2008/06/27

7月の事務所便り

 増加する精神疾患・過労自殺の労災認定

◆長時間労働や仕事上のストレスによる精神疾患
過労や職場のストレスが原因でうつ病などの精神疾患にかかり過労自殺した(未遂を含む)として、2007年度に労災認定された人は前年度を15人上回る81人となり、 2年連続で過去最悪となりました。過労自殺者を含む精神疾患の労災認定者も268人と、前年度比3割増となっています。
厚生労働省は、「長時間労働に加え、仕事の重圧なども精神疾患の原因になる」として、労働環境の改善を求めています。

◆過労死と過労自殺
 過労死や過労自殺の定義を整理してみましょう。
「過労死」は、働き過ぎが原因で、心筋梗塞や脳梗塞など心臓や脳の疾患を発症し死亡するものです。認定基準としては、「発症前1カ月に100時間または2~6カ月間に月80時間を超える時間外労働があれば関連性が強い」とされています。
「過労自殺」は、過労や職場でのストレスからうつ病などの精神疾患となり、自殺に至るものです。原則として発症前6カ月の間に、長時間労働や仕事の量・質の大きな変化、重大なミス、出向やセクハラなどの業務上の強いストレスがあったことが認定の要件となります。
 今回の調査では、脳梗塞などの脳・心臓疾患で労災認定された人は前年度から1割増えて392人(うち死亡したのは142人)と、過去最悪となりました。

◆精神疾患増加の理由とその対処法
2007年度は精神疾患の労災申請数が前年度比16.2%増の952人、一方、脳・心臓疾患の申請は0.7%減の931人で、調査開始以来初めて、過労による精神疾患の申請が脳・心臓疾患を上回ることとなりました。
精神疾患の労災認定者の1カ月平均残業時間について、80時間以上だった人は111人でした。一方、20時間未満の人も72人いましたが、「長時間労働だけでなく職場のいじめや過剰なノルマなどで精神疾患になるケースもある」という声もあり、一概に時間外労働の多寡だけでは判断しにくいところです。
労働者の精神疾患が増える背景には、企業が目先の発症者対策に追われ、長時間労働が減らないという根本的問題があります。また、個人主義や「勝ち組」「負け組」といった考え方が横行し、会社の中で連帯して集団的に問題を解決する能力が低下していることも一因といえるでしょう。
精神疾患は薬だけで治るものではありません。ものの見方や感じ方を修正するカウンセリングの実施など、職場や家族が一体となって取り組んでいくことが必要です。  


 注意すべき職場での電話応対マナー

◆電話の応対でビジネスを円滑に
 電話を取り次ぐという経験が少ないために、「○○様でいらっしゃいますか」「あいにく○○は不在でございます」などといった言葉が使えない、いわゆる『携帯電話世代』の社員が増えてきました。電話応対のマナーを知らない社員の姿も目立ちます。
気持ちのよい電話の応対は、ビジネスを円滑に進めるうえで重要な要素です。電話ではなく電子メール等で要件を済ますケースも増えている昨今ですが、職場での電話応対のマナーについて改めて考え直す機会が必要かもしれません。

◆電話を受ける場合の基本的なマナー
電話応対で最も注意すべきなのは、「横柄な受け答えをしたり、面倒くさそうに答えたりしない」ことです。会社の信用をなくしてしまったり、印象が悪化したりしかねません。
次に、「『お待ちください』と言った後、長時間待たせっぱなしにしない」ことも重要です。しばらく時間がかかりそうな場合には、いったん電話を切り、こちらからかけ直す配慮が必要です。当人が不在だったときは、先方が「またかけます」と言った場合でも、電話があった旨のメモを残します。いざ本人が電話を受けた際に、「先ほどは不在で失礼しました」という一言がないと、失礼に当たるからです。
また、電話を受けるときに特に注意したいのは、「他の人に回すのに時間がかかる」、「取り次ぐ途中に切れてしまう」といった、機器操作上の不手際がないようにすることです。そのためには、普段から電話機の操作に慣れておく必要があります。

◆電話をかける場合の基本的なマナー
まずは、「社名や氏名をはっきり名乗る」ことが大切です。また、先方は忙しい時間帯かもしれません。「昼食時間や営業時間外の電話の際は気遣いの言葉を入れる」、「『お時間よろしいでしょうか』と確認する」といったことも重要なポイントです。
電話を切るときは、受話器を静かに置きます。

◆気持ちのよい電話応対のために
電話は対面の場合と違って相手の表情や状況が見えないだけに、受け答えにも工夫をする必要があります。「呼び出し3回以内に出る」「できるだけ丁寧に話す」「はっきり話す」「声のトーンをいつもより高めにする」ことを心がける必要があります。
新入社員が研修等で電話のマナーを学ぶことも大切ですが、ベテラン社員も、先方に不快感を与えていないか、時には意識して振り返ってみることも必要です。


 「メタボ健診」で生活習慣病を予防

◆4月からスタート
「太りすぎは健康に悪い」と言われますが、最近では、特に内臓脂肪による肥満が生活習慣病に大きく関わっていることが判明しています。2008年4月から、この内臓脂肪に着目した特定健診・特定保健指導、通称「メタボ健診」が始まりました。

◆メタボ健診とは
「メタボリック・シンドローム」とは、腹囲が男性85センチ以上/女性90センチ以上を基準とする「内臓脂肪による肥満」に加えて、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上が該当する状態を指します。該当者は、糖尿病などの生活習慣病の一歩手前で、脳卒中や心臓病の発症にもつながりやすい状態です。
そこで、健康診断を実施して該当者やその予備軍を探し出し、生活習慣の改善指導を受けてメタボ脱出を目指してもらうこととなります。これが「メタボ健診」です。

