2006/07/27

平成18年7月号

社員旅行には参加しなくてもよいか

◆社員旅行への「参加義務」
会社の社員旅行は、半ば強制参加である場合が多いかもしれませんが、予定が合わない場合やどうしても参加したくない場合もあると思います。社員には、社員旅行に参加する「義務」があるのでしょうか。
◆業務命令か否か
社員旅行に参加する義務があるかどうかは、その旅行が雇用契約上の「業務命令」に該当するかどうかによります。その社員旅行の目的が、単に親睦を深めるためだけにある場合は業務命令には該当しないこととなり、参加しなくても問題はありません。
しかし、例えばその旅行中に、業務上必要な研修や会議などが含まれる場合は、会社が業務命令として参加を強制することができるため、参加しなければならないこととなります。
◆業務命令に該当する場合とは
業務命令に該当する社員旅行の場合、参加している時間は勤務時間となり、費用もすべて会社負担となります。また、社員旅行が休日に設定された場合は、「時間外勤務」もしくは「休日勤務」となり、割増賃金が支払われることとなります。
この観点からすると、業務命令であっても通常の勤務時間に当たるため、有給休暇を取得することも可能です。ただし、有給休暇の取得が事業の妨げになる場合には、会社は時季変更権を行使して休暇の取得を拒否することもできます。
◆旅費の取扱いは
会社によって違いはありますが、労働基準法の規定では、労働組合との協定がある場合などは、月給などの賃金から天引きすることも可能です。この場合の積立金は、会社に返還義務があります。
一方、社員が自主的に親睦会費として積み立て、社内規約で返還しないことを定めている場合は返金されないこともあります。

勤務時間中の株取引は処分の対象となるか

◆就業中の株取引
最近、株取引を始める人が増えてきているようですが、一般的な株取引の時間は会社の就業時間と重なります。会社員が就業中に持ち株の値動きが気になってしまい、職場のパソコンや携帯電話を利用して株価をチェックした場合、処分の対象とすることはできるでしょうか。
◆就業規則で禁止する
就業中の株取引は、労働契約に基づく「職務専念義務」に違反する可能性が高いといえます。企業は、就業規則に定めれば、社員が勤務時間中に株取引を行うことを禁止することができます。他にも、私用メールなど、私的行為と判断できる行為については就業規則に定めて禁止するのが一般的となっています。
会社によって私的行為の許容範囲は異なりますが、繰り返し違反する場合には労働義務を果たしていないとして、解雇の要件に触れる場合もあります。株価のチェックや売買は、この私的行為に該当するといえます。
◆休憩時間の株取引は許されるか
では、休憩時間の株取引は認められるのでしょうか。
休憩時間は、自由利用の原則から、株価のチェックや売買も認められるように思えますが、職場のパソコンなどを仕事以外に用いることは会社の許可がないとできないという見方もあります。
最近では社員1人に1台のパソコンを貸し与える会社も多くなり、個々の従業員がパソコンを私的に利用しやすい状況にありますが、会社から貸し出されたパソコンを私的に使用する場合は会社の許可を必要とするとするのが望ましいでしょう。
◆会社側のチェック
会社が従業員のパソコンの通信履歴を見る際には、人格権などに配慮する必要があり、「目的に応じて社会的に相当な理由がいる」とされています。パソコンの私的利用などを未然に防止するためには、ネットへの接続状況をチェックできるように社内規程で定めておくなどしておくことが望ましいでしょう。

【トピック】
●国民年金保険料未納者への差押え件数が急増
国民年金保険料の未納者に対する財産差押えの執行件数は、2005年度は1,051件(昨年度22件)だったことが、東京社会保険事務局のまとめでわかった。未納者からの徴収強化の方針をとったことによるもので、昨年度から急増した。強制徴収を前提とした最終催告状を57,890件(昨年度3,029件)送付し、それでも未納だった人へは督促状を16,548件(昨年度1,560件)送付したが、今年2月末における納付率は60.3%にとどまっており、同事務局は「2006年度も徴収にさらに努力する」としている。

2006/06/13

平成18年6月号

新入社員⇔上司に求めることとは何か?

