2012/12/01

12月の事務所便り


最近の労働裁判からピックアップ

◆たばこの煙で安全配慮義務違反?
 仕事中の受動喫煙が原因で病気になったとして、岩手県の職員男性が同県に対して損害賠償(約890万円)などを求めて訴訟を起こしていましたが、盛岡地裁は請求を棄却しました(10月5日判決)。
  この男性は2008年1月ごろ公用車を運転した際、車内におけるたばこの煙が原因となって、鼻の痛みや呼吸困難が発生し、同年4月に「化学物質過敏症」と診断され、その後、2009年7月までの約1年間休職となりました。
 裁判では、県が「公用車の少なくとも1台を禁煙車にしなかったこと」が、安全配慮義務違反となるかどうかが争点だったようですが、裁判長は「男性が呼吸困難を発症した2008年当時、残留たばこ煙にさらされないようにすべきだとの認識は一般的ではなかった」とし、安全配慮義務違反には該当しないと判断しました。

◆エンジニアの死亡は過労によるものか?
 システム開発会社(本社:東京都)のエンジニアだった女性が死亡した原因は過労にあったとして、女性の両親が元勤務先に対して損害賠償(約8,200万円)を求めていましたが、福岡地裁は過労死と認め、約6,820万円を支払うよう命じました(10月11日判決)。
 この女性は1998年に入社して福岡事業所に勤務し、2006年からシステム改修のプロジェクトに携わり、午前9時から翌日の午前5時まで働くこともあったそうです。2007年3月に自殺を図った後に職場復帰をしましたが、同年4月、出張先のホテルで致死性不整脈のため死亡しました。
 裁判長は、2007年2月の時間外労働時間が127時間を超え、プログラム完成などの精神的緊張もあったとして、死亡と業務との因果関係を認めました。

◆契約更新拒否は解雇権の濫用か?
 空調機器会社(大阪市)の元期間従業員4人が、有期雇用契約に上限を定めて契約更新を拒否されたのは解雇権の濫用であるとして、元勤務先に対して地位確認などを求めていましたが、大阪地裁はこの請求を棄却しました(11月1日判決)。
 当初、4人は請負社員として勤務(6~18年間)していました。大阪労働局が2007年12月に「偽装請負」であるとして是正指導を行い、会社は2008年3月に4人を正社員として雇用(期限付き)しましたが、2010年8月末以降の契約を更新しませんでした。
 裁判長は「解雇の手続きを踏まずに期間満了によって契約が終了する点に着目して有期雇用契約を申し込んだにすぎず、解雇権濫用とはいえない」と判断しました。


高年齢者雇用の状況と改正法施行後の高齢従業員の処遇

◆希望者全員が65歳以上まで働ける企業は5割弱
 厚生労働省は、2012年「高年齢者の雇用状況」(6月1日現在)の集計結果を10月中旬に公表しました。
 これによれば、高年齢者雇用確保措置を「実施済み」の企業の割合は97.3%(前年比1.6ポイント上昇)で、大企業で99.4%(同0.4ポイント上昇)、中小企業で97.0%(同1.7ポイント上昇)でした。
 また、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は48.8%(同0.9ポイント上昇)で、大企業で24.3%(同0.5ポイント上昇)、中小企業で51.7%(同1.0ポイント上昇)との結果となりました。

◆約4分の1は継続雇用を「希望しない」
 また、定年到達者の継続雇用の状況についてですが、過去1年間に定年年齢に到達した人(43万36人)のうち、「継続雇用された人」は73.6%(31万6,714人)、「継続雇用を希望しなかった人」は24.8%(10万6,470人)、「継続雇用の基準に該当しないこと等により離職した人」は1.6%(6,852人)でした。
 約4分の1の人は継続雇用されること自体を望んでいないようです。

◆継続雇用者の処遇はどのように決める?
 高年齢者雇用安定法の改正(2013年4月1日施行)により、労働者が希望すれば、企業は65歳までの雇用確保措置(継続雇用等)が義務付けられます(例外あり)。その際に問題となるのが、継続雇用者の「処遇」です。
 日本経団連が行った「2012年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」の結果によれば、法改正に伴って必要となる対応について、44.2%の企業が「高齢従業員の貢献度を定期的に評価し、処遇へ反映する」と回答しています。
 高齢従業員の業務内容や貢献度に応じて、処遇を決定しようとしている企業が多いようです。


動き始めた「厚生年金基金制度」の改革

◆制度改革に向けた大きな一歩
 厚生労働省は、11月2日に「厚生年金基金制度に関する専門委員会」の第1回会合を開き、「厚生年金基金制度の見直しについて(試案)」を示しました。
 同省では、この試案をベースとして、「厚生年金基金制度改革」を行いたい意向であり、今後の動向が注目されます。

◆示された「試案」の内容
 上記委員会で示された厚生年金基金制度(以下、「基金」)の見直しに関する「試案」の主な内容は、次の通りです。

(1)特例解散制度の見直しによる「代行割れ問題」への対応
 基金の「代行割れ問題」については、従来は「特例解散制度」により、分割納付の特例や厚生年金本体への納付額の特例が設けられてきました(時限措置)。しかし、母体企業の負担能力が著しく低下している基金では、特例措置を用いても解散できない状況です。
 そこで、現行の特例解散制度の基本的な考え方・枠組みを維持しつつ、一定の見直しを行うとしています。見直し後の特例解散制度は5年間の時限措置とするようです。

(2)企業年金の持続可能性を高めるための施策の推進
 日本の経済基調が低成長に変化し、金融市場の変動幅が拡大する中、持続可能な企業年金を普及させるため、企業年金の選択肢の多様化を進めるとしています。
 また、中小企業の企業年金を維持する観点から、基金から他の企業年金への移行を支援するための特例措置を設けるとしています。

(3)代行制度の見直し
 代行部分の債務(最低責任準備金)の計算方法について、有識者の指摘等を踏まえ、厚生年金本体との財政中立の範囲内で適正化を図り、代行制度の今後の持続可能性に関する検証や厚生年金本体の財政に与える影響等を踏まえ、10 年間の移行期間を置いたうえで、代行制度を段階的に縮小・廃止していくとしています。
 また、移行期間中の制度運営にあたって、解散認可基準等の見直しも行うようです。

◆来年の通常国会に関連法案提出か
 AIJ問題に端を発した厚生年金基金の問題ですが、今後、改革に向けた動きが加速していく可能性もあり、厚生労働省では、関連法律の改正案を来年の通常国会に提出する予定です。


「職場の飲みニケーションは必要」は古い考え!?

◆約6割が「職場の飲み会は必要」
 「飲みニケーションは必要だ!」という考えも今や昔の話とも思われがちですが、まだまだ健在のようです。
 株式会社インテージが今年8月に実施した「仕事帰りの外飲み事情2012」(ビジネスパーソン意識調査)の結果が発表されましたが、この調査によれば、約6割の人が「職場の飲み会は必要」と思っていることが明らかになりました。

◆仕事帰りの飲みの相手は誰?
 最近3カ月の仕事帰りの外飲み(職場以外の人との飲みも含む)の状況ですが、67.1%の人が飲みに行っており、男性20代で81.0%、女性20代で75.0%でした。32.9%の人が飲みに「行っていない」と回答しましたが、特に女性30~50代の割合が高いようです。
 仕事帰りに飲む相手の上位は、「職場の同僚(同性、異性問わず)」が最多(56.1%)であり、「職場の同僚(同性のみ)」(33.3%)、「職場の上司」(32.6%)が続いています。
 やはり、仕事の延長で職場の人と飲みに行く人が多いようです。

◆職場の飲み会は必要or不要?
 職場の飲み会については、約6割(58.9%)の人が「必要だと思う」と回答し、男性のすべての年代と女性の20代では6割以上が「必要」と回答しているのに対し、女性の30~50代では5割以上の人が「必要だと思わない」と回答しています。
 職場のコミュニケーションを図る1つの方法として「職場の飲み会」は有効なようですが、20代男女の3割以上は「上司からの誘いを断ることができない」と思っている状況もまた、あるようです。


スマホ等の「ブルーライト」が眼の健康に及ぼす影響

◆「ブルーライト」って何?
 パソコンやスマートフォン、携帯用ゲーム機やタブレットの液晶ディスプレイ、またLED照明などから発せられる光のうち、可視光線で最も強い青色光を「ブルーライト」といい、他の色の光のように眼の角膜や水晶体で吸収されず、網膜まで達します。
 青色光よりさらに強い紫外線については、長時間浴びると角膜炎等の眼病を生じることが明らかになっていますが、青色光も、眼の中で光を散乱させ、眩しさを感じる原因となることがわかっています。

◆目の健康にどのような影響を与える?
 青色光は眩しさを感じる原因であることから、長時間青色光を発する光源を見続けると、眼精疲労を引き起こす可能性が指摘されています。
 また、人間は青色光を見ると「今は活動時間である」と感じ取り、脳が覚醒することから、夜遅くに青色光を見続けることで体内時計が狂ったり、睡眠障害を引き起こしたりする可能性が指摘され、研究が進められています。

◆ブルーライト保護商品の効果は?
 青色光を50%カットする効果のあるメガネが、あるチェーン店では発売開始から1年ほどで75万本超を売り上げ、パソコンやスマートフォンの液晶保護フィルムも人気を集めています。
 眼科医や大学教授らで立ち上げたブルーライト研究会では、保護メガネの使用が眼精疲労や睡眠に及ぼす影響に関する調査結果を発表していますが、いずれも一定の効果があったそうです。
 ところが、人の水晶体には元々青色光をブロックする仕組みがあること、自然光にも青色光が含まれること、また、目を酷使することが眼精疲労の原因となることから、まだ青色光が有害とは言い切れないとする見方もあるようです。

◆ブルーライト保護商品に頼らずに眼の疲れを軽減するには?
 オフィスにおける眼精疲労の原因には、何と言ってもパソコンの長時間使用が挙げられますが、モニタの明るさを落としたり画面の背景色を変えたりするだけでも、疲労感を軽くすることができるそうです。
 VDT作業については、厚生労働省も従事者の心身の負担を軽減するためのガイドライン等を設けています。肩こりや眼精疲労に悩む社員がたくさんいるという企業では、これらを参考に作業環境を見直してみるのもよいでしょう。


最新調査結果にみる残業代支払いと有休消化率の現状

◆所定外労働時間に関する調査結果
 連合総合生活開発研究所(以下、「連合総研」)が、20~64歳の民間企業雇用者(2,000名)に対して2012年10月1~6日の間に行った調査によると、2012年9月中に所定外労働を行った人は39.1%で、平均所定外労働時間は38.2時間でした。
 特に、男性の所定外労働時間を行った割合は55.2%と多く、平均所定外労働時間は43.0時間でした。

◆残業代支払いに関する調査結果
 所定外労働を行った人のうち「残業手当の未申告がある」と回答した人の割合は35.3%で、未申告分の時間の平均は21.3時間でした。
 未申告ありと回答した割合は、男女の正社員・非正社員を合わせた全体の約4割ですが、特に男性正社員に多く見られ、未申告分の時間は平均24.8時間でした。未申告の理由については、「働いた時間通り申告しづらい雰囲気」が36.3%、「残業代に限度がある」が24.2%でした。
 残業手当の全額が支払われた人の割合は46.9%で、「4割以上6割未満が未申告」だった人が5.5%、「2割以上4割未満未申告」だった人が5.3%でしたが、まったく支払われていない人も6.3%に上ったそうです。

◆有休消化率に関する調査結果
 上記調査において、2011年度に支給された有給休暇の消化率について尋ねたところ、「概ね消化できた」と回答した人の割合は、非正社員で約4割、正社員で約2割にとどまることがわかりました。
 厚生労働省が2012年11月1日に公表した「就労条件総合調査」においても、2011年における正社員の有休取得率は49.3%で、前年比で1.2ポイント上昇して2年連続上昇したものの、「2020年に70%」との目標には遠く及ばない結果となっています。

◆賃金収入も回復の兆しなし
 さらに、同調査において1年前と比べた賃金の増減について質問したところ、「減った」と回答した人が31.6%で、「増えた」と回答した人の23.7%を上回る結果となりました。


「中途採用」を成功させるためには何が必要?

◆求める人材像は明確ですか?
 株式会社アイデムの研究部門「アイデム人と仕事研究所」が、正社員の中途採用に関する実態調査を行いました。この調査は、直近1年間に正社員の中途採用面接を行った企業を対象に行われ、1,010社が回答しています。
 調査では、自社内の採用ビジョンについて、「求める人材像が確立されている」(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計)が60.1%あった一方で、37%が「確立されていない」と回答しています。
 また、求める人材像が確立されている企業において、採用に関わる社員の間でその人材像が「共有されている」と回答したのは25.2%、「どちらかといえば共有されている」と回答したのは57.2%でした。
 さらに、面接で「自社の求める人材を見抜けている」と回答した企業は55.8%で、見抜けている企業ほど「求める人材像」も明確であったという比例関係があることがわかったそうです。

◆人材像の「確立」と「共有」に必要なこと
 求める人材像があやふやであったり、採用担当者に共有されていなかったりすれば、自社の求める人材は採用できません。求める人材像が確立されていない、あるいは確立されていても共有できていない原因はどこにあるのでしょうか?
 この原因を考えていくと、「『経営戦略』が明確になっているか」につながっていると考えられます。つまり、(1)経営戦略が明確になっている、(2)人材の評価方針(人事考課制度)が明確である、(3)その評価方針が社員間で共有・合意されている(規定化・研修による理解)、といったものが充分に遂行されて初めて、会社としてのビジョンが定まり、共有され、会社が求める人材像が明確になるのです。

◆良い人材は良い経営戦略とその管理から
 良い人材を採用するためには、まず、自社の戦略を明確にすること。そして会社がその戦略を実行するには、その進捗を管理する人事制度の構築が不可欠です。
 面接テクニックを提供する会社なども多くあり、担当者のスキルアップ自体も重要ではありますが、「良い人材が入ってこない」と思い当たる場合には、一度、人事制度について考えてみてはいかがでしょうか。


今後重視される安全衛生分野における取組み

◆「第12次労働災害防止計画」の策定に向け審議中
 「第12次労働災害防止計画」とは、労働安全衛生に関して、平成25年から平成29年度までの5年の間に、国(厚生労働省)が計画的・重点的に対策を行う内容を定めるものです。現在厚生労働省労働政策審議会安全衛生部会に骨子案が示され、審議中ですが、この内容から、今後の安全衛生分野の国の方針がわかります。

◆高年齢労働者増加への対応
 まず特徴的なのは、高齢化や改正高年齢者雇用安定法の施行により、今後も増えるとされる高年齢労働者に対する取組みです。
 骨子案では、次の事項が指摘され、対策を強化する必要があるとしています。

(1)60歳以上の高年齢労働者数
平成14年(約400万人)→ 平成19年(約550万人)に増加

(2)労働災害に占める60歳以上の割合
平成19年(16.3%)→ 平成23年(20.5%)に増加

(3)平成22年の労働災害発生率

〔死傷災害〕
全年齢平均(2.14/千人当たり)
60歳以上(3.08/千人当たり)

〔死亡災害〕
全年齢平均(0.22/1万人当たり)
60歳以上(0.47/1万人当たり)…非常に高い数値

◆改正労働安全衛生法とメンタルヘルス対策
 労働安全衛生法の改正(改正法案は今国会では廃案になりましたが)では、健康診断時のストレスチェック制度や受動喫煙対策の推進も明記され、労働者数50人以上の会社についての重点的な対策が検討されていたようです。昨今のメンタルヘルスに関する状況を見ていると、今後も労働者の安全・健康管理に対する国の施策が進められていくのは確実なようです。

◆対策が強化される業種は?
 労働災害防止対策を重点的に進める業種として、「建設業」「貨物運送業」「第3次産業(小売業)」「介護事業(社会福祉施設)」等が挙げられています。これらの業種では、業務に伴う発生率の高い災害を防止するとしています。
 なお、恒常的な長時間労働などは、行政による是正指導・是正勧告、そして様々な労使トラブル(合同労組・ユニオン等からの団交要求、多額の損害賠償請求、無用な裁判費用、新たな労災・メンタル不全の発生…etc)の元凶となりますので、早めの取組みが大切です。


多くのビジネスパーソンが「睡眠不足」で仕事に支障

◆社会人の睡眠傾向の実態
 朝夕の通勤電車等で、ぐっすり眠っている人をよく見かけますが、ピースマインド・イープ株式会社がビジネスパーソン(701名)を対象に行った睡眠傾向の実態調査によると、約6割が「睡眠不足で仕事に支障が出ている」と回答したそうです。
 また、眠れない夜に考える人物の上位は「同僚や部下」「上司」等、仕事に関連する人であるというデータも確認されています。

◆平均睡眠時間5~6時間台が7割超
 NHKが実施した2010年度版「国民生活調査」によると、日本人の平均睡眠時間は7時間14分だったそうです。
 しかし、前記調査の回答者であるビジネスパーソンの平均睡眠時間は、「5~6時間台」が71%(501人)と大部分を占めています。一般的に心身ともに最適な睡眠時間は7~8時間とされている中で、「7~8時間台」と回答した人は15%にとどまりました。

◆約6割の社員が睡眠不足で仕事に支障
 「睡眠不足で仕事に支障が出ていますか?」との質問には、「毎日のように出ている」「ときどき出ている」と回答した人が合わせて56%に上り、職場での睡眠不足による影響が明らかとなりました。
 また、「眠れないとき誰のことを考えていますか?」という質問では、1位が「仕事関連の人・こと」(21%)、2位が「家族」(18%)という結果になりました。
 なお、「仕事関連の人」の内訳では「同僚や部下」が最多で、「上司」「取引先担当者」などが続いています。

◆良質の睡眠が仕事効率アップにつながる
 慢性的な睡眠不足は、うつ病、脳・心臓疾患、生活習慣病の悪化につながる一因となり得るとの報告もなされています。
 より良い睡眠を得ることは、ビジネスパーソンの健康増進や業務の生産性向上につながりますので、良質な睡眠環境を整え十分な睡眠を確保することが、個人のみならず、組織にとっても重要な課題だと言えます。


企業におけるメンタルヘルスに関する取組みの実態

◆上場企業を対象に実施した調査の結果
 公益財団法人日本生産性本部の「メンタル・ヘルス研究所」は、全国の上場企業(2,140社)を対象に実施した「メンタルヘルスの取組み」に関するアンケートの調査結果を発表しました。
 この調査で、最近3年間における心の病が「増加傾向」と回答した企業は37.6%で、前回調査(2010年)の44.6%から減少し、「横ばい」と回答した企業は51.4%で、前回調査の45.4%から増加したことがわかりました。

◆30~40代の「心の病」の割合
 メンタルヘルスへの企業の取組みが成果をあげている一方で、依然として企業は「心の病」を有する従業員を数多く抱えています。
 今回の調査では、これまで最も「心の病」が多い年齢層であった「30代」の割合が58.2%から34.9%に減少する一方、40代の割合が22.3%から36.2%に増加しています。

◆「早期発見・早期対応」の効果は?
 不調者の「早期発見・早期対応」(二次予防)は企業が最も力を入れ、期待もしている取組みであり、管理職のメンタルヘルス対応としても最も期待が高いものです。
 これらの効果が出ている(「十分効果が出ている」と「まずまず効果が出ている」の合計)企業は51.4%でした。「あまり効果が出ていない」「効果が感じられない」「どちらともいえない」を合わせると47.2%で、半数近くの企業では十分な効果を感じていないようです。

◆職場における変化は?
 また、最近の「職場や働き方の変化」に関する質問では、次の3つが上位を占めました。 

(1)職場に人を育てる余裕がなくなってきている(76.1%)
(2)管理職の目が一人一人に届きにくくなってきている(69.7%)
(3)仕事の全体像や意味を考える余裕が職場になくなってきている(68.3%)

 組織のタテ・ヨコの結束性や、組織の継続性に大きな影響を与えうる変化が多くの企業で起きているようです。
 健康でイキイキした職場づくりのため、メンタルヘルスに関する企業努力を継続していくことが非常に重要だと言えそうです。

2012/11/01

11月の事務所便り

改正高年法施行後も継続雇用しなくてよい労働者とは?


 ◆来年4月1日に改正法が施行
 8月29日に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」(改正高年齢者雇用安定法)が成立し、来年4月1日から施行されます。
 改正の大きな柱は、「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み」の廃止、つまり、原則として「希望者全員を継続雇用制度の対象者とすること」の義務付けです。

 ◆「例外」の内容(案)
 しかし、上記の「原則」には「例外」が認められることとなっており、その「例外」の案が、厚生労働省から示されました。その内容は次の通りです。

 ・「心身の故障のため業務に堪えられないと認められること」、「勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと」等、就業規則に定める解雇事由または退職事由(年齢に係るものを除く。以下同じ)に該当する場合には、継続雇用しないことができる。
 ・就業規則に定める解雇事由または退職事由と同一の事由を、継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に、就業規則に定めることもできる。
 ・また、当該同一の事由について、継続雇用制度の円滑な実施のため、労使が協定を締結することができる。
 ・なお、解雇事由または退職事由とは異なる運営基準を設けることは改正法の趣旨を没却するお それがあることに留意する。
 ・ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意する。

 ◆11月以降に正式決定の予定
上記の案は、今年11月以降に正式決定される予定です。
 企業としては、来年4月以降に定年を迎える個々の労働者について、継続雇用(再雇用)の対象とするのかしないのか、継続雇用(再雇用)する場合の処遇(賃金等)をどのようにするのか等について、あらかじめ検討しておかなければなりません。


最近の労働裁判から(飲酒運転で退職金不支給、能力不足で解雇)

 ◆飲酒運転による事故での退職金全額不支給は適法
 京都市の中学校の元教頭(52歳)が2010年4月に自宅で飲酒した後に自家用車で外出し、さらに車内でも飲酒し、物損事故(車に追突)を起こしました。
 その後、この元教頭は懲戒免職処分を受け、「退職金全額不支給処分」となりましたが、不支給処分の取消しを求めて訴訟を提起しました。一審(京都地裁)では、原告側が勝訴(全額不支給処分は取消し)となりました。
 この訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は、原告側勝訴となった上記の一審判決を取り消し、元教頭の請求を棄却しました(平成24年8月24日判決)。
  請求棄却の理由として、大阪高裁の裁判長は、「飲酒運転の内容は極めて悪質・危険であり、これに対する非難は大きく、公教育全体に対する信頼を失墜させた」とし、さらに「学校教育に貢献して勤務状況が良好だったことを考えたとしても、処分に裁量権の乱用があったとはいえない」と判断しました。

 ◆外資系企業における能力不足による解雇は無効
 アメリカの金融・経済情報サービス会社に勤務する日本人男性(50歳)は、2005年11月に中途採用され、2009年12月以降、独自記事の執筆、同社の「業績改善プラン」への取組みなどを命じられました。
 その後、記事本数の少なさ・記事の質の低さ(能力不足)を理由として、男性は2010年8月に解雇されましたが、「能力不足を理由として解雇されたのは不当である」と主張し、同社に対して「地位確認」および「賃金支払い」を求めて訴訟を提起しました。
 この訴訟の判決において、東京地裁の裁判官は、解雇を無効とし、男性の請求を全面的に認めました(平成24年10月5日)。
 裁判官は、「労働契約の継続を期待できないほどに重大だったとはいえず、会社が記者と問題意識を共有したうえで改善を図ったとも認められない」とし、「解雇理由に客観的な合理性はない」と判断しました。
 男性側の弁護人によれば、外資系企業を中心に、無理な課題を設定する「業績改善プラン」の未達成を理由とした退職強要が相次いでおり、上記判決はこの手法による解雇を無効と判断した初めてのケースだそうです。
 今後の他の外資系企業への影響が気になるところです。


新入社員が「働きたい職場」「重視する人間関係」「感じる厳しさ」

 ◆「働きたい職場」とは?
 株式会社リクルートマネジメントソリューションズが実施した「2012年新入社員意識調査」(今年3~4月に実施。696名が回答)の結果によると、「自分が働きたい職場の特徴」の上位5つは、次の通りとなったそうです。
 貴社では、上位5つのうちいくつ当てはまりますか?

