2010/10/04

10月の事務所便り

 女性の結婚・出産後の仕事に対する考え方

◆3,000名以上を対象としたインターネット調査
株式会社ユーキャンと株式会社アイシェアは、「女性の結婚・出産後の仕事に関する意識調査」(男性2,217名、女性1,243名が対象)をインターネット上で実施し、先日、その結果が発表されました。

◆女性と男性の考え方には大きなギャップ
結婚・出産後も働き続けたいと考えている女性は全体の46.1%との結果となりました。その理由としては、「結婚後も家庭だけでなく社会との関わりを持ち続けたいから」(25.2%)、「仕事が好きでずっと続けていきたいから」(21.0%)などが多く、経済的な理由である「夫の収入だけでは経済的に厳しいから」を挙げた人は4.6%とわずかでした。
男性では、結婚・出産後も妻に働いてほしいと考えている人が63.0%おり、「自分の収入だけでは経済的に厳しいから」(41.9%)との理由がトップで、女性と男性の考え方には大きなギャップがあることがわかりました。

◆再就職には資格取得が必要?
未婚の女性で、もし夫から「専業主婦になってほしい」と言われても結婚・出産後も働きたいと考えている人のうち、65.0%の人が「資格取得などの準備が必要」と考えていました。そして、そのうち73.7%の人がすでに資格取得に向けた学習を始めているとの結果が明らかになっています。
そして、結婚・出産後も働きたいと考えている女性の興味・あこがれのある資格のうち、上位6つは以下の通りでした。
(1)簿記(28.0%)
(2)行政書士(20. 8%)
(3)社会保険労務士(18.4%)
(3)医療事務(18.4%)
(3)マイクロソフト認定資格(18.4%)
(6)カラーコーディネーター(16.8%)


厳しさが続く就職活動は「苦」?「楽」?

◆就職活動を漢字1文字で表すと?
株式会社毎日コミュニケーションズでは、卒業予定の学生を対象とした「マイコミ学生就職モニター調査」の一環として行っている「あなたの就職活動を漢字1文字で表すと?」の2010年調査の結果を発表しました。この調査は2000年(2001年卒業予定者対象)から毎年実施されており、今年で11回目となっています。

◆「苦」が2年連続で1位
上記の質問について、1位から10位までの結果は以下の通りとなっています。
・1位「苦」(前年1位)
・2位「楽」(前年3位)
・3位「迷」(前年2位)
・4位「進」(前年ランク外)
・4位「動」(前年6位)
・6位「耐」(前年8位)
・7位「難」(前年4位)
・8位「縁」(前年5位)
・9位「疲」(前年9位)
・10位「知」(前年ランク外)

◆結果から何が見える?
厳しい雇用状況の影響を大きく受け、「苦」が2年連続で1位となりましたが、「楽」が前年の3位から2位に浮上しました。これについては、就職活動が「楽(らく)だった」ということではなく、幅広い就職活動を通して多くの企業や人に出会えたことが「楽しかった」と回答している学生が目立ったそうです。
なお、過去に一度も10位以内に入っていなかった「進」が4位に入り、学生の前向きで積極的な姿勢も見受けられます。

◆来年の採用状況は?
厚生労働省の「労働経済動向調査」では、2011年新規学卒者の採用予定者数の前年との増減比較について、「増加」とする事業所の割合が、高校卒13%、大学卒(文科系)13%、大学卒(理科系)14%と、いずれも前年を上回ったとの結果が出ています。
厳しい雇用環境であることには変わりありませんが、学生たちにとってはやや明るい兆しが見えつつあるようです。


今後のメンタルヘルス対策の方向性が明らかに

◆政府の検討会が「報告書」を発表
政府の「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」では、今後のメンタルヘルス対策に関する「報告書」を取りまとめ、発表しました。同検討会は、厚生労働省の「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」が今年5月にまとめた報告の中で「職場におけるメンタルヘルス対策」が重点の1つとされたことを受けて設けられたものです。
今回発表された「報告書」の内容が、今後の国によるメンタルヘルス対策、ひいては企業のメンタルヘルス対策にどのような影響を与えるのか、非常に注目されます。

◆検討会「報告書」のポイント
検討会「報告書」が示した内容のポイントは、次の通りです。
(1)労働者のストレスチェックの実施
一般定期健康診断の際に、「ストレスに関連する労働者の症状・不調」について医師が確認すること。
(2)産業医等との面接の実施、労働者のプライバシー保護
面接が必要とされた労働者については産業医等と面接を行う。その際、ストレスに関連する症状や不調の状況、面接が必要かについて事業者には知らせないこと。
(3)労働者の同意を得たうえでの産業医等の意見陳述
産業医等は、労働者との面接の結果、必要と判断した場合には、労働者の同意を得て、事業者に時間外労働の制限や作業の転換などについて意見を述べること。
(4)産業医等の意見の明示、了解を得るための話合いの実施
事業者は、労働時間の短縮等を行う場合には、産業医等の意見を労働者に明示し、了解を得るための話合いを行うこと。

