2011/12/01

12月の事務所便り

年次有給休暇の取得日数・取得率は?

 ◆労働者30人以上の企業が回答
 厚生労働省は、平成23 年「就労条件総合調査」の結果を10月下旬に公表しました。 この調査は、民間企業における就労条件の現状を明らかにすることを目的としています。
 調査対象は常用労働者30 人以上の企業であり、平成23 年1月1日現在の労働時間制度、賃金制度などの状況について4,296 企業が有効な回答を行いました。

 ◆年次有給休暇の取得状況
 1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数は除く)は、労働者1人平均17.9日(前年17.9日)であり、そのうち労働者が取得した日数は8.6日(同8.5日)となっています。取得率は48.1%(同47.1%)です。
 企業規模別に取得率をみると次のようになっており、規模別では取得日数・取得率ともに前年をわずかに上回ったケースが多いですが、まだまだ低水準だと言えます。
 ・1,000人以上…55.3%(前年53.5%)
 ・300~999人…46.0%(前年44.9%)
 ・100~299 人…44.7%(前年45.0%)
 ・30~99人が…41.8%(前年41.0%)

 ◆「仕事優先」か「プライベート優先か」
 株式会社毎日コミュニケーションズが2011年4月入社の新入社員を対象に実施した意識調査の中で、「仕事とプライベートどちらを優先した生活を送りたいか」をたずねたところ、4月実施調査の同設問と比較して、「仕事優先」が21.7ポイント減少、「プライベート優先」が22.5ポイント増加したそうです。
 企業規模や業種業態などにより年次有給休暇を取得できる環境は様々でしょうが、社員のプライベートも大切にしながら、効率よく仕事を行い、積極的に休暇を取らせる仕組みづくりも大切だと言えるでしょう。


外国人留学生の日本企業に対する評価は?

 ◆60カ国・地域の留学生が回答
 東京大学国際センター(国際センター相談室)では、今年3月に実施した「留学生の就職・進路に関するアンケート調査」の結果を発表しました。調査対象者は東京大学の学部・大学院の留学生(2,872人)で、そのうち60カ国・地域の467人が回答しています。
 日本の企業は外国人留学生からどのように見られているのでしょうか。

 ◆日本企業のイメージは?
 留学生が回答した日本企業の主なイメージ(複数回答)は、次の通りでした。
 ・「残業が多い」…60%
 ・「集団主義的」…46%
 ・「男女差別がある」…28%
 ・「若いうちから仕事を任せてもらえる」…14%
 ・「業績評価が透明」…11%

 ◆日本での就職を希望するか?
 外国人留学生のうち、日本企業に就職を希望する人は50%でした。日本で働きたい年数は「2~5年」が57%で最も多く、「6年以上」(18%)、「10年以上」(11%)、「定年まで」(11%)が続いています。

 ◆外国人留学生の活用を視野に
 日本における外国人留学生の数は、次の通り推移しています。
 ・平成17年…121,812人
 ・平成19年…118,498人
 ・平成20年…123,829人
 ・平成21年…132,720人
 日本における労働力人口が減少していくことが予想される中、中小企業でも外国人留学生の活用を視野に入れるべき必要があるのかもしれません。


雇用・労働をめぐる最近の裁判例

 ◆「雇止め」をめぐる裁判例
 地方自治体の非常勤職員だった女性(55歳)が、長年勤務していたにもかかわらず、一方的に雇止めをされたのは不当であるとして、自治体を相手取り地位確認や慰謝料(900万円)の支払いなどを東京地裁に求めていました。
 同地裁は、「任用を突然打ち切り、女性の期待を裏切ったものである」として慰謝料(150万円)の支払いを認めましたが、地位確認については認めませんでした。
 この女性は、主にレセプトの点検業務を行っており、1年ごとの再任用の繰り返しにより約21年間勤務していたそうです。(11月9日判決)

 ◆「過労死」をめぐる裁判例
 外資系携帯電話端末会社の日本法人に勤務し、地方の事務所長を務めていた男性(当時56歳)が、接待の最中にくも膜下出血で倒れて死亡した事案で、男性の妻が「夫が死亡したのは過労が原因である」として、労災と認めず遺族補償年金を支給しなかった労働基準監督署の処分を取り消すよう大阪地裁に求めていました。
 同地裁は、会社での会議後に行われた取引先の接待について「技術的な議論が交わされており業務の延長であった」と判断し、男性の過労死を認めました。
 この男性は、お酒が飲めなかったにもかかわらず、週5回程度の接待(会社が費用を負担)に参加していたそうです。(10月26日判決)

 ◆「震災口実の解雇」をめぐる労働審判申立て
 仙台市の複合娯楽施設2店舗で働いていたアルバイトの男女(11人)が、「東日本大震災」を口実とした解雇は無効であるとして、施設の運営会社を相手に地位確認などを求めて労働審判を申し立てました。
 同社から解雇されたのは今回申立てを行った計11人を含め568人もおり、約100人が同様の申立てを検討しているとのことです。
 アルバイト側の代理人弁護士は「震災を口実とした便乗解雇であり、許されない」とコメントしており、今後の審判の行方が注目されます。(10月25日申立て)


応募者のアルバイト経験を企業はどう判断するか

 ◆アルバイトに関する調査結果
 株式会社インテリジェンスが運営する「an」(求人情報サービス)は、20~40代の男女を対象として、「就活でアピールできそうなアルバイト」について調査を実施し、その結果を発表しました。この調査では13,418人が回答しています。


 ◆就活で何をアピールするか?
 「就職活動の際にアピールできそうなアルバイト」との質問に対する回答ベスト3は次の通りでした。
 (1)事務・オフィスワーク系…19.5%
 (2)営業系…18.4%
 (3)販売系…14.3%
 理由としては、1位の「事務・オフィスワーク系」では、PCスキルや書類作成スキルなど仕事での実務に直結した能力を身に付けられるという、就活での経験談が数多くみられました。
 2位の「営業系」では、社会人としてのビジネスマナーを学生のうちから身に付けられることにメリットを感じる意見が多くみられました。

 ◆明確な「採用方針」が重要
 採用企業側としては、アルバイト経験なども含め、筆記試験・面接などを通じて応募者の様々な側面を見ていく必要があります。
 しかし、採用活動を始める前に重要なことは、「自社がどのような会社なのか?」「自社はどのような方針の下に経営を行っているのか?」を改めて確認し、そして「自社にとってふさわしい人材」「自社の戦力になる人材」「自社が求めている人材」がどのような人なのかを明確にしておくことです。
 そのような方針もなしに闇雲に採用活動を続けてもうまくいかないでしょう。


「高額療養費制度」の見直し案

 ◆厚労省が見直し案を示す
 新聞報道によると、厚生労働省は、所得などに応じて医療費の患者負担分に上限を定める「高額療養費制度」の見直し案を社会保障審議会に示したそうです。
 これまでの月額上限に加え、年額上限の設定も検討されているようです。

 ◆「高額療養費制度」とは?
 医療費は患者の「3割負担」が原則ですが、医療費が月100万円を超えるようなこともあるため、一定額以上は保険給付でまかなう「高額療養費制度」があります。
 医療費の自己負担が一定額を超えた場合に超過分を払い戻す仕組みです。

 ◆課税世帯を3分割
 厚生労働省の見直し案では、800万円以下の課税世帯を3分割し、所得に対して医療費が重いとされる世帯の負担を軽減します。
 月8万100円の上限を、「年収300万円以下」の世帯で4万4,000円に、「年収300万円超~600万円未満」の世帯で6万2,000円に、「年収600万円以上」の世帯で8万円とします。
 また、月額上限とは別に、年額上限を設ける案も示しています。

 ◆年額上限の内容は?
 年額上限は、最も負担が重い上位所得者の場合が99万6,000円、一般所得者で「年収300万円超」の場合が50万1,000円、「年収300万円以下」の場合が37万8,000円、住民税非課税世帯の場合が25万9,000円となっています。
 これらの見直しを実施すると、医療給付費が2015年度時点で約3,600億円増えると試算されているため、厚生労働省は、外来患者から1回100円(低所得者は1回50円)とする窓口での追加負担を新たに徴収することで、財源を生み出す考えです。
 しかし、日本医師会などが強く反発しており、見直し案の実現には曲折も予想されます。また、高額療養費が増え続けた場合、保険料の引上げにもつながりかねません。
 今後も増加が予想される医療費をどのように見直していくのか、政府の対応に注目が集まっています。


地域での子育て支援に積極的な高齢男性が増加

 ◆定年後の活動として
 近頃、「イクメン」と呼ばれる育児に熱心な父親が注目される中、地域の子育て支援に積極的な高齢男性も増えているようです。
 定年後、「地域活動に貢献したい」と考えている男性にとって、彼らの取組みは参考になりそうです。

 ◆育児支援の会員組織が増加
 これらの高齢男性は「イクジイ」などとも呼ばれ、子育て中の親の支援や孫世代の育成に力を注いでおり、保育園の迎えや子どもの一時預かりなどを頼みたい親と、これらを支援したい人を結ぶ会員組織も増えています。
 会員は、会員組織から依頼があれば、時間の許す限り育児支援に関わっていきます。残業などで帰りが遅くなる親に代わって、保育園や学童保育施設に子どもを迎えに行き、親が引取りに来るまで自宅で預かったり、塾や習い事の場所まで送り届けたりしているそうです。

 ◆講座や講演会も実施
 上記のような事業を支援する東京の財団法人によると、2010年度の男性会員は3,535人で、2005年度に比べ約1,900人増えているそうです。提供会員に占める男性の比率は3.0%から4.2%に上がっています。
 あるNPO法人が開いた、孫との接し方や良い絵本の選び方・読み方などを専門家が指導する講座・講演会には200人以上の中高年男性が参加したそうです。

 ◆シニア世代の87%が「支援に意欲」
 調査会社が実施した「子育てをめぐる世代間関係調査」の中で、地域の子育て支援への参加意向を50~70代の男女780人に尋ねたところ、87%は何らかの支援意思があると回答したそうです。
 ただし、希望する誰もが「イクジイ」になれるわけではありません。活動には根気が必要であり、子どもが好きでないと務まりません。自分が向いているのかを確かめたうえで、除々に活動範囲を広げていくことが必要なようです。


「個人賠償責任保険」に加入していますか?

 ◆日常生活で思わぬことが…
 日々の暮らしの中で、思わぬ形で人にケガをさせたり、物を壊してしまったりした場合に、「個人賠償責任保険」に加入していれば、保険金により相手方に与えた損害を賠償することができます。
 以下では、主な補償の例や加入時の注意点をまとめました。

 ◆補償の対象となるケースは?
 この保険の補償の対象となる主なケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
 ・自転車で人をはねケガをさせた
 ・子どもが友達と喧嘩をしてケガをさせた
 ・飼い犬が通行人に噛みついた
 ・マンションで階下に水漏れを起こした
 ・買物中の店で高価な商品を壊した
 上記のような過失による事故は補償の対象となりますが、同居の親族に対する損害賠償や他人から借りた物を壊した場合の損害賠償、故意に起こした事故などは対象外です。
 また、通勤途中の事故はカバーされますが、仕事中の事故はカバーされません。

 ◆「個人賠償責任保険」の特徴
 この「個人賠償責任保険」は、契約者本人だけでなく、配偶者や同居の親族、1人暮らしの学生など生計を同じくする別居の未婚の子もカバーできるのが特徴です。
 加入方法は、損害保険会社の販売する「自動車保険」「火災保険」「傷害保険」のいずれかに加入したうえで、特約として上乗せを行うのが一般的なようです。

 ◆加入時のチェックポイント
 チェックポイントとして、以下のことが挙げられます。
 (1)示談交渉代行サービスが付いているか
 (2)重複契約になっていないか
 (3)自動車の売却や引越しなどで保険が途切れていないか
 (4)海外で賠償責任を負った場合でも補償されるか
 特約の保険料は、最大保険金額1億円(または無制限)であっても、年額1,000円~2,000円程度で済むようです。


企業も苦慮する「待機児童対策」

 ◆厚生労働省の調査
 認可保育園への入園を希望しながら、定員がいっぱいで入れない待機児童が全国で2万5,566人(2011年4月1日時点)に上ることが、厚生労働省の調査で明らかになりました。
 預け先が決まらなければ職場への復帰もままならず、待機児童対策に企業も苦慮しているようです。

 ◆事業所内に託児所を設置
 待機児童数は4年ぶりに減少したとはいえ、相変わらず高い水準となっており、企業は対策に追われています。
 某大手企業では、本社に隣接する事業所内託児所を開設したそうです。朝7時半から夜8時まで、0歳から小学校入学までの乳幼児を最大で19人預かることができます。
 この企業では、育児休業取得者に調査を行ったところ、約23%の社員が保育園に入れないなどの理由で育児休業期間を延長しており、復帰してくるはずの社員が復帰できず、職場全体の人員異動計画を練り直さざるを得ないケースもあったようです。

 ◆入園のコツを社員に助言
 某都市銀行が育児休業中の女性社員を対象に開講した復帰サポート講座は、育児休業取得者が円滑に職場復帰できるよう、会社の状況などを伝える目的で始まりましたが、最近では、保育園への入園指導も重要な役割となっているそうです。
 状況を個別に聞き取り、入園へのコツを助言しているそうです。

 ◆子育てをしやすい社会の実現へ
 待機児童の状況は毎年変わり、年度内や翌年4月に新設される認可保育園もあるため、自治体の保育窓口で地域の実情を知ることが対策の第一歩です。
 また、希望する認可保育園に入れなかったとき、他にどのような保育サービスを利用できるかを事前に調べておけば慌てずに済みます。
 仕事と子育てを両立できる環境を作ることは企業の責任ですが、「待機児童対策」は本来、企業の役割ではありません。しかし、行政に任せるだけでなく、企業もその役割を果たしていかなければ、子育てをしやすい社会は実現しないのではないでしょうか。


どうなる?「専業主婦」の年金制度見直し

 ◆2012年にも見直しを実施
 厚生労働省は、2012年にも専業主婦の年金制度を見直す方針を示しています。
 具体的には、会社員の厚生年金と公務員の共済年金に関して、夫の保険料の半額を妻が負担したとみなし、夫と妻で年金を2等分して給付します。
 ただ、夫婦合算の保険料負担や年金受取額は変わらないため、厚生年金の加入者全体で専業主婦の分を負担することは変わらないようです。

 ◆「不公平」との批判に対応
 会社員や公務員を夫に持つ専業主婦は「第3号被保険者」と呼ばれ、保険料を支払わなくても基礎年金を受け取ることができます。このため、保険料を支払っている自営業者の妻などから「不公平だ」との批判を受けています。
 今回の見直し案は、婚姻期間中に夫が支払った保険料は夫婦が一緒に支払ったとみなし、主婦も保険料を納付したと位置付けることで不公平感を和らげるのがねらいで、他にも主婦に別途の保険料負担を求める、夫が追加で保険料を支払うなどの案も出ています。

 ◆加入者全体で専業主婦の分を負担
 専業主婦が基礎年金を受け取ることができるのは、夫の他に、働く女性や単身者など厚生年金加入者全体で専業主婦の分を負担しているためです。
 今回の見直し案では、負担と給付の総額を変えないため、厚生年金の加入者全体で専業主婦の分を負担する実態は変わらないようです。

 ◆遺族年金はどうなるか
 現行制度においては、妻は夫が死亡した場合に「遺族年金」を受け取ることができますが、見直し案の導入後は自分の分だけしか受け取れなくなり、給付額は夫が生きていた場合の50%になってしまうそうです。
 夫は妻の分の保険料を支払っていますが、妻が先に死亡した場合、給付額は自分の分だけになり、実質的に減ってしまう可能性があります。


いま流行の「朝活」って何?

 ◆出勤前に勉強会などへ参加
 会社への出勤前に勉強会などに参加する「朝活」が若い世代を中心に広がっているようです。
 インターネット交流サイト(SNS)などを利用して業種や世代を超えた参加者と出会って人脈を作る「朝活」は、一種の自己投資として注目されています。

 ◆「SNS」が出会いの場
 インターネット交流サイト(SNS)は2000年代の中頃から普及し、人脈を広げたいビジネスパーソンなどに活用されています。
 大手交流サイトには、「朝活」で検索できるコミュニティが約150もあり、呼びかけ人が場所・時間・活動内容などを掲示し、希望者が参加意思を書き込む仕組みで、最も大きいコミュニティには2,000人以上が参加しているとのことです。

 ◆人脈作りやスキルアップに効果的
 ある人材コンサルタントは「時間の投資計画に敏感になることがキャリアアップの秘訣」と話しています。
 バブル期までは、接待や社内飲み会が全盛で、ビジネスパーソンの多くは「夜型」でしたが、バブル崩壊後は宴席が減り、どちらかというと「朝方」に変化していきました。
 また、不況で人員削減が進み、ビジネスパーソンの間で自己を守るための「自己投資」が本格化してきました。
 さらに、「SNS」の普及により、同じ志を持つ人々が「朝活」に集う環境が整いつつあるようです。

 ◆幅広い「朝活」のテーマ
 この「朝活」の効能は「気持ちがいい、楽しい、ためになる」の3つだと言われており、交流系、学習系、健康系、趣味系、仕事系、情報収集系、奉仕系に分類されます。
 現在、自分の定年まで会社が存続するのかどうかも不透明な時代です。常に必要とされる人材であり続け、何かあったときには助け合える人間関係を作るため、この「朝活」を始める人も多いようです。

2011/11/04

11月の事務所便り

社員が行う「副業」をどう考える?

 ◆問題点の多い「副業」
 リーマンショック以降の景気低迷によって残業時間が少なくなり、給与の手取りが減少した分を補うために、数年前から「副業」を行う人が増えていました。
 しかし、社員が本業の仕事とは別に副業を行う場合には、「通算して長時間労働になり本業に支障をきたす可能性がある」、「副業先で労災が起こった場合にどう対処するか」など、様々なリスクがあります。

 ◆会社として認めるか否かを適切に判断
 合理的な理由がある場合には、会社として社員の副業を認めない(副業禁止)とすることも可能ですが、認める場合の選択肢としては、(1)許可制とする、(2)届出制とする、(3)完全解禁とする、ことなどが考えられます。
 上記のいずれを選択するにしても、就業規則などを整備して、副業を認める場合の基準(ルール)を明確にしておく必要があるでしょう。

 ◆副業を認める場合に注意すべきこと
 仮に社員の副業を認める場合には、リスク管理の観点から、「本業に支障が生じてしまうほど長時間労働となるような副業は認めない」ことや、「自社の業務内容と競合するライバル会社での副業は認めない」ことなどが必要です。

 ◆増加傾向に歯止め
 近年は増加傾向にあった副業ですが、この傾向にも歯止めがかかっているようです。
 株式会社インテリジェンスが今年の3月に実施した「副業に関するアンケート調査」の結果によれば、25~39歳の正社員で副業をしている人は20.1%で、2009年(30.8%)の約3分の2に減少しています。
 同社では、副業が減少した原因として、「景気の回復により残業が解禁され、副業をする時間がなくなった」ことなどが挙げられると指摘しています。
 なお、副業による収入は「平均4.3万円」との結果でした。


中小企業にも大きな影響を与えている「円高」の進行

 ◆経済産業省の調査結果から
 現在、企業の想定レートを上回るほどの円高が続いており、日本経済に大きな影響を与えていますが、経済産業省では、今年8月に実施した「現下の円高が産業に与える影響に関する調査」の結果を発表しました。
 この調査には、大企業製造業61社、中小企業製造業83社、非製造業10社が回答していますが、以下では主に中小企業への影響について見ていきます。

 ◆「円高」の中小企業への影響
 上記の調査結果から、円高の中小企業への影響は次のように分析されています。
 ・現在の円高水準では、減益となる企業が7割強に上り、半年間継続した場合には減益を予想す     る企業が8割を超える。
 ・主な減益の原因として、「値下げ要請」、「他国企業との競争激化」等が挙げられている。
 ・現在の円高水準での対応策としては、「経営努力等によるコスト削減」や「取引の円建て化」で対応を考える企業が多いが、為替水準が継続した場合は「海外生産比率の増加」を検討する企業が増える。
 ・外国から海外進出の誘致を受けている企業もある。国別では中国が多く、アジアを中心に日本企業への働きかけがある。

 ◆助成金の支給要件緩和
 厚生労働省では、円高の進行に対応するため、今月上旬に「雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)」の支給要件緩和を発表しました。
 10月7日から、円高に応じて雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)を利用する場合、「最近3カ月の事業活動が縮小していること」としている支給要件について、確認期間を「3カ月」から「1カ月」に短縮するとともに、「最近1カ月の事業活動が縮小する見込み」であっても、利用手続の開始を可能としました。


休日数の多い業種・少ない業種は?
 