◆具体的な内容
メタボ健診の対象は、40~74歳の人です。政管健保をはじめ、企業の健康保険組合、市町村の国民健康保険などの公的医療保険運営者が健診・指導を実施します。
健診の結果、メタボリック・シンドロームに該当した人は、生活習慣の改善指導を受けます。最初に面談や講習を受け、その後も3~6カ月にわたって定期的に専門家から面談や電話でアドバイスを受けることになります。「腹囲は基準以上だったが、そのほかに数値が悪かったのは1項目だけである」メタボ予備軍に該当する場合は、最初の面談だけとなります。
 また、各医療保険運営者には、健診結果を電子情報として蓄積することも義務化されました。国民の健康状態が把握しやすくなり、また、健診情報と患者が病院で治療を受けたときの診療情報を併せて分析した総合的な判断もしやすくなります。

◆メタボ健診の狙い
 メタボ健診のそもそもの狙いは、生活習慣病の予防による医療費の抑制です。厚生労働省によると、生活習慣病の医療費は国民医療費の3分の1を占めています。医療費抑制のためには、こうした生活習慣病の発症や悪化を予防することが欠かせません。健診・指導費はかかりますが、発症または悪化前の生活指導による改善により、結果的に将来の医療費を抑制する考えです。
 始まったばかりの「メタボ健診」。有効であるのか、それとも制度の見直しの必要があるのか、もうしばらく注視する必要がありそうです。


 外国人研修制度・技能実習制度の問題点

◆問われる制度のあり方
 開発途上国への国際協力のあり方について、今、自衛隊の海外派遣の是非を含め、活発な意見交換がなされています。そんな中にあって、「外国人研修制度・技能実習制度」のあり方も問われています。

◆外国人研修制度・技能実習制度とは
外国人研修制度・技能実習制度は、開発途上国への国際貢献と国際協力を目的として、諸外国の青壮年労働者を受け入れて、日本の技術・技能・知識の習得を支援することを目的とする制度で、財団法人国際研修協力機構が推進団体となり、民間団体や企業に対して総合的な支援・援助や適正実施の助言・指導を行っています。
基本的には、民営または国公営の送出し機関から送り出された研修生(技能実習生)に来日してもらい、日本側の受入れ機関において研修を行って、日本の高い技術の習得を支援します。
研修生は、「研修」の在留資格で入国します。日本国内の受入れ先が決まっていないと入国できません。研修生の滞在期間は原則1年以内。研修の結果、一定以上の技能水準に達したことが認められた場合、在留資格が「研修」から「特定活動」に変わり、新たに受入れ企業と雇用契約を結んで、継続してさらに2年を限度に就労することができます。これが「技能実習」です。技能実習の対象職種には、63職種116作業が認定されています。

◆急増する問題点
 外国人研修制度・技能実習制度は、単なる経済援助とは性格の異なる「人材育成協力」に主眼を置いた制度である反面、問題点も含んでいます。受入れ企業・団体による「不正行為」です。
 外国人研修・技能実習制度に基づいて外国人を受け入れた企業・団体のうち、不当な低賃金で働かせるなどの「不正行為があった」と認定された件数は、2007年度は449件にのぼりました。これは前年の229件の約2倍で、2003年の調査開始以来、過去最悪の結果です。
不正行為のうち最も多かったのは、賃金不払いなどの「労働関係法規違反」で178件、また、受入れを申請した企業と実際に就労した企業が異なる「名義貸し」も115件にのぼっています。旅券や通帳を取り上げるなど、「悪質な人権侵害行為」も70件ありました。日本人労働者を確保できない企業、外国製品との価格競争にさらされている企業が、本来の目的である国際貢献ではなく、低賃金労働力の確保のために制度を利用しているのです。また、研修生の側でも、出稼ぎのつもりで来日する者がいて、失踪者や不法残留者が増加しています。
こうした問題点に対して、制度の見直しや改善が迫られているのです。


 転職が原因で支給漏れの多い企業年金

◆約124万件の支給漏れが発覚
昨今の年金問題で国民年金や厚生年金の公的年金への関心が高まる一方、忘れられがちなのが企業年金です。加入者からの請求がなかったために2007年には約124万件の支給漏れが発覚した企業年金。特に転職時には、特に注意する必要があります。

◆企業年金の種類
企業年金は2種類に大別できます。1つは将来の給付額をあらかじめ約束する「確定給付型」、もう1つは年金資産の運用次第で給付額が変わる「確定拠出型」です。
確定給付型の企業年金には、厚生年金基金や確定給付企業年金、税制適格退職年金(2012年に廃止)などがあります。拠出した掛金の累計額とその運用収益であらかじめ年金額が決定されていることから、加入員が老後の計画を立てやすく、加入員数が伸びていました。福利厚生策として、企業が独自に自社年金を設けるケースもありました。
しかし、バブル崩壊等により運用環境が悪化し、大半の企業が、予定していた運用益を確保できずに積立不足に陥るという問題が発生しました。企業は不足分を補填しなければならず、運用失敗の負担が重くのしかかるケースもしばしば起こりました。
確定拠出型の企業年金は、こうした確定給付型の問題を解決できる特色を持っている制度で、2001年に誕生しました。掛金を誰が拠出するかの違いにより「企業型」と「個人型」がありますが、企業型の場合、企業が掛金を拠出し、運用は従業員が自ら行います。運用を加入者が個々に行うため、企業には確定給付型が持つ補填リスクがありません。
従業員にとっても、年金資産が個人別に区分され、残高の把握や転職時の資産の移行が容易だというメリットがあります。こうしたメリットゆえ、導入企業も徐々に増加する傾向です。

