転職者は転職に際して何を重視している?
◆人材確保のためには何が必要?
アベノミクス効果などにより景気が上向きつつある現在、転職を希望する人も徐々に増えてきているようです。
企業が「優秀な人材」「望む人材」「欲しい人材」を獲得するためには、転職者に「この会社に行きたい」と思ってもらわなければなりません。
それでは、転職者は何を求めて(何を理由に「この会社に行きたい」と思って)転職をするのでしょか?
◆調査結果から
日本経済新聞社とNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションが共同で、転職に関する意識調査を実施しましたが、その結果によると、「転職の条件で重視するもの」(3つまで回答)の回答の上位7つは以下の通りだったそうです。
(1)給与水準
(2)会社の将来性(3)福利厚生
(4)職場の人間関係
(5)スキルやキャリアを磨ける可能性
(6)職務やポスト
(7)会社の社会的貢献度
しかし、給与はもちろん重要な要素ですが、「仕事は大変でもやりがいがある」、「仕事を通じて自分の成長を実感できる」「仕事を通じて社会の役に立てる」などと感じてもらえる職場や業務を提供することが、とても大切なのではないでしょうか。
今後、少子高齢化の進展により人材が不足することが確実視されていますが、会社の発展のために、どのような仕事を従業員に提供できるかがより重要になってくることでしょう。
女性は「仕事と家庭の両立」についてどう考えているか?
◆「育休3年化」には賛否
政府の「成長戦略」の1つとして“女性の活躍”が前面に打ち出され、具体的な施策として「育児休業期間の3年化」が挙げられています。
この施策について、メディケア生命保険株式会社の調査によれば、未就学児の母親(20~49歳)のうち71.2%の人が「賛成」(「賛成する」と「どちらかといえば賛成する」の合計)と回答しています。
しかし、好意的な意見もある一方、「育休取得後の職場での活躍を困難にする」(88.8%)、「不当な解雇が増える」(81.2%)といった不安の声も挙がっています。
◆両立のために必要なことは?
仕事と家庭を両立させるために必要な要素は何でしょうか?
株式会社ビースタイルが運営する「しゅふ活研究室」(http://www.b-style.net/research/)が、主に働く意欲のある主婦層を対象に実施した「仕事と家庭の両立」についてのアンケート調査によれば、「仕事と家庭を両立できている」とする人は51.4%でしたが、そのうち65.8%が「不満がある」としています。
そして、「仕事と家庭を両立させる上で必要なこと」(複数回答)については、「条件に合う仕事」(86.0%)、「職場の理解」(83.7%)、「家族の理解・協力」(82.0%)が上位となっています。
「昇進はしたいけど家庭との両立ができなくなる」「家庭を犠牲にしてまで昇進したくない」と考える女性が多いのでしょうか。
「受動喫煙防止対策」の義務化と企業のコスト
◆受動喫煙防止対策の義務化
平成23年10月に召集された臨時国会(第179回国会)に提出されたたものの、審査未了となっている労働安全衛生法の改正案が、再び国会に提出されそうです。この改正案の一部に「受動喫煙防止対策」があります。
これは、労働者の受動喫煙を防止するため、原則、職場の「全面禁煙」または「空間分煙」による措置を企業に対して義務付けるものです。
ただし、当分の間は、飲食店その他の当該措置が困難な事業場については、受動喫煙の程度を低減させるため、一定の濃度または換気の基準を守ることを義務付けるとしています。
◆企業にかかるコストは?
企業が受動喫煙防止対策に取り組む場合、喫煙室設置などの分煙対策や、換気改善などに多額の費用がかかるため、国では「受動喫煙防止対策助成金」を用意しています。
しかし、企業にかかるコストはそれ以外にもあるようです。
オハイオ州立大学(アメリカ)のチームは、会社は、タバコを吸う社員に対して、社員1人あたり年間6,000ドル(約59万円)も余計なコストを負担しているとの試算結果を発表しました。
このコストの内訳は、「タバコ休憩による生産性の損失」「ニコチン中毒による仕事効率のダウン」「保険料のアップ」などです。
例えば、従業員が勤務時間中に1日2本(1本あたり15分)タバコを吸った場合、1年間で企業にとって3,077ドル(約30万円)の損失が生じるとのことです。
◆企業も何らかの手を
上記のように、タバコによる損失・デメリットには、様々なものがあります。タバコに対して世の中の視線が非常に厳しくなっている今、法改正の有無にかかわらず、企業としても何らかの手を打たなければならない時期に来ているようです。
「労働者派遣制度」見直しに関する最新動向
この報告書素案では、これからの制度検討の基本的視点として、(1)派遣労働者の保護と雇用の安定、(2)派遣労働者のキャリアアップ推進、(3)労働者派遣制度を労使双方にとってわかりやすいものとすること、が挙げられています。
◆気になる「26業務」や「派遣期間」の行方は?
