2014/08/29

9月の事務所便り


深刻な「後継者不在」問題と制度改正の動向

 

28万社超の企業を分析

4人に1人が高齢者という時代。企業の経営者も約3割が65歳を超えているそうです。

このほど帝国データバンクから、「事業承継」や「社長の高齢化」などの後継者問題に関する調査の結果が発表されました。

この調査は、同社が有する企業概要データベース(145万社収録)および信用調査報告書ファイル(160万社収録)を分析したものですが、このうち、2012年度以降の後継者の実態について分析可能な企業は284,412社だったそうです。

 

◆深刻な後継者不在の状況

調査結果によると、国内企業の65.4%が後継者不在とのことです。社長の年齢が「60歳代」の企業では53.9%が後継者不在であり、「70歳代」では42.6%、「80歳以上」では34.2%が同様の状況でした。

後継者のいる企業における後継者の属性は、「子供」(38.4%)が最多で、「親族」(19.9%)、「配偶者」(10.9%)と合わせると同族が約7割(69.2%)となっています。

 

◆業種別の状況

業種別に見ると、後継者不在の企業割合が全体の平均(65.4%)以上だったのは次の業種でした。

(1)サービス業(70.4%)

(2)建設業(70.0%)

(3)不動産業(67.8%)

(4)小売業(66.1%)

 

◆制度改正の動向

なお、経済産業省の調査結果では、親族に後継者がおらず第三者が後を継ぐ中小・零細企業の割合は約4割とのことです。

現在の法制度は親族が引き継ぐことを前提としていることから、同省では法務省とも連携し、事業承継しやすい制度づくりを進める考えを示しています。

後継者不在の問題に悩む企業は、制度改正の動向にも目を向ける必要がありそうです。




大人気!「キャリアアップ助成金」の概要

 

◆大人気の助成金

平成25年度から始まった「キャリアアップ助成金」ですが、受給の要件となる「キャリアアップ計画」の作成・認定企業数が厚生労働省の予想を大幅に超えているそうです。

ここでは、どのような助成金なのかを簡単に見ていきます。

 

◆助成金の概要(6つのコース)

「キャリアアップ助成金」は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、「正規雇用への転換」、「人材育成」、「処遇改善」等の取組みを実施した事業主に対して支給されるもので、次の6コースがあります。

(1)正規雇用等転換コース

(2)人材育成コース

(3)処遇改善コース

(4)健康管理コース

(5)短時間正社員コース

(6)短時間労働者の週所定労働時間延長コース

なお、コースによっては、平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間は、支給額の増額、要件の緩和の措置がとられています。

 

◆「キャリアアップ計画」とは?

受給にあたりまず必要となるのが「キャリアアップ計画」の作成ですが、この「キャリアアップ計画」とは、有期契約労働者等のキャリアアップに向けた取組みを計画的に進めるため、おおまかな取り組みイメージ(対象者、目標、期間、目標を達成するために事業主が行う取組み)をあらかじめ記載するものです。

 

◆様々な要件、書類が必要

「キャリアアップ計画」の作成・提出後にはコースごとに様々な要件があり、書類の提出も必要となります。厚生労働省ホームページにも詳しい内容が記載されています(「キャリアアップ助成金」で検索)。

 





8月1日より失業給付の支給額が変わりました

 

2013年より若干の引下げ

離職者に支給される雇用保険の失業手当の額は、毎年、「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減によって毎年8月1日にその額が変更されますが、2014年度は、2013年度の平均定期給与額が前年比で約0.2%減少したことから、全体に若干の引下げとなりました。

 

◆変更後の支給額

失業手当の日額は年齢に応じて上限額が定められており、下限額は全年齢共通で定められています。

上限額は、29歳以下の方は6,390円(15円減額)、3044歳の方は7,100円(15円減額)、4559歳の方は7,805円(25円減額)、6064歳の方は6,709円(14円減額)となっています。

下限額は、1,840円(8円減額)です。

なお、実際に支給される日額は、離職時の賃金日額に5080%の給付率を掛けて算出されます。

失業手当は、失業認定期間(28日)中に自己の労働による収入がある場合、収入を得た日については減額支給されることとなりますが、この控除額も1,286円(3円減額)と、引き下げられています。

 

◆就業促進手当の上限額も引下げ

再就職手当・常用就職支度手当の算定における失業手当の日額の上限額は、59歳以下の方は5,825円(15円減額)、6064歳の方は4,720円(9円減額)となります。

