2011/11/04

11月の事務所便り

社員が行う「副業」をどう考える?

 ◆問題点の多い「副業」
 リーマンショック以降の景気低迷によって残業時間が少なくなり、給与の手取りが減少した分を補うために、数年前から「副業」を行う人が増えていました。
 しかし、社員が本業の仕事とは別に副業を行う場合には、「通算して長時間労働になり本業に支障をきたす可能性がある」、「副業先で労災が起こった場合にどう対処するか」など、様々なリスクがあります。

 ◆会社として認めるか否かを適切に判断
 合理的な理由がある場合には、会社として社員の副業を認めない(副業禁止)とすることも可能ですが、認める場合の選択肢としては、(1)許可制とする、(2)届出制とする、(3)完全解禁とする、ことなどが考えられます。
 上記のいずれを選択するにしても、就業規則などを整備して、副業を認める場合の基準(ルール)を明確にしておく必要があるでしょう。

 ◆副業を認める場合に注意すべきこと
 仮に社員の副業を認める場合には、リスク管理の観点から、「本業に支障が生じてしまうほど長時間労働となるような副業は認めない」ことや、「自社の業務内容と競合するライバル会社での副業は認めない」ことなどが必要です。

 ◆増加傾向に歯止め
 近年は増加傾向にあった副業ですが、この傾向にも歯止めがかかっているようです。
 株式会社インテリジェンスが今年の3月に実施した「副業に関するアンケート調査」の結果によれば、25~39歳の正社員で副業をしている人は20.1%で、2009年(30.8%)の約3分の2に減少しています。
 同社では、副業が減少した原因として、「景気の回復により残業が解禁され、副業をする時間がなくなった」ことなどが挙げられると指摘しています。
 なお、副業による収入は「平均4.3万円」との結果でした。


中小企業にも大きな影響を与えている「円高」の進行

 ◆経済産業省の調査結果から
 現在、企業の想定レートを上回るほどの円高が続いており、日本経済に大きな影響を与えていますが、経済産業省では、今年8月に実施した「現下の円高が産業に与える影響に関する調査」の結果を発表しました。
 この調査には、大企業製造業61社、中小企業製造業83社、非製造業10社が回答していますが、以下では主に中小企業への影響について見ていきます。

 ◆「円高」の中小企業への影響
 上記の調査結果から、円高の中小企業への影響は次のように分析されています。
 ・現在の円高水準では、減益となる企業が7割強に上り、半年間継続した場合には減益を予想す     る企業が8割を超える。
 ・主な減益の原因として、「値下げ要請」、「他国企業との競争激化」等が挙げられている。
 ・現在の円高水準での対応策としては、「経営努力等によるコスト削減」や「取引の円建て化」で対応を考える企業が多いが、為替水準が継続した場合は「海外生産比率の増加」を検討する企業が増える。
 ・外国から海外進出の誘致を受けている企業もある。国別では中国が多く、アジアを中心に日本企業への働きかけがある。

 ◆助成金の支給要件緩和
 厚生労働省では、円高の進行に対応するため、今月上旬に「雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)」の支給要件緩和を発表しました。
 10月7日から、円高に応じて雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)を利用する場合、「最近3カ月の事業活動が縮小していること」としている支給要件について、確認期間を「3カ月」から「1カ月」に短縮するとともに、「最近1カ月の事業活動が縮小する見込み」であっても、利用手続の開始を可能としました。


休日数の多い業種・少ない業種は?
 
 ◆25~39歳の800人が調査に回答
 株式会社インテリジェンスが運営する転職サービス「DODA(デューダ)」では、「休日に関するアンケート調査」(25~39歳のビジネスパーソン800人が回答)を行い、その結果が発表されました。
 
 ◆業種による休日数の違い
 この調査では、はじめに「有給休暇を除いた年間休日数」を尋ねましたが、全体平均は「115日」でした。
 業種別では次の通りとなっています。
 ・休日数が多い業種…(1)「金融」122日、(2)「メーカー」121日(3)「IT・通信・インターネット」121日
 ・休日数が少ない業種…(1)「小売・外食」104日、(2)「建設・不動産」107日、(3)「メディカル」110日
 この調査では、「BtoB」ビジネスを展開する業種、土日・祝日休業が多い業種では休日数が多く、「BtoC」ビジネスを展開し、顧客ニーズに合わせて年中無休や土日・祝日に営業している業種では休日数が少ないと分析しています。