(1)お互いに助け合う職場(49%)
(2)アットホームな職場(44%)
(3)遠慮をせずに意見を言い合える職場(42%)
(4)活気がある職場(41%)
(5)皆が1つの目標を共有している職場(35%)

 ◆「上司・先輩」よりも「同期」を重視!
 レジェンダ・コーポレーション株式会社が実施した「新社会人の意識/実態調査」(484名が回答)では、「会社の中で上司・先輩・同期のどの関係を重視したいか」を尋ねたところ、「同期」が49.4%、「先輩」が32.9%、「上司」が17.8%との結果となり、上司や先輩との関係よりも、同期との関係を重視する人が多いことがわかりました。
 この調査は今年の4月に実施されたものですが、時間が経過し、仕事を覚え始めるにつれ、このような考え方が変わってくる(上司や先輩を重視するようになる)のかもしれません。

◆新入社員の7割近くが「社会人は厳しい!」
 また、株式会社マイナビからは、今年4月入社の新入社員を対象に実施した「2012年マイナビ新入社員意識調査 ~3カ月後の現状~」(7月に実施。788名が回答)の結果が発表されています。
 この調査は、新入社員に「仕事環境」「キャリア」「自分の将来」「能力向上」などについてアンケートを行ったものですが、「社会人になってどう感じたか」を尋ねたところ、「厳しかった」と答えた割合は68.2%(想像していたよりも厳しかった25.4%、想像していた通り厳しかった42.8%)、「厳しくなかった」と答えた割合は30.7%(想像していたよりも厳しくなかった29.4%、想像していた通り厳しくなかった1.3%)でした。
 多くの新入社員が、様々な厳しい場面に直面しているようです。


最近増えている「ソーハラ」の実態とセルフチェック

 ◆前月比20%超の増加率を見せるフェイスブックのユーザー数
インターネット関連サービス会社セレージャテクノロジーの10月9日付け発表によると、2012年10月時点の日本国内におけるフェイスブックユーザーは推定1,621万人(前月比221万人増)と、アジア圏内で5番目にユーザー数が多い国となっています(1位インド、2位インドネシア、3位フィリピン、4位タイ)。

 ◆フェイスブックユーザーが悩む「ソーハラ」とは?
 企業の採用活動においても活用されることが増えてきたフェイスブック(以下、「FB」)ですが、利用マナーをめぐる問題も増えてきています。
 「ソーハラ」とは、「ソーシャルメディア・ハラスメント」の略称で、ソーシャルメディア上におけるハラスメント行為を指しますが、主に、上司の部下に対する「『友達』承認」の強要や、上司の書込みに対する「いいね!」反応の強要などを指すものとして使われています。
 ソーハラ被害にあったユーザーの中には「上司からの友達申請を承認したが、プライベートの友人とのやり取りまで知られるのがイヤでFBへの書込みをやめてしまった」という人もいるようですが、加害者となっている上司は、自身のハラスメント行為についての認識が低いようです。

◆こんなユーザーは嫌われる!
 FBには、閲覧者が「いいね!」ボタンをクリックすると投稿者に自分が共感したことを伝えられる機能がありますが、記事を投稿する度に「いいね!」を押されると、「監視されているみたいだ」と感じる人が多いようです。
 また、FB上での人脈拡大は「友達申請」と「承認」から始まりますが、若いビジネスパーソンの多くは、上司からの友達申請は好ましく思っていないようです。さらに、FB上のプライベートな書込みについて、「あれどうなったの?」などと職場で話題にされることは嫌だと感じる人が多いようです。
 上記のような行動が見られるユーザーは嫌われる傾向にあるようですから、すでにFBユーザーの方もこれから始める方も、節度を守って楽しむことが求められると言えるでしょう。


中小企業の経営を左右する「金融モラトリアム法」の行方

 ◆「金融モラトリアム法」とは?
 いわゆる「金融モラトリアム法」、中小企業金融円滑化法は、リーマンショックで経営がひっ迫した中小企業の倒産を防ごうと、当時の亀井静香金融相の鶴の一声を受けて整備されました。
 この法律により、金融機関は、借金返済に困っている中小企業などの借り手から返済計画の変更(返済負担軽減)を申し込まれた際には、できる限り適切に応じるよう努力義務が課されました。
 本来2011年3月末までの時限立法として成立したものでしたが、景気回復が思わしくないことから2012年3月末まで1年間延長され、さらに2013年3月末までの再延長が決定しています。

 ◆迫る期限切れと中小企業を取り巻く厳しい環境
  再延長された期限も約半年後に迫っていますが、依然として中小企業をめぐる経営環境が厳しいことから、現在、さらなる延長がなされるのか、それとも予定通り終了してしまうのかに注目が集まっています。
 この法律による中小企業に対する支援は285万件超、約40万社に及び、総額79兆円にも上るそうですが、すでに適用を受けていた企業であっても倒産するところが現れる等しており、今後、期限切れによる「倒産ラッシュ」が始まるのではないかと懸念されています。

◆再延長の代わりに別の救済策?
 第3次野田内閣の発足を受けて初めて行われた閣議後の記者会見において、中塚一宏金融相は、「本法の再々延長はしない」旨を明言しています。
 代わりに検討されているのが、5%と上限を定めている銀行出資比率の緩和による救済案です。これは、銀行が過度に経営干渉をしないように設けられていたものですが、銀行による再生支援としての資金供給を促すため、来年の通常国会への関連法案の提出を目指しているそうです。
 しかし、専門家からは効果を疑問視する声も上がっており、また、関連する行政庁との交渉も難航が見込まれることから、今後の行方は不透明です。


これからの「仕事と介護の両立」に備えるには?

◆「仕事と介護の両立セミナー」が増えている
 法律の改正(「育児・介護休業法」:中小企業についても平成24年7月1日から全面的に適用されています)などもあり、従業員の育児支援に積極的な企業は増えてきていますが、「介護休業」については、まだまだ理解が進んでいないようです。
 ただ、最近の動向として、「仕事と介護の両立」をテーマにした社内セミナーを行う企業が増えており、社員からの反響も大きいようです。

 ◆社員の不安は?
 介護に関しては、社員としては、「社内の人には相談しにくい」といった気持ちがあるのが一般的でしょう。また、公的な支援についての情報が不足していたり、情報の入手先さえよくわからなかったりというのが実態のようです。
 「親の介護が必要になったときにどうすればよいのか、事前に知っていればもっと慌てずに準備できたのに」というのが、経験者が異口同音に語ることだそうです。

 ◆会社の不安は?
 仕事をしながら介護を行う可能性の高い年代は40~50代です。管理職として仕事上の重要なポストにあることが多い世代であり、しかもちょうど現在、世代別の人口自体が少ない世代に重なっています。
 団塊世代の大量退職に伴い、社員が将来的に仕事と介護を両立しなければならない可能性は急速に高まっていくと予測されています。
 また、日常の業務に忙しい担当者に、社員からの相談にすべて応えられるような介護に関する知識を持たせるのも、なかなか難しいものです。

 ◆社内向けの情報提供の必要性
 「介護を担う必要がある」という理由だけで貴重な人材を失ってしまうのは、会社としても大きな損失ではないでしょうか。
 そうした損失が、社内制度の見直しや社員向けの情報提供によって、少しでも防げるとすれば、従業員も安心して業務に就けることでしょう。
 定年退職を控えた社員向けにはライフプランセミナーを実施する企業があり、節目の年齢(35歳、45歳、58歳)には年金についての詳しい案内が届くように、多くの社員が直面する介護と仕事の両立についても、機会をとらえて社内セミナーを開いてみてはいかがでしょうか?
 このような情報提供の機会があれば、社員からの相談もしやすくなり、より一層、社内の“風通し”の良さにもつながるでしょう。


「BYOD」ってご存知ですか?

 ◆「BYOD」とは?
 最近、スマートフォン、高性能ノートパソコン、タブレット等の業務利用が増えてきているようです。特に、私物のモバイル機器を業務に利用することを「BYOD」というそうです。「BYOD」は、“Bring Your Own Device”の略で、「私物モバイルの業務利用」という意味です。

 ◆企業のメリット
 2005年の個人情報保護法の施行以来、個人のモバイル機器の利用については「原則禁止」とする企業が大半でした。しかし、すでに世の中の状況は変化しており、個人所有の機器を利用することによる企業のメリットもあります。

(1)企業支給のものより個人所有のもののほうが高性能であることが増えた
(2)自宅や外出先でも、「クラウド型サービス」が利用可能なことが多くなり、端末の種類を問わず利用できるようになった
(3)モバイル勤務環境を構築しやすくなったため、緊急時の事業継続性が確保できる
(4)セキュリティー技術、管理ツール・サービスの発達により、利便性を損なわず安全にBYODを導入出来る環境が整ってきた

使い慣れた機器を利用することで、従業員の業務効率やモチベーションのアップにもつながります。

◆企業のリスク・課題
 しかし、利用にあたっては、企業検討すべき課題も当然ながらありますし、導入にあたっては、従業員に対する情報管理教育の実施や内部規程の整備が前提となります。

(1)個人情報・機密情報等の情報漏洩、ウイルス感染等のセキュリティー対策
(2)「いつでも」「どこでも」業務活動ができる状況についての勤怠管理
(3)利用する機器内にある従業員のプライバシー情報の取扱い
(4)端末購入費や通信費に対しての補助が必要か
(5)IT管理者の知識向上、機器のアップデート等のコスト

 ◆真剣に検討すべきとき
 日常生活や諸官庁の届出まで、IT化は加速度的に進展しています。いつまでも「リスクが、リスクが…」と言って敬遠しているわけにもいかないのが実情のようです。そうした逃げの姿勢では、会社の事業活動は萎縮するばかりだからです。便利で業務効率を上げくれるBYODですが、「リスク」と「メリット」のバランスを慎重に検討しましょう。


職場のコミュニケーションは円滑ですか?

◆約9割が仕事で「自分の考えがうまく伝わらない」
 学校法人産業能率大学が2011年にビジネスパーソンを対象に実施した、ビジネスシーン、職場におけるコミュニケーションの意識などを尋ねた調査「ビジネスパーソンのコミュニケーション感覚調査」(対象:20代~50代のビジネスパーソン337人)によると、仕事のコミュニケーションとして「自分の考えがうまく伝わらない」と考えている割合が約9割にも上ることがわかりました。
 その理由として、「自信をもって自分の考えを主張できないから」「自分の考えに論理性や合理性がないから」など、自分に原因があるという回答が5割を超える一方、「相手に聞く姿勢がないから」など、相手に原因があるとする回答も52.7%と半数を超えました。

 ◆6割強が「職場で孤独を感じる」と回答
 職場で「ギスギスした雰囲気があるか」という質問には、36.2%が「ある」と回答しました。
 また、「職場で孤独を感じるか」との問いには、6割強が「ある」と回答し、その理由について、「自分のことしか考えていない人が多いから」(34.8%)、「メンバー同士の関係性が希薄だから」(34.3%)、「世代のギャップがあるから」(33.8%)、「仕事が縦割りでお互いの状況がよくわからないから」(32.4%)が挙げられています。
 また、「IT化で対話が減少した」(11.1%)という回答もありました。

 ◆「職場のコミュニケーション活性化」が労務トラブルも予防する
 職場のコミュニケーションがうまく図れていないと、業務に支障をきたすだけではなく、昨今問題となっている職場のパワーハラスメント等にも発展しかねません。
 厚生労働省は今年10月1日から「みんなでなくそう!職場のパワーハラスメント あかるい職場応援団」というサイトを開設しており、その中で職場におけるコミュニケーション環境を向上するための連載を取り上げたり、パワーハラスメントと職場のコミュニケーションの関係について触れたりしています。
 職場でコミュニケーションに特化した社員研修を取り入れたり、1人ひとりが適切かつ積極的な声掛けを行ったりすることで、パワーハラスメントをはじめとした労務トラブルの予防につながることでしょう。


自分の貯蓄額は多い?少ない? 気になる貯蓄額の実態

 ◆平均貯蓄額は338万円
 株式会社インテリジェンスが運営する転職サービス「DODA(デューダ)」が22~34歳のビジネスパーソン(5,000人)を対象に行った貯蓄額の実態調査によると、平均貯蓄額は338万円で、3年連続増加したそうです。
 増加の要因として、「給料やボーナスが増えた」、「株式投資やFXなどの運用がうまくいった」などといった景気回復によるものが目立った一方で、「貯蓄に回す金額を増やした」、会社の積立制度に加入した」といった理由も多く、将来に不安を抱える人が意識的に消費より貯蓄を選択する傾向にあるようです。

 ◆貯蓄額の分布
 貯蓄額の分布を見ると、次の通りとなっています。

・50万円未満…23%
・100~200万円未満…18%
・50~100万円未満…14%
 半数以上の人は貯蓄額が200万円未満という結果でしたが、「500~1,000万円未満」(12%)、「1,000万円以上」(7%)という高額貯蓄者も2割近くいることもわかりました。

 ◆都道府県別の貯蓄額
 平均貯蓄額が最も多い都道府県は、「岐阜県」(451万円)で、貯蓄額分布を見ると、「500~1,000万円未満」と「1,000万円以上」の合計が29%で、他県に比べ高額貯蓄者が多い傾向が見られました。貯蓄方法については、「定期的に貯金するように心がけている」「無駄遣いしない」など、堅実に貯蓄を増やしている人が多かったようです。
 一方、貯蓄額が最も少ない都道府県は「大分県」(94万円)で、貯蓄が増えない理由について、「車を購入した」「自動車の維持費にかかる」といった車に関するものが他県に比べて多かったようです。
 地域ごとに見てみると、東海・北信越・関西など、日本の中央に位置する地域は貯蓄が多い一方、九州・沖縄や北海道・東北など、日本の端に位置する地域は貯蓄が比較的少ない傾向が見受けられたということです。


資格があれば転職に有利なのか?

 ◆中途採用では「資格」より「経験」を重視
 株式会社インテリジェンスが、転職と資格の関係について行った調査(1万5,000件を対象)によると、採用条件として「資格」が求められる求人に関して、「資格が必須」の求人は全体の15%、「資格があると尚可」は8%、「資格の有無を問わない」は77%となったそうです。
 一方、何らかの「職務経験」が求められる求人割合をみると、全体の85%は「1年以上の経験」が必須で、「経験不問」の求人はわずか15%に留まっており、中途採用においては資格より経験が重視されていることがわかりました。

 ◆職種によっては「資格重視」
 ただし、職種によっては資格が重視される場合もあり、「資格が必須」の求人が多い職種は、上位から「医療系の専門職」(37%)、「建築/土木系の技術職」(36%)、「営業系」(33%)でした。
 また、「資格があると尚可」の求人についても、「建築/土木系」(34%)をはじめ、「金融系」(19%)、「不動産/士業系」(17%)など専門職系が多い結果となっています。

 ◆歓迎される「宅建」「簿記2級」
 実際に「資格が必須」の求人内容を見てみると、最も多くの求人で必須条件とされる資格は「普通自動車免許第一種」で、1万5,000件の求人のうち約1割(1,568件)で必須となっているようです。
 特に、顧客を訪問する「営業職」や、建設現場に足を運ぶことの多い「建築/土木系」は、自動車免許を必須とする傾向があるようです。その他、「薬剤師」(2位、239件)、「建築士一級」(4位、80件)など、医療系や建築系の資格が上位に並んでいます。
 一方、「あると尚可」とされている資格は、「宅地建物取引主任者」(129件)がトップで、不動産業界においては、営業職はもちろん技術職や事務職など、幅広い職種において資格保持者が歓迎されているようです。
 中途採用においては、「資格」よりも「経験」が重視されるようですが、昨今の厳しい転職事情では、資格取得にかかわらず、常に勉強はしておいたほうが良さそうです。

2012/10/01

10月の事務所便り

有期労働契約に関する新ルール!「改正労働契約法」のポイント


 ◆今後の人事労務管理に大きな影響
 8月3日に国会で成立した「改正労働契約法」が、同年8月10日に公布されました。
 この改正法は「有期労働契約」に関する新しいルールを定めるものであり、企業における有期労働契約者の人事労務管理に大きな影響を与えるものです。

 ◆改正法が定める3つのルール
(1)有期労働契約の無期労働契約への転換
 有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたとき、労働者の申込みがあった場合には、労働者に「無期転換申込権」が発生し、これを行使した場合には、使用者はこれを承諾したものとみなされます。
 つまり、5年を超えて有期労働契約が反復更新された場合には、これを期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換しなければならないのです。
 なお、原則として、6カ月以上の「空白期間」(クーリング期間)がある場合には、前の契約期間を通算しないこととされています。

(2)「雇止め法理」の法定化
 最高裁判所の判例で確立しているとされている「雇止め法理」に関して、その内容が法律に規定されました。一定の条件を満たした場合には、使用者による労働者の雇止めが認められないことになります。

(3)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
 有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることが禁止されます。

 ◆改正法の施行日と実務対応
 上記改正内容の施行日ですが、(2)については公布日(8月10日)から施行されています。(1)・(3)については公布日から起算して1年を超えない範囲内で施行されます。
 企業としては、人件費等に関して大きな負担が生じる可能性のある改正です。また、就業規則や雇用契約書の作成・見直し、契約更新を行わない有期労働契約者への雇止めの通知等、今後の実務対応も重要となります。


希望者全員の65歳までの雇用を義務付け!
「改正高年齢者雇用安定法」が成立

 ◆来年4月1日施行
 8月29日に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」(改正高年齢者雇用安定法)が成立しました。この改正法は、来年4月1日から施行されます。

 ◆改正法の主な内容
 (1)継続雇用の対象者を限定できる仕組みの廃止
 現在、65歳未満の定年を定めている企業が、高年齢者雇用確保措置として「継続雇用制度」を導入する場合、継続雇用の対象者を限定する「基準」を労使協定で定めることができますが、この仕組みが廃止され、希望者全員を継続雇用の対象とすることが義務付けられるようになります。
 なお、厚生年金(報酬比例部分)の受給開始年齢に到達した以降の者を対象として、上記の「基準」を引き続き利用できる経過措置(12年間)が設けられています。
 (2)継続雇用先企業の範囲の拡大
 定年を迎えた高年齢者の継続雇用先を、自社だけではなくグループ内の会社(子会社、関連会社等)まで広げることができるようになりました。
 なお、この場合には、継続雇用について事業主間における契約が必要とされます。
 (3)違反企業名の公表規定の導入
 高年齢者雇用確保措置(定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止のいずれか)を実施していない企業に対して、労働局・ハローワークが指導・勧告を行い、それでも違反が是正されない場合には企業名を公表することがあります。

 ◆実務上重要となる「指針」の策定
 今後、事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施・運用に関して、「指針」が策定される予定です。
 この指針では、「業務の遂行に堪えない人」(健康状態の悪い人、勤務態度の悪い人等)をどのように取り扱うか(継続雇用の対象から外してよいか)などが定められる予定ですので、実務上は非常に重要となります。


平成24年度「地域別最低賃金額」の状況

 ◆37府県で中央審の示した引上げ額を上回る
 9月10日に富山県地方最低賃金審議会が答申を発表し、47都道府県の24年度地域別最低賃金額がすべて出揃いました。
 7月26日に中央最低賃金審議会(以下、「中央審」)から「7円」との引上げ額の目安が示されていましたが、結果として全国平均で737円から749円へと「12円」の引上げとなり、8割超の37府県で中央審が示した引上げ額を上回る結果となりました。
 最も引上げ額が大きかったのは北海道と大阪府の14円で、最も小さかったのは栃木県、山梨県、和歌山県の5円でした。

 ◆6都府県で生活保護費を下回る
 平成23年度は北海道、青森、宮城、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、広島の11都道府県で最低賃金が生活保護費を下回る「逆転現象」が起こっていたため、労働者のモチベーションダウンにつながる等、問題視されていました。
 平成24年度は、これら11都道府県のうち青森、埼玉、千葉、京都、兵庫の5府県で逆転現象が解消されることとなりました。

 ◆最高額と最低額の格差は拡大
 平成24年度地域別最低賃金の最高額は東京都の850円、最低額は島根県、高知県の652円で、両者の差は198円となっています。
 この最高額と最低額の差を平成23年度と比較してみると、最高額837円(東京都)と最低額645円(岩手県、高知県、沖縄県)の192円であったものが、拡大する結果となっています。

 ◆9月30日以降順次発効予定
 今回発表された地域別最低賃金額は、最も早いところ(三重県)で9月30日から発効します。すでに官報に公示済みの31都府県においても発効年月日が確定しています。
 16道府県においては、異議申立期間の経過を待って、異議がなければ、最も遅い富山県においても11月4日には発効する予定となっています。


「無年金時代」の備えに一役買います―年金払積立傷害保険

 ◆年金の「2013年問題」
 昭和28年4月2日から36年4月1日生まれの男性と、昭和33年4月2日から41年4月1日生まれの女性は、60歳になっても特別支給の老齢厚生年金が支給されず、61歳からの支給となります。
 このように、平成25年4月1日以降、今まで60歳から支給されていた特別支給の老齢厚生年金が60歳からは支給されなくなるため、60歳で退職すると「無年金・無収入」となる期間が生じる可能性があり、年金の「2013年問題」として話題を呼んでいます。
 8月には改正高年齢者雇用安定法も成立し、60歳以降も働き続ける人がこれまでより増えることが見込まれていますが、労働者本人の体調等によっては働き続けることが難しい人もいます。
 そこで、最近、損害保険会社が販売する「年金払積立傷害保険」が注目を集めています。

 ◆「年金払積立傷害保険」の仕組み
 この保険は、保険料を分割で一定期間払い込むと、あらかじめ設定した給付金の支払開始日以降に給付金を年金形式で受け取ることができるものです。また、保険期間中は、ケガによる死亡・重度後遺障害が補償されます。
 最も幅広い年代を受け入れている損害保険会社では「15~64歳」までの人が加入することができ、「公的年金だけでは老後の生活が心配」という方で、特に若年層から人気を集め、発売後1年間で5万件以上の契約者を集めている損害保険会社もあるそうです。

 ◆加入時に注意すべきこと
 生命保険会社が販売する個人年金で、10年以上の期間にわたって給付金を受け取る個人年金保険では、保険料控除の対象となり所得税が軽減されるメリットがありますが、本商品では保険料控除の対象とはなりません。
 また、給付総額は、払込保険料額を上回るよう設定されていますが、途中解約をした場合の解約返戻金については、払込総額を下回る可能性があります。


従業員の健康診断をめぐる最近の動き

 ◆通過待ちの改正労働安全衛生法案
 国会通過待ち(継続審議)となっている改正労働安全衛生法案は、職場のメンタルヘルス疾患増加に対応するため、健康診断に併せて従業員の精神的健康の状況を把握するための検査を義務付ける内容となっています。
 この改正に対応するため、厚生労働省では、メンタルヘルスについて専門的な対応を行うことのできる医療機関を養成するための事業(外部専門機関選任事業)を始めることになったそうです。
 これまで健康診断の場で医師による問診はありましたが、「その場で従業員の精神的健康の状況まで把握することは困難ではないか」といった議論もあったようです。実際の検査はこうした専門医療機関の利用も想定されているようです。

 ◆健保組合からの健康診断を医療機関に仲介するサービス
 企業の健康保険組合から受注した健康診断を医療機関へ紹介する仲介サービスについて、利用料金の下落が続いているそうです。健保財政の悪化に加え、新規参入のサービス提供会社が増えたことが要因です。サービスの基本料金が1人当たり3,000~3,500円ほどで、5年前に比べて約3割も安くなっているとのことです。
 健保組合が医療機関へ独自に健康診断を依頼するよりも人件費が削減でき、仲介サービスを利用する健保組合は増加しているそうです。

 ◆「健康管理」は「コスト管理」
 従業員が健康であればこそ、会社の生産性も高まります。長期休業者の発生や欠員補充に伴う新人の指導等は、他の従業員にも負担を与えます。
 従業員の健康管理は、会社の安全衛生管理体制や健保財政等のコストに直接的・間接的に影響を及ぼします。今後の動きに注目したいところです。


年間の休日数、気になりますか?

