2013/04/01

4月の事務所便り


「解雇権濫用」「名ばかり管理職」に関する裁判例

 ◆メーカーが多数の労働組合員を解雇
 神戸市にある鋼管メーカーを解雇された従業員(22人)が地位確認などを求める訴えを提起していましたが、神戸地裁は「解雇権濫用のため無効である」として、会社に対して未払賃金の支払いを命じる判決を下しました(2月27日)。
 この会社は、事業縮小を理由として2011年6月に工場勤務の従業員(28人)を解雇しましたが、28人のうち26人は労働組合員だったそうです。
 裁判官は判決で「他部署への配転を検討するなど、解雇を避ける努力を尽くしていない」と指摘し、また、解雇された従業員の大半が労働組合に加入していたことが「明らかに不自然である」としました。
 原告の男性の1人は、「会社は判決を重く受け止め、早く職場に戻してほしい」と話しているとのことです。

 ◆大学が財務課長を管理職扱い
 広島県にある私立大学の元財務課長(57歳)が、実態は管理職ではないにもかかわらず管理職として扱われて残業代が支払われなかったとして、大学側に対して未払賃金等(約630万円)の支払いを求めて訴えを提起していましたが、広島地裁は「時間外手当の支給対象外となる管理監督者には該当しない」として、学校側に対して約520万円の支払いを命じました(2月27日)。
 訴えていた男性は、2008年4月から2011年3月まで財務課長を務めており、最も多い月の残業時間は103時間30分だったそうです。
 裁判官は判決で「原告の上司として法人事務局長などが置かれ、業務の大部分で上司の決裁が必要であり、権限は限定的だった」としました。また、出退勤時間等に関する裁量が限られていたことなども考慮され、「権限や責任が経営者と一体というのは困難である」とされました。
 大学側はこの判決に不服のため、控訴を検討しているとのことです。


 原付使用バイク便事業者の労災保険特別加入の要件緩和

 ◆総排気量125cc以下の原付を使用する場合も加入対象に
 2013年3月1日付けで発出された通達(基発0301第1号)により、総排気量125cc以下の原動機付自転車(原付)を使用して貨物運送事業を行う者(以下、「バイク便事業者」)も、労災保険の特別加入対象者となることとなりました。
 これは、厚生労働省が2011年に実施したバイク便事業者の災害発生状況等の実態調査の結果により、総排気量が125cc以上か以下かによって業務内容や災害発生状況に大きな違いが見られなかったことから、今般、対象に含めることとなったものです。

  ◆特別加入手続の流れ
 新たにバイク便事業者が労災保険に特別加入する方法として、(1)既存の特別加入団体を通じて加入する、(2)新規に特別加入団体を設立して加入する、の2つの方法があります。
 それぞれ手続きの方法が異なりますので、都道府県労働局や労働基準監督署に確認のうえ、手続きをする必要があるでしょう。

 ◆労災保険の特別加入制度とは?
 労災保険は、労働基準法に基づく事業主の災害補償責任を担保することを基本とする制度であるため、労働基準法上の労働者でない者については対象外とされています。
 そこで、特別加入制度においては、「業務の実態」や「災害の発生状況」等からみて労働者に準じて保護することが適当である者について労働者とみなし、業務災害および通勤災害について保険給付等を行う制度です。
 対象者としては、()中小事業主およびその者が行う事業に従事する者、(2)労働者を使用しないで事業を行う一人親方その他自営業者およびその者が行う事業に従事する者、(3)特定業従事者、(4)海外派遣者が挙げられます。
 今般対象となったバイク便事業者は、(2)に該当する者ですから、委託契約を締結しているバイクライダーであっても、総合的に判断して労働者と認められる実態にあるものは対象となりませんので、注意が必要です。

 
4月1日から「雇用保険被保険者離職証明書」の様式が変更

 ◆様式改正の内容
 2013年4月1日より「改正高年齢者雇用安定法」が施行されるのに伴い、離職理由の欄を見直し、定年により離職する者について、定年後の継続雇用に関する希望の有無等を記載する項目が新たに設けられる等、所要の変更が行われます。
 また、当該離職者が定年後の継続雇用を希望していたにもかかわらず離職に至った経緯について、「a 就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。以下同じ。)に該当したため…、b 平成25年3月31日以前に労使協定により定めた継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準に該当しなかったため、c その他…」のいずれに該当するかを記載することとされています。

