2010/12/28

2011年 1月の事務所便り

 「賃金不払残業」「長時間労働」に関する相談内容

 ◆各都道府県労働局で一斉に実施
厚生労働省は毎年11月に「労働時間適正化キャンペーン」を実施し、長時間労働やサービス残業の解消を促す取組みを行っていますが、その一環として今年11月6日に各都道府県労働局で一斉に行った「労働時間相談ダイヤル」の相談結果を発表しました。
相談件数は787件(昨年度比114件減少)で、労働者本人からの相談が495件(62.9%)、労働者の家族からの相談が235件(29.9%)で、相談内容は、「賃金不払残業」に関するものが438件(55.7%)、「長時間労働」に関するものが247件(31.4%)を占めています。
以下に、この「労働時間相談ダイヤル」における相談内容の事例を紹介します。

 ◆「賃金不払残業」に関する相談内容例
(1)卸・小売業で働いている労働者からの相談
スーパーで勤務しています。労働時間は自己申告で管理しており、1カ月100時間を超える残業をしていますが、正しく申告できない状況にあるため、残業手当が一部しか支払われていません。
(2)製造業で働いている労働者からの相談
工場で働いています。交替制勤務ですが、1日4~5時間の残業が慢性化しています。タイムカードは終業時間で打刻させられるので、その分の残業手当が全然支払われません。

 ◆「長時間労働」に関する相談内容例
(1)卸・小売業で働いている労働者からの相談
清涼飲料水の自動販売機への商品の補充作業をしています。ほとんど毎日のように1日13時間に及ぶ勤務ですので、1カ月にすると120時間以上の残業をしており、家族団らんの時間が作れません。
(2)警備業で働いている労働者の家族からの相談
夫がシステム関連の仕事をしています。残業や休日労働が多く、長い月で1カ月150時間を超える残業や休日労働をしています。労働時間を自己申告していますが、実際の時間を申告するのは困難なため、会社は労働者の労働時間について適正に把握していません。夫の健康状態が心配です。

 ◆労使トラブルは近年増加傾向
近年、労働時間や割増賃金に関する労使トラブルは増加傾向にあります。法律を遵守するのはもちろんのことですが、トラブルを発生させないよう、日頃から労使間で十分なコミュニケーションを図りつつ、社員の「ワーク・ライフ・バランス」にも気を配らせる取組みが必要です。


 社員は「働きがい」を感じているか?

 ◆「働きがいに関する意識調査」の結果
株式会社NTTデータ経営研究所では、今年9月に「働きがいに関する意識調査」を行い、先日その結果が発表されました。
この調査では、「働きがい」、「働きがいを高める要因/阻害する要因」、「心の疲弊感」などに関する質問を行っており、昨今の厳しい経営環境過で社員がどのようなことを考えて働いているのかがわかり、大変参考になると思います。

 ◆「働きがい」は低下傾向に
まず、「現在、働きがいを感じていますか」との質問では、「感じている」(13.0%)との回答と「やや感じている」(39.4%)との回答を合わせると、52.4%の人が働きがいを感じていることがわかりました。
しかし、3年前と比べて「働きがいが低くなった」と感じている人(44.8%)は、「働きがいが高まった」と感じている人(22.5%)を大きく上回っています。

 ◆何が働きがいを高め、阻害しているか
働きがいを感じているグループにおいて「働きがいを特に高める要因」について、「仕事の価値の実感」(91.7%)、「仕事を通じての成長実感」(87.9%)、「仕事を通じての力の発揮」(86.3%)、「仕事が適性に合っている実感」(85.5%)、「仕事を通じた達成感」(78.2%)が上位を占めました。
逆に、働きがいを感じていないグループにおいて「働きがいを特に阻害する要因」について、「会社での将来のキャリアイメージが描けない」(91.7%)、「会社では創造的な仕事を促す環境作りがない」(86.1%)、「会社の仕組み・制度・組織が整備されていない」(79.9%)、「会社の経営陣による折に触れたビジョンの発信がない」(78.6%)、「会社の将来性がない」(78.4%)が上位を占めました。

 ◆社員の「モチベーションアップ」
また、「今の仕事をする中で、心の疲弊感を感じていますか」との質問に対しては、「感じている」と答えた人が26.6%、「やや感じている」と答えた人が43.1%で、合わせて約7割(69.7%)の人が「心の疲弊感を感じている」ことが明らかになりました。
これら「働きがい」や「疲弊感」の有無については、社員の個人的要因に基づく場合も多いとは思います。しかし、会社として社員一人ひとりの「モチベーションアップ」に貢献できることはないかを考えてみることも大事ではないでしょうか。


 働く人の睡眠時間はどのぐらい?

 ◆5都市でインターネット調査
味の素株式会社では、世界のビジネスパーソンの「睡眠時間」や「睡眠の満足度」に関するインターネット調査を行い、その結果を発表しました。
この調査は、東京、ニューヨーク(アメリカ)、パリ(フランス)、ストックホルム(スウェーデン)、上海(中国)の30代から50代までのビジネスパーソン(男女計891人)を対象に実施されたものです。この結果を見ていきましょう。

 ◆睡眠時間の長さは東京が最下位
睡眠時間の長さについては、東京がダントツで最下位となりました。
(1)上海……7時間28分
(2)ストックホルム……7時間8分
(3)パリ……6時間55分
(4)ニューヨーク……6時間35分
(5)東京……5時間59分
東京のビジネスパーソンの睡眠時間の短さの原因は、「就寝時間の遅さ」(5都市で唯一の午前0時台)でした。

 ◆睡眠の満足度は?
また、睡眠の満足度について「満足」と回答した人は、東京では30%以下であったのに対し、他の4都市では50%以上が「満足」と回答していました。
一方、「不満」と回答した人は、東京は約49%で5都市のうち最も高く、ワースト2のパリ(約38%)よりも10ポイント以上も高くなっています。

 ◆睡眠時間6時間未満では「早死」のリスク
なお、ウォリック大学(イギリス)とフェデリコ2世大学(イタリア)が今年5月に発表した共同研究結果によれば、1日の睡眠時間が6時間未満の人は「早死するリスク」が高くなるとされています。
この共同研究は、10年間にわたり世界各国の130万人以上を対象に調査したものであり、睡眠時間が1日6時間に満たない人が早死にする確率は、6~8時間の睡眠をとる人に比べて12%も高くなるとのことです。
この研究チームを率いた教授は、「睡眠時間が短いと糖尿病や肥満、高血圧や高コレステロールを引き起こしやすい」と指摘しているそうです。


 転職活動の長期化で転職者の気持ちは?

 ◆転職活動期間が長期化傾向に
株式会社リクルートが発表した「転職者の動向と意識に関する調査」(2010年7~9月期)の結果を発表しました。
この結果によれば、労働者の平均転職活動期間が調査開始以来最長の「5.7カ月」となったそうです。ここにも不況の影響が現れているようです。

 ◆転職者の活動状況
転職者の活動状況について、まず「応募する会社の数」については平均で23.4社となっています。転職先の業種別にみると「IT・通信系」の29.5社、職種別にみると「技術系(ソフトウエア・ネットワーク)」の30.4社が最多となっています。
次に「前職を辞めたタイミング」については、「転職先が決まる前に」が67.2%、「転職先が決まってから」が26.3%となっています。
そして、「転職活動の期間」については、調査開始以来、最長の平均5.7カ月となりました。転職先の業種別にみると「商社系(電機・電子・機械系)」の8.6カ月、職種別にみると「技術系(電機・電子・機械系)」の7.2カ月がそれぞれ最長となっています。

 ◆転職者の気持ち
 この調査では、転職が決まった人に対して最後に「転職活動を終えた今の気持ち」という質問をしています。その中からいくつか挙げておきます。
・「自分が新たな道で、新しい可能性を見出せる職場に出会えることができて、本当に転職をして良かった」
・「終わったというより、これから始まるという気持ち。ホッとするものの、より緊張する」
・「非常に厳しい現状を再認識した。これを良い経験とし、さらに頑張りたいと思う」
・「やりたい仕事で正社員として就業できたので心から嬉しいが、今からが本番なので気を引き締めている」
・「厳しい経済情勢の中、手を差し伸べてくれた企業の気持ちにこたえたいと思う」
・「ホッとしたのと同時に、スキルアップのための努力をもっと重ねなくてはいけないと考えている」


 「専門職の外国人」減少の原因は?

 ◆「高度人材」が減少傾向
いわゆる「高度人材」とは、専門的な知識や技術を持つ外国人労働者のことであり、「人文知識・国際業務」か「技術」の在留資格で滞在する人を指す場合と、「投資・経営」「法律・会計業務」などを含めた13分野でみる場合とがあります。
前者の狭義2分野では約12万人、後者の広義13分野では20万人以上が、現在、日本に滞在していると言われています。
専門性が高い「技術」などの分野で、日本で働くための在留資格を得た人の数は、2007年に2万2,792人と2002年の2倍強まで増加した後、2008年から減少に転じ、2009年には1万人を割り込んでいます。

 ◆減少の原因に受入れ体制の不十分さ
経済産業省の調査によると、高等教育を終了した人口に占める外国人の比率は、わずか0.7%で、英国の16%や米国の13%に比べてかなり低いことがわかります。
スイスの研究所が発表した、高度人材からみた労働市場の魅力度では、日本は42位と、欧米諸国や英語圏のみならず、順位を上げている中国や韓国をも大きく下回っています。
この要因として、「英語の生活インフラが整っていない」「教育に適した学校がない」といった、日本側の受入れ体制の不十分さの問題が指摘されています。
日本が成長していた時代は日本に滞在する外国人は多くいましたが、昨今では、日本に残るメリットを感じる外国人は少なくなっているようです。

 ◆雇用環境の悪化も影響
高度人材の減少傾向の要因の1つに、国内の雇用環境の悪化があります。ある技術者派遣最大手の企業では、ピーク時には約5%が中国人技術者でしたが、リーマン・ショックの影響により、2009年4月以降の採用は、現在ではピーク時の3分の1に減っています。
一方、日本で働く外国人社員を、2007年と比べて7割も増やし、海外での直接採用も積極的に行っている企業もあるようです。
危機感を持つ産業界においては、高度人材の誘致に向けた優遇措置を政府に求める声が上がっており、永住許可の条件緩和や、外国人が帰国するときにもらえる年金の一時金が掛け金に見合わず不利になっている現行制度を見直す案が浮上しているようです。
このままでは、高度な知識の集積などにおいて他国に後れを取り、中長期で見た場合の国の競争力の低下につながりかねないと懸念される中、早急な対応が求められています。


 介護保険制度改革に向けて

 ◆介護保険制度の概要
介護保険制度は2000年に施行された制度であり、市町村から介護が必要と認められた人が、入浴介助や食事補助などの介護サービスを受けられる仕組みです。
介護サービス事業者は、都道府県などから指定を受けた事業所であり、提供したサービスの費用を市町村に請求し、利用者は所得にかかわらず費用の1割を負担します。
このたび、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会は、2012年度の介護保険制度改革に関する意見書をまとめ、発表しました。65歳以上で年収320万円以上の人の利用料の引上げや、市町村支援のために用意されている基金の活用が主な内容です。

 ◆高所得者の利用料を値上げ
次の制度改革では、拡大し続ける給付にどのように対応するかが焦点となっています。消費税増税の議論が止まっており、税の追加投入が難しくなっている中、利用者の負担増を軸にした議論が進んでいます。
検討項目の1つとして、65歳以上で年収が320万円以上の人の利用者負担を2割(現行は1割)に引き上げる案が挙がっています。この引上げにより、要介護認定を受けた高齢者(約490万人)のうち、約30万人が対象となります。
一方で、慎重な意見が出ている項目もあります。それは、ケアプラン作成の有料化や、40~64歳の会社員らの介護保険料の負担増などです。
もしケアプランを有料にした場合には、サービスを使わなくなる要介護者が増える可能性もあると言われています。
介護保険料については、加入人数に応じて健保組合等に必要額を割り当てて算出していますが、厚生労働省は、加入者の平均年収に応じて健保組合等の割当額を算出し、介護保険料を計算する方式(総報酬割)に改めようとしています。しかし、健保組合などからの反対が多いため、すんなり導入されるかはわかりません。

 ◆新サービスの創設も
このたびの改革案では、「自宅暮らし」を希望する高齢者の声に応えるため、施設から在宅への移行を促す新たなサービスが盛り込まれています。
24時間365日、いつでも必要なサービスを受けられる仕組みを創設したり、介護職員が一部の医療サービスを提供できるようにしたりする他、医療と介護を組み合わせて提供できる「複合サービス」も導入される予定です。
また、認知症の方の介護を行う家族の負担を軽減するため、日帰り介護サービスを提供する施設に高齢者が宿泊できるようにすることなども検討されているようです。


 仕事や収入の安定と結婚との関係

 ◆若年失業者は約50万人
現在、若年失業者(15~24歳)の数は約49万人で、このうち学校を卒業後、一度も就職しないまま失業者になっている人は約12万人に上るそうです。
この年齢層の失業率は8.0%(今年9月時点)で、25~34歳の層でみても5.9%と全世代の平均を上回っており、厚生労働省では「若年雇用は予想以上に厳しい」としています。
また、就職できた若年層についても、手取り収入が減少しています。厚生労働省の調査をもとにした20~30歳代の平均年収(大学卒・大学院卒の男性)の推計は、2009年は前年比4.2%減の478万円となり、3年連続のマイナスでした。10年前と比較すると34万円も減っています。
これは、業績低迷でボーナスが減ったり、賃金の低い非正規雇用の仕事に就かざるを得なかったりする人が多いためと考えられます。

 ◆非正規雇用社員の男性の既婚率は17%
厚生労働省の資料を基に試算すると、今年9月までの12カ月の累計結婚数は69万組台で、このままいくと、2010年は通年で23年ぶりに70万組の大台を割り込むようです。
20~39歳の男性では、正規雇用社員は約51%が結婚していますが、非正規雇用社員では約17%となっています。
2005~2008年に結婚した40歳までの男性を、結婚時点の所得階層別にみると、年収400~500万円では26.0%が結婚していますが、100万円未満は8.9%しか結婚していません。

 ◆「将来への不安」が少子化に影響
上記のように、仕事や収入が安定している若年者は結婚・独立がある程度容易ですが、非正規雇用や低収入の若年者は、親元から離れることができない状況にあります。
その結果、若年層の結婚数が減り、出生率も低迷し、少子化が一段と加速していく可能性があります。 経済や社会保障への影響を考えると、政府の若年者に対する雇用改善政策が急務だと思われます。


 がんの治療費が高額化の傾向に

 ◆「分子標的薬」とは?
がんの治療費が高額化しているようです。医療技術の高度化に伴い、ここ数年増え始めた「分子標的薬(抗がん剤)」は、分子生物学を駆使して開発された薬であり、2000年代に登場した当初は、がん細胞だけを攻撃し副作用がない「夢の薬」などと呼ばれました。
その後、一部の薬で副作用事故が起き、期待感は薄れましたが、今や医療現場で普通に使われています。しかし、1錠や注射1回あたり何千円~何万円もするものが相次いでおり、1カ月当たりの薬代が100万円を超すケースもあります。
医療費負担が重くなったとき、どのような対応策があるでしょうか。

 ◆高額療養費制度の活用
公的医療保険には、患者負担の上限を定めている「高額療養費制度」があります。これによって一般的な所得の人であれば、1カ月に支払う負担額は8万円程度に抑えられ、医療費が継続してかかる場合は、上限が4万4,000円まで下がります。なお、申請すれば、上限額を超えて支払った分は3カ月ほど後に還付されます。
このような制度があっても、「収入が少ないから払えない」「3割負担を工面することができない」といった相談が増えているようです。
こんな場合、特に入院の場合は、入院前に自分が加入している健康保険や国民健康保険の窓口で「限度額認定証」を発行してもらい、それを病院に提出することにより、医療費が高額になった場合でも3割分すべてを払う必要はなく、定められた上限額の支払いだけで済みます。

 ◆その他の制度の活用
その他、患者負担金を支払う余裕がない人のために無利子でお金を貸してくれる制度の活用、抗がん剤治療を受けた月に5~6万円を最大60カ月給付する民間の保険商品への加入、分割払いに対応してくれる病院の利用なども考えられます。

 ◆高額療養費制度
景気低迷や非正規社員増加などで収入が減り、医療費も上昇しているため、現在の高額療養費制度の上限額が高いという声も強まっています。
このような状況を踏まえ、厚生労働省では、一部患者の負担上限額を引き下げることを検討していますが、財源確保のためには健康保険料や税金が今まで以上に必要になり、また、少しでも財源を確保するため、高所得者の上限を引き上げることも併せて検討されているようです。
医療費については、誰がどの程度負担するのか。公的医療保険はどこまで保障すべきか、根本的な議論が必要な状況にあるようです。


 年内に行っておくべき確定申告対策
 
 ◆年内にしておくべくことは?
確定申告をすることによって払い過ぎた税金が戻るなど、税金を安くできる場合があります。
病気やケガで多額の医療費を支払った場合の「医療費控除」、住宅ローンを利用して住宅を取得・増改築した場合の「住宅ローン控除」、株式取引の損益計算など。
いずれも申告による節税対策の代表格ですが、来年の確定申告に間に合わせるためには、年内に済ませておくべきことがあります。

 ◆家計の節税ポイント
確定申告での節税手法には「所得控除」と「税額控除」があり、主に金融関連での手法として「損益通算」と「繰越し控除」があります。
ここで注意すべきは、確定申告の対象は前年の1~12月の所得であり、年内にお金の支払いや手続きを済ませておかないと各種の控除を利用できないことです。

 ◆ポイント(1)所得控除
所得控除は課税対象となる所得金額を計算する際に、一定の金額を「所得」から差し引く制度です。所得控除の代表的なものが「医療費控除」です。1年間に実際に支払った医療費が原則10万円を超えた場合に対象となるため、合計の医療費が10万円超まであと少しならば、費用の嵩む治療・支払いを年内に済ませます。
また、国民年金など「社会保険料の前納制度」を活用するのも1つの方法です。国民年金保険料や国民健康保険料などは来年3月分までならばまとめて前納でき、控除額を増やせます。ただ、前納は翌年に支払う保険料の先払いであり、翌年も引き続いて前納しなければ、その分翌年の控除額が減るので注意が必要です。

 ◆ポイント(2)税額控除
税額控除は「税額」から直接、一定額を差し引きます。代表格は「住宅ローン控除」や「住宅特定改修特別税額控除:です。
住宅ローンを組んで家を新築・取得・増改築したり、ローンや自己資金で省エネ改修、バリアフリー改修をしたりした場合について控除を受けられますが、いずれの場合も必ず年内に住み始めることが必要です。住み始めた時点で地元の自治体に必ず住民登録します。

 ◆ポイント(3)損益通算と繰越し控除
ここで「損益通算」とは、金融関連の損失を同じ金融関連の所得から差し引く仕組みで、「繰越し控除」とは、それでも引き切れない損失が残る場合に翌年以降にそれを繰り越す制度です。
上場株式や公募株式投信は現在、売却益が出るとその10%が課税されますが、他の株式などで売却損が出れば、売却益をその売却損と相殺(損益通算)できます。なお。残った損失は2011年以降3年間にわたり繰越し控除できます。
また、配当金や分配金についても、申告分離課税を選択して確定申告すれば、上場株式などの売却損と損益通算できます。
 損益通算による節税効果を最大限に発揮するためには、含み損を抱えた分を実際に売って損失を確定することがポイントです。
この他、上場株式のみなし取得費の特例については、売却損と売却益の計算が有利になる可能性のある特例が年内で終了します。来年売却するよりも税制面で有利と判断されるのであれば、年内に売却します。またゴルフ会員権の売却による損失計上も、年内に行えば節税対策となります。


 「日雇い」「短期派遣」で働く人の実態

 ◆「本業のかたわら」が8割以上
リクルートワークス研究所から「日雇い・短期派遣労働者の就業実態調査」(今年8月に実施。1,916人の回答を分析)の結果が発表されました。
これによれば、日雇い・短期派遣で働く人のうち、副業・求職活動・家事・学業など、「本業のかたわら」に日雇い・短期派遣で働く人の割合は、全体の85.6%だそうです。これに対して、日雇い・短期派遣就労が生活の中心である「短期派遣専業」として働く人の割合は、わずか11.0%でした。

 ◆日雇い・短期派遣で働く理由
日雇い・短期派遣として働く理由としては、「副業」「学生」「主婦」の人の場合は「都合のよい時にだけ働けるから」が多く、「短期派遣専業」「失業・求職中」の人の場合は「すぐに収入が必要だから」が多いとの結果でした。
「都合のよいときだけ」「すぐに収入」がキーワードのようです。

 ◆就業日数・収入
また、日雇い・短期派遣で働く人の1カ月の平均就業日数は14.4日で、そのうち日雇い・短期派遣による就業日数は6.6日(45.9%)でした。
1カ月の収入は平均で9.9万円であり、そのうち日雇い・短期派遣による収入は3.4万円(34.6%)でした。

2010/12/09

12月の事務所便り

 いまどきの「課長」の実態は?