 ◆年間休日数の平均は124日
 転職サービス「DODA」(株式会社インテリジェンス)の行った、休日に関するアンケート調査(25~39歳の正社員・契約社員のホワイトカラー系職種男女5,000人を対象)によると、年間休日数の平均は124.0日だったそうです。

【休日数の内訳】
・通常休日(法定・所定)…102.8日
・夏季休暇…4.3日
・年末年始休暇5.2日
・有給休暇(実取得)10.1日
・特別休暇1.5日

 ◆職種別の休日数
 調査対象となった56の職種別に見たときの、年間休日の多さは、「製造系-研究開発」(134.1日)、「製造系-設計/開発」(134.0日)、「営業系-MR(医薬情報担当者)」(133.0日)と続き、上位10職種のうち4職種が製造系でした。
 また、夏季休暇の日数でも製造系が多く、お盆に製造ラインを止める工場が多いことが影響しているようです。

 ◆有給休暇について
 有給休暇(実取得)の日数については、「金融系-ファンドマネジャー/アナリスト」(14.5日)、「企画・管理系-調査/リサーチ」(13.7日)、「サービス系-スーパーバイザー」(13.1日)、「システム系-ITコンサルタント」(12.6日)、「金融系-投資銀行業務」(12.5日)が上位を占めました。

こうした職種では、個人の仕事内容の融通が利き、有給休暇を取得しやすいようです。

 ◆企業の生産性を高めるために
 コスト削減・人件費削減が限界近くまで進行している会社も多く、これから生産性を高めるためには、従業員のやりがいに応えたり、従業員満足度を上げたりすることが必要になってくるでしょう。
 転職市場では、年収やその企業でのやりがいが判断基準となっていますが、休日日数や有休の取りやすさも、実は気にされているのではないでしょうか。


「経営人材」「幹部人材」を確保できていますか?

 ◆約8割が「次世代リーダーの確保ができていない」
 株式会社リクルートマネジメントソリューションズが実施した「経営人材育成実態調査」(従業員1,000人以上の企業が対象。263社が回答)によると、「経営人材」の育成に関する課題について、「育成方法が確立されていない」との回答に「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した企業が約8割に上ることがわかりました。
 また、「育成に求められるスピードが速まっている」(94.5%)、「求められる能力の質が変化している」(89.5%)という回答も見られました。

 ◆「幹部人材」選抜のプロセスにおける傾向
 幹部人材の選抜プロセスについては、日本生産性本部が実施した調査(大手を中心とした企業の教育研修担当者232人が対象)によると、「役員が対象者を人選」(53.4%)、「人事部が対象者を人選」(51.9%)、「各部門の責任者が対象者を人選」(50.4%)が上位となり、「社長が対象者を人選」(24.1%)、「公募してから選抜」(15.8%)は少数派でした。
 また、選抜基準については、「資格・役職」(94.7%)や「人事考課・人事情報」(66.2%)、「年齢」(54.1%)が上位となっています。

 ◆どのような研修を行っているか?
 幹部教育のプログラムで取り入れられている具体的なメニュー・テーマとしては、「経営実務に関する知識」(55.6%)、「経営課題へのアクションラーニング」(42.1%)、「現在の経営トップとの対話」(33.8%)、「ロジカルシンキング」(27.1%)、「プレゼンテーションスキル」(22.6%)との回答が続きました。
 全体的に、実務につながる研修を行っている企業が多いようです。

 ◆中小企業においても対応が求められる
 上記は大企業を中心とした調査になりますが、中小企業においても幹部育成における課題は大きいことが予想されます。
 自社の経営上の課題を見極めて、新たな時代に対応できる人材の育成が今後ますます求められてくることでしょう。


若手社員の「仕事・転職・キャリア意識」に関する調査

 ◆所得増加は「将来の貯蓄」のため
 株式会社キャリアデザインセンターが実施した「仕事・転職・キャリア意識に関する調査」(25~34 歳・大卒以上の若手社員620名が対象)によると、前年と比べて現在の年収が「増加した」とする回答が約4割に達し、「減少した」は約1割にとどまったことがわかりました。
 現在よりも明確に所得を上げたいと回答した人の割合は約6割となり、理由としては「将来のための貯蓄」を挙げています。
 消費の節約を積極的に行いたいと考える人は前回調査よりも増加しているとのことで、若手社員の堅実な特徴がうかがえます。

 ◆転職意識はあるが社内での昇進にも意欲
 転職については、8割以上の人が「より良い会社があれば、現在の会社を辞めて転職してもよい」と考えているという結果になりました。
 一方、出世や昇進への意欲・関心は最近の調査で上昇傾向です。10年後も現在の会社で仕事を続けるイメージを持つ人が増加し、最近5年間では最も高い値となっています。

 ◆「リーダー経験」より「専門性向上」を重視
 働く理由としては、「自分の生活のため」「自由に使えるお金を得るため」「将来の貯蓄のため」が上位に挙がっており、「自分の成長のため」「周囲の人から認められたい」等の理由は減少傾向にあります。
 仕事においては、「リーダー経験」よりも「専門性向上」を重視する傾向が強く、「優秀な上司」が仕事上の成長要素として必要であるという意見は前回調査よりも増加しました。
 また、仕事の目標として、「社外でも通用する経験・能力を身につける」「年収を上げる」が上位に挙がっていますが、「社内外の人脈作り、社内評価」を目標とする人の割合が増えています。

 ◆若手社員は安定志向か?
 今どきの若手社員は、「より条件が良い会社があれば転職したい」という気持ちは持ちつつも、貯蓄等を目的として社内での昇進への意識も高く、終身雇用制度への支持も高いなど、実際には安定志向の面が見られます。
 慎重・堅実タイプの若手社員をいかに活用できるかは、企業において今後の課題となるでしょう。


「厚生年金基金脱退」を認める判決と加入事業者への影響

 ◆厚生年金基金「やむを得ぬ理由の脱退認める」
 長野県建設業厚生年金基金の加入事業所が、財政状況の悪化を理由に基金からの脱退を求めていた訴訟で、8月24日、長野地裁は「やむを得ない理由」があるとして脱退を認める判決を言い渡しました。

 ◆訴訟の経緯
 原告である昌栄土建興業は、2011年1月、加入する長野県建設業厚生年金基金に対し、財政悪化や使途不明金の発覚などを理由に脱退を申請。ところが、同基金の代議員会は脱退を認めなかったため、同年6月に控訴しました。
 基金側は、「加入している基金の脱退が相次ぐと存続できなくなる」として、脱退には代議員会の議決が必要だと主張しましたが、同基金では2010年に23億円の使途不明金が発覚しており、また、当時の事務局長の指名手配などの特殊な事情が「脱退を認めるやむを得ない理由」として、脱退を認める判決が下されました。
 同基金は9月4日に東京高裁へ控訴、厚生労働省にも控訴審への参加を求めており、今後の行方が注目されます。

 ◆全国576基金のうち約半数は代行割れ
 厚生年金基金は運用の低迷が続いており、2011年度末では全国576基金のうち、約半数の286基金が代行部分に損失を抱える「代行割れ」状態となっています。
 加入している厚生年金基金から脱退するには、自社の積立不足分を一括納付することが条件ですが、体力のある企業だけが抜け、逆に経営の苦しい企業のみが取り残されることとなれば、今後、ますます厳しい状況となると考えられます。
 現状の制度では、「弱者だけが基金に残る構図」と言わざるを得ません。

 ◆脱退を希望している他の基金に影響も
 ある年金コンサルティング会社では、今年2月に発覚した「AIJ投資顧問」による年金消失問題を機に、脱退に関する相談が例年の倍以上になったとのことです。
 今回の判決では、使途不明金などの特殊な事情があるとはいえ、基金に加入している事業者に影響を与える可能性は十分にあります。
 仮に今後、脱退が増えると仮定すると、脱退企業からの多額な資金が入ることにより、一時的には基金の財政は良くなるかもしれませんが、中期的にみれば本質的な解決にはならず、さらに厳しい状況になるでしょう。


「産休期間中の社会保険料免除」に伴う効果

 ◆施行は2年以内
 「産休期間中の社会保険料免除」は、次世代育成支援の観点から出産前後の経済的負担を軽減し、子どもを産みながら働きやすい環境を整えることを目的として「社会保障・税一体改革成案」に盛り込まれ、8月10日に成立し、22日に公布されました。
 これにより、産休期間中の厚生年金保険料・健康保険料が労使ともに免除されることになりました。
 施行日は「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日」となっており、現時点では明らかになっていません。

 ◆産前・産後休業期間中の保険料徴収の特例
 「産前・産後休業期間中の保険料徴収の特例」とは、厚生年金の被保険者について、育児休業期間中に加え、産前・産後休業期間中(産前6週間〔多胎妊娠の場合14週間〕、産後8週間のうち、被保険者が業務に従事しなかった期間)も、同様に年金保険料が免除(健康保険料についても同様)され、将来の年金給付に反映させる措置を行うというものです。
 なお、保険料の免除は被保険者の申出によって行われ、事業主および被保険者双方の保険料が対象です。

 ◆産前産後休業を終了した際の標準報酬月額改定の特例
 「産前・産後休業を終了した際の標準報酬月額改定の特例」とは、育児休業後についての措置と同様、産前・産後休業終了後に育児等を理由に報酬が低下した場合に、定時決定まで保険料負担が改定前のものとならないよう、産前産後休業終了後の3カ月間の報酬月額を基に、標準報酬月額が改定されるというものです。
 なお、育児休業終了後についても同様の措置がとられます。

 ◆改正に伴う効果
 改正による効果としては、「産休期間中の社会保険料」という負担が労使ともになくなること、実賃金に比して割高な社会保険料負担が短期間で是正されることが挙げられます。
 また、すでに実施されている「育児休業期間中の社会保険料免除」と相まって、女性にとって、出産から育児までの期間について、仕事との両立の道筋が見えやすくなる点が大きな効果と言えるでしょう。

2012/09/01

9月の事務所便り

最多は月平均67時間! 残業の多い職種は?


 ◆月平均は28.6時間
 株式会社インテリジェンスは、25~34歳のビジネスパーソン(正社員・契約社員)5,000人を対象に「残業時間」に関するアンケート調査を実施し、その結果を発表しました。
 この調査結果によれば、2012年における平均残業時間は「月28.6時間」であり、調査開始(2007年)以降、最も多くなりました。
 同社では「リーマンショックによるリストラの実施や採用の抑制で人員を抑えていた中、足元の景気回復により企業で人手不足が発生し、既存社員の残業が増えていることが背景にある」と分析しています。

 ◆残業の多い職種
 職種別(58職種)の平均残業時間の1~10位は、次の通りとなっています(カッコ内は月平均の残業時間)。

(1)映像クリエイター(67.0)
(2)プロパティマネジメント(不動産業)(62.5)
(3)セールスエンジニア(製造業)(57.6)
(4)コンサルタント(シンクタンク)(51.5)
(5)広報(49.7)
(6)ゲームクリエイター(45.0)
(7)ファンドマネジャー・アナリスト(44.3)
(8)営業(不動産業)(41.9)
(9)商品管理(流通業)(41.8)
(10)投資銀行業務(41.3)

 ◆これからの企業の対策
 残業増加の要因として「景気回復」と「人手不足」が指摘されていますが、既存社員の業務量(=残業時間)が増える企業は今後も増加するのではと言われています。
 残業時間の増加は、企業(人件費の問題)にとっても、従業員(健康上の問題)にとっても大きな負担となりますので、何らかの対策を講じる必要があるでしょう。


「合同労組」との団体交渉をめぐるトラブル事例

 ◆合同労組からの救済申立が増加傾向
 東京都労働委員会から、平成23年における「不当労働行為審査事件」の取扱状況が発表されました。これによると、合同労組からの救済申立は89件(新規申立事件の約8割に相当)であり、過去10年では最高となっています。
 以下では、労働委員会が取り扱った(命令を出した)、合同労組との団体交渉をめぐる最近の事例をご紹介します。

 ◆団交の時間・場所の限定が不当労働行為に該当したケース
 この事件は、国立大学である大阪大学が、教職員組合による団体交渉の申入れに対し、開催時間を「午後0時から午後1時の昼休みの時間帯」と指定し、開催場所を特定の地区に限定したことが、不誠実団交に該当するとして、救済申立があった事件です。なお、以前は、団交は勤務時間中や勤務時間終了後に行われていたそうです。
 初審(大阪府労働委員会)は、大学側に対し、団交申入れに開催時間・場所の条件を正当な理由なく限定しないことおよび文書交付を命じたところ、大学側はこれを不服として中央労働委員会に再審査を申し立てていました。
 結論として、再審査申立ては棄却され、「大学が団体交渉の開催時間と場所を限定したことには正当な理由がなく、不当労働行為に当たる」とされました(7月9日)。

 ◆団交拒否が不当労働行為に該当したケース
 千里金蘭大学(大阪)が、希望退職に応じなかった准教授(2人)が所属している労働組合と誠実に団体交渉を行わなかったのは不当労働行為に該当するとして、大阪府労働委員会は「不当労働行為を繰り返さない」とする誓約文を組合側に渡すように大学側に命じました(7月13日)。
 大学側では、2010年10月以降、組合側と団体交渉を続けていましたが、2011年度の教員配置の詳細を明示しないまま、希望退職に応じない場合は事務職へ職種変更するとし、その後、准教授は2011年3月末に解雇されていました。


今こそ必要な「旅費規程」の見直しと経費節減策

 ◆財務省主導による調査の結果
 財務省から、「民間企業の旅費に関する実態調査」(調査対象3,500社、回答540社)の結果が発表されています(調査実施は株式会社リサーチアンドソリューション)。
 この内容は、出張が多く経費がかさみがちな企業にとっては、非常に参考になるものでしょう。

 ◆「旅費規程」の具体的な見直し内容
 この調査結果によれば、「過去に旅費規程の見直しを実施した」企業は8割強で、大幅な見直しを実施していない企業は18.0%に過ぎませんでした。
 平成23年度調査における「旅費規程」の見直し内容で、約15%以上の企業が実施している内容は次の8項目でした。

(1)手続き、精算方法の簡素化(25.0%)
(2)ディスカウント・チケット等の利用(19.3%)
(3)手続き、精算方法の厳格化(17.6%)
(4)距離区分・地域区分の見直し(17.0%)
(5)出張事前承認・承認の厳格化(15.9%)
(6)日当の引下げ(15.4%)
(7)職階区分の見直し(14.6%)
(8)宿泊料の実費支給化(14.6%)

 ◆具体的な経費節減策
 また、出張関連の経費節減策として、下記の内容を実施している企業が多いようです。出張旅費が増加傾向にある企業にとっては経費節減のヒントとなるでしょう。

・出張件数の削減(必要な出張のみ実施、事前承認の厳格化、テレビ会議システムの導入)
・出張内容の短縮、小規模化
・「宿泊出張」から「日帰り出張」への変更
・各種割引運賃、パック商品、コーポレートカードの利用
・旅行代理店との契約
・会社でのマイレージの管理


「育児・介護」に関する制度の利用実績

 ◆制度によって利用実績にバラツキ
 厚生労働省が発表した、(1)育児休業制度、(2)短時間勤務制度、(3)所定外労働の免除、(4)子の看護休暇制度、(5)介護休業制度、(6)介護休暇制度に関する利用実績(平成23年4月1日から12月31日まで)の調査結果によると、正社員による(1)の利用実績は5割以上で、非正社員でも201~300人規模の企業では2割を超えました。
 しかし、その他の制度については、(2)短時間勤務制度の利用実績が201~300人規模の企業の正社員で約45%、(3)~(6)はいずれも「利用者はいない」の回答が50%を上回る結果となり、制度によって利用実績にバラつきがあることが明らかになりました。

 ◆正社員男性は「子の看護休暇制度」の利用が多い
 正社員の男性の利用実績に着目すると、101~200人規模の企業において(4)子の看護休暇制度の利用実績が4.6%、201~300人規模では9.0%と、いずれも(1)育児休業制度の利用実績を上回る結果となっています。
 非正規社員の男性については、(1)~(6)のいずれについても1%を下回る結果となっていますが、(4)については101~200人規模の企業で0.2%、201~300人規模の企業で0.9%と、(1)・(2)の0%よりは利用されていました。

 ◆介護に関する制度の利用実績は総じて低い
 今回の調査では、201~300人規模の企業における女性正社員の(1)育児休業制度の利用実績が80.0%と最も多い結果となりましたが、同規模の女性正社員で比較しても(5)介護休業制度は6.1%、(6)介護休暇制度は5.5%と大きな開きがありました。
 (5)・(6)については「対象者がいない」と回答している企業が2割を超え、育児に関する制度よりも対象者・利用者ともに少なくなっていることも原因と考えられますが、約半数の企業が「利用者はいない」と回答していることから、利用が進んでいないとも考えられます。


派遣・パート・アルバイトの時給に関する動向

 ◆派遣スタッフの平均時給
 株式会社リクルートが行った「派遣スタッフ募集時平均時給調査」(2012年6月)によると、三大都市圏における2012年6月度の募集時平均時給は1,480円で、20カ月連続で前年同月比を上回る結果となりました。
 この調査では、(1)オフィスワーク系、(2)営業・販売・サービス系、(3)IT・技術系、(4)クリエイティブ系、(5)医療介護・教育系の5つの職種に分けて調査を行っていますが、5月度まで(1)・(2)・(5)で前年同月を下回っていたところ、6月度は(2)が前年同月を上回り、5職種中3職種で前年同月を上回る結果となりました。

 ◆エリア別にみるとどうか?
 関東・東海・関西のうち前年同月比プラスとなったのは関東のみで、前年同月の平均時給1,547円に対し1,550円でした。
 東海の平均時給は前年同月と2012年6月度のいずれも1,308円で、関西では前年同月1,327円、2012年6月期1,326円という結果になりました。

 ◆パート・アルバイトの平均時給
 また、同社の「パート・アルバイト全国エリア別募集時平均時給調査」(2012年6月)によれば、三大都市圏における2012年6月期の募集時平均時給は950円で、前月比プラス2円となったものの、前年同月比ではマイナス2円という結果になりました。
 同調査では、(1)販売・サービス系、(2)フード系、(3)製造・物流・清掃系、(4)事務系、(5)営業系、(6)専門職系、(7)その他の7つの職種に分けて調査を行っていますが、(1)・(3)・(4)・(5)で前月比プラス、前年同月比では(6)以外のすべての職種でプラスとなりました。
 
 ◆エリア別にみるとどうか?
 首都圏エリアの平均時給は993円で前月比プラス4円でしたが、前年同月1,001円からマイナス8円という結果でした。
 東海エリアの平均時給は889円で、前月892円、前年同月897円のいずれも下回る結果となりました。
 関西エリアの平均時給は今月・前月ともに898円で、前年同月901円を3円下回りました。


うつ病治療に初の指針、産業医は適切な判断をしてくれますか?

