2008/08/29

9月の事務所便り

導入なるか?「サマータイム制度」

◆次期臨時国会に提出か
夏の間、時計の針を1時間進める「サマータイム制度」について、導入が議論されています。政府は6月末に決めた、経済財政運営の指針となる「骨太方針2008」に明記し、超党派の「サマータイム制度推進議員連盟」は次期臨時国会への関連法案提出を目指しています。根強い反対論や課題も多く、浮かんでは消えるサマータイム制度について考えてみましょう。

◆サマータイム制度のメリットは?
サマータイム制度は、日照時間が長い夏に時計を1時間進めて、明るい時間を有効に使う制度です。利点としては照明の使用時間を短くできるほか、朝の比較的涼しい時間帯から仕事を始められるため、冷房の使用が減り、省エネ効果が高まり、世界的に関心が高まっている地球温暖化対策としても注目を集めています。1年に2回時計を直す手間も生じますが、これにより省エネ意識を喚起できるという効果も期待できます。
また、明るいうちに仕事が終わって余暇を楽しむ時間が増えれば、消費が拡大する可能性もあり、その経済波及効果にも期待が集まっています。
サマータイム制度は世界で70カ国以上が採用し、経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国のうち、導入していないのは日本と韓国、アイスランド(夏が白夜のため導入の必要がない)だけです。

◆労働時間が増えることも
日本でも戦後間もない1948年に、サマータイム制度を取り入れたことがあります。電力供給不足の解消のため、GHQ(連合国軍総司令部)の指示で実施されましたが、「労働時間が増えた」として不評を買い、1951年に終わっています。
制度の導入が再び議論され始めたのは1990年代前半からで、省エネと経済効果を期待する経済界から声が上がりました。しかし、法案提出には至っておらず、「夏前に法案提出の動き→断念」という光景がお決まりのパターンとなっています。
代表的な反対の理由は、労働時間が増すという懸念です。定時退社が定着している職場が少ないため、始業が1時間早まるだけであって、労働時間が増えかねないからです。また、昨今の原油高や食料の物価高で家計や財布のヒモは固くなっており、夕方を余暇にあてられるかどうかは不透明です。早めに家に帰って冷房をつければ、エネルギー消費が増すおそれさえあります。
また、「時計合わせの手間がたいへんである」との見方もあります。掛け時計や腕時計の針を進めるだけでなく、時間調整のためのコンピューターシステムの修正には相当の手間とコストがかかると予想されます。他にも、睡眠障害等への悪影響など健康被害への懸念もあり、導入のためにはこれらの反対論や懸念を押し切れるだけのメリットを実証する必要があるようです。

「パワー・ハラスメント」の基準は?

◆法的定義のないパワハラ
職権を使ったいじめや嫌がらせである「パワー・ハラスメント」(パワハラ)が、会社の業務に大きな影響を与えるようになってきました。社員の士気や会社の評判を落とさないように対策に乗り出している企業もありますが、「セクシュアル・ハラスメント」(セクハラ)と違って法的定義がなく、あいまいな基準が対応を難しくしています。

◆パワハラに関する裁判例
企業内で上司などから暴力や暴言、無視されるなどのパワハラ行為を受けて悩む社員は多く、年々増加傾向にあると言われています。2007年10月の医薬品販売会社社員の自殺について、東京地裁がパワハラとの因果関係を認めて労災と認める判決を出しました。
また、2008年7月には道路会社社員の自殺をめぐり、被害者がうつ病で自殺したのはパワハラが原因であるとして、遺族が慰謝料などの損害賠償を求めた訴訟の判決で、松山地裁は自殺との因果関係を認め、約3,100万円の賠償を命じました。裁判長は、上司による過剰なノルマ達成の強要や度重なる叱責は「違法と評価せざるを得ない」と指摘し、「自殺は予見可能だった」として会社の責任を認めています。
また、企業のトップがパワハラ体質であるために社員が相次ぎ辞めていく会社もあると言われており、パワハラに対する社会の見方は厳しさを増していると言えるでしょう。

◆「パワハラ上司」のタイプ
パワハラに関し、研修の主要テーマに据えるなど、何らかの予防策を模索する企業は増えています。パワハラに関する研究を行っている有識者によると、主に「パワハラ上司」は、以下の4つのタイプに分けられるとしています。
(1)怒鳴るなどの威嚇をする「自己中心型」
(2)細かく指示する「過干渉型」
(3)自分の上司頼みで責任を回避する「無責任型」
(4)意欲に乏しく部下に負担をかける「事なかれ主義型」

