2009/12/25

2010年 1月の事務所便り

「現代の名工」(卓越した技能者)の表彰制度

◆「現代の名工」とは?
現代の名工とは、厚生労働大臣によって表彰された「卓越した技能者」の通称です。この制度は昭和42年度に設けられたものであり、その道で第一人者と目されている技能者を表彰することで、技能者の地位や技能水準の向上を図るとともに、技能の世界で活躍する職人や技能の世界を目指す若者に目標を示し、夢や希望を与えることを目的としています。
毎年約150名(平成7年度までは毎年100名)が表彰されており、表彰者の総数は平成20年度の第42回の表彰までで4,838名となっています。
著名な受賞者としては、これまで、四川料理家の陳建民さん、服飾評論家の市田ひろみさん、和食料理家の道場六三郎さんなどがいます。

◆表彰の要件とは?
推薦人は都道府県知事や事業団体、また、20歳以上で二親等以内の親族でなければ一般の人でもなることができます。表彰の対象となるのは、大工、植木職人や料理家、衣服の仕立人など、全20の職業部門の技能者です。
技能者として推薦される人は、その道において第一人者と目され、現役の就業者でかつ後進に技能指導を行う人であり、他の技能者の模範的存在と認められる人です。平成16年度までは「35歳以上で15年以上の経験」という条件がありましたが、平成17年度からは経験と年齢は問わないということになったため、門戸が広がりました。
 推薦された人の中から、技能者表彰審査委員の意見を聴いたうえで、厚生労働大臣によって決定されます。表彰された人は、表彰状、卓越技能章(楯と徽章)および褒賞金(10万円)が授与されます。

◆技能継承につながることを期待
昨今、特に製造業における技術者の高齢化が進み、後継者不足に悩む状況です。また、団塊の世代が順次退職していき、ものづくりの技能継承が危ぶまれている中で、この制度により、1人でも多くの若者が「技能工」という存在に関心を持ち、その世界で活躍したいという想いにつながっていくことが期待されます。




職場で食事をとる人が増加傾向に

◆オフィス内での飲食が増えている
最近1年間で、出勤する日の昼食を「オフィス内の自分の席でとる」と答えた人が41%に上ることが、民間企業の調査でわかりました。
この調査は9月下旬にインターネットで実施され、首都圏・中部・近畿圏在住の企業の正社員らのうち20~59歳の男女1,000人を対象としています。

◆「職場で間食や昼食」が増加
この調査では、職場で食事をとる機会が増えたかどうか尋ねたところ、「間食や昼食で増えた」という人が目立ちました。まず、朝食、昼食、夕食、間食、夜食のそれぞれについて、出勤する日の摂取状況を尋ねたうえで、それぞれについて「ほとんど食べない」と答えた人を除き、最近1年間に職場でとる機会が増えたかどうかを尋ねていいます。
この結果、「増えた」が最も多かったのは「間食」の19%で、この割合は「減った」(13%、他の選択肢は「変わらない」「職場ではとらない」)より5ポイント以上高い結果になりました。次いで多かったのは「昼食」の17%で、「減った」(5%)を10ポイント以上も上回りました。

◆昼食は自席で
3食の食事については、出勤する日にどこで食べているかという質問(複数回答)には、朝食や夕食はいずれも「自宅」が最多でしたが、昼食は「オフィス内の自分の席」が最多で、次いで「街中の飲食店」(ファーストフードや喫茶店などを含む)、「社員食堂」、「社員食堂以外の職場のリフレッシュ空間」と続いています。
また、出勤する日の昼食で最も利用が多い場所についての質問については、「オフィス内の自分の席」が31%とトップで、最近1年間で昼食を職場でとる機会が「増えた」人に限ると、「オフィス内の自分の席」と回答した人の割合は複数回答の場合で49%、最も利用が多い場所でも37%といずれも高い割合となっています。

◆不況の影響で「節約志向・効率重視」に
職場で昼食をとる最大の理由で最も多かったのは「外に食べに行くより食事代を節約できるから」(35%)で、「時間を効率的に使えるから」(22%)が続いています。
節約ニーズと効率重視である職場での食事は、昨今の不況が少なからず影響していることから、今後も増加傾向にあると考えられます。