就業手当の1日当たり支給額の上限額は、59歳以下の方は1,747円(5円減額)、6064歳の方は1,416円(2円減額)となります。

 

◆高年齢雇用継続給付の算定に係る支給限度額も引下げ

高年齢雇用継続給付の支給額は、60歳以上65歳未満の各月の賃金が60歳時点の賃金の61%以下に低下した場合は各月の賃金の15%相当額、60歳時点の賃金の61%超75%未満に低下した場合は、その低下率に応じて各月の賃金の15%相当額未満の額となり、支給限度額を超えて賃金が支給された場合には支給されません。

この支給限度額が、340,761円(781円減額)となっています。




意外な盲点? 職場で気をつけたい同性間のセクハラ問題

 

◆指針改正により同性間の行為もセクハラの対象に

セクハラ行為の禁止は、男女雇用機会均等法(以下、「均等法」という)の1997年改正で関連規定が設けられました。その後、改正によりセクハラ対策の強化や男女差別の範囲の見直しなどが図られていますが、今年7月1日より施行規則と指針が改正されました。

改正項目は多岐にわたりますが、企業においてトラブルに発展するケースが多いセクハラについて、新たに同性間の行為が対象に含まれることとなりました。

以下、この「同性間のセクハラ行為」について、例を挙げるとともに、企業における対策について考えてみたいと思います。

 

◆同性間におけるセクハラの具体例

例えば、いわゆる「女子会」に限らず、男性だけの席でも「恋バナ」や結婚生活が話題になったときに、「最近彼氏(彼女)とどう?」とか「お子さんの予定は?」といった質問を耳にしたことはないでしょうか?

こうした質問は、いかにも性的な言動や要求ではないことからセクハラに当たると認識していない方もいらっしゃると思いますが、言われた本人が不快に感じれば「セクハラを受けた」としてトラブルになりかねないリスクを孕んでいます。

さらに、男性にありがちなケースとして、何人かで風俗店へ行こうとなったときに行きたがらない人も強引に誘うことが同性間のセクハラに当たると、指摘されています。

 

◆企業がとるべき対策は?

均等法で「性別を理由とする差別」や「セクハラ行為」等が禁止されていることは、すでに多くの方が認識されていることでしょう。

しかしながら、改正等により新たに禁止の対象とされたことについては、個々の従業員が自ら把握することは難しく、研修等の場で具体例を示されて初めて理解することのほうが多いのではないでしょうか。

企業においては、一旦トラブルが発生すれば当事者間の問題にとどまらず使用者責任を問われかねないリスクがあることを踏まえ、トラブルの未然防止の観点からも、関連規定の見直しや社内研修、万が一トラブルが発生した場合の相談体制のチェック等を実施しておくべきでしょう。




人手不足の業界には光明? 外国人労働者活用

 

◆外国人労働者活用への期待が高まる

労働力人口の減少を補うため、現在、外国人労働者活用への期待が高まっています。

外国人活用をめぐっては、これまで研究者や経営者など、高度人材を中心に受入れ体制が整えられてきましたが、比較的単純な労働分野でも外国人の就労を進めていく方向で議論が進んでおり、建設、農業・製造業、家事支援、介護など人材不足が進む分野での外国人の活用が期待されています。

また、技能実習制度の拡大も検討されています。

 

◆受入れの際の留意点

今後、多くの企業で外国人労働者を活用することが考えられますが、外国人の雇用には難しさもあります。

外国人を雇用する目的・必要性を十分に検討し、担当させる業務を決めていく必要がありますが、これらは、経営戦略・事業運営方針にも大きく関わる部分です。

また、外国人特有の制度や諸官庁への手続き等もあり、遺漏のない取扱いのために注意が必要です。

 

◆トラブル防止に必要な知識

トラブルを防ぐためには、次のような知識も得ておくとよいでしょう。

(1)入管法(出入国管理及び難民認定法)

(2)労働関係法

(3)日常の労務管理

 ・文化、宗教

 ・生活様式、生活慣習

(4)コミュニケーション

 ・語学

 ・ビジネス慣習




新入社員、いきいきと働いていますか?

研修の振り返りのススメ

 

◆重要な新入社員研修

現在、人員を絞っているという企業も少なくないと思われますが、このような場合には、少ない人数で業績を上げるために、社員の成長が欠かせません。

そのため、多くの企業では、研修を実施して、社員教育を行っています。中でも重要なのが、企業の文化に触れ、大きく成長してもらうための基礎となる「新入社員研修」です。

 

◆「振り返り」が必要

もし、今年新入社員が入り、研修を行ったのでしたら、その成果が十分に出ているか、研修について振り返ってみましょう。

やりっぱなしにするのではなく、振り返ってみて良かった点、反省点を洗い出すことで、次に活かすことができます。

 

◆「成果の出る新入社員研修」のポイント

例えば、次の点についてチェックしてみてください。

(1)教育方針・内容が明確になっているか?

