での話合いや労働者への説明を行うことが必要です。これらを怠ると労使のトラブルに発展します。
厚生労働省では、労働条件引下げや解雇をやむを得ず検討しなければならない場合であっても守らなければならない法令の概要や、労務管理上参考となる裁判例の主なものを取りまとめた「厳しい経済情勢下での 労務管理のポイント」(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/081218-1.pdf)というリーフレットを作成しました。 このリーフレットで労務管理のポイントを自社と照らし合わせ、適正な手続きのもと労使トラブルに発展することを回避したいものです。
「メタボ検診」伸び悩む受診率
◆受診率の低さ
40歳から74歳までの人を対象に行う、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)かどうかを調べる「特定健康診査・特定保健指導」(メタボ検診)の受診率の低さが問題視されています。
◆各市町村の取組み
生活習慣病を減らして医療費削減につなげる、世界でも例を見ない取組みとしてスタートし、1年が経過しました。国民健康保険の加入者を対象にメタボ健診を実施する市町村の多くは受診率の低さに頭を悩ませており、受診率が目標に届かない自治体が続出しています。
メタボ健診は、メタボリックシンドロームに着目した健康診断のことです。メタボリック症候群やその予備軍の人に対し、早期に治療や生活指導を徹底して、増大する医療費を削減することが目的の新健診です。健康保険組合や市町村などの保険者に実施が義務付けられており、健康保険組合の場合、従業員(被保険者)だけでなく、被扶養者も対象となります。
国は市町村国保について、2012年度の特定健診の受診率を「65%」、特定保健指導の実施率を「45%」とする目標を設定しています。市町村はこれを達成できないと、75歳以上の医療費への拠出金が最大10%増えるというペナルティを課されることもあり、受診率アップのために様々な独自の工夫を行っています。
例えば、平日は忙しくて受診できない人を呼び込もうと休日や夜間に健診日を設定した「ナイト健診」を実施したり、女性の受診率アップを目指した「レディースデー」を設けたり、受診を促しています。
◆受診率アップにむけて
2008年11月末時点での市町村国保の受診率の平均値は28.8%にとどまり、2008年度の目標値として掲げる「35%」を下回っている現状です。
受診率をアップさせるため様々な取組みを行っていますが、何よりも、メタボリックシンドロームが肥満症や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病をひき起こす原因となっていること、生活習慣病発症を予防するための検診がメタボ検診であることをもっと周知させる必要があるように思います。発症する前に予防することの大切さをもっと伝えるべきではないでしょうか。
障害者雇用促進法の改正
◆改正のポイント
障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律(改正障害者雇用促進法)が成立し、平成21年4月から段階的に施行されています。
(1)「障害者雇用納付金制度」の対象事業主の拡大
障害者雇用納付金制度は、雇用障害者数が法定雇用率の1.8%に満たない事業主から、その雇用する障害者が1人不足するごとに1月当たり5万円を徴収し、法定雇用率を超えて障害者を雇用する事業主に対し、障害者雇用調整金(超過1人につき1月当たり2万7,000円)や助成金を支給する仕組みです。
これまでは常用雇用労働者を301人以上雇用する事業主のみを対象としてきましたが、障害者の身近な雇用の場である中小企業における障害者雇用の促進を図るため、平成22年7月から常用雇用労働者201人以上300人以下の事業主、平成27年4月から常用雇用労働者101人以上200人以下の事業主に、制度の対象が拡大されます。
(2)障害者の短時間労働への対応
現在、原則として、週所定労働時間が30時間以上の労働者を実雇用率や法定雇用障害者数の算定の基礎としています。短時間労働については、障害者によっては、障害の特性や程度、加齢に伴う体力の低下等により、長時間労働が難しい場合があるほか、障害者が福祉的就労から一般雇用へ移行していくための段階的な就労形態として有効であるなどの理由から、障害者に一定のニーズがあります。
こうしたニーズへの対応として、平成22年7月からは障害者雇用率制度における実雇用障害者数や実雇用率のカウントの際に、身体障害者または知的障害者である短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満)を「0.5」としてカウントすることとなりました。
◆法改正の一方で
法改正が行われ、障害者雇用の拡大と安定が図られる一方、昨秋以降の世界同時不況の影響で障害者が解雇されるケースが急増しています。不況になると、非正規社員や障害者、育児休業者などの社会的弱者が解雇の標的となり、失業者が急増して問題視されています。
政府の対策として、失業給付の拡充などの救済策はすぐに打ち出されましたが、解雇に至らないケースへの対策も充実させ、雇用が安定することを期待したいものです。
育児・介護休業法改正案のポイント
◆平成22年4月の施行予定
3歳未満の子どもを持つ従業員に対する「短時間勤務制度」の導入を企業に義務付けることや、父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2カ月までの間に1年間育児休業を取得可能とする「パパ・ママ育休プラス」の創設などを盛り込んだ育児・介護休業法の改正案が閣議決定されました。国会審議が順調に進めば、来年4月施行の予定です。
◆改正案のポイント
(1)子育て期間中の働き方の見直し
・3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度(1日6時間)を設けることを事業主の義務とし、労働者からの請求があったときの所定外労働の免除を制度化する。
・子の看護休暇制度を拡充する
(小学校就学前の子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日)。
(2)父親も子育てができる働き方の実現
・父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2カ月(現行1歳)までの間に、1年間育児休業を取得可能とする。
・父親が出産後8週間以内に育児休業を取得した後に復帰した場合、再度育児休業を取得可能とする。
・配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得不可とすることができる制度を廃止する。
(3)仕事と介護の両立支援
・介護のための短期の休暇制度を創設する
(要介護状態の対象家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日)。
(4)実効性の確保
・苦情処理・紛争解決の援助および調停の仕組みを創設する。
・勧告に従わない場合の公表制度、および報告を求めた場合に報告をせず、または虚偽の報告をした者に対する過料を創設する。
◆仕事と家庭の両立に向けて
上記内容は、いずれも企業の取組み強化を迫るものとなっています。しかし、制度は整ったとしても、現実は利用しにくい雰囲気が、育休取得が進まない原因となっており、中小企業では、仕事と家庭を両立させ、育児休業を取得するには難しい状況であると言われています。
改正法が成立しても、両立支援が実効性あるものになるかどうかは、職場の意識改革を進めて育児休業を利用しやすい職場環境を作れるか、そして何よりも経営者の取組みがカギとなるでしょう。
利用が増加する「未払賃金立替払制度」とは?
◆ここに来て利用が急増
不況の影響による企業の倒産が連日のように報道されていますが、倒産に伴う退職労働者に国が未払いの賃金を立替払いする「未払賃金立替払制度」の利用件数も増加しているようです。
2008年度における支給者数は5万4,422人、支給総額は248億円と、ともに前年比6%増となっています。また、企業数は3,639件(前年度比8.7%増加)、支給者1人あたりの平均立替払額は45万6,000円でした。
なお、 2008年度下半期に限ってみると、同年上半期と比較して37%も増加しています。
◆制度の概要
未払賃金の立替払制度は、企業の倒産に伴い、賃金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して、国が未払賃金の一部を事業主に代わって立替払いする制度です。この業務を行っているのは「独立行政法人労働者健康福祉機構」(http://www.rofuku.go.jp/)です。
◆利用の要件
(1)事業主に係る要件
労災保険の適用事業の事業主で、かつ1年以上事業を実施していること、法律上の倒産(破産手続開始の決定、特別清算開始の命令、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定)をしたことが要件となります。
なお、中小企業の場合は、事実上の倒産(事業活動停止、再開見込みなし、賃金支払能力なし)
でもよいとされています。
(2) 労働者に係る要件
破産手続開始等の申立て(事実上の倒産の認定申請)の6カ月前の日から2年間に退職したこと、未払賃金額等について、法律上の倒産の場合には破産管財人等が証明(事実上の倒産の場合には労働基準監督署長が確認)すること、破産手続開始の決定等(事実上の倒産の認定)の日の翌日から2年以内に立替払いの請求を行うことが必要です。
日系外国人の離職・帰国を国がサポート
◆4月から事業スタート
厚生労働省は、「日系人離職者に対する帰国支援事業」を発表し、今年の4月から開始しています。4月だけで1,095人が申請を行ったそうです。
派遣・請負などの不安定な雇用形態にある日系人労働者については、日本語能力が不足していることや日本の雇用慣行に慣れていないことに加え、日本での職務経験が十分ではないことから、一旦離職した場合には再就職が難しいと言われています。
日本で離職した場合、母国で再就職することが有効な選択肢として考えられるため、帰国を希望する日系人に対する帰国支援について、与党を中心に提言がなされていました。
◆「帰国ニーズ」への対応
同省では、これらの「帰国ニーズ」にこたえるため、帰国を決めた離職者に対し、帰国支援金を支給する事業(帰国支援事業)を開始したのです。
なお、引き続き日本で再就職したいと希望する日系外国人に対しては、引き続き、再就職支援、雇用維持のための各種事業、住宅確保支援策の活用などを実施していくとしています。
◆制度の概要
(1)対象者…事業開始以前(平成21年3月31日以前)に入国して就労・離職した日系外国人が対象で
す。日本での再就職を断念して母国に帰国し、同様の身分に基づく在留資格による再度の入国を
行わないこととした者およびその家族に「帰国支援金」が支給されます。
(2)支給額…本人1人当たり30万円、扶養家族については1人当たり20万円が支給されます。なお、
雇用保険受給期間中の者については一定額(支給残日数が30日以上→10万円、同日数が60日
以上→20万円)が上積みされます。
(3)実施主体…ハローワーク(産業雇用安定センターに一部事務を委託)です。
◆日系人の多い地域のハローワーク
日系外国人が多い地域(太田、松本、浜松、美濃加茂、大垣、豊田、刈谷、豊橋、四日市)のハローワークには、「日系人就職促進ナビゲーター」が設置され、細やかな個別就職支援を実施しています。
新型インフル流行で注目浴びるか「在宅勤務」
◆新型インフルエンザ流行による影響
新型インフルエンザの感染が拡大すると、「働き方として在宅勤務(テレワーク)が注目を浴びるのでは?」と言われています。会社員であれば、通勤中の電車やバス内で感染の可能性が高くなるからです。
テレワーク利用者(IT活用により場所と時間を自由に使った柔軟な働き方を週8時間以上利用する人)の数は、「ワーク・ライフ・バランス」などを背景に、2002年に408万人だったのが2005年には674万人と、3年で約65%増加しています。新型インフルエンザの流行によりこの動きがますます加速する可能性があります。
◆導入目的・実施しない理由
労働政策研究・研修機構が2007年に実施した調査によると、企業が考えている「テレワークの導入目的」「テレワークを実施しない理由」は次の通りです。
【導入目的】
・勤務者の移動時間の短縮…66.7%
・仕事と育児・介護など家庭生活の両立…58.3%
・創造的業務の効率・生産性の向上…50.0%
【実施しない理由】
・労働時間の管理が難しい…62.7%
・適した職種(仕事)がない…49.2%
・コミュニケーションに問題がある…45.8%
◆導入には何が必要か?
テレワークを導入するには、まずその職種が導入可能な職種なのかを判断しなければなりません。会社がどのように労働時間を管理するのか、通信費の費用負担はどうするのか、労災が発生した場合はどうするのかなどの問題もクリアしなければなりません。
また、厚生労働省が2008年7月に改訂した「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」などを参考に、「在宅勤務規程」をしっかりと整備しなければならないでしょう。
年金に関する2つの新しい法律
◆2つの法律が成立
年金に関して、2つの新しい法律が成立しました。1つは「年金遅延加算法」、もう1つは「延滞金軽減法」で、いずれも議員立法によるものです。
ここでは、この2つの法律について、その概要を簡単にご紹介します。
◆「年金遅延加算法」の概要
年金遅延加算法(正確には「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律」)は、公的年金制度に対する国民の信頼を回復することを目的として、記録漏れが見つかったことにより年金が増額する人に対し、支給が遅れていた期間の物価上昇率分を上乗せするものです。
初年度においては最大約700億円が見込まれており、法律の施行は来春の予定です。
なお、今年2月の時点で、5年を超す支給の遅れが見つかっているのは約7万3,000件、総額425億円です。
◆「延滞金軽減法」の概要
延滞金軽減法(正確には「社会保険の保険料等に係る延滞金を軽減するための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」)は、社会保険料等の納付が困難な事業主の経済的負担を軽減することを目的として、保険料を滞納した事業主が支払う延滞金の金利(年14.6%)を、3カ月以内の遅れであれば「年7.3%」に引き下げるものです。
ただし、当面は日本銀行が定めている基準割引率に4%をプラスした利息が適用されるため、「年4.5%」となります。
約40億円の負担軽減になるものと見込まれており、法律の施行は2010年1月の予定です。
2009/04/30
5月の事務所便り
「労災認定基準」の見直しで企業への影響は?
◆10年ぶりに見直し
厚生労働省は、仕事を原因とするうつ病などの精神疾患や過労自殺の労災認定基準について、10年ぶりに見直しを行いました。ストレス強度の評価項目を増やし、今年度から新基準での認定を始めます。
◆新たな判断基準の追加
精神障害に関する労災は、厚生労働省が1999年に作成した心理的負荷評価表に基づき、労働基準監督署が発病前6カ月間について、職場で起きた出来事のストレスの強さを3段階で評価し、判定します。「病気やケガ」「仕事内容の変更」「セクハラ」などの具体的な出来事の有無を判断材料として、総合判定で「弱、中、強」の3段階に分類し、強の場合、労災に当たるとしています。
認定基準の見直し後は、会社の合併や成果主義の採用、効率化など、働く環境の変化を念頭に入れ、ストレスの要因となる職場の出来事として「多額の損失を出した」「ひどい嫌がらせやいじめ、暴行を受けた」「非正規社員であることを理由に差別や不利益扱いを受けた」など、新たな判断基準として評価項目を31項目から43項目とし、12項目を新たに追加しました。
◆労災認定基準の見直しより大切なこと
今回の労災認定基準の見直しにより、それぞれの職場に沿った労災認定ができるようになることが期待されています。しかし、時代の変化により多様化・複雑化した労働者の精神疾患について、認定基準が細かくなり、職場の現状に見合った労災認定に近付けることは、労災補償の対象となるような病気になってしまった労働者にとっては喜ばしいことである反面、逆に、今後はさらにうつ病や過労自殺の労災認定件数が増えていくように思われます。
職場に沿った労災認定基準の見直しの動きや労災認定者に手厚い補償をすることも大事ですが、労働者がうつ病や過労自殺に追い込まれないような労働環境の整備や労働条件の改善、そのような状況にならないための予防策を打ち出すことが、政府として一番取り組むべき課題なのではないでしょうか。
中小企業・小規模企業向け共済を拡充へ
◆中小企業の安全網整備
昨年から続く100年に一度とも言われる大不況下で、多くの中小・小規模企業が厳しい経営状態に追い込まれているのが現状です。
このような状況の中で、経済産業省は、中小・小規模企業の安全網として位置付けられている「小規模企業共済制度」「中小企業倒産防止共済制度」の見直しを始めたようです。
◆2つの共済制度(その1)
「小規模企業共済制度」とは、小規模企業の個人事業主または会社等の役員が、事業を廃止した場合や役員を退職した場合など、第一線を退いたときに、それまで積み立ててきた掛金に応じた共済金を受け取ることのできる制度です。企業が廃業した際に経営者の生活や事業の再建を支えるための退職金制度といえるものであり、加入者は掛金を積み立て、事業廃業時に共済金を受け取ることができます。
今回の見直しの柱は「加入対象者の範囲拡大」です。現在は、小規模事業の「個人事業主」に加入対象者は限られていますが、「後継者」や「共同経営者」を加える方向に動いています。後継者が加入できるようになると、事業継承が円滑に進むようになり、家族などの共同経営者の引退後の生活保障を拡充する狙いもあります。
◆2つの共済制度(その2)
取引先が倒産して売掛金や手形等が回収困難になったときに連鎖倒産が発生するのを未然に防ぐため、毎月一定の掛金を積み立てておくことにより共済金の貸付けを受けることができる「中小企業倒産防止共済制度」も同様に見直しが検討されています。
今回の見直しでは、貸付金額の上限(3,200万円)を引き上げる方向に動いています。それは、取引先の倒産で回収が困難になる金額が現在の貸付上限の3,200万円ではカバーできない場合が増えているためで、4,000万円程度を軸に具体的な引上げ幅が検討されているようです。
そして、現在の制度では「破産手続きが開始したとき」や「金融機関による手形の取引停止処分を受けたとき」などに限って取引先の「倒産」としているため、私的整理で売掛金の回収が困難になった場合には貸付の対象にはなっていません。この「私的整理」を倒産の対象に加えるかどうか、「倒産」という定義自体の見直しも検討されています。
◆「真の安全網」を機能させるために
昨年からの不況下で、多くの企業で経営が厳しい状況にあります。経営の安定を図ることを目的としたこの2つの共済制度ですが、今回の見直しが「真の安全網」として機能するよう、そして利用しやすい仕組みになるように期待したいものです。
育児休業取得者の不利益取扱いをめぐるトラブル
◆労使トラブルへの発展
世界的な金融危機の影響等により雇用情勢が急速に悪化する中で、育児休業取得や妊娠・出産を理由とした企業側からの解雇や雇止めなど、不利益な扱いを受けた労働者からの相談が急増し、労使トラブルにまで発展しているケースもあるようです。
◆不利益な取扱いをめぐる労働相談
育児休業取得をめぐる不利益な扱いに関する労働者からの相談は、ここ5年で増加傾向にあります。都道府県の労働局に寄せられた相談件数は、昨年4月から今年2月末までの間に1,100件を上回り、前年度の約1.4倍となっていることが厚生労働省のまとめでわかりました。また、同様に、妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いに関する相談も増加しています。
金融危機が起きた昨年度後半からこのような相談は急激に増加し、現行の調査方法となった2002年度以降で最悪の水準となっています。
寄せられた相談内容は、育児休業後に復職を希望しても「業績悪化で以前の勤務時間に仕事がない」「他の人を雇ってしまった」などと拒まれたケース、勤務条件の変更を求められたり退職を勧奨されたりするケースなどが目立っています。
◆厚生労働省の対応
こうした状況を踏まえ、厚生労働省は、産前産後休業および育児休業等の申出・取得、妊娠・出産を理由とする解雇その他不利益な取扱いについて、各都道府県労働局長に対し、労働者からの相談への丁寧な対応、法違反の疑いのある事案についての迅速かつ厳正な対応、法違反を未然に防止するための周知徹底等に関する通達を出しました。
そして、事業主に対しての周知も徹底し、事業主向けリーフレットを新たに作成しました。
◆法違反の周知徹底を
経営環境が悪化して業績不振であることが理由であっても、労働者が産前産後休業または育児休業等の申出・取得をしたこと、妊娠または出産したこと等を理由として、解雇その他の不利益な取扱いをすることは、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法で禁止されています。
また、労働基準法、男女雇用機会均等法により産前産後の期間およびその後30日間に解雇することも禁止されています。また、妊娠中・産後1年以内の解雇は「妊娠・出産、産前産後休業取得等による解雇でないこと」を事業主が証明しない限り無効となります。
育児休業の取得を推進し、ワークバランスを提唱している反面、不況のあおりが育児休業者など立場の弱い人々に向かっている現状において、国が取り組むべき課題が潜んでいるように思われます。
経済産業省が発表した“雇用創出企業1,400社”とは?
◆経済産業省が冊子を作成
職を失う人が増加する一方、中堅・中小企業の求人は「仕事がきつい」などといったイメージから敬遠されがちです。このような行き違いをなくそうと、経済産業省では、採用や人材育成に意欲のある中堅・中小企業約1,400社を厳選して、各社の情報をまとめた「雇用創出企業1,400社」と題した冊子を作成しました。
◆「雇用創出企業1,400社」とは
雇用情勢が悪化するなか、政府が一丸となって取りまとめた「雇用創出企業1400社」は、「不況期こそ人材確保のチャンス」と捉える企業について、関係機関を総動員して約1,400社を掘り起こしたものです。掲載企業は、全国の製造業(約800社)、サービス業(約570社)、農業(約40社)で、今春以降に予定する求人数は6,000人にも上ります。
何を作っているのか、どんなサービスを提供しているかといった企業概要の紹介に加え、人材育成方針などの内容も盛り込まれており、社長や社員の顔写真とともに「他企業には真似できない製品製造に携われるのがやりがい」など、現場で働く人の生の声も掲載されています。
◆選ばれた企業の特徴
これらの企業の多くは、「ジョブカフェ」や「ハローワーク」など、求職者がよく利用する公的機関の有効活用や情報発信などを行っています。
また、工業高校や高専などの進路指導担当職員による就職相談の際に、正規雇用を大切にする業種での働き方を紹介してもらうことにより、人材確保の取組みを推進し、雇用のミスマッチを解消していくことを目的として活動を行っています。
◆新たな雇用の創出に期待
経済産業省では、厳しい情勢においても採用意欲のある中堅・中小企業が数多く存在していると考えているようです。これらの企業の魅力をより多くの人に知ってもらうことで、経営における「人」の重要性を広く訴えるとともに、年齢や技能、勤務地や労働条件をめぐり企業が求める人材と求職者の条件が合致しない「雇用のミスマッチ」を解消できる1つの方策として考えています。
この「雇用創出企業1,400社」の取組みが、業種や勤務条件だけでは見えてこない企業の魅力を伝え、雇用のミスマッチを解消し、新たな雇用につながるきっかけとなることを期待したいものです。
施行された「改正雇用保険法」のポイント!
◆ついに改正法が成立!
改正雇用保険法が成立し、3月31日から施行されています。成立から施行までの期間が非常に短く、しかも年度末からの施行ということで、雇用情勢の厳しい現実が伺えます。果たして失業者を救う改正となるでしょうか。
今回の改正点を大きく分類すると、以下の7点が挙げられます。
(1)雇用保険の適用範囲の拡大
(2)雇止めとなった非正規労働者に対する基本手当の受給資格要件の緩和と所定給付日数の拡充
(3)再就職が困難な方に対する給付日数の延長
(4)再就職手当の給付率引上げおよび支給要件の緩和
(5)常用就職支度手当の給付率引上げおよび支給対象者の拡大
(6)育児休業給付の統合と給付率引上げ措置の延長
(7)雇用保険料率の引下げ
◆改正の具体的内容
(1)短時間労働者や派遣労働者の雇用保険の適用基準について、従来は「週所定労働時間が20時間以上あり、1年以上引き続き雇用されることが見込まれること」が条件でしたが、1年以上の雇用の見込み期間が「6カ月以上」と短縮されました。
(2)特定受給資格者に該当しない方でも、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職された方(特定理由離職者)については、基本手当の受給要件が「離職日以前2年間に被保険者期間が通算して12カ月以上」必要なところ、「離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上」あれば要件を満たすようになりました。基本手当の給付日数も解雇等による離職者並みに手厚くなりました。
(3)解雇や労働契約が更新されなかったことによる離職者について、年齢や地域を踏まえ、特に再就職が困難な場合に給付日数が60日分延長されることになりました。
(4)再就職手当の支給要件が、従来の「所定給付日数を3分の1 以上かつ45日以上残している場合」から「所定給付日数を3分の1以上残している場合」に緩和されました。さらに、再就職手当の給付率についても、現行の30%から40%(支給残日数が3分の2 以上ある場合は50%)に引き上げられました。
(5)障害者等の就職困難者が所定給付日数を残して安定した職業に就いた場合に支給される常用就職支度手当の給付率が、従来の30%から40%に引き上げられました。
(6)これまで、「育児休業基本給付金(30%)」と「育児休業者職場復帰給付金(20%)」と分けて支給されていた育児休業に関する給付が、平成22年4月からは、統合され、休業中に「休業開始時賃金日額×支給日数×50%」が支給されることになります。
(7)失業給付に係る分の雇用保険料率が各業態とも0.4%(労使とも0.2%ずつ)引き下げられ、この結果、別途の事業主負担分0.3%を合わせた雇用保険料率は、一般の事業で1.1%(農林水産・清酒製造業1.3%、建設業1.4%)となりました。
指針改正で定められた派遣先企業の賠償責任
◆数年ぶりの指針改正
いずれも平成11年に労働省(現在の厚生労働省)が定め、派遣元・派遣先が講じるべき事項を示した「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」(以下「派遣元指針」)・「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(以下「派遣先指針」)というものがあります。「派遣先指針」においては、派遣先企業が講じるべき事項として「派遣契約の解除の事前の申入れ」「派遣先における就業機会の確保」などが定められています。
このたび、この2つの指針が数年ぶりに見直され、今年の3月31日から適用されています。ここでは、この両指針について、どのような目的から、どのような改正が行われたのかを見ていきたいと思います。
◆指針改正の趣旨は?
昨今の不景気の影響により、労働者派遣契約の中途解除に伴う派遣労働者の解雇や雇止め等が、いわゆる「派遣切り」として新聞紙上でも大きく報道されています。
両指針の改正は、派遣元や派遣先が適切に対処することにより、派遣労働者の雇用の安全を確保しようという趣旨で行われました。
厚生労働省は、改正された指針に基づき、派遣契約中途解除への適切な対応について「周知啓発」や「的確な指導監督」を進めていくこととしています。
◆改正指針の内容は?
今回の「派遣元指針」・「派遣先指針」の主な改正内容は次の通りです。
(1)派遣契約の中途解除に当たって、派遣元事業主は、まず休業等により雇用を維持するとともに、休業手当の支払い等の責任を果たすこと
(2)派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により派遣契約を中途解除する場合は、休業等により生じた派遣元事業主の損害を賠償しなければならないこと
(3)派遣契約の締結時に、派遣契約に(2)の事項を定めること
◆「非正社員の安全網整備」がポイントに
マスコミ報道等でもご承知の通り、政府は4月上旬に「未来開拓戦略」と称する経済対策を明らかにしましたが、雇用に関係する分野では、非正社員への対策として7,000億円の基金を3年間の時限措置として設置し、雇用保険の受給資格のない失業者に月10~12万程度の職業訓練中の生活費を支給することを発表しました。
派遣社員のみならず、「非正社員全体の安全網整備」が重要なポイントであると、国も認識しているようです。
新たに創設された「残業削減雇用維持奨励金」
◆制度の目的は?
不況の影響により大幅な減産となり、事業活動の縮小が余儀なくされた企業に対する助成制度としては、すでに「雇用調整助成金」「中小企業緊急雇用安定助成金」がありますが、要件が緩和されたことなども影響して支給申請が急増しているようです。
そして、このたび、同じような目的から、「雇用調整助成金」「中小企業緊急雇用安定助成金」両制度の一環として、新たに「残業削減雇用維持奨励金」が創設されました。
この奨励金は、従業員の残業を削減することによって有期契約労働者や派遣労働者の解雇を回避し、雇用の安定(雇用の維持)を図ることが目的とされています。また、政労使で合意された、いわゆる「日本型ワークシェアリング」(残業の削減、休業、教育訓練、出向などにより雇用維持を図ろうとするもの)を促進することが期待されています。
以下では、この奨励金の具体的な支給要件、支給額をご紹介します。
◆支給要件は?
この奨励金の支給を受けるためには、最近3カ月における売上高(または生産量等)の月の平均値がその直前の3カ月(または前年同期)と比べて「5%以上減少」している事業所において、以下の要件を満たしていることが必要です。
(1)判定期間における事業所労働者1人1月あたりの残業時間が、比較期間の平均値と比べて2分の1以上かつ5時間以上削減されていること。
(2)判定期間の末日における事業所労働者数が、比較期間の月平均事業所労働者数と比べて5分の4以上であること。
(3)計画届の提出日から判定期間の末日までの間に事業所労働者の解雇等(雇止め、派遣契約の中途解除等も含まれる)を行っていないこと。
◆支給額は?
それぞれの判定期間の末日時点での有期契約労働者・派遣労働者1人につき、判定期間ごとに以下の金額が支給されます。
なお、上限は、有期契約労働者・派遣労働者それぞれ100人とされており、残業削減計画届の提出日の翌日以降に雇い入れられた人などは対象にはならないとされています。
【中小企業事業主以外の事業主】
・有期契約労働者…10万円(年間20万円)
・派遣労働者…15万円(年間30万円)
【中小企業事業主】
・有期契約労働者…15万円(年間30万円)
・派遣労働者…22万5,000円(年間45万円)
都道府県単位に変わる健康保険の保険料率
◆昨年10月にスタートした「協会けんぽ」
平成18年に行われた健康保険法の改正により、平成20年10月に「全国健康保険協会」(通称:協会けんぽ)が設立され、運営がスタートしています。
これまで、中小企業等で働いている従業員やその家族が加入している健康保険(政府管掌健康保険)は、国(社会保険庁)により運営されていましたが、新たに協会けんぽが運営することとなったものです。
ところで、協会けんぽ設立時に「都道府県別の健康保険料の設定」となることが決まっていましたが、その詳細は明らかになっておらず、協会けんぽ設立後1年以内に(平成21年9月までに)、事業主・被保険者が参画する運営委員会や各都道府県の評議会において意見徴収のうえ設定されるとされていました。
3月末にその取扱いが明らかになりましたので、ご紹介します。
◆「都道府県単位保険料率」設定の背景
従来、全国一律に設定されていた保険料率では、疾病予防等の地域の取組みにより医療費が低くなったとしても、その地域の保険料率に反映されないという問題点が指摘されていました。そのため、国民健康保険や長寿医療制度(後期高齢者医療制度)と同様、都道府県単位の財政運営を基本とする改革が行われ、その一環として都道府県単位の保険料率が導入されました。
なお、平成25年9月までは、都道府県間の料率の差を小さくして保険料率を設定することとなっており(激変緩和措置)、平成21年度は実際の保険料率と全国平均の保険料率との差が10分の1に調整されています。
◆「都道府県単位保険料率」
都道府県ごとに定められた保険料率は以下の通りです。長野県が最も低く、北海道が最も高くなっていますが、全体的に見ると、比較的「南高北低」の傾向にあるようです。
なお、健康保険組合の保険料率は、平均で7.41%です(2009年度予算早期集計より)。
・8.15%…長野
・8.17%…群馬・埼玉・千葉・山梨・静岡
・8.18%…岩手・山形・茨城・栃木・東京・新潟・滋賀
・8.19%…宮城・神奈川・富山・岐阜・愛知・三重・京都・愛媛
・8.20%…福島・福井・兵庫・鳥取・宮崎・沖縄
・8.21%…青森・秋田・石川・奈良・和歌山・島根・高知
・8.22%…大阪・岡山・広島・山口・長崎・鹿児島
・8.23%…香川・熊本・大分
・8.24%…徳島・福岡
・8.25%…佐賀
・8.26%…北海道
◆今後の取扱いについて
都道府県単位の保険料率については、今年の9月分(一般の保険者については10月納付分、任意継続被保険者については9月納付分)から適用されます。
これからどうなる?「偽装請負」への対応
◆偽装請負をめぐるこれまでの動き
偽装請負(実態は労働者派遣であるにもかかわらず請負と偽っている違法な形態)については、平成18年の夏にマスコミが取り上げたことを発端として話題となりました。大手企業が恒常的に偽装請負を行っていたとの報道には大きなインパクトがありました。
その後、厚生労働省は、社会問題化した違法派遣や偽装請負を一掃することを目的として、昨年4月に「緊急違法派遣一掃プラン」をスタートさせるなどしましたが、制定された「日雇派遣指針」の効果も上がらず、労働者派遣法改正案も国会審議が進んでいないようです。
◆新たな通達と「疑義応答集」
厚生労働省では、今年3月末、偽装請負への指導をさらに強化していくため、全国の労働局宛てに労働者派遣と請負の区分基準を明確化する通達を出したそうです。また、同省のホームページに「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集」の掲載を開始しました。
◆わかりにくい派遣と請負の区分基準
『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』は、昭和61年に労働者派遣制度が開始された際に厚生労働省が発表したものです。しかし、この基準をもってしても「派遣と請負を区分する基準はわかりづらい」との声が上がっていました。
そこで、具体例を用いてその区分基準を明らかにしたのが上記の「疑義応答集」です。いわゆる「労働者派遣の2009年問題」にも対応するものだと言われています。
◆「疑義応答集」の具体的内容
全部で15のQ&Aからなる「疑義応答集」は、どのようなケースが偽装請負に該当するのか、以下の項目ごとに具体例を挙げて示していますので、非常に参考になります。ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/haken-shoukai03.pdf)でご確認ください。
(1)発注者と請負労働者との日常的な会話
(2)発注者からの注文(クレーム対応)
(3)発注者の労働者による請負事業主への応援
(4)管理責任者の兼任
(5)発注者の労働者と請負労働者の混在
(6)中間ラインで作業する場合の取扱い
(7)作業工程の指示
(8)発注量が変動する場合の取扱い
(9)請負労働者の作業服
(10)請負業務において発注者が行う技術指導
(11)請負業務の内容が変動した場合の技術指導
(12)玄関、食堂等の使用
(13)作業場所等の使用料
(14)双務契約が必要な範囲
(15)資材等の調達費用
内定取消・新卒採用をめぐる最近の動き
◆厳しさが続く企業の採用状況
先日、入社式の前日(3月31日)に新卒者19名の採用内定を取り消した静岡市内の造船会社が、会社更生法の適用を申請して受理されたとの報道がありました。同社では、一度は内定取消を行ったものの、操業開始の目途が立ったとして4月9日に「内定取消」を「取消」していました。
また、福岡市内の不動産会社は、内々定を取り消した今春卒業の元大学生から慰謝料などの損害賠償を求める労働審判を申し立てられていましたが、調停が不成立となり、審判官に「内々定の取消は違法」だとして解決金75万円の支払いを命じられました。内々定の取消が違法と判断されたのは極めて珍しいケースだそうです。
◆新卒採用を控える傾向が鮮明に
日本経団連が実施した新卒採用に関するアンケート(会員企業約1,300社が調査対象)の調査結果によると、今年の春に新卒の学生を1人でも採用した企業の割合は98.5%(前年比1.4ポイント減少)で、前年を下回ったのは6年ぶりとのことです。さらに、来年の春はこの割合がさらに減少し、86.4%となるとの見通しが明らかになっています。
中堅・中小企業を対象に東京商工会議所が行ったアンケート調査(860社が回答)では、今春に新卒採用を予定していた企業は55.6%(前年比4.9ポイント減少)だったそうで、来春は41.3%にまで落ち込むと見られています。
◆学生の就職がさらに厳しく
リクルートから発表された来春卒業予定の大学生・大学院生の就職求人倍率(従業員5人以上の民間企業約4,300社が回答した結果の推計)は、大幅に悪化して1.62倍(前年比0.52ポイント減少)となっており、こちらも7年ぶりに前年を下回りました。
業種別にみると、「金融業」の求人倍率が0.29倍と最も低くなっています。
専門家の中には「2000年に求人倍率が『0.99倍』となった就職氷河期ほど落ち込むことはないのではないか」と見ている人もいるようですが、今後、企業の「採用抑制」と学生の「就職難」が改善されていくのは、まだまだ先のようです。
2009/04/01
4月の事務所便り
父親のワーク・ライフ・バランスを考える
◆まだまだ低い男性の育児休業取得率
女性の育児休業はだいぶ取得しやすくなってきましたが、男性についてはまだまだ理解が進んでいないのが現状です。男性の約3割が育児休業を取りたいと考えている一方で、実際の取得率はわずか1.56%にとどまっています。また、男性が子育てに費やす時間も、極めて低い水準にあります。
勤労者世帯の過半数が共働きとなっている今、男性も子育てに十分に関わることのできる環境作りが求められています。
◆「仕事と子育て両立パパ」を支援
男性も子育てに十分に関わることのできる働き方の実現に向け、厚生労働省は、これから父親になる男性労働者や子育て期にある男性労働者が仕事と家庭を両立した働き方ができるように、「父親のワーク・ライフ・バランス~応援します! 仕事と子育て両立パパ~」と題したハンドブックを作成しました(「父親のWLB(ワーク・ライフ・バランス)応援サイト」http://www.papa-wlb.com/よりダウンロード可能)。
このハンドブックには、両立支援制度等の関連情報(育児期における父親の役割や育児休業取得の際の留意点、子育てにかかる経済的支援制度や各種相談窓口など)が盛り込まれているほか、実際に育児休業を取得して子育てに積極的に関わっている男性の声や事例なども掲載されています。仕事と子育てが両立できる働き方を設計・実践するツールとして活用することができます。
企業においても、男性労働者が仕事と子育てをうまく両立させ、それによりモチベーションが高まる好循環を生み出すヒントとして活用することができそうです。
◆男性も家庭と仕事の両立を!