 ◆一部上場企業の課長428人の回答
産業能率大学がインターネット調査会社を通じて「上場企業の課長を取り巻く状況に関する調査」を今年9月に行い、その結果が公表されました。
従業員が100人以上の上場企業に勤務し、部下が1人以上いる「課長」428人が、「昇任前の経験」、「現在の悩み」、「上司の支援」、「今後のキャリア」などについて回答しています。

 ◆多くはマネージャー兼プレイヤー
まず、「プレイヤーとしての仕事の割合」についての質問では、「0%」と答えた人はわずか1.4%でした。プレイヤーとしての活動割合が半分より多い人は4割を超えています。
プレイングマネジャー化しているケースが多く、多くの課長がプレイヤーとしての活動を兼務していることがわかります。この傾向は、中小企業においてはなおさら強くなるでしょう。

 ◆仕事上の悩みとメンタルヘルス
次に、「仕事上の悩みを相談できる人がいるかどうか」との質問には、「いる」と答えた人が50.2%、「いない」と答えた人が49.8%と、ほぼ半数に分かれました。
「いる」と答えた人に対して「どのような相談者がいるのか」を尋ねたところ、「会社の上司」「会社の同僚」が多数でした。
また、「自分自身のメンタルヘルスに不安を感じたことがあるか」との質問には、「ある」と答えた人が43.7%、「ない」と答えた人が56.3%でした。その原因としては、「上司との人間関係」、「成果創出へのプレッシャー」、「仕事の内容」などが多くありました。
自分の身近に相談できる人がいるかどうかも、不安の有無に関係しているものと思われます。

 ◆遣り甲斐をもって仕事に取り組めるか
自分が「課長としてイキイキと働いていると思うか」との質問では、「どちらかといえばイキイキと働いている」が54.9%、「イキイキと働いている」が6.8%でした。逆に言えば、イキイキと働いていない人が約4割もいるということになります。
これら課長クラスにある方たちが、イキイキと遣り甲斐をもって仕事に取り組める環境をつくることが会社の仕事でもあり、それらができている会社はきっと成果を残している会社ということになるでしょう。


 義務化されるか?
 企業による「受動喫煙防止対策」

 ◆検討会が報告書を発表
厚生労働省では、昨年7月に「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会」を立ち上げ、今年5月にその検討会が報告書をまとめました。今後、この報告書をベースに、労働安全衛生法の改正案が国会で審議される予定となっています。
この改正案が成立した場合、飲食業・サービス業などにとっては大きな負担が強いられることとなりそうです。

 ◆これまでの対策の流れ
職場における受動喫煙防止対策については、平成4年以降、「労働安全衛生法」に定められた快適職場形成の一環として進められました。その後、平成15年に「健康増進法」が施行され、平成17年2月に「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が発効するなど、受動喫煙を取り巻く環境は大きく変化しています。
また、健康志向の強まりや受動喫煙の有害性に関する知識の普及などから、職場における受動喫煙に対する労働者の意識も高まりつつあります。

 ◆受動喫煙防止を事業主の「義務」へ
このような環境の変化から、現在、企業に対して強く「受動喫煙防止対策」を求める流れになっています。
そして、職場における受動喫煙防止について、従来の「快適職場形成のため」から「労働者の健康障害防止のため」という観点に切り替え、職場における受動喫煙防止を事業主の「義務(罰則付き)」とする法改正が予定されているのです。

 ◆今後の審議状況に注目
今後のあり方として、事務所、工場等では「全面禁煙」「喫煙室を設けそれ以外を禁煙」とすることが求められ、飲食店、ホテル・旅館等においては、原則として「全面禁煙」「喫煙室を設けそれ以外を禁煙」とすることが必要とされ、それが困難な場合は喫煙区域の割合を少なくし、喫煙区域からの煙の漏れを防ぎ、換気等を行うように求められる方向です。
多くの企業に影響を与えることとなりそうな法改正のため、今後の改正案の審議状況が気になるところです。


 新卒者の採用活動開始時期を見直しの動き

 ◆相次ぐ見直しの表明
9月下旬、大手商社7社は、企業における大卒者の採用活動時期を遅らせるよう、日本経団連に呼びかける考えを表明しました。「就職活動の長期化が学業の妨げになっている」との意見が強いためであり、商社自身の採用試験の時期も見直していくとしています。
また、10月初旬には、社団法人日本貿易会(貿易商社の業界団体)が、新卒者の採用活動に関して、2013年度入社対象の新卒者から、採用スケジュールを遅らせるべく具体的な検討を始め、また、各産業界が協調して見直しが実現できるよう日本経団連などの関係団体に働きかけると発表しました。

 ◆採用側企業の発表を受けて
これら採用側企業の動きを受けて、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣は、連名で245の主要経済団体、業界団体に向けた、早期の採用選考活動の抑制などを要請する文書を送りました。この要請文の中では各団体の努力を求めています。
また、リクルートや毎日コミュニケーションなど就職情報会社10社で構成する「日本就職情報出版懇話会」でも、就職活動の早期化への批判に対応し、新卒者の採用情報を提供するサイトの開設時期について、例年から1カ月以上遅らせて、来年は11月1日以降にすると発表しました。

 ◆これまでの就活の流れに変化
これまでの流れとしては、まず、大学3年生の8月ごろに「インターンシップ」を行う企業が出てきます。そして、10~11月にかけて「就職情報サイト」が開設され、「業界別セミナー」や「就活フェア」なども開かれます。
そして年が明けた1月ごろから「会社説明会」の開催が徐々に増えてきて、2月ごろには「エントリーシート」の提出なども始まります。
4年生になると「採用面接・選考」が始まり、5月ごろには「内々定」が出始め、6月には中小企業の採用活動も本格化してきます。
 来年以降は、採用側企業や国側の対応を受けて、これらのスケジュールが遅くなっていくものと思われますが、企業としては、じっくりと良い人材を見極め、自社にとって必要な人材を確保することが必要なことには変わりはないでしょう。


 どんな気持ちで職場の飲み会に参加しているか

 ◆職場の人とのお酒の飲み方に関する調査
キリン食生活文化研究所では「職場の人とのお酒の飲み方に関する意識調査」を行い、先日その結果が発表されました。
職場の仲間や上司・部下とお酒を飲む機会の多寡は会社によってそれぞれ異なるでしょうが、各人がどのような思いで「飲み会」に参加しているのか、とても興味深い内容になっています。

 ◆飲み会は「コミュニケーション」のため
アンケート項目中の「職場の人とお酒を飲む際に期待すること」については、トップは上司・部下ともに「コミュニケーションをとりたい」でした。そして、自分の上司より部下と飲むときのほうがその期待は充足される傾向にあることがわかりました。
また、職場の人からの飲み会の誘いを断る際に「行けない理由をはっきり言って断る」人は4割以上いました。20代では、部下・後輩に対し「行けない理由をはっきり言う」割合(36.3%)が、上司に対する場合よりも低くなっています。

 ◆飲み会の平均額・平均回数は?
職場の人とお酒を飲むときの1回あたりの平均予算は4,401円(前年比129円マイナス)でした。月平均の回数は前年と同じ1.5回となっています。
上司が部下とお酒を飲む際におごる金額の平均は1回あたり7,092円で、エリア別に見ると1位は「北海道」で8,542円。2位は「北陸」で7,400円、3位は「東北」7,221円となっています。寒い地域で働いている人のほうが太っ腹なのでしょうか?

 ◆増える傾向にある「割り勘」
最近では、上司と部下で飲みに行っても「割り勘」とするケースが増えているようです。
上記の調査とは別の調査では、「上下関係なく割り勘にすることが多い」と答えた20~59歳の人は全体の24%に上りました。
年功序列が崩れつつあり、明確な上下関係意識が薄れつつあることの影響なのかどうかはわかりませんが、いずれにしても、社内でのコミュニケーションを図るうえで「飲み会」が有効な手段の1つであることは間違いないでしょう。


 転職を考え始める年齢は何歳?

 ◆4万人以上の会社員が回答
株式会社インテリジェンスが運営する転職サービス「DODA」では、会社員が転職を考え始める年齢についての調査を行い、その結果を発表しました。
この調査の対象者は、「DODA」人材紹介サービスに登録した人のうち登録時の年齢が22~39歳(転職回数0回)の大卒以上の男女で、4万人以上から回答がありました。

 ◆ 転職を考え始めた年齢は?
転職を考え始めた年齢についての回答では、「25歳」(13.5%)が最多であり、「26歳」(12.5%)、「24歳」(11.8%)と続いています。4割近くの人が入社2~3年目の段階で次のキャリアを考えているようです。

 ◆職種別ではどうか?
転職を考え始めた年齢について職種別に見ると、下記の年齢がそれぞれ最多となっています。
・「企画・事務」…29歳(8.8%)
・「金融などの専門職」…28歳(9.1%)
・「ITエンジニア」…27歳(9.5%)
・「建築・土木」…27歳(10.6%)
・「モノづくりエンジニア」…26歳(9.7%)
・「メディカル」…26歳(11.6%)
・「営業」…25歳(10.9%)
・「販売・サービス」…25歳(12.6%)

 ◆安定志向の傾向も
最近は比較的若い年齢において転職を考え始める人が多いようですが、社団法人日本能率協会が今年4月に発表した新入社員の意識調査では、約半数の人が「定年まで勤めたい」と回答し、「終身雇用」や「年功序列」を望む傾向も見られます。
会社としては、有能な人材が会社にずっと残ってくれるのがベストでしょうが、そのためには、社員のキャリアアップのために何ができるのか等を真剣に考える必要があるでしょう。


 賃金収入は減少傾向、4人に1人「失業の不安」

 ◆労働者にとっては厳しい状況
連合総研では、10月に労働者を対象に実施した「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」(勤労者短観)の結果を発表しました。
「景気や勤め先の経営状況」「賃金収入と失業不安」などの項目について調査しており、労働者の厳しい状況がうかがえる結果となっています。

 ◆賃金収入は減少傾向に
1年前と比較した賃金収入の増減については、「減った」(32.9%)と回答した人が3割を超えており、前回調査(34.6%)と比べてもほとんど改善が見られませんでした。
また、今後1年の賃金収入見込みについて「減ると思う」(25.5%)と回答した人が前回調査(21.8%)を上回り、「増えると思う」(16.9%)と回答した人は前回調査(21.0%)から減少しています。悲観的な見方をする人の割合が高まっています。

 ◆4人に1人が「失業の不安」
次に、「今後1年間の失業の不安」について「感じる」と回答した人は25.0%で、過去最高を記録した昨年同月(28.3%)よりは低下しましたが、一昨年の同月調査(23.8%)を上回っています。
また、非正社員(男性53.6%、女性34.8%)や20代(32.9%)が感じる失業の不安は、相対的に高くなっています。

 ◆所定外労働、賃金不払い残業
このアンケート調査では、他にも「所定外労働の状況」「賃金不払い残業の状況」などについての調査を行っており、非常に興味深いものとなっていますので、連合総研のホームページ(http://www.rengo-soken.or.jp/webpage/21.html)を覗いてみてください。


 「労働時間適正化キャンペーン」実施中

 ◆全国一斉の電話相談など
厚生労働省では、長時間労働に伴う問題解消を図るために、11月を「労働時間適正化キャンペーン」と定め、全国一斉の電話相談の実施をはじめ、使用者団体・労働組合への協力要請、リーフレットの配布などによる周知啓発などの取組みを集中的に実施しています。

 ◆労働時間をめぐる現状
平成21年の総務省調査によると、週60時間以上働いている人の割合は全体の9.2%で、30代の男性に限ってみると全体の倍の水準となる18.0%にも上ります。
1カ月の残業時間が80時間を超える状態が続くと、心身の健康を害するばかりか、過労死の危険性が高まると言われています。
過労死などで労災認定された件数は平成21年度に293件となっており、過重労働による健康障害の事例が数多く報告されています。また、労働基準監督署による賃金不払残業の是正指導も多く見られます。

 ◆キャンペーンの重点事項
このような状況を受け、厚生労働省では、平成22年度も「労働時間適正化キャンペーン」を実施し、長時間労働の抑制を行うなど、労働時間の適正化に向けて労使の主体的な取組みを促すとともに、重点監督などを行っています。
今年度の重点取組み事項は、次の3点となっています。
(1)時間外労働協定の適正化などによる時間外・休日労働の削減
(2)長時間労働者への医師による面接指導など労働者の健康管理に関する措置の徹底
(3)労働時間の適正な把握の徹底

 ◆賃金不払残業が大きな問題に
長時間労働と同様に、現在、賃金不払残業(サービス残業)が大きな問題になっています。
このキャンペーンを機に、恒常的に長時間労働が行われていないか、長時間労働者の健康管理について配慮がなされているか、労働時間が適正に把握されているかなど、労働環境を今一度見直してみましょう。

2010/11/01

11月の事務所便り

 休日が取りやすい「業種」「地域」は?

 ◆「年間休日」に関する調査結果から
人材紹介大手の株式会社インテリジェンスが行った「年間休日調査」の結果が9月中旬に発表されました。この調査は法人企業5,000社を対象とした大規模なものです。
企業における年間休日数については「120日以上」(76.2%)としているところが最多であり、以下、「100~119日」(21.4%)、「99日以下」(2.4%)と続いています。

 ◆業種別に見るとどうなっているか
業種別では、年間休日数が「120日以上」の企業の割合は「金融」(95.5%)、「IT」(95.4%)、「メディア」(82.1%)の順に多くなっています。逆に「120日以上」と回答した割合が少ない業種は、「小売・外食」(24.2%)、「建築・土木」(53.3%)、「サービス」(71.2%)となっています。
年間休日数が多い業種では、法人向けの事業を展開している会社が多く、年間休日数が少ない業種では、年中無休で店舗営業などしているケースが多く、また、土日祝日がかき入れ時となるため週休1日といったケースも多く、全体として休日が少なくなっています。

 ◆地域別に見るとどうなっているか
地域別では、年間休日が「120日以上」の地域の割合は「関東」(83.9%)が最多でした。以下、「東北」(70.2%)、「関西」(68.7%)、「北海道」(58.8%)、「九州・沖縄」(56.6%)、「中国・四国」(55.6%)と続いています。
この結果には、地域の産業構造が影響していると分析されています。「関東」や「関西」には比較的休日の多い業種(金融やITなど)が集まっているため、年間休日数が多くなっています。
逆に、「中国・四国」や「九州・沖縄」などは、大手メーカーの下請工場や365日稼動しているコールセンターなどが比較的多い地域です。このような企業では、従業員がシフト制で勤務している場合が多く、長期の休暇が取得しづらい傾向にあります。


 相次ぐ「未払い残業代」をめぐる紛争事例

 ◆「未払い残業」に関するトラブル
このところ、「未払い残業代」をめぐるトラブル事例がマスコミを賑わせています。9月下旬には、大手旅行会社の子会社、流通業界大手のグループ会社の問題が相次いで取り沙汰されました。
今後、様々な要因から「残業代請求訴訟」等が増加するとも言われており、企業にとっては非常に気になる問題です。

 ◆みなし労働の適用をめぐって
阪急交通社の子会社である「阪急トラベルサポート」の派遣添乗員6名は、「みなし労働時間制」が適用されているのは不当であるとして、未払い残業代の支払いを求め、東京地裁に提訴していました。
先日その判決があり、同地裁の裁判官は「みなし労働時間制」の適用を認めたうえで、1人当たり84万円~271万円の支払いを同社に求めました。
判決では、携帯電話による報告や添乗報告書などによる労働時間の把握は困難であったと認定して「みなし労働時間制」の適用は認めました。しかし、ツアーごとに「みなし労働時間」を決定すべきであると判断したのです。

 ◆労基署の是正勧告を受けて
イオングループの「マックスバリュ東北」では、秋田県内の2店舗において未払い残業があるとして、今年の3月に労働基準監督署から是正勧告を受けていました。
その後、同社では、青森・岩手・秋田・山形の全90店舗における未払い残業についての調査を行い、過去2年間で従業員1,009人(8,687人中)が未払い残業を行っていたと認めました。従業員1人当たりの月間の未払い残業時間は平均7.1時間であり、今年の11月末までに未払い総額約2億2,000万円を支払うと発表しました。

 ◆「労務リスク」に備える!
多くの企業は「未払い残業」に関して、非常に大きな労務リスクを抱えています。過去の未払い残業代について、いつ従業員(または退職者)から請求がなされるか、労働基準監督署からの指摘を受けるかわからない時代となっています。
今後は、無駄な残業を発生させない仕組みづくり,労務管理上の工夫、就業規則・社内規定の整備等が、より一層求められるでしょう。


 新しい高齢者医療制度の行方

 ◆2013年度に廃止予定
何かと話題となった「後期高齢者医療制度」(長寿医療制度)ですが、民主党による新政権発足後、見直しの論議が活発化しています。
厚生労働省は2013年度の同制度廃止と新制度導入を目指していますが、今後の高齢者医療に大きな影響を与える制度改革の動向に注目が集まっています。

 ◆現在の制度の仕組み
後期高齢者医療制度は、2008年4月に導入されました。都道府県単位で保険料が決定される仕組みで、75歳以上の人(約1,400万人)が対象となっています。
保険料の徴収は市町村が行い、医療給付などは「後期高齢者医療広域連合」(都道府県ごとに全市町村が参加・設立)が運営を行っています。

 ◆新制度が導入されると?
厚生労働省では、この後期高齢者医療制度を廃止して2013年度から新しい高齢者医療制度を導入するとしています。新制度では、75歳以上の高齢者のうち、現役サラリーマンと扶養家族(約200万人)は「健康保険組合」や「協会けんぽ」などの被用者保険に加入し、その他の人(約1,200万人)は国民健康保険に移ることとなります。
なお、国民健康保険については、運営主体を「市町村」単位から「都道府県」単位に広域化する方針が厚生労働省から示されています。

 ◆新制度におけるポイント
なお、新しい高齢者医療制度のポイントは、次の通りとなっています。今後の動きに注目しておきましょう。
(1)年齢によって保険証を変える必要がない
(2)世帯主以外は保険料の負担がない
(3)医療費が高額になっても世帯合算で負担減となる可能性がある


 「働きやすい会社」の条件とは?

 ◆上位10社のうち6社が電機業界
日本経済新聞が行った2010年の「働きやすい会社」ランキングが発表されました。
上位から「ソニー」「東芝」「パナソニック」「日立製作所」「凸版印刷」「富士通」「ダイキン工業」「日本IBM」「富士フイルム」「パナソニック電工」と名だたる企業が続いていますが、社員にとっての「働きやすさ」とは、どんなことなのでしょうか?

 ◆企業の人事・労務制度の充実度を点数化
この調査では、働きやすさの条件として、(1)社員の意欲を向上させる制度、(2)人材の採用・育成と評価、(3)働く側に配慮した職場づくり、(4)子育てに配慮した職場づくりの4項目が挙げられています。
上記の項目はいずれも人事・労務の充実度に関するものであり、これらを点数化し、働く人が何を重視するかを加味して配点が決定され、その結果がランキングに反映されています。

 ◆いかに働きやすい職場をつくるか
働く人が重視する項目に関するアンケートでは、「年次有給休暇の取りやすさ」(48.5%)、「実労働時間の適正さ」(35.6%)などが上位を占めています。
しかし現実的には、多くの社員が「年次有給休暇を取りにくい」、「長時間労働が慢性化している」などと考えている企業は、特に中小企業などでは多いと思われます。

 ◆会社と社員が一体となった取組みを
適正な人員配置を行い、業務の効率化を図り、労働時間の短縮を図ることは、企業経営にとって永遠のテーマであると言えるでしょう。そのためには、会社が作った制度を一方的に社員に押し付けるだけでなく、会社と社員が一体となって業務の効率化について真剣に考え、働きやすい職場としていくための取組みを行うことが必要なのではないでしょうか。


 IT業界エンジニアの自己啓発費用

 ◆1人月1万5,000円以上
IT業界においては、常に最先端で活躍するエンジニアとなるために、書籍を購入して勉強したり、セミナーに参加して最新技術に触れたりということが欠かせません。
そのための自己啓発費用は1人あたり月1万5,000円に上ることが、Tech総研(株式会社リクルート提供)がITエンジニア300名を対象に実施したアンケートでわかりました。

 ◆書籍・雑誌よりもネットで
自己啓発費用の内訳は、「技術関連の書籍代」2,841円、「通信費」9,346円、「セミナー参加費」1,402円で、「その他の費用」を含めると合計1万5,536円となりました。
ただ、各項目における「0円」回答を含めずに算出すると、その平均は「書籍代」5,074円、「通信費」1万159円、「セミナー参加費」9,779円などと大幅に増加します。「0円」回答の中には、その費用を会社が負担しているというケースが含まれているようです。
書籍代(雑誌も含む)と通信費の比較では、圧倒的に通信費が多くなっていますが、ネットで集められる情報が豊富になったことにより、書籍や雑誌を買う必要もなくなったということが考えられます。
 
 ◆「会社の支援なし」が36%
エンジニアたちの勉強意欲は旺盛で、「今年取得したいと思っている技術スキルや資格は?」との質問には、国家資格のほか、ベンダー資格やTOEIC、ビジネス系の専門資格を挙げる人もいました。
キャリアアップのために会社が設けている制度についての質問には、「セミナー参加費補助」と「資格取得支援」という回答が多くみられました。しかし、会社からの支援は「特にない」という回答も全体の約36%あり、会社にとって自己啓発支援のための余裕が以前に比べてなくなっているようです。

 ◆お金がかからない方法も
最近ではお金をかけない自己啓発も増えています。例えば、IT系企業や技術者団体が無料で開催するセミナーがあります。また、技術系のメルマガ購読などの手段も有効だと言えるでしょう。


 創業100年以上「長寿企業」の秘訣は?

 ◆創業500年超の企業は39社
帝国データバンクが行った「長寿企業」(創業100年以上)に関する実態調査によれば、創業100年以上の企業(個人経営、各種法人を含む)は2010年8月時点で2万2,219社あるそうです。
創業時期別にみると、「100年~150年前」が2万56社で、全体の9割が江戸時代末期から明治後期にかけて創業しています。創業300年超は605社、創業500年超は39社という結果でした。

 ◆最も古い企業は?
創業が確認できた企業のうちもっとも古かったのは、寺社仏閣建築を行っている「金剛組」(大阪市)の西暦578年(敏達天皇6年)で、聖徳太子が四天王寺建立のため百済から招いた工匠が始祖とされ、業歴は1400年以上に及びます。

 ◆業種別では「小売業」が最多
業種別に見ると、「小売業」(6,279社)がトップで、製造業(5,447社)、卸売業(5,216社)が続いています。小売業での業歴トップは、山梨県にある仏具小売の「朱宮神仏具店」で、創業は1024年(万寿元年)でした。製造業の業歴トップは京都市にある仏具製造の「田中伊雅佛具店」で、創業は885年頃(仁和年間)です。
都道府県別にみると、「東京都」(2,058社)がトップで、1349年(貞和5年)に創業した和菓子製造の「塩瀬総本家」が最も古い企業です。2位は「愛知県」(1,211社)、3位は「大阪府」(1,080社)となっています。

 ◆長寿企業の秘訣は「変化への対応力」
これら「長寿企業」永続の秘訣は、「変化への対応力」に尽きると言えるでしょう。
戦争・災害、産業構造の変化など、幾多の困難を乗り越えてきた原動力は、過去の成功体験にとらわれず、変化を恐れない姿勢に集約されています。
景気の先行きが不透明な今日において、長寿企業に学ぶべきことは多いのではないでしょうか。


 中小企業における「人材確保・育成」10カ条

 ◆東京商工会議所が発表
東京商工会議所では、中小企業の経営者が人材確保・育成などに取り組むうえで重要と思われるポイントをまとめた「中小企業の人材確保・育成10カ条~企業成長の源泉は人材にあり」という小冊子(http://www.tokyo-cci.or.jp/chusho/10kajou/index.html)を発表しました。
日本の中小企業は、雇用の7割近くを担っていると言われていますが、労働条件などの平均値を見た場合に大企業と比べて見劣りすることが多いため、採用などの労働市場で苦戦を強いられているケースが多くあります。

 ◆10カ条の内容は?
発表されたこの冊子では、「人材の確保・育成は経営の存続とともに最大の経営課題」と位置付け、人材の確保・育成、評価・処遇や企業風土や組織構造といった観点から、経営者が取り組むうえで重要と思われるポイントがまとめています。
10カ条の内容は次の通りです。
(1)「働くことが楽しくなるような事業分野で勝負」
(2)「明確な方針をわかりやすく伝えよ」
(3)「トップが先頭に立って必死で育てる」
(4)「採用ミスは致命傷」
(5)「人が育てば企業も育つ」
(6)「部下の育成は仕事の一部」
(7)「制度や仕組みだけでは動かない」
(8)「中小企業らしさに誇りを持つ」
(9)「真似ずに学べ」
(10)「経営者は教育者」

 ◆業績向上の事例も掲載
この冊子には、会社独自の取組みによって不利な条件を克服し、自社の業績向上に結び付けた事例なども掲載されており、人材育成に悩んでいる企業の担当者にとって大きなヒントとなるのではないでしょうか。


 介護労働者の離職率が減少傾向

 ◆前年度比1.7ポイント減で17%に
介護労働者の離職率が前年度比1.7ポイント減の「17.0%」となったことが、財団法人介護労働安定センターが実施した「介護労働実態調査」で明らかになりました。どのような要因があるのでしょうか?

