2006/01/25

平成18年2月号

児童手当、小学6年まで支給へ

少子化対策の一環として支給されている児童手当ですが、2006年4月から支給対象が引き上げられ、所得制限も緩和されることが決まりました。現在は、仮に夫婦と子ども2人の世帯とすると、給与所得者で年収780万円未満、自営業者については年収596万円未満の方に支給され、0歳から小学3年生までの子どもの85%に支給されていますが、年収要件の緩和によって約90%の児童が対象となる見込みです。
◆児童手当とは
児童手当は児童を養育する方に手当を支給することにより、家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健全な育成および資質の向上に資することを目的に、現在は小学3年生までの児童を養育している方に第1子、第2子に対して月額5,000円、第3子以降に対しては月額1万円が支給されています。
2006年4月からは支給対象が小学6年生まで引き上げられ、所得制限も夫婦と子ども2人の世帯で給与所得者については年収860万円未満、自営業者は年収780万円未満に引き上げられます。

◆必要な財源は
児童手当拡充のために必要な財源は2006年度から、たばこ税を1本につき85銭引き上げ、たばこの値段は1本1円の値上げでまかなうことが決まっています。


結婚しても子供を多く持てない夫婦が増加

わが国の合計特殊出生率は低下し続け、04年には1.29となりました。しかし、多くの未婚者はいずれ結婚して子供を持ちたいと考えており、結婚に対する意欲が低下しているわけではありません。子供を持たない理由については、未婚者、既婚者を問わず多くの人が子育ての経済的な負担が大きいことをあげていますが、子育てにかかる費用が近年増大しているわけではありません。
◆子供を持つ余裕のない若年世帯が増加しつつある
近年、大学卒業者がパート・アルバイトとして就業する割合が増加しています。若年者のパート・アルバイトにおける年収は同年代の正社員の3割程度にあたる約120万円にとどまっており、特に近年増加しているパート・アルバイト同士の夫婦は、共働きをしても必要な所得を得ることが難しく、子供を持つ余裕がない状況にあると考えられます。一方、正社員として就業していても時間外労働の増加などにより長時間働くため、子育てに時間を割きにくくなっているのではないでしょうか。
◆子育てには総合的な支援が必要
アルバイト同士の夫婦をはじめとした低所得若年層においては、将来の収入見通しに対する不安が子育てをためらわせる大きな要因となっています。現在のような正社員かパート・アルバイトかという二者択一ではなく、多様な働き方および賃金体系が認められれば将来の収入の増加を見込むことができ、子育ての希望を持ち続けられるのではないでしょうか。
また、子育て支援に関する多様なサービスが十分かつ安価に供給されるようになり、育児休業制度の利用や男性の働き方を見直していくことなど、企業との協力の下で夫婦が子育てをしていくことが望ましく、出産、子育てが一段落した女性の再就職・キャリアアップに向けての教育環境が整備されれば子育てに対する負担の軽減につながることが期待できます。
◆子育ての社会化
今後、子育てが家族の責任だけで行われるのではなく、親世代、同世代の友人、会社の同僚、近隣に住む人々など社会全体で子育てに取り組む「子育ての社会化」、そして子育てにかかる個人の経済負担を軽減していくことが必要になってきているように思われます。


【トピック】
●介護保険見直し
厚労省は、介護保険料の負担を現在の40歳から引き下げることに関する検討会を設置する。これについては昨年の介護保険法改正で検討されたが、改正法に盛り込まれるには至らなかった。年内にも報告書をまとめ、2009年度までの改正を目指す模様。

●年金徴収強化へ
社保庁は、2004年度に約3万1,000人に対して実施した国民年金保険料の強制徴収を、2005年度は約14万人に対して行う方針だ。昨年12月上旬ですでに8万6,000人に対して強制徴収を実施しており、年度末にかけてさらに強化するとしている。
一方、同庁と厚労省内には「強制徴収だけでは目標とする『2007年度末までに納付率80%』を達成できない」という見方が強い。そこで、国民年金の長期未納者と長期未加入者は国民健康保険を使えないようにするという案が浮上している。総務省や自治体との調整もあるが、早ければ2007年度から実施したい考えだ。

●「年金カード」導入
政府は、銀行や郵便局のATMに差し込むだけで現在の年金積み立て額、受取額等がわかる「年金カード」を、2008年4月から国年・厚年の加入者全員に配布することを検討している。政府はすでに、同年から同様の情報を定期的に郵送する方針を公表しているが、これよりも利便性が高いものとの判断がなされた。

