2009/12/25

2010年 1月の事務所便り

「現代の名工」(卓越した技能者)の表彰制度

◆「現代の名工」とは?
現代の名工とは、厚生労働大臣によって表彰された「卓越した技能者」の通称です。この制度は昭和42年度に設けられたものであり、その道で第一人者と目されている技能者を表彰することで、技能者の地位や技能水準の向上を図るとともに、技能の世界で活躍する職人や技能の世界を目指す若者に目標を示し、夢や希望を与えることを目的としています。
毎年約150名(平成7年度までは毎年100名)が表彰されており、表彰者の総数は平成20年度の第42回の表彰までで4,838名となっています。
著名な受賞者としては、これまで、四川料理家の陳建民さん、服飾評論家の市田ひろみさん、和食料理家の道場六三郎さんなどがいます。

◆表彰の要件とは?
推薦人は都道府県知事や事業団体、また、20歳以上で二親等以内の親族でなければ一般の人でもなることができます。表彰の対象となるのは、大工、植木職人や料理家、衣服の仕立人など、全20の職業部門の技能者です。
技能者として推薦される人は、その道において第一人者と目され、現役の就業者でかつ後進に技能指導を行う人であり、他の技能者の模範的存在と認められる人です。平成16年度までは「35歳以上で15年以上の経験」という条件がありましたが、平成17年度からは経験と年齢は問わないということになったため、門戸が広がりました。
 推薦された人の中から、技能者表彰審査委員の意見を聴いたうえで、厚生労働大臣によって決定されます。表彰された人は、表彰状、卓越技能章(楯と徽章)および褒賞金(10万円)が授与されます。

◆技能継承につながることを期待
昨今、特に製造業における技術者の高齢化が進み、後継者不足に悩む状況です。また、団塊の世代が順次退職していき、ものづくりの技能継承が危ぶまれている中で、この制度により、1人でも多くの若者が「技能工」という存在に関心を持ち、その世界で活躍したいという想いにつながっていくことが期待されます。




職場で食事をとる人が増加傾向に

◆オフィス内での飲食が増えている
最近1年間で、出勤する日の昼食を「オフィス内の自分の席でとる」と答えた人が41%に上ることが、民間企業の調査でわかりました。
この調査は9月下旬にインターネットで実施され、首都圏・中部・近畿圏在住の企業の正社員らのうち20~59歳の男女1,000人を対象としています。

◆「職場で間食や昼食」が増加
この調査では、職場で食事をとる機会が増えたかどうか尋ねたところ、「間食や昼食で増えた」という人が目立ちました。まず、朝食、昼食、夕食、間食、夜食のそれぞれについて、出勤する日の摂取状況を尋ねたうえで、それぞれについて「ほとんど食べない」と答えた人を除き、最近1年間に職場でとる機会が増えたかどうかを尋ねていいます。
この結果、「増えた」が最も多かったのは「間食」の19%で、この割合は「減った」(13%、他の選択肢は「変わらない」「職場ではとらない」)より5ポイント以上高い結果になりました。次いで多かったのは「昼食」の17%で、「減った」(5%)を10ポイント以上も上回りました。

◆昼食は自席で
3食の食事については、出勤する日にどこで食べているかという質問(複数回答)には、朝食や夕食はいずれも「自宅」が最多でしたが、昼食は「オフィス内の自分の席」が最多で、次いで「街中の飲食店」(ファーストフードや喫茶店などを含む)、「社員食堂」、「社員食堂以外の職場のリフレッシュ空間」と続いています。
また、出勤する日の昼食で最も利用が多い場所についての質問については、「オフィス内の自分の席」が31%とトップで、最近1年間で昼食を職場でとる機会が「増えた」人に限ると、「オフィス内の自分の席」と回答した人の割合は複数回答の場合で49%、最も利用が多い場所でも37%といずれも高い割合となっています。

◆不況の影響で「節約志向・効率重視」に
職場で昼食をとる最大の理由で最も多かったのは「外に食べに行くより食事代を節約できるから」(35%)で、「時間を効率的に使えるから」(22%)が続いています。
節約ニーズと効率重視である職場での食事は、昨今の不況が少なからず影響していることから、今後も増加傾向にあると考えられます。




「がん検診」自治体や企業における取組み

◆発見率の向上が大きな課題
国立がんセンターの調査によれば、2007年に全国のがん診療連携拠点病院でがんと診断された患者のうち、「健康診断・がん検診・人間ドック」などで発見された人の割合は16.7%であるという結果が出ました。また、がん検診単独で見ると、その発見率は岩手県の17.7%から奈良県の3.6%と、各都道府県で開きがあることもわかりました。
健常者が受ける検診体制が充実すれば、がんの早期発見・死亡率低下につながることから、検診での発見率向上は大きな課題となっています。
国のがん対策推進基本計画では、がん検診の受診率数値目標として「2012年までに50%」と掲げられましたが、2008年にスタートした特定健診・保健指導(メタボ健診)の事務に忙殺されるなどの理由から、到達は困難な状況です。

