2012/09/01

9月の事務所便り

最多は月平均67時間! 残業の多い職種は?


 ◆月平均は28.6時間
 株式会社インテリジェンスは、25~34歳のビジネスパーソン(正社員・契約社員)5,000人を対象に「残業時間」に関するアンケート調査を実施し、その結果を発表しました。
 この調査結果によれば、2012年における平均残業時間は「月28.6時間」であり、調査開始(2007年)以降、最も多くなりました。
 同社では「リーマンショックによるリストラの実施や採用の抑制で人員を抑えていた中、足元の景気回復により企業で人手不足が発生し、既存社員の残業が増えていることが背景にある」と分析しています。

 ◆残業の多い職種
 職種別(58職種)の平均残業時間の1~10位は、次の通りとなっています(カッコ内は月平均の残業時間)。

(1)映像クリエイター(67.0)
(2)プロパティマネジメント(不動産業)(62.5)
(3)セールスエンジニア(製造業)(57.6)
(4)コンサルタント(シンクタンク)(51.5)
(5)広報(49.7)
(6)ゲームクリエイター(45.0)
(7)ファンドマネジャー・アナリスト(44.3)
(8)営業(不動産業)(41.9)
(9)商品管理(流通業)(41.8)
(10)投資銀行業務(41.3)

 ◆これからの企業の対策
 残業増加の要因として「景気回復」と「人手不足」が指摘されていますが、既存社員の業務量(=残業時間)が増える企業は今後も増加するのではと言われています。
 残業時間の増加は、企業(人件費の問題)にとっても、従業員(健康上の問題)にとっても大きな負担となりますので、何らかの対策を講じる必要があるでしょう。


「合同労組」との団体交渉をめぐるトラブル事例

 ◆合同労組からの救済申立が増加傾向
 東京都労働委員会から、平成23年における「不当労働行為審査事件」の取扱状況が発表されました。これによると、合同労組からの救済申立は89件(新規申立事件の約8割に相当)であり、過去10年では最高となっています。
 以下では、労働委員会が取り扱った(命令を出した)、合同労組との団体交渉をめぐる最近の事例をご紹介します。

 ◆団交の時間・場所の限定が不当労働行為に該当したケース
 この事件は、国立大学である大阪大学が、教職員組合による団体交渉の申入れに対し、開催時間を「午後0時から午後1時の昼休みの時間帯」と指定し、開催場所を特定の地区に限定したことが、不誠実団交に該当するとして、救済申立があった事件です。なお、以前は、団交は勤務時間中や勤務時間終了後に行われていたそうです。
 初審(大阪府労働委員会)は、大学側に対し、団交申入れに開催時間・場所の条件を正当な理由なく限定しないことおよび文書交付を命じたところ、大学側はこれを不服として中央労働委員会に再審査を申し立てていました。
 結論として、再審査申立ては棄却され、「大学が団体交渉の開催時間と場所を限定したことには正当な理由がなく、不当労働行為に当たる」とされました(7月9日)。

 ◆団交拒否が不当労働行為に該当したケース
 千里金蘭大学(大阪)が、希望退職に応じなかった准教授(2人)が所属している労働組合と誠実に団体交渉を行わなかったのは不当労働行為に該当するとして、大阪府労働委員会は「不当労働行為を繰り返さない」とする誓約文を組合側に渡すように大学側に命じました(7月13日)。
 大学側では、2010年10月以降、組合側と団体交渉を続けていましたが、2011年度の教員配置の詳細を明示しないまま、希望退職に応じない場合は事務職へ職種変更するとし、その後、准教授は2011年3月末に解雇されていました。


今こそ必要な「旅費規程」の見直しと経費節減策

 ◆財務省主導による調査の結果
 財務省から、「民間企業の旅費に関する実態調査」(調査対象3,500社、回答540社)の結果が発表されています(調査実施は株式会社リサーチアンドソリューション)。
 この内容は、出張が多く経費がかさみがちな企業にとっては、非常に参考になるものでしょう。

 ◆「旅費規程」の具体的な見直し内容
 この調査結果によれば、「過去に旅費規程の見直しを実施した」企業は8割強で、大幅な見直しを実施していない企業は18.0%に過ぎませんでした。
 平成23年度調査における「旅費規程」の見直し内容で、約15%以上の企業が実施している内容は次の8項目でした。

(1)手続き、精算方法の簡素化(25.0%)
(2)ディスカウント・チケット等の利用(19.3%)
(3)手続き、精算方法の厳格化(17.6%)
(4)距離区分・地域区分の見直し(17.0%)
(5)出張事前承認・承認の厳格化(15.9%)
(6)日当の引下げ(15.4%)
(7)職階区分の見直し(14.6%)
(8)宿泊料の実費支給化(14.6%)