父親の積極的な子育て参加を応援することには、様々なメリットがあると考えられます。
例えば、企業側からみれば、男性従業員のモチベーションの向上、企業イメージの向上を図ることができます。また、社会経済的にも、夫婦で子育てを行うことにより少子化対策につながることが期待できるほか、女性の労働力率の向上、男女共同参画の推進につながります。
今や、男性も家庭と仕事との両立に積極的に取り組むべき時代です。今後、「父親のワーク・ライフ・バランス」支援の意義やメリット、具体的な取組みについて、いっそう真剣に考えなければならないといえるでしょう。
公的年金制度はこの先も本当に大丈夫なのか?
◆2年連続でマイナス運用
公的年金の積立金の市場運用利回りが、2年連続でマイナスになる見通しだそうです。2007年度に5年ぶりのマイナスに転じて5兆8,000億円余りの損失を出した運用利回りですが、国内外の株価低迷を受け、2008年度における損失額は10兆円に達する可能性もあるとされています。
現行の公的年金制度は、向こう約100年にわたり平均4.1%の利回りを確保できることを前提としています。この前提のハードルの高さが鮮明となったことにより、年金制度の危うさが露呈しています。
◆財政検証による年金制度の見通し
現在、高齢者が受け取ることのできる年金の財源は主に3つあります。1つ目が「現役世代の支払う保険料」、2つ目が「国庫負担」、3つ目が「運用しつつ徐々に取り崩す積立金」です。
安定的に年金を受給できるかどうかのカギを握るのは、制度の支え手である現役層の厚さを決める「出生率」と、積立金の運用を左右する「経済情勢」です。近年、出生率が下がり続けており、また、経済情勢も悪化しているため、年金制度への不安がかなり高まっています。
厚生労働省は、5年ごとに行っている公的年金の財政検証をこのたび実施しました。これによれば、「所得代替率」(現役世代の平均手取り収入に対して厚生年金のモデル世帯の標準的な年金受取額が何%になるかを示す比率)は、将来も50%を維持できると試算されています。この数字だけをみると、非常に良い数値だといえます。
しかし、実際には、16兆2,000億円あった累積収益は、積立金の市場運用を始めた2001年度から2006年度末までに約9割減り、昨年末時点で1兆7,000億円弱にまで減っています。年金の主な給付財源の1つである積立金が減っているにもかかわらず、試算上は「50%給付」を維持できることとなるのは、経済が安定的な成長軌道に戻る、年金制度の担い手が増えるなどといった甘い見通しで計算を行っているからだと言わざるを得ません。
◆「100年安心」の年金制度実現へ何が求められるか
今回行われた公的年金の財政検証では、今後の約100年を見通して政府が公約する給付水準の下限の50%を何とか確保できると結論付けましたが、50%維持へのつじつま合わせの跡もうかがえます。
「100年安心」をうたう年金制度ですが、「100年安心」の年金制度を実現するためには、制度改革の議論とともに、安定給付のカギを握る経済成長と少子化対策への戦略が必要です。年金制度の安定には、「経済情勢回復」と「出生率向上」の両輪が欠かせないといえます。
利用が進まない「ジョブ・カード制度」
◆1年間で約4万人に発行
職業経験が少ない人の就職を支援するため、厚生労働省が2008年4月から始めた「ジョブ・カード制度」ですが、普及が遅れています。5年間で100万人へのジョブ・カード発行が目標でしたが、導入から約1年で約4万人にとどまっています。
同省では、ジョブ・カード制度における雇用型訓練実施企業への助成を拡充するなどして、利用を呼びかけています。
◆「ジョブ・カード制度」の概要
ジョブ・カード制度は、企業現場でのOJT(実習)、教育訓練機関等でのOFF-JT(座学等)による職業訓練を通じて、フリーターや子育て終了後の女性など、職業経験の少ない人の能力を高め、就職を支援することをねらいとしてスタートしました。
ジョブ・カードの発行希望者は、企業現場・教育訓練機関で実践的な職業訓練を受け、その評価結果である評価シート等を取得し、これを自らの職歴・教育訓練歴、取得資格などの情報とともに「ジョブ・カード」として取りまとめます。
ジョブ・カードを作成することにより、自分の職業能力・意識を整理することができ、また、作成したジョブ・カードは、常用雇用を目指した就職活動や職業キャリア形成に幅広く活用することができるとされています。
◆政府の対策は?
制度の導入からまもなく1年が経過しますが、制度自体の認知度が低く、そのメリットが広く知られていないうえ、職業訓練希望者の受入れを表明した企業は現在約2,100社と少ない状況です。また、昨秋からの急激な不況で雇用が縮小しており、企業が今後の受入れに二の足を踏むことも予想されます。
普及促進のため、政府は、制度のテコ入れを始めています。まず、企業現場における職業訓練の際にかかる賃金の助成率が、中小企業では「2分の1」から「4分の3」に引き上げられました。また、訓練受入企業の参考となる「モデル評価シート」「モデルカリキュラム」等を作成し、企業の便宜を図っています。
◆不況期の雇用とジョブ・カード制度
中小企業にとっては、大企業が採用活用を控える傾向にある今、良い人材を積極的に採用できるチャンスです。その際にジョブ・カードを活用すれば、事前にその人の職業能力もわかり、雇用のミスマッチをなくすことができます。ひいては、雇用改善の近道ともなるでしょう。
政府には、制度自体の認知度を上げ、普及を進めるためのさらなる対策が期待されます。
雇用情勢の悪化と助成金制度
◆厳しい情勢が続く
厚生労働省が発表した1月の有効求人倍率は、前月より0.06ポイント低い0.67倍で、2003年9月以来、5年4カ月ぶりの低水準を記録しました。また、総務省が発表した1月の完全失業率は4.1%で、前月より0.2ポイント改善したものの、依然として高い数値となっています。完全失業者の数は、前年同月比21万人増の277万人に上っています。
世界的な金融危機と景気後退を受け、生産・雇用情勢が一段と悪化している折り、政府は様々な雇用対策を打ち出しています。
◆数値でみる雇用情勢
有効求人倍率とは、公共職業安定所(ハローワーク)で職を探している人1人につき何人分の求人があるかを示す数値で、雇用情勢の動向が比較的早く数値に反映されると言われています。1月における数値の低下は、1992年以来の大幅なものとなりました。
完全失業率は、15歳以上の働く意思のある人のうち、まったく職についていない人の比率を示す数値です。1月は3カ月ぶりに改善しましたが、これは厳しい雇用情勢を受けて職探しを一時見合わせる人や、女性の短時間労働者が増えるなどしたための形式的・一時的なものとみられ、雇用情勢の厳しさは変わらないと判断されています。
◆助成金による政府の雇用改善対策
政府は雇用対策の一環として、助成金制度の新設と要件緩和・要件拡充を次々に打ち出しています。
例えば、新たに「若年者等正規雇用化特別奨励金」が創設されています。これは、雇用改善を目指し正規雇用を支援するもので、「採用内定を取り消されて就職先が未決定の学生等」または「年長フリーターおよび30代後半の不安定就労者」を正規雇用する事業主が、一定期間ごとに引き続き正規雇用する場合に、中小企業には総額100万円、大企業には総額50万円の奨励金を支給するものです。
この他にも、「雇用調整助成金」・「中小企業緊急雇用安定助成金」、「派遣労働者雇用安定化特別奨励金」、「離職者住居支援給付金」、「介護未経験者確保等助成金」、「特定求職者雇用開発助成金」など、様々な助成金制度が創設され、要件が緩和されています。
◆助成金による雇用改善策は実るか
このような助成金制度による雇用対策により、政府の目指す雇用改善はどれだけ図られるでしょうか。その成果が有効求人倍率や完全失業率に数値として現れてくるまでには、まだまだ時間がかかりそうです。雇用情勢の悪化が今後も続くことが懸念されます。
プラス改定となった介護報酬と問題点
◆初のプラス改定に
介護サービス事業者に支払われる「介護報酬」について、2009年4月実施の改定率は「3.0%」となることが決定されています。2000年の介護保険制度創設以来、改定の度に引き下げられてきた介護報酬ですが、今回、初めてのプラス改定となりました。
離職率が高く人材確保が困難な現状を改善し、質の高いサービスを安定的に提供できるよう、介護従事者の処遇改善を進めるとともに、事業所の経営の安定化を図るための改定ですが、問題点も指摘されています。
◆介護報酬と改定内容
「介護報酬」とは、介護サービスを提供した事業所や施設が、そのサービスの対価として、保険者である市町村から受ける支払いです。介護報酬の額は、サービスの種類ごとに決められている単位数に、地域別の報酬単価を掛けて算出されます。サービス利用者の負担は介護報酬の「1割」で、残りの「9割」は介護給付費として介護保険から支払われます。
今回の改定では、基本の報酬部分はほとんど上げず、様々な加算部分の見直しを行って、新たに40を超える加算を設けました。職員のキャリアに着目し、介護福祉士や常勤職員の配置割合や勤続年数により報酬に差が出るしくみを採用したことは注目されます。
その他、医療連携・認知症ケアの充実などに関する加算、地域差を調整するための加算が増えています。
◆今回の改定の問題点
今回の改定は加算が中心の改定のため、加算部分が算定できるところとできないところで、事業所の差別化・選別化が進むおそれがあると言われています。また、加算の算定には記録の整備等が必要となるため、事務負担が増え、現場の困難が拡大することも考えられます。
さらに、今改定には利用者側の視点はまったくありません。介護報酬が上がれば、当然、その1割を負担する利用者の負担は大きくなりますが、利用料負担の軽減は行われませんでした。負担分が支払えないために、サービスの利用を制限せざるを得なくなるケースが今以上に増えるかもしれません。
介護サービスに対する家庭の負担を少しでも抑えるためには、「高額介護サービス費」(同じ月に利用したサービスの利用者負担の世帯合計が上限額を超えた分について後から支給する)や「高額医療・高額介護合算制度」(医療・介護にかかった費用の合算額で年限度額を超えた分について後から支給する)など、公的制度をうまく利用するのが賢明だといえるでしょう。
「有期労働契約」のルールを根本から見直しへ
◆厚生労働省が研究会を立上げ
近年、正社員と非正社員との賃金格差(対応した「改正パートタイム労働法」が2008年4月に施行済み)、景気悪化を背景とした期間工の雇止め、そしていわゆる「派遣切り」による失業者の増大など、「非正規雇用」や「有期労働契約」に関する事項が大きくクローズアップされています。今年3月末までに期間従業員約23,000人が職を失うとも報道されています。
有期契約労働者とは、「臨時雇い」(1カ月以上1年以内の雇用契約)と「日雇い」(日々または1カ月未満の雇用契約)の総称だと言われていますが、厚生労働省では、「有期労働契約」に関する法規制の在り方を根本から見直す方針を打ち出し、新たな有期労働契約のルール作りを目指すため、学識経験者・専門家(大学教授)で構成される「今後の有期労働契約の在り方に関する研究会」を立ち上げました。
先日(2009年2月23日)、研究会の第1回会合が開催されましたが、今後、労働基準法や労働契約法の改正なども見据えているようであり、議論が深められていきそうです。
◆非正規雇用社員・有期労働契約の問題点
これは2007年時点のデータですが、正規雇用社員の数は約3,441万人、非正規雇用社員の数は約1,732人となっており、1985年時点と比較すると、正規雇用社員は約98万人、非正規雇用社員は約1,077万人増加しており、以前と比べ非正規雇用社員の割合がだいぶ高くなってきています。非正規雇用社員の内訳は、パート社員が822万人、契約社員・嘱託社員等が435万人、アルバイトが342万人、派遣社員が133万人です。
このような状況において、上記の研究会では、有期労働契約に関して、(1)契約期間の上限制限(現行は原則3年、特例5年)、(2)有期労働契約の範囲と職種ごとの期間制限、(3)契約締結時の労働条件の明示、(4)通常の労働者との処遇の均衡、(5)契約の更新と雇止めなどに論点を絞り、いかなる法規制が必要なのか、または必要でないのかといった方向性を検討していくようです。
◆今後の動き-法改正はあるか?
研究会は、2009年度の早い時期に有期労働契約者の就業に関する実態調査を行ったうえで、有期労働契約に関する論点を整理し、2010年の夏ごろまでに報告書をまとめ、法律(労働基準法や労働契約法など)の改正を行っていきたい考えのようです。新聞紙上では、「雇止めの制限」「契約更新回数の制限」「最長3年間の契約期間の見直し」などが行われるのではないかと報道されています。
将来的には、有期労働契約に関するルールが大きく変わっていき、企業の人事労務管理に大きな影響を与えるようになるのかもしれません。
不法滞在外国人減少に向けた取組み
◆不法滞在外国人が大幅に減少
ここ数年、不法滞在の外国人が大幅に減少しているようです。法務省の入国管理局によれば、2004年に約25万人いた日本国内における不法滞在外国人の数は、2009年1月時点では約13万人になっているそうです。5年間でなんと約48%も減少しており、同省では、政府の中期的計画に基づいた「摘発の強化」と「入国審査の厳格化」が功を奏したとみているようです。
不法滞在外国人については、犯罪の温床になっているとも言われていますが、来日外国人の犯罪(不法滞在者以外によるものも含む)も減少傾向にあり、2007年中の来日外国人犯罪の検挙件数は3万5,800件(1万5,923人)で、前年比で4,328件(10.8%)減少しています。
◆法改正による「在留カード」の発行
政府は、さらなる対策にも取り組もうとしています。従来からあった「外国人登録証」(外国人登録制度)を廃止して、新たに「在留カード」(3カ月以上の滞在を認められた外国人について発行される)を作成するため、入国管理・難民認定法の改正案を、現在開会中の通常国会に提出する方針を明らかにしています。
法務省の推計によれば、現在、約2万人の不法滞在外国人に「外国人登録証」が発行されているそうですが、「在留カード」には、偽造を防止するためにICチップが付けられ、不法就労者かどうかをすぐに見分けられるようにするそうです。また、顔写真・氏名・国籍・住所・在留資格・有効期間などの情報が明記され、情報の変更には届出が義務付けられます。また、就労する資格があるかどうかについても記載されるとのことです。
なお、この在留カードを偽造した者には非常に重い罰則(1年以上10年以下の懲役など)が課せられることになっています。この法律改正により、さらなる不法滞在者の減少が期待されています。
◆「適法滞在者」には有利に
一方で、不法でない、適法な滞在外国人については、在留期間の上限をこれまでの3年から5年に延長することなども改正案に盛り込まれています。また、再入国については、原則として1年以内は政府による許可が不要とされるようです。
また、特別永住者(在日韓国人・在日朝鮮人など)は上記の改正された制度の対象外とされ、「特別永住者証明書」が発行されるそうです。
希望退職制度を実施する場合の注意点
◆希望退職制度の実施企業数は?
新聞報道によれば、不況が本格化した昨年の9月以降、正社員の希望退職制度を実施した上場企業は、全国で約120社に及んでおり、希望退職の募集人員は約2万人(このうち約5,200人が応募し、退職が決定している)に上っているそうです。
上場企業だけでこの数字なのですから、中小企業も合わせるとこの数はさらに増え、多くの企業が不況に苦しみ、人員削減に踏み切らざるを得ない状況であることがわかります。
◆希望退職制度とは?
希望退職制度は、退職金を増額することなどを条件として、あくまでも企業側と従業員側との「合意」に基づいて実施される制度です。従来、解雇回避のための、あるいは解雇等に先んじて行われるべき人員削減策として用いられてきました。
希望退職者の募集は、特定の労働者に対して行われるのものではなく、会社全体もしくは少なくとも事業場単位で行われるものとされています。一般に、希望退職者の募集は労働契約解約のための申込みの誘因であると考えられますので、希望退職者の募集自体は、使用者側からの解約の申込みの意見表示ではありません。
そして、労働者が応募することにより、解約の申込みの意思表示をしたことになります。そして、会社がこれに対して承諾の意思表示を行えば労働契約は終了します。
◆制度を実施する場合の手順
企業の状況により異なる場合もありますが、希望退職制度を実施する際の一般的な手順は、次の通りです。
(1)募集対象・募集人員・募集期間などの検討・設定
(2)退職条件・退職予定日などの検討・設定
(3)労働組合や従業員代表との協議
(4)従業員への説明会の開催
(5)希望退職募集の案内(1次・2次・3次…)
(6)応募受付、募集の締切り
(7)合意書の作成など
◆トラブル発生の回避が重要
希望退職制度を実施する際には、労働者との間にトラブルが発生しないような配慮が必要です。特に、従業員の退職合意の任意性を損なわないように十分注意する必要があり、退職に応じるように個別の従業員を執拗に説得するなどの行為は、後々のトラブルに繋がる可能性があります。
4月から発送が開始される「ねんきん定期便」
◆「特別便」の成果はいかに?
社会保険庁は、2007年の年末から2008年の秋にかけて、すべての年金受給者と加入者(約1億900万人)に対して、「ねんきん特別便」の発送を行いました。しかし、思ったほどの効果は上がっていないようです。
この「特別便」への回答率は、昨年12月末時点で63%にとどまっており(そのうち約14%に当たる991万人が自分の記録に「漏れ」や「間違い」があると回答しています)、当初の予想よりもだいぶ低い結果となっています。
◆「ねんきん定期便」とは?
今年の4月からは、年金加入者(国民年金・厚生年金の被保険者。約7,000万人)に対し、「ねんきん定期便」の送付が始まります。社会保険庁は、これにより年金記録の「再点検」を求めるとしています。なお、送付の周期は「毎年誕生月に送付」となっています。
この「定期便」では、「特別便」とは異なり、記録の改ざんなども見抜けるような工夫がなされるようです。自分の年金加入記録(履歴)に加え、(1)標準報酬月額、(2)将来の年金見込額、(3)保険料の納付実績も記載されることとなっています。
◆「定期便」に封入される予定のもの
この「定期便」には、基本的には以下のものが封入されることになっています。
(1)定期便の本体
(2)説明書(冊子)
(3)回答票
(4)返信用封筒
なお、自分の年金記録漏れに気付いていない加入者については、記録漏れを申し出るためのヒントとして、記録が漏れている期間を示す書類(「あなた様の年金加入記録に結び付く可能性のある記録のお知らせ」)が同封されることになっています。
この「ねんきん定期便」の詳細やひな形等に関しては、社会保険庁のホームページ(http://www.sia.go.jp/topics/2006/n1124.html)でご覧いただくことができます。
2009/02/25
3月の事務所便り
女性の職場復帰を後押しする「保育ママ」
◆増加する育児休業終了後の職場復帰
育児休業が終了して職場復帰する女性も最近ではめずらしくなくなりました。しかし、女性が職場復帰する際に必ず直面する問題があります。それは、「自分の子供を安心して預かってくれる託児所や保育園があるか」ということです。「職場復帰はしたいけれど、保育園の定員がいっぱいで空きが出るまで待つしかない」などといった声をよく耳にします。
◆改正児童福祉法による「保育ママ」活用促進
現在、保育所への入園を待機している児童が全国で2万人ほどいると言われており、その受け皿として、自宅で少人数の乳幼児を預かる「保育ママ」(家庭的保育)の存在が注目を集めています。「保育ママ」とは、保育士などの資格を持つ人が、仕事などの理由で子どもの面倒を見られない親に代わって自宅などで乳幼児を預かる仕組みです。
2008年11月に成立した改正児童福祉法では、この保育ママを制度化し、国が基準などを定め、市区町村に2010年から保育ママの活用を促すことが明文化されました。しかし、まだまだ保育ママの利用は一般的ではなく、認知度も低いのが現状です。
国は補助金を出して後押しもしていますが、自治体独自のものを含めても、保育ママの数も利用児童の数もまだまだ少ないようです。
◆保育ママ普及のためには何が必要?
保育ママの利用がなかなか進まない最大の理由は、利用する保護者の「保育ママ利用への不安」です。保育施設ではなく他人の家に預けるというスタイルへの不安、保育者の人数が少なくすべての子供に目が行き届くかなどの不安が挙げられています。
保育ママの普及には、預ける親に十分に安心できる情報を与えて不安感を解消すること、利用する保護者との信頼関係を築くことが不可欠です。一部の自治体では、利用者の不安を取り除くため様々な工夫を始めています。例えば、自治体が施設を用意し、保育ママに認可保育園との連携や補助員の活用を勧め、密室保育の防止を図ることなどです。
国も保育ママの活用のために本格的に動き始めました。厚生労働省は、保育ママ普及に向けてガイドライン策定の検討会を立ち上げ、自治体ごとにばらばらだった保育ママの要件や研修内容を統一し、普及を後押しする動きを見せています。
保育ママの活用が一般的になれば、職場復帰をする女性の悩みも減り、職場復帰を考える女性も増えてくるのではないでしょうか。
大手企業の人員削減で中小企業に人材獲得の好機
◆中小企業にチャンス到来?
大手企業による非正規社員の削減や内定取消しが相次いで報道されていますが、中小企業がこの機会を「人材獲得の好機」として捉え、自社の体制強化のため、積極的な採用に乗り出す動きが見られるようです。
◆なぜ今が人材獲得の好機なのか
最近、業績悪化などを理由に他社に内定を取り消された新卒者や雇止めにあった非正規社員らを対象に、中小企業がハローワークなどを通じて募集をかけ、採用活動を活発に行う動きが見られます。これまで、優秀な新卒予定者は大手に囲い込まれてきたため、中途採用で人材を賄ってきた中小企業は多く、業績悪化により大手企業が採用数を減らせば中小企業を就職先として検討する学生が増えると見込み、優秀な学生を確保したいと考える企業も多いようです。
また、「景気回復時に備えて戦力を育てておきたい」、「組織力を底上げする意味でも若い人材が必要」と考える中小企業の経営者も多く、景気が回復すれば再び中小企業は採用難になる可能性が高いだけに、現時点で少しでも余裕のある企業は採用活動に力を入れる傾向にあります。
働く側の意識にも変化が見え始めており、会社の知名度や規模だけに捉われず、事業内容や財務内容を見定めたうえで、中小企業を就職先として選ぶ人も増えてきているようです。規模は小さくても経営が安定し、成長分野の事業を持つ企業の募集に応募者が殺到するケースも見受けられます。
◆厳しさの中での採用活動はいかに
景気後退を逆手に、優秀な人材獲得の好機として採用活動を積極的に行う中小企業もあれば、やはり大手企業と同様に、人員削減を実施しなくては苦境を乗り切れない状況にある中小企業も現実には多く存在します。厳しい現状の中で、採用活動に多くの費用と時間をかけることができない企業も多いかもしれません。
しかし、積極的な採用によって、特定の年齢層の社員が不足しがちという中小企業特有の問題を改善できるチャンスとも考えられます。また、何よりも若い力を取り入れることにより、組織活性化や職場風土改善の起爆剤となり、将来の会社の屋台骨をささえる“人財”を育成できる可能性も秘めています。
非常に厳しい状況ではありますが、優秀な人材を獲得できる好機と言われている今、長い目で見ると「将来への投資」として採用活動を行うことにも大きな意味があるかもしれません。
雇用環境悪化で農林水産業への就業希望者が増加
◆雇用情勢悪化に伴う求職者の変化
非正規雇用社員の削減を中心とした急激な雇用情勢の悪化を受け、職を求める人についても、新しい分野への移動の動きが見られます。その1つとして「農林水産業」への就業希望者が増加傾向にあるようです。
◆各自治体や国の動き
製造業を中心に人員削減が相次いでいるのを受け、地方自治体や関係団体では、農林水産業への就業を希望する人を対象に就職相談会を盛んに実施しています。各自治体では、林業の知識やチェーンソーの操作などの具体的な実務を身につけることができる無料の研修会なども開催しているようです。
このような新たな動きに注目し、農林水産業に特化した求人サイトを立ち上げ、農林水産業への雇用を支援している企業もあります。農林水産省のホームページにも新規就農希望者を支援するコーナーが立ち上げられており、農林水産業に就業するために具体的に何をすればよいのかなどを案内し、全国各地の就業情報や支援情報をリアルタイムで確認することができます。
◆農林水産業が雇用環境を改善するか
製造業などにおける非正規雇用社員の雇止めや契約解除などの動きは、担い手不足に悩む第一次産業にとっては追い風になるものと言われています。また、若い人に非正規労働を定着させるのではなく、技能を身につけたうえで医療や福祉、農業などの新しい分野へ移動させる仕組みづくりの重要性も主張されています。このような新たな動きが、雇用環境の悪化を少しでも緩和させることに繋がるかもしれません。
しかし、製造業などで働いていた人の異業種への転職は、ギャップが大きすぎるのではないかと心配する声もあがっています。求職者の希望と仕事の内容が本当に一致するかどうかという問題もありますが、農林水産業従事者の高齢化なども踏まえ、農林水産業を雇用の受け皿にする動きが進めば、第一次産業の基盤強化に繋がります。
また、将来の食料自給率向上にも結びつくものとして、雇用の面だけでなく、様々な面で可能性が広がるかもしれません。
まだまだ解決が遠い「年金記録問題」
◆「ねんきん特別便」のその後
社会保険庁が「宙に浮いた」年金記録の持ち主を特定するために送付した「ねんきん特別便」は、2008年3月までに記録漏れの被害者と思われる1,030万人に送った「名寄せ便」と、2008年4月から10月末までに残りのすべての受給者・加入者9,843万人に送った「全員便」の2種類があります。送付後の状況はどうなっているのでしょうか。
◆特別便未回答者の割合は46%
社会保険庁は、訂正の必要がなくても回答するように呼びかけてきましたが、同庁の調べよると、「名寄せ便に」対して回答を寄せたのは、昨年末時点で31%(316万人)に留まっています。「全員便」でも、回答があったのは47%(4,615万人)。特別便全体で見ても、昨年10月末時点で46%が未回答の状態です。送付先の転居などで届いないものも278万通あるという結果になっています。
同庁は「訂正の必要がないため回答しない人が少なくない」と見ていますが、記録漏れに気づいていない可能性もあるため、未回答者の一部には回答を求めるはがきを出しています。
また、今年4月以降、加入者全員に記録ミスのおそれがある部分への指摘を含む「ねんきん定期便」を送り、再検討を促す方針を打ち出しています。
◆自分の年金記録を守るには?
記録漏れを見つけた場合、証拠をもとに社会保険事務所に申し出れば、記録の修正がなされます。明確な証拠がなければ、総務省の「年金記録確認第三者委員会」に申し出て、記録回復の可否に関する審査を受けることができます。
年金受給者にとっては、社会保険事務所や第三者委員会で記録回復を認める決定が下されても、実際に年金が支給されるまでには時間がかかります。記録訂正が認められれば「再裁定」と呼ばれる実際の年金額を計算する作業に移行しますが、再裁定の事務処理を担う社会保険業務センターの人手不足による未処理件数も多いようで、問題の1つとなっています。
また、昨年から、社会保険庁職員による厚生年金の標準報酬月額の改ざんなど年金記録に関するずさんな管理が発覚し、「年金記録問題」は解決どころか不信感が強くなっています。送付された年金記録の通知書を今一度確認し、不明点は社会保険事務所に問い合わせるなど、「自分の年金は自分で守る」という意識が必要なのかもしれません。
退職(失業)に伴う国民年金保険料の特例免除
◆失業者に重くのしかかる保険料負担
雇用情勢の悪化を受け、社会保険庁は、国民年金保険料を免除される「退職特例免除」の利用を呼びかけています。
2008年度の国民年金の保険料は月額14,410円。失業した人にとって、この保険料の負担は決して軽くありません。しかし、免除を申請しないまま保険料を納めないとその間は公的年金の加入期間に算入されず、結果的に「無年金状態」になったり、納付期間が少なければ受け取る年金額が少なくなったりするおそれがあります。
◆「特例免除」制度のメリット
この特例免除は失業の理由を問わず、自己都合による退職でも適用されます。申請した年度か前年度に退職したケースが対象となり、例えば2009年3月末までに申請するのであれば、2008年7月にさかのぼって免除を受けることができます。
そして、特例免除を受ければ、保険料を一部納付したとみなされます。将来は免除期間分について全額納付した場合の3分の1(2009年4月以降は2分の1の予定)として年金額が計算されます。残りの3分の2についても、10年までさかのぼって追納することが可能です。
◆必要な手続きは?
特例免除の申請は、住民票のある市区町村役場へ「国民年金保険料免除申請書」を提出することで手続きができます。
詳しくは,社会保険庁ホームページ(国民年金保険料の全額免除制度、一部納付(免除)制度、若年者納付猶予制度について)をご参照ください。
http://www.sia.go.jp/top/gozonji/gozonji02.htm#
「退職届の撤回」をめぐるトラブル
◆労使間の退職時トラブル
退職の際に労使間でトラブルが生じることがあります。最近では、在職中に転職先を決めていたが、転職先の企業の経営状況悪化などの理由により、提出した退職届を撤回したいと申し出てくる労働者とのトラブルが発生することもあるようです。
◆退職届を撤回できるかの判断
退職届には、労働者側から一方的に労働契約を解消する解約告知としての「退職届」と、労働契約の合意解約の申込みとしての「退職願」の2つのケースがあります。前者の「退職届」の場合、基本的に撤回することはできませんが、後者の「退職願」の場合は、撤回できる場合があります。この「退職願」の場合の退職の効果については、会社の承認や承諾により発生するものとされ、会社の承認や承諾がなされて合意退職が成立するまでの間は撤回ができるものと考えられています。
労働者が退職届を直属の上司に提出したものの、上司がそれを預かったまま人事部長など決定権のある人へ決裁を上げていなかった場合についても、撤回できる可能性があります。退職届を受け取った者が承認の権限を持つかどうか、そして、それを正式に受け取ったのか、預かりで受け取ったのかが撤回できるかどうかの決め手となります。
◆トラブルを未然に防ぐためには
労働者が退職届を提出した後、会社がそれを「承認された状態」なのか「預かりの状態」なのかを曖昧にしておくと、すでに新たな労働者の採用を決めていたケースなどで、労働者から「退職届を撤回したい」と申出があった場合にトラブルに発展する可能性があります。退職届を受け取った場合、会社としては、承認や承諾をして合意退職が成立した時には、退職届を受理し、『承認しました』という意味の通知書などを作成して労働者に渡すことによって、退職届を撤回することはできないと労働者に示すことができます。
何事もトラブルが起こってから対応するのではなく、予測されるトラブルを未然に回避する方策を考えておくことを、常に意識しておきたいものです。
適格退職年金の移行状況と厚生労働省の取組み
◆適格退職年金の移行状況
適格退職年金(適年)の廃止期限が平成24年3月末に迫っています。平成14年3月末から同20年3月末にかけての6年間での適年の受託件数・加入者数の推移は次の通りとなっています。
<受託件数>
・平成14年3月:73,582件
・平成20年3月:32,826件
(マイナス40,756件)
<加入者数>
・平成14年3月:917万人
・平成20年3月:443万人
(マイナス474万人)
◆厚生労働省の取組み
上記の通り、適年から他の企業年金への移行は確実に進んではいるものの、廃止期限までにすべての適年が移行するのは難しい状況だとも言われています。
厚生労働省は、これまで、事業主への呼びかけ、説明会・セミナーの実施、円滑な移行の推進に関する連絡会議の設置(金融庁・財務省・農林水産省・経済産業省・中小企業庁等)、移行先としての企業年金(確定給付企業年金・確定拠出年金)の整備・法改正などに取り組んできましたが、すべてを移行させるためにはさらなる施策が必要だと言われていました。
◆「移行支援本部」の活動内容
そこで同省は、適年から他の企業年金への移行をさらに進めるため、今年1月に「適格退職年金の企業年金への移行支援本部」を設立しました。移行支援本部では、活動内容を次のように定めています。同省では、受託機関、経済団体、企業年金連合会、各企業年金との連携を深めつつ、移行を促進させたいと考えているようです。
(1)適年から企業年金への移行と企業年金のメリットの広報(例:ホームページ・マニュアル・広報キットの活用、シンポジウム・研修会・相談会の開催、コンサルティングの実施)
(2)受皿としての企業年金側の課題の整理(例:厚生年金基金・確定給付企業年金等の規制緩和、総合型受皿設定とあっせん)
自治体・政府による緊急雇用対策の効果は?