現行、正規社員の雇用を脅かすおそれがないとして、ソフトウェア開発や通訳、アナウンサーの業務等の26の業務(以下、「26業務」)については、派遣期間の上限が設けられていません。
これらについては、専門業務の枠組みをすべて廃止したうえで、期間に上限を設けるかどうかは派遣労働者と派遣元との間で締結される雇用契約によって変えられるようにし、有期雇用についてはすべての業務で派遣期間を「最長3年」とすることが適当とする案が示されました。
そして、派遣期間については、現在、派遣先の業務単位で制限が設けられており、同一業務での派遣の受入れは最長3年とされていますが、これを労働者個人ごとの期間制限とし、前任者の有無にかかわらず同じ部署で最長3年まで働けることとする案が示されました。
◆来年の通常国会に改正法案提出予定
今後は、公表された報告書素案をもとに2013年8月中に報告書を作成し、労働政策審議 で労働者派遣法の改正についての詳細を検討したうえで、2014年の通常国会に改正法案を提出することが予定されています。
派遣労働者を利用している事業所にとっては、労働者派遣制度をめぐる法規制が大きく変更される可能性がありますので、今後の動向に注目する必要があるでしょう。
「社会保障制度改革国民会議」が示した改革の方向性
◆1年に及ぶ議論を経て報告書提出
2012年に成立した「社会保障制度改革推進法」により内閣に設置されていた社会保障制度改革国民会議は、8月5日に報告書を公表、翌6日、安倍首相に提出しました。
報告書では、各種給付を「全世代型」の給付に見直すことが示されました。これまで高齢者に対し特に手厚い制度となっていたものを、若い世代向けの出産や育児に関する保障を厚くし、高齢者でも高所得者については相応の負担を求め、現役世代に限らず幅広い世代で負担を分かち合う方向に転換するというものです。
また、超高齢化社会に対応するため、来年4月から予定通り消費税率を引き上げ、引上げ分を財源として医療や介護の充実を図ることを提言しています。
以下、その主な内容を紹介します。
◆医療保険・介護保険関連
負担に関する見直しとして、(1)70~74歳の医療費について、新たに70歳となる人から2割負担とすること、(2)高所得者の介護保険の利用者負担の引上げ、(3)健康保険料の上限引上げ、(4)75歳以上の後期高齢者向け医療費の支援金に「総報酬割」を全面導入すること等が挙げられます。
◆年金関連
話題になっていた抜本改革は見送られ、給付開始年齢の引下げについても中長期的な議論として引き続き検討を求めるにとどまりましたが、(1)非正規労働者への適用拡大、(2)高所得者に対する年金減額、(3)デフレ下においても給付増を抑制する機能が働くようにすること等が盛り込まれました。
◆少子化対策関連
他の項目に比べると具体策に乏しい印象ですが、(1)雇用保険の育児休業給付の引上げ(厚生労働省は5割→6割を検討)、(2)消費税引上げ分を財源とした待機児童解消策の実施等が盛り込まれました。
「最低賃金」と「定額残業代」
◆平均で14円の引上げに
最低賃金が引き上げられます。政府は、今年10月頃に予定している平成25年度改定に合わせて、最低賃金の額の引上げ方針を固めました。
引上げ幅は全国平均で「14円」が目安とされています。現在の最低賃金(時給)は、全国平均で749円ですので、763円への引上げになります。今後はこれを目安に、都道府県ごとの最低賃金が決定されます。
賃金の引上げに向けて、政府は企業の内部留保が投資や賃金に回るような誘導策を導入する方針です。一方、負担の大きい中小企業に対しては、経営を過度に圧迫しない対応も慎重に検討していくとしています。
◆最低賃金に関する注意点
パートやアルバイトの従業員がいない企業でも、最低賃金には要注意です。
月給制の場合でも、基本給+固定的手当の総額を時間単価に直した場合、その額が最低賃金を下回ると法違反となり罰金が科される可能性があります。さすがにこの基準自体はクリアしていることが多いと思いますが、消費税引上げを見据えて最低賃金引上げの圧力は強いようです。
◆「定額残業代」の最近の傾向
給与制度にはいろいろなものがありますが、導入している企業も多い「定額残業代制度」には問題点もあるようです。