 ◆具体的な経費節減策
 また、出張関連の経費節減策として、下記の内容を実施している企業が多いようです。出張旅費が増加傾向にある企業にとっては経費節減のヒントとなるでしょう。

・出張件数の削減(必要な出張のみ実施、事前承認の厳格化、テレビ会議システムの導入)
・出張内容の短縮、小規模化
・「宿泊出張」から「日帰り出張」への変更
・各種割引運賃、パック商品、コーポレートカードの利用
・旅行代理店との契約
・会社でのマイレージの管理


「育児・介護」に関する制度の利用実績

 ◆制度によって利用実績にバラツキ
 厚生労働省が発表した、(1)育児休業制度、(2)短時間勤務制度、(3)所定外労働の免除、(4)子の看護休暇制度、(5)介護休業制度、(6)介護休暇制度に関する利用実績(平成23年4月1日から12月31日まで)の調査結果によると、正社員による(1)の利用実績は5割以上で、非正社員でも201~300人規模の企業では2割を超えました。
 しかし、その他の制度については、(2)短時間勤務制度の利用実績が201~300人規模の企業の正社員で約45%、(3)~(6)はいずれも「利用者はいない」の回答が50%を上回る結果となり、制度によって利用実績にバラつきがあることが明らかになりました。

 ◆正社員男性は「子の看護休暇制度」の利用が多い
 正社員の男性の利用実績に着目すると、101~200人規模の企業において(4)子の看護休暇制度の利用実績が4.6%、201~300人規模では9.0%と、いずれも(1)育児休業制度の利用実績を上回る結果となっています。
 非正規社員の男性については、(1)~(6)のいずれについても1%を下回る結果となっていますが、(4)については101~200人規模の企業で0.2%、201~300人規模の企業で0.9%と、(1)・(2)の0%よりは利用されていました。

 ◆介護に関する制度の利用実績は総じて低い
 今回の調査では、201~300人規模の企業における女性正社員の(1)育児休業制度の利用実績が80.0%と最も多い結果となりましたが、同規模の女性正社員で比較しても(5)介護休業制度は6.1%、(6)介護休暇制度は5.5%と大きな開きがありました。
 (5)・(6)については「対象者がいない」と回答している企業が2割を超え、育児に関する制度よりも対象者・利用者ともに少なくなっていることも原因と考えられますが、約半数の企業が「利用者はいない」と回答していることから、利用が進んでいないとも考えられます。


派遣・パート・アルバイトの時給に関する動向

 ◆派遣スタッフの平均時給
 株式会社リクルートが行った「派遣スタッフ募集時平均時給調査」(2012年6月)によると、三大都市圏における2012年6月度の募集時平均時給は1,480円で、20カ月連続で前年同月比を上回る結果となりました。
 この調査では、(1)オフィスワーク系、(2)営業・販売・サービス系、(3)IT・技術系、(4)クリエイティブ系、(5)医療介護・教育系の5つの職種に分けて調査を行っていますが、5月度まで(1)・(2)・(5)で前年同月を下回っていたところ、6月度は(2)が前年同月を上回り、5職種中3職種で前年同月を上回る結果となりました。

 ◆エリア別にみるとどうか?
 関東・東海・関西のうち前年同月比プラスとなったのは関東のみで、前年同月の平均時給1,547円に対し1,550円でした。
 東海の平均時給は前年同月と2012年6月度のいずれも1,308円で、関西では前年同月1,327円、2012年6月期1,326円という結果になりました。

 ◆パート・アルバイトの平均時給
 また、同社の「パート・アルバイト全国エリア別募集時平均時給調査」(2012年6月)によれば、三大都市圏における2012年6月期の募集時平均時給は950円で、前月比プラス2円となったものの、前年同月比ではマイナス2円という結果になりました。
 同調査では、(1)販売・サービス系、(2)フード系、(3)製造・物流・清掃系、(4)事務系、(5)営業系、(6)専門職系、(7)その他の7つの職種に分けて調査を行っていますが、(1)・(3)・(4)・(5)で前月比プラス、前年同月比では(6)以外のすべての職種でプラスとなりました。
 
 ◆エリア別にみるとどうか?
 首都圏エリアの平均時給は993円で前月比プラス4円でしたが、前年同月1,001円からマイナス8円という結果でした。
 東海エリアの平均時給は889円で、前月892円、前年同月897円のいずれも下回る結果となりました。
 関西エリアの平均時給は今月・前月ともに898円で、前年同月901円を3円下回りました。


うつ病治療に初の指針、産業医は適切な判断をしてくれますか?