◆今後のメンタルヘルス対策に活かされるか
メンタルヘルス不調者対策が企業の労務管理上の重要な課題となっていますが、これまでの対策が期待した効果をあげているとは言い難いのが現状です。
厚生労働省では、今後、制度改正に向けた議論を始める予定です。今回の「報告書」の内容が、今後のメンタルヘルス対策に活かされることが大いに期待されます。


企業における「ツイッター」活用の実態

◆活用の状況が明らかに
NTTレゾナント株式会社と株式会社ループス・コミュニケーションズでは、「企業におけるツイッター活用状況」に関する調査(通常業務でツイッターを運用する立場にある企業の担当者が対象。有効回答者数315名)の結果を発表しました。
近頃大きな話題となっている「ツイッター」について、企業による活用の実態が明らかになりました。

◆企業が「ツイッター」を始めた理由は?
ツイッターにおける企業アカウントの運用期間は、「6カ月未満」が64.2%、「1年以上」が12.1%でした。2010年に入ってから運用をスタートした企業が6割超となっており、多くの企業がまだ導入の初期段階にあります。
運用開始の理由としては、「顧客接点を増やしたかったから」(48.9%)、「無料で始められるから」(46.3%)、「担当製品やサービスのブランディングに効果があると考えたため」(41.0%)などとなっています。

◆「ツイッター」でどんな施策を行っているか?
企業アカウントで行っている施策としては、「担当者のキャラクターを工夫して好感を持ってもらうように努めている」(33.7%)が最多で、次に「自社製品・サービスに関するつぶやきに積極的にコメントしている」(33.3%)が続いており、顧客との対話交流に主眼を置く傾向にあるようです。
一方、「自社に関するつぶやきをモニターしている」は14.9%と少なく、「ツイッター上での顧客の声を製品・サービスに積極的に反映させている」(8.9%)や「ツイッターで、アンケートを行ったり、新商品のための意見を顧客から募集したりしている」(7.0%)なども少ない結果となっています。

◆「ツイッター」の効果は?
ツイッター活用による具体的な効果については、「公式ブログへのアクセス数が増加した」(65.5%)や「ソーシャルメディア上での問い合わせ件数が増加した」(56.5%)が多く、それ以外にも、「新規顧客数が増加した」(47.6%)、「既存顧客のリピート率が向上した」(46.9%)、「顧客単価が増加した」(40.0%)など、売上につながる効果も得られているようです。
はじめは個人利用が多かったツイッターですが、今後は企業による活用もますます増えていくでしょう。


重くなる厚生年金の「支え手」の負担

◆「年金扶養比率」とは?
日本の年金制度は、現役世代が支払った保険料で高齢者が受給する年金を支える仕組みですが、現役世代の負担割合を表す数値に「年金扶養比率」があります。
これは、年金受給者である高齢者を何人の現役世代で支えているかを示す数値であり、年金財政の状況を表す指標として使われます。比率が小さくなればなるほど、現役世代の負担が重いことを意味します。
2009年度末時点の厚生年金の年金扶養比率は、高齢者1人あたり「2.47」であり、2008年度末と比べて0.13ポイント低下しています。

◆重くなる現役世代の負担
まとまった厚生年金をもらえる高齢者(原則20年以上加入)の数は、2009年度末時点で1,385万人となり、2008年度末に比べて約62万人増加している一方、厚生年金の加入者は、採用抑制やリストラ、非正規社員の増加の影響などにより約20万人減っています。
今後も現役世代の負担は重くなる一方だと考えられており、公的年金の財政見通しによれば、厚生年金の年金扶養比率は、2030年度には高齢者1人あたり「2.09」にまで低下するとのことです。
国民年金の財政状況はさらに厳しく、年金扶養比率は2015年度には「約2」になる見通しです。

◆年金財政はさらに厳しく?
2009年度の厚生年金の給付費は、23兆7,500億円(前年度比約1兆1,500億円増)でした。加入者の減少などで、保険料収入は約22兆2,400億円(前年度比約4,500億円減)となりました。
保険料収入減は、当面、厚生年金の積立金(2009年度末時点で約120兆円)で賄える計算ですが、これにも限界があり、加入者の減少がさらに進めば、負担と給付の見直しが必要となります。
今後も高齢者が増え続けて給付が膨らんでいけば、年金の「支え手」である現役世代の負担はさらに増していくことになります。また、加入者の減少が進めば、年金財政は今以上に厳しさを増すこととなります。
年金制度の抜本的見直しも含め、長期的な対策が求められています。

