2014/07/01

7月の事務所便り

「改正労働者派遣法」が成立したらどんな影響が?

 

◆審議は遅れ気味

現在開会中の通常国会(会期末は622日)では、「改正雇用保険法」「改正パート労働法」などが成立しました。

各方面から注目を浴びている「改正労働者派遣法案」については現時点で審議は遅れ気味であり、今国会での成立が危うい状況ですが、成立した場合にはどのような影響が考えられるのでしょうか?

【改正法案の内容】

(1)特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別の廃止(すべて許可制に)

(2)専門26業務の廃止

(3)派遣労働者個人単位の期間制限(3年)と派遣先の事業所単位の期間制限(3年、一定の場合に延長可)の創設

(4)派遣元事業主に対し派遣労働者へ新たな派遣先を提供すること等の義務付け

(5)派遣労働者の均衡待遇の確保・キャリアアップの推進

 

◆人材会社が受ける影響

株式会社アイ・アム&インターワークスでは、人材会社および派遣労働者を対象に、改正労働者派遣法に関するインターネット調査を実施し、その結果が発表されました。

改正内容のうち最も影響を受けるものについて人材会社の回答は次の通りでした。

(1)派遣期間の上限が「1業務あたり3年」から「1人あたり3年」に変更されること(64.5%)

(2)専門26業務と自由化業務の区分がなくなること(13.6%)

(3)雇用期間が終了する派遣社員に次の就業先を紹介すること(9.1%)

 

◆派遣社員が受ける影響

同様の質問に対する派遣社員の回答のトップも人材会社と同様でした。

(1)派遣期間の上限が「1業務あたり3年」から「1人あたり3年」に変更されること(33.3%)

(2)派遣という働き方から抜け出す機会を失ってしまう気がする(28.7%)

(3)専門26業務と自由化業務の区分がなくなること(14.0%)

 

◆非正規労働者をどのように活用するか

今回の派遣法改正は、派遣労働者の非正規労働者としての処遇改善と雇用の安定化につながるとの見方もあり、当然に派遣先にも大きな影響を与えます。

自社において派遣労働者を含めた非正規労働者を今後どのように活用していくのかを検討しなければなりません。

 

「働きやすい・働きがいのある職場」にするための取組み

 

◆高まる“人手不足感”

雇用情勢が良くなりつつある現在、人手不足感が高まってきています。特に建設業や介護事業、飲食業、サービス業等においてこの傾向は顕著です。

企業にとって近年の死活問題とも言える「人材確保」や「採用後の職場定着」を図るためには、働きがいのある職場づくりが重要です。

そんな中、厚生労働省が設置したプロジェクト企画委員会では、「働きやすい・働きがいのある職場づくり」を促進するため、中小企業が活用できる各種ツールを作成しました。

 

◆「ツール」の内容

同委員会が作成したツールの内容は、下記の3つです。

(1)ポータルサイト「働きやすい・働きがいのある職場づくりサイト」

…中小企業の取組み事例、中小企業事業主向けの支援策や調査報告書の概要を掲載したポータルサイト

(2)「働きやすい・働きがいのある職場づくり事例集」

…「評価・処遇」「人材育成」「業務管理・組織管理」「人間関係管理」に取り組む中小企業の事例を業種別・取組み別に紹介した事例集

(3)「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」

…雇用管理制度などの取組み状況と「働きやすさ」「働きがい」との関係などについて、中小企業の人事担当者と中小企業で働く従業員を対象に調査した報告書

 

◆ポータルサイトにおける事例紹介

上記(1)のポータルサイトでは、「働きやすい・働きがいのある職場づくり」の事例が紹介されています。自社の参考にしてみてはいかがでしょうか。

・入社半年後の新入社員を対象として「新入社員フォローアップ懇談会」を実施し、社員の定着を図っている。(製造業)

・社員間の情報共有システムを構築し、各職場における仕事や課題の状況を全社員で共有できるようにして職場での問題対応に活用している。(情報通信業)

・メンター制度を核にした育成・評価制度の導入によって従業員の働きがいや働きやすさを追求している。(サービス業)

・目標管理面談や毎月の面談を通じて職員の希望や提案を吸い上げ、ジョブ・ローテーションや業務改善に活用している。(福祉関連業)

・数年前から導入した新たな評価処遇制度のもとで、多面的評価・評価結果のフィードバック・給与等との連動を実施している。(建設業)

 

「改正パートタイム労働法」省令や指針に注意!

