2010/12/28

2011年 1月の事務所便り

 「賃金不払残業」「長時間労働」に関する相談内容

 ◆各都道府県労働局で一斉に実施
厚生労働省は毎年11月に「労働時間適正化キャンペーン」を実施し、長時間労働やサービス残業の解消を促す取組みを行っていますが、その一環として今年11月6日に各都道府県労働局で一斉に行った「労働時間相談ダイヤル」の相談結果を発表しました。
相談件数は787件(昨年度比114件減少)で、労働者本人からの相談が495件(62.9%)、労働者の家族からの相談が235件(29.9%)で、相談内容は、「賃金不払残業」に関するものが438件(55.7%)、「長時間労働」に関するものが247件(31.4%)を占めています。
以下に、この「労働時間相談ダイヤル」における相談内容の事例を紹介します。

 ◆「賃金不払残業」に関する相談内容例
(1)卸・小売業で働いている労働者からの相談
スーパーで勤務しています。労働時間は自己申告で管理しており、1カ月100時間を超える残業をしていますが、正しく申告できない状況にあるため、残業手当が一部しか支払われていません。
(2)製造業で働いている労働者からの相談
工場で働いています。交替制勤務ですが、1日4~5時間の残業が慢性化しています。タイムカードは終業時間で打刻させられるので、その分の残業手当が全然支払われません。

 ◆「長時間労働」に関する相談内容例
(1)卸・小売業で働いている労働者からの相談
清涼飲料水の自動販売機への商品の補充作業をしています。ほとんど毎日のように1日13時間に及ぶ勤務ですので、1カ月にすると120時間以上の残業をしており、家族団らんの時間が作れません。
(2)警備業で働いている労働者の家族からの相談
夫がシステム関連の仕事をしています。残業や休日労働が多く、長い月で1カ月150時間を超える残業や休日労働をしています。労働時間を自己申告していますが、実際の時間を申告するのは困難なため、会社は労働者の労働時間について適正に把握していません。夫の健康状態が心配です。

 ◆労使トラブルは近年増加傾向
近年、労働時間や割増賃金に関する労使トラブルは増加傾向にあります。法律を遵守するのはもちろんのことですが、トラブルを発生させないよう、日頃から労使間で十分なコミュニケーションを図りつつ、社員の「ワーク・ライフ・バランス」にも気を配らせる取組みが必要です。


 社員は「働きがい」を感じているか?

 ◆「働きがいに関する意識調査」の結果
株式会社NTTデータ経営研究所では、今年9月に「働きがいに関する意識調査」を行い、先日その結果が発表されました。
この調査では、「働きがい」、「働きがいを高める要因/阻害する要因」、「心の疲弊感」などに関する質問を行っており、昨今の厳しい経営環境過で社員がどのようなことを考えて働いているのかがわかり、大変参考になると思います。

 ◆「働きがい」は低下傾向に
まず、「現在、働きがいを感じていますか」との質問では、「感じている」(13.0%)との回答と「やや感じている」(39.4%)との回答を合わせると、52.4%の人が働きがいを感じていることがわかりました。
しかし、3年前と比べて「働きがいが低くなった」と感じている人(44.8%)は、「働きがいが高まった」と感じている人(22.5%)を大きく上回っています。

 ◆何が働きがいを高め、阻害しているか
働きがいを感じているグループにおいて「働きがいを特に高める要因」について、「仕事の価値の実感」(91.7%)、「仕事を通じての成長実感」(87.9%)、「仕事を通じての力の発揮」(86.3%)、「仕事が適性に合っている実感」(85.5%)、「仕事を通じた達成感」(78.2%)が上位を占めました。
逆に、働きがいを感じていないグループにおいて「働きがいを特に阻害する要因」について、「会社での将来のキャリアイメージが描けない」(91.7%)、「会社では創造的な仕事を促す環境作りがない」(86.1%)、「会社の仕組み・制度・組織が整備されていない」(79.9%)、「会社の経営陣による折に触れたビジョンの発信がない」(78.6%)、「会社の将来性がない」(78.4%)が上位を占めました。

 ◆社員の「モチベーションアップ」
また、「今の仕事をする中で、心の疲弊感を感じていますか」との質問に対しては、「感じている」と答えた人が26.6%、「やや感じている」と答えた人が43.1%で、合わせて約7割(69.7%)の人が「心の疲弊感を感じている」ことが明らかになりました。
これら「働きがい」や「疲弊感」の有無については、社員の個人的要因に基づく場合も多いとは思います。しかし、会社として社員一人ひとりの「モチベーションアップ」に貢献できることはないかを考えてみることも大事ではないでしょうか。


 働く人の睡眠時間はどのぐらい?