 ◆うつ病治療に初の指針(ガイドライン)
 精神疾患による労災申請・認定件数が過去最高となるなど、うつ病を主とする精神疾患は労務管理上の今日的課題の1つとなっていますが、このほど、日本うつ病学会では、医師向けのうつ病治療に関するガイドラインをまとめました。
 うつ病の診断・治療について、医師の間でも安易な薬物治療や誤診などが問題となっているようです。
 
 ◆「新型うつ病」は対象外
 ただ、今回のガイドラインでは、いわゆる「新型うつ病」は対象外とされています。新型うつ病については、精神医学的に深く考察された用語ではなく、医学的知見の明確な裏打ちがないというのが理由だそうです。
 会社としては、うつ病だと思われても他の疾患(躁うつ病、不安障害、発達障害など)であったり、新型うつ病と思われるけれどもはっきりしなかったりするような場合は対処が難しいものです。
 疾患としての確定的な判断は、医師による診断を待つより他ありません。社員本人の快復のためになる医師を探すのは難しいと言いますが、社員の状態を的確に判断してくれる、時には社員の嘘を見抜いてくれる会社側の医師・産業医を探すのはさらに大変です。

 ◆産業医の照会サービス
 そうした悩みを持つ会社のために、うつ病の予防、休職・復職の判定などができる医師・産業医を紹介してくれるサービスがあるそうです。
 精神科や心療内科を専門とする産業医は少ないのが現状ですが、こうしたサービスを利用することで、会社が依頼している産業医やかかりつけ医が精神疾患等の診断に精通していないような場合でも、会社として適切な対応をすることが可能になるかもしれません。

 ◆日頃の労務管理が重要
 ただ、忘れてはならないのは、メンタルヘルス不調社員や休職者への対応については、休職・復職時の対応も重要ですが、そうした状態に陥らせないための日頃の労働時間管理・職場環境の改善がさらに重要だということです。それは、会社にとってのリスクやコストを考えた場合にも、結果的には効果のある方法です。


従業員の「健康管理・安全管理」が注目されています

 ◆従業員の健康問題=会社のリスク
 運転手のてんかんや睡眠時無呼吸症候群による重大事故、熱中症の増加、職場で使用する有害物が原因とみられる胆管がんなどのニュースが報道されています。
 これらは「従業員の健康管理・安全管理」という観点からも、「会社のリスク管理」という観点からも非常に重要なことでしょう。

 ◆10月に「全国労働衛生週間」を実施
 厚生労働省が実施する「全国労働衛生週間」は、労働衛生に関する国民の意識を高めるとともに、職場での労働者の健康管理や職場環境の改善などの活動を促し労働者の健康を確保することなどを目的として、1950年から毎年実施されています。
 毎年10月1日~7日までが本週間、9月1日~30日までが準備期間とされ、各職場での職場巡視やスローガン掲示、労働衛生に関する講習会・見学会の開催など、様々な取組みが展開されます。

 ◆健康保険組合への優遇策
 生活習慣病の予防を目的に実施されているメタボ健診や保健指導についても動きがあります。厚生労働省は、2013年度から、これらの健診・指導の受診率(実施率)に応じて、健康保険組合の財政負担(後期高齢者医療制度に払う支援金)を増減する施策を導入するようです。健康保険組合から受診の働きかけが強まるかもしれません。
 会社の安全配慮義務にもつながりますので、健康診断の重要性を従業員に説明し、確実に受診するよう指導する必要があります。

 ◆是正指導・勧告の対象にも
 過重労働による健康障害やメンタルヘルス不調といった健康問題に関連して、労働基準監督署による是正指導・勧告も頻繁に行われています。
 今年の全国労働衛生週間に合わせて、従業員の健康管理・安全管理について見直してみてはいかがでしょうか。


海外進出企業における労務管理の重要性

 ◆インドの日系企業で起きた現地従業員の暴動
 7月中旬に自動車大手スズキのインド子会社で、現地の労働組合が行っていた抗議行動が発展し、従業員が工場の施設を放火するなど暴徒化した事件が起きました。
 約100人の負傷者が出たとされており、工場の生産活動もストップするという事態になりました。この問題により、新興国に海外進出している日本企業は海外での労務管理の厳しさを再認識させられることになったと言えるでしょう。

 ◆新興国での人件費の上昇
 日本貿易振興機構(JETRO)が発表した2011年度「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査」(有効回答3,904社、有効回答率47.8%)によると、経営上の問題点として「従業員の賃金上昇」を挙げた企業が全体の68.8%に上ったそうです。
 また、「従業員の賃金上昇」を挙げた企業の割合は、中国、ベトナム、インドで8割を超えました。急速な経済成長を遂げているインドや中国などの新興国では、貧富の格差や若年労働者の意識変化等により、労働争議が多発しているそうです。

 ◆文化、法規制等の違い
 また、株式会社帝国データバンクが発表した「海外進出」に対する企業の意識調査(有効回答10,467社、回答率45.6%)によると、自社が海外事業を行ううえでの障害・課題として、「文化・商習慣の違い」や「法規制・制度の違い」を挙げる企業がいずれも3割超となりました。労務管理上も国ごとの法規制・慣習の違いにより、様々な軋轢が発生しているようです。
 今回暴動が起きたインドを例にみても、伝統的な身分制度「カースト」による国民の差別意識により、高い階級出身の人が低い階級出身の上司の下で働きたがらないなど、人員配置などの労務管理に工夫が必要な場合があるようです。

 ◆海外進出企業の課題
 国際化の進展により海外進出企業はますます増加することが予想されます。今後、企業は現地の社会情勢の変化、法規制、文化・慣習等を理解して、現地担当者に任せきりにせず、経営政策として労務管理上の問題に当たっていく必要があるでしょう。


社会人が転職を考え始める年齢は?

 ◆「24~26歳」で3割超
 株式会社インテリジェンスの転職サービス「DODA(デューダ)」が実施した調査「ビジネスパーソンが転職を考え始める年齢について」(大卒で転職経験のない5万人が対象)の結果によると、「25歳」「26歳」が同率11.3%で最も多く、次いで「24歳」の10.5%が続きました。
 年代別では、「20代」が68.4%、「30代」が22.9%、「40代以上」が8.6%となっており、約7割が20代のうちに転職を考えていることがわかりました。 

 ◆女性の8割超が20代で転職を検討
 性別でみると、女性の85.3%が20代で転職を考え始める一方、男性では60.4%でした。女性は出産・育児などによりキャリアが中断される可能性を視野に入れ、早い段階で自己のキャリアを見つめ直す人が多いためとみられます。
 今後も女性の雇用確保には、企業の「ワークライフバランス」への取組みが大きく関係してくるでしょう。

 ◆技術系は「27~29歳」、非技術系は「23~25歳」が多い
 職種別に転職を考え始めた年齢をみると、「モノづくり系エンジニア」、「IT系エンジニア」、「メディカル系技術職」などの技術系職種においては「27~29歳」(社会人5~7年)が多く、「販売/サービス系」、「事務アシスタント系」、「営業系」などの非技術系職種では、「23~25歳」(社会人2~4年)が多い傾向にあります。


“就業者減少時代”における雇用拡大対策
 
 ◆2030年の就業者は今よりも850万人減少
 厚生労働省は、経済の低成長が続いて雇用政策が進まなかった場合、2030年の就業者数は2010年時点より約850万人少ない約5,450万人になるとの推計結果をまとめました。
 少子高齢化により現役世代である15~64歳の人口が減るためですが、経済成長率を維持し、女性や高齢者の就労支援が進んだ場合には、減少数は約210万人程度に抑えられるとしています。
 労働力人口が大幅に減少することに対して、今後の対策が急務となっています。

 ◆製造業は減少、医療・福祉は増加
 産業別にみると、2030年における「製造業」の就業者数は、経済の成長や政策がうまくいく楽観シナリオでも70万人程度減る見込みです。一方、「医療・福祉」の分野は300万人以上増え、それぞれの就業者数は1,000万人弱でほぼ並びます。
 他に就業者数が伸びる業種は、「情報通信業」と「サービス業」だけとなっています。

 ◆若年層の支援が急務
 大学の定員増加や少子化により大学進学率が上昇する一方、卒業時に就職も進学もしていない若者が増えているようです。
 20~34歳の就業率は2010年で73%台にとどまっており、政府は若者と中小企業を結びつけることで若年層の就業者数を増やすことが急務だとしています。

 ◆雇用を「まもる」から「つくる」へ
 同省がとりまとめた報告書では、雇用を「まもる」から「つくる」、「そだてる」、「つなぐ」に軸足を移すことが重要だと指摘しました。
 安定した経済成長を続けるには、一部の産業への依存をやめ、様々な分野において人材を育てる訓練制度や育成支援を行うことで、労働者の生産性を高める工夫が必要だと言えるでしょう。



2012/08/01

8月の事務所便り

厚労省の発表にみる「国民年金」の気になる数字

 ◆国民年金保険料納付率が最低を更新
 厚生労働省が7月5日に発表した調査結果によると、2011年度の国民年金保険料納付率は58.8%と、2010年度の59.3%に引き続き60%を下回る結果となりました。
 納付率は、20歳以上の学生の強制加入が導入された1991年と翌1992年の85.7%をピークに下がり始め、1997年に制度維持に必要とされる80%を下回り、その後2005年の若年者納付猶予制度導入時にいったん回復しましたが、翌2006年以降下がり続けています。

 ◆若年層ほど納付率が低い
 年齢層別では、「20~24歳」50.05%、「25~29歳」46.13%、「30~34歳」49.63%、「35~39歳」55.57%、「40~44歳」57.06%、「45~49歳」59.42%と、20~40歳台前半のいずれも「50~54歳」65.16%、「55~59歳」71.83%に比べて低くなっています。
 若年層ほど納付率が低くなる原因として、非正規労働者の増加により、年収が低くて保険料を納めたくても納められない人がいることが指摘されています。

 ◆加入者の収入の低さは別の調査結果からも明らか
 同じく厚生労働省が9日に発表した公的年金加入者の所得状況の調査結果によると、国民年金第1号被保険者の平均年収は159万円と、第2号被保険者である厚生年金保険加入者、共済年金加入者の平均年収が426万円であることに比べると半分以下であることが明らかとなりました。
 年金受給者の189万円と比べても下回る結果となっており、これは、従来自営業者を中心に構成されていた被保険者が、現在では約6割を無職・非正規労働者で占めるまでになっていることの影響と指摘されています。

 ◆今後の納付率アップに向けた取組み
 同省では、納付率が低くとどまっている原因として、低収入の人の一部に保険料免除等の申請をしていない人がいることを挙げ、2013年夏までにその半数を免除・納付のいずれかに結び付けたいとしています。
 その他、現在国会に提出中のマイナンバー法案の動向も見ながら、公的年金制度の普及・啓発に取り組み、納付率の改善を図りたいとしています。


中小企業にとっての「BCP(事業継続計画)」の必要性
 
 ◆大企業を中心に進むBCPの策定
 先ごろ公表された2012年版「防災白書」によると、東日本大震災後に「BCP(事業継続計画)」を策定する企業が増えていることが明らかになりました。
 また、これまでの「早期復旧」のための対策に加えて、代替施設・代替手段、非常用電源設備、代替調達先の確保などを追加・改善項目として考える企業も多いということです。

 ◆中小企業ではどうか
 では、中小企業はどうでしょうか。BCPなどと聞くと「大企業がするもの。ウチには関係ない」と思われるかもしれません。
 白書の中では中小企業としての策定割合は明らかにされていません。しかし、大企業のサプライチェーンの中に位置することが多い中小企業にとっても、代替インフラの整備やデータのバックアップ、従業員の安否確認、復旧までの手順の確認等は他人事ではありません。
 いざ事が起きてからでは十分な対応を行うことは難しいでしょう。最悪を想定し最善の準備をする、複数の代替案を準備することは、古今東西、戦略立案上の常識なのです。
 さらに、BCPは単に災害対策としてではなく、うまく活用することで会社のイメージアップ・受注増につなげることも可能です。

 ◆「企業価値向上策」としてのBCPを
 緊急事態の中で連絡が取れなかったり、ホームページが更新されていなかったりする会社は、他社から見てどうでしょう。
 仮に自社が被災を免れたとしても、被災地域にある、あるいは被災地域に近ければ、県外や遠方の顧客にとっては「被害を受けて連絡も取れないのだ。もう仕事は頼めないな」という判断をされかねません。実際に、今回の東日本大震災後に「仕事が戻ってこない」という中小企業は多いようです。
 一方、BCPの体制を構築し、自社の状況や周辺地域のインフラ状況等を積極的にホームページ等で公開していくことで顧客は安心し、その後の受注増にもつながるでしょう。
 自社の従業員の安否確認等が重要なことは当然ですが、会社としては「企業価値向上の手段」としてBCPを考えてみるのも有効なのではないでしょうか。


応募者・社員の「メンタル特性」は見抜けるか?

 ◆精神疾患による労災請求件数が過去最高に
 平成23年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」(厚生労働省、平成24年6月15日公表)により、仕事のストレスによる精神障害だとして労災保険の請求が行われた件数が、3年連続で過去最高を更新したことが明らかになりました。
 職場になじめなかったり、働かせすぎだったりとその要因は様々であり、また複合的なものだと思われますが、会社としては「我が社に合う人材を採用したい」という思いは常にお持ちのことでしょう。

 ◆メンタル特性を見分ける検査方法がある
 企業のそうしたニーズを背景に、応募者や社員の「精神特性・心の健康状態・行動特性」を分析するサービスを提供する会社が増えてきています。従来のペーパー上で行うものの他に、ネット上で簡単にできるものも登場しています。
 検査費用は、検査単体で数千円からという低額なものから、従業員研修会・相談窓口の提供とセットのものまで、さまざまのようです。
 採用や配属前に、「仕事上のストレス」「社会適応力」「ストレス耐性」「うつ傾向」等の分析ができれば、ミスマッチを防ぐことができ、会社にとっても社員にとっても有益となるでしょう。

 ◆社員の“ストレスチェック”が企業の義務に
 現在、労働安全衛生法の改正案が議論されています。これは、新たに「精神的健康の状況を把握するための検査」(ストレスチェック)を企業に義務付ける内容です。
 さらに、会社は、検査の結果を受けた社員からの申出により、医師等による面接指導を実施する必要が出てくるとともに、医師の意見を聴き、必要な場合には作業の転換、労働時間の短縮など、適切な就業上の措置をしなければならないことになります。
 なお、この検査は、医師などが通常の健康診断に併せて行うことが想定され、検査結果は社員に直接通知されます。この検査結果は、医師が社員から同意を得ないかぎり、会社に提供することができません。
 具体的なチェック項目や実施方法は、法案成立後に策定され、具体的な指針等も公表されるようです。改正案の成立時期は国会での審議状況にもよりますが、改正の動向について注目しておきましょう。


障害者雇用率の引上げと精神障害者への対象拡大
 
 ◆企業の障害者雇用率が2.0%に引上げ
 2013年4月1日より、民間企業に義務付けられている障害者雇用率が15年ぶりに引き上げられ、現行の1.8%から2.0%となります。また、国や地方公共団体の障害者雇用率は現行の2.1%から2.3%に、都道府県等の教育委員会は同じく2.0%から2.2%に引き上げられます。
 厚生労働省のまとめによると、2011年度にハローワークを通じて就職した障害者は5万9,367人で1970年度の調査開始以降、過去最多となっており、企業の障害者雇用は全体として増加傾向にあるようです。

 ◆従業員50人以上56人未満の事業主は要注意
 今回の法定雇用率の引上げと同時に、障害者の雇用を義務付けられる企業の規模も従業員56人以上から50人以上に広げられます。

対象となる事業主には以下の義務があります。

(1)毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければならない
(2)障害者雇用推進者を選任するよう努めなければならない

 ◆未達成の場合は…
 雇用率が未達成の場合、「障害者雇用納付金制度」において、従業員数が201人以上の企業は、法定雇用障害者数に不足する1人につき月5万円を国に納めなければなりません。
 一方で、雇用率を上回っている企業へは、上回る1人につき月2万1,000円~2万7,000円の報奨金などが支給される仕組みとなっています。
 なお、今回これらの金額に変更はありません。

 ◆精神障害者も雇用義務の対象に
 厚生労働省は、障害者雇用促進法に基づく雇用義務の対象に、新たに「精神障害者」を追加すべきとの報告書案をまとめました。報告書によると、精神障害者の定義は「精神障害者保険福祉手帳を持つ人」とする案が有力となっています。
 この改正で精神障害者を含めた障害者の雇用が義務化された際には、雇用率が新たに算定され、最終的な雇用率は少なくとも2.2%になるようです。今秋より審議が始まり、法案の国会提出は来年となる見通しですが、今後の様子に注目したいところです。


会社・事業を成功させるための10のポイント

 ◆16社からヒアリング
 日本経済団体連合会(経団連)は、2011 年9月に「事業創造検討部会」を設置し、独自のビジネスモデルにより事業を成長させ、市場において高いシェアを確保する企業等(16 社)からヒアリングを行いました。
 このヒアリング結果をとりまとめ、今年6月に「各社の事業成功の10の要因」として発表していますが、貴社では、以下のうちいくつ当てはまりますか?

 ◆「事業成功の10の要因」の内容
 (1)優れた経営者の存在、独自の経営理念の徹底
   多岐にわたる能力を備えた創業者・経営者が適切な経営判断により会社を牽引し、独自の経営理念を社内に徹底し、組織としての一体感を醸成している。
 (2)時代の変化への対応
   ニーズを先読みする嗅覚、製品・サービスに落とし込む発想力、事業を遂行する実行力を有している。
 (3)自社の製品・技術・サービスへのこだわり
   製品・技術・サービスの質の維持と向上に取り組み、顧客の獲得・定着につなげている。
 (4)既存の技術・製品・サービスとの差別化・独自化
   従来からの発想を転換することができ、顧客や現場視点での発想を有し、研究開発等により差別化・独自化を図れている。
 (5)中核事業を基にした事業の多角展開
   中核事業で培った技術やノウハウを基に、関連する多分野へと事業を展開している。
 (6)事業形態や市場環境に応じた海外展開の推進
   研究開発・生産・販売など様々な形での海外展開を行っている。
 (7)優秀な人材の確保・育成・活用
   経験者や高齢者を積極的に採用し、海外を含めた教育研修を実施し、社員のやりがいを高める工夫を行っている。
 (8)独自の会社組織、社内制度、企業文化
   従業員が働きやすい環境をつくり、組織運営を効率化し、社員の結束の強化を図り、人材を有効活用している。
 (9)外部との連携・外部の力の活用
   異業種や海外を含む企業・大学・研究機関との連携・協力を通じて事業を拡大している。
 (10)ブランドイメージ・知名度の向上
   メディア媒体・ポスターなど多様な広告宣伝活動を行い、認知度やイメージを向上させている。


労使間の「労働協約」の締結状況は?
 
 ◆5年ごとに調査を実施
 厚生労働省は、平成 23 年の「労働協約等実態調査」(5年ごとに実施)の結果を発表しました。この調査は、会社と労働組合との間で締結される労働協約等の締結状況、締結内容、運用の実態等を明らかにすることを目的としています。
 調査対象は、民間企業における労働組合員数規模 30 人以上の単位労働組合(下部組織がない労働組合)で、4,086 のうち 2,597から有効回答を得ています。

 ◆労働協約の締結・周知状況
 会社と労働組合との間で「労働協約を締結している」と回答した組合は 91.4%でした。前回調査時(89.0%)よりも2.4ポイント増加しています。
 労働協約を締結している組合について、その周知の状況をみると、「周知徹底を図るための措置を講じている」が86.4%(前回調査時92.3%)と減少し、「周知のための措置を何も講じてない」が9.9%(同7.5%)と増加しました。

 ◆労働協約等の運営状況
 人事に関する事項について、労働組合の関与状況をみると、何らかの方法(同意、協議、意見聴取、事前通知、事後通知、その他の関与を合わせたもの)で「関与している」事項は、上位から「解雇」(73.0%)、「懲戒処分」(71.0%)、「配置転換」(65.1%)となっています。
 また、労働組合の関与の程度が大きい項目(同意、協議、意見聴取を合わせたもの)の割合は、「解雇」(45.7%)、「懲戒処分」(43.4%)、「出向」(23.4%)の順となっています。

 ◆非正社員への適用状況
 労働協約があり、その全部または一部がパートタイム労働者にも適用されると回答した組合は41.9%(前回調査33.5%)、有期契約労働者にも適用されると回答した組合は45.0%(同42.7%)でした。
 なお、パートタイム労働者、有期契約労働者に適用される事項(複数回答)は、いずれも上位から「労働時間・休日・休暇に関する事項」(90.4%、93.6%)、「賃金に関する事項」(78.6%、79.0%)となっています。


日本の企業が海外進出する際の決め手

 ◆1万社以上が回答
 株式会社帝国データバンクでは、「海外進出」に対する企業の意識について調査を実施し、その結果を発表しました。
 調査対象企業は全国22,955社で、有効回答企業数は10,467社(回答率45.6%)となっています。

 ◆約1割の企業が海外進出
 2011 年度における海外への進出(海外現地法人の設立、海外企業との業務提携、海外企業への資本参加・増資、活動拠点の新設・拡大など)の有無を尋ねたところ、「あった」(進出した)と回答した企業は1,028 社(9.8%)で、約1割の企業が過去1年間に海外に進出していることがわかりました。
 また、今後2~3年における海外進出について、「ある(予定・検討含む)」(進出意向あり)と回答した企業は 1,430 社(13.7%)でした。2011年度に海外進出を果たした企業の約1.4倍になっています。

 ◆海外進出の決め手は?
 海外進出を決定した(決定する)際のポイント(複数回答で3つまで)について、上位ベスト10は次の通りとなっています。

(1)良質で安価な労働力が確保できる(35.0%)
(2)現地の製品・サービス需要が拡大(19.9%)
(3)納入先を含む他の日系企業の進出実績がある(18.8%)
(4)品質・価格面で、日本への逆輸入が可能(17.8%)
(5)現地政府の産業育成、保護政策(17.7%)
(6)税制や融資などの優遇措置がある(14.1%)
(7)進出先の近隣国で製品・サービス需要が拡大(13.0%)
(8)社会資本整備が必要水準を満たしている(12.7%)
(9)部品などの現地調達が容易(11.0%)
(10)土地などの現地資本が安価(11.0%)


主婦に聞いた「夏のボーナス」の使い道

 ◆「主婦目線」による回答
 損保ジャパン・ディー・アイ・ワイ生命保険株式会社では、全国の20~50代のサラリーマン世帯の主婦500 名(各年代毎125 名)を対象に、「2012 年夏のボーナスと家計の実態」に関するアンケート調査を実施しました。
 夏季賞与の使い道などに関して、「主婦目線」での考え方がわかります。

 ◆調査開始以来、最低の手取額
 今年の夏季賞与額について尋ねたところ、「25~50 万円未満」(31.0%)が最も多く、「50~75 万円未満」(27.0%)が続いています。
 平均手取額は 61万1,000円で、昨夏よりも 6万5,000万円減少しており、本調査開始以来、最低の額となっています。
 今後の夏季賞与の見通しに関しては、全体の約3割の人が「減る」「なくなると思う」と回答しており、家計の現状に関しては約6割の主婦が「苦しい」と回答しています。
 昨今の不景気を反映し、家計に対して悲観ムードが広がっているようです。

