2005/01/01

平成17年1月号

保険料の節約法

年金改正で2004年10月より会社員の厚生年金保険料が年収の13.934%に上がりました。保険料率は毎年上がり続け、2017年には18.3%になります。
 日本経団連の試算では、保険料が15%になると資本金500万円以上1,000万円未満の中小企業の最終利益は全体で赤字になるとのことです。
このように、負担増ははっきりしているのに、年金の将来像は明確ではないのです。なんとかならないのか、防衛策に走る企業も出てきました。
 そのひとつが、確定拠出年金(日本版401K)の活用です。
 確定拠出年金の非課税限度額が1万円増えて、月4万6,000円になりました。掛金を増やして給与を減らせば、給与に比例して上がる厚生年金の保険料は抑えられます。
 ある会社では、月給から確定拠出年金の掛金にいくら回すかを自分で決められる制度にしたところ、若手社員のほとんどが上限いっぱいまで増額して、同社の担当者を驚かせました。
 ところで、従来の確定拠出金の限度額を前払い一時金として給与に上乗せして支払ってきた会社では、「前払い退職金は給与とみなす」という厚生労働省の通知によって、保険料節約の意味がなくなってしまいました。 
 このため、同社も、支出を抑えるために、前払い退職金分を確定拠出年金の掛金に切り替えたのです。
 また、事業協同組合を活用した保険料の節約策もあります。これは、システムエンジニアなどの技術者が共同で仕事を受注するための事業協同組合です。組合に派遣社員として働いていた技術者を移し、身分を会社員から個人事業主に変えることで、本来ならば派遣社員の厚生年金保険料の半分は雇い主である派遣会社の負担となるところが、国民年金に移ることになり、派遣会社は保険料を負担しなくてよいことになります。国民年金の方が、会社負担も個人負担も軽いのです。
企業や従業員が、覚悟を決めて負担を受け入れようとする年金制度になればいいのですが、当分この動きは止まりそうにありません。

生命保険の手数料


 私たちが普段意識しない手数料として、生命保険の付加保険料があります。
 生命保険料は、大きく分けて「純保険料」と「付加保険料」の2つがあります。
 純保険料は、万一の際の保障や満期の満期保険料に充てられるもので、純保険料は、予定死亡率等により厳密に計算されているものです。たとえば、不幸が起きて、それが契約の直後であっても、高額の保険金を遺族は受け取ることができます。貯蓄だと毎月積み立てても、当初受け取れるのは少額です。この点が保険と貯蓄との大きな違いです。
 一方、手数料である付加保険料は、保険会社の社員の給料や資料代・運営費などの経費に用いられます。もちろん、付加保険料の一部は保険会社の利益になります。
 では、この手数料である付加保険料は、実際どれくらいの額なのでしょうか?
 保険会社には、手数料を公表する義務はなく、むしろ、安い商品を開発して宣伝したくても、他社の保険料をパンフレットに掲載するなどの比較行為が法律で禁止されています。公表はしたくてもできないというのが実状なのです。
元外資系保険会社の社長で保険数理の専門家である野上憲一氏によると、手数料は保険料総額の50%から60%になるといいます。つまりこれは、自分の支払っている保険料の半分が、実は保険会社の運営費に消えているということです。
 逆に言えば、それだけコストをかけないと保険事業は成り立たないということなのかもしれません。
しかし、公的年金運営であれだけ社会保険庁および厚生労働省を批判した人たちが、保険料の半分しか純保険料として活用されていないという事実に無関心なのは不思議です。
 私たちは、保険料の使われ方にも注目するべきでしょう。