 ◆採用率25.2%、離職率17.0%
この調査では、訪問介護員および介護職員の1年間(平成20年10月1日~平成21年9月30日)の採用率と離職率を調べた結果、採用率が25.2%、離職率が17.0%となりました。
1年未満の離職率は43.1%、1年以上3年未満の離職率は32.5%と高く、事業所側では、早期の離職防止や定着促進のため、「職場内の仕事上のコミュニケーションの円滑化を図っている」(56.5%)、「労働時間の希望を聞いている」(53.8%)、「賃金・労働時間等の労働条件の改善を行っている」(50.7%)などの方策をとっているようです。

 ◆教育や研修の状況
訪問介護員および介護職員に対する教育や研修の状況については、人材育成のため「教育・研修計画を立てている」が50.4%、「教育・研修に積極的に参加させる」が43.7%、「採用時の教育・研修の充実」が36.5%でした。
過去1年間の教育・研修内容では、「介護技術・知識」が73.2%、「安全対策」が60.5%、「接遇・マナー」が54.9%でした。

 ◆運営上の課題は?
介護サービスを運営していくうえでの問題点については、「今の介護報酬では、人材確保等に十分な賃金を払えない」(52.7%)がトップでした。
介護事業所にとっては、賃金や労働環境の改善にいかに取り組んでいくかが、定着率を上げるための鍵を握っていると言えるでしょう。


 社会保障協定の発効済みが12カ国に拡大

 ◆新たにスペイン、アイルランド
日本との社会保障協定が発効済みの国の数が、これまでのドイツ、イギリス、韓国、アメリカ等10カ国に加え、今年の12月からはスペイン、アイルランドが加わり、12カ国となります。

 ◆「社会保障協定」の目的
社会保障協定の目的は、例えば、日本人が海外で働く場合に、働いている国の社会保障制度と日本の社会保障制度において二重の保険料負担が発生してしまうことの解消にあります。また、日本や海外の年金を受け取るためには、一定の期間その国の年金に加入しなければならない場合があり、保険料の掛捨てになってしまうことの解消です。
このように社会保障協定は、(1)「保険料の二重負担」の防止、(2)「保険料の掛捨て」の防止を目的として、各国と締結されているのです。

 ◆各国との社会保障協定の発効状況
現在の社会保障協定の発効状況ですが、「発効済」がドイツ・イギリス・韓国・アメリカ・ベルギー・フランス・カナダ・オーストラリア・オランダ・チェコ、「署名済(準備中)」がスペイン・アイルランド、イタリア、「交渉中」がスイス・ハンガリー、「交渉準備中」がスウェーデン・ルクセンブルク・ブラジル・フィリピンとなっています。

 ◆改正等についての注意が必要
社会保障協定の内容は、協定を締結する相手国の制度内容に応じてその取扱いが異なる場合があり、また、各国とも年金制度には特例があることも多く、将来的には年金制度の改正が行われる可能性もあるため、注意が必要です。


 ものづくり分野の人材育成事業に補助金

 ◆課題は「中小企業の人材育成」
日本における「ものづくり」を支える中小企業では、熟練技能者の持つ技術・ノウハウ・職人技を次世代に継承するため、人材育成が大きな課題となっています。また、失業者の雇用確保が大きな社会問題となっており、これらの人のための技術研修も併せて実施していくことが必要です。
このような現状に対応するため、全国中小企業団体中央会では、「ものづくり分野の人材育成・確保事業」(ものづくり担い手育成事業)についての申請(第2次募集)を、今年の11月5日まで受け付けています。

 ◆補助の対象となる事業
補助の対象は、地域の産業団体や業種別団体等との連携により、中小企業のものづくりの担い手や担い手になりうる者を対象とした教育・研修等(以下、「研修等」という。)を実施する大学や高等専門学校、高校等の教育機関、中小企業団体、民間企業等が実施する研修等です。

◆補助を受けるには
この事業の対象者として申請を行い補助を受けるためには、「応募資格」と「応募要件」を満たすことが必要となります。
応募資格は、(1)認可法人(中小企業団体中央会、商工会、商工会議所等)、(2)大学、専門学校、(3)株式会社、特例有限会社、合資会社、合名会社、合同会社等で、応募要件は、「常勤役職員が原則として3名以上いるなど、事業および組織運営が適切に行われ、かつ、管理運営体制が整備されており、本事業の円滑な実施に支障をきたすおそれがないこと」、「事業実施機関が中心となり、地域の教育機関、産業関係機関、民間企業、自治体等と協力して取り組むことができること」、「直近2年間で研修等の実績があること」等です。

 ◆対象となる経費
対象となる経費は、教育・研修等を実施する機関の人件費をはじめ、施設使用料や教材費等も含まれ、1件当たりの補助金額は、1,000万円以下となっています。
中長期的な人材育成を考える場合には、このような制度の活用も一度検討されてみてはいかがでしょうか。

2010/10/04

10月の事務所便り

 女性の結婚・出産後の仕事に対する考え方

◆3,000名以上を対象としたインターネット調査
株式会社ユーキャンと株式会社アイシェアは、「女性の結婚・出産後の仕事に関する意識調査」(男性2,217名、女性1,243名が対象)をインターネット上で実施し、先日、その結果が発表されました。

◆女性と男性の考え方には大きなギャップ
結婚・出産後も働き続けたいと考えている女性は全体の46.1%との結果となりました。その理由としては、「結婚後も家庭だけでなく社会との関わりを持ち続けたいから」(25.2%)、「仕事が好きでずっと続けていきたいから」(21.0%)などが多く、経済的な理由である「夫の収入だけでは経済的に厳しいから」を挙げた人は4.6%とわずかでした。
男性では、結婚・出産後も妻に働いてほしいと考えている人が63.0%おり、「自分の収入だけでは経済的に厳しいから」(41.9%)との理由がトップで、女性と男性の考え方には大きなギャップがあることがわかりました。

◆再就職には資格取得が必要?
未婚の女性で、もし夫から「専業主婦になってほしい」と言われても結婚・出産後も働きたいと考えている人のうち、65.0%の人が「資格取得などの準備が必要」と考えていました。そして、そのうち73.7%の人がすでに資格取得に向けた学習を始めているとの結果が明らかになっています。
そして、結婚・出産後も働きたいと考えている女性の興味・あこがれのある資格のうち、上位6つは以下の通りでした。
(1)簿記(28.0%)
(2)行政書士(20. 8%)
(3)社会保険労務士(18.4%)
(3)医療事務(18.4%)
(3)マイクロソフト認定資格(18.4%)
(6)カラーコーディネーター(16.8%)


厳しさが続く就職活動は「苦」?「楽」?

◆就職活動を漢字1文字で表すと?
株式会社毎日コミュニケーションズでは、卒業予定の学生を対象とした「マイコミ学生就職モニター調査」の一環として行っている「あなたの就職活動を漢字1文字で表すと?」の2010年調査の結果を発表しました。この調査は2000年(2001年卒業予定者対象)から毎年実施されており、今年で11回目となっています。

◆「苦」が2年連続で1位
上記の質問について、1位から10位までの結果は以下の通りとなっています。
・1位「苦」(前年1位)
・2位「楽」(前年3位)
・3位「迷」(前年2位)
・4位「進」(前年ランク外)
・4位「動」(前年6位)
・6位「耐」(前年8位)
・7位「難」(前年4位)
・8位「縁」(前年5位)
・9位「疲」(前年9位)
・10位「知」(前年ランク外)

◆結果から何が見える?
厳しい雇用状況の影響を大きく受け、「苦」が2年連続で1位となりましたが、「楽」が前年の3位から2位に浮上しました。これについては、就職活動が「楽(らく)だった」ということではなく、幅広い就職活動を通して多くの企業や人に出会えたことが「楽しかった」と回答している学生が目立ったそうです。
なお、過去に一度も10位以内に入っていなかった「進」が4位に入り、学生の前向きで積極的な姿勢も見受けられます。

◆来年の採用状況は?
厚生労働省の「労働経済動向調査」では、2011年新規学卒者の採用予定者数の前年との増減比較について、「増加」とする事業所の割合が、高校卒13%、大学卒(文科系)13%、大学卒(理科系)14%と、いずれも前年を上回ったとの結果が出ています。
厳しい雇用環境であることには変わりありませんが、学生たちにとってはやや明るい兆しが見えつつあるようです。


今後のメンタルヘルス対策の方向性が明らかに

◆政府の検討会が「報告書」を発表
政府の「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」では、今後のメンタルヘルス対策に関する「報告書」を取りまとめ、発表しました。同検討会は、厚生労働省の「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」が今年5月にまとめた報告の中で「職場におけるメンタルヘルス対策」が重点の1つとされたことを受けて設けられたものです。
今回発表された「報告書」の内容が、今後の国によるメンタルヘルス対策、ひいては企業のメンタルヘルス対策にどのような影響を与えるのか、非常に注目されます。

◆検討会「報告書」のポイント
検討会「報告書」が示した内容のポイントは、次の通りです。
(1)労働者のストレスチェックの実施
一般定期健康診断の際に、「ストレスに関連する労働者の症状・不調」について医師が確認すること。
(2)産業医等との面接の実施、労働者のプライバシー保護
面接が必要とされた労働者については産業医等と面接を行う。その際、ストレスに関連する症状や不調の状況、面接が必要かについて事業者には知らせないこと。
(3)労働者の同意を得たうえでの産業医等の意見陳述
産業医等は、労働者との面接の結果、必要と判断した場合には、労働者の同意を得て、事業者に時間外労働の制限や作業の転換などについて意見を述べること。
(4)産業医等の意見の明示、了解を得るための話合いの実施
事業者は、労働時間の短縮等を行う場合には、産業医等の意見を労働者に明示し、了解を得るための話合いを行うこと。

◆今後のメンタルヘルス対策に活かされるか
メンタルヘルス不調者対策が企業の労務管理上の重要な課題となっていますが、これまでの対策が期待した効果をあげているとは言い難いのが現状です。
厚生労働省では、今後、制度改正に向けた議論を始める予定です。今回の「報告書」の内容が、今後のメンタルヘルス対策に活かされることが大いに期待されます。


企業における「ツイッター」活用の実態

◆活用の状況が明らかに
NTTレゾナント株式会社と株式会社ループス・コミュニケーションズでは、「企業におけるツイッター活用状況」に関する調査(通常業務でツイッターを運用する立場にある企業の担当者が対象。有効回答者数315名)の結果を発表しました。
近頃大きな話題となっている「ツイッター」について、企業による活用の実態が明らかになりました。

◆企業が「ツイッター」を始めた理由は?
ツイッターにおける企業アカウントの運用期間は、「6カ月未満」が64.2%、「1年以上」が12.1%でした。2010年に入ってから運用をスタートした企業が6割超となっており、多くの企業がまだ導入の初期段階にあります。
運用開始の理由としては、「顧客接点を増やしたかったから」(48.9%)、「無料で始められるから」(46.3%)、「担当製品やサービスのブランディングに効果があると考えたため」(41.0%)などとなっています。

◆「ツイッター」でどんな施策を行っているか?
企業アカウントで行っている施策としては、「担当者のキャラクターを工夫して好感を持ってもらうように努めている」(33.7%)が最多で、次に「自社製品・サービスに関するつぶやきに積極的にコメントしている」(33.3%)が続いており、顧客との対話交流に主眼を置く傾向にあるようです。
一方、「自社に関するつぶやきをモニターしている」は14.9%と少なく、「ツイッター上での顧客の声を製品・サービスに積極的に反映させている」(8.9%)や「ツイッターで、アンケートを行ったり、新商品のための意見を顧客から募集したりしている」(7.0%)なども少ない結果となっています。

◆「ツイッター」の効果は?
ツイッター活用による具体的な効果については、「公式ブログへのアクセス数が増加した」(65.5%)や「ソーシャルメディア上での問い合わせ件数が増加した」(56.5%)が多く、それ以外にも、「新規顧客数が増加した」(47.6%)、「既存顧客のリピート率が向上した」(46.9%)、「顧客単価が増加した」(40.0%)など、売上につながる効果も得られているようです。
はじめは個人利用が多かったツイッターですが、今後は企業による活用もますます増えていくでしょう。


重くなる厚生年金の「支え手」の負担

◆「年金扶養比率」とは?
日本の年金制度は、現役世代が支払った保険料で高齢者が受給する年金を支える仕組みですが、現役世代の負担割合を表す数値に「年金扶養比率」があります。
これは、年金受給者である高齢者を何人の現役世代で支えているかを示す数値であり、年金財政の状況を表す指標として使われます。比率が小さくなればなるほど、現役世代の負担が重いことを意味します。
2009年度末時点の厚生年金の年金扶養比率は、高齢者1人あたり「2.47」であり、2008年度末と比べて0.13ポイント低下しています。

◆重くなる現役世代の負担
まとまった厚生年金をもらえる高齢者(原則20年以上加入)の数は、2009年度末時点で1,385万人となり、2008年度末に比べて約62万人増加している一方、厚生年金の加入者は、採用抑制やリストラ、非正規社員の増加の影響などにより約20万人減っています。
今後も現役世代の負担は重くなる一方だと考えられており、公的年金の財政見通しによれば、厚生年金の年金扶養比率は、2030年度には高齢者1人あたり「2.09」にまで低下するとのことです。
国民年金の財政状況はさらに厳しく、年金扶養比率は2015年度には「約2」になる見通しです。

◆年金財政はさらに厳しく?
2009年度の厚生年金の給付費は、23兆7,500億円(前年度比約1兆1,500億円増)でした。加入者の減少などで、保険料収入は約22兆2,400億円(前年度比約4,500億円減)となりました。
保険料収入減は、当面、厚生年金の積立金(2009年度末時点で約120兆円)で賄える計算ですが、これにも限界があり、加入者の減少がさらに進めば、負担と給付の見直しが必要となります。
今後も高齢者が増え続けて給付が膨らんでいけば、年金の「支え手」である現役世代の負担はさらに増していくことになります。また、加入者の減少が進めば、年金財政は今以上に厳しさを増すこととなります。
年金制度の抜本的見直しも含め、長期的な対策が求められています。

企業が期待する法人実効税率の引下げ

◆7割以上が「引き下げるべき」
現在、法人税率の引下げが世界各国で行われている中、政府は「新成長戦略」において、法人実効税率(約40%)を主要国並みに引き下げていくことを掲げています。
帝国データバンクの調査によると、法人実効税率について「引き下げるべき」と回答した企業は1万1,446社中8,171社(構成比71.4%)で、7割以上の企業が引下げを求めていることがわかりました。
引下げを望んでいる企業を規模別にみると、「大企業」が67.1%だったのに対し、「中小企業」では72.7%となっており、中小企業で引下げを求める割合が高いことがわかります。

◆企業は利益の押上げに期待
法人実効税率が引き下げられた場合に、どのようなことに期待するかという質問に対しては、「企業利益の押上げ」と回答した企業が64.6%で最多でした。そして、「企業の国際競争力の向上」(43.9%)、「国内景気の上昇」(41.9%)、「国内雇用の確保」(37.2%)、「企業の海外移転の抑制」(31.3%)と続いています。
また、実効税率が引き下げられた場合に、引き下げられた分を何に充当するか、現段階において最も可能性が高い項目を尋ねた項目では、25.6%の企業が「内部留保」と回答しています。この他、「人員の増強」「社員に還元」などの人的投資、「設備投資の増強」「研究開発投資の拡大」などの資本投資を合わせると、約4割の企業が積極的な投資に充当すると考えていることが明らかになりました。

◆税体系の再構築を
法人課税のうち、最も優先的に見直してほしい税項目に関する質問では、「法人税」が58.8%で最多でした。多くの企業において、法人税の見直しを求めていることがわかります。
法人課税は種類が多く、「事業計画などを複雑にしている」という声も多く聞かれ、企業が納得して税を納めるためにも、税体系をわかりやすく再構築することが必要とされているのではないでしょうか。


製造業における人件費の動向は?

◆10年ぶりの低水準に
2009年度における上場製造業の従業員1人当たりの人件費が10年ぶりの低水準となったことが、日本経済新聞社の調査(新興市場を除く国内の上場製造業1,002社の単独決算が対象)で明らかになりました。
収益の急激な落ち込みに対応するため、人件費の圧縮を進めたことが大きな要因のようです。

◆人件費・労務費とは?
2009年度の従業員1人あたりの「人件費・労務費」は842万円(前期比5%減)となり、1999年度以来の低水準となったそうです。
人件費・労務費とは、損益計算書に記載された「販売費・一般管理費」に含まれる役員報酬・賞与、人件費・福利厚生費と、「製造原価」に含まれる労務費、福利厚生費などを合計したものです。

◆業績の大幅悪化が影響
2009年度における人件費低下には、2008年度の業績の大幅な悪化が影響しています。
2008年度(2009年3月期)は世界的な金融危機のあおりを受け、上場企業全体で7年ぶりの減収・経常減益となり、輸出企業を中心とする製造業では、最終赤字となりました。
そして、業績が大幅に悪化したために、多くの企業では翌年度に報酬削減や賃上げ抑制、賞与の減額などが実施されたのです。

◆明るい兆しも?
日本経団連の調査によれば、大企業の夏季賞与の最終集計結果は、組合員1人あたりの平均妥結額が75万7,638円(前年同期比0.55%増)と3年ぶりに増加し、非製造業では80万4,706円(同0.77%減)と減少したものの、製造業では74万1,395円(同1.02%増)と増加しました。
このように製造業にもわずかながら明るい兆しが見えてはいますが、景気の動向については、まだまだ予断を許さない状況にあると言えるでしょう。


2010年度の最低賃金が決定 全国平均730円に

◆全国平均17円の引上げ
厚生労働省の中央最低賃金審議会では、2010年度の地域別最低賃金(時間額)の引上げの目安を全国平均で15円にすると答申していました(現在の713円からから728円へ引上げ)。
その後、各地方最低賃金審議会による調査・審議が行われ、9月9日までにすべての地方最低賃金審議会で答申があり、引上げの目安は全国平均で17円となり、最終的な全国加重平均額は730円となりました。
答申された最低賃金額は、今後、都道府県労働局において、関係労使からの異議申出に関する手続きを経たうえで正式に決定され、10月から発効の予定です。

◆「最低賃金」とは?
最低賃金は、使用者が労働者に支払わなければならない賃金額の最下限値です。
中央最低賃金審議会が定めた目安を基に47都道府県ごとに定められ、最低賃金に違反した使用者には罰金が科せられるとされています。

◆「全国最低800円」の確保はなるか?
政府は、2020年までの目標として「できる限り早期に全国最低800円を確保」と合意しています。今回も大幅な引上げについて議論されましたが、使用者側は最後まで慎重な姿勢を崩しませんでした。
政府目標は「2020年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る経済成長」が前提となっており、中小企業の生産性向上の取組みや、中小企業に対する支援などが課題となっています。
これらの前提条件が実現せず、施策の実効性がないまま最低賃金のみが大幅に引き上げられれば、企業の経営に影響し、雇用の喪失につながるとの懸念があります。

国民年金保険料の悪質滞納を国税庁が強制徴収へ

◆対象は「悪質な滞納者」
厚生労働省は、国民年金保険料の悪質な滞納者について、財産の差押さえを含む強制徴収を実施することを、国税庁に委任する方針を明らかにしました。
対象は、所得が1,000万円以上あるにもかかわらず保険料を2年以上滞納し、財産を隠している加入者などを想定しているとのことです。

◆財産の差押えも視野に
国税庁への委任は、日本年金機構(旧社会保険庁)の発足に伴って改正された国民年金法に基づく措置であり、主な対象者は、保険料を自分で納めている自営業者や農家などの国民年金の第1号被保険者です。
厚生労働省が納付を督促しても応じないなど、「支払う意思がない」とみなされれば、同省は国税庁に委任し、同庁の職員が滞納分の財産を差し押さえるなどの処分を行うとのことです。
すでに、全国の年金事務所が各市町村に所得情報の提供など協力を求めており、滞納者情報との照合を進めているそうです。

◆当面の対象者は400人程度
国民年金保険料の未納者は300万人以上と言われていますが、学生や低所得者が多いとみられています。厚生労働省が国税庁に徴収を委任する対象は、前年度の所得が1,000万円以上で、財産を隠すなど特に悪質な滞納者に限られるため、当面の対象者は400人程度にとどまる見込みです。
強制徴収の権限は、日本年金機構からの申出により、厚生労働大臣が財務大臣を通じて国税庁長官に委任する形になり、実際の差押えには、国税庁の徴収課や各地方国税局の特別整理部門の職員などが当たるそうです。

◆わかりやすい年金制度改革を
未納者からの保険料徴収ということで、一定の効果はありそうですが、保険料未納の背景には、年金制度そのものへの不信感があると言われています。
現政権には、わかりやすい年金制度改革の方向性を打ち出してもらいたいものです。


今後の「有期労働契約」はどうなるのか?