 ◆賞与の使い道は?
 次に、「ボーナスの使い道」に関して尋ねたところ、例年通り「預貯金」がダントツトップとなっており、「堅実派」「安定志向」の主婦が多いことがわかります。

ベスト10(複数回答)は次の通りです。

(1)預貯金(72.8%)
(2)生活費の補填(38.2%)
(3)ローンの支払い(32.6%)
(4)国内旅行(26.6%)
(5)家電製品の購入(19.0%)
(6)プチ贅沢(18.6%)
(7)子供の教育関連(18.2%)
(8)衣料品・服飾費(16.4%)
(9)クレジットの支払い(13.2%)
(10)住宅関連資金(6.8%)

 なお、夏季賞与の中から夫に小遣いを渡す主婦は51.2%と約半数で、渡した人の平均金額は10.8 万円だったそうです。


「仕事」と「介護」を両立する社員が増加する時代へ

 ◆労使双方にとって非常に重大な問題
 「仕事と介護を両立する社員が増加する時代」が近々到来すると言われています。これは、企業にとっても社員にとっても、非常に重大な問題です。
 東京大学社会科学研究所「ワーク・ライフ・バランス推進・研究プロジェクト」では、「従業員の介護ニーズに関する調査」を実施し、報告書をまとめました。

 ◆社員の介護の状況
 この調査では、主に40歳以上の社員を対象に、仕事と介護の両立に関する不安などについて調査しています(下記は、大企業に勤務している人が対象の調査結果です)。
 現在の介護の状況ですが、「現在、介護をしている」という人は全体の13.9%(男性12.3%・女性16.7%)でした。

そして、「将来の介護に対する不安の内容」(複数回答)については、次の通りとなっています。
(1)介護がいつまで続くかわからず、将来の見通しを立てにくい(50.0%)
(2)適切な介護サービスが受けられるかどうかわからない(43.5%)
(3)公的介護保険制度の仕組みがわからない(39.1%)
(4)仕事を辞めずに介護と仕事を両立するための仕組みがわからない(29.9%)
(5)介護休業などを職場で取得している人がいない(27.3%)

 ◆勤務先の支援制度に不満!
 また、株式会社第一生命経済研究所が、20 歳から69 歳までの正社員として働いている人で、現在または過去に親(配偶者の親を含む)の介護経験がある人(953 名)を対象に行ったアンケート調査では、「介護で仕事を辞めたい」と思うことがある人のうち69.0%が、「勤務先の両立支援制度に不満がある」と回答しています。
 社員の「育児支援」のみならず、「介護支援」にまで配慮することのできる余裕のある企業は多くないかもしれませんが、そのような配慮が必要となる時代が近い将来やってくるかもしれません。


「パワハラ」が発生する背景・原因を探る
 
 ◆企業・労働組合にヒアリング調査を実施
 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)は、「職場のいじめ・嫌がらせ」、「パワー・ハラスメント」対策の参考となるよう、企業や労働組合が行っている取組み等についてヒアリング調査を実施しました。
 各社・各組合による取組事例が紹介されていますが、企業と労働組合は「パワー・ハラスメントが発生する背景・原因」についても推測しています。

 ◆パワハラが発生する背景・原因はこれだ!
 企業と労働組合は、パワハラが発生する背景・原因として次の項目を挙げています。

・人員削減・人材不足による過重労働とストレス
・職場のコミュニケーション不足
・会社からの業績向上圧力、成果主義
・管理職の多忙、余裕のなさ
・就労形態の多様化
・業界特有の徒弟制度的関係
・事業構造の変化(に伴う人事異動)、職場環境の変化
・業界の低賃金構造
・上司部下間あるいは同僚間の人間関係の希薄化と信頼関係の欠如
・行為者の資質やハラスメント意識の欠如
・管理職に対する教育不足
・人権意識や個人の尊重の希薄化
・職場内に相談に乗ったり仲裁したりする人材がいなくなったこと
・コミュニケーション能力の低下
・管理職のマネジメント能力の低下
・お金を払っているという権利意識(ハラスメント行為者が顧客の場合)

 ◆パワハラによる企業リスク削減を
 上記の項目は、それぞれが単独でハラスメントの原因となるのではなく、相互に密接に関連してパワハラ発生の可能性を高めていることが推察されています。
 これらの要因が存在する職場においては、パワハラにより訴えられる等の企業リスクを削減するために、一つひとつを無くしていく努力が必要でしょう。



2012/07/01

7月の事務所便り

不正受給問題が指摘される生活保護制度を見直しへ


 ◆生活保護の受給者数が過去最多
 厚生労働省によると、2012年2月時点の生活保護受給者数が約209万人に上り、現行制度下において最大となり、また、2012年度予算案では3兆7,000億円が計上され、国の税収の約1割を占めるまでに費用が増大しています。
 そのため、制度運用や審査基準が抱える問題点を指摘されるに至り、以下の対策の他、見直しに向け検討が進められています。

 ◆受給者の資産を金融機関の本店で一括照会へ
 生活保護受給申請者の資産調査について、これまで各福祉事務所が本人申告をもとに各地域の金融機関の支店に行っていましたが、効率が悪く正確でない等の問題点が指摘されていました。
 厚生労働省発表によると、今年12月より全国銀行協会の協力を受けて、銀行など金融機関の本店に預貯金残額を一括照会する仕組みへと改めるそうです。

 ◆ソフトの改良により「医療扶助」の不正受給を監視
 生活保護受給者の約8割に当たる169万人が受給する「医療扶助」は、窓口負担なしに医療機関で診療・投薬を受けられるため、医療過誤等の温床になっているとの指摘がありました。
 厚生労働省発表によると、不正受給の事例を識別するのに手間がかかっていたソフトを改良し、電子化されたレセプト(診療報酬明細書)をもとに瞬時に見分けられるようにし、今秋から全自治体に導入するそうです。

 ◆その他見直し案に挙げられた項目
 政府は、今秋策定する「生活支援戦略」で生活保護制度見直しの方針を打ち出す予定ですが、6月4日に行われた国家戦略会議でその原案が示されました。
 厚生労働省が作成した原案には、当面の対応として、(1)生活保護給付の適正化、(2)就労・自立支援の強化、今後検討を進めるものとして、(3)生活保護基準の検証・見直し、(4)自治体等の調査・指導権限等の強化、(5)「脱却インセンティブ」の強化(就労収入積立制度等)、(6)自治体とハローワークが一体となった就労支援の抜本強化等が挙げられています。


「熱中症」のリスクと効果的な対策

 ◆熱中症のリスク
 例年よりも早めにクールビズを始める企業もあり、今夏も例年程度の暑さとなるようです。新入社員も現場に配属されて初めての夏を迎えるケースもあるかもしれません。職場・作業場での熱中症対策はお済みでしょうか?
 熱中症と聞くと、軽いように思われがちですが、軽度の症状から短時間のうちに重症化して、死に至ることもあります。実際に記録的猛暑となった平成22年には、47人の方が職場での熱中症で亡くなっています。その他の年でも毎年20人前後の方が亡くなっています。
 また、亡くならないまでも重篤な症状となれば、その従業員が休んでいる間、ただでさえ人員不足の職場で他の従業員にしわ寄せがいきます。

 ◆梅雨明け直後が危ない
 熱中症発生のリスクが高いのは、梅雨明け直後の体がまだ暑さに慣れていない時期です。時間帯別では、午後2時から4時に最も多く発生しています。
 また、建設業、製造業などでは、作業環境によってはこの時期以外でも急に暑くなった日などは要注意です。午前中からのこまめな休憩や水分補給が重要です。また、午前中から12時頃までにも意外と注意が必要だそうです。

 ◆「めまい」「頭痛」「吐き気」を感じたら要注意
 熱中症の初期的症状としては、「体がだるい」「頭痛や吐き気がする」「めまいがする」といった状態が挙げられます。
 これらの症状を感じたら涼しいところで水分と塩分を摂り、症状が軽いと思われる場合でも、医師の診断を受けるようにしたほうが安全です。

 ◆従業員の健康状態の確認を
 従業員の健康管理という面からも、作業環境の見直し、その日の体調の確認や前日の深酒・寝不足等への指導、厚生労働省が示している基準に沿った作業計画の見直しが重要です。
 日頃の労働衛生教育について、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。


従業員の長期就業不能リスクに備える“GLTD”とは?

 ◆従業員の長期就業不能によるリスク
 近年、うつ病等のメンタルヘルス不全により休職される従業員が増えています。
 特に精神疾患によるものは改善までに長期間休職となることが多く、「会社を休む→有休を使い果たす→疾病休暇も使い果たす→労災保険や健康保険からの手当も終わる→無給の休業となる→従業員はローンや養育費の支払いに困る」という状態に陥ることが懸念されます。
 また、仮に会社が、労働基準法上問題がないと思われる解雇を行った場合でも、様々な労使間のトラブルから企業が訴えられるというリスクも発生します。

 ◆「GLTD」とは?
 こうした問題に対応できる、「GLTD」(団体長期障害所得補償保険:傷病による休職時に減少する給与所得を長期間補償できる唯一の保険制度)というものが、各損保会社から発売され、保険料も非常に安価なものからあるため利用する企業が増えているそうです。
 この制度の発祥はアメリカで、現在100名以上の企業で80~90%、100人未満の企業でも60%程度が導入し、広く普及しているのだそうです。
 日本では1994年に保険として認可されました。

 ◆採用時の検査や人事給与制度の改定とセットで
 この「GLTD」とセットで、採用時の検査(多くはウェブ上で質問に回答していく形式となっており、短時間・低価格となっている)と企業へのアドバイスを提供する会社も増えているようです。
 また、人事給与制度の簡素化を行うために、会社の休業補償制度を廃止するのに併せて「GLTD」を導入するという事例もあるようです。
 こうした保険を利用することで、従業員の会社に対する満足度もアップしそうですね。


2013年度新卒採用でFacebookを活用する企業
 
 ◆47%が「効果あり」
 企業が採用活動においてFacebookなどのソーシャルメディアを活用する場面が増えてきています。
 株式会社ギブリーが実施した2013年度新卒採用における人事担当者の意識調査(2013年度新卒採用においてFacebookを活用している143社が回答)の結果によると、新卒採用ツールとして「効果あり」と回答した企業が約47%に及ぶことがわかりました。

 ◆Facebook を利用したことによる効果
 上記調査において、「Facebookページを運用することで、どのような効果があったか」という質問に対しては、以下の項目が挙げられています。

(1)社内のことや社員のことがわかってもらえた(41.3%)
(2)求人広告ではできないプロモーションができた(28.7%)
(3)採用ブランディングになった(18.2%)
(4)母集団が形成された(13.3%)
(5)会社の認知度が上がった(11.9%)
(6)求人広告では集まらない層の学生が来た(7.0%)

 求人広告ではできないような双方向のコミュニケーションにより、学生に自社の“生きた情報”を発信し、理解してもらうことに一定の効果が得られたようです。

 ◆ページ制作に関しては自社制作と外注が約半数
 また、Facebookページの制作についての質問に対しては、半数以上が外注としており、自社での作成は47.5%という結果となっています。
 外注先としては、「ソーシャル採用に特化した会社」が、求人広告・人材紹介などの新卒採用支援会社やWeb制作会社、広告代理店より多いようです。

 ◆今後も増加することが予想される
 2013年度新卒採用においては、Facebookをはじめとしたソーシャルメディアの活用が企業側、学生側ともに注目されました。「この波に乗り遅れまい」と試行錯誤しながら利用を始めた人事担当者も多かったのではないでしょうか。
 利用者数が増加している中で、今後も採用活動における活用は増加していくことが予想されます。より効果的なツールにしていくためには、さらに企業独自の工夫が必要になっていくことでしょう。


「少子化」に対する政府の取組み

 ◆2011年の出生率が「1.39」で頭打ち
 先日、厚生労働省が2011年の「人口動態統計」を公表しましたが、これによると、合計特殊出生率(女性1人が生涯に産むと想定される子どもの数)は「1.39」で前年と同じだったそうです。
 また、出生数は105万698人(前年比2万606人減)で過去最低を記録しており、人口の自然減は初めて2万人を超えました。
 このままだと日本は長期的な人口減少傾向となるのは確実で、少子化対策の練り直しが急務となっています。このことは、今後の子育て支援や職場の環境改善などの政策議論にも影響を与えると思われます。

 ◆「雇用」と「育児環境」に不安
 2011年における若年層(15~24歳)の完全失業率は8.2%で、非正規社員の割合は5割に達しました。厚生労働省の見解によると、「若年層の雇用や賃金が不安定なため、結婚や出産をためらう若者が多い」とのことです。
 以上のことから、共働き世帯が増加している一方で、保育所の不足も問題となっています。保育所は2011年4月の時点で2万3,385カ所(前年度比1.4%増)となっているものの、全国の待機児童数は2万5,556人(同719人減)でほぼ変わらず高止まりとなっています。
 また、待機児童数は最初から預けることをあきらめる人も含めると100万人に上るとも言われています。

 ◆政府による取組み
 今年7月1日から「改正育児・介護休業法」が全面施行となり、従業員100人以下の事業主にも適用されます。また、「社会保障・税一体改革」関連法案では、待機児童の解消を目的とした「総合こども園」の創設は見送られる動きがありますが、「認定こども園」を拡充・存続させ、財政支援などを強化することを検討しています。
 女性が安心して働き続けることができるように子育ての環境を整えることは、1つの少子化対策につながると言えるでしょう。子供を安心して育てられる社会の実現に向けて力を合わせ、国や企業、ひいては地域で少子化対策に取り組んでいきたいものです。


子どもを持つ女性の就労の“理想”と“現実”

 ◆1万組以上の夫婦が回答
 内閣府が「都市と地方における子育て環境に関する調査」を実施し、今年3月にその報告書が発表されています。
 この調査は、(1)子どもを持っている、(2)妻の年齢が「20歳~49歳」である、(3)第1子の年齢が「0歳~18歳」である夫婦を対象に行われ、1万2,289組の夫婦が回答しています。

 ◆妻の「就労意欲」と「就労理由」
 この調査で、妻に「就労意欲」について尋ねたところ、パートや正社員など就業形態は異なるものの、「今後何らかの形で働きたいと」いう人は86.0%で、「今後は(今後も)働かない予定」という人は11.6%でした。
 現在は就労していないが今後の就労を希望している妻の「就労理由」については、次の通りとなっていますが、上位4位まではお金に関する理由です。

(1)「家計を補助するため」(71.8%)
(2)「将来に備えて貯蓄をするため」(61.3%)
(3)「生計を維持するため」(42.7%)
(4)「自分の自由になるお金を得るため」(41.0%)
(5)「いろいろな人や社会とのつながりを持ちたいから」(25.3%)

 ◆妊娠による働き方の転換
 また、株式会社アイデムの人と仕事研究所から、「働き方に関するアンケート調査」の結果を分析した2012年版「パートタイマー白書」が刊行されています。
 この調査で、妊娠がわかった時に正社員として働いていた人に、「妊娠・出産・育児をきっかけに正社員以外の働き方に変えたことがあるか」を尋ねたところ、「正社員を継続した」人は53.8%、「正社員以外の働き方に変えた」人は46.2%でした。
 そして、「正社員以外の働き方に変えた」人が具体的にどのような働き方に変えたのかを見ると、「退職して無職(専業主婦)になった」という回答が79.2%に上っています。
 ただ、一度離職してしまうと、職場復帰することや新しい仕事に就くことは難しいのが実情であり、働きたくても働けない女性が多いようです。


アルバイト・パート社員は仕事に何を求めている?

 ◆“仕事探し”に関する意識調査
 株式会社インテリジェンスが運営する求人情報サービス「an」は、アルバイト・パート社員の“仕事探し”に関する意識調査を昨年末に実施し、その結果が発表されています。
 この調査結果から、アルバイト・パート社員が仕事に対して一体何を求めているのかを探っていきます。

 ◆仕事探しを始めた理由
 まず、アルバイト・パートで求職活動中の男女に、「仕事探しを始めた理由」を尋ねたところ、トップは「貯金を増やしたかった」(33.5%)で、「趣味に使うお金が欲しかった」(31.9%)、「生活費を補いたかった」(30.0%)などが続いています。
 当然と言えば当然ですが、お金に関する理由が上位を占めています。

 ◆仕事を探す際に重視する点
 次に、仕事を探す際に重視する点をそれぞれ「重視する」「やや重視する」「どちらでもない」「あまり重視しない」「重視しない」の5段階で評価してもらい「重視する」と回答した割合を属性別に見てみると、次の通りとなっています。

【高校生】
・「勤務地が自宅から近い」(58.7%)
・「勤務地が学校や習い事の場所から近い」(34.7%)

【大学生】
・「店長や社員の人の雰囲気が良い」(58.7%)
・「時間の融通が利く」(56.9%)

【主婦】
・「長い期間働ける仕事である」(34.4%)
・「やりがいのある仕事である」(42.4%)

 高校生は、勤務地から自宅や学校などの距離を重視しており、大学生は、働く人やシフトの柔軟性など働きやすい職場を求めており、主婦は、じっくりと腰を据えて働き続けられることや遣り甲斐を得られる職場を求めているようです。


7月1日より「改正育児・介護休業法」が全面施行!

 ◆未対応の場合は早急な対応を!
 厚生労働省は、“男女ともに仕事と家庭が両立できる働き方”の実現を目的として、2009年に「育児・介護休業法」を改正しました。
 これまで従業員数100人以下の中小零細企業については、短時間勤務制度などの適用が猶予されていましたが、7月1日からはすべての企業が対象となります。全面施行まで1カ月を切りましたので、未対応の企業は早急に対応しなければなりません。

 ◆7月1日から全面適用となる主な制度
 全面適用となる主な制度は、次の通りです。

(1)「短時間勤務制度」
 3歳までの子を養育する従業員に対しては、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮する制度を設けなければなりません。

(2)「所定外労働の制限」
 3歳に満たない子を養育する従業員が申し出た場合には、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。

(3)「介護休暇」
 家族の介護や世話を行う従業員が申し出た場合には、1日単位での休暇取得を許可しなければなりません。日数は、介護する家族が1人ならば年に5日、2人以上ならば年に10日となります。

 ◆就業規則等の見直しが必要
 7月1日から新たに対象となる企業については、あらかじめ就業規則等に上記の制度を定め、従業員に周知しなければなりません。
 対応が済んでいない場合は施行日までに対応が必要ですので、ご注意ください。


パート労働者の労働条件見直しの動き

 ◆来年の国会に改正案を提出へ
 厚生労働省は「パート労働法」の一部を改正し、今後は有期雇用で働くパート労働者の待遇を正社員並みとする方針を示しています。
 先日示された「今後のパートタイム労働対策について(報告)(案)」の内容をベースとして、来年の通常国会へ改正案提出を予定しているようです。

 ◆パート労働者の現状
 現在、雇用者の4人に1人以上がパート労働者であり、厚生労働省では、「パート労働という働き方の環境整備が必要であり、パート労働者の均衡待遇の確保を促進していくとともに、均等待遇を目指していくことが求められる」としています。
 また、「短時間であることから働き方が多様となるパート労働者の待遇について、納得性を向上させ、あわせてパート労働者に対する継続的な能力形成も進めていく必要がある」としています。

 ◆報告書案の内容
 なお、現在示されている「今後のパートタイム労働対策について(報告)(案)」の主な内容は、次の通りです。

(1)パート労働者の均等・均衡待遇の確保
  ・職務内容が通常の労働者と同一で、人材活用の仕組みが通常の労働者と少なくとも一定期間同一であるパート労働者について、当該一定期間は、通常の労働者と同一の方法により賃金を決定するように努めるものとされている規定を削除することが適当。

  ・通勤手当は、パート労働法の均衡確保の努力義務の対象外として例示されているが、多様な性格を有していることから、一律に均衡確保の努力義務の対象外とすることは適当ではない旨を明らかにすることが適当。

(2)パートタイム労働者の雇用管理の改善
  ・パート労働者の「賃金に関する均衡」、「教育訓練の実施」、「福利厚生施設の利用」、「通常の労働者への転換」等に関し、パート労働者の雇入れ時等に、事業所で講じている措置の内容について、パート労働者に説明することが適当。
  ・パート労働者からの苦情への対応のために担当者等を定めるとともに、パート労働者の雇入れ時等に周知を図ることが適当。


「テレワーク」導入で企業にも従業員にもメリット

 ◆「テレワーク」の定義
 震災を契機に改めて見直された「テレワーク」ですが、導入する企業、導入を検討している企業が徐々に増えているようです
 「テレワーク」は、「ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と定義されており、「テレ(Tele)」=「遠い、遠距離の」と、「ワーク(Work)」=「働く」という言葉を組み合わせてできた言葉です。

 ◆「テレワーク」導入のメリット
 導入のメリットとして、一般的には以下のことが挙げられます。

【企業にとってのメリット】
 (1)業務が効率化できる
 (2)優秀な人材を確保できる
 (3)災害発生時の事業継続対策となる
 (4)節電対策となる

【従業員にとってのメリット】
 (1)ワークライフバランスを向上できる
 (2)通勤による負担を軽減できる
 (3)地域参加の機会を増加できる

 ◆メリットの大きい制度
 テレワーク導入時においては、「導入する際の就業規則の規定方法がわからない」「労働時間の管理方法が難しい」「情報セキュリティの面で心配」といった労務管理上の悩みや疑問がある場合が多いようです。
 しかし、これらの問題をクリアすることができれば、企業にとっても従業員にとってもメリットの大きい制度だと言えるでしょう。

2012/06/01

6月の事務所便り

今後の災害対策の見直しと「帰宅困難者」への対応

◆企業による災害対策の見直し
 経済同友会では、東日本大震災から1年を経過したのを機に、危機対応の現状などについて企業に対してアンケート調査を行い、その結果を公表しました。
 その中で、「災害時の緊急対応策について、今回の災害を教訓として見直した点を挙げてください」との質問に対する回答(複数回答)は次の通りでした。

(1)緊急体制の再検討(75%)
(2)マニュアルの整備(70%)
(3)非常用通信手段の導入(57%)
(4)平時からの訓練の計画(56%)
(5)現場とのコミュニケーション強化(36%)