 

◆改正パートタイム労働法の概要

4月23日に公布された改正パートタイム労働法(以下、「改正法」)では、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他待遇の面で正社員との差別的取扱いが禁止されるパート労働者の範囲の拡大、また、待遇の決定についてパート労働者の納得性を高めるために行う雇入れ時の説明義務等が規定されましたが、これらの具体的な取扱いは省令や指針に規定されます。

現在、厚生労働省(労働政策審議会雇用均等分科会)において、省令や指針の見直しの議論が進められており、実務への影響が大きいことからその行方が関心を集めています。

 

◆「一律○円」による通勤手当の支給は要注意?

改正法101項は、正社員との均衡確保の努力義務の対象となる賃金について「通勤手当、退職手当その他の厚生労働省令で定めるものを除く」と規定していますが、「職務に密接に関連して支払われるもの」については均衡確保の努力義務の対象となるよう、省令が見直される予定です。

雇用均等分科会の資料では、「距離や実際かかっている経費とは関係なく一律の額で通勤手当として支払っているような場合については、職務関連として整理されるのではないか」とされており、7月下旬に公布される予定の改正省令でどのように規定されるか、注意を要します。

 

◆苦情等相談窓口の設置および周知について

改正法では、上記の通り、雇入れ時の事業主による説明義務が規定されるとともに、16条で、パート労働者からの相談に応じるための体制の整備を義務付けています。

これにより設置される相談窓口が、改正省令では雇入れ時に文書交付等により明示すべき事項に追加される見通しですので、体制の整備だけでなくその周知も行わなければならないこととなります。



7月から協会けんぽの申請書・届出書が新しくなります

 

◆加入者・事業主等の利便性に配慮

 健康保険給付の支給を申請する際、各種申請書・届出書を提出して行いますが、7月1日より、協会けんぽのこれらの様式がOCR様式への刷新に伴いフォーマットが大きく変更されます。

申請書には加入者が記入する欄だけでなく事業主や医師等が記入する欄も設けられていますが、それらが従来よりも明確に区別されたり、誤記入を防ぐため特に注意すべき点を目立たせた「記入の手引き」が用意されたりするなど、加入者・事業主等の利便性が考慮されています。

 

◆新しくなる様式は29種類

申請書・届出書には健康保険給付に関するものの他、保険証再交付等に関するもの、任意継続に関するもの、健診に関するものがありますが、これらのうち29種類の様式が新しくなります。

対象となる様式について、主なものは協会けんぽのホームページで確認することができます。

 

◆負傷による給付申請の際は「負傷原因届」を提出

従来、負傷(けが)を理由として健康保険給付を申請する場合は、「傷病手当金支給申請書」や「高額療養費支給申請書」の「負傷原因記入欄」に記入することとされていましたが、新様式にはその欄が設けられていません。新様式に移行した後は、添付書類として「負傷原因届」に記入して提出することとなりますので、注意が必要です。

なお、「傷病手当金支給申請書」は全4ページに変更となります(1~2ページ目が申請者情報・申請内容、3ページ目が事業主の証明、4ページ目が療養担当者の意見書)。

 

◆新様式の入手方法等

7月1日以降、協会けんぽの窓口に置いてある様式やホームページからダウンロードできる様式は、新しいものに切り替えられます。また、ユーザー登録をすれば全国のセブンイレブンの「ネットプリント」(有料)サービスでも入手することができます。

なお、7月1日以降すぐに旧様式が使えなくなるわけではありませんが、協会けんぽではスムーズな手続きができるよう新様式への切替えについて協力を呼びかけています。




平成26年版「パートタイマー白書」にみる人材の過不足感

 