◆8月下旬に「報告書」原案を公表
厚生労働省の「有期労働契約研究会」では、8月下旬に会合を開き、今後の有期労働契約に関する施策の方向性を示す、「報告書」原案を公表しました。
有期労働契約者の範囲、通常の労働者との処遇の均衡、契約の更新・雇止めなど、今後の「有期労働契約」のあり方に大きな影響を与えるものと見られます。

◆有期労働契約者に関する現状分析と課題
上記の「報告書」原案では、有期契約労働者は、労使の多様なニーズにより増加しており、労働者本人の希望や意見を含めて眺めれば多様な集団になっていると、現状を分析しています。
そして、4つの職務タイプである「正社員同様職務型」(36.4%)、「高度技能活用型」(4.4%)、「別職務・同水準型」(17.0%)、「軽易職務型」(39.0%))」に分類し、就業形態、年齢などの多様な実態を踏まえたうえでの対応が必要であると指摘しています。

◆今後検討される内容
上記内容を踏まえたうえで、今後は、下記の項目を検討するとしています。
(1)契約締結事由の規制
有期労働契約の締結の時点で利用可能な事由を限定することを検討する。
(2)更新回数や利用可能期間に係るルール
一定年限等の「区切り」を超える場合の無期労働契約との公平、紛争防止、雇用の安定や職業能力形成の促進等の観点から、更新回数や利用可能期間の上限の設定を検討する。
(3)雇止め法理(解雇権濫用法理の類推適用の法理)の明確化
定着した判例法理の法律によるルール化を検討する。

◆法改正を含めた制度整備が必要
今後、中長期的に労働力が減少していくと予測される中、有期契約労働者を公正に処遇し、労働者が仕事と家庭生活との調和を図りつつ、生きがい・働きがいのある充実した生活を送ることができるよう、法改正を含めた制度整備がなされることが望まれます。

2010/09/06

9月の事務所便り

外国人留学生の日本企業への就職状況

 ◆やや減少傾向
法務省入国管理局が発表した、平成21年度における「留学」および「就学」の在留資格を有する外国人(「留学生等」)の日本企業等への就職状況によれば、平成21年度に日本企業等への就職を目的として「在留資格変更許可申請」を行った件数は10,230件で、このうち9,584件が許可されており、前年の許可数である11,040件より1,456件(13.2%)減少したそうです。

 ◆在留資格、国籍・出身地の内訳
日本企業等への就職を目的として在留資格の変更が許可された9,584人について、在留資格、国籍・出身地の内訳は次の通りとなっています。
在留資格については、「人文知識・国際業務」が6,677人(69.7%)、「技術」が2,154人(22.5%)で、これら2つの在留資格で全体の92.1%を占めています。
国籍・出身地については、中国(台湾、香港およびマカオを除く)が6,333人(66.1%)で最も多く、韓国、中国(台湾)、ネパール、ベトナムと続いています。
 
 ◆業種、職務内容、報酬について
(1)就職先の業種
非製造業が7,096人(74.0%)、製造業が2,488人(26.0%)で、非製造業は前年比973人、製造業は前年比483人、それぞれ減少しています。
なお、非製造業では、商業・貿易分野、コンピュータ関連分野、教育分野がそれぞれ2,248人(23.5%)、1,252人(13.1%)、705人(7.4%)と上位を占めており、製造業では、機械分野、電機分野がそれぞれ427人(4.5%)、419人(4.4%)と上位を占めています。
(2)就職先での職務内容
翻訳・通訳が2,731人(28.5%)で最も多いものの、前年比986人減少しました。次いで、販売・営業(1,631人)、情報処理(1,010人)、海外業務(576人)の順となっています。
(3)月額報酬
月額報酬20万円以上25万円未満が4,945人(51.6%)と最も多く、次いで20万円未満2,697人(28.1%)、25万円以上30万円未満1,116人(11.6%)の順となっています。

 ◆留学生が企業にとって大きな存在に
日本企業等への就職を目的とした「在留資格変更許可申請」は減少傾向にありますが、国籍・出身地別ではアジア諸国出身者からの申請が90%以上も占めています。
グローバル化が進み、アジア諸国への進出を図りたい日本企業にとっては、留学生の存在はますます大きなものになっていくのではないでしょうか。


「ポスドク(博士研究員)」に対する就職支援

 ◆政府の「1万人支援計画」
博士号取得者らが増加するきっかけとなった政府の「ポストドクター等1万人支援計画」は、最先端の研究を支える人材を育成する目的で1996年度に始まりました。先日の新聞報道によると、当時4,000人程度だった博士号取得者は、1999年度に10,000人を超え、2008年度は17,945人となったそうです。

 ◆「ポスドク」経験者の就職難
ポストドクター制度(ポスドク制度)は、1950年代に米国で国立衛生研究所(NIH)が最初に導入し、生命科学研究をけん引したことで、科学技術の原動力と認知されました。また、短期間のプロジェクトに関して任期付きで雇用すれば、研究者間の競争を促しやすいという面も強調されていました。
ところが、日本では、ポスドク経験者の企業採用が進まず、就職難が問題となり、担当教授からは単に「プロジェクトの労働力」とみなされ、大学などを転々とする「フリーター博士」なる言葉も生まれています。
そして、2009年に始まった「事業仕分け」もさらに追い打ちをかけています。ポスドクや博士課程の人件費などに充てられていた競争的資金の大幅な削減を求めたのです。

 ◆民間企業による就職支援
そんな中、民間企業による支援が増えてきているそうです。ポスドク等の就職支援を専門に扱っているある企業では、毎年約150人の就職あっせんに成功しているそうです。
この企業では、常時約100社の求人企業があり、登録者と企業を引き合わせます。そして、その実績を聞いて登録する人も増加しているそうです。

 ◆上手な活用が求められる
しかし、ポスドク問題に詳しいある大学教授は、「開発リーダーなど即戦力としてポスドクへの期待が強いが、いざ使うと期待外れという過去の経験から、採用には消極的な企業が多い」と分析しています。
今後、日本の科学技術力のけん引役である人材を、企業がうまく活用する仕組みが求められていくでしょう。


どうなる? 新しい高齢者医療制度

 ◆約1,400万人が加入する後期高齢者医療制度
厚生労働省は、75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」に代わる、新たな高齢者医療制度の骨格を固めたそうです。
現在、約1,400万人が加入している後期高齢者医療制度は、2012年度末に廃止とし、そのうち自営業者や無職の人など8割程度の人は、原則として市町村が運営する国民健康保険(国保)に、残りの2割程度を占める会社員やその扶養家族らは、勤務先の健康保険組合や協会けんぽなどに移行させるとしています。

 ◆後期高齢者医療制度への批判
後期高齢者医療制度がスタートしたのは2008年度で、75歳以上をひとくくりとする仕組みのため、「年齢差別」との批判が強く、厚生労働省がこれに代わる新制度を検討してきました。
新制度の導入により75歳以上の人が国保に移る際にも、現行の保険料の負担割合を維持するとしていますが、高齢者が集中する国保の財政悪化が予想され、支援策が検討されています。

 ◆新制度の基本的な骨格
新制度では、地域保険は国保に一本化するとしています。加入する制度を年齢で区分することなく、高齢のサラリーマンや被扶養者は被用者保険に、それ以外の人は国保に加入となります。国保に加入する高齢者については、都道府県ごとに標準保険料を定めるとしています。
これにより、世帯主以外の高齢者は保険料の納付義務がなくなることとなり、たとえ保険料負担が増えたとしても世帯全体で軽減判定が行われるので、負担増が解消されます。働いている高齢者については保険料を事業主と折半することになるので、扶養家族の保険料負担はなくなります。

 ◆今後の制度設計に注目
なお、2年ごとに保険料が上がる現行制度の仕組みは廃止とし、75歳以上が支払う保険料負担の増加率が現役世代を上回らないよう、都道府県ごとに設置する「財政安定化基金」を活用するとしています。
今後も増加が見込まれる医療費問題について、現行制度の反省を活かした制度設計ができるのかが注目されます。


政府による「失業者・求職者」支援対策

 ◆2011年度から恒久措置に
政府・厚生労働省は、職業訓練に取り組む失業者に対して生活費を支給する「緊急人材育成・就職支援基金」(2010年度までの時限措置)を昨年7月から実施していますが、2011年度から恒久措置とし、支給する生活費を10万5,000円(現在は原則10万円)とする方針を示しました。
失業者の訓練対策費を手厚くして雇用の安全網を強化することが狙いで、予算は約2,000億円を見込んでいますが、政府全体で歳出を抑制する中、調整が難航する可能性も指摘されています。

 ◆基金事業の概要
この基金事業は、民主党が衆院選マニフェストで掲げた政策の1つであり、失業手当の切れた失業者や雇用保険の対象外である非正規労働者、自営業を廃業した人などを対象に、職業訓練を受けることを条件として月額10万円の生活費を支給するというものです。利用者は今年7月までに10万人を超えています。
現在の事業は2010年度末までの時限措置とされていますが、前述の通り、2011年度から恒久措置にする方針が打ち出されました。
職業訓練を通じて介護やITなどに関する専門知識を身につけてもらい、また、給付費の上乗せによって、利用者を増やしていきたい考えです。

 ◆新たな失業者支援対策の検討
また、政府は7月下旬に、失業者の生活再建や就職を個別に支援する「パーソナル・サポート・サービス」検討委員会の初会合を開きました。ここでは、住まいや仕事を失った人に対して専任担当者が相談に応じていく制度の創設を検討しており、2012年度からの本格実施を目指すとしています。
不況が長引き、失業者への一層の支援が必要となる中、政府は今後も様々な施策を検討していくものと思われます。


「年金型生命保険」二重課税は違法

 ◆政府が所得税還付の方針を発表
死亡保険金を年金で受け取る生命保険について、「相続税と所得税の両方を課税するのは違法である」との最高裁判所の判決を受け、政府は、同種契約の生命保険で徴収しすぎた所得税を還付する方針を発表しました。
二重課税として税金が還付される対象商品や手続きについて関心が集まっているようです。

 ◆還付の対象商品、還付の手続き
今回問題となったのは、「年金払い特約付き生命保険」という、契約者と被保険者でもある夫が亡くなり、死亡保険金の受取人に指定されていた妻が死亡保険金を一時金や年金で受け取ることができるタイプの保険ですが、「こども保険」や「個人年金保険」と呼ばれるものと同様のタイプのため、税金が還付される対象となる可能性があります。
実際に還付を受けるためには、自分が年金形式で受け取った保険金が還付の対象になるかの確認をする必要がありますが、税務署の他、実際に年金から所得税を天引きした生命保険会社で確認することができます。
還付対象に該当すれば、税務署に対して課税の誤りの訂正を求める手続き(更正の請求)を行う必要があります。ただし、税務署に出向いて手続きをしなければ税務署から還付されることはないので、注意が必要です。
ただ、国税庁は具体的にどの商品が還付の対象になるのかの判断基準をまだ公表していないため、確定的な回答は得にくい状況となっています。遅くとも年末までには具体的な還付の対象や手続きが国税庁のホームページ上で周知されるようです。

 ◆住民税や国民健康保険料などにも影響
所得税が変わると、住民税も還付される可能性が高くなります。住民税などの地方税は「所得税法で認定した所得に対して課税する」のが原則となっているため、年金で受け取った保険金が所得税の課税対象外となれば、住民税も課税対象外となります。
また、住民税額が変更になると、国民健康保険料や介護保険料、介護サービス利用料など広範囲に影響が及びます。
還付の対象や手続きなどに関する今後の具体的な情報に注意が必要です。


ご存知ですか? 厚生労働省の業務改善事例

 ◆ホームページ上で公表
厚生労働省では、国民から寄せられた意見や職員からの提案などに基づいて、同省において実施した「業務改善事例」を取りまとめて、ホームページ上で公表しています。
また、政策の企画立案にあたって重要となる、現場の実態把握のための取組み(現場訪問や意見交換)についても公表しています。
ここでは、最近公表された主な改善事例をご紹介します。

 ◆国民年金保険料の還付金の支払いまでの期間の短縮化(8/9発表)
国民年金保険料の還付金について、「還付の請求書を送付してから実際に支払われるまでの期間が長すぎる」との国民の声を踏まえ、事務処理の流れについて見直しを行い、日本年金機構から国の会計システムへの登録を直接行うことができるようにしました。
これにより、都道府県事務センターにおいて7月5日に処理した分から、国民年金保険料の還付金が支払われるまでの期間は、従来と比べて1週間程度短縮されています。

 ◆新卒者の就職支援のためのわかりやすい説明資料の作成・配布(8/2発表)
現在、全国のハローワークに高卒・大卒就職ジョブサポーターを配置し、高校、大学等と連携して新卒者の就職支援を進めていますが、このジョブサポーターが学校等を訪問した際に、新卒者の就職環境やフリーターになった場合のデメリット等を、説得力をもってわかりやすく説明できるよう、各種データーを取りまとめた「ジョブサポーター用資料」を作成し、配布しました。

 ◆高額療養費制度に関するわかりやすい説明資料の作成(8/2発表)
従来から、「高額療養費制度の内容や支給を受けるための手続きについて詳しく知りたい」との意見が寄せられていたことを踏まえ、患者などの意見も聞きながら、高額療養費制度に関するわかりやすい説明資料を作成し、ホームページに掲載しました。
【参考】高額療養費制度を利用される皆様へ
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/100714.html


労使トラブル増加で「労働審判」申立件数が過去最高に

 ◆申立件数が過去最高に
最高裁判所が2009年における労働審判の申立件数を公表し、3,468件で過去最高となったことがわかりました。労働審判制度は2006年4月にスタートしましたが、4年で約4倍の伸びとなっています。
内容別の内訳では、「解雇等の地位確認」に関する申立てが1,701件、「賃金・手当」に関する申立てが1,059件、「退職金」に関する申立てが205件などとなっています。

 ◆背景に労使トラブルの増加
申立ての多くは労働者や退職者からのものですが、その背景には、不況下における雇用調整の実施、賃金の引下げなどに伴う労使トラブルの増加が挙げられます。
上場企業のうち、2008年秋以降に何らかの「雇用調整」を実施した企業は何と76.7%にのぼるという調査結果も出ています(労働政策研究・研修機構の発表)。雇用調整の具体的内容については、「新規採用の抑制」(53.2%)、「契約社員・パート労働者らの契約不更新」(52.0%)、「不採算部門の縮小、事務所の閉鎖」(45.6%)となっています。

 ◆労働審判制度の特徴
労働審判制度は、使用者と個々の労働者間の権利義務に関する紛争(個別労働関係紛争)について調停または審判を行う手続きで、裁判官1名と審判員2名からなる労働審判委員会が、3回以内の期日で審理を行います。
労使双方が合意すれば「裁判上の和解」と同様の効力が生じ、異議申立てがなされれば民事訴訟の手続きへと移行します。
そして、「民事訴訟」や「あっせん」と比較した場合、労働審判には労働者にとって時間的・費用的なメリットが多いと言えます。

 ◆日頃の労務管理が大事
労使トラブルの増加傾向が続けば、今後も労働審判の申立件数は増えていくものと思われます。企業側としては、トラブルが発生しないように、また、トラブルが労働審判に持ち込まれないように、常日頃からしっかりとした労務管理を行っておくことが必要なのは言うまでもないことです。


メンタルヘルス不調者増加への対応

 ◆約6割の企業で「メンタル不調者が増加」
株式会社アドバンテッジリスクマネジメントは、従業員300名以上の企業・団体の経営者・人事部長を対象とした「安心して働ける環境を創るための人材戦略に関するアンケート」の結果を発表しました。
この中で、「メンタル不調者が増加している」との回答は58.7%に上りました。また、「メンタルヘルス対策の効果は不十分である」との回答は61.2%、「今後メンタルヘルス対策を見直す必要がある」との回答は74.4%でした。

 ◆労災請求件数も増加
6月には厚生労働省から「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況」が発表されていますが、2009年度における精神障害等事案の労災補償状況については、請求件数1,136件(前年度比22.5%増)、支給決定件数234件(同13.0%減)となっています。
業種別では、請求件数については「医療,福祉」に分類される「社会保険・社会福祉・介護事業」が最も多く、支給決定件数については「建設業」に分類される「総合工事業」が最も多くありました。
年齢別では、請求件数、支給決定件数ともに「30~39歳」が最も多くなっています。

 ◆メンタル不調者増加の要因は?
東京都産業労働局が発表した「中小規模事業所におけるメンタルヘルス対策に関する実態調査」(調査対象は従業員10人以上300人未満の事業所)によれば、事業所が考えるメンタル不調理由は、以下の通りとなっています。
(1)職場の人間関係(46.2%)
(2)職場外の個人的な問題(39.1%)
(3)仕事への不適応(39.1%)
(4)仕事の質の高さ(20.3%)
(5)仕事の量の多さ(19.3%)
(6)長時間労働(12.2%)

 ◆職場としてメンタル不調者をどう考えるか
企業によって事情は様々でしょうが、上記の結果からもわかる通り、メンタルヘルス不調者を出さないために、企業には、「職場の人間関係をいかに良好にするか」「従業員それぞれに対していかに上手に仕事を割り振るか」「長時間労働をいかになくすか」などの配慮・努力が求められると言えます。


企業に求められる「受動喫煙防止」の取組み

 ◆労衛法の改正を視野に
厚生労働省は、労働安全衛生法を改正して、職場における受動喫煙対策を義務付ける方針を明らかにしました。
法律を改正してまで受動喫煙対策に取り組もうとする強い意欲が伺えますが、改正法が成立すれば、飲食店や商業施設等には大きな影響を与えることになりそうです。

 ◆健康増進法に基づく「努力義務」
現在、健康増進法では、役所・病院・商業施設など多くの利用者が集まる施設の管理者に対しては、受動喫煙を防止する「努力義務」を課しています。
健康増進法は、国民の健康の増進の重要性が増し、健康づくりや疾病予防を積極的に推進するための環境整備が要請される中、厚生労働省が開始した「健康日本21」プロジェクトを中核とする国民の健康づくり・疾病予防をさらに積極的に推進するため、医療制度改革の一環として2002年に可決・成立した法律です。
厚生労働省は、この法律の規定に基づき、飲食店などを全面的に禁煙とするように、今年の2月に通知を出しました。

 ◆従業員の受動喫煙防止
そして、現在、労働安全衛生法改正についての議論が進められています。
主な内容としては、事務所・工場等は原則として禁煙とすること、喫煙室の設置は認めること、飲食店・商業施設等で接客を行う従業員の受動喫煙を防止するために、室内のたばこの煙に含まれる有害物質の空気中濃度を一定基準以下に抑えるように義務付けることなどです。

 ◆企業には大きな影響と負担
この濃度規制が導入された場合、全面禁煙とするか、喫煙室を設けるか、強力な換気施設を設けるか等の選択を迫られることになります。
改正案は、来年の通常国会に提出される模様ですが、多くの企業に影響を与え、負担を強いることになるため、今後の動向が気になるところです。


ハローワークを利用する求職者の満足度は?

 ◆初めて出口調査を実施
厚生労働省では、全国99のハローワークの窓口を利用した求職者に対し、ハローワークのサービスに関する要望・意見を聞く出口調査を初めて実施し、その結果を発表しました。
サービスについて「満足である」「まあ満足である」との回答は83.8%でした、「待ち時間が長い」「求人票と実際の労働条件が違う場合がある」などの意見が寄せられました。

 ◆8割以上の利用者が「満足」
この調査は7月8日~7月13日に行われ、窓口利用者5,977人のうち5,053人から回答が得られました(回答率84.5%)。
全体的な満足度は、5段階評価のうち「満足である」「まあ満足である」の合計が83.8%で、「不満である」「どちらかと言えば不満である」の合計が4.8%でした。

 ◆利用者からの意見
サービスの改善要望として利用者から寄せられた意見は、次の通りです。
(1)待ち時間の解消に関する意見(95所)
・待ち時間が長い(現状では待ち時間が1時間以上となることがあるが、せめて30分~1時間位にしてほしい)。
・利用者が増加しており、ハローワークの窓口職員を増やすことが必要。
(2)就職支援に関する意見(82所)
・年齢不問求人となっているが、企業に面接に行くと年齢で差別される。企業に対する指導をしてほしい。
・求人票の条件と実際の労働条件が違う場合もある。
・自分に合う求人を提示してほしいが、雇用失業情勢の悪化のため求人が少ない。
(3)施設の拡充に関する意見(78所)
・駐車場が少ない。もう少し駐車スペースを増やしてほしい。
・庁舎が狭い。待合スペースの椅子を増やしてほしい。
(4)職員の接遇に関する意見(44所)
・職業相談窓口のスタッフによって対応の丁寧さに濃淡がある。
・一般の利用者がわかるような用語の説明をしてほしい。
(5)窓口サービスの周知・説明に関する意見(32所)
・受付付近の張り紙が多くてわかりにくい。
・初めてハローワークを利用する時に、どのようなサービスがあるかがわかりづらいので、総合受付サービスは特に丁寧に対応してほしい。

2010/08/04

8月の事務所便り

低い日本における女性の就業率

◆日本は30カ国中29位
政府は、2010年版「男女共同参画白書」を公表しました。この白書によれば、高校以上で教育を受けた女性が仕事に就いている割合が、日本はOECD(経済協力開発機構)加盟国の30カ国中29位だったそうです。
日本は66.1%で1999年に比べて4.7ポイント上昇しましたが、OECD全体の平均値である79.5%を大きく下回っており、学歴・能力があっても社会の中で活かす機会が少なく、受け皿が不十分である実態が指摘されています。
なお、上位からノルウェー(88.8%)、スウェーデン(88.0%)、イギリス(85.8%)と続いており、最下位は韓国(61.2%)でした。
 
◆十分活かされない女性の能力
白書では、「高等教育によって形成された女性の能力が、日本では就業の形で十分に生かされていない」と指摘されており、仕事に就いていたとしても、結婚・出産などを機に退職する女性が非常に多いとみています。
この他、男女の給与に格差があることも女性の就労を妨げている一因だと指摘しています。「女性全体の賃金総額が男性の4割弱と試算されること」、「賃金単価や就業時間、就業者数のいずれも男性の7割程度にとどまっていること」は、先進国では最低レベルと言われており、勤続年数や役職を男性と同じレベルにまで高める必要性があるとしています。
 
◆潜在力を活かす取組みが必要
今後の対策としては、「女性の能力を高め、それを発揮できる環境整備を進めていく必要がある」としており、仕事と子育てが両立できる就業環境の整備、理工系の分野における女性の活躍の機会を増やしていく必要性が指摘されています。
また、結婚や子育てに伴う退職が減少すれば、最大で445万人の労働力の増加につながるとの試算もされています。

◆「M字カーブ」の状態
就業者と求職活動をしている人の割合を示す「労働力率」については、女性は20代と40代に比べて30代の女性の労働人口の割合が落ち込む「M字カーブ」の状態が続いており、こうした女性たちや、潜在的な就業希望者も働けるようにすれば、女性の労働人口を現在の「2,770万人」から「3,215万人」に増やすことができるとされています。
ワークライフバランスの推進など、女性の潜在力を生かす取組みが、ますます求められます。






障害者「雇用納付金制度」「雇用率制度」の改正

◆「障害者雇用納付金制度」とは?
障害者雇用促進法では「障害者雇用率制度」が設けられており、常用雇用労働者数が56人以上の一般事業主は、その常用雇用労働者数の1.8%以上の身体障害者または知的障害者を雇用しなければなりません。
これを下回っている場合には、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて、1人につき月額5万円の「障害者雇用納付金」を納付しなければなりません。
一方、常用雇用労働者数が300人を超える事業主で法定の障害者雇用率(1.8%)を超えて障害者を雇用している場合には、その超えて雇用している障害者の人数に応じて、1人につき月額2万7,000円の「障害者雇用調整金」が支給されます。

◆改正点について
改正障害者雇用促進法が平成21年4月から段階的に施行されていますが、平成22年7月からは、以下の内容が施行されています。
(1)「障害者雇用納付金制度」の対象事業主の拡大
従来は、常用雇用労働者数が「301人以上」の事業主が対象(昭和52年以降)でしたが、「201人以上」に拡大されました。なお、平成27年4月からは「101人以上」に拡大されます。
(2)「障害者雇用率制度」の対象労働者の拡大
短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満)が、障害者雇用率制度の対象となりました。これにより、常用雇用労働者の総数や実雇用障害者数の計算の際に、短時間労働者を「0.5カウント」としてカウントします。

◆改正の目的
上記(1)の改正の目的は、近年、障害者雇用が進展する中で、中小企業における障害者雇用状況の改善が遅れているため、障害者の身近な雇用の場である中小企業における障害者雇用の促進を図ることです。
また、上記(2)については、障害者によっては、障害の特性や程度、加齢に伴う体力の低下等により長時間労働が難しい場合があるほか、障害者が福祉的就労から一般雇用へ移行していくための段階的な就労形態として有効であるなどの理由から、改正がなされました。

◆改正の影響
今回の改正により、障害者雇用の促進が期待される一方で、初めて障害者を雇用する企業にとっては、作業施設・設備の改善、特別の雇用管理等が必要になるなど、一定の経済的負担を伴うこともあり、ハードとソフト両面での環境整備が必要となります。




離婚時のトラブルを上手に回避するには

◆「養育費不払い」が増加傾向
厚生労働省の「全国母子世帯等調査」(2006年度)によれば、離婚の際に養育費の取決めをしている母子家庭は39%であり、養育費の支払いを「現在も受けている」という家庭はその約半分の19%にすぎないそうです。最近では、養育費の不払いが増加傾向にあるようで、社団法人家庭問題情報センターの「養育費相談支援センター」(http://www1.odn.ne.jp/fpic/youikuhi/)によれば、2009年度における不払いの相談が前年度比で約5割増えたそうです。

◆強制執行をするには何が必要か?
口約束や念書などの取決めだけでは「強制執行」ができないため、「公正証書」を作成するか、家庭裁判所での離婚調停の際に「調停調書」の内容としてきちんと決めておくことが重要になってくるそうです。
養育費の請求は、子供が未成年の間はいつでも行うことができ、離婚時に決めていなくても、その後の申立ても可能です。調停などで決めたにもかかわらず支払いがない場合には、裁判所が履行を勧告してくれます。これに相手が従わなければ、強制執行が可能となります。

◆金額の変更は可能か?
離婚後に養育費の金額変更などを望む場合は、まずは話し合うことが大切です。合意ができない場合は、家庭裁判所で新たに調停を求めれば、公正証書などで決めた内容であっても変更が認められる場合があります。ただし、状況に変化がなければ、その後の増減は認められにくいのが現状のようです。

◆トラブルになりやすい「住宅」「生命保険」
離婚後の大きな問題の1つとして「住宅」があります。第三者に売られる可能性を低くするため、夫婦共有名義であったマンションについて妻単独名義への変更を希望しても、ローンの債務者が元夫になっているため、銀行が承諾しないという相談が増えているそうです。
妻に経済力がない場合などは、ローンの切替えが認められないケースも多いようですが、妻の実父に連帯保証人になってもらうなどして、妻の収入と合算することによりローンの切替えが認められる場合もあるそうです。
この他トラブルになりやすいのは「生命保険」です。元夫が生命保険の受取人名義を元妻の名前にしたまま変更していなかった場合などは、離婚の原因が妻の側にあったとしても、男性が死亡すれば保険金は別れた妻のものとなります。
離婚時にトラブルはつきものですが、あらかじめ「予防策」と「解決策」を知っておくことが、一番の有効手段となるのではないでしょうか。




国民健康保険組合への補助金を削減へ

◆2011年度予算での検討
政府は、2011年度予算において国民健康保険組合(国保組合)向けの補助金を減らす検討に入ったそうです。これにはどのような理由があるのでしょうか?

