2014/12/01

12月の事務所便り


多くの企業に影響する「有期雇用特別措置法案」の概要

 

◆来年4月1日施行予定

1029日に、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」(有期雇用特別措置法案)が参議院本会議で可決されました。

この法案は、今年の通常国会に提出されたものの成立せず、臨時国会で継続審議となっていたものです。

来年4月1日に施行される予定となっていますが、施行に伴い企業の実務に大きな影響がありそうです。

 

◆法案の内容

法案の内容ですが、下記(1)および(2)の者について、労働契約法で定められている「無期転換申込権」発生までの期間(通算5年)に関する特例を設ける(=無期転換させない)というものです。

(1)5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く高度専門知識等を有する有期雇用労働者

(2)定年後に有期契約で継続雇用される高齢者

上記(1)の「高度専門職の有期契約労働者」については『一定の国家資格保有者』『年収1,075万円以上の技術者、システムエンジニア、デザイナー』等が想定されていますが、これらの者を雇用する企業の割合は全体から見るとあまり多くないかもしれません。

しかし、(2)の「定年後再雇用の有期契約労働者」を雇用している企業はかなり多いことと思います。

 

◆「計画書」の作成・提出が必要に

企業が、上記の労働契約法に基づく無期転換に関する特例の適用を受けるためには、「対象労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置についての計画」(計画書)を作成・提出して、厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。

計画書にどのような内容を記載するのか、提出すべきタイミングはいつなのか、計画書は毎年提出しなければならないのか等については、今後、厚生労働省令等で明らかになってくるものと思われます。

いずれにしても、実務上、新たな業務が発生することとなりますので、厚生労働省から発表される情報に注目しておく必要があります。




新卒者の初任給は何を考慮して決められているのか?

 

◆アンケートに515社が回答

経団連・東京経営者協会から「2014 3月卒 新規学卒者決定初任給調査」の結果が発表されました。

調査対象企業が経団連および東京経営者協会の会員企業(1,909 社のうち515社が回答)であるため、主に大手企業・中堅企業に関する結果となりますが、すべての企業にとって参考になる部分があると思います。

 

◆初任給の決定状況は?

初任給の決定状況は次の通りです。

・前年の初任給を据え置いた…56.5%(前年90.3%)

・前年の初任給から引き上げた…42.5%(前年9.1%)

・前年の初任給から引き下げた…1.0%(前年0.7%)

初任給を据え置いた企業は減少し、引き上げた企業が大幅に増加しています。これについては「春季労使交渉で賃金改善等を行ったことが反映された」と分析されています。

 

◆初任給決定で考慮した要因は?

(1)世間相場で決めた…29.2

(2)在籍者とのバランスや新卒者の職務価値で決めた…23.3

(3)賃金交渉の結果、その配分で決めた…12.9

(4)人材を確保する観点から決めた…12.1

(5)労組との初任給交渉で決めた…8.8

(6)企業業績を勘案して決めた…7.3

上記のうち、前年と比較して増加したのは(3)の「賃金交渉の結果、その配分で決めた」と(4)の「人材を確保する観点から決めた」でした。

 

◆人手不足解消が大きな課題

現在、人手不足解消が企業規模の大小を問わず重要な課題となっており、「賃金を引き上げてでも人材を確保したい」という考えの企業が増えているようです。

しかし、賃金を引き上げただけで人材を確保できる保障はありません。自社がいかに魅力的な企業であるか、やりがいのある仕事を提供できる企業であるかをアピールできることも必要なのではないでしょうか。




平成26年分の年末調整で注意したい改正ポイント

 

◆今年気をつけるべきポイントは?

今年の年末調整では、申請様式や税法そのものの大きな改正はありませんが、国民年金法の改正により、4月1日から保険料を2年分前納できるようになったことを受け、この前納制度を利用した場合の社会保険料控除の方法を押さえておく必要があります。

また、1020日から、自転車・マイカー通勤している人の通勤手当の非課税制度が改正され、4月1日以降に支給した通勤手当について精算が必要となりますので、注意が必要です。

 

◆2年前納した保険料の社会保険料控除

前納制度を利用した場合、納付した355,280円全額が控除対象となり、(1)納付した保険料全額を納めた年に控除する方法、(2)各年分の保険料に相当する額を各年に控除する方法のいずれかを選択して申告します。

(2)による場合、日本年金機構から送付される社会保険料控除証明書の他に「社会保険料(国民年金保険料)控除額内訳明細書」を作成し、併せて提出する必要があります。

この明細書は日本年金機構のホームページからダウンロードでき、年金事務所に申し出て入手することもできます。

また、この場合、平成28年3月分までの保険料を納付することとなり、3年にわたって分割して控除を受けることとなりますので注意が必要です。

 

◆通勤手当の非課税限度額の改正

1020日より自転車・マイカーを利用して通勤している人の通勤手当の非課税限度額が引き上げられ、4月1日以降に支給した分から適用されることとなったため、対象者の課税額を年末調整の際に精算する必要があります。