◆自治体が講じた雇用対策の効果は?
全日本自治団体労働組合(自治労)の調査により、緊急の雇用対策として全国149の自治体が、解雇されたり雇止めにあったりした非正社員など計約8,500人の採用を実施していることが明らかになりました。これらは、臨時職員としての採用や正規職員としての前倒しでの採用が中心となっています。
しかしながら、これらの緊急雇用対策が必ずしもうまく機能していないようです。当初は応募者が殺到するものと考えて整理券を用意するなどした自治体もあったようですが、募集人員に対して応募人数が少ないところが多く、実際には雇用拡大に繋がっていないところもあるようです。
例えば、さいたま市(埼玉県)では100名の募集に対し応募者は11名、採用者数は2名(今年1月末時点)となっています。
◆臨時職員が中心で雇用期間も短い
自治体による緊急雇用対策がうまく機能していない原因として、主に臨時での雇用が中心であること、雇用期間が数カ月程度と短期間のものが多いことが挙げられています。非正社員で契約を打ち切られた人は、臨時雇いではなく、長期での安定した雇用を望む傾向にあるため、求職者の希望と求人内容にギャップが生じています。
「臨時職員は、結局は派遣と同じだ」との声も上がっており、また、賃金や仕事内容の面でも不満を漏らす人もいるようで、今後このギャップをどう考えていくかがポイントとなってきそうです。
◆失業者を認可保育所で採用へ
国もいろいろと対策を講じています。厚生労働省では、今後の雇用対策の1つとして、全国の認可保育所において、失業した人を職員として採用する制度の検討を開始したそうです。まったく保育経験のない者の一時的な雇用を想定するとともに、保育士養成のための専門学校などに通うための支援も行うとしています。果たして雇用対策としてうまく機能していくでしょうか。
雇用情勢の悪化により、昨年12月の失業手当の受給者数は58万5,619人(前年同月比9.5%増)となり、2002年2月以来の増加幅となっています。このような状況においては、さらなる雇用対策が求められるところです。
労働時間減少によりついに年間1,800時間以下に
◆製造業の稼働率・残業時間が大幅減少
経済産業省は、昨年11月の製造工場の稼働率が88.5%(2005年を100%とした場合)となったと発表しました。前月よりも9.4ポイント低下しており、比較可能な1968年以降のデータでは最大のマイナス幅となっています。
また、厚生労働省が発表した「毎月勤労統計」によれば、昨年12月における製造業の労働者1人当たりの残業時間(所定外労働時間)が12時間となり、全年同月と比較すると30.6%も減少したそうです。不況に伴う減産が大きく影響しており、減少幅は1990年の調査開始以来最大となっています。
厚生労働省では、「1970年代の第一次オイルショックを超える急速な落ち込みである」と分析しています。
◆年間の労働時間は初めて1,800時間を下回る
また、2008年における常用労働者1人当たりの年 間総実労働時間(所定内労働時間に時間外労働時間と休日労働時間を加えたもの)は1,792時間となり、前年比16時間減少しました。年間総実労働時間が1,800時間を下回ったのは、1990年の統計開始以来初めてのことだそうです。
各企業とも労働時間短縮による人件費の削減を図っているようで、残業代は月平均1万9,448円となり、こちらも前年比1.5%減となっています。
◆かつての政府目標「1,800時間」
政府は、かつて、年間総実労働時間を1,800時間に短縮することを目標にしていました。また、連合でも「年間総実労働時間1800時間の実現に向けた時短方針」などを掲げていました。
ここ数年は長時間労働による健康被害が問題となり、また、「ワーク・ライフ・バランス」が提唱され、長時間労働に焦点が当てられていました。健康管理面からの長時間労働抑止、仕事と家庭の両立支援のための労働時間短縮とは違った形で、いわば未曾有の大不況の影響という形で、労働時間の短縮が実現されてしまった格好です。
第2次補正予算成立により各種助成金が新設・改正
◆第2次補正予算が成立
「平成20年度厚生労働省第2次補正予算」が案の通り成立しました。その主な内容は以下のものです。
(1)雇用状況の改善のための緊急対策の推進(4,048億円)
(2)介護従事者の処遇改善と人材確保等(1,680億円)
(3)出産・子育て支援の拡充(2,400億円)
(4)障害者支援の拡充(869億円)
(5)医療・年金対策の推進(1,324億円)
(6)各種施策の推進(86億円)
ここでは、第2次補正予算の成立に伴い新設・改正された主な助成金についてご紹介します。なお、第2次補正予算の詳しい内容につきましては、厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/08hosei/dl/02index01.pdf)をご参照ください。
◆「派遣労働者雇用安定化特別奨励金」の新設
6カ月を超える期間継続して労働者派遣を受け入れていた業務に派遣労働者を無期または6カ月以上の有期(「更新有」の場合に限定)で直接雇い入れる場合で、労働者派遣の期間が終了する前に派遣労働者を直接雇い入れる場合に、奨励金が支給されます。
支給額は、期間の定めのない労働契約の場合は最大で100万円(大企業は50万円)、6カ月以上の期間の定めのある労働契約の場合は最大で50万円(大企業は25万円)です。
なお、この助成金は、平成21年2月6日から平成24年3月31日までと期間が限定されています。
◆「若年者等正規雇用化特別奨励金」の新設
年長フリーター(25歳以上40歳未満)および30代後半の不安定就労者、または採用内定を取り消されて就職先が未決定の学生等を正規雇用する事業主が、一定期間ごとに引き続き正規雇用している場合に、最大で100万円(大企業は50万円)の奨励金が支給されることとなっています。なお、ここでいう「正規雇用」とは、雇用期間の定めのない雇用であって、1週間の所定労働時間が通常の労働者と同程度である労働契約を締結し、雇用保険の一般被保険者として雇用する場合を指します。
◆その他の改正点
その他、「雇用調整助成金」、「中小企業緊急雇用安定助成金」、「特定求職者雇用開発助成金」などについても、受給要件の緩和、支給額の拡充などが実施されています。
◆増加する育児休業終了後の職場復帰
育児休業が終了して職場復帰する女性も最近ではめずらしくなくなりました。しかし、女性が職場復帰する際に必ず直面する問題があります。それは、「自分の子供を安心して預かってくれる託児所や保育園があるか」ということです。「職場復帰はしたいけれど、保育園の定員がいっぱいで空きが出るまで待つしかない」などといった声をよく耳にします。
◆改正児童福祉法による「保育ママ」活用促進
現在、保育所への入園を待機している児童が全国で2万人ほどいると言われており、その受け皿として、自宅で少人数の乳幼児を預かる「保育ママ」(家庭的保育)の存在が注目を集めています。「保育ママ」とは、保育士などの資格を持つ人が、仕事などの理由で子どもの面倒を見られない親に代わって自宅などで乳幼児を預かる仕組みです。
2008年11月に成立した改正児童福祉法では、この保育ママを制度化し、国が基準などを定め、市区町村に2010年から保育ママの活用を促すことが明文化されました。しかし、まだまだ保育ママの利用は一般的ではなく、認知度も低いのが現状です。
国は補助金を出して後押しもしていますが、自治体独自のものを含めても、保育ママの数も利用児童の数もまだまだ少ないようです。
◆保育ママ普及のためには何が必要?
保育ママの利用がなかなか進まない最大の理由は、利用する保護者の「保育ママ利用への不安」です。保育施設ではなく他人の家に預けるというスタイルへの不安、保育者の人数が少なくすべての子供に目が行き届くかなどの不安が挙げられています。
保育ママの普及には、預ける親に十分に安心できる情報を与えて不安感を解消すること、利用する保護者との信頼関係を築くことが不可欠です。一部の自治体では、利用者の不安を取り除くため様々な工夫を始めています。例えば、自治体が施設を用意し、保育ママに認可保育園との連携や補助員の活用を勧め、密室保育の防止を図ることなどです。
国も保育ママの活用のために本格的に動き始めました。厚生労働省は、保育ママ普及に向けてガイドライン策定の検討会を立ち上げ、自治体ごとにばらばらだった保育ママの要件や研修内容を統一し、普及を後押しする動きを見せています。
保育ママの活用が一般的になれば、職場復帰をする女性の悩みも減り、職場復帰を考える女性も増えてくるのではないでしょうか。
大手企業の人員削減で中小企業に人材獲得の好機
◆中小企業にチャンス到来?
大手企業による非正規社員の削減や内定取消しが相次いで報道されていますが、中小企業がこの機会を「人材獲得の好機」として捉え、自社の体制強化のため、積極的な採用に乗り出す動きが見られるようです。
◆なぜ今が人材獲得の好機なのか
最近、業績悪化などを理由に他社に内定を取り消された新卒者や雇止めにあった非正規社員らを対象に、中小企業がハローワークなどを通じて募集をかけ、採用活動を活発に行う動きが見られます。これまで、優秀な新卒予定者は大手に囲い込まれてきたため、中途採用で人材を賄ってきた中小企業は多く、業績悪化により大手企業が採用数を減らせば中小企業を就職先として検討する学生が増えると見込み、優秀な学生を確保したいと考える企業も多いようです。
また、「景気回復時に備えて戦力を育てておきたい」、「組織力を底上げする意味でも若い人材が必要」と考える中小企業の経営者も多く、景気が回復すれば再び中小企業は採用難になる可能性が高いだけに、現時点で少しでも余裕のある企業は採用活動に力を入れる傾向にあります。
働く側の意識にも変化が見え始めており、会社の知名度や規模だけに捉われず、事業内容や財務内容を見定めたうえで、中小企業を就職先として選ぶ人も増えてきているようです。規模は小さくても経営が安定し、成長分野の事業を持つ企業の募集に応募者が殺到するケースも見受けられます。
◆厳しさの中での採用活動はいかに
景気後退を逆手に、優秀な人材獲得の好機として採用活動を積極的に行う中小企業もあれば、やはり大手企業と同様に、人員削減を実施しなくては苦境を乗り切れない状況にある中小企業も現実には多く存在します。厳しい現状の中で、採用活動に多くの費用と時間をかけることができない企業も多いかもしれません。
しかし、積極的な採用によって、特定の年齢層の社員が不足しがちという中小企業特有の問題を改善できるチャンスとも考えられます。また、何よりも若い力を取り入れることにより、組織活性化や職場風土改善の起爆剤となり、将来の会社の屋台骨をささえる“人財”を育成できる可能性も秘めています。
非常に厳しい状況ではありますが、優秀な人材を獲得できる好機と言われている今、長い目で見ると「将来への投資」として採用活動を行うことにも大きな意味があるかもしれません。
雇用環境悪化で農林水産業への就業希望者が増加
◆雇用情勢悪化に伴う求職者の変化
非正規雇用社員の削減を中心とした急激な雇用情勢の悪化を受け、職を求める人についても、新しい分野への移動の動きが見られます。その1つとして「農林水産業」への就業希望者が増加傾向にあるようです。
◆各自治体や国の動き
製造業を中心に人員削減が相次いでいるのを受け、地方自治体や関係団体では、農林水産業への就業を希望する人を対象に就職相談会を盛んに実施しています。各自治体では、林業の知識やチェーンソーの操作などの具体的な実務を身につけることができる無料の研修会なども開催しているようです。
このような新たな動きに注目し、農林水産業に特化した求人サイトを立ち上げ、農林水産業への雇用を支援している企業もあります。農林水産省のホームページにも新規就農希望者を支援するコーナーが立ち上げられており、農林水産業に就業するために具体的に何をすればよいのかなどを案内し、全国各地の就業情報や支援情報をリアルタイムで確認することができます。
◆農林水産業が雇用環境を改善するか
製造業などにおける非正規雇用社員の雇止めや契約解除などの動きは、担い手不足に悩む第一次産業にとっては追い風になるものと言われています。また、若い人に非正規労働を定着させるのではなく、技能を身につけたうえで医療や福祉、農業などの新しい分野へ移動させる仕組みづくりの重要性も主張されています。このような新たな動きが、雇用環境の悪化を少しでも緩和させることに繋がるかもしれません。
しかし、製造業などで働いていた人の異業種への転職は、ギャップが大きすぎるのではないかと心配する声もあがっています。求職者の希望と仕事の内容が本当に一致するかどうかという問題もありますが、農林水産業従事者の高齢化なども踏まえ、農林水産業を雇用の受け皿にする動きが進めば、第一次産業の基盤強化に繋がります。
また、将来の食料自給率向上にも結びつくものとして、雇用の面だけでなく、様々な面で可能性が広がるかもしれません。
まだまだ解決が遠い「年金記録問題」
◆「ねんきん特別便」のその後
社会保険庁が「宙に浮いた」年金記録の持ち主を特定するために送付した「ねんきん特別便」は、2008年3月までに記録漏れの被害者と思われる1,030万人に送った「名寄せ便」と、2008年4月から10月末までに残りのすべての受給者・加入者9,843万人に送った「全員便」の2種類があります。送付後の状況はどうなっているのでしょうか。
◆特別便未回答者の割合は46%
社会保険庁は、訂正の必要がなくても回答するように呼びかけてきましたが、同庁の調べよると、「名寄せ便に」対して回答を寄せたのは、昨年末時点で31%(316万人)に留まっています。「全員便」でも、回答があったのは47%(4,615万人)。特別便全体で見ても、昨年10月末時点で46%が未回答の状態です。送付先の転居などで届いないものも278万通あるという結果になっています。
同庁は「訂正の必要がないため回答しない人が少なくない」と見ていますが、記録漏れに気づいていない可能性もあるため、未回答者の一部には回答を求めるはがきを出しています。
また、今年4月以降、加入者全員に記録ミスのおそれがある部分への指摘を含む「ねんきん定期便」を送り、再検討を促す方針を打ち出しています。
◆自分の年金記録を守るには?
記録漏れを見つけた場合、証拠をもとに社会保険事務所に申し出れば、記録の修正がなされます。明確な証拠がなければ、総務省の「年金記録確認第三者委員会」に申し出て、記録回復の可否に関する審査を受けることができます。
年金受給者にとっては、社会保険事務所や第三者委員会で記録回復を認める決定が下されても、実際に年金が支給されるまでには時間がかかります。記録訂正が認められれば「再裁定」と呼ばれる実際の年金額を計算する作業に移行しますが、再裁定の事務処理を担う社会保険業務センターの人手不足による未処理件数も多いようで、問題の1つとなっています。
また、昨年から、社会保険庁職員による厚生年金の標準報酬月額の改ざんなど年金記録に関するずさんな管理が発覚し、「年金記録問題」は解決どころか不信感が強くなっています。送付された年金記録の通知書を今一度確認し、不明点は社会保険事務所に問い合わせるなど、「自分の年金は自分で守る」という意識が必要なのかもしれません。
退職(失業)に伴う国民年金保険料の特例免除
◆失業者に重くのしかかる保険料負担
雇用情勢の悪化を受け、社会保険庁は、国民年金保険料を免除される「退職特例免除」の利用を呼びかけています。
2008年度の国民年金の保険料は月額14,410円。失業した人にとって、この保険料の負担は決して軽くありません。しかし、免除を申請しないまま保険料を納めないとその間は公的年金の加入期間に算入されず、結果的に「無年金状態」になったり、納付期間が少なければ受け取る年金額が少なくなったりするおそれがあります。
◆「特例免除」制度のメリット
この特例免除は失業の理由を問わず、自己都合による退職でも適用されます。申請した年度か前年度に退職したケースが対象となり、例えば2009年3月末までに申請するのであれば、2008年7月にさかのぼって免除を受けることができます。
そして、特例免除を受ければ、保険料を一部納付したとみなされます。将来は免除期間分について全額納付した場合の3分の1(2009年4月以降は2分の1の予定)として年金額が計算されます。残りの3分の2についても、10年までさかのぼって追納することが可能です。
◆必要な手続きは?
特例免除の申請は、住民票のある市区町村役場へ「国民年金保険料免除申請書」を提出することで手続きができます。
詳しくは,社会保険庁ホームページ(国民年金保険料の全額免除制度、一部納付(免除)制度、若年者納付猶予制度について)をご参照ください。
http://www.sia.go.jp/top/gozonji/gozonji02.htm#
「退職届の撤回」をめぐるトラブル
◆労使間の退職時トラブル
退職の際に労使間でトラブルが生じることがあります。最近では、在職中に転職先を決めていたが、転職先の企業の経営状況悪化などの理由により、提出した退職届を撤回したいと申し出てくる労働者とのトラブルが発生することもあるようです。
◆退職届を撤回できるかの判断
退職届には、労働者側から一方的に労働契約を解消する解約告知としての「退職届」と、労働契約の合意解約の申込みとしての「退職願」の2つのケースがあります。前者の「退職届」の場合、基本的に撤回することはできませんが、後者の「退職願」の場合は、撤回できる場合があります。この「退職願」の場合の退職の効果については、会社の承認や承諾により発生するものとされ、会社の承認や承諾がなされて合意退職が成立するまでの間は撤回ができるものと考えられています。
労働者が退職届を直属の上司に提出したものの、上司がそれを預かったまま人事部長など決定権のある人へ決裁を上げていなかった場合についても、撤回できる可能性があります。退職届を受け取った者が承認の権限を持つかどうか、そして、それを正式に受け取ったのか、預かりで受け取ったのかが撤回できるかどうかの決め手となります。
◆トラブルを未然に防ぐためには
労働者が退職届を提出した後、会社がそれを「承認された状態」なのか「預かりの状態」なのかを曖昧にしておくと、すでに新たな労働者の採用を決めていたケースなどで、労働者から「退職届を撤回したい」と申出があった場合にトラブルに発展する可能性があります。退職届を受け取った場合、会社としては、承認や承諾をして合意退職が成立した時には、退職届を受理し、『承認しました』という意味の通知書などを作成して労働者に渡すことによって、退職届を撤回することはできないと労働者に示すことができます。
何事もトラブルが起こってから対応するのではなく、予測されるトラブルを未然に回避する方策を考えておくことを、常に意識しておきたいものです。
適格退職年金の移行状況と厚生労働省の取組み
◆適格退職年金の移行状況
適格退職年金(適年)の廃止期限が平成24年3月末に迫っています。平成14年3月末から同20年3月末にかけての6年間での適年の受託件数・加入者数の推移は次の通りとなっています。
<受託件数>
・平成14年3月:73,582件
・平成20年3月:32,826件
(マイナス40,756件)
<加入者数>
・平成14年3月:917万人
・平成20年3月:443万人
(マイナス474万人)
◆厚生労働省の取組み
上記の通り、適年から他の企業年金への移行は確実に進んではいるものの、廃止期限までにすべての適年が移行するのは難しい状況だとも言われています。
厚生労働省は、これまで、事業主への呼びかけ、説明会・セミナーの実施、円滑な移行の推進に関する連絡会議の設置(金融庁・財務省・農林水産省・経済産業省・中小企業庁等)、移行先としての企業年金(確定給付企業年金・確定拠出年金)の整備・法改正などに取り組んできましたが、すべてを移行させるためにはさらなる施策が必要だと言われていました。
◆「移行支援本部」の活動内容
そこで同省は、適年から他の企業年金への移行をさらに進めるため、今年1月に「適格退職年金の企業年金への移行支援本部」を設立しました。移行支援本部では、活動内容を次のように定めています。同省では、受託機関、経済団体、企業年金連合会、各企業年金との連携を深めつつ、移行を促進させたいと考えているようです。
(1)適年から企業年金への移行と企業年金のメリットの広報(例:ホームページ・マニュアル・広報キットの活用、シンポジウム・研修会・相談会の開催、コンサルティングの実施)
(2)受皿としての企業年金側の課題の整理(例:厚生年金基金・確定給付企業年金等の規制緩和、総合型受皿設定とあっせん)
自治体・政府による緊急雇用対策の効果は?
◆自治体が講じた雇用対策の効果は?
全日本自治団体労働組合(自治労)の調査により、緊急の雇用対策として全国149の自治体が、解雇されたり雇止めにあったりした非正社員など計約8,500人の採用を実施していることが明らかになりました。これらは、臨時職員としての採用や正規職員としての前倒しでの採用が中心となっています。
しかしながら、これらの緊急雇用対策が必ずしもうまく機能していないようです。当初は応募者が殺到するものと考えて整理券を用意するなどした自治体もあったようですが、募集人員に対して応募人数が少ないところが多く、実際には雇用拡大に繋がっていないところもあるようです。
例えば、さいたま市(埼玉県)では100名の募集に対し応募者は11名、採用者数は2名(今年1月末時点)となっています。
◆臨時職員が中心で雇用期間も短い
自治体による緊急雇用対策がうまく機能していない原因として、主に臨時での雇用が中心であること、雇用期間が数カ月程度と短期間のものが多いことが挙げられています。非正社員で契約を打ち切られた人は、臨時雇いではなく、長期での安定した雇用を望む傾向にあるため、求職者の希望と求人内容にギャップが生じています。
「臨時職員は、結局は派遣と同じだ」との声も上がっており、また、賃金や仕事内容の面でも不満を漏らす人もいるようで、今後このギャップをどう考えていくかがポイントとなってきそうです。
◆失業者を認可保育所で採用へ
国もいろいろと対策を講じています。厚生労働省では、今後の雇用対策の1つとして、全国の認可保育所において、失業した人を職員として採用する制度の検討を開始したそうです。まったく保育経験のない者の一時的な雇用を想定するとともに、保育士養成のための専門学校などに通うための支援も行うとしています。果たして雇用対策としてうまく機能していくでしょうか。
雇用情勢の悪化により、昨年12月の失業手当の受給者数は58万5,619人(前年同月比9.5%増)となり、2002年2月以来の増加幅となっています。このような状況においては、さらなる雇用対策が求められるところです。
労働時間減少によりついに年間1,800時間以下に
◆製造業の稼働率・残業時間が大幅減少
経済産業省は、昨年11月の製造工場の稼働率が88.5%(2005年を100%とした場合)となったと発表しました。前月よりも9.4ポイント低下しており、比較可能な1968年以降のデータでは最大のマイナス幅となっています。
また、厚生労働省が発表した「毎月勤労統計」によれば、昨年12月における製造業の労働者1人当たりの残業時間(所定外労働時間)が12時間となり、全年同月と比較すると30.6%も減少したそうです。不況に伴う減産が大きく影響しており、減少幅は1990年の調査開始以来最大となっています。
厚生労働省では、「1970年代の第一次オイルショックを超える急速な落ち込みである」と分析しています。
◆年間の労働時間は初めて1,800時間を下回る
また、2008年における常用労働者1人当たりの年 間総実労働時間(所定内労働時間に時間外労働時間と休日労働時間を加えたもの)は1,792時間となり、前年比16時間減少しました。年間総実労働時間が1,800時間を下回ったのは、1990年の統計開始以来初めてのことだそうです。
各企業とも労働時間短縮による人件費の削減を図っているようで、残業代は月平均1万9,448円となり、こちらも前年比1.5%減となっています。
◆かつての政府目標「1,800時間」
政府は、かつて、年間総実労働時間を1,800時間に短縮することを目標にしていました。また、連合でも「年間総実労働時間1800時間の実現に向けた時短方針」などを掲げていました。
ここ数年は長時間労働による健康被害が問題となり、また、「ワーク・ライフ・バランス」が提唱され、長時間労働に焦点が当てられていました。健康管理面からの長時間労働抑止、仕事と家庭の両立支援のための労働時間短縮とは違った形で、いわば未曾有の大不況の影響という形で、労働時間の短縮が実現されてしまった格好です。
第2次補正予算成立により各種助成金が新設・改正
◆第2次補正予算が成立
「平成20年度厚生労働省第2次補正予算」が案の通り成立しました。その主な内容は以下のものです。
(1)雇用状況の改善のための緊急対策の推進(4,048億円)
(2)介護従事者の処遇改善と人材確保等(1,680億円)
(3)出産・子育て支援の拡充(2,400億円)
(4)障害者支援の拡充(869億円)
(5)医療・年金対策の推進(1,324億円)
(6)各種施策の推進(86億円)
ここでは、第2次補正予算の成立に伴い新設・改正された主な助成金についてご紹介します。なお、第2次補正予算の詳しい内容につきましては、厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/08hosei/dl/02index01.pdf)をご参照ください。
◆「派遣労働者雇用安定化特別奨励金」の新設
6カ月を超える期間継続して労働者派遣を受け入れていた業務に派遣労働者を無期または6カ月以上の有期(「更新有」の場合に限定)で直接雇い入れる場合で、労働者派遣の期間が終了する前に派遣労働者を直接雇い入れる場合に、奨励金が支給されます。
支給額は、期間の定めのない労働契約の場合は最大で100万円(大企業は50万円)、6カ月以上の期間の定めのある労働契約の場合は最大で50万円(大企業は25万円)です。
なお、この助成金は、平成21年2月6日から平成24年3月31日までと期間が限定されています。
◆「若年者等正規雇用化特別奨励金」の新設
年長フリーター(25歳以上40歳未満)および30代後半の不安定就労者、または採用内定を取り消されて就職先が未決定の学生等を正規雇用する事業主が、一定期間ごとに引き続き正規雇用している場合に、最大で100万円(大企業は50万円)の奨励金が支給されることとなっています。なお、ここでいう「正規雇用」とは、雇用期間の定めのない雇用であって、1週間の所定労働時間が通常の労働者と同程度である労働契約を締結し、雇用保険の一般被保険者として雇用する場合を指します。
◆その他の改正点
その他、「雇用調整助成金」、「中小企業緊急雇用安定助成金」、「特定求職者雇用開発助成金」などについても、受給要件の緩和、支給額の拡充などが実施されています。
2009/01/29
2月の事務所便り
「次世代育成支援対策推進法」改正のポイント
◆少子化抑止のための法律
少子化が急速に進行し、今後の経済社会に深刻な影響を与えることが懸念されています。そこで、次代を担う子どもたちが健やかに産まれ、育成されるのに必要な環境整備を図るため、2003年7月に「次世代育成支援対策推進法」が成立しました。この法律により、国・自治体・企業それぞれの責務を明らかにし、一体となって、少子化の流れを変えるための環境整備を推進することになりました。
今回、この次世代育成支援対策推進法の一部が改正されました。
◆改正内容のポイント
次世代育成支援対策推進法では、地方公共団体等が「地域行動計画」を策定・公表するとともに、企業においても、従業員数に応じて、従業員の仕事と子育ての両立を支援するための「一般事業主行動計画」を策定し、その旨を届け出ることが義務付けられています。
今回の改正では、上記の行動計画の届出を義務付ける企業規模が拡大され、行動計画の公表および従業員への周知が義務化されています。詳細は下記の通りです。
(1)行動計画の公表および従業員への周知の義務化
仕事と家庭の両立を支援するための雇用環境の整備について、事業主が策定する一般事業主行動計画の公表・従業員への周知が、従業員101人以上の企業は義務、100人以下の企業は努力義務となります。(2009年4月1日施行。従業員101人以上300人以下の企業は2011年3月31日までは努力義務)
(2)行動計画の届出義務企業の拡大
一般事業主行動計画の策定・届出の義務付け範囲が、従業員301人以上の企業から、従業員101人以上の企業に拡大されます。(2011年4月1日施行)
◆「くるみん」マーク取得が効果を生む
この法律に基づいて、従業員が仕事と子育てを両立できる職場環境の整備を目指し、行動計画を作成し、定めた目標を達成したことなど一定の要件を満たした場合、申請を行うことにより、都道府県労働局長の認定を受けることができます。認定を受けた事業主は、次世代認定マーク(愛称:くるみん)を求人広告、自社の商品などにつけることができます。
このマークの取得により、次世代育成支援対策に積極的に取り組んでいる企業であることがアピールでき、企業イメージが向上し、その企業に雇用される従業員のモラールアップや優秀な人材の確保につながることが期待されています。最近では、名刺やホームページなど、あらゆるところでこのマークが見受けられるのも、様々な期待と効果を生んでいる表れではないでしょうか。
「石綿健康被害救済法」改正による被害者救済の拡充
◆石綿被害者救済のための法律
2006年に「石綿健康被害救済法」が施行され、その後 度々改正が行われました。そして、2008年12月1日に、「石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律」 が施行されました。
◆支給内容の拡充・支給期限の延長
今回の改正により、2008年12月1日より、以下の通り支給が拡充されています。
(1)医療費等の支給開始日が「療養開始日」に
医療費や療養手当の支給開始日が、「認定の申請をした日(認定申請日)」から「療養を開始した日(療養開始日)」に改正されました。すでに認定されている方についても、さかのぼっての支給となります。ただし、認定申請日から3年前の日より前に遡ることはできません。
(2)法律施行日以降に亡くなった方の遺族に特別遺族弔慰金等を支給
石綿を吸入することにより中皮腫や肺がんにかかったものの認定の申請を行わず、これらの疾病に起因して2006年3月27日(法律施行日)以降に亡くなった方の遺族にも、特別遺族弔慰金・特別葬祭料(約300万円)が支給されることとなりました。
(3)特別遺族弔慰金等の請求期限を延長
特別遺族弔慰金・特別葬祭料(約300万円)の請求期限が、2012年3月27日まで延長されることになりました。
◆被害者への手厚い救済の動き
労災保険でも健康保険でも、多くの給付は、支給が開始されるのは「療養開始日」となっています。石綿に関して言えば、体に違和感をおぼえ療養を開始し、治療を行う中で石綿が原因であることが判明し、その後申請を行って支給が開始される流れになっています。
これまでは、病院に行き療養を開始した日と申請日が異なる場合、申請するまでの間に受けた治療等については健康保険等においての自己負担となっていました。しかし、今回の改正により、支給開始日が「認定申請日」から「療養開始日」と変更され、法施行日以降に亡くなった方の遺族にも特別遺族弔慰金等が支給されることになり、被害者や遺族にとっては歓迎すべき改正になったと言えるでしょう。
無保険の子どもを救う「改正国民健康保険法」
◆「無保険」の子どもを救済
自営業者らが加入する国民健康保険において、景気悪化の影響もあり、保険料の滞納が目立っています。保護者が国民健康保険の保険料を滞納したために「無保険」になっている中学生以下の子どもに臨時の保険証を発行する「改正国民健康保険法」が成立し、今年の4月1日から施行されることになりました。
◆滞納から発生する問題
日本では、全国民が公的な医療保険制度に加入する「国民皆保険」が建前となっています。会社員や公務員といった勤め人とその扶養家族は健康保険や共済組合などに加入し、自営業者やフリーター、会社退職者などは、原則として、自治体が運営する国民健康保険に加入します。
健康保険や共済組合では、多くの場合、加入者の給料から保険料が天引きされます。国民健康保険では、65歳以上の加入者から年金の天引きもありますが、多くの加入者は保険料を自ら払い込みます。国民健康保険に加入している世帯は約2,500万世帯あるそうですが、その2割弱で滞納が発生していると言われています
厚生労働省は保険料徴収を強化するため、2000年から、1年以上滞納したときは、特別な事情がなければ、保険証ではなく「資格証明書」を交付することを自治体に義務付けました。この資格証明書は、保険証の代わりに交付されるもので、窓口負担が全額自己負担となりますが、市町村へ申請することにより保険給付部の7割が還付されます。
しかし、資格書証明書を持つ加入者が病院にかかることを我慢し、病状を悪化させたり、死に至ったりするケースが報告され始め、この仕組みが裏目にでるようになりました。さらに、親の保険料滞納により保険証を回収され、医療機関にかかることの多い子供たちが「無保険状態」になることが問題視されるようにもなりました。厚生労働省の調査によると、無保険状態の中学生以下の子どもは全国に約3万3,000人もいると報告されています。
◆無保険の子どもを救う今回の法改正
このような状況に対策を打つべく、今回の改正が行われました。具体的には、中学生以下の子どもが医療を受ける必要がある場合、有効期間が6カ月の「短期保険証」を一律に交付します。これにより、保護者が保険料を滞納している状態であっても、中学生以下の子どもが医療機関で必要な医療を受けられるようになりました。
国民健康保険は国民「皆保険」を守る最後の砦となっているにもかかわらず、保険料の滞納によって様々な問題が生じているのが現状です。必要な医療を受けられない無保険の子どもを救済するために今回の改正は行われましたが、まだまだ取り組むべき課題がたくさん潜んでいるようにも思えます。
母子手帳の電子化をはじめとするIT活用
◆母子手帳の電子化構想
政府は、パソコンや携帯電話などを活用して、現行の母子手帳に双方向性の機能を持たせる「電子版母子手帳」(仮称)の導入を検討しているそうです。今年度中にもモデル自治体において実証実験が行われるようです。
◆様々な手続きの電子化が負担軽減に
母子手帳を電子化して双方向機能を持たせることで、女性の負担を軽減したり孤立感を解消したりと、少子化対策の一助とするねらいがあります。行政機関が保有するデータを連携させることで、児童手当などのネット申請を実現可能にします。また、婚姻届を提出すれば他の申請書類を出さなくてもパスポートや運転免許などの情報を変更できるシステムの構築も検討されています。
新しい母子手帳は、ネット上の個人ページに入力した母子の体重・血圧などの健康情報に基づき、地域の医療機関などからアドバイスなどの返信を受けられる仕組みを想定しています。健康診断や予防接種の実施日も電子メールで通知し、診療漏れを防ぐ効果が期待されています。
女性の結婚から育児時期までの様々の煩雑な手続きについて、ITを活用することにより負担を軽減する、その支援イメージはまさに具体化しつつあります。そして、政府が導入を目指している年金や医療などの個人情報を集約した「電子私書箱」(仮称)と連動させることも検討されています。
◆電子化計画の実現に向けて
このような様々な効果や効率化が期待されている電子化計画ですが、実現するにはまだ様々な課題があります。全国の自治体においては、情報のインフラに互換性を持たせる必要があります。そして、これにより地方の負担が重くなれば自治体との調整が難航する可能性もあります。IT化することで誰もが利用できる環境を整えること、誰もが使いこなせる仕組みを作ることも必要となり、情報格差という新たな問題も出てくるでしょう。
まだまだ実現可能になるまでは、課題も山積みで情報のインフラを整えることも必要な状況ですが、この母子手帳の電子化をはじめとするITを活用した育児世帯支援の実現は女性にとって望ましい、優しい社会を作り出すことは間違いないと言えるのではないでしょうか。
職場での「不当な扱い」と企業の責任
◆募集時の説明と異なる労働条件
「募集時の説明と労働条件が違う」。新聞報道によると、若手社会人の約7割、アルバイト学生の半数が、働くうえでこのような「不当な扱い」を経験したと回答していることが、厚生労働省の調査で明らかになりました。
◆多くの人が「対応何もせず」
勤務先やアルバイト先で受けた不適切な扱いで一番多かったのが、「労働条件が募集時の提示内容と異なる」というもので、社会人の38.4%、学生の21.8%が経験しているそうです。社会人では、「就業規則をいつでも確認できるようになっていない」が28.2%、「労働条件を書面で提示されていない」が22.6%で「残業代が支払われない」も21.3%にのぼり、学生の回答もほぼ同じ項目が上位に並びました。逆に、「不当な扱いの経験がない」と答えたのは、社会人で28.9%、学生の52.6%でした。
このような不当な扱いを受けた際にどのよう対応をしたかを聞いたところ、「同僚に相談した」「転職した、辞めた」といった回答よりも多かったのが、「何もしなかった」という回答で、社会人の41.3%、学生の54.8%を占めました。
◆大きなトラブルになる前に
「何もしなかった」という理由として、社会人・学生ともに「どうせ何も変わらない」「対処するのが面倒」ということが多く挙げられています。その原因として、若い社会人や学生の多くが、労働法規の理解が乏しかったり、理解していてもどうせ改善されないと考えたりするということがあるようです。改善策としては、学校教育や社員研修の中で、労働者の権利と義務を学ぶ機会を与え、キャリア教育を充実させる必要性があると指摘されています。
労働者が不当な扱いを受けていながらそれを放置していたからといって、会社側は安心できません。不当な扱いの中には、「残業代の不払い」「労働条件の相違」「上司による嫌がらせ」「セクハラ」等、経営者側の法律違反・コンプライアンス違反が問われるものが多く見受けられます。残業代不払いやセクハラ問題が、労働者の訴えにより明らかになり、多額の不払い残業代や損害賠償請求などを支払わなければならない状況に追い込まれ、経営が圧迫されている企業も最近ではたびたび見受けられます。
まずは法令順守の目線から職場環境を見直し、正社員・非正社員と雇用形態にかかわらず、誰もが働きやすい職場作りを目指すことが、経営者にとって急務といえるでしょう。
国の失業者対策と民間企業や自治体による失業者の採用
◆非正規労働者の失業が急増中
厚生労働省の調査によれば、景気後退によるリストラにより、昨年10月から今年3月までに職を失う(実際に失った)非正規労働者の数は8万5,012人に達する模様で、昨年11月末の調査時から2.8倍に拡大しています。また、昨年11月の有効求人倍率(0.76倍)、完全失業率(3.9%)はいずれも悪化しており、不況の深刻さを物語っています。
連合が昨年12月中旬に発表した「緊急雇用実態調査」によれば、過去3カ月間に解雇等の雇用調整を行った企業は約3社に1社にのぼるそうです。期間工や派遣労働者を多く雇用している製造業ではこの傾向が特に顕著であり、約48%の企業が、すでに雇用調整を実施しています。
◆厚生労働省による失業者対策
厚生労働省は、昨年12月に、失業した非正規労働者に対して、ハローワークを通じて住居費や生活費に充てるための資金(半年で最高180万円)を低利で融資すると発表しました。また、派遣契約解除に伴う失業者の就業支援を今年から強化する方針も明らかにしています。内容は、全国約30カ所のハローワークに専属の担当者を配置し、履歴書の書き方や面接の受け方に関する指導、職業紹介などを行うものです。
また、同省は、雇止めされた非正規労働者などが失業手当を受給するために必要な雇用保険の加入要件について、現行の「1年以上の雇用見込み」から「6カ月以上」に短縮する方針も示しています。失業手当の給付日数も60日程度上乗せする方針で、現在開会中の通常国会に雇用保険法の改正案を提出し、2009年度からの実施を目指すとしています。
◆民間企業・自治体による失業者などの積極採用
タクシー会社の第一交通産業(福岡県北九州市)では、雇用の受け皿として、今年3月末までに30の都道府県で合計6,000人を運転手として採用すると発表しました。居酒屋「白木屋」などを運営するモンテローザ(東京都武蔵野市)でも、主に雇用調整で失業した人などを対象として、3月末までに最大で500人を正社員採用すると発表しています。その他にも、ラーメンチェーンを経営する幸楽苑(福島県郡山市)は店長候補として150人、進学塾などを経営する学究社(東京都新宿区)は臨時職員として100人をそれぞれ採用するとしています。
同様の動きは自治体でも見られます。大分キヤノンや東芝などの工場がある大分市では、解雇された非正規労働者約50人を臨時職員やアルバイトとして採用することを決定しています。神奈川県横浜市(約500人)、東京都港区(約50人)などでも、不況対策として契約解除された非正規労働者を中心に臨時職員として採用する方針を示しています。トヨタ自動車の本社がある愛知県豊田市では、1月中旬以降に臨時職員100人前後を採用するそうです。
このように、失業者を積極的に採用する動きは今後も広がっていきそうです。
内定取消しによる企業名公表の基準
◆内定取消しが急拡大
企業による新卒者の内定取消しが大きな社会問題となっています。
厚生労働省の調査によれば、来春に高校や大学を卒業する学生の採用内定取消件数は、12月下旬時点で172事業所769人となっています。この数字は、11月の第1回調査時点(331人)と比較して急拡大しており、大手証券会社の破綻による影響が出た1998年(1,077人)を上回るハイペースです。産業別では、不動産が197人と最多で、製造業が187人で続いています。
また、文部科学省は、内定取消し問題で大学関係者らを集めて12月中旬に緊急対策会議を開きましたが、大学側の調査により、国立大だけで47人の内定取消しがあったことがわかっています。また、日本高等学校教職員組合の緊急調査では、採用内定を取り消された高校生が全国で73人(12月19日現在)にのぼっています。
◆内定取消しが認められる場合とは?