◆国保組合とは?
国保組合とは、自営業者などが同業者でつくる健康保険のことで、医師、薬剤師、土木建築、弁護士などの団体が都道府県ごとに設置しており、現在、165の組合があるようです。
業種別に組織された国保組合は政治力が非常に強く、改革がされにくかったのですが、今般、財務省と厚生労働省が予算の無駄遣いを洗い出す中で、議案に上がってきたようです。

◆「高福祉」の傾向
健康保険には、主に中小企業のサラリーマンが加入する「協会けんぽ」や、大企業のサラリーマンが中心の「健康保険組合」、自営業者などが加入する「市町村国民健康保険」などがありますが、いずれも医療費の3割の自己負担が原則となっています。
しかし、国保組合の多くは、手厚いサービスで「高福祉」となっているようです。

◆低い保険料負担
一方、保険料負担は、所得の多少にかかわらず定額負担にしている国保組合が約9割だそうです。
これを他の健康保険と同様に所得に応じた保険料負担にすると、かなりの保険料収入が見込まれますが、この場合、医師や歯科医師、土木建築における国保組合においては、自己の保険料収入で医療費支出が賄えるため、国からの補助金をなくしても単独で運営できることとなるようです。
その他の国保組合でも、補助金は不要とまでは言えないとしても、過大なものであると考えられています。

◆改革が実行されるか
政府の考えによれば、特定の人だけが少ない負担で手厚いサービスを受けられる仕組みを改め、補助金削減を図っていくようです。
昨今、消費税率引上げの議論が活発化しつつありますが、その前に、特定業種の既得権益にどこまで手をつけることができるのか、政府の改革姿勢が問われてくるのではないでしょうか。




「長期安定志向」の新入社員

◆約500人の新入社員が回答
産業能率大学では、新入社員の意識や将来の目標などに関するアンケートを実施し、「2010年度 新入社員の会社生活調査」として発表しました。
この調査は、1990年から実施されているもので、今年度は151社515人を対象に実施し、505人(男性360人、女性145人)から有効回答を得て集計されています。

◆将来の展望について
今年度の新入社員については、将来の進路として「管理職として部下を動かし、部門の業績向上の指揮を執る」という「管理職志向」の人が44.3%となり、「役職には就かず、担当業務エキスパートとして成果を上げる」という「専門職志向」の人の44.0%を初めて上回ったそうです。一方、「独立志向」は不人気で、過去最低の8.7%にとどまったそうです。
また、「終身雇用制度を望むか」という質問では、「望む」人が71.1%で、過去最高だった前年度より2.4ポイント減少しました。「転職は挫折」と考える傾向が高いようです。

◆「理想の年収」と「現実予想の年収」
35歳時点での理想の年収については、過去最低となった前年度の731万円をさらに下回り、723万円となりました。この質問は2000年度の調査から続いていますが、その年と比較すると「1,000万円以上」の回答が大幅に減り、「600万円」という回答が大幅に増加しています。
また、現実を予想した年収も586万円で過去最低となっています。

◆企業側としてどう考えるか
この調査結果を見てみると、今年度の新入社員は、勤め人として「ふつうの道」から外れることを不安視する傾向にあるようです。独立は考えず、同じ会社に長期勤務して、管理職を目指し、年収についても無難な金額を望んでいます。
会社側として考えると、長期安定志向の社員というのは、中長期的な視点で見れば「人材育成ができる」という利点もあるのではないでしょうか。






新しい年金制度はどうなっていくのか?

◆不安・不信は払拭されるか?
政府内に設置されている「新年金制度に関する検討会」では、6月下旬に新しい年金制度に関する7項目の基本原則を発表しました。
年金制度に対する国民の不安感・不信感が増す中、どのような制度を作り上げていくのでしょうか。

◆示された7つの原則
上記の検討会が示した7つの原則は、次の通りです。政府は、2013年に関連法案を国会に提出し、2014年度以降の導入を目指すとしています。
(1)「年金制度の一元化」
(2)「最低保障年金の導入」
(3)「負担と給付の関係の明確化」
(4)「持続可能な制度の構築」
(5)「年金記録の確実な管理・チェック」
(6)「未納・未加入ゼロ」
(7)「国民的議論による制度の設計」

◆「年金制度の一元化」と「最低保障年金の導入」
新制度の大きな柱は、「年金制度の一元化」と「最低保障年金の導入」です。これらは昨年8月に行われた衆議院選挙における民主党のマニフェストにも示されていました。
このときのマニフェストによれば、「年金制度の一元化」とは、すべての人が同じ年金制度に加入し、職業が変わっても面倒な手続きが不要となるように、年金制度を例外なく一元化することであり、「最低保障年金の導入」とは、消費税を財源とし、すべての人が7万円以上(減額の場合あり)の年金を受け取れるようにすることです。

◆国民が納得できる制度を
先頃行われた参議院選挙で民主党が敗れて「国会のねじれ現象」が生じたため、法案作成の先行きは非常に不透明だともいえます。しかし今後、新制度に関する議論が重ねられ、多くの国民が納得できる新しい年金制度が構築されていくことが望まれます。






男性の育児を支援する「イクメンプロジェクト」

◆6月17日にスタート
厚生労働省では、6月17日から「イクメンプロジェクト」をスタートさせました。「イクメン」とは「育児を積極的に行う男性」「子育てを楽しみ自分自身も成長する男性」の略称であり、このプロジェクトでは、男性の子育てへの参加や育児休業取得の促進を目的としています。
改正育児・介護休業法の施行と合わせ、育児支援をさらに進めていこうという政府の強い意向が伺えます。

◆低い男性の育児休業取得率
厚生労働省が平成20年に行った「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査」の結果によれば、男性で「育児休業制度を利用したい」と思う人の割合は31.8%、「育児のための短時間勤務制度を利用したい」と思う人の割合は34.6%だそうです。
しかし、平成20年における男性の育児休業取得率は1.23%と非常に低くなっており、育児休業制度を利用したいと思ってはいるものの、実際には利用できていない男性が多いようです。
また、総務省が平成18年に行った「社会生活基本調査」の結果によれば、夫が育児に関わる時間は、妻の就業状況にかかわらず1日当たり30分程度と非常に短く、世界的にみても非常に低い水準となっています。

◆「イクメン(サポーター)登録」とは?
このような状況の中、「イクメンプロジェクト」には、働く男性でも育児をより積極的に行う社会の気運を高めようというねらいがあります。
専用サイト(http://www.ikumen-project.jp/index.html)が厚生労働省の委託事業として立ち上げられ、「育てる男が、家族を変える。社会が動く。」のキャッチフレーズのもと、個人(独身でも可)が「イクメン登録」をして自分の決意や夢を全国に宣言することができます。
また、企業・団体等は「イクメンサポーター登録」をして、このプロジェクトに対する熱意、イクメンたちへの応援メッセージなどを宣言することができます。






「残業」と「デート」はどちらが大切?

◆平成22年度の新入社員を対象とした調査
公益財団法人日本生産性本部の「就職力センター」と社団法人日本経済青年協議会では、平成22年度の新入社員を対象とした「働くことの意識調査」(55社2,663人が回答)の結果を発表しました。
この調査結果から、今どきの新入社員の考え方をうかがい知ることができます。

◆「お気楽志向」が減少
まず、「第一志望の会社に入れたか」との質問で「はい」と答えた人は55.2%で、昨年の62.3%からに7.1ポイント減少しており、厳しい就職活動だったことが表れています。
そして、「人並み以上に働きたいか」との質問では、「人並み以上」と答えた人が43.0%(前年は41.0%)、「人並みで十分」と答えた人が49.3%(前年は50.3%)との結果となり、「お気楽志向」が退潮したと分析されています。

◆「デート」よりも「残業」?
次に、「仕事中心か生活中心か」との質問では、「仕事と生活の両立」という回答が82.8%を占め、「仕事中心」との回答(9.2%)が「生活中心」との回答(7.9%)を上回っています。
そして「デートの約束があった時、残業を命じられたら、あなたはどうしますか」との質問では、「デートをやめて仕事をする」と答えた「残業派」の人が85.3%、「仕事をことわってデートをする」と答えた「デート派」の人が14.2%でした。この「85.3%」と「14.2%」の差は、昭和44年度の調査開始以来、過去最高の開きだそうです。
男女別に見ると、「残業派」の男性81.9%、女性88.8%で、女性のほうが仕事を優先する傾向が強いようです。

◆詳しい調査結果について
その他、詳しい調査結果(6月28日発表)については、公益財団法人日本生産性本部のホームページ(http://activity.jpc-net.jp/detail/lrw/activity000985.html)でご覧いただくことができます。






今年も注意! 職場における「熱中症」予防対策

◆平成21年の発生状況
 厚生労働省の発表によれば、平成21年の職場における熱中症による死亡者数は8人(根全年は17人)だったそうです。昨年は少なかったといえますが、例年は20名前後で推移しています。業種別では、建設業(5人)が多くなっています。
 作業開始からの日数別にみると、88%が7日以内に発生し、発生月別にみると、すべて7月か8月に発生しています。

◆そもそも「熱中症」とは?
熱中症は、高温多湿な環境で体内の水分や塩分のバランスが崩れることにより、体内の調整機能が破綻して発症する障害の総称であり、以下のような様々な症状が現れます。
・めまい・失神
・筋肉痛・筋肉の硬直
・大量の発汗
・頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感
・意識障害・痙攣・手足の運動障害
・高体温

◆厚生労働省の取組み
厚生労働省では、「職場における熱中症の予防」について、平成21年6月に発出した通達に基づく以下の対策を図ることとしており、都道府県労働局や労働基準監督署による事業場への指導などにより、取組みを推進しています。
(1)職場の暑熱の状況を把握し、必要な作業環境管理、作業管理、健康管理等を行うこと
(2)計画的な熱への順化期間(熱に慣れ、その環境に適応する期間)の設定
(3)自覚症状の有無にかかわらない水分・塩分の摂取
(4)熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患(糖尿病等)を踏まえた健康管理など
詳細につきましては、厚生労働省ホームページ「職場における熱中症の予防について」(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000006xcz-att/2r98520000006xjw.pdf)をご確認ください。






男女の金銭感覚と最近のお小遣い事情

◆男女の金銭感覚の違いは?
東京スター銀行では、株式会社アイシェアと共同で今年4月行った「男女の金銭感覚調査」の結果を発表しました。調査対象はネットユーザー男女1,275名で、非常に興味深い内容となっています。

◆夫が妻にしてほしくない節約術
既婚男性に聞いた「奥様にしてほしくない節約術・やりくり」という質問(複数回答)では、上位1~3位は以下の結果となっています。
(1)「スーパーのビニール袋を大量に持って帰る」(53.8%)
(2)「よほど汚れてない限り、風呂の水は2回使う」(44.1%)
(3)「1円でも安いものを探してスーパーをハシゴする」(39.3%)

◆家計管理はどちらが行う?
また、未婚者に聞いた「将来結婚したら自分で家計を管理したいと思うか」という質問では、「自分で管理したい」「どちらかというと自分で管理したい」を合わせた「管理したい」派の人は、男性61.2%、女性84.6%でした。
未婚の男性が家計を自分で管理したい理由(複数回答)のトップは、「自分で家計をコントロールしたいから」(50.2%)」。未婚の女性が自分で管理したい理由のトップは「相手に任せっきりにしてしまうと不安だから」(65.0%)という結果でした。

◆最近のお小遣い事情は?
新生フィナンシャルが運営するカードローンのブランド「レイク」からは、「2010年サラリーマンの小遣い調査」の結果が発表されています。調査はインターネット上で行われ、20~50代のサラリーマン約1,000名が回答しています。

◆毎月4万6,000円
「毎月の小遣い額」は4万6,000円でした。不況の影響か、前年よりも5,000円もダウンし、ダウンは3年連続です。なお、「理想の小遣い額」は6万1,300円となっています。
毎月の小遣い額が最多だったのは1990年で、このときは7万6,000円でした。

◆サラリーマンはワンコインランチ
 昼食代に関する調査では、1食当たり500円で、まさに「ワンコインランチ」となっています。これは過去10年間の調査で最低の金額です。

2010/07/01

7月の事務所便り

 「新卒者体験雇用事業」の拡充について

 ◆6月7日から改正
平成22年6月7日から、「新卒者体験雇用事業」の内容が拡充されています。
この事業は、就職先が決まっていない新規学卒者を対象として、企業が体験的な雇用の機会を設けることにより、就職先の選択肢を広げるとともに、その後の正規雇用に結び付けることを目的としています
この制度を活用する企業には、「新卒者体験雇用奨励金」が支給されます。今回はこの奨励金の「体験雇用期間」と「支給額」が改正されました。

 ◆主な要件と改正点
この制度の対象者は、卒業後も就職活動を継続している大学生や高校生等で、ハローワークへ登録していることが条件となります。
対象者を受け入れる企業は、ハローワークへ体験雇用求人を登録する必要があり、体験雇用の開始日は「卒業日の翌日以降」となっています。
制度改正前の体験雇用期間は「1カ月」でしたが、改正後は「最長3カ月」まで可能となり、奨励金の額は「8万円」から「最大16万円」(1カ月目:8万円、2・3カ月目:各4万円)となりました。

 ◆申請までの流れ
体験雇用の開始にあたっては、企業は対象者との間で有期雇用契約を締結します。体験雇用期間中の労働時間は、通常の労働者の1週間の所定労働時間と同程度(30時間を下回らない)で設定し、契約で定めた賃金を支払います。
そして、体験雇用開始日から2週間以内に「体験雇用実施計画書」を提出し、その後、体験雇用終了日の翌日から起算して1カ月以内に「体験雇用結果報告書兼新卒者体験雇用奨励金支給申請書」を提出することとなります。

 ◆中小企業にとっての大きなチャンス
世界的な不況、それに伴う企業の業績不振の影響で、就職内定率は低下傾向にありますが、これを逆手にとれば、中小企業にとっては良い人材を採用する大きなチャンスだとも言われています。
このような制度をうまく活用して、人材の採用・定着につなげたいものです。


 病院での待ち時間が減少 その要因は?

 ◆厚生労働省の調査より
今年3月に、厚生労働省から2008年の「受療行動調査」が発表されましたが、これにより、「病院での待ち時間」の状況が改善していることがわかりました。
この調査は、全国の医療施設を利用する方を対象に「医療に対する満足度」を調査しているもので、3年に1回行われています。

 ◆「待ち時間」に関する調査
この調査項目の中で注目すべきは、外来患者に対して行った「診察前の待ち時間」(予約を行った場合は予約時間からの待ち時間)についてです。「1時間未満」の割合は68.7%となっており、調査開始の1996年と比較すると8.6ポイント増加しており、「1時間以上」の割合は減少しています。
病院の種類別に見ると、特定機能病院、大病院、中病院では「30分以上1時間未満」の割合が最も多く、それぞれ25%前後となっています。小病院、療養病床を有する病院では「15分以上30分未満」の割合が26%前後と最も多くなっています。

 ◆待ち時間短縮の理由
待ち時間短縮の理由は、「診察時間の予約」や「病院独自の工夫」によるものとみられています。しかし、病院側が一人ひとりの診察に十分な時間を割こうとすると、待ち時間の短縮には限界があり、患者側が望む「30分未満」にはまだまだ課題があるようです。

 ◆病院側の工夫
そこで最近では、待ち時間の短縮ではなく「時間の有効活用」や「イライラ解消」に重点を置き、患者の満足度を高める工夫をする病院が増えているようです。
例えば、インターネット等で事前に院内の混み具合がわかるようにしたり、診察の順番や待ち人数がわかる発券機表示モニターを設置したりする病院もあるようです。
待ち時間に対するイライラを少なくするような取組みを行う病院は、今後も増えていくことが予想されます。


 労災における「障害認定の男女差」見直しへ

 ◆京都地裁の判断
労災で顔や首に大やけどを負った男性が、「女性よりも労災の障害等級が低いのは男女平等を定めた憲法に反する」として、国の等級認定の取消しを求めていた訴訟で、京都地方裁判所は「合理的な理由なく性別による差別的扱いをしており、憲法14条に違反する」として、国に認定の取消しを命じる判決を下しました。

 ◆男女間で障害等級の差
報道によれば、男性は勤務先で作業中、溶けた金属が作業服に燃え移って大やけどを負いました。顔や胸、腹などに跡が残ったため、他の症状を併合して労災認定を申請し、労働基準監督署は男性の障害等級を「11級」と認定しました。
労災保険の障害等級表では、「外貌に著しい醜状を残すもの」として、顔などにけがが残った場合、男性の等級を「12級」、女性の等級を「7級」と規定しています。これは、容姿に著しい傷跡が残った場合、女性のほうが男性より精神的苦痛が大きいなどとしているためです。

 ◆給付金額に大きな差
労働者に後遺症が残った場合に支給される給付について、症状や傷の程度に応じて「1級」から「14級」までの障害等級が定められています。
今回のケースでは、「11級」の認定となるため、223日分を一時金として1回支給されるだけですが、仮に「7級」と認定された場合は、平均賃金の131日分が年金として生涯にわたり支給されることになります。そのため、性別だけで給付金額に大きな格差が生じることは著しく不合理であると判断されたといえます。

 ◆埋まりつつある男女差
障害補償は本来、障害による「逸失利益」を補償する意味合いが強く、交通事故などの損害補償をめぐる裁判でも広く争われており、かつては顔の傷に関して男性の場合はほとんど認められていませんでした。しかし、最近では憲法14条(法の下の平等)に反するとの司法判断が出始めています。
国は、今回の訴訟について控訴を断念したようであり、これに関連して、厚生労働省は、今年度中に労災保険の障害等級表を見直す方針を示しています。


 「協会けんぽ救済」で多くの健保組合が負担増に

 ◆改正法が可決・成立
全国健康保険協会(協会けんぽ)の大幅な保険料上昇を抑制するための「医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」が参議院本会議で可決・成立しました(5月12日)。

 ◆改正の主な内容
改正の主な内容は次の通りです。
(1)後期高齢者支援金で年収比例の仕組みを一部導入
(2)協会けんぽの国庫補助率を引上げ(13%→16.4%)
(3)会社員に扶養されていた高齢者の保険料負担の軽減措置を継続
(4)保険料の滞納世帯でも高校生以下に短期被保険者証を交付

 ◆健保と共済が「肩代わり」
新制度は7月から実施となり、財政が悪化する「協会けんぽ」の再建を支援するため、後期高齢者支援金の負担を軽減するとともに、保険給付の国庫補助率を16.4%(現行は13%)に引き上げます。
また、大企業の会社員らが加入する「健康保険組合」と公務員などが加入する「共済組合」に負担増を求めています。これにより、全国平均で9.9%に上がるはずだった「協会けんぽ」の保険料率(2010年度)は9.34%に抑えられることとなります。

 ◆国庫補助率も引上げへ
国庫補助率の引上げにより、国は協会けんぽへ2010年度に610億円、2011年度に920億円の公費(税金)を投入するとしています。
厚生労働省では、1,478組合ある健保組合のうち、6割強の922組合で負担増になると試算しており、556の組合においては逆に負担が減る見込みとされています。「協会けんぽ」の救済策は2010年度から3年間適用となり、2013年度からは「後期高齢者医療制度」を廃止し、新しい高齢者医療制度に移行する方針です。
改正法による影響は大きく、特に大企業の健保組合においては2010年度に約5億円の負担増となると試算されている組合もあります。2010年度の健保全体の予算は6,600億円の赤字になる見通しで、3期連続赤字となります。
このような厳しい状況の中、高齢化社会に対応した高齢者医療制度を含む医療保険制度の立直しを一刻も早く行う必要がありそうです。