また、年の中途で退職した人については、すでに源泉徴収票を交付済みで、これらの人は確定申告によって精算することとなりますが、4月1日以降に支給した通勤手当がある場合、改正後の非課税限度額に基づいて「支払金額」を訂正し、再度源泉徴収票を作成のうえ摘要欄に「再交付」と表示して再交付する必要がありますので、注意が必要です。




パートタイマー用の労働条件通知書が変更されました

 

◆改正法で労働条件に関する説明を義務化

改正パートタイム労働法が来年4月1日から施行されます。

改正により、事業主は、パートタイマーの雇入れ時や契約更新時に労働条件(賃金の決定方法、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、正社員転換等の措置内容等)について説明する義務を負うこととなります。

パートタイマーを同時に複数雇い入れたりする場合には、個々に説明する方法ではなく対象労働者を集めて説明会を開催する等の方法によって説明することも認められますが、労働条件は文書等(電子メールやFAXでも可)によって交付しなければならず、これに違反した場合は10万円以下の過料に処せられます。

 

◆労働条件通知書の変更箇所は?

今般、厚生労働省が示すモデル労働条件通知書の様式が法改正に合わせて変更となり、同省のパンフレット「パートタイム労働法のあらまし」に掲載されています。

具体的には、新たに「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」を記載するスペースが設けられました。

この「相談窓口」は、改正法により、パートタイマーからの相談に対応するための体制整備が事業主の義務とされたため、パートタイマーを雇い入れているすべての事業主が対応にあたる担当者または担当部署を決定して、整備しておかなければなりません。

 

◆労務管理に関する疑問は早めに相談を

「平成26年版労働経済白書」によれば、2013年の非正規労働者の割合は36.7%で、10年前と比較して6%増え、人数で見ると約400万人増加しています。

非正規労働者の増加に伴い、正社員との労働条件の差異等について不公平感を感じるパートタイマーと事業主の間でトラブルとなるケースが増えており、パートタイム労働法が改正された大きな理由の1つはこの問題を解消するためです。

来年4月1日の施行を控え、パートタイマーの労務管理に関する疑問や不安がある場合は、早めに専門家に相談し、トラブルの予防に努める必要があると言えます。




各種調査結果に見る「人材不足」の実態と対応策

 

◆雇用・労働分野の切実な問題

現在、「人材不足」は雇用・労働をめぐる最も切実な問題となっています。マスコミでもこの問題が頻繁に取り上げられており、「人材不足により倒産する中小企業も増え始めている」との報道もありました。

特に、飲食サービス業や小売業、運送業等で状況が深刻であり、人材不足により社員の業務の負担が高まり、それがさらなる離職につながるといった悪循環も発生しています。

 

◆厳しい採用状況

実際、株式会社リクルートホールディングスの研究機関であるリクルートワークス研究所が行った「人手不足の影響と対策に関する調査」では、正社員やパート・アルバイトの採用を実施した企業のうち、3社に1社は必要な人数を確保できておらず、うち50%以上は事業に影響が出ているとの結果が出ています。

さらに、人数を確保できない状況を解消できる見通しについて、人材不足に陥っている企業の52.7%が「見通しがない」と回答しており、今後ますます人材不足の悪影響が出てくることが懸念されます。

 

◆対応策は?

こうした状況を受けて、各社で人材を確保するための施策が行われています。

多くの企業で実施されているのは、(1)採用対象の拡大(未経験者も採用対象とする、外国人を採用対象とする等)、(2)処遇の改善(賃金の引上げ、アルバイト・パートの正社員登用等)、(3)業務等の調整(業務の効率性の向上、外部人材の活用、アウトソーシング、受注調整、営業時間の調整等)です。

検討したいのは、主婦や高齢者の活用でしょう。

上記の調査によると、女性・高齢者を積極的に採用対象とする企業は約15%であり、その活用は進んでいないと考えられますが、株式会社リクルートジョブズの研究機関であるジョブズリサーチセンターが行った「主婦の就業に関する1万人調査」を見ると、M字カーブのボトムである「2049歳の既婚・子供あり女性」について、就業意向がない人は8.2%にとどまっており、この層の活用が人材不足の解消につながることが大いに期待されます。




知っておきたい!「保健師」の必要性と活用法

 

◆「病気の予防」に関わる専門家

「保健師」という仕事をご存じですか?

