2012/04/27

5月の事務所便り

改正された「労働者派遣法」の概要


◆法律名変更で「労働者の保護」を明確に
 派遣労働者の保護を目的とする「改正労働者派遣法」がついに成立しました。施行期日は「公布の日から6カ月以内」とされています。
 法律の正式名称も「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」から「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」に変更されました。
 改正法の主な内容は次の通りです。

◆事業規制の強化
 (1)日雇派遣(日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止(適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務の場合、雇用機会の確保が特に困難な場合等は例外)
 (2)グループ企業内派遣の8割規制、離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止

◆派遣労働者の無期雇用化や待遇の改善
 (1)派遣元事業主に、一定の有期雇用の派遣労働者につき、無期雇用への転換推進措置を努力義務化
 (2)派遣労働者の賃金等の決定にあたり、同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮
 (3)派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(いわゆるマージン率)などの情報公開を義務化
 (4)雇入れ等の際に、派遣労働者に対して、1人当たりの派遣料金の額を明示
 (5)労働者派遣契約の解除に際して、派遣元および派遣先における派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用負担等の措置を義務化

◆違法派遣に対する迅速・適格な対処
 (1)違法派遣の場合、派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなす
 (2)処分逃れを防止するため労働者派遣事業の許可等の欠格事由を整備


厚生労働省から発表された今年度の「労働基準行政の運営方針」

◆労務管理で注意すべき事項は?
 厚生労働省が「平成24年度 地方労働行政運営方針について」を発表しました。
 各都道府県の労働局では、この運営方針を踏まえつつ行政運営を図ることとしていますので、企業の労務担当者が気にしておくべき内容が盛り込まれています。

◆運営方針の内容
 発表された運営方針の項目は下記の通りです。なお、地方労働行政の展開にあたっての基本的対応は、「地方公共団体、労使団体等との連携を図るとともに、地域の実態把握、コスト削減等を通じた計画的かつ効率的な行政運営を推進する」とされています。
 (1)東日本大震災からの復旧・復興支援および円高への対応
 (2)総合労働行政機関として推進する重点施策
 (3)労働基準行政の重点施策
 (4)職業安定行政の重点施策
 (5)職業能力開発行政の重点施策
 (6)雇用均等行政の重点施策
 (7)労働保険適用徴収業務の重点施策
 (8)個別労働関係紛争の解決の促進

◆労働基準行政としての重点施策
 企業の労務担当者が最も気になるところである「(3)労働基準行政の重点施策」の項目には、次のことが挙げられています。
 ・「労働条件の確保・改善対策」…長時間労働の抑制や賃金不払残業の防止のための監督指導等の法定労働条件の確保、外国人労働者等の特定労働分野における労働条件の確保対策等を推進する。
 ・「最低賃金制度の適切な運営」…最低賃金の周知徹底を図るとともに、最低賃金引上げに向けた中小企業への支援を行う。
 ・「適正な労働条件の整備」…長時間労働の抑制および年次有給休暇の取得促進等を推進する。
 ・「労働者の安全と健康確保対策の推進」…労働災害防止対策を安全衛生対策の最重点課題とし、労働災害多発分野における対策、メンタルヘルス対策および過重労働による健康障害防止対策、石綿健康障害防止対策を推進する。
 ・「労災補償対策の推進」…労災保険の迅速・適正な処理、精神障害等事案および脳・心臓疾患事案に係る適正な処理を行う。


今年の新入社員はどんなタイプ?

◆平成24年4月入社の新入社員
 公益財団法人日本生産性本部の「職業のあり方研究会」では、平成24年4月入社の新入社員の特徴をまとめました。
 この研究会は学識経験者などで構成されており、就職・採用環境の動向等についての調査研究を行い、その年の新入社員の特徴をネーミングすることが恒例となっています。

◆今年は『奇跡の一本松型』
 発表された今年の新入社員のタイプは、『奇跡の一本松型』とのことです。『奇跡の一本松』(岩手県陸前高田市)とは、東日本大震災で発生した巨大津波にも耐えて生き残った松のことであり、復興に向けて多くの人に勇気を与えていると話題になりました。
 研究会では、「大卒予定者の就職内定率が過去3番目に低い(80.5%)という厳しい状況の中、就職戦線を乗り越えてきた若者たちの頑張りを賞賛したい」と、ネーミングの理由を説明しています。