 ◆5都市でインターネット調査
味の素株式会社では、世界のビジネスパーソンの「睡眠時間」や「睡眠の満足度」に関するインターネット調査を行い、その結果を発表しました。
この調査は、東京、ニューヨーク(アメリカ)、パリ(フランス)、ストックホルム(スウェーデン)、上海(中国)の30代から50代までのビジネスパーソン(男女計891人)を対象に実施されたものです。この結果を見ていきましょう。

 ◆睡眠時間の長さは東京が最下位
睡眠時間の長さについては、東京がダントツで最下位となりました。
(1)上海……7時間28分
(2)ストックホルム……7時間8分
(3)パリ……6時間55分
(4)ニューヨーク……6時間35分
(5)東京……5時間59分
東京のビジネスパーソンの睡眠時間の短さの原因は、「就寝時間の遅さ」(5都市で唯一の午前0時台)でした。

 ◆睡眠の満足度は?
また、睡眠の満足度について「満足」と回答した人は、東京では30%以下であったのに対し、他の4都市では50%以上が「満足」と回答していました。
一方、「不満」と回答した人は、東京は約49%で5都市のうち最も高く、ワースト2のパリ(約38%)よりも10ポイント以上も高くなっています。

 ◆睡眠時間6時間未満では「早死」のリスク
なお、ウォリック大学(イギリス)とフェデリコ2世大学(イタリア)が今年5月に発表した共同研究結果によれば、1日の睡眠時間が6時間未満の人は「早死するリスク」が高くなるとされています。
この共同研究は、10年間にわたり世界各国の130万人以上を対象に調査したものであり、睡眠時間が1日6時間に満たない人が早死にする確率は、6~8時間の睡眠をとる人に比べて12%も高くなるとのことです。
この研究チームを率いた教授は、「睡眠時間が短いと糖尿病や肥満、高血圧や高コレステロールを引き起こしやすい」と指摘しているそうです。


 転職活動の長期化で転職者の気持ちは?

 ◆転職活動期間が長期化傾向に
株式会社リクルートが発表した「転職者の動向と意識に関する調査」(2010年7~9月期)の結果を発表しました。
この結果によれば、労働者の平均転職活動期間が調査開始以来最長の「5.7カ月」となったそうです。ここにも不況の影響が現れているようです。

 ◆転職者の活動状況
転職者の活動状況について、まず「応募する会社の数」については平均で23.4社となっています。転職先の業種別にみると「IT・通信系」の29.5社、職種別にみると「技術系(ソフトウエア・ネットワーク)」の30.4社が最多となっています。
次に「前職を辞めたタイミング」については、「転職先が決まる前に」が67.2%、「転職先が決まってから」が26.3%となっています。
そして、「転職活動の期間」については、調査開始以来、最長の平均5.7カ月となりました。転職先の業種別にみると「商社系(電機・電子・機械系)」の8.6カ月、職種別にみると「技術系(電機・電子・機械系)」の7.2カ月がそれぞれ最長となっています。

 ◆転職者の気持ち
 この調査では、転職が決まった人に対して最後に「転職活動を終えた今の気持ち」という質問をしています。その中からいくつか挙げておきます。
・「自分が新たな道で、新しい可能性を見出せる職場に出会えることができて、本当に転職をして良かった」
・「終わったというより、これから始まるという気持ち。ホッとするものの、より緊張する」
・「非常に厳しい現状を再認識した。これを良い経験とし、さらに頑張りたいと思う」
・「やりたい仕事で正社員として就業できたので心から嬉しいが、今からが本番なので気を引き締めている」
・「厳しい経済情勢の中、手を差し伸べてくれた企業の気持ちにこたえたいと思う」
・「ホッとしたのと同時に、スキルアップのための努力をもっと重ねなくてはいけないと考えている」


 「専門職の外国人」減少の原因は?

