2005/07/29

平成17年8月号

労働基準監督署の臨検に必要なもの

労働基準監督官が事業場に立入調査をすることを「臨検」といいます。臨検には、1労期監督・2申告監督・3再監督の3種類があります。労働安全衛生法関係の臨検は予告なしの抜き打ちが多く、労働基準法の関係は帳簿の確認や聞き取りが必要なので、大抵は予告があります。
では、労働基準法関係では、どのような書類の確認が行われるでしょうか。以下は、実際の臨検で提出が求められたものです。できれば、今からでも整備しておくことをお勧めします。
1就業規則(別規程もすべて)
2時間外休日労働に関する協定届(控)
3時間外休日労働に関する協定書(写)
4のほか労働基準法に関する協定書(写)、協定届(控)
5労働時間管理の為に作成している書類(賃金台帳と突合せができるもの)
6賃金台帳(直近3箇月分)
7年次有給休暇管理台帳
8衛生委員会の議事録
9衛生管理体制(衛生管理者・産業医等)に関する選任報告書(控)
10健康診断の個人票
11健康診断結果報告書(控)
12労働条件の明示の為、採用時に労働者に交付しているもの(労働条件通知書等の)サンプル
13会社の概要のわかるもの(パンフレット等)
14会社の組織図


養育期間標準報酬月額特例制度

3歳未満の子を養育している期間、申出手続(従業員の申出により、事業主が社会保険事務所に提出)をしておけば、標準報酬月額が下がった場合でも、年金額の計算については子が生まれる前の高い標準報酬月額(従前標準報酬月額)で計算するという制度です。
この申出は、子が3歳に達するまでの間で、子が生まれたとき、育児休業等が終わったとき、転職したとき等に行います。つまり、このようなときに申出手続をしておけば、その後に標準報酬月額が下がったときに適用されるのです。
たとえば、3歳未満の子がいる社員について
1意識的に残業をしないようにしているので残業代が少なくなった
2引越しによって通勤定期代が下がった
3 管理職になった関係で残業代がでなくなり、結果的に給与が下がった
4 転勤により手当が無くなり給与が下がった
5 妻が働くことになり配偶者手当がなくなり給与が下がった
など、標準報酬月額が下がる可能性のある場合はいろいろ考えられます。
これらの場合、申出をしておけば、将来の年金計算だけは養育期間前の標準報酬月額が適用にされるのです。
しかも、この制度は、専業主婦の妻がいる場合の夫にも適用され、また共働きの場合には夫婦そろって適用されるという点は要チェックです。
逆に、この制度を会社がよく理解し、社員に周知しておかないと、その対象になるはずだった元社員から「手続きミスだ!本来もらえるべきだった年金額との差額を払ってくれ!」などということを言われる日が来ないとも限らないのです。

【トピック】

●サラリーマンの給与所得控除を縮小
政府税制調査会は「個人所得課税に関する論点整理」をまとめ、この中でサラリーマンに対する個人所得課税のあり方についての方向性を
明らかにした。サラリーマンの給与所得控除を縮小する代わりに、確定申告をすることで交通費や語学学校の授業料などを必要経費として課税対象所得から控除する。また、育児をしている世帯には税額控除をするなどもあわせて検討している。消費税の改正と平行して議論を進め、数年内での実現を目指す。

●精神障害による労災が過去最多
厚労省は2004年度の労災補償状況を発表した。これによると、うつ病などの精神障害による労災請求が524件(前年度比77件増)、労災認定は130件(同22件増)でそれぞれ過去最多を更新した。労災認定のうち、3分の1にあたる45件は自殺・自殺未遂で、これも過去最多。認定の内訳は急性ストレス障害と心的外傷後ストレス障害が計71件、うつ病が59件。
業種では製造業が最も多く33件、職種ではシステムエンジニアなどの専門技術職が最も多く43件だった。年齢別では30代が53件、40代が31件で働き盛りでの発症が目立つ。

