2012/07/01

7月の事務所便り

不正受給問題が指摘される生活保護制度を見直しへ


 ◆生活保護の受給者数が過去最多
 厚生労働省によると、2012年2月時点の生活保護受給者数が約209万人に上り、現行制度下において最大となり、また、2012年度予算案では3兆7,000億円が計上され、国の税収の約1割を占めるまでに費用が増大しています。
 そのため、制度運用や審査基準が抱える問題点を指摘されるに至り、以下の対策の他、見直しに向け検討が進められています。

 ◆受給者の資産を金融機関の本店で一括照会へ
 生活保護受給申請者の資産調査について、これまで各福祉事務所が本人申告をもとに各地域の金融機関の支店に行っていましたが、効率が悪く正確でない等の問題点が指摘されていました。
 厚生労働省発表によると、今年12月より全国銀行協会の協力を受けて、銀行など金融機関の本店に預貯金残額を一括照会する仕組みへと改めるそうです。

 ◆ソフトの改良により「医療扶助」の不正受給を監視
 生活保護受給者の約8割に当たる169万人が受給する「医療扶助」は、窓口負担なしに医療機関で診療・投薬を受けられるため、医療過誤等の温床になっているとの指摘がありました。
 厚生労働省発表によると、不正受給の事例を識別するのに手間がかかっていたソフトを改良し、電子化されたレセプト(診療報酬明細書)をもとに瞬時に見分けられるようにし、今秋から全自治体に導入するそうです。

 ◆その他見直し案に挙げられた項目
 政府は、今秋策定する「生活支援戦略」で生活保護制度見直しの方針を打ち出す予定ですが、6月4日に行われた国家戦略会議でその原案が示されました。
 厚生労働省が作成した原案には、当面の対応として、(1)生活保護給付の適正化、(2)就労・自立支援の強化、今後検討を進めるものとして、(3)生活保護基準の検証・見直し、(4)自治体等の調査・指導権限等の強化、(5)「脱却インセンティブ」の強化(就労収入積立制度等)、(6)自治体とハローワークが一体となった就労支援の抜本強化等が挙げられています。


「熱中症」のリスクと効果的な対策

 ◆熱中症のリスク
 例年よりも早めにクールビズを始める企業もあり、今夏も例年程度の暑さとなるようです。新入社員も現場に配属されて初めての夏を迎えるケースもあるかもしれません。職場・作業場での熱中症対策はお済みでしょうか?
 熱中症と聞くと、軽いように思われがちですが、軽度の症状から短時間のうちに重症化して、死に至ることもあります。実際に記録的猛暑となった平成22年には、47人の方が職場での熱中症で亡くなっています。その他の年でも毎年20人前後の方が亡くなっています。
 また、亡くならないまでも重篤な症状となれば、その従業員が休んでいる間、ただでさえ人員不足の職場で他の従業員にしわ寄せがいきます。

 ◆梅雨明け直後が危ない
 熱中症発生のリスクが高いのは、梅雨明け直後の体がまだ暑さに慣れていない時期です。時間帯別では、午後2時から4時に最も多く発生しています。
 また、建設業、製造業などでは、作業環境によってはこの時期以外でも急に暑くなった日などは要注意です。午前中からのこまめな休憩や水分補給が重要です。また、午前中から12時頃までにも意外と注意が必要だそうです。

 ◆「めまい」「頭痛」「吐き気」を感じたら要注意
 熱中症の初期的症状としては、「体がだるい」「頭痛や吐き気がする」「めまいがする」といった状態が挙げられます。
 これらの症状を感じたら涼しいところで水分と塩分を摂り、症状が軽いと思われる場合でも、医師の診断を受けるようにしたほうが安全です。

 ◆従業員の健康状態の確認を
 従業員の健康管理という面からも、作業環境の見直し、その日の体調の確認や前日の深酒・寝不足等への指導、厚生労働省が示している基準に沿った作業計画の見直しが重要です。
 日頃の労働衛生教育について、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。


従業員の長期就業不能リスクに備える“GLTD”とは?

