2010/01/27

2月の事務所便り

取引先倒産による連鎖倒産防止のための共済制度

◆中小企業の連鎖倒産を回避できるか?
新聞によれば、中小企業庁では、取引先倒産による中小企業の連鎖倒産を防ぐため、共済制度の拡充に関する改正案を国会に提出する予定とのことです。
拡充されるのは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する「中小企業倒産防止共済」(通称:経営セーフティ共済)制度です。

◆「経営セーフティ共済」とは?
同制度は、取引先が倒産して売掛金が回収できなくなった加入者に対し、共済金を無利子・無担保・無保証人で貸し付ける制度であり、全国の中小企業の約7パーセントに相当する約29万3,000社が加入しています。
現在の制度では、貸付限度額は「回収困難な売掛金債権等の額」と「掛金総額の10倍の額」のうちいずれか少ない額で、最高で3,200万円となっており、返済期間は5年間、返済方法は54カ月で均等分割による毎月返済となっています。
掛金月額は、5,000円から8万円までの範囲(5,000円刻み)で自由に選ぶことができ、掛金総額が320万円になるまで積み立てられ、払い込んだ掛金は、税法上、法人の場合は損金、個人の場合は必要経費に算入することができます。

◆今回の改正案の内容
同制度の中で、貸付限度額である「3,200万円」を「8,000万円」まで引き上げるのが、今回の改正案です。
これは、企業の倒産件数が増加し、1件当たりの負債総額も高額になり、回収できなくなった売掛金債権の満額を借りることができなかった企業が、2006年度で加入企業の約13%に達したためです。限度額の引上げにより、この13%という数値が5%程度に抑えることができると試算されています。
2008年には同制度の新規加入者が急増したものの、ここ数年では減少傾向が続き、制度の運営が不安定になると指摘されています。中小企業庁では、さらに加入者を増やして不況の長期化による倒産増に備えたい考えのようです。




日本年金機構の方針および取組みについて

◆今年1月に発足
不祥事が相次ぎ、「年金不信」の代名詞となっていた社会保険庁は解体され、その後継組織として日本年金機構が今年1月に発足しました。同機構は約1,000人の民間採用を含む正職員約1万880人と、有期雇用契約職員約6,950人からなる非公務員型の特殊法人です。
長妻厚生労働大臣は、職員のうち社会保険庁出身者の月給を一律3%減額する方針を示しました。これは、年金記録問題を起こした同庁の責任を明確にするためのもので、問題解決に一定のめどがつくまで継続するようです。役員についても、ポストに応じて報酬を8~16%減額し、これも当面継続させるとのことです。

◆方針や目標は?
社会保険事務所から改称した全国312の「年金事務所」では、「お客様へのお約束10カ条」を掲示し、国民目線のサービスの徹底を目指す方針です。
その内容は「その場でお答えできない場合は2日以内に確認状況をご連絡」、「お客様にプラスとなるもう一言を心がける」、「お待たせ時間を30分以内にすることを目指す」などの具体的な指標です。
さらに、2013年度末までの中期目標として、2002年度から60%程度と低迷している国民年金保険料の納付率の低下傾向に歯止めをかけ、回復させるように努めること、厚生年金保険料については「未適用事業所の適用を進めつつ、収納の確保を図る」とし、徴収体制を強化することを掲げています。しかし、いずれも具体的な数値目標は盛り込まれませんでした。

◆今後の新体制に期待
年金記録問題の発覚により、旧社会保険事務所の窓口対応が相当変わったことは確かです。日本年金機構による新体制・新方針の中で、国民の信頼回復がどこまで図られるかが気になるところです。
なかなか年金事務所等を訪れる機会がない方は、一度、年金事務所等を訪ねられ、ご自身の年金記録などの相談をしつつ新体制を実感されるのも良いのではないのでしょうか。