◆世代間で認識にギャップも
パワハラについては、世代間の認識の差なども大きく、特に年長社員には先輩社員に怒鳴られながら仕事を覚えた経験を持つ人も多く、「部下に熱心に注文をつけて何が悪いのか」といった反応もあるようです。
暴力を振るう、到底達成できないノルマを課すなどの行為は典型的なパワハラですが、一方で、部下の成長を願って強く注意するといった行為がパワハラなのか、基準は受け止める側によってまったく変わってきます。ただ、パワハラ対策に真剣に取り組むことにより、必然的に、上司と部下の関係や、職場の雰囲気などが改善されていく可能性は大いにあると言えるでしょう。

創設目指す「消費者庁」とはどんな省庁!?

◆食品偽装や物品事故などへの懸念
福田内閣が来年度の創設を目指しているのが「消費者庁」です。食品の偽装や製品事故などへの懸念が増大するなかで、どのような役割が期待されているのでしょうか。また一般消費者にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

◆消費者庁の狙い
消費者庁とは、消費者の視点に立って政策全般を監視し、必要があれば法律を企画立案したり他省庁に適切な対応をするように勧告したりする「消費者行政のかじ取り役」となる組織で、設置に向けた準備が進んでいます。具体的には表示、安全、取引など消費者に身近な問題を広く扱い、物価行政も担当することになります。全国の消費生活センターなどを使って相談窓口を整備し、情報を一元的に吸い上げて他省庁に適切な対応を勧告したりもするようです。
設置の背景として、近年、消費者が巻き込まれる事件や事故が相次いでいることが挙げられます。報道で取り上げられる各種の食品偽装事件は、まったく後を絶ちません。また、ガス瞬間湯沸かし器による死亡事故は約20年前から、家庭用シュレッダーによる子供の指の損傷や経営破たんした英会話学校への苦情なども、かなり前から問題になっていたにもかかわらず、行政は有効な手を打てませんでした。
日本の行政はこれまで、「いかに国を豊かにするか」を重視し、消費者行政はいわば二の次とされてきました。消費者庁は成熟社会を迎え、産業育成優先から消費者の権利保護を優先させる行政に転換する象徴として位置付ける狙いがあるようです。

◆機能するための課題は?
政府は秋の臨時国会に消費者庁設置のための法案を提出し、来年度からの発足を目指しています。
仮に順調に発足したとして、消費者庁がしっかりと機能するためには、いくつかの課題があります。まずは、他省庁との役割分担や責任の所在の問題です。所管する法律の半分以上が他省庁との共管や一部移管です。したがって、しっかりと役割分担をしておかないと、現場が混乱し行政サービスの低下を招きかねません。
また、財政難にあえぐ地方の消費者窓口をどう強化するか、幅広い業務を適切にこなせる専門性を備えた有能な人材をどうやって確保するのか、といったことも課題として挙げられます。他にも、巨大規制官庁ができることにより、消費者保護を理由に過剰な規制をして健全な経済活動を阻害してしまっては消費者のためにならない、という意見もあります。
消費者庁構想実現のためには、まだまだ議論すべき点は多いと言えるでしょう。

「冠休暇」の活用で有給休暇取得を促進

◆有給休暇の取得促進を目指して
「プロジェクト休暇」や「アニバーサリー休暇」など、特別な冠をつけた有給休暇制度を設ける企業が目立ちはじめました。ワークライフバランス(仕事と生活の調和)向上の機運が高まる一方で、高まらない有給休暇の取得率向上のために、各企業で新たな促進策が打ち出されています。

◆国を挙げての取組み
有給休暇の取得率向上は、国も大きな課題として取組みを始めています。内閣府が2007年にまとめたワークライフバランスに関する「行動指針」では、有給休暇取得率を、2012年には60%、2017年には100%にまで引き上げることを目標にしています。 
しかし、国を挙げてワークライフバランス向上への取組みを進めているにもかかわらず、有給休暇取得率は低迷したままです。厚生労働省の調査によると、2006年に企業が社員に与えた有給休暇は年平均17.7日。一方、社員の取得日数は8.3日と、有給休暇取得率は40%台にとどまります。
就業形態の変化によって正社員が減り、1人当たりの仕事が増えたことで、結果的に多くの職場で長時間労働を余儀なくされ、有給休暇が取りにくくなっているとも考えられます。また、同僚との競争や上司の評価を気にして積極的に休まない人も多いようです。