◆転職時の注意事項
 さて、転職時には、これらの企業年金に対してどのような注意が必要なのでしょうか。
例えば厚生年金基金の場合、会社の定める一定期間を超えていれば基本的にはその会社で運用を続け、期間が満たないときには運用は企業年金連合会に移ります。転職経験が多く、以前の勤め先の企業年金について覚えていない場合、まずは企業年金連合会に問い合わせれば、どの部分が連合会に移ったのかわかります。それでも不明のときは、各企業の基金に問い合わせることが必要です。
確定給付型の企業年金は、2005年以降、転職先の会社が受け入れる体制を整えていれば、年金資産の移管が可能になりました。また、確定給付型から確定拠出型への移行もできます。
 企業型の確定拠出年金は、転職先にも同様の制度があれば、それまでの年金資産を引き継ぐことができます。ただし、転職先に制度がない場合は、個人型の確定拠出年金として、国民年金基金連合会に年金資産を移管する必要があります。退職から半年以内に移管手続をしないと、運用を放棄したとみなされ、運用で得た利益を受け取ることができなくなりますので、注意が必要です。


 医師が身近になる!? 健康相談サイト

◆深刻な医師不足・病院不足
 地方や過疎化の進む地域を中心に、医師不足や病院不足が深刻化しています。そんな中、インターネットや携帯端末を利用して、医師が医療や健康に関する様々な疑問に答えてくれる、全国保険医団体連合会(保団連)による「健康相談サイト」が4月から開設されました。地域に関係なくいつでも気軽に医師に相談できるこのサイトが、今注目されています。
 保団連とは、1969年に結成された医師・歯科医師の団体で、その会員数は10万人以上(2008年5月1日現在)にのぼります。

◆現役医師が答える健康相談
 この健康相談サイトでは、無料の会員登録を行った利用者が健康上の悩みをサイトに送って医師に相談できます。また、質問者と医師が承諾した内容は、一般にも公開されます。サイトには「内科」「外科」「小児科」「産婦人科」「歯科」などの16の診療科と「医療制度」「その他」を合わせた、18項目の検索ボタンが設定されており、この検索ボタンの選択をするかキーワードの入力を行えば、該当分野の過去の質問内容と回答(Q&A)について自由に閲覧できる仕組みになっています。
 閲覧できるQ&Aの内容がかなり豊富なうえ、質問にはそれぞれの専門分野の医師が答えてくれるので、安心して利用できます。

◆上手なサイトの活用を
 このサイトは、保団連が、従来あった相談サイト「バーチャルドクター」をリニューアルし、4月から開設したものです。 保団連は、このサイトの開設趣旨について、「保健医療の枠組みの中でインフォームド・コンセントを推進していきたい」という思いからスタートしたとしています。サイト内で医療や健康に関する助言を行い、利用者が医療や健康に関する情報を得ることによって、医師・患者双方のコミュニケーションが高まり、インフォームド・コンセントの定着の一助となればとの思いから始まったものです。
 もちろん、このサイトの助言のみを頼りに、医師の診察を受けることなく自己判断してしまうべきではありませんが、気軽にいつでも医師に相談できるというメリットは計り知れないものがあります。「健康上の悩みはあるが、病院に行くほどではない」、「近くに病院が少なく気軽に行きにくい」といった場合や、「医師の治療や診察を受けているが、病状や治療方法について尋ねにくいことがある」といった場合に、有効に活用できそうです。


 最近の年金関係(納付率・年金記録問題等)の動向

◆国民年金納付率がさらに低下
社会保険庁は、2007年度における国民年金保険料の納付率が約64%となり、前年度の約66%を下回って2年連続低下となるとする見通しを明らかにしました。同庁では、近年、未納者対策としての強制徴収などに力を入れていますが、なかなか効果が現れていません。年金記録問題を背景に、制度自体への不信感が増しており、納付しない人が増えていると思われます。
低所得者に対する保険料の全額免除・一部免除の徹底などの対策を進めていった場合、納付率が「最大で24.8ポイント上昇する」とする試算結果を政府は発表していますが、納付率の上昇は現状ではなかなか難しいようです。

◆「ねんきん特別便」回答者は約半分
また、社会保険庁は、年金記録に漏れがある可能性が高い約1,030万人に3月末までに送付した「ねんきん特別便」への回答者数が、4月28日現在で約510万人であると発表しました。これは、全体の49.5%に相当します。
510万人の内訳は、年金受給者218万人(回答率73%)、現役加入者292万人(回答率40%)となっており、特別便が届いてもほったらかしにしている人が多いという実態が明らかになっています。
今月(6月23日)からは、現役の会社員などにも特別便の送付が始まる予定です。同庁の調査によれば、全体の55.7%に相当する約2,200万通は企業を経由して従業員に配布されるようです。大企業を中心に全事業所のうちの22.3%が配布に協力するとしていますが、中小企業では、事務負担から協力要請を拒んだところも多いようです。こうした場合には、直接従業員本人の住所に特別便が郵送されることになっています。◆一度却下されても新証拠があれば再審査 総務省の「年金記録確認第三者委員会」では、一度給付を却下した案件についても、その後に新たな証拠が見つかった場合には再審査を行う方針を発表しました。再審査を導入するのは、1件当たりの審査に時間をかけられないためだそうです。
一度却下されてしまった方でも、あきらめずに証拠となるものを根気よく探してみると良いかもしれません。


 中小企業でも義務化! 長時間労働者に対する医師の面接指導

◆4月からは中小企業でも義務化
「長時間労働者を対象とした医師による面接指導等の実施」については、平成18年に改正された労働安全衛生法で義務化されました(同法第66条の8)。過重労働による健康障害を防止し、労働者の安全と健康の確保を推進するためです。
この面接指導等の実施については、従業員が常時50人未満の事業場についてはこれまで2年間猶予されていましたが,今年の4月からは義務化されています。つまり、すべての事業場において長時間労働者に面接指導を実施し,医師の意見を聴いて措置を講じなければならなくなったのです。