◆自治体・企業における取組み
しかし、自治体や企業も単に手をこまねいていたわけではなく、様々な工夫を凝らしています。
自治体の動きとしては、職場検診の普及啓発に補助金を交付したり、休日・夜間検診を実施するなどがん検診に熱心に取り組む市区町村には交付金額を増額したり、一定年齢の女性には無料で乳がん検診が受けられるように整備したりしている所もあるようです。
また、金融機関や保険会社と連携して、受診呼びかけのパンフレットを配布したり、代理店窓口で受診者に記念品を渡したりという活動も広まっているようです。
受診率向上のため、企業においても受診制度の整備が広まってきています。これは、従業員の健康増進は企業にとっても大きな課題の1つであるからです。
検診費用を全額負担したり、事業所に検診車を呼んで勤務の合間に検診できるようにしたりしている企業もあります。また、全額とはいかないまでも検診費の一部を負担する企業も増加しています。

◆早期発見が何より大切
さらに、国立がんセンターでは、がん検診の有効性が示されれば受診率が上がることが予想されるため、がんの種類別の詳細分析やがん患者の生存率調査、がん診療連携拠点病院別のデータ整備などが鍵を握るとして、そのデータ公開も検討しています。
「がん大国」と言われる日本では、2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなると言われています。がんは早期発見でればかなりの確率で助かるということを考えると、我々はがん検診にもっと関心を持つ必要がありそうです。




医療・介護、理美容…職探しで重視する点と辞める理由


◆医療・介護、理美容従事者の実態
求人情報サービス会社が、医療・介護系、理美容系の有資格者を対象とした、就業に関する意識調査を行い、その結果を発表しました。
調査対象は、医療・介護系、理美容系の対象となる資格を持っている、関東(1都3県)、関西(2府2県)に住む20~50歳の男女1,500人で、インターネットにより調査が行われました。

◆職探しの際に重視する点
調査結果によると、仕事を探す際に重視する点について聞いた質問では、3職すべてで「やりがいのある仕事であること」が最多となりました。「やりがい」を重視した人は、全職種の平均で4.0%であるのに対し、医療系16.1%、介護系15.7%、理美容系21.5%といずれも高い割合となっています。
また、医療・介護系では、「正社員または正社員に近い雇用形態であること」が介護系13.0%、医療系8.7%と全職種平均(5.2%)を上回っており、正社員志向が強いことがわかりました。
理美容系では、「資格や技術が身に付く仕事であること」が12.8%(全職種平均1.9%)となるなど、スキルアップできるかどうかを重視している一方、医療系・介護系で多かった「正社員または正社員に近い雇用形態であること」はわずか1.3%にとどまっていることが明らかになりました。

◆辞める際の理由
仕事を辞める理由についての質問では、3職種ともに給与や勤務時間といった条件面が上位に入りました。
介護系と理美容系では「業務内容の割に給与が低いから」(介護系30.5%、理美容系23.2%)が最も多く、医療系でも20.8%と高く、「職場や社員の雰囲気が悪いから」(29.0%)に次ぐ多数回答となっています。
また「1日に働く時間が長いから」(医療系18.1%、介護系16.0%)と「もっとよい条件の仕事が見つかったから」(医療系17.0%、介護系17.2%)のいずれもが全職種平均を上回る数値となっていました。
一方、理美容系では、「自分に向いていない仕事だと感じたから」が20.7%と、他の職種に比べ高い特長的な結果となりました。こ強いやりがいを抱いて仕事を始める人が多い職種だけに、壁に当たってしまうとイメージとのギャップが大きいためと考えられます。

◆早期退職予防にはフォロー体制の整備を
これらの職種で起こる早期退職を予防するには、条件面の改善を行うことが有効ですが、職場での密なコミュニケーションなど、日頃からのフォロー体制整備も効果的ではないでしょうか。




相次ぐ里子虐待と里親制度の課題

◆突きつけられた重い課題
最近、新聞などでも取り上げられていますが、「里親による里子への虐待」が後を絶たないようです。恵まれない子どもを自らの意思で引き取って育てる、善意で成り立つはずの里親制度に、重い課題が突きつけられています。