◆「冠休暇」の効果は?
過労死の増加などで社員の健康管理がより問われるようになった今、企業も社員に休みを取らせるために、様々な知恵を絞っています。
ある企業では、「プロジェクト休暇」を導入しました。これは、1つのプロジェクトが終わるたび、最低1日の有給休暇が取れる仕組みです。1つのプロジェクトに対して複数の人間で対応するため、個人の都合で休むのは難しいことから、プロジェクト終了ごとに同僚と調整しながら休むとしています。
また「アニバーサリー休暇」として、自分や家族の記念日に休むことを促進する企業もあります。導入したある企業では、有給休暇取得のための意識が高まることで、仕事を1人で抱え込まずに周囲と情報交換したり、効率的に仕事をする同僚のやり方を参考にしたりと、別の部分でも波及効果が出ているようです。
もっとも、新たな休暇制度を設けていても、休みやすいように人員や仕事を適正化することが重要であり、それなくしては休みたくても休めない現実に変わりはありません。国、企業、そして労働者が一体となった取組みを続けていくことが大切でしょう。

公的年金の運用損失が過去最大に

◆運用利回りがマイナス6.41%に
公的年金の積立金を市場運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2007年度の運用利回りがマイナス6.41%になったことを発表しました。少子高齢化により、給付と負担のバランスが年々崩れていくなか、公的年金の運用損失が過去最大となったことで、より厳しい現実を認識せざるを得ない状況となりました。

◆世界株安の影響
2007年度は、米国の低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)問題に端を発した世界的な株安により、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用損失は、過去最大の5兆8,000億円に膨らみました。マイナス運用になったのは2002年度にマイナス8.46%となって以来です。ただ、当時よりも運用金額が3倍近くあるため、損失は2007年度のほうが大きくなっています。
GPIF側は、「運用成績を長期的にみれば2007年度のマイナスを勘案しても与えられた運用目標は達成されている」としています。しかし、現在の積立金運用は硬直的であるとの批判が多く、運用を効率化する必要も指摘されています。

◆日本の運用成績は
企業の格付や年金資産等の運用成果の分析評価を行う格付投資情報センターが、約130の企業年金を対象に実施した調査によると、2007年度の運用利回りはマイナス10%弱でした。それに比べると、公的年金は株式の比率が低い分、マイナス幅は小さかったと言えます。ただ、中期的にみると、日本の公的年金の運用成績は海外の年金基金に比べて見劣りします。2006年度までの直近5年の運用成績を比較すると、日本の3.5%に対し、カナダ10.4%、オランダ7.2%、ノルウェー6.9%と、日本の運用成績の悪さが目立ちます。
しかし、日本の運用利回りが海外に比べて低いのは、債券の運用比率が60%以上と突出して高いことも理由の1つです。低リスクで低リターンの債券での運用は、投資においてリスクを嫌う日本人の気質にあった運用方法とも言えますが、債券への過度の傾斜は逆にリスクが大きいとの指摘もあります。
国内外の株式や債券という伝統的な資産のほかに、商品(コモディティー)や不動産など代替資産に分散投資することによって運用を効率化すべきだとの声も多く、今こそ大切な積立金の運用について再考するべき時期に来ていると思われます。

運転慣習にみられるローカル色

◆独自の慣習が横行!?
運転ルールは全国共通のはずですが、地域によって独自の慣習が横行しています。交差点で直進車を差し置いて強引に右折するなど、交通法規に違反する例も多く、観光客や転勤者の目には危険な行為と映ります。長らく「慣行」と受け止めていた地元の人の間でも、見直し機運が高まってきているようです。

◆全国各地の交通慣習
ある新聞によると、「街角で左折しようとしたら対向車も同時に右折し始め、ぶつかりそうになる…」長野県松本市ではこのような光景がよく見られるそうです。地元ドライバーの一部には、交差点で強引に右折する交通慣習があり、県内外では「松本ルール」と呼ばれているのだそうです。地元の人によれば、もともとこの松本ルールは車同士の道の譲り合い精神から生まれたといいます。城下町であった松本市は細い道が多く、右折待ちの後続車は渋滞しがちです。そこで、対向車が渋滞防止のため右折車を優先させていたのが始まりとのことです。それが、いつしか右折車の「先を急ぐため」の慣行となってしまいました。
片側4車線の幹線道路が貫く名古屋市内では、「名古屋走り」と呼ばれる慣行があるそうです。ウインカーをしっかり出さない車線変更や、交差点で黄色信号になったら速度を上げて通過するなどの荒っぽい運転の総称とされています。
また、愛媛県では松山市を中心に、信号が青になった瞬間に直進してくる対向車の前に右折車が割り込む「伊予の早曲がり」と呼ばれる交通慣習が存在するそうです。
このような独自の交通慣習は各地で見られ、関東では「道を譲る」合図に使われることが多いパッシング(車のライトの点滅)が、関西では「自分が先に行く」という意思表示に使われることが多いようです。