 ◆従業員の長期就業不能によるリスク
 近年、うつ病等のメンタルヘルス不全により休職される従業員が増えています。
 特に精神疾患によるものは改善までに長期間休職となることが多く、「会社を休む→有休を使い果たす→疾病休暇も使い果たす→労災保険や健康保険からの手当も終わる→無給の休業となる→従業員はローンや養育費の支払いに困る」という状態に陥ることが懸念されます。
 また、仮に会社が、労働基準法上問題がないと思われる解雇を行った場合でも、様々な労使間のトラブルから企業が訴えられるというリスクも発生します。

 ◆「GLTD」とは?
 こうした問題に対応できる、「GLTD」(団体長期障害所得補償保険:傷病による休職時に減少する給与所得を長期間補償できる唯一の保険制度)というものが、各損保会社から発売され、保険料も非常に安価なものからあるため利用する企業が増えているそうです。
 この制度の発祥はアメリカで、現在100名以上の企業で80~90%、100人未満の企業でも60%程度が導入し、広く普及しているのだそうです。
 日本では1994年に保険として認可されました。

 ◆採用時の検査や人事給与制度の改定とセットで
 この「GLTD」とセットで、採用時の検査(多くはウェブ上で質問に回答していく形式となっており、短時間・低価格となっている)と企業へのアドバイスを提供する会社も増えているようです。
 また、人事給与制度の簡素化を行うために、会社の休業補償制度を廃止するのに併せて「GLTD」を導入するという事例もあるようです。
 こうした保険を利用することで、従業員の会社に対する満足度もアップしそうですね。


2013年度新卒採用でFacebookを活用する企業
 
 ◆47%が「効果あり」
 企業が採用活動においてFacebookなどのソーシャルメディアを活用する場面が増えてきています。
 株式会社ギブリーが実施した2013年度新卒採用における人事担当者の意識調査(2013年度新卒採用においてFacebookを活用している143社が回答)の結果によると、新卒採用ツールとして「効果あり」と回答した企業が約47%に及ぶことがわかりました。

 ◆Facebook を利用したことによる効果
 上記調査において、「Facebookページを運用することで、どのような効果があったか」という質問に対しては、以下の項目が挙げられています。

(1)社内のことや社員のことがわかってもらえた(41.3%)
(2)求人広告ではできないプロモーションができた(28.7%)
(3)採用ブランディングになった(18.2%)
(4)母集団が形成された(13.3%)
(5)会社の認知度が上がった(11.9%)
(6)求人広告では集まらない層の学生が来た(7.0%)

 求人広告ではできないような双方向のコミュニケーションにより、学生に自社の“生きた情報”を発信し、理解してもらうことに一定の効果が得られたようです。

 ◆ページ制作に関しては自社制作と外注が約半数
 また、Facebookページの制作についての質問に対しては、半数以上が外注としており、自社での作成は47.5%という結果となっています。
 外注先としては、「ソーシャル採用に特化した会社」が、求人広告・人材紹介などの新卒採用支援会社やWeb制作会社、広告代理店より多いようです。

 ◆今後も増加することが予想される
 2013年度新卒採用においては、Facebookをはじめとしたソーシャルメディアの活用が企業側、学生側ともに注目されました。「この波に乗り遅れまい」と試行錯誤しながら利用を始めた人事担当者も多かったのではないでしょうか。
 利用者数が増加している中で、今後も採用活動における活用は増加していくことが予想されます。より効果的なツールにしていくためには、さらに企業独自の工夫が必要になっていくことでしょう。


「少子化」に対する政府の取組み

 ◆2011年の出生率が「1.39」で頭打ち
 先日、厚生労働省が2011年の「人口動態統計」を公表しましたが、これによると、合計特殊出生率(女性1人が生涯に産むと想定される子どもの数)は「1.39」で前年と同じだったそうです。
 また、出生数は105万698人(前年比2万606人減)で過去最低を記録しており、人口の自然減は初めて2万人を超えました。
 このままだと日本は長期的な人口減少傾向となるのは確実で、少子化対策の練り直しが急務となっています。このことは、今後の子育て支援や職場の環境改善などの政策議論にも影響を与えると思われます。

 ◆「雇用」と「育児環境」に不安
 2011年における若年層(15~24歳)の完全失業率は8.2%で、非正規社員の割合は5割に達しました。厚生労働省の見解によると、「若年層の雇用や賃金が不安定なため、結婚や出産をためらう若者が多い」とのことです。
 以上のことから、共働き世帯が増加している一方で、保育所の不足も問題となっています。保育所は2011年4月の時点で2万3,385カ所(前年度比1.4%増)となっているものの、全国の待機児童数は2万5,556人(同719人減)でほぼ変わらず高止まりとなっています。
 また、待機児童数は最初から預けることをあきらめる人も含めると100万人に上るとも言われています。