◆新入社員を迎えて
今年もまた、各社が新入社員を迎えました。仕事のマナーや働く際の心がけなど、上司が新入社員に気をつけてもらいたいこと、仕事面・精神面など、新入社員が先輩や上司に求めることはどんなことでしょうか。

◆上司が新入社員に求めること
・「ホウ・レン・ソウ」の徹底
一般的に、「ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)」と呼ばれる基本的なマナーが重要だと言われています。あるアンケートの結果によると、上司は、まだ仕事に慣れていない新入社員に対して、「わからないことや悩んだことがあれば相談してほしい」と思っており、また、「挨拶をきちんとしてほしい」、「嘘をつかないでほしい」などと考えているようです。
・自分なりの考えを持つことも大切
「ホウ・レン・ソウ」の徹底を求める一方で、「わからないことはすぐに質問するのではなく、自分なりに考えてから聞くようにしてほしい」、「一度聞いたことを何度も聞き直さないでほしい」、「時には上司の誘いを断るくらいの勇気も必要」などと、社会人としての自覚も求めているようです。

◆新入社員が上司に求めること
逆に、新入社員は上司に対して、「的確なアドバイスをしてほしい」、「指示ははっきりとしてほしい」、「説明するときには全体的な流れから説明してほしい」などと考えています。また、「間違っていてもなぜそう考えたのか理由を聞いてほしい」、「部下の教育を放棄しないでほしい」とも思っているようです。

◆コミュニケーションが重要
双方の意見の基本となっているのが、「コミュニケーション」の大切さです。上司はコミュニケーションを通じ、部下に仕事に対する責任感とその大切さを伝えること、また、部下がどのように考えているかを聞くことが重要だといえるでしょう。

支給日前に退職する者への賞与不支給は可能か

◆賞与の支給に関する問題点
賞与の支給について、1?6月を算定対象期間として7月末に支給するようなケースで、賞与の支給算定対象期間のすべてに勤務していた社員が支給日より前に退職する場合に賞与を不支給としても、問題はないのでしょうか。

◆賞与不支給が可能な場合
次の?、?のいずれかに該当する場合には賞与を支給しないことが可能といえます。
?賞与支給日に在籍していることを賞与の支給条件としており、就業規則、労働協約、労働契約に定めている、あるいはそのような労使慣行がある場合
?退職日までに賞与の支給額や算定方法が決定していない場合

◆支給日在籍要件とは
上記は?は、「支給日在籍要件」と呼ばれるもので、賞与の受給権の取得につき当該支給日に在籍することを要件とする慣行は、その内容において不合理なものということはできず、従業員がその存在を認識してこれに従う意思を有していたかどうかにかかわらず、事実たる慣習として社員に対しても効力を有するものというべきものである、といった裁判例があります。
したがって、?のような場合には算定対象期間の全部または一部勤務した社員であっても、賞与の支給日より前に退職する者には賞与を支給しないことが認められると考えられます。ただし、例年より支給日が遅れたために、例年の支給日には在籍していたが実際の支給日前に退職した者には、「支給日在籍要件」は適用されません。

◆支給日在籍要件がない場合
では、「支給日在要件」がない場合はどうなるのでしょうか。この場合には、上記?に該当するか否かが問題となります。賞与の請求権について、査定などを経て、使用者が具体的な支給額またはその計算方法が決定した時点、あるいはこの点について労使の合意が成立した時点以降から生ずる、とする考え方が有力だからです。
この解釈によると、支給額またはその計算方法が決定される日までの間は、社員には賞与の請求権がないことになりますので、たとえ、賞与の算定対象期間の全部に勤務していても、決定日前に退職する者には賞与を支給しないという取扱いが可能となります。

平成18年5月号

健康保険・厚生年金保険の報酬の支払基礎日数が変更されます

◆平成18年7月1日から健康保険・厚生年金保険の報酬支払の基礎となる日数が、平成18年7月1日より、「20日以上」から「17日以上」に変わります。

◆平成18年度以降の定時決定は?
平成18年度以降の定時決定(算定基礎届)については、4月・5月・6月の報酬支払の基礎となった日数が17日未満の月がある場合には、その月を除いて決定されます。