◆人材の過不足感に関する調査

「パートタイマー白書」は、株式会社アイデムにより平成9年度から刊行されている調査報告書です。

この中に、人材の過不足感に関する調査結果があります。この調査は、正社員と非正規雇用の従業員(パート・アルバイト、契約社員、派遣社員)を雇用している企業に対して実施しています。

 

◆若年層の正社員が不足

自社の従業員に対する過不足感を雇用形態別・年代別に問うと、いずれの形態においても、若い年代で不足感が高いようです。特に、正社員においてその傾向は顕著で、20代正社員が「不足」とした企業は56.3%となっていますし、30代正社員では47.3%と半数近くに上ります。

他の年代の正社員に対する不足感が40代:22.0%、50代:8.3%、60代以上:4.2%となっているのと比較すると、若年層の不足感よくわかります。

また、業種別では、「建設業」「運輸業」の約6~7割の企業で、20代・30代の正社員が「不足」していると回答しており、若手人材の獲得は大変なようです。

 

◆パート・アルバイトの年代別過不足感

パート・アルバイトでも、若い年代のほうが、不足感が強い(20代:25.2%、30代:20.5%)ですが、正社員の不足感のほうがより強いようです。

業種別に見ると、「飲食店、宿泊業」「生活関連サービス・娯楽業」では、20代パート・アルバイトが「不足」していると回答した企業が約5割に上り、他の業種よりも割合が高くなっています。

 

◆契約社員・嘱託社員/派遣社員の年代別過不足感

契約社員・嘱託社員については、どの年代に対しても「ちょうどよい」という回答が8割を超えています。派遣社員についても約9割の企業が「ちょうどよい」との回答でした。

非正規労働者を正社員化する企業が多くなってきていますが、人材不足への対応として、特に若年層の囲い込み競争は今後さらに激化しそうです。



個別労働紛争解決制度」の利用状況発表 トラブルの特徴は?

 

◆平成25年度の実施状況は?

厚生労働省から「平成25年度個別労働紛争解決制度」の施行状況が公表されました。

「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルの未然防止や早期解決を支援する制度で、「総合労働相談」、労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があります。

 

◆パワハラが2年連続最多に

平成25年度は、前年度に比べていずれの方法でも件数が減少しました。

ただし、総合労働相談の件数は前年度比1.6%減となったものの、6年連続で100万件を超え、高止まりしています。助言・指導申出件数は、約1万件(同3.3%減)、あっせん申請件数は約5,700件(同5.5%減)となっています。

また、総合労働相談のうち、民事上の個別労働紛争の相談内容で、いわゆるパワハラにあたる「いじめ・嫌がらせ」が5万9,197件と2年連続で最多となっていることが注目されます。

相談内容の内訳として、パワハラの次に多いものは、順に「解雇」(4万3,956件)、「自己都合退職」(3万3,049件)となっています。

 

◆正社員が当事者になる割合は減少傾向

紛争の当事者である労働者の就労形態としては、総合労働相談については、「正社員」9万7,573件(39.7%)、「パート・アルバイト」4万604件(16.5%)、「期間契約社員」2万6,696件(10.9%)、「派遣労働者」1万31件(4.1%)となっています。

過去10年の推移で就労形態別の当事者の属性を見ると、正社員は減少傾向にあり、期間契約社員が増加傾向、パート・アルバイトや派遣社員については横ばいという状況です。これは、他の「助言・指導」「あっせん」の方法でも、同様の傾向のようです。

助言・指導は1カ月以内に96.8%が、あっせんは2カ月以内に94.5%が手続きを終了するなど、“簡易・迅速・無料”という特徴をアピールしている制度ですが、できれば利用する必要がないよう、日頃から適切な労務管理を心がけたいですね。



「効果的な社内研修」を実施できていますか?

