2011/08/29

9月の事務所便り

雇用を増やした企業に対する税制優遇措置

 ◆8月1日より受付開始
 税制改正法案が成立し、「雇用促進税制」が創設されました。この「雇用促進税制」は、雇用を増やすなど一定の条件を満たした企業に対する税制優遇措置であり、8月1日からハローワークでの受付が開始されています。
 なお、平成23年4月1日から8月31日までの間に事業年度を開始する事業主は、10月31日までに届出を行えばよいこととなっています。

 ◆従業員の増加1人あたり20万円の控除
 「雇用促進税制」は、ハローワークに「雇用促進計画」を提出し、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの期間内に始まるいずれかの事業年度において、1年間で10%以上かつ5人以上(中小企業は2人以上)従業員を増やすなどの要件を満たした事業主に対する税制優遇制度であり、従業員の増加1人あたり20万円の法人税の税額控除を受けることができます。
 なお、上記以外の要件は、次の通りです。
 ・青色申告書を提出する事業主であること
 ・適用年度とその前事業年度に事業主都合による離職者がいないこと
 ・適用年度における給与等の支給額が比較給与等支給額以上であること
 ・風俗営業等を営む事業主ではないこと

 ◆手続きの仕方
 まず、事業年度開始後2カ月以内に、目標の雇用増加数などを記載した「雇用促進計画」を作成し、ハローワークに提出します。
 次に、事業年度終了後2カ月以内(個人事業主については3月15日まで)に、ハローワークで雇用促進計画の達成状況の確認を求められます。
 そして、確認を受けた「雇用促進計画」の写しを確定申告書等に添付して、税務署に申告を行います。


無年金・低年金の発生を防止する「年金確保支援法」

 ◆3つの法律の一部改正
 8月初めに「年金確保支援法案」が国会で可決・成立しました。
 この法案は、(1)国民年金法の一部改正、(2)確定拠出年金法の一部改正、(3)厚生年金保険法の一部改正から成ります。

 ◆法案の趣旨
 この「年金確保支援法案」の趣旨は、次の通りとされています。
 「将来の無年金・低年金の発生を防止し、国民の高齢期における所得の確保をより一層支援する観点から、国民年金保険料の納付可能期間を延長することや、企業型確定拠出年金において加入資格年齢の引上げや加入者の掛金拠出を可能とする等の措置を行う」
 以下では、(1)~(3)のうち主な内容について解説します。

 ◆改正された主な内容
 (1)国民年金法の一部改正
 国民年金保険料の未納分を過去に遡って追納することのできる期間が、現行の「2年」から「10年」に延長されます。本人の希望により保険料を納付することで、その後の年金受給につなげることができるようにするためです。期間の延長は3年間の時限措置です。
 (2)確定拠出年金法の一部改正
 加入資格年齢が、現行の「60歳」から「65歳」に引き上げられます。企業の雇用状況に応じた柔軟な制度運営を可能とするためです。
 また、従業員拠出(マッチング拠出)を可能として所得控除の対象とします。そして、事業主による従業員に対する継続的投資教育の実施義務を明文化することにより、老後所得の確保に向けた従業員の自主努力を支援します。
 (3)厚生年金保険法の一部改正
 近年の経済情勢を踏まえ、母体企業の経営悪化等に伴い、財政状況が悪化した企業年金に関して措置が講じられます。


「夏季休暇」に関するアンケート調査結果から

 ◆20代の社会人を対象にアンケート調査
 株式会社毎日コミュニケーションズが運営するポータルサイト「COBS ONLINE(コブスオンライン)では、「社会人の夏休みに関する調査」を実施し、その結果が発表されました。
 調査期間は今年の6月7日~13日で、調査対象は20代の社会人男女(843人)となっています。

 ◆3割以上が「夏休みを取らない」
 まず、「あなたは今年、夏休みを取りますか?」との質問に対しては、68.6%の人が「取る」、31.4%の人が「取らない」と回答しました。
 上記の質問で「取る」と回答した人を対象とした「夏休みは何日取りますか?(取る予定ですか?)」との質問では、平均が「5.6日」で、昨年の「5.7日」とほぼ同様でした。
 また、「昨年に比べて、夏休みの日数に変化はありますか?」との質問では、74.2%の人が「昨年と同じ」と回答し、「昨年より増えた(増える)」と回答した人は10.2%でした。