◆平成18年7月以降の随時改定は?
平成18年7月以降に行われる随時改定(月額変更届)については、昇(降)給等により固定的賃金の変動のあった月以降(平成18年4月以降)継続した3カ月間のいずれの月も報酬支払の基礎となった日数が17日以上必要となります。

◆用語の解説
?「報酬支払基礎日数」
報酬の額を決定するときにその計算の基礎となった日数のことです。だいたい、月給制の場合は暦日数になり、時給制や日給制の場合は出勤日数になります。
?「定時決定」
原則として毎年7月1日現在被保険者資格を有する人について、その年の9月からの標準報酬月額(保険料算出の基準となるもの)を決定することで、4月・5月・6月に受けた報酬額とその報酬支払基礎日数をもとに決定されます。(「被保険者報酬月額算定基礎届」によります)
?「随時改定」
固定的賃金の変動または給与体系の変更により報酬がすでに決定されている標準報酬月額と比較して著しく高低が生じたときに改定が行われます。(「被保険者報酬月額変更届」によります)

生活保護と国民年金

◆生活保護の支給額削減へ
現在、厚生労働省は生活保護の支給額削減を検討しています。国民年金は少子高齢化に伴って中長期的に減額となる可能性が高く、「このままでは保険料を払わず老後を安易に生活保護に頼る人が増える」との指摘があるように、年金保険料を長年払い続けてきた人より、保険料を払わないで生活保護を受ける人の所得が多いケースがあるためです。2007年度から、段階的に国民年金(基礎年金)の支給額以下に引き下げる方針です。

◆生活保護とは
生活保護は、生活、教育、医療、介護など8種類の扶助があります。医療扶助および介護扶助は、医療機関等に委託して行う現物給付が原則であり、それ以外は金銭給付が原則です。
厚生労働大臣が定める基準で測定される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に保護が適用され、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。
収入としては、就労による収入、年金等社会保障の給付、親族による援助、交通事故の補償等のほか預貯金、保険の払戻金、不動産等の資産の売却収入等も認定されるため、これらを使い尽くした後に初めて保護適用となります。

◆生活保護世帯数の増加
生活保護を受けている世帯数は、2004年度は月平均で99万8,887世帯でした。1995年度は平均60万1,925世帯であったことから、ほぼ10年で約1.6倍にまで増えたこととなります。
生活保護を受ける世帯は高齢者世帯が多く、その背景には、年金保険料未納など、年金制度の空洞化問題があります。

◆それぞれの支給額は?
それぞれの支給額はどうなっているのでしょう。国民年金では、40年間保険料を払い続けた人で月額約6万6,000円であるのに対し、生活保護の支給額は年齢や地域によってそれぞれ異なりますが、生活扶助分のみで8万円を超え、さらに家賃を払っている場合に上限が約1万円の住宅扶助が加算されるケースもあります。

2006/03/31

平成18年4月号

年金未加入防止対策案

社会保険庁は、国民年金に加入していない人を減らすため、住民基本台帳ネットワークの情報を本格的に活用する方針を進めています。これは、住基ネットの氏名、生年月日等の個人情報を基に、毎年34歳の人の年金加入状況を総点検し、未加入者に対して加入を促すことを目的としています。なぜ「34歳」を対象としているのかというと、年金の最低加入期間である25年要件を満たすためです。年金を受給するには、最低加入期間として25年が必要とされています。ですから、加入期間がたとえば24年11カ月だった場合、たった1カ月足りないだけなのですが、年金は1円も受給できないこととなっています。したがって、60歳に到達するまでに25年間の年金加入期間を満たすには、35歳がぎりぎりの年齢となるというわけです。そういった実情を請けて、今国会に提出される社会保険庁改革関連法案に住基ネットの活用を盛り込み、来年度から着手することとしているようです。

これまでの対策
政府はこれまでにも、若年層に対し「学生納付特例」や「若年者納付猶予制度」等を設け、年金未納を減らすための措置を行ってきています。しかし、若年層の納付率は低く、平成16年度の納付率が63.6%であるのに対し、年齢階層別でみると、40歳未満の納付率はこれ以下となっており、20歳台前半では49.6%と、50%を切っているのが現状です。また、全体の年金の納付率も決して高いとはいえません。こういった状況にかんがみ、現在でも、経済的な理由等で保険料を納めるのが困難な場合には、申請により保険料が全額免除または半額免除となる制度がありますが、平成18年7月からは新たに1/4免除、3/4免除の新しい割合も加えられます。