 

◆なかなか効果が出ない現実…

従業員の能力アップや成長を図るために、社内研修を行う企業は多くあります。しかし、その効果が上がっているかと問われると、疑問符がつくケースも多いところです。

「何から手をつけたらよいのかわからない」、「研修にかけられる予算はあまりない」、「社内に研修を行うことができる人材がいない」、「時間をかけた割には成果が現れない」など、悩むことも少なくありません。

 

◆研修の成果を上げる取組み

しかし、ちょっとした工夫で、効果的な社内研修を行うことは十分可能です。

例えば、公益財団法人日本生産性本部では、研修の成果を上げている会社のポイントとして、次の5点を挙げており、非常に参考になります。

(1)目的やゴールを明確にしてプログラム化する

(2)研修テーマを絞り参加者にも事前に周知する

(3)研修のステータスを上げる(研修を日常業務に優先する重要なものと位置付ける)

(4)研修と実務の結び付きを強める

(5)階層間をつなげた教育研修を行う

意識・意欲を高めるために受講者に参加費を自己負担させたり、より現実の必要性に即した研修とするために一般社員に研修を企画させたりするといった取組みを行っている企業もあるようです。

 

◆継続した取組みが肝要

なかなか効果が出ないと研修にかける意欲も失われがちですが、企業の成長には従業員の能力アップや成長が不可欠であることは間違いありません。

長期的な視点で、継続して取り組み続けることが大切です。

まずは上記に挙げた5点ができているか、社内研修のやり方を見直してみるところから始めてみてはいかがでしょうか。



改めて確認しておきたい「クレーム対応」の基本

 

◆増えているクレーム

クレームに関しては、「顧客が苦情を企業に伝えるのは26件中1件」という測定結果(1984年)が有名で、この数字がいわばクレーム対応を行う上での常識ともなっています。

しかし、現在、クレームの発生率は確実に上昇しており、あるリサーチによると、「4.63回に1回」(2012年)という結果も出ています。クレーム発生率が跳ね上がっている昨今、無用のトラブルを防ぐためには、今一度クレーム対応のやり方について見直しておく必要があります。

こうした状況を反映してか、クレーム対応をテーマとしたセミナー等も増えており、また、会社顧問として外部の実力のある苦情処理専門家を置く企業も急増しています。

 

◆「当たり前のことを当たり前にやる」ことが大切

クレーム対応では、初期対応が最も大切です。そこで、「当たり前のことを当たり前にできる」体制づくりが一番効果的なクレーム対応策となります。

例えば、次のこと等を社員の間で徹底しておきましょう。

・後回しは確実にクレームを悪化させるため、クレーム対応は最優先で行う

・応対する者により返答が異ならないようにクレーム対応方法の標準化(一元化)を行う

・引継ぎの際に確実な情報連携を行い、何度も同じことを聞かずに済むようにする

・クレームの原因究明を行うことができる場を設ける

また、受けたクレームを記録に残し、情報を共有できるようにすることも効果的です。

このような体制を確立するためには、電話応対など、研修で教育することが必要となることもあります。

 

◆状況に応じた対応を

もちろん、中にはいわゆる「モンスター・クレーマー」のような、対応に苦慮するクレームもあります。社内で対応が困難なハードクレームについては、弁護士や警察に解決を任せる必要があるものもあります。

適宜、状況に応じた対応ができるようになれば、クレーム対応は万全と言えるでしょう。



人手不足産業でも採用できた事業所とできなかった事業所の違い

 

◆医療・福祉、建設業における人手不足が深刻

厚生労働省が発表した「人手不足産業における高卒求人の充足状況」によると、平成25年度の高卒者向け求人は、製造業、医療・福祉、建設業、卸売・小売業などで多かったですが、これらの産業の充足率をみると、医療・福祉で31.3%、建設業で34.2%と低く、人手不足の深刻化による充足率の向上が課題となっています。

 

◆採用できた事業所・できなかった事業所の差は?