◆里親には何が要求されるか?
そもそも里親制度とは、保護者がいなかったり、児童虐待などを受けたりした子どもの養育を、児童相談所を通じて一般の夫婦に委託する制度です。里親の希望者は、書類審査と面接、研修を経て里親登録を行います。
しかし、深い愛情を持って里子を受け入れたとしても、実際にはその養育は並大抵のものではありません。実の親からの虐待、ネグレクト、施設での長期集団生活などにより十分な愛情を受けてこなかった子どもたちは、愛情不足でうまく対人関係を築けない「愛着障害」のケースが多く、このため、里親の関心を引こうとあらゆる手段を使って困らせようとする傾向があるそうです。
家庭内での暴力行為や万引きといった行動が特に多いのも、そういった理由からです。また、あいさつや食事、歯磨きなどの基本的な習慣も身に付いていないケースが多いようです。
これらのことに腹を立てず、じっくり根気よく教えていくことが里親には要求されますが、躾のために大声で叱ることが、近所からは「虐待しているのでは?」と思われるのではないかと、周囲の目を気にして悩む里親の方もいるようです。

◆里親委託率の向上に向けて
このような難しい問題を抱え、「悩んでいる里親を支援する制度が十分ではない」という指摘がなされています。この背景には、里親同士の交流が進まず、経験者が悩みを共有する場が乏しいことなどがあるようです。
こうした状況の中、厚生労働省は、平成21年度末までに里親の委託率を8.1%から15.0%に上げる数値目標を立てました。それに伴い、今年4月からは「改正児童福祉法」が施行され、「里親認定登録制度の見直し」「里親支援の強化」「養育里親の研修の義務化」「里親手当の増額」など、里親制度の内容が拡充されています。
家庭内で深い愛情をもって養育されることが子どもたちにとって大切ですので、里親支援についてのより充実した対応が望まれます。




「労働審判」の申立件数が増加しています!

◆2年間で約2.3倍に増加
2008年における「労働審判」の申立件数が2,052件となり、制度がスタートした2006年(877件)と比較すると約2.3倍に増えたそうです。今年については9月末時点で2,553件となり、すでに昨年の件数を大幅に上回っています。

◆労働審判の目的・手続き
労働審判は、解雇や賃金の不払いなど、事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブル(個別労働紛争)について、その実情に即して「迅速」、「適正」、「実効的」に解決することを目的としています。
労働審判の手続きは、労働審判官(裁判官)1名と、労働に関する専門知識・経験を有する労働審判員2名で組織された労働審判委員会(計3名)が、原則として3回以内の期日で審理を行い、適宜調停を試み、調停による解決に至らない場合には、事案の実情に即した柔軟な解決を図るための労働審判を行う手続きです。
この労働審判に対して当事者から異議の申立てがあった場合には、労働審判はその効力を失い、労働審判事件は通常の訴訟に移行することになります。

◆労働審判のメリット
労働審判のメリットとしては、原則として3回以内の審理で解決が図られるため、通常の訴訟よりも迅速な紛争解決を図ることができる点が挙げられます。制度スタート以降、申立てから審判終了までの平均日数は「約74日」となっています。
また、申立ての際に必要となる印紙代も通常の民事訴訟の半額となっており、費用的なメリットも大きいため、労働者側からの申立てが多いようです。

◆今後も増加傾向か?
昨年来の不況により、解雇、雇止め、派遣切りなどをめぐる労使間のトラブルが増加していることが、労働審判の申立件数の増加につながっていると考えられます。また、不況下において、今年1~6月にサービス残業が急増していたとする民間企業の調査結果などもあり、申立件数の増加傾向はしばらく続くものと考えられます。
企業側としては、労使間のトラブルを生じさせないような取組み(適正な労務管理、就業規則・社内規程の見直しなど)が、今後、より重要になってくるでしょう。




「確定拠出年金」の使い勝手が良くなる?

◆「適年」の受け皿として
厚生労働省は、「確定拠出年金制度」(日本版401k)を拡充するため、関連法の改正案を来年の通常国会に提出する方針を明らかにしています。
同省では、今でも多くの中小企業が採用している「適格退職年金制度」(2012年3月末に廃止予定)の受け皿として、この確定拠出年金が大いに活用されることを期待しているようです。

◆確定拠出年金の特徴と導入の背景
確定拠出年金は、拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用収益との合計額をベースに年金給付額が決定される年金制度です。
厚生年金基金や適格退職年金などの企業年金制度は、給付額が約束されるという特徴がありますが、離転職時の年金資産の持ち運びが十分確保されておらず労働移動への対応が困難であることなどが指摘されていました。
そこで、公的年金に上乗せされる部分における新たな選択肢として、2001年10月に確定拠出年金制度が導入されました。