大日本印刷事件(最高裁昭和54年7月20日判決)では、内定取消しが認められる場合について、「内定当時知ることができず、また知ることを期待できないような事実があり、それを理由に内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できる場合」に限られるとしています。
しかし、企業との結びつきの強弱の観点から、内定取消しは、社会通念上相当な事情があれば、正式採用後の解雇に比べると合理性や相当性が緩やかに認められるといえるでしょう。
◆内定取消し企業名の公表基準
厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会職業安定分科会は、1月上旬に、厚生労働省が示していた新卒者の内定取消し企業名の公表基準について了承し、舛添厚生労働大臣に答申しました。1月中に実施される予定の公表基準(5項目)は以下の通りです。
(1)2年連続で内定取消しを行った。
(2)同一年度に10人以上の内定取消しを行った。
(3)事業活動の縮小が余儀なくされていると明らかには認められない。
(4)学生に内定取消しの理由を十分に説明していない。
(5)内定を取り消した学生の就職先の確保を行わなかった。
昨年中に内定取消しを行った企業についても、上記の基準に該当すれば、企業名が公表されるそうです。
派遣労働者数が過去最多に、賃金は減少傾向
◆厚労省が平成19年度の集計結果を発表
労働者派遣事業の事業運営状況については、労働者派遣法に基づいて、各派遣元事業主から当該事業所の事業年度ごとに「労働者派遣事業報告書」が厚生労働大臣に提出されることになっています。
平成19年度中に事業年度が終了し、報告書を提出した派遣元事業所(一般労働者派遣事業所20,095事業所、特定労働者派遣事業所30,014事業所)の事業運営状況について、厚生労働大臣が取りまとめ、昨年12月下旬にその概要を発表しました。
主なポイントは以下の通りです。
◆派遣労働者数が過去最多を更新
2007年度の派遣労働者数は約384万人(前年度比19.6%増。登録型派遣約280万人、常用型派遣約104万人)となり、過去最多を更新しました。派遣事業所数、年間売上高も前年度より約2割増となっています。
しかし、厚生労働省では、景気後退の影響による昨秋以降の急激な「派遣切り」などの影響により、今年度は派遣労働者等の減少を見込んでいます。
◆派遣労働者の賃金は減少傾向
派遣労働者の賃金については、8時間換算で、一般労働者派遣事業においては平均9,534円(前年度比9.8%減)、特定労働者派遣事業においては平均13,044円(前年度比7.9%減)となり、いずれも減少傾向にあります。
◆紹介予定派遣の活用状況
紹介予定派遣により労働者派遣された労働者の数は53,413人(前年度比19.0%増)、紹介予定派遣で職業紹介を経て直接雇用に結びついた労働者の数は32,497人(前年度比18.8%増)となり、いずれも増加傾向にあります。
「育児・介護休業法」改正をめぐる動き
◆労働政策審議会が建議
厚生労働省は、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会に「仕事と生活の両立支援」を目的とした育児・介護休業制度の見直し案を提示していましたが、同審議会は、昨年12月25日、同見直し案を舛添大臣に建議しました。厚労省では、現在開催中の通常国会に育児・介護休業法改正案を提出する考えのようです。
改正法案には、3歳未満の子どもを持つ労働者の残業免除や短時間勤務措置の事業主への義務付け、男性の育児参加を促すための仕組みや介護のための短期休暇制度の創設なども盛り込まれる模様です。なお、短時間勤務制度などに関しては、中小企業への適用に猶予期間を設けられるようです。ここでは、改正法案のベースとなる、労働政策審議会雇用均等分科会が示している報告案の内容を見てみましょう。
◆「子育て中の働き方の見直し」について
短時間勤務について、3歳に達するまでの子を養育する労働者に対する事業主による単独の措置義務とすることが適当であり、この場合、例えば、勤務時間が1日6時間を上回る分の短縮の措置を含むこととするなど、措置の内容について一定の基準を設けることが適当だとしています。
また、所定外労働の免除については、3歳に達するまでの子を養育する労働者の請求により対象となる制度とすること、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満の労働者等については、労使協定により措置の対象から除外できるようにすることが適当であるとしています。
◆「父親も子育てができる働き方の実現」について
父母がともに育児休業を取得する場合に、育児休業取得可能期間を子が1歳2カ月に達するまでに延長することが適当であり、この場合、父母1人ずつが取得できる休業期間の上限については、現行と同様に1年間とすることが適当であるとしています。
また、出産後8週間以内の父親の育児休業取得を促進し、この期間に父親が育児休業を取得した場合には、特例として、育児休業の再度取得の申出を認めることが適当であるとしています。
◆「子育て・介護の状況に応じた両立支援制度の整備」について
子の看護休業について、付与日数を小学校就学の始期に達するまでの子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日とすることが適当であり、子どもの予防接種や健康診断の受診についても取得理由として認めることが適当であるとしています。
介護のための短期の休暇については、要介護状態にある家族の通院の付き添いなどに対応するため、介護のための短期の休暇制度を設けることが適当であり、この場合、付与日数ついては、1人につき年5日、2人以上であれば年10日以上が適当であるとしています。
「年金記録問題」に関連した最近の動き
◆「無年金」状態から受給権を回復
社会保険庁は、「宙に浮いた年金記録」から自分の記録が見つけ出されたことにより、「無年金」の状態から受給権を回復できた人が、今年5~9月の間に62人いたと発表しました。この62名の方々の年齢は62歳から93歳までであり、受給可能な年金額は年間平均で約61万3,000円となっています。
◆記録の訂正が社保事務所で可能に
社会保険庁は、厚生年金標準報酬月額が改ざんされていた問題に関して、記録の回復を早めるため、従業員の記録が遡って改ざんされていた場合について、総務省の年金記録確認第三者委員会における審査を省略し、社会保険事務所で記録を訂正できるよう、全国の社会保険事務所に通知を出したそうです。
被害者が事業主や役員でない一般の従業員であり、事業所が厚生年金から脱退した後に遡って従業員の標準報酬月額が引き下げられていたり、加入期間が短くされていたりするケースにおいて、改ざんされた時期の給与実態が給与明細書等の記録により確認できる場合に、記録の訂正が可能となります。
◆記録漏れの訂正事務処理体制を強化
舛添厚生労働大臣は、年金記録の訂正事務処理を行うための人員について、現在の280名から500名に増やす方針を明らかにしました。平均で7カ月程度かかっている訂正申請から年金受給までの期間を3カ月程度に短縮するのがねらいだそうです。なお、1月末時点での未処理件数は約80万件にのぼると見込まれています。
また、舛添大臣は、年金の支払いが遅れた分だけ利息をつけることを検討する意向を示しました。税金が徴収されすぎた場合には利息をつけて還付されていることが念頭にあるようです。
◆「電子私書箱」活用で記録改ざん防止に
政府は、社会保障関連の個人情報などを、本人がインターネットで閲覧できる「電子私書箱」(仮称)を活用して、標準報酬月額などをネット上で直接確認できるようにする制度の創設を検討していることを明らかにしました。事業主や社会保険事務所の手続上のミスや改ざん防止をねらうためであり、順調に行けば2011年度導入の予定です。
◆少子化抑止のための法律
少子化が急速に進行し、今後の経済社会に深刻な影響を与えることが懸念されています。そこで、次代を担う子どもたちが健やかに産まれ、育成されるのに必要な環境整備を図るため、2003年7月に「次世代育成支援対策推進法」が成立しました。この法律により、国・自治体・企業それぞれの責務を明らかにし、一体となって、少子化の流れを変えるための環境整備を推進することになりました。
今回、この次世代育成支援対策推進法の一部が改正されました。
◆改正内容のポイント
次世代育成支援対策推進法では、地方公共団体等が「地域行動計画」を策定・公表するとともに、企業においても、従業員数に応じて、従業員の仕事と子育ての両立を支援するための「一般事業主行動計画」を策定し、その旨を届け出ることが義務付けられています。
今回の改正では、上記の行動計画の届出を義務付ける企業規模が拡大され、行動計画の公表および従業員への周知が義務化されています。詳細は下記の通りです。
(1)行動計画の公表および従業員への周知の義務化
仕事と家庭の両立を支援するための雇用環境の整備について、事業主が策定する一般事業主行動計画の公表・従業員への周知が、従業員101人以上の企業は義務、100人以下の企業は努力義務となります。(2009年4月1日施行。従業員101人以上300人以下の企業は2011年3月31日までは努力義務)
(2)行動計画の届出義務企業の拡大
一般事業主行動計画の策定・届出の義務付け範囲が、従業員301人以上の企業から、従業員101人以上の企業に拡大されます。(2011年4月1日施行)
◆「くるみん」マーク取得が効果を生む
この法律に基づいて、従業員が仕事と子育てを両立できる職場環境の整備を目指し、行動計画を作成し、定めた目標を達成したことなど一定の要件を満たした場合、申請を行うことにより、都道府県労働局長の認定を受けることができます。認定を受けた事業主は、次世代認定マーク(愛称:くるみん)を求人広告、自社の商品などにつけることができます。
このマークの取得により、次世代育成支援対策に積極的に取り組んでいる企業であることがアピールでき、企業イメージが向上し、その企業に雇用される従業員のモラールアップや優秀な人材の確保につながることが期待されています。最近では、名刺やホームページなど、あらゆるところでこのマークが見受けられるのも、様々な期待と効果を生んでいる表れではないでしょうか。
「石綿健康被害救済法」改正による被害者救済の拡充
◆石綿被害者救済のための法律
2006年に「石綿健康被害救済法」が施行され、その後 度々改正が行われました。そして、2008年12月1日に、「石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律」 が施行されました。
◆支給内容の拡充・支給期限の延長
今回の改正により、2008年12月1日より、以下の通り支給が拡充されています。
(1)医療費等の支給開始日が「療養開始日」に
医療費や療養手当の支給開始日が、「認定の申請をした日(認定申請日)」から「療養を開始した日(療養開始日)」に改正されました。すでに認定されている方についても、さかのぼっての支給となります。ただし、認定申請日から3年前の日より前に遡ることはできません。
(2)法律施行日以降に亡くなった方の遺族に特別遺族弔慰金等を支給
石綿を吸入することにより中皮腫や肺がんにかかったものの認定の申請を行わず、これらの疾病に起因して2006年3月27日(法律施行日)以降に亡くなった方の遺族にも、特別遺族弔慰金・特別葬祭料(約300万円)が支給されることとなりました。
(3)特別遺族弔慰金等の請求期限を延長
特別遺族弔慰金・特別葬祭料(約300万円)の請求期限が、2012年3月27日まで延長されることになりました。
◆被害者への手厚い救済の動き
労災保険でも健康保険でも、多くの給付は、支給が開始されるのは「療養開始日」となっています。石綿に関して言えば、体に違和感をおぼえ療養を開始し、治療を行う中で石綿が原因であることが判明し、その後申請を行って支給が開始される流れになっています。
これまでは、病院に行き療養を開始した日と申請日が異なる場合、申請するまでの間に受けた治療等については健康保険等においての自己負担となっていました。しかし、今回の改正により、支給開始日が「認定申請日」から「療養開始日」と変更され、法施行日以降に亡くなった方の遺族にも特別遺族弔慰金等が支給されることになり、被害者や遺族にとっては歓迎すべき改正になったと言えるでしょう。
無保険の子どもを救う「改正国民健康保険法」
◆「無保険」の子どもを救済
自営業者らが加入する国民健康保険において、景気悪化の影響もあり、保険料の滞納が目立っています。保護者が国民健康保険の保険料を滞納したために「無保険」になっている中学生以下の子どもに臨時の保険証を発行する「改正国民健康保険法」が成立し、今年の4月1日から施行されることになりました。
◆滞納から発生する問題
日本では、全国民が公的な医療保険制度に加入する「国民皆保険」が建前となっています。会社員や公務員といった勤め人とその扶養家族は健康保険や共済組合などに加入し、自営業者やフリーター、会社退職者などは、原則として、自治体が運営する国民健康保険に加入します。
健康保険や共済組合では、多くの場合、加入者の給料から保険料が天引きされます。国民健康保険では、65歳以上の加入者から年金の天引きもありますが、多くの加入者は保険料を自ら払い込みます。国民健康保険に加入している世帯は約2,500万世帯あるそうですが、その2割弱で滞納が発生していると言われています
厚生労働省は保険料徴収を強化するため、2000年から、1年以上滞納したときは、特別な事情がなければ、保険証ではなく「資格証明書」を交付することを自治体に義務付けました。この資格証明書は、保険証の代わりに交付されるもので、窓口負担が全額自己負担となりますが、市町村へ申請することにより保険給付部の7割が還付されます。
しかし、資格書証明書を持つ加入者が病院にかかることを我慢し、病状を悪化させたり、死に至ったりするケースが報告され始め、この仕組みが裏目にでるようになりました。さらに、親の保険料滞納により保険証を回収され、医療機関にかかることの多い子供たちが「無保険状態」になることが問題視されるようにもなりました。厚生労働省の調査によると、無保険状態の中学生以下の子どもは全国に約3万3,000人もいると報告されています。
◆無保険の子どもを救う今回の法改正
このような状況に対策を打つべく、今回の改正が行われました。具体的には、中学生以下の子どもが医療を受ける必要がある場合、有効期間が6カ月の「短期保険証」を一律に交付します。これにより、保護者が保険料を滞納している状態であっても、中学生以下の子どもが医療機関で必要な医療を受けられるようになりました。
国民健康保険は国民「皆保険」を守る最後の砦となっているにもかかわらず、保険料の滞納によって様々な問題が生じているのが現状です。必要な医療を受けられない無保険の子どもを救済するために今回の改正は行われましたが、まだまだ取り組むべき課題がたくさん潜んでいるようにも思えます。
母子手帳の電子化をはじめとするIT活用
◆母子手帳の電子化構想
政府は、パソコンや携帯電話などを活用して、現行の母子手帳に双方向性の機能を持たせる「電子版母子手帳」(仮称)の導入を検討しているそうです。今年度中にもモデル自治体において実証実験が行われるようです。
◆様々な手続きの電子化が負担軽減に
母子手帳を電子化して双方向機能を持たせることで、女性の負担を軽減したり孤立感を解消したりと、少子化対策の一助とするねらいがあります。行政機関が保有するデータを連携させることで、児童手当などのネット申請を実現可能にします。また、婚姻届を提出すれば他の申請書類を出さなくてもパスポートや運転免許などの情報を変更できるシステムの構築も検討されています。
新しい母子手帳は、ネット上の個人ページに入力した母子の体重・血圧などの健康情報に基づき、地域の医療機関などからアドバイスなどの返信を受けられる仕組みを想定しています。健康診断や予防接種の実施日も電子メールで通知し、診療漏れを防ぐ効果が期待されています。
女性の結婚から育児時期までの様々の煩雑な手続きについて、ITを活用することにより負担を軽減する、その支援イメージはまさに具体化しつつあります。そして、政府が導入を目指している年金や医療などの個人情報を集約した「電子私書箱」(仮称)と連動させることも検討されています。
◆電子化計画の実現に向けて
このような様々な効果や効率化が期待されている電子化計画ですが、実現するにはまだ様々な課題があります。全国の自治体においては、情報のインフラに互換性を持たせる必要があります。そして、これにより地方の負担が重くなれば自治体との調整が難航する可能性もあります。IT化することで誰もが利用できる環境を整えること、誰もが使いこなせる仕組みを作ることも必要となり、情報格差という新たな問題も出てくるでしょう。
まだまだ実現可能になるまでは、課題も山積みで情報のインフラを整えることも必要な状況ですが、この母子手帳の電子化をはじめとするITを活用した育児世帯支援の実現は女性にとって望ましい、優しい社会を作り出すことは間違いないと言えるのではないでしょうか。
職場での「不当な扱い」と企業の責任
◆募集時の説明と異なる労働条件
「募集時の説明と労働条件が違う」。新聞報道によると、若手社会人の約7割、アルバイト学生の半数が、働くうえでこのような「不当な扱い」を経験したと回答していることが、厚生労働省の調査で明らかになりました。
◆多くの人が「対応何もせず」
勤務先やアルバイト先で受けた不適切な扱いで一番多かったのが、「労働条件が募集時の提示内容と異なる」というもので、社会人の38.4%、学生の21.8%が経験しているそうです。社会人では、「就業規則をいつでも確認できるようになっていない」が28.2%、「労働条件を書面で提示されていない」が22.6%で「残業代が支払われない」も21.3%にのぼり、学生の回答もほぼ同じ項目が上位に並びました。逆に、「不当な扱いの経験がない」と答えたのは、社会人で28.9%、学生の52.6%でした。
このような不当な扱いを受けた際にどのよう対応をしたかを聞いたところ、「同僚に相談した」「転職した、辞めた」といった回答よりも多かったのが、「何もしなかった」という回答で、社会人の41.3%、学生の54.8%を占めました。
◆大きなトラブルになる前に
「何もしなかった」という理由として、社会人・学生ともに「どうせ何も変わらない」「対処するのが面倒」ということが多く挙げられています。その原因として、若い社会人や学生の多くが、労働法規の理解が乏しかったり、理解していてもどうせ改善されないと考えたりするということがあるようです。改善策としては、学校教育や社員研修の中で、労働者の権利と義務を学ぶ機会を与え、キャリア教育を充実させる必要性があると指摘されています。
労働者が不当な扱いを受けていながらそれを放置していたからといって、会社側は安心できません。不当な扱いの中には、「残業代の不払い」「労働条件の相違」「上司による嫌がらせ」「セクハラ」等、経営者側の法律違反・コンプライアンス違反が問われるものが多く見受けられます。残業代不払いやセクハラ問題が、労働者の訴えにより明らかになり、多額の不払い残業代や損害賠償請求などを支払わなければならない状況に追い込まれ、経営が圧迫されている企業も最近ではたびたび見受けられます。
まずは法令順守の目線から職場環境を見直し、正社員・非正社員と雇用形態にかかわらず、誰もが働きやすい職場作りを目指すことが、経営者にとって急務といえるでしょう。
国の失業者対策と民間企業や自治体による失業者の採用
◆非正規労働者の失業が急増中
厚生労働省の調査によれば、景気後退によるリストラにより、昨年10月から今年3月までに職を失う(実際に失った)非正規労働者の数は8万5,012人に達する模様で、昨年11月末の調査時から2.8倍に拡大しています。また、昨年11月の有効求人倍率(0.76倍)、完全失業率(3.9%)はいずれも悪化しており、不況の深刻さを物語っています。
連合が昨年12月中旬に発表した「緊急雇用実態調査」によれば、過去3カ月間に解雇等の雇用調整を行った企業は約3社に1社にのぼるそうです。期間工や派遣労働者を多く雇用している製造業ではこの傾向が特に顕著であり、約48%の企業が、すでに雇用調整を実施しています。
◆厚生労働省による失業者対策
厚生労働省は、昨年12月に、失業した非正規労働者に対して、ハローワークを通じて住居費や生活費に充てるための資金(半年で最高180万円)を低利で融資すると発表しました。また、派遣契約解除に伴う失業者の就業支援を今年から強化する方針も明らかにしています。内容は、全国約30カ所のハローワークに専属の担当者を配置し、履歴書の書き方や面接の受け方に関する指導、職業紹介などを行うものです。
また、同省は、雇止めされた非正規労働者などが失業手当を受給するために必要な雇用保険の加入要件について、現行の「1年以上の雇用見込み」から「6カ月以上」に短縮する方針も示しています。失業手当の給付日数も60日程度上乗せする方針で、現在開会中の通常国会に雇用保険法の改正案を提出し、2009年度からの実施を目指すとしています。
◆民間企業・自治体による失業者などの積極採用
タクシー会社の第一交通産業(福岡県北九州市)では、雇用の受け皿として、今年3月末までに30の都道府県で合計6,000人を運転手として採用すると発表しました。居酒屋「白木屋」などを運営するモンテローザ(東京都武蔵野市)でも、主に雇用調整で失業した人などを対象として、3月末までに最大で500人を正社員採用すると発表しています。その他にも、ラーメンチェーンを経営する幸楽苑(福島県郡山市)は店長候補として150人、進学塾などを経営する学究社(東京都新宿区)は臨時職員として100人をそれぞれ採用するとしています。
同様の動きは自治体でも見られます。大分キヤノンや東芝などの工場がある大分市では、解雇された非正規労働者約50人を臨時職員やアルバイトとして採用することを決定しています。神奈川県横浜市(約500人)、東京都港区(約50人)などでも、不況対策として契約解除された非正規労働者を中心に臨時職員として採用する方針を示しています。トヨタ自動車の本社がある愛知県豊田市では、1月中旬以降に臨時職員100人前後を採用するそうです。
このように、失業者を積極的に採用する動きは今後も広がっていきそうです。
内定取消しによる企業名公表の基準
◆内定取消しが急拡大
企業による新卒者の内定取消しが大きな社会問題となっています。
厚生労働省の調査によれば、来春に高校や大学を卒業する学生の採用内定取消件数は、12月下旬時点で172事業所769人となっています。この数字は、11月の第1回調査時点(331人)と比較して急拡大しており、大手証券会社の破綻による影響が出た1998年(1,077人)を上回るハイペースです。産業別では、不動産が197人と最多で、製造業が187人で続いています。
また、文部科学省は、内定取消し問題で大学関係者らを集めて12月中旬に緊急対策会議を開きましたが、大学側の調査により、国立大だけで47人の内定取消しがあったことがわかっています。また、日本高等学校教職員組合の緊急調査では、採用内定を取り消された高校生が全国で73人(12月19日現在)にのぼっています。
◆内定取消しが認められる場合とは?