 ◆「8月中旬」「予算1~3万円」
 夏休みを取る時期については、「8月中旬(お盆)」が52.6%で最多となり、夏休み期間中に使う予算については、「1万円以上~3万円未満」が27.0%で最多という結果でした。
 
 ◆夏休みをどのように過ごすか?
 夏休みの過ごし方については、次の通りの結果となりました。
 (1)帰省(29.4%)
 (2)国内旅行(21.8%)
 (3)海外旅行(13.8%)
 (4)自宅でのんびり(11.9%)
 1位の「帰省」と回答した人の理由としては、上位から「普段会えない家族と過ごしたいから」(64.1%)、「地元の友達と会うため」(15.3%)、「お墓参りのため」(12.3%)という結果でした。


「昼寝」の効果的活用で仕事能率アップ

 ◆睡眠時間の短い「働く日本人」
 一般的に、「働く日本人は睡眠時間が短い」と言われています。
 以前に味の素株式会社が行った、世界5都市におけるビジネスパーソンの「睡眠時間」の長さに関する調査では、次のような結果となっています。
 (1)上海…7時間28分
 (2)ストックホルム…7時間8分
 (3)パリ…6時間55分
 (4)ニューヨーク…6時間35分
 (5)東京…5時間59分

 ◆15分~20分程度の昼寝が有効
 最近では多くの企業で「サマータイム制」が導入されるなど、睡眠時間の短さに拍車がかかる状況の中、「昼寝」の効果が見直されています。
 独立行政法人労働安全衛生総合研究所が行った調査では、工場勤務者やエンジニアを対象に、昼休みに昼寝(15分間)をした週としなかった週を比較したところ、昼寝をした週は午後の眠気をあまり感じず、その差は週の後半ほど広がったそうです。
 同研究所では、時間帯は「午後2時ごろ」、長さは「15~20分程度」(高齢者の場合は30分程度)が最も効果的だと分析しています。
 もっとも、午後2時頃に昼寝を取れるような会社は少ないでしょうから、その場合は昼休みを利用しても問題ないそうです。

 ◆効果的な活用を
 適度な仮眠には、頭をスッキリとさせる効果があるそうです。暑い夏を乗り切り、仕事の効率を高めるためにも、社員の方にも「昼寝」をお勧めしてみてはいかがでしょうか。
 ただし、30分以上の仮眠によって深い眠りに入ってしまい、逆に疲労感が残ることもあるそうですので、ご注意を!


節電対策を契機に自己学習する人が増加

 ◆増加する「学び族」
 節電対策で勤務時間を繰り上げたり、夏休みを長くしたりする企業が多い中、空いた時間を使って自己学習を行う「学び族」が増えているそうです。
 震災をきっかけとして自分のキャリアを見つめ直す人も多く、働くことに対する意識の変化が背景にあるようです。
 
 ◆仕事にやりがいを持ちたい!
 「勤務時間繰上げ」や「残業禁止」を命じられた働く人が、終業後の時間を習い事や自己研鑚に充てる姿が目に付くようになっています。
 習い事の情報誌が、「サマータイム制」などを導入した企業で働く男女(約4,000人)に調査したところ、独学も含めて何かを学び始めた人が18%に達しています。
 これまでは「目の前の仕事で一杯」と思っていた人も、「仕事にもっとやりがいを持てるようになりたい」と感じるケースもあるようで、夏休みに短期留学を計画する人もいるようです。

 ◆震災をきっかけに仕事を見直し
 コンサルティング会社が全国の18~65歳の会社員(約1,000人)に「仕事の目標」を聞いたところ、「社会に貢献する仕事をしたい」と回答した人の割合が、震災前に比べてかなり増えたそうです。また、震災前に比べて「仕事のやる気が上がった」という人も約4割に上っています。
 専門家は「震災後の支援の様子を見て、特定のスキルを持つ人の価値を実感した人が多く、特に若い人の間で知識を磨こうという意欲が高まっている」と指摘しています。

 ◆時間を視覚化することが秘訣
 空いた時間を有効活用するには、「他人との約束だけでなく、自分1人で行う勉強や遊びの予定も含めて手帳に書き込み、時間を視覚化すること」が有効だそうです。
 時間と自分の行動を結び付けて考える習慣がつくため、空き時間が明確になり、結果として勉強の計画も立てやすくなるとのことです。