◆予定されている主な改正内容
確定拠出年金には、企業のみが掛金を拠出する「企業型」と、個人のみが掛金を拠出する「個人型」がありますが、来年予定されている改正はこのうち「企業型」に関するものであり、主な内容は次のとおりです。
(1)個人による掛金拠出を認める(ただし個人の掛金は企業の拠出額以下とする)
(2)加入年齢を引き上げる(積立期間の上限を「60歳」から「65歳」に変更する)
なお、「企業型」の確定拠出年金の導入件数は、2008年3月末時点で3,043件(加入者数311万人)です。

◆果たして加入件数は増えるか?
確定拠出年金は、運用が悪化すれば個人の年金受給額は当然減ってしまうものの、企業にとっては、追加負担を求められることが基本的にはないというメリットがあります。
上記の改正により、厚生労働省のねらい通りに加入件数が増えていくのか、注目しておきたいところです。




「中小企業緊急雇用安定助成金」の変更点、「雇用保険法」の改正案

◆民主政権で何が変わった?
民主政権に変わり、雇用関係に関しても様々な動きがあります。ここでは、中小企業にとって影響の大きい「中小企業緊急雇用安定助成金」の変更点と「雇用保険法」の改正案を取り上げます。

◆「中小企業緊急雇用安定助成金」の変更内容
「中小企業緊急雇用安定助成金」の支給要件が次のように緩和されています。
(1)助成金対象の拡大
これまで、出向労働者を出向元に復帰させた後、6カ月を経ずに再度出向させた場合には助成金の対象外であったものが、対象とされました。これは、平成22年11月29日までの時限措置とされています。
(2)生産量要件の緩和
生産量要件(従来は「売上高・生産量の最近3カ月間の月平均値がその直前3カ月または前年同期に比べ5%以上減少していること」)に、「売上高・生産量の最近3カ月間の月平均値が前々年同期に比べ10%以上減少し、直近の決算等の経常損益が赤字であること」が加えられました。この要件は、対象期間の初日が平成21年12月2日~平成22年12月1日の間にあるものに限られます。

◆「雇用保険法」の改正案
厚生労働省は「雇用保険法」の改正原案をまとめ、その内容を明らかにしました。来年の通常国会に改正案を提出し、来年4月からの施行を目指すとしていますので、今後の動向に要注目です。
(1)加入に必要な雇用見込み期間の短縮
雇用保険への加入の際に必要とされる雇用見込み期間について、現行の「6カ月以上」から「31日以上」に短縮するとしています。この適用拡大により、新たに255万人が雇用保険の加入対象になると試算されています。
(2)雇用保険料率の引上げ
労使折半とされている雇用保険料率について、現行の「0.8%」から「1.2%」に引き上げるとしています。
(3)未加入扱いの遡及期間の延長
保険料を納付したにもかかわらず手続上の問題により未加入扱いとなった人の遡及期間について、現行の「2年まで」から「2年超」とするとしています。




「雇用支援ワンストップサービス」が試行実施

◆77のハローワークで実施
新聞報道やテレビ等でも話題となっていた「雇用支援ワンストップサービス」が、11月30日に17都道府県、77のハローワークにおいて試行実施されました。
当初は15都道府県43地域で実施されると報道されていましたが、最終的には実施箇所が増えたようです。東京都、愛知県、大阪府では、すべてのハローワークにおいて実施されたそうです。

◆実施された「ワンストップサービス」とは?
このワンストップサービスは、政府の緊急雇用対策本部が打ち出したものであり、国・自治体・保健所などが連携してハローワークに総合受付を設け、失業者に対して「職業紹介」「生活費の貸付け」、「住宅手当の支給」「就業支援」「生活保護」「こころの健康」などの情報をハローワークで一元的に提供して、解決してもらおうとするものです。
実施当日の利用者は全国で2,399人だったと発表され、大阪府が511人、東京都が482人などとなっています。

◆今後の動きは?
そもそもこのワンストップサービスの目的は、昨年末に話題となった「派遣村」がなくても失業者に対応できる態勢を作ることにあります。
政府や民主党などは、定期的な開催や年末年始の開催など、このサービスを本格的に実施したいと考えているようです。
しかし、自治体が生活保護の申請急増を警戒するなど、難色を示している向きもあるようで、今後このサービスがどのようになって行われていくのか、気になるところです。

2009/12/02

12月の事務所便り

 「改正入管法」成立で企業への影響は?