大日本印刷事件(最高裁昭和54年7月20日判決)では、内定取消しが認められる場合について、「内定当時知ることができず、また知ることを期待できないような事実があり、それを理由に内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できる場合」に限られるとしています。
しかし、企業との結びつきの強弱の観点から、内定取消しは、社会通念上相当な事情があれば、正式採用後の解雇に比べると合理性や相当性が緩やかに認められるといえるでしょう。
◆内定取消し企業名の公表基準
厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会職業安定分科会は、1月上旬に、厚生労働省が示していた新卒者の内定取消し企業名の公表基準について了承し、舛添厚生労働大臣に答申しました。1月中に実施される予定の公表基準(5項目)は以下の通りです。
(1)2年連続で内定取消しを行った。
(2)同一年度に10人以上の内定取消しを行った。
(3)事業活動の縮小が余儀なくされていると明らかには認められない。
(4)学生に内定取消しの理由を十分に説明していない。
(5)内定を取り消した学生の就職先の確保を行わなかった。
昨年中に内定取消しを行った企業についても、上記の基準に該当すれば、企業名が公表されるそうです。
派遣労働者数が過去最多に、賃金は減少傾向
◆厚労省が平成19年度の集計結果を発表
労働者派遣事業の事業運営状況については、労働者派遣法に基づいて、各派遣元事業主から当該事業所の事業年度ごとに「労働者派遣事業報告書」が厚生労働大臣に提出されることになっています。
平成19年度中に事業年度が終了し、報告書を提出した派遣元事業所(一般労働者派遣事業所20,095事業所、特定労働者派遣事業所30,014事業所)の事業運営状況について、厚生労働大臣が取りまとめ、昨年12月下旬にその概要を発表しました。
主なポイントは以下の通りです。
◆派遣労働者数が過去最多を更新
2007年度の派遣労働者数は約384万人(前年度比19.6%増。登録型派遣約280万人、常用型派遣約104万人)となり、過去最多を更新しました。派遣事業所数、年間売上高も前年度より約2割増となっています。
しかし、厚生労働省では、景気後退の影響による昨秋以降の急激な「派遣切り」などの影響により、今年度は派遣労働者等の減少を見込んでいます。
◆派遣労働者の賃金は減少傾向
派遣労働者の賃金については、8時間換算で、一般労働者派遣事業においては平均9,534円(前年度比9.8%減)、特定労働者派遣事業においては平均13,044円(前年度比7.9%減)となり、いずれも減少傾向にあります。
◆紹介予定派遣の活用状況
紹介予定派遣により労働者派遣された労働者の数は53,413人(前年度比19.0%増)、紹介予定派遣で職業紹介を経て直接雇用に結びついた労働者の数は32,497人(前年度比18.8%増)となり、いずれも増加傾向にあります。
「育児・介護休業法」改正をめぐる動き
◆労働政策審議会が建議
厚生労働省は、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会に「仕事と生活の両立支援」を目的とした育児・介護休業制度の見直し案を提示していましたが、同審議会は、昨年12月25日、同見直し案を舛添大臣に建議しました。厚労省では、現在開催中の通常国会に育児・介護休業法改正案を提出する考えのようです。
改正法案には、3歳未満の子どもを持つ労働者の残業免除や短時間勤務措置の事業主への義務付け、男性の育児参加を促すための仕組みや介護のための短期休暇制度の創設なども盛り込まれる模様です。なお、短時間勤務制度などに関しては、中小企業への適用に猶予期間を設けられるようです。ここでは、改正法案のベースとなる、労働政策審議会雇用均等分科会が示している報告案の内容を見てみましょう。
◆「子育て中の働き方の見直し」について
短時間勤務について、3歳に達するまでの子を養育する労働者に対する事業主による単独の措置義務とすることが適当であり、この場合、例えば、勤務時間が1日6時間を上回る分の短縮の措置を含むこととするなど、措置の内容について一定の基準を設けることが適当だとしています。
また、所定外労働の免除については、3歳に達するまでの子を養育する労働者の請求により対象となる制度とすること、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満の労働者等については、労使協定により措置の対象から除外できるようにすることが適当であるとしています。
◆「父親も子育てができる働き方の実現」について
父母がともに育児休業を取得する場合に、育児休業取得可能期間を子が1歳2カ月に達するまでに延長することが適当であり、この場合、父母1人ずつが取得できる休業期間の上限については、現行と同様に1年間とすることが適当であるとしています。
また、出産後8週間以内の父親の育児休業取得を促進し、この期間に父親が育児休業を取得した場合には、特例として、育児休業の再度取得の申出を認めることが適当であるとしています。
◆「子育て・介護の状況に応じた両立支援制度の整備」について
子の看護休業について、付与日数を小学校就学の始期に達するまでの子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日とすることが適当であり、子どもの予防接種や健康診断の受診についても取得理由として認めることが適当であるとしています。
介護のための短期の休暇については、要介護状態にある家族の通院の付き添いなどに対応するため、介護のための短期の休暇制度を設けることが適当であり、この場合、付与日数ついては、1人につき年5日、2人以上であれば年10日以上が適当であるとしています。
「年金記録問題」に関連した最近の動き
◆「無年金」状態から受給権を回復
社会保険庁は、「宙に浮いた年金記録」から自分の記録が見つけ出されたことにより、「無年金」の状態から受給権を回復できた人が、今年5~9月の間に62人いたと発表しました。この62名の方々の年齢は62歳から93歳までであり、受給可能な年金額は年間平均で約61万3,000円となっています。
◆記録の訂正が社保事務所で可能に
社会保険庁は、厚生年金標準報酬月額が改ざんされていた問題に関して、記録の回復を早めるため、従業員の記録が遡って改ざんされていた場合について、総務省の年金記録確認第三者委員会における審査を省略し、社会保険事務所で記録を訂正できるよう、全国の社会保険事務所に通知を出したそうです。
被害者が事業主や役員でない一般の従業員であり、事業所が厚生年金から脱退した後に遡って従業員の標準報酬月額が引き下げられていたり、加入期間が短くされていたりするケースにおいて、改ざんされた時期の給与実態が給与明細書等の記録により確認できる場合に、記録の訂正が可能となります。
◆記録漏れの訂正事務処理体制を強化
舛添厚生労働大臣は、年金記録の訂正事務処理を行うための人員について、現在の280名から500名に増やす方針を明らかにしました。平均で7カ月程度かかっている訂正申請から年金受給までの期間を3カ月程度に短縮するのがねらいだそうです。なお、1月末時点での未処理件数は約80万件にのぼると見込まれています。
また、舛添大臣は、年金の支払いが遅れた分だけ利息をつけることを検討する意向を示しました。税金が徴収されすぎた場合には利息をつけて還付されていることが念頭にあるようです。
◆「電子私書箱」活用で記録改ざん防止に
政府は、社会保障関連の個人情報などを、本人がインターネットで閲覧できる「電子私書箱」(仮称)を活用して、標準報酬月額などをネット上で直接確認できるようにする制度の創設を検討していることを明らかにしました。事業主や社会保険事務所の手続上のミスや改ざん防止をねらうためであり、順調に行けば2011年度導入の予定です。
2008/12/27
2009.1月の事務所便り
経営承継円滑化法の施行で事業承継がスムーズに
◆経営のバトンタッチが進めやすくなる
2008年10月1日より、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律が施行されました。この法律は文字通り、経営のバトンタッチを円滑に進められるように中小企業をバックアップする主旨で制定されたものです。これにより中小企業の事業承継は、かなり進めやすくなると考えられます。
◆新法の内容は
毎年、中小企業の多くが後継者の不在を理由に廃業し、多くの雇用が失われていると言われています。それらの対策として、後継者が事業を承継しやすくすることが目的です。
内容は大きく3つに分けられます。
(1)遺留分に関する民法の特例
(2)金融支援措置
(3)相続税の課税についての措置
(1)は、一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者との合意があることなどを前提に、後継者に生前贈与された自社株式を遺留分の対象から除外し、相続による自社株式の分散を防止できるものです。また、後継者に生前贈与された自社株の評価額をあらかじめ固定し、後継者の努力による株式価値上昇分を遺留分の計算に含めなくてもよくなります。これらは、2009年3月1日からの施行となっています。
(2)は、経営者の死亡等に伴い必要な資金の調達を支援するため、中小企業信用保険法に規定する通常の保証枠とは別に、事業承継資金の借入れを受けることや、低金利での貸付けを受けることができます。
(3)は、相続税の課税について、自社株式の80%を納税猶予するなどの措置が検討されています。(3)については2009年度の改正で創設し、2008年10月1日に遡っての適用が予定されています。
◆企業の存続と雇用の安定化を
当然、適用のためには様々な条件を満たし、経済産業大臣の認定を受けることが必要となります。また、認定の有効期限は5年間で、その間雇用の8割を維持することなどの条件が定められています。
今回の事業承継円滑化法が機能すれば、中小企業の廃業を防ぎ、多くの中小企業労働者の雇用を守ることになります。多くの労働者の雇用を守り、雇用を安定化するという観点において、社会的にも、とても意義のある法律だと言えるのではないでしょうか。
国民年金の適用年齢を見直し!?
◆年金保険料はいつからいつまで払うのか
2009年度における財政再計算に向けて、社会保障審議会年金部会は国民年金の適用年齢の見直しを検討しています。「20歳~60歳が適用」ですっかり定着している国民年金ですが、どのように見直されているのでしょうか。
◆学生から取る保険料
現在国民年金の適用年齢は20歳からですが、現状では、22歳程度までは大学生等の学生の割合が多く、生産活動に従事しているとは言い難い状況です。それを反映してか国民年金の保険料納付率は、20歳代が最も低く、年齢階層が上がるに従って高くなる傾向にあります。これらの事情を踏まえて、「学生から保険料を取ること自体がおかしく、適用年齢を引き上げるべき」、「より年金制度に関心を持つ世代に適用範囲をシフトさせれば、納付率の向上が期待できる」、「保険料の徴収は稼得と連動させるべき」といった意見があります。
◆見直し案と検討事項
見直す際に考えられる選択肢としては…
(1)適用年齢を25~65歳とする。(40年加入は堅持)
(2)適用年齢を20(または18)~65歳とし、その間で40年納付すればよいこととする。
(3)適用年齢を20~65歳とし、うち20~25歳は一律納付猶予の期間とする(任意で保険料を納付した場合には保険料納付期間として取り扱う)。60~65歳については当面は任意加入とすることも検討する。
(1)の場合、20~24歳については障害年金が給付されなくなるので、別途その期間中について障害者の所得保障のための措置(福祉手当の創設)を講じる必要があると考えられます。(2)の案は、個々の被保険者が保険料を納めていない期間について、「納付しなくてもよい期間(強制徴収不可)」と「納付すべきなのに納付していない期間(強制徴収がありうる期間)」との区別をどのようにつけるのか、検討の必要がありそうです。最後に(3)の案は、40年間という現行加入期間を超える期間の年金額への反映について、対処する必要があります。
適用年齢の問題とは別に、国民年金保険料の徴収時効を現行の2年から5年程度に延長することや、基礎年金の支給を受けられるようになるために必要な保険料を支払ったとみなされる期間(受給資格期間)を、現行の25年から10年程度に短縮することなどについても検討されています。
国民年金法の成立は昭和34年、当時とは全く様相の異なる現代社会にマッチした、柔軟な年金制度改革の実施が、待ち望まれます。そのための論議は、選挙の争点とするなどにより、国民全体で広く考えていくことも望ましいのではないでしょうか。
裁判員制度による休みは有給?無給?
◆企業としての対応が迫られている
2009年5月から始まる裁判員制度、一般市民が司法に参加するこの制度は、平日に裁判に参加することになり、勤労者は仕事を休む必要が出てきます。裁判員に選ばれた人の所属する企業では、その休みへの対応が迫られています。
◆裁判員制度とは
裁判員制度は、一般市民が刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する信頼の向上につながることが期待されています。一般市民が裁判に参加する制度は、アメリカやイギリス、フランス、ドイツ等でも行われています。
日本の裁判員制度では、まず、地方裁判所ごとに裁判員候補者名簿が作られます。選ばれた候補者へ、調査票と共に候補者となったことが通知されます。2009年5月以降、事件ごとに初公判の6週間前までに、くじで候補者が選ばれて呼び出され、最終的にその中から6名が裁判員として選ばれ裁判に参加します。
辞退については、70歳以上の人や学生、重い病気やケガで参加できない人などは1年間を通じて辞退できます。ただし、仕事を理由とした辞退については、単なる「仕事が忙しい」という理由では原則辞退できません。
◆有給・無給は各企業の判断による
裁判員制度に基づいて裁判に参加することは、いわゆる労働基準法の「公の職務の執行」に当たるため、その時間は保障されねばなりません。多くの就業規則ではその旨の規定がありますが、裁判員の仕事に従事するための休暇制度を設けることは義務付けられていません。したがって、有給か無給かについては、各企業の判断に委ねられることになります。
有給の場合は、裁判員としての日当と会社の給与を、両方受け取れることになります。また、無給の場合は、裁判員としての裁判への参加意欲が減退することが危惧されます。
裁判所としては、裁判員が仕事を休みやすい環境作りが急務であることから、「裁判員としての仕事を行うための特別な有給休暇制度を作っていただくことが重要であり、法務省、検察庁、弁護士会とも連携し、各種経済団体、企業等に対し、休暇制度の導入の検討をお願いしている」と、ホームページ上などで説明しています。
正社員はもちろん、派遣社員にも「裁判員休暇」を与える企業や、配偶者が裁判員に選ばれた際に、有給で育児・介護休暇を取得できる制度を導入する企業など、積極的に制度に協力する企業も見受けられます。今後、制度が定着するには、企業側のこのような協力が重要な要素となってくることでしょう。
「5歳児健診」 就学前から母子を支援へ
◆5歳児検診を実施する自治体が増えている
母子健康法では、1歳半と3歳の乳幼児に対し、身体、精神の発達状況などを確認する健診の実施を自治体に義務付けていますが、それに加え5歳児を対象にした健診を独自に実施する自治体が増えています。
◆5歳児健診実施の狙い
5歳児健診を独自で取り組む自治体の狙いは、学校などでの集団活動の中においていじめにつながる恐れがある「軽度発達障害の子ども」を早期に発見することにより、小学校入学までに障害に応じて支援することが大きな目的です。
1歳半と3歳の乳幼児に対しての健診は、母子保健法により義務化されているのに対し、小学校に入る前の就学時健診は学校保健法が定めており、視・聴力や歯、脊柱の異常の有無などをチェックします。5歳児健診はその間を埋める健診とも言われています。
主に身体の発育チェックが中心とされている1歳半と3歳の乳幼児の健診は、精神的な成長の差が見えにくい時期でもあり、発達障害の発見は難しいと考えられています。これに対して、年中児を対象として行う5歳児健診は、集団に入ってからの様子を加味して判断ができることと、就学までに少なくとも1年の期間あり、その間に周囲の理解、本人への療育、就学援助などを行う余地があるという、絶妙な時期に行うことになります。
◆サポート体制を整えることも大きな課題
このような目的を踏まえ、5歳児健診の取組みを行っている自治体が増えています。早くから子どもの生活改善に乗り出すことができ、保護者の不安を解消したりすることで得られる便益を考えると、医療政策の中では高い効果が得られるものとして考えられています。また、地域の小児科医師の協力を得られれば比較的小額の財政負担で実施できるメリットもあります。
今後ますます5歳児健診を実施する自治体が増えてくると思われます。5歳児健診を受診することにより発達障害児を早期発見することだけでなく、その保護者をサポートする体制を整えていくことも、重要なポイントになってくるのではないでしょうか。
30歳代後半フリーター支援
◆30歳代後半のフリーター支援策が本格運用
厚生労働省が検討していた30歳代後半のフリーター支援策が12月から動き出します。
試験雇用していた企業に補助金を支給するほか、企業が試験雇用後に正社員として雇えば奨励金を支給します。これまで30歳代前半までの支援策はありましたが、新たな試みである30歳代後半のフリーター支援が注目されています。
◆試験雇用に補助金を支給
厚生労働省は、2008年11月19日に開いた労働政策審議会の職業安定分科会に施策の概要を報告しました。具体的には、30歳代後半のフリーターを試験的に雇用した場合に企業に対して月額4万円を3カ月間支給します。その後、雇い入れた30歳代後半のフリーターを正社員にすれば大企業向けに30万円を、早期離職者が多い中小企業向けには15万円上乗せし45万円を奨励金として支給します。これらの支援策に伴い、全国のハローワークでは、30歳代後半フリーターの就職支援を狙い、ハローワークの相談員を約70人増加する動きもとられています。
総務省の労働力調査によると、2005年以降の35歳~44歳のフリーターが増加の傾向にあると報告されています。その増加傾向の理由として、1993年から2004年にかけての就職氷河期と呼ばれる時期に就職できず、フリーターの道を選んだ者が多かったためだと言われています。そして今、その世代が30歳代後半を迎え、フリーターが高齢化しているという問題が起こっています。これらの高齢化に対応するために、今回の30歳代後半のフリーター支援策が打ち出されました。
◆厳しさ続く雇用状況
経験を積まずに長い間フリーターを続けていると、書類段階で見限られ、採用面接までたどりつけない事例も多く年長フリーターの就職活動の厳しさを指摘する声もあります。そのうえ、昨今の景気悪化により、非正規社員である派遣社員や契約社員の早期での雇用打ち止めや雇用契約解消、新卒内定者の取り消し、さらには大企業でのリストラの動きも始まっています。それらの雇用状況の悪化の動きを見ていると、今回12月から動き出す30歳代後半のフリーター対策支援策にもかかわらず、30歳代フリーターらの正規社員への道は、さらに険しくなる恐れがあるかもしれません。景気悪化で雇用状況が思わしくない今、政府の効果的な雇用政策への取組みが、早急に求められるでしょう。
バリアフリー化、使える公的助成
◆バリアフリー改修とは
高齢者や障害者が、自宅で安心して快適な生活を送るために浴室に手すりを取り付けたり、部屋の段差をなくしたりと、自宅の不便さを改善することをバリアフリー改修と言います。このバリアフリー改修に対して、様々な公的助成・支援制度が拡充されています。
◆様々な公的支援
バリアフリー改修で緊急を要するのは、日常生活での支援が必要となる要支援・要介護認定を受けたときです。介護保険には、要支援・要介護認定者に対し、手すり設置、段差解消などの住宅改修工事に上限20万円(自己負担1割)の助成金を支給する制度があります。それに上乗せする形で独自の支援制度を設けている自治体も多く見られます。
ある自治体では、要介護認定者が自宅に階段昇降機を設置する場合に助成する制度を設けたり、65歳以上であれば要支援・要介護認定がなくても基本的なバリアフリー化の住宅改修に20万円まで助成金を支給したりしています。
◆税制上でも優遇される
バリアフリー改修には公的な助成金や自治体で支援する制度だけでなく、税制上で優遇される制度も整えられています。
50歳以上もしくは要支援・要介護認定を受けた人、または65歳以上の親と同居する人などがバリアフリー化の住宅改修のために融資を受けた場合、住宅ローン残高(上限1,000万円)に対し、バリアフリー工事相当部分(上限200万円)で2%、その他の工事費で1%を、所得税額から5年間控除を受けることができます。その他にも、2007年4月1日から2010年3月31日までの間に65歳以上もしくは要支援・要介護認定を受けた人が2007年1月1日以前から住んでいる自宅を30万円以上かけてバリアフリー改修を行った場合、改修工事が完了した翌年の固定資産税が3分の1に減額されます。
蓄えが乏しく毎月の収入が年金だけで、住宅改修費用はとてもまかなえないという60歳以上の人は、住宅金融支援機構の高齢者向け返済特例制度を活用することができます。自宅を担保に入れることで毎月の返済は利子分だけですみ、元金は融資を受けた人が亡くなった際に返済する仕組みとなっています。融資額は最大で1,000万円となっています。
しかし、こうしたバリアフリー改修に対しての公的な助成・支援制度は、適用対象となる年齢や工事内容などの条件が一律でないという面で注意する必要もあります。バリアフリー改修をすると決めたら、まず自分の住んでいる自治体の高齢者福祉担当窓口に足を運ぶか電話で相談するなどして、どのような支援制度を受けることができるかを確認し、そのうえで改修工事を実施することが望ましいと言えるでしょう。
景気悪化・大不況に伴う企業の動向と政府の対策
◆非正社員の失業、給与の減少…
景気悪化に伴う未曾有の大不況が大きな社会問題となっており、マスコミ等でも連日報道されています。
不況を理由として企業が実施するリストラによる非正社員の失業者が、今年10月から来年3月までに、全国で477件、合計で約3万人に上るとの推計結果が、厚生労働省から発表されました。自動車などの輸出産業の減産を反映し、製造業における派遣労働者が全体の約65%を占めています。そして、非正社員だけでなく、正社員のリストラや退職勧奨、賃金減額なども行われるなど、深刻な問題となっています。
また、同省から10月の毎月勤労統計調査(従業員5人以上)が発表されましたが、それによると、海外需要の低迷により輸出企業などの残業時間が短くなったことなどが影響して、現金給与総額が1人平均27万4,751円(前年同月比0.1%減)と10カ月ぶりに減少したそうです。製造業では、7カ月連続で残業時間が減少しています。
◆政府による対策は?
景気悪化により新卒者の内定取消が相次いでいる問題に関しては、内定取消を行った企業名を公表し、また、内定が取り消された学生を雇用した企業に1人数十万~100万円程度の奨励金を支給するとする雇用対策案が発表されています。詳細についてはまだ決まっていないようですが、厚生労働省では、来春ごろまでに実施したい考えです。
また、同省は、労働者派遣契約の中途解除に係る指導・対応に関して、都道府県労働局長あてに通達(職発第1128002号)を11月下旬に出しました。「事業主が講ずべき措置に関する指針」に基づく徹底した指導を要請し、派遣先に対象労働者の直接雇用を求めていくとする内容となっています。
◆雇止め非正規労働者の失業手当受給要件を緩和へ
雇用保険関連では、雇止めされた非正規労働者などが失業手当を受給するために必要な雇用保険の加入要件について、現行の「1年以上の雇用見込み」から「6カ月以上」に短縮する方針が明らかになりました。また、失業手当の給付日数も60日程度上乗せされるようです。厚生労働省では、来年1月の通常国会に雇用保険法の改正案を提出し、2009年度から実施する意向です。
◆政府による新たな雇用対策
上記に記載した対策も含め、政府(新たな雇用対策に関する関係閣僚会合)は、12月9日に「新たな雇用対策について」と題する、今後実施していく施策を発表しています。詳細は下記の首相官邸ホームページをご参照ください。
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2008/1209koyou.pdf
ついに「改正労働基準法」が可決・成立!
◆審議入りから1年8カ月の難産
平成19年3月の閣議決定を経て長らく国会審議入りしていた「改正労働基準法案」が、1年8カ月を経て、ようやく成立しました。
本法の施行は平成22年4月とまだ先ですが、「月の時間外労働が一定時間を超えた場合の賃金割増率のアップ」と「労使協定締結による5日以内の時間単位での年次有給休暇制度の創設」が大きな柱である本改正は、今後の労務管理実務に大きな影響を与えるものです。
ここでは、それらの内容を確認しておきます。
◆改正労働基準法の内容(1)
本改正の1つ目の柱は、「月の時間外労働が一定時間を超えた場合の賃金割増率のアップ」です。月の時間外労働時間が45時間を超え60時間までの場合の割増賃金率については、2割5分以上の率で、労使協定で定める率とし(努力義務)、60時間を超えた場合の割増賃金については5割増とする、という内容です。
上記の「60時間」の部分については、当初の案では「80時間」とされていましたが、野党などの強い反対により、審議のうえ修正されました。
◆改正労働基準法の内容(2)
本改正のもう1つの柱は、「労使協定締結による5日以内の時間単位での年次有給休暇制度の創設」です。労働者の過半数で組織する労働組合(労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者)との労使協定で「時間単位で有給休暇を与える労働者の範囲」、「時間を単位として与えることができる有給休暇の日数(5日以内)」などを定めることにより、従来よりも細かい単位で有給休暇を取得できるとする内容です。
時間単位で細かく取得できるようにすることにより、近年落ち込んでいる有給休暇取得率アップにつなげることが、本改正の目的です。
◆施行日と中小企業への猶予
改正法の施行日は「平成22年4月1日」と定められており、企業においては就業規則の整備や労使協定の締結などの対応が必要となりますが、割増率のアップの規定については、「中小事業主の事業については、当分の間、適用しない」とされています。
なお、ここでいう「中小事業主」とは、「その資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については5,000万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主を」をいいます。
障害者雇用をめぐる現状と不況による影響
◆障害者雇用率が過去最高に
平成20年の民間企業における障害者雇用率が1.59%(今年6月1日時点。前年比0.04ポイント増)となり、過去最高を更新したと、厚生労働省から発表されました。
雇用されている障害者数は約32万6,000人(同2万3,000人増)で、法定雇用率を満たしている企業は44.9%(同1.1ポイント増)です。産業別の実雇用率では、「医療・福祉」「電気・ガス・熱供給・水道」などで高く、「情報通信」「教育・学習支援」などで低くなっています。また、特例子会社の認定企業は242社でした。
また、ハローワークにおける障害者の就職件数については、平成13年度の27,072件以降、年々増加し、平成18年度には43,987件(前年度比13.1%増)と初めて4万件を突破し、平成19年度はこれをさらに3.6%上回り、45,565件と過去最高の就職件数となっています。
◆障害者雇用における「特例子会社」とは?
障害者雇用促進法で定める障害者雇用義務は、個々の事業主に課せられているため、子会社で雇用した障害者の数は親会社の雇用率には反映されません。しかし、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たしたうえで厚生労働大臣の認定を受けた場合には、子会社の労働者は親会社の労働者とみなされ、親会社が雇用する労働者数に加えることができます。この子会社を「特例子会社」といいます。
◆不況による影響は?
ここ最近の景気の悪化・不況により、障害者雇用への影響が出ている業種もあるようです。
売上の落ち込みが特に激しく、多くの企業が減産の方針を明らかにしている自動車業界では、障害者を雇用して部品の下請作業などを行っている「作業所」や「就労支援施設」において、受注カットなどが目に見えて増えているようです。これにより、労働者の収入が減少しているケースが多く見受けられ、労働者に不安を与えています。
◆初めて障害者を雇用した企業に奨励金支給へ
厚生労働省では、現在、障害者のさらなる就労促進を目的として、初めて障害者を雇用した中小企業(従業員56~300人)に奨励金を支給する制度の創設を検討しているそうです。一企業について数十万円~100万円程度を支給するとするもので、同省は、早ければ今年度中に実施したい考えです。
制度創設により、障害者雇用に良い影響を与えられるでしょうか。
労働時間に関する相談内容の傾向は?
◆「労働時間相談ダイヤル」の実施
長時間労働の解消を図るため、厚生労働省は11月を「労働時間適正キャンペーン期間」と銘打って、その一環として、11月22日に各都道府県労働局において無料の「労働時間相談ダイヤル」を実施しました。同省からその結果が発表されましたが、全国から寄せられた相談件数は、1日だけで879件だったそうです。相談内容については、「賃金不払残業」に関するものが400件(45.5%)、「長時間労働」に関するものが320件(36.4%)、「労働基準法上の管理監督者の取扱いに関するもの」が22件(2.5%)で、本人からの相談が502件(57.1%)、本人の家族からの相談が304件(34.6%)だったそうです。
◆「賃金不払い残業」「長時間労働」が深刻な問題
「賃金不払残業」に関しては、「残業手当が一切支払われない」というものが176件、「残業手当が一律カットされる」というものが58件、「残業手当が定額払い」というものが53件あり、「長時間労働」に関しては、1カ月の総残業時間について、「100時間を超える」というものが137件、「80時間以上100時間未満」というものが59件もありました。
◆具体的な相談内容
相談ダイヤルに寄せられた具体的な相談内容には、以下のようなものがあったそうです。
・金融・広告業で勤務する労働者からの相談。毎日22時~23時まで働いており、1カ月の残業時間は100時間を超えている。過労で倒れて点滴を受けたこともある。健康診断も忙しくて受診できなかった。
・事務職として勤務。残業時間は自己申告制でタイムカードはない。実際には60時間くらい残業しているが、上司から過少申告を指示されており、4~5時間程度しか申告できない。
・サービス業の会社で支店長として勤務。支店長といっても、人事労務管理に関するものを含め権限らしいものはほとんどなかった。人員が不足していたため毎月100時間以上の残業を余儀なくさせられていたが、会社では管理監督者として扱われ残業手当は一切支払われなかった。
・労働者の家族からの相談。息子が飲食店で働いている。所定労働時間は10時から23時までとなっているが、実際には9時までに出勤しないと遅刻とされ、また、休憩時間も昼に15分程度の食事をする時間のみである。休日も月4日程度しかなく、残業手当、休日手当は支払われていない。息子は精神不安定になっているようで、心配である。
・労働者の家族からの相談。息子が工場で機械操作の仕事をしているが、労働時間が3時から19時までで、休憩もほとんどなく、今月は休日も1日しか取れていない。残業手当と深夜手当はまったく支払われていない。以前過労で倒れたことや、疲れて機械に巻き込まれて入院したこともあるので、息子の身体がとにかく心配である。
◆経営のバトンタッチが進めやすくなる
2008年10月1日より、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律が施行されました。この法律は文字通り、経営のバトンタッチを円滑に進められるように中小企業をバックアップする主旨で制定されたものです。これにより中小企業の事業承継は、かなり進めやすくなると考えられます。
◆新法の内容は
毎年、中小企業の多くが後継者の不在を理由に廃業し、多くの雇用が失われていると言われています。それらの対策として、後継者が事業を承継しやすくすることが目的です。
内容は大きく3つに分けられます。
(1)遺留分に関する民法の特例
(2)金融支援措置
(3)相続税の課税についての措置
(1)は、一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者との合意があることなどを前提に、後継者に生前贈与された自社株式を遺留分の対象から除外し、相続による自社株式の分散を防止できるものです。また、後継者に生前贈与された自社株の評価額をあらかじめ固定し、後継者の努力による株式価値上昇分を遺留分の計算に含めなくてもよくなります。これらは、2009年3月1日からの施行となっています。
(2)は、経営者の死亡等に伴い必要な資金の調達を支援するため、中小企業信用保険法に規定する通常の保証枠とは別に、事業承継資金の借入れを受けることや、低金利での貸付けを受けることができます。
(3)は、相続税の課税について、自社株式の80%を納税猶予するなどの措置が検討されています。(3)については2009年度の改正で創設し、2008年10月1日に遡っての適用が予定されています。
◆企業の存続と雇用の安定化を
当然、適用のためには様々な条件を満たし、経済産業大臣の認定を受けることが必要となります。また、認定の有効期限は5年間で、その間雇用の8割を維持することなどの条件が定められています。
今回の事業承継円滑化法が機能すれば、中小企業の廃業を防ぎ、多くの中小企業労働者の雇用を守ることになります。多くの労働者の雇用を守り、雇用を安定化するという観点において、社会的にも、とても意義のある法律だと言えるのではないでしょうか。
国民年金の適用年齢を見直し!?
◆年金保険料はいつからいつまで払うのか
2009年度における財政再計算に向けて、社会保障審議会年金部会は国民年金の適用年齢の見直しを検討しています。「20歳~60歳が適用」ですっかり定着している国民年金ですが、どのように見直されているのでしょうか。
◆学生から取る保険料
現在国民年金の適用年齢は20歳からですが、現状では、22歳程度までは大学生等の学生の割合が多く、生産活動に従事しているとは言い難い状況です。それを反映してか国民年金の保険料納付率は、20歳代が最も低く、年齢階層が上がるに従って高くなる傾向にあります。これらの事情を踏まえて、「学生から保険料を取ること自体がおかしく、適用年齢を引き上げるべき」、「より年金制度に関心を持つ世代に適用範囲をシフトさせれば、納付率の向上が期待できる」、「保険料の徴収は稼得と連動させるべき」といった意見があります。
◆見直し案と検討事項
見直す際に考えられる選択肢としては…
(1)適用年齢を25~65歳とする。(40年加入は堅持)
(2)適用年齢を20(または18)~65歳とし、その間で40年納付すればよいこととする。
(3)適用年齢を20~65歳とし、うち20~25歳は一律納付猶予の期間とする(任意で保険料を納付した場合には保険料納付期間として取り扱う)。60~65歳については当面は任意加入とすることも検討する。
(1)の場合、20~24歳については障害年金が給付されなくなるので、別途その期間中について障害者の所得保障のための措置(福祉手当の創設)を講じる必要があると考えられます。(2)の案は、個々の被保険者が保険料を納めていない期間について、「納付しなくてもよい期間(強制徴収不可)」と「納付すべきなのに納付していない期間(強制徴収がありうる期間)」との区別をどのようにつけるのか、検討の必要がありそうです。最後に(3)の案は、40年間という現行加入期間を超える期間の年金額への反映について、対処する必要があります。
適用年齢の問題とは別に、国民年金保険料の徴収時効を現行の2年から5年程度に延長することや、基礎年金の支給を受けられるようになるために必要な保険料を支払ったとみなされる期間(受給資格期間)を、現行の25年から10年程度に短縮することなどについても検討されています。
国民年金法の成立は昭和34年、当時とは全く様相の異なる現代社会にマッチした、柔軟な年金制度改革の実施が、待ち望まれます。そのための論議は、選挙の争点とするなどにより、国民全体で広く考えていくことも望ましいのではないでしょうか。
裁判員制度による休みは有給?無給?