2005/07/01

平成17年7月分

労働基準監督署の監督指導

労働基準監督官が事業場に立入調査をすることを「臨検」といいます。労働基準法第101条では、労働基準監督官が事業場等に臨検を行い、帳簿や書類の提出を求め、または使用者や従業員に対して尋問を行う権限をもつことが定められています。
臨検には、1定期監督、2申告監督、3再監督の3種類があります。1の定期監督とは、労働基準監督署が計画を定め、その定期的な計画に基づく監督です。2の申告監督とは、労働基準監督署に対し、従業員等から法令違反の申告があった場合に実施されるものです。3の再監督とは、定期監督等のその後の実施状況を確認するためのものです。最近増加しているのは、2の申告監督です。
ところで、労働基準法第102条は刑罰法規であり、ここでは労働基準監督官は司法警察官の職務を行うことが定められています。ですから、労働基準監督官の監督指導に従わない悪質な場合は、送検・起訴に及ぶことも可能なのです。
因みに、労働安全衛生法関係の臨検は予告なしの抜き打ちが多いのに対し、労働基準法関係は、帳簿の確認や聞き取りが必要なために大抵予告があります。
臨検で問題があった場合は、「是正勧告書」か「指導票」が交付されます。是正報告書には、法令違反事項と是正期日が記載されており、期日までに是正して、是正報告書を提出しなければなりません。一方の指導票は、法令違反ではないが労務管理や労働安全衛生法上改善すべき点があると判断された場合に交付されます。これも期日までに報告しなければなりません。
是正監督・指導を無視する場合や虚偽の報告をする場合は、改善の意思がない悪質な事業主と判断されて、送検されることもあります。労働基準監督官の監督・指導は、真摯に受け止めるべきでしょう。
  
JISQ15001

個人情報保護法が完全施行されてから、個人情報漏洩に関する報道が続いています。去る5月24日には、大手情報通信会社による全社員(1万1,835人)の個人情報の紛失が公表されました。
同社によると、4月下旬、社員1人が自宅で作業を続けるため、会社のパソコンから上司の許可を得ずに、社員の所属や役職など約20項目の情報をUSBメモリーにコピーし、持ち帰りました。しかし、帰宅途中にこのUSBメモリーを入れた鞄を紛失してしまったとのことです。同社では、無断で社内情報を持ち出すことを禁じていました。同社は以前にも、運営する不動産売買の情報サイトの顧客4,312人分の個人情報を外部に流出させています。サイト運営を委託した企業の社員が、顧客情報を記録したパソコンを入れた鞄を通勤中の電車の網棚に置き忘れたとのことです。かつて委託企業が犯したミスを、今回は本社の社員が犯したことになります。
個人情報漏洩事件では、悪意・出来心による場合よりも、今回のような不注意やスキル不足、無知による場合が圧倒的に多いと言われています。
個人情報保護に関する第三者認証のわかりやすい仕組みとして、プライバシーマークがあります。プライバシーマーク制度とは、JIS規格のQ15001「個人情報保護に関するコンプライアンス・プログラムの要求事項」に準拠して個人情報の取扱いを適切に行っている民間事業者に対し、プライバシーマークの使用を認める制度です。JISQ15001の要求事項では、個人情報に関するリスク(個人情報への不正アクセス、個人情報の紛失、破壊、改ざんおよび漏洩など)に対して、合理的な安全対策を講じなければならないとしています。これは、経済的に実行可能な最良の技術の適用に配慮する必要があるということです。その会社にとって経済的に実行可能な最良の技術とは、客観的に定められているわけではなく、社長がセキュリティレベルを決定しています。つまり、プライバシーマークを取得していても、一定の基準をクリアしているだけで、漏洩事件を起こす可能性は十分にあるのです。実際に、上述したような漏洩事故が起きています。  
今回、個人情報を紛失した大手通信会社では、指紋認証装置を使った入退室管理を実施していました。しかし、たった1人の社員の行動が元となり、会社に対する信頼を失墜させることになってしまったのです。結局は、人の問題ということでしょうか。

【トピック】
●厚労省が厚生年金への未加入企業の求人紹介停止
厚労省は、全国のハローワークで、厚生年金未加入企業が求人を希望しても、同年金への加入指導に応じない場合には求人紹介を停止する措置を始めた。この措置では、厚生年金に未加入の場合、まずはハローワーク窓口で加入を促す。これに応じない場合、求人票へ社保未加入の旨の明記をするとともに社会保険庁事務所からの指導を要請、改善がなければ、求人を停止する。

●来年度から徴収一元化を一部実施する見込
厚労省は労働保険と社会保険の徴収一元化の実施に先駆けて、早ければ来年度にも保険料滞納・未払い対策を一元化する方針を固めた。労働保険を滞納した企業への督促は年間約36万件(2003年度、年3回分の合計)、厚生年金の滞納は現在(2002年5月)約14万事業所に上る。現在は労働局・社保事務所それぞれで対応しているが、最も手間がかかり、切迫しているこの問題でとりあえず一元化を実施し、次段階へのステップとする構えだ。