2008/09/25

10月の事務所便り


平均寿命と「三大疾患」の関係

男女ともに過去最高に
女性は前年よりも0.18歳延びて85.99歳、男性は0.19歳延びて79.19歳。日本人の平均寿命が、男女ともに過去最高を更新したことが、厚生労働省が発表した平成19年版「簡易生命表」で明らかになりました。

世界トップクラスの平均寿命
平成19年版「簡易生命表」は、平成19年における死亡状況が今後変化しないと仮定したときに、各年齢の者が1年以内に死亡する確率や平均してあと何年生きられるかという期待値などを指標によって表したものです。そのうち、0歳の平均余命は「平均寿命」として捉えられ、保健福祉水準を総合的に示す指標として活用されます。
平成19年に生まれた赤ちゃんのうち、65歳まで生きる割合の推計は、女性で93.3%、男性で86.4%。75歳以上では、女性で85.8%、男性で70.8%。さらに90歳以上となると、女性で44.5%、男性で21.0%となります。
日本人の平均寿命は、世界トップクラスです。女性の平均寿命は23年連続で世界一となりました。また、男性も、今回2006年の2位からは後退したものの、3位となっています。
国際的にみると、女性の2位は香港の85.4歳(2007年)、3位はフランスの84.1歳(2006年)です。また、男性の1位はアイスランドの79.4歳(2007年)、2位は香港の79.3歳(2007年)となっています。

三大疾患との関連は
厚生労働省の人口動態・保健統計課は、「日本人の三大疾患である、がん、心臓病、脳卒中の患者の治療成績が上がったことで平均寿命が延びた」と分析しており、今後もこの傾向が続くとしています。
厚生労働省では、特定の死因が克服された場合の平均寿命の延びも試算しています。がんが根治できるようになったり、発症しなくなったりした場合、女性で3.01歳、男性で4.04歳、平均寿命が延びるとされています。同じように、心疾患が克服された場合の延びは、女性が1.65歳、男性が1.55歳、脳血管疾患では女性1.15歳、男性1.06歳となっています。また、三大死因のすべてが克服された場合、女性は7.12歳、男性は8.25歳、平均寿命が延びることも判明しています。
地方の医師や小児科医などの不足に悩む我が国において、順調に三大疾患の治療成績が上がっている現在の医療体制をいかにして維持し、さらに充実させていくのか、今後も注視する必要があるでしょう。




小中学生の学力低下と教育格差

「全国学力テスト」の実施結果
文部科学省が、小学6年生と中学3年生の原則全員を対象に、昨年に引き続き4月に実施した「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)。これは、全国的な義務教育の機会均等と、その水準の維持向上を目的として実施されています。
この度、その結果が公表されました。今、小中学生の教育はどのような課題を抱えているのでしょうか。

応用力に課題あり
全国学力テストでは、国語と算数/数学について、基礎知識を問う「A問題」と、応用力を測る「B問題」が出題されています。平均正答率は、A問題で60~70%台、B問題では50~60%台と、昨年に比べ約8~16ポイント低下しました。科目別で平均正答率が最も高かったのは中学3年の「国語A問題」の74.1%、最も低かったのは中学3年の「数学B問題」の50.0%でした。正答率は全科目で昨年より下がっています。
「B問題」の正答率の落込みから、応用力に課題があることがみてとれます。文部科学省では、「正答率の経年比較はできないが、今回は問題がやや難しかったために下がった」と説明しており、「知識を活用する力に課題があるほか、知識の定着にも一部課題がある」としています。

地域別学力格差/公・私立間格差の存在
公立校のみ、都道府県別の正答率も集計されています。最も差が開いた「数学A問題」では、最も高い福井県の72.1%に対し、最も低い沖縄県では49.6%にとどまっており、学力格差が懸念されます。
また、昨年上位だった県は、今回も高い正答率を記録しました。その反面、昨年下位だった県では今回も正答率が低く、多くの都道府県の成績が前回と同様の傾向を示したことから、「学力格差の固定化」を指摘する声も出ています。下位の地域の中には、テストと同時に実施したアンケートで、学習意欲の低さや生活の乱れが明らかになった都道府県もあり、今後の取組みが注目されます。
また、国私立校は国語、算数/数学とも「A問題」で8割前後、「B問題」で6~8割の正答率となり、いずれも公立校の平均を大幅に上回る結果となりました。