◆どんなことを行わなければならないか
面接指導は「問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うこと」とされており、対象となるのは「時間外・休日労働時間が1カ月当たり100時間を超え,かつ,疲労の蓄積が認められる者」であって、会社に申出を行った労働者です(ただし,1カ月以内に面接指導を受けた労働者で医師が面接指導を受ける必要がないと認めた場合は除かれます)。
基本的には、会社が指定した医師が行う面接指導を受けることになりますが、労働者が希望する場合は、他の医師の行う面接指導を受けることもでき、その場合は結果を証明する書面を会社に提出する必要があります。 そして、会社はその結果を記録しておく必要があります。
また、会社は、医師の意見を聴いて、必要があると認められたときは、労働者の実情を考慮しながら、以下のような措置を講じなければなりません。この考え方は健康診断(安衛法第66条の5)と同様のものです。
・就業場所の変更
・作業の転換
・労働時間の短縮
・深夜業の回数の減少
・医師の意見の衛生委員会もしくは安全衛生委員会または労働時間等設定改善委員会への報告

◆その他の留意点
なお、(1)時間外・休日労働時間が1カ月あたり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者、(2)事業場において定めた基準に該当する(時間外・休日労働時間が1カ月45時間を超えた者は対象とすることが望ましい)者についても、努力義務としての面接指導の対象となります。面接指導の対象となる労働者以外の労働者であっても、予防的な意味から、会社は必要な措置を講ずることが重要とされています。


 「後期高齢者医療制度」の見直しについて

◆廃止法案が参議院で可決
75歳以上を対象に4月から導入され何かと話題になっている「後期高齢者医療制度」ですが、民主、共産、社民、国民新の野党4党は「後期高齢者医療制度廃止法案」を参議院に提出し、6月上旬の本会議で賛成多数で可決され、衆議院に送られました。これに対し、与党は、衆議院で否決や廃案とはせずに継続審議とする方針を示しています。世論に配慮するためだといわれています。

◆政府・与党の見直し・改善策が決定
政府・与党は、後期高齢者医療制度の見直し策を決めました。主な見直しの内容は以下の通りです。
<保険料軽減措置の拡充>
被保険者全員が年金収入年80万円以下の世帯については、来年度からは均等割部分の9割(今年度は8割5分)が軽減されます。
また、年金収入が153万円から210万円については、来年度からは保険料の所得比例部分を5割程度軽減するとしています。
<年金からの保険料天引きの一部見直し>
国民健康保険料を滞納せずに確実に納付してきた人については、本人口座からの引き落としが認められます。
また、年金収入が年180万円未満の人については、世帯主や配偶者らが肩代わりして口座引き落としを選択できるようになります。
天引きの見直しの実施時期については、早くても今年の10月以降のようです。

◆財源は不明確
上記の見直し・改善策は正式に決定されたものですが、今年度560億円、来年度以降360億円ともいわれる財源については、不明確との指摘があります。
 また、先送りされた事項(保険料の軽減を判定する年収基準、年金天引きを免除する要件など)もあり、今後の動向が注目されるところです。


 非正社員を正社員に転換させた場合に支給される助成金

◆改正パート労働法と正社員への転換
今年4月1日から施行されている改正パート労働法では、パート労働者の通常の労働者(正社員)への転換を推進するための措置を講ずるよう、事業主に義務付けています。最近では、製造業、飲食店、宿泊業、サービス業などでパート労働者を正社員へ転換させる企業も増えています。
改正法の施行を機に、非正社員を正社員化する動きはますます広がっていきそうですが、この改正にあわせて新たな助成金が創設されています。

◆非正社員の正社員化で助成金
厚生労働省は、「中小企業雇用安定化奨励金制度」を創設しました。
中小企業の事業主が、パート労働者や契約社員などの契約労働者(非正規社員)を新たに正社員として転換させる制度を就業規則などに定めて、実際に正社員に転換させた場合に、一定の金額が奨励金として支給されるものです。

◆支給額の2つのパターン <転換制度導入事業主>
新たに転換制度を導入し、かつ、この制度を利用して、直接雇用する有期契約労働者を1人以上正社員に転換させた場合に、一事業主について35万円が支給されます。 <転換促進事業主>
転換制度を導入した日から3年以内に、直接雇用する有期契約労働者を3人以上正社員に転換させた場合に、対象労働者1人について10万円が支給されます(10人を限度)。

◆支給対象となる事業主、要件
中小企業事業主で、雇用保険適用事業主であることが必要です。そして非正社員を正社員に転換させる制度を、新た(平成20年4月1日以降)に労働協約または就業規則に定め、かつ、1人以上正社員に転換させる必要があります。
なお、取扱機関は、都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)となっています。

2008/06/02

6月の事務所便り



新たに導入された「診療5分ルール

◆4月からスタート
「3分診療」という言葉にあるように、医師の診察時間が短いことに不満を持つ患者さんは多いようです。こうした状況を変えようと、2008年の4月からいわゆる「診療5分ルール」がスタートしました。診療時間が5分を超えるかどうかにより、医療費が変わることになります。

◆診療所や中小病院が対象
手術や検査など、すべての医療行為には「診療報酬」という全国共通の価格がついています。この診療報酬は2年ごとに見直されますが、「5分ルール」は4月に行われた診療報酬改定に盛り込まれました。
対象となるのは、診療所や一般病床数が200床未満の中小病院です。2回目以降の受診(再診)の場合、従来は基本の再診料(病院600円、診療所710円)に外来管理加算(520円)を診療時間に関係なく上乗せできましたが、改定後は「診察時間が5分以上」という条件がつきました。例えば、会話がほとんどなく常用薬の処方箋を出すような「薬だけ診療」には加算がつかず、現役世代の患者なら、自己負担(3割)は約150円安くなります。

