2011/07/27

8月の事務所便り

「精神疾患・うつ病」増加に伴う最近の動き


 ◆うつ病患者は100万人超
 うつ病の代表的な症状は、「抑うつ気分がほとんど1日中、毎日続く」「物事への興味や喜びが感じられなくなる」「不眠や睡眠過多がほとんど毎日ある」などとされていますが、このようなうつ病の患者は、ここ10年で2倍以上になり、今や100万人を超えています。
 
そんな中、以下のような取組みが検討・実施されています。

 ◆精神疾患を加えて「5大疾病」に
 日本ではこれまで、がん、脳卒中、心臓病(急性心筋梗塞)、糖尿病を「4大疾病」と位置付け、重点的に対策に取り組んできましたが、これに精神疾患(うつ病、統合失調症、認知症など)を新たに加えて「5大疾病」とする方針を厚生労働省が決めたそうです。
 うつ病をはじめとする精神疾患は年々増加しているため、国では、診療の中核を担う病院の整備や訪問診療の充実など、精神疾患に関する医療体制の強化を図っていく方針です。

 ◆東京都によるメンタルヘルス専門サイト
 自治体においても様々な取組みが行われています。例えば東京都では、今年5月に「職場のメンタルヘルス」(http://www.kenkou-hataraku.metro.tokyo.jp/mental/)というサイトを開設しました。
 このサイトには、働く人やその家族が疲労蓄積度をチェックしたり、事業者が職場に潜むストレス要因をチェックしたりするために使えるチェックリストが掲載されており、国や東京都などが開設しているメンタルヘルスなどに関する相談窓口を探すこともできます。

 ◆「新型うつ」増加への対応
 うつ病の治療に関しては、抗うつ薬が使用されるのが一般的ですが、プライベートでは元気なのに職場ではうつ状態の「新型うつ」にはそのような薬は効かないそうです。
 企業としては、従業員がうつ症状を訴えてきた場合に、「従来型うつ」なのか「新型うつ」なのかを見極め、対応していくことも重要となってきます。


新入社員の保守的傾向と企業が求める能力

 ◆今年の新入社員は保守的?
 日本生産性本部の調査(2,154人が回答)によれば、今年の新入社員のうち、「自分が入社した企業に定年まで勤めたい」と考えている人は、全体の34%(前年比9ポイント上昇)だそうです。この数字は、調査開始以降、最も高くなったそうです。
 また、産業能率大が行った調査(415人)でも、今年の新入社員のうち「終身雇用を望む」と回答した人は全体の74.5%で、これも過去最高の数字となっています。
 今年の新入社員には、非常に「保守的」「安定志向」の傾向がみられます。

 ◆大変だった就職活動の影響?
 また、上記の産業能率大が行った調査では、「就職活動がかなり大変だった」と回答した人(35.4%)も、これまでの調査で過去最高となったそうです。
 就職活動が大変だったからこそ、「せっかく入社できた会社にずっといたい」と考えている新入社員が多いように思われます。

 ◆企業が社員に求める能力は?
 独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査において、企業に対して「人材の育成にあたって今後求められる能力」についての質問を行ったところ、以下の結果(複数回答)となりました。
(1)部下や後継者の指導をすることができる能力(73.1%)
(2)組織や人を管理するマネジメント能力(73.0%)
(3)既存の業務を見直し改善したり新たな発想を生み出したりする能力(71.8%)
(4)組織の中でチームワークを生み出すコミュニケーション能力(66.4%)
(5)事業運営方針の策定や企画を行う能力(50.9%)
 同機構では、企業が求める人材は、「協調型」の社員より、「自主行動型」の社員であると分析しています。


受動喫煙防止対策を行った飲食店等に対する助成金

 ◆喫煙室設置による空間分煙の促進
 厚生労働省では、飲食店・旅館等を経営する中小企業が、店舗等に喫煙室を設置し、その喫煙室以外での喫煙を禁止した場合に、喫煙室設置に係る費用の一部を助成する制度の創設を発表しました。
 これは「受動喫煙防止対策助成金」と呼ばれるもので、受動喫煙防止対策としてより効果的と考えられる喫煙室の設置による空間分煙の促進が、制度創設の目的とされています。