 ◆厚生労働省の調査では
 なお、厚生労働省の調査(平成22年就労条件総合調査)では年間休日総数の1企業平均は「106.4日」(前年105.6日)、労働者1人平均は「113.4日」(同112.6日)となっています。
 企業規模別では1,000人以上が116.4日(同116.1日)、300~999人が113.4日(同112.4日)、100~299人が109.9日(同109.8日)、30~99人が104.5日(同103.5日)となっています。
 産業別では、「情報通信業」が123.5日(同121.2日)で最多、「宿泊業・飲食サービス業」が91.0日(同91.9日)で最少でした。


「確定拠出年金」導入企業が増加傾向

 ◆株価低迷、積立不足への対策として
 企業型確定拠出年金(日本版401k)の加入者数が400万人を突破したそうです。この数字は、会社員の約8分の1に相当します。
 加入者増加の背景には、長期的な株価の低迷、企業年金への資金拠出負担を抑えて積立不足を解消したい企業の考えがあるようです。
 2012年3月に控えた「税制適格退職年金」の廃止を前に確定拠出年金への移行を実施する企業も多く、加入事業者数は1万5,117社(今年7月末時点)と増加傾向にあります。今後導入する企業も増加する見込みだと言われています。

 ◆導入から10年が経過
 確定拠出年金は2001年10月に日本に導入されました。加入者自身が運用手段を選択して、運用実績に応じて年金の受給額が変わる仕組みとなっており、「企業型」(約400万人が加入)と「個人型」(約13万人が加入)があります。
 上記の「企業型」の場合、掛金を拠出できるのはこれまでは企業だけでしたが、2012年からは個人による上乗せ拠出も可能となります。

 ◆導入企業に求められる「投資教育」
 確定拠出年金では加入者自身が運用の責任を負うため、企業には加入者(従業員)に「投資教育」を行うことが求められます。しかし、企業年金連合会の調査によると、継続的な投資教育を実施している確定拠出年金の導入企業は約6割に過ぎません。
 運用難による積立不足が発生しがちな「確定給付企業年金」からの移行も多く、「運用リスクを企業が従業員に押し付けている」などと批判されることも多い企業型確定拠出年金ですが、導入企業には加入者(従業員)への十分なフォローが求められます。


厚生年金の適用拡大でどうなる?

 ◆「一体改革」を具体化へ
 厚生労働省は、政府の「社会保障と税の一体改革」の具体化に向けた作業を進めています。非正社員を厚生年金に加入させるために、労働時間や収入の条件を見直す方針です。

 ◆年収基準を引下げへ
 「第3号被保険者」(夫が会社員や公務員である専業主婦)と認定する年収の基準を、現行(130万円)から引き下げる考えです。厚生年金保険料の算定に使う標準報酬の下限(月額9万8,000円)を下げることも検討しているようです。
 現在、労働者の4割をも非正社員が占めるようになり、年金制度に歪みが生じています。非正社員が加入する国民年金の加入対象者としては、主に定年がない自営業者などが想定されており、厚生年金に比べて手取りが少額です。

 ◆厚生労働省による試算結果
 しかし、厚生年金の適用拡大に伴い、企業の負担は増えます。
 厚生労働省が2007年に実施した試算結果によれば、加入条件(労働時間)を「週30時間以上」から「週20時間以上」に拡大すると新たに約310万人が厚生年金の加入対象となり、企業の負担が年間約3,400億円も増えるそうです。

 ◆負担増となる主婦から反発も
 厚生労働省が過去に実施した短時間労働者を対象とするアンケート調査によれば、年収130万円を超えると保険料の支払義務が発生するために「労働時間を減らしている」と回答した人が25%にも上ったそうです。
 現行の年金制度が働き方を制限していると言えますが、差し引きで負担増となる主婦層などから反発が出ることも予想されています。


「サービス付き高齢者向け住宅」の特徴は?

 ◆法改正により新サービススタート
 「高齢者住まい法」の改正を受けて、「サービス付き高齢者向け住宅」(高齢者向けの賃貸住宅制度)の登録が10月から始まりました。
 安否確認や生活相談などのサービス提供を義務付けたのが特徴であり、契約者保護の規定も充実させる内容となっています。

 ◆どのようなサービスを受けられるのか?
 「サービス付き高齢者向け住宅」には、次のような特徴があります。
 まず設備面では、部屋の床面積を原則25平方メートル以上のバリアフリー構造とし、キッチン・水洗トイレ・収納・洗面台・浴室を備えることが必要です。サービス面では、日中はヘルパー2級以上の資格を持った職員が常駐し、入居者の安否確認と生活相談にあたることを義務付けています。
 また、費用面については、入居者が事業者に支払うのは敷金・家賃・サービスの対価に限定しています。
 この他、前払金・返還金額の算定方法の明示、契約日から90日以内の解約の場合の前払金の一部返還、事業者の一方的都合(入居者の長期入院など)による変更や解約禁止も義務付けています。