 ◆「高度人材」が減少傾向
いわゆる「高度人材」とは、専門的な知識や技術を持つ外国人労働者のことであり、「人文知識・国際業務」か「技術」の在留資格で滞在する人を指す場合と、「投資・経営」「法律・会計業務」などを含めた13分野でみる場合とがあります。
前者の狭義2分野では約12万人、後者の広義13分野では20万人以上が、現在、日本に滞在していると言われています。
専門性が高い「技術」などの分野で、日本で働くための在留資格を得た人の数は、2007年に2万2,792人と2002年の2倍強まで増加した後、2008年から減少に転じ、2009年には1万人を割り込んでいます。

 ◆減少の原因に受入れ体制の不十分さ
経済産業省の調査によると、高等教育を終了した人口に占める外国人の比率は、わずか0.7%で、英国の16%や米国の13%に比べてかなり低いことがわかります。
スイスの研究所が発表した、高度人材からみた労働市場の魅力度では、日本は42位と、欧米諸国や英語圏のみならず、順位を上げている中国や韓国をも大きく下回っています。
この要因として、「英語の生活インフラが整っていない」「教育に適した学校がない」といった、日本側の受入れ体制の不十分さの問題が指摘されています。
日本が成長していた時代は日本に滞在する外国人は多くいましたが、昨今では、日本に残るメリットを感じる外国人は少なくなっているようです。

 ◆雇用環境の悪化も影響
高度人材の減少傾向の要因の1つに、国内の雇用環境の悪化があります。ある技術者派遣最大手の企業では、ピーク時には約5%が中国人技術者でしたが、リーマン・ショックの影響により、2009年4月以降の採用は、現在ではピーク時の3分の1に減っています。
一方、日本で働く外国人社員を、2007年と比べて7割も増やし、海外での直接採用も積極的に行っている企業もあるようです。
危機感を持つ産業界においては、高度人材の誘致に向けた優遇措置を政府に求める声が上がっており、永住許可の条件緩和や、外国人が帰国するときにもらえる年金の一時金が掛け金に見合わず不利になっている現行制度を見直す案が浮上しているようです。
このままでは、高度な知識の集積などにおいて他国に後れを取り、中長期で見た場合の国の競争力の低下につながりかねないと懸念される中、早急な対応が求められています。


 介護保険制度改革に向けて

 ◆介護保険制度の概要
介護保険制度は2000年に施行された制度であり、市町村から介護が必要と認められた人が、入浴介助や食事補助などの介護サービスを受けられる仕組みです。
介護サービス事業者は、都道府県などから指定を受けた事業所であり、提供したサービスの費用を市町村に請求し、利用者は所得にかかわらず費用の1割を負担します。
このたび、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会は、2012年度の介護保険制度改革に関する意見書をまとめ、発表しました。65歳以上で年収320万円以上の人の利用料の引上げや、市町村支援のために用意されている基金の活用が主な内容です。

 ◆高所得者の利用料を値上げ
次の制度改革では、拡大し続ける給付にどのように対応するかが焦点となっています。消費税増税の議論が止まっており、税の追加投入が難しくなっている中、利用者の負担増を軸にした議論が進んでいます。
検討項目の1つとして、65歳以上で年収が320万円以上の人の利用者負担を2割(現行は1割)に引き上げる案が挙がっています。この引上げにより、要介護認定を受けた高齢者(約490万人)のうち、約30万人が対象となります。
一方で、慎重な意見が出ている項目もあります。それは、ケアプラン作成の有料化や、40~64歳の会社員らの介護保険料の負担増などです。
もしケアプランを有料にした場合には、サービスを使わなくなる要介護者が増える可能性もあると言われています。
介護保険料については、加入人数に応じて健保組合等に必要額を割り当てて算出していますが、厚生労働省は、加入者の平均年収に応じて健保組合等の割当額を算出し、介護保険料を計算する方式(総報酬割)に改めようとしています。しかし、健保組合などからの反対が多いため、すんなり導入されるかはわかりません。

 ◆新サービスの創設も
このたびの改革案では、「自宅暮らし」を希望する高齢者の声に応えるため、施設から在宅への移行を促す新たなサービスが盛り込まれています。
24時間365日、いつでも必要なサービスを受けられる仕組みを創設したり、介護職員が一部の医療サービスを提供できるようにしたりする他、医療と介護を組み合わせて提供できる「複合サービス」も導入される予定です。
また、認知症の方の介護を行う家族の負担を軽減するため、日帰り介護サービスを提供する施設に高齢者が宿泊できるようにすることなども検討されているようです。