 ◆政府による取組み
 今年7月1日から「改正育児・介護休業法」が全面施行となり、従業員100人以下の事業主にも適用されます。また、「社会保障・税一体改革」関連法案では、待機児童の解消を目的とした「総合こども園」の創設は見送られる動きがありますが、「認定こども園」を拡充・存続させ、財政支援などを強化することを検討しています。
 女性が安心して働き続けることができるように子育ての環境を整えることは、1つの少子化対策につながると言えるでしょう。子供を安心して育てられる社会の実現に向けて力を合わせ、国や企業、ひいては地域で少子化対策に取り組んでいきたいものです。


子どもを持つ女性の就労の“理想”と“現実”

 ◆1万組以上の夫婦が回答
 内閣府が「都市と地方における子育て環境に関する調査」を実施し、今年3月にその報告書が発表されています。
 この調査は、(1)子どもを持っている、(2)妻の年齢が「20歳~49歳」である、(3)第1子の年齢が「0歳~18歳」である夫婦を対象に行われ、1万2,289組の夫婦が回答しています。

 ◆妻の「就労意欲」と「就労理由」
 この調査で、妻に「就労意欲」について尋ねたところ、パートや正社員など就業形態は異なるものの、「今後何らかの形で働きたいと」いう人は86.0%で、「今後は(今後も)働かない予定」という人は11.6%でした。
 現在は就労していないが今後の就労を希望している妻の「就労理由」については、次の通りとなっていますが、上位4位まではお金に関する理由です。

(1)「家計を補助するため」(71.8%)
(2)「将来に備えて貯蓄をするため」(61.3%)
(3)「生計を維持するため」(42.7%)
(4)「自分の自由になるお金を得るため」(41.0%)
(5)「いろいろな人や社会とのつながりを持ちたいから」(25.3%)

 ◆妊娠による働き方の転換
 また、株式会社アイデムの人と仕事研究所から、「働き方に関するアンケート調査」の結果を分析した2012年版「パートタイマー白書」が刊行されています。
 この調査で、妊娠がわかった時に正社員として働いていた人に、「妊娠・出産・育児をきっかけに正社員以外の働き方に変えたことがあるか」を尋ねたところ、「正社員を継続した」人は53.8%、「正社員以外の働き方に変えた」人は46.2%でした。
 そして、「正社員以外の働き方に変えた」人が具体的にどのような働き方に変えたのかを見ると、「退職して無職(専業主婦)になった」という回答が79.2%に上っています。
 ただ、一度離職してしまうと、職場復帰することや新しい仕事に就くことは難しいのが実情であり、働きたくても働けない女性が多いようです。


アルバイト・パート社員は仕事に何を求めている?

 ◆“仕事探し”に関する意識調査
 株式会社インテリジェンスが運営する求人情報サービス「an」は、アルバイト・パート社員の“仕事探し”に関する意識調査を昨年末に実施し、その結果が発表されています。
 この調査結果から、アルバイト・パート社員が仕事に対して一体何を求めているのかを探っていきます。

 ◆仕事探しを始めた理由
 まず、アルバイト・パートで求職活動中の男女に、「仕事探しを始めた理由」を尋ねたところ、トップは「貯金を増やしたかった」(33.5%)で、「趣味に使うお金が欲しかった」(31.9%)、「生活費を補いたかった」(30.0%)などが続いています。
 当然と言えば当然ですが、お金に関する理由が上位を占めています。

 ◆仕事を探す際に重視する点
 次に、仕事を探す際に重視する点をそれぞれ「重視する」「やや重視する」「どちらでもない」「あまり重視しない」「重視しない」の5段階で評価してもらい「重視する」と回答した割合を属性別に見てみると、次の通りとなっています。

【高校生】
・「勤務地が自宅から近い」(58.7%)
・「勤務地が学校や習い事の場所から近い」(34.7%)

【大学生】
・「店長や社員の人の雰囲気が良い」(58.7%)
・「時間の融通が利く」(56.9%)

【主婦】
・「長い期間働ける仕事である」(34.4%)
・「やりがいのある仕事である」(42.4%)

 高校生は、勤務地から自宅や学校などの距離を重視しており、大学生は、働く人やシフトの柔軟性など働きやすい職場を求めており、主婦は、じっくりと腰を据えて働き続けられることや遣り甲斐を得られる職場を求めているようです。


7月1日より「改正育児・介護休業法」が全面施行!