「誰が」、「どんな項目」を、「どのように教える」のかが明確になっていれば、ポイントを外すことなく研修を行うことが可能です。

講師側も、何を伝えればいいのかがわかるので、的確な準備ができます。

(2)配属先の上司も研修内容を知っているか?

これは特に新入社員研修ならではのポイントです。現場での仕事に際しても、研修内容と関連付けた対応が可能となります。

(3)研修の成果について確認ができているか?

「研修を受けて終わり」ではなく、その後のフォローがあれば、その内容がより身につきます。




ご存知ですか? 「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金」

 

◆人手不足の企業にお勧め!

昨今、人手不足に頭を悩ませているという企業も多いのではないでしょうか。

人を採るために仕方なく時給を上げざるを得ないという場合もあるでしょう。そんなときにお勧めの助成金をご紹介します。

 

◆中小企業最低賃金引き上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)

この助成金は、中小企業・小規模事業者を支援する目的で設けられているもので、下記の2条件を満たした場合に助成金が支給されます。

【支給要件】

(1)最低賃金の引上げに先行して事業場内で最も低い賃金で40円以上引き上げる賃金引上計画を策定し、引上げを実施すること(ただし、助成金申請時に800円未満の時間給等の労働者を使用している必要あり)。

(2)労働者の意見を聴取のうえ、賃金制度の整備、就業規則の作成・改正、労働能率の増進に資する設備・器具の導入、研修等の業務改善を実施すること。

【助成額】

業務改善の経費の2分の1(企業規模30人以下の小規模事業者は4分の3)

※下限5万円、上限100万円

 

◆平成25年度の地域別最低賃金 (参考)

地域別最低賃金で時給800円を超えている都道府県は、東京都(869円)、神奈川県(868円)、大阪府(819円)の3都道府県しかありません。

他の都道府県では、例えば、北海道734円、宮城県696円、埼玉県785円、千葉県777円、新潟県701円、愛知県780円、広島県733円、高知県664円、福岡県712円、沖縄県664円となっています。

 

◆該当企業は多い?

本助成金の支給要件の1つに「800円未満の時間給等の労働者を使用している」とあります。上記地域別最低賃金からわかるように、支給要件に該当する企業も多いと思われます。ぜひ申請を検討してみてはいかがでしょうか?




厚生年金未加入企業への指導が強化されます!

 

◆「加入逃れ」の防止

政府は、厚生年金保険の加入逃れを防ぐため、国税庁が持つ企業の納付情報から未加入企業を割り出し、指導を強化することを決めました。来春にも着手するとしています。

もし、加入指導されたにもかかわらず、これに応じない場合は、法的措置により強制的に加入となることもあるようです。

 

◆厚生年金の未加入問題とは?

厚生年金は、正社員や一定以上の労働時間(正社員の労働時間の概ね4分の3以上)があるパート従業員やアルバイトが強制加入となり、事業主は加入を義務付けられています。

しかし、従業員と折半となる保険料の負担を逃れようと届出をしない企業があり、問題となっているのです。

特に、パート・アルバイトを多く使用している企業の場合は、ルール通りに加入させると保険料負担が過大なものとなり、企業経営を圧迫するという事情があります。

ただ、企業が厚生年金に未加入の場合、従業員は保険料が全額自己負担の国民年金に加入するほかなく、厚生年金と比べ将来もらえる年金額も減ってしまいます。

 

◆これまでの調査と何が違うの?

“国税庁が保有するデータを使って、未加入企業を割り出す”ということです。

これまで、厚生労働省は法人登記されている約449万社の中から未加入企業の調査をすすめていましたが、中には倒産していたり、休眠状態だったりする例も多くあることから、特定作業はスムーズにいきませんでした。

しかし、国税庁が保有するデータは「税金を納めている=実際に企業活動をしている」ということになり、特定作業が容易になるのです。




「労働災害のない職場づくり」に向けた緊急対策

 

◆増加する労災死亡事故

厚生労働省が「平成26年上半期の労働災害発生状況」を発表し、死亡者数が437人(対前年比71人、19.4%増)、休業4日以上の死傷者数が4万7,288人(同1,625人、3.6%増)となり、昨年から大幅に増加したことが明らかになりました。