保健師とは、保健師国家試験に合格して得られる国家資格(免許)であり、地区活動や健康教育・保健指導などを通じて疾病の予防や健康増進など公衆衛生活動を行う地域看護の専門家です。

看護師の仕事が「病気の治療に携わること」であるのに対して、保健師の主な仕事は「病気を未然に防ぐこと」であるのが大きな特徴です。

 

◆需要が拡大している「産業保健師」

保健師は、大きく、地域の住民に健康アドバイスを行う「地域の保健師」と、企業に在籍して従業員の健康管理を行う「産業保健師」に分けられます。今、この「産業保健師」の需要が拡大しています。

産業保健師は、各種健康診断の企画実施を担うのはもちろん、従業員の健康上の悩みについての相談を受けるなど、産業医とも連携しながら従業員の健康管理を行う存在です。

社員の働き方のモニタリング、健康状態と労働量の均衡の企図、異動に際しての産業医勧告の支援、労務費や福利厚生費の適切な運用のための支援、健康状態のデータの集計・分析・報告など、その活動内容は多岐にわたります。

こうした活動を通じて労働者と企業の支援を行うのが、産業保健師の役割です。

 

◆産業保健師の活用事例

産業保健師は、上手に活用すれば企業の生産性向上・業績向上にもつながる存在です。

例えば、社内の健康管理部門が機能不全に陥っているような企業では、保健師に関与してもらうことで、産業医と連携を取りながら業務改善を行ってもらうことが期待できます。

従業員の働かせ方について、健康診断だけでなく、アフターケアを行うことも可能となります。

これらを通じて従業員が健康で働き続けることのできる環境が整備され、いきいきと、モチベーションを持って働くことができるようになることで、企業はますます活性化します。

保健師と企業をマッチングするサービスを提供する会社もあります。このようなサービスも利用しながら、一度、保健師の活用を検討してみてもよいかもしれません。




企業の暴力団排除の取組みと契約解除による訴訟リスク

 

◆「反社会勢力」排除意識の高まり

暴力団排除を進める警察関連団体に、企業からの照会が急増しているそうです。

契約先が暴力団関係者とつながりがないかなどをチェックするためで、仮に暴力団関係者との取引が発覚すればトップの責任問題に発展するおそれもあることから、企業は必死のようです。

照会先の1つである警視庁の関連団体である「警視庁管内特殊暴力防止対策連合会」(東京・千代田区)は、約2,500社が加盟。組員や密接交際者、関連企業など約8万件のリストを保有し、「この人物と取引しても大丈夫か」といった会員企業からの問合せに回答しています。

昨年10月から今年8月までの照会件数は8,087件と前年同期と比べ49%増となっており、業種も金融業だけでなく、全業種で反暴力団排除の意識が強まっているようです。

同じく、警視庁の外郭団体である「暴力団追放運動促進都民センター」(東京・千代田区)でも照会が急増しているそうです。

 

◆情報提供には限界も!

警察が提供するのは原則、組員や脱退後5年以内の元組員の情報だけです。

上記の照会先では、密接交際者、関連企業など、独自に収集した情報も提供しているそうです。

ただ、企業の暴力団排除が厳しくなるにつれ、排除逃れの「偽装離脱」など、形だけ脱退して活動し続ける者も出てきているそうで、情報提供には限界があるというのが現状のようです。

 

◆契約解除で訴訟リスクも!?

大企業の多くは、取引先との契約には「暴力団排除条項」を入れるなどの対策をとっています。しかし、契約の相手方から、不当な契約解除だとして損害賠償請求訴訟を起こされると、暴力団排除条項違反を立証する責任は企業側にあります。

警察からの情報で暴力団関係者であることが明白である場合などは問題ありませんが、密接交際者、関連企業などの情報は反論する際の証明力は弱いとの指摘もあり、法的なリスクを伴うケースも出てきます。

このため、そのような際には、実際には代金の未払いや納期遅れなど他のことを理由にしたり、契約期間の満了時に取引を中止したりすることも選択肢に入れ、対応することになるようです。




放置していると危険!?

“持ち帰り残業”で労災認定! 企業も対策が必要に!

 

◆英会話学校講師の女性が自殺

2011年に英会話学校講師の女性が自殺したのは、自宅で長時間労働を行った「持ち帰り残業」が原因であったとして、金沢労働基準監督署が労災認定しました。

持ち帰り残業については自宅での作業実態の把握が困難なため、労災認定されたのは異例のことのようです。

ただ、本件では、メールや関係者の話から、女性は英単語を説明するイラストを描いた「単語カード」を業務命令により2,000枚以上自宅で作成しており、監督署は、実際に単語カードを作成して時間を計測し、自宅で月80時間程度の残業をしていたと結論付けました。

これにより、会社での残業時間と合わせると恒常的に月100時間程度の時間外労働があり、さらに上司からの叱咤による心理的負担によりうつ病を発症したとして、労災を認定したというものです。

 

◆持ち帰り残業は労働時間に含まれる?

原則、会社が承認していない持ち帰り残業は労働時間には含まれません。

労働者が自己の判断で仕事を持ち帰って自宅で残業している場合、会社はその実態を把握できないため、持ち帰り残業は基本的に会社の指揮命令下にないものとして労働時間であるとは判断しないのです。

ただ、持ち帰り残業が上司の明確な指示に基づいて行われている場合は、それに要した時間は、当然に労働時間に含まれることになります。

また、通常の労働時間では処理できないような業務量を指示していたり、持ち帰り残業を黙認したりしていた場合などは、事実上の指揮命令があったとして労働時間と判断される可能性があることに留意する必要があります。

 

◆企業には様々なリスクが!