 ◆25~39歳の800人が調査に回答
 株式会社インテリジェンスが運営する転職サービス「DODA(デューダ)」では、「休日に関するアンケート調査」(25~39歳のビジネスパーソン800人が回答)を行い、その結果が発表されました。
 
 ◆業種による休日数の違い
 この調査では、はじめに「有給休暇を除いた年間休日数」を尋ねましたが、全体平均は「115日」でした。
 業種別では次の通りとなっています。
 ・休日数が多い業種…(1)「金融」122日、(2)「メーカー」121日(3)「IT・通信・インターネット」121日
 ・休日数が少ない業種…(1)「小売・外食」104日、(2)「建設・不動産」107日、(3)「メディカル」110日
 この調査では、「BtoB」ビジネスを展開する業種、土日・祝日休業が多い業種では休日数が多く、「BtoC」ビジネスを展開し、顧客ニーズに合わせて年中無休や土日・祝日に営業している業種では休日数が少ないと分析しています。

 ◆厚生労働省の調査では
 なお、厚生労働省の調査(平成22年就労条件総合調査)では年間休日総数の1企業平均は「106.4日」(前年105.6日)、労働者1人平均は「113.4日」(同112.6日)となっています。
 企業規模別では1,000人以上が116.4日(同116.1日)、300~999人が113.4日(同112.4日)、100~299人が109.9日(同109.8日)、30~99人が104.5日(同103.5日)となっています。
 産業別では、「情報通信業」が123.5日(同121.2日)で最多、「宿泊業・飲食サービス業」が91.0日(同91.9日)で最少でした。


「確定拠出年金」導入企業が増加傾向

 ◆株価低迷、積立不足への対策として
 企業型確定拠出年金(日本版401k)の加入者数が400万人を突破したそうです。この数字は、会社員の約8分の1に相当します。
 加入者増加の背景には、長期的な株価の低迷、企業年金への資金拠出負担を抑えて積立不足を解消したい企業の考えがあるようです。
 2012年3月に控えた「税制適格退職年金」の廃止を前に確定拠出年金への移行を実施する企業も多く、加入事業者数は1万5,117社(今年7月末時点)と増加傾向にあります。今後導入する企業も増加する見込みだと言われています。

 ◆導入から10年が経過
 確定拠出年金は2001年10月に日本に導入されました。加入者自身が運用手段を選択して、運用実績に応じて年金の受給額が変わる仕組みとなっており、「企業型」(約400万人が加入)と「個人型」(約13万人が加入)があります。
 上記の「企業型」の場合、掛金を拠出できるのはこれまでは企業だけでしたが、2012年からは個人による上乗せ拠出も可能となります。

 ◆導入企業に求められる「投資教育」
 確定拠出年金では加入者自身が運用の責任を負うため、企業には加入者(従業員)に「投資教育」を行うことが求められます。しかし、企業年金連合会の調査によると、継続的な投資教育を実施している確定拠出年金の導入企業は約6割に過ぎません。
 運用難による積立不足が発生しがちな「確定給付企業年金」からの移行も多く、「運用リスクを企業が従業員に押し付けている」などと批判されることも多い企業型確定拠出年金ですが、導入企業には加入者(従業員)への十分なフォローが求められます。


厚生年金の適用拡大でどうなる?

 ◆「一体改革」を具体化へ
 厚生労働省は、政府の「社会保障と税の一体改革」の具体化に向けた作業を進めています。非正社員を厚生年金に加入させるために、労働時間や収入の条件を見直す方針です。

 ◆年収基準を引下げへ
 「第3号被保険者」(夫が会社員や公務員である専業主婦)と認定する年収の基準を、現行(130万円)から引き下げる考えです。厚生年金保険料の算定に使う標準報酬の下限(月額9万8,000円)を下げることも検討しているようです。
 現在、労働者の4割をも非正社員が占めるようになり、年金制度に歪みが生じています。非正社員が加入する国民年金の加入対象者としては、主に定年がない自営業者などが想定されており、厚生年金に比べて手取りが少額です。

 ◆厚生労働省による試算結果
 しかし、厚生年金の適用拡大に伴い、企業の負担は増えます。
 厚生労働省が2007年に実施した試算結果によれば、加入条件(労働時間)を「週30時間以上」から「週20時間以上」に拡大すると新たに約310万人が厚生年金の加入対象となり、企業の負担が年間約3,400億円も増えるそうです。

 ◆負担増となる主婦から反発も
 厚生労働省が過去に実施した短時間労働者を対象とするアンケート調査によれば、年収130万円を超えると保険料の支払義務が発生するために「労働時間を減らしている」と回答した人が25%にも上ったそうです。
 現行の年金制度が働き方を制限していると言えますが、差し引きで負担増となる主婦層などから反発が出ることも予想されています。


「サービス付き高齢者向け住宅」の特徴は?

 ◆法改正により新サービススタート
 「高齢者住まい法」の改正を受けて、「サービス付き高齢者向け住宅」(高齢者向けの賃貸住宅制度)の登録が10月から始まりました。
 安否確認や生活相談などのサービス提供を義務付けたのが特徴であり、契約者保護の規定も充実させる内容となっています。

 ◆どのようなサービスを受けられるのか?
 「サービス付き高齢者向け住宅」には、次のような特徴があります。
 まず設備面では、部屋の床面積を原則25平方メートル以上のバリアフリー構造とし、キッチン・水洗トイレ・収納・洗面台・浴室を備えることが必要です。サービス面では、日中はヘルパー2級以上の資格を持った職員が常駐し、入居者の安否確認と生活相談にあたることを義務付けています。
 また、費用面については、入居者が事業者に支払うのは敷金・家賃・サービスの対価に限定しています。
 この他、前払金・返還金額の算定方法の明示、契約日から90日以内の解約の場合の前払金の一部返還、事業者の一方的都合(入居者の長期入院など)による変更や解約禁止も義務付けています。

 ◆サービス内容に注意が必要
 しかし、提供されるサービスの中身については注意が必要です。法律で義務付けられているのは「安否確認」と「生活相談」のみであり、訪問介護や訪問診療などは原則として外部サービスを利用することになるため、この点については通常の在宅介護と変わりありません。
 また、生活相談については、「行政や地域の情報提供やテレビのリモコンの使い方などこまごまとした内容」に留まることが多くあり、どのような上乗せサービスが提供されているのか、相談費用は居住費などに含まれるのかなど、事前に確認する必要があります。

 ◆慎重な選択が求められる「高齢期の住まい」
 高齢期の住まいは、所管官庁や根拠となる法律の違いにより、種類が多くてわかりにくくなっています。名称のみにこだわらず、サービスの実態・費用・立地・入居者の生活スタイルなどを目安に、複数の住宅や施設を見学して比較するなどして慎重に選ぶことが必要です。


社員の「うつ病」に備えるには?

 ◆職場として必要な知識は?
 職場でメンタル面の不調を訴える人が増えていますが、中でも「うつ病」の患者数は特に増えており、非常に身近な病気となりつつあります。
 うつ病は、身体の病気とは異なる性質があるため、職場としても知識を備えておくことが重要です。

 ◆うつ病の基準とかかりやすい人の特徴
 うつ病は、医学的に広く使われる基準では、「抑うつ気分(気分の落込み)」か「意欲の低下」のどちらか、または両方が2週間以上続き、さらに同時期に睡眠や食欲の乱れ、思考力の減退などがある場合に、その可能性が高いとされています。
 うつ病(いわゆる「新型うつ病」は除く)になりやすい人は、一般的には責任感が強く、無理をして頑張りがちだと言われています。また、職場の同僚や上司から見ると、仕事でミスが増える、外見を気にしなくなるといった兆候が表れることが多いようです。

 ◆公的支援策の活用も
 うつ病と診断された場合、一般的には薬の服用と休養を中心とした治療を受けることになります。治療期間は病気の程度にもよりますが、数カ月から1年以上に及ぶことも多くあります。
 治療には時間がかかり医療費など経済的な負担が大きくなりがちですので、公的な支援策(自立支援医療制度、高額療養費等)の活用が有効です。

 ◆復職について「焦り」は禁物
 うつ病による休職者にとって気になるのが「職場復帰」の問題です。多くの人は早期復職を希望しますが、復職をきっかけに再発するケースも目立ちます。企業側でも、休職者を受け入れるためのルール(規定)や復職支援制度を整備する例は増えつつあります。
 復職について明確なルールを定めることで、再発を防止し、受け入れる職場での対応もスムーズになります。また、慣れた職場で短時間就労する「慣らし期間」から始め、体調や仕事ぶりについて産業医・上司・人事担当者らが相談しながら、徐々に元の仕事に戻すやり方もあります。
 うつ病は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら回復することが多いため、主治医が復職を認めた場合であっても、完全には回復しないことも多くあります。患者にも職場にも、復職に焦りは禁物と言えます。


財政が苦しい健康保険組合の現状

 ◆8割弱の健保組合は赤字
 主に大企業の社員やその家族が加入する健康保険組合(健保組合)の財政難が厳しさを増しているようです。
 健保組合全体の赤字額は、過去最悪だった2009年度の5,200億円に続き2010年度も4,100億円に高止まりしています。約3割の健保組合が保険料を引き上げたにもかかわらず、8割弱が赤字となっています。

 ◆ピーク時には1,800組合突破
 企業が独自に健保組合を設立し始めたのは高度成長期であり、当時は「政府管掌健康保険」(現在は「協会けんぽ」)に加入するよりも保険料率が低く、社員に独自給付を提供できるメリットがありました。
 ピーク時(1992年)には1,800組合を突破しましたが、その後、高齢化と景気低迷などにより財政が悪化し、約400組合は解散などで消滅しています。

 ◆引上げ傾向にある保険料率
 しかし最近、企業が健保組合を持つメリットは少なくなりつつあります。平均保険料率は標準報酬月額の7%台であり、協会けんぽの保険料率(約9.5%)よりは低くなっていますが、2割強以上は9%以上となっています。
 2011年度に日本航空(JAL)健保組合が保険料率を6.7%から9.6%に大幅に引き上げるなど、料率が協会けんぽを超えているところもあります。

 ◆抜本的改革が必要な時期に
 なお、健保組合が他制度に払う支援金が保険料に占める割合は、1999年度に初めて3割を超え、現在は約4割にまで拡大しています。政府の「社会保障と税の一体改革」においても、健保組合については現行制度を前提としており、高齢者の医療費が増加して財源が足りなくなれば機械的に健保組合からの支援金を増やして賄う仕組みは変わらないようです。
 負担に耐えられずに健保組合を解散する企業が増えていくことが予想される中、現役世代の負担増を抑えるためには、現行制度を抜本的に改革する必要があるのではないでしょうか。


40代…育児と介護が重なってしまったら

 ◆会社内で責任が増す世代
 一般的に「40代」は職場での仕事に責任が増す世代ですが、子供がまだ小さく育児に時間をとられ、さらに親の介護が必要となったようなケースでは、一気に不安定な状況に陥りがちです。
 共働きの世帯も多い中、社員にとってはどのようにやりくりするかが大きな問題ですが、会社による支援も重要です。

 ◆重くのしかかる介護の負担
 厚生労働省の「介護保険事業状況報告」によれば、全国の65歳以上の「要介護・要支援認定者」は約462万人(暫定値。2011年4月末時点)です。
 また、2010年の「国民生活基礎調査」によれば、要介護・要支援者と同居している主な介護者の年齢層は50~60代が多く、40代は8.3%と割合としては多くありません。しかしながら上の年代と比べると子供が小さいケースも多いだけに、いざ介護を行わなければならなくなったときの負担は決して軽くありません。
 また、「人口動態統計」によれば、35~44歳の母親から生まれた子供の数は2010年に25万4,710人で、1985年時点と比べると約2.5倍となっています。10歳以下の子供を持つ40代女性は急増しているのです。

 ◆介護保険料の支払いも始まる
 40歳からは介護保険料の支払いも始まりますので、40代は自分も当事者であると考え、介護の不安を不安のままにとどめず、一歩踏み出さなければならない時期です。
 両親に「在宅」か「施設入所」かの希望を聞いたり、親族と介護の分担などについて話し合ったり、将来に備えて会社に相談もし、介護で使える制度や支援の確認をすることも必要です。

 ◆社員が相談しやすい環境整備を
 共働きの家庭において育児・介護が重なった場合、やむなく離職や転職を選択する人もいます。しかし、40代における収入減は人生設計に大きな影響を及ぼすため、会社を辞める判断をする前に会社に相談するのが良策です。
 会社にとっても有能な人材の流出は大きな損失であるため、社員からの相談に応じられるよう環境を整備することも必要と言えるでしょう。


異業種から「デイサービス」事業への参入

 ◆本業でのノウハウを活用
 高齢者に食事や入浴を日帰りで提供する「デイサービス」に、異業種の中小企業が相次いで参入しているようです。有料老人ホームなどの介護施設と比較して初期投資が少なく、人員配置の基準も比較的緩いというのが、その理由のようです。
 本業で培ったノウハウをデイサービスでも活用することで独自色を出し、大手業者に対抗しようとしています。

 ◆非常に高い伸び率
 厚生労働省の発表によれば、2011年度に介護サービス市場は約8.3兆円に達する見通しで、この数字は介護保険制度が始まった2000年度の2.3倍に相当します。
 サービス内容は「老人ホーム」や「訪問介護」など多岐にわたりますが、自宅暮らしの高齢者向けでは「デイサービス」の伸び率が高く、「訪問介護」の2009年度における市場規模は2006年度に比べ2.6%増にとどまったのに対し、「デイサービス」は33%増となっています。

 ◆中小企業が続々参入
 市場拡大要因の1つが「中小企業の参入」です。老人ホームは開設までに数億円かかると言われていますが、デイサービスの場合は初期投資が1,000万円程度で済み、また、1カ所でまとめてサービスを提供するため、訪問介護に比べて収益性が高くなっています。
 食事・入浴・レクリエーションなどを提供するといったデイサービスの一般的なサービス内容や開設までのプロセスを標準化することで、出店コストや運営費を抑制し、フランチャイズチェーン展開する事業者も出てきているようです。

 ◆独自のサービス提供も
 しかし、供給過多となった都市部では、参入はしたものの閉鎖するケースも出始めています。このため、独自サービスにより利用者を増やそうとする動きも広がっています。
 独自サービスとして今注目されているのが、食品の宅配や家事代行などです。介護報酬の引上げが見込まれにくい中、低価格で受けられるサービスを利用者に提供することで、収益の安定や新規顧客の獲得につなげたいと考えているようです。

2011/10/01

10月の事務所便り

「節電期間」の終了で企業の対応は?


 ◆9月9日に制限令が解除
 政府が東北電力と東京電力の管内で適用していた「電力使用制限令」が、9月9日に解除されました。制限令が発出されたのは実に37年ぶりのことであり、期間中、企業には原則として15%の節電義務が課され、大きな影響を受けた企業も少なくないでしょう。
 この制限令の解除を受け、各企業はどのように対応しているのでしょうか?

 ◆3パターンの対応
 制限令の解除を受けた企業の対応としては、主に下記の3パターンがあるようです。
(1)通常の状態に復帰する例
 ・工場における夜間操業を通常操業に復帰(製造業)
 ・電気を落としていた売場の照明を震災前と同様に(百貨店)
(2)節電対策を継続する例
 ・作業スペース削減などによる節電対策を継続(製造業)
 ・自宅や外出先でのテレワークを継続(機器メーカー)
(3)節電対策を強化させる例
 ・節電型の自動販売機の設置を拡大(飲料メーカー)
 ・店舗内に太陽光発電や蓄電池を導入(薬局)

 ◆サマータイム制のメリットは?
 上記からもわかる通り、「省エネ」や「経費節減」のため、節電対策を継続する企業は意外に多いようです。
 また、始業時間と終業時間を早める「サマータイム制」を導入した企業のうち、今秋以降も継続を検討するところがあるようです。
 その理由として、「仕事の密度が高まることにより、残業の削減ができた」ことを挙げる企業の担当者がいました。また、社員にとっても「帰宅後に家族と過ごす時間が増えた」「自分の時間が確保でき、自己研鑽の時間を多く持つことができた」といった大きなメリットがあるようです。


トラブルが増加している「定年後の再雇用」

 ◆多岐にわたるトラブル内容
 定年後の再雇用(継続雇用)をめぐるトラブルが増えているようです。
 トラブルの内容は「再雇用基準の有効性」「再雇用の有無」「再雇用の更新基準」「再雇用後の雇止め」など、多岐にわたります。

 ◆65歳までの雇用確保措置
 2006年に施行された「改正高年齢者雇用安定法」では、従業員の65歳までの雇用確保措置について
(1)定年制の廃止
(2)定年年齢の引上げ
(3)継続雇用制度の導入
のいずれかを義務化(ただし暫定措置等あり)しました。
 そして多くの企業では、(3)の継続雇用制度のうち「再雇用制度」の導入を選択しているのが実状です。

 ◆裁判例は「労働者有利」の傾向に
 前記の通り、「再雇用基準の有効性」「再雇用の有無」「再雇用の更新基準」「再雇用後の雇止め」をめぐるトラブルが増えていますが、近年、労働者側に有利な裁判所の判決が相次いで出されています。
 昨年2月、再雇用制度の導入に必要な労使協定が存在しなかったことなどから、「制度導入を定める就業規則は手続要件を欠いており無効」と判断され、労働者としての地位が確認され、賃金の支払いが会社側に命じられたケースがありました(横浜地裁川崎支部)。
 昨年3月には、会社側の一方的な再雇用の拒否が違法であると判断され、会社側に550万円の支払いが命じられています(札幌地裁)。

 ◆気持ちよく働いてもらうために
 再雇用制度を導入する場合、法律に違反するものと判断されないよう十分な注意を払うことは当然ですが、それとともに、高年齢者の方に気持ち良く働いてもらいための制度設計・賃金設計や環境づくりも必要となります。


若手社員が感じている「仕事の厳しさ」

 ◆入社1~2年目の社会人を対象にアンケート調査
 レジェンダ・コーポレーション株式会社では、今年7月に「若手社員の意識/実態調査」を実施し、その結果が発表されました。
 2010年4月に新卒で入社した「2年目の社会人」と2011年4月に新卒で入社した「1年目の社会人」を対象に調査を行い、699名が回答しています。
 
 ◆3人に2人が「仕事が厳しい」
 まず、「仕事が厳しいと感じるか」との質問には、65.1%が「感じる」(「毎日感じる」「時々感じる」のいずれか)と回答しており、約3 人に2人が仕事の厳しさを感じているようです。
 入社年数で比較してみると、入社1年目の社員よりも入社2年目の社員のほうが、「仕事が厳しい」と感じる割合が3.8ポイント高い結果となりました。

 ◆多くの若手社員が「知識不足」「能力不足」を自覚
 次に「仕事が厳しいと感じることはどんなことか」(複数回答)との質問に対しては、上位5つは次の通りの結果となりました。
 (1)「自分の知識不足」(63.8%)
 (2)「自分の能力不足」(55.1%)
 (3)「仕事の質の追求」(30.2%)
 (4)「仕事の多さ」(29.3%)
 (5)「仕事の進め方の細かさ」(27.9%)
 以下、「対人関係」(27.6%)、「決まりごと・ルール」(27.6%)、「勤務時間の長さ」(19.0%)などと続いていますが、自己の知識・能力不足を自覚している人が多いようです。

 ◆厳しい環境が若手社員の成長に
 厳しい仕事環境に置かれ、そして試行錯誤しながら様々な経験を積んでいくことで、若手社員は伸びていきます。
 時には厳しく接し、時にはフォローをしてあげながら、若手社員の成長を見守っていきましょう。


違法と判断される不当な「異動・配転」はどのようなものか?