企業が期待する法人実効税率の引下げ

◆7割以上が「引き下げるべき」
現在、法人税率の引下げが世界各国で行われている中、政府は「新成長戦略」において、法人実効税率(約40%)を主要国並みに引き下げていくことを掲げています。
帝国データバンクの調査によると、法人実効税率について「引き下げるべき」と回答した企業は1万1,446社中8,171社(構成比71.4%)で、7割以上の企業が引下げを求めていることがわかりました。
引下げを望んでいる企業を規模別にみると、「大企業」が67.1%だったのに対し、「中小企業」では72.7%となっており、中小企業で引下げを求める割合が高いことがわかります。

◆企業は利益の押上げに期待
法人実効税率が引き下げられた場合に、どのようなことに期待するかという質問に対しては、「企業利益の押上げ」と回答した企業が64.6%で最多でした。そして、「企業の国際競争力の向上」(43.9%)、「国内景気の上昇」(41.9%)、「国内雇用の確保」(37.2%)、「企業の海外移転の抑制」(31.3%)と続いています。
また、実効税率が引き下げられた場合に、引き下げられた分を何に充当するか、現段階において最も可能性が高い項目を尋ねた項目では、25.6%の企業が「内部留保」と回答しています。この他、「人員の増強」「社員に還元」などの人的投資、「設備投資の増強」「研究開発投資の拡大」などの資本投資を合わせると、約4割の企業が積極的な投資に充当すると考えていることが明らかになりました。

◆税体系の再構築を
法人課税のうち、最も優先的に見直してほしい税項目に関する質問では、「法人税」が58.8%で最多でした。多くの企業において、法人税の見直しを求めていることがわかります。
法人課税は種類が多く、「事業計画などを複雑にしている」という声も多く聞かれ、企業が納得して税を納めるためにも、税体系をわかりやすく再構築することが必要とされているのではないでしょうか。


製造業における人件費の動向は?

◆10年ぶりの低水準に
2009年度における上場製造業の従業員1人当たりの人件費が10年ぶりの低水準となったことが、日本経済新聞社の調査(新興市場を除く国内の上場製造業1,002社の単独決算が対象)で明らかになりました。
収益の急激な落ち込みに対応するため、人件費の圧縮を進めたことが大きな要因のようです。

◆人件費・労務費とは?
2009年度の従業員1人あたりの「人件費・労務費」は842万円(前期比5%減)となり、1999年度以来の低水準となったそうです。
人件費・労務費とは、損益計算書に記載された「販売費・一般管理費」に含まれる役員報酬・賞与、人件費・福利厚生費と、「製造原価」に含まれる労務費、福利厚生費などを合計したものです。

◆業績の大幅悪化が影響
2009年度における人件費低下には、2008年度の業績の大幅な悪化が影響しています。
2008年度(2009年3月期)は世界的な金融危機のあおりを受け、上場企業全体で7年ぶりの減収・経常減益となり、輸出企業を中心とする製造業では、最終赤字となりました。
そして、業績が大幅に悪化したために、多くの企業では翌年度に報酬削減や賃上げ抑制、賞与の減額などが実施されたのです。

◆明るい兆しも?
日本経団連の調査によれば、大企業の夏季賞与の最終集計結果は、組合員1人あたりの平均妥結額が75万7,638円(前年同期比0.55%増)と3年ぶりに増加し、非製造業では80万4,706円(同0.77%減)と減少したものの、製造業では74万1,395円(同1.02%増)と増加しました。
このように製造業にもわずかながら明るい兆しが見えてはいますが、景気の動向については、まだまだ予断を許さない状況にあると言えるでしょう。


2010年度の最低賃金が決定 全国平均730円に

◆全国平均17円の引上げ
厚生労働省の中央最低賃金審議会では、2010年度の地域別最低賃金(時間額)の引上げの目安を全国平均で15円にすると答申していました(現在の713円からから728円へ引上げ)。
その後、各地方最低賃金審議会による調査・審議が行われ、9月9日までにすべての地方最低賃金審議会で答申があり、引上げの目安は全国平均で17円となり、最終的な全国加重平均額は730円となりました。
答申された最低賃金額は、今後、都道府県労働局において、関係労使からの異議申出に関する手続きを経たうえで正式に決定され、10月から発効の予定です。