持ち帰り残業は、労災認定される可能性や残業代を請求される可能性はもちろんですが、情報漏えいの危険性もあります。

企業としては、「持ち帰り残業を原則禁止する」、「どうしても必要な場合は本人に事前申請させる」、「情報漏えい対策を講じる」などのルール作りが必要となるでしょう。




「女性の活用・活躍」に取り組む企業の現状

 

◆「女性活躍推進法案」の行方は?

政府は、「女性活躍推進法案(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案)」の今臨時国会での成立を目指していましたが、衆議院解散の公算が高まってきたことにより、成立は難しい状況となっています(11月中旬現在)。

本法案は、従業員数300名超の企業に対しての「女性登用に向けた数値目標の設定・公表の義務化」を柱とし、安倍政権が掲げる女性の活躍を推進するものとして注目されていました。

 

◆女性活用に取り組む企業が急増

エン・ジャパン株式会社は、「女性の活用・採用」についての調査を行っています。

同社が200820112013年に企業の人事担当者に対し「貴社では女性活用に取り組んでいますか?」という質問をしたところ、2008年に「取り組んでいる」と答えた企業は34%、2011年でも37%と微増に留まりましたが、2013年には45%と急激に増えたそうです。

同社は、「201212月に発足した安倍政権が掲げる『女性活躍』が企業の取組みに影響を与えている」と分析しています。

 

◆女性活用に取り組む企業は何を行っている?

2013年に「女性活用に取り組んでいる」と答えた企業に具体的な取組みについて聞いたところ、「出産・育児をサポートする福利厚生の充実」という回答が約7割で最多、次いで「時短勤務・テレワークなど勤務形態の多様化」が約6割という結果になり、出産後の働き方を見据えた制度設計に取り組む企業も多いようです。

 

◆働き続けたくても「転勤」は許容できない

女性が長く活躍できる職場づくりの参考にするために、働く女性に「長く仕事を続けるために、許容できないことは何ですか?」という質問をしたところ、「転勤」と答えた方が68%に上り、断トツの1位だったそうです。

「環境の大きな変化はストレスになる」、「家族がいるので、自分だけの都合で転勤はできない」などの声が多くありました。

転勤は引越しを伴い、ライフスタイルも大きく変化してしまうため、いくら長く働き続けるためであっても許容できないと考えている方が多いようです。


「高年齢者雇用」の実態はどうなっている?

 

◆9割以上が高年齢者雇用確保措置を実施済

厚生労働省が、「高年齢者雇用確保措置」の実施状況などをまとめた、平成26 年「高年齢者の雇用状況」(6月1日時点)の集計結果を発表しました。

高年齢者雇用確保措置を実施済の企業の割合は98.1%(143,179 社)で、雇用確保措置が未実施である企業の割合(1.9%)を大きく上回りました。

企業規模別に見ると、大企業では99.5%(15,015 社)、中小企業では98.0%(128,164 社)となりました。

 

◆約8割が「継続雇用制度」を導入

雇用確保措置の内訳を見てみると、雇用確保措置実施済企業のうち、「定年制の廃止」により雇用確保措置を講じている企業が2.7%(3,850 社)、「定年の引上げ」により雇用確保措置を講じている企業が15.6%(22,317 社)だったのに対し、「継続雇用制度の導入」により雇用確保措置を講じている企業は81.7%(117,012 社)と、高い比率を占めました。

 

◆希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合

希望者全員が65 歳以上まで働ける企業の割合は71.0%(103,586 社)となり、中小企業では73.2%(95,755 社)、大企業では51.9%(7,831 社)でした。

70 歳以上まで働ける企業の割合は19.0%(27,740 社)で、中小企業では19.8%(25,960 社)、大企業では11.8%(1,780 社)となり、中小企業のほうが取組みが進んでいることがわかりました。

 

◆雇用確保措置の定着に向けた今後の取組み

上記の結果を受け、同省では、雇用確保措置の定着に向けた取組みとして、雇用確保措置が未実施である企業(31 人以上規模企業)が2,723 社あることから、都道府県労働局、ハローワークによる個別指導を強力に実施し、早期解消を図るとしています。

また、生涯現役社会の実現に向けた取組みとして、少子・高齢化の進行、将来の労働力人口の低下、団塊世代の65 歳への到達等を踏まえ、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向け、65 歳までの雇用確保を基盤としつつ「70 歳まで働ける企業」の普及・啓発等に取り組むとしています。

2014/11/01

11月の事務所便り


社長の5人に1人が70代以上 事業承継はどうする?

 

経営者の平均年齢は60歳超

近年、特に中小零細企業において、経営者の高齢化とそれに伴う事業承継が大きな問題となっていますが、株式会社東京商工リサーチ実施した「2014 全国社長の年齢調査」の結果によると、全国社長の平均年齢は60.6歳と高齢化が進んでおり、社長の約5人に1人が70代以上となっているそうです。

この調査は、同社が保有する企業データベース265万社(20149月時点)から、代表者の年齢データを抽出して分析したものです。

 

◆社長の年齢が業績に影響?