同省では死亡者の大幅増加を受け、「労働災害のない職場づくりに向けた緊急対策」を実施するようです。

 

◆「緊急対策」の内容

緊急対策の柱としては、以下の2点となります。

(1)業界団体などに対する労災防止に向けた緊急要請

・産業界全体に対する企業の安全衛生活動の総点検の要請

…経済活動の一層の活発化が見込まれる中で労災の増加が懸念されることから、産業界全体(約250団体)に対し、企業の安全衛生活動の総点検と労使・関係者が一体となった労災防止活動の実施を要請。

・労災が増加傾向にある業種に対する具体的な取組みの要請 

…特に労災が増加している業種(製造業、建設業、陸上貨物運送事業、小売業、社会福祉施設、飲食店)に対しては、労災防止のための具体的な取組内容を示し、その確実な実施を要請。

(2)都道府県労働局、労働基準監督署による指導の内容

都道府県労働局と労働基準監督署において、労働災害防止団体などと連携した安全パトロールを実施するほか、事業場が自ら実施した安全点検の結果などを踏まえた指導などを実施。

 

◆ 労災発生状況のポイント

全産業における死亡者数(437人)を業種別に見ると、建設業(159人)、第三次産業(92人)、製造業(82人)、陸上貨物運送事業(55人)の順で災害が多発していたそうです。

建設業では、屋根、足場、はしご・脚立などからの「墜落・転落」と、建設機械などに「はさまれ・巻き込まれ」による死亡者が大幅に増加し、陸上貨物運送事業では、荷積み、荷下ろし時のトラックからの墜落をはじめとした「墜落・転落」の死傷災害が増加、第三次産業(小売業、社会福祉施設、飲食店)では、転倒や無理な動作による腰痛などが増加していたようです。

これらの増加要因として、同省は「景気回復で企業活動が活発になる中、人手不足で現場に経験の浅い労働者が増え、事故につながっている」としています。

今後、対象の業種には、自主点検票の送付や研修会の開催などの取組みの強化がなされていくようです。




人手不足の影響? 変わりつつある転職の常識

 

◆転職成功者の平均年齢が過去最高に

株式会社インテリジェンスが運営する転職サービス「DODA(デューダ)」が、同社のサービスを利用したビジネスパーソン約7万人に対し、「転職をした年齢」について行った調査によると、2014年上期の転職成功者の平均年齢は31.7歳(前期比0.6歳増)で、調査を開始した2007年以来、過去最高を更新したとのことです。

また、転職成功者の年齢割合では、「3540歳」(13.9%)、「40歳以上」(11.2%)がそれぞれ上昇傾向にあり、35歳以上の転職成功者の割合は初めて25%を超えたようです。

 

◆転職経験の多い人の成功者が増加

また、同社が2013年度に「DODA(デューダ)」を通じて転職をした人の転職回数を調べた調査結果によると、「初めて」の人が53.0%で最多となり、次いで「2回目」(24.3%)、「3回目」(12.7%)の順になったようです。

年齢別に転職した人の割合を見ると、34歳以下では、転職経験が「初めて」で転職に成功した人が最多となっていますが、35歳以上では、2007年から2012年までは「2回目」が最多となり、2013年には「4回以上」が最多となったようです。

30歳以上で「3回目」「4回目以上」の割合が大きく増加しており、かつての「転職回数が多いと不利」という転職の常識が変わりつつあるようです。

 

◆転職回数の多さ、年齢の高さは厭わない

上記の調査結果を受け同社は、転職市場の活性化に伴い、企業は必要な人材の確保に頭を痛めており、経験や実績が合致していれば転職回数を問わないというケースが多くなっている、としています。

また、業績の好調を受け、事業課題を解決できる人材を採用したいと考える企業では、即戦力として期待される35歳以上の採用ニーズが高まりを見せているようで、これまでは転職回数が多い人の採用を敬遠する企業もありましたが、転職回数が多くとも、その在籍企業で出した成果がわかれば、「変化に柔軟で環境が変わっても成果が出せる」「自社でも同様に成果をあげてくれるのでは」という期待に繋がり採用に至っている、としています。

2014/08/01

8月の事務所便り

「多様な正社員・限定正社員」を活用すべきケースとは?