 ◆様式改正後の旧様式の取扱い
 新様式には、右下に「25.04‐新」と印字されており、それ以外の者は旧様式となりますが、当面の間は旧様式も使用することができます。
 しかしながら、旧様式には上記のように離職に至った詳しい理由を記載する欄がありませんので、事業主が「具体的事情記載欄(事業主用)」に記載する必要があります。
 具体的には、離職理由欄の「2 定年、労働契約期間満了等によるもの(1)定年による離職(定年 歳)の横に○を付し、カッコ内に定年年齢を記載したうえで、「定年退職(本人は継続雇用を希望したが、就業規則に定める解雇・退職事由に該当した)」のように記載することとなります。

 ◆契約期間満了による離職のケースにおける取扱い
 例えば、60歳定年の会社で65歳まで1年ごとの契約更新で65歳までの再雇用制度が設けられていた場合で、更新基準を満たさないために期間満了で離職するときには「3 労働契約期間満了等によるもの(2)労働契約期間満了による離職」に○を付し、契約期間や更新回数、雇止め通知の有無等の必要事項を記載することとなります。
 また、事業縮小等により契約更新することなく期間満了により離職するときも同じように記載します。
 なお、これらの場合に提出する雇用保険被保険者資格喪失届の「5 喪失原因」は「2」を選択し、事業主の都合による離職以外の離職となります。

 
1年間に負担する社会保険料はどのように決まる?

 ◆社会保険料の額を決める「標準報酬月額」とは
 健康保険や厚生年金保険の保険料は、従業員の個々の給与の額ではなく、区切りのよい幅で区分した「標準報酬月額」に基づいて算出されます。
 この幅が「標準報酬月額等級」として、健康保険では47等級に、厚生年金保険では30等級に分かれています。これらの保険料は労使折半ですので、事業主の負担が過重とならないよう保険料に上限が設定されていますが、高額所得者でも上限等級以上の保険料負担はしませんので、「高額所得者優遇」にならないよう、政令で、最高等級の上に等級を追加することができることとされています。

 ◆標準報酬月額はどうやって決まる?
 標準報酬月額が決まる方法として、(1)資格取得時決定、(2)定時決定、(3)随時改定の3つがあります。
 新入社員等は(1)によって決定されますが、7月1日現在その会社に在籍している従業員については(2)により、4~6月に支払われる給与等や賞与の賃金総額の月平均賃金額を基準に標準報酬月額にあてはめて、その年の9月から翌年8月までの1年間の標準報酬月額が決まります。
 一部の事業所では当月分の給与を翌月中に支払うこともあるので、そうした企業においては3~5月分までの賃金総額によって決まることとなります。

 ◆残業量の調整や昇給のタイミングに注意
 定時決定によってその年の9月から翌年8月まで適用する標準報酬月額が決定されることから、算定期間中に多くの残業が発生し、平均賃金額が他の時期よりも高くなる会社や、算定期間中に昇給がある企業においては、負担する社会保険料の額に影響を生じる可能性があります。
 特に、厚生年金保険料は平成16年の制度改正によって平成29年9月まで毎年0.354%ずつ引き上げられることとなっているため、昇給等によらなくても保険料の負担は年々増していきます。
 不必要な残業を控えたり、業務の進め方を見直したり、昇給月を変更したりする等、対策を社会保険労務士に相談してみるのもよいでしょう。

 
「裁量労働制」の採用増加と規制改革会議の動向

 ◆裁量労働制の協定届出数が過去最多
 厚生労働省のまとめによると、「裁量労働制」の届出数が過去最多(2011年)となったそうです。届出数は年々増加しており、「専門業務型」は過去10年間で約3倍となり、「企画業務型」は適用要件が緩和された2004年以降は約2倍となったそうです。