企業財務を圧迫する「福利厚生」の見直し
 
 ◆見直しが迫られる福利厚生
 企業が社員に提供する「福利厚生」が縮小する一方、年金や医療といった企業負担が急速に膨らんでいます。
 景気低迷により多くの企業では業績拡大も見込みが立たず、「福利厚生」のあり方は、今後も修正を迫られそうです。

 ◆減少傾向にある社宅
 国土交通省の「住宅着工統計」によれば、2010年度における社宅や公務員宿舎などの着工数は6,580戸で、確認できる1955年度以降で過去最低を更新しました。
 総務省が実施する「住宅・土地統計調査」によれば、全国の社宅・公務員宿舎は2008年に約140万戸で、10年前と比較すると2割減となっています。
 1990年代後半から、企業が福利厚生施設を売却する動きが広がっており、2009年の人事院による調査では、社宅がある企業は全体の57%で、自社で物件を保有する企業は25.8%でした。

 ◆各種手当、社内預金の状況
 社宅だけでなく、各種手当なども減少傾向にあります。
 厚生労働省の調査によれば、「家族手当」や「扶養手当」を支給している企業は2009年時点で全体の65.9%となっており、10年前から11.4%低下しています。
 また、「社内預金」(一般に、預貯金より高い利子をつけて企業が従業員の貯金を管理する制度)も縮小しており、昨年の社員預金総額は9,334億円で、10年前と比較すると約3分の1となっています。

 ◆福利厚生サービスの「曲がり角」
 働き手の形が多様化する中で、従来のような福利厚生サービスは修正を余儀なくされています。今後、従来型の終身雇用制を前提にした社員サービスの見直しは必至の状況と言えるでしょう。


女性だけでなく男性も「更年期障害」にご注意を!

 ◆真面目で神経質な人に多い
 男性の更年期障害の主な症状は、意欲低下や疲労感、睡眠障害、勃起減退などで、主な原因は加齢にあるとされます。
 50代を中心として40~60代で多く見られ、加齢により男性ホルモンの「テストステロン」の分泌が減ることで起こるそうです。
 また、ストレスによる要因も大きく、真面目で神経質な人に多いとも言われます。

 ◆ホルモン補充療法には副作用も
 一般的な治療はホルモン補充療法であり、男性ホルモンを2~4週ごとに注射する治療を続けると、症状が改善することもあるようです。
 ただし、ホルモン補充療法には副作用があり注意が必要です。例えば、前立腺がんの患者にとっては男性ホルモンが悪影響を及ぼす可能性があるため、治療前には前立腺がんの検査が必要です。 

 ◆軽度のうつ病の疑いも
 ホルモン補充療法により治る比率は5~7割と言われています。専門医は、「治らない患者の中には軽度のうつ病の疑いのある人がいる」と指摘しています。病院によっては、受診した患者の約3割の人が実はうつ病だったというケースもあったようです。
 男性の更年期障害と軽度のうつ病との区別は非常に難しく、併発している場合も少なからずあるようです。

 ◆生活習慣の見直しが必要
 うつ症状などの心理的な要因が強い場合は、心療内科や精神科などを受診して様子をみてから、更年期障害の専門医を受診すると良いそうです。
 また、ストレスを取り除くために生活改善が重要であり、それには家族の協力も必要です。余暇を大事にしながら、自分に合った生活を送ることが症状緩和の近道のようです。


「特定健診」の受診率が高い健保組合を優遇へ

 ◆2013年度をメドに導入予定
 厚生労働省は、「特定健診制度」の普及を促すため、特定健診を受診した加入者の割合が高い企業の健康保険組合(健保組合)などに対する優遇措置を、2013年度をメドに導入する方針を示しました。
 インセンティブの導入によって受診率を高め、中高年者の医療費を抑えることが目的とされています。

 ◆「特定健診」とは?
 「特定健診」は2008年度に導入され、メタボリック症候群を改善して生活習慣病を予防するため、40~74歳の加入者を対象にした健診を健保組合に義務付けています(罰則はなし)。
 特定健診の結果、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が多く期待できる場合には「特定保健指導」が実施されます。
 2009年度の特定健診の受診率は約40%で、制度導入当初に設定された「2012年度に受診率70%」という目標の達成は難しくなっています。