 ◆不法滞在者の減少なるか?
今年7月8日、現在、国内に約13万人いるとみられる不法滞在者の減少等を目的とした「出入国管理及び難民認定法」の改正案が可決・成立し、7月15日に公布されました。
外国人を雇用している企業、これから雇用しようと考えている企業に影響のある改正項目もありますので、ぜひとも押さえておきたいところです。

 ◆新たな在留管理制度の導入
現在、3カ月以上日本に在留する外国人は、外国人登録を行ったうえで「外国人登録証明書」(2008年末時点で約222万人が所有)を携帯しなければなりませんが、改正により、これに代わって「在留カード」が導入されることになりました。日本に中長期間にわたって在留する外国人には、このカードの携帯義務が課されます。
「在留カード」には、氏名、国籍、居住地などのほか、「外国人登録証」には記載の必要がなかった「就労制限の有無」や「資格外活動許可を受けているときはその旨」も記載が必要となります。一般企業にとっては、就労が可能な在留外国人であるか否かを判断しやすくなるというメリットがあります。
また、住居地情報を市区町村に届け出なければならなくなります。さらに、一定の在留資格を有している外国人は、勤務先企業等の情報を入国管理局へ届け出る必要もあります。そして、企業にも、受け入れた外国人情報を国に提供する努力義務が課されます。
公布から3年以内に施行の予定です。

 ◆新たな在留資格(技能実習)の創設
これまで批判の多かった「研修・技能実習生」の見直しも行われ、原則として、座学実習のみの場合は「研修」という在留資格となりますが、実務研修(OJT)を伴うものについては「技能実習」という在留資格が新たに新設されました。 この「技能実習」の中には、(a)「講習による知識習得活動」・「雇用契約に基づく技能等習得活動」と、(b)(a)の活動に従事し、技能等を修得した者が雇用契約に基づき習得した技能等を要する業務に従事する為の活動が含まれます。
上記(a)のうちの「雇用契約に基づく技能等習得活動」と、(b)の活動には、労働基準法や最低賃金法等の労働関係諸法令が1年目から適用されることとなりますので、注意が必要です。
公布から1年以内に施行の予定です。

 ◆その他の改正項目
 その他、「適法な滞在者の在留期間の上限延長(3年から5年)」、「1年以内の再入国に関して原則として許可不要」などについても定められました。


 ハローワークにおける「雇用支援ワンストップサービス」

 ◆「緊急雇用対策」の目玉
政府が10月23日に公表した「緊急雇用対策」の中の1つに、「雇用支援ワンストップサービス」というものがあります。新聞報道によれば11月下旬からサービスがスタートするとのことです。
ハローワークに確認しても、「詳しい手続き等はまだ明らかになっていない」とのことでしたが、一体どのようなサービスなのでしょうか?

 ◆どのようなサービスか?
この「雇用支援ワンストップサービス」は、ハローワークにおいて「職業の紹介」や「生活資金の貸付け」、「住宅手当の支給」「就業の支援」(働きながら介護資格を取得できるようにする)などの複数の手続きについて、失業者が一括して行うことのできるサービスです。
これまでは、これらの複数の手続きを別々のところに申請しなければなりませんでしたが、ハローワークの職員、自治体(福祉関係)の職員、社会福祉協議会の職員などが一体となって、失業者等に対して雇用を支援するためのサービスを行います。

 ◆今後の状況
まずは都市部(東京都、愛知県、大阪府など)のハローワークにおいて試験的に実施され、年内は12月29日・30日も開庁するとのことです。そして、利用状況をみながら、年末年始にかけて実施都市、実施日を増やしていくことが検討されています。
最近は完全失業率に若干の改善がみられますが、9月に厚生労働省から発表された「非正規労働者の雇い止め等の状況」によれば、2008年10月~2009年12月までに実施済み(または実施予定)の非正規労働者の雇い止め等は、全国4,127事業所で計23万8,752人となるなど、まだまだ厳しい雇用環境が続いています。
このワンストップサービスの実施により、昨年末に大きく報道された「年越し派遣村」の再来を防ぐことが期待されています。


 「仕事」と「家庭」の優先度合いはどちらが高い?