 

◆厚労省分科会の配布資料

日本版ホワイトカラーエグゼンプションなど、今後の労働時間規制の緩和に関する議論が厚生労働省労働政策審議会(労働条件分科会)で始まりました。

7月7日開催の分科会で配付された「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会における議論の状況」という資料の中で、「多様な正社員」の活用が考えられるケース等が挙げられていましたので簡単にご紹介します。

 

◆活用が考えられるケース

「多様な正社員」とは、「限定正社員」とも呼ばれ、主に「勤務地」「職務」「勤務時間」などが限定された社員のことを指します。

活用が考えられるケースとして、勤務地限定正社員については、「育児、介護等の事情により転勤が困難な者や地元に定着した就業を希望するケース」「改正労働契約法のいわゆる無期転換ルールによる転換後の受け皿として活用するケース」等が挙げられています。

職務限定正社員については、「金融・IT などで専門性が高く特定の職能内でのプロフェッショナルとしてのキャリア形成が必要なケース」、また、勤務時間限定正社員については、「育児、介護等の事情により長時間労働が困難な者が就職・就業を継続し、能力の発揮が可能なケース」等が挙げられています。

 

◆導入にあたっての課題

すでに突入しつつある慢性的な人手不足の時代において、「多様な正社員・限定正社員」の活用が非常に大きな役割を果たすと言われています。

ただし、多様な正社員制度の導入にあたっては、制度が労働者の納得を得られるように努めるとともに、制度を円滑に運用できるようにするために労働者に対する十分な情報提供と十分な協議が必要だと指摘されています。

 

◆管理職のマネジメントも重要

なお、多様な働き方を円滑に進めるためには、職場における管理職のマネジメント能力の向上が不可欠であることも指摘されています。

近年、管理職の“プレイングマネージャー化”が進展していますが、十分なマネジメントが実現するような能力向上が図られるよう、各職場の実情に即した対応が求められています。




企業にとっての適正な人員構成

 

◆理想通りにはいかない!?

企業においては、適正な数の従業員を抱え、管理職・非管理職がそれぞれ適正な割合を占めていることが理想だと言えるでしょう。

しかし、理想通りにはいっていないことが、株式会社トランストラクチャが実施した「適正人員数・人員構成に関する調査」(上場・非上場の163社が回答)の結果からわかりました。

 

◆管理職・非管理職のバランス

まず、「管理職と非管理職の人員比率は適正か」との質問に対し、「適正である」と回答した企業は42%、「管理職の人員比率が多すぎる」と回答した企業は41%でした。

管理職・非管理職のバランス、特に賃金の高い管理職の割合の多さに悩みを抱える企業は多いようです。

 

◆人員構成の適正化

次に、組織のパフォーマンスを高めるために「人員構成の適正化を進めるべきか」との質問に対しては、「進めるべき」との回答が73%と非常に高く、「そうは思わない」との回答は10%にとどまりました。

人員構成に悩む多くの企業が、何らかの施策を講じることが必要と考えているようです。

 

◆組織のパフォーマンスを高める

では、組織のパフォーマンスを高めるためには具体的にどのような施策が必要なのでしょうか?

この点に関しては、「業務内容の見直しや業務プロセスの変更を進めるべき」と回答した企業が80%に上りました。

会社内の業務の棚卸しを実施して全体の業務内容を見直し、適正な人員配置を行い、あわせて業務プロセスも見直すことが、無駄な残業を削減して利益を上げることに繋がるでしょう。




海外勤務者の安全管理に役立つ「たびレジ」サービス開始

 

◆サービス発足のきっかけ

最近は、中国をはじめ東南アジア各国に進出する企業が増え、海外に赴任したり出張したりする従業員も増えていますが、それに伴い自然災害や暴動等、不慮の事故に巻き込まれてしまうケースも増えています。

2014年7月1日より外務省がサービスを開始した「たびレジ」は、「在留届」の提出を義務付けられていない3カ月未満の短期渡航者を対象にしたサービスで、2013年1月にアルジェリアで起こった人質拘束事件をきっかけに設けられました。

 

◆「在留届」とは?

外国に住所または居所を定めて3カ月以上滞在する場合、その住所または居所を管轄する日本の大使館または総領事館(以下、「在外公館」という)に、氏名、本籍、海外での住所、留守宅などの連絡先、旅券番号、同居家族(配偶者、子ども)などを記入した「在留届」の提出を義務付けています(旅券法16条)。

届出は、現地到着後、住所等が決まったら「在留届電子届出システム(ORRnet)」サイトから行うか、もしくは「在留届」用紙の持参、FAX、郵送により行います。

短期渡航者も、「在留届」を提出すれば緊急時に在外公館よりメールによる通報や迅速な援護が受けられますが、「たびレジ」では、出国前に専用サイトで所定の情報を登録しておくことで同様の効果が得られます。

 

◆利用方法は?