 ◆「裁量労働制」とは?
 裁量労働制は、業務の性質上、その遂行手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務として厚生労働省が定める、一部の業務について限定して適用できる制度です。
 対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなします。労働時間だけでは成果を評価しにくい働き方に対応するために設けられた制度です。
 裁量労働制には、「専門業務型」と「企画業務型」の2種類があります。それぞれ対象となる業務が定められており、導入には労使での合意、労働基準監督署への労使協定等の届出、就業規則等の整備など、慎重な検討が必要です。また、企画業務型の場合は、導入に必要な事項を協議する「労使委員会」の設置や定期的な状況報告等が必要になります。
 なお、一部に誤解があるようですが、裁量労働制を採用していても、働いたこととみなす時間(みなし労働時間)が法定労働時間を超えている部分については残業代が発生します。また、深夜勤務や休日勤務を行ったりすれば割増賃金が発生します。

 ◆メンタルヘルス不全誘発の一因にも
 専門業務型裁量労働制は、特にSE(システムエンジニア)のような業務で最も多く導入されています。中には裁量労働制の持つ「仕事の手順や時間配分を労働者に任せる」という特徴を、企業に時間管理の責任がないというように誤解したうえ、本来対象とならないような労働者まで裁量労働としている例もあるようです。
 その結果、長時間労働を助長し、うつ病の発症等のメンタルヘルス不全につながっているという指摘もあります。裁量労働制を導入していても労働者への健康配慮は会社の義務ですので、会社は出社・退社の時間などを管理しておく必要があるでしょう。

 ◆規制改革会議での議論
 政府の規制改革会議の議論では、企画業務型裁量労働制の適用拡大等についても取り上げられることになっています。いわゆる「ホワイトカラーエグゼンプション」(一定以上の年収のホワイトカラーを労働基準法で定めた労働時間の規制から外す制度)が導入されることになるのかどうか、今後の動向に注目です。

 
いまどき!?「飲酒強要」は時代遅れ

 ◆飲酒強要を「パワハラ」と認定
 飲酒強要などのパワハラを受けたとして、ホテル運営会社の元社員が会社と元上司に対して損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁が飲酒強要を不法行為と認定し、150万円の支払いを命じたとのことです。
 一審の東京地裁判決では、元上司の別の行為についてパワハラに該当するとして70万円の慰謝料が認められましたが、飲酒強要の部分については「上司の立場を逸脱し、許容範囲を超えていたとは言い難い」として訴えが退けられていました。

 ◆「パワハラ防止規程」を策定していますか?
 近年、パワハラを契機として会社や上司が訴えられる事件がテレビ等で取り上げられる機会も多く、会社側も本格的にパワハラ防止規程の策定に取り組んでいるようです。
 仕事上の悩みは今も昔も「人間関係」に尽きるようですが、パワハラ訴訟などは、経営上まったく無用なコストです。日頃の労務管理で防止できれば、こんなによいことはありません。
 事業戦略の厳しさに比べれば、パワハラは経営トップの強い決意と社内への会社目標の十分な浸透があれば、事件に発展する確率は限りなく低くできるものだと思います。

 ◆今年の歓迎会は低アルコール飲料で乾杯!?
 最近は酒類全体の販売量が低下してきている中で、若い世代では低アルコールの飲料を好むような傾向があります。さらには“超低アルコール飲料”(アルコール度数3%以下)の商品が目立つようになり、世代の移り変わりを実感します。
 これからの季節、新入社員や異動で新しく配属になった社員を交えたアルコールの入る場面も多くなります。今年は若者に交じって超低アルコール飲料の新しい味わいを楽しんでみると、新人との会話も弾むかもしれませんよ。
 会社の管理責任云々以前に、「酔って乱れず」の先輩社員はカッコイイと思いませんか? 


経営者はどのように経営情報を収集・活用しているか?