 仕事や収入の安定と結婚との関係

 ◆若年失業者は約50万人
現在、若年失業者(15~24歳)の数は約49万人で、このうち学校を卒業後、一度も就職しないまま失業者になっている人は約12万人に上るそうです。
この年齢層の失業率は8.0%(今年9月時点)で、25~34歳の層でみても5.9%と全世代の平均を上回っており、厚生労働省では「若年雇用は予想以上に厳しい」としています。
また、就職できた若年層についても、手取り収入が減少しています。厚生労働省の調査をもとにした20~30歳代の平均年収(大学卒・大学院卒の男性)の推計は、2009年は前年比4.2%減の478万円となり、3年連続のマイナスでした。10年前と比較すると34万円も減っています。
これは、業績低迷でボーナスが減ったり、賃金の低い非正規雇用の仕事に就かざるを得なかったりする人が多いためと考えられます。

 ◆非正規雇用社員の男性の既婚率は17%
厚生労働省の資料を基に試算すると、今年9月までの12カ月の累計結婚数は69万組台で、このままいくと、2010年は通年で23年ぶりに70万組の大台を割り込むようです。
20~39歳の男性では、正規雇用社員は約51%が結婚していますが、非正規雇用社員では約17%となっています。
2005~2008年に結婚した40歳までの男性を、結婚時点の所得階層別にみると、年収400~500万円では26.0%が結婚していますが、100万円未満は8.9%しか結婚していません。

 ◆「将来への不安」が少子化に影響
上記のように、仕事や収入が安定している若年者は結婚・独立がある程度容易ですが、非正規雇用や低収入の若年者は、親元から離れることができない状況にあります。
その結果、若年層の結婚数が減り、出生率も低迷し、少子化が一段と加速していく可能性があります。 経済や社会保障への影響を考えると、政府の若年者に対する雇用改善政策が急務だと思われます。


 がんの治療費が高額化の傾向に

 ◆「分子標的薬」とは?
がんの治療費が高額化しているようです。医療技術の高度化に伴い、ここ数年増え始めた「分子標的薬(抗がん剤)」は、分子生物学を駆使して開発された薬であり、2000年代に登場した当初は、がん細胞だけを攻撃し副作用がない「夢の薬」などと呼ばれました。
その後、一部の薬で副作用事故が起き、期待感は薄れましたが、今や医療現場で普通に使われています。しかし、1錠や注射1回あたり何千円~何万円もするものが相次いでおり、1カ月当たりの薬代が100万円を超すケースもあります。
医療費負担が重くなったとき、どのような対応策があるでしょうか。

 ◆高額療養費制度の活用
公的医療保険には、患者負担の上限を定めている「高額療養費制度」があります。これによって一般的な所得の人であれば、1カ月に支払う負担額は8万円程度に抑えられ、医療費が継続してかかる場合は、上限が4万4,000円まで下がります。なお、申請すれば、上限額を超えて支払った分は3カ月ほど後に還付されます。
このような制度があっても、「収入が少ないから払えない」「3割負担を工面することができない」といった相談が増えているようです。
こんな場合、特に入院の場合は、入院前に自分が加入している健康保険や国民健康保険の窓口で「限度額認定証」を発行してもらい、それを病院に提出することにより、医療費が高額になった場合でも3割分すべてを払う必要はなく、定められた上限額の支払いだけで済みます。

 ◆その他の制度の活用
その他、患者負担金を支払う余裕がない人のために無利子でお金を貸してくれる制度の活用、抗がん剤治療を受けた月に5~6万円を最大60カ月給付する民間の保険商品への加入、分割払いに対応してくれる病院の利用なども考えられます。

 ◆高額療養費制度
景気低迷や非正規社員増加などで収入が減り、医療費も上昇しているため、現在の高額療養費制度の上限額が高いという声も強まっています。
このような状況を踏まえ、厚生労働省では、一部患者の負担上限額を引き下げることを検討していますが、財源確保のためには健康保険料や税金が今まで以上に必要になり、また、少しでも財源を確保するため、高所得者の上限を引き上げることも併せて検討されているようです。
医療費については、誰がどの程度負担するのか。公的医療保険はどこまで保障すべきか、根本的な議論が必要な状況にあるようです。