2006/01/05

平成18年1月号

2007年問題 技能継承に助成金

「団塊の世代」が定年退職を迎えることで、製造業を中心に熟練した技術・技能やノウハウの喪失が懸念される、いわゆる「2007年問題」の対策として、厚生労働省は中小企業の技能継承の取組みに対し、助成金を導入する方針を固めました。中小企業労働力確保法を改正し、取組みにかかる企業の経費の半分を負担するほか、訓練期間中の社員の賃金の半分についても負担するということです。
◆団塊の世代の技術などを次の世代にどう伝えるのか
昭和22年から昭和24年に生まれた「団塊の世代」は約670万人とされ、平成19年から60歳の定年退職を迎えます。各企業の生産現場では、労働力減少のほか、団塊の世代が持つ高度な技術力やノウハウを、どう次の世代に伝えていくかが課題となっています。
特に全企業の9割以上を占める中小企業の経営者からは「企業体力に限界があり、技能継承に向けた行政の支援は重要」などの声が強くなっています。
◆助成金制度を活用
厚生労働省はこうした要請を踏まえ、中小企業労働力確保法に基づく中小企業雇用創出等能力開発助成金制度を活用し、現在は技能の高度化や新分野進出への取組みに限られ支給している助成金の対象範囲を拡大し、技能継承に取組む企業にも支給できるように制度を改めるということです。
助成金を受けたい中小企業の事業主か業界団体は、まず都道府県に技能継承に関する取組みの計画書を提出します。認定されれば、企業が講師を招いて社員の教育を実施したり、職業訓練学校など外部訓練施設を活用して技能継承を図ったりした際、かかった費用の原則半分が助成金として支給されます。

労災保険加入制度の強化

厚生労働省は平成17年11月1日から、労災保険未加入の事業主に対する費用徴収制度を強化することにしました。労災保険は、労働者を1人でも(パート・アルバイト含む)雇用している事業主には加入手続きを行う義務があります。もし、労災保険に加入していない時に労災事故が発生した場合、遡って保険料を納めなくてなりません。また、労災保険料を納めるだけでなく、ペナルティの保険料を課せられることとなれば、それだけで事業主にとってかなりの経済的負担となります。労使ともに安心して働ける職場環境のため、また労災事故が起こって慌てないためにも、労災保険の加入は事業主にとって必要不可欠なものです。
◆適用事業所
労災保険は労働者単位で適用される雇用保険とは違い、事業所単位で適用されます。適用されない事業および労働者は1、国の直営事業2、官公署の事業(地方公務員には一部適用)3、船員保険に加入している労働者だけで、これ以外の事業および労働者には適用されます。労災保険率は業種によって異なりますが1,000分の5から1,000分の129となっています。また、中小企業の場合は、労働者だけでなく事業主等が労災保険に加入できる「特別加入」という制度があり、労働保険事務組合に事務委託をしている場合に加入できます。
◆費用徴収のポイント
労災保険未加入時に、費用徴収の対象となる場合は次の2通りです。1、労災保険の加入手続について行政機関から指導等を受けたにもかかわらず、未加入期間に労災事故が発生した場合。2、行政機関からは指導は受けてはいないが、労災保険の加入手続を1年以上怠っていたときに労災事故が発生した場合。1、の場合、事業主が故意に手続きを行わなかったものとして、発生した労災事故に関して支給された保険給付額の全額が徴収されます。2、の場合、事業主が重大な過失により手続きを行わなかったものとして、発生した労災事故に関して支給された保険給付額の40%が徴収されます。徴収される金額は、療養を開始してから3年間に支給されるものに限ります。また、療養(補償)給付・介護(補償)給付は除外されます。いずれにせよ、労災保険適用の事業所となった時点から加入しておけば、徴収されずにすむ金額であることに違いはないです。

【トピック】
●医療改革大綱決定
医療制度改革大綱が決まった。高齢者の医療費の負担割合は、70歳以上の高所得者について現行の2割から3割へ(06年10月から)、70歳以上75歳未満の中低所得者について1割から2割へ(08年度から)引き上げることとなった。 また、現在特例で3歳未満は2割負担とされているが、これを義務教育就学前とすることとなった。

●高額療養費未請求分を通知
社保庁は、高額療養費の払戻し対象となっていながら貰い損ねている政管健保加入者に対し、その旨の通知を始める。年内のサービス開始を目指し、通知のタイミングなどの調整を図るとしている。
高額療養費の還付については、多くの健保組合ですでに自動還付システムが確立しており、政管健保も一部の社保事務所では通知サービスを行っていたが、サービスの均一化を求める声を受け、今般の措置となった。