◆マナー向上と譲り合いを
なぜ、地域慣習が存続し続けるのでしょうか。地元ドライバーの「便利だから」という意識が根強く、「染みついた癖なのでなかなか治せない」という意見があります。また、強引な車線変更や早曲がりなどを、素早くてうまい運転技術の証しとみなす勘違いも、原因の1つと言われています。
これらの交通慣習には、転勤などによる転入者や観光客を中心に批判が高まり、各地で対策も始まっています。前述の松本市では、交通マナー向上に関するステッカーを市内のバスやタクシー会社に配布するなどしています。多くの車が行き交う路上では、初心者や運転技術の未熟な人にも配慮できる運転こそが大切であり、譲り合いなど気持ちにゆとりを持った運転方法こそを地域慣習とする視点を持つべきだと言えるでしょう。

人材が不足する介護労働者の確保対策

◆介護労働者の離職率は21.6%
「2007年度介護労働実態調査結果」(財団法人介護労働安定センター発表,4,783事業所と事業所で働く1万3,089人の介護労働者が回答)によると、2007年度における介護労働者の離職率は「21.6%」となったそうです。また、平均勤続年数は「3.1年」となっています。働くうえでの不満に関する質問に対しては、「仕事内容の割に賃金が低い」「業務に対する社会的評価が低い」「精神的にきつい」という回答が上位を占めました。
厚生労働省は、これらの理由などから慢性的に人手不足となっている介護分野における人材を安定的に確保するため、様々な対策を検討しています。

◆厚生労働省による介護労働者の確保・定着策
厚生労働省は7月下旬に、「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」の中間とりまとめを発表しました。介護サービスへのニーズが増大する一方で、介護労働者の確保・定着が困難な現状を指摘しています。
「介護労働者が意欲と誇りを持って働くことができる社会の実現」を目指して、事業主に対して介護労働者の雇用管理の重要性を訴えるとともに、処遇改善や能力開発、多様な就業形態やメンタルヘルス対策など、働きやすい労働環境の整備が求められるとしています。

◆介護職専門のハローワークを設置の方針
同省では、2009年度から介護職専門のハローワークを設置する方針を示しています。人手不足が特に深刻な状況となっている大都市圏に数カ所程度設置して、介護分野への就労を希望する人に対する職業相談を行うなど、現役の介護福祉士やホームヘルパーのスタッフによる支援を実施するとしています。

◆「介護の日」の制定を検討
介護に対する国民の理解と認識を深めて、介護労働者や介護サービスの利用者、その家族などを支援するため、「介護の日」の制定も同省では検討しているそうです。同省の検討会で決定した複数の候補日・名称に対する国民からのパブリックコメントを踏まえたうえで、検討を進めていくとしています。
上記のような対策が果たして介護労働者の人手不足解消につながるのか、注目していきたいところです。

世界的大流行の可能性がある「新型インフルエンザ」

◆厚生労働省が対策ガイドラインを公表
厚生労働省は、「新型インフルエンザ」が国内で大流行した場合に想定される社会への影響をとりまとめ、民間企業が事業を継続するための注意事項などを盛り込んだガイドラインを公表しました。このガイドラインでは、大流行時には最大で40%の従業員が欠勤することを想定しており、需要の減少などに対応した事業計画を作ることなどを各企業に求めています。
企業の経営に大きな影響を与えなかねないこの「新型インフルエンザ」とは、一体どのようなものなのでしょうか?

◆「新型インフルエンザ」とは?
「新型インフルエンザ」は、鳥インフルエンザのウイルスなどが人間に感染し、人間から人間に感染しやすく変異したウイルスによるインフルエンザとされ、免疫を持っている人間がいないことから、今後、世界的に大流行の可能性があるとされています。発生した場合、日本国内だけで死亡者が最大64万人出るであろうとの専門家の指摘もあるようです。
なお、世界保健機構(WHO)の発表によれば、今年5月下旬時点の鳥インフルエンザの累計発症者は383人ですが、このうちの6割の方が亡くなっているそうです。

◆政府・企業が進めている取組み
 政府では、ワクチンを備蓄するなどの取組みを進めているそうです。
また、大手企業を中心に、すでに独自の対策を始めている企業もあるようです。その内容は、「新型インフルエンザ対策アクションプランの作成」(資生堂)、「海外出張者向けの新型インフルエンザ対策」(マイクロソフト日本法人)、「全社的な新型インフルエンザ対策の検討」(味の素)、などです。

◆東京商工会議所は中小企業向けの指針を策定へ
 東京商工会議所では、対策が進んでいないとされる中小企業向けの「新型インフルエンザ」対策のための指針を来年3月までに策定するとしています。指針に盛り込まれる予定の内容は次の通りです
(1)基礎知識や治療薬の効能・備蓄方法
(2)従業員や家族に患者が出た場合の対応
(3)事業継続の判断基準
(4)情報入手の方法

今年度の「地域別最低賃金」引上げ額は?