 ◆厚労省が調査結果を発表
近年、「ワーク・ライフ・バランス」の重要性が叫ばれていますが、「人口減少社会」が到来する中、労働者が仕事と家庭を両立して安心して働き続けることができる環境を整備することは、国にとっても企業にとってもますます重要な課題となっています。
先日、厚生労働省が民間企業に委託して実施した調査の結果により、仕事と家庭の両立支援(ワーク・ライフ・バランス)をめぐる現状等が明らかになりました。

 ◆現実は「仕事優先」が多数
この調査は「子育て期の男女への仕事と子育ての両立に関するアンケート調査」というもので、未就学の子を持つ男女(男性正社員、女性正社員、女性非正社員、専業主婦)を対象に実施され、4,110件の有効回答がありました。
仕事と家事・子育ての優先度の希望と現実をみると、正社員男性の58.4%、正社員女性の52.3%が「仕事と家事・子育てを両立」させたいと考えていますが、現実としては、男女ともに「仕事優先」(男性74.0%、女性31.2%)の割合が高くなっています。

 ◆帰宅時間の状況、女性の退職理由
また、帰宅時間をみると、関東圏の男性で夜9時以降に帰宅する割合が30.4%となるなど、男性の帰宅が遅い状況が明らかになりました。
妊娠・出産前後に女性正社員が仕事を辞めた理由としては、「家事、育児に専念するため自発的に辞めた」の割合(39.0%)が最も高く、一方で、「仕事を続けたかったが仕事と育児の両立の難しさで辞めた」(26.1%)と「解雇された、退職勧奨された」(9.0%)の合計が35.1%となっています。

 ◆制度の利用しやすさ、勤務形態、短時間勤務
職場の両立支援制度の利用しやすさでは、育児休業制度や子の看護休暇等について、女性のほうが男性より「利用しやすい」と答えた割合が高く、男性の方が「利用しにくい」と答えた割合が高くなっています。
夫の就労時間別に妻が希望する勤務形態をみると、夫の就労時間が長いほど妻の「短時間勤務・短日勤務」を希望する割合が高くなっています(夫の就労時間が「35時間以上40時間未満」の場合25.1%、「70時間以上」の場合43.7%)。
そして、短時間勤務で働いた場合の評価については、「どのように評価されるか知らない」との回答割合が、男性38.6%、女性31.8%と高くなっています。


 厚労省が「労働時間適正化キャンペーン」実施

 ◆11月はキャンペーン期間
厚生労働省は、11月1日から30日までを、昨年同様に「労働時間適正化キャンペーン」期間として定め、長時間労働やこれに伴うサービス残業等の問題解消を図るため、電話相談や啓発等の取組みを実施しています。
キャンペーンの重点事項としては、①時間外労働協定の適正化等による時間外・休日労働の削減、②長時間労働者への医師による面接指導等の健康管理に対する体制の整備、③労働時間の適正な把握の徹底(来年4月1日から施行される改正労働基準法に対応した体制整備も含む)です。

 ◆取組みの背景
この取組みの背景には、平成20年度に行われた各調査において明らかになっている次のことなどあります。
(1)週労働時間60時間以上の労働者の割合が10.0%となっており、子育て世代に当たる30歳代男性では約20%と依然として長時間労働の実態がみられる。
(2)過労死等の事案である脳血管疾患および虚血性心疾患等で労災認定された件数が377件と、過重労働による健康障害が多発している。
(3)全国の労働基準監督署の指導により、不払いであった割増賃金が支払われた事案のうち、1企業当たり100万円以上の支払いがなされた企業数は1,553企業、対象労働者は18万730人、支払われた割増賃金の合計は196億1,351万円となっており、是正指導事案が多くみられた。

 ◆電話による相談も受付け
また、平成20年度の「労働時間適正化キャンペーン」として実施した電話相談に寄せられた相談件数879件のうち、長時間労働に関するものは320件、賃金不払残業に関するものは400件となっており、この問題が非常に大きいことがうかがえます。
キャンペーンの実施事項としては、事業主へのリーフレットの配布、「労働時間相談ダイヤル」による長時間労働抑制等のための電話相談(11月22日実施。フリーダイヤル:0120-897-713)、使用者団体・労働組合への周知・啓発の協力要請などです。


 税制改正で家計への影響は?

 ◆「扶養控除」の廃止・縮小と「給与所得控除」の上限設定
政府税制調査会では、現政権の目玉施策である「子ども手当」や「公立高校の授業料無償化」などの家計支援の実施とバランスをとるため、所得課税の見直しによる増税を模索し始めています。
来年度税制改正の見直し案として浮上しているのが「一般の扶養控除の廃止」、「特定扶養控除の縮小」と「給与所得控除の上限設定」です。

 ◆具体的には?
来年度から支給が始まる予定の「子ども手当」(中学校卒業までの子ども1人あたり月2万6,000円[初年度は半額]の手当)との見合いで、所得金額から扶養親族1人あたり38万円を差し引く「一般の扶養控除」の廃止はすでに固まっています。
また、16歳から22歳の高校生や大学生等の特定扶養親族がいる場合に1人あたり63万円を差し引く「特定扶養控除」は、公立高校の授業料の無償化案に連動して、縮小が検討されています。
さらに、給与収入から一定額を差し引く「給与所得控除」に上限を設けることで、所得税の重要な機能である所得の再分配の効果を高めるとしています。