厚生年金未加入事業所への対応
4月から社会保険庁は、厚生年金と中小企業の会社員らが加入することになっている政府管掌健康保険に加入していない企業や個人を、強制的に加入させる措置を強化する方針です。強制加入は、社会保険庁の文書や個別訪問による加入の呼びかけに応じない事業者に対して行われており、現在は従業員20人以上の事業所がその対象となっていますが、これが15人以上の従業員がいる事業所等へと拡大されます。具体的には、未加入の事業所に対して事前に立入検査を行う日を通知し、従業員名簿の提出を促し、職権で加入手続きを進めます。そして、もし強制加入させた事業所が保険料の納付を拒否した場合は、銀行口座などを差し押さえるなどの方法で保険料を払わせるとしています。
厚生年金と政管健保はすべての法人事業所と5人以上の従業員がいる個人事業所に加入義務があります。しかし、事業主が保険料の半額を負担することを嫌い、加入手続きを怠ったり、違法に脱退する事業主が途絶えず今回の対応となったようです。


少子化対策

政府は、急速に進む少子化を食い止めるには、仕事と子育ての両立を促す企業環境の整備が不可欠とみており、次世代育成支援対策推進法(次世代法)で社員300人超の企業に行動計画の策定を義務付けました。それに伴い、主要企業が社員の子育て支援策を相次いで拡充し始めています。

●主要企業の例
東京海上日動火災保険やサントリーなどは、子どもが小学3年生になるまで勤務時間を短縮できる制度を導入、日産自動車では妊娠がわかれば即座に産前休暇を認める制度を導入しました。企業の支援策が実際にどの程度活用されるかは未知数ですが、リーディングカンパニーの名に相応しい実績を残していただきたいところです。ちなみに、政府は女性の育児休業の取得率の目標を80%としていますが、実際には2004年度で70%強、同年の男性の取得率は政府目標の10%に対して0.44%でした。制度はあっても利用しにくい雰囲気があるとの指摘は以前から多くあります。

●兵庫の例
兵庫県では、「5年間で25万人」の赤ちゃんを産んでもらおうという“産めよ増やせよ”作戦に着手するため、平成18年度の予算案に約618億円を盛り込んだそうです。また、「晩婚化・未婚化の進行」への対策として、平成18年度から男女の出会いを支援するお見合い紹介事業を始めます。これは「ひょうご出会いサポート事業」という名称で、企業、自治体など会員団体を募り、職場交流会で気の合った相手を探してもらうシステムです。出生率の低下に危機感を抱く兵庫県は、年平均5万人への回復を目標に、結婚支援など少子化対策を多角的に展開していく方針です。

●その他の例
富山県では経営者の次世代育成支援事業に100万円を予算化したり、久留米市では特定不妊治療を行う夫婦を対象に、来年度から年間5万円を独自に助成することを決めました。

平成18年3月号

無断欠勤の社員を解雇できる?

社員が無断欠勤を続けており、自宅にも戻っていないようで、連絡も取れない状況となってしまいました。また、ご家族も連絡がとれないようです。この社員は、これまでも何度か無断欠勤をしたことがあり、その都度注意していましたが、会社として社員を解雇したい場合、どのような手続きが必要でしょうか。
◆解雇するには
行方不明の社員を解雇するには、民法97条の2の「公示送達」によって、解雇の意思表示を行わなければなりません。具体的には、社員の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てを行い、裁判所の掲示板に掲示するほか、掲示したことについて官報および新聞に少なくとも1回掲載し、最後に掲載した日から2週間が経過すれば、社員に会社の解雇の意思表示が到達したものとみなされます。
◆解雇予告手当は
公示送達によって解雇する場合にも、所轄の労働基準監督署長から解雇予告の除外認定を受けない場合には、社員に解雇の意思表示が到達したとみなされる日(この場合、官報および新聞に最後に掲載した日から2週間が経過した日)の翌日から起算して30日目の日を解雇日と指定するか、30日分の解雇予告手当を供託するか、どちらかの手続きが必要です。
◆労働契約の自然終了
また、就業規則、労働協約、労働契約のいずれかで無断欠勤が連続して一定期間に及び、連絡不能である場合において自然退職とする旨の定めがある場合には、労働契約の自然終了として雇用契約を終了させることができます。
ただし、無断欠勤の期間が短すぎる場合や無断欠勤をして連絡が取れなくなったことについて客観的な正当性がある場合には、規定の適用が認められないケースも考えられますので注意が必要です。