 高い日本企業の税負担率

 ◆海外先進国との比較
新聞報道によれば、国際的に比較した日本企業の税負担の重さが改めて浮き彫りになっているようです。「日経株価指数300」の構成企業(銀行・証券・保険を除く)を対象に、2009年度の連結決算を集計したところ、法人税・事業税・住民税などの企業の税負担額を、税引き前利益で割って会計上の税負担率を計算すると「49.1%」に達するとのことです。
同様の計算方法で先進国の主要企業の比率を求めると、アメリカ「29.9%」、ドイツ「34.4%」、イギリス「36.0%」となっています。
また、国税、地方税を合わせた法定実効税率について、日本は「40.7%」となっていますが、ドイツ「約29%」、イギリス「約28%」で、アメリカの「約40%」を超えて世界最高水準となっています。

 ◆国際競争率の低下
先進諸国に比べて日本だけが突出して法人税が高いということは、日本企業が国際競争力を失ってしまうということです。先進諸国の企業は税率が低い分、資金を設備投資や研究開発費に投じることができます。
一方、日本企業はたとえ同じ利益を上げたとしても、諸外国企業と同様に設備費や開発費を投入することができず、後れをとってしまうこととなります。このままだと、日本の有望企業が、税負担の低い国に流出してしまうおそれがあると言われています。

 ◆法人税の引下げの検討
国家財政が悪化をたどる中、法人税の引下げには反対論もあります。しかし、このままでは、日本の企業は競争力を失い、業績の悪化から税収は低下し、さらなる財政悪化という悪循環に陥ることも予想されます。
世界を見渡すと、台湾が法人税率を25%から17%に引き下げるなど、引下げの流れが加速しています。世界情勢に倣い、まずは企業競争力を強化することが必要だと思われます。

 ◆法人税と消費税
しかし、法人税を引き下げると、企業が活力を取り戻すまでの間、一旦は税収が落ちることとなり、その分をどこかで補填しなければなりません。
そこで考えられるのは、消費税の引上げです。現在、消費税は5%と決して低率ではありませんが、ドイツやイギリスの17%前後と比較すれば引上げの余地はあるのかもしれません。
しかし、消費税引上げは国内の景気に大きく影響することから、十分に慎重な検討が求められます。


 「メンタルヘルス対策」をめぐる動き

 ◆ストレス社会の中で
日本における自殺者数は、近年、3万人を超える数で推移していますが、そのうち約2,500人の原因・動機は「勤務問題」によるものだとされています。また、精神障害等による労災認定件数も増加傾向にあり、仕事や職業生活に強いストレスを感じている労働者は約6割に上るとの調査結果もあるようです。厚生労働省の調査では、うつ病患者を含む「気分障害」の患者は100万人を超えているそうです。
そのような状況の中、厚生労働省に設置された「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」(学者、医師、弁護士などで構成)が、5月下旬に初めての会合を開きました。

 ◆今後検討される内容
この検討会においては、(1)メンタルヘルス不調者を把握する方法(2)不調者の把握後の作業転換・職場復帰などの対応方法を検討するとしています。
このうち(1)については、具体的には、労働安全衛生法に基づく定期健康診断において、労働者が不利益を被らないように配慮をしつつ、効果的にメンタルヘルス不調者を把握する方法について検討していくとしています。
また、(2)については、メンタルヘルス不調者の把握後、会社による労働時間の短縮、作業の転換、休業、職場復帰等の対応が適切に行われるように、外部機関の活用や医師の確保に関する制度等について検討していくとしています。

 ◆企業としての対応が急務
労働基準監督署では、平成22年度においては、「メンタルヘルス対策の具体的な取組みについての事業場への指導・助言」を特に強化する方針を示しています。
企業としても、メンタルヘルス不調者が発生しないための取組み、仮に不調者が発生してしまった場合の対応に関してのルール作り(「休職制度」「職場復帰制度」「リハビリ勤務制度」等の規定化)など、対応が急務となっている状況です。


 「夫は外で仕事、妻は主婦業」の考え方

 ◆出産や子育てに関する調査
国立社会保障・人口問題研究所では、このほど、2008年7月に実施した「全国家庭動向調査(第4回)」(調査票配布数:13,045票、有効回収数:10, 192票、有効回収率:約78.1%)の結果を発表しました。
この調査は、5年周期で実施されており、家庭機能の変化の動向や要因を把握するために、出産や子育ての現状、家族関係の実態を明らかにすることを目的とするものです。

 ◆夫婦の役割に関する妻の意識
この調査の中で、夫婦に関する考え方として、「夫は外で働き、妻は主婦業に専念」という考え方に賛成する既婚女性の割合は45.0%(前回調査時41.1%)で、前回調査時から3.9ポイント上昇しました。この項目について上昇に転じたのは、1993年の初回調査以降初めてのことだそうです。
また、「夫も家事や育児を平等に分担すべき」と考える既婚女性の割合は82.9%(同82.8%)と前回調査時とほぼ同じでした。「夫は会社の仕事を優先すべきだ」と考える既婚女性も66.6%(同66.9%)とあまり変化は見られませんでした。

 ◆従業員の様々なニーズ
「夫婦の役割」に対する考え方が人それぞれであるのは当然のことであり、企業としては、そのようなことを常に意識しておく必要があるでしょう。
今後、少子化等により労働力が不足していくと予測される中、企業としては、従業員の様々なニーズに対応した労働時間制度・休暇取得制度の導入や、勤務体系の構築を考えなければならないのかもしれません。


 「テレワーク(在宅勤務)」導入企業が増加

 ◆2009年は19%の企業が導入
総務省が4月下旬に「2009年通信利用動向調査」の結果を発表しましたが、それによれば、テレワーク(在宅勤務)を導入している企業は2009年に19.0%となったそうです。2007年は10.8%でしたから、2年でほぼ倍増しているといえます。
増加している要因には、どのようなことがあるのでしょうか。

 ◆「非常時に備えて」の理由が増加
テレワークを導入している企業の導入目的を見てみると、「勤務者の移動時間の短縮」(51.5%)、「定型的業務の効率性(生産性)の向上」(41.8%)が上位を占めています。
そして、「地震や新型インフルエンザ等の非常時の事業継続に備えて」が、前年の19.2%から20.4ポイントも上昇し、39.6%となっています。
その他の理由としては、「顧客満足度の向上」(18.7%)、「勤務者にゆとりと健康的な生活の実現」(13.3%)、「通勤弱者(身体障害者、高齢者、育児中の女性等)」への対応(13.2%)などが挙げられています。

 ◆導入企業の多くは大企業
テレワーク導入企業のうち、96.2%が「導入の効果があった」と回答しており、その効果はとても大きいようです。
現在、テレワーク導入企業の中心は大企業となっているようですが、今後は、非常時への対応(危機管理)、従業員への配慮、顧客先への配慮といった理由から、中小企業でも導入が進んでいくかもしれません。


 育児・介護休業法に関する新しい援助・調停制度

 ◆改正育児・介護休業法の施行
改正育児・介護休業法の主要部分の施行が6月30日に迫っています(一部の規定は、「常時100人以下の労働者を雇用する中小企業」について平成24年7月1日から施行されます)。
この改正により、「短時間勤務制度の義務化」「パパママ育休プラス制度の創設」などが図られ、仕事と子育ての両立支援のための取組みが強化されますが、改正前の法律においても、育児休業取得による不利益取扱いなどは禁止されており、それらに関するトラブルは多いようです。

 ◆相談件数が大幅に増加
厚生労働省の発表によれば、2009年度に全国の労働局に寄せられた「育児・介護休業法に関する相談」は1,657件だったそうです。この件数は、前年度から約3割も増えています。
相談の主な内容は、育児休業取得による解雇、降格、正社員からパートタイマーへの変更の強要などとなっています。

 ◆苦情処理や紛争解決のために
改正育児・介護休業法においては、「苦情処理・紛争解決の援助及び調停の仕組み」が創設され、すでに実施されています。具体的には、都道府県労働局長による「援助制度」(2009年9月スタート)、社会保険労務士や弁護士などの専門家で構成される「調停制度」(2010年4月スタート)です。
これらの制度は、企業側・従業員側それぞれの言い分を聞き、紛争に関する結論が出るまでに、「援助制度」は1~2カ月程度、「調停制度」は3カ月程度かかると言われています。
改正法の主要部分の施行により、今後、「援助制度」や「調停制度」の利用件数が増えていくものと思われます。企業としては、まずは、育児休業・介護休業などに関して紛争とならないような制度作り、労務管理等が求められます。


 「勤務間インターバル規制」とは?

 ◆IT企業などで導入
最近、長時間労働が恒常化しているIT関連企業などにおいて、「勤務間インターバル規制」を導入する動きが見られるそうです。このインターバル規制は、1日の仕事が終了してから次に仕事を開始するまでに、一定時間の休息を義務付けるものです。
なぜ今、導入する企業が増えているのでしょうか。

 ◆EU指令では「連続11時間の休息」
上記の規制に関しては、EU(欧州連合)が加盟国の法律に関する基準を定めた「EU労働時間指令」の中で、「最低連続11時間の休息」を規定しています。なぜ、このような規制が定められているかというと、「ワーク・ライフ・バランス」に配慮するためであり、労働者の健康を守るためです。
仮にEUの基準でこの規制を導入した場合、例えば午後11時まで勤務した日の翌日は、午前10時までは勤務が免除されることになります。
日本の情報労連(情報産業労働組合連合会)では、昨年の春闘において、「導入が可能な組合においては、インターバル規制の導入に向けた労使間協議を促進する」という方針を掲げました。

 ◆ワーク・ライフ・バランスに向けて
厚生労働省から発表されている「労働経済白書」によれば、25~44歳の男性のうち週に60時間以上働いている人の割合は20%以上になっており、週5日勤務した場合、1日に12時間も働いている計算になります。
この「働き盛り」世代の健康を守り、「ワーク・ライフ・バランス社会」を実現させるため、今後、日本でもこのインターバル規制についてさらに議論されていくかもしれません。

2010/06/02

6月の事務所便り

 上司と若手社員の考え方のギャップ

 ◆若手社員のモチベーションが低下
東京海上日動リスクコンサルティング株式会社が、20~50代のサラリーマンを対象に昨夏に「仕事に関する意識調査」を行いました。このアンケートの中に「現在の仕事へのモチベーション」という項目がありましたが、全体的にモチベーションの低下傾向が見られた中、特に20代社員の低下が著しい結果となりました。
「現在の仕事にやる気がある」と答えた社員の割合は、2008年調査と2009年調査を比較すると、20代では57.3%→50.0%(7.3ポイント減)、30代では50.5%→50.3%(0.2ポイント減)、40代では49.2%→54.4%(5.2ポイント増)、50代では55.0%→52.0%(3.0ポイント減)との結果でした。
同社では、20代の若手社員のモチベーションが低下した原因として、「会社の将来性への不安」「人材育成の機会の不十分さ」などを挙げています。40代では会社の将来性への不安を抱きつつも、それがモチベーションの低下には繋がっていない結果となっており、ここに若手社員とのギャップが見られます。

 ◆上司は若手社員の「困難克服力」に期待
また、JTBモチベーションズ(JTBグループの人事コンサルティング会社)では、今年の2月に若手社員の成長などに関する調査の結果を発表しました。約40%の上司は部下の「困難を克服する力」に大きな期待をかけている一方で、このような「困難克服力」を伸ばしたいと考えている若手社員(入社1年目から3年目まで)は約20%しかいないという結果となりました。
ここでも、「上司の求めるもの」と「若手社員の意識」の大きなギャップが見られる結果となりました。

 ◆いかに考え方のギャップを小さくするか
「上司と若手社員の考え方のギャップ」、これはいつの時代においても存在する永遠のテーマなのかもしれません。しかし、初めから「ギャップがあるのはしょうがない」言って諦めてはいけません。
この不景気の時代、会社が一丸となって業務を進めていくためには、上司と部下、年配者と若者のギャップをいかに小さくしていくかを考えなければなりません。世代間ギャップを埋めることを社員個人に頼るのではなく、「ギャップを小さくするために会社として何かできることはないか」を考える必要があるのではないでしょうか。


 健康診断で「うつ病検査」を義務化へ

 ◆うつ病などの労災請求・認定件数
2008年度のうつ病を含む精神障害などの労災請求件数は927件(3年で41.3%増)、認定件数は269件(3年で111.8%増)となっており、増加傾向にあります。
そこで、厚生労働省では、企業が実施している健康診断において、うつ病などの精神疾患に関する検査を義務付ける方針を明らかにしました。
2011年度からの実施を目指すとしており、同省が1月に設置した「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」が今後まとめる報告書に盛り込まれる予定で、労働安全衛生法の改正(または厚生労働省令の改正)により対応していくものと思われます。

 ◆高い自殺率の背景にうつ病などの精神疾患
日本では、平成10年から12年連続で毎年3万人を超える人が自殺しており、人口10万人当たりの自殺死亡率(自殺による死亡率)は、欧米の先進諸国と比較して突出して高い水準にあります。
また、うつ病の患者数は2008年には100万人を超えています。これらうつ病をはじめとする精神疾患の増加が、高い自殺死亡率の背景にあると言われているため、自殺防止対策とあわせて、うつ病・メンタルヘルス対策への対策が急務とされていました。

 ◆一体となった取組みが必要
健康診断における「うつ病検査」の実施が、うつ病などの精神疾患の減少につながることが期待されていますが、政府・厚生労働省の対策に頼るだけでなく、職場・地域・家庭におけるうつ病・メンタルヘルス対策への一層の取組みが期待されるところです。


 年金記録の回復がより早く!~新たな回復基準~

 ◆年金記録確認第三者委員会の役割
世間を騒がせた「消えた年金」や「宙に浮いた年金」を救済するため、昨年6月に総務省に「年金記録確認第三者委員会」(第三者委員会)が設置されました。
この第三者委員会は、年金記録の確認について、国(厚生労働省)に記録が残っていなく、本人も領収書等の物的な証拠を持っていないといったケースについて、国民の立場に立ち、申立てを十分に汲み取り、様々な関連資料を検討したうえで、記録訂正に関し公正な判断を示すことが任務とされています。

 ◆新たな年金記録救済策
このほど(5月6日)、日本年金機構では、年金記録救済策をさらに手厚くするため、上記の第三者委員会で審議することなしに年金事務所(旧社会保険事務所)の調査だけで年金記録を回復できる基準を示しました。その内容は次の通りです。
(1)厚生年金(標準報酬月額の改ざんの疑い)
・6カ月以上さかのぼって標準報酬月額が大きく引き下げられている記録が事実に反していると疑われるなどの条件を満たす場合
(2)厚生年金(脱退手当金の誤った支給記録)
・昭和49年まで発行されていた厚生年金の被保険者証に、脱退手当金を支給した表示がないなどの条件を満たす場合
・脱退手当金の支給日より前にその計算基礎にされていない厚生年金の期間があるなどの条件を満たす場合
(3)国民年金(2年以下の記録漏れ)
・保険料納付記録が漏れていると思われる期間が2年以下であって、その他の期間は納付済みであるなどの一定の条件を満たす場合

 ◆その他の年金記録回復の基準
上記以外にも、確定申告書の控えが残っている場合や、勤めていた事業所が廃止された後に厚生年金の加入記録がさかのぼって変更されている場合などの回復基準があります。


 起業を目指す若者が減っている!?

 ◆「1万人アンケート」の結果から
野村総合研究所では、昨年末に「生活者1万人アンケートにみる日本人の価値観・消費行動の変化」を発表しました。これは、15~69歳の約1万人を対象に行ったアンケートをまとめたもので、1997年から3年ごとに実施されています。
このアンケートで、「会社を立ち上げて経営者になる」、つまり「起業家を目指す」人が減っていることが明らかになりました。

 ◆減少する「起業家志向」
「一流企業に勤めるよりも、自分で事業をおこしたいか」との質問に対して、肯定的な意見(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人)は「35%」で、1997年の「49%」から14ポイントも低下しています。世代別でみると、30代の起業家志向が39%と最も高く、10代では27%と最も低い結果となりました。

 ◆不景気下でより安定志向へ
景気の低迷により、2009年の新興企業向け市場の東証マザーズの新規上場数は4社でした。ピーク時(2004年)の57社から大幅減少しています。
また、上記のアンケートで、仕事をしている人のうち59%(前回調査から3ポイント増)の人が「転職は考えていない」と答えるなど、不景気の中、より安定的な生活を希望する人が増えている傾向が鮮明に表れる結果となりました。


 「ワークルールチェッカー」の診断結果

 ◆15万アクセス突破
連合は、今年2月に開設した、労働条件簡易診断Webサイトの「ワークルールチェッカー」(http://www.work-check.jp/)のアクセス数が15万件(4月13日時点)に達したと発表しました。診断結果が「ひとまず安心」(チェック項目がゼロ)だったのは全体の約2割で、雇用形態を問わず、法令違反の可能性が示唆される結果が目立っているそうです。

 ◆寄せられた回答の多くに労働法令違反の可能性
この「ワークルールチェッカー」は、Webサイトにパソコンや携帯電話からアクセスし、9つの設問(派遣労働者は14問)の中から該当する項目にチェックを入れることで、職場の法令遵守度合いを点検できる仕組みです。
9つの設問は次の通りです。
(1)労働時間・休日・賃金・業務内容などの労働条件を書面でもらっていない。
(2)給与明細に「厚生年金保険料」「健康保険料」が載っていない。
(3)給与明細に「雇用保険料」が載っていない。
(4)残業したのに、残業代が全部または一部支払われない。
(5)有給休暇がもらえない、あっても取りづらい。
(6)会社で健康診断を受ける機会がないか、自腹で健康診断をしている。
(7)仕事上の病気・ケガをしたら、会社から「自分で治せ」と言われた。
(8)会社の都合で仕事が休みになったのに、賃金補償がない。
(9)仕事中にミスをしたら、罰金をとられる。

 ◆有給休暇や残業、労働条件の書面明示などに問題が
設問ごとにみると、利用者の約半数が「有給休暇がもらえない、あっても取りづらい」にチェックしており、次いで「残業したのに、残業代が全部または一部支払われない」、「労働時間・休日・賃金・業務内容などの労働条件を書面でもらっていない」がともに約35%となっています。
派遣労働者のみの設問では、「『打合せ』、『見学』の名目で派遣先と事前に会ったことがある」をチェックした人の割合が約53%で一番高かったようです。
設問の内容は基本的なものが中心ですが、チェック項目がゼロの「ひとまず安心」が全体の2割ほどしかなかったということを考えると、労使トラブルが発生する可能性がある企業の割合は高く、その対策が急がれます。


 残業時間の削減を進めるには?

 ◆長時間労働の短縮に向けて
過去に「働きバチ」と揶揄されたこともある日本人の残業時間は、以前よりは短くなっているものの、国際的にみるとまだまだ長いと言われています。
1人あたりの平均年間総実労働時間は減少傾向にあるものの、正社員については、今も2,000時間前後で推移しています。働き盛りの30~40代男性では、フルタイム勤務者のうち週60時間以上働く人が全体の2割を超えています
ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を実現させるためにも長時間労働の短縮は必要不可欠ですし、また、この4月からは改正労働基準法が施行され、月60時間を超える残業に支払う賃金割増率が25%から50%以上へと引き上げられており(中小企業は猶予期間あり)、人件費抑制の対策としても労働時間の短縮が急務と言えます。

 ◆残業時間削減への各社の取組み
残業時間削減に向けて、ある企業では、会議で使用するディスプレー上に、社員1秒あたりの平均賃金と会議時間を基に算出した「会議コスト」を秒刻みで表示しているそうです。一人ひとりにコストを意識させ、会議を効率的に進めることが狙いです。この企業では、全スタッフが1日の予定をパソコンに入力し、共有できる仕組みも導入したことにより、月間の平均残業時間が2年前に比べ半分以下となったそうです。
また、他の企業では、1日の予定を管理職に報告させることに加え、全員の時間の使い方を分析することで、長時間労働の原因を分析し、残業削減に取り組んでいるそうです。

 ◆個人でもできる残業削減
残業時間を減らすには、社員の協力も必要不可欠です。仕事を効率的に終わらせるスキルを身につけることができれば、個人でも残業の削減は可能です。
まずは、日常業務を徹底的に見直し、始業から就業までの間にどんな仕事をするのか、スケジュールを書き出すことから始めます。このとき、例えば「13時~17時:資料作成」などと大まかに計画しがちですが、資料作成といっても「データ収集」「情報分析」「入力作業」などいくつもの作業に分かれます。業務を細分化し、事前に準備しておく事項や人に任せられる事項を明確にしておけば、時間を効率的に使えるようになります。
残業時間の削減は労使双方にとって大きなメリットがあります。まずは、会議や打合せ、資料作成などの身近なムダを排除することから始める必要がありそうです。


 「主婦パート」の仕事に対する考え方

 ◆平成22年版を発表
株式会社アイデムの「人と仕事研究所」は、平成22年版の「パートタイマー白書」を発表しました。いわゆる「主婦パート」の実態と労働力としての今後の可能性について書かれていますが、とても興味深い内容となっています。

 ◆「主婦パート」の半数は就労調整せず
主婦パート本人に対して収入について質問したところ、自身の収入に「上限を設けている」と回答した人は約半数(50.5%)で、このうち、いわゆる「103万円の壁」、つまり所得税の非課税限度額や配偶者控除を意識している人は約4割(41.0%)、主婦パート全体の2割に過ぎない結果です。
一方で、一部の企業には「主婦パート=103万円以内で働く人たち」との認識も見受けられ、約半数が収入に上限を設けていないという実態とのギャップが浮き彫りになりました。

 ◆子育てが主婦パートの働き方に影響
主婦パートの多くが「正社員」になりたがっているかといえばそうでもなく、その就労意向は3割程度にとどまっています。ところが、同じ正社員でも勤務時間の短い「短時間正社員」としての就労意向は約6割となっています。
労働時間の長さがネックとなっている背景には、家庭環境、とりわけ「子育て」がありました。例えば「今後の働き方」について、「(税金・社会保険関連の制度が変わり) 収入を制限する必要がなくなった場合」、「子供が成長した場合」、「親の介護・看護の必要がなくなった場合」についてそれぞれ聞くと、特に「子供が成長した場合」に、労働時間を増やして正社員になりたいとの意欲が、強く表れる結果となりました。
主婦の社会進出を阻む要因の大きな1つに税制や社会保険制度があると言われていますが、子育ても、主婦の働き方を決定付ける大きな要因となっているようです。

 ◆労働力としての今後の可能性
上記アンケートでは、企業に「今後、主婦パートが正社員の仕事を担っていくことは可能か」について聞いていますが、「どちらかといえば可能だと思う」も含めれば47.4%の企業が肯定的に考えており、主婦パートが正社員の代替労働力になり得る可能性を示しています。
子育ての問題が解決されれば、主婦パートの一層の活躍が期待でき、仕事の範囲も大きくなってくるはずです。企業も主婦パートの置かれている現状を知ることにより、さらなる活用の道が開けるのではないでしょうか。


 「雇用」や「賃金」に対する企業の考え方

 ◆「企業経営と賃金に関する調査」
独立行政法人労働政策研究・研修機構では、平成20年12月に「今後の企業経営と賃金のあり方に関する調査」として、全国の従業員50人以上を有する企業約15,000社(有効回答2,734社)を対象として大規模な調査を行い、その結果をまとめました。
調査内容としては、賃金の構成要素や賃金制度のあり方、制度見直しの方向で、経営環境や雇用に対する考え方についても含まれています。

 ◆雇用・賃金体系に対する考え方
雇用に対する考え方としては、できるだけ多くの社員について「長期安定雇用」を維持したいと回答した企業は約7割に上り、「従業員の生活を保障するのは企業の務め」と回答した企業は9割近くとなっています。
賃金体系については、過去5年程は年齢・勤続・学歴を重視する「個人属性重視型」が40.5%で最多でしたが、今後は職務遂行能力を重視する「職能重視型」が33.2%と最も多くなっており、成果主義賃金の典型である「短期成果重視型」は8.6%にとどまっています。
賃金制度を見直すにあたって重視する点については、以前・今後のいずれも「個々の職務遂行能力」、「個々の成果」を把握して賃金に反映させることがそれぞれ6割強となっています。

 ◆「職務遂行能力」を重視へ
ここ数年の不景気下で、非正社員だけでなく、正社員でも「雇用の安定」を求めにくい状況となっていますが、企業サイドとしては、以前同様「長期安定雇用」を目指していることがうかがえます。
しかし、その際に重視するのは、以前は「従業員の年齢や学歴」が中心となっていましたが、今後は「職務遂行にあたっての能力」であるということがこの調査により明確になっています。
今後は、職務遂行能力を向上させるための教育制度やその補助に関する充実がより求められるのではないでしょうか。


 職業生活上のピークは何歳?