 ◆増税の負担が重くなる家庭も
これらのことを考えると、成年の扶養家族や大学生・浪人生を抱える家庭では、「子ども手当」や「公立高校の授業料無償化」の恩恵は受けられず、一般扶養控除・特定扶養控除だけが廃止・縮小となり増税は免れないことになります。
特定扶養控除の額を仮に38万円に縮小した場合、高校生の子ども2人がいる課税所得700万円の家庭では、所得税で年間約11万5,000円の負担増に、全廃した場合には約29万円の負担増になるとされています。また、給与所得控除に上限を設ければ、高額所得者はさらに負担が増えるということになります。
雇用や景気に不安が続く中、サラリーマン家庭の増税を急げば、これらの控除見直しに対する反発は免れないでしょう。「子どもを社会全体で育てていく」という考えは必要でしょうが、それに伴う財源の確保については慎重な検討が求められます。


 産業医の選任に対する助成金

 ◆他の事業者と共同での契約も可
常時50人以上の労働者を使用する労働者のいる事業場では、産業医の選任が義務付けられていますが、義務のない小規模の事業場において、産業医を選任して労働者の健康に関する活動を行おうとする事業者を支援する助成金として、「小規模事業場産業保健活動支援促進助成金」があります。
この助成金は、常用労働者数が50人未満の事業場の事業者が、他の事業者と共同または単独で産業医と契約を結び、その産業医に保健指導・健康相談等の保健活動をさせた場合に、その費用の一部を最大3年間補助する制度です。

 ◆「産業医」とは?
産業医とは、医師のうち、日本医師会から産業医の認定を受けた人や、労働衛生コンサルタント試験の保健衛生区分に合格した人等で、労働者の健康管理等を行う人のことです。
産業医の活動としては、「職場の見回りによる作業改善のアドバイス」、「健康診断結果に基づくアドバイスによる労働者の健康管理」、「長時間労働者への面接指導による健康防止対策」などがあります。
その結果、健康に対する労働者の意識が向上したり、生活習慣病の防止が図れたりするなど、快適な職場づくりにつながるといえます。

 ◆快適な職場づくりに役立てる
助成金の額は、労働者の人数に関係なく一定の額です。産業医による保健活動にかかった額(上限21,500円)×活動回数(年4回まで)=年間上限86,000円を3年間受けることができます。
長時間労働による精神疾患や過労死の問題が大きく取り上げられている中、「快適な職場づくり」は社員の定着率を向上させる効果があります。産業医の選任義務のない小規模の事業場において、助成金をうまく活用しながら快適な職場づくりにつなげてもらいたいものです。


 注目浴びる「介護」「グリーン」「地域社会」の3分野

 ◆「緊急雇用対策」の柱
政府の緊急雇用対策本部が、2010年度3月末までに10万人程度の雇用の下支えと創造を目指す「緊急雇用対策」を正式に決定したとの報道がありました。
この対策では、困窮者や新卒者などへの「緊急的な支援措置」と、将来的な成長が見込まれる「介護」「グリーン」「地域社会」の3つの重点分野における「緊急雇用創造プログラム」が2本柱となっています。
この「緊急雇用創造プログラム」では、「介護」「グリーン」「地域社会」の3分野で働きながら職業能力を高める雇用プログラムの推進などに取り組むとしています。

 ◆「介護分野」での雇用創造
介護分野では「『働きながら資格を取る』介護雇用プログラム」が創設されています。具体的には、地方自治体が介護施設に緊急雇用創出事業を委託し、介護施設側は求職者と有期雇用契約を締結、求職者は介護補助の業務を行いながら資格取得のための講座を無料で受講することができるというものです。
契約期間は、ヘルパー2級を目指す場合は1年間、介護福祉士は2年間で、雇入れ期間中の賃金と講座受講料には、委託事業費を充てるということです。
この他、「介護職員処遇改善交付金」の周知を通じた介護職員の処遇改善、ハローワークでの介護求人の開拓の重点実施などからなる「介護人材確保施策の推進」や「介護サービス整備の加速化」も行うとしています。

 ◆「グリーン分野」「地域社会分野」での政策
もう1つの「グリーン分野」とは、農林、環境・エネルギー、観光などを指します。直売所や農産品の地域ブランドの立上げ支援、太陽光発電の施工技術者の育成などが柱となっています。
また、「地域社会分野」では、NPO法人や社会企業家に保育事業を任せるなどの「社会的企業」の活用などが盛り込まれています。
この「緊急雇用対策」を契機として、これらの3分野が注目を浴びていきそうです。厳しい雇用情勢の中、一刻も早い雇用の安定が望まれるところです。