 年内に行っておくべき確定申告対策
 
 ◆年内にしておくべくことは?
確定申告をすることによって払い過ぎた税金が戻るなど、税金を安くできる場合があります。
病気やケガで多額の医療費を支払った場合の「医療費控除」、住宅ローンを利用して住宅を取得・増改築した場合の「住宅ローン控除」、株式取引の損益計算など。
いずれも申告による節税対策の代表格ですが、来年の確定申告に間に合わせるためには、年内に済ませておくべきことがあります。

 ◆家計の節税ポイント
確定申告での節税手法には「所得控除」と「税額控除」があり、主に金融関連での手法として「損益通算」と「繰越し控除」があります。
ここで注意すべきは、確定申告の対象は前年の1~12月の所得であり、年内にお金の支払いや手続きを済ませておかないと各種の控除を利用できないことです。

 ◆ポイント(1)所得控除
所得控除は課税対象となる所得金額を計算する際に、一定の金額を「所得」から差し引く制度です。所得控除の代表的なものが「医療費控除」です。1年間に実際に支払った医療費が原則10万円を超えた場合に対象となるため、合計の医療費が10万円超まであと少しならば、費用の嵩む治療・支払いを年内に済ませます。
また、国民年金など「社会保険料の前納制度」を活用するのも1つの方法です。国民年金保険料や国民健康保険料などは来年3月分までならばまとめて前納でき、控除額を増やせます。ただ、前納は翌年に支払う保険料の先払いであり、翌年も引き続いて前納しなければ、その分翌年の控除額が減るので注意が必要です。

 ◆ポイント(2)税額控除
税額控除は「税額」から直接、一定額を差し引きます。代表格は「住宅ローン控除」や「住宅特定改修特別税額控除:です。
住宅ローンを組んで家を新築・取得・増改築したり、ローンや自己資金で省エネ改修、バリアフリー改修をしたりした場合について控除を受けられますが、いずれの場合も必ず年内に住み始めることが必要です。住み始めた時点で地元の自治体に必ず住民登録します。

 ◆ポイント(3)損益通算と繰越し控除
ここで「損益通算」とは、金融関連の損失を同じ金融関連の所得から差し引く仕組みで、「繰越し控除」とは、それでも引き切れない損失が残る場合に翌年以降にそれを繰り越す制度です。
上場株式や公募株式投信は現在、売却益が出るとその10%が課税されますが、他の株式などで売却損が出れば、売却益をその売却損と相殺(損益通算)できます。なお。残った損失は2011年以降3年間にわたり繰越し控除できます。
また、配当金や分配金についても、申告分離課税を選択して確定申告すれば、上場株式などの売却損と損益通算できます。
 損益通算による節税効果を最大限に発揮するためには、含み損を抱えた分を実際に売って損失を確定することがポイントです。
この他、上場株式のみなし取得費の特例については、売却損と売却益の計算が有利になる可能性のある特例が年内で終了します。来年売却するよりも税制面で有利と判断されるのであれば、年内に売却します。またゴルフ会員権の売却による損失計上も、年内に行えば節税対策となります。


 「日雇い」「短期派遣」で働く人の実態

 ◆「本業のかたわら」が8割以上
リクルートワークス研究所から「日雇い・短期派遣労働者の就業実態調査」(今年8月に実施。1,916人の回答を分析)の結果が発表されました。
これによれば、日雇い・短期派遣で働く人のうち、副業・求職活動・家事・学業など、「本業のかたわら」に日雇い・短期派遣で働く人の割合は、全体の85.6%だそうです。これに対して、日雇い・短期派遣就労が生活の中心である「短期派遣専業」として働く人の割合は、わずか11.0%でした。

 ◆日雇い・短期派遣で働く理由
日雇い・短期派遣として働く理由としては、「副業」「学生」「主婦」の人の場合は「都合のよい時にだけ働けるから」が多く、「短期派遣専業」「失業・求職中」の人の場合は「すぐに収入が必要だから」が多いとの結果でした。
「都合のよいときだけ」「すぐに収入」がキーワードのようです。

 ◆就業日数・収入
また、日雇い・短期派遣で働く人の1カ月の平均就業日数は14.4日で、そのうち日雇い・短期派遣による就業日数は6.6日(45.9%)でした。
1カ月の収入は平均で9.9万円であり、そのうち日雇い・短期派遣による収入は3.4万円(34.6%)でした。

2010/12/09

12月の事務所便り

 いまどきの「課長」の実態は?