 ◆うつ病治療に初の指針(ガイドライン)
 精神疾患による労災申請・認定件数が過去最高となるなど、うつ病を主とする精神疾患は労務管理上の今日的課題の1つとなっていますが、このほど、日本うつ病学会では、医師向けのうつ病治療に関するガイドラインをまとめました。
 うつ病の診断・治療について、医師の間でも安易な薬物治療や誤診などが問題となっているようです。
 
 ◆「新型うつ病」は対象外
 ただ、今回のガイドラインでは、いわゆる「新型うつ病」は対象外とされています。新型うつ病については、精神医学的に深く考察された用語ではなく、医学的知見の明確な裏打ちがないというのが理由だそうです。
 会社としては、うつ病だと思われても他の疾患(躁うつ病、不安障害、発達障害など)であったり、新型うつ病と思われるけれどもはっきりしなかったりするような場合は対処が難しいものです。
 疾患としての確定的な判断は、医師による診断を待つより他ありません。社員本人の快復のためになる医師を探すのは難しいと言いますが、社員の状態を的確に判断してくれる、時には社員の嘘を見抜いてくれる会社側の医師・産業医を探すのはさらに大変です。

 ◆産業医の照会サービス
 そうした悩みを持つ会社のために、うつ病の予防、休職・復職の判定などができる医師・産業医を紹介してくれるサービスがあるそうです。
 精神科や心療内科を専門とする産業医は少ないのが現状ですが、こうしたサービスを利用することで、会社が依頼している産業医やかかりつけ医が精神疾患等の診断に精通していないような場合でも、会社として適切な対応をすることが可能になるかもしれません。

 ◆日頃の労務管理が重要
 ただ、忘れてはならないのは、メンタルヘルス不調社員や休職者への対応については、休職・復職時の対応も重要ですが、そうした状態に陥らせないための日頃の労働時間管理・職場環境の改善がさらに重要だということです。それは、会社にとってのリスクやコストを考えた場合にも、結果的には効果のある方法です。


従業員の「健康管理・安全管理」が注目されています

 ◆従業員の健康問題=会社のリスク
 運転手のてんかんや睡眠時無呼吸症候群による重大事故、熱中症の増加、職場で使用する有害物が原因とみられる胆管がんなどのニュースが報道されています。
 これらは「従業員の健康管理・安全管理」という観点からも、「会社のリスク管理」という観点からも非常に重要なことでしょう。

 ◆10月に「全国労働衛生週間」を実施
 厚生労働省が実施する「全国労働衛生週間」は、労働衛生に関する国民の意識を高めるとともに、職場での労働者の健康管理や職場環境の改善などの活動を促し労働者の健康を確保することなどを目的として、1950年から毎年実施されています。
 毎年10月1日~7日までが本週間、9月1日~30日までが準備期間とされ、各職場での職場巡視やスローガン掲示、労働衛生に関する講習会・見学会の開催など、様々な取組みが展開されます。

 ◆健康保険組合への優遇策
 生活習慣病の予防を目的に実施されているメタボ健診や保健指導についても動きがあります。厚生労働省は、2013年度から、これらの健診・指導の受診率(実施率)に応じて、健康保険組合の財政負担(後期高齢者医療制度に払う支援金)を増減する施策を導入するようです。健康保険組合から受診の働きかけが強まるかもしれません。
 会社の安全配慮義務にもつながりますので、健康診断の重要性を従業員に説明し、確実に受診するよう指導する必要があります。

 ◆是正指導・勧告の対象にも
 過重労働による健康障害やメンタルヘルス不調といった健康問題に関連して、労働基準監督署による是正指導・勧告も頻繁に行われています。
 今年の全国労働衛生週間に合わせて、従業員の健康管理・安全管理について見直してみてはいかがでしょうか。


海外進出企業における労務管理の重要性

 ◆インドの日系企業で起きた現地従業員の暴動
 7月中旬に自動車大手スズキのインド子会社で、現地の労働組合が行っていた抗議行動が発展し、従業員が工場の施設を放火するなど暴徒化した事件が起きました。
 約100人の負傷者が出たとされており、工場の生産活動もストップするという事態になりました。この問題により、新興国に海外進出している日本企業は海外での労務管理の厳しさを再認識させられることになったと言えるでしょう。