調査結果を生かして今後の教育の充実を
今回のテストには、小学校の99.4%、中学校の96.4%が参加し、計約223万8,000人が受けました。この膨大なデータを積極的に公開・活用していくことが望まれます。この調査結果を今後の教育の充実にいかに活かしていけるかが、何より重要なテーマとなります。




電子マネーの現状と今後の方向性

電子マネーの魅力
小売店・鉄道・インターネット通販など、様々な場面で手早く支払処理を行うことができるのが魅力の「電子マネー」。目新しさやポイント付与などの魅力により普及が急速に進み、今や利用者は数千万人規模、対応する交通機関や店舗は日増しに増えています。

電子マネーとは?
電子マネーとは、貨幣価値をデジタルデータで表現したものです。お金の電子情報を蓄積したICチップを搭載したカード・携帯電話を支払い時に読取端末にかざすことで、通貨の代わりに仮想のお金として使用することができます。事前にカードや携帯電話に入金しておいて利用する「プリペイド(前払い)型」と、支払い後にクレジットカードで使用料金を決済する「ポストペイ型」に大別されます。
近年では、カード媒体を使わずに、残高情報を専用サーバーで管理し、プリペイド番号の入力により決済を行う「サーバー管理型電子マネー」も普及してきています。

急速な普及の要因は?
電子マネーの普及規模は、プリペイド型の発行枚数が9,000万枚近く、ポストペイ型の会員数が関西圏の私鉄・地下鉄の「ピタパ」を含め約1,400万人といわれています。
電子マネーがこれほど普及した要因はいくつか考えられますが、小銭のやり取りをせずに素早く支払いを終えられる利点が認識されたことが大きいと思われます。比較的安価で安定したIC技術が確立したことに加え、早い段階でコンビニに端末が設置され、利便性が向上したことも大きなポイントです。

今後の方向性
普及が目覚ましい電子マネーですが、規格が乱立しているうえ、共用端末の普及が進んでおらず、今後の課題といえます。また、法整備に向けた動きも注目されます。
特に重要なのは、補償や保護の問題です。現在、ポストペイ型は一般のクレジットカードと同じ補償サービスを受けることができます。プリペイド型は、未使用残高の半額を国に供託しているため、発行企業が倒産しても少なくとも半額は保護されます。ただし、サーバー管理型電子マネーは対象外です。また、ポイントについては法的には保護されていません。
これらの問題に関し、金融庁では、電子マネーやポイントの利用者保護に関する法整備を検討しています。サーバー管理型電子マネーやポイントを規制の対象とするか、プリペイド型電子マネーの利用者保護を強化するかなどが焦点になりそうです。




「最低賃金」時給700円台に突入へ

2008年度の引上げ額の目安は?
原則としてすべての労働者に適用される「最低賃金」。その額は都道府県ごとに決められており、現在の全国平均額は687円です。
2008年度の引上げ額の目安を議論していた中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は、全国平均で時給を15円程度引き上げることを決定しました。この結果、全国平均の最低賃金額は、初めて700円を超えることになる見通しです。

都道府県別最低賃金額の引上げと生活保護政策
今回の最低賃金額の引上げに関する議論では、7月に施行された改正最低賃金法の趣旨を、引上げ額にどう反映するかが焦点となりました。同改正法では、生活保護並みの時給を求めています。地域によっては最低賃金が生活保護費を下回り、「働く意欲をそぎかねない」との批判が強かったため、現時点で生じている生活保護との大幅な差を解消することになりました。
地域ごとの引上げ額は、中央最低賃金審議会が定めた目安を受けて、都道府県ごとに正式な金額が決定され、10月中に適用される予定です。これに加えて、最低賃金額が生活保護を下回っている12の都道府県については、生活保護との差を「原則2年(引上げ額が例を見ないほど大幅な場合は3年)」で解消することを求められました。
例えば、生活保護との差が時給80円あるとされる東京都の場合、3年で差を埋めるとすると1年当たり25円超の引上げが必要となるなど、逆転解消のためには前年度以上の大幅な引上げが必要となります。

引上げ反対の声も
最低賃金額の大幅な引上げは、低所得者の生活の下支えとなります。しかし、原油や食料の価格高騰の影響などで物価も上昇しているため、消費拡大効果は限定的とみられています。
人件費の増加は中小企業の存続に関わるとして、最低賃金額の大幅引上げに反対する声もあります。最悪の場合は中小企業の倒産を誘発し、かえって中小企業の雇用に悪影響を与えることも懸念されています。生産性向上や価格転嫁が進まなければ、中小・零細企業の雇用には悪影響を与えます。
生活保護との差を解消するため、来年度以降も最低賃金額は2ケタの引上げとなる予定ですが、今後の経済・雇用情勢によっては、方向性が変わる可能性もあるかもしれません。




非正社員雇用の現状は?