公益通報者保護法が4月に施行

不正を内部告発した社員に対して、会社が解雇その他の不利益な取扱いを行うことを禁止する公益通報者保護法が2006年4月に施行されます。内部告発のルールを明確にし、内部告発者を守ることで企業に法令を遵守させることが目的です。
◆保護の対象となるのは
内部告発者として保護されるのは、正社員、派遣労働者、アルバイト、パートタイマーなどで、退職者も含まれます。自ら不正を是正する立場にあり、株主総会で選任・解任される取締役や監査役は保護の対象外となっています。
内部告発者を保護するために、具体的には内部告発を理由とした解雇や減給、降格、派遣労働者の交代要求、退職金の没収・減額などが禁じられています。
◆通報先と保護要件は
通報先は、事業者内部、処分等の権限を有する行政機関、報道機関や消費者団体などの事業者外部ですが、それぞれに保護の要件が定められています。
事業者内部については通報が金品の要求などの「不正の目的」でないこと、行政機関についてはそれに加え、通報内容が真実であるという相当の理由があることなどです。
◆外部への告発は
報道機関や消費者団体などの外部へ告発する場合には、さらに以下のいずれかに該当するケースに限るなど要件が厳しくなっています。
1、不利益な取扱いを受ける恐れがある
2、証拠隠滅の恐れがある
3、公益通報をしないことを正当な理由なく要求された
4、企業に告発したのに20日以上たっても調査が開始されない
5、個人の生命、身体に危機が生じる切迫した危険がある
◆もし公益通報を受けたら
公益通報を受けた事業者は、公益通報の是正措置等について、公益通報者に通知するように努めなければなりません。また、行政機関が公益通報を受けた場合は、必要な調査や適切な措置を取らなければなりません。

【トピック】
●初任給調査結果 東京労働局
今年の3月卒業予定者の初任給の平均値(東京都)は、大学が20万2,000円(前年比0.7%増)、短大が18万3,100円(同1.3%増)、専修学校が18万3,000円(同1.7%増)、高校が16万5,000円(前年同)だった。東京労働局が都内ハローワークで受理した求人内容をもとにまとめた。

●管理職以外も「残業代なし」へ?
厚労省の研究会で、管理監督者や裁量労働制で働く人でなくても、一定以上の収入や権限がある労働者を労働時間規制から外す方向が示された。その条件として、1.業務の進行について指示を受けず、成果で賃金が決まる 2.一定以上の収入があり、本人が同意している 3.会社が過労を防ぐための健康確保措置を講じている 4.導入を労使で協議し、合意に至っている などをあげている。同省は、審議会の議論を経て07年上程予定の労基法の改正案に盛り込むことを目指す。

2006/01/25

平成18年2月号

児童手当、小学6年まで支給へ

少子化対策の一環として支給されている児童手当ですが、2006年4月から支給対象が引き上げられ、所得制限も緩和されることが決まりました。現在は、仮に夫婦と子ども2人の世帯とすると、給与所得者で年収780万円未満、自営業者については年収596万円未満の方に支給され、0歳から小学3年生までの子どもの85%に支給されていますが、年収要件の緩和によって約90%の児童が対象となる見込みです。
◆児童手当とは
児童手当は児童を養育する方に手当を支給することにより、家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健全な育成および資質の向上に資することを目的に、現在は小学3年生までの児童を養育している方に第1子、第2子に対して月額5,000円、第3子以降に対しては月額1万円が支給されています。
2006年4月からは支給対象が小学6年生まで引き上げられ、所得制限も夫婦と子ども2人の世帯で給与所得者については年収860万円未満、自営業者は年収780万円未満に引き上げられます。