 ◆新興国での人件費の上昇
 日本貿易振興機構(JETRO)が発表した2011年度「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査」(有効回答3,904社、有効回答率47.8%)によると、経営上の問題点として「従業員の賃金上昇」を挙げた企業が全体の68.8%に上ったそうです。
 また、「従業員の賃金上昇」を挙げた企業の割合は、中国、ベトナム、インドで8割を超えました。急速な経済成長を遂げているインドや中国などの新興国では、貧富の格差や若年労働者の意識変化等により、労働争議が多発しているそうです。

 ◆文化、法規制等の違い
 また、株式会社帝国データバンクが発表した「海外進出」に対する企業の意識調査(有効回答10,467社、回答率45.6%)によると、自社が海外事業を行ううえでの障害・課題として、「文化・商習慣の違い」や「法規制・制度の違い」を挙げる企業がいずれも3割超となりました。労務管理上も国ごとの法規制・慣習の違いにより、様々な軋轢が発生しているようです。
 今回暴動が起きたインドを例にみても、伝統的な身分制度「カースト」による国民の差別意識により、高い階級出身の人が低い階級出身の上司の下で働きたがらないなど、人員配置などの労務管理に工夫が必要な場合があるようです。

 ◆海外進出企業の課題
 国際化の進展により海外進出企業はますます増加することが予想されます。今後、企業は現地の社会情勢の変化、法規制、文化・慣習等を理解して、現地担当者に任せきりにせず、経営政策として労務管理上の問題に当たっていく必要があるでしょう。


社会人が転職を考え始める年齢は?

 ◆「24~26歳」で3割超
 株式会社インテリジェンスの転職サービス「DODA(デューダ)」が実施した調査「ビジネスパーソンが転職を考え始める年齢について」(大卒で転職経験のない5万人が対象)の結果によると、「25歳」「26歳」が同率11.3%で最も多く、次いで「24歳」の10.5%が続きました。
 年代別では、「20代」が68.4%、「30代」が22.9%、「40代以上」が8.6%となっており、約7割が20代のうちに転職を考えていることがわかりました。 

 ◆女性の8割超が20代で転職を検討
 性別でみると、女性の85.3%が20代で転職を考え始める一方、男性では60.4%でした。女性は出産・育児などによりキャリアが中断される可能性を視野に入れ、早い段階で自己のキャリアを見つめ直す人が多いためとみられます。
 今後も女性の雇用確保には、企業の「ワークライフバランス」への取組みが大きく関係してくるでしょう。

 ◆技術系は「27~29歳」、非技術系は「23~25歳」が多い
 職種別に転職を考え始めた年齢をみると、「モノづくり系エンジニア」、「IT系エンジニア」、「メディカル系技術職」などの技術系職種においては「27~29歳」(社会人5~7年)が多く、「販売/サービス系」、「事務アシスタント系」、「営業系」などの非技術系職種では、「23~25歳」(社会人2~4年)が多い傾向にあります。


“就業者減少時代”における雇用拡大対策
 
 ◆2030年の就業者は今よりも850万人減少
 厚生労働省は、経済の低成長が続いて雇用政策が進まなかった場合、2030年の就業者数は2010年時点より約850万人少ない約5,450万人になるとの推計結果をまとめました。
 少子高齢化により現役世代である15~64歳の人口が減るためですが、経済成長率を維持し、女性や高齢者の就労支援が進んだ場合には、減少数は約210万人程度に抑えられるとしています。
 労働力人口が大幅に減少することに対して、今後の対策が急務となっています。

 ◆製造業は減少、医療・福祉は増加
 産業別にみると、2030年における「製造業」の就業者数は、経済の成長や政策がうまくいく楽観シナリオでも70万人程度減る見込みです。一方、「医療・福祉」の分野は300万人以上増え、それぞれの就業者数は1,000万人弱でほぼ並びます。
 他に就業者数が伸びる業種は、「情報通信業」と「サービス業」だけとなっています。

 ◆若年層の支援が急務
 大学の定員増加や少子化により大学進学率が上昇する一方、卒業時に就職も進学もしていない若者が増えているようです。
 20~34歳の就業率は2010年で73%台にとどまっており、政府は若者と中小企業を結びつけることで若年層の就業者数を増やすことが急務だとしています。

 ◆雇用を「まもる」から「つくる」へ
 同省がとりまとめた報告書では、雇用を「まもる」から「つくる」、「そだてる」、「つなぐ」に軸足を移すことが重要だと指摘しました。
 安定した経済成長を続けるには、一部の産業への依存をやめ、様々な分野において人材を育てる訓練制度や育成支援を行うことで、労働者の生産性を高める工夫が必要だと言えるでしょう。