 ◆事件の概要
 先日、上司の行為(取引先の社員を引き抜こうとしていた行為)を社内にある「コンプライアンス窓口」に内部通報したことにより不当な異動(まったく経験のない部署への配置転換)を命じられたとして、現役社員(原告)が勤務先(被告)に異動の無効確認と損害賠償(1,000万円)を求めていた訴訟の控訴審判決がありました。
 東京高裁は「業務とは無関係に異動を命じており、人事権の濫用に該当する」として、原告敗訴とした1審判決を破棄し、異動は無効であるとし、会社と上司に220万円の賠償を命じました。

 ◆不当・違法と判断されるケース
 人事権は広く会社に認められていますが、上記のケースの他、どのような人事異動・配置転換が不当・違法であると判断されるのでしょうか。
 過去の裁判例では、
(1)業務上の必要性が存在しない場合
(2)仮に必要性が存在したとしても他の不当な動機・目的による場合
(3)労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合
 等、特段の事情の存する場合においては、人事権の濫用に該当するとしています。
 なお、(2)でいう「不当な動機・目的」とは、社員を退職に追い込む目的,上司による嫌がらせ目的等が考えられます。

 ◆業務の系統を異にする職種への異動
 この他、業務の系統を異にする職種への異動については、業務上の特段の必要性、当該従業員を異動させるべき特段の合理性があり、これらの点につき説明が十分になされた場合か、本人が特に同意した場合を除いては、会社は一方的に異動を命ずることはできないとした裁判例もあります。
 個々の裁判例は背景にそれぞれ特殊な事情があり、他の同様のケースにもすべて当てはまるわけではありませんが、会社としては、人事異動・配置転換が不当・違法なものと判断されないよう注意する必要があるでしょう。


これからどう変わる?「子ども手当」

 ◆支給額の変更
 現行の子ども手当は、中学生までの子ども1人当たり一律月額1万3,000円ですが、10月以降、3歳未満は15,000円、3歳から小学校卒業までは1万円(第3子以降は15,000円)、中学生は1万円となります。
 
 ◆支給要件を厳格化
 また、子どもの国内居住など支給要件を厳格化することに伴い、すべての対象世帯に市町村への申請を求めるとしています。これまで、新規の受給者は申請を行う必要がありましたが、2009年度まで児童手当を受給していた人は免除されていました。
 申請は10月以降、保護者と子どもの氏名、年齢、養育状況などを記した書面を市町村窓口に提出することになります。未申請の人には支給されませんが、経過措置として来年3月までに手続きを行えば遡って支給されます。
 この他、保護者の同意を条件に給食費を差し引いたうえで手当を支給する仕組み、滞納が問題になっている保育料を手当から天引きできる仕組みの導入も検討されています。

 ◆高所得者は負担増へ
 来年6月分からは新児童手当に所得制限が課され、年収960万円程度を超す世帯への支給は打ち切られます。「児童手当」から「子ども手当」に制度変更した際に見直した扶養控除の縮小はそのままで、0歳から15歳までの年少扶養親族にかかる扶養控除が、今後は所得税・住民税ともに廃止となるため、実質増税となります。

 ◆控除縮小による影響
 働く夫、専業主婦の妻、子ども2人の家庭を想定して、旧制度である児童手当との増減を試算したところ、新制度で恩恵を受けるのは年収500万円程度の世帯だそうです。
 年収500万円以上1,000万円未満程度の家庭では、子どもの年齢や数によっては負担が増えることもあります。年収1000万円の世帯では、新児童手当が受け取れないうえ、控除縮小に伴う所得税と住民税の増額が重くのしかかることになります。


「在宅勤務制度」導入とワーク・ライフ・バランス

 ◆「節電対策」で導入が増加
 節電対策の一環として「在宅勤務制度」を導入した企業が増えましたが、制度導入を契機に「ワーク・ライフ・バランス実現」や「危機管理対策」に繋げようとする企業も多いようです。

 ◆導入事例とメリット
 大手損害保険会社では、本社の社員約3,000人のうち裁量労働制で働く社員約1,500人を対象に、夏季限定で導入しました。また、人事部や経営企画部などでも、1人あたり月1~2回限定で順番に在宅勤務を行ったそうです。この他、システム系の部署ではこの夏ほとんどが在宅勤務という人もいたようです。
 制度導入の大きなメリットの1つに、通勤時間分を家族との時間に充てられることが挙げられます。子供を初めて幼稚園に送った男性は「妻の苦労がわかった」と言います。

 ◆労務管理の難しさ
 民間調査会社が夏季電力の使用削減量15%以上を目指す企業(約4,000社)を対象に実施した調査によれば、節電対策として在宅勤務制度を導入した企業は約60社だったそうです。
 労働時間管理などの労務管理の難しさもあり、二の足を踏む企業が多かったのですが、導入した企業では「仕事に集中できる」「通勤ストレスから解放される」など、前向きな意見が多く聞かれました。

 ◆効果的な制度活用
 企業の在宅勤務制度導入に関する指導を行う会社では「震災をきっかけにワーク・ライフ・バランスを進める企業がより増える」と見ているようです。震災や計画停電に直面し、どこでも仕事ができる環境の強みを企業が痛感したためです。
 これまで在宅勤務制度は、主に育児等の理由で出社できない社員に対する福利厚生制度として位置付けられることが多かったようです。今後は育児だけでなく介護に直面する社員も増加するため、ワーク・ライフ・バランスを実現する手段として在宅勤務制度は有効なものとなるでしょう。


介護事業所における人手不足と安全衛生面の課題

 ◆「就業意識実態調査」から
 ヘルパーなどの介護従事者でつくる「日本介護クラフトユニオン」が発表した「2011年度 就業意識実態調査」の結果によると、介護職場においては、人手不足に加え、職員の安全衛生面(ケガや健康)なども大きな課題となっているようです。

 ◆職種で異なる人手不足感
 この調査によると、職種別の人手の不足感(「大いに不足している」「やや不足している」の合計)が高いのは、上から順に「訪問介護員」(月給制組合員で78.3%、時給制組合員で58.8%)や「施設系介護員(入所型)」(同71.7%、62.0%)、「施設系介護員(通所型)」(同61.5.%、57.3%)、「看護師」(同68.2%、55.4%)となっています。
 一方、「ケアマネージャー」(同54.8%、45.5%)や「生活相談員」(同49.6%、43.6%)、「事務職」(同54.9%、52.7%)、「サービス提供責任者」(同42.6%、39.4%)などでは「妥当である」との回答が多く、職種により大きな違いがあることがわかりました。

 ◆人手不足が長時間労働に繋がる
 人手不足が、職場での様々な問題の原因になっています。
 例えば、今年3月の労働日数および時間数を尋ねたところ、訪問系管理者で25日以上働いた人は27.5%で、労働時間数は平均199.42時間に上っています。
 人手不足が管理職員の長時間労働問題に繋がっている様子がわかります。

 ◆安全衛生面にも大きな課題
 仕事が原因の健康問題について、約40%の人が「ある」と回答をしています。症状別にみると、「腰痛」「肩こり」のほか、「イライラする」「頭痛」「よく眠れない」など、メンタル面の問題を抱えている人も多いようです。また、「感染症胃腸炎」や「疥癬」などの感染症を訴える人もいました。
 このように様々な問題を抱える介護事業所ですが、人手不足の抜本的な解決策が必要となっているようです。


出産後の女性社員に対する企業独自の支援策

 ◆法律上の支援だけでは不十分
 育児休業制度が定着し、女性にとって出産は仕事を続けるうえでの障害ではなくなりつつあります。
 しかし、仕事にも子育てにもやりがいを持って働き続けるには法律上の支援策だけでは十分とは言えません。企業にとって、出産後の女性社員の活用は重要な課題となっています。

 ◆休業期間が長期化の傾向
 厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、2010年度の女性の育休取得率(出産者に占める育休取得者の割合)は83.7%であり、出産をきっかけに退職する女性は減っているようです。
 休業期間は長期化の傾向にあり、63.1%の人は10カ月以上取得しており、産前産後休業を含めると1年以上は職場を離れてしまうため、企業では、キャリアの中断が復職後の働き方に影響しないよう工夫する必要があります。

 ◆懇親会で先輩からアドバイス
 育休取得者が増加し、5年前と比較して倍増した企業では、育休を気兼ねなく取れるようになった一方、復職後の働き方に悩むケースが出ています。そこで、無理なく仕事に復帰できるよう、育休中の社員のために、すでに職場復帰しているワーキングマザーを交えた懇親会を開いているそうです。
 
 ◆モチベーション維持のために
 その他、産前産後休業や育休で空白期間が生じたとしても、「ゼロ査定」とはせずに休業直前の評価を据え置くことで、昇給・昇格が遅れることを防止し、職場復帰後もモチベーションを維持して仕事に取り組んでもらえる仕組みをつくる企業もあるようです。


海外での公的な社会保障制度の活用

 ◆海外での制度活用
 仕事や旅行で海外に滞在しているときであっても、公的な社会保障制度を活用できます。病気やけがをした際に医療費の一部が払い戻される仕組みや、年金保険料を日本と外国で二重払いしなくてもよい仕組みがあるなど、使える制度は幅広くなっています。

 ◆海外滞在中の医療費をどうするか
 海外での病気やけがへの備えとしては、損害保険会社が取り扱う任意加入の「海外旅行保険」がありますが、公的保険にも「海外療養費支給制度」というものがあります。  
 これは、滞在先の医療機関において治療を受けた際の医療費を全額自己負担した後、加入する健康保険に所定の書類を提出申請し、支給が決定すれば申請者が指定する日本の金融口座に医療費の7~9割が振り込まれ、一部払い戻しされる制度です。
 ただし、この制度は実際に負担した医療費の大半を賄えるとは限らないため、医療費が高額になりがちな海外に渡航する際は、実際に支払った費用に基づいて補償する民間の海外旅行保険に加入し、一方で海外療養費の申請書類も事前に準備して、海外旅行保険の適用外の医療行為については同制度を活用することが有効です。

 ◆12カ国と「社会保障協定」締結
 転勤等で海外に赴任する際は、日本だけでなく現地の社会保障制度への加入が義務付けられており、両方に年金保険料を支払う必要があります。
 しかし、外国では加入期間が短く年金の受給資格を満たせないケースが多く、現地の保険料は掛捨てになってしまうことが多くなっています。
 そこで政府は、海外赴任者が日本と外国で二重に年金保険料を支払う問題などを解消するため、諸外国と「社会保障協定」を締結する動きを強めており、2011年1月現在、12カ国と締結済みです。

 ◆締結先によって内容は異なる
 社会保障協定が発効すると、日本か協定締結国のどちらか一方に年金保険料を支払うこととなります。働く予定の期間が5年以内の場合は原則として日本に保険料を納付し、逆に5年超の場合は日本での支払いが免除されます。
 ただし、社会保障協定の内容は協定締結国ごとに異なりますので、注意が必要です。


メンタルヘルス対策 強化の動き

 ◆増加する職場でのストレス
 厳しい労働環境で仕事のストレスが増え、精神疾患を抱える社員の対策が急務になっています。
 昨年、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が企業にメンタルヘルスに問題がある社員を抱えているかを調べたところ、57%が「いる」と答え、業種別では「医療・福祉」(77%)と「情報通信業」(73%)が全体の平均を大きく上回りました。

 ◆企業の様々な取組み
 通信大手の企業では、産業カウンセラーなどの資格を有する一般社員が悩みを聞く独自の「サポーター制度」を導入しました。
 社員からすれば産業医や専門カウンセラーは敷居が高く、気軽に相談しづらいこともありますが、このサポーターであれば敷居も低く、いわば“第二の上司”として社員のメンタル面での面倒をみます。結果として、社員数は増えても休職者数はほぼ横ばいにとどまっているそうです。
 最もストレス度が高いとされる医療・福祉業界のある大手企業でも、今年から外部委託のメンタルヘルスサービスの内容を切り替え、約9,000人の社員は無制限で電話でカウンセラーに相談できるようにしたそうです。

 ◆法改正の動向
 厚生労働省は現在、ストレスを抱える社員に対する面接指導などを義務付けるように法制化を準備しているようです。
 定期健康診断の際に「ひどく疲れた」「憂鬱だ」といった簡易なストレス症状の判断テストを全社員に実施し、かなりのストレスを抱えている状態であれば健康診断を行った医師が社員に知らせ、社員は事業者に医師の面接指導を希望します。
 これは従来、長時間労働者のみがストレス診断の対象だったものを、すべての労働者に広げるもので、早ければ今秋の国会に関連法案を提出するようです。

 ◆職場前提の課題を取り除く必要
 こういった面接指導などの取組みと合わせ、企業がメンタルヘルスの問題を未然に防ぐためには「働き過ぎ」「コミュニケーション不足」など、職場全体の課題を取り除く必要があるのではないでしょうか。

2011/08/29

9月の事務所便り

雇用を増やした企業に対する税制優遇措置

 ◆8月1日より受付開始
 税制改正法案が成立し、「雇用促進税制」が創設されました。この「雇用促進税制」は、雇用を増やすなど一定の条件を満たした企業に対する税制優遇措置であり、8月1日からハローワークでの受付が開始されています。
 なお、平成23年4月1日から8月31日までの間に事業年度を開始する事業主は、10月31日までに届出を行えばよいこととなっています。

 ◆従業員の増加1人あたり20万円の控除
 「雇用促進税制」は、ハローワークに「雇用促進計画」を提出し、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの期間内に始まるいずれかの事業年度において、1年間で10%以上かつ5人以上(中小企業は2人以上)従業員を増やすなどの要件を満たした事業主に対する税制優遇制度であり、従業員の増加1人あたり20万円の法人税の税額控除を受けることができます。
 なお、上記以外の要件は、次の通りです。
 ・青色申告書を提出する事業主であること
 ・適用年度とその前事業年度に事業主都合による離職者がいないこと
 ・適用年度における給与等の支給額が比較給与等支給額以上であること
 ・風俗営業等を営む事業主ではないこと

 ◆手続きの仕方
 まず、事業年度開始後2カ月以内に、目標の雇用増加数などを記載した「雇用促進計画」を作成し、ハローワークに提出します。
 次に、事業年度終了後2カ月以内(個人事業主については3月15日まで)に、ハローワークで雇用促進計画の達成状況の確認を求められます。
 そして、確認を受けた「雇用促進計画」の写しを確定申告書等に添付して、税務署に申告を行います。


無年金・低年金の発生を防止する「年金確保支援法」

 ◆3つの法律の一部改正
 8月初めに「年金確保支援法案」が国会で可決・成立しました。
 この法案は、(1)国民年金法の一部改正、(2)確定拠出年金法の一部改正、(3)厚生年金保険法の一部改正から成ります。

 ◆法案の趣旨
 この「年金確保支援法案」の趣旨は、次の通りとされています。
 「将来の無年金・低年金の発生を防止し、国民の高齢期における所得の確保をより一層支援する観点から、国民年金保険料の納付可能期間を延長することや、企業型確定拠出年金において加入資格年齢の引上げや加入者の掛金拠出を可能とする等の措置を行う」
 以下では、(1)~(3)のうち主な内容について解説します。

 ◆改正された主な内容
 (1)国民年金法の一部改正
 国民年金保険料の未納分を過去に遡って追納することのできる期間が、現行の「2年」から「10年」に延長されます。本人の希望により保険料を納付することで、その後の年金受給につなげることができるようにするためです。期間の延長は3年間の時限措置です。
 (2)確定拠出年金法の一部改正
 加入資格年齢が、現行の「60歳」から「65歳」に引き上げられます。企業の雇用状況に応じた柔軟な制度運営を可能とするためです。
 また、従業員拠出(マッチング拠出)を可能として所得控除の対象とします。そして、事業主による従業員に対する継続的投資教育の実施義務を明文化することにより、老後所得の確保に向けた従業員の自主努力を支援します。
 (3)厚生年金保険法の一部改正
 近年の経済情勢を踏まえ、母体企業の経営悪化等に伴い、財政状況が悪化した企業年金に関して措置が講じられます。


「夏季休暇」に関するアンケート調査結果から

 ◆20代の社会人を対象にアンケート調査
 株式会社毎日コミュニケーションズが運営するポータルサイト「COBS ONLINE(コブスオンライン)では、「社会人の夏休みに関する調査」を実施し、その結果が発表されました。
 調査期間は今年の6月7日~13日で、調査対象は20代の社会人男女(843人)となっています。

 ◆3割以上が「夏休みを取らない」
 まず、「あなたは今年、夏休みを取りますか?」との質問に対しては、68.6%の人が「取る」、31.4%の人が「取らない」と回答しました。
 上記の質問で「取る」と回答した人を対象とした「夏休みは何日取りますか?(取る予定ですか?)」との質問では、平均が「5.6日」で、昨年の「5.7日」とほぼ同様でした。
 また、「昨年に比べて、夏休みの日数に変化はありますか?」との質問では、74.2%の人が「昨年と同じ」と回答し、「昨年より増えた(増える)」と回答した人は10.2%でした。

 ◆「8月中旬」「予算1~3万円」
 夏休みを取る時期については、「8月中旬(お盆)」が52.6%で最多となり、夏休み期間中に使う予算については、「1万円以上~3万円未満」が27.0%で最多という結果でした。
 
 ◆夏休みをどのように過ごすか?
 夏休みの過ごし方については、次の通りの結果となりました。
 (1)帰省(29.4%)
 (2)国内旅行(21.8%)
 (3)海外旅行(13.8%)
 (4)自宅でのんびり(11.9%)
 1位の「帰省」と回答した人の理由としては、上位から「普段会えない家族と過ごしたいから」(64.1%)、「地元の友達と会うため」(15.3%)、「お墓参りのため」(12.3%)という結果でした。


「昼寝」の効果的活用で仕事能率アップ

 ◆睡眠時間の短い「働く日本人」
 一般的に、「働く日本人は睡眠時間が短い」と言われています。
 以前に味の素株式会社が行った、世界5都市におけるビジネスパーソンの「睡眠時間」の長さに関する調査では、次のような結果となっています。
 (1)上海…7時間28分
 (2)ストックホルム…7時間8分
 (3)パリ…6時間55分
 (4)ニューヨーク…6時間35分
 (5)東京…5時間59分

 ◆15分~20分程度の昼寝が有効
 最近では多くの企業で「サマータイム制」が導入されるなど、睡眠時間の短さに拍車がかかる状況の中、「昼寝」の効果が見直されています。
 独立行政法人労働安全衛生総合研究所が行った調査では、工場勤務者やエンジニアを対象に、昼休みに昼寝(15分間)をした週としなかった週を比較したところ、昼寝をした週は午後の眠気をあまり感じず、その差は週の後半ほど広がったそうです。
 同研究所では、時間帯は「午後2時ごろ」、長さは「15~20分程度」(高齢者の場合は30分程度)が最も効果的だと分析しています。
 もっとも、午後2時頃に昼寝を取れるような会社は少ないでしょうから、その場合は昼休みを利用しても問題ないそうです。

 ◆効果的な活用を
 適度な仮眠には、頭をスッキリとさせる効果があるそうです。暑い夏を乗り切り、仕事の効率を高めるためにも、社員の方にも「昼寝」をお勧めしてみてはいかがでしょうか。
 ただし、30分以上の仮眠によって深い眠りに入ってしまい、逆に疲労感が残ることもあるそうですので、ご注意を!