◆過去のネーミングは?
 なお、平成18年~23年のネーミングは以下の通りです。
 ・平成18年『ブログ型』…ネット上での交流で、他者に自己認知や共感を求めたがる一方で、他人の評価で萎縮しやすい傾向もあり、暖かい眼差しと共感が育成のカギ。
 ・平成19年『デイトレーダー型』…景気回復での大量採用は売り手市場を形成し、就職しても細かい損得勘定でネットを活用して銘柄(会社)を物色し続け、売買を繰り返す(転職)おそれあり。
 ・平成20年『カーリング型』…働きやすい環境作りとばかりにブラシでこすり続けねば、止まったり方向違いとなったりのおそれあり。楽勝就職の一方で先行き不安の試合展開は本人の意志(石)次第。
 ・平成21年『エコバック型』…環境問題(エコ)に関心が強く、節約志向(エコ)で無駄を嫌う傾向があり、折り目正しい。小さくたためて便利だが、使うときには大きく広げる(育成する)必要がある。
 ・平成22年『ETC型』…性急に関係を築こうとすると直前まで心のバーが開かないので、スピードの出し過ぎに注意。IT 活用には長けているが、人との直接的な対話がなくなるのが心配。
 ・平成23年『はやぶさ型』…東日本大震災の発生により発表は見送り。


課長と一般社員の考えのギャップをどう埋める!?

◆意識の違いはどこから生じる?
 公益財団法人日本生産性本部では、管理職層と一般社員層(2011年6月以降における同法人主催の公開セミナー等の受講者)を対象にアンケートを実施し、先日その結果が発表されました。
 管理職層の回答の中から「課長職」のみの回答(478件)を、一般社員層の回答の中から「入社2年目社員から係長・主任・職場リーダークラスまで」の回答(381件)を抽出し、比較分析が行われています。
 多くの項目で、両者の意識にギャップが生じていることがわかりました。

◆コミュニケーションが取れているか?
 まず、「部下または後輩とのコミュニケーション」について、「取れていると思う」と回答した課長は79.9%でした。逆に、「上司とのコミュニケーション」について、「取れていると思う」と回答した一般社員は68.8%でした
 課長自身が「部下・後輩とはコミュニケーションが取れている!」と勘違い(?)されているケースがあるようです。

◆職場での情報共有がされているか?
 次に、「職場での有益な情報共有」について、課長のうち68.0%の人が「共有されていると思う」と回答したのに対し、一般社員のうち53.8%の人が「共有されていない」と回答しました。
 情報共有ができていると思っている割合は課長のほうが高くなっており、ここにもまたギャップが生じています。

◆部下の話をじっくり聴いているか?
 また、課長のうち85.6%の人が「部下の話をじっくり聴いている」と思っていますが、一般社員の30.4%は「自分の上司は話をあまり聴かない」と感じているようです。
 上司の側は部下の話を聞いているつもりであっても、部下の側はそのように感じていないことも多いようです。


学生は「大企業」「中堅中小企業」どちらを選ぶ?

◆インターネット調査の結果から
 株式会社ディスコから、2013年3月卒業予定の大学生(主に現大学3年生)を対象に行った就職活動に関するインターネット調査(回答者数1,290人)の結果が発表されました。
 これによると、大手企業を中心に就職活動をしている学生は「40.2%」、中堅中小企業を中心に活動している学生は「14.0%」でした。
 しかし、3年前のアンケートでは、活動の中心が大手企業の学生は「51.9%」、中堅中小企業が中心の学生は「5.9%」であり、ここ数年で、中堅中小企業も志望する学生は着実に増えています。

◆中堅中小でやりがいのある仕事を
 また、株式会社マイナビが実施した「2013年卒マイナビ大学生就職意識調査」でも、『中堅・中小企業志向』(「やりがいのある仕事であれば中堅・中小企業でもよい」「中堅・中小企業がよい」との回答割合)が2001年卒以降で最高の59.2%となっており、『大手企業志向』(「絶対に大手企業がよい」「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」との回答割合)の減少傾向が続いています。
 不透明な経済情勢が続くなか、大企業よりも、比較的若いうちから中心的な仕事を任される可能性が高い中堅中小企業の志望者が増えているようです。