定額残業代の支払方法には、(1)手当として支払う方式、(2)基本給などに組み込んで支払う方式などがあります。ここ数年で日常茶飯事となった感のある未払残業代訴訟では、これらの支払方法によって、会社側の主張が認められにくくなる場合があります。
(1)については、就業規則や雇用契約書に定めがあれば、裁判でも定額残業代が認められやすい傾向にあります。しかし(2)については特に問題が多く、裁判で否定されることが多いようです。
◆これから定額残業代を導入する場合
新たに定額残業代制度を導入しようとする場合、その多くは労働条件の不利益変更に該当することになります。その場合は、書面による従業員との明確な合意が必要です。また、同意を得る前に、従業員に対する説明会や個別面談を行うなど、導入には周到な準備が必要です。加えて、就業規則や雇用契約書などの書式類、残業管理方法の見直しについて準備しておきましょう。「年上部下」への人事評価に対する“抵抗感”
◆「年上部下」に対する評価行動の実態と課題
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構から、60歳以上の部下を持つ管理職の評価行動の実態等に関する調査の結果が公表されました。
この調査は、60歳以上の社員(正社員・継続雇用者)を部下に持つ管理職(30歳~59 歳)の評価行動の実態と課題を明らかにするために行われました。
◆調査結果のポイント
◇60歳以上の部下の平均年齢……63歳弱
◇人事評価の実施率……9割弱◇継続雇用者の部下に対する人事評価結果の活用……「契約の更新」(82.7%)、「ボーナス」(62.8%)、「昇進」(60.2%)
◇人事評価のための面接……7割程度が実施 (正社員69.2%、継続雇用者69.2%)
◇目標管理……6割強が実施
◇元上司が60歳以降に部下になることについて……6割弱が「抵抗感がある」
◆元上司が部下になることのプラス面・マイナス面
元上司が部下になることに関連して、「年上部下」を活用するときの
【プラス面】は、次のように評価されています(正社員/継続雇用者)。
・「経験を活かしたアドバイスがもらえる」(81.7%/81.8%)
・「面倒見がよい」(71.1%/68.6%)
・「人脈を持っている」(69.4%/62.6%)
また、【マイナス面】については、次のように評価されています。
・「柔軟性にかける」(61.7%/64.0%)・「過去の経験に固執している」(57.9%/57.2%)
・「事務的な仕事を自分でやろうとしない」(45.4%/46.7%)
◆高齢者の戦力化のために
高齢者の戦力化を図り、労務管理がうまくいくためには、高齢者向けの人事制度に加え、評価制度も整備することが求められます。
評価を行う管理職には、高齢者のいまの状態を知って評価し、評価面談を有効に活用する力が必要です。他方で、高齢者も自らの強みや弱みを考えることが求められます。これからの時代に対応した組織運営にはこうしたことも必要とされているようです。
「女性の管理職登用」 様々な措置が始まっています
◆成長戦略の柱―女性の管理職登用
2011年の厚生労働省調査によると、日本企業において、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は6.8%。軒並み30%を超える欧米諸国に比べ、極めて低いのが現状です。
政府は、成長戦略の柱として、「2020年までに、指導的地位に占める女性の割合を30%程度とする」、「上場企業は女性役員を1人以上置く」等の具体的な目標数値を決め、優遇措置も掲げています。
◆現状を「見える化」
現状を「見える化」し、企業の取組みを促すために、政府は、上場企業を対象に、各企業の女性登用状況(従業員・管理職・役員の女性比率、女性の平均勤続年数など)の一覧を、来年度から国のホームページで公開する方針を固めました。
公開した内容については、市場関係者や消費者、学生らに、投資先・就職先を選択する際の情報として利用されることが見込まれています。
こうした情報の開示が進むことで、取組みの遅れている企業への刺激となることも期待されます。
◆女性登用は株式評価へも影響を与える?