 ◆30代前半がピーク?
独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「成人キャリア発達に関する調査研究」によれば、現在50代の人は、自らの職業生活を「30代前半がピーク、40代後半が底であった」と振り返っているという結果になりました。
この調査は、2009年1月時点で50~59歳の常勤労働者を対象として行われたものです。

 ◆自分の能力や努力で決まる満足感
「現在の年収」および「勤務先の従業員数」(勤務先全体の従業員数でパート・アルバイトを除くおおよその数)と満足感の関係からみると、年収が高い人ほど、また、勤務先の従業員数が多いほど、これまでの職業生活やキャリアに対する満足感が高い人が多いことがわかりました。
また、「学校での知識が役立っている」と思う人や、「特定の分野で1つの仕事をしてきた」と思う人ほど、仕事への満足感が高くなっています。

 ◆重要だった出来事は何か?
10代から50代の各年代で一番重要だった出来事を質問したところ、10代では「大学への進学」、「正社員として就職」、「学校卒業」、20代では「正社員として就職」、30代では「昇進・昇格」、「転職」、「仕事内容の変更」、40代では「管理職になる」、「昇進・昇格」、「仕事内容の変更」、50代では「仕事内容の変更」、「管理職になる」、「配属先の変更」という結果になりました。
また、学校卒業から現在に至るまでの「職業生活の浮き沈み」を曲線で描いてもらうと、男性は30代前半をピークに40代後半で底を打ち、50代で再び上昇するS字曲線を描く傾向にありました。これに対し、女性は30代~40代では平板な曲線になりますが、50代からの上昇が著しくなっています。

 ◆職業生活上の危機はいつだったか?
過去の自分の職業生活上の危機があった時期は40代が中心となっており、危機の内容としては、会社の仕事面が中心ですが、倒産や転職、上司との人間関係なども挙げられました。
これは、調査対象者のキャリアの大部分について、「雇用情勢悪化期が労働市場参入時期に当たること」や、バブル期を経験後、30代前半~40代前半時以降に経済環境の激変の中で雇用・失業情勢の急激な悪化、40代以降の中期キャリアで経済社会の変革を経験し続けているためと推測されています。


 新規株式上場に関する意向調査

 ◆新規株式上場意向に関する調査結果
帝国データバンクでは、「新規株式上場意向に関するアンケート調査」の結果を発表しました。今年で13回目の調査実施となっています。
調査対象は、調査開始時点で未上場であり、前回までの調査等において新規株式上場の意向を示していた企業4,473社です。この中で回答のあった企業は1,621社で、このうち具体的な上場予定・計画のある「予定企業」および具体化はしていないが上場の希望がある「企業希望」を合わせた631社を「株式上場予備軍企業」と位置付け、具体的な上場計画等のデータを集計しています。

 ◆調査結果の概要
株式上場予備軍企業のうち、上場予定時期は2013年が14.4%(91社)と最も多く、次いで2015年が11.3%(71社)となっています。「未定」と回答した企業は45.5%(287社)で、予備軍企業の約半数を占めています。
上場予定市場としては、複数回答の結果、大証ヘラクレス、JASDAQ、ジャスダックNEOの3市場が今年10月に統合して誕生する予定の「新JASDAQ」が266社と最多で、次いで「東証マザーズ」が245社となっています。
上場に際し希望する株価水準(日経平均)については、「具体的に希望を持たない」あるいは「わからない」と回答した企業が49.6%(313社)でした。具体的な株価水準を回答した企業では「15,000円台」とした企業の12.7%(80社)が最多です。
株式上場を目指す理由(複数回答)としては、「知名度や信用度の向上」が470社、「資金調達力の向上」が365社となっています。

 ◆短期的な予測
景気は「回復の兆し」と言われていますが、株式市況や企業業績の回復には長い時間を要するとみている企業が多いということがわかります。 また、大半の企業では上場の理由として「資金調達力の向上」を挙げていますが、株価低迷で十分な資金調達が望めないことが予想されます。
以上の状況から、上場の希望がありながらも実際に上場する企業は低い数字にとどまるのではないかと予測されます。株式上場傾向が高まるには、もう少し時間がかかるのではないでしょうか。


 国会に提出されている「年金改善法案」の内容

 ◆年金制度全体の改善に向けて
現在、年金に関するいくつかの法案(総称して「年金改善法案」)が国会に提出されています。
高齢期の所得を確保する観点から、国民年金保険料の納付可能期間の延長や、企業型確定拠出年金の加入資格年齢の引上げ・加入者による掛金拠出の認容などが主な内容です。

 ◆国民年金法の一部改正
(1)国民年金保険料の納付可能期間を延長(2年→10年)し、本人の希望により保険料を納付することで、その後の年金受給につなげることができるようにする。
(2)第3号被保険者期間に重複する第2号被保険者期間が新たに判明し年金記録が訂正された場合に、それに引き続く第3号被保険者期間を未届期間とする取扱いを改め、保険料納付済期間のままとして取り扱い、年金を支給することとする。
(3)国民年金の任意加入者(加入期間を増やすため60歳~65歳までの間に任意加入した者)について国民年金基金への加入を可能とし、受給額の充実を図る。

 ◆確定拠出年金法の一部改正
(1)加入資格年齢を引き上げ(60歳→65歳)、企業の雇用状況に応じた柔軟な制度運営を可能とする。
(2)従業員拠出(マッチング拠出)を可能とし所得控除の対象とすること、事業主による従業員に対する継続的投資教育の実施義務を明文化することにより、老後所得の確保に向けた従業員の自主努力を支援する。
(3)企業年金の未請求者対策を推進するため、住基ネットから加入者の住所情報の取得を可能とすることにより、住所不明者の解消を図る。

2010/04/28

5月の事務所便り

アルバイトの時給が上昇傾向にある原因

◆3カ月連続で前年同月比が増
2010年2月におけるアルバイトの全国平均の時給は989円(前年同月比2.1%増)で、3カ月連続で前年同月比が増加しました。不況の影響で正社員の給料が下がりつつある中、なぜアルバイトの時給は上がっているでしょうか?
一般的に、景気回復の局面においては、「正社員の賃金よりも先にパートやアルバイトの時給が上がる傾向がある」と言われています。景気回復の初期には、企業は景気の先行きに自信が持てないため、正社員の賃金を上げたり採用を増やしたりするまでには至らず、まずは時給を上げてパート・アルバイトの採用を増やそうとするためだそうです。

◆要因の1つに「派遣法の改正」
アルバイトの時給アップの1つの要因に、「労働者派遣法の改正」が挙げられています。「登録型派遣」や「製造業務派遣」を原則として禁止する改正法が今国会で成立する可能性が高くなったことを受け、派遣社員を活用していた多くの企業で、改正を前に、派遣社員ではなくアルバイトなどの採用を優先する動きが出ているようです。
しかし、派遣社員経験者はアルバイトよりも正社員を希望する人が多く、安定した仕事を求めている人をアルバイトとして雇おうとすると、時給を上げる必要があり、その結果、時給を押し上げる要因となっているようです。

◆学生の就活優先も一因
最近では、就職難の中、アルバイトよりも就職活動を優先する学生が増え、時給を上げないとアルバイトを集めにくくなっている状況もあります。
例えば、「コンビニエンスストア」は、アルバイトの採用においては「飲食店」と競合しますが、時給は「居酒屋」などに比べて見劣りすることが多いため、時給を上げる必要に迫られているとの見方もあります。
また、アルバイト経験を就職活動に活かそうと考える学生が増えているため、学生が就職に役立つと考える「オフィスワーク」や「営業職」に人気が集まり、「家庭教師」や「引越し」などの分野を敬遠する傾向にあるようです。
学生の就職活動はますます厳しさを増しているため、企業にとっては学生アルバイトの確保が難しい状況は当面続くようです。


定期健康診断で異常が多い事業所は要注意!

◆多くの検査項目で有所見率が上昇
厚生労働省では、定期健康診断で異常が見られた従業員の割合(有所見率)が全国平均より高い事業所(従業員が50人以上で、主な検査項目で全国平均より有所見率やその増加率が大きい事業所、過去3年間で脳・心臓疾患で労災支給決定があった事業所など)に対し、労働基準監督署が重点的に改善を指導するよう求める通知を3月下旬に出しました。
定期健康診断全体の有所見率は、平成11年の「43%」から平成20年の「51%」へと増加しています。平成20年の有所見率については、脳・心臓疾患関係の検査項目の1つである血中脂質検査の「32%」が最も高く、脳・心臓疾患関係の主な検査項目(血中脂質検査、血圧、血糖検査、尿検査、心電図検査)の有所見率は概ね増加傾向にあります。
また、過重労働による脳・心臓疾患による労災支給決定件数は、平成16年度の「294件」から平成20年度の「377件」へと増加しています。

◆働き方の見直しと保健指導が必要
過重労働による脳・心臓疾患を予防するためには、「時間外・休日労働時間の削減」や「年次有給休暇の取得促進」等の働き方の見直しに加えて、脂質異常症、高血圧等の脳・心臓疾患の発症と関係が深い健康診断項目が有所見である労働者に対し、労働時間の短縮等の就業上の措置を行うとともに、保健指導、健康教育等を通じて有所見項目の改善を図り、脳・心臓疾患の発症リスクを引き下げることも有効だと言われています。

◆具体的な改善指導内容
今回の通知では、事業者の具体的な取組内容として、「定期健診実施後の措置」、「定期健診結果の労働者への確実な通知」、「有所見者に対する医師等による食生活等の保健指導」、「有所見者を含む労働者に対して栄養改善や運動等に取り組むように健康教育・健康相談の実施」などが挙げられています。
一方、都道府県労働局等による具体的な周知啓発、要請等の方法としては、「事業場に対する重点的な周知啓発、要請」や「事業主への自主点検の要請」等があります。
労働安全衛生法では、健診で従業員に異常が見られた場合、医師からの意見聴取や労働時間の短縮、医師による保健指導や健康教育などの義務を事業者に課していますが、今回の指導内容は、これら義務の実施徹底や、実施計画作成時に労働衛生コンサルタントの助言を受けることなどが中心となるとされています。


今年の新入社員は「ETC型」?

◆「効率重視」で「コミュニケーション苦手」
公益財団法人日本生産性本部の「職業のあり方研究会」が毎年決定している新入社員のタイプ名について、平成22年度の新入社員のタイプは「ETC型」だと発表されました。 
効率化を重視する一方で、人とのコミュニケーションが苦手な面があることから、高速道路を利用する際に料金所で停止することなく通過できるシステムの「ETC」になぞらえたとのことです。

◆上手に人材を育成するには
同研究会によると、厳しい就職戦線をくぐり抜けてきた今年の新入社員は、携帯電話などのIT活用に長け、情報交換についても積極的と言われており、時間の使い方も効率的で物事をスムーズに進める特徴があるそうです。また、CO2排出量削減など環境問題への関心も高い傾向があります。
しかし、ドライバーと徴収員との対話がなくなったように、効率性を重視するあまり人との直接的なコミュニケーションが不足する面もあります。打ち解けて心を開くまで時間が掛かるため、性急に関係を築こうとすると直前まで「心のバー」が開かないため、上司や先輩は「スピード出し過ぎ」に注意する必要があります。
ただし、理解しようとすれば、仕事のスマートさやIT活用の器用さなどのメリットも徐々に見えてくるため、ゆとりを持って接し、長く活躍できるよううまく育てることが重要になるとのことです。

◆今後の就職環境は?
昨年は、世界金融危機以降の先行き不透明感から採用に慎重な企業が目立ち、特に学生に人気の業種では採用を減らす企業が多く、就職活動が難航した学生が多かったと言われています。
最近は、やや景気が持ち直した感もありますが、まだまだ不透明な部分も多く、学生にとってもしばらく厳しい状況が続きそうです。


厚労省策定の「専門26業務派遣適正化プラン」

◆違法派遣に対する指導監督を強化
労働者派遣法は、ソフトウェア開発や通訳など専門性の高い26業務を除いて、派遣可能期間(原則は1年。最長で3年)の制限を超えて継続して同一就業場所ごとの同一業務に派遣をしてはならないと定めています。
しかし、この派遣可能期間の上限を免れるために、契約上は「専門26業務」と称しつつ、実際には専門性のない業務を行わせている違法派遣が横行している状況があります。そこで厚生労働省は、今年2月に「専門26業務派遣適正化プラン」なるものを策定し、集中的に指導監督を実施すると発表しました。

◆プランの具体的内容は?
具体的には、平成22年3月~4月の2カ月間に集中して次の(1)(2)を行い、さらに(3)を行うとのことです。
(1)大手派遣会社を中心に調査を行い、違法派遣の適正化に向けた厳正な指導監督を行うこと
(2)派遣会社や派遣先になりうる団体に出向いて適正な対応を要請すること
(3)集中期間経過後も引き続き厳正な指導監督を行うこと
なかでも、一般事務とは区分されにくい「事務用機器操作(5号業務)」や「ファイリング(8号業務)」については、その解釈について改めて示されていることからも、特に重点的に指導がなされるようです。

◆今後の労働者派遣についての動向
現在国会で審議中の改正労働者派遣法が成立すれば、さらなる規制強化が行われます。仕事があるときだけ働く「登録型派遣」は専門26業務を除いて禁止され、製造業務への派遣も原則として禁止されます。
このため、派遣社員について、期間従業員として直接雇用契約を結ぶなどの対応策を取り始めている企業もあるようですが、派遣社員に比べて柔軟な採用が難しいため、人数は絞られています。また、直接雇用による人件費負担増を見越して海外へ拠点を移転させる動きも見られます。
なお、今回の「専門26業務派遣適正化プラン」や「改正労働者派遣法案」は、派遣元・派遣先にとって厳しいものであることは間違いありませんが、働き手にとっても働く機会を奪われる可能性が大いにあるのではないかと指摘されています。


けがや病気による「就業不能」への備え

◆恐ろしい「就業不能」のリスク
新聞報道によると、生活保護開始の理由として「働き手の死亡など」が4%であるのに対し、「世帯主の傷病」は40%もあるようです。
日本では、死亡保険をかけている人は多くいますが、けがや病気による長期就業不能に備えて民間の保険に加入している人は少ないのが現状です。「長期就業不能保険」への加入率は米国では29%であるのに対し、日本では約0.1%にとどまっています。
世帯主の傷病は、世帯主本人の収入がなくなってしまうだけでなく、その人を看病する家族の収入まで途絶えてしまうおそれがあるということを頭に入れておかなければなりません。

◆民間の医療保険の活用
もちろん、短期の就業不能に備えた医療保険に加入している人は多くいます。しかし、これはあくまで1~2年程度の短期的なものであり、原則として入院だけしか対象ではありません。自宅療養を含めた長期の就業不能には対応していないのです。
また、前述した「長期就業不能保険」も、すべてのけがや病気をカバーしたものではありません。就業不能の定義は「どんな職業にもまったく従事できない状態」とされており、「うつ病」などの精神疾患や、医学的他覚所見のない「むちうち症」や「腰痛」などは保険給付がおりないとされているケースが多いようです。

◆公的保障制度の理解が大切
そこで、まずは公的保障についての理解を深めることが大切です。会社員であれば健康保険の傷病手当金制度(1日あたりの収入相当額の3分の2が最大1年6カ月間受けられるもの)を利用できます。国民年金や厚生年金からは、傷病が障害年金を受けられる程度の障害に認定されれば、その障害に該当するかぎり生涯にわたって障害年金を受給することができます。これらは「うつ病」などの精神疾患であっても症状によっては受給することができます。
ただし、国民年金や厚生年金については、保険料納付に関する条件を満たしている必要があります。また、自営業者が加入する国民健康保険では、健康保険のような傷病手当金制度がありません。
自分がどんな公的保障を受けられるかを理解したうえで、保障を受けることができないリスクに対する備えをしっかり考えておく必要がありそうです。


雇用調整助成金の不正受給防止対策

◆不正受給が約2億円
雇用調整助成金(中小企業の場合は中小企業緊急雇用安定助成金)については、厚生労働省が昨年来、「支給要件の緩和」や「支給の迅速化」に取り組んでいましたが、一部に不正な受給も見られるようです。
同省では、平成21年4月~平成22年1月の間に52事業所(総額約1億9,350万円)について、架空の休業や教育訓練を実施したなどとして処分しています。処分の内容は、「支給した助成金の返還」と「不正後3年間の助成金の不支給」とされています。

◆具体的な不正受給防止対策
このような状況から、同省では、3月下旬に次のような不正受給防止対策を発表しています。
(1)助成金を受給している事業主に対する実地調査を強化するとともに、休業等を実施した労働者の一部に対して、電話によるヒアリングを行うこと
(2)より的確な実地調査を行うため、事業主の事務負担とならない範囲で、教育訓練に係る「計画届」および「変更届」の内容を見直すこと(教育訓練に係る計画届については労働者別に予定日を記載すること、教育訓練に係る計画届に限り休業等が減少する場合も変更届を提出すること)
(3)教育訓練を実施した場合の確認をより確実に行うため、単に教育訓練を実施したことの証明だけでなく、教育訓練を実施した個々の労働者ごとに受講を証明する書類(事業所内訓練の場合の受講者アンケート、事業所外訓練の場合の受講料の領収書等)の提出を求めること

◆実施時期について
上記の不正受給防止対策は、4月1日から実施されていますが、上記(2)(3)については、6月30日までは、従来の取扱いも可能とされています。


採用担当者の「採用・教育」に対する考え方

◆インターネットによる「1,000人調査」
人材サービス会社の株式会社インテリジェンスでは、昨年12月に企業の採用担当者1,000名を対象に、インターネットによる「採用・教育」に関する意識調査を行いました。
現在の不況下においては、採用を控えたり、採用に慎重になったりしている企業が多いと思いますが、このアンケート結果から、採用・教育現場における生の声をうかがい知ることができます。

◆採用担当者の関心事は何か?
まず「採用・教育に関して、今関心があることは何ですか?」(複数回答)という質問に対しては、上位1~6位は以下の結果となりました。
(1)より良い人材を採る方法(57.4%)
(2)人件費について(49.8%)
(3)従業員全体のモチベーションアップ(46.8%)
(4)従業員全体のスキルアップ(39.4%)
(5)リーダー層の育成(39.1%)
(6)従業員の育成方法(38.7%)
第1位の「より良い人材を採る方法」については、約6割の採用担当者が関心事として挙げており、関心の高さがわかります。
第2位の「人件費について」に関しては、「人件費の関係で、質の良い採用を行い少数精鋭での運用を行わないと厳しい」、「人件費の削減を余儀なくされる中、採用の量を抑制しつつ人材を育成する手腕が問われている」などといったコメントが目立ったそうです。
第3位から第6位まではいずれも「従業員の教育」に関するものでした。

◆教育・育成への対応は?
次に、「従業員への教育・育成に関して、2010年は2009年と比較してどういった対応を検討中ですか?」という質問に対しては、「2009年よりも強化したい」(42.5%)、「特に2009年と変わらない」(37.0%)、「2009年よりも抑制したい」(7.6%)、「わからない、その他」(12.9%)との結果でした。
教育・育成に関しては、「従業員の教育を徹底していきたい」、「従業員の効率アップを図りたい」、「採用後も継続して教育研修を行いながら育成したい」といった積極的な意見、「不況ではあるが人材育成・確保のチャンスである」、「いい人材を採用するチャンスである」といった不況を前向きに捉える意見が見られました。


仕事時間の減少で従業員の満足度はどう変化する?