「がん検診」自治体や企業における取組み

◆発見率の向上が大きな課題
国立がんセンターの調査によれば、2007年に全国のがん診療連携拠点病院でがんと診断された患者のうち、「健康診断・がん検診・人間ドック」などで発見された人の割合は16.7%であるという結果が出ました。また、がん検診単独で見ると、その発見率は岩手県の17.7%から奈良県の3.6%と、各都道府県で開きがあることもわかりました。
健常者が受ける検診体制が充実すれば、がんの早期発見・死亡率低下につながることから、検診での発見率向上は大きな課題となっています。
国のがん対策推進基本計画では、がん検診の受診率数値目標として「2012年までに50%」と掲げられましたが、2008年にスタートした特定健診・保健指導(メタボ健診)の事務に忙殺されるなどの理由から、到達は困難な状況です。

◆自治体・企業における取組み
しかし、自治体や企業も単に手をこまねいていたわけではなく、様々な工夫を凝らしています。
自治体の動きとしては、職場検診の普及啓発に補助金を交付したり、休日・夜間検診を実施するなどがん検診に熱心に取り組む市区町村には交付金額を増額したり、一定年齢の女性には無料で乳がん検診が受けられるように整備したりしている所もあるようです。
また、金融機関や保険会社と連携して、受診呼びかけのパンフレットを配布したり、代理店窓口で受診者に記念品を渡したりという活動も広まっているようです。
受診率向上のため、企業においても受診制度の整備が広まってきています。これは、従業員の健康増進は企業にとっても大きな課題の1つであるからです。
検診費用を全額負担したり、事業所に検診車を呼んで勤務の合間に検診できるようにしたりしている企業もあります。また、全額とはいかないまでも検診費の一部を負担する企業も増加しています。

◆早期発見が何より大切
さらに、国立がんセンターでは、がん検診の有効性が示されれば受診率が上がることが予想されるため、がんの種類別の詳細分析やがん患者の生存率調査、がん診療連携拠点病院別のデータ整備などが鍵を握るとして、そのデータ公開も検討しています。
「がん大国」と言われる日本では、2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなると言われています。がんは早期発見でればかなりの確率で助かるということを考えると、我々はがん検診にもっと関心を持つ必要がありそうです。




医療・介護、理美容…職探しで重視する点と辞める理由


◆医療・介護、理美容従事者の実態
求人情報サービス会社が、医療・介護系、理美容系の有資格者を対象とした、就業に関する意識調査を行い、その結果を発表しました。
調査対象は、医療・介護系、理美容系の対象となる資格を持っている、関東(1都3県)、関西(2府2県)に住む20~50歳の男女1,500人で、インターネットにより調査が行われました。

◆職探しの際に重視する点
調査結果によると、仕事を探す際に重視する点について聞いた質問では、3職すべてで「やりがいのある仕事であること」が最多となりました。「やりがい」を重視した人は、全職種の平均で4.0%であるのに対し、医療系16.1%、介護系15.7%、理美容系21.5%といずれも高い割合となっています。
また、医療・介護系では、「正社員または正社員に近い雇用形態であること」が介護系13.0%、医療系8.7%と全職種平均(5.2%)を上回っており、正社員志向が強いことがわかりました。
理美容系では、「資格や技術が身に付く仕事であること」が12.8%(全職種平均1.9%)となるなど、スキルアップできるかどうかを重視している一方、医療系・介護系で多かった「正社員または正社員に近い雇用形態であること」はわずか1.3%にとどまっていることが明らかになりました。

◆辞める際の理由
仕事を辞める理由についての質問では、3職種ともに給与や勤務時間といった条件面が上位に入りました。
介護系と理美容系では「業務内容の割に給与が低いから」(介護系30.5%、理美容系23.2%)が最も多く、医療系でも20.8%と高く、「職場や社員の雰囲気が悪いから」(29.0%)に次ぐ多数回答となっています。
また「1日に働く時間が長いから」(医療系18.1%、介護系16.0%)と「もっとよい条件の仕事が見つかったから」(医療系17.0%、介護系17.2%)のいずれもが全職種平均を上回る数値となっていました。
一方、理美容系では、「自分に向いていない仕事だと感じたから」が20.7%と、他の職種に比べ高い特長的な結果となりました。こ強いやりがいを抱いて仕事を始める人が多い職種だけに、壁に当たってしまうとイメージとのギャップが大きいためと考えられます。

◆早期退職予防にはフォロー体制の整備を
これらの職種で起こる早期退職を予防するには、条件面の改善を行うことが有効ですが、職場での密なコミュニケーションなど、日頃からのフォロー体制整備も効果的ではないでしょうか。




相次ぐ里子虐待と里親制度の課題

◆突きつけられた重い課題
最近、新聞などでも取り上げられていますが、「里親による里子への虐待」が後を絶たないようです。恵まれない子どもを自らの意思で引き取って育てる、善意で成り立つはずの里親制度に、重い課題が突きつけられています。