非正社員雇用が頭打ち
景気停滞局面の中、拡大が続いてきた派遣やパート・アルバイトなどの非正社員の雇用に、頭打ち感が強まってきました。企業は中長期的な人材確保のための正社員採用には積極的ですが、非正社員については絞り込む傾向が強くなっているようです。

非正社員の雇用の現状
総務省「労働力調査」で、雇用者数の内訳をみてみましょう。
正社員などの「常用雇用」は今年6月まで3年4カ月連続で前年同月実績を上回りました。しかし、その一方で、日雇いを除く1年以内の有期雇用を示す「臨時雇用」は、今年に入り6カ月連続でマイナスとなっています。これは、原材料の高騰や米国経済の低迷など経営環境の急速な悪化を受け、派遣社員や期間従業員の数が減らされたことによるものと考えられます。昨年の10月まで1.4倍台を維持していたパートの有効求人倍率は今年6月には1.25倍(季節調整値)にまで低下し、約6年ぶりの低さとなっています。
アルバイトも頭打ち傾向です。求人広告などから集計された6月の全国平均時給は968円で、前年同月を2%下回りました。人手不足を反映して上昇が続いてきたアルバイトの時給ですが、これで3カ月連続でのマイナスです。

人材派遣業界の現状
また、人材派遣業界も転機を迎えています。人材派遣業界は、固定費の増加を避けたい企業の需要拡大により急成長を続けてきましたが、日本人材派遣協会が107社を対象に集計している人材派遣の平均実稼動者数は今年4~6月で前年同期比1%増にとどまり、比較可能な2003年以降で最も低い伸びとなりました。

柔軟な雇用環境の確保が大切
正社員採用については、「団塊の世代」の大量退職が始まり、長期的にも少子化の影響で人手不足が続くことが予想されることから、中長期的な人材確保のため、企業は積極的な姿勢を維持しています。
一方で、非正社員については、改正パートタイム労働法の施行や日雇い派遣の原則禁止といった規制強化の動きも重しとなり、雇用が頭打ちになっていると考えられます。非正社員の待遇改善はもちろん大切ですが、待遇改善を目指す法律がかえって企業の慎重姿勢を強めてしまうことのないよう、柔軟な雇用環境を確保していくことが大切であるといえます。




働きながら年金を満額もらうには?

在職老齢年金制度
厚生年金は働きながら受け取ることもできますが、「在職老齢年金制度」により、賃金・年金額に応じて受給額が減額されてしまいます。これには釈然としない人も多いようですね。
厚生年金を満額受け取って働くにはどうすればよいか、対策を考えてみます。

対策その1:個人事業主になる
在職老齢年金の仕組みでは、給料と年金を組み合わせた収入が多い人について、厚生年金の支給額が減額されます。ポイントは、これらの計算対象となる収入とは、あくまで「給料と賞与」である、ということです。
減額制度は、厚生年金に加入し続けて働く人が対象です。個人事業主として独立すれば、雇われて給料をもらうことはないので厚生年金から外れ、支給される年金が減額されることも年金保険料を負担する必要もなくなります。また、勤めていた会社で働き続ける場合でも、個人事業主として業務委託契約を結べば、満額もらうことができることがあります。

対策その2:厚生年金に加入しなくても済む形態で働く
独立できるだけの専門的知識と技能がない場合、最も現実的なのは、厚生年金に加入しなくても済む、非正規のパートやアルバイトとして働くことでしょう。原則、勤務日数か勤務時間のどちらかが正社員の4分の3未満であれば、厚生年金の加入義務はありません。
また、従業員5人未満の個人事業所に就職することも1つの方法です。業種にもよりますが、勤務先の事業所が厚生年金に加入しなくてもよいので、働く人も減額の仕組みから外れます。