「たびレジ」サイトで旅行日程・滞在先等の情報や連絡を希望するメールアドレス等を登録しておくと、登録したすべてのメールアドレスで滞在先の最新の渡航情報や緊急事態発生時の連絡メール、また、いざという時の緊急連絡などを受け取ることができます。

本人以外に家族や職場のメールアドレスも登録できますので、緊急時に情報を共有することができて便利です(登録した情報は帰国後1カ月で削除される)。

緊急事態発生時には連絡手段の確保が難しいこともありますので、今後、従業員が海外へ出張等する際にこのサービスを利用してみてはいかがでしょうか。




換気装置の設置も「受動喫煙防止対策助成金」の交付対象に

 

◆安衛法の改正に伴う交付要領の改正

2014年6月25日に改正労働安全衛生法が公布され、事業者は、労働者の受動喫煙を防止するため、当該事業者および事業場の実情に応じ適切な措置を講ずる努力義務が課せられるとともに、国も必要な援助に努めることとされました。

これにより、7月1日付けで「『受動喫煙防止対策助成金の支給の実施について』の一部改正について」という文書が出され、一定の要件を満たす換気装置を設置する事業所等も、本助成金の交付対象とされることとなりました。

 

◆改正により新たに交付対象となったのは?

改正前の本助成金は、2014年5月16日の交付要領改正により、一定の要件を満たす中小事業主を対象として、事業場内において、喫煙室以外をすべて禁煙とし、一定以上の基準を満たす喫煙室を設置する場合に、その設置費用の一部を助成するものとされていました。

しかし本改正により、上記以外の受動喫煙防止措置として、一定の要件を満たす換気装置の設置等の措置を講ずる場合の、工費、設備費、備品費および機械装置費等も交付対象となりました。

 

◆交付対象となる換気装置の要件は?

飲食店等では、客席を「喫煙スペース」と「禁煙スペース」とに分ける分煙措置による受動喫煙防止措置が取られていることが多くありますが、そうした喫煙スペースにおいて、喫煙区域の粉塵濃度が「1立方メートル当たり0.15ミリグラム以下」となるよう設計されていること、または客席がある喫煙区域における1時間当たりの必要換気量が「客席数×70.3立方メートル」となるよう設計されている場合に、交付対象となります。




仕事をしながらできる「健康づくり」

 

◆立って使う机

職場における禁煙や受動喫煙の防止対策は少しずつ浸透してきたようですが、職場における健康志向はまだまだ高まりつつあるようです。

事務用品・設備メーカーのイトーキは、仕事をするうちに自然と体を動かせる家具や内装を開発したそうです。

通常より2030cmほど高い机は、立って作業する機会が増え、短時間で集中して作業をするようになるそうです。また、オフィスレイアウトの見直しで、コピーと机の配置を見直し、必然的に歩くようにするという方法もあるようです。

 

◆社内で体脂肪のチェック

また、内田洋行は、タニタとの共同開発により、歩数を測ったり体脂肪率をチェックしたりできる健康管理システムを開発したそうです。これは高精度な体組成計を設置したブースを社内に置き、社員の健康データをクラウドで管理するというものです。

社内で体内年齢の若さのランキングを作成したりするなど、ソフト面の取組みも促すそうです。

 

◆椅子の代わりにバランスボール

以前話題になったものとしては、椅子の代わりにバランスボールを使うという方法がありました。

ただ、腰痛が改善したなどの好影響もあるようですが、逆に「使い過ぎで体が痛くなった」という例もあるようですし、じっくり考えることが必要な仕事には不向きかもしれませんね。

何事もやり過ぎはよくないようです。

 

◆引越しや模様替えが見直しのチャンス

「社員の健康が大事」だと考える経営者は多いと思いますが、実際に具体策を講じているケースは多くはないのではないでしょうか。

引越しや模様替えなどの機会に見直してみるのもよいかもしれません。




メンタルヘルス支援会社の産業医紹介サービスが拡大中

 

◆ストレスチェックの義務化

先日、労働安全衛生法の改正案が成立し、医師、保健師などによるストレスチェックの実施が事業者に義務付けられることになりました(従業員50人未満の事業場については、当分の間努力義務)。

これにより、企業は社員が精神疾患を発症する前に対策をとることが求められます。

 