◆転職理由のベスト3
 大手企業・中堅中小企業のどちらへの就職であっても、企業側が気になるのは、採用した社員の転職です。
 株式会社インテリジェンスが発表した「転職理由調査2012年版」の結果によれば、転職理由のベスト3は次の通りとなっています。
 (1)「会社の将来性が不安」(14.2%)
 (2)「他にやりたい仕事がある」(13.2%)
 (3)「給与に不満がある」(8.5%)と続きました。
 時間とお金をかけて採用・育成した社員をいかに定着させるかが、企業には問われるところです。


「有期労働契約」が変わる? 労働契約法改正の動向

◆改正案が閣議決定
 先日、「労働契約法改正案」が閣議決定されました。
 国会の状況により流動的ではありますが、厚生労働省は来春施行を目指すとしており、成立した場合は企業への影響も大きいと思われますので、今から注目しておきましょう。

◆改正案のポイント
 この改正案のポイントは、次の通りです。
 (1)5年を超えて反復更新された有期労働契約について、労働者からの申込みがあれば期間の定めのない労働契約へ転換させる仕組みの導入
 (2)「雇止め法理」の法制化
 (3)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

◆具体的な内容
 まず(1)については、反復更新により有機の労働契約が5年を超える場合が対象ですが、原則6カ月以上の空白期間(クーリング期間)がある場合には、前の契約期間と通算されないため、該当しないこととなります。
 次に(2)の「雇止め法理」は、有期労働契約を繰り返し更新することにより期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっている(あるいは有期労働契約の期間満了後にも雇用が継続されている)等により、有期雇用労働者の雇用関係継続への合理的な期待が認められるときに、雇止めを行う際には合理的な理由が必要となることです。また、雇止めが無効と判断された場合には、従前の労働契約が更新されたものとみなされることになります。
 また、(3)は、期間の定めがあることによって、有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件と相違する場合に、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮し、不合理と認められるものであってはならないというものです。


パート労働者へ社会保険適用を拡大へ

◆重要度を増すパート労働者
 企業内におけるパート労働者の役割は年々重要度を増しており、正社員並みの中核業務を任せる企業も多くなっています。
 正社員並みの中核業務を担当させるような企業においては、仕事が同じ正社員とパート労働者の賃金水準を同等にしたり、就業環境の整備を行ったりしています。

◆セーフティネットの強化
 このような状況下において、国は、被用者でありながら被用者保険の恩恵を受けられないパート労働者などの非正規労働者に社会保険を適用し、セーフティネットを強化することで、社会保険における格差を是正したいと考えました。
 そこで、政府は、パート労働者への社会保険の適用拡大を検討しています。2016年4月から、「週勤務時間20時間以上」「年収94万円(月収7万8,000円)以上」「勤務期間1年以上」で「従業員501人以上の企業で勤務」の人を社会保険適用の対象にするとし、さらに3年以内に対象の拡大を行うというものです。
 加入が進めばパートの将来への安心感は増しますが、企業の負担は大きくなるため(約800億円と推計)、反発の声があがっています。

◆負担軽減措置も検討
 今回の適用拡大をめぐり、厚生労働省では、高齢者医療費の拠出金などについて負担を軽減する特例措置の導入を検討しています。
 パート労働者が多い業界(外食、流通業など)を対象に、負担増の部分について健康保険組合の加入者が肩代わりするというものです。
 企業にとっては、今後の動きから目が離せません。


若年層雇用の問題点と対策

◆課題が山積!
 大学や専門学校を卒業して就職してもすぐに会社を辞めたり、就職できずにアルバイトや無職となってしまったりという人が多くなっています。
 それ以外にも、若年層の雇用対策については課題が山積しています。

◆新卒者等の就職内定率
 文部科学省・厚生労働省の集計によれば、今春卒業した大学生の就職内定率(2月1日時点)は過去3番目に低い80.5%でした。
 現時点でもまだ多くの学生が就職できずに就職活動を続けており、新卒者の就職環境は依然として厳しいようです。