◆「5分」の算定方法は?
では、どうやって「5分」という時間を計るのでしょうか。厚生労働省は「丁寧な診察を求めることが狙いであり、ストップウォッチや砂時計などを使って厳密に計ることを求めているわけではない」と説明しています。
不正を防ぐため、医師には診察内容や所要時間をカルテに記載させます。1時間に12人以上の患者を診察したり、5分以上を要したりする診察内容だったかどうかがチェックの対象になります。また、今回の診療報酬改定では、精神科外来の再診にも時間制が導入されました。カウンセリングなどの精神療法が「5分未満」、「5分以上30分未満」、「30分以上」で医療費が変わるようになっています。

◆制度導入で何が変わるか?
「5分ルール」に関しては、「丁寧な診療が期待できる」という患者側の期待に対して、医師側からは、「時間要件を満たして診療時間内に診察を終えようとすれば、1日に診察する患者数を削減せざるを得なくなる」といった意見や、「患者数を減らせば経営が悪化するし、時間要件を満たしてすべての患者を診察しようとすれば診察時間を大幅に延ばさねばならなくなり、医師の疲弊や看護師の労働強化につながる」といった意見も出ています。
賛否両論の中でスタートした「5分ルール」。いずれにせよ、新しい医療のあり方に一石を投じることになりそうです。


「新型インフルエンザ」への対策

◆政府による対策は?
新型インフルエンザへの政府の対策づくりが急ピッチで進んでいます。海外からの流入を防ぐ水際対策や国民へのワクチン事前摂取計画等を公表し、4月下旬には対策を実行に移す改正法も成立しています。

◆行動計画と具体的な対策
政府は2005年に新型インフルエンザに備えた行動計画を策定しました。また、2007年3月には、その計画に基づくガイドラインも公表しています。
2005年以降の取組みの内容は以下の通りです。
1.都道府県における対策本部の設置、行動計画の策定
2.厚生労働省を中心とした関係府省庁による対策を迅速・確実に実施するためのガイドラインの策定 3.農林水産省による主要国際空港における鳥インフルエンザ発生国からの入国者に対する靴底消   毒の徹底
4.新型インフルエンザ・ワクチンの生産に関する緊急調査研究
5.タミフル等必要物資の備蓄・配付、研究者・医療関係者・動物衛生専門家の能力強化、インフルエンザ・ワクチン開発支援の国際協力の推進

◆なぜ急に対策が進んだのか?
インフルエンザ流行の危機は、急に差し迫ったわけではありません。鳥インフルエンザウイルス「H5N1型」の人への感染も2006年がピークでした。ではなぜ、政府の対策が一気に進んだのでしょうか。
「国家の安全保障の問題である」という認識を欠き、欧米よりも鈍い政府の反応にしびれを切らした専門家らが、様々な手法で問題提起し、今年になってやっと政府の動きが活発になった感があります。

◆これからの課題は?
今後の課題としては、水際対策で流入を遅らせることはできても、被害を免れることは難しいことが挙げられます。「H5N1型」の鳥インフルエンザの流行が、インドネシアやベトナム、中国などに集中しているため、大流行が起きれば、先進国では日本が欧米より先に巻き込まれる可能性は高いです。ワクチンの事前摂取もどれだけ効果があるのか未知数です。
流行時に医師やベッド、人工呼吸器などをどのように確保するのか、また、備蓄量に限りのあるワクチンや抗ウイルス薬をどのような順番で投与していくのか、具体策の策定が急がれます。
注目を集める「キャリア形成促進助成金」

◆4月から制度改正
キャリア形成促進助成金制度とは、企業内における労働者のキャリア形成の効果的な促進のため、その雇用する労働者を対象として、目標が明確化された職業訓練や職業能力評価の実施、またキャリア・コンサルティングの機会の確保を行う事業主に対して助成される制度です。
2008年度4月よりこの制度が改正され、にわかに注目を集めています。

◆助成率の引上げと対象者の拡充
今回の改正の主な目的は、職業訓練等を実施するにあたり費用面の負担が大きい中小企業に対する支援の強化、および職業能力形成機会に恵まれない者を新たに有期雇用に雇い入れ有期実習型による組合せ訓練を実施する事業主への支援です。
まず、専門的な訓練への助成率が3分の1から2分の1(中小企業)へと引き上げられました。併せて、認定実習併用職業訓練への助成率も中小企業が3分の1から2分の1、大企業は4分の1から3分の1へと、それぞれ引き上げられました。
対象者も拡充され、短時間等労働者への訓練に対する助成および認定実習併用職業訓練に対する助成について、それぞれ、雇用保険被保険者だけでなくこれから雇用保険者になろうとする者もその範囲となりました。
また、新たな制度として、正社員になるには当該有期実習型訓練を受講することが適切であり、職業能力形成機会に恵まれなかった者として、キャリア・コンサルタントが認めた者を対象とした有期実習型訓練に対する助成も実施されることとなりました。

◆活用のための注意点
上記の助成金制度を活用するためには、様々な条件を満たしている必要があります。代表的なものとしては、「雇用保険の適用事業主であること」、「職業能力開発推進者を選任・届出していること」、「労働組合等の意見を聴いて計画を作成し労働者に周知していること」「過去2年間の労働保険料滞納や過去3年間の助成金の不正受給がないこと」等があります。
また、「職業能力開発休暇を与える場合は、その期間中に労働協約または就業規則に定めた賃金を支払っていること」や「事業主命令による職業訓練については、通常の賃金を支払っていること」も定められています。短時間労働者に対する訓練では「正社員への転換を行うこと」も条件となります。
訓練内容に関しては、あくまでも労働者個人のキャリア形成促進に役立つものが対象です。一般的なマナー研修や新入社員研修、またOJTで実施するもの等は対象になりませんので注意が必要です。