◆企業としての対応が迫られている
2009年5月から始まる裁判員制度、一般市民が司法に参加するこの制度は、平日に裁判に参加することになり、勤労者は仕事を休む必要が出てきます。裁判員に選ばれた人の所属する企業では、その休みへの対応が迫られています。
◆裁判員制度とは
裁判員制度は、一般市民が刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する信頼の向上につながることが期待されています。一般市民が裁判に参加する制度は、アメリカやイギリス、フランス、ドイツ等でも行われています。
日本の裁判員制度では、まず、地方裁判所ごとに裁判員候補者名簿が作られます。選ばれた候補者へ、調査票と共に候補者となったことが通知されます。2009年5月以降、事件ごとに初公判の6週間前までに、くじで候補者が選ばれて呼び出され、最終的にその中から6名が裁判員として選ばれ裁判に参加します。
辞退については、70歳以上の人や学生、重い病気やケガで参加できない人などは1年間を通じて辞退できます。ただし、仕事を理由とした辞退については、単なる「仕事が忙しい」という理由では原則辞退できません。
◆有給・無給は各企業の判断による
裁判員制度に基づいて裁判に参加することは、いわゆる労働基準法の「公の職務の執行」に当たるため、その時間は保障されねばなりません。多くの就業規則ではその旨の規定がありますが、裁判員の仕事に従事するための休暇制度を設けることは義務付けられていません。したがって、有給か無給かについては、各企業の判断に委ねられることになります。
有給の場合は、裁判員としての日当と会社の給与を、両方受け取れることになります。また、無給の場合は、裁判員としての裁判への参加意欲が減退することが危惧されます。
裁判所としては、裁判員が仕事を休みやすい環境作りが急務であることから、「裁判員としての仕事を行うための特別な有給休暇制度を作っていただくことが重要であり、法務省、検察庁、弁護士会とも連携し、各種経済団体、企業等に対し、休暇制度の導入の検討をお願いしている」と、ホームページ上などで説明しています。
正社員はもちろん、派遣社員にも「裁判員休暇」を与える企業や、配偶者が裁判員に選ばれた際に、有給で育児・介護休暇を取得できる制度を導入する企業など、積極的に制度に協力する企業も見受けられます。今後、制度が定着するには、企業側のこのような協力が重要な要素となってくることでしょう。
「5歳児健診」 就学前から母子を支援へ
◆5歳児検診を実施する自治体が増えている
母子健康法では、1歳半と3歳の乳幼児に対し、身体、精神の発達状況などを確認する健診の実施を自治体に義務付けていますが、それに加え5歳児を対象にした健診を独自に実施する自治体が増えています。
◆5歳児健診実施の狙い
5歳児健診を独自で取り組む自治体の狙いは、学校などでの集団活動の中においていじめにつながる恐れがある「軽度発達障害の子ども」を早期に発見することにより、小学校入学までに障害に応じて支援することが大きな目的です。
1歳半と3歳の乳幼児に対しての健診は、母子保健法により義務化されているのに対し、小学校に入る前の就学時健診は学校保健法が定めており、視・聴力や歯、脊柱の異常の有無などをチェックします。5歳児健診はその間を埋める健診とも言われています。
主に身体の発育チェックが中心とされている1歳半と3歳の乳幼児の健診は、精神的な成長の差が見えにくい時期でもあり、発達障害の発見は難しいと考えられています。これに対して、年中児を対象として行う5歳児健診は、集団に入ってからの様子を加味して判断ができることと、就学までに少なくとも1年の期間あり、その間に周囲の理解、本人への療育、就学援助などを行う余地があるという、絶妙な時期に行うことになります。
◆サポート体制を整えることも大きな課題
このような目的を踏まえ、5歳児健診の取組みを行っている自治体が増えています。早くから子どもの生活改善に乗り出すことができ、保護者の不安を解消したりすることで得られる便益を考えると、医療政策の中では高い効果が得られるものとして考えられています。また、地域の小児科医師の協力を得られれば比較的小額の財政負担で実施できるメリットもあります。
今後ますます5歳児健診を実施する自治体が増えてくると思われます。5歳児健診を受診することにより発達障害児を早期発見することだけでなく、その保護者をサポートする体制を整えていくことも、重要なポイントになってくるのではないでしょうか。
30歳代後半フリーター支援
◆30歳代後半のフリーター支援策が本格運用
厚生労働省が検討していた30歳代後半のフリーター支援策が12月から動き出します。
試験雇用していた企業に補助金を支給するほか、企業が試験雇用後に正社員として雇えば奨励金を支給します。これまで30歳代前半までの支援策はありましたが、新たな試みである30歳代後半のフリーター支援が注目されています。
◆試験雇用に補助金を支給
厚生労働省は、2008年11月19日に開いた労働政策審議会の職業安定分科会に施策の概要を報告しました。具体的には、30歳代後半のフリーターを試験的に雇用した場合に企業に対して月額4万円を3カ月間支給します。その後、雇い入れた30歳代後半のフリーターを正社員にすれば大企業向けに30万円を、早期離職者が多い中小企業向けには15万円上乗せし45万円を奨励金として支給します。これらの支援策に伴い、全国のハローワークでは、30歳代後半フリーターの就職支援を狙い、ハローワークの相談員を約70人増加する動きもとられています。
総務省の労働力調査によると、2005年以降の35歳~44歳のフリーターが増加の傾向にあると報告されています。その増加傾向の理由として、1993年から2004年にかけての就職氷河期と呼ばれる時期に就職できず、フリーターの道を選んだ者が多かったためだと言われています。そして今、その世代が30歳代後半を迎え、フリーターが高齢化しているという問題が起こっています。これらの高齢化に対応するために、今回の30歳代後半のフリーター支援策が打ち出されました。
◆厳しさ続く雇用状況
経験を積まずに長い間フリーターを続けていると、書類段階で見限られ、採用面接までたどりつけない事例も多く年長フリーターの就職活動の厳しさを指摘する声もあります。そのうえ、昨今の景気悪化により、非正規社員である派遣社員や契約社員の早期での雇用打ち止めや雇用契約解消、新卒内定者の取り消し、さらには大企業でのリストラの動きも始まっています。それらの雇用状況の悪化の動きを見ていると、今回12月から動き出す30歳代後半のフリーター対策支援策にもかかわらず、30歳代フリーターらの正規社員への道は、さらに険しくなる恐れがあるかもしれません。景気悪化で雇用状況が思わしくない今、政府の効果的な雇用政策への取組みが、早急に求められるでしょう。
バリアフリー化、使える公的助成
◆バリアフリー改修とは
高齢者や障害者が、自宅で安心して快適な生活を送るために浴室に手すりを取り付けたり、部屋の段差をなくしたりと、自宅の不便さを改善することをバリアフリー改修と言います。このバリアフリー改修に対して、様々な公的助成・支援制度が拡充されています。
◆様々な公的支援
バリアフリー改修で緊急を要するのは、日常生活での支援が必要となる要支援・要介護認定を受けたときです。介護保険には、要支援・要介護認定者に対し、手すり設置、段差解消などの住宅改修工事に上限20万円(自己負担1割)の助成金を支給する制度があります。それに上乗せする形で独自の支援制度を設けている自治体も多く見られます。
ある自治体では、要介護認定者が自宅に階段昇降機を設置する場合に助成する制度を設けたり、65歳以上であれば要支援・要介護認定がなくても基本的なバリアフリー化の住宅改修に20万円まで助成金を支給したりしています。
◆税制上でも優遇される
バリアフリー改修には公的な助成金や自治体で支援する制度だけでなく、税制上で優遇される制度も整えられています。
50歳以上もしくは要支援・要介護認定を受けた人、または65歳以上の親と同居する人などがバリアフリー化の住宅改修のために融資を受けた場合、住宅ローン残高(上限1,000万円)に対し、バリアフリー工事相当部分(上限200万円)で2%、その他の工事費で1%を、所得税額から5年間控除を受けることができます。その他にも、2007年4月1日から2010年3月31日までの間に65歳以上もしくは要支援・要介護認定を受けた人が2007年1月1日以前から住んでいる自宅を30万円以上かけてバリアフリー改修を行った場合、改修工事が完了した翌年の固定資産税が3分の1に減額されます。
蓄えが乏しく毎月の収入が年金だけで、住宅改修費用はとてもまかなえないという60歳以上の人は、住宅金融支援機構の高齢者向け返済特例制度を活用することができます。自宅を担保に入れることで毎月の返済は利子分だけですみ、元金は融資を受けた人が亡くなった際に返済する仕組みとなっています。融資額は最大で1,000万円となっています。
しかし、こうしたバリアフリー改修に対しての公的な助成・支援制度は、適用対象となる年齢や工事内容などの条件が一律でないという面で注意する必要もあります。バリアフリー改修をすると決めたら、まず自分の住んでいる自治体の高齢者福祉担当窓口に足を運ぶか電話で相談するなどして、どのような支援制度を受けることができるかを確認し、そのうえで改修工事を実施することが望ましいと言えるでしょう。
景気悪化・大不況に伴う企業の動向と政府の対策
◆非正社員の失業、給与の減少…
景気悪化に伴う未曾有の大不況が大きな社会問題となっており、マスコミ等でも連日報道されています。
不況を理由として企業が実施するリストラによる非正社員の失業者が、今年10月から来年3月までに、全国で477件、合計で約3万人に上るとの推計結果が、厚生労働省から発表されました。自動車などの輸出産業の減産を反映し、製造業における派遣労働者が全体の約65%を占めています。そして、非正社員だけでなく、正社員のリストラや退職勧奨、賃金減額なども行われるなど、深刻な問題となっています。
また、同省から10月の毎月勤労統計調査(従業員5人以上)が発表されましたが、それによると、海外需要の低迷により輸出企業などの残業時間が短くなったことなどが影響して、現金給与総額が1人平均27万4,751円(前年同月比0.1%減)と10カ月ぶりに減少したそうです。製造業では、7カ月連続で残業時間が減少しています。
◆政府による対策は?
景気悪化により新卒者の内定取消が相次いでいる問題に関しては、内定取消を行った企業名を公表し、また、内定が取り消された学生を雇用した企業に1人数十万~100万円程度の奨励金を支給するとする雇用対策案が発表されています。詳細についてはまだ決まっていないようですが、厚生労働省では、来春ごろまでに実施したい考えです。
また、同省は、労働者派遣契約の中途解除に係る指導・対応に関して、都道府県労働局長あてに通達(職発第1128002号)を11月下旬に出しました。「事業主が講ずべき措置に関する指針」に基づく徹底した指導を要請し、派遣先に対象労働者の直接雇用を求めていくとする内容となっています。
◆雇止め非正規労働者の失業手当受給要件を緩和へ
雇用保険関連では、雇止めされた非正規労働者などが失業手当を受給するために必要な雇用保険の加入要件について、現行の「1年以上の雇用見込み」から「6カ月以上」に短縮する方針が明らかになりました。また、失業手当の給付日数も60日程度上乗せされるようです。厚生労働省では、来年1月の通常国会に雇用保険法の改正案を提出し、2009年度から実施する意向です。
◆政府による新たな雇用対策
上記に記載した対策も含め、政府(新たな雇用対策に関する関係閣僚会合)は、12月9日に「新たな雇用対策について」と題する、今後実施していく施策を発表しています。詳細は下記の首相官邸ホームページをご参照ください。
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2008/1209koyou.pdf
ついに「改正労働基準法」が可決・成立!
◆審議入りから1年8カ月の難産
平成19年3月の閣議決定を経て長らく国会審議入りしていた「改正労働基準法案」が、1年8カ月を経て、ようやく成立しました。
本法の施行は平成22年4月とまだ先ですが、「月の時間外労働が一定時間を超えた場合の賃金割増率のアップ」と「労使協定締結による5日以内の時間単位での年次有給休暇制度の創設」が大きな柱である本改正は、今後の労務管理実務に大きな影響を与えるものです。
ここでは、それらの内容を確認しておきます。
◆改正労働基準法の内容(1)
本改正の1つ目の柱は、「月の時間外労働が一定時間を超えた場合の賃金割増率のアップ」です。月の時間外労働時間が45時間を超え60時間までの場合の割増賃金率については、2割5分以上の率で、労使協定で定める率とし(努力義務)、60時間を超えた場合の割増賃金については5割増とする、という内容です。
上記の「60時間」の部分については、当初の案では「80時間」とされていましたが、野党などの強い反対により、審議のうえ修正されました。
◆改正労働基準法の内容(2)
本改正のもう1つの柱は、「労使協定締結による5日以内の時間単位での年次有給休暇制度の創設」です。労働者の過半数で組織する労働組合(労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者)との労使協定で「時間単位で有給休暇を与える労働者の範囲」、「時間を単位として与えることができる有給休暇の日数(5日以内)」などを定めることにより、従来よりも細かい単位で有給休暇を取得できるとする内容です。
時間単位で細かく取得できるようにすることにより、近年落ち込んでいる有給休暇取得率アップにつなげることが、本改正の目的です。
◆施行日と中小企業への猶予
改正法の施行日は「平成22年4月1日」と定められており、企業においては就業規則の整備や労使協定の締結などの対応が必要となりますが、割増率のアップの規定については、「中小事業主の事業については、当分の間、適用しない」とされています。
なお、ここでいう「中小事業主」とは、「その資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については5,000万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主を」をいいます。
障害者雇用をめぐる現状と不況による影響
◆障害者雇用率が過去最高に
平成20年の民間企業における障害者雇用率が1.59%(今年6月1日時点。前年比0.04ポイント増)となり、過去最高を更新したと、厚生労働省から発表されました。
雇用されている障害者数は約32万6,000人(同2万3,000人増)で、法定雇用率を満たしている企業は44.9%(同1.1ポイント増)です。産業別の実雇用率では、「医療・福祉」「電気・ガス・熱供給・水道」などで高く、「情報通信」「教育・学習支援」などで低くなっています。また、特例子会社の認定企業は242社でした。
また、ハローワークにおける障害者の就職件数については、平成13年度の27,072件以降、年々増加し、平成18年度には43,987件(前年度比13.1%増)と初めて4万件を突破し、平成19年度はこれをさらに3.6%上回り、45,565件と過去最高の就職件数となっています。
◆障害者雇用における「特例子会社」とは?
障害者雇用促進法で定める障害者雇用義務は、個々の事業主に課せられているため、子会社で雇用した障害者の数は親会社の雇用率には反映されません。しかし、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たしたうえで厚生労働大臣の認定を受けた場合には、子会社の労働者は親会社の労働者とみなされ、親会社が雇用する労働者数に加えることができます。この子会社を「特例子会社」といいます。
◆不況による影響は?
ここ最近の景気の悪化・不況により、障害者雇用への影響が出ている業種もあるようです。
売上の落ち込みが特に激しく、多くの企業が減産の方針を明らかにしている自動車業界では、障害者を雇用して部品の下請作業などを行っている「作業所」や「就労支援施設」において、受注カットなどが目に見えて増えているようです。これにより、労働者の収入が減少しているケースが多く見受けられ、労働者に不安を与えています。
◆初めて障害者を雇用した企業に奨励金支給へ
厚生労働省では、現在、障害者のさらなる就労促進を目的として、初めて障害者を雇用した中小企業(従業員56~300人)に奨励金を支給する制度の創設を検討しているそうです。一企業について数十万円~100万円程度を支給するとするもので、同省は、早ければ今年度中に実施したい考えです。
制度創設により、障害者雇用に良い影響を与えられるでしょうか。
労働時間に関する相談内容の傾向は?
◆「労働時間相談ダイヤル」の実施
長時間労働の解消を図るため、厚生労働省は11月を「労働時間適正キャンペーン期間」と銘打って、その一環として、11月22日に各都道府県労働局において無料の「労働時間相談ダイヤル」を実施しました。同省からその結果が発表されましたが、全国から寄せられた相談件数は、1日だけで879件だったそうです。相談内容については、「賃金不払残業」に関するものが400件(45.5%)、「長時間労働」に関するものが320件(36.4%)、「労働基準法上の管理監督者の取扱いに関するもの」が22件(2.5%)で、本人からの相談が502件(57.1%)、本人の家族からの相談が304件(34.6%)だったそうです。
◆「賃金不払い残業」「長時間労働」が深刻な問題
「賃金不払残業」に関しては、「残業手当が一切支払われない」というものが176件、「残業手当が一律カットされる」というものが58件、「残業手当が定額払い」というものが53件あり、「長時間労働」に関しては、1カ月の総残業時間について、「100時間を超える」というものが137件、「80時間以上100時間未満」というものが59件もありました。
◆具体的な相談内容
相談ダイヤルに寄せられた具体的な相談内容には、以下のようなものがあったそうです。
・金融・広告業で勤務する労働者からの相談。毎日22時~23時まで働いており、1カ月の残業時間は100時間を超えている。過労で倒れて点滴を受けたこともある。健康診断も忙しくて受診できなかった。
・事務職として勤務。残業時間は自己申告制でタイムカードはない。実際には60時間くらい残業しているが、上司から過少申告を指示されており、4~5時間程度しか申告できない。
・サービス業の会社で支店長として勤務。支店長といっても、人事労務管理に関するものを含め権限らしいものはほとんどなかった。人員が不足していたため毎月100時間以上の残業を余儀なくさせられていたが、会社では管理監督者として扱われ残業手当は一切支払われなかった。
・労働者の家族からの相談。息子が飲食店で働いている。所定労働時間は10時から23時までとなっているが、実際には9時までに出勤しないと遅刻とされ、また、休憩時間も昼に15分程度の食事をする時間のみである。休日も月4日程度しかなく、残業手当、休日手当は支払われていない。息子は精神不安定になっているようで、心配である。
・労働者の家族からの相談。息子が工場で機械操作の仕事をしているが、労働時間が3時から19時までで、休憩もほとんどなく、今月は休日も1日しか取れていない。残業手当と深夜手当はまったく支払われていない。以前過労で倒れたことや、疲れて機械に巻き込まれて入院したこともあるので、息子の身体がとにかく心配である。
2008/11/26
12月の事務所便り
「保険治療」or「自費治療」で悩む歯の治療
◆どちらを選択するか?
歯科医にかかると必ず悩むのが、治療法の選び方です。健康保険を使って安く済ませるか、自腹を切ってでも高額の治療を受けるか。使用する材料や手間のかけ方などでかかる費用は大きく違ってきますが、自分に最適な治療法を選ぶのは想像以上に難しいものです。
◆保険治療と自費治療に大きな差
歯科で治療する場合、健康保険の適用を受ける範囲の治療にとどめるか、保険の適用を受けない自費治療にするか、患者は判断を求められます。健康保険が適用されれば患者は3割の負担で済みますが、自費治療を選ぶと患者が全額負担しなければなりません。どちらかの治療しか扱わない歯科医もあり、実際に足を運ぶ前に治療方針を決めなければならない場合もあります。
虫歯治療の後などに行う詰め物の場合、自費治療の負担額は保険が適用される場合の50倍(それぞれの最高額を比較)に達するケースもあるようです。重度の歯周病などでも差は30倍近くになるケースもあり、かなり大きな差といえます。差が大きい理由は、治療で使用する材料が異なるほか、治療時間の長短で手間のかけ方に差が出るからです。
◆すべての治療法を検討する
治療法を選ぶ際には、「自分が取り得るすべての治療法を歯科医から聞き出すこと」が重要だと言えるでしょう。歯科はその専門性の高さから、医師が治療法について詳細な説明をしないケースも多くあります。しかし、考えられるすべての治療法について、治療方法とその効果、費用等が明らかになれば、患者が自らの予算を頭に入れて、どの水準まで歯の機能回復や生活の質の向上を目指すかを決めることができます。
治療法の選び方で機能回復にどれだけ差が出るかは、治療内容ごとに異なります。あまり差がないのであれば、自己負担が少ない保険治療を選ぶのも選択肢の1つです。逆に自費治療のほうが飛躍的に機能回復できる分野もあります。
◆セカンドオピニオンも取り入れる
最近は歯科医療の分野でも、今かかっている医師とは別の医師に意見を求める「セカンドオピニオン」の考え方が広まってきています。治療法について迷いが生じたら、多少費用がかかっても、別の歯科医の判断を聞いてみることも有効です。
また、患者が最良の判断をするために、専門性の高い歯科においても「インフォームド・コンセント」の重要性がますます高まっているのではないでしょうか。そして、歯科医からより詳しい治療内容の情報を入手し、予算と折り合いのつく範囲内で賢く治療を受けることが重要です。
なかなか進まない企業による
「外国人雇用状況」の届出
◆改正法の施行から1年が経過
外国人労働者の雇用改善等を目指した「改正雇用対策法」の施行から1年が経過しました。外国人の就労実態を把握しようと、企業に外国人労働者の雇用状況(就職・離職)の届出が義務付けられましたが、煩雑さなどを理由にあまり浸透していないのが現状です。新制度が外国人の雇用改善や不法就労防止に結びつくのか、早くも実効性が問われ始めています。
◆3割強の低い補足率
厚生労働省は9月上旬、新制度になって初めて、全国のハローワークが受理した外国人雇用の届出状況(6月末時点)を公表しました。直接雇用している外国人労働者数は全国で33万8,813人と、任意提出だった2007年に比べて約4割増えたとみられています。出身国別では中国が44.2%(約15万人)でトップ、次いでブラジルの20.9%、フィリピンの8.3%となっています。
改正雇用対策法施行(2007年10月1日)までの雇用に関しては今年10月1日までが届出猶予期間であり、発表された数字は途中集計のもので、まだ届出されていない人数は、かなり多いものと思われます。法務省入国管理局や厚生労働省のデータなどから推計すると、外国人労働者数は約100万人とも言われており、仮に100万人とすれば捕捉率は3割強にすぎません。
◆企業の対応に温度差
一部の外国人労働者は、不法な低賃金で、劣悪な環境の下で働いていると指摘されています。改正雇用対策法のねらいは、事業主に雇用条件の改善を促すとともに、雇用状況の届出を法的に義務付けて、把握した数値などを今後の施策に活用していくことです。
ただ、企業の対応には温度差があり、厚生労働省では届出が進まないことに頭を悩ませている状況です。各企業からは、「届出を義務付けたことで現場の作業が煩雑になった」という声があがっています。国も現場の負担を軽減するよう取り組んではいますが、届出には外国人の氏名や在留期限、在留資格などの記入が必要で、実際には事業主の負担が大きいと言わざるを得ません。
◆不法就労防止・再就職支援に向けて
国は事業主からの届出を活用して、不法就労の防止や離職した外国人の再就職支援などを図りたい考えです。しかし、企業の対応がばらついたまま届出数が伸びなければ、適切な対策を打ち出せないおそれもあります。不法就労などの問題があるケースほど届出しにくいという側面もあり、厳格に提出を義務付けることが必要である半面、事業主の協力が得られない中での中途半端な対策は、外国人への真の就職支援につながらないのではないでしょうか。
今後の届出の進捗状況を見極めたうえで、届出制度とその内容について具体的な見直しが必要になるかもしれません。
駐車違反の反則金を「社員の自己負担」にできる?
◆営業マンが駐車違反
営業マンが社用車での営業中に駐車違反で摘発されてしまいました。その会社では“経費節減”と称し駐車料金を支給していないため、やむなく路上駐車したのです。「反則金は自分で払うように」と上司はこの営業マンに言いましたが、問題はないのでしょうか。
◆改正道路交通法のポイント
改正道路交通法の施行により、2006年6月から駐車違反取締りの民間委託が始まり、同時に短時間の放置車両も摘発対象となりました。短時間駐車を繰り返す営業車の違反が取り締まられるケースも増えているようです。また、介護ヘルパーや訪問看護師などが利用者を車で訪ねた際に、駐車許可証を掲示していたにもかかわらず厳しく取り締まられてしまうケースなども増加しているようです。
上記改正では、単なる取締りの強化だけでなく、放置車両における「使用者責任」の拡充も大きなポイントとなっています。違反を摘発しても運転者が出頭せず、車両所有者の会社も「誰が運転していたかわからない」などと釈明する例が増えていました。このため、いわゆる「逃げ得」をなくすために、運転者が出頭しない場合、使用者に放置違反金の支払いを課すことになったのです。
上記の例の場合、運転手である営業マンが出頭しなければ会社に放置違反金が課され、その支払いを拒めば当該車両の車検が受けられなくなります。
◆問われる企業の使用者責任
企業は、民法の規定により、従業員に対する使用者責任を負っています。すなわち、従業員が不法行為をしないように指導する義務と、不法行為があった場合に代わりに責任を負う義務があるのです。
違法駐車の場合、本来は運転者に支払義務がありますが、上記の例の場合、会社が駐車料金を支給していないため、運転者の不法行為を助長していたとも言えます。また、従業員に駐車場代を負担させていたこと自体も問題と言えます。会社が仕事に必要な措置を講じていなかったと解釈できるからです。この場合は、会社が反則金の一部ないし全額を負担しなければならない可能性が高くなってきます。
上記の例では、会社が反則金を負担し、そのうえで従業員が違法駐車をしないように駐車場を確保したり、駐車料金を支給したりする仕組みが求められるでしょう。従業員が違反しないルール作りをすることこそが、会社に求められていると言えるのではないでしょうか。
養育費を受け取れない母子世帯の自立支援策
◆養育費が受け取れない
離婚した夫から子供の養育費を受け取れない母子世帯を減らすことを目的として厚生労働省が設置した「養育費相談支援センター」(http://www1.odn.ne.jp/fpic/youikuhi/)の事業開始から、今年の10月で1年を迎えました。
同センターには相談は多く寄せられているものの、その効果は小さいとの指摘があります。離婚母子世帯のうち養育費を受け取っているのは約2割にすぎない現状を改善するためには、次の一手が必要なようです。
◆「誰にも養育費の相談をせず」が約43%
厚生労働省の全国母子世帯等調査(2006年度)によると、離婚時に養育費の取決めをしている母子世帯は38.8%だそうです。しかし、「現在も養育費を受けている」のはそのうちの約半数の19.0%にとどまっています。
母子世帯の平均年収は213万円と全世帯の平均年収564万円を大きく下回り、生活に困窮する家庭が多いのが現状です。養育費の取決めをしない理由として、47.0%が「相手に支払う意思や能力がないと思った」と回答し、23.7%が「相手とかかわりたくない」と答えています。また、42.9%は離婚の際、養育費について「誰にも相談していない」と答えています。養育費問題についての知識が少ないことの表れと言えそうです。
◆「養育費相談支援センター」の役割
養育費相談支援センターは、養育費に関する問題を含め、母子世帯の自立支援策の一環として厚生労働省が設けた組織で、全国の母子家庭等就業・自立支援センターや自治体などで行う養育費相談の中心的存在となっています。
相談は電話と電子メールに限られますが、開設以来、「離婚した夫から養育費の支払いがない」などの声が次々と寄せられ、その数は2008年8月末で約2,700件に上っているそうです。
◆貧弱な支援体制に課題
同センターの問題点は、来所相談を受け付けず、相談員に弁護士がいないなど限界があることです。弁護士の不在は、仲介に直接乗り出せないことを意味し、可能なのは助言にとどまります。相談の追跡調査もしていないため、実際に養育費を受け取れたという報告も少ないようです。今後の対策として考えられるのは、欧米各国のように、国や自治体による立替払いや徴収代行制度を設けることや、不払いに対してある程度の罰則を設けることではないでしょうか。政府には、これらの新たな施策についての検討と同時に、「養育費の支払いは離婚した親の当然の義務であること」を広める啓発活動なども望みたいところです。
ますます深刻化する「消された年金問題」
◆次々見つかる標準報酬月額の改ざん
厚生年金の計算をする際に使われる「標準報酬月額」の改ざんが発覚した、いわゆる「消された年金問題」ですが、その広がりが深刻化しています。
政府の発表によると、標準報酬月額のコンピュータ記録1億5,000万件のうち、5等級以上も下げられた記録が75万件に上ることが判明しました。厚生労働省は、処理が不適切だった可能性の高い約6万9,000件を優先的に調べるようですが、実態の把握は困難であり、被害者の救済にも時間がかかりそうです。
◆記録改ざんの背景は
標準報酬月額は、厚生年金の支給額を決めるときの基準となる毎月の報酬であり、1~30の等級に分かれ、どの等級に該当するかで支払う保険料が決まってきます。この標準報酬月額に対して、事業主が過去に遡って報酬を減らしたり、加入期間を短くしたりするのが改ざん行為の代表例です。これらは、社会保険事務所職員と経営状態の苦しい事業主が相談し、改ざんしたケースも多いといわれています。
この背景には、社会保険事務所における内部事情があります。事業主が保険料を滞納すると社会保険事務所の徴収成績は下がってしまいます。担当職員が徴収成績を上げるための効果的な手法として、「本来納めるべき保険料よりも少なく払ってもらう」という働きかけを事業主に対して行っていた可能性が高いようです。
社会保険事務所の上司の指示により組織的に改ざんしたケースや、自然に職員の間に広まっていったケースなどもあると見られています。
◆被害者の救済が急務
最も問題となるのは、被害者の救済です。例えば、標準報酬を30等級(62万円)から25等級(47万円)に下げられたまま40年間にわたって保険料を納付すると、老後にもらえる年金が概算で月3~5万円程度減ってしまうことになります。多くの場合、事業主は報酬を引き下げたことを従業員には隠しており、受給年齢に達するまで年金が減ることに気が付かないことが想定されます。社会保険庁では、戸別訪問などを始めているようですが、すべての受給者の確認作業が終わるのはまだまだ先となってしまいます。
この問題に関して、報酬の記録を確認したい場合は、社会保険事務所に行くか、社会保険庁の「年金個人情報提供サービス」(http://www.sia.go.jp/sodan/nenkin/simulate/)で照会するなどの対策を取るとよいでしょう。
未払い残業代の支払い等を求める
労働審判や民事訴訟
◆サービス残業への是正指導が過去最多に
従業員に残業代を支払わなかったとして労働基準監督署から是正指導を受け、結果的に1社で100万円以上の未払い残業代を支払った企業の数が2007年度に1,728社(前年度比約3%増)となり、厚生労働省が集計を開始した2001年度以来、最多を更新したことが明らかになりました。また、支払総額も計272億4,261万円(同約20%増)となっており、同じく過去最高を更新しています。
同省では、「労働者やその家族の方などから、各労働局、労働基準監督署に対して長時間労働、賃金不払残業に関する相談が多数寄せられており、これらに対して重点的に監督指導を実施した結果である」と分析しています。
このようにサービス残業は依然として増加傾向にあるようで、最近では「名ばかり管理職」「偽装請負」に関する問題などもあり、労働者や退職者が未払い残業代の支払いや地位の確認などを求めて労働審判や民事訴訟などを提起するケースも増えています。
以下では最近の事例を見てみましょう。
◆グッドウィルの元支店長らが労働審判申立て
今年の7月末に廃業した日雇い派遣大手「グッドウィル」の元支店長ら19人(25歳~49歳のいずれも男性)は、自分たちは「名ばかり管理職」として扱われていたなどとして、同社を相手に未払い残業代(合計約6,721万円)の支払いを求める労働審判を、東京地裁に申し立てたそうです。請求している未払い残業代は1人あたり約120万円~635万円です。
また、4人については、廃業に伴って解雇が行われた際に十分な退職金の積み増しや再就職先のあっせんが行われなかったとして、解雇の違法性についても争うとのことです。
◆元自転車便スタッフが正社員地位確認の民事訴訟提起
バイク便大手である「ソクハイ」の元自転車便スタッフの男性(31歳)は、個人事業主として運送請負契約を締結して業務を行っていたが、会社の指示に従って運送を行うなど自由裁量はほとんどなく、実態は正社員と変わらなかったとして、同社を相手に「正社員としての地位確認」と「約360万円の損害賠償」を求める訴訟を東京地裁に提起しました。
男性は営業所長として採用面接やスタッフの教育なども行っていたようであり、「同社に指示監督されており。偽装請負状態だった」と主張しているそうです。
業績悪化に伴う内定取消は
どのような場合に認められる?
◆業績悪化に伴う内定取消が増加
米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機に伴う急激な株価下落や景気悪化の影響による企業の業績悪化・業務縮小・事業撤退などを理由として、来春就職予定の学生の内定が取り消されるケースが相次いでいるそうです。業種は、不動産、住宅販売、建設、生命保険、ホテル、情報通信、システム開発、専門商社など多岐にわたっています。
大学側では「企業の業績悪化が深刻化してくるとさらに内定取消が増加するのでは」「実際にはもっと多くの学生の内定が取り消されているかもしれない」「この時期にこんなに内定取消が相次ぐことはここ数年間なかった」などといった不安の声もあがっているようで、また、2010年春に卒業・就職予定の現在の大学3年生の就職活動にも影響が出てきそうです。
企業・大学・学生いずれにとっても非常に深刻な問題である内定取消は、どのような場合に認められるのでしょうか。
◆裁判所の考え方は?
内定取消は、一般的に「客観的にみて内定を取り消してもやむを得ない事情がある場合」にのみ許され、単なる業績悪化だけを理由として簡単に認められるものではないとされています。
裁判例(大日本印刷事件:最判昭和54年7月20日)では、会社が応募者に「採用内定通知」を発して、応募者がこれに応じる旨の「誓約書」を提出した場合には、入社日を「採用内定通知」に記載された時期とし、「誓約書」に記載された採用内定取消事由が発生したときは当該契約を解約できるとの解約権が留保された労働契約が成立していると考えられる、としています。
さらにこの留保解約権については、内定の当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる、としています。
◆「整理解雇の4要件」との関係
また、経営悪化を理由とする採用内定取消の場合について、いわゆる「整理解雇の4要件」の考え方に沿った判断を下した事例がありあます(インフォミックス事件:東京地決平9年10月31日)。
この事案では、(1)人員削減の必要性、(2)採用内定取消の回避の努力、(3)人選の合理性は認められるが、(4)手続きの面において十分な説明が欠けていたとして、採用内定の取消が無効と判断されています。したがって、採用内定を取り消すべきかどうかは、上記の4要件の考え方に沿って慎重に考えなければなりません。
深刻な「下請けいじめ」「下請けたたき」の実態&対策
◆急増する「下請けいじめ」
東京都は、2008年4月から10月の間に「財団法人 東京都中小企業振興公社」に寄せられた下請け取引に関する相談件数(親事業者と下請け企業に関する禁止事項を定めている「下請代金支払遅延等防止法」に抵触する可能性のあるもの)が214件となり、2007年度の通年実績(80件)の約2.7倍に達したと発表しました。景気の後退を背景として不当な事例が増加しているとみられ、過去最高のハイペースで推移しています。
相談の内容は、「売上金回収時に一方的に値引きを迫られた」などといった代金回収に関するものや、「予告なしに突然取引中止を告げられた」などといった取引契約に関するものが多いそうです。
以前から「下請けいじめ」は問題となっており、中小企業庁は「下請代金支払遅延等防止法」に基づいて下請け取引が適正かどうかを調査して改善指導を行っていますが、これまでに他にも様々な対策を打ち出しています。
◆原油高対策としての下請け取引適正化
中小企業庁では原油高となっていた今年8月に、下請け取引の適正化を促進するための対策を発表しました。これは、原油高を理由とする価格転嫁が難しい中小企業が多いため、大企業による不当な下請け取引の強要を防ぐのが狙いでした。
具体策としては、原油高の影響が大きいと考えられる建設・自動車などの業種を中心として、代金の支払遅延など問題のある行為があるとみられる大企業から事情聴取を行い、特別立入検査も行うとするもので、8月下旬から実施されています。
◆「下請けたたき」通報制度
また、厚生労働省では今年の7月に、労働基準監督署が賃金不払い等を把握した場合、その原因がいわゆる「下請けたたき」であると認められるときには、公正取引委員会や経済産業省に通報する制度をつくるとの方針を発表しました。同省では、中小企業の労働者保護のためには下請け問題への対策が必要と判断したものです。
また、同省では、同省が発注する公共工事について、元請業者と下請業者との間に契約等に関してトラブル(原価割れ受注を強要された、割引困難な長期手形を交付された等)があった場合の下請け業者のための相談窓口(「下請けに関する相談窓口」http://www.mhlw.go.jp/sinsei/chotatu/dl/02.pdf)を設けています。
苦しさを増す介護事業者の支援策
◆苦しい経営実態
厚生労働省は、「平成20年介護事業経営実態調査」を発表し、介護施設の苦しい経営実態が明らかになりました。
前回調査(2005年)と比較すると、利益率(収入に対する利益の割合)が、例えばデイケアでは18.9%から4.5%に、特別養護老人ホームでは13.6%から3.4%に大きく下がるなど、15種のうち11種で低下しています。また事業規模別では、事業規模の小さいところほど経営が厳しくなっているようです。
◆2009年4月から介護報酬引上げ
上記のような現状から、政府・与党は、介護労働者の待遇改善を図るため、2009年4月から介護報酬(介護事業者に支払われるサービスの公定価格)を3%引き上げることを決定し、先ごろ発表した「新総合経済対策」(追加経済対策)に盛り込みました。介護報酬は3年に1度改定されることになっていますが、プラス改定は2000年度の介護保険制度発足以来初となります(2003年はマイナス2.3%、2006年はマイナス2.4%といずれも引下げ)。
報酬引上げは保険料アップにも繋がります。本来であれば来年度から月300円程度上昇する計算になるそうですが、急激な保険料負担増を回避するため政府が肩代わり(国費から1,200億円を投入)する方針で、2009年度の介護保険料は全国平均で1人あたり月150~200円程度(3~5%程度)の引上げとなる見通しです。
◆自治体で独自の対策も
東京都杉並区では、介護事業者向けの緊急融資を行うと発表しました。同区内の通所介護施設や特別養護老人ホームを運営している介護保険事業者に対して、介護報酬3カ月分以内(最高300万円)を無利子で融資する制度を今年の12月に創設し、経営が悪化している介護事業者を支援していくそうです。融資期間は6年で、用途は運転資金に限定されています。対象は従業員300人以下の社会福祉法人とNPO法人です。
◆どちらを選択するか?