社長の年齢分布ですが、70代以上:22.5%60代以上:35.0%に対し、30代以下:4.0%となっており、「若い経営者の創業」や「社長交代」が停滞している状況が明らかになりました。

社長の年齢別の企業業績では、黒字企業は30代以下の構成比が80.4%で最も高く、40代:80.0%、60代:79.4%、50代:79.0%と続いています。

そして、社長の年齢が70代以上の企業では、赤字企業の構成比が22.0%と最も高くなっています。

 

◆社長高齢化の弊害とは?

また、売上と利益を見ると、「増収増益」の比率が最も高かったのは社長が30代以下の企業(38.2%)であり、「減収減益」の比率は70代以上(26.8%)が最も高く、次いで60代(26.1%)となっています。

調査を行った東京商工リサーチでは、「社長が高齢化するほど安定や成長を支えるビジネスモデル構築が遅れ、従来の営業モデルからの脱皮が難しく、業績悪化につながっている状況がうかがえる」と分析しています。

「社長が若ければ業績が良い」とは一概には言えませんが、社長年齢が若いほど黒字企業の割合が高く、社長が高齢になるほど厳しい業績の企業が多い傾向が見られます。

 

◆「事業承継」が大きな課題

2014年版の「中小企業白書」では、事業の将来を悲観して誰にも相談せずに廃業を考えるケースがみられ、経営者の高齢化が進む一方、「後継者難」の理由からスムーズな事業承継が行われていない現状が指摘されています。

特にオーナー企業では、事業承継を希望しても子供等が承継せず、結果として社長が高齢化し円滑な事業承継が難しくなっている点が大きな課題となっています。




厚労省が「過重労働解消キャンペーン」を実施

 

◆今年11月に実施

厚生労働省では、930日に設置した「長時間労働削減推進本部」の決定を踏まえ、11月に「過重労働解消キャンペーン」を実施すると発表しました。

近年、長時間労働に伴う残業代の未払いや従業員の健康問題が労使トラブルの主要な原因の1つとなっていますが、キャンペーン実施による長時間労働の削減と労使トラブルの減少が期待されます。

 

◆キャンペーンの内容

6月に閣議決定された「日本再興戦略改訂2014」に「働き過ぎ防止の取組強化」が盛り込まれ、同月に「過労死等防止対策推進法」が成立するなど、長時間労働対策の強化が重要課題となっています。

そこで、同キャンペーンでは、主に以下の取組みが予定されています。

(1)労使の主体的な取組みの促進

キャンペーンの実施に先立ち、使用者団体や労働組合に対し、厚生労働大臣、副大臣、大臣政務官による協力要請を行う。

(2)重点監督の実施

若者の「使い捨て」が疑われる企業や長時間の過重な労働による過労死などに関して労災請求が行われた事業場などへ監督指導を行う。

(3)電話相談の実施

111日に「過重労働解消相談ダイヤル」(無料)を全国一斉に実施し、都道府県労働局の担当官が相談に対応する。

(4)企業における自主的な過重労働防止対策の推進

企業の労務担当責任者などを対象に、全国8カ所(北海道、宮城、東京、愛知、大阪、広島、香川、福岡)で計10回、「過重労働解消のためのセミナー」(委託事業)を実施する。

 

◆リーフレットのダウンロード

なお、厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000060042.html)では、キャンペーンに関連したリーフレットをダウンロードすることができます。




健康保険の手当金不正請求防止のため、算定方法見直しへ

 

◆見直しの対象となる給付は?

現在、厚生労働省で健康保険の海外療養費・傷病手当金・出産手当金の見直しについて議論されています。

問題となっているのは「不正請求」です。

昨年531日施行の改正健康保険法で、協会けんぽに事業主への立入調査権が認められましたが、不正請求が疑われるケースが依然として多いことから、防止策を講じるため、来年の通常国会に改正案が提出される見通しです。

 

◆調査結果に見る傷病手当金受給者の状況

今年77日付で協会けんぽが公表した調査結果「全国健康保険協会(協会けんぽ)傷病手手金受給者の状況について」によれば、2013年は「精神および行動の障害」が受給原因の25.7%を占め、1998年と比較して5倍以上増加しています。

支給回数では「1回」が32%で最も多い一方、「11回以上」が15%で2番目に多くなっています。11回以上申請する人の傷病別構成割合を見ると、40.4%を「精神および行動の障害」が占めています。

なお、平均支給期間も「精神および行動の障害」が「220日」と最も長くなっています。

近年、精神疾患により休職する労働者の増加が懸念されていますが、医療保険財政においても、保険料負担増につながりかねない問題となっています。

 