 その他には、「BCP の整備」「災害時備蓄品の見直し」「津波を想定した訓練」「帰宅困難者対応」などが挙げられました。

 ◆「帰宅困難者対策条例」への対応
 震災発生時において首都圏を中心に多くの「帰宅困難者」が発生したことから、今年3月29日に「東京都帰宅困難者対策条例」が制定され、来年4月1日に施行されることとなっています。
 この条例では東京都内の企業に対し、主に次のことを義務付けています。

(1)大規模災害発生時に従業員の一斉帰宅を抑制すること
(2)水や食糧等を3日分備蓄すること
(3)従業員との連絡手段を確保すること
(4)大規模集客施設では利用者保護に努めること

 条例の施行により、企業にとっては様々な労務管理上の問題が発生するとともに、多くの経済的負担も生じることから、施行日までに何らかの対応が必要となります。
 また、東京都以外の自治体にも同様の条例が制定される可能性もありますので、注意が必要です。


「年金制度」抜本改正に関する動向

◆「最低保障機能」の強化
 現在開会中の国会に「年金機能強化法案」(公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案)が提出され、これから審議されていきます。
 ここでは、この法案の内容を簡単にご紹介します。

◆主な内容
 同法案の主な内容は次の通りです。

(1)年金制度の最低保障機能の強化を図り、併せて、年金給付の重点化・効率化を図る観点から、「受給資格期間の短縮」、「低所得者等への年金額の加算」、「高所得者の年金額の調整」を行う。(平成27年10月から施行)
(2)「基礎年金国庫負担2分の1」が恒久化される特定年度(現在は「別に法律で定める年度」と規定)を平成26年度と定める。(平成26年4月から施行)
(3)平成24年度に発行する交付国債の償還に関する事項(今国会に提出済みの国民年金法等改正法案で「別に法律で定める」と規定)を定める。(公布日から施行)
(4)短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大を行う。(平成28年4月から施行)
(5)厚生年金・健康保険等について、次世代育成支援のため、産休期間中の保険料免除を行う。(2年を超えない範囲内で、政令で定める日から施行)
(6)遺族基礎年金の父子家庭への支給を行う。(平成26年4月から施行)

 法案が可決・成立した場合でも施行日はまだまだ先ですが、年金受給者等に大きな影響を与える内容もあり、注意が必要です。
 なお、(1)~(3)、(6)については、税制抜本改革により得られる税収(消費税収)を充てるとされています。

◆年金制度の「一元化」実現なるか?
 また、サラリーマンと公務員等の年金を統合する「被用者年金一元化法案」(被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案)も国会に提出されており、今後の動向が注目されます。


電子版「ねんきん定期便」がスタート

◆4月からスタート
 すべての年金加入者(約6,600万人)を対象とした電子版の「ねんきん定期便」(通称:ねんきんネット)が4月2日にスタートしました。
 これにより、毎年の誕生月に郵送している「ねんきん定期便」の内容を、インターネットで確認できるようになりました。

◆電子版「ねんきん定期便」のメリット
 電子版の一番のメリットは、「自分の年金記録を24時間いつでも確認することができること」ですが、それ以外にも次のようなメリットがあります。

(1)年金記録の内容は毎月更新される。
  …郵送版は年1回のみ
(2)すべての期間の年金記録が確認することができる。
  …郵送版は「35歳」「45歳」「58歳」の節目年齢以外は直近1年分のみ
(3)確認した内容を残しておきたい場合はダウンロードして手元に保存することができる。

◆「年金記録の確認経験」20歳以上で約7割
 厚生労働省が発表した「公的年金加入状況等調査」(2010年時点)の結果によれば、「過去3年程度の間に自分の年金記録を確認したことがある」という人(20歳以上)は67.4%で、確認の手段としては約8割の人が「ねんきん定期便」を活用していました。
 この「ねんきんネット」により、自分の年金記録を確認する人が今後は増えていくものと思われます。
※「ねんきんネット」http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=5214


最近の労働関係の地裁裁判例から

◆自動車メーカーによる雇止め等(4月16日判決)
 自動車メーカーが行った雇止めや派遣切りは無効であるとして、工場で働いていた元期間従業員(4人)と元派遣社員(3人)が雇用継続の確認を求めていましたが、東京地裁はこれらの請求を棄却しました。ただし、元期間従業員がカットされた未払い賃金(1人約58万~63万円)の支払いは命じました。
 自動車メーカーでは、契約打切りに応じなかった期間従業員に「契約期間終了までの休業」と「約4割の賃金カット」を2008年12月に言い渡して翌年4月で雇止めとし、派遣社員は派遣元から2008年12月に解雇されていました。
 裁判長は「不況に伴う雇止め・派遣切りは合理的である」と判断しました。

◆銀行におけるパワハラ(4月19日判決)
 パワハラ被害により退職せざるを得なくなったとして、50代の社員が銀行と上司に対して損害賠償(約4,900万円)を求めていましたが、岡山地裁は社員の精神的苦痛を認め、慰謝料など110万円の支払いを命じました。
 2007年3月頃、仕事上でミスをした社員に対して「辞めてしまえ!」などと当時の上司が強い言動で叱責するなどし、この社員は2009年に辞表を提出して退職しました。
 裁判官は「上司の叱責は病気療養から復帰直後の社員にとって精神的に厳しく、パワハラに該当する」と認定しました。

◆過労による高校教諭の死亡(4月23日判決)
 高校教諭の男性が修学旅行の引率からの帰宅途中に急性心筋梗塞を発症して死亡したのは過労が原因であるにもかかわらず、公務災害と認定されなかったとして、遺族である妻が「地方公務員災害補償基金」に対して不認定処分の取消しを求めていましたが、東京地裁は公務と死亡との因果関係を認め、上記処分を取り消しました。
 裁判長は、死亡するまでの1週間の間の労働時間が法定の2.5倍以上に及んでいたと認定し、「日常の勤務と比べて質・量ともに特に過重だった」と判断しました。


がん患者となった労働者に対する就労支援

◆支援策が続々と登場
 がん患者の5年生存率の平均が50%を超え、治療を続けながら働くがん患者が増えているそうです。
 就労支援に乗り出す企業、夜間診療など支援する病院も現れ、また、厚生労働省も今年度からの「がん対策推進基本計画」で取組みを後押ししています。

◆依願退職・解雇の状況
 がん患者の5年生存率は伸びているものの、厚生労働省研究班の調査(2004年)によると、がんになった労働者のうち約30%が依願退職をし、4%が解雇されたそうです。
 そこで、同省は、2012年度から5年間の目標を掲げた「がん対策推進基本計画」を発表し、就労支援に取り組むことを掲げています。

◆病院による支援策
 がん患者の就労を支援する病院では、放射線治療の診療時間を午後10時まで延長したそうです。
 また、他の病院では、患者の悩み相談に応じたり、希望者には精神科医や臨床心理士が復職に伴う心理サポートを実施したりしています。

◆企業による支援策
 大手の人材派遣会社では、2012年度末をめどに、がんと診断された社員や派遣スタッフの休暇制度などを導入するようです。
 しかしながら、このような企業はまだまだ少ないようであり、中小零細企業では従業員数が少ないため、1人でも長期の休暇を取ると周りの社員の負担が増加してしまいます。
 これらの企業では、他の企業で実施されている育児や介護との仕事の両立、うつ病で休職した人の復職などを参考にしながら、がん患者となった労働者への支援を進めていくことも必要なのではないでしょうか。


うつ病の診断を客観的に行う方法

◆発症率は6~7%
 日本人が「うつ病」を患う確率は6~7%と言われており、欧米諸国と比較すると多くはないようですが、一般内科において「気分が滅入る」「眠れない」と訴えて、うつ病と診断されるケースは増えているようです。
 うつ病は診断が難しく、精神科でも確定的な診断を行うまでに時間がかかりますが、客観的にうつ病を診断できるように「光トポグラフィー検査」というものが開発されています。

◆「光トポグラフィー検査」の内容
 この検査は、近赤外光(身体には無害)を使用して脳の活動状況を調べるもので、頭に近赤外光を当て、反射してくる光から脳血流の変化を読み取り、脳の活動状態を数値化します。
 患者は頭に光源と光検出機を内蔵したヘッドセットを着け、最初の10秒は「あ、い、う、え、お」を繰り返し、次の10~70秒間では、同じ頭文字で始まる言葉を声に出して言い続けます。
 このときに「あ、で始める言葉は…」と脳を使う際の血流の変化がポイントであり、血流量がどう変化するのかをグラフ化するそうです。

◆「先進医療」に指定
 この検査は2011年5月に厚生労働省の「先進医療」に指定され、大学病院などでは保険診療と組み合わせて検査を行う「混合診療」が可能となりました。
 問合せが殺到して予約すらできない状況が続いているそうですが、病院・クリニックでの診断名に疑問をお持ちの方は、一度検査を受けてみるのも良いかもしれません。


身近になった「在宅医療」「在宅介護」 

◆4月からの制度改定
 この4月から、医療保険制度と介護保険制度が一部改定されました。
 できるだけ病院や介護施設に入らず、自宅において医師・看護師・ヘルパーに世話をしてもらいながら療養する人を増やそうという狙いがあるようです。

◆「報酬改定」による影響
 診療報酬や介護報酬は、2~3年に一度、物価動向などを踏まえて政府が見直しを行い、医療や介護行為にかかる報酬を改定するものです。
 今回は在宅医療にまつわる報酬が上がったこともあり、訪問診療などを手掛ける医療機関が増える可能性が指摘されているようです。

◆診療報酬改定のポイント
 医療保険分野では、診療報酬改定率はほぼ横ばいの0.004%(本体プラス1.379%/薬価・材料等マイナス1.375%)の増加で、2010年度の改定で10年ぶりに増加(0.19%)したのに続き、2年連続で増えました。
 また、早期退院から在宅医療への円滑な移行、訪問介護の充実、精神疾患・認知症対策の推進などにも、重点的に配分がなされました。

◆介護報酬改定のポイント
 介護保険分野では、介護報酬改定率は1.2%増加で、2009年度に引き続きプラス改定となりました。
 ただし、「介護職員処遇改善交付金」が2011年度末で終了したため、マイナス0.8%の改定ととらえることもできます。
 この交付金は終了しますが、「介護サービス提供の効率化・重点化を図る観点から在宅医療への移行を図る」「介護職員の処遇改善を確実に図る」などの要件を満たした場合には、事業者が人件費に充当するための報酬加算が行れています。


「多様な形態による正社員」の今後

◆厚生労働省の研究会報告書
 厚生労働省の「多様な形態による正社員に関する研究会」が報告書をとりまとめ、このたび公表されました。
 これによれば、正社員と同じ無期労働契約でありながら、職種・勤務地・労働時間などが限定的な正社員(多様な形態による正社員)の導入は、非正社員にとって正社員転換の機会を拡大する可能性があると指摘しています。

◆「多様な形態による正社員」の導入状況
 「多様な形態による正社員」については企業の約5割が導入し、そのうち職種限定は約9割、勤務地限定は約4割、労働時間限定は約1~2割となっているようです。
 導入の目的は、「人材確保・人材定着の必要性」、「ワーク・ライフ・バランス支援」が多くなっており、「賃金は通常の正社員の8~9割程度」、「昇進・昇格には上限あり」、「事業所閉鎖時等の人事上の取扱いは通常の正社員と同様」とする企業が多いようです。

◆企業側・従業員側のメリット
 「多様な形態による正社員」について、企業側のメリットとしては、人材の確保、多様な人材の活用、人材の定着、業務の効率化などが挙げられ、従業員側のメリットとしては、雇用が安定すること、遠方への転勤の心配がないことが挙げられます。

◆活用にあたっての注意点
 非正社員から正社員への登用(ステップアップ)のために活用する場合は、「安定した雇用の下、職業能力の向上を図り、希望に応じた働き方を実現できる形態として活用することが望ましい」とされています。
 この「多様な形態による正社員」の導入は、非正社員にとっては正社員転換の機会が拡大する可能性があり、正社員にとってもワーク・ライフ・バランス実現の1つの手段となり得るため、今後も注目されていくものと思われます。


「職場のパワーハラスメント」の予防・解決

◆厚労省ワーキング・グループが取りまとめ
 厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」においては、職場の「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」(パワハラ)について昨年7月から議論されてきましたが、このたび、問題の予防・解決に向けた提言を取りまとめ、発表されました。

◆企業の積極的な取組みが必要
 職場の「いじめ・嫌がらせ」、「パワハラ」は、労働者の尊厳や人格を侵害する許されない行為であり、早急に予防や解決に取り組むことが必要な課題です。
 企業は、これらの発生による「職場の生産性の低下」や「人材の流出」といった損失を防ぐとともに、労働者の仕事に対する意欲を向上させ、職場の活力を増すために、この問題に積極的に取り組むことが求められます。

◆職場のパワハラをなくすために必要なこと
 (1)企業や労働組合、そして一人ひとりの取組み
企業や労働組合は、職場のパワハラの概念・行為類型やワーキング・グループ報告が示した取組例を参考に取り組んでいくとともに、組織の取組みが形だけのものにならないよう、職場の一人ひとりにも、それぞれの立場から取り組むことを求めることが必要です。
 (2)トップマネジメントへの期待
職場のパワハラは組織の活力を削ぐものであることを意識し、こうした問題が生じない組織文化を育てていくことを求めることが必要です。そのためには自らが模範を示しながら、その姿勢を明確に示すなどの取組みを行う必要があります。
 (3)上司の立場にある方への期待
自らがパワハラをしないことはもちろん、部下にもさせないように職場を管理し、職場で起こってしまった場合はその解決に取り組む必要があります。
 (4)職場の一人ひとりへの期待
互いの価値観などの違いを認め、互いを受け止め、人格を尊重し合い、互いに理解し協力し合うため、適切にコミュニケーションを行うように努力することが必要で。また、パワハラを受けた人を孤立させず声を掛け合うなど、互いに支え合うことを求めることも必要です。


2012年度新入社員の意識調査の結果から

◆新入社員教育プログラム参加者を対象に調査を実施
 公益財団法人日本生産性本部が、2012年4月入社の新入社員を対象として「2012年度新入社員 春の意識調査」を実施し、その結果が4月23日に発表されました。
 この調査は、同本部主催の新入社員教育プログラム等への参加者を対象に実施し、2,089人から回答が得られています。

◆「安定思考」が顕著に
 この中で、「今の会社に一生勤めようと思っている」とする回答が過去最高の60.1%となりました。過去最低だった2000年(20.5%)と比較すると、なんと約40ポイントも上昇しています。非常に厳しい就職活動を行った世代であるためか、いわゆる「安定志向」の社員が増えているようです。
 そして、「将来への自分のキャリアプランを考える上では、社内で出世するより自分で起業して独立したい」とする回答は、過去最低の12.5%となりました。これは、過去最高だった2003年(30.5%)と比較すると約20ポイント低下しています。

◆新入社員研修参加者を対象に調査を実施
 また、株式会社マイナビでも、2012年4月入社の新入社員を対象に「2012年マイナビ新入社員意識調査」を実施し、その結果を4月26日に発表しています。
 この調査は、同社主催の新入社員研修に参加した企業の新入社員(1,390名)を対象に実施したものです。

◆「自信」のあるスキル
 まず、「あなたが今、会社で発揮できる力はどんな力だと思うか」(複数回答)を聞いたところ、上位3つは次の通りの結果となっています。

(1)「相手の意見を丁寧に聞く力」(56.4%)
(2)「物事に進んで取り組む力」(53.2%)
(3)「社会のルールや人との約束を守る力」(39.9%)
次に、「これから自分に必要だと思うスキルはどんなスキルだと思うか」(複数回答)を聞いたところ、上位3つは次の通りの結果となっています。

(1)「自分の意見をわかりやすく伝える力」(49.1%)
(2)「他人に働きかけ巻き込む力」(33.5%)
(3)「目的を設定し確実に行動する力」(32.2%)

2012/04/27

5月の事務所便り

改正された「労働者派遣法」の概要


◆法律名変更で「労働者の保護」を明確に
 派遣労働者の保護を目的とする「改正労働者派遣法」がついに成立しました。施行期日は「公布の日から6カ月以内」とされています。
 法律の正式名称も「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」から「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」に変更されました。
 改正法の主な内容は次の通りです。

◆事業規制の強化
 (1)日雇派遣(日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止(適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務の場合、雇用機会の確保が特に困難な場合等は例外)
 (2)グループ企業内派遣の8割規制、離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止

◆派遣労働者の無期雇用化や待遇の改善
 (1)派遣元事業主に、一定の有期雇用の派遣労働者につき、無期雇用への転換推進措置を努力義務化
 (2)派遣労働者の賃金等の決定にあたり、同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮
 (3)派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(いわゆるマージン率)などの情報公開を義務化
 (4)雇入れ等の際に、派遣労働者に対して、1人当たりの派遣料金の額を明示
 (5)労働者派遣契約の解除に際して、派遣元および派遣先における派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用負担等の措置を義務化

◆違法派遣に対する迅速・適格な対処
 (1)違法派遣の場合、派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなす
 (2)処分逃れを防止するため労働者派遣事業の許可等の欠格事由を整備


厚生労働省から発表された今年度の「労働基準行政の運営方針」

◆労務管理で注意すべき事項は?
 厚生労働省が「平成24年度 地方労働行政運営方針について」を発表しました。
 各都道府県の労働局では、この運営方針を踏まえつつ行政運営を図ることとしていますので、企業の労務担当者が気にしておくべき内容が盛り込まれています。

◆運営方針の内容
 発表された運営方針の項目は下記の通りです。なお、地方労働行政の展開にあたっての基本的対応は、「地方公共団体、労使団体等との連携を図るとともに、地域の実態把握、コスト削減等を通じた計画的かつ効率的な行政運営を推進する」とされています。
 (1)東日本大震災からの復旧・復興支援および円高への対応
 (2)総合労働行政機関として推進する重点施策
 (3)労働基準行政の重点施策
 (4)職業安定行政の重点施策
 (5)職業能力開発行政の重点施策
 (6)雇用均等行政の重点施策
 (7)労働保険適用徴収業務の重点施策
 (8)個別労働関係紛争の解決の促進

◆労働基準行政としての重点施策
 企業の労務担当者が最も気になるところである「(3)労働基準行政の重点施策」の項目には、次のことが挙げられています。
 ・「労働条件の確保・改善対策」…長時間労働の抑制や賃金不払残業の防止のための監督指導等の法定労働条件の確保、外国人労働者等の特定労働分野における労働条件の確保対策等を推進する。
 ・「最低賃金制度の適切な運営」…最低賃金の周知徹底を図るとともに、最低賃金引上げに向けた中小企業への支援を行う。
 ・「適正な労働条件の整備」…長時間労働の抑制および年次有給休暇の取得促進等を推進する。
 ・「労働者の安全と健康確保対策の推進」…労働災害防止対策を安全衛生対策の最重点課題とし、労働災害多発分野における対策、メンタルヘルス対策および過重労働による健康障害防止対策、石綿健康障害防止対策を推進する。
 ・「労災補償対策の推進」…労災保険の迅速・適正な処理、精神障害等事案および脳・心臓疾患事案に係る適正な処理を行う。


今年の新入社員はどんなタイプ?

◆平成24年4月入社の新入社員
 公益財団法人日本生産性本部の「職業のあり方研究会」では、平成24年4月入社の新入社員の特徴をまとめました。
 この研究会は学識経験者などで構成されており、就職・採用環境の動向等についての調査研究を行い、その年の新入社員の特徴をネーミングすることが恒例となっています。

◆今年は『奇跡の一本松型』
 発表された今年の新入社員のタイプは、『奇跡の一本松型』とのことです。『奇跡の一本松』(岩手県陸前高田市)とは、東日本大震災で発生した巨大津波にも耐えて生き残った松のことであり、復興に向けて多くの人に勇気を与えていると話題になりました。
 研究会では、「大卒予定者の就職内定率が過去3番目に低い(80.5%)という厳しい状況の中、就職戦線を乗り越えてきた若者たちの頑張りを賞賛したい」と、ネーミングの理由を説明しています。

◆過去のネーミングは?
 なお、平成18年~23年のネーミングは以下の通りです。
 ・平成18年『ブログ型』…ネット上での交流で、他者に自己認知や共感を求めたがる一方で、他人の評価で萎縮しやすい傾向もあり、暖かい眼差しと共感が育成のカギ。
 ・平成19年『デイトレーダー型』…景気回復での大量採用は売り手市場を形成し、就職しても細かい損得勘定でネットを活用して銘柄(会社)を物色し続け、売買を繰り返す(転職)おそれあり。
 ・平成20年『カーリング型』…働きやすい環境作りとばかりにブラシでこすり続けねば、止まったり方向違いとなったりのおそれあり。楽勝就職の一方で先行き不安の試合展開は本人の意志(石)次第。
 ・平成21年『エコバック型』…環境問題(エコ)に関心が強く、節約志向(エコ)で無駄を嫌う傾向があり、折り目正しい。小さくたためて便利だが、使うときには大きく広げる(育成する)必要がある。
 ・平成22年『ETC型』…性急に関係を築こうとすると直前まで心のバーが開かないので、スピードの出し過ぎに注意。IT 活用には長けているが、人との直接的な対話がなくなるのが心配。
 ・平成23年『はやぶさ型』…東日本大震災の発生により発表は見送り。


課長と一般社員の考えのギャップをどう埋める!?

◆意識の違いはどこから生じる?
 公益財団法人日本生産性本部では、管理職層と一般社員層(2011年6月以降における同法人主催の公開セミナー等の受講者)を対象にアンケートを実施し、先日その結果が発表されました。
 管理職層の回答の中から「課長職」のみの回答(478件)を、一般社員層の回答の中から「入社2年目社員から係長・主任・職場リーダークラスまで」の回答(381件)を抽出し、比較分析が行われています。
 多くの項目で、両者の意識にギャップが生じていることがわかりました。

◆コミュニケーションが取れているか?
 まず、「部下または後輩とのコミュニケーション」について、「取れていると思う」と回答した課長は79.9%でした。逆に、「上司とのコミュニケーション」について、「取れていると思う」と回答した一般社員は68.8%でした
 課長自身が「部下・後輩とはコミュニケーションが取れている!」と勘違い(?)されているケースがあるようです。

◆職場での情報共有がされているか?
 次に、「職場での有益な情報共有」について、課長のうち68.0%の人が「共有されていると思う」と回答したのに対し、一般社員のうち53.8%の人が「共有されていない」と回答しました。
 情報共有ができていると思っている割合は課長のほうが高くなっており、ここにもまたギャップが生じています。

◆部下の話をじっくり聴いているか?
 また、課長のうち85.6%の人が「部下の話をじっくり聴いている」と思っていますが、一般社員の30.4%は「自分の上司は話をあまり聴かない」と感じているようです。
 上司の側は部下の話を聞いているつもりであっても、部下の側はそのように感じていないことも多いようです。


学生は「大企業」「中堅中小企業」どちらを選ぶ?