節電対策を契機に自己学習する人が増加

 ◆増加する「学び族」
 節電対策で勤務時間を繰り上げたり、夏休みを長くしたりする企業が多い中、空いた時間を使って自己学習を行う「学び族」が増えているそうです。
 震災をきっかけとして自分のキャリアを見つめ直す人も多く、働くことに対する意識の変化が背景にあるようです。
 
 ◆仕事にやりがいを持ちたい!
 「勤務時間繰上げ」や「残業禁止」を命じられた働く人が、終業後の時間を習い事や自己研鑚に充てる姿が目に付くようになっています。
 習い事の情報誌が、「サマータイム制」などを導入した企業で働く男女(約4,000人)に調査したところ、独学も含めて何かを学び始めた人が18%に達しています。
 これまでは「目の前の仕事で一杯」と思っていた人も、「仕事にもっとやりがいを持てるようになりたい」と感じるケースもあるようで、夏休みに短期留学を計画する人もいるようです。

 ◆震災をきっかけに仕事を見直し
 コンサルティング会社が全国の18~65歳の会社員(約1,000人)に「仕事の目標」を聞いたところ、「社会に貢献する仕事をしたい」と回答した人の割合が、震災前に比べてかなり増えたそうです。また、震災前に比べて「仕事のやる気が上がった」という人も約4割に上っています。
 専門家は「震災後の支援の様子を見て、特定のスキルを持つ人の価値を実感した人が多く、特に若い人の間で知識を磨こうという意欲が高まっている」と指摘しています。

 ◆時間を視覚化することが秘訣
 空いた時間を有効活用するには、「他人との約束だけでなく、自分1人で行う勉強や遊びの予定も含めて手帳に書き込み、時間を視覚化すること」が有効だそうです。
 時間と自分の行動を結び付けて考える習慣がつくため、空き時間が明確になり、結果として勉強の計画も立てやすくなるとのことです。


企業財務を圧迫する「福利厚生」の見直し
 
 ◆見直しが迫られる福利厚生
 企業が社員に提供する「福利厚生」が縮小する一方、年金や医療といった企業負担が急速に膨らんでいます。
 景気低迷により多くの企業では業績拡大も見込みが立たず、「福利厚生」のあり方は、今後も修正を迫られそうです。

 ◆減少傾向にある社宅
 国土交通省の「住宅着工統計」によれば、2010年度における社宅や公務員宿舎などの着工数は6,580戸で、確認できる1955年度以降で過去最低を更新しました。
 総務省が実施する「住宅・土地統計調査」によれば、全国の社宅・公務員宿舎は2008年に約140万戸で、10年前と比較すると2割減となっています。
 1990年代後半から、企業が福利厚生施設を売却する動きが広がっており、2009年の人事院による調査では、社宅がある企業は全体の57%で、自社で物件を保有する企業は25.8%でした。

 ◆各種手当、社内預金の状況
 社宅だけでなく、各種手当なども減少傾向にあります。
 厚生労働省の調査によれば、「家族手当」や「扶養手当」を支給している企業は2009年時点で全体の65.9%となっており、10年前から11.4%低下しています。
 また、「社内預金」(一般に、預貯金より高い利子をつけて企業が従業員の貯金を管理する制度)も縮小しており、昨年の社員預金総額は9,334億円で、10年前と比較すると約3分の1となっています。

 ◆福利厚生サービスの「曲がり角」
 働き手の形が多様化する中で、従来のような福利厚生サービスは修正を余儀なくされています。今後、従来型の終身雇用制を前提にした社員サービスの見直しは必至の状況と言えるでしょう。


女性だけでなく男性も「更年期障害」にご注意を!

 ◆真面目で神経質な人に多い
 男性の更年期障害の主な症状は、意欲低下や疲労感、睡眠障害、勃起減退などで、主な原因は加齢にあるとされます。
 50代を中心として40~60代で多く見られ、加齢により男性ホルモンの「テストステロン」の分泌が減ることで起こるそうです。
 また、ストレスによる要因も大きく、真面目で神経質な人に多いとも言われます。

 ◆ホルモン補充療法には副作用も
 一般的な治療はホルモン補充療法であり、男性ホルモンを2~4週ごとに注射する治療を続けると、症状が改善することもあるようです。
 ただし、ホルモン補充療法には副作用があり注意が必要です。例えば、前立腺がんの患者にとっては男性ホルモンが悪影響を及ぼす可能性があるため、治療前には前立腺がんの検査が必要です。 

 ◆軽度のうつ病の疑いも
 ホルモン補充療法により治る比率は5~7割と言われています。専門医は、「治らない患者の中には軽度のうつ病の疑いのある人がいる」と指摘しています。病院によっては、受診した患者の約3割の人が実はうつ病だったというケースもあったようです。
 男性の更年期障害と軽度のうつ病との区別は非常に難しく、併発している場合も少なからずあるようです。

 ◆生活習慣の見直しが必要
 うつ症状などの心理的な要因が強い場合は、心療内科や精神科などを受診して様子をみてから、更年期障害の専門医を受診すると良いそうです。
 また、ストレスを取り除くために生活改善が重要であり、それには家族の協力も必要です。余暇を大事にしながら、自分に合った生活を送ることが症状緩和の近道のようです。


「特定健診」の受診率が高い健保組合を優遇へ

 ◆2013年度をメドに導入予定
 厚生労働省は、「特定健診制度」の普及を促すため、特定健診を受診した加入者の割合が高い企業の健康保険組合(健保組合)などに対する優遇措置を、2013年度をメドに導入する方針を示しました。
 インセンティブの導入によって受診率を高め、中高年者の医療費を抑えることが目的とされています。

 ◆「特定健診」とは?
 「特定健診」は2008年度に導入され、メタボリック症候群を改善して生活習慣病を予防するため、40~74歳の加入者を対象にした健診を健保組合に義務付けています(罰則はなし)。
 特定健診の結果、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が多く期待できる場合には「特定保健指導」が実施されます。
 2009年度の特定健診の受診率は約40%で、制度導入当初に設定された「2012年度に受診率70%」という目標の達成は難しくなっています。

 ◆インセンティブ導入で受診率アップなるか
 健保組合は、75歳以上の高齢者向けの医療を維持するために「支援金」を拠出していますが、健保組合の規模や加入者の平均所得に応じて拠出額が決まっています。
 今後は特定健診の受診率が他の健保組合に比べて高い、受診率が過去に比べて大きく伸びた、メタボと認定された加入者の割合が大幅に減ったなどの健保組合からは、徴収する拠出金を最大で10%減額し、受診率が低い健保組合については徴収額を増やすとの考えです。

 ◆医療費抑制に向けて
 日本の医療給付費(自己負担分を除く)は2011年度に約33兆円で、今後、高齢化の進展や医療技術の発展で2025年度には50兆円を超える見通しです。
 医療費削減のため、国民一人ひとりが健康に留意し、病気を予防する意識を高めていく必要があるのではないでしょうか。


働く人の減少による社会保障負担の増加

 ◆若年世代の労働者減少が要因
 少子高齢化を背景に、労働力が大きく減少しているようです。
 新聞報道によれば、会社員・自営業・求職中の人の合計である「労働力人口」は、2010年に6,241万人となり、5年前と比較して4.6%減少しています。
 大きな理由は、若年者世代の人口が減っているためで、社会保障の担い手もさらに少なくなっていくことが懸念されます。

 ◆総人口は5年前と比較して微増
 2010年の総人口は1億2,806万人と5年前と比較して約0.2%増加していますが、労働力人口は同時期に300万人減りました。20~30歳代で250万人減ったことが大きな理由です。
 日本の総人口に占める労働力人口の割合は1970年に初めて5割を突破しました。第2次ベビーブームで総人口が増え5割を割り込む時期もありましたが、働く女性が増えたことで1990年には再び5割を超えました。その後はこの水準を維持してきましたが、今回再び割りこみました。

 ◆地方工場などの海外移転に拍車
 地方の工場などでは「国内で若年労働者が確保できない」として、中国をはじめとする海外に工場を移す動きも出始めています。
 原発事故に伴う電力不足もあり、工場などの海外移転の傾向は今後も拍車がかかるものと思われます。

 ◆社会保障負担の増加に歯止めを
 労働力の減少が続ければ、現役世代の社会保障負担が増えるのは必至です。
 労働力の減少に歯止めをかけるため、政府は中長期的な視点で少子化対策を進める必要があるでしょう。


どのように守る? 高齢者のお金

 ◆公共サービスを利用した金銭管理
 親が高齢になると、日常的な金銭管理をどのように行うかという問題が起こります。判断能力が低下したり、外出が難しくなったりした高齢者の家族にとっては切実な問題です。
 そこで、公共サービスを利用して金銭管理を行う方法をご紹介します。

 ◆社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」
 社会福祉協議会(以下、「社協」)は、地域福祉の推進を目的とした非営利組織であり、国・都道府県・市区町村にそれぞれ設置されています。
 地域住民に身近な市区町村の社協は、訪問介護など様々な福祉サービスを手掛けており、災害時にはボランティアの受け入れ窓口となるなど、準公的な性格を持ちます。
 「日常生活自立支援事業」は全国約800の社協が手掛けています。主なサービスとして、高齢者の日常的な金銭管理や福祉サービスの利用援助、通帳の預かりなどがあります。
 サービスは日常生活の範囲内に限定されており、高額の財産管理や法律行為の代理などは行えません。  

 ◆安い報酬も魅力
 生活費の引き出しや預け入れ、税金などの支払いの手伝いなど、小口の金銭管理サービスは、親族や信頼できる知人が近くにいない独居高齢者や、同居の子供が親の年金を使い込んでしまうような世帯において特に必要度が高まっています。
 また1回の訪問当たり1,000円程度からという安い報酬体系も魅力です。

 ◆制度利用伸び悩みの理由は?
 「日常生活自立支援事業」は便利な公共サービスですが、利用者数は2011年1月末時点で約3万5,000人にとどまっています。
 この伸び悩みの主な理由は社協の人員不足にあると言われています。常勤職員の人件費は都道府県と国が折半していますが、予算が付かないため、人員増に踏み切れないでいるのが実情のようです。
 一方、利用する側にも、通帳などを第三者へ預けることへの抵抗感が強くあるようです。本人から利用を申し出るケースは少なく、多くは周囲からの勧めがきっかけとなっているそうです。



2011/07/27

8月の事務所便り

「精神疾患・うつ病」増加に伴う最近の動き


 ◆うつ病患者は100万人超
 うつ病の代表的な症状は、「抑うつ気分がほとんど1日中、毎日続く」「物事への興味や喜びが感じられなくなる」「不眠や睡眠過多がほとんど毎日ある」などとされていますが、このようなうつ病の患者は、ここ10年で2倍以上になり、今や100万人を超えています。
 
そんな中、以下のような取組みが検討・実施されています。

 ◆精神疾患を加えて「5大疾病」に
 日本ではこれまで、がん、脳卒中、心臓病(急性心筋梗塞)、糖尿病を「4大疾病」と位置付け、重点的に対策に取り組んできましたが、これに精神疾患(うつ病、統合失調症、認知症など)を新たに加えて「5大疾病」とする方針を厚生労働省が決めたそうです。
 うつ病をはじめとする精神疾患は年々増加しているため、国では、診療の中核を担う病院の整備や訪問診療の充実など、精神疾患に関する医療体制の強化を図っていく方針です。

 ◆東京都によるメンタルヘルス専門サイト
 自治体においても様々な取組みが行われています。例えば東京都では、今年5月に「職場のメンタルヘルス」(http://www.kenkou-hataraku.metro.tokyo.jp/mental/)というサイトを開設しました。
 このサイトには、働く人やその家族が疲労蓄積度をチェックしたり、事業者が職場に潜むストレス要因をチェックしたりするために使えるチェックリストが掲載されており、国や東京都などが開設しているメンタルヘルスなどに関する相談窓口を探すこともできます。

 ◆「新型うつ」増加への対応
 うつ病の治療に関しては、抗うつ薬が使用されるのが一般的ですが、プライベートでは元気なのに職場ではうつ状態の「新型うつ」にはそのような薬は効かないそうです。
 企業としては、従業員がうつ症状を訴えてきた場合に、「従来型うつ」なのか「新型うつ」なのかを見極め、対応していくことも重要となってきます。


新入社員の保守的傾向と企業が求める能力

 ◆今年の新入社員は保守的?
 日本生産性本部の調査(2,154人が回答)によれば、今年の新入社員のうち、「自分が入社した企業に定年まで勤めたい」と考えている人は、全体の34%(前年比9ポイント上昇)だそうです。この数字は、調査開始以降、最も高くなったそうです。
 また、産業能率大が行った調査(415人)でも、今年の新入社員のうち「終身雇用を望む」と回答した人は全体の74.5%で、これも過去最高の数字となっています。
 今年の新入社員には、非常に「保守的」「安定志向」の傾向がみられます。

 ◆大変だった就職活動の影響?
 また、上記の産業能率大が行った調査では、「就職活動がかなり大変だった」と回答した人(35.4%)も、これまでの調査で過去最高となったそうです。
 就職活動が大変だったからこそ、「せっかく入社できた会社にずっといたい」と考えている新入社員が多いように思われます。

 ◆企業が社員に求める能力は?
 独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査において、企業に対して「人材の育成にあたって今後求められる能力」についての質問を行ったところ、以下の結果(複数回答)となりました。
(1)部下や後継者の指導をすることができる能力(73.1%)
(2)組織や人を管理するマネジメント能力(73.0%)
(3)既存の業務を見直し改善したり新たな発想を生み出したりする能力(71.8%)
(4)組織の中でチームワークを生み出すコミュニケーション能力(66.4%)
(5)事業運営方針の策定や企画を行う能力(50.9%)
 同機構では、企業が求める人材は、「協調型」の社員より、「自主行動型」の社員であると分析しています。


受動喫煙防止対策を行った飲食店等に対する助成金

 ◆喫煙室設置による空間分煙の促進
 厚生労働省では、飲食店・旅館等を経営する中小企業が、店舗等に喫煙室を設置し、その喫煙室以外での喫煙を禁止した場合に、喫煙室設置に係る費用の一部を助成する制度の創設を発表しました。
 これは「受動喫煙防止対策助成金」と呼ばれるもので、受動喫煙防止対策としてより効果的と考えられる喫煙室の設置による空間分煙の促進が、制度創設の目的とされています。

 ◆対象となる中小企業とは?
 この助成金の対象とされる中小企業は、以下の通りです。
(1)飲食店、喫茶店または旅館業の事業者
(2)喫煙室設置による空間分煙を行う事業者
(3)喫煙室設置に係る書類を整備している事業者
 なお、上記の「飲食店」には、食堂、レストラン、専門料理店、酒場、喫茶店、その他の飲食店、「旅館業」には、旅館、ホテル、簡易宿所、下宿業、その他の宿泊業が含まれるとされています。

 ◆支給される額は?
 支給額は、「喫煙室設置に係る費用の4分の1」とされており、支給上限は「200万円」となっています。
 なお、この助成金は、10月1日から実施される予定です。

〔厚生労働省ホームページ〕
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001gvb6-att/2r9852000001h1ay.pdf


「お金」にまつわる調査結果

 ◆平均貯蓄額は1,244万円
 総務省から、2010年の「家計調査」(2人以上世帯のうち勤労者世帯)が発表されていますが、これによると、平均貯蓄額は「1,244万円」だそうです。
 貯蓄額は年代によって大きな差があるでしょうが、この数字を「多い」と見るべきか、「そうでもない」と見るべきか、皆さんはどちらでしょうか?
 ちなみに、もっとも貯蓄額の多い60歳以上の平均は「2,173万円」だそうです。

 ◆平均月収は62万4,213円
 日本生活協同組合連合会が実施した「家計簿調査」によれば、2010年における家計の平均月収(ボーナスも含め12等分。世帯主の平均年齢は50.8歳)は「62万4,213円」となっています。
 これは、前年から4,000円弱アップしています。

 ◆ボーナスの使い道は?
 電通総研が調査(688人が回答)を行った今夏のボーナスの使い道について、ベスト10は次の通りの結果となりました。
(1)国内旅行(22,2%)
(2)LED電球(9.6%)
(3)ぜいたくな外食(7.6%)
(4)ブルーレイディスクレコーダー(6.1%)
(5)海外旅行(5.7%)
(6)地デジ対応テレビ(4.8%)
(7)扇風機(4.7%)
(8)スマートフォン(4.4%)
(9)節電・節水家電(3.9%)
(10)ベッド・布団の冷却マット(3.2%)
 電力不足に伴う節電が求められる中、関連する項目が(2)(7)(9)(10)に挙がっているのが、今年の特徴だと言えます。


中小企業の育休取得促進に向けて

 ◆中小企業で育休取得は難しい?
 育児休業の取得は大企業ではかなり浸透してきたものの、中小企業の中には「そんな余裕はない」という経営者も少なくありません。
 育休取得には職場環境の整備等、いろいろと高いハードルがありますが、取組みを進めている中小企業もあります。

 ◆職場環境が大きく影響
 各都道府県の労働局雇用均等室に寄せられる育児休業に関する相談は、2010年度の法改正で倍増したそうです。労働者からの相談で多いのが「育休取得による不利益な扱い」で、次いで「取得が認められない」です。
 育児休業を取って復帰しようと思えるか否かは、職場環境が大きいと言えます。従業員の「残業が多いと育休を取りにくく復帰しにくい」という声を反映し、残業は事前に「会社からの指示」「自らの判断」などと申請して許可を得る仕組みを導入したことで、取得率が30%以上になった会社もあるそうです。
 また、子育て支援を図る「時差出勤」や「短時間勤務」などの柔軟な働き方は、中小企業のほうが臨機応変に導入できる利点もあります。

 ◆国も助成金を拡充して支援
  近年、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を実現する環境作りを中小企業に求める動きが強まっています。
 国でも中小企業の支援に力を入れており、社員100人以下の企業を対象として育休取得者1人目に70万円を支給する「中小企業子育て支援助成金」の予算は、2011年度は前年度比約13%増の36億円に増額されています。
 中小企業での育休取得促進には、業務の見直しと働き方の改革がカギとなるのではないでしょうか。


どこまで許される?「クールビズ」

 ◆「スーパークールビズ」まで登場
 今夏、職場でも家庭でも、大幅な節電が求められています。しかし、環境省が打ち出した「スーパークールビズ」には戸惑いの声が広がっています。
 今夏はポロシャツ、チノパンが認められる職場が増えていますが、ノーネクタイで上着なしという格好が多いようです。

 ◆「クールビズ」とは?
 クールビズが政府主導で導入されたのは2005年です。内閣府の2009年調査では57%の企業が導入済みで、やっと夏の服装で一定の合意ができたところへ、今夏の「スーパークールビズ」が到来しました。
 30~40代の会社員300人へのアンケートでは、夏の職場の室温の高さに不安という人は84%に達しました。服装を選ぶ時に8割が「涼しいかどうか」を重視する一方、「スーパークールビズ」にするかを尋ねると、「例年よりカジュアルにする予定はない」との回答が最も多くありました。

 ◆どこまで許される?
  ほとんどの企業は節電目標を打ち出していますが、社員の服装については「ノーネクタイにノー上着」という従来のスタイルが基本となっているようです。
 そんな中、2つめと3つめのボタンの間にスナップボタンを入れた「2.5ボタンシャツ」など一見普通に見えるものが人気だそうです。ボタンを2つ外しても胸元が開き過ぎず、清涼感があって涼しいと言われています。
 涼しさを追求しつつ、なるべく普通に見える服装の工夫が求められます。