◆不正請求の手口と見直しの内容

傷病手当金・出産手当金の不正請求で多いのは、報酬を水増しして申請するケースや、雇用実態のない者からの請求です。

そのため、報酬の水増しに対しては、休職直前の月の報酬を算定の基礎とする現行の方法から、直近1年分を見る方法へと変更する案が出ています。

また、雇用実態のない者からの請求に対しては、被保険者期間1年未満の者の算定の基礎を見直す案が出ています。

海外療養費については、渡航事実がないにもかかわらず請求するケースが見受けられ、対策として、支給申請時にパスポートの写し等を添付させる案が出ています。




従業員に「災害見舞金」を支給する際のポイント

 

◆「災害見舞金」に関する調査結果

近年、自然災害により各地で大きな被害が出ていることから、従業員への慶弔見舞金の支給等を検討する企業もあるでしょう。

慶弔見舞金の支給事由は結婚や出産、本人や家族の死亡等、様々ですが、ここでは「災害見舞金」について見ていきます。

労務行政研究所が行った東日本大震災直前の調査結果によれば、8割程度の企業が自然災害で住居や家財が被災した場合に災害見舞金を支給しているそうです。

また、平均支給額は、被災の程度に応じて「全損失」で15226円、「半損失」で87,848円、「一部損失」で45,521円、「床上浸水」で45,521円となっています。

 

◆災害見舞金支給の流れ

自然災害による被害については、国が定める基準により全壊・半壊・床上浸水・床下浸水等の被害の判定が行われ、市町村はこの基準に基づき「罹災証明書」を発行します。

そのため、民間企業でもこの基準に応じて定めることが一般的で、支給に際して罹災証明書の提出を求め、被災認定を行う方法がとられます。

なお、被害が甚大で従業員本人や家族が申請を行うことが困難な場合は、本人の同意を得て、企業が市町村に被災認定の照会を行うこともあるようです。

また、場合によっては速やかに支給することを優先し、申請自体は事後申請とするなど、柔軟な運用もなされているようです。

 

◆関連規定はどのように設ける?

一般的には、就業規則の慶弔見舞金に関する規定等に1類型として設けます。

上記の通り市町村の発行する罹災証明書等に基づいて被災認定が行われることが一般的であるため、申請の際にこの提出を求める旨も規定しておくべきでしょう。

なお、所得税法上、損害の程度に応じて一定の基準をもって見舞金の支給額を定められた「相当の見舞金」に該当すると判断されれば、給与として源泉徴収されることもありませんので、上記の調査結果等を参考に、明確に支給金額を規定しておくことが望ましいと言えます。




知っていますか?「夜勤・交代勤務」のリスクと軽減策

 

◆4人に1人が従事

夜勤・交代勤務を行う職種は多岐にわたるものであり、現代社会の生活の基盤を支えるものともなっています。

現在、日本では、労働者の25%以上が夜勤や交代勤務での労働に従事しています。ちょっとびっくりする数字ではないでしょうか。

しかし、これだけ多くの人が夜勤や交代勤務を行っているにもかかわらず、夜勤・交代勤務に伴うリスクはあまり知られておらず、また、リスクを軽減するための教育・研修等の実施にもあまり注意を払われていないのが現状です。

 

◆夜勤・交代勤務に伴うリスク

夜勤・交代勤務でまず注意したいのが「健康」に関する問題です。

多くの場合、“変な”時間に眠ることから、“良質な睡眠”がとれないことが多く、睡眠の支障が様々な健康問題につながります。

心筋梗塞や脳卒中、糖尿病になるリスクが高まることが指摘されているほか、近年では、夜間勤務に最低6カ月間従事した男性とがん発症の関連について、前立腺がんで2.77倍、非ホジキンリンパ腫で2.31倍、すい臓がんで2.27倍など、がんリスクが高まるとする研究結果も発表されています。

また、「仕事の安全」についての調査では、日勤で起こる事故の確率に対して、夕勤ではそれが20%増加し、夜勤では30%増加するとされています。

さらに、家族と生活時間がずれるためにコミュニケーション不足の問題が発生したり、友人や地域との交流に参加する機会も減りがちになったりすることも指摘されています。

 

◆今後考えたい研修

多くの企業では、労働者がきちんと仕事をこなせるよう、多様な研修を行っています。

安全衛生に関する労働者の関心も高まっている昨今、今後は、夜勤や交代勤務をする人については、「睡眠の質の高め方」や「リスクを低減する方法」についての研修を実施することも、業務を行ううえで必要な知識を提供するための方策として求められるようになってくるかもしれません。




ノーベル物理学賞で関心増!

改めて確認しておきたい「職務発明」

 

◆職務発明の対価に改めてスポットが

3人の日本人が受賞したことで話題になった、本年のノーベル物理学賞。

この話題に関連して、マスコミ報道等では、受賞者の1人である中村修二氏の「青色発光ダイオード事件」を引き合いに、「職務発明」と「その対価(職務発明を行った従業員等に支払われるべき報酬)」に改めてスポットが当てられています。

 

◆「職務発明」と「その対価」とは?