◆産業医の紹介サービス

こうした流れを受け、次のような企業のメンタルヘルス対策を支援するサービスが拡大中のようです。

・企業が求める診断能力を持つ産業医を紹介するサービス

・グローバル化に対応し、英語版のストレスチェックを提供するサービス

・独自のストレスチェックテストで問題があった場合に産業医を派遣するサービス

 

◆産業医との相性も大事

従来から50名以上の労働者を雇用している事業場は、産業医による毎月の訪問、労働者の健康管理指導の実施が必要ですし、月80時間超の残業をした労働者等がいる事業場(50名未満の事業場も含む)では、労働者の疲労の程度を把握し、本人の申出により医師の面談を実施する義務があります。これらに違反する場合は行政指導の対象となります(罰則もあり)。

多くの企業では、もちろん産業医の選任は行っているのでしょうが、近年のメンタルヘルス不全による職場の問題への対応が重要になってきた流れを受け、自社が求めるものと産業医との相性が合わないケースも増えてきたようです。

 

◆精神疾患による労災件数

過労や職場でのいじめにより「うつ病」などの精神疾患を発症したとして労災申請をした人数は、2013年度には1,409人となり、過去最多を更新しました。また、実際に労災認定された人は2年連続で400人を超えています。

メンタルヘルス不全や精神疾患の発症を招かないためには、事前の対策が重要です。長時間労働や過重労働は、日ごろの労務管理で対応し、併せてこのようなサービスを利用することも検討すべきでしょう。




職業生活を通じて活用できるツールに?

「キャリア・パスポート」創設の動向

 

◆「キャリア・パスポート」創設の検討が始まる

ジョブ・カードの普及が遅れており、せっかく取得しても活用できない状況にあることが指摘されています。

そこで厚生労働省では、ジョブ・カード制度を大幅に改編し、「キャリア・パスポート制度」(仮称)に移行する検討を開始しました。

 

◆構想の内容

産業競争力会議の「雇用・人材分科会」では、「キャリア・パスポート」(仮称)の構想について、「学生段階から職業生活を通じて活用できるものとすることや、企業及び働き手の双方にしっかり浸透する仕掛けとして、雇用保険二事業の助成金支給の必要条件とすること等、労使の理解を得つつ、抜本的に見直す」とともに、「電子化してネット上での共有を図り、円滑な労働移動につなげる等、外部労働市場の構築に資する方策を検討する」こと等としています。

 

◆マッチングツールとして普及させるために

このキャリア・パスポートの目的は、その取得により外部労働市場で通用するマッチングのためのツールとして活用できるようにすることです。

そのための見直し検討事項として、様々な場面で活用可能とするための様式のあり方、関係情報の電子化、SNSに掲載して活用する場合の条件整備などが課題となりそうです。

 

◆今後の動きは?

厚生労働省では、平成27年2月頃を目標に、最終的な構想案を提示する方針です。

助成金支給の必要条件とすることが検討されていることから、創設の影響は決して小さくないものと思われます。今後の動向に注意が必要です。




実務に効く!「データ分析」のススメ

 

◆最近話題の「データ分析」

「データ分析」という言葉、「最近よく耳にするなあ」と思う方も多いのではないでしょうか。

Excelですぐにできる、などと謳った書籍なども数多く出版されており、興味をお持ちの方も多いことでしょう。

 

◆「問題点の発見」と「解決策の実行」

企業が成長するためには、実態を把握して問題点を発見すること、その解決策を見出して実行することが必要です。

例えば、発注履歴をもとに顧客の動向をつかみ、個別に対応するための策を講じるといったことは、どこの会社でも行われていることでしょうが、これを受発注データの分析により行うことで、より実態に即した対応が可能となります。

これが「データ分析」のメリットであり、業務のあらゆる場面で用いることができます。

 

◆「データ分析」の活用事例

実際にどうやるのかは次のようなものが挙げられます。

(1)販売管理費データを分析 → 経費実態がつかめる

(2)売掛債権データを分析 → 回収先を把握し効果的な回収促進ができる

(3)棚卸・在庫データを分析 → 在庫削減を行うことができる

(4)勤怠データを分析 → 部門別の実態をつかみ実態に基づいた労務管理を行うことができる

ご興味を持たれた方は、書籍やセミナー等、参考にできるものは種々ありますので、かじってみてはいかがでしょうか。



好況で変わってきた? 新入社員の働くことに対する意識

 

◆「第一志望に入社」昨年から微増

日本生産性本部と日本経済青年協議会が今年度の新入社員を対象に実施した「働くことの意識」の調査結果によると、「第一志望の会社に入れた」と答えた新入社員は、質問を開始した2009年以降で過去最低を更新した昨年の52.0%から、わずかに改善され55.0%でした。