 ◆情報収集の場所は特定の場所に集中していない
 独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施した、中小企業経営者を対象にした「経営に役立つ情報・施策の活用に関するアンケート調査」(有効回答数702件)によると、経営者が経営に役立つ情報を得ている「場所」としては、「講演/セミナー/勉強会」「自社内」「オフタイムの会合」「展示会/商談会」の4項目の回答が上位でした。
 その割合もほぼ同様(約40%~55%)で、特定の場所で情報収集をするという傾向は見られなかったようです。

 ◆情報提供者は「同業者」など業務で接点のある人が中心
 「経営に役立つ情報を誰から提供されることが多いか」という質問に対しては、「同業者/交流参加者」(62.2%)が最も多く、次いで「取引先担当者」(52.9%)、「顧客」(44.9%)と続いています。
 普段の業務を通して、身近な人から情報を得るという経営者が多いことがわかります。

 ◆「新聞」「テレビ」「雑誌」の活用が多い
 対人的な関係ではなく、メディアを介した情報収集先として、「普段どのようなメディアを通じて、経営に役立つ情報を入手しているか」という質問については、「新聞」(82.0%)が最も多く、次に「テレビ」(62.0%)「雑誌」(45.7%)「ホームページ」(43.3%)の順になっています。
 従来型のメディアがまだ上位を占めていることがわかりますが、「ホームページ」の利用が増えているなど、中小企業でもインターネットの活用は進んでいることがわかります。

◆活用が増えたメディアは?
 現在活用が増えているメディアとして、「ホームページ」の役割は大きいようです。高年齢経営者の間でも活用意欲が高まっており、幅広い年齢層を取り込むメディアとして今後さらなる成長が期待されます。
 また、新しいメディアの代表例としていま注目されているfacebook twitterなどは、30代を中心とした若い経営者の間でも、その活用は10%ほどでした。ビジネスにおける活用はまだ成長途中というところでしょう。

 
4月以降の「雇用関係助成金」の改正と新設・統廃合

 ◆平成25年度から新体系に
 厚生労働省は、4月から雇用関係助成金制度の一部について、既存の助成金で類似するものを統廃合するなどして、わかりやすく、活用しやすい制度体系に変更することを発表しました。
 具体的には、雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金のように類似する制度を統合して新設するもの(「雇用調整助成金」に一本化)、中小企業定年引上げ等奨励金など、平成24年度末で廃止となるものなどがあります。

 ◆雇用調整助成金の改正点
 雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金が統合されて雇用調整助成金に一本化されますが、4月1日以降、以下のように一部内容を変更することが発表されています。

(1)助成率の変更
   ・大企業:3分の2(4分の3)→2分の1
   ・中小企業:5分の4(10分の9)→3分の2
※( )内の「労働者の解雇等を行わない場合、障害者の場合」も同様の助成率となる。

(2)教育訓練(事業所外訓練)の助成額の変更
   ・大企業:4,000円→2,000
   ・中小企業:6,000円→3,000

(3)円高の影響を受けた事業主に対する生産量要件緩和特例の廃止

 ◆日本再生人材育成支援事業奨励金の新設
 また、4月以降も継続されるものとして、すでに1月より、重点分野(健康・環境・農林漁業分野等)において、有期契約労働者等も含めた労働者に対して、一定の職業訓練を実施した事業主や、被災地復興のために必要な建設関係の人材育成を行った事業主に向けて、以下のような助成金が実施されています。

・正規雇用労働者育成支援奨励金
・非正規雇用労働者育成支援奨励金
・海外進出支援奨励金(留学)
・海外進出支援奨励金(送り出し)
・被災地復興建設労働者育成支援奨励金
 今後、非正規労働者のキャリアアップ支援、若年層の安定雇用の確保、高齢者の就労促進などを目的とする新しい助成金も設けられる予定ですので、動向を注視したいところです。

 

 

「叱られること」についての若手社員の意識

 ◆若手社員の約5割が上司・先輩に叱られた経験
 人事総合ソリューション企業のレジェンダ・コーポレーション株式会社が、入社3年目までの若手社員を対象に行った意識調査の結果を発表しました。
 調査では、若手社員に「上司・先輩に叱られることがあるか」を尋ねたところ、ほぼ半数(49.6%)が叱られたことがある(「よくある」+「時々ある」)と回答しました。
 性別でみると、叱られたことがある割合は、男性55.4%、女性40.4%となり、男性のほうが女性より叱られている傾向が見られたようです。