◆インターネット調査の結果から
 株式会社ディスコから、2013年3月卒業予定の大学生(主に現大学3年生)を対象に行った就職活動に関するインターネット調査(回答者数1,290人)の結果が発表されました。
 これによると、大手企業を中心に就職活動をしている学生は「40.2%」、中堅中小企業を中心に活動している学生は「14.0%」でした。
 しかし、3年前のアンケートでは、活動の中心が大手企業の学生は「51.9%」、中堅中小企業が中心の学生は「5.9%」であり、ここ数年で、中堅中小企業も志望する学生は着実に増えています。

◆中堅中小でやりがいのある仕事を
 また、株式会社マイナビが実施した「2013年卒マイナビ大学生就職意識調査」でも、『中堅・中小企業志向』(「やりがいのある仕事であれば中堅・中小企業でもよい」「中堅・中小企業がよい」との回答割合)が2001年卒以降で最高の59.2%となっており、『大手企業志向』(「絶対に大手企業がよい」「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」との回答割合)の減少傾向が続いています。
 不透明な経済情勢が続くなか、大企業よりも、比較的若いうちから中心的な仕事を任される可能性が高い中堅中小企業の志望者が増えているようです。

◆転職理由のベスト3
 大手企業・中堅中小企業のどちらへの就職であっても、企業側が気になるのは、採用した社員の転職です。
 株式会社インテリジェンスが発表した「転職理由調査2012年版」の結果によれば、転職理由のベスト3は次の通りとなっています。
 (1)「会社の将来性が不安」(14.2%)
 (2)「他にやりたい仕事がある」(13.2%)
 (3)「給与に不満がある」(8.5%)と続きました。
 時間とお金をかけて採用・育成した社員をいかに定着させるかが、企業には問われるところです。


「有期労働契約」が変わる? 労働契約法改正の動向

◆改正案が閣議決定
 先日、「労働契約法改正案」が閣議決定されました。
 国会の状況により流動的ではありますが、厚生労働省は来春施行を目指すとしており、成立した場合は企業への影響も大きいと思われますので、今から注目しておきましょう。

◆改正案のポイント
 この改正案のポイントは、次の通りです。
 (1)5年を超えて反復更新された有期労働契約について、労働者からの申込みがあれば期間の定めのない労働契約へ転換させる仕組みの導入
 (2)「雇止め法理」の法制化
 (3)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

◆具体的な内容
 まず(1)については、反復更新により有機の労働契約が5年を超える場合が対象ですが、原則6カ月以上の空白期間(クーリング期間)がある場合には、前の契約期間と通算されないため、該当しないこととなります。
 次に(2)の「雇止め法理」は、有期労働契約を繰り返し更新することにより期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっている(あるいは有期労働契約の期間満了後にも雇用が継続されている)等により、有期雇用労働者の雇用関係継続への合理的な期待が認められるときに、雇止めを行う際には合理的な理由が必要となることです。また、雇止めが無効と判断された場合には、従前の労働契約が更新されたものとみなされることになります。
 また、(3)は、期間の定めがあることによって、有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件と相違する場合に、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮し、不合理と認められるものであってはならないというものです。


パート労働者へ社会保険適用を拡大へ

◆重要度を増すパート労働者
 企業内におけるパート労働者の役割は年々重要度を増しており、正社員並みの中核業務を任せる企業も多くなっています。
 正社員並みの中核業務を担当させるような企業においては、仕事が同じ正社員とパート労働者の賃金水準を同等にしたり、就業環境の整備を行ったりしています。

◆セーフティネットの強化
 このような状況下において、国は、被用者でありながら被用者保険の恩恵を受けられないパート労働者などの非正規労働者に社会保険を適用し、セーフティネットを強化することで、社会保険における格差を是正したいと考えました。
 そこで、政府は、パート労働者への社会保険の適用拡大を検討しています。2016年4月から、「週勤務時間20時間以上」「年収94万円(月収7万8,000円)以上」「勤務期間1年以上」で「従業員501人以上の企業で勤務」の人を社会保険適用の対象にするとし、さらに3年以内に対象の拡大を行うというものです。
 加入が進めばパートの将来への安心感は増しますが、企業の負担は大きくなるため(約800億円と推計)、反発の声があがっています。

◆負担軽減措置も検討
 今回の適用拡大をめぐり、厚生労働省では、高齢者医療費の拠出金などについて負担を軽減する特例措置の導入を検討しています。
 パート労働者が多い業界(外食、流通業など)を対象に、負担増の部分について健康保険組合の加入者が肩代わりするというものです。
 企業にとっては、今後の動きから目が離せません。


若年層雇用の問題点と対策

◆課題が山積!
 大学や専門学校を卒業して就職してもすぐに会社を辞めたり、就職できずにアルバイトや無職となってしまったりという人が多くなっています。
 それ以外にも、若年層の雇用対策については課題が山積しています。

◆新卒者等の就職内定率
 文部科学省・厚生労働省の集計によれば、今春卒業した大学生の就職内定率(2月1日時点)は過去3番目に低い80.5%でした。
 現時点でもまだ多くの学生が就職できずに就職活動を続けており、新卒者の就職環境は依然として厳しいようです。

◆「高年齢フリーター」の存在
 さらに、バブル崩壊後の就職氷河期(1993年以降)に卒業し、アルバイトなどを続けてきた人は現在40歳前後になっています。
 その影響で、いわゆる「高年齢フリーター」(35~44歳のフリーター)は過去最高の約50万人に上っています。なお、この世代に占めるフリーターの割合は2002年時点で1.6%でしたが、2011年には2.8%となっています。
 今後も、学卒で就職することができずに、フリーターとなる人の割合は高まっていくことが予想されます。

◆政府の雇用対策
 政府は、「トライアル雇用制度」や、「ジョブカフェ」など、若年層向けの雇用対策を進めていますが、「高年齢フリーター」等に対する支援は十分ではありません。
 新卒で就職後、3年以内に離職する人の割合は3割を超えているようです。「高年齢フリーター」を含めた若年層の雇用についてはさらなる対策が求められます。


厚生年金基金の現状と問題点

◆半数以上の基金が赤字!
 世間を騒がせているAIJ投資顧問による「年金消失問題」を受け、厚生労働省が行った厚生年金基金(以下、「基金」)に関する調査によると、全578基金のうち314基金において、年間の給付額が掛金(保険料)を上回ったということです(2011年3月期)。
 また、将来の年金支給に必要な積立金が10年未満になくなってしまうおそれのある基金が16もあり、今後、積立不足による企業の倒産なども出かねない状況です。

◆積立不足の要因は?
 積立不足の背景には、団塊世代の大量退職による年金受給者の増加があります。
 また、現役社員が年々減少傾向にあり、支給総額から掛金総額を引いた差額は約1,300億円(2010年度)にも上っており、今後はさらに拡大することが考えられます。

◆運用利回り設定の問題点
 将来の年金給付原資を確保するために必要な運用利回りについて、大企業においては一般的に「2~3%程度」となっているようですが、中小企業が中心の基金では、約9割が「5.5%」といった高水準に設定されているようです。
 こうした基金の中には、業績低迷により掛金を増やせない状態にあるケースが多くなっています。

◆運用難をどう乗り切るか
 約4割の基金では、積立金について企業年金分がまったくないうえに、公的年金分(代行部分)も不足しているとのことです。
 財政悪化に対処するために退職者が受給している企業年金の減額を行うことも考えられますが、受給者の「3分の2以上の同意」が必要となるなど手続き難しくなっています。
 そこで、厚生労働省では、企業年金の減額を認める要件を「過半数の同意」に下げる案を検討しており、現役世代への過度の負担を防止することを考えています。


厚生労働省「21世紀成年者縦断調査」の結果から

◆継続調査の9回目
 厚生労働省の「21世紀成年者縦断調査」は、同省が2002年10月末時点において20~34歳の男女を対象に毎年継続して実施しているもので、今回で9回目です。
 以下では、主な調査結果を見ていきます。

◆第2子の生まれた割合
 子のいる夫婦について、今回調査までの8年間に新たな子供が生まれた割合をみると、夫の休日における家事・育児時間が「6時間以上」の家庭では、「なし」の場合の6.8倍(67.4%)にも達しています。
 同省では、「子供とのふれいあいが楽しいと感じると、新たに子供が欲しくなるのでは」と分析しています。

◆正規雇用・非正規雇用の結婚への影響
 また、初めての就職が非正規雇用の場合、男女ともに正規雇用と比べて結婚する割合が低いこともわかりました。
 初職が非正規雇用だったの男性のうち、今回調査までに結婚経験がある人は40.5%で、正規雇用の場合(66.7%)よりもかなり低くなっています。
 女性についても、非正規雇用者の結婚経験は59.4%で、正規雇用者(74.7%)より低くなっています。

◆女性の仕事の継続
 次に、女性の結婚後の就業状況ですが、結婚前に仕事に就いていて、当時の仕事を「結婚後も続ける」と考えていた人のうち72%が、同じ仕事を継続しています。
 この傾向は出産後も同様であり、出産した後も現在の仕事を続けると考えていた場合、正規では85.6%が同じ仕事を継続しています。

2012/04/01

4月の事務所便り

転職者は転職活動の際にどんなサービスを利用するか?


◆400人を対象に調査を実施
 ソフトバンクヒューマンキャピタル株式会社が「人材紹介サービスに関する調査」(調査対象:25~39歳の正社員・契約社員・派遣社員400人)を実施し、その結果が発表されています。
 転職活動の際にどのようなサービス(媒体)を利用したか等についての実態が明らかになっています。

◆何を使って転職活動を行っている?
 過去1年以内に転職活動をした人に、転職活動で利用している(実際に利用した)サービスを尋ねたところ、次のような結果となりました(複数回答)。
(1)「転職サイト」67.3%
(2)「ハローワーク」63.5%
(3)「転職情報誌」38.0%
(4)「人材紹介会社」29.5%
(5)「会社ホームページ内の採用情報」23.8%
 転職者のうち約3分の2の人が、「転職サイト」と「ハローワーク」を活用しているようです。

◆転職サイトの利用は「複数」
 上記質問の回答でトップとなった「転職サイト」を利用している(実際に利用した)人269名に、転職サイトをいくつ利用したかを尋ねたところ、「1つ」が27.9%、「2つ」が33.8%、「3つ以上」が38.3%となっており、多くの人(7割以上)が複数の転職サイトを利用していることがわかりました。

◆どのようにして転職が決まったか
 転職先の決定状況について尋ねたところ、転職サイトを利用している(実際に利用した)人のうち、「転職サイトを利用して転職先が決まった」人の割合は21.6%、「転職サイト以外のサービスを利用して決まった」人の割合は24.9%、「決まっていない/現在、転職活動中」の人の割合は53.5%でした。
 そして、人材紹介会社を利用している(実際に利用した)人のうち、「人材紹介会社を利用して転職先が決まった」人の割合は24.6%、「人材紹介会社以外のサービスを利用して決まった」人の割合は34.7%、「決まっていない/現在、転職活動中」の人の割合は40.7%でした。


学生が考える「社会人に関する意識」

◆1,200名以上が回答
 レジェンダ・コーポレーション株式会社では、2012年4月入社を希望する新卒の大学生・大学院生を対象として、「社会人に関する意識調査」(調査対象者16,440名のうち1,227名が回答)を実施し、その結果が発表されました。

◆早く社会人になりたい? まだ学生でいたい?
 まず、「現在の気持ち」について尋ねたところ、「早く社会人になりたい」と回答した人の割合は、男性41.3%、女性24.0%で、男性が女性よりも17.3ポイント高い結果となりました。
 一方、「もっと学生でいたい」と回答した割合は男性32.3%、女性49.5%でした。

◆女性のほうが、不安が大きい
 社会人になるに際して、期待と不安のどちらが大きいかについて尋ねたところ、期待が大きい(「期待が大きい」「やや期待の方が大きい」の合計)と回答した人の割合は、男性が57.0%、女性が40.8%でした。
 一方、「不安が大きい」(「やや不安の方が大きい」「不安が大きい」の合計)と回答した人の割合は、男性が43.0%、女性が59.2%でした。男性よりも女性のほうが、不安が大きいようです。

◆やりたいこと、不安なこと
 次に、社会人になってからやってみたいこと、不安なことについて尋ねたところ、やってみたいこととしては、「海外を飛び回りたい」「広い視野を持ちたい」等の回答が多く挙げられました。
 不安なこととしては、「仕事ができるようになるか不安」「人間関係が上手に築けるか」等の回答が多く挙げられました。


3月末までの時限措置!「若年者等正規雇用化特別奨励金」

◆奨励金の概要
 この奨励金は、「年長フリーターおよび30代後半の不安定就労者」または「採用内定を取り消されて就職先が未定の学生等」を、平成23年度末(今年3月31日まで)までに正規雇用した事業主が、その後も引き続き正規雇用を行っている場合に、一定期間ごとに支給されるものです。

◆奨励金の4類型
 それぞれの類型について対象年齢等の要件がありますので、ご注意ください。
(1)「トライアル雇用活用」型
 ハローワークの紹介でトライアル雇用として雇い入れ、トライアル雇用終了後、引き続き同一事業所で正規雇用する場合です。
(2)「直接雇用」型
 ハローワークに奨励金の対象となる求人を提出し、ハローワークの紹介で正規雇用する場合です。
(3)「有期実習型訓練修了者雇用」型
 「有期実習型訓練修了者」を正規雇用する場合です。
(4)「内定取消し雇用」型
 ハローワークに奨励金の対象となる求人を提出し、ハローワークの紹介により、採用内定を取り消されて就職先が未定の新規学校卒業者を正規雇用する場合です。

◆奨励金の支給額
 支給額は次の通りです。
(1)第1期:25万円(中小企業は 50万円)
 正規雇用開始日から6カ月経過後、1カ月以内に申請を行います。
(2)第2期:12万5,000円(中小企業は 25万円)
 正規雇用開始日から1年6カ月経過後、1カ月以内に申請を行います。
(3)第3期:12万5,000円(中小企業は 25万円)
 正規雇用開始日から2年6カ月経過後、1カ月以内に申請を行います。

◆申請をご検討の場合はお早めに
 冒頭に記載した通り、この奨励金には「平成23年度末(今年3月31日まで)までに正規雇用した事業主が、その後も引き続き正規雇用を行っている場合」との要件がありますので、申請をご検討の場合はお早めにご連絡ください。


「雇用調整助成金」「中小企業緊急雇用安定助成金」の新特例

◆新特例の概要
 東日本大震災の影響を受けた事業主に対して、「雇用調整助成金」「中小企業緊急雇用安定助成金」に関する新しい特例が設けられました。
 震災後において徐々に生産量などが回復していた場合でも、震災前と比較すると依然として「10%以上」低い水準の場合には、本助成金を利用することができます。

◆特例対象事業主
(1)被災地事業主
 青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉、新潟、長野の災害救助法適用地域に所在する事業所の事業主です。
(2)被災地関連事業主
 上記(1)の事業所と一定規模以上(助成金を受けようとする事業主の総事業量の3分の1以上)の経済的関係を有する事業所の事業主です。
(3)2次下請等事業主
 上記(2)の事業主と一定規模以上(助成金を受けようとする事業主の総事業量の2分の1以上)の経済的関係を有する事業所の事業主です。

◆特例の具体的内容
 生産量または売上高の減少の確認について、最近3カ月の平均値と、(1)その直前の3カ月、または(2)前年同期との比較に加えて、(3)前々年同期との比較も可能です。
 これらは、平成24年3月11日から平成25年3月10日までに特例の利用を開始する場合に適用されます。

◆その他の注意点
 なお、震災の影響を受けた事業主などへの特例のうち、生産量または売上高の確認期間を「最近3カ月」から「最近1カ月」とする特例措置は、平成24年3月10日で終了しました。
 ただし、円高の影響を受けている事業主は、生産量などの確認期間を「最近3カ月」から「最近1カ月」とする特例を引き続き利用することができます。


労務問題をめぐる最近の裁判例から

◆派遣社員への慰謝料支払いを命令(2月10日判決)
 大手電機メーカーの子会社(愛知県)で働いていた元派遣社員の2人(別の会社から派遣)が「派遣切り」にあったとして、直接雇用と慰謝料の支払いを求めていた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は一審判決(計約130万円の支払いを命令)を支持する判決を下しました。
 一審(名古屋地裁)では、「賃金の高さなどを理由に突然の派遣切りを行っており、著しく信義にもとる対応である」として、会社側の不法行為を認めた一方、派遣社員と同社の間に直接の雇用契約があったとは認めていませんでした。

◆コンサル会社社員の長時間労働による精神疾患を認定(2月15日判決)
 精神疾患を発症したのは長時間労働が原因であるとして、建設コンサル会社(東京都)の社員が会社に対して損害賠償(総額約660万円)などを求めていた訴訟の判決があり、大阪地裁は男性側の主張を認め、会社側に440万円の支払いを命じました。
 この男性は、遅くとも2002年12月に精神疾患を発症しましたが、2002年の時間外労働時間が月平均約135時間となっていました。
 裁判長は、「上司らは長時間労働や健康状態の悪化を認識しながら、負担を軽減させる措置をとっておらず、安全配慮義務違反である」としました。

◆個人業者を「労働者」と認定(2月21日判決)
 音響機器メーカーの子会社(神奈川県)が、機器修理を行う個人業者(会社と業務委託契約を締結)の労働組合との団体交渉を拒否したことが「不当労働行為」と認定されたため、認定を行った中央労働委員会の救済命令取消しを求めていた訴訟の上告審判決があり、最高裁(第3小法廷)は、「業務実態から業者は労働基準法上の労働者に該当する」との判断を下しました。
 上記の労働組合は、2005年1月に最低保障賃金を月30万円とすることなどを求めていましたが、子会社側は「会社が雇用している労働者の組合ではない」として団体交渉に応じませんでした。
 しかし、最高裁は「子会社の指定する方法に従って指揮監督を受けて労務を提供し、時間的にも拘束されている」、「個人業者が基本的には労働者に該当するとの前提で、なお独立の事業者の実態があると認められる特段の事情があるか否かを再審理すべき」としました。


「65歳まで再雇用義務付け」法案を国会に提出へ

◆政府が閣議決定
 希望者全員を65歳まで再雇用する制度の導入を企業に義務付ける「高年齢者雇用安定法改正案」が、3月9日に国会に提出されました。
 来年4月の施行に向けて、今国会での成立を目指すとされていますが、成立した場合は、企業にとって大きな負担となります。

◆改正法案の概要
 改正法案の概要は、次の通りです。
 (1)継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止
 継続雇用制度の対象となる高年齢者を、事業主が労使協定で定める基準によって限定できる仕組みを廃止します。
 (2)継続雇用制度の対象者が雇用される企業の範囲の拡大
 継続雇用制度の対象となる高年齢者が雇用される企業の範囲を、グループ企業にまで拡大する仕組みを設けます。
 (3)義務違反の企業に対する公表規定の導入
 高年齢者雇用確保措置義務に関する勧告に従わない企業名を公表する規定を設けます。
 (4)「高年齢者等職業安定対策基本方針」の見直し
 雇用機会の増大の目標の対象となる高年齢者を65歳以上にまで拡大します。

◆経過措置の内容
 企業にとっては人件費の負担が大きくなるため、改正法案においては、経過措置が設けられています。
 すなわち、男性の年金支給開始年齢が61歳となる2013年度から、最終的に65歳になる2025年度まで「12年間」をかけて、段階的に企業への義務付けを進めるとしています。
 企業としては、改正法施行を見据え、対策を考えていく必要があります。


高年齢期の「働く意欲」と「活躍の場」

◆高年齢期における働く意欲
 厚生労働省が「第6回 中高年者縦断調査」の結果を発表し、60~64歳の人のうち、5割超の人が「65歳以降も仕事を続けたい」と考えていることがわかりました。
 また、70歳以降でも3割近くの人が仕事をしたいと望んでおり、働く意欲は高年齢期となってもかなり高いようです。
 働く目的は、「年金以外に収入が必要である」、「健康を維持したい」、「社会とのつながりを求めたい」など多様になっています。

◆「中高年者縦断調査」とは?
 この調査は、毎年同じ人を追跡し、「健康」「就業」「社会活動」などの変化の過程について継続的に調査するもので、2005年11月に第1回目が実施されました。
 今回は、50代をどのように過ごせば高年齢期に充実した生活を営むことができるか、特に団塊世代を含む60歳以上(60~64歳)の男女に焦点を当てて、就業意識、就業実態、健康状態について分析しています。

◆実際に収入を伴う仕事をしているか
 また、株式会社インテージでは、「団塊世代の男性のライフスタイル」に関する調査を実施しました。62~64 才の団塊世代の男性800名が回答しています。
 まず、団塊世代の男性に現在の就労状況を尋ねたところ、下記の通りの結果となっており、収入を伴う仕事をしている人は61.0%で、そのうち約8割の人が「週に4~5日以上働いている」こととなっています。
 (1)働いていない…39.0%
 (2)働いている(ほぼ毎日)…27.1%
 (3)働いている(週に4~5日)…22.1%
 (4)働いている(週に2~3日)…8.1%
 (5)働いている(週に1日程度)…1.8%
 (6)働いている(それ以下)…1.9%

◆活躍する「場」の提供
 健康で働く意欲が高い高年齢者に対して「活躍の場」を提供することは、少子高齢化により労働力不足が進行しつつある日本にとって、ますます重要になってくるでしょう。


4月からスタートする新しい「在宅介護」

◆床ずれ対処や血圧チェックも
 この4月から「24時間体制」の介護訪問サービスがスタートすることとなり、在宅介護のいわば「切り札」として注目されています。
 新設される「定期巡回・随時対応サービス」は、住み慣れた地域で暮らし続けることができる在宅ケアサービスとして国が推進しているものです。
 生活支援(食事、服薬確認、排泄介助など)のほか、床ずれ対処や血圧チェックなどを、まさに「24時間体制」で提供するものです。

◆従来との違いは何か?
 従来の訪問介護との大きな違いは、訪問の回数と時間です。
 従来の訪問介護では1日1~2回で、1回あたりの訪問時間は「30分~1時間」程度でした。しかし、新サービスでの訪問時間は「10~15分」程度と短くなっています。ただし、自分の生活リズムに合わせて夜間や早朝でもサービスを受けることができます。
 利用者の自己負担は定額制で、原則として1日何度利用しても負担額は変わりません。

◆導入に伴う問題点は何か?
 1つ目は「事業所の採算」の問題です。新サービスでは、訪問回数にかかわらず報酬が1カ月単位で決定するため、訪問先ごとの移動距離が長くなると効率が悪くなり、ガソリン代などの負担も重くなります。
 2つ目は、「担い手の確保」の問題です。人が集まりにくのが介護業界の実情であり、これまでは採算が取れていた場合でも、利用制限がなくなってしまうと、ヘルパーの負担が増えることが懸念されています。


「ディベート」の技術を仕事にも役立てる
 
◆「ディベート」のメリットとは?
 ディベートは、ルールに則り、あるテーマに対して肯定側と否定側に分かれ、相手を論破するものです。
 (1)自らの主張を明らかにする「立論」、(2)相手の主張に対する「質問」、(3)相手の主張に対する「反論」で構成されており、この技術を手に入れることができれば仕事にも役立つことでしょう。
 一度、社内でも実施されてみてはいかがでしょうか?