◆「ワーク・ライフ・バランス」の認知度は?
内閣府では、昨年12月、全国の20歳以上60歳未満の男女2,500名を対象として、「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」(以下、「WLB」)に関するアンケート調査を実施しました。
それによると、WLBの認知度(WLBについて言葉も内容も知っている人の割合)は、前回調査より増加したものの18.9%にとどまっています。WLBという言葉を聞いたことがある人の割合は全体の54.3%でした。

◆仕事時間の増減について
1年前と比較して仕事の時間が増えた人の割合は27.7%、減った人の割合は22.8%でした。増えた理由としては「採用減・人員整理等による業務のしわ寄せ」(35.0%)、減った理由としては「経済情勢の悪化による業務量の減少」(57.3%)が最も多くありました。
仕事の時間が減った人は、代わりに「家族団らん等の家庭生活」、「家族のために行う家事、育児、介護・看護等」など、家族との時間を増やした人が多くいました。

◆仕事時間の減少による影響
仕事の時間が減った人のうち約6割は、生活全般の満足度が低下しています。この背景には、仕事時間の減少による収入の減少があると指摘されています。
これに対し、仕事の時間が減った人でも、「組織全体として」「自ら努力して」など、主体的な要因(自らの努力)で労働時間の短縮に取り組んだ人については、経済情勢の影響で仕事の時間が減少した人よりも生活満足度が高くなっています。

◆モチベーションの維持が重要
不況下においては、労働時間の削減、いわゆる「ダラダラ残業」の削減などに取り組む企業が増えているものと思われます。
企業としては、従業員個々人の労働時間を上手に調整・管理しつつ、「仕事の減少・収入の減少」がそのまま「従業員のモチベーション低下」に繋がらないような工夫が必要とされます。


未払い残業代請求をめぐる民事訴訟の状況

◆社員・元社員が未払い残業代を請求!
最近、未払い残業代をめぐる民事訴訟に関する報道が相次いでなされています。いずれも社員や元社員が、未払いの残業代があるとして会社に対して請求を行っているものです。

◆「残業代請求権放棄」に関する文書
不動産会社の社員・元社員5人が、会社に対して未払い残業代などの支払いを岡山地裁に求めていた訴訟の弁論で、「会社が社員に残業代請求権を放棄させるように誘導していた」として、その手順などを示した内部文書を証拠として提出したそうです。
この文書は「未払い賃金確定手順」という名称で、会社が未払い残業代を支払うように是正勧告を受けた際、支払額確定のために作成したものだそうです。残業代が成果給に含まれていることを社員に再認識させるよう上司に求め、成果給が多額の社員には「未払い賃金なし」で合意するように誘導し、そうでない場合は低額に抑えるよう指示をしていました。
社員側の弁護団では、「文書は労働基準監督署の是正勧告を愚ろうするものであり、誘導された確認書は無効である」と主張しているそうです。

◆「変形労働時間制」を理由に残業代未払い
飲食店で働いていた元アルバイト社員が、「1カ月単位の変形労働時間制を理由にして残業代が支払われなかったのは違法である」と主張して、働いていた会社を相手取り、未払い残業代などの支払いを東京地裁に求めていた訴訟の判決がありました。
東京地裁は、この男性の主張を認め、同社に対して時効分を除く約12万円の支払いを命じる判決を下しました。
同社では、変形労働時間制の採用を理由に1日8時間を超えた分の残業代を一部しか支払っていなかったにもかかわらず、勤務シフト表は半月分しか作成していなかったそうで、東京地裁は、労働基準法の要件を満たしていないと判断しました。

◆リスクへの対応が必要
未払い残業代をめぐっては、「企業における終身雇用体制の崩壊」や「残業代請求が認められることの認識の広がり」などから、企業が請求されるリスクは増大しているといえます。
企業としては、このような事態が生じないよう、日頃から十分な対策をとっておくことが必要になります。


労働時間等見直しガイドラインの改正

◆4月1日から施行
厚生労働省では、年次有給休暇を取得しやすい環境を整備するため、「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針)の改正を行いました。
改正されたガイドラインは4月1日から施行されています。以下では、このガイドラインの概要、改正内容のポイントをご紹介します。

◆「労働時間等見直しガイドライン」とは?
このガイドラインは、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」(労働時間等設定改善法)に基づくもので、労働時間や年次有給休暇等に関する事項について、労働者の生活と健康に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものへと改善するために、事業主等が取り組むべき事項を定めたものです。

◆「改正ガイドライン」のポイント
改正されたガイドラインでは、年次有給休暇について、企業に対して次のような制度的な改善を促すこととしています。
(1)労使の話合いの機会において年次有給休暇の取得状況を確認する制度を導入するとともに、取得率向上に向けた具体的な方策を検討すること。
(2)取得率の目標設定を検討すること。
(3)計画的付与制度(年次有給休暇のうち5日を超える分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度)の活用を図る際、連続した休暇の取得促進に配慮すること。
(4)2週間程度の連続した休暇の取得促進を図るにあたっては、当該事業場の全労働者が長期休暇を取得できるような制度の導入に向けて検討すること。

◆環境整備が求められている
上記ガイドラインに法的な拘束力はなく、これを守らなかったからといって罰せられることはありませんが、企業としては、働きやすい環境を整えることにより、従業員の健康管理、モチベーション維持・アップに努めたいものです。

2010/03/31

4月の事務所便り

 「中小企業金融円滑化法」施行で資金繰りへの影響は?

 ◆「返済緩和実績」が初めて公表
大手6銀行は、昨年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」(2011年3月までの時限措置法)に基づく、中小企業向け融資や住宅ローンの返済条件の緩和実績を初めて発表しました。
これによると、昨年12月末時点での申込件数は中小企業で1万5,429件(3,103億円)、住宅ローンで1,878件(316億円)、このうち返済繰延や月々の返済額減額など条件変更に応じたのは中小企業で3,103件(2,677億円)、住宅ローンで110件(17億円)となり、件数・金額とも、法施行前と比べ大幅に増えました。

 ◆「中小企業金融円滑化法」とは?
中小企業金融円滑化法は、融資や住宅ローンの返済に苦しむ事業主や個人を支援するため、昨年12月に施行された法律であり、金融機関に対し、借り手からの要請があれば返済条件を見直すように努力する義務を課すものです。
金融機関には一定期間ごとに条件変更に応じた件数・金額などの実施状況を開示する義務があり、虚偽の場合は罰金が科されます。
今回、申込件数が大きく膨らんだのは、住宅ローンに関するものです。
銀行側が相談体制を整え、店頭告知などでアピールした影響もあり、法施行前と比べて申込みが4~5倍に増加した大手銀行もあるそうです。

◆中心は借入期間の延長
昨年は、給与や賞与が減って借金返済に悩む個人が増えたとみられ、借入期間を延ばして毎月の返済額を減らすといった対応が中心になっています。
また、中小企業向け融資については、元本部分の返済を一定期間猶予するといったケースが多いということですが、件数自体は法施行前と比べて微増程度となっています。これは、「条件変更を申し込むと追加の融資を断られるのではないか」といった懸念が強く、法施行からしばらくは様子見という傾向があったことが影響しているようです。
金融庁では、法施行と併せて、不良債権の分類基準を緩和しています。経営再建の可能性があれば、返済繰延などを実施しても不良債権として扱わなくて済むため、「財務的な影響は限定的」との見方が強くなっています。
年度末を迎えるにあたって、さらに申込件数の増加が見込まれます。


 所得の地域間格差はどのぐらいある?

 ◆地域間格差は高水準のまま推移
内閣府は、都道府県ごとの所得を示す2007年度の「県民経済計算」を発表しました。各都道府県の1人当たりの所得は平均305万9,000円(前年度比0.7%増)となり、4年連続で前年度を上回りました。47都道府県のうち、29府県で増加、18都道県で減少となっています。
地域別にみると、中国や九州など製造業の拠点が増えた地域では伸びましたが、北海道・東北や四国はマイナスとなりました。
地域間格差を示す指数は前年比ほぼ横ばいでしたが、2000年代前半に差が広がった状態がそのまま続いています。内閣府では、「県民所得のばらつきは高水準にとどまっており、地域間の格差の広がりが統計的に裏付けられた」としています。

 ◆上位5都県の平均所得360万5,000円
1人当たりの所得は、働く人の賃金や企業の利益、配当や利子の収入の合計を人口で割って計算されます。ここでの所得には個人所得のほか、法人所得も含まれているため、個人の所得水準というよりも、地域全体の経済力を示しています。
1人当たりの所得の実額を都道府県別で比較すると、上位1位~5位は、東京都(454万円)、愛知県(359万円)、静岡県(338万円)、神奈川県(328万円)、三重県(323万円)となっており、上位5都県の平均県民所得は約360万5,000円となっています。
下位1位~5位は、沖縄県(205万円)、高知県(211万円)、宮崎県(215万円)、長崎県(219万円)、鹿児島県(235万円)でした。
東京都と沖縄県の格差は約2.22倍となり、前年の約2.23倍からわずかに縮小しましたが、その差は依然として大きいことがわかります。

 ◆公共事業への依存の高さが問題
都道府県間の所得のばらつきを示す「変動係数」は15.30%となり、前年度(15.33%)から横ばいです。2002年度に上昇に転じてからは高い水準で推移しています。
また、1人当たりの所得の伸び率は、自動車、電機、一般機械などの輸出産業を多く抱える地域で所得が増えた一方、公共事業への依存度が高い地方でのマイナスが目立つ結果となりました。
佐賀県は、電気機械産業が大きく伸びたほか、化学や一次金属も好調に推移し、前年度比5.0%増と最も高い伸び率を示し、広島県(4.0%増)、茨城県(3.9%増)がこれに続きました。対して、建設業や卸小売業が不調だった北海道(3.4%減)、滋賀県(3.0%減)の順に減少幅が大きくなりました。


 「改正労働基準法」施行目前 時短への取組みは?

 ◆4月から施行
改正労働基準法の施行を来月に控えていますが、法改正に対応する積極的な動きは、大手企業においてもあまり目立っていないようです。業績不振に苦しむ企業にとっては、長時間労働の解消(時短)に取り組む余裕がないのが現状です。
今回の改正の中心は、(1)労使協定を締結すれば従業員が1時間単位で有給休暇を取得できる、(2)月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率を現行の25%から50%に引き上げる、という2点です(中小企業については当分の間、法定割増賃金率の引上げについては猶予されます)。

 ◆「時間単位有休」「割増賃金率の引上げ」と時短
現在、年次有給休暇は原則として1日単位でしか取得することができませんが、改正後は、労使協定があれば1時間単位で年間最大5日分を取得することが可能となります。
しかし、「生産現場の要員配置やライン稼働に大きな影響が出る」といった理由から、1時間単位の有給休暇制度の導入を見送る企業も少なくないようです。
この制度の導入には労使間の協議が必要ですが、労働者側からの導入の要求自体が出ないケースもあります。
その一方で、時間外労働の割増賃金率の引上げへの対応については、労務コスト削減のために時短を進めることが考えられますが、準備を進めている大手企業はあまり多くはないという調査結果もあるようです。
時短は一般に進んでいるとは言い難く、厚生労働省の調査によると、日本企業の時短は過去10年でほとんど改善していません。1999年と比べ2008年の労働時間は大手・中小企業とも増加しており、有給休暇取得率も下がっていますが、サービス関連企業では法改正を契機に積極的に時短に取り組む傾向がみられます。

 ◆導入される見通しの国際会計基準
2015年までに上場企業に義務付けられるとみられる国際会計基準(IFRS)では、企業は未消化の有給休暇に相当する費用を引当金として負債に計上しなければならない見通しとなっています。負債の増加を嫌う企業は多く、この制度導入が従業員に有給休暇の取得を促す可能性があります。有給休暇関連の引当金の負債計上に伴い、引当金に対応する費用の計上も必要になります。一般的な事務職員の場合は、損益計算書の中で人件費として計上される見通しとなっています。ただ、製造業に従事する労働者や技術者などの場合、この費用は、実際に製品として売買の対象になるまでは棚卸資産として一時的に計上され、製品として売りに出された場合、一般的に製造原価として損益計算書に反映することになりそうです。


 公的年金の運用とポートフォリオ

 ◆利回りに関する中期目標は示されず
厚生労働省は、公的年金積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)に関する2010年度から5年間の次期中期目標案をまとめました。
今回、利回りに関する数値目標の提示は見送られましたが、これは、「今後、年金制度の抜本的見直しを予定していることなどから、今回の運用目標は暫定的である」ためであると説明しています。
中期目標は、運用法人が資産の配分を決めるうえで前提とするものであり、数値を示さないのは異例のことですが、ポートフォリオ(運用資産の構成割合)に大きな変更はない見通しとなっています。

 ◆積立金の運用を行うGPIF
GPIFは、厚生年金と国民年金の積立金(約120兆円)を、国に代わって運用する厚生労働省所管の独立行政法人であり、預かった年金資産を信託銀行や投資顧問会社に委託し、運用を行っています。また、定期的に外部の有識者を集めた委員会を開催し、運用状況の確認を行っています。

 ◆運用方法の流れ
公的年金の運用は、まずは厚生労働大臣が中期目標を提示し、その目標に沿ってGPIFがポートフォリオを盛り込んだ中期計画を策定して行われます。
3月末に期限を迎える現行の中期目標では、賃金上昇分を除いた実質的な運用利回りが1.1%を上回るように求めており、GPIFは賃金上昇率の見込みを含めて3.2%を上回る運用利回りを達成する計画を策定しています。
これを受け、GPIFは、ポートフォリオを国内債券67%、国内株式11%、外国債券8%、外国株式9%、短期資産5%と規定しました。

◆次期の目標は?
次期目標については、昨年2月に厚生労働省が示した年金財政の見通し結果を踏まえ、実質的な運用利回りの達成目標を1.6%とする方向で調整していましたが、厚生労働大臣が次の中期目標について目標数値を明記しない方針を固めたことを受け、同省では、具体的な数値目標の代わりに「安全・効率的かつ確実な資産構成割合を定め、管理すること」を掲げる方針を明らかにしました。
GPIFは、3月上旬までに中期目標を策定する必要がありますが、具体的な数値目標がないため、新しいポートフォリオは現行の内容を基本とすることを想定しているということです。


 職場における「受動喫煙」防止への取組み

 ◆「受動喫煙」防止対策の基本的な方向性
厚生労働省の有識者検討会では、受動喫煙を防止する対策の基本的な方向性をまとめ、発表しました。
多くの人が利用する公共的な空間については原則「全面禁煙」とし、全面禁煙が困難な場合には適切な受動喫煙防止対策を進め、野外については受動喫煙防止のための配慮が必要であるという報告書骨子に合意しました。
この中には、職場での受動喫煙に関する内容も盛り込まれています。

 ◆受動喫煙とその対策
受動喫煙とは、他人が吸うタバコの煙を吸入することであり、死亡、疾病および障害を引き起こすことが科学的に明らかとなっています。
現在、日本の成人喫煙率は、男女合わせて24.1%となっています。たばこ税の引上げによる喫煙率低下の実現を目指すことで、受動喫煙の被害が軽減されることが考えられますが、たとえ喫煙者が1人であっても、その1人のタバコの煙を多くの非喫煙者が吸入することを考えると、それ以外の対策が必要であると思われます。

 ◆厚労省のガイドライン
厚生労働省でも、職場における受動喫煙対策のガイドラインとして、喫煙室や喫煙スペースを設置するように勧めています。同省が2007年に実施した調査によれば、受動喫煙している労働者は全体の約65%であり、喫煙対策の改善を望む労働者も約92%となっています。
しかし、「全面禁煙化」や「喫煙室設置」などの対策をとっていない事業所は約54%に上るため、換気施設など新たな設備投資ができない中小企業に対しては、取組みを促進させるための資金援助や相談体制の整備の必要性も考えられています。

 ◆快適な職場づくりに向けての事業者の義務
現在、労働安全衛生法では、受動喫煙の防止対策については「快適な職場づくり」の一環という位置付けがなされているだけであり、特に法律上の義務ではありません。しかし、今後は法改正も考えられており、事業者の義務となることも予想されます。
分煙でない職場への就職を避ける求職者も多いことを考えると、早期の対策が求められます。


 「営業秘密」の管理体制は万全ですか?

 ◆不正競争防止法改正による「営業秘密管理指針」の改定
企業活動において、その競争力の維持・強化のための無形資産である技術・ノウハウ・アイデア等の「営業秘密」が、退職者や業務委託先企業によって侵害・漏洩される事件が増加しており、企業も対応に苦慮しています。
このような企業内外の者による不正侵害を防止するために「不正競争防止法」がありますが、昨年の通常国会において同法が改正され、営業秘密の侵害に対する刑事罰の対象範囲が拡大されました。
なお、同法による保護を受けるためには、適切な営業秘密管理が必要です。経済産業省では、秘密管理体制を支援するための「営業秘密管理指針」を策定していますが、法改正を受け、指針の改定案をまとめました。

 ◆指針改定のポイント
改定案の視点は、(1)処罰対象行為の明文化、(2)企業実態を踏まえた合理性のある秘密管理方法の提示、(3)中小企業等における管理体制の導入手順例や参照ツールの提示の3点です。
具体的には、(1)の処罰対象行為として、競争関係の有無にかかわらず、不当な利益を得る目的や、単に保有者に損害を与える目的等で営業秘密を開示した場合について、刑事罰を科すこととしています。
また、(2)の合理性のある秘密管理方法として、企業規模や組織形態、情報の性質等に応じた合理性のある管理手法が実施されていれば、高水準の管理体制でなくても法的保護が受けられるということを明確化しています。
そして(3)では、主に管理体制を整備していない中小企業等を対象として、契約書のひな型や実例集、管理体制を整備するまでの具体的な手順や、どのような情報を営業秘密として管理すべきかの判断ポイントなどを示しています。

 ◆管理体制の再チェックが必要
指針の改定内容については、管理体制を自己評価できるように点数表も作成されています。「秘密保持の対象となる情報を書面などで具体的に示しているか」「情報を扱える人を役職や部署で線引きしているか」などを判断基準としており、今後、一般から意見を募集し、「合格点」の基準を定めるとしています。
今回の改定を契機に、自社における営業秘密の管理体制の再チェックを行ってみてはいかがでしょうか。


 中小企業の経営相談を受ける「ワンストップ・サービス・デイ」

 ◆1つの窓口でまとめて相談が可能
経済産業省では、厚生労働省や金融庁、特許庁などとタッグを組んで、中小企業が「資金繰り」や「新たな販路づくり」、「雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)の受給申請」など経営に関することについて1つの窓口で相談を受けることのできる「ワンストップ・サービス・デイ」を、年度末に開催すると発表しています。
業績回復がままならない中小企業が多い中、果たして、この取組みが景気回復の打開策となるのでしょうか?

 ◆全国68都市で開催
この「ワンストップ・サービス・デイ」は、2月の第4週(22~26日)にも開催されましたが、3月の第4週(23~26)にも再び開催されます。開催地は全47都道府県(計68都市)となっており、開催場所は、主に各地の商工会議所、産業支援センター、事業支援センターなどとなっています。
なお、このサービスの開催地と開催予定日、開催場所等については、中小企業庁のホームページ(http://www.chusho.meti.go.jp/soudan/2010/100210OSSD.htm)で確認することができます。

 ◆中小企業の悩みに応えることができるか?
経済産業省では、このサービスを通じて、「運転資金を借りたいのだが融資条件の変更はできないか?」「新商品を開発するための支援制度を教えてくれないか?」「インターネットを活用して販路を拡大したいが何か良いアイディアはないか?」「知的財産を上手に活用したいがどうすれば良いか?」「雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)について詳しく知りたい」といった、中小企業の声(お悩み)に可能な限り応えていきたいとしています。


 新卒者を体験雇用した場合に支給される奨励金

 ◆2月にスタートした「新卒者体験雇用事業」
厚生労働省は、今年2月1日に「新卒者体験雇用事業」をスタートさせました。
この取組みは、就職先が決まっていない新規学卒者を対象として、体験的な雇用の機会を設けることで就職先の選択肢を広げるとともに、企業と求職者間の相互の理解を深め、その後の正規雇用への移行を促進することを目的としています。
以下では、この事業の中心となる「新卒者体験雇用奨励金」の概略についてご紹介します。

 ◆体験雇用の対象となる新規学卒者
この「新卒者体験雇用奨励金」は、就職先未決定の新規学卒者を31日間の体験雇用(有期雇用)として受け入れた企業に対して、対象者1名につき「月額8万円」を支給するものです。
体験雇用(有期雇用)の対象となる新規学卒者は、以下の(1)(2)のいずれにも該当する者のうち、「正規雇用の実現」または「雇用機会の確保」のために、体験雇用を経ることが適当であると公共職業安定所長が認める者です。
(1)平成21年10月から平成22年9月末までに卒業した者で、雇入れ開始日現在の満
年齢が40歳未満の者
(2)ハローワークに求職登録を行い、就職先が未決定の者

 ◆奨励金受給のための要件
この奨励金を受給するための要件は、以下の通りです。
(1)ハローワークに「体験雇用求人」を登録すること
(2)体験雇用は31日間の有期雇用であること
(3)体験雇用開始の日から10日以内に「体験雇用実施計画書」を提出すること(提出にあたっては対象者の同意を得る必要がある)
(4)体験雇用終了日の翌日から起算して1カ月以内に「体験雇用結果報告書兼新卒者体験雇用奨励金支給申請書」を提出すること(提出にあたっては対象者の同意を得る必要がある)

 ◆1人当たり8万円を支給
ハローワークによる審査終了後に、対象者1人当たり8万円の奨励金が支給されることとなっています。
なお、平成23年3月末までに体験雇用を開始した対象者が奨励金の支給対象となりますが、体験雇用終了後の正規雇用への移行に関しては、他の「雇入れ助成金」の支給対象とはなりませんので、注意が必要です。


 新年金制度(最低保障年金・所得比例年金)をめぐる動き

 ◆検討会が初会合
政府は「新年金制度に関する検討会」を立ち上げ、3月8日に初めての会合を開きました。今後、新しい年金制度に関する議論が活発化するものと思われますが、民主党が衆議院選挙のマニフェストで掲げていた「最低保障年金」「所得比例年金」は果たして実現するのでしょうか?

 ◆鳩山首相の決意
鳩山首相は、初会合において、「新制度は新政権にとっての最大の課題の1つ。制度設計に全身全霊を傾けてもらいたい」と述べ、また、長妻厚生労働大臣も「まずは原則をきちんと示して国民の合意を得ることが必要」と述べたそうです。
民主党は、昨夏の衆議院選挙で「最低保障年金」「所得比例年金」を2本柱とした年金改革を打ち出しており、国民からの期待も大きいものと思われます。

 ◆「最低保障年金」と「所得比例年金」
2本柱の1つである「最低保障年金」は、消費税を財源として、すべての人が7万円以上の年金を受け取れるようにする制度です。もう1つの柱の「所得比例年金」は、すべての人が、所得が同じであれば、同じ保険料を負担し、納めた保険料を基に受給額を計算するという制度です。
なお、「所得比例年金」を一定額以上受給できる人は「最低保障年金」が減額されるとなっています。

 ◆裏付けとなる「財源」が問題
民主党のマニフェストでは、この他にも「年金記録問題の2011年度までの解決」「公的年金の一元化」なども掲げています。
政府では、今年5月までに新しい年金制度の大原則を打ち出し、2013年度までに関連法案の成立を目指すとしていますが、課題となる「財源」などの問題にどのように取り組み、国民的な合意の得られるような制度が出来上がっていくのか、注目したいところです。


 「ツイッター」の利用拡大と採用活動への活用

 ◆鳩山首相も活用
インターネット上で、140文字以内でメッセージをやり取りするコミュニケーション・サービスの「ツイッター」がブームとなっています。
鳩山首相を初めとする政治家やカリスマ経営者など、有名人のユーザー登録・利用も増えるなどの影響により、利用者はますます増えていきそうです。

 ◆140字以内の投稿
この「ツイッター」は、「ミニブログサービス」とも言われており、日常の出来事や自分の身の周りで起きたこと、感想などを、140文字までの短文でインターネットに投稿するものです。投稿のことは「ツイート(つぶやき)」と呼ばれ、「ツイッター」の語源となっています。
特定の人のアドレスを登録することにより継続的な読者となることができるため、「ブログ」と比較すると、より短時間で情報が広まりやすいという特徴を持っています。

 ◆社長によるメッセージ発信
採用活動にこの「ツイッター」を活用する中小企業も出てきているようです。社長が「ツイッター」を活用して直々にメッセージを流したベンチャー企業の就職イベントには、2日間で約40名の参加者が集まったそうです。
別の会社の社長は、「企業のトップと就職活動中の学生とが直接的につながることができ、新しい試みとして非常に有効である」といった感想を述べています。また、「人材を募集しようとお金をかけて広告を出したがなかなか人が集まらず困っていたところ、ツイッターを活用したら30人ほど反応があった」という人事担当者もいるようです。

 ◆新しい募集・採用手段として
また、「ツイッター」を「就職活動中の情報収集手段」として捉える学生も増えているようです。
これからの時代、新しい募集・採用手段として「ツイッター」を活用する企業も増えてくるのではないでしょうか。