介護職員の能力・経験等を給与に反映

◆厚労省による新たな対策
厚生労働省は、人手不足が続いている介護職場の魅力を高めるための対策として、現在実施中の月給引上げ策と平行して、能力・経験に応じて職員の給与が増える仕組みを導入するよう、介護事業所に促進していく方針を打ち出したそうです。
介護分野における有効求人倍率は全産業の「0.44倍」を大きく上回る「1.3倍」程度で推移しており、人手不足感が強いにもかかわらず、介護事業所の給与・人事制度は、職員の能力・経験などを評価する仕組みが不十分な場合が多く、労働者が就職・転職に二の足を踏む一因となっています。
このため、厚生労働省では、介護職員の月給を引き上げる事業所向けの交付金制度(介護職員処遇改善交付金)を活用することを考えています。

◆職員のキャリア等を評価
介護職員処遇改善交付金は、介護職員の処遇改善に取り組む事業者に対して平成21年10月から平成23年度末までの間、計約4,000億円程度を交付するもので、平成24年度以降も引き続き取組みを進めることから、同省では、この交付金を積極的に活用するよう求めています。
今後は、能力・資格・経験年数などに応じて職員の給与を引き上げる仕組みを設けることを交付金支給の条件に加えることも検討されており、職員のキャリアを評価する仕組みを介護業界にも普及させることで、「長く働き続けても賃金が増えない」といった不満の解消を目指しています。

◆ミスマッチ解消も課題
他にも、条件を満たさない事業所については、同交付金を減額する方針と言われており、現在の予定では、2009年度内に具体的な要件を詰め、2010年中に適用するということです。
また、介護分野の雇用のミスマッチ解消も急がれています。平成19年における介護関係職種の離職率は全体(正社員と非正社員)で21.6%、正社員においては20.0%と全産業の12.2%よりも高くなっています。
厚生労働省は、全国約400のハローワークや同省の講堂で「介護職専門の就職面接会」を順次開催し、就職・転職希望者と介護事業者の橋渡しを強力に進めていく方針を取っています。介護資格などに関する相談を受け付け、介護の仕事がわかるビデオ視聴コーナーや体験セミナーも開き、介護職への理解をより一層深めてもらうのがねらいです。
今回の厚労省による制度が人材定着に有効となるのか、非常に注目されるところです。





失業者等による公的な貸付制度・給付制度の利用が増加

◆失業者等を救う様々な貸付・給付制度
失業などにより収入が激減したり、年金だけでは生活が立ち行かなくなったりした人の暮らしを保障するための公的な貸付制度・給付制度の利用が増えているそうです。
主な公的支援制度としては、「雇用保険の失業給付」、「就職安定資金融資」、「訓練・生活支援給付」、「住宅手当緊急特別措置」、「生活福祉資金貸付制度」、「臨時特例つなぎ資金貸付制度」などがあります。
失業給付の基本手当はよく知られていますが、非正規労働者のうち雇用保険に加入していない人が多いことや長期失業者が増えていることから、基本手当を受給しているのは失業者数全体の3割に満たないと言われています。

◆各制度の特徴
「就職安定資金融資」は、解雇や雇止めにあった人に対し「敷金・礼金」、「転居費・家具費」などとして50万円、家賃補助費として36万円を低利で貸し付ける制度です。また、「住宅手当緊急特別措置」は、2年以内に離職し、就職意欲があり、かつ住宅を失いそうな人に対し、最長6カ月間分の家賃を支給するものです。
一方、住む場所はあるが、仕事がなかなか見つからない人には「生活福祉資金貸付制度」が利用しやすくなっています。貸付金の用途が多岐にわたり、対象者も低所得者、障害者、高齢者と幅広く、主に民間の貸付制度を利用できない世帯に、生活費や学費などを無利子または低利で貸し付ける制度です。

◆「生活福祉資金貸付制度」へのニーズ
今後、需要が高まると予想されるのは、この「生活福祉資金貸付制度」です。2009年10月に改正が行われ、従来は連帯保証人が必要とされたものでも、連帯保証人なしで貸付が受けられるようになりました。
連帯保証人がいれば無利子で、いない場合は年1.5%の低利で借りることができます。また、10種類ある融資資金が4つのカテゴリーに整理されたことで、利用者にもわかりやすくなりました。
この改正に伴って利用が増えるとみられるのが「総合支援資金」であり、失業で生計を維持することが難しくなった世帯や、多重債務を抱えて弁護士などに相談するにも費用がないなどの人が利用できます。「敷金・礼金」など、賃貸住宅に入居するための住宅入居費の融資も受けられるほか、次の仕事を見つけて生活を立て直すまでに月15万円(単身の場合)を最長12カ月貸してもらえるなどのメニューもあります。