◆準備が大切
 まず、「立論」では資料を集めて読み込み、原稿を作成します。周りから高い評価を得るためには、決められた持ち時間の中で、相手の主張をよく理解し、かみあった「質問」や「反論」をしなければなりませんので、様々な能力が問われます。
 切り返しが必要な議論は苦手と感じる人もいますが、「アドリブが上手ということよりも、しっかりと調べ、学習をして、主張や想定できる反論をよく練るなど、準備することが大切」だと言われています。

◆半年間は継続する
 ディベートの専門家は、「ディベートは1回経験するだけでも効果はあるが、本来は実践を繰り返し行って反省や改善をしていくものであるから、半年は継続してほしい」と言っています。
 ディベートは自分の意見を述べるだけでなく、異なる立場の人の考えをしっかり聞くのにも役立つものです。社内でも、社内以外でも良いですから、一度経験してみる価値があるのではないでしょうか。


男女間の賃金格差が過去最小に その要因は?

◆上昇する女性の平均賃金
 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば、2011年の一般労働者(パートを除く)の平均賃金において、男女間の賃金格差が過去最小となったそうです。
 男性が前年と同じ32万8,300円、女性は前年比1.9%増の23万1,900円でした。女性の賃金は2000年以降おおむね増え続けています。

◆女性の賃金上昇の要因(1)
 女性の賃金上昇の背景には、成長分野である「サービス業」で働く人の増加があるようです。
 例えば、「教育・学習支援業」では30万7,400円(前年比2.6%増)、「医療・福祉」では24万7,000円(同1.5%増)となりました。

◆女性の賃金上昇の要因(2)
 男性正社員の賃金は40代前後で前年より減る一方、女性正社員の賃金は60歳未満のすべての年齢層で前年比0.1~2.9%増加しています。
 女性が企業の主要ポストに就くケースが増えたことも、賃金上昇につながっているようです。

◆女性社員の育成に関して
 また、公益財団法人日本生産性本部から「第3回 コア人材としての女性社員育成に関する調査」の結果が発表されていますが、役員と課長(相当職)の女性の割合が、前年に引き続き増加したそうです。ただし、部長(相当職)の割合は若干減少しています。
 また、3年以内に課長(相当職)になる可能性のある職位の女性の割合は、2年前と比べ大幅に増加しています。

◆女性育成の課題は?
 上記の調査では、女性育成の推進上の課題としては、「女性社員の意識」が7割以上と最も高くなっていますが、「経営者、管理職、男性社員の理解・関心が薄い」の割合も前年より増加しています。
 また、効果のあった施策としては、「女性社員への教育・研修参加機会の拡大」が前年から大きく増加したほか、「女性社員だけを対象にした研修」「管理職候補の女性を対象にした意識喚起のための研修」に取り組む企業も増えているようです。

2012/03/01

3月の事務所便り

最近の労働関係の裁判例から

 ◆「期間満了を理由とする雇止め」をめぐる裁判例
 京都市にある大学が、期間満了を理由として雇用契約を更新しなかったのは不当であるとして、元助手の女性が雇用の継続などを求めていた訴訟は、大学がこの女性を今年4月から新たに1年間雇用する(契約更新なし)との内容で、京都地裁で和解が行われました。(2011年12月22日)
 この女性は、2007年4月から「契約期間3年」で勤務していましたが、2010年3月末に雇止めされました。採用時に「よほどの不祥事がなければ1回は契約更新される」との説明を受けていたことから、提訴していたものです。
 女性は「教員の使い捨てに異議を申し立てたかった。非正規教員の問題は全国で広がっているが多くの教員は泣き寝入りしている」と話しており、大学側は「裁判の長期化は望ましくないと判断した」と話しているそうです。

 ◆「過労死」をめぐる裁判例
 新聞社の記者だった男性が糖尿病の悪化により死亡したのは過労が原因だったとして、この男性の父親が労災と認定しなかった国の処分の取消しを求めていた訴訟(控訴審)で、東京高裁は、一審の東京地裁判決(請求棄却)を支持し、控訴を棄却しました。(2012年1月25日)
 裁判長は、業務内容を「精神的・身体的に著しく負担が大きかった」と認定しましたが、ストレスと糖尿病悪化の関係は「医学的知見が定まっていない」とし、業務と死亡との因果関係を否定しました。
 この男性は1984年に入社し、1997年6月に糖尿病の合併症が原因で死亡しました。直前の同年5月までの半年間の時間外労働は、月平均約134時間だったそうです。

 ◆「育休に伴う解雇」をめぐる裁判例
 育児休業の取得を理由に解雇されたのは違法であるとして、埼玉土地家屋調査士会の元社員の女性が解雇無効の確認などを求めていた訴訟で、さいたま地裁は、同会が請求を認める「認諾」を表明して審理が終結しました。職場復帰と同会および同会会長が慰謝料165万円を女性に支払うことが決まったそうです。(2012年2月2日)
 原告側の代理人弁護士は「泣き寝入りせずに闘った結果。より働きやすい職場になってもらいたい」と話しているそうです。
 この女性は2005年8月に事務職として入社し、2009年9月に妊娠後、切迫流産の危険があったため数日間休みましたが、同年11月以降、同会役員らに退職を勧められました。2010年4月から産休と育休を取得し、2011年5月18日に復帰すると、そのまま解雇されていました。


「企業の採用基準」と「学生のアピールポイント」

 ◆求人企業と学生を対象に調査
 求人情報サイトを運営しているエン・ジャパン株式会社では、求人企業(635社が回答)と2013年3月に卒業予定の学生(2,221人が回答)を対象に実施したアンケート調査の結果を発表しました。
 企業側が考えている採用基準と学生側のアピールポイントには、わずかにギャップが見られるようです。

 ◆企業はどのように考えているか?
 企業による「自社の採用基準」ベスト5は次の通りでした。
(1)主体的・積極的に行動できる(71.0%)
(2)他者と協調することができる(36.7%)
(3)チャレンジ精神がある(30.1%)
(4)明るく感じの良い振る舞いができる(26.3%)
(5)ストレス耐性が高い(17.6%)

 ◆学生はどのように考えているか?
 学生が想像する「企業の採用基準」ベスト5は次の通りでした。
(1)主体的・積極的に行動できる(37.7%)
(2)チャレンジ精神がある(10.9%)
(3)他者と協調することができる(10.4%)
(4)明るく感じの良い振る舞いができる(7.3%)
(5)礼儀やマナーがしっかりしている(6.6%)

 ◆学生のアピールポイント
 そして、学生が考えている「選考で最もアピールしたいポイント」ベスト5は次の通りでした。
(1)他者と協調することができる(20.5%)
(2)継続性がある(14.6%)
(3)主体的・積極的に行動できる(11.4%)
(4)明るく感じの良い振る舞いができる(10.1%)
(5)目標達成への意識が高い(9.0%)


中小企業の「後継者不在」の状況は?

 ◆約3分の2が「後継者不在」
 株式会社帝国データバンクでは、後継者の実態について分析可能な信用調査報告書(2008年以降)のある約41万社を対象に国内の後継者不在企業の実態を分析し、その結果が発表されました。
 国内企業の約3分の2に相当する企業(65.9%)が「後継者不在」となっているそうです。

 ◆地域別に見るとどうか?
 この調査によれば、調査対象企業(40万8,954社)のうち、後継者不在企業は26万9,488社です。
 地域別に見てみると、「後継者不在率」の高い地域は、上位から「北海道」(71.8%)、「中国」(71.3%)、「近畿」(68.6%)、「関東」(67.9%)、「中部」(65.6%)となっています。
 なお、沖縄県では実に81.4%となっており、都道府県別で唯一、8割を超える結果となっています。

 ◆業種別に見るとどうか?
 また、別に見てみると、「後継者不在率」の高い業種の上位5つは、「サービス業」(72.1%)、「建設業」(69.6%)、「林業・狩猟業」(69.1%)、「不動産業」(68.0%)、「卸売・小売業、飲食店」(64.8%)となっています。

 ◆後継者不在の原因は?
 中小企業における「後継者不在」の原因としては、主に次のことが挙げられます。
(1)「後を継ぐ子がいない」
   …少子化により、多くの企業には後継する子自体がいないことが原因にあります。
(2)「子が後を継がない」
   …子が「厳しい経営環境にあえて飛び込む必要はない」と考えていることが原因にあります。
(3)「子が後を継げない」
   …子が会社を継ごうとしても「経営能力」が備わっていないことが原因にあります。


「『競業他社への転職禁止』の契約は無効」との判決

 ◆非常に大きなインパクト
 今年1月上旬、外資系の大手生命保険会社が同社の執行役員と交わした契約条項(退職後2年以内に競合他社に就業するのを禁止し、違反した場合は退職金を支給しない)の有効性が争われた訴訟の判決がありました。
 この判決内容は非常にインパクトのあるものであり、新聞紙上等でも大きく報道されました。

 ◆退職金3,000万円の支払いを命じる
 東京地裁は、次のように判断し、元執行役員男性の請求通りに、会社に対して退職金(約3,000万)の支払いを命じました。
(1)「情報の流出を防ぐ目的で競合他社へ転職を禁じるのは過大」
(2)「職業選択の自由を不当に害している」
(3)「契約条項は公序良俗に反して無効」
 原告側弁護士によれば、外資系企業では上記のような条項を交わすケースが多く、「名ばかり管理職とされる執行役員の転職を安易に禁じることに警鐘を鳴らす判断」としています。

 ◆判断のポイントは?
 一般的に、上記のような「競業他社への転職禁止」の契約は、優秀な人材とノウハウの流出防止を目的に締結されます。
 過去にも、競合他社への転職について争われた裁判例があります。それらの判断のポイントは、次の通りとされています。
 (1)競業他社への転職を希望する者の会社内での地位が高ければ高いほど、転職が認められない(競業避止義務を負う)傾向にある。
 (2)転職先の競業会社の内容・場所も考慮されており、それらが近ければ近いほど転職が認められない(競業避止義務を負う)傾向にある。
 競業他社への転職禁止に関する契約を従業員と締結する場合、上記のことを考慮すべきだと言えるでしょう。


新入社員の意識を探る調査の結果

 ◆入社後半年の意識は?
 日本生産性本部は、2011年度の新入社員に対し、入社半年後の意識をたずねた調査の結果を発表しました(今年1月11日)。

 ◆7割以上の男性が「育休を取得したい」
 今回の調査から新設された「子どもが生まれたときには、育児休業を取得したい」とする質問に「そう思う」と回答した割合は、男性で72.8%、女性で95.8%、全体で79.9%でした。

 ◆「若いうちはフリーターでも良い」が増加
 「若いうちならフリーアルバイターの生活を送るのも悪くない」とする設問に「そう思う」との回答は、2004 年以来ほぼ減少傾向にありましたが、前年比11.3 ポイント増加して35.9%になりました。

 ◆転職に関する意識は?
 「条件の良い会社があれば、さっさと移るほうが得だ」に対し、「そう思う」とする回答が前年の秋の調査より12.4 ポイント増加して40.7%となりました。
 また、転職に関して自身の考えを選択する4者択一の設問では、「転職しないにこしたことはない」と回答する割合は28.5%で、同調査より2.7 ポイント増加しました。

 ◆震災の影響は?
 自身の気持ちについて近いものを選択する設問で、「3 月11 日の東日本大震災が起きたことによって、あなたのキャリアプランに影響はありましたか」に対し、「そう思う」とする回答が12.6%で、「そう思わない」とする回答が87.4%でした。


「職場におけるパワハラ行為」の定義を明確化

 ◆初めて「パワハラ」の定義を明確化
 厚生労働省のワーキンググループは、職場におけるパワー・ハラスメント(パワハラ)に該当する可能性のある行為を6つに類型化した報告書をまとめました。
 この報告書では、パワハラの定義が初めて明確化されるとともに、企業が取り組むべき対策についても紹介しています。

 ◆パワハラとはどのような行為か?
 パワハラは、一般的に「職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に業務の適切な範囲を超えて、精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を悪化させたりする行為」とされています。
 上司から部下への「いじめ」や「嫌がらせ」を指して使われる場合が多いのですが、人間関係や専門知識などで優位な立場にある同僚や部下から受ける嫌がらせなども含まれるとされています。

 ◆パワハラに該当しうる行為(6分類)
 今回の報告書では、職場のパワハラに該当しうる行為について、次の6つに分類しています。
(1)暴行・傷害などの「身体的な攻撃」
(2)侮辱や暴言などの「精神的な攻撃」
(3)無視などの「人間関係からの切り離し」
(4)遂行不可能なことへの強制や仕事の妨害などの「過大な要求」
(5)能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることなどの「過小な要求」
(6)私的なことに過度に立ち入る「個の侵害」
 ただ、職場におけるパワハラは「業務上の指導との線引きが難しい」との意見もあり、報告書では(4)~(6)については「業務の適正な範囲内」であれば本人が不満に感じたとしてもパワハラには該当しないとしています。

 ◆予防と解決のために積極的な取組みを
 企業におけるパワハラの予防と解決には、組織トップによるメッセージや、就業規則での規定化、予防・解決のためのガイドラインの作成、教育研修の実施、企業内外における相談窓口の設置等が効果的です。
 パワハラ被害を受けた従業員が、人格を傷つけられたこと等により心の健康を悪化させ、休職・退職に至るケースや、周囲の人たちの意欲が低下し、職場全体の生産性に悪影響を及ぼすケースもあり、パワハラが企業にもたらす損失は非常に大きいと言えます。
 そのため、パワハラ問題への取組みを企業が積極的に進めることが求められます。


病気なのに無理して出勤するとどんな影響があるか?

 ◆風邪をひいても休まない?休めない?
 ある気象情報会社の調査によれば、平均的な日本人は1年に2回以上風邪をひくものの、熱が38度以上まで上がらないと会社や学校を休まないとのことです。
 風邪で休まない人の割合は年齢が上がるとともに高くなり、40歳代では35.9%にも達するそうです。

 ◆出勤は「美徳」なのか?
 上記のことについて、人事管理に詳しい専門家は「結果重視の成果主義が主流になってきたとはいえ、日本人が持つ“多少のことがあっても出勤することが美徳だ”という考えの影響が大きく残っている」と言います。
 多くの企業において、「プロセスにおける貢献度」や「チーム全体での成果」を重視する人事評価制度が導入されているため、突発的な休みが言い出しにくい環境になっていることも影響しているようです。

 ◆マイナス面に注目する動き
 最近では、新型インフルエンザの流行などをきっかけに、無理をして病気の社員を働かせるマイナス面にも注目される動きが出てきました。
 社員だけではなく、扶養家族にも無料でインフルエンザの予防接種を実施したり、短時間だけ会社を抜けて病院に行くことのできる制度を導入したりする企業もあるようです。

 ◆「プレゼンティズム」の導入
 出社したとしても体調が悪くて普段と同様の成果が上げられず、企業に損害を与えてしまうという考え方は、経営学で「プレゼンティズム」と呼ばれているそうです。
 例えば、花粉症であれば4.1%、風邪であれば4.7%も仕事の効率が落ちるそうです。企業では、組織全体の損害をいかに抑えるかが課題となります。

 ◆生産性を維持しつつリスクヘッジも
 約8割の家庭が常備しているといわれる総合感冒薬(風邪薬)の売上は年々縮小していますが、これは、頭痛や発熱など風邪の初期症状が表れると、すぐに病院に駆け込む人が増えたことが影響しているそうです。
 日本のビジネスパーソンには、「初期症状で病院に行く」という考え方が浸透しており、今後は、生産性を維持しながらリスクヘッジにも役立つ「プレゼンティズム」を検討する企業も増えていきそうです。


「フリーアドレス制」導入目的の変化

 ◆オフィスの省スペース化の手段として
 オフィスに個人用の席を設けず、仕事に応じて座る席を決める「フリーアドレス制」は、オフィスの省スペース化の手段として広がってきました。
 しかし、最近では、社員間のコミュニケーションを活発化させる仕組みとしても注目され始めているようです。
 
 ◆コミュニケーション活発化を目指して
 これまで、「フリーアドレス制」導入の主目的は、オフィス賃料の削減にあり、外出が多い営業部門などで席数を減らしていました。しかし、昨今は事情が異なってきており、社員間のコミュニケーションを促すために導入する企業が増えているようです。
 ある大学が、20~50歳代の社会人に対して職場の雰囲気について聞いたところ、「社員同士で情報を共有し合う雰囲気がある」(約12%)、「人を育てようとする雰囲気がある」(約9%)などの回答がいずれも低水準にとどまっていました。
 そこで、このような状況を改善する手段の1つとして、改めて「フリーアドレス制」が注目されているのです。

 ◆社員の管理に難しさも
 この「フリーアドレス制」導入成功の鍵は、「中間管理職」にあると言われています。
 ある企業の部長職の男性は「数多くいる部下と毎日顔を合わせないので、正直把握しきれない」と言います。また、別の企業では20~30歳代の社員が固まって座ってしまうため、若手社員の指導ができないことが問題になっているそうです。
 こういった企業では、日常的なコミュニケーションに支障が出ないよう、部署ごとに範囲を決め、その中で席を自由にする「半」フリーアドレス制を導入したり、最低1日1回は朝礼の時に顔を揃えて仕事を確認し合ったりするなど、対面コミュニケーションを取れる工夫を行っています。

 ◆残業削減にも大きな効果
 フリーアドレス制には、コスト削減やコミュニケーション活発化の他にも、自分で管理する書類などの削減につながる、仕事環境を変えることにより生産性が向上するといったメリットもあります。
 また、席を選ぶ際にその日の仕事の内容が明確になるため、仕事の効率が上がって残業が減ったなどのケースもあるようです。


7月1日から「改正育児・介護休業法」が全面施行

 ◆100人以下の事業主にも適用
 男女ともに仕事と家庭が両立できる働き方の実現を目指し、2009年に「育児・介護休業法」が改正されました。
 これまで、従業員100人以下の事業主には、下記の制度の適用が猶予されていましたが、7月1日よりすべての事業主に適用されますので、注意が必要です。

 ◆短時間勤務制度(所定労働時間の短縮措置)
 (1)事業主は、3歳に満たない子を養育する社員について、本人が希望すれば利用することのできる「短時間勤務制度」を設けなければなりません。
 (2)「短時間勤務制度」は、就業規則に規定しているなど制度化されている必要があり、運用されているだけでは不十分です。
 (3)「短時間勤務制度」は、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含めなければなりません。なお、1日の所定労働時間を6時間とする短時間勤務を選択することができる制度を設けたうえで、その他、例えば1日の所定労働時間を7時間や5時間とする措置や、隔日勤務で所定労働日数を短縮する措置などを併せて設けることも可能です。

 ◆所定外労働の制限
 (1)3歳に満たない子を養育する社員が申し出た場合、事業主は、所定労働時間を超えて労働させてはなりません。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合、事業主は従業員の請求を拒むことができます。
 (2)所定外労働の制限の申出は、1回につき、1カ月以上1年以内の期間について、開始予定日と終了予定日等を明らかにして、開始予定日までの1カ月前までに事業主に申し出る必要があります。また、この申出は何回でもすることができます。

 ◆介護休暇について
 要介護状態(負傷・疾病または身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたって常時介護を必要とする状態)にある家族の介護や世話を行う社員は、事業主に申し出ることによって、介護する家族が1人ならば年に5日、2人以上ならば年に10日まで、1日単位で休暇を取得することができます。

 ◆近づく全面施行を前に
 いずれの制度についても、新たに対象となる事業主はあらかじめ制度を導入したうえで、就業規則などに記載し、従業員に周知する必要があります。
 また、適用除外とできる社員の要件などにも注意が必要です。全面施行が近づいていますので、早急に導入に向けた準備が必要です。


派遣社員による育児休業取得の実態

 ◆大手派遣会社などによる支援
 派遣社員が育児休業(育休)を取得する動きが少しずつ広がっているようです。大手派遣会社などが、優秀な人材を確保するために様々な支援を始めたことが背景にあります。
 しかしながら、育休明けに派遣先が決まらないことが多いなど、課題も多くあります。派遣社員の出産・育児を後押しする環境づくりが、少子化対策の観点からも求められています。

 ◆支援の具体的内容
 派遣社員などの有期雇用者は、2005年の育児・介護休業法の改正により、一定の条件を満たせば、育休を取得できるようになりました。
 当初は、派遣会社の対応が遅れて利用は進んでいませんでしたが、ここ数年で徐々に増加し、利用者が大幅に増えた大手派遣会社もあるようです。
 中小の派遣会社では対応にばらつきがありますが、大手では、専門担当者を配置し、育休期間中も含めて相談に応じる体制を整えたり、復帰前に支援セミナーを開いたりするなど、積極的な支援を行うようになってきています。

 ◆派遣先での理解も必要
 しかし、派遣会社が支援に力を入れたとしても、復帰後の派遣先が決まらなければ意味がありません。厚生労働省の調査によると、2010年度において育児休業給付金を受給した人(約20万6,000人)のうち、有期雇用者は7,375人に過ぎませんでした。
 また、同省が2009年にまとめた調査で、派遣先約500社の管理職のうち、派遣社員でも育休を取得できることを知っていた人は約半数しかいないことからも、「派遣社員の育休取得」への理解は低いことがわかります。

 ◆課題の解決に向けて
 また、保育園の入園選考で、派遣先未定の派遣社員を「仕事をしている」とみなすか、「仕事がなくて求職中」とみなすかの明確な基準がなく、後者とみなして優先順位を下げる自治体もあるようです。
 派遣社員は、雇用主である派遣会社の他に、派遣先や行政の支援や理解が欠かせず、大きな課題となっており、今後の施策が期待されます。