未成年者をアルバイトなどで雇う場合の注意点

◆雇用に関するトラブルに注意!
人材難と言われる昨今、高校生などの年少者や未成年者のアルバイト等は、貴重な労働力となっています。しかし、社会的経験の浅い年少者や未成年者の雇用はトラブルにつながりやすい危険性もあります。
採用の際や労働に関して、どのようなことに注意しなければならないのでしょうか。

◆親の許可が必要なのか?
ある会社からの質問で、「高校生のアルバイトを採用するにあたり、履歴書の親権者の署名捺印欄が空白ですが、何か問題があるでしょうか?」という相談がありました。
未成年者の雇用についてはまず、労働基準法第58条第1項 の「親権者又は後見人は、未成年者に代って労働契約を締結してはならない」といった部分が思い浮かびます。また、賃金についても、未成年者であっても独立して受け取ることができます。そう考えると、特に親権者の承認が必要とは考えにくいものです。
しかし、労働基準法第58条第2項では、「親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向ってこれを解除することができる」とあります。また。民法第5条第1項では「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」とあり、そして第2項では「前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる」とあります。つまり、親権者(法定代理人)の同意がない労働契約は、親権者によって取り消す(結果として、突然アルバイトを辞めてしまい会社に迷惑がかかる)ことがあり得るのです。したがって、履歴書の親権者の署名捺印は、トラブル防止のためにも記入してもらい、親権者の同意を得ておいたほうがよいでしょう。

◆年齢を証明する書面、身元保証人
また、年少者(18歳未満)の場合、年齢を証明する書面(住民票記載事項証明書など)を、事業場に備え付ける必要があります。また、万一の際のトラブル防止に備え、身元保証人をつける(できれば複数)ことも大切です。併せて身元保証人の連絡先も把握しておき、万一の際に連絡できる体制を作っておいたほうがよいでしょう。
 
◆その他の注意点
他に注意するポイントとしては、年少者はほとんどの変形労働時間制(例外あり)や午後10時以降の業務等も禁止されており、注意が必要です。そして、未成年者の場合、特に注意しなくてはならないのが、飲酒や喫煙です。飲酒や喫煙が発覚した際にどのような処置をとるかといったことは、労働契約時に書面および口頭でしっかり確認しておくことが望ましいでしょう。
違法派遣・偽装請負の一掃へ向けた取組み

◆「緊急違法派遣一掃プラン」がスタート
厚生労働省は、社会問題化している違法派遣や偽装請負を一掃するため、「緊急違法派遣一掃プラン」を4月からスタートさせました。新たに制定した「日雇派遣指針」や「労働者派遣法施行規則の改正」等をもとに、労働者派遣制度の周知と指導を強化していく方針です。

◆「労働者派遣法施行規則」のポイント
労働者派遣法施行規則の改正では、まず、派遣元が年1回労働局に提出する事業報告書の様式に、「日雇派遣労働者の数」、「従事した業務にかかる派遣料金」、「日雇派遣労働者の賃金」等を追加しました。また、派遣先責任者については、労働者派遣が1日を超えない場合でも選任を義務化し、派遣先管理台帳の作成も義務化しています。
その他にも、派遣先管理台帳の記載事項に、「派遣労働者が従事した事業所の名称及び所在地その他派遣就業した場所」を追加し、また、派遣元事業主への通知事項には、それらに加え「従事した業務の種類」も追加しました。
 
◆「日雇派遣指針」のポイント
日雇派遣指針は、日々または30日以内の期間を定めて雇用される者(30日以内の期間を定めた雇用契約を更新して通算30日を超えるような場合も対象となる)を対象とした、派遣元事業主および派遣先が講ずべき措置を定めたものです。
今回、厚生労働省から発表された指針は10項目ほどです。主なものとしては、まず「日雇派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置」として、事前の就業条件の確認や雇用契約の期間の長期化、契約解除の際に就業のあっせんや損害賠償等の適切な措置を図ること等が挙げられます。また、「労働者派遣契約に定める就業条件の確保」では、派遣先の巡回や就業状況の報告により、契約に定められた就業条件の確保が望まれています。
また、「労働・社会保険の適用の促進」「教育訓練機会の確保」「関係法令等の関係者への周知」「安全衛生に係る措置」などの、いずれも「派遣労働者や日雇労働者だから」という理由でおざなりにされがちだった分野についても、今回の指針では着目されています。「情報の公開」では、労働者派遣の実績、派遣料金の額、派遣労働者の賃金等の事業運営の状況に関する情報の公開が求められ、これにより、派遣労働者側も情報による選択をしやすくなると思われます。

◆今後の動きは?
今回の改正の多くは、日雇派遣に関するものですが、厚生労働省はこれを機会に期間制限業務や26業務の適正な運用等を含め、従来の違法派遣についても指導と監督を強化する方針を打ち出しています。

各自治体で広がる子供の医療費助成

◆少子化対策・子育て支援の一環
少子化対策の一環として、小中学生などに対して医療費の自己負担が軽くなるよう助成金を出し、子育てを支援する自治体が増えてきています。
助成の対象年齢や条件などの内容が自治体ごとに異なるうえ、制度の拡充が急速に進んでいるため、住んでいる自治体の助成メニューを把握しておく必要があります。