◆里親には何が要求されるか?
そもそも里親制度とは、保護者がいなかったり、児童虐待などを受けたりした子どもの養育を、児童相談所を通じて一般の夫婦に委託する制度です。里親の希望者は、書類審査と面接、研修を経て里親登録を行います。
しかし、深い愛情を持って里子を受け入れたとしても、実際にはその養育は並大抵のものではありません。実の親からの虐待、ネグレクト、施設での長期集団生活などにより十分な愛情を受けてこなかった子どもたちは、愛情不足でうまく対人関係を築けない「愛着障害」のケースが多く、このため、里親の関心を引こうとあらゆる手段を使って困らせようとする傾向があるそうです。
家庭内での暴力行為や万引きといった行動が特に多いのも、そういった理由からです。また、あいさつや食事、歯磨きなどの基本的な習慣も身に付いていないケースが多いようです。
これらのことに腹を立てず、じっくり根気よく教えていくことが里親には要求されますが、躾のために大声で叱ることが、近所からは「虐待しているのでは?」と思われるのではないかと、周囲の目を気にして悩む里親の方もいるようです。

◆里親委託率の向上に向けて
このような難しい問題を抱え、「悩んでいる里親を支援する制度が十分ではない」という指摘がなされています。この背景には、里親同士の交流が進まず、経験者が悩みを共有する場が乏しいことなどがあるようです。
こうした状況の中、厚生労働省は、平成21年度末までに里親の委託率を8.1%から15.0%に上げる数値目標を立てました。それに伴い、今年4月からは「改正児童福祉法」が施行され、「里親認定登録制度の見直し」「里親支援の強化」「養育里親の研修の義務化」「里親手当の増額」など、里親制度の内容が拡充されています。
家庭内で深い愛情をもって養育されることが子どもたちにとって大切ですので、里親支援についてのより充実した対応が望まれます。




「労働審判」の申立件数が増加しています!

◆2年間で約2.3倍に増加
2008年における「労働審判」の申立件数が2,052件となり、制度がスタートした2006年(877件)と比較すると約2.3倍に増えたそうです。今年については9月末時点で2,553件となり、すでに昨年の件数を大幅に上回っています。

◆労働審判の目的・手続き
労働審判は、解雇や賃金の不払いなど、事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブル(個別労働紛争)について、その実情に即して「迅速」、「適正」、「実効的」に解決することを目的としています。
労働審判の手続きは、労働審判官(裁判官)1名と、労働に関する専門知識・経験を有する労働審判員2名で組織された労働審判委員会(計3名)が、原則として3回以内の期日で審理を行い、適宜調停を試み、調停による解決に至らない場合には、事案の実情に即した柔軟な解決を図るための労働審判を行う手続きです。
この労働審判に対して当事者から異議の申立てがあった場合には、労働審判はその効力を失い、労働審判事件は通常の訴訟に移行することになります。

◆労働審判のメリット
労働審判のメリットとしては、原則として3回以内の審理で解決が図られるため、通常の訴訟よりも迅速な紛争解決を図ることができる点が挙げられます。制度スタート以降、申立てから審判終了までの平均日数は「約74日」となっています。
また、申立ての際に必要となる印紙代も通常の民事訴訟の半額となっており、費用的なメリットも大きいため、労働者側からの申立てが多いようです。

◆今後も増加傾向か?
昨年来の不況により、解雇、雇止め、派遣切りなどをめぐる労使間のトラブルが増加していることが、労働審判の申立件数の増加につながっていると考えられます。また、不況下において、今年1~6月にサービス残業が急増していたとする民間企業の調査結果などもあり、申立件数の増加傾向はしばらく続くものと考えられます。
企業側としては、労使間のトラブルを生じさせないような取組み(適正な労務管理、就業規則・社内規程の見直しなど)が、今後、より重要になってくるでしょう。




「確定拠出年金」の使い勝手が良くなる?