気をつけたいポイント
厚生年金に加入せずに働く場合、落とし穴もあります。妻が専業主婦の場合、夫が厚生年金保険から外れれば、妻も国民年金の第1号被保険者となります。60歳未満であれば国民年金保険料を支払う必要が生じ、保険料負担が増えて世帯収入が減るおそれもあります。また、厚生年金保険料を支払い続ければ、当然退職後に受け取る年金総額が増えます。目先の年金額に目を奪われすぎると、かえって損につながる恐れもあるのです。
満額支給にこだわって手取り総額の減少を我慢するか、減額されても手取り総額を増やすか、あるいは満額受給しつつ起業に挑戦するか、様々な選択肢が広がります。年金の受取り方は、働き方やライフスタイルといった、老後生活全体を考えることにつながりますので、よく考えて選択するべきといえます。



10月から発足する「協会けんぽ」で何が変わる?

「政管健保」から「協会けんぽ」へ
現在、主に中小企業の従業員やその家族など約1,990万人が加入している「政府管掌健康保険」は国によって運営されていますが、今年の10月1日からは、国から独立した新たな健康保険として発足する「全国健康保険協会」(通称:協会けんぽ)が運営を引き継ぐことになっています。
協会けんぽは、「非公務員型」の法人として新設される機関であり、そこで働く職員は公務員ではなく民間の職員となります。理事長や各都道府県における支部長なども民間から登用され、「民間のノウハウを積極的に採り入れていく」そうです。

新たな保険証への切替え
政府管掌健康保険に加入していた人は、10月1日以降、順次、新たな被保険者証(保険証)に切り替えられます。保険証の切替手続は会社を通じて行われますが、任意継続被保険者の人には直接自宅に保険証が郵送されます。10月以降に新たに協会けんぽに加入する人や保険証の再交付の手続きをした人には、新たな保険証が発行されます。
なお、保険証の切替えが完了するまでの間は、従来の保険証も引き続き医療機関等で使用することができます。

保険料は都道府県ごとに設定
健康保険の保険料率は、9月30日までの政府管掌健康保険の保険料率(8.2%)が適用されます。しかし、協会けんぽの設立後1年以内に、都道府県ごとに、地域の医療費が反映された保険料率が設定されることとなっています。
都道府県単位の保険料率は、年齢構成や所得水準に応じて、都道府県間で調整を行ったうえで設定されるようです。都道府県別の保険料率への移行にあたっては、大幅に上昇する場合には「激変緩和措置」が講じられることになっています。
なお、政管健保は高齢者医療への拠出金や医療給付費などの増加による影響から2007年には赤字に転落しており、厚生労働省は、0.1~0.3%程度の引上げが必要との試算結果を発表しています。

給付内容等は変更なし
医療機関で受診する場合の自己負担割合や高額療養費の負担限度額、傷病手当金などの給付の金額や要件などは、これまでと変わりありません。



厚生労働省が示した「名ばかり管理職」の基準

飲食業・小売業の店長などが対象
昨今、大きな社会問題となっている「名ばかり管理職」(職務権限や待遇が不十分にもかかわらず管理監督者とみなされて残業代が支払われない労働者)について、新たな動きがありました。
厚生労働省は、チェーン展開している飲食業・小売業の店長などが労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかの具体的な判断基準を盛り込んだ通達を、都道府県労働局長あてに出しました(平成20年9月9日)。個別の業種・業態について詳細な基準を示したのは、異例のことです。

具体的な判断基準は?
この通達(「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」)では、「名ばかり管理職」の判断基準として、以下のことなどが挙げられています。
(1)職務内容や権限について、「パートやアルバイトなどの採用権限がない」ことや「パートらに残業を命じる権限がない」こと。
(2)勤務時間について、「遅刻や早退をした場合に減給などの制裁がある」ことや「長時間労働を余儀なくされるなど、実際には労働時間の裁量がほとんどない」こと。
(3)賃金について、「時間あたりの賃金がパートらを下回る」ことや「役職手当などが不十分である」こと。

「名ばかり管理職」最近の事例
紳士服大手「コナカ」の店長2人が「名ばかり管理職」だったとして、未払い残業代(計約1,280万円)を求めて申し立てていた労働審判において、横浜地裁は8月22日、原告の主張を認めました。同社の店長が司法の場で「名ばかり管理職」だと認定されたのは初めてのことだそうです。
また、昨年10月に死亡した日本マクドナルドの元店長の女性(当時41歳)の遺族らが、死亡したのは長時間労働による過労が原因だったとして、横浜南労働基準監督署に労災申請を行いました。遺族を支援している連合によれば、元店長の1カ月の残業時間は多い月で120時間にも及んでいたそうです。

厚生労働省では、上記の通達を出すにあたって「適切な監督指導を行い、管理監督者の範囲の適正化を図りたい」としており、今後の実務や裁判等にも大きな影響を与えそうです。



迫り来る「2009年問題」にどう対応するか?