歯科医にかかると必ず悩むのが、治療法の選び方です。健康保険を使って安く済ませるか、自腹を切ってでも高額の治療を受けるか。使用する材料や手間のかけ方などでかかる費用は大きく違ってきますが、自分に最適な治療法を選ぶのは想像以上に難しいものです。
◆保険治療と自費治療に大きな差
歯科で治療する場合、健康保険の適用を受ける範囲の治療にとどめるか、保険の適用を受けない自費治療にするか、患者は判断を求められます。健康保険が適用されれば患者は3割の負担で済みますが、自費治療を選ぶと患者が全額負担しなければなりません。どちらかの治療しか扱わない歯科医もあり、実際に足を運ぶ前に治療方針を決めなければならない場合もあります。
虫歯治療の後などに行う詰め物の場合、自費治療の負担額は保険が適用される場合の50倍(それぞれの最高額を比較)に達するケースもあるようです。重度の歯周病などでも差は30倍近くになるケースもあり、かなり大きな差といえます。差が大きい理由は、治療で使用する材料が異なるほか、治療時間の長短で手間のかけ方に差が出るからです。
◆すべての治療法を検討する
治療法を選ぶ際には、「自分が取り得るすべての治療法を歯科医から聞き出すこと」が重要だと言えるでしょう。歯科はその専門性の高さから、医師が治療法について詳細な説明をしないケースも多くあります。しかし、考えられるすべての治療法について、治療方法とその効果、費用等が明らかになれば、患者が自らの予算を頭に入れて、どの水準まで歯の機能回復や生活の質の向上を目指すかを決めることができます。
治療法の選び方で機能回復にどれだけ差が出るかは、治療内容ごとに異なります。あまり差がないのであれば、自己負担が少ない保険治療を選ぶのも選択肢の1つです。逆に自費治療のほうが飛躍的に機能回復できる分野もあります。
◆セカンドオピニオンも取り入れる
最近は歯科医療の分野でも、今かかっている医師とは別の医師に意見を求める「セカンドオピニオン」の考え方が広まってきています。治療法について迷いが生じたら、多少費用がかかっても、別の歯科医の判断を聞いてみることも有効です。
また、患者が最良の判断をするために、専門性の高い歯科においても「インフォームド・コンセント」の重要性がますます高まっているのではないでしょうか。そして、歯科医からより詳しい治療内容の情報を入手し、予算と折り合いのつく範囲内で賢く治療を受けることが重要です。
なかなか進まない企業による
「外国人雇用状況」の届出
◆改正法の施行から1年が経過
外国人労働者の雇用改善等を目指した「改正雇用対策法」の施行から1年が経過しました。外国人の就労実態を把握しようと、企業に外国人労働者の雇用状況(就職・離職)の届出が義務付けられましたが、煩雑さなどを理由にあまり浸透していないのが現状です。新制度が外国人の雇用改善や不法就労防止に結びつくのか、早くも実効性が問われ始めています。
◆3割強の低い補足率
厚生労働省は9月上旬、新制度になって初めて、全国のハローワークが受理した外国人雇用の届出状況(6月末時点)を公表しました。直接雇用している外国人労働者数は全国で33万8,813人と、任意提出だった2007年に比べて約4割増えたとみられています。出身国別では中国が44.2%(約15万人)でトップ、次いでブラジルの20.9%、フィリピンの8.3%となっています。
改正雇用対策法施行(2007年10月1日)までの雇用に関しては今年10月1日までが届出猶予期間であり、発表された数字は途中集計のもので、まだ届出されていない人数は、かなり多いものと思われます。法務省入国管理局や厚生労働省のデータなどから推計すると、外国人労働者数は約100万人とも言われており、仮に100万人とすれば捕捉率は3割強にすぎません。
◆企業の対応に温度差
一部の外国人労働者は、不法な低賃金で、劣悪な環境の下で働いていると指摘されています。改正雇用対策法のねらいは、事業主に雇用条件の改善を促すとともに、雇用状況の届出を法的に義務付けて、把握した数値などを今後の施策に活用していくことです。
ただ、企業の対応には温度差があり、厚生労働省では届出が進まないことに頭を悩ませている状況です。各企業からは、「届出を義務付けたことで現場の作業が煩雑になった」という声があがっています。国も現場の負担を軽減するよう取り組んではいますが、届出には外国人の氏名や在留期限、在留資格などの記入が必要で、実際には事業主の負担が大きいと言わざるを得ません。
◆不法就労防止・再就職支援に向けて
国は事業主からの届出を活用して、不法就労の防止や離職した外国人の再就職支援などを図りたい考えです。しかし、企業の対応がばらついたまま届出数が伸びなければ、適切な対策を打ち出せないおそれもあります。不法就労などの問題があるケースほど届出しにくいという側面もあり、厳格に提出を義務付けることが必要である半面、事業主の協力が得られない中での中途半端な対策は、外国人への真の就職支援につながらないのではないでしょうか。
今後の届出の進捗状況を見極めたうえで、届出制度とその内容について具体的な見直しが必要になるかもしれません。
駐車違反の反則金を「社員の自己負担」にできる?
◆営業マンが駐車違反
営業マンが社用車での営業中に駐車違反で摘発されてしまいました。その会社では“経費節減”と称し駐車料金を支給していないため、やむなく路上駐車したのです。「反則金は自分で払うように」と上司はこの営業マンに言いましたが、問題はないのでしょうか。
◆改正道路交通法のポイント
改正道路交通法の施行により、2006年6月から駐車違反取締りの民間委託が始まり、同時に短時間の放置車両も摘発対象となりました。短時間駐車を繰り返す営業車の違反が取り締まられるケースも増えているようです。また、介護ヘルパーや訪問看護師などが利用者を車で訪ねた際に、駐車許可証を掲示していたにもかかわらず厳しく取り締まられてしまうケースなども増加しているようです。
上記改正では、単なる取締りの強化だけでなく、放置車両における「使用者責任」の拡充も大きなポイントとなっています。違反を摘発しても運転者が出頭せず、車両所有者の会社も「誰が運転していたかわからない」などと釈明する例が増えていました。このため、いわゆる「逃げ得」をなくすために、運転者が出頭しない場合、使用者に放置違反金の支払いを課すことになったのです。
上記の例の場合、運転手である営業マンが出頭しなければ会社に放置違反金が課され、その支払いを拒めば当該車両の車検が受けられなくなります。
◆問われる企業の使用者責任
企業は、民法の規定により、従業員に対する使用者責任を負っています。すなわち、従業員が不法行為をしないように指導する義務と、不法行為があった場合に代わりに責任を負う義務があるのです。
違法駐車の場合、本来は運転者に支払義務がありますが、上記の例の場合、会社が駐車料金を支給していないため、運転者の不法行為を助長していたとも言えます。また、従業員に駐車場代を負担させていたこと自体も問題と言えます。会社が仕事に必要な措置を講じていなかったと解釈できるからです。この場合は、会社が反則金の一部ないし全額を負担しなければならない可能性が高くなってきます。
上記の例では、会社が反則金を負担し、そのうえで従業員が違法駐車をしないように駐車場を確保したり、駐車料金を支給したりする仕組みが求められるでしょう。従業員が違反しないルール作りをすることこそが、会社に求められていると言えるのではないでしょうか。
養育費を受け取れない母子世帯の自立支援策
◆養育費が受け取れない
離婚した夫から子供の養育費を受け取れない母子世帯を減らすことを目的として厚生労働省が設置した「養育費相談支援センター」(http://www1.odn.ne.jp/fpic/youikuhi/)の事業開始から、今年の10月で1年を迎えました。
同センターには相談は多く寄せられているものの、その効果は小さいとの指摘があります。離婚母子世帯のうち養育費を受け取っているのは約2割にすぎない現状を改善するためには、次の一手が必要なようです。
◆「誰にも養育費の相談をせず」が約43%
厚生労働省の全国母子世帯等調査(2006年度)によると、離婚時に養育費の取決めをしている母子世帯は38.8%だそうです。しかし、「現在も養育費を受けている」のはそのうちの約半数の19.0%にとどまっています。
母子世帯の平均年収は213万円と全世帯の平均年収564万円を大きく下回り、生活に困窮する家庭が多いのが現状です。養育費の取決めをしない理由として、47.0%が「相手に支払う意思や能力がないと思った」と回答し、23.7%が「相手とかかわりたくない」と答えています。また、42.9%は離婚の際、養育費について「誰にも相談していない」と答えています。養育費問題についての知識が少ないことの表れと言えそうです。
◆「養育費相談支援センター」の役割
養育費相談支援センターは、養育費に関する問題を含め、母子世帯の自立支援策の一環として厚生労働省が設けた組織で、全国の母子家庭等就業・自立支援センターや自治体などで行う養育費相談の中心的存在となっています。
相談は電話と電子メールに限られますが、開設以来、「離婚した夫から養育費の支払いがない」などの声が次々と寄せられ、その数は2008年8月末で約2,700件に上っているそうです。
◆貧弱な支援体制に課題
同センターの問題点は、来所相談を受け付けず、相談員に弁護士がいないなど限界があることです。弁護士の不在は、仲介に直接乗り出せないことを意味し、可能なのは助言にとどまります。相談の追跡調査もしていないため、実際に養育費を受け取れたという報告も少ないようです。今後の対策として考えられるのは、欧米各国のように、国や自治体による立替払いや徴収代行制度を設けることや、不払いに対してある程度の罰則を設けることではないでしょうか。政府には、これらの新たな施策についての検討と同時に、「養育費の支払いは離婚した親の当然の義務であること」を広める啓発活動なども望みたいところです。
ますます深刻化する「消された年金問題」
◆次々見つかる標準報酬月額の改ざん
厚生年金の計算をする際に使われる「標準報酬月額」の改ざんが発覚した、いわゆる「消された年金問題」ですが、その広がりが深刻化しています。
政府の発表によると、標準報酬月額のコンピュータ記録1億5,000万件のうち、5等級以上も下げられた記録が75万件に上ることが判明しました。厚生労働省は、処理が不適切だった可能性の高い約6万9,000件を優先的に調べるようですが、実態の把握は困難であり、被害者の救済にも時間がかかりそうです。
◆記録改ざんの背景は
標準報酬月額は、厚生年金の支給額を決めるときの基準となる毎月の報酬であり、1~30の等級に分かれ、どの等級に該当するかで支払う保険料が決まってきます。この標準報酬月額に対して、事業主が過去に遡って報酬を減らしたり、加入期間を短くしたりするのが改ざん行為の代表例です。これらは、社会保険事務所職員と経営状態の苦しい事業主が相談し、改ざんしたケースも多いといわれています。
この背景には、社会保険事務所における内部事情があります。事業主が保険料を滞納すると社会保険事務所の徴収成績は下がってしまいます。担当職員が徴収成績を上げるための効果的な手法として、「本来納めるべき保険料よりも少なく払ってもらう」という働きかけを事業主に対して行っていた可能性が高いようです。
社会保険事務所の上司の指示により組織的に改ざんしたケースや、自然に職員の間に広まっていったケースなどもあると見られています。
◆被害者の救済が急務
最も問題となるのは、被害者の救済です。例えば、標準報酬を30等級(62万円)から25等級(47万円)に下げられたまま40年間にわたって保険料を納付すると、老後にもらえる年金が概算で月3~5万円程度減ってしまうことになります。多くの場合、事業主は報酬を引き下げたことを従業員には隠しており、受給年齢に達するまで年金が減ることに気が付かないことが想定されます。社会保険庁では、戸別訪問などを始めているようですが、すべての受給者の確認作業が終わるのはまだまだ先となってしまいます。
この問題に関して、報酬の記録を確認したい場合は、社会保険事務所に行くか、社会保険庁の「年金個人情報提供サービス」(http://www.sia.go.jp/sodan/nenkin/simulate/)で照会するなどの対策を取るとよいでしょう。
未払い残業代の支払い等を求める
労働審判や民事訴訟
◆サービス残業への是正指導が過去最多に
従業員に残業代を支払わなかったとして労働基準監督署から是正指導を受け、結果的に1社で100万円以上の未払い残業代を支払った企業の数が2007年度に1,728社(前年度比約3%増)となり、厚生労働省が集計を開始した2001年度以来、最多を更新したことが明らかになりました。また、支払総額も計272億4,261万円(同約20%増)となっており、同じく過去最高を更新しています。
同省では、「労働者やその家族の方などから、各労働局、労働基準監督署に対して長時間労働、賃金不払残業に関する相談が多数寄せられており、これらに対して重点的に監督指導を実施した結果である」と分析しています。
このようにサービス残業は依然として増加傾向にあるようで、最近では「名ばかり管理職」「偽装請負」に関する問題などもあり、労働者や退職者が未払い残業代の支払いや地位の確認などを求めて労働審判や民事訴訟などを提起するケースも増えています。
以下では最近の事例を見てみましょう。
◆グッドウィルの元支店長らが労働審判申立て
今年の7月末に廃業した日雇い派遣大手「グッドウィル」の元支店長ら19人(25歳~49歳のいずれも男性)は、自分たちは「名ばかり管理職」として扱われていたなどとして、同社を相手に未払い残業代(合計約6,721万円)の支払いを求める労働審判を、東京地裁に申し立てたそうです。請求している未払い残業代は1人あたり約120万円~635万円です。
また、4人については、廃業に伴って解雇が行われた際に十分な退職金の積み増しや再就職先のあっせんが行われなかったとして、解雇の違法性についても争うとのことです。
◆元自転車便スタッフが正社員地位確認の民事訴訟提起
バイク便大手である「ソクハイ」の元自転車便スタッフの男性(31歳)は、個人事業主として運送請負契約を締結して業務を行っていたが、会社の指示に従って運送を行うなど自由裁量はほとんどなく、実態は正社員と変わらなかったとして、同社を相手に「正社員としての地位確認」と「約360万円の損害賠償」を求める訴訟を東京地裁に提起しました。
男性は営業所長として採用面接やスタッフの教育なども行っていたようであり、「同社に指示監督されており。偽装請負状態だった」と主張しているそうです。
業績悪化に伴う内定取消は
どのような場合に認められる?
◆業績悪化に伴う内定取消が増加
米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機に伴う急激な株価下落や景気悪化の影響による企業の業績悪化・業務縮小・事業撤退などを理由として、来春就職予定の学生の内定が取り消されるケースが相次いでいるそうです。業種は、不動産、住宅販売、建設、生命保険、ホテル、情報通信、システム開発、専門商社など多岐にわたっています。
大学側では「企業の業績悪化が深刻化してくるとさらに内定取消が増加するのでは」「実際にはもっと多くの学生の内定が取り消されているかもしれない」「この時期にこんなに内定取消が相次ぐことはここ数年間なかった」などといった不安の声もあがっているようで、また、2010年春に卒業・就職予定の現在の大学3年生の就職活動にも影響が出てきそうです。
企業・大学・学生いずれにとっても非常に深刻な問題である内定取消は、どのような場合に認められるのでしょうか。
◆裁判所の考え方は?
内定取消は、一般的に「客観的にみて内定を取り消してもやむを得ない事情がある場合」にのみ許され、単なる業績悪化だけを理由として簡単に認められるものではないとされています。
裁判例(大日本印刷事件:最判昭和54年7月20日)では、会社が応募者に「採用内定通知」を発して、応募者がこれに応じる旨の「誓約書」を提出した場合には、入社日を「採用内定通知」に記載された時期とし、「誓約書」に記載された採用内定取消事由が発生したときは当該契約を解約できるとの解約権が留保された労働契約が成立していると考えられる、としています。
さらにこの留保解約権については、内定の当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる、としています。
◆「整理解雇の4要件」との関係
また、経営悪化を理由とする採用内定取消の場合について、いわゆる「整理解雇の4要件」の考え方に沿った判断を下した事例がありあます(インフォミックス事件:東京地決平9年10月31日)。
この事案では、(1)人員削減の必要性、(2)採用内定取消の回避の努力、(3)人選の合理性は認められるが、(4)手続きの面において十分な説明が欠けていたとして、採用内定の取消が無効と判断されています。したがって、採用内定を取り消すべきかどうかは、上記の4要件の考え方に沿って慎重に考えなければなりません。
深刻な「下請けいじめ」「下請けたたき」の実態&対策
◆急増する「下請けいじめ」
東京都は、2008年4月から10月の間に「財団法人 東京都中小企業振興公社」に寄せられた下請け取引に関する相談件数(親事業者と下請け企業に関する禁止事項を定めている「下請代金支払遅延等防止法」に抵触する可能性のあるもの)が214件となり、2007年度の通年実績(80件)の約2.7倍に達したと発表しました。景気の後退を背景として不当な事例が増加しているとみられ、過去最高のハイペースで推移しています。
相談の内容は、「売上金回収時に一方的に値引きを迫られた」などといった代金回収に関するものや、「予告なしに突然取引中止を告げられた」などといった取引契約に関するものが多いそうです。
以前から「下請けいじめ」は問題となっており、中小企業庁は「下請代金支払遅延等防止法」に基づいて下請け取引が適正かどうかを調査して改善指導を行っていますが、これまでに他にも様々な対策を打ち出しています。
◆原油高対策としての下請け取引適正化
中小企業庁では原油高となっていた今年8月に、下請け取引の適正化を促進するための対策を発表しました。これは、原油高を理由とする価格転嫁が難しい中小企業が多いため、大企業による不当な下請け取引の強要を防ぐのが狙いでした。
具体策としては、原油高の影響が大きいと考えられる建設・自動車などの業種を中心として、代金の支払遅延など問題のある行為があるとみられる大企業から事情聴取を行い、特別立入検査も行うとするもので、8月下旬から実施されています。
◆「下請けたたき」通報制度
また、厚生労働省では今年の7月に、労働基準監督署が賃金不払い等を把握した場合、その原因がいわゆる「下請けたたき」であると認められるときには、公正取引委員会や経済産業省に通報する制度をつくるとの方針を発表しました。同省では、中小企業の労働者保護のためには下請け問題への対策が必要と判断したものです。
また、同省では、同省が発注する公共工事について、元請業者と下請業者との間に契約等に関してトラブル(原価割れ受注を強要された、割引困難な長期手形を交付された等)があった場合の下請け業者のための相談窓口(「下請けに関する相談窓口」http://www.mhlw.go.jp/sinsei/chotatu/dl/02.pdf)を設けています。
苦しさを増す介護事業者の支援策
◆苦しい経営実態
厚生労働省は、「平成20年介護事業経営実態調査」を発表し、介護施設の苦しい経営実態が明らかになりました。
前回調査(2005年)と比較すると、利益率(収入に対する利益の割合)が、例えばデイケアでは18.9%から4.5%に、特別養護老人ホームでは13.6%から3.4%に大きく下がるなど、15種のうち11種で低下しています。また事業規模別では、事業規模の小さいところほど経営が厳しくなっているようです。
◆2009年4月から介護報酬引上げ
上記のような現状から、政府・与党は、介護労働者の待遇改善を図るため、2009年4月から介護報酬(介護事業者に支払われるサービスの公定価格)を3%引き上げることを決定し、先ごろ発表した「新総合経済対策」(追加経済対策)に盛り込みました。介護報酬は3年に1度改定されることになっていますが、プラス改定は2000年度の介護保険制度発足以来初となります(2003年はマイナス2.3%、2006年はマイナス2.4%といずれも引下げ)。
報酬引上げは保険料アップにも繋がります。本来であれば来年度から月300円程度上昇する計算になるそうですが、急激な保険料負担増を回避するため政府が肩代わり(国費から1,200億円を投入)する方針で、2009年度の介護保険料は全国平均で1人あたり月150~200円程度(3~5%程度)の引上げとなる見通しです。
◆自治体で独自の対策も
東京都杉並区では、介護事業者向けの緊急融資を行うと発表しました。同区内の通所介護施設や特別養護老人ホームを運営している介護保険事業者に対して、介護報酬3カ月分以内(最高300万円)を無利子で融資する制度を今年の12月に創設し、経営が悪化している介護事業者を支援していくそうです。融資期間は6年で、用途は運転資金に限定されています。対象は従業員300人以下の社会福祉法人とNPO法人です。
2008/10/29
11月の事務所便り
医療費抑制の切り札「ジェネリック医薬品」とは?
◆医療費抑制の切り札となるか?
高齢化で医療費がどんどん増えている現在、日本の医療保険制度は財政的に厳しい状態にあります。そんな中、医療費抑制のための切り札的存在として期待されているのが、成分や効き目が同じで価格が安い「ジェネリック医薬品」です。最近テレビCMなどでよく耳にするようになりましたが、いったいどんなものなのでしょうか。
◆ジェネリック医薬品の特徴
新薬として最初に発売された薬(先発医薬品)は、特許に守られ、開発メーカーが独占的に製造・販売することができます。しかし、20~25年の特許が切れると、他のメーカーも同じ成分、同じ効果を持つ薬を製造できるようになります。これが「ジェネリック医薬品(後発品)」で、「先発品と同じ有効成分を同じ量含み、同等の効果が得られる医薬品」と定義されています。新薬に比べて開発コストが小さいため、価格は新薬の3~8割も安くなります。先発品の欠点を補い、工夫しているものも少なくありません。
しかしながら、厚生労働省によると、ジェネリック医薬品のシェアは2006年時点で数量ベース約17%にとどまっており、30%~60%にもなる欧米各国に比べ極めて低いのが実情です。その理由として、医師がジェネリック医薬品の審査や品質への不安を感じていることや、患者が新薬での処方を希望することが多いことなどが挙げられます。
◆ジェネリック医薬品普及の動き
医療費抑制策の中で、ジェネリック医薬品の普及が期待されています。シェアが30%になれば医療費は4,300億円削減できると推計されており、政府の「骨太方針2007」では、2012年度までにシェア30%達成が目標に掲げられています。
ジェネリック医薬品普及促進策として注目されるのが、処方せんの様式変更です。2006年4月、処方せんに「後発薬への変更可」という欄が設けられ、医師が署名押印すれば薬局側がジェネリック医薬品への代替調剤ができるようになりました。さらに、今年4月からは、この欄が「変更不可」に変更されており、よほどの理由で変更を認めないケースを除けば、ジェネリック医薬品の普及が促進されるのではないかと期待されています。
このほか、薬局が調剤する処方せんの3割超を後発品に変更した場合、薬局側の報酬に加算がなされるようになりました。薬剤師が患者にジェネリック医薬品への変更を促すことで、普及の促進を図るものです。
医療費抑制のためには、ジェネリック医薬品の普及は不可欠です。適正使用のための環境作りに対して、国にはさらなる努力が求められます。
厚生年金・健康保険の未加入事業所が10万超に
◆前年同時期と比べて約3,000カ所増加
厚生年金や健康保険に加入義務があるのに加入していない事業所が、今年3月末の時点で約10万カ所(前年同時期比約3,000カ所増)あることが、社会保険庁の調べで判明しました。未加入のままでは、従業員が将来年金を受け取ることができなかったり、医療費の自己負担額が増えたりするおそれがあります。
◆未加入事業所の実態は?
今回、社会保険庁が雇用保険などのデータをもとに、未加入が疑われる事業所を抽出して調べたところ、3月末時点で10万470カ所が政府管掌健康保険に未加入でした。そのほとんどが厚生年金保険にも未加入です。従業員規模が小さいほど未加入の事業所が多い傾向がみられ、未加入事業所のうち、従業員数が5人未満の事業所は約8万2,000カ所、5~9人の事業所は1万4,000カ所と、大半を占めました。
なお、2007年3月末に政管健保と厚生年金に未加入とされたのは約9万7,000カ所でした。1年間でこのうち2万4,000カ所が加入するなどして、未加入は約7万3,000カ所になったのですが、今回の調査で新たに約2万7,000カ所が未加入であることが判明し、未加入事業所は差し引き3,000カ所増えています。
◆未加入をなくすためには調査・把握が必要
社会保険庁が未加入事業所対策に力を入れ始めたのは、2004年度以降のことで、それ以前は実態の調査も行わず、加入の呼びかけにも消極的でした。現在は、まずは文書や電話で加入を促し、従わない場合には社会保険事務所への呼出しや戸別訪問で加入を求めています。それでも応じなければ、従業員数が多い事業所から順に、職権による立入り検査で強制加入手続に移ります。
中小企業には、新規開業や廃業、休眠会社も多いため、実態を十分に把握するのは困難です。また、今回の調査で把握できなかったものも含めれば、相当多くの未加入事業所があることも予想されます。
今後、加入率を上げられるかどうかは不透明です。2007年度に強制加入手続で加入したのは73カ所(被保険者数483人)であり、今後の加入促進策による加入率上昇が期待されます。まずは未加入事業所の徹底的な調査と把握、そしてその後の粘り強い働きかけが必要でしょう。
外国人の派遣社員が労災事故に遭ったら?
◆10年で倍増した外国人労働者
厚生労働省の推計によれば、外国人労働者数は2006年に約75万5,000人となり、10年前の約2倍に増えています。このほか、約17万人の不法残留(オーバーステイ)の外国人労働者がいるとみられています。
政府は、原則として外国人の単純労働を認めていませんが、一部の日系人などは例外とされているほか、研修生名目の外国人などが単純労働に携わっています。
今、自動車関連部品の下請けメーカーで、日系人の派遣社員がプレス機械で指を切断する事故に遭ったとしましょう。この場合、外国人でも労災保険を受けたり、損害賠償をメーカーに請求したりできるのでしょうか。
◆労災保険は適用、損害賠償は?
労働基準法は、国籍を理由に労働条件を差別することを禁止しています。そのため、外国人労働者であっても、当然に労災保険法は適用されます。
損害賠償については、実質的に指導を監督し、安全配慮を怠った派遣先のメーカーに請求することになるでしょう。通常、後遺症が残るようなケガの損害額は、一般的に67歳まで働いた場合に見込まれる収入額をもとに逸失利益を計算して算出します。家族とともに定住している場合など、合法的な外国人労働者の逸失利益は日本人と同様に算定し、慰謝料についても、後遺症の等級認定や入通院費などをもとに、日本人と同じ基準で算定するのが一般的です。
◆不法就労だった場合は?
しかし、もしも不法就労であった場合には、損害賠償額が日本人より少なくなる可能性があります。在留期間を過ぎていたパキスタン人が労災事故で後遺障害を負って損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は、不法就労の場合は長期的に日本で就労できないとし、事故後に退社してから3年間は日本の収入基準で計算し、それ以降はパキスタンの収入基準で計算するのが合理的としました(改進社事件:最三小判平9.1.28)。パキスタンの収入は日本の5分の1以下とされ、結果、賠償額は日本人に比べると少額になりました。
不法就労の外国人への賠償額が通常の日本人より少ないという判決には、危険な仕事を不法滞在の外国人にやらせることを助長するのでは、という懸念もあります。こうした懸念への対策として、不法就労者自体を減らすことが必要です。そのためには、不法就労者の雇用について、罰則をより厳罰化することなども選択肢の1つとして考えられるべきではないでしょうか。
借金を抱え賃金債権を譲渡した社員にどう対応する?
◆消費者金融から会社に電話が…
個人的に消費者金融から借金をしていた社員が、返済が滞ったことから3カ月程度の自己の賃金債権を譲渡したらしく、消費者金融から会社に債権(賃金)の支払いを求める電話がかかってくるようになった――。
社員が消費者金融に賃金債権を譲渡したとはいえ、労働基準法には「賃金は、直接労働者に支払わなければならない」という直接払いの原則があります。このようなケースでは、どのように対応したらよいのでしょうか。
◆裁判所の命令があれば有効
社会保険関係の法律では、一般に保険給付の受給権の譲渡を禁止しており、また、労働基準法では、労働者が使用者に対して有する災害補償を受ける権利については譲渡を禁止しています。しかし、賃金については特に規定はありません。したがって、賃金に関しては、譲渡は可能とも考えられます。
しかし、使用者に対し立場の弱い労働者を保護するため、労働基準法では賃金の支払いに関する「直接払いの原則」が定められています。過去の裁判等では、たとえ債権譲渡をしたとしても労働基準法の直接払いの原則を優先するとする裁判例が多く(電電公社小倉電話局事件:最判昭43.3.12等)、賃金を金融業者に支払うことはできないと考えるのが一般的です。
ただし、民事執行手続により裁判所が差押えを命じた場合は、雇用主は差押命令に応じなければなりません。これは一見、直接払いの原則に反するようにも見えますが問題ありません。借金返済が滞った場合だけでなく、国や地方への税金の滞納も同様です。
◆生活者保護のために差押金額を制限
しかし、給与全額を差し押さえられてしまうと、その社員は生活できません。このため、債務者保護の観点から、差押金額は原則、賃金から所得税・地方税・社会保険料等を控除した手取り賃金額をベースに、賃金の4分の1までとされています。
標準的な世帯所得を超える高給をもらう人については、政令で定める額を超える部分の全額を差し押さえることができます。標準的な家庭に必要な生活費として33万円を想定し、33万円が4分の3に相当する44万円で線引きをし、手取り額が44万円を超えていれば、33万円を残してそれ以上の部分はすべて差し押さえられます。
企業としては、法律に基づく強制執行手続の場合を除き、やはり生活者(労働者)保護の精神を念頭に置いて、労働法規に則り慎重に対応することが肝要です。
年金改革に「第3の案」が浮上 その特徴は?
◆年金制度改革の検討に本格着手
厚生労働省は、年金制度改革の検討に本格的に着手しました。基礎年金の受給額が少ない低年金者対策をめぐり、「全額税方式化」と「最低年金創設」が検討されていますが、第3の案として「保険料軽減・税支援方式」とも言うべき案が浮上してきました。
いずれの案を導入するとしても問題点があるようです。これら3種の案のそれぞれの特徴についてみてみましょう。
◆「全額税方式化」と「最低年金創設」
現状では、基礎年金額が満額(6万6,000円)を下回る低年金となるケースが多いのが実情です。そこで、「財源を全額税で補う税方式化」が検討されています。これは、働き方などに関係なく基礎年金部分を税で支給し、社会全体で支える方式です。未納問題等は完全に解消できる代わりに、少なくみても9兆円以上の財源が必要となります。また、企業の保険料負担がなくなる分をどう扱うかも課題です。
税方式のような劇的な転換を望まない場合の案が、「最低年金創設」です。これは、現行の社会保険方式を維持しつつ、加入期間にかかわらず給付時に税で加算する最低年金制度を創設しようとするものです。年収200万円以下の高齢者世帯に月5万円の最低年金を保障する場合、約1兆円の財源が必要と試算されています。問題点として、「保険料の負担者に給付」の原則が、加入期間によらず最低年金を支給することにより崩れてしまい、負担の公平性が損なわれるほか、加入期間に関係なく最低年金を受け取れることで未納問題が拡大するおそれがあることなどが、問題点として挙げられます。
◆「保険料軽減・税支援方式」の内容は?
これら2案に対し、厚生労働省が第3の案として新たに提示した「保険料軽減・税支援方式」は、国民年金の定額保険料を所得に応じて軽減し、軽減分を国が税で補って全額払ったとみなすやり方です。少額であっても40年間払い続ければ、基礎年金を満額受け取ることができます。追加する財源としては、現行の免除制度利用者に単純に保険料軽減を適用するだけでも1兆7,000万円程度が見込まれています。また、納付者が増える可能性はありますが、未納問題の根本的な解決とはなりにくく、低所得層の保険料を軽減するにあたり、軽減割合を決める自営業者の所得把握に難点があるなどの課題もあります。
「名ばかり管理職」排除通達について
◆管理監督者の範囲の明確化
厚生労働省は、「名ばかり管理職」問題を解決するため、労働基準法上の管理監督者に該当するかどうかの判断基準を示した「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」(平成20年9月9日付け基発第0909001号)と題する通達を、9月9日に出しました。この通達が出された背景には、店長に対する残業代支払いを大手外食チェーン等に命じる判決が相次ぐ中、裁判例を参考に法律の運用を見直す必要に迫られたことがあります。
◆9月9日付け通達の内容は?