 ◆対象となる中小企業とは?
 この助成金の対象とされる中小企業は、以下の通りです。
(1)飲食店、喫茶店または旅館業の事業者
(2)喫煙室設置による空間分煙を行う事業者
(3)喫煙室設置に係る書類を整備している事業者
 なお、上記の「飲食店」には、食堂、レストラン、専門料理店、酒場、喫茶店、その他の飲食店、「旅館業」には、旅館、ホテル、簡易宿所、下宿業、その他の宿泊業が含まれるとされています。

 ◆支給される額は?
 支給額は、「喫煙室設置に係る費用の4分の1」とされており、支給上限は「200万円」となっています。
 なお、この助成金は、10月1日から実施される予定です。

〔厚生労働省ホームページ〕
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001gvb6-att/2r9852000001h1ay.pdf


「お金」にまつわる調査結果

 ◆平均貯蓄額は1,244万円
 総務省から、2010年の「家計調査」(2人以上世帯のうち勤労者世帯)が発表されていますが、これによると、平均貯蓄額は「1,244万円」だそうです。
 貯蓄額は年代によって大きな差があるでしょうが、この数字を「多い」と見るべきか、「そうでもない」と見るべきか、皆さんはどちらでしょうか?
 ちなみに、もっとも貯蓄額の多い60歳以上の平均は「2,173万円」だそうです。

 ◆平均月収は62万4,213円
 日本生活協同組合連合会が実施した「家計簿調査」によれば、2010年における家計の平均月収(ボーナスも含め12等分。世帯主の平均年齢は50.8歳)は「62万4,213円」となっています。
 これは、前年から4,000円弱アップしています。

 ◆ボーナスの使い道は?
 電通総研が調査(688人が回答)を行った今夏のボーナスの使い道について、ベスト10は次の通りの結果となりました。
(1)国内旅行(22,2%)
(2)LED電球(9.6%)
(3)ぜいたくな外食(7.6%)
(4)ブルーレイディスクレコーダー(6.1%)
(5)海外旅行(5.7%)
(6)地デジ対応テレビ(4.8%)
(7)扇風機(4.7%)
(8)スマートフォン(4.4%)
(9)節電・節水家電(3.9%)
(10)ベッド・布団の冷却マット(3.2%)
 電力不足に伴う節電が求められる中、関連する項目が(2)(7)(9)(10)に挙がっているのが、今年の特徴だと言えます。


中小企業の育休取得促進に向けて

 ◆中小企業で育休取得は難しい?
 育児休業の取得は大企業ではかなり浸透してきたものの、中小企業の中には「そんな余裕はない」という経営者も少なくありません。
 育休取得には職場環境の整備等、いろいろと高いハードルがありますが、取組みを進めている中小企業もあります。

 ◆職場環境が大きく影響
 各都道府県の労働局雇用均等室に寄せられる育児休業に関する相談は、2010年度の法改正で倍増したそうです。労働者からの相談で多いのが「育休取得による不利益な扱い」で、次いで「取得が認められない」です。
 育児休業を取って復帰しようと思えるか否かは、職場環境が大きいと言えます。従業員の「残業が多いと育休を取りにくく復帰しにくい」という声を反映し、残業は事前に「会社からの指示」「自らの判断」などと申請して許可を得る仕組みを導入したことで、取得率が30%以上になった会社もあるそうです。
 また、子育て支援を図る「時差出勤」や「短時間勤務」などの柔軟な働き方は、中小企業のほうが臨機応変に導入できる利点もあります。

 ◆国も助成金を拡充して支援
  近年、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を実現する環境作りを中小企業に求める動きが強まっています。
 国でも中小企業の支援に力を入れており、社員100人以下の企業を対象として育休取得者1人目に70万円を支給する「中小企業子育て支援助成金」の予算は、2011年度は前年度比約13%増の36億円に増額されています。
 中小企業での育休取得促進には、業務の見直しと働き方の改革がカギとなるのではないでしょうか。