 ◆一部上場企業の課長428人の回答
産業能率大学がインターネット調査会社を通じて「上場企業の課長を取り巻く状況に関する調査」を今年9月に行い、その結果が公表されました。
従業員が100人以上の上場企業に勤務し、部下が1人以上いる「課長」428人が、「昇任前の経験」、「現在の悩み」、「上司の支援」、「今後のキャリア」などについて回答しています。

 ◆多くはマネージャー兼プレイヤー
まず、「プレイヤーとしての仕事の割合」についての質問では、「0%」と答えた人はわずか1.4%でした。プレイヤーとしての活動割合が半分より多い人は4割を超えています。
プレイングマネジャー化しているケースが多く、多くの課長がプレイヤーとしての活動を兼務していることがわかります。この傾向は、中小企業においてはなおさら強くなるでしょう。

 ◆仕事上の悩みとメンタルヘルス
次に、「仕事上の悩みを相談できる人がいるかどうか」との質問には、「いる」と答えた人が50.2%、「いない」と答えた人が49.8%と、ほぼ半数に分かれました。
「いる」と答えた人に対して「どのような相談者がいるのか」を尋ねたところ、「会社の上司」「会社の同僚」が多数でした。
また、「自分自身のメンタルヘルスに不安を感じたことがあるか」との質問には、「ある」と答えた人が43.7%、「ない」と答えた人が56.3%でした。その原因としては、「上司との人間関係」、「成果創出へのプレッシャー」、「仕事の内容」などが多くありました。
自分の身近に相談できる人がいるかどうかも、不安の有無に関係しているものと思われます。

 ◆遣り甲斐をもって仕事に取り組めるか
自分が「課長としてイキイキと働いていると思うか」との質問では、「どちらかといえばイキイキと働いている」が54.9%、「イキイキと働いている」が6.8%でした。逆に言えば、イキイキと働いていない人が約4割もいるということになります。
これら課長クラスにある方たちが、イキイキと遣り甲斐をもって仕事に取り組める環境をつくることが会社の仕事でもあり、それらができている会社はきっと成果を残している会社ということになるでしょう。


 義務化されるか?
 企業による「受動喫煙防止対策」

 ◆検討会が報告書を発表
厚生労働省では、昨年7月に「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会」を立ち上げ、今年5月にその検討会が報告書をまとめました。今後、この報告書をベースに、労働安全衛生法の改正案が国会で審議される予定となっています。
この改正案が成立した場合、飲食業・サービス業などにとっては大きな負担が強いられることとなりそうです。

 ◆これまでの対策の流れ
職場における受動喫煙防止対策については、平成4年以降、「労働安全衛生法」に定められた快適職場形成の一環として進められました。その後、平成15年に「健康増進法」が施行され、平成17年2月に「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が発効するなど、受動喫煙を取り巻く環境は大きく変化しています。
また、健康志向の強まりや受動喫煙の有害性に関する知識の普及などから、職場における受動喫煙に対する労働者の意識も高まりつつあります。

 ◆受動喫煙防止を事業主の「義務」へ
このような環境の変化から、現在、企業に対して強く「受動喫煙防止対策」を求める流れになっています。
そして、職場における受動喫煙防止について、従来の「快適職場形成のため」から「労働者の健康障害防止のため」という観点に切り替え、職場における受動喫煙防止を事業主の「義務(罰則付き)」とする法改正が予定されているのです。

 ◆今後の審議状況に注目
今後のあり方として、事務所、工場等では「全面禁煙」「喫煙室を設けそれ以外を禁煙」とすることが求められ、飲食店、ホテル・旅館等においては、原則として「全面禁煙」「喫煙室を設けそれ以外を禁煙」とすることが必要とされ、それが困難な場合は喫煙区域の割合を少なくし、喫煙区域からの煙の漏れを防ぎ、換気等を行うように求められる方向です。
多くの企業に影響を与えることとなりそうな法改正のため、今後の改正案の審議状況が気になるところです。


 新卒者の採用活動開始時期を見直しの動き

 ◆相次ぐ見直しの表明
9月下旬、大手商社7社は、企業における大卒者の採用活動時期を遅らせるよう、日本経団連に呼びかける考えを表明しました。「就職活動の長期化が学業の妨げになっている」との意見が強いためであり、商社自身の採用試験の時期も見直していくとしています。
また、10月初旬には、社団法人日本貿易会(貿易商社の業界団体)が、新卒者の採用活動に関して、2013年度入社対象の新卒者から、採用スケジュールを遅らせるべく具体的な検討を始め、また、各産業界が協調して見直しが実現できるよう日本経団連などの関係団体に働きかけると発表しました。