職務発明とは、会社の従業員等が職務上行った発明のことであり、発明は従業員等に帰属します。

ただし、会社は、職務発明を発明者である従業員等から承継することをあらかじめ社内規程等で定めておき、発明の価値に見合った「相当の対価」を支払うことにより、特許を取得する権利を承継することができます。

この「相当の対価」をめぐっては、現在、社内規程が不合理と認められる場合にのみ、裁判所が対価を算出することとされています。会社にとっては、相当と思われる対価を支払っていても従業員等から訴訟を提起されるリスクがあるということです。

このようなリスクを減らすために、特許庁では、特許の権利を会社帰属とする改正法案を来年の通常国会に提出する方針を固めました。なお、その代わりに、適正な報酬の支払いが義務付けられることとなる見込みです。

 

◆中小企業こそ他人事ではない

特許・発明というと、大企業の話…と受け止める向きもありますが、特許出願は中小企業こそ、時として生命線となることもあり得るものです。

同じ業界の大手企業とまともに勝負をしては太刀打ちできなくても、ニッチな部分で多数の特許を取得しており、互角に戦える力を持っている中小企業はたくさんあります。

中小企業こそ、手抜かりなく、早め早めの手続きをすることが求められます。なお、特許庁では、中小企業の特許出願手続をサポートする制度も用意しています。

特許を取るべき職務発明がなされた場合に、従業員との間でその対価についてもめることのないよう、この機会に改めて「職務発明」について確認しておきましょう。




「内定辞退」とならないために必要な内定者へのフォロー

 

◆内定を出して終わりではない

人手不足、採用活動の早期化が進んでいる中で必要となってくるのが「内定者フォロー」です。採用内定を出したらそれで終わりではありません。

内定から入社までの期間は、学生にとっては気持ちが不安定な状態であり、内定を複数の会社から得ている場合、会社を絞り込んでいく期間となります。

内定辞退とならないために、企業はこの期間に何をすればいいのでしょうか。

 

◆内定者の不安感を払拭する

学生に内定を出した後、入社直前までそのまま放っておくという企業は意外に多いようです。それでは内定者は「本当に内定したのか?」「期待されていないのでは?」など、不安に駆られ、他企業への就職活動を再開してしまうということになりかねません。

内定者の不安感を払しょくし、適切にフォローしていく必要があります。

 

◆イメージギャップの穴埋め

新卒者の約3割が、入社後3年以内に辞めてしまうと言われています。思い描いていたイメージと現実とのギャップが大きいということも理由の1つとなっているようです。

入社後のミスマッチをいかに少なくするか、入社後スムーズに順応できるよう検討し、適切な対応を行っていくことが大切です。

 

◆具体的な対策は?

対策として、以下のようなものが考えられます。自社の規模や風土、予算などに合ったものを取り入れ、実践してみてはいかがでしょうか?

職場や工場の見学会、職場での事前実習・研修、内定者同士の交流・グループワーク、社内行事への招待、社内報の送付、経営者・役員との懇談会、通信教育やWEBを使った入社前研修、レポートの提出、資格取得支援、近況報告の義務付け 等

最近では、採用理由について文書で説明する企業も増えているそうです。「なぜ、あなたを採用したのか」という個々へのフォローが重要となってきているようです。




バブル世代のキャリア研修がこれからの企業経営のカギ!?

 

◆バブル世代の活性化!

1990年前後の好況期に社会人となったバブル世代(現在の40代~50代)の活性化をこれからの経営課題と捉える企業が増えているようです。

その理由は、次のようなことにあるようです。

・大量採用しているので管理職になれない社員が多数発生する

・昇給が頭打ちとなっている

・これらにより、社員のモチベーション維持が難しい

 

◆キャリア研修でモチベーションアップ

バブル世代の今後は決して甘くないと言える中で、「早めに社員の意識を変えさせないと今後の企業経営に大きな負担となりかねない」との懸念が経営者にはあるようです。

高年齢者雇用安定法により、60歳以降の継続雇用が企業に義務付けられているということもあり、60歳以降もいい働きをしてもらうために、バブル世代を対象とした「キャリアプラン」「キャリアデザイン」研修に積極的に取り組む企業もあるそうです。

 

◆研修の特徴・内容は?

研修の特徴は、「40代以降の者を対象に開催」、「教えるというよりも受講者自身の気付きを促す内容」、「セカンドライフ設計に重点を置いたものから仕事に関する内容への拡充」、「事前に直属上司と相談したうえで50歳以降のキャリアプランを立てる」といったもののようです。

また、「環境の変化を受け入れ今後の自分の働く目的やすべきことを主体的に考えるようになること」、「自分自身の経験・スキル・ノウハウを肯定的に再評価しそれらを後進に伝えていくこと」、「就職後のキャリアを振り返り残りの会社員人生で成し遂げたい新たな目標を設定すること」を主な内容とし、スキル・ノウハウを身に付ける研修というよりも、働く意義や喜びを再認識するというような内容が多いようです。

ただ、それ以前に、社員自身が会社で長く気持ち良く働くためには、「会社が求めている仕事は何かを考える」、「過去の成功を鼻にかけない」、「出世や昇給をもとめる意識を捨てる」などを心がけることが必要となるようです。