製造派遣の「2009年問題」とは?
2004年の労働者派遣法改正において、それまで認められていなかった製造業への労働者派遣(製造派遣)が「1年間」に限って解禁され、2007年にはこれが最長「3年間」に延長されました。2007年3月の時点で契約1年以内であった労働者派遣については、手続きを踏むことより契約期間を2年間延長することができるようになりました。
「2009年問題」とは、2006年3月1日以降に締結された派遣契約が2009年3月1日以降に契約期間の上限を迎え、その際に企業はどのように対応するかという問題です。
もっとも、2006年夏の“偽装請負騒動”以降に請負から労働者派遣に切り替えた企業も多いため、派遣社員の契約期間の上限到達が本格化するのは2009年秋以降だとも言われています。

企業はどのように対応するか?
労働者派遣法においては、契約期間が3年間を超えた場合に再度派遣契約を締結する際には、3カ月間以上期間を空けなければいけないとされています。そこで、派遣先企業の対応の選択肢としては、(1)派遣から請負に切り替える、(2)派遣から直接雇用に切り替える、ことが考えられています。
(1)の請負への切替えについては、業務内容を検討しながら、「区分基準」(昭和61年労働省告示第37号)で示されている条件等をクリアしていく必要があります。その際には厚生労働省から発表されている「製造業の請負事業の適正化及び雇用管理の改善に関する研究会報告書」(2007年6月29日)にあるチェックシートが参考になると思われます。(2)の直接雇用への切替えについては、人件費の増加などが特に中小企業を悩ます問題となります。
いずれにしても、派遣先企業としては自社におけるリスクを考えながら、適切に対応していかなければなりません。

大手企業における対応策は?
キヤノンは今年3月に、子会社を含めた工場などの製造現場で働く派遣社員(約1万2,000人)の受入れを年内に全面的に打ち切り、半数を直接雇用の期間社員、残りの半数を請負会社との契約に切り替えることを明らかにしました。同社は偽装請負があるとして労働局などから指導を受け、派遣契約への切替えを順次すすめていましたが、直接雇用と請負とに再編する方針のようです。



もうお済みですか? 「外国人雇用状況」の届出

10月1日までに届出が必要
昨年10月1日に改正雇用対策法が施行され、すべての事業主に「外国人雇用状況の届出」が義務化されました。
具体的には、外国人労働者(特別永住者および在留資格が「外交」「公用」の者を除く)の雇入れまたは離職の際に、当該外国人労働者の氏名・在留資格・在留期間等について確認し、厚生労働大臣(実際にはハローワーク)へ届け出ることが必要となりました。これは、アルバイトなど臨時に雇用する場合の届出についても同様です。
上記の届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合には、罰金(30万円以下)が科せられますが、改正法の施行前から継続雇用していた外国人労働者の届出については、今年の10月1日まで猶予されていました。そして、いよいよその期限が迫っています。
もう届出はお済みでしょうか?

外国人労働者数は約34万人
厚生労働省は、改正雇用対策法の施行を受けて外国人の雇用状況を集計し、先日その結果を公表しました。今年6月末時点における外国人労働者数(特別永住者を除く)は33万8,813人でした。
なお、前回調査時(2006年6月)は約22万人3,000人で、2年で約11万5,000人増加した計算になりますが、前回調査時までは企業の任意による報告に基づいていたため、この数だけ増加したとは一概にはいえません。

今後も増加が予想される外国人労働者
今年7月、自民党の「外国人労働者問題プロジェクトチーム」は、原則としてすべての業種において外国人労働者を受け入れることなどを盛り込んだ「外国人労働者短期就労制度」の創設を提言する方針を固めたと発表しました。
また、大学などを卒業して日本国内で就職した外国人留学生の数は2007年に過去最高の1万262人(前年比24%増)となったというデータもあり、今後も外国人労働者は増加していくものと予想されます。