 ◆採用側企業の発表を受けて
これら採用側企業の動きを受けて、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣は、連名で245の主要経済団体、業界団体に向けた、早期の採用選考活動の抑制などを要請する文書を送りました。この要請文の中では各団体の努力を求めています。
また、リクルートや毎日コミュニケーションなど就職情報会社10社で構成する「日本就職情報出版懇話会」でも、就職活動の早期化への批判に対応し、新卒者の採用情報を提供するサイトの開設時期について、例年から1カ月以上遅らせて、来年は11月1日以降にすると発表しました。

 ◆これまでの就活の流れに変化
これまでの流れとしては、まず、大学3年生の8月ごろに「インターンシップ」を行う企業が出てきます。そして、10~11月にかけて「就職情報サイト」が開設され、「業界別セミナー」や「就活フェア」なども開かれます。
そして年が明けた1月ごろから「会社説明会」の開催が徐々に増えてきて、2月ごろには「エントリーシート」の提出なども始まります。
4年生になると「採用面接・選考」が始まり、5月ごろには「内々定」が出始め、6月には中小企業の採用活動も本格化してきます。
 来年以降は、採用側企業や国側の対応を受けて、これらのスケジュールが遅くなっていくものと思われますが、企業としては、じっくりと良い人材を見極め、自社にとって必要な人材を確保することが必要なことには変わりはないでしょう。


 どんな気持ちで職場の飲み会に参加しているか

 ◆職場の人とのお酒の飲み方に関する調査
キリン食生活文化研究所では「職場の人とのお酒の飲み方に関する意識調査」を行い、先日その結果が発表されました。
職場の仲間や上司・部下とお酒を飲む機会の多寡は会社によってそれぞれ異なるでしょうが、各人がどのような思いで「飲み会」に参加しているのか、とても興味深い内容になっています。

 ◆飲み会は「コミュニケーション」のため
アンケート項目中の「職場の人とお酒を飲む際に期待すること」については、トップは上司・部下ともに「コミュニケーションをとりたい」でした。そして、自分の上司より部下と飲むときのほうがその期待は充足される傾向にあることがわかりました。
また、職場の人からの飲み会の誘いを断る際に「行けない理由をはっきり言って断る」人は4割以上いました。20代では、部下・後輩に対し「行けない理由をはっきり言う」割合(36.3%)が、上司に対する場合よりも低くなっています。

 ◆飲み会の平均額・平均回数は?
職場の人とお酒を飲むときの1回あたりの平均予算は4,401円(前年比129円マイナス)でした。月平均の回数は前年と同じ1.5回となっています。
上司が部下とお酒を飲む際におごる金額の平均は1回あたり7,092円で、エリア別に見ると1位は「北海道」で8,542円。2位は「北陸」で7,400円、3位は「東北」7,221円となっています。寒い地域で働いている人のほうが太っ腹なのでしょうか?

 ◆増える傾向にある「割り勘」
最近では、上司と部下で飲みに行っても「割り勘」とするケースが増えているようです。
上記の調査とは別の調査では、「上下関係なく割り勘にすることが多い」と答えた20~59歳の人は全体の24%に上りました。
年功序列が崩れつつあり、明確な上下関係意識が薄れつつあることの影響なのかどうかはわかりませんが、いずれにしても、社内でのコミュニケーションを図るうえで「飲み会」が有効な手段の1つであることは間違いないでしょう。


 転職を考え始める年齢は何歳?

 ◆4万人以上の会社員が回答
株式会社インテリジェンスが運営する転職サービス「DODA」では、会社員が転職を考え始める年齢についての調査を行い、その結果を発表しました。
この調査の対象者は、「DODA」人材紹介サービスに登録した人のうち登録時の年齢が22~39歳(転職回数0回)の大卒以上の男女で、4万人以上から回答がありました。

 ◆ 転職を考え始めた年齢は?
転職を考え始めた年齢についての回答では、「25歳」(13.5%)が最多であり、「26歳」(12.5%)、「24歳」(11.8%)と続いています。4割近くの人が入社2~3年目の段階で次のキャリアを考えているようです。