◆「適年」の受け皿として
厚生労働省は、「確定拠出年金制度」(日本版401k)を拡充するため、関連法の改正案を来年の通常国会に提出する方針を明らかにしています。
同省では、今でも多くの中小企業が採用している「適格退職年金制度」(2012年3月末に廃止予定)の受け皿として、この確定拠出年金が大いに活用されることを期待しているようです。

◆確定拠出年金の特徴と導入の背景
確定拠出年金は、拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用収益との合計額をベースに年金給付額が決定される年金制度です。
厚生年金基金や適格退職年金などの企業年金制度は、給付額が約束されるという特徴がありますが、離転職時の年金資産の持ち運びが十分確保されておらず労働移動への対応が困難であることなどが指摘されていました。
そこで、公的年金に上乗せされる部分における新たな選択肢として、2001年10月に確定拠出年金制度が導入されました。

◆予定されている主な改正内容
確定拠出年金には、企業のみが掛金を拠出する「企業型」と、個人のみが掛金を拠出する「個人型」がありますが、来年予定されている改正はこのうち「企業型」に関するものであり、主な内容は次のとおりです。
(1)個人による掛金拠出を認める(ただし個人の掛金は企業の拠出額以下とする)
(2)加入年齢を引き上げる(積立期間の上限を「60歳」から「65歳」に変更する)
なお、「企業型」の確定拠出年金の導入件数は、2008年3月末時点で3,043件(加入者数311万人)です。

◆果たして加入件数は増えるか?
確定拠出年金は、運用が悪化すれば個人の年金受給額は当然減ってしまうものの、企業にとっては、追加負担を求められることが基本的にはないというメリットがあります。
上記の改正により、厚生労働省のねらい通りに加入件数が増えていくのか、注目しておきたいところです。




「中小企業緊急雇用安定助成金」の変更点、「雇用保険法」の改正案

◆民主政権で何が変わった?
民主政権に変わり、雇用関係に関しても様々な動きがあります。ここでは、中小企業にとって影響の大きい「中小企業緊急雇用安定助成金」の変更点と「雇用保険法」の改正案を取り上げます。

◆「中小企業緊急雇用安定助成金」の変更内容
「中小企業緊急雇用安定助成金」の支給要件が次のように緩和されています。
(1)助成金対象の拡大
これまで、出向労働者を出向元に復帰させた後、6カ月を経ずに再度出向させた場合には助成金の対象外であったものが、対象とされました。これは、平成22年11月29日までの時限措置とされています。
(2)生産量要件の緩和
生産量要件(従来は「売上高・生産量の最近3カ月間の月平均値がその直前3カ月または前年同期に比べ5%以上減少していること」)に、「売上高・生産量の最近3カ月間の月平均値が前々年同期に比べ10%以上減少し、直近の決算等の経常損益が赤字であること」が加えられました。この要件は、対象期間の初日が平成21年12月2日~平成22年12月1日の間にあるものに限られます。

◆「雇用保険法」の改正案
厚生労働省は「雇用保険法」の改正原案をまとめ、その内容を明らかにしました。来年の通常国会に改正案を提出し、来年4月からの施行を目指すとしていますので、今後の動向に要注目です。
(1)加入に必要な雇用見込み期間の短縮
雇用保険への加入の際に必要とされる雇用見込み期間について、現行の「6カ月以上」から「31日以上」に短縮するとしています。この適用拡大により、新たに255万人が雇用保険の加入対象になると試算されています。
(2)雇用保険料率の引上げ
労使折半とされている雇用保険料率について、現行の「0.8%」から「1.2%」に引き上げるとしています。
(3)未加入扱いの遡及期間の延長
保険料を納付したにもかかわらず手続上の問題により未加入扱いとなった人の遡及期間について、現行の「2年まで」から「2年超」とするとしています。




「雇用支援ワンストップサービス」が試行実施

◆77のハローワークで実施
新聞報道やテレビ等でも話題となっていた「雇用支援ワンストップサービス」が、11月30日に17都道府県、77のハローワークにおいて試行実施されました。
当初は15都道府県43地域で実施されると報道されていましたが、最終的には実施箇所が増えたようです。東京都、愛知県、大阪府では、すべてのハローワークにおいて実施されたそうです。

◆実施された「ワンストップサービス」とは?
このワンストップサービスは、政府の緊急雇用対策本部が打ち出したものであり、国・自治体・保健所などが連携してハローワークに総合受付を設け、失業者に対して「職業紹介」「生活費の貸付け」、「住宅手当の支給」「就業支援」「生活保護」「こころの健康」などの情報をハローワークで一元的に提供して、解決してもらおうとするものです。
実施当日の利用者は全国で2,399人だったと発表され、大阪府が511人、東京都が482人などとなっています。

◆今後の動きは?
そもそもこのワンストップサービスの目的は、昨年末に話題となった「派遣村」がなくても失業者に対応できる態勢を作ることにあります。
政府や民主党などは、定期的な開催や年末年始の開催など、このサービスを本格的に実施したいと考えているようです。
しかし、自治体が生活保護の申請急増を警戒するなど、難色を示している向きもあるようで、今後このサービスがどのようになって行われていくのか、気になるところです。

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