 ◆室内でも熱中症の危険
 仕事にふさわしい服装はありますが、暑さを我慢すると室内でも熱中症になる可能性があります。
 人の体温は汗が蒸発するときに熱を奪うことで下げられるため、吸汗・速乾性に優れた素材を選ぶこともポイントです。


労使トラブル増加と解決の仕組み

 ◆労使トラブルは増加傾向
 厳しい経済情勢を背景に、企業と従業員が雇用契約などをめぐってトラブルになるケースが増えています。
 短期解決に役立つ仕組みなど、押さえておきたい項目をまとめました。

 ◆「労働審判制度」とは?
 これは2006年から始まった制度で、民間から選ばれた労働審判員2人と裁判官で構成される労働審判委員会が調停(話合い解決)を試み、まとまらなければ労働審判を下します。
 審判に異議がなければ確定となり、異議があれば通常の訴訟に移行します。調停や確定した審判は裁判上の和解と同じ効力があり、強制執行も可能です。
 通常の裁判は長期化しがちですが、労働審判は「原則3回以内」で審理を終えるため、平均審理期間は74日と短期間です。

 ◆個人での争いが増加傾向
 厚生労働省の出先機関である都道府県労働局や労働基準監督署で無料相談ができる「総合労働相談コーナー」も便利です。
 ここでは企業への助言・指導や、紛争調整委員会によるあっせんができますが、労働審判のように、あっせんに応じさせる強制力はありません。法令違反などの疑いがあれば、労働基準監督署が会社に対して指導を行います。
 2010年度の相談件数のうち、民事上の個別労働紛争の相談は24万6,907件と過去最高だった前年度と同水準でした。組合の組織率低下などを背景に、働く人が個人で経営者側と向き合う状況が増えているためのようです。

 ◆トラブルが起きないことが一番
 会社が残業代を法律通りに支給していなかった場合などで、労働審判などを通じ、突如数百万円規模の支払いが必要になるケースも見られます。
 もちろん、トラブルが起きないことが一番ですが、トラブルが起きてしまった場合の対応を考えておく必要もあります。


サマータイム制と体内時計の関係
 
 ◆サマータイム制の導入が増加
 始業と終業時刻を1~2時間前倒しするなどの日本版サマータイム制を導入する企業や自治体が、関東地方を中心に増えています。
 節電対策が目的ですが、生活のリズムが崩れ健康へ悪影響が出ないかと心配する声も上がっています。

 ◆体内時計には2種類ある
  人は生まれながらにして備わる「体内時計」を持っています。この体内時計により、人は夜眠くなり、朝目覚めるというリズムを生み出します。
 体内時計には2種類あり、1つは脳の神経にある「主時計」、もう1つは全身の細胞にある「末梢時計」です。この正体は酵素やホルモンなどのたんぱく質の生成を調節する遺伝子で、一定の周期で活動して体内の代謝などを停滞せずに進めています。
 主時計の周期は約25時間と、人が生活する1日より長いため、自然のままでは後ろにずれていきます。このため、遅く寝るのは簡単ですが、早く寝るのが難しくなります。
 主時計は光に反応して早まる性質を持っているため、早く起きる習慣をつけるなら起床後すぐに太陽光を浴びることが効果的のようです。

 ◆食事の量と時間で調整
 末梢時計の調整には、食事の量と時間が重要です。専門家によれば、人は9~11時間空けた後の食事によって末梢時計がリセットされるため、主時計と同調する可能性が高いと予測されます。
 このため、夕食を遅くとった場合は朝食までの時間が短くなり、遺伝子の活動がリセットされにくくなります。また、朝食の献立も重要で、米やパンのほかたんぱく質も十分にとり、夕食はむしろ軽めにした方が、末梢時計の調整には効果的とされます。


新卒者を中心とした雇用対策

 ◆学生の就職支援策を強化
 厳しい雇用情勢が続く中、政府は、大学生や高校生の就職支援策を強化しています。
 来春卒業予定者の支援に向けて、専門のハローワークを設置しています。8月以降に離職者らのセーフティーネットを整備することと合わせて、雇用対策に力を入れているようです。

 ◆専門ハローワークを設置
 政府は、来春の大学、高校の卒業予定者や離職者の就職支援策として、ハローワークの体制・機能を拡充しています。2010年以降、「新卒応援ハローワーク」を全都道府県に設置するとともに、新卒者の就職支援を専門に担当する「学卒ジョブサポーター」を約2000人配置しました。この「学卒ジョブサポーター」は、窓口相談だけでなく、自ら企業に足を運んで求人開拓をする点が特徴です。

 ◆就職率は過去最低水準
 大学を今春卒業した就職希望者のうち、4月1日現在で就職した人の割合は91.1%(暫定値)で、就職氷河期と言われた過去最低の2000年卒と同じ水準となりました。
 このように新卒者の就職が依然厳しい状況の中、民間の就職情報会社や大学の就職課などを頼るだけだった数年前から様変わりし、学生たちは就職活動のメニューの1つに新卒応援ハローワークを加えているようです。

 ◆「求職者支援法」の成立
 求職者支援法が成立し、10月から施行されることも就職支援策の目玉です。
 働く意欲のある人が新制度を上手に活用し、早期就職や転職のきっかけとなることが期待されます。


セクハラによる労災の認定基準が緩和へ

 ◆「心理的負担」を重く評価
 職場でのセクハラにより発症したうつ病などの精神障害の労災認定について、専門家でつくる厚生労働省の分科会は、新たな認定基準の案をまとめました。
 直接的なセクハラについては被害者の心理的負担が重く評価され、労災認定されやすくなります。厚生労働省では、年内にも都道府県の労働局に通知をする予定です。

 ◆労災の認定基準とは?
 精神障害の労災認定は、その原因となった職場の出来事を心理的負担が強い順に「3」~「1」の段階で評価したうえで、個々の事情も勘案して判断しています。
 現在、セクハラについては原則として中間の「2」とされ、特別の事情があれば労働基準監督署の判断で「3」に修正可能ですが、判断基準は「セクハラの内容、程度」とあるだけで、修正例は少ないようです。

 ◆セクハラによる労災の新基準
 新基準では、どのようなセクハラなら「3」や「1」に修正されるかの例示を行っています。
「3」に修正される具体例として、「強姦や本人の意思を抑圧してのわいせつ行為」、「胸など身体への接触が継続した」、「接触は単発だが、会社に相談しても対応・改善されない」、「言葉によるセクハラが人格を否定するような内容を含み、かつ継続した」などの事例を挙げ、該当すれば「3」と判定すべきとしました。
 この他、長期的に繰り返されるセクハラ行為が少なくないことから、対象疾病の評価期間を、従来の「発症前6カ月」よりも前の部分も評価する等の意見も盛り込まれています。

 ◆今後の影響
 今後、基準が変われば心理的負担がより重く見られ、労災が認定されやすくなると思われます。会社としても、就業規則にセクハラ防止規定を設けるなど、これまで以上の対策が求められます。

2011/06/29

7月の事務所便り

新入社員の緊張・疲れの状況と会社が期待すること

 ◆約1割の新入社員は「仕事を辞めたい」
 長期化する不況の影響を受けた就職氷河期の中、今年の大学卒業予定者の内定率は過去最低水準となっています。
 そんな中、マーケティングリサーチなどを行う株式会社メディアインタラクティブでは、今年4月に入社した人を対象に「若手社会人の5月病に関する意識調査」(20代の272人が回答)を行い、その結果を発表しています。

 ◆新入社員の心境・体調の変化は?
 この調査は今年5月11日~18日に行われましたが、「入社して1カ月ほど経って心境・体調に変化はありますか?」との質問に対しては、「疲れがたまってきた」(47.1%)、「まだ緊張している」(40.1%)、「社会人としての自覚ができてきた」(31.6%)との回答が上位を占めました。
 そして約1割(9.9%)の人は「正直、仕事を辞めたいと思う」と回答しています。

 ◆5月病を感じる新入社員は3割近く
 次に、「5月病と感じることはありますか?」との質問に対しては、49.7%の人が「感じない・どちらかといえば感じない」と回答し、28.7%の人が「感じる・どちらかといえば感じる」と回答しており、約3割の人が何かしらの疲れや不調を感じているようです。

 ◆会社が新入社員に期待することは?
 会社側は今年の新入社員をどのように見ているのでしょうか。
ライフネット生命保険株式会社では、「今年の新人に関する調査」(20歳~49歳の有職者1,002名が回答)を行いましたが、「今年の新人に期待すること」との問いに対して、次のような回答結果となりました。

(1)「素直」(38.2%)
(2)「明るさ」(37.6%)
(3)「協調性」(32.5%)
(4)「努力」(29.7%)
(5)「謙虚」(29.5%)

 会社側では、素直で明るく、職場に溶け込む柔軟性・協調性のある社員を求めているようですが、皆様の会社ではいかがでしょうか?


 正社員はパート・アルバイトよりモチベーションが低い!?

 ◆社会人のモチベーションは高いのか?
 働くうえで「モチベーション」(日本語では「動機づけ」と訳される)は非常に大きな要素ですが、株式会社JTBモチベーションズでは、「2010年モチベーション白書」を発表しています。
 これを読むと現代の社会人がどのような意識・モチベーションを持って仕事をしているのかがある程度見えてきます。

 ◆100点満点中「69.7点」
 モチベーションの高さを100点満点として数値化してみると69.7点であることがわかり、2004年の結果(69.0点)からは微増となっています。
 モチベーションが「80点以上」(高領域)に属する人は28.1%、「50~80点未満」(標準領域)に属する人は61.8%、「30~50点未満」(低領域)に属する人は8.4%、「30点未満」(危険領域)に属する人は1.7%となっています。

 ◆雇用形態別に見るとどうか
 雇用形態別に見てみると、「正社員」が69.3点で最も低く、「契約社員」は73.1点、「派遣スタッフ・パート・アルバイト」が77.3点で最も高くなっています。
 自分に合った仕事を行い、家族などにも理解され、私生活が充実し、個性を発揮し、環境に適応しているという気持ちが、派遣スタッフ・パート・アルバイトのモチベーションの高さにつながっていると分析されています。

 ◆職種別・業種別に見るとどうか
 職種別では、上位から「営業・販売系」が73.1点、「管理・企画系」が67.8点、「開発・製造系」が66.8点となっています。
 この結果については、自分に合った仕事を行い、課題や目標を達成しているという気持ちが、営業・販売系のモチベーションを他よりも高いものにしていると分析されています。
 業種別では、「小売・流通業界」が73.7点、「人材派遣業界」が72.4点と高い結果となっています。


労使トラブルに「合同労組」が関与するケースが増加

 ◆「合同労組」関与の事件割合が過去最高
 近年、労使トラブルに「合同労組」「ユニオン」などと呼ばれる団体が関与するケースが増えていると言われていますが、そのことがデータ上からも明らかになりました。
 先日、中央労働員会から、「平成22年 全国の労使紛争取扱件数まとめ」が発表されましたが、「合同労組」が関与した集団的労使紛争事件の割合が69.8%(前年比3.1%増)となり、過去最高となったことがわかりました。

 ◆「合同労組」の特徴
 この「合同労組」には、“柔軟路線”をとる組合、イデオロギー性の強い“労使対立路線”をとる組合など、その性格は様々です。また、“労使対立路線”の組合の中にあっても、冷静に落としどころを考える組合、逆にあまり考えない組合もあるようです。
 さらに、組合の交渉担当者によって会社への対応が変わってくるケースもあります。また最近では、小規模な「地域労組」(コミュニティ・ユニオン)と言われる団体も増加しており、組合としての統制が本当にとれているのか、疑問の生じるケースもあるようです。
 
 ◆駆け込み訴え事件の増加
 労働者が、労使トラブルの解決のため合同労組に加入し、その合同労組が使用者に団体交渉を申し入れてくる例も多くあります。
 先ほどの中央労働委員会のまとめでは、懲戒や解雇などの処分を受けた後に労働者が加入した組合から調整の申請があった「駆け込み訴え事件」の占める割合は36.8%(前年比横ばい)で、過去最高となっています。

 ◆対応として重要なことは?
 これら「合同労組」「ユニオン」などから団体交渉の申入れがなされた場合、初めにとるべき対応が重要となります。安易に団体交渉の申入れに応じてはいけませんし、組合側が求めてくる「労働協約」の締結要求にも注意が必要です。
 団体交渉の申入れがあった場合には、専門家に相談する等しながら、しっかりと事前準備を行うことが重要です。


若手社員は喫煙する上司をどうみているか

 ◆「喫煙に関する意識調査」の結果
 5月31日は、世界保健機関(WHO)が定める「世界禁煙デー」でしたが、禁煙補助剤等を販売しているジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社では、今年2月に、就職を控えている20~25歳の男女(516名)を対象に「喫煙に関する意識調査」を実施しました。
 これから社会人になろうとする若者は、「タバコ」や「喫煙」に対してどのような意識を持っているのでしょうか。

 ◆喫煙者はわずか7%
 調査対象者のうち、「現在習慣的に喫煙している」と回答した人は7.0%、「習慣ではないが喫煙する時もある」と回答した人は4.7%でした。
 また、喫煙者のうち80.0%の人は「禁煙しようと思っている」と回答しています。

 ◆タバコを吸わない上司が好かれる!?
 次に、「上司は喫煙者と非喫煙者のどちらがいいか」について質問したところ、「ノンスモーカー」と回答した人が67.0%、「どちらでも良い」と回答した人が29.7%、「スモーカー」と回答した人が3.3%となっています。
 特に女性では73.6%が「ノンスモーカー」と回答しており、喫煙者にとっては厳しい結果となっています。

 ◆職場での喫煙環境について
 職場における喫煙環境についての希望に関する質問では、次の通りの結果となりました。

(1)「喫煙所を設けてそこでのみ喫煙可能」(55.6%)
(2)「職場全面で禁煙」(30.6%)
(3)「勤務時間中はどこにいても禁煙」(8.7%)
(4)「職場内で分煙」(4.7%)
(5)「職場全面で喫煙可能」(0.4%)

 受動喫煙に対する意識の高まりからか、「職場内分煙」だけでなく、「全面禁煙」までを希望する人が増えているようです。


「主婦年金問題」で救済案が明らかに

 ◆3年間の時限措置
 新聞報道によると、年金資格の変更を届け出ずに保険料が未納になっていた主婦についての救済案がまとまったようです。
 保険料の未納分について過去10年分の追加納付を認めて将来もらう年金を増やせるようにし、また、年金が過払いになっている受給者には過去5年分の返還を求めることとし、公平性に配慮した内容となっています。
 なお、この案は3年間の時限措置として実施されるようです。

 ◆「主婦年金問題」とは?
 会社員などを夫に持つ専業主婦は、国民年金保険料を納める必要がありません。しかし、夫が退職したり、主婦が働いたりした場合、保険料の納付義務が生じるにもかかわらず、その手続きを行っていなかった主婦が約97万人いるとされています。これが「主婦年金問題」です。
 厚生労働省では昨年12月に未納期間を納付済みにするとの特例(いわゆる「運用3号通知」)を出しましたが、批判が噴出し、厚生労働大臣がこの特例を撤回しました。

 ◆救済策の基本方針は?
 救済策の基本方針は、「保険料の追納を認める」、「未納期間をカラ期間(年金受給資格が得られる加入期間)として算入する」です。
 未納分については過去10年分に限って保険料を追加納付することが認められますが、現役世代では直近10年間、すでに年金を受給している高齢者については50~60歳の10年間で生じた未納期間分を追納の対象としています。

 ◆今後必要な対策とは?
 年金の被保険者資格の変更は本人の届出によるため、どうしても漏れがちになります。不整合期間の再発防止のため、救済案では第3号被保険者の種別変更を進めるための対策を講じる必要があるとの指摘もされており、今後の動きが注目されます。


社会保障改革案の「安心3本柱」とは?

◆「安心3本柱」の内容
 政府から、「安心3本柱」を中心とした社会保障改革案の内容が発表されました。
 この「安心3本柱」とは、(1)パートなどの非正規労働者への社会保険の適用拡大、(2)幼稚園や保育園の垣根をなくす「幼保一体化」の推進等による子育て基盤の強化、(3)医療・介護などを中心に自己負担の合計額に上限を設定する「合算上限制度」の導入です。
 以下では、主な年金制度改革案について見ていきます。

 ◆年金制度の改革案
 年金制度改革案の具体策は、パートなどの非正規労働者の厚生年金の加入条件を、現在の「週30時間以上勤務」から「週20時間以上勤務」に緩和すること、また、現在は育児休業中だけとしている厚生年金保険料の免除期間について産前・産後の休業期間まで広げるということです。
 一方、高所得の会社員については保険料の負担増を求める方向です。厚生年金保険料は報酬に応じて決まる仕組みになっていますが、改革案では上限額を引き上げる考えです。
 
 ◆60歳代前半の就労促進
 この他、60~64歳で働きながら厚生年金を受け取る場合、年金と給与の合計額が月額28万円を超えると、28万円を超えた分の半分だけ受け取る年金が減り、46万円超では給与の増加分だけ年金がカットされます。
 現在、この仕組みで約120万人が総額1兆円程度を減額されていますが、厚生労働省では、給与と年金の合計額が46万円を超えるまで年金を減額しない制度に変更し、年金の減額幅を縮小することにより高齢者の就労を促す考えです。

 ◆しかし問題は山積…
 いろいろと改革案が出されていますが、非正規労働者への厚生年金加入拡大は保険料の半分を負担する企業の反発が必至な状況であるなど、問題は山積しています。


自転車で楽しみながらメタボを改善

 ◆中高年のメタボ対策として
 中高年になるとおなかがポッコリと出てきて、「メタボリック症候群」と診断される人も増えてきます。ダイエットはなかなか難しいものですが、体にあまり負担をかけずに楽しみながら減量できる方法として注目を集めているのが「自転車」です。
 メタボ改善やストレス解消に繋がる自転車ですが、通勤で利用する場合には事故のリスクも高いため、注意が必要です。

 ◆体重・腹囲が減少、血圧にも好影響
 大阪にある「自転車博物館サイクルセンター」が行ったモニタリング調査では、心拍数を測るサイクルメーターという小型計測器を自転車に装着し、参加者は内臓脂肪を効率よく燃焼させる有酸素運動の心拍数をモニタリングしながら走り、体重・腹囲・走行距離・走行時間・食事内容を記録しました。
 各自週3日以上、1日合計30分以上を目標に走ったところ、3カ月後には全員の体重が減少し、腹囲は9人中8人が減少し、血圧にも改善が見られました。

 ◆1kg痩せるには…
 では、体重を1kg落とすには、どの程度自転車に乗ればよいのでしょうか。
 1kgの脂肪を燃焼させるのに必要な消費カロリーは7,200キロカロリーだそうです。体重70㎏の人が時速15kmで1時間走ったときの消費カロリーは350キロカロリーとなるため、通勤で1日15kmを往復していれば、10日程度で体重が1㎏減る計算になります。

 ◆自転車通勤にはルールが必要
 自転車通勤は、風を切って走る爽快感から、長く続けられるメリットがあります。しかし、公共交通機関を使うよりも事故のリスクが高まるため、会社としては一定のルール作りが必要です。
 会社としては、自転車通勤を許可制として、対人・対物の賠償保険加入を義務付けるなどの対策をとり、また、乗る側の社員も、十分に安全点検を行ったうえで交通ルールを守り、安全運転を心掛ける必要があるでしょう。


社員による「ソーシャルメディア」利用への対応

 ◆トラブルの未然防止が必要
 ネット上で気軽に情報を共有できるソーシャル・ネットワーキング・サービスの利用が急増するなか、社員の個人的な書込みについて、企業が具体的なガイドラインを策定する動きが広がっています。
 書込みをめぐって職場がギクシャクしたり、企業の重要情報が漏洩したりして、トラブルに発展するケースも出てきており、未然に防ぐための対策が必要です。