◆子育て支援対策として
東京都港区では、独自の助成制度に基づき、2005年4月から小中学生の入院費と通院費を無料にしています。健康保険に加入する区民であれば、外国人でも助成を受けられます。助成を受けるには区役所に「子ども医療証」の交付を申請し、医療機関で保険証とともに提示します。この医療費助成をはじめとする子育て支援対策の充実により、2004年度には0.78%と低かった合計特殊出生率は2006年度には0.97%まで持ち直しました。
このような子供の自己負担が軽くなるよう独自の助成制度を設ける自治体は増えています。名古屋市では、2008年1月から小学校高学年の入院費が無料となり、さらに8月からは中学生までその範囲が広がります。

◆各地域で内容に差
助成内容については、各自治体の財政状況やトップの方針によってまったく異なります。また、基本的な内容以外に、助成対象年齢が入院と通院で異なるケース(前述の名古屋市など)や、国が定める児童手当の支給要件に準拠した所得制限があったり、一部自己負担金が必要になったりする自治体もあります。例えば浜松市では、未就学児が対象の入院費への助成を4月から小中学生まで拡大しましたが、入院1日当たり500円の自己負担が求められています。また、窓口での支払いがない「現物給付」方式なのか、窓口で支払いを済ませたうえで自治体に申請して払い戻しを受ける「償還払い」方式なのかも、注意するポイントです。
住民が歓迎する医療費助成制度ですが、課題もあります。自己負担の無料化は安易な受診を助長し医療費の膨張を招くおそれがあります。また、助成を拡充し過ぎると、本当に医療が必要な子供の診療が後回しにされかねない危険性も含んでいます。
せっかく拡充された自治体の助成制度の恩恵を、多くの住民が長期的に公平に受けられるようにするには、住民側にも「軽症なら様子を見る」「家庭での健康作りを行う」などの姿勢が求められるといえるでしょう。

夫の年金を強制的に分割する「3号分割制度」

◆「離婚分割」とは異なる「3号分割」
平成19年4月から、夫婦が離婚した場合に厚生年金を分割する制度(「離婚分割制度」)が始まって大きな話題を呼びましたが、平成20年4月からは新たに「3号分割制度」がスタートしました。
「3号分割制度」は「夫が厚生年金保険の被保険者、妻が第3号被保険者」という夫婦が離婚した場合、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間について、妻からの請求により、夫の特定期間(特定被保険者が被保険者であった期間であり、かつ、その被扶養配偶者が当該特定被保険者の配偶者として第3号被保険者であった期間)中の被保険者期間の標準報酬を自動的に2分の1に分割するというものです。
この「3号分割」は、「離婚分割」のように夫婦間の合意は必要ないのが大きな特徴です(なお「離婚分割」の場合であっても、按分割合等についての合意は必要です)。

◆保険料は夫婦が共同して負担したもの
標準報酬を自動的に2分の1にするという考え方は、「第3号被保険者を配偶者とする第2号被保険者の保険料は夫婦が共同して負担したものである」という基本的認識を根拠にしています。
なお、平成20年4月以後の「離婚分割」についてですが、「3号分割」をまず行ったうえで「離婚分割」を行う必要があります。「3号分割」のみの請求も可能とされています。
また、複数回結婚・離婚等をした場合には、それらの特定期間を通算して3号分割の請求を行うことはできません。それぞれの離婚等ごとにその請求期限内に3号分割の請求を行わなければならないのです。

◆「離婚分割」の申立てはどのぐらいあったか?
「離婚分割」の申立ては、制度開始時から昨年末までの9カ月間で8,322件あったことが最高裁判所の集計で明らかになっています。1カ月平均800~1,000件で推移しており、離婚調停・訴訟に合わせて申し立てられたケースが7,479件あり、合意に至らずに審判などに持ち込まれたケースが843件あったそうです。
今後、果たして「3号分割」の申立てはどのぐらいあるのでしょうか? また、この制度のスタートにより離婚の件数にも影響を与えるのか、注目したいところです。

若手社員はどんなことを考えているのか?

◆「今の会社に定年まで!」
社会経済生産性本部が今年入社した新入社員を対象に行った意識調査(約2,700人が回答)で、「今の会社に一生勤めようと思っている」と回答した人が5割近く(47.1%)もいたそうです。この数字は1990年の調査開始以来、最も高い数字とのことです。

◆「3年以内に辞める!」
これに対し、カシオ計算機が25歳の会社員を対象にインターネット上で行った調査(596人が回答)で、3年以内に今いる会社を辞めようと思っている若手会社員が約4割いることが明らかになりました。「定年まで辞めない」と回答した人はわずか12%だったそうです。
調査の仕方や回答者数が異なるため、上記2つの調査結果を単純に比較することはできないかもしれませんが、新入社員の意識と数年働いた社員の意識とでは、かなり異なってくるということでしょうか。
あなたの会社の若手社員は、「今の会社に定年まで!」「3年以内に辞める!」どちらの考え方が多いでしょうか?

◆上司とのコミュニケーション
また、日本能率協会が新入社員を対象に行った意識調査(1,334人が回答)では、「上司との人間関係構築のために有効だと思うこと」(複数回答)という問いに対して、上位から「飲み会への参加」(89%)、「社員旅行」(70%)、「運動会」(50%)という結果が出たそうです。
社員旅行や運動会を行う企業は以前と比べると少なくなっていると思いますが、社内コミュニケーションを図るために、これらを復活させる動きも一部の企業であるようです。

問題噴出の「後期高齢者医療制度」

◆低所得なのに保険料増!?
後期高齢者医療制度(長寿医療制度)に関するマスコミ報道が跡を絶ちません。
厚生労働省は当初、「低所得者は保険料負担が軽くなる」と説明してきましたが、国民健康保険(国保)から移行した低所得の夫婦世帯の多くで、保険料負担が増えている可能性が高いことが明らかになりました。
これまで同省は、全国の市町村の8割が採用している算定方式を用いた試算により、同制度の保険料は国保のときよりも減ると説明していましたが、この算定方式が適用されるのは国保の加入者数で見ると5割に満たないことから、試算方法を見直すほか、市区町村ごとの実態調査を実施するようです。