「労働者派遣法」改正をめぐる最近の動き

◆労政審が厚労相に答申
昨年の政権交代後、労働者派遣法の改正をめぐる動きが活発化しています。
昨年末(12月28日)、厚生労働省の労働政策審議会(労働力需給制度部会)は、「労働者派遣法」(正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」)の改正に向けた報告書を長妻厚生労働大臣に答申しました。
これを受け、今後、厚生労働省が改正法案の作成に着手していくものとみられ、今年の通常国会に法案が提出される見込みです。

◆予定されている改正内容
今回予定されている主要な改正項目は、(1)専門26業務や高齢者派遣などを除く「登録型派遣」の禁止、(2)常用型以外の「製造業派遣」の禁止、(3)2カ月以内の期間を定める「日雇い派遣」の原則禁止などです。いずれも企業にとっては大きな影響を与える内容といえるでしょう。
改正法案が今年の通常国会で順調に成立した場合、(1)(2)の施行日は「公布の日から3年以内」の予定とされており、(1)のうち「問題が少なく労働者のニーズもある業務」についてはさらに2年の適用猶予期間が設けられることとなっています。

◆企業側・労働者側の反応
世界同時不況・経済危機以後、派遣労働をめぐっては、「規制緩和」から「労働者保護」への方向に傾きつつあります。
しかし、今回の改正内容については、企業側から「登録型派遣や製造業派遣の原則禁止は企業にとって極めて甚大な影響がある」「急な発注や季節の変動に対応できない中小企業などは大きなダメージを受けてしまう」などといった反発の声が上がっています。
そして、今回の改正内容について反対があるのは企業側だけではありません。労働者側からも「施行日までの期間が長く、生活が不安定な非正規雇用の労働者を救済する内容になっていない」「登録型派遣や製造業派遣の禁止により職を失う人が増える可能性がある」などといった懸念の声も聞かれます。
今後、このような労使双方の声が改正にどのような影響を与えていくのか、注目しておきたいものです。




仕事・上司・年収に対する正社員の「満足度」

◆民間会社によるインターネット調査
株式会社NTTデータ経営研究所が、インターネットを利用して12月上旬に実施した「ビジネスパーソンの就業意識調査」(企業で正社員として働く1,038人が回答)の結果を発表しました。
ここでは、このアンケート結果のうち、正社員にとっての仕事・上司・年収に対する「満足度」などの項目について見ていきたいと思います。御社の社員の方の「満足度」は以下の結果と比べていかがでしょうか?

◆「現在の仕事にどの程度満足しているか?」
「大いに満足している」(8.3%)、「どちらかといえば満足している」(53.4%)と回答した人を合わせると、約6割(61.7%)の人が、現在の自分の仕事に満足していることがわかりました。

◆「現在の上司にどの程度満足しているか?」
「大いに満足している」(9.7%)、「どちらかといえば満足している」(45.7%)と回答した人を合わせると、5割以上(55.4%)の人が、職場における自分の上司に満足していることがわかりました。なお、「大いに不満がある」と回答した人は15.8%でした。
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◆「現在の収入にどの程度満足しているか?
「大いに満足している」(2.6%)、「どちらかといえば満足している」(33.8%)と回答した人を合わせると4割以下(36.4%)でした。収入面に関しては満足していない人が多いことがわかります。なお、「大いに不満がある」(20.6%)と「どちらかといえば不満がある」(43.0%)と回答した人を合わせると6割以上(63.6%)に上りました。

◆「年収があと最低どのくらいアップして欲しいか?」

全体で最も多かった回答は「50~100万円未満」(32.1%)で、次に「100~200万円未満」(29.7%)が多く、両者を合わせると「50~200万円未満」のアップを希望する人の割合が6割以上(61.8%)を占めました。さらに「50万円未満」、「50~100万円未満」、「100~200万円未満」を合計すると、76.2%の人が「年収の不足額は200万円未満」と感じていることになります。