 ◆サービス内容に注意が必要
 しかし、提供されるサービスの中身については注意が必要です。法律で義務付けられているのは「安否確認」と「生活相談」のみであり、訪問介護や訪問診療などは原則として外部サービスを利用することになるため、この点については通常の在宅介護と変わりありません。
 また、生活相談については、「行政や地域の情報提供やテレビのリモコンの使い方などこまごまとした内容」に留まることが多くあり、どのような上乗せサービスが提供されているのか、相談費用は居住費などに含まれるのかなど、事前に確認する必要があります。

 ◆慎重な選択が求められる「高齢期の住まい」
 高齢期の住まいは、所管官庁や根拠となる法律の違いにより、種類が多くてわかりにくくなっています。名称のみにこだわらず、サービスの実態・費用・立地・入居者の生活スタイルなどを目安に、複数の住宅や施設を見学して比較するなどして慎重に選ぶことが必要です。


社員の「うつ病」に備えるには?

 ◆職場として必要な知識は?
 職場でメンタル面の不調を訴える人が増えていますが、中でも「うつ病」の患者数は特に増えており、非常に身近な病気となりつつあります。
 うつ病は、身体の病気とは異なる性質があるため、職場としても知識を備えておくことが重要です。

 ◆うつ病の基準とかかりやすい人の特徴
 うつ病は、医学的に広く使われる基準では、「抑うつ気分(気分の落込み)」か「意欲の低下」のどちらか、または両方が2週間以上続き、さらに同時期に睡眠や食欲の乱れ、思考力の減退などがある場合に、その可能性が高いとされています。
 うつ病(いわゆる「新型うつ病」は除く)になりやすい人は、一般的には責任感が強く、無理をして頑張りがちだと言われています。また、職場の同僚や上司から見ると、仕事でミスが増える、外見を気にしなくなるといった兆候が表れることが多いようです。

 ◆公的支援策の活用も
 うつ病と診断された場合、一般的には薬の服用と休養を中心とした治療を受けることになります。治療期間は病気の程度にもよりますが、数カ月から1年以上に及ぶことも多くあります。
 治療には時間がかかり医療費など経済的な負担が大きくなりがちですので、公的な支援策(自立支援医療制度、高額療養費等)の活用が有効です。

 ◆復職について「焦り」は禁物
 うつ病による休職者にとって気になるのが「職場復帰」の問題です。多くの人は早期復職を希望しますが、復職をきっかけに再発するケースも目立ちます。企業側でも、休職者を受け入れるためのルール(規定)や復職支援制度を整備する例は増えつつあります。
 復職について明確なルールを定めることで、再発を防止し、受け入れる職場での対応もスムーズになります。また、慣れた職場で短時間就労する「慣らし期間」から始め、体調や仕事ぶりについて産業医・上司・人事担当者らが相談しながら、徐々に元の仕事に戻すやり方もあります。
 うつ病は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら回復することが多いため、主治医が復職を認めた場合であっても、完全には回復しないことも多くあります。患者にも職場にも、復職に焦りは禁物と言えます。


財政が苦しい健康保険組合の現状

 ◆8割弱の健保組合は赤字
 主に大企業の社員やその家族が加入する健康保険組合(健保組合)の財政難が厳しさを増しているようです。
 健保組合全体の赤字額は、過去最悪だった2009年度の5,200億円に続き2010年度も4,100億円に高止まりしています。約3割の健保組合が保険料を引き上げたにもかかわらず、8割弱が赤字となっています。

 ◆ピーク時には1,800組合突破
 企業が独自に健保組合を設立し始めたのは高度成長期であり、当時は「政府管掌健康保険」(現在は「協会けんぽ」)に加入するよりも保険料率が低く、社員に独自給付を提供できるメリットがありました。
 ピーク時(1992年)には1,800組合を突破しましたが、その後、高齢化と景気低迷などにより財政が悪化し、約400組合は解散などで消滅しています。

 ◆引上げ傾向にある保険料率
 しかし最近、企業が健保組合を持つメリットは少なくなりつつあります。平均保険料率は標準報酬月額の7%台であり、協会けんぽの保険料率(約9.5%)よりは低くなっていますが、2割強以上は9%以上となっています。
 2011年度に日本航空(JAL)健保組合が保険料率を6.7%から9.6%に大幅に引き上げるなど、料率が協会けんぽを超えているところもあります。