また、東京証券取引所は、女性活用の先行企業17社を「なでしこ銘柄」として選定しました。今後も、個人投資家を市場に呼び込むプロジェクトの一環として、続けていく方針です。
女性の登用は、株式市場の評価まで左右する、企業にとって重要なものとなってきていると言えます。
厚労省が「ブラック企業」の取締りを強化へ
◆いよいよ「ブラック企業」の本格取締りがスタート
厚生労働省は、若年労働者等の使い捨てが疑われる企業(いわゆる「ブラック企業」)が社会問題となっていることを受けて、9月に集中的な監督指導を行うことを発表しました。
具体的には、以下の3つを柱として対策を行っていくとのことです。
◆(1)長時間労働抑制に向けた集中的な取組みの実施
9月を「過重労働重点監督月間」と定め、過重労働が行われている疑いのある約4,000事業所について、重点的に指導・監督を実施します。
主な重点確認事項については、時間外・休日労働が36協定の範囲内であるかの確認やサービス残業の有無についての確認があり、これらについて法違反が認められた場合は是正指導が行われます。また、長時間労働者に対しては、医師による面接指導などの健康確保措置が確実に講じられるよう指導も行っていくようです。
過労死等事案を起こした、または、脳・心臓疾患等に係る労災請求が行われたなどの企業等については、再発防止の取組を徹底させるため、法違反の是正確認後もフォローアップのための監督指導が実施されるようです。
監督指導の結果、法違反の是正が行われない場合は、是正が認められるまで、ハローワークにおける職業紹介の対象から外すことも決定しており、重大・悪質な違反が確認された企業については、送検、公表するとしています。
◆(2)しっかりとした相談対応
9月1日には、全国一斉の電話相談を実施し、過重労働が疑われる企業などに関する相談を踏まえ、法違反が疑われる企業に監督・指導を行います。9月2日以後も、「総合労働相談コーナー」、「労働基準関係情報メール窓口」で相談や情報を受け付けします。
新卒応援ハローワークでも、情報・相談を受け付け、労働基準法などの違反が疑われる企業に関しては労働基準監督署に情報を提供するとしています。
また、パワハラ対策の必要性等をわかりやすく説明したポスター、リーフレット等を作成し、全国の行政機関等で掲示・配布するとのことです。
世代によって大きく違う? “働き方”に対する意識調査
◆30~40代の約半数が「仕事にやりがいなし」
日本能率協会が同協会研究所のリサーチモニター(18~69歳の有職者1,000人)を対象に、第1回「ビジネスパーソン1,000 人調査」を実施し、働き方に関する意識を調べた調査結果を発表しました。
それによると、30代~40代の約半数が「仕事にやりがいなし」「能力発揮できていない」と考えていたことがわかりました。
現在の仕事に関するやりがいについて聞いたところ、全体ではやりがいを「感じている」「やや感じている」の合計が58.4%と半数以上を占めましたが、比率が高かったのは60代(70.2%)や50代(61.9%)といった高齢者で、30代(53.5%)や40代(54.9%)については低かったようです。
◆勤務先への愛着は?
同様に、現在の勤務先に対する愛着について聞いたところ、全体では58.7%が「愛着を感じている」と回答し、「愛着を感じていない」(41.3%)を上回りましたが、ここでも40代が53.9%、30代も54.6%にすぎなかったのに対し、60代が76.7%、50代が62.4%と高く、世代によって違いがみられました。
◆自己の能力を発揮できているか?
次に、「現在の仕事は自己の能力を発揮できていると思うか」という設問には、全体では「発揮できている」(55.2%)が「発揮できていない」(44.8%)を上回ったものの、30代(46.2%)、40代(51.5%)が「発揮できていない」と答え、上記の設問と同じような傾向となりました。
◆“疲弊するミドル層”への対策
この調査結果から、働き盛りの30代~40代は、上の世代に比べ、「仕事に対するやりがい」、「勤務先への愛着」、「能力発揮の実感」が低かったことが明らかになりました。同協会では、「組織の中核たるミドルの疲弊として危機感を持って受け止めるべきだ」と提言しています。