 ◆職種別ではどうか?
転職を考え始めた年齢について職種別に見ると、下記の年齢がそれぞれ最多となっています。
・「企画・事務」…29歳(8.8%)
・「金融などの専門職」…28歳(9.1%)
・「ITエンジニア」…27歳(9.5%)
・「建築・土木」…27歳(10.6%)
・「モノづくりエンジニア」…26歳(9.7%)
・「メディカル」…26歳(11.6%)
・「営業」…25歳(10.9%)
・「販売・サービス」…25歳(12.6%)

 ◆安定志向の傾向も
最近は比較的若い年齢において転職を考え始める人が多いようですが、社団法人日本能率協会が今年4月に発表した新入社員の意識調査では、約半数の人が「定年まで勤めたい」と回答し、「終身雇用」や「年功序列」を望む傾向も見られます。
会社としては、有能な人材が会社にずっと残ってくれるのがベストでしょうが、そのためには、社員のキャリアアップのために何ができるのか等を真剣に考える必要があるでしょう。


 賃金収入は減少傾向、4人に1人「失業の不安」

 ◆労働者にとっては厳しい状況
連合総研では、10月に労働者を対象に実施した「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」(勤労者短観)の結果を発表しました。
「景気や勤め先の経営状況」「賃金収入と失業不安」などの項目について調査しており、労働者の厳しい状況がうかがえる結果となっています。

 ◆賃金収入は減少傾向に
1年前と比較した賃金収入の増減については、「減った」(32.9%)と回答した人が3割を超えており、前回調査(34.6%)と比べてもほとんど改善が見られませんでした。
また、今後1年の賃金収入見込みについて「減ると思う」(25.5%)と回答した人が前回調査(21.8%)を上回り、「増えると思う」(16.9%)と回答した人は前回調査(21.0%)から減少しています。悲観的な見方をする人の割合が高まっています。

 ◆4人に1人が「失業の不安」
次に、「今後1年間の失業の不安」について「感じる」と回答した人は25.0%で、過去最高を記録した昨年同月(28.3%)よりは低下しましたが、一昨年の同月調査(23.8%)を上回っています。
また、非正社員(男性53.6%、女性34.8%)や20代(32.9%)が感じる失業の不安は、相対的に高くなっています。

 ◆所定外労働、賃金不払い残業
このアンケート調査では、他にも「所定外労働の状況」「賃金不払い残業の状況」などについての調査を行っており、非常に興味深いものとなっていますので、連合総研のホームページ(http://www.rengo-soken.or.jp/webpage/21.html)を覗いてみてください。


 「労働時間適正化キャンペーン」実施中

 ◆全国一斉の電話相談など
厚生労働省では、長時間労働に伴う問題解消を図るために、11月を「労働時間適正化キャンペーン」と定め、全国一斉の電話相談の実施をはじめ、使用者団体・労働組合への協力要請、リーフレットの配布などによる周知啓発などの取組みを集中的に実施しています。

 ◆労働時間をめぐる現状
平成21年の総務省調査によると、週60時間以上働いている人の割合は全体の9.2%で、30代の男性に限ってみると全体の倍の水準となる18.0%にも上ります。
1カ月の残業時間が80時間を超える状態が続くと、心身の健康を害するばかりか、過労死の危険性が高まると言われています。
過労死などで労災認定された件数は平成21年度に293件となっており、過重労働による健康障害の事例が数多く報告されています。また、労働基準監督署による賃金不払残業の是正指導も多く見られます。

 ◆キャンペーンの重点事項
このような状況を受け、厚生労働省では、平成22年度も「労働時間適正化キャンペーン」を実施し、長時間労働の抑制を行うなど、労働時間の適正化に向けて労使の主体的な取組みを促すとともに、重点監督などを行っています。
今年度の重点取組み事項は、次の3点となっています。
(1)時間外労働協定の適正化などによる時間外・休日労働の削減
(2)長時間労働者への医師による面接指導など労働者の健康管理に関する措置の徹底
(3)労働時間の適正な把握の徹底

 ◆賃金不払残業が大きな問題に
長時間労働と同様に、現在、賃金不払残業(サービス残業)が大きな問題になっています。
このキャンペーンを機に、恒常的に長時間労働が行われていないか、長時間労働者の健康管理について配慮がなされているか、労働時間が適正に把握されているかなど、労働環境を今一度見直してみましょう。