◆必要な財源は
児童手当拡充のために必要な財源は2006年度から、たばこ税を1本につき85銭引き上げ、たばこの値段は1本1円の値上げでまかなうことが決まっています。


結婚しても子供を多く持てない夫婦が増加

わが国の合計特殊出生率は低下し続け、04年には1.29となりました。しかし、多くの未婚者はいずれ結婚して子供を持ちたいと考えており、結婚に対する意欲が低下しているわけではありません。子供を持たない理由については、未婚者、既婚者を問わず多くの人が子育ての経済的な負担が大きいことをあげていますが、子育てにかかる費用が近年増大しているわけではありません。
◆子供を持つ余裕のない若年世帯が増加しつつある
近年、大学卒業者がパート・アルバイトとして就業する割合が増加しています。若年者のパート・アルバイトにおける年収は同年代の正社員の3割程度にあたる約120万円にとどまっており、特に近年増加しているパート・アルバイト同士の夫婦は、共働きをしても必要な所得を得ることが難しく、子供を持つ余裕がない状況にあると考えられます。一方、正社員として就業していても時間外労働の増加などにより長時間働くため、子育てに時間を割きにくくなっているのではないでしょうか。
◆子育てには総合的な支援が必要
アルバイト同士の夫婦をはじめとした低所得若年層においては、将来の収入見通しに対する不安が子育てをためらわせる大きな要因となっています。現在のような正社員かパート・アルバイトかという二者択一ではなく、多様な働き方および賃金体系が認められれば将来の収入の増加を見込むことができ、子育ての希望を持ち続けられるのではないでしょうか。
また、子育て支援に関する多様なサービスが十分かつ安価に供給されるようになり、育児休業制度の利用や男性の働き方を見直していくことなど、企業との協力の下で夫婦が子育てをしていくことが望ましく、出産、子育てが一段落した女性の再就職・キャリアアップに向けての教育環境が整備されれば子育てに対する負担の軽減につながることが期待できます。
◆子育ての社会化
今後、子育てが家族の責任だけで行われるのではなく、親世代、同世代の友人、会社の同僚、近隣に住む人々など社会全体で子育てに取り組む「子育ての社会化」、そして子育てにかかる個人の経済負担を軽減していくことが必要になってきているように思われます。


【トピック】
●介護保険見直し
厚労省は、介護保険料の負担を現在の40歳から引き下げることに関する検討会を設置する。これについては昨年の介護保険法改正で検討されたが、改正法に盛り込まれるには至らなかった。年内にも報告書をまとめ、2009年度までの改正を目指す模様。

●年金徴収強化へ
社保庁は、2004年度に約3万1,000人に対して実施した国民年金保険料の強制徴収を、2005年度は約14万人に対して行う方針だ。昨年12月上旬ですでに8万6,000人に対して強制徴収を実施しており、年度末にかけてさらに強化するとしている。
一方、同庁と厚労省内には「強制徴収だけでは目標とする『2007年度末までに納付率80%』を達成できない」という見方が強い。そこで、国民年金の長期未納者と長期未加入者は国民健康保険を使えないようにするという案が浮上している。総務省や自治体との調整もあるが、早ければ2007年度から実施したい考えだ。

●「年金カード」導入
政府は、銀行や郵便局のATMに差し込むだけで現在の年金積み立て額、受取額等がわかる「年金カード」を、2008年4月から国年・厚年の加入者全員に配布することを検討している。政府はすでに、同年から同様の情報を定期的に郵送する方針を公表しているが、これよりも利便性が高いものとの判断がなされた。