「イクメン企業アワード」選出企業の特徴的な取組み

 

2014年の受賞企業が決定

厚生労働省は、男性の仕事と育児の両立を応援する「イクメンプロジェクト」の一環として、模範となる企業や個人を表彰する「イクメン企業アワード2014」と、今回初めてとなる「イクボスアワード2014」の受賞企業などを決定しました。

「イクメン企業アワード」は、男性労働者の育児参加を積極的に促進しつつ、業務改善を図る企業を表彰するもので、2回目となる今回は、グランプリにアース・クリエイト有限会社、特別奨励賞に6社を選定しました。

 

◆グランプリ企業の取組み

アース・クリエイト有限会社がグランプリに輝いた理由には、従業員や家族の気持ちを十分に汲み取り、働きやすい環境を整備し、持続性の高い会社運営を目指す経営姿勢や、小規模事業所でかつ男性従業員が多い建設業でありながら、これまでに延べ8名の男性従業員が育児休業を取得した実績が挙げられています。

特徴的な取組みとしては、次のものがありました。

・毎月、営業本部長が個人目標を基に個人面談を行い、業務管理をしながら、同時に家族状況等も把握し、必要に応じた休暇の取得等を促進しているほか、営業本部長から従業員宛文書による休暇の周知も随時実施。

・配偶者出産時の特別休暇制度(2週間)や始業時刻の繰上げ・繰下げ制度等、制度の充実。

・会社全体で休業者をフォローしあう意識が醸成されたことから作業効率が向上し、時間外労働が大幅に減少(平成19 年度:年平均300 時間→平成25年度:年平均換算110 時間)するとともに、年休取得率は大幅に伸長(平成19年度:20%→平成25年度:85%)

 

◆特別奨励賞に輝いた企業の取組み

特別奨励賞に輝いた6社の中で、特徴的な取組みとしては次のようなものがありました。

・男性の育児休業取得キャンペーンによる、全社の育児休業取得対象者へのアピール(上司を経由した対象者への周知)等により、男性の育児休業取得者が大幅に増加(5年間で34人)。

・業務効率化の取組みと併せて「時間」に関する意識改革を実行。全職員に対し、毎日遅くとも20時までの退館を推進するとともに、休暇等の取得も推進し、取得率が大幅に上昇(4年で30人以上、最長取得日数77日)。

・デスク上に退勤予定時間を表示する札を設置することにより、早く帰りやすい雰囲気を醸成するとともに、勤務時間の短縮を支店の業績評価へ反映。



「マイナンバー制度」に関する企業の対応状況は?

 

◆約7割の企業がまだ準備を始めていない!

株式会社アイ・キューが運営する人事ポータルサイト「日本の人事部」では、全国のビジネスパーソンに対して「マイナンバー制度」に関するアンケート調査を実施しました。

「マイナンバー制度への対応状況」について聞いたところ、「まだ準備を始めていない」という回答(69.6%)が圧倒的に多く、「自社内での対応を検討している」(14.4%)、「すでに準備を始めている」(5.6%)、「アウトソーシングでの対応を検討している」(2.4%)など、何らかの動きを見せている企業が非常に少ないことがわかりました。

中には「特に準備をする予定はない」(8.0%)と回答する企業もあったようです。

 

◆マイナンバー制度とは?

「マイナンバー制度」は、日本国民と日本に居住する外国人1人ひとりに番号を割り振り、所得や納税実績、社会保障に関する個人情報を一括管理する制度で、20161月から利用がスタートします。

これまで国や市町村などがバラバラに管理してきた個人情報を連携させ、相互利用を可能にすることで、国民の利便性を高めると同時に行政の透明化・効率化を図ることが同制度の目的です。

民間企業でも、社会保障・税務関連の諸手続きにマイナンバーを利用することになりますが、システム変更および厳格な情報管理体制の構築が必須となります。

 

◆「番号収集」と「情報漏えい」を懸念

アンケートで「マイナンバー制度に対応するうえでの課題」について聞いたところ、「従業員からのマイナンバーの収集」(28.0%)が最も多く、「個人情報の管理体制の強化」(26.8)が続きました。

情報管理の煩雑さと情報漏えいのリスクを懸念する企業が多いようで、「漏えいした場合の影響は従来の人事・給与データ以上のものになる」、「基幹系システムに与える影響は大きくコストもかかりそう」などの声が聞かれました。

また、「マイナンバー制度による影響・効果」について聞いても、「情報の一元管理による利便性の向上」(8.0%)、「各種事務処理の効率化、省力化」(5.3%)など、その効果を期待する声もあったようですが、「情報漏えいのリスクの発生」(38.7%)との回答が最も多く、不安の方が大きいことがわかりました。

制度の内容についてはもちろんのこと、導入による効果やメリットを企業側でもしっかりと認識し、20161月のスタートに向けて準備を進めていく必要がありそうです。