どこまで許される?「クールビズ」

 ◆「スーパークールビズ」まで登場
 今夏、職場でも家庭でも、大幅な節電が求められています。しかし、環境省が打ち出した「スーパークールビズ」には戸惑いの声が広がっています。
 今夏はポロシャツ、チノパンが認められる職場が増えていますが、ノーネクタイで上着なしという格好が多いようです。

 ◆「クールビズ」とは?
 クールビズが政府主導で導入されたのは2005年です。内閣府の2009年調査では57%の企業が導入済みで、やっと夏の服装で一定の合意ができたところへ、今夏の「スーパークールビズ」が到来しました。
 30~40代の会社員300人へのアンケートでは、夏の職場の室温の高さに不安という人は84%に達しました。服装を選ぶ時に8割が「涼しいかどうか」を重視する一方、「スーパークールビズ」にするかを尋ねると、「例年よりカジュアルにする予定はない」との回答が最も多くありました。

 ◆どこまで許される?
  ほとんどの企業は節電目標を打ち出していますが、社員の服装については「ノーネクタイにノー上着」という従来のスタイルが基本となっているようです。
 そんな中、2つめと3つめのボタンの間にスナップボタンを入れた「2.5ボタンシャツ」など一見普通に見えるものが人気だそうです。ボタンを2つ外しても胸元が開き過ぎず、清涼感があって涼しいと言われています。
 涼しさを追求しつつ、なるべく普通に見える服装の工夫が求められます。

 ◆室内でも熱中症の危険
 仕事にふさわしい服装はありますが、暑さを我慢すると室内でも熱中症になる可能性があります。
 人の体温は汗が蒸発するときに熱を奪うことで下げられるため、吸汗・速乾性に優れた素材を選ぶこともポイントです。


労使トラブル増加と解決の仕組み

 ◆労使トラブルは増加傾向
 厳しい経済情勢を背景に、企業と従業員が雇用契約などをめぐってトラブルになるケースが増えています。
 短期解決に役立つ仕組みなど、押さえておきたい項目をまとめました。

 ◆「労働審判制度」とは?
 これは2006年から始まった制度で、民間から選ばれた労働審判員2人と裁判官で構成される労働審判委員会が調停(話合い解決)を試み、まとまらなければ労働審判を下します。
 審判に異議がなければ確定となり、異議があれば通常の訴訟に移行します。調停や確定した審判は裁判上の和解と同じ効力があり、強制執行も可能です。
 通常の裁判は長期化しがちですが、労働審判は「原則3回以内」で審理を終えるため、平均審理期間は74日と短期間です。

 ◆個人での争いが増加傾向
 厚生労働省の出先機関である都道府県労働局や労働基準監督署で無料相談ができる「総合労働相談コーナー」も便利です。
 ここでは企業への助言・指導や、紛争調整委員会によるあっせんができますが、労働審判のように、あっせんに応じさせる強制力はありません。法令違反などの疑いがあれば、労働基準監督署が会社に対して指導を行います。
 2010年度の相談件数のうち、民事上の個別労働紛争の相談は24万6,907件と過去最高だった前年度と同水準でした。組合の組織率低下などを背景に、働く人が個人で経営者側と向き合う状況が増えているためのようです。

 ◆トラブルが起きないことが一番
 会社が残業代を法律通りに支給していなかった場合などで、労働審判などを通じ、突如数百万円規模の支払いが必要になるケースも見られます。
 もちろん、トラブルが起きないことが一番ですが、トラブルが起きてしまった場合の対応を考えておく必要もあります。


サマータイム制と体内時計の関係
 
 ◆サマータイム制の導入が増加
 始業と終業時刻を1~2時間前倒しするなどの日本版サマータイム制を導入する企業や自治体が、関東地方を中心に増えています。
 節電対策が目的ですが、生活のリズムが崩れ健康へ悪影響が出ないかと心配する声も上がっています。

 ◆体内時計には2種類ある
  人は生まれながらにして備わる「体内時計」を持っています。この体内時計により、人は夜眠くなり、朝目覚めるというリズムを生み出します。
 体内時計には2種類あり、1つは脳の神経にある「主時計」、もう1つは全身の細胞にある「末梢時計」です。この正体は酵素やホルモンなどのたんぱく質の生成を調節する遺伝子で、一定の周期で活動して体内の代謝などを停滞せずに進めています。
 主時計の周期は約25時間と、人が生活する1日より長いため、自然のままでは後ろにずれていきます。このため、遅く寝るのは簡単ですが、早く寝るのが難しくなります。
 主時計は光に反応して早まる性質を持っているため、早く起きる習慣をつけるなら起床後すぐに太陽光を浴びることが効果的のようです。