 ◆未対応の場合は早急な対応を!
 厚生労働省は、“男女ともに仕事と家庭が両立できる働き方”の実現を目的として、2009年に「育児・介護休業法」を改正しました。
 これまで従業員数100人以下の中小零細企業については、短時間勤務制度などの適用が猶予されていましたが、7月1日からはすべての企業が対象となります。全面施行まで1カ月を切りましたので、未対応の企業は早急に対応しなければなりません。

 ◆7月1日から全面適用となる主な制度
 全面適用となる主な制度は、次の通りです。

(1)「短時間勤務制度」
 3歳までの子を養育する従業員に対しては、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮する制度を設けなければなりません。

(2)「所定外労働の制限」
 3歳に満たない子を養育する従業員が申し出た場合には、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。

(3)「介護休暇」
 家族の介護や世話を行う従業員が申し出た場合には、1日単位での休暇取得を許可しなければなりません。日数は、介護する家族が1人ならば年に5日、2人以上ならば年に10日となります。

 ◆就業規則等の見直しが必要
 7月1日から新たに対象となる企業については、あらかじめ就業規則等に上記の制度を定め、従業員に周知しなければなりません。
 対応が済んでいない場合は施行日までに対応が必要ですので、ご注意ください。


パート労働者の労働条件見直しの動き

 ◆来年の国会に改正案を提出へ
 厚生労働省は「パート労働法」の一部を改正し、今後は有期雇用で働くパート労働者の待遇を正社員並みとする方針を示しています。
 先日示された「今後のパートタイム労働対策について(報告)(案)」の内容をベースとして、来年の通常国会へ改正案提出を予定しているようです。

 ◆パート労働者の現状
 現在、雇用者の4人に1人以上がパート労働者であり、厚生労働省では、「パート労働という働き方の環境整備が必要であり、パート労働者の均衡待遇の確保を促進していくとともに、均等待遇を目指していくことが求められる」としています。
 また、「短時間であることから働き方が多様となるパート労働者の待遇について、納得性を向上させ、あわせてパート労働者に対する継続的な能力形成も進めていく必要がある」としています。

 ◆報告書案の内容
 なお、現在示されている「今後のパートタイム労働対策について(報告)(案)」の主な内容は、次の通りです。

(1)パート労働者の均等・均衡待遇の確保
  ・職務内容が通常の労働者と同一で、人材活用の仕組みが通常の労働者と少なくとも一定期間同一であるパート労働者について、当該一定期間は、通常の労働者と同一の方法により賃金を決定するように努めるものとされている規定を削除することが適当。

  ・通勤手当は、パート労働法の均衡確保の努力義務の対象外として例示されているが、多様な性格を有していることから、一律に均衡確保の努力義務の対象外とすることは適当ではない旨を明らかにすることが適当。

(2)パートタイム労働者の雇用管理の改善
  ・パート労働者の「賃金に関する均衡」、「教育訓練の実施」、「福利厚生施設の利用」、「通常の労働者への転換」等に関し、パート労働者の雇入れ時等に、事業所で講じている措置の内容について、パート労働者に説明することが適当。
  ・パート労働者からの苦情への対応のために担当者等を定めるとともに、パート労働者の雇入れ時等に周知を図ることが適当。


「テレワーク」導入で企業にも従業員にもメリット

 ◆「テレワーク」の定義
 震災を契機に改めて見直された「テレワーク」ですが、導入する企業、導入を検討している企業が徐々に増えているようです
 「テレワーク」は、「ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と定義されており、「テレ(Tele)」=「遠い、遠距離の」と、「ワーク(Work)」=「働く」という言葉を組み合わせてできた言葉です。

 ◆「テレワーク」導入のメリット
 導入のメリットとして、一般的には以下のことが挙げられます。

【企業にとってのメリット】
 (1)業務が効率化できる
 (2)優秀な人材を確保できる
 (3)災害発生時の事業継続対策となる
 (4)節電対策となる

【従業員にとってのメリット】
 (1)ワークライフバランスを向上できる
 (2)通勤による負担を軽減できる
 (3)地域参加の機会を増加できる

 ◆メリットの大きい制度
 テレワーク導入時においては、「導入する際の就業規則の規定方法がわからない」「労働時間の管理方法が難しい」「情報セキュリティの面で心配」といった労務管理上の悩みや疑問がある場合が多いようです。
 しかし、これらの問題をクリアすることができれば、企業にとっても従業員にとってもメリットの大きい制度だと言えるでしょう。