その年の新入社員の就職活動が順調だったかどうかで敏感に変化する項目に、「人並み以上に働きたいか」との質問があり、景況感や就職活動の厳しさによって、「人並み以上」と「人並みで十分」が相反する動きを見せているようです。

バブル経済末期(平成2~3年)には、「人並みで十分」が「人並み以上」を上回っていましたが、その後、景気が低迷すると、平成12年以降は入れ替わりを繰り返しています。

最近では、平成2526年度と「人並み以上」が減少、「人並みで十分」が増加し、新入社員の意識はバブル経済末期と同様の売り手市場の時のようになってきたようです。

 

◆「定年まで同じ会社で働きたい」は減少

また、「この会社でずっと働きたいか」という問いには、一昨年は過去最高を記録した「定年まで勤めたい」が28.8%に減少し、代わって「状況次第でかわる」が34.5%となり、2年連続で「定年まで勤めたい」を上回りました。

不況が続いたことでしばらく増加していたものが、景況感の好転とともに減少傾向にあるようです。

 

◆約7割が「手当が出るなら残業はいとわない」

「残業についてどう思うか」を聞いてみたところ、昨年度に続き「手当がもらえるからやってもよい」が最多となり、昨年度の63.0%から69.4%に急増し、過去最高を更新したそうです。

昨今のいわゆる「ブラック企業」による残業代の不払いなどの報道に敏感になっており、残業はいとわないけれども、それに見合った処遇を求めている傾向にあるようです。

 

◆「社長になりたい」は1割を下回る 

また、産業能率大学がまとめた「2014年度新入社員の会社生活調査」によると、最終的に目標とする役職・地位について、「社長」と答えた人が9.0%となり、調査を開始した1990年以降で過去最低だった昨年の11.9%を下回り、初めて1割を下回りました。

一方、女性の管理職登用を進める企業が増えている中、将来の進路として「管理職で部門の指揮をとる」と回答した女性の新入社員が28.8%で、過去最高となったようです。

 

 

 

 


中小零細企業の経営を支援する「よろず支援拠点」とは?

 

◆国が設置する「経営相談所」

「よろず支援拠点」は、国が全国に設置する経営相談所のことで、経済産業省・中小企業庁の「中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業」により設置されています。

経済産業省は、平成26年度から各都道府県に1カ所ずつ、地域の支援機関と連携しながら中小企業・小規模事業者が抱える様々な経営上の相談に応えるため、このよろず支援拠点を整備することとしています。

先月2日に40拠点が開設しましたが、同月30日には新たに7拠点が開設され、全国47都道府県に「よろず支援拠点」が開設されています。

最寄りのよろず支援拠点へ直接連絡すると、専門のスタッフが相談に応じ、適切な解決方法を提案してもらえるとのことです。

 

◆開設に至った背景

全国385万の中小企業、中でもその9割を占める小規模事業者については、地域の経済や雇用を支える重要な存在であるにもかかわらず、その相談対応を担う既存の支援機関の、機関ごと・地域ごとに支援のレベルや質、専門分野、活動内容等のばらつきが課題となっていました。

そこで、相談体制の整備が必要ということになり、開設に至ったとのことです。

 

◆主な役割と具体的な業務は?

「よろず支援拠点」の主な役割と具体的な業務には、以下のものがあります。経営のことで困ったことがあれば、一度相談してみるのもよいかもしれません。

(1)総合的・先進的アドバイス

他の支援機関では十分に解決できない経営相談に応じ、中小企業・小規模事業者の課題を分析。解決策を提示し、フォローアップも実施する。具体的な支援のイメージとしては、売上拡大(新規顧客獲得や海外進出等)、再生・経営改善、現場改善(生産性向上)等。

(2)支援チーム等の編成支援

中小企業・小規模事業者の課題に応じた適切な支援チームの編成を支援。支援チーム編成のため、複数の支援機関、公的機関、起業OB等の「支援専門家」や、大学、大企業等の事業連携の相手先との調整。具体的な支援のイメージとしては、企業が抱える複数の経営課題に対し、適切な支援ができる機関・専門家による支援チーム編成の主導等。

(3)的確な支援機関等の紹介

支援機関等との接点がなく、相談先に悩む中小企業・小規模事業者の相談窓口としての相談対応。相談内容に応じて、適切な支援者につなぐことによる支援機関・専門家の紹介。