上記の通達では、多店舗展開する小売業や飲食業を対象に、管理監督者性を否定する重要な要素を挙げています。具体的には、(1)アルバイト・パート等の採用に責任がないこと、(2)部下の人事考課が職務内容に含まれないこと、(3)遅刻や早退の際には減給等の不利益な取扱いをされること、(4)賃金額が当該企業の他の一般労働者の賃金総額と同程度以下であること、といった項目が列挙されています。
◆通達のより正確な理解のために
しかし、上記通達については、連合と日本労働弁護団が「管理監督者の基準の緩和につながりかねない」として同省に見直しを要請していた。そこで、業界団体等が誤った解釈をしないよう、厚生労働省は10月3日に新たに「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化を図るための周知等に当たって留意すべき事項について」(平成20年10月3日付け基監発第1003001号)を出しました。
この通達では、9月9日付けの通達の趣旨・内容が正確に理解されるように懇切丁寧な説明を行うよう求めており、次のポイントを指摘しています。
(1)店舗の店長等について、管理監督者の範囲の適正化を図る目的で発出されたものであること
(2)昭和22年9月13日付け通達で示された管理監督者の基本的な判断基準を変更したり緩めたりしたものではないこと
(3)判断要素は否定的な要素を整理したものであり、これらにひとつでも該当する場合には、管理監督者に該当しない可能性が大きいと考えられること
(4)通達に該当しない場合は、実態を踏まえ、慎重に判断すべきものであること
また、同省ホームページ上では9月9日付け通達に関するQ&Aも公開されました。通達の説明や周知徹底のために再度念が押されるということは、「名ばかり管理職」問題に対して国が本気で対応し始めたことの表れと言えるでしょう。企業では、この問題に対して速やかな対応策を取ることが求められます。
あなたの年金は大丈夫? 厚生年金記録の改ざん問題
◆標準報酬月額の改ざん事実が明らかに
厚生年金の標準報酬月額(月収水準)の記録が大量に改ざんされていた問題に関して、次々と事実が明らかになっています。当初、「社会保険庁による改ざんへの関与の疑いが高い」と言われていましたが、関係者(社会保険事務所職員や事業主など)の証言により、組織的な関与があったことはほぼ間違いないと見られています。
◆なぜ改ざんが行われたのか?
記録の改ざんは、経営状態の悪い事業主にとっては保険料負担が軽くなる(またはなくなる)というメリットがあり、社会保険事務所の職員にとっては保険料の徴収実績を上げることができるというメリットがあります。方法としては、社会保険事務所職員が標準報酬月額の引下げを事業所に指導したり(または事業所に無断で標準報酬月額を引き下げたり)、保険料を滞納している事業所に「全喪届」の届出を勧めたりといったものです。
ひどいケースでは標準報酬月額が5等級以上も引き下げられていたようであり、これらの改ざんにより、年金額が本来より減額されて支給されているケースがすでに出てきているようです。
◆何件の改ざんが行われたのか?
舛添厚生労働大臣は、9月中旬に「改ざんされた可能性の高い記録が6万9,000件あると」表明していました。その後、10月初旬に、これまで社会保険庁が説明していたよりもはるかに大きな規模による改ざんが行われていた事実が明らかになっています。
改ざん事例の総数は100万件を超えるのではというマスコミ報道もなされていますが、実際の改ざん件数が何件あるのかは、依然として不明のままです。
◆自分の年金記録を確認するには
同大臣は、厚生年金の記録改ざんに関する直属の調査チームを設置する方針です。調査チームは弁護士などの外部有識者などで構成され、関与が確認された社会保険庁職員やその管理職には「厳正な処分を行う」と明言しています。また、社会保険庁の職員や事業主などからの情報提供を求める方針も示し、年金受給者への個別訪問なども行っていくとしています。
全容解明はまだまだ先のことになりそうですが、心当たりがある場合(勤務していた事業所の経営状態が悪かった場合や倒産があった場合)には、まずは自分の年金記録を確認してみる必要があります。確認の方法としては、社会保険事務所で「被保険者記録照会回答票(資格画面)」を出してもらうか、インターネットの年金記録照会(社保庁ホームページにある「年金個人情報提供サービス」)を利用するかのどちらかが一般的です。
労働者派遣に関する新たな動き ~2009年問題、日雇い派遣~
◆「2009年問題」対応で厚生労働省が通達
厚生労働省は9月26日、物の製造業において派遣社員を3年間の期限を超えて働かせる脱法行為を規制するため、「いわゆる『2009年問題』への対応について」(職発第0926001号、平成20年9月26日)と題する行政通達を出しました。この通達では、派遣可能期間に係る基本的な考え方や対応方法、労働局における周知啓発、指導等の取扱いなどが示されています。
派遣契約の終了後にいったん契約社員などに変更してから、再度派遣社員として雇用すること(いわゆる「クーリング期間」の悪用)が以前から行われており、問題視されていました。このような「脱法行為」を禁止するというのが今回の通達の主な目的のようです。同通達では、今後、「指揮命令が必要な場合は『直接雇用』に、必要ない場合は『請負』に」と指導していますので、特に製造業を営む企業においては慎重な対応が必要になります。
◆フルキャストに再度の事業停止命令
東京労働局は、日雇い派遣大手である「フルキャスト」に対して、違法派遣(労働者派遣法で禁止されている建設業・警備業や港湾作業への労働者派遣)を行っていたことにより事業停止命令を受けていた期間(昨年8月10日から1~2カ月)中も派遣を続けていたなどとして、昨年8月に続く2度目の事業停止命令を出しました。今回は、同社の全支店で10月10日からから1カ月の処分ということです。
◆大手が日雇い派遣から完全撤退へ
上記処分(事業停止命令)の影響もあり、同社は、2009年9月末までに日雇い派遣から完全撤退することを表明しました。日雇い派遣が働く貧困層(ワーキングプア)の温床であるとの批判が高まっており、また、厚生労働省が日雇い派遣を原則禁止とするために労働者派遣法を改正する方針を示しているためと見られます。
このような動きにより、日雇い派遣を利用してきた企業には大きな影響がありそうです。日雇い派遣最大手だった「グッドウィル」がすでに7月末で廃業しており、フルキャストの撤退により、ついに大手日雇い派遣業者は消滅してしまいます。
これまで日雇い派遣に依存してきた中小企業(特に、運送業者や量販店など)などは、今後は労働力を直接確保することが必要になるため、新たに求人広告などの手間や経費が必要となり、経営を圧迫しかねない状況です。
広がりをみせる「在宅勤務制度」の導入状況
◆テレワーク(在宅勤務制度)利用者は3年で65%増
テレワークの利用者(ITを活用して、場所と時間を自由に使った柔軟な働き方を週8時間以上利用する人)の数は、2002年には408万人(雇用型:311万人、自営型:97万人)でしたが、2005年には674万人(雇用型:506万人、自営型:168万人)となり、3年で約65%増加しています(国土交通省・社団法人日本テレワーク協会調べ)。
政府は、「テレワーク推進に関する関係省庁連絡会議」を設置し、昨年5月には「テレワーク人口倍増アクションプラン」を発表するなど、力を入れ始めています。2010年までには2005年比でテレワーク人口比率を倍増させ、就業者人口に占める割合を2割程度にしたい考えです。
◆テレワーク活用のメリット
テレワーク活用のねらい・メリットとして、政府は以下のことを挙げています。
(1)「ワーク・ライフ・バランス」社会の実現
(2)次世代を担う子供を育てる環境の実現
(3)人口構造激変時代の企業活力・国際競争力の確保
(4)場所にとらわれない就労・起業による地域活性化
(5)交通代替によるCO2の削減
◆中央省庁や大手民間企業の取組み
特許庁は、2009年度から在宅勤務制度を導入する方針を明らかにしました。対象者は特許審査を担当する審査官などで、併せてフレックスタイム制の導入も検討するとしています。中央省庁では、すでに総務省などでも在宅勤務制度を採用しています。
民間企業でも大手企業を中心に、導入(または検討)されています。NECは、通信回線を使って在宅勤務を可能にするテレワークの全社的な導入について検討すると今春に発表しました。有能な人材が不足気味のIT業界において、仕事と育児・家事などのバランスが取れるように配慮して、将来的な人材確保につなげるのがねらいのようです。NTT東日本でも、在宅勤務制度の全社導入を検討しています。今年5月に在宅勤務のトライアルを開始し、約200名が応募したそうです。制度の詳細は、検証結果に基づいて決定していくようです。
◆「在宅勤務ガイドライン」を改訂
厚生労働省は今年7月下旬に、「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(平成16年3月発表)を改訂しました。在宅勤務の普及に伴い、より詳細な解釈が求められている状況に対応するものであり、「労働基準関係法令の適用及びその注意点」などが盛り込まれています。導入を検討している企業にとって注目すべきガイドラインです。
厚生労働省「サービス残業解消指針」の内容
◆なくならないサービス残業
サービス残業があったとして2006年度に労働基準監督署から是正指導を受け、支払額が合計100万円以上となった企業は1,679社に上り、対象労働者数は182,561人となっています。支払われた残業代は総額で227億円1,485万円(企業平均1,353万円、労働者平均12万円)です。
◆指針パンフレットをホームページに掲載
サービス残業を放置することは、内部告発等をきかっけに労働基準監督署の是正指導等を受け、不払賃金を支払わなければならないリスクを抱えていることになります。
厚生労働省は、「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」(2003年5月策定)について、よりわかりやすく解説したパンフレットのホームページへの掲載を10月から開始しました。同指針は、賃金不払い残業(サービス残業)は重大な労働基準法違反であるとの考えのもと、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置等に加え、各企業における労使が労働時間の管理の適正化と賃金不払残業の解消のために講ずべき事項を示」すことを目的としています。ここでは、同指針に記載されている内容を改めて見てみましょう。
◆指針が示すサービス残業解消のために取り組むべき事項
(1)「労働時間適正把握基準」の順守
使用者は、「労働時間適正把握基準」を遵守することが必要です。また、労働組合(労働者)も、労働者に対して同基準を周知することが重要であるとしています。
(2)意識・職場風土の改革
サービス残業の背景に、「サービス残業もやむを得ない」という労使双方の意識(職場風土)がある場合には、これをなくすための取組みを行うことが望まれるとしています。
(3)適正に労働時間の管理を行うためのシステムの整備
サービス残業の実態を把握したうえで、関係者が行うべき事項や手順等を具体的に示したマニュアルの作成等により、「労働時間適正把握基準」に従って労働時間を適正に把握するシステムの確立が重要だとしています。また、サービス残業の温床となっている業務体制や業務指示のあり方にまで踏み込んだ見直しも必要であり、「サービス残業是正」という観点を考慮した人事考課の実施等により、適正な労働時間管理を意識した人事労務管理が望まれています。
(4)労働時間を適正に把握するための責任体制の明確化とチェック体制の整備
事業場ごとに、労働時間管理についての責任者を明確にしておくことが必要であるとされています。また、労働時間管理とは別に、相談窓口を設置するなどしてサービス残業の実態を積極的に把握する体制の確立が重要であり、実態を把握した場合には、労働組合(労働者)としての必要な対応を行うことが望まれるとしています。
◆医療費抑制の切り札となるか?
高齢化で医療費がどんどん増えている現在、日本の医療保険制度は財政的に厳しい状態にあります。そんな中、医療費抑制のための切り札的存在として期待されているのが、成分や効き目が同じで価格が安い「ジェネリック医薬品」です。最近テレビCMなどでよく耳にするようになりましたが、いったいどんなものなのでしょうか。
◆ジェネリック医薬品の特徴
新薬として最初に発売された薬(先発医薬品)は、特許に守られ、開発メーカーが独占的に製造・販売することができます。しかし、20~25年の特許が切れると、他のメーカーも同じ成分、同じ効果を持つ薬を製造できるようになります。これが「ジェネリック医薬品(後発品)」で、「先発品と同じ有効成分を同じ量含み、同等の効果が得られる医薬品」と定義されています。新薬に比べて開発コストが小さいため、価格は新薬の3~8割も安くなります。先発品の欠点を補い、工夫しているものも少なくありません。
しかしながら、厚生労働省によると、ジェネリック医薬品のシェアは2006年時点で数量ベース約17%にとどまっており、30%~60%にもなる欧米各国に比べ極めて低いのが実情です。その理由として、医師がジェネリック医薬品の審査や品質への不安を感じていることや、患者が新薬での処方を希望することが多いことなどが挙げられます。
◆ジェネリック医薬品普及の動き
医療費抑制策の中で、ジェネリック医薬品の普及が期待されています。シェアが30%になれば医療費は4,300億円削減できると推計されており、政府の「骨太方針2007」では、2012年度までにシェア30%達成が目標に掲げられています。
ジェネリック医薬品普及促進策として注目されるのが、処方せんの様式変更です。2006年4月、処方せんに「後発薬への変更可」という欄が設けられ、医師が署名押印すれば薬局側がジェネリック医薬品への代替調剤ができるようになりました。さらに、今年4月からは、この欄が「変更不可」に変更されており、よほどの理由で変更を認めないケースを除けば、ジェネリック医薬品の普及が促進されるのではないかと期待されています。
このほか、薬局が調剤する処方せんの3割超を後発品に変更した場合、薬局側の報酬に加算がなされるようになりました。薬剤師が患者にジェネリック医薬品への変更を促すことで、普及の促進を図るものです。
医療費抑制のためには、ジェネリック医薬品の普及は不可欠です。適正使用のための環境作りに対して、国にはさらなる努力が求められます。
厚生年金・健康保険の未加入事業所が10万超に
◆前年同時期と比べて約3,000カ所増加
厚生年金や健康保険に加入義務があるのに加入していない事業所が、今年3月末の時点で約10万カ所(前年同時期比約3,000カ所増)あることが、社会保険庁の調べで判明しました。未加入のままでは、従業員が将来年金を受け取ることができなかったり、医療費の自己負担額が増えたりするおそれがあります。
◆未加入事業所の実態は?
今回、社会保険庁が雇用保険などのデータをもとに、未加入が疑われる事業所を抽出して調べたところ、3月末時点で10万470カ所が政府管掌健康保険に未加入でした。そのほとんどが厚生年金保険にも未加入です。従業員規模が小さいほど未加入の事業所が多い傾向がみられ、未加入事業所のうち、従業員数が5人未満の事業所は約8万2,000カ所、5~9人の事業所は1万4,000カ所と、大半を占めました。
なお、2007年3月末に政管健保と厚生年金に未加入とされたのは約9万7,000カ所でした。1年間でこのうち2万4,000カ所が加入するなどして、未加入は約7万3,000カ所になったのですが、今回の調査で新たに約2万7,000カ所が未加入であることが判明し、未加入事業所は差し引き3,000カ所増えています。
◆未加入をなくすためには調査・把握が必要
社会保険庁が未加入事業所対策に力を入れ始めたのは、2004年度以降のことで、それ以前は実態の調査も行わず、加入の呼びかけにも消極的でした。現在は、まずは文書や電話で加入を促し、従わない場合には社会保険事務所への呼出しや戸別訪問で加入を求めています。それでも応じなければ、従業員数が多い事業所から順に、職権による立入り検査で強制加入手続に移ります。
中小企業には、新規開業や廃業、休眠会社も多いため、実態を十分に把握するのは困難です。また、今回の調査で把握できなかったものも含めれば、相当多くの未加入事業所があることも予想されます。
今後、加入率を上げられるかどうかは不透明です。2007年度に強制加入手続で加入したのは73カ所(被保険者数483人)であり、今後の加入促進策による加入率上昇が期待されます。まずは未加入事業所の徹底的な調査と把握、そしてその後の粘り強い働きかけが必要でしょう。
外国人の派遣社員が労災事故に遭ったら?
◆10年で倍増した外国人労働者
厚生労働省の推計によれば、外国人労働者数は2006年に約75万5,000人となり、10年前の約2倍に増えています。このほか、約17万人の不法残留(オーバーステイ)の外国人労働者がいるとみられています。
政府は、原則として外国人の単純労働を認めていませんが、一部の日系人などは例外とされているほか、研修生名目の外国人などが単純労働に携わっています。
今、自動車関連部品の下請けメーカーで、日系人の派遣社員がプレス機械で指を切断する事故に遭ったとしましょう。この場合、外国人でも労災保険を受けたり、損害賠償をメーカーに請求したりできるのでしょうか。
◆労災保険は適用、損害賠償は?
労働基準法は、国籍を理由に労働条件を差別することを禁止しています。そのため、外国人労働者であっても、当然に労災保険法は適用されます。
損害賠償については、実質的に指導を監督し、安全配慮を怠った派遣先のメーカーに請求することになるでしょう。通常、後遺症が残るようなケガの損害額は、一般的に67歳まで働いた場合に見込まれる収入額をもとに逸失利益を計算して算出します。家族とともに定住している場合など、合法的な外国人労働者の逸失利益は日本人と同様に算定し、慰謝料についても、後遺症の等級認定や入通院費などをもとに、日本人と同じ基準で算定するのが一般的です。
◆不法就労だった場合は?
しかし、もしも不法就労であった場合には、損害賠償額が日本人より少なくなる可能性があります。在留期間を過ぎていたパキスタン人が労災事故で後遺障害を負って損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は、不法就労の場合は長期的に日本で就労できないとし、事故後に退社してから3年間は日本の収入基準で計算し、それ以降はパキスタンの収入基準で計算するのが合理的としました(改進社事件:最三小判平9.1.28)。パキスタンの収入は日本の5分の1以下とされ、結果、賠償額は日本人に比べると少額になりました。
不法就労の外国人への賠償額が通常の日本人より少ないという判決には、危険な仕事を不法滞在の外国人にやらせることを助長するのでは、という懸念もあります。こうした懸念への対策として、不法就労者自体を減らすことが必要です。そのためには、不法就労者の雇用について、罰則をより厳罰化することなども選択肢の1つとして考えられるべきではないでしょうか。
借金を抱え賃金債権を譲渡した社員にどう対応する?
◆消費者金融から会社に電話が…
個人的に消費者金融から借金をしていた社員が、返済が滞ったことから3カ月程度の自己の賃金債権を譲渡したらしく、消費者金融から会社に債権(賃金)の支払いを求める電話がかかってくるようになった――。
社員が消費者金融に賃金債権を譲渡したとはいえ、労働基準法には「賃金は、直接労働者に支払わなければならない」という直接払いの原則があります。このようなケースでは、どのように対応したらよいのでしょうか。
◆裁判所の命令があれば有効
社会保険関係の法律では、一般に保険給付の受給権の譲渡を禁止しており、また、労働基準法では、労働者が使用者に対して有する災害補償を受ける権利については譲渡を禁止しています。しかし、賃金については特に規定はありません。したがって、賃金に関しては、譲渡は可能とも考えられます。
しかし、使用者に対し立場の弱い労働者を保護するため、労働基準法では賃金の支払いに関する「直接払いの原則」が定められています。過去の裁判等では、たとえ債権譲渡をしたとしても労働基準法の直接払いの原則を優先するとする裁判例が多く(電電公社小倉電話局事件:最判昭43.3.12等)、賃金を金融業者に支払うことはできないと考えるのが一般的です。
ただし、民事執行手続により裁判所が差押えを命じた場合は、雇用主は差押命令に応じなければなりません。これは一見、直接払いの原則に反するようにも見えますが問題ありません。借金返済が滞った場合だけでなく、国や地方への税金の滞納も同様です。
◆生活者保護のために差押金額を制限
しかし、給与全額を差し押さえられてしまうと、その社員は生活できません。このため、債務者保護の観点から、差押金額は原則、賃金から所得税・地方税・社会保険料等を控除した手取り賃金額をベースに、賃金の4分の1までとされています。
標準的な世帯所得を超える高給をもらう人については、政令で定める額を超える部分の全額を差し押さえることができます。標準的な家庭に必要な生活費として33万円を想定し、33万円が4分の3に相当する44万円で線引きをし、手取り額が44万円を超えていれば、33万円を残してそれ以上の部分はすべて差し押さえられます。
企業としては、法律に基づく強制執行手続の場合を除き、やはり生活者(労働者)保護の精神を念頭に置いて、労働法規に則り慎重に対応することが肝要です。
年金改革に「第3の案」が浮上 その特徴は?
◆年金制度改革の検討に本格着手
厚生労働省は、年金制度改革の検討に本格的に着手しました。基礎年金の受給額が少ない低年金者対策をめぐり、「全額税方式化」と「最低年金創設」が検討されていますが、第3の案として「保険料軽減・税支援方式」とも言うべき案が浮上してきました。
いずれの案を導入するとしても問題点があるようです。これら3種の案のそれぞれの特徴についてみてみましょう。
◆「全額税方式化」と「最低年金創設」
現状では、基礎年金額が満額(6万6,000円)を下回る低年金となるケースが多いのが実情です。そこで、「財源を全額税で補う税方式化」が検討されています。これは、働き方などに関係なく基礎年金部分を税で支給し、社会全体で支える方式です。未納問題等は完全に解消できる代わりに、少なくみても9兆円以上の財源が必要となります。また、企業の保険料負担がなくなる分をどう扱うかも課題です。
税方式のような劇的な転換を望まない場合の案が、「最低年金創設」です。これは、現行の社会保険方式を維持しつつ、加入期間にかかわらず給付時に税で加算する最低年金制度を創設しようとするものです。年収200万円以下の高齢者世帯に月5万円の最低年金を保障する場合、約1兆円の財源が必要と試算されています。問題点として、「保険料の負担者に給付」の原則が、加入期間によらず最低年金を支給することにより崩れてしまい、負担の公平性が損なわれるほか、加入期間に関係なく最低年金を受け取れることで未納問題が拡大するおそれがあることなどが、問題点として挙げられます。
◆「保険料軽減・税支援方式」の内容は?
これら2案に対し、厚生労働省が第3の案として新たに提示した「保険料軽減・税支援方式」は、国民年金の定額保険料を所得に応じて軽減し、軽減分を国が税で補って全額払ったとみなすやり方です。少額であっても40年間払い続ければ、基礎年金を満額受け取ることができます。追加する財源としては、現行の免除制度利用者に単純に保険料軽減を適用するだけでも1兆7,000万円程度が見込まれています。また、納付者が増える可能性はありますが、未納問題の根本的な解決とはなりにくく、低所得層の保険料を軽減するにあたり、軽減割合を決める自営業者の所得把握に難点があるなどの課題もあります。
「名ばかり管理職」排除通達について
◆管理監督者の範囲の明確化
厚生労働省は、「名ばかり管理職」問題を解決するため、労働基準法上の管理監督者に該当するかどうかの判断基準を示した「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」(平成20年9月9日付け基発第0909001号)と題する通達を、9月9日に出しました。この通達が出された背景には、店長に対する残業代支払いを大手外食チェーン等に命じる判決が相次ぐ中、裁判例を参考に法律の運用を見直す必要に迫られたことがあります。
◆9月9日付け通達の内容は?
上記の通達では、多店舗展開する小売業や飲食業を対象に、管理監督者性を否定する重要な要素を挙げています。具体的には、(1)アルバイト・パート等の採用に責任がないこと、(2)部下の人事考課が職務内容に含まれないこと、(3)遅刻や早退の際には減給等の不利益な取扱いをされること、(4)賃金額が当該企業の他の一般労働者の賃金総額と同程度以下であること、といった項目が列挙されています。
◆通達のより正確な理解のために
しかし、上記通達については、連合と日本労働弁護団が「管理監督者の基準の緩和につながりかねない」として同省に見直しを要請していた。そこで、業界団体等が誤った解釈をしないよう、厚生労働省は10月3日に新たに「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化を図るための周知等に当たって留意すべき事項について」(平成20年10月3日付け基監発第1003001号)を出しました。
この通達では、9月9日付けの通達の趣旨・内容が正確に理解されるように懇切丁寧な説明を行うよう求めており、次のポイントを指摘しています。
(1)店舗の店長等について、管理監督者の範囲の適正化を図る目的で発出されたものであること
(2)昭和22年9月13日付け通達で示された管理監督者の基本的な判断基準を変更したり緩めたりしたものではないこと
(3)判断要素は否定的な要素を整理したものであり、これらにひとつでも該当する場合には、管理監督者に該当しない可能性が大きいと考えられること
(4)通達に該当しない場合は、実態を踏まえ、慎重に判断すべきものであること
また、同省ホームページ上では9月9日付け通達に関するQ&Aも公開されました。通達の説明や周知徹底のために再度念が押されるということは、「名ばかり管理職」問題に対して国が本気で対応し始めたことの表れと言えるでしょう。企業では、この問題に対して速やかな対応策を取ることが求められます。
あなたの年金は大丈夫? 厚生年金記録の改ざん問題
◆標準報酬月額の改ざん事実が明らかに
厚生年金の標準報酬月額(月収水準)の記録が大量に改ざんされていた問題に関して、次々と事実が明らかになっています。当初、「社会保険庁による改ざんへの関与の疑いが高い」と言われていましたが、関係者(社会保険事務所職員や事業主など)の証言により、組織的な関与があったことはほぼ間違いないと見られています。
◆なぜ改ざんが行われたのか?
記録の改ざんは、経営状態の悪い事業主にとっては保険料負担が軽くなる(またはなくなる)というメリットがあり、社会保険事務所の職員にとっては保険料の徴収実績を上げることができるというメリットがあります。方法としては、社会保険事務所職員が標準報酬月額の引下げを事業所に指導したり(または事業所に無断で標準報酬月額を引き下げたり)、保険料を滞納している事業所に「全喪届」の届出を勧めたりといったものです。
ひどいケースでは標準報酬月額が5等級以上も引き下げられていたようであり、これらの改ざんにより、年金額が本来より減額されて支給されているケースがすでに出てきているようです。
◆何件の改ざんが行われたのか?
舛添厚生労働大臣は、9月中旬に「改ざんされた可能性の高い記録が6万9,000件あると」表明していました。その後、10月初旬に、これまで社会保険庁が説明していたよりもはるかに大きな規模による改ざんが行われていた事実が明らかになっています。
改ざん事例の総数は100万件を超えるのではというマスコミ報道もなされていますが、実際の改ざん件数が何件あるのかは、依然として不明のままです。
◆自分の年金記録を確認するには
同大臣は、厚生年金の記録改ざんに関する直属の調査チームを設置する方針です。調査チームは弁護士などの外部有識者などで構成され、関与が確認された社会保険庁職員やその管理職には「厳正な処分を行う」と明言しています。また、社会保険庁の職員や事業主などからの情報提供を求める方針も示し、年金受給者への個別訪問なども行っていくとしています。
全容解明はまだまだ先のことになりそうですが、心当たりがある場合(勤務していた事業所の経営状態が悪かった場合や倒産があった場合)には、まずは自分の年金記録を確認してみる必要があります。確認の方法としては、社会保険事務所で「被保険者記録照会回答票(資格画面)」を出してもらうか、インターネットの年金記録照会(社保庁ホームページにある「年金個人情報提供サービス」)を利用するかのどちらかが一般的です。
労働者派遣に関する新たな動き ~2009年問題、日雇い派遣~
◆「2009年問題」対応で厚生労働省が通達
厚生労働省は9月26日、物の製造業において派遣社員を3年間の期限を超えて働かせる脱法行為を規制するため、「いわゆる『2009年問題』への対応について」(職発第0926001号、平成20年9月26日)と題する行政通達を出しました。この通達では、派遣可能期間に係る基本的な考え方や対応方法、労働局における周知啓発、指導等の取扱いなどが示されています。
派遣契約の終了後にいったん契約社員などに変更してから、再度派遣社員として雇用すること(いわゆる「クーリング期間」の悪用)が以前から行われており、問題視されていました。このような「脱法行為」を禁止するというのが今回の通達の主な目的のようです。同通達では、今後、「指揮命令が必要な場合は『直接雇用』に、必要ない場合は『請負』に」と指導していますので、特に製造業を営む企業においては慎重な対応が必要になります。
◆フルキャストに再度の事業停止命令
東京労働局は、日雇い派遣大手である「フルキャスト」に対して、違法派遣(労働者派遣法で禁止されている建設業・警備業や港湾作業への労働者派遣)を行っていたことにより事業停止命令を受けていた期間(昨年8月10日から1~2カ月)中も派遣を続けていたなどとして、昨年8月に続く2度目の事業停止命令を出しました。今回は、同社の全支店で10月10日からから1カ月の処分ということです。
◆大手が日雇い派遣から完全撤退へ
上記処分(事業停止命令)の影響もあり、同社は、2009年9月末までに日雇い派遣から完全撤退することを表明しました。日雇い派遣が働く貧困層(ワーキングプア)の温床であるとの批判が高まっており、また、厚生労働省が日雇い派遣を原則禁止とするために労働者派遣法を改正する方針を示しているためと見られます。
このような動きにより、日雇い派遣を利用してきた企業には大きな影響がありそうです。日雇い派遣最大手だった「グッドウィル」がすでに7月末で廃業しており、フルキャストの撤退により、ついに大手日雇い派遣業者は消滅してしまいます。
これまで日雇い派遣に依存してきた中小企業(特に、運送業者や量販店など)などは、今後は労働力を直接確保することが必要になるため、新たに求人広告などの手間や経費が必要となり、経営を圧迫しかねない状況です。
広がりをみせる「在宅勤務制度」の導入状況
◆テレワーク(在宅勤務制度)利用者は3年で65%増
テレワークの利用者(ITを活用して、場所と時間を自由に使った柔軟な働き方を週8時間以上利用する人)の数は、2002年には408万人(雇用型:311万人、自営型:97万人)でしたが、2005年には674万人(雇用型:506万人、自営型:168万人)となり、3年で約65%増加しています(国土交通省・社団法人日本テレワーク協会調べ)。
政府は、「テレワーク推進に関する関係省庁連絡会議」を設置し、昨年5月には「テレワーク人口倍増アクションプラン」を発表するなど、力を入れ始めています。2010年までには2005年比でテレワーク人口比率を倍増させ、就業者人口に占める割合を2割程度にしたい考えです。
◆テレワーク活用のメリット
テレワーク活用のねらい・メリットとして、政府は以下のことを挙げています。
(1)「ワーク・ライフ・バランス」社会の実現
(2)次世代を担う子供を育てる環境の実現
(3)人口構造激変時代の企業活力・国際競争力の確保
(4)場所にとらわれない就労・起業による地域活性化
(5)交通代替によるCO2の削減
◆中央省庁や大手民間企業の取組み
特許庁は、2009年度から在宅勤務制度を導入する方針を明らかにしました。対象者は特許審査を担当する審査官などで、併せてフレックスタイム制の導入も検討するとしています。中央省庁では、すでに総務省などでも在宅勤務制度を採用しています。
民間企業でも大手企業を中心に、導入(または検討)されています。NECは、通信回線を使って在宅勤務を可能にするテレワークの全社的な導入について検討すると今春に発表しました。有能な人材が不足気味のIT業界において、仕事と育児・家事などのバランスが取れるように配慮して、将来的な人材確保につなげるのがねらいのようです。NTT東日本でも、在宅勤務制度の全社導入を検討しています。今年5月に在宅勤務のトライアルを開始し、約200名が応募したそうです。制度の詳細は、検証結果に基づいて決定していくようです。
◆「在宅勤務ガイドライン」を改訂
厚生労働省は今年7月下旬に、「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(平成16年3月発表)を改訂しました。在宅勤務の普及に伴い、より詳細な解釈が求められている状況に対応するものであり、「労働基準関係法令の適用及びその注意点」などが盛り込まれています。導入を検討している企業にとって注目すべきガイドラインです。
厚生労働省「サービス残業解消指針」の内容
◆なくならないサービス残業
サービス残業があったとして2006年度に労働基準監督署から是正指導を受け、支払額が合計100万円以上となった企業は1,679社に上り、対象労働者数は182,561人となっています。支払われた残業代は総額で227億円1,485万円(企業平均1,353万円、労働者平均12万円)です。
◆指針パンフレットをホームページに掲載
サービス残業を放置することは、内部告発等をきかっけに労働基準監督署の是正指導等を受け、不払賃金を支払わなければならないリスクを抱えていることになります。
厚生労働省は、「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」(2003年5月策定)について、よりわかりやすく解説したパンフレットのホームページへの掲載を10月から開始しました。同指針は、賃金不払い残業(サービス残業)は重大な労働基準法違反であるとの考えのもと、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置等に加え、各企業における労使が労働時間の管理の適正化と賃金不払残業の解消のために講ずべき事項を示」すことを目的としています。ここでは、同指針に記載されている内容を改めて見てみましょう。
◆指針が示すサービス残業解消のために取り組むべき事項
(1)「労働時間適正把握基準」の順守
使用者は、「労働時間適正把握基準」を遵守することが必要です。また、労働組合(労働者)も、労働者に対して同基準を周知することが重要であるとしています。
(2)意識・職場風土の改革
サービス残業の背景に、「サービス残業もやむを得ない」という労使双方の意識(職場風土)がある場合には、これをなくすための取組みを行うことが望まれるとしています。
(3)適正に労働時間の管理を行うためのシステムの整備
サービス残業の実態を把握したうえで、関係者が行うべき事項や手順等を具体的に示したマニュアルの作成等により、「労働時間適正把握基準」に従って労働時間を適正に把握するシステムの確立が重要だとしています。また、サービス残業の温床となっている業務体制や業務指示のあり方にまで踏み込んだ見直しも必要であり、「サービス残業是正」という観点を考慮した人事考課の実施等により、適正な労働時間管理を意識した人事労務管理が望まれています。
(4)労働時間を適正に把握するための責任体制の明確化とチェック体制の整備
事業場ごとに、労働時間管理についての責任者を明確にしておくことが必要であるとされています。また、労働時間管理とは別に、相談窓口を設置するなどしてサービス残業の実態を積極的に把握する体制の確立が重要であり、実態を把握した場合には、労働組合(労働者)としての必要な対応を行うことが望まれるとしています。