◆1万2,000人に新保険証が届かない
保険証の問題も深刻です。厚生労働省は、新たな保険証が届いていない高齢者が5月1日の時点で約1万2,000人いることを発表しました。
転居の届出をしていないために行方がわからなくなっている人も多いそうで、同省では、未着の場合には引き続き古い保険証や免許証で医療が受けられるように医療機関に要請するとしていますが、すべての保険証が届くのはまだまだ先のことのようです。

◆障害者が事実上「強制加入」
寝たきりなどの理由から障害者と認定された人が後期高齢者医療制度に加入しないと医療費補助を打ち切る措置をとっている自治体があることもわかっています。
この措置をとっているのは10道県(北海道、青森、山形、茨城、栃木、富山、愛知、山口、徳島、福岡)で、任意とされているはずの障害者の加入が「事実上強制となっている」との批判が起きつつあるようです。

◆保険料は7年後に4割増!
厚生労働省は、本人負担の保険料が7年後には約4割も増えると試算しています。現役世代の負担が大きくならないよう、高齢者の負担割合を引き上げるのがその理由であり、2008年度は年額6万1,000円の保険料が2015年度には約39%増の8万5,000円になると見込まれています。

◆果たして制度の見直しはあるのか?
野党4党は、後期高齢者医療制度の廃止法案を共同で参議院に提出し、早期可決を目指す意向を示しています。また、与党である公明党でも制度の見直し(低所得者の保険料引下げ、保険料天引きの廃止など)に着手しているといわれています。
「年金記録問題」関連での新たな動き

◆年金記録訂正後の見込額を示す「仮計算書」を発行へ
先日、舛添厚生労働大臣は、「ねんきん特別便」が到着した受給者が社会保険事務所で年金記録を訂正した際に、訂正後はどのぐらい年金額が変動するかの試算結果を示した「仮計算書」を発行することを明らかにしました。
今月からこの「仮計算書」を発行するとしており、すでに訂正が終了している人にも発行されるそうです。

◆記録訂正で年金減額となる場合の対応
新たに年金記録が判明した場合、年金記録を訂正することにより「年金増額」となるのが一般的ですが、「年金減額」となる場合もあります。そのような場合、これまでは窓口の職員により、減額したりしなかったりと対応がまちまちだったようですが、「減額とするのは合理性に欠ける」との理由から、基準が統一されることになりました。
社会保険庁は、上記のように減額となる場合には「修正なし」として取り扱って受給額が減らないようにする方針を決定しました。同庁は、今月からこの措置を実施するよう全国の社会保険事務所に指示を出したそうです。

◆年金保険料の過払いを通知へ
また、社会保険庁は、年金を満額受給するのに必要な期間を超えて保険料を支払った人に対して、何らかの通知を行うことを検討しているようです。
今月から、過払いの申出をした人に対しては過払い分の保険料の返還を開始しましたが、申出を前提とした対応自体を改めることとしました。しかし、現行のシステムを改善するのには1年程度かかるため、実施されるのはまだ先になりそうです。

◆「ねんきん特別便」いまだに55万通が未着
上記のように、受給者や被保険者のための対策がいろいろと講じられています。
しかし、「宙に浮いた年金記録」の持ち主である可能性が非常に高い約1,030万人に送付された「ねんきん特別便」については、全体の約5.3%に相当する約55万通が未着となっているそうです。「年金記録問題」の収束にはまだまだ時間がかかりそうです。

今国会に提出されている主な労働関係改正法案

◆通常国会の会期は6月15日まで
ここでは、現在開会中の通常国会に提出されている、企業に影響を与えると思われる労働関係の改正法案についてみていきます。

◆中小企業にも障害者雇用納付金を義務化
障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)の一部を改正する法律案が提出されています。
主な内容は、現在は障害者の雇用者数が法定雇用率(1.8%)に満たない従業員「301人以上」企業に課されている納付金の支払義務を、順次「201人以上」、「101人以上」の企業へも拡大するという内容です。また、障害者雇用義務の対象となる労働者に、週の労働時間が20時間以上30時間未満の「短時間労働者」も追加されることとされています。
この法案が可決されれば、2009年4月1日の施行予定です。ただし、納付金支払義務が課される企業の拡大については、「201人以上」へは2010年7月、「101人以上」へは2015年7月とされています。

◆「行動計画」提出義務付け企業を拡大へ
「ワークライフバランス」の実現に向けて、次世代育成支援対策推進法(次世代法)の改正案も今国会に提出されています。
従業員の子育てを支援する「仕事と育児の両立支援に関する行動計画」(一般事業主行動計画)の策定・届出を義務付ける対象企業を、現行の従業員「301人以上」の企業から「101人以上」の企業に拡大するのが主な内容です。この改正により、約4万2,000社が新たに策定・届出義務を負うことになると推計されています。また、「行動計画」の公表・従業員への周知も義務付けられるようになります(策定・届出義務のある事業主のみ)。
この改正法案自体の施行予定日は2009年4月1日となっていますが、「行動計画」の策定・届出義務付け企業の拡大は、2011年4月1日の予定です。

◆労働基準法の改正案
月の時間外労働が一定の時間を超えた場合に、高い割増賃金率を適用することなどを内容とする労働基準法の一部改正案も国会で審議中です。主な内容は以下の通りです。
・月の時間外労働時間が45時間を超え80時間までの場合の割増賃金率については、2割5分以上の率で労使協定で定める率とする(努力義務)。
・月の時間外労働時間が80時間を超えた場合の割増賃金については、5割増とする。