◆「最低賃金」とは?
最低賃金は、使用者が労働者に支払わなければならない賃金額の最下限値です。
中央最低賃金審議会が定めた目安を基に47都道府県ごとに定められ、最低賃金に違反した使用者には罰金が科せられるとされています。

◆「全国最低800円」の確保はなるか?
政府は、2020年までの目標として「できる限り早期に全国最低800円を確保」と合意しています。今回も大幅な引上げについて議論されましたが、使用者側は最後まで慎重な姿勢を崩しませんでした。
政府目標は「2020年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る経済成長」が前提となっており、中小企業の生産性向上の取組みや、中小企業に対する支援などが課題となっています。
これらの前提条件が実現せず、施策の実効性がないまま最低賃金のみが大幅に引き上げられれば、企業の経営に影響し、雇用の喪失につながるとの懸念があります。

国民年金保険料の悪質滞納を国税庁が強制徴収へ

◆対象は「悪質な滞納者」
厚生労働省は、国民年金保険料の悪質な滞納者について、財産の差押さえを含む強制徴収を実施することを、国税庁に委任する方針を明らかにしました。
対象は、所得が1,000万円以上あるにもかかわらず保険料を2年以上滞納し、財産を隠している加入者などを想定しているとのことです。

◆財産の差押えも視野に
国税庁への委任は、日本年金機構(旧社会保険庁)の発足に伴って改正された国民年金法に基づく措置であり、主な対象者は、保険料を自分で納めている自営業者や農家などの国民年金の第1号被保険者です。
厚生労働省が納付を督促しても応じないなど、「支払う意思がない」とみなされれば、同省は国税庁に委任し、同庁の職員が滞納分の財産を差し押さえるなどの処分を行うとのことです。
すでに、全国の年金事務所が各市町村に所得情報の提供など協力を求めており、滞納者情報との照合を進めているそうです。

◆当面の対象者は400人程度
国民年金保険料の未納者は300万人以上と言われていますが、学生や低所得者が多いとみられています。厚生労働省が国税庁に徴収を委任する対象は、前年度の所得が1,000万円以上で、財産を隠すなど特に悪質な滞納者に限られるため、当面の対象者は400人程度にとどまる見込みです。
強制徴収の権限は、日本年金機構からの申出により、厚生労働大臣が財務大臣を通じて国税庁長官に委任する形になり、実際の差押えには、国税庁の徴収課や各地方国税局の特別整理部門の職員などが当たるそうです。

◆わかりやすい年金制度改革を
未納者からの保険料徴収ということで、一定の効果はありそうですが、保険料未納の背景には、年金制度そのものへの不信感があると言われています。
現政権には、わかりやすい年金制度改革の方向性を打ち出してもらいたいものです。


今後の「有期労働契約」はどうなるのか?

◆8月下旬に「報告書」原案を公表
厚生労働省の「有期労働契約研究会」では、8月下旬に会合を開き、今後の有期労働契約に関する施策の方向性を示す、「報告書」原案を公表しました。
有期労働契約者の範囲、通常の労働者との処遇の均衡、契約の更新・雇止めなど、今後の「有期労働契約」のあり方に大きな影響を与えるものと見られます。

◆有期労働契約者に関する現状分析と課題
上記の「報告書」原案では、有期契約労働者は、労使の多様なニーズにより増加しており、労働者本人の希望や意見を含めて眺めれば多様な集団になっていると、現状を分析しています。
そして、4つの職務タイプである「正社員同様職務型」(36.4%)、「高度技能活用型」(4.4%)、「別職務・同水準型」(17.0%)、「軽易職務型」(39.0%))」に分類し、就業形態、年齢などの多様な実態を踏まえたうえでの対応が必要であると指摘しています。

◆今後検討される内容
上記内容を踏まえたうえで、今後は、下記の項目を検討するとしています。
(1)契約締結事由の規制
有期労働契約の締結の時点で利用可能な事由を限定することを検討する。
(2)更新回数や利用可能期間に係るルール
一定年限等の「区切り」を超える場合の無期労働契約との公平、紛争防止、雇用の安定や職業能力形成の促進等の観点から、更新回数や利用可能期間の上限の設定を検討する。
(3)雇止め法理(解雇権濫用法理の類推適用の法理)の明確化
定着した判例法理の法律によるルール化を検討する。

◆法改正を含めた制度整備が必要
今後、中長期的に労働力が減少していくと予測される中、有期契約労働者を公正に処遇し、労働者が仕事と家庭生活との調和を図りつつ、生きがい・働きがいのある充実した生活を送ることができるよう、法改正を含めた制度整備がなされることが望まれます。