◆「高年齢フリーター」の存在
 さらに、バブル崩壊後の就職氷河期(1993年以降)に卒業し、アルバイトなどを続けてきた人は現在40歳前後になっています。
 その影響で、いわゆる「高年齢フリーター」(35~44歳のフリーター)は過去最高の約50万人に上っています。なお、この世代に占めるフリーターの割合は2002年時点で1.6%でしたが、2011年には2.8%となっています。
 今後も、学卒で就職することができずに、フリーターとなる人の割合は高まっていくことが予想されます。

◆政府の雇用対策
 政府は、「トライアル雇用制度」や、「ジョブカフェ」など、若年層向けの雇用対策を進めていますが、「高年齢フリーター」等に対する支援は十分ではありません。
 新卒で就職後、3年以内に離職する人の割合は3割を超えているようです。「高年齢フリーター」を含めた若年層の雇用についてはさらなる対策が求められます。


厚生年金基金の現状と問題点

◆半数以上の基金が赤字!
 世間を騒がせているAIJ投資顧問による「年金消失問題」を受け、厚生労働省が行った厚生年金基金(以下、「基金」)に関する調査によると、全578基金のうち314基金において、年間の給付額が掛金(保険料)を上回ったということです(2011年3月期)。
 また、将来の年金支給に必要な積立金が10年未満になくなってしまうおそれのある基金が16もあり、今後、積立不足による企業の倒産なども出かねない状況です。

◆積立不足の要因は?
 積立不足の背景には、団塊世代の大量退職による年金受給者の増加があります。
 また、現役社員が年々減少傾向にあり、支給総額から掛金総額を引いた差額は約1,300億円(2010年度)にも上っており、今後はさらに拡大することが考えられます。

◆運用利回り設定の問題点
 将来の年金給付原資を確保するために必要な運用利回りについて、大企業においては一般的に「2~3%程度」となっているようですが、中小企業が中心の基金では、約9割が「5.5%」といった高水準に設定されているようです。
 こうした基金の中には、業績低迷により掛金を増やせない状態にあるケースが多くなっています。

◆運用難をどう乗り切るか
 約4割の基金では、積立金について企業年金分がまったくないうえに、公的年金分(代行部分)も不足しているとのことです。
 財政悪化に対処するために退職者が受給している企業年金の減額を行うことも考えられますが、受給者の「3分の2以上の同意」が必要となるなど手続き難しくなっています。
 そこで、厚生労働省では、企業年金の減額を認める要件を「過半数の同意」に下げる案を検討しており、現役世代への過度の負担を防止することを考えています。


厚生労働省「21世紀成年者縦断調査」の結果から

◆継続調査の9回目
 厚生労働省の「21世紀成年者縦断調査」は、同省が2002年10月末時点において20~34歳の男女を対象に毎年継続して実施しているもので、今回で9回目です。
 以下では、主な調査結果を見ていきます。

◆第2子の生まれた割合
 子のいる夫婦について、今回調査までの8年間に新たな子供が生まれた割合をみると、夫の休日における家事・育児時間が「6時間以上」の家庭では、「なし」の場合の6.8倍(67.4%)にも達しています。
 同省では、「子供とのふれいあいが楽しいと感じると、新たに子供が欲しくなるのでは」と分析しています。

◆正規雇用・非正規雇用の結婚への影響
 また、初めての就職が非正規雇用の場合、男女ともに正規雇用と比べて結婚する割合が低いこともわかりました。
 初職が非正規雇用だったの男性のうち、今回調査までに結婚経験がある人は40.5%で、正規雇用の場合(66.7%)よりもかなり低くなっています。
 女性についても、非正規雇用者の結婚経験は59.4%で、正規雇用者(74.7%)より低くなっています。

◆女性の仕事の継続
 次に、女性の結婚後の就業状況ですが、結婚前に仕事に就いていて、当時の仕事を「結婚後も続ける」と考えていた人のうち72%が、同じ仕事を継続しています。
 この傾向は出産後も同様であり、出産した後も現在の仕事を続けると考えていた場合、正規では85.6%が同じ仕事を継続しています。

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