充足率が低かった医療・福祉と建設業において、高卒求人票を用いて採用できた事業所とできなかった事業所の違いをみると、医療・福祉では、早期(平成25年7月末まで)に求人を出した事業所の割合が、採用できた事業所で77.2%、採用できなかった事業所で 58.7%となり、差が見られました。

また、求人票に「採用・離職状況」の記載があった事業所の割合は、採用できた事業所で73.6%、採用できなかった事業所で60.4%となっています。

建設業でも、早期に求人を提出した事業所の割合については、採用できた事業所(69.2%)が採用できなかった事業所(45.1%)を大きく上回りました。

これらのことから、「早期の求人提出」、「求人票における積極的な情報提供」が充足に大きな影響を与えている要因と考えられます。

 

◆なぜ人が集まらないのか?

高校の進路指導担当教諭に対して、充足率の向上が課題となっている3産業(建設業、医療・福祉、宿泊業・飲食サービス業)に生徒が応募しない理由を聞いたところ、宿泊業・飲食サービス業では、「休日が少ない・労働時間が長い・勤務時間が不規則等、労働時間の問題」、建設業と医療・福祉では、「仕事がきつそう・面白くなさそう等、仕事内容(職種)の問題」という回答割合が高かったようです。

 

◆充足率向上のために必要な改善点

必要な改善点について、高校の進路指導担当教諭からの意見をまとめると、「医療・福祉」では、給与・休日・労働時間等労働条件を改善し、社会的評価・イメージを向上させる取組み、日勤・夜勤といった就業規則が不規則でも生活のリズムが崩れない配慮、OJTの充実と資格取得までの制度や支援の充実などが挙げられました。

「建設業」では、将来性やスキルアップのビジョンを示すことや、3Kのイメージを払拭する取組み、労働条件の改善、「宿泊業・飲食サービス業」では、長時間拘束される労働条件改善のための交代制シフトの導入や正社員としての仕事内容とキャリアアップの将来像を示すことなどが挙げられました。




不当な差別は勧告の対象に! 障害者雇用に関する動向

 

◆「障害者への差別禁止」と「職場環境の配慮」を義務化

昨年成立した改正障害者雇用促進法により、再来年の2016年4月から、企業が障害者を雇用する際の差別禁止や、職場環境の配慮が義務化されます。

これらに違反した企業は指導や勧告の対象になるようです。同省は労使の意見も踏まえ、2015年3月末までに指針を策定する予定です。

 

◆差別の禁止に関する指針のポイント

厚生労働省が発表した報告書によると、対象となる障害者の範囲は障害者雇用促進法に規定する障害者、対象となる事業主の範囲はすべての事業主です。

募集・採用、賃金、配置、昇進などの各項目に沿って禁止される差別を整理する必要があるとし、各項目について、障害者であることを理由にその対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることが差別に該当するとしています。

また、障害者を有利に取り扱うことや、合理的配慮を提供し、労働能力などを適正に評価した結果として異なる取扱いを行うことなどは、差別に当たらないとしています。

 

◆合理的配慮の提供に関する指針のポイント

障害者、事業主の範囲は「差別の禁止に関する指針」と同じです。募集・採用時には、障害者から事業主に対し、支障となっている事情などを事前に申し出、採用後には、事業主から障害者に対し、職場で支障となっている事情の有無についての確認などが必要になってくるようです。

また、事業主は合理的配慮に関する措置を障害者と話し合い、合理的配慮に関する措置を確定した際には、内容と理由を障害者に説明するなどの対応が必要になってくるようです。

合理的配慮の具体的な例としては、募集および採用時におけるものとして、視覚障害の方に対する募集内容の音声等での提供や、聴覚・言語障害の方に対する筆談等による面接などが挙げられています。

採用後におけるものとして、肢体不自由な方に対しては、机の高さを調節すること等、作業を可能にする工夫を行うことや、精神障害の方に対しては、出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮することが挙げられています。

 

◆今後の行政による取組み

同省は、指針の策定に加え、行政による様々な取組みが重要であるとし、事業主や労働者に対する障害の特性などに関するパンフレットの配布、セミナーの実施などの啓発活動や、合理的配慮の適切な提供に向け、具体的な事例の収集・情報提供やジョブコーチ(障害者が職場に適応するための援助者)の質的な充実などの対策を講じていくようです