 「父親のワーク・ライフ・バランス応援サイト」開設

 ◆仕事と子育てを両立させるための情報を紹介
厚生労働省は、主に子育て期の男性労働者を対象とした「父親のWLB(ワーク・ライフ・バランス)応援サイト」(http://www.papa-wlb.jp/index.html)を開設しました。
このサイトは、父親も子育てができる働き方の実現に向けて、子育て期における父親の役割、育児休業取得の際の留意点のほか、両立支援に関する制度の概要、子育てにかかる経済的支援制度や各種相談窓口等の紹介など、仕事と子育てを両立させ、相乗効果を生み出すためのヒントがまとめてあります。

 ◆男性のWLBは少子化・労働力減少の改善に
現在、わが国では勤労者世帯の過半数が共働き世帯になっており、女性だけでなく、男性も子育てができる環境作りが求められています。男性の約3割が育児休業の取得を希望している一方、実際の育児休業取得率は1.23%に過ぎず、男性が子育てや家事に費やす時間については極めて低い水準となっています。
男性が子育てに関わることができないことは、男性の希望が叶えられないというだけでなく、女性に家事や子育ての負荷がかかることにより、女性の継続就業を困難にするとともに、第二子以降の出産意欲にも影響を及ぼし、少子化の原因ともなっていると指摘されています。
子育て世帯の「仕事と子育てを両立したい!」という希望に応えるとともに、女性が安心して働き続けるためには、男性の働き方の見直しや子育てへの積極的な関わりを促進させることが必要となっています。

 ◆育児・介護休業法の改正
このような流れを受け、本年6月に「改正育児・介護休業法」が成立しました。改正法では、父親の育児休業の取得促進を目的とした「パパママ育休プラス」や、出産後8週間以内の期間に育児休業を取得した父親に限って育児休業を再取得できる制度の新設、配偶者が専業主婦(夫)であっても育児休業を取得できる制度など、男女ともに子育てや介護をしながら働き続けることができる環境作りを目指した内容となっています。
仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)が実現した社会とは、老若男女誰もが、仕事、家庭生活、地域生活、個人の自己啓発など、様々な活動について、自らが希望するバランスで展開できる状態であると言われています。
男性の子育てへの積極的な参加と、ワーク・ライフ・バランスに対する企業のより一層の支援が期待されます。


 今話題の「介護職員処遇改善交付金」とは?

 ◆支給対象は?
厚生労働省は、「介護職員処遇改善交付金」を積極的に活用するよう求める事務連絡を、介護保険関係団体などに出しました。
この「介護職員処遇交付金」は、介護職員の処遇改善に取り組む事業者に対して、平成21年10月から平成23年度末までの間、計約4,000億円を交付するものですが、平成24年度以降も介護職員の処遇改善に取り組んでいく旨の方針を示しており、引き続き取組みを進めていくとしています。
交付金により賃金改善できる職種は、原則として指定基準上の介護職員、介護従業者、訪問介護員等として勤務している職員が対象ですが、他の職務に従事していても、介護職員として勤務していれば対象となります。ただし、訪問看護など、人員配置基準上、介護職員のいないサービスは対象外となります。

 ◆支給方法は?
この交付金は、介護サービス提供に関わる介護報酬に一定の率を乗じて得た額を、毎月の介護報酬と併せて交付し、事業年度ごとに事業者が提出する実績報告に基づき、余剰金が発生した場合には、その額を返還するものです。
また、交付金事業の年度区分は、当該年の4月から翌年の3月支払い分まで(12カ月間)とし、その交付金の額の根拠となる介護サービスは、原則として、当該年の2月から翌年1月までに提供された介護サービスとなります。
ただし、平成21年度および平成24年度については、交付金支給の始期および終期が異なります。

 ◆申請手続、その他の要件
申請手続は、交付金見込額を上回る賃金改善計画を策定し、職員に対して周知を行ったうえで都道府県に申請を行い、承認が得られれば、介護職員の賃金改善に充当するための資金が介護報酬とは別に毎月自動的に交付されます。
なお、交付金は、原則として申請があった月のサービス提供分から対象になりますが、当初については、平成21年12月中に申請した事業者に限り、10月サービス提供分からさかのぼって交付となります。
このほかにも、労働保険に加入していることや、交付金の対象事業者としての申請日の属する月の初日から起算して過去1年間に、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働者災害補償保険法、雇用保険法等の違反により罰金刑以上の刑に処せられていないことが支給要件となっています。