◆地域別最低賃金の新基準は10月中に適用予定 中央最低賃金審議会(厚生労働大臣の諮問機関)の小委員会は、今年度における地域別の最低賃金の引上げ額を7~15円と決定し、厚生労働大臣に答申を行いました。これにより、全国平均の最低賃金額が初めて700円を超える見通しとなったことが明らかになりました。
なお、地域別最低賃金額は、地方最低賃金審議会(公益代表・労働者代表・使用者代表の各同数の委員で構成される)での審議を経て、地方労働局長により決定されることになっており、今後、同審議会の議論を経て正式決定され、10月中に新基準が適用される予定です。

◆「地域別最低賃金」の定義と法改正
地域別最低賃金は、原則として産業や職種などにかかわりなく、すべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金で、都道府県ごとに決められています。
今年7月1日から施行された改正最低賃金法(平成19年12月5日公布)では、地域別最低賃金を決定する際には、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされました。また、地域別最低賃金を下回った場合の罰金の上限額は、従来の「2万円以下」から「50万円以下」に引き上げられています。

◆都道府県ごとの引上げ額は?
 都道府県ごとの引上げ額は以下の通りとなっています。
・Aランク(15円)…千葉・東京・神奈川・愛知・大阪
・Bランク(11円)…栃木・埼玉・富山・長野・静岡・三重・滋賀・京都・兵庫・広島
・Cランク(10円)…北海道・宮城・福島・茨城・群馬・新潟・石川・福井・山梨・岐阜・奈良・和歌山・岡山・山口・香川・福岡
・Dランク(7円)…青森・岩手・秋田・山形・鳥取・島根・徳島・愛媛・高知・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄

「ワークライフバランス」の実現に向けて

◆意外と知られていない「ワークライフバランス」の意味
内閣府が行った調査(20歳以上の男女3,000人が対象。1,839人が回答)で、「ワークライフバランス」(仕事と生活の調和)の意味を知らない人が9割近くに上ることがわかりました。「名前も内容も知らない」と答えた人が60.1%、「名前は聞いたことがあるが内容までは知らない」と答えた人が26.6%に上りました。
「ワークライフバランス」の実現に向けて政府・厚生労働省は様々な対策を講じたり、検討したりしていますが、なかなか浸透していないのが実状のようです。

◆政府・厚生労働省が検討している施策
先日、社会保障政策を強化して少子高齢化社会に対応することを目的として、政府が取り組むべき対策をまとめた「5つの安心プラン」の原案が明らかになりました。その中の1つとして、「子育て支援」が挙げられています(その他の4つは「高齢化社会への対応」「医療体制の強化」「非正規労働者の支援」「厚生労働行政の信頼回復」)。
また、厚生労働省は、子育てと仕事の両立支援のため、企業に「短時間勤務制度」と「残業免除制度」の導入を義務付ける方針を明らかにしています。育児休業を取得した後も働き続けられる環境を整備するのが目的で、来年の通常国会に育児・介護休業法の改正案を提出するとしています。

◆厚労省研究会の「報告書」では
厚生労働省が先日とりまとめた「今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会」の報告書では、育児休業後の仕事と育児の両立が難しい現状、男性の育児への関わりの不十分さなどを指摘しています。
また、労働者が「短時間勤務」と「残業免除」を選択することのできる制度の整備や、出産後8週間に父親が取得する育児休業を「パパ休暇」として普及・促進することなどを求めています。

◆「ワークライフバランス」に関する民間資格新設へ
また、厚生労働省は、ワークライフバランスへの取組みを企業に広げるために、新たな民間資格である「仕事と生活の調和推進アドバイザー」を2009年度にも新設する方針を発表しました。新聞報道によれば、5年間で5,000人程度を養成したい考えで、同アドバイザーの利用促進のため、企業が助言に基づいて必要な行動計画を作成した場合の助成金の支給も検討しているようです。