 ◆インセンティブ導入で受診率アップなるか
 健保組合は、75歳以上の高齢者向けの医療を維持するために「支援金」を拠出していますが、健保組合の規模や加入者の平均所得に応じて拠出額が決まっています。
 今後は特定健診の受診率が他の健保組合に比べて高い、受診率が過去に比べて大きく伸びた、メタボと認定された加入者の割合が大幅に減ったなどの健保組合からは、徴収する拠出金を最大で10%減額し、受診率が低い健保組合については徴収額を増やすとの考えです。

 ◆医療費抑制に向けて
 日本の医療給付費(自己負担分を除く)は2011年度に約33兆円で、今後、高齢化の進展や医療技術の発展で2025年度には50兆円を超える見通しです。
 医療費削減のため、国民一人ひとりが健康に留意し、病気を予防する意識を高めていく必要があるのではないでしょうか。


働く人の減少による社会保障負担の増加

 ◆若年世代の労働者減少が要因
 少子高齢化を背景に、労働力が大きく減少しているようです。
 新聞報道によれば、会社員・自営業・求職中の人の合計である「労働力人口」は、2010年に6,241万人となり、5年前と比較して4.6%減少しています。
 大きな理由は、若年者世代の人口が減っているためで、社会保障の担い手もさらに少なくなっていくことが懸念されます。

 ◆総人口は5年前と比較して微増
 2010年の総人口は1億2,806万人と5年前と比較して約0.2%増加していますが、労働力人口は同時期に300万人減りました。20~30歳代で250万人減ったことが大きな理由です。
 日本の総人口に占める労働力人口の割合は1970年に初めて5割を突破しました。第2次ベビーブームで総人口が増え5割を割り込む時期もありましたが、働く女性が増えたことで1990年には再び5割を超えました。その後はこの水準を維持してきましたが、今回再び割りこみました。

 ◆地方工場などの海外移転に拍車
 地方の工場などでは「国内で若年労働者が確保できない」として、中国をはじめとする海外に工場を移す動きも出始めています。
 原発事故に伴う電力不足もあり、工場などの海外移転の傾向は今後も拍車がかかるものと思われます。

 ◆社会保障負担の増加に歯止めを
 労働力の減少が続ければ、現役世代の社会保障負担が増えるのは必至です。
 労働力の減少に歯止めをかけるため、政府は中長期的な視点で少子化対策を進める必要があるでしょう。


どのように守る? 高齢者のお金

 ◆公共サービスを利用した金銭管理
 親が高齢になると、日常的な金銭管理をどのように行うかという問題が起こります。判断能力が低下したり、外出が難しくなったりした高齢者の家族にとっては切実な問題です。
 そこで、公共サービスを利用して金銭管理を行う方法をご紹介します。

 ◆社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」
 社会福祉協議会(以下、「社協」)は、地域福祉の推進を目的とした非営利組織であり、国・都道府県・市区町村にそれぞれ設置されています。
 地域住民に身近な市区町村の社協は、訪問介護など様々な福祉サービスを手掛けており、災害時にはボランティアの受け入れ窓口となるなど、準公的な性格を持ちます。
 「日常生活自立支援事業」は全国約800の社協が手掛けています。主なサービスとして、高齢者の日常的な金銭管理や福祉サービスの利用援助、通帳の預かりなどがあります。
 サービスは日常生活の範囲内に限定されており、高額の財産管理や法律行為の代理などは行えません。  

 ◆安い報酬も魅力
 生活費の引き出しや預け入れ、税金などの支払いの手伝いなど、小口の金銭管理サービスは、親族や信頼できる知人が近くにいない独居高齢者や、同居の子供が親の年金を使い込んでしまうような世帯において特に必要度が高まっています。
 また1回の訪問当たり1,000円程度からという安い報酬体系も魅力です。

 ◆制度利用伸び悩みの理由は?
 「日常生活自立支援事業」は便利な公共サービスですが、利用者数は2011年1月末時点で約3万5,000人にとどまっています。
 この伸び悩みの主な理由は社協の人員不足にあると言われています。常勤職員の人件費は都道府県と国が折半していますが、予算が付かないため、人員増に踏み切れないでいるのが実情のようです。
 一方、利用する側にも、通帳などを第三者へ預けることへの抵抗感が強くあるようです。本人から利用を申し出るケースは少なく、多くは周囲からの勧めがきっかけとなっているそうです。