 ◆急増するソーシャルメディアの利用
 ツイッターやフェイスブックなどは「ソーシャルメディア」と呼ばれ、手軽に多くの人と情報をやり取りすることができるため、利用者が急増しています。
 しかし、不特定多数の人が見ることを意識せず、不用意に仕事関連の情報を書き込むと問題が生じることも多くなります。しかし、会社として、社員の個人的なソーシャルメディア利用を禁止することは難しいでしょう。
 
 ◆ガイドライン等の整備でリスクを回避
 利用自体を禁止できないとしても、不用意な書込みにより「情報漏洩」や「名誉棄損」などで社員や企業が訴えられる危険性もあるため、企業では、ガイドラインや社内規定を整備することが有効です。
 この場合、「自社にとっての営業秘密は何か」などの基準を明確に示し、役員・正社員からパート・アルバイトまでに徹底することが求められます。

 ◆具体的に企業はどう対応しているか
 例えば、ソーシャルメディアの「利用マニュアル」を用意し、書いてはいけない文例を数多く提示している企業や、従来の法令遵守の行動規範に加え「会社の公式見解のように書いてはいけない」といった事項を明記し、「会社にダメージを与えた場合は懲戒対象となることもある」と定める企業もあるようです。


障害者に関する就職・雇用の状況は

 ◆就職件数は過去最高に
 厚生労働省は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)に基づき、同省による再三にわたる指導にもかかわらず障害者の雇用状況改善が見込まれない6社について、企業名の公表を行いました。
 しかし、改善が見られず公表される企業がある一方で、平成22年度におけるハローワークを通じた障害者の就職件数は5万件を超えて過去最高となっています。

 ◆「法定雇用率」とは?
 障害者雇用促進法では、身体障害者や知的障害者の雇用を促進するため、事業主に対し、常時雇用している従業員の一定割合(法定雇用率、民間企業の場合は1.8%)以上の障害者を雇うよう義務付けています。

 ◆法定雇用率を達成しないと…
 法定雇用率を達成していない企業には、厚生労働大臣が「障害者雇入れ計画」を作成するよう命令し、計画を適正に実施するよう勧告できます。勧告に従わない場合は、企業名を公表できるようになっています。
 今回、企業名を公表された会社は法定雇用率が未達成で、同省が雇用率の達成に向けた指導や計画の適正実施の勧告を行ってきたにもかかわらず、改善が遅れている90社のうちの6社です。

 ◆対前年比17%増の就職件数
 企業名を公表される企業がある一方で、平成22年度のハローワークを通じた障害者の就職件数は5万件を突破し、全体的にみれば障害者の雇用状況は改善されているようです。
 厳しい雇用情勢の中、障害者の就職件数が平成21年度(45,257件)から対前年度比17%増と大きく伸びたのは、精神障害者の就職や、医療・福祉分野での就職が増加したためのようです。


使用電力削減・節電に対応した働き方を考える

 ◆厚生労働省による対応
 今夏、東日本を中心に、平日の9時から20時までの間に電力が不足するおそれが指摘されています。
 そこで、厚生労働省では、夏場の電力不足への対策として「労働時間の短縮」や「始業・終業時刻の変更」などを実施する企業(東京電力・東北電力の管内)の相談に対応するための窓口を、労働基準監督署などに設置する方針を発表しました。
 また、新聞報道によれば、「変形労働時間制」の導入企業が年度途中でもスケジュールを変更できるよう、同省が特例を認める考えも示しています。

 ◆使用電力削減・節電の具体策
 帝国データバンクが発表した「夏季の企業活動に関する意識調査」の結果によれば、71.4%の企業が今夏に「節電を実施する」としています。「節電は実施しない予定」の企業は9.6%でした。
 企業の使用電力削減・節電への取組みの例として、「労働時間の短縮」「始業・終業時刻の変更」の他、「所定休日の変更」、「連続休業・休暇の活用」などが考えられます。
 これらのことを実施する際には、就業規則の変更・届出が必要となってくる場合がありますので注意が必要です。

 ◆社員への配慮も必要
 制度変更を行う際には、家庭で育児・介護等が必要な社員など、始業・終業時刻や所定休日の変更への対応が困難な事情を抱える社員についての配慮が必要です。
 業務や家庭の事情などを勘案したうえで、「フレックスタイム制」や「在宅勤務制度」などを活用することも考えられます。

 ◆日々の意識が大切
 使用電力削減・節電への取組みについては、普段からの心がけも大切です。
 個人と会社で行うことのできる対策には異なる点はありますが、使用しない家電製品のコンセントを抜いておく、天候に合わせて照明を点ける時間を調整するなど、改めて普段の生活を見直してみることもよいのではないでしょうか。

2011/06/01

6月の事務所便り

震災発生後に外国人労働者の不足が深刻に

 ◆幅広い分野で影響が
  新聞報道によると、東日本大震災発生の影響を受け、外食産業や農業など幅広い分野で人手不足が問題になっているようです。これは、原発事故等を不安視するなどした外国人の帰国が増えているためです。
状況が多少落ち着き、再び日本に戻ってくるケースも出ているようですが、外国人労働者に依存していた企業では、対策が求められています。

 ◆原発事故を不安視して帰国する外国人
  法務省によれば、日本における外国人登録者数は約218万人(2009年末)です。中でも約68万人で最も多い中国人は重要な労働力として役割が高まっています。
  原発事故発生後、帰国者が増加し、中国政府は航空便を増やすなどして約9,300人を自国に戻したとされます。
  この影響をまともに受けたのは、接客スタッフなど多くの外国人を雇う外食産業です。外食産業では営業時間が深夜に及ぶなど、労働条件の厳しさが目立つため、慢性的な人手不足に悩まされていますが、それ支えていたのが外国人の労働力なのです。

  ◆農業分野でも人手不足が問題に
  外国人の帰国問題は農業分野でも影響が出ています。外食産業と同様、重要な労働の担い手であった外国人が帰国してしまったために、「出荷間近で人手がほしい」などの声があがっているそうです。
  残された日本人が長時間働くしかないのが現状ですが、被災して生産を続けることができない生産者たちを募集して受け入れる仕組み作りなども政府に期待されています。

  ◆暮らしやすく働きやすい日本に
  余震と原発の不安がおさまらない中、外国人が戻ってくることはあまり期待できず、企業には何らかの対応策が迫られます。
  今後、外国人が暮らしやすく、働きやすい日本に戻ることを願わずにはいられません。


  政府が打ち出した「震災税制特例法」の内容

  ◆阪神・淡路大震災以上の内容に
  東日本大震災の被災者や被災企業を支援するための、いわゆる「震災税制特例法」が可決・成立しました。国・地方税を合わせて41項目の特例措置が設けられ、税金の減免や過去に納めた税金の還付などが実施されます。
  1995年に発生した阪神・淡路大震災に比べて支援内容が拡充されており、地方法人税の減免や被災した自動車にかかる税金の免税・還付など、新たな特例措置は16項目に上ります。

  ◆企業向けの支援税制
  企業向けでは、過去に納めた法人税額から、大震災による損失額に相当する額が2年間までさかのぼって還付されます。震災が発生した日から1年の間に終了する事業年度中に発生した損失が還付の対象となります。
  最終的には地方自治体の条例の定めによることとなりますが、阪神・淡路大震災の際には支援税制に盛り込まれなかった地方法人税(法人事業税・法人住民税)にも減免措置が設けられます。

 ◆個人向けの支援税制
  個人向けでは、居住が条件である住宅ローン減税を、大震災で損壊して住めなくなった住宅について適用が継続されるようになります。
  所得税については阪神・淡路大震災でも同様の措置がとられましたが、今回は住民税にも広げ軽減措置がとられます。
  その他、自宅を建て替える際に親から資金の贈与を受けた場合の贈与税の減免、津波で大きな被害を受けた土地や家屋の固定資産税や都市計画税の免除などがあります。
  さらに、住宅や家財の損害額を「雑損控除」として所得から差し引くことができる所得税の減税措置が前倒しで適用されます。

  ◆その他の内容
  この他、津波などで被害を受けた自動車の買替えを支援する税負担の軽減、大震災関連の寄付を促すための優遇税制も盛り込まれています。
  今後は被災者や被災企業に対する税金の減免や還付以外にも、被災地の復興を支援する税制の検討などが期待されています。


原発事故の風評被害を受ける輸出企業への支援策

  ◆輸出企業への支援策
  政府は、福島第一原子力発電所の事故をめぐる風評被害を踏まえ、輸出企業への支援策を発表しました。輸入を拒否された際に「貿易保険」から保険金を支払うほか、輸出品が放射線量の検査を受ける際に必要な費用についても補助金を支給します。
  また、企業の支援とともに、海外への正確な情報提供にも力を入れるようです。

  ◆「貿易保険」とは
  企業の輸出入や海外投資などの対外取引に伴うリスクを軽減するための保険で、1950年に創設されています。保険でカバーする内容は、戦争・内乱、テロ行為、相手方による輸入制限・禁止などの「非常危険」と、相手方の破産や輸出契約の一方的破棄などの「信用危険」に大別されます。

  ◆損害のほぼ全額を補償の方針
  原発事故を受け、放射能汚染とは直接関係のない地域の商品や工業品までもが輸入を拒否されるケースも出ているようです。そこで、風評による輸入拒否で損害を受けた企業に対し、保険金で損害額のほぼ全額を補償することとしました。
  今後は、輸出先が原発事故後に検査を強化するなどして商品が売れなくなった場合にも保険金を支払う方向だそうです。また、中小企業に対しては放射線量の検査費用を補助することも検討されています。

  ◆誇張報道の訂正を要求
  政府は、原発事故に関する誤った情報や誇張された情報が海外に広がっていることが、風評被害の拡大につながっているとして、海外のメディアに対して報道の訂正などを求めています。
  また、放射線量の状況などについて、各国の大使館を通じて外国政府や企業に正確な情報を積極的に伝えることにより、風評被害を食い止めようとしています。


  「ねんきんネット」で年金加入記録を確認しよう

  ◆2月末に運用スタート
  日本年金機構では、公的年金記録を確認できるインターネットサービス「ねんきんネット」(以下、「ネット」)の運用を2月末から始めました。
  従来の「ねんきん定期便」(以下、「定期便」)よりも情報が新しく、かつ情報量も多いため、わかりやすく簡単に自分の記録を確認することができます。

  ◆ネットの特徴
  特徴は、加入開始時から直近(原則として約1カ月前)までの自分の加入記録のすべてをいつでも確認できることです。
  定期便では、毎年の誕生日前に送付されるだけで、記録も2010年度分からで、35歳、45歳、58歳以外の加入者については、誕生月の直近1年間分に限定されていました。
  制度ごとの加入記録や加入期間の合計についても、ネットのほうが情報は豊富です。国民年金保険料の納付状況のほか、厚生年金では勤務先名称や標準報酬月額などが月単位で表示されます。

  ◆ID・パスワードをすぐに取得可能
  ネットは、2011年度分の定期便に記載された固有のアクセスキーを入力すれば、即時にID・パスワードを取得でき、自分の年金記録に随時アクセスできます。
  今年度の定期便が届いていない人であっても、インターネットを通じて登録すれば5日程度でID・パスワードを取得できるそうです。

  ◆上手に活用して年金制度を理解
  年金制度はとても複雑な仕組みですが、このネットをうまく活用することで、年金制度への理解が進むことが期待されています。
  みなさんも一度ご自分の記録を確認してみてはいかがでしょうか。


  「自律訓練法」の活用でストレス解消

  ◆メンタルケアの手法の1つ
  ストレスが原因とされる心身の不調を改善するために効果があると言われるのが、「自律訓練法」と呼ばれる心理療法です。
  職場や学校で、メンタルケアの手法の1つとして使われることも多く、1人で習得することも可能だそうです。
 
 ◆「自律訓練法」とは?
  この自律訓練法は、ドイツの精神科医が開発した心身の自己調整法で、古くから日本にも紹介され、オリンピック選手のメンタルトレーニングに使われたこともあるそうです。
  心療内科や精神科などにおいても使われる一種の自己催眠法であり、全身をリラックスさせることができ、心身の疲れがとれるとされ、簡単に言えばリラクゼーション法の1つです。

  ◆「自律訓練法」の効果
 実施による主な効果は、次の通りです。
 (1)蓄積された疲労を回復できる。
 (2)イライラせずに穏やかな気持ちになれる。
 (3)自己統制力が増して衝動的な行動が少なくなる。
 (4)仕事や勉強の効率がアップする。
 (5)身体的痛み・精神的苦痛が緩和される。
 (6)内省力がついて自己向上性が増す。

  ◆実施の手順
  静かな落ち着けるところで行います。ゆったりした服装で、椅子やソファに深く腰掛けるか仰向けに寝て、両腕・両脚を少し開いた状態で目を閉じ、気持ちを静めるため「気持ちが落ち着いている」(基礎公式)と心の中で唱えます。
  次に、腕や脚に「重み」を感じることを練習します。「第1公式」と呼ばれる言葉(右手が重たい・左手が重たい・右脚が重たい・左脚が重たい、の順)を唱え、腕や脚に「重み」を感じることを練習し、続く「第2公式」では、血液循環が良くなり手足の腕や脚に「温かさ」を感じる練習をします。
  以下、「心臓が静かに規則正しく打っている」(第3公式)、「楽に呼吸をしている」(第4公式)、「おなかが温かい」(第5公式)、「額が心地よく涼しい」(第6公式)と続きます。


  パート社員から正社員への登用の現状と今後

  ◆パート社員として仕事に復帰
  結婚・出産などを理由に仕事を辞めて一旦家庭に入ったものの、パート社員として仕事に復帰し、その後正社員に登用されて活躍する女性が増えています。
  労働力人口が減っていく中、柔軟な働き方の実現は企業の人材確保には欠かせません。

  ◆優秀な人材確保の一手段
  パート社員の正社員登用により、優秀な人材を確保できます。その半面、正社員になると雇用調整が難しく、一般的に人件費も高まります。
  そのため、登用制度を有する企業では、パート社員を正社員に登用する選考過程において能力を厳しく見極める傾向にあります。
  その結果、パート社員から登用された正社員は即戦力と評価されることが多く、新卒採用と中途採用に加えて、新たな採用ルートとして確立しつつあります。

  ◆正社員への登用の現状
  昨今は、パート社員が正社員並みに企業内で基幹的な役割を担うケースも増え、仕事内容と雇用条件との間にギャップも見られます。
  2008年に「改正パートタイム労働法」が施行され、正社員と均衡のとれた待遇の確保や正社員への転換推進措置などが企業に義務付けられました。
  しかし、独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の「短時間労働者実態調査」(2010年)によると、正社員への転換推進措置をとっている企業は約5割にとどまっています。

  ◆結婚・子育て後のやる気を活用
  パート社員のさらなる待遇改善に向けて、厚生労働省は今年2月に「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」を立ち上げ、今夏に報告書をまとめる予定です。
  すべてのパート社員が正社員への登用を望んでいるわけではありませんが、やる気と能力のあるパート社員を正社員に登用し、活躍の場を提供することは、企業にとっても様々な利点があるのではないでしょうか。


  「ボランティア休暇」導入企業が増加中

  ◆企業CSRの要請と従業員からの要望
  東日本大震災の発生をきっかけとして、企業が、従業員のボランティア活動を目的とした特別休暇(ボランティア休暇)を認め、制度として導入するケースが大手を中心に増えているようです。
  これは、「企業は社会的責任(CSR)を果たすべき」という要請と同時に、従業員からの要望も増えていることが背景にあるようです。
 
 ◆具体的な導入事例
  制度を導入したと報道された企業は、SMBC日興証券(最大3日間。有給休暇との組合せで最大16日間)、さわやか信用金庫(最大5日間)、トリンプ・インターナショナル・ジャパン(9月末までに最大14日間)、ワコール(8月末までに最大連続20日間)などです。
  なお、厚生労働省の調査(2007年実施)によれば、ボランティア休暇制度を導入している企業(従業員1,000人以上)の割合は、17.7%だそうです。

  ◆法的な問題点も
  企業が「ボランティア休暇」を制度化することは可能です。しかし、様々な法的な問題も考えられます。
  例えば、会社が認めたボランティア休暇中に従業員が怪我をした場合、労災と認められるのでしょうか。「業務起因性」が認められるかどうかは微妙な問題です。また、企業の安全配慮義務が問われるケースも過去にあったようです。

  ◆導入には慎重な判断が必要
  上記のことから、特別休暇である「ボランティア休暇」の導入には、慎重な判断が求められると言えるでしょう。


  夏場の「電力不足・節電」に向けた企業の対応

  ◆政府要請への対応
  政府による、福島第一原発での事故に伴う最大使用電力の削減要請、浜岡原発の運転停止などを受け、企業では、電力が不足するとされる夏場において、いかに「電力不足・節電」に対応するかが課題となっています。

  ◆夏季休暇の取り方などに工夫
  大手企業では、「電力不足・節電」への対応として、すでに夏季休暇の取り方などについての方針を発表しているところもあります。主な内容は以下の通りです。

 (1)期間の延長・拡大(ニコン、ゼリア新薬工業など)
 (2)まとめての取得(NTT、文化シャッターなど)
 (3)取得時期の分散(NEC、東芝など)
 (4)在宅勤務制度の導入(KDDI、帝人など)
 (5)サマータイム制の導入(ソニー、東京証券取引所など)

 ◆節電の具体策
 企業ができる節電のための具体策としては、次のようなことが考えられます。

 (1)照明関係…看板・ショーウインドーの消灯、LED電球への切替え
 (2)設備関係…エレベーターの運転削減、パソコンの小まめな電源停止
 (3)エアコン・空調…冷房温度の引上げ、クールビズの強化
 (4)その他…自家発電機の導入など

 ◆中小企業へ「節電サポーター」派遣
 また、経済産業省では、東京電力・東北電力管内の中小企業やビルなど約20万カ所に、節電方法の助言などを行う「節電サポーター」を派遣すると発表しています。
 5~6月にかけて、中小・零細企業を中心に、電気主任技術者などの専門家を2,000~3,000人程度派遣するとのことです。


 今年の新入社員は何を重視? 理想の上司像は?