 ◆抜本的改革が必要な時期に
 なお、健保組合が他制度に払う支援金が保険料に占める割合は、1999年度に初めて3割を超え、現在は約4割にまで拡大しています。政府の「社会保障と税の一体改革」においても、健保組合については現行制度を前提としており、高齢者の医療費が増加して財源が足りなくなれば機械的に健保組合からの支援金を増やして賄う仕組みは変わらないようです。
 負担に耐えられずに健保組合を解散する企業が増えていくことが予想される中、現役世代の負担増を抑えるためには、現行制度を抜本的に改革する必要があるのではないでしょうか。


40代…育児と介護が重なってしまったら

 ◆会社内で責任が増す世代
 一般的に「40代」は職場での仕事に責任が増す世代ですが、子供がまだ小さく育児に時間をとられ、さらに親の介護が必要となったようなケースでは、一気に不安定な状況に陥りがちです。
 共働きの世帯も多い中、社員にとってはどのようにやりくりするかが大きな問題ですが、会社による支援も重要です。

 ◆重くのしかかる介護の負担
 厚生労働省の「介護保険事業状況報告」によれば、全国の65歳以上の「要介護・要支援認定者」は約462万人(暫定値。2011年4月末時点)です。
 また、2010年の「国民生活基礎調査」によれば、要介護・要支援者と同居している主な介護者の年齢層は50~60代が多く、40代は8.3%と割合としては多くありません。しかしながら上の年代と比べると子供が小さいケースも多いだけに、いざ介護を行わなければならなくなったときの負担は決して軽くありません。
 また、「人口動態統計」によれば、35~44歳の母親から生まれた子供の数は2010年に25万4,710人で、1985年時点と比べると約2.5倍となっています。10歳以下の子供を持つ40代女性は急増しているのです。

 ◆介護保険料の支払いも始まる
 40歳からは介護保険料の支払いも始まりますので、40代は自分も当事者であると考え、介護の不安を不安のままにとどめず、一歩踏み出さなければならない時期です。
 両親に「在宅」か「施設入所」かの希望を聞いたり、親族と介護の分担などについて話し合ったり、将来に備えて会社に相談もし、介護で使える制度や支援の確認をすることも必要です。

 ◆社員が相談しやすい環境整備を
 共働きの家庭において育児・介護が重なった場合、やむなく離職や転職を選択する人もいます。しかし、40代における収入減は人生設計に大きな影響を及ぼすため、会社を辞める判断をする前に会社に相談するのが良策です。
 会社にとっても有能な人材の流出は大きな損失であるため、社員からの相談に応じられるよう環境を整備することも必要と言えるでしょう。


異業種から「デイサービス」事業への参入

 ◆本業でのノウハウを活用
 高齢者に食事や入浴を日帰りで提供する「デイサービス」に、異業種の中小企業が相次いで参入しているようです。有料老人ホームなどの介護施設と比較して初期投資が少なく、人員配置の基準も比較的緩いというのが、その理由のようです。
 本業で培ったノウハウをデイサービスでも活用することで独自色を出し、大手業者に対抗しようとしています。

 ◆非常に高い伸び率
 厚生労働省の発表によれば、2011年度に介護サービス市場は約8.3兆円に達する見通しで、この数字は介護保険制度が始まった2000年度の2.3倍に相当します。
 サービス内容は「老人ホーム」や「訪問介護」など多岐にわたりますが、自宅暮らしの高齢者向けでは「デイサービス」の伸び率が高く、「訪問介護」の2009年度における市場規模は2006年度に比べ2.6%増にとどまったのに対し、「デイサービス」は33%増となっています。

 ◆中小企業が続々参入
 市場拡大要因の1つが「中小企業の参入」です。老人ホームは開設までに数億円かかると言われていますが、デイサービスの場合は初期投資が1,000万円程度で済み、また、1カ所でまとめてサービスを提供するため、訪問介護に比べて収益性が高くなっています。
 食事・入浴・レクリエーションなどを提供するといったデイサービスの一般的なサービス内容や開設までのプロセスを標準化することで、出店コストや運営費を抑制し、フランチャイズチェーン展開する事業者も出てきているようです。

 ◆独自のサービス提供も
 しかし、供給過多となった都市部では、参入はしたものの閉鎖するケースも出始めています。このため、独自サービスにより利用者を増やそうとする動きも広がっています。
 独自サービスとして今注目されているのが、食品の宅配や家事代行などです。介護報酬の引上げが見込まれにくい中、低価格で受けられるサービスを利用者に提供することで、収益の安定や新規顧客の獲得につなげたいと考えているようです。