 ◆食事の量と時間で調整
 末梢時計の調整には、食事の量と時間が重要です。専門家によれば、人は9~11時間空けた後の食事によって末梢時計がリセットされるため、主時計と同調する可能性が高いと予測されます。
 このため、夕食を遅くとった場合は朝食までの時間が短くなり、遺伝子の活動がリセットされにくくなります。また、朝食の献立も重要で、米やパンのほかたんぱく質も十分にとり、夕食はむしろ軽めにした方が、末梢時計の調整には効果的とされます。


新卒者を中心とした雇用対策

 ◆学生の就職支援策を強化
 厳しい雇用情勢が続く中、政府は、大学生や高校生の就職支援策を強化しています。
 来春卒業予定者の支援に向けて、専門のハローワークを設置しています。8月以降に離職者らのセーフティーネットを整備することと合わせて、雇用対策に力を入れているようです。

 ◆専門ハローワークを設置
 政府は、来春の大学、高校の卒業予定者や離職者の就職支援策として、ハローワークの体制・機能を拡充しています。2010年以降、「新卒応援ハローワーク」を全都道府県に設置するとともに、新卒者の就職支援を専門に担当する「学卒ジョブサポーター」を約2000人配置しました。この「学卒ジョブサポーター」は、窓口相談だけでなく、自ら企業に足を運んで求人開拓をする点が特徴です。

 ◆就職率は過去最低水準
 大学を今春卒業した就職希望者のうち、4月1日現在で就職した人の割合は91.1%(暫定値)で、就職氷河期と言われた過去最低の2000年卒と同じ水準となりました。
 このように新卒者の就職が依然厳しい状況の中、民間の就職情報会社や大学の就職課などを頼るだけだった数年前から様変わりし、学生たちは就職活動のメニューの1つに新卒応援ハローワークを加えているようです。

 ◆「求職者支援法」の成立
 求職者支援法が成立し、10月から施行されることも就職支援策の目玉です。
 働く意欲のある人が新制度を上手に活用し、早期就職や転職のきっかけとなることが期待されます。


セクハラによる労災の認定基準が緩和へ

 ◆「心理的負担」を重く評価
 職場でのセクハラにより発症したうつ病などの精神障害の労災認定について、専門家でつくる厚生労働省の分科会は、新たな認定基準の案をまとめました。
 直接的なセクハラについては被害者の心理的負担が重く評価され、労災認定されやすくなります。厚生労働省では、年内にも都道府県の労働局に通知をする予定です。

 ◆労災の認定基準とは?
 精神障害の労災認定は、その原因となった職場の出来事を心理的負担が強い順に「3」~「1」の段階で評価したうえで、個々の事情も勘案して判断しています。
 現在、セクハラについては原則として中間の「2」とされ、特別の事情があれば労働基準監督署の判断で「3」に修正可能ですが、判断基準は「セクハラの内容、程度」とあるだけで、修正例は少ないようです。

 ◆セクハラによる労災の新基準
 新基準では、どのようなセクハラなら「3」や「1」に修正されるかの例示を行っています。
「3」に修正される具体例として、「強姦や本人の意思を抑圧してのわいせつ行為」、「胸など身体への接触が継続した」、「接触は単発だが、会社に相談しても対応・改善されない」、「言葉によるセクハラが人格を否定するような内容を含み、かつ継続した」などの事例を挙げ、該当すれば「3」と判定すべきとしました。
 この他、長期的に繰り返されるセクハラ行為が少なくないことから、対象疾病の評価期間を、従来の「発症前6カ月」よりも前の部分も評価する等の意見も盛り込まれています。

 ◆今後の影響
 今後、基準が変われば心理的負担がより重く見られ、労災が認定されやすくなると思われます。会社としても、就業規則にセクハラ防止規定を設けるなど、これまで以上の対策が求められます。