 ◆「良好な人間関係」を最も重視
 株式会社毎日コミュニケーションズから、今年4月入社の新入社員を対象に実施した「2011年マイコミ新入社員意識調査」(984名が回答)の結果が発表されました。
 この中で、「社会人として仕事をしていく上で重要だと思うこと」(複数回答)について聞いたところ、回答の上位ベスト3は次の通りでした。

 (1)良好な人間関係(69.8%)
 (2)挑戦(46.2%)
 (3)楽しさ(43.8%)

 ◆理想の上司は「指示・指導が的確」
 上記と同じ意識調査の「理想の上司像」(複数回答)に関する質問では、次の通りの結果となりました。

 (1)指示・指導が的確である(67.8%)
 (2)よくアドバイスをくれる(47.8%)
 (3)相談に乗ってくれる(45.4%)

 ◆新社会人の多くは「上司に本音を語れない」
 また、レジェンダ・コーポレーション株式会社では、今年4月に新社会人となった入社1年目と入社2年目の社員を対象に行った意識調査(665名が回答)の結果を発表しました。
 その中で、「目上の人に対して仕事上の本音の話ができるか」を尋ねたところ、入社1年目の人のうち63.8%が「本音を語れない」(「ためらう」が57.9%、「できない」が5.9%)と回答しました。これが入社2年目の人になると57.2%に下がります。

 ◆20代の若者は「伝える力」が低い!?
 逆に、先輩社員は20代の後輩社員をどのように見ているのでしょうか。株式会社電通では、首都圏の会社員800名を対象に「伝える力」に関するアンケート調査を行いました。
 その結果によれば、30~50代の会社員のうち、52.5%の人が「新入社員をはじめ20代前半の若者の『伝える力』は低くなっている」(「低くなっていると思う」および「どちらかと言えば低くなっていると思う」の合計)と回答したそうです。


 就職活動に「ツイッター」「フェイスブック」を活用

 ◆約4割が「就活に活用」
 就職活動において「ツイッター」や「フェイスブック」などのソーシャルメディアを活用する学生が増えているようです。
 株式会社マクロミルが実施した調査(関東圏で就職活動中の大学3年生・大学院1年生300人が対象)の結果によると、37.7%の人が「活用している」、19.0%の人が「今後活用したい」と回答しています。

 ◆「ソーシャルメディア」とは?
 ソーシャルメディアは、一般に、ユーザーが情報を発信することによって形成されていくメディアのことを言い、個人が発信した情報が不特定多数に広まり、ユーザー同士のつながりが広がっていくことが特徴とされています。
 その代表的なものは、「ブログ」や「ツイッター」、「フェイスブック」などです。
 
 ◆ソーシャルメディアを活用する理由
 上記の調査において、就職活動にソーシャルメディアを活用する理由(複数回答)として、以下の項目が挙げられています。

 (1)他人の状況が気になる(54.9%)
 (2)最新の情報がある(51.3%)
 (3)同業界を志望する学生と知り合える(41.6%)
 (4)建前ではない会社の実情がわかる(34.5%)
 (5)悩み相談やストレス解消ができる(23.9%)

 ◆企業が活用するケースも
 また、最近では企業の人事担当者が「ツイッター」でつぶやいたり、「フェイスブック」に採用情報を掲載したりするケースもあるようです。
 今後、就職活動・採用活動において、これらソーシャルメディアはますます活用されていくことでしょう。

2011/05/12

5月の事務所便り

 企業における「手当」支給の実態

 ◆厳しい経済状況下における「手当」の扱い
みずほ総合研究所から、「社員の手当」に関するアンケート調査の結果が発表されました。このアンケートでは、厳しい経済状況下において、多くの企業で「社員の手当」にシビアになっている様子がうかがえます。
この調査は、同社の会員企業に所属する役職員24,015 名を対象に実施され、779 人が回答を行いました。

 ◆多くの企業に「手当」が存在
まずは、各手当の存在についてですが、「自社に制度として存在する」と回答した人の割合は、次の通りでした。
・「通勤手当」…96.8%
・「役付手当」…83.2%
・「出張手当」…82.7%
・「家族手当」…72.1%

 ◆「厳格化・削減等」の割合は?
次に、最近3年以内における各手当の支給条件について尋ねたところ、「厳格化・削減等」を実施した割合は次の通りでした。
・「出張手当」…14.1%
・「役付手当」…6.6%
・「家族手当」…5.5%
・「通勤手当」…5.1%
削減の理由としては、上位から、「経費削減の一環」「社員の処遇の平等化」「給与への一本化」「賞与への反映」「支給対象者の増加」などとなっています

 ◆各企業が何を重視していくか
上記4つの手当以外に、ここ3年で廃止・縮小された手当は、上位から「資格手当」「営業手当」「住宅手当」「単身赴任手当」「特殊勤務手当」「皆勤・精勤手当」「地域手当」「国内赴任手当」「灯油手当」「技能手当」「海外赴任手当」「地方手当」などとなっています。
今後も、多くの企業において、仕事・業務とは無関係な手当についてはさらに廃止・削減の方向に向かうかもしれませんが、各企業が何を重視するか良く考え、社員のモチベーションアップにつながるような手当支給の仕方が必要なのではないでしょうか。


 最も多い転職理由は「会社の将来性が不安」

 ◆3年連続で「会社の将来性が不安」が最多
株式会社インテリジェンスから、「転職理由調査(2011年上期版)」(転職希望者16,914人が回答)の結果が3月上旬に発表されました。
転職理由として「会社の将来性が不安」が3年連続で最多となりましたが、業種によって転職理由に特徴があるようです。

 ◆転職理由のトップ10
全体の転職理由トップ10は、次の通りです。
(1)会社の将来性が不安(12.8%)
(2)他にやりたい仕事がある(11.4%)
(3)給与に不満がある(8.0%)
(4)専門知識・技術を習得したい(5.9%)
(5)残業が多い・休日が少ない(5.0%)
(6)倒産・リストラ・契約期間満了(4.7%)
(7)業界の先行きが不安(4.2%)
(8)幅広い経験・知識を積みたい(4.1%)
(9)市場価値を上げたい(2.9%)
(10)U・Iターンしたい(2.6%)

 ◆割合が増えている転職理由は?
前述の通り、トップは3年連続で「会社の将来性が不安」でしたが、前回調査に比べ1.9ポイント減少しています。
逆に、「他にやりたい仕事がある」「給与に不満がある」「残業が多い・休日が少ない」「業界の先行きが不安」と回答した人の割合は増えています。

 ◆業種別に見るとどうか
業種別に見てみると、「IT・通信・インターネット」では、「専門知識・技術を習得したい」が、全体の平均値を2.6ポイント上回る8.5%でした。また、「幅広い経験を積みたい」や「市場価値を上げたい」なども高い割合の回答率です。つまり、他の業種に比べて、スキルアップを志向する社員の方が多いようです。
また、「メーカー」では、「U・Iターンしたい」が他業種に比べ多くありました。これは、「都心から離れた工場勤務の人が多いためではないか」と分析されています。
そして、「メディカル」では、「業界の先行きが不安」、「金融」では「顧客のためになる仕事がしたい」、「メディア」では「残業が多い・休日が少ない」と回答した割合が他業種に比べて多くなっています。


 健康寿命を延ばすための
 「スマート・ライフ・プロジェクト」とは?

 ◆今年2月にスタート
厚生労働省は、今年2月に、「Smart Life Project(スマート・ライフ・プロジェクト)」を開始すると発表しました。
このプロジェクトは、「より多くの国民の生活習慣を改善し、健康寿命を延ばすこと」を目的としているそうです。果たしてどのようなプロジェクトなのでしょうか。

 ◆プロジェクト開始の背景
厚生労働省によれば、「世界有数の長寿国となったわが国が、今後めざすべき方向は、単なる長寿ではなく『健康寿命(=日常的に介護を必要としないで自立した生活ができる生存期間)』を延ばすことにある」とのことです。
そこで、政策の重点を「予防」へと移し、国民の健康寿命を延ばすため、主に生活習慣病の予防を目的とした「すこやか生活習慣国民運動」を平成20年度から実施し、「適度な運動」「適切な食生活」「禁煙」を推進してきました。

 ◆プロジェクトの概要
上記の「すこやか生活習慣国民運動」をさらに普及、発展させるため、 幅広い企業連携を主体とした取組みとして立ち上げられたのが、この「スマート・ライフ・プロジェクト」なのです。
厚生労働省では、本プロジェクトにおいて「適度な運動」「適切な食生活」「禁煙」の取組みを推進するため、プロジェクトのネーミングとロゴを作成し、今後、企業・団体と連携しながら、統一したメッセージを発信していくとしています。

 ◆具体的な活動内容は?
具体的な活動としては、公式WEBサイト(http://www.smartlife.go.jp)がすでに開設され、プロジェクトの趣旨に賛同する企業・団体に、その社員や職員の健康意識向上につながる啓発活動を行ってもらい、また、企業活動を通じて、より多くの人々の健康づくりの意識を高め、行動を変えるよう働きかけてもらうそうです。
すでに、100を超える民間企業・団体(社団法人、財団法人、NPO法人、健康保険組合等)・社労士事務所などが登録を行っているようです。積極的に「社員の健康づくり」に取り組みたいという企業の方は、ぜひ登録してみてはいかがでしょうか。


 これからどうなる?
 年金の「第3号被保険者不整合記録問題」

 ◆問題発生の経緯
サラリーマン(第2号被保険者)の被扶養配偶者である「第3号被保険者」(専業主婦など)について、本来必要とされる「第1号被保険者」への変更届出を行わなかったために、自分の年金記録と実態との間に“不整合”を生じている方が非常に多く(数十万人、場合によっては数百万人)発生している可能性があると推計されています。
これらの方への対応については、いったんは厚生労働省から「運用3号」と言われる特例通知が出されましたが、マスコミ報道でも大きく取り上げられた通り、「不公平である」「正直者がバカを見る」と批判され、この通知は廃止されました。

 ◆厚生労働省に特別部会設置
この問題を抜本的に解決するため、厚生労働省に特別部会が設けられ、現在、解決の方策が話し合われています。
果たして、国民が納得するような“抜本的な解決”を図ることができるのか、まだまだ不透明だと言えますが、現在、法律改正(国民年金法の改正)を目指す方向で動いているようです。

 ◆法改正案の内容は?
 現在検討されている法改正案の主な内容は、次の通りです。
(1)受給資格期間の特例創設(いわゆる「カラ期間」の導入)
(2)カラ期間となった期間への特例追納の実施
(3)特例追納における分割納付、追納保険料の設定

 ◆納得できる制度改正を
 ただでさえ「難しい」「複雑すぎる」と言われる年金制度ですが、保険料をきちんと支払った人が納得できるような制度改正が行われることが望まれています。


 個人事業主と「労働組合法における労働者」

 ◆相次いで出された判決
先日、「労働組合法における労働者」に該当するか否かをめぐる注目すべき判決が相次いで出されましたので、以下にご紹介します。

 ◆業務委託契約・出演契約の性質
1つは、「住宅設備のメンテナンス会社と業務委託契約を結ぶ個人事業主」に関するもの、もう1つは「劇場側と出演契約を結ぶ音楽家」に関するものでしたが、最高裁判所は、個人として働く人の権利を重視して、いずれについても「労働者に該当する」との判断を示しました。
いずれの訴訟でも、一審・二審では、「労働組合法における労働者」とは認められていませんでした。

 ◆「労働組合法における労働者」とは?
一般に、「労働組合法における労働者」とは、賃金・給料等の収入を得て生活する人のことを言います。
そして、「労働組合法における労働者」であると認められれば、憲法で保障する「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の3つの権利が認められ、非常に大きな意味を持ちます。 
例えば、「団体交渉権」が認められれば、労働組合が使用者と交渉することができ、使用者が正当な理由なく労働組合代表者との交渉を拒んでしまえば、いわゆる「不当労働行為」に該当することとされてしまいます。

 ◆今後、企業が注意すべき点は?
企業が経費削減等の理由から外注化を進めていることにより、個人事業主が増えている状況において、今回の判決が、上記のような個人事業主と音楽家が「労働組合法における労働者」に該当すると認めたことには、大きな意味を持ちます。
もちろん、裁判となった事件にはそれぞれ異なる背景・経緯がありますが、今後、同様の働き方をしている人、会社と業務委託契約を結んで働いている技術者やドライバーなどが「労働組合法における労働者」と認められる可能性はあると言えます。
今後、企業においては、業務委託契約を結ぶ等する際には、上記の裁判例を参考に、慎重を期する必要があると言えるでしょう。


 4月からの社会保険関係の制度改正

 ◆「協会けんぽの保険料率」の改定
協会けんぽにおける保険料率が、平成23年4月給与天引き分から、全国平均で9.50%(従来は9.34%)に引き上げられています。
保険料率の高い順にならべると次の通りです。最も高いのは、北海道、佐賀県の「9.60%」、最も低いのは「長野県」の9.39%となっています。
・9.60%:北海道、佐賀県
・9.58%:福岡県
・9.57%:香川県、大分県
・9.56%:大阪府、徳島県
・9.55%:岡山県、高知県、熊本県
・9.54%:秋田県、山口県
・9.53%:広島県、長崎県
・9.52%:石川県、兵庫県、奈良県
・9.51%:青森県、和歌山県、島根県、愛媛県、鹿児島県
・9.50%:宮城県、福井県、岐阜県、京都府、宮崎県
・9.49%:神奈川県、沖縄県
・9.48%:東京都、愛知県、三重県、滋賀県、鳥取県
・9.47%:福島県、栃木県、群馬県
・9.46%:山梨県
・9.45%:岩手県、山形県、埼玉県
・9.44%:茨城県、千葉県、富山県
・9.43%:新潟県、静岡県
・9.39%:長野県

 ◆「出産育児一時金制度」の見直し
出産育児一時金の支給額は、引き続き「原則42万円」となっていますが、直接支払制度を継続したうえで、小規模施設などでは「受取代理」(妊婦などが、加入する健康保険組合などに出産育児一時金の請求を行う際、出産する医療機関等にその受け取りを委任することにより、医療機関等へ直接出産育児一時金が支給される)が制度化され、窓口での負担軽減が図られています。

 ◆在職老齢年金の支給停止基準額の改定
在職老齢年金の支給停止の基準額について、「47万円」が「46万円」に改定されました。
なお、支給停止の基準額は、賃金の変動などに応じて自動的に改定される仕組みとなっており、平成23年度については、平成22年の名目賃金の下落(マイナス2.0%)により、「47万円」が「46万円」に引き下げられました。


 大震災発生に伴う人事・労務への影響

 ◆東京経営者協会による緊急調査
東京経営者協会では、東日本大震災などの発生を受け、3月23日~28日に「東北地方太平洋沖地震による人事・労務への影響に関する緊急アンケート」(同協会の会員企業110社が回答)を実施し、3月31日にその結果が発表しました。
企業の人事・労務においても、多大なる影響が出ています。

 ◆ほとんどの企業が「影響あり」
まず、今回の大震災で「影響を受けた」と回答した企業は94.5%に上りました。
影響を受けた内容としては、多い順に「直接の被災または間接的な原因のため操業・営業時間の短縮、または操業・営業規模の縮小」(57.7%)、「直接の被災または間接的な原因のため操業・営業停止」(28.8%)、「直接の被災により操業・営業が不能」(19.2%)となりました。
なお、上記の「間接的な原因」とは、取引先・納入先の被災、計画停電等のことを指しています。

 ◆勤務体制への影響
次に、従業員に対し勤務体制等何らかの措置を「講じた」と回答した企業は93.3%でした。そのうち、77.3%が「時差通勤(遅い出勤、早帰り)を認めた」、75.3%が「自宅待機をさせた」としています。
そして、「自宅待機をさせた」企業のうち80.8%が、「給与を減額せず100パーセント支給した」としています。

 ◆直接的・間接的な影響
その他、入社式の縮小・延期・中止や、採用活動の延期などのニュースも新聞・テレビ等で報じられています。また、震災の影響は、人事・労務の分野にとどまりません。
被災された地域の企業等においては、「影響を受けた」というレベルで語れる状況でないことは言うまでもありませんが、間接的な影響を受けた企業も非常に多いことが、上記の調査結果からも明らかになったと言えます。


 被災者の就労支援・雇用創出と雇用調整助成金

 ◆プロジェクト第1段階
東日本大震災などの発生を受け、政府が設置した「被災者等 就労支援・雇用創出推進会議」は、被災者の就労支援、雇用創出を促進するため、「『日本はひとつ』しごとプロジェクト」第1段階(フェーズ1)を発表しました。
まずは、復旧事業などによる被災者への就労機会の創出や被災地企業・資財の活用、希望する被災者が被災地以外の地域で就労可能とすることなどを実施する考えです。

 ◆主な施策内容
(1)ハローワークを活用した被災者向けの求人確保ときめ細かな就職支援
(2)雇用調整助成金制度の拡充
(3)3年以内の既卒者を採用する企業への奨励金(被災地に居住する方を採用した場合120万円を支給(従来は100万円))をはじめとする助成金の拡充
(4)震災被害者への失業手当の特例支給
(5)地域障害者職業センターにおける障害者の雇用継続のための特別相談の実施等

 ◆雇用調整助成金の拡充
上記(2)の雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を一時的に休業などさせた場合に、休業手当相当額の一部(中小企業で原則8割)を助成する制度です。
震災被害に伴う経済上の理由により事業活動が縮小した場合、この雇用調整助成金が利用でき、さらに、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県、長野県、新潟県の9県のうち、災害救助法適用地域にある事業所については、次の(A)~(C)の通り、支給要件が緩和されます。
(A)今回の地震に伴う「経済上の理由」により、最近1か月の生産量、売上高などがその直前の1か月、または前年同期と比べ5%以上減少していれば対象となる。
(B)平成23年6月16日までの間については、災害後1か月の生産量、売上高などがその直前の1か月、または前年同期と比べ5%以上減少する見込みである事業所も対象となる。
(C)平成23年6月16日までの間に提出された「計画届」については、事前に届け出たものとして取り扱う。

 ◆その他の特例適用
なお、「9県の特例対象地域に所在する事業所などと総事業量の3分の1以上の経済的関係(取引関係)がある事業所の事業主」と「計画停電の実施地域に所在し、計画停電により事業活動が縮小した事業主」については、上記の(A)(B)が適用されます。


 国民健康保険加入者の高齢者割合が上昇

 ◆厚生労働省の調査結果
厚生労働省の調査によると、自営業者や退職後の年金生活者などが加入する「国民健康保険」の加入者のうち、高齢者(65~74歳)の割合が2020年度に37%と4割に迫る見通しだそうです。
2009年度は31%でしたが、1947~1949年生まれのいわゆる「団塊の世代」の加入が相次ぎ、高齢者の占める割合が過去最高となるようです。

 ◆国民健康保険とは?
国民健康保険は、市町村が運営する健康保険制度で、加入者は約3,600万人です。もともとは自営業者や農家のための健康保険でしたが、最近では年金生活者やフリーターなどの無職者の加入割合が4割近くとなっています。
2008年4月に「後期高齢者医療制度」(75歳以上が加入)が導入され、75歳以上の国民健康保険加入者がそちらに移ったため、医療費の支出が減り、国保の財政は一時的に好転しました。
しかし、今後は団塊世代の加入で再び財政悪化が心配されています。

 ◆約5割の国民健康保険は赤字
健康保険制度には、65~74歳の人の加入が集中することにより国民健康保険の財政が悪化することを防止するため、健康保険組合など他の健康保険と医療費の負担を調整する仕組みがあります。
ただし、所得が少ない高齢者の割合が増えれば、国民健康保険の保険料収入が目減りし、財政は次第に厳しくなる可能性が高まります。

 ◆苦境に陥る市町村
厚生労働省では、国民健康保険の運営が厳しくなると考え、改善策を検討しています。その1つが2014年3月以降に予定されている、新しい高齢者医療制度の導入です。運営主体を市町村から都道府県に広げることで、財政基盤の安定化を狙っています。
もう1つが70~74歳が病院窓口で支払う医療費の負担割合を、「原則1割」から2013年度以降は段階的に「原則2割」に引き上げるというものです。
財政運営が行き詰る市町村が続出する心配が増える中、政府は早急に抜本的改革に取り組む必要があります。


 災害発生時に活用できる公的支援制度

 ◆生活を支え、暮らしを立て直すために
今回のような大震災・大災害が発生した場合、被災者の生活を支え、少しでも早く暮らしを立て直すために、様々な公的支援制度を活用することが考えられます。
公的支援を受けるためには申請が必要となるため、知らないと活用できないままになってしまいます。被災地以外の方も、いざというときのために頭に入れておきたいものです。

 ◆「生活資金」と「住宅再建」
被災してまず困ることとして、生活資金の工面が挙げられますが、生活資金を国が無利子で貸してくれる「生活福祉資金(緊急小口資金)」を利用することができます。
本来は低所得者向けの制度ですが、今回の大震災に伴う特例で、被災者は、所得に関係なく原則として10万円以内(世帯内に死亡者や要介護者がいる場合等は20万円)まで融資が受けられるようになりました。
また、災害が起こった際に重要な問題となるのは住宅再建です。阪神・淡路大震災を契機に作られた「被災者生活再建支援制度」では、住宅の被害状況や再建方法に応じて、最大で300万円まで支給されます。

 ◆社会保険制度の活用も
その他、社会保険制度の活用も重要です。健康保険では、怪我などで働けない場合に最長1年6カ月間、傷病手当金として収入の3分の2が支給されます。地震に伴う怪我なども対象となり、また、要件を満たせば遺族年金や障害年金などの支給対象にもなります。
業務中・通勤中の怪我などが対象の労災保険は、原則として自己負担なしで治療が受け続けられるなど、補償が手厚い制度です。ただし、業務との因果関係が必要なため、「地震が原因であれば対象外」と思われがちですが、仕事中に地震による建物倒壊などで被災した場合も、仕事の環境がもともと危険だったとして労災が適用された事例が過去に多くあります。

 ◆労災保険に関するQ&A
厚生労働省は、「仕事中に地震や津波に遭い、ケガをされた(死亡された)場合には、通常、業務災害として労災保険給付を受けることができます」などとする労災保険に関するQ&A(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000169r3.html)を発表し、また、労災認定を行う都道府県の労働局に対し「天変地異による災害なら業務起因性がないといった予断をもたないように」といった注意を促しています。
公的支援制度も、被災直後の当事者は考える余地がないことが多いので、周りの方が制度を理解したうえで、アドバイスしてあげることも必要です。 

2011/04/01

4月の事務所便り

会社は女性社員に何を求めているか?