 ◆「正当な理由があれば、上司・先輩に叱られたい」8割弱
 正当な理由があれば、上司・先輩に叱られたいか尋ねたところ、「叱られたい」(「とても思う」+「やや思う」)と回答した割合は78.5%で、特に、3人に1人は“叱られたい”と強く感じていることがわかりました。

 ◆叱られることは自身の成長に必要
 叱られることは自身の成長に必要かを尋ねたところ、「必要」(「必要」+「どちらかと言えば必要」)と回答した割合は87.7%となり、必要と感じている割合は、男性89.3%、女性が85.1%で、性別を問わず、叱られることは成長に必要と考えていることがわかりました。

 ◆「叱り方」にも工夫が必要
 昨今、世間を騒がせている体罰問題やパワハラ・セクハラによる訴訟問題によって、上司が部下に対して「叱る」という行為に慎重になっている傾向にあるようです。しかし、今回の調査で、「正当な理由があれば叱られたい」と8割弱の若手社員が回答しており、社会に出るまでにあまり叱られた経験がない若手社員が本当は「叱られたい」と思っていることがわかりました。
 ただ、「正当な理由があれば、叱られたいと思うか」という質問において、「叱られなければ伸びない」や「ある程度叱られることは期待の裏返しだと思う」といった、肯定的な意見が目立った一方、「正当な理由があっても、叱られ方によっては受け入れたくない」といった、叱られることに慣れていない若手社員の繊細な一面も見てとれたようです。


「帰宅困難者対策条例」への企業の対応

 ◆帰宅困難者の受入れに向けた準備が本格化
 東日本大震災で500万人を超える帰宅困難者が出た首都圏では、震災から2年が経ち、駅周辺の施設を中心に帰宅困難者を受け入れるスペースを設ける動きが広がっているほか、企業が協力して帰宅困難者を受け入れる訓練も次々に行われています。
 行政機関では、東京都が帰宅困難者をその場にとどめるため、水や食料の備蓄を企業などに求める帰宅困難者対策条例を来月から施行します。
 施行を前に、水や食料を備蓄する動きが本格化しているようです。

 ◆「東京都帰宅困難者対策条例」とは?
 大規模災害が発生し、鉄道等が復旧しない中、多くの人が帰宅を開始すると、救助・救援活動等に支障が生じる可能性があります。こうした事態をできるだけ軽減するための対策として都、住民、企業の役割などを東京都が条例として定めたもので、2013年4月1日施行予定で、企業には次のような取組みを求めています。

(1)従業員の一斉帰宅の抑制(施設の安全確認と3日分の食料等備蓄)
(2)従業員との連絡手段の確保などの事前準備(従業員との連絡手段確保と、従業員に対して家族との連絡手段の複数確保の周知)
(3)事業所防災計画の策定

 ◆条例に対する企業の懸念事項
 東京経営者協会が行った「東京都帰宅困難者対策条例への企業の対応に関するアンケート」の結果によると、「一斉帰宅抑制方針」を定めている企業は57.0%で、何らかの「備蓄をしている」企業は93.0%、企業の帰宅困難者対策に関する意識は高いことが伺えます。
 一方、条例施行後に企業として懸念する点として、「待機させた従業員がその後の余震などで被災した場合の会社の責任」や、「帰宅させた従業員が帰宅途中で被災した場合の会社の責任」などの従業員に対する企業の責任に関する懸念が上位を占めました。
 また、通行人や被災者を受け入れる際の備蓄品の不足など、社外の者の受入れに対する関する懸念や、通行人を社屋に入れ設備を毀損した場合の責任に関する懸念なども挙げられました。

 ◆「もしもの場合」に備えて対策を
 今後、巨大な地震が起こる確率は首都圏に限らず全国的に高いと言われており、企業の防災対策は必然と言っても過言ではありません。
 東日本大震災から2年が経った今、企業として備えておくべきことを再確認してみてはいかがでしょうか。