2006/01/05

平成18年1月号

2007年問題 技能継承に助成金

「団塊の世代」が定年退職を迎えることで、製造業を中心に熟練した技術・技能やノウハウの喪失が懸念される、いわゆる「2007年問題」の対策として、厚生労働省は中小企業の技能継承の取組みに対し、助成金を導入する方針を固めました。中小企業労働力確保法を改正し、取組みにかかる企業の経費の半分を負担するほか、訓練期間中の社員の賃金の半分についても負担するということです。
◆団塊の世代の技術などを次の世代にどう伝えるのか
昭和22年から昭和24年に生まれた「団塊の世代」は約670万人とされ、平成19年から60歳の定年退職を迎えます。各企業の生産現場では、労働力減少のほか、団塊の世代が持つ高度な技術力やノウハウを、どう次の世代に伝えていくかが課題となっています。
特に全企業の9割以上を占める中小企業の経営者からは「企業体力に限界があり、技能継承に向けた行政の支援は重要」などの声が強くなっています。
◆助成金制度を活用
厚生労働省はこうした要請を踏まえ、中小企業労働力確保法に基づく中小企業雇用創出等能力開発助成金制度を活用し、現在は技能の高度化や新分野進出への取組みに限られ支給している助成金の対象範囲を拡大し、技能継承に取組む企業にも支給できるように制度を改めるということです。
助成金を受けたい中小企業の事業主か業界団体は、まず都道府県に技能継承に関する取組みの計画書を提出します。認定されれば、企業が講師を招いて社員の教育を実施したり、職業訓練学校など外部訓練施設を活用して技能継承を図ったりした際、かかった費用の原則半分が助成金として支給されます。

労災保険加入制度の強化

厚生労働省は平成17年11月1日から、労災保険未加入の事業主に対する費用徴収制度を強化することにしました。労災保険は、労働者を1人でも(パート・アルバイト含む)雇用している事業主には加入手続きを行う義務があります。もし、労災保険に加入していない時に労災事故が発生した場合、遡って保険料を納めなくてなりません。また、労災保険料を納めるだけでなく、ペナルティの保険料を課せられることとなれば、それだけで事業主にとってかなりの経済的負担となります。労使ともに安心して働ける職場環境のため、また労災事故が起こって慌てないためにも、労災保険の加入は事業主にとって必要不可欠なものです。
◆適用事業所
労災保険は労働者単位で適用される雇用保険とは違い、事業所単位で適用されます。適用されない事業および労働者は1、国の直営事業2、官公署の事業(地方公務員には一部適用)3、船員保険に加入している労働者だけで、これ以外の事業および労働者には適用されます。労災保険率は業種によって異なりますが1,000分の5から1,000分の129となっています。また、中小企業の場合は、労働者だけでなく事業主等が労災保険に加入できる「特別加入」という制度があり、労働保険事務組合に事務委託をしている場合に加入できます。
◆費用徴収のポイント
労災保険未加入時に、費用徴収の対象となる場合は次の2通りです。1、労災保険の加入手続について行政機関から指導等を受けたにもかかわらず、未加入期間に労災事故が発生した場合。2、行政機関からは指導は受けてはいないが、労災保険の加入手続を1年以上怠っていたときに労災事故が発生した場合。1、の場合、事業主が故意に手続きを行わなかったものとして、発生した労災事故に関して支給された保険給付額の全額が徴収されます。2、の場合、事業主が重大な過失により手続きを行わなかったものとして、発生した労災事故に関して支給された保険給付額の40%が徴収されます。徴収される金額は、療養を開始してから3年間に支給されるものに限ります。また、療養(補償)給付・介護(補償)給付は除外されます。いずれにせよ、労災保険適用の事業所となった時点から加入しておけば、徴収されずにすむ金額であることに違いはないです。

【トピック】
●医療改革大綱決定
医療制度改革大綱が決まった。高齢者の医療費の負担割合は、70歳以上の高所得者について現行の2割から3割へ(06年10月から)、70歳以上75歳未満の中低所得者について1割から2割へ(08年度から)引き上げることとなった。 また、現在特例で3歳未満は2割負担とされているが、これを義務教育就学前とすることとなった。

●高額療養費未請求分を通知
社保庁は、高額療養費の払戻し対象となっていながら貰い損ねている政管健保加入者に対し、その旨の通知を始める。年内のサービス開始を目指し、通知のタイミングなどの調整を図るとしている。
高額療養費の還付については、多くの健保組合ですでに自動還付システムが確立しており、政管健保も一部の社保事務所では通知サービスを行っていたが、サービスの均一化を求める声を受け、今般の措置となった。