 ◆女性社員育成推進のための調査結果
日本生産性本部が行った「コア人材としての女性社員育成に関する調査」の結果が2月中旬に発表されました。
この調査の目的は、「女性社員の育成への取り組み状況や効果的な施策を明らかにし、女性社員育成への取り組みを一層推進していくため」とされています。

 ◆企業が求める「コア人材」としての女性社員の能力
発表された調査結果によれば、企業が女性社員にコア人材として成長していくために高めてほしい能力は、上位から「リーダーシップ力・指導力」(68.0%)、「目標を設定して実現する行動力・変革力」(54.8%)、「組織マネジメントに関する知識」(49.3%)、「内部及び外部に対する交渉力」(48.9%)となっています。
なお、3年前と比較して、課長(相当職)以上の女性が増加した企業の割合は56.0%となっています。

 ◆女性はどこまでの役職を望んでいるか?
一方の働く女性は、どのようなことを考えているのでしょうか。
人事総合ソリューションのレジェンダ・コーポレーションでは、2010年4月入社の新社会人を対象に実施した意識調査の結果を発表しました。
将来希望する役職について尋ねたところ、課長以上の役職を望むと回答した人は男性が約9割(89.3%)、女性が約4割(41.5%)で、2割以上もの差があることがわかりました。
具体的には、女性では「部長になりたい」が18.9%(男性は34.8%)、「課長になりたい」が17.6%(男性は15.7%)、「部長・課長などへ出社したくない」が39.6%(男性は7.6%)「アシスタントでよい」が18.9%(男性は3.1%)でした。

 ◆はたらく女性が興味のある資格は?
また、カウネットが発表した「はたらく女性の資格に関する意識調査」の結果によれば、資格への興味が「ある」と答えた女性は約9割(89.3%)でした。
はたらく女性が興味のある資格については、「アロマテラピー検定・アロマコーディネーター」(15.5%)、「野菜ソムリエ」(15.3%)、「パソコン検定」(14.0%)が上位を占めています。


 初めて公表された「会社に関する国勢調査」

 ◆初めての調査結果を公表
総務省では、“会社版の国勢調査”といえる「経済センサス基礎調査」の結果を公表しました。同省がこの調査を行って公表したのは初めてのことです。
今後は、5年に1度、事業所数、従業員数、業種、所在地などに関する調査を継続していくとのことです。

 ◆事業所数は約604万カ所、従業員数は約6,293万人
この調査によれば、国内の総事業所数は604万4,549カ所、従業員数は6,293万1,350人でした(2009年7月1日現在)。

 ◆「卸売業・小売業」が事業所・従業員ともに最多
事業所数の産業別割合では、全体の4分の1を占めた「卸売業・小売業」(25.7%)が最多で、「宿泊業・飲食サービス業」(12.9%)、「建設業」(9.7%)の順で続いています。
従業員数の割合では、「卸売業・小売業」(20.2%)が最多で、「製造業」(15.7%)、「医療・福祉」(10.2%)が続きました。

◆女性の割合、正社員の割合が多い業種は?
従業員数を男女別に見てみると、女性の割合が多い業種は「医療・福祉」(74%)、「宿泊業・飲食サービス業」(60%)という結果でした。
社員に占める正社員の割合が多い業種は、上位から「電気・ガス・熱供給・水道業」(91%)、「製造業」(77%)、「建設業」(77%)で、逆に正社員の割合が少ない業種は「宿泊・飲食サービス業」(23%)、「生活関連サービス・娯楽業」(45%)でした。


 仕事にも多大な影響を与える花粉症

 ◆約半数の人が花粉症
現在、非常に猛威を奮っている花粉症ですが、日本経済新聞が調査会社(マイボイスコム)を通じて行った「花粉症」に関する調査(20~60歳代の男女1,000人が対象)の結果によれば、花粉症に「かかったことがある」人は47%、「かかったことがない」人は53%とのことです。
花粉症にかかっている人のうち、約半数の人は「10年以上前から」花粉症の症状があるとのことです。

 ◆花粉症への対策は?
花粉症について「治療・予防の対策をしているか」という質問では、「している」と回答した人が76%、「していない」と回答した人が24%でした。対策費用としては「1,000円以上5,000円未満」の人が最多(51%)でした。
花粉症の人がこれまでに行ったことのある治療・予防の対策(複数回答)については、上位から多い順に「マスクをする」(74%)、「市販の薬を使う」(57%)、「うがいをする」(54%)、「通院する」(51%)との結果でした。
ただ、30歳代男性で「何も対策をしていない」と回答した人は30%以上もいました。

 ◆花粉症で何が困るか?
「花粉症にかかって何が困るか」という質問(複数回答)に対しては、以下の回答結果となりました。
(1)仕事に身が入らない(61%)
(2)イライラする(43%)
(3)気分がふさぐ(41%)
(4)疲れやすくなる(33%)
(5)睡眠不足になる(28%)

 ◆企業の生産活動にも大きな影響
上記の結果から見ると、もはや「たかが花粉症」とは言えず、花粉症患者の仕事のパフォーマンスが落ちることは、企業にとっても大きな損失と言えるでしょう。


 長時間労働を防止する「勤務間インターバル制度」

 ◆どのような制度なのか?
大手企業を中心として、「勤務間インターバル制度」を導入する動きが広がっているそうです。あまり聞きなれない制度ですが、導入するとどのような効果があるのでしょうか。

 ◆EUが先駆的に導入
この「勤務間インターバル制度」は、「勤務間インターバル規制」とも言われるもので、従業員の方の仕事が終わってから次に仕事を始めるまでに、一定の休息を義務付ける制度のことです。
欧州連合(EU)では、この制度を先駆的に導入しています。具体的には、加盟国が法制化しており、加盟国の法律の基礎を定めた「EU労働時間指令」(1993年制定)により、「最低11時間の休息」を定めています。
これに従えば、原則として1日13時間以上は働くことができず、「週労働時間78時間以下(残業を含む)」と義務付けることになり、必然的に定時後の残業に規制がかかり、過度な長時間労働を防止する仕組みです。

 ◆日本での導入状況は?
日本でも、三菱重工業の労働組合が、今年の春闘において製造業としては初めて経営側に要求しており、NTTグループでも労使協議を始めているそうです。その他にも、大企業を中心として導入に前向きな企業が増えているそうです。
三菱重工業の労働組合では、「従業員がきちんと休息を取って健康が確保されれば、必ず生産活動にプラスになる」と主張しており、会社側も「長時間労働抑制、健康管理に寄与する制度としての要求として受け止めている」と話しています。

 ◆本格的に取り組む企業が増加するか
夜間・休日の仕事が多くなる通信工事の会社などでも、労使合意に基づく制度化が進んでいるようであり、今後、本格的に取り組む企業が増えていきそうです。


 自治体が実施する「婚活」が大人気

 ◆「婚活パーティー」が苦手な人にも
最近、自治体が行っている「婚活」支援が人気を呼んでいます。
希望の相手がいれば一対一のお見合いを設定する仕組みなどで、大人数のパーティーに抵抗を感じる人や、費用の安さに注目した人の登録が目立っているようです。

 ◆対象者は在住者・在勤者
兵庫県の「縁結びプロジェクト」では、県から委託を受けた公益財団法人が実施しており、県内在住者または在勤者を対象としています。
登録の際には、本籍地の自治体が発行する「独身証明書」などの書類のほか、プロフィールや顔写真の提出が必要となり、申込書には、相手に求める年齢、年収、学歴などの条件を記入します。
会員は県内10カ所の「出会いサポートセンター」で申込書のファイルを閲覧することができ、希望する相手がいれば、直接会いたい旨を同センターに伝えるという仕組みです。

 ◆費用の安さと信頼性が魅力
こうした自治体による「婚活」支援制度の人気の高さには理由があります。費用の安さと信頼性の高さです。
民間の結婚相談所を利用した場合、初期費用や月会費の負担が10万円以上となることが多くありますが、「縁結びプロジェクト」では、登録料の3,000円だけしかかかりません。
また、個人情報を保護するため、お互いの同意がない限り、住所や電話番号などが開示されることはありません。

 ◆親向けのお見合いも
奈良県でも婚活支援が行われています。「なら出会いセンター」では、「結婚応援団」と銘打ち、2005年7月以降、出会いの場を提供するイベントなどを約1,500回も実施しているそうです。これまで交際に発展したカップルは6,100組以上で、報告があったケースだけでも169組の夫婦が誕生しているそうです。
自治体がこうした活動を積極的に支援することで、晩婚化や少子高齢化を緩和させるきっかけになるのではと期待されています。


 「公益通報者保護法」の実効性は?

 ◆「公益通報者保護法」とは?
公益通報者保護法は、企業の不祥事が相次いで明らかになったことを受け、法令違反行為を労働者が通報した場合に、解雇等の不利益な取扱いから保護し、また、事業者のコンプライアンス経営を強化することを目的として、平成18年4月に施行されました。
しかし、現在、この法律の実効性を疑問視する声が上がっています。消費者庁が実施した調査でも労働者の6割強が同法を「知らない」と答えるなど、課題は山積です。

 ◆保護の対象となる通報内容
同法では、保護の対象となる通報内容を特定の法律(会社法や食品衛生法など433種類の法令)に違反した場合に限定しています。
しかし、専門家からは「法律家でも難しい法令違反の判断を、一般の通報者に求めるのは無理がある」との指摘があります。

 ◆制度スタート後の実態
消費者庁が昨年10月に行った公益通報者保護制度に関する調査においては、制度を導入している2,604事業者のうち、約44%が過去1年間に通報件数がゼロだったと回答しています。
また、労働者(約3,000人)を対象とした調査では、約半数の人が「会社の不法行為を知っても通報しない」などと答え、その理由を「解雇や不利益な取扱いを受けるおそれがある」ためとしています。

 ◆内部告発サイトが問題に
一方、企業は、内部通報制度整備の重要性を認識し始めています。内部通報窓口を設置する以外にも、外部の法律事務所に相談窓口を設けるなど、新たな対策を講じている企業も出てきました。
最近では、インターネットの掲示板に比べて匿名性が高い「内部告発サイト」を通じた匿名の告発や暴露が増えています。こうした動きは今後も増える可能性が高いとされており、内部通報制度が有効に機能しなければ、重大な企業の情報がネット上に流れる危険性があると言われています。


 「天引き貯蓄」制度を有効活用

 ◆資産形成の王道!
住宅購入や老後の準備などのため、将来を考えると様々なお金の準備が必要となります。そこでおススメなのが「天引き貯蓄」制度です。
毎月の給料が支給される段階で貯蓄額が自動的に差し引かれるため、「資産形成の王道」とも言われています。

 ◆3種類の財形貯蓄制度
天引き貯蓄の筆頭格は、厚生労働省が所管する「財形貯蓄制度」です。同省の調査によれば、社員数1,000人以上の大企業の約8割が従業員向けに実施しているということです。 
財形貯蓄には「一般財形貯蓄(一般財形)」、「財形住宅貯蓄(住宅財形)」、「財形年金貯蓄(年金財形)」の3種類があります。預け先は、勤務先企業が契約する銀行の定期預金が一般的ですが、投資信託や生命保険などを選べる場合もあります。

 ◆それぞれにメリット
「一般財形」は3年以上積み立てることが条件ですが、開始から1年経てば目的を問わず引き出すことが可能です。ただし、預け先の銀行ATMから引き出せるわけではなく、会社での手続きが必要です。
一方、「住宅財形」と「年金財形」はそれぞれ「住宅資金」「老後資金」と目的がはっきりしています。原則として5年以上積み立てれば、利息などが非課税となる特典があります。
しかし、目的以外の理由で引き出すと、引き出しが行われた月から遡って5年間に生じた利息のすべてが20%の課税となるため注意が必要です。

 ◆独自の融資制度の利用も
財形貯蓄をすると、独自の融資制度を利用することも可能で、財形住宅融資(財形持家融資)では購入の他、増改築やリフォーム資金を借りることができます。返済期間は最長35年、金利は5年固定で、今年2月時点では年1.5%と、民間銀行より低い金利となっています。また、形式上は勤務先の社内融資になるため、年収などが融資審査で重視されず、銀行の住宅ローンは借りられなくても、財形融資は借りられる可能性があります。


 医療分野・介護分野の生産性が低迷

 ◆全産業平均の約6割止まり
成長分野として期待されている医療・介護サービスの生産性は、全産業平均の約6割にとどまり、非常に低迷しているようです。
医療・介護サービスの需要は今後ますます拡大し、成長産業としての期待も高まりますが、生産性が低いままでは問題が多いものと思われます。

 ◆「生産性」とは何か?
ここでいう「生産性」とは、働く人1人が生み出す付加価値額(あるいは生産量をあらわす労働生産性)を指します。
労働者に備わった技術や知識、設備の効率性などによって変化し、中長期的にみると賃金はほぼ生産性に比例します。経済成長率も、長期的には生産性の伸びによって決まるとされています。

 ◆伸び悩む医療・介護産業
総務省の調査をみると、社会福祉・介護業の従業員1人当たりの売上高は年362万円、医療は876万円となり、サービス産業平均の1,083万円を下回っています。
その理由として、参入障壁があり事業者間の競争が乏しく、生産性を高めようとする動機づけが働きにくい点、福祉サービスの料金は公定価格が基本で、サービスの差が生まれにくい点が挙げられます。
福祉分野で働く人は、ここ5年で約100万人も増え、労働者全体の1割を超えました。しかし1人当たりの名目賃金は、2000年からの10年間で16.6%も下がっています。

 ◆「規制緩和」がカギになるか
このような状況を打破するため参考になると言われるのが、イギリスなどの例です。イギリスでは、財政支援などで政府が関与しながら、病院や施設同士の競争を促し、生産性を高める制度が試みられています。
患者や高齢者が多様な選択肢から医療や介護施設を自由に選ぶと、サービスの質が高く、早く退院できる施設を選ぶようになるため、財政支出の抑制にもなります。


 年金保険料「免除・猶予制度」の活用

 ◆保険料の納付率は過去最低に
2009年度における国民年金保険料の納付率が59.8%と、過去最低となりました。
保険料を納めないと、将来受け取れる年金が減ったりまったく受け取れなくなったりすることから、こうした事態を避けるための制度を知ることが必要です。

 ◆滞納者は増加傾向に
国民年金は、すべての国民が加入することが義務付けられた年金制度であるにもかかわらず、滞納者は増加傾向にあります。これは年金制度への「不信感」や「不安感」が増したことに加え、正社員と比べ所得の低いパートタイム労働者が増えたことも一因とされています。
また、大学生の就職内定率が改善されなければ、パート社員やアルバイトとして働く若者が増え、未納者はますます増える可能性があります。

 ◆将来確実に受け取るために
「所得が少なくなった」という理由で国民年金保険料を納められなくなった人には、免除や猶予の制度が設けられています。
年齢に関係なく所得の低い人が利用でき、免除額が所得基準に応じて変わる「免除制度」、そして、20歳以上の学生が利用できる「学生納付特例制度」、2005年4月に10年間の時限措置として導入され30歳未満の若者を対象とした「若年者納付猶予制度」です。
これらの制度には、所得基準などが設けられているため、利用するには自分が対象となり得るかの確認が必要です。

 ◆書類1枚で大きな差が
免除や猶予の制度を利用する利点は2つです。
1つは障害年金や遺族年金の受給資格期間に算入されるという点です。例えば、全額免除を受けていれば、ケガや病気で障害者になったり、死亡したりした場合でも、障害年金を本人が受け取れたり、残された配偶者や子供が遺族年金を受け取れたりします。
もう1つは、老齢年金の受給資格期間に算入されるという点です。老齢年金は国民年金に原則25年間加入していないと受給できません。未納状態が長く続いて受給資格期間が不足している人は将来年金を受け取れなくなりますので、免除や猶予の制度を利用して、保険料未納期間をなくすことが必要です。


 人は何のために働いているのか?

 ◆800人のビジネスパーソンを対象に調査
株式会社インテージから、「ビジネスパーソン意識調査」(仕事に対する意識調査)の結果が発表されています。
この調査は、今年2月上旬に関東(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)の20~59歳のビジネスパーソン男女800名を対象として行われました。

 ◆何のために働いているか?
まず、「あなたは、何のために働いているか」との質問では、回答の1位が「生活のため」(89.6%)、2位が「お金を稼ぐため」(72.0%)、3位が「自分を成長させるため」(31.4%)、4位が「プライベートを充実させるため」(28.5%)、5位が「自己実現のため」(18.6%)でした。

 ◆今の仕事に満足しているか?
次に、「今の仕事に満足しているか」との質問では、「満足している」が10.6%、「やや満足している」が36.4%で、合わせて約半数の人が満足を感じているとの回答でした。
性別・年代別では、男性は40代、女性は30代と50代での満足度が高く、男性の20代は最も満足度が低い傾向がみられました。

 ◆転職したいと思っているか?
さらに、「今後、転職したいと思っているか」との質問では、「転職志向者」の合計(1年以内~いつかは転職したいの合計)は42.1%で、「今のところ転職するつもりはない」が49.4%でした。
性別・年代別にみると、「今のところ転職するつもりはない」が最も多いのは、女性の50代(72.0%)で、次いで男性の40代(57.0%)でした。

2011/03/08

3月の事務所便り

 学生が「行きたい会社」と「行きたくない会社」

 ◆1万人以上が回答
株式会社毎日コミュニケーションズでは、2012年卒業予定の学生を対象に実施した「大学生就職意識調査」の結果を発表しました。この調査は1979年から毎年実施されているものであり、今回は、全国の大学生・大学院生10,768名が回答しています。
この調査結果から、学生たちの就職に関する考え方、行きたい会社・行きたくない会社に関する本音が垣間見えます。採用活動の際の参考にしてみてはいかがでしょうか。

 ◆学生たちの就職に対する考え方は?
学生の就職観についての質問では、上位から、「楽しく働きたい」(32.6%)、「個人の生活と仕事を両立させたい」(21.2%)、「人のためになる仕事をしたい」(17.5%)、「自分の夢のために働きたい」(11.0%)の順でした。
逆に、「出世したい」(1.1%)、「収入さえあればよい」(1.6%)、「社会に貢献したい」(6.3%)などの回答は少なくなっています。

 ◆どんな会社に行きたいか?
行きたい会社の規模に関する質問では、「大手企業志向」が41.4%(前年比5.6ポイント減)、「中堅・中小企業志向」が53.4%(同5.8ポイント増)となり、中堅・中小企業への就職を希望する人の割合が大幅に増えています。
また、就職企業選択の際のポイントに関する質問では、「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」(43.9%)、「安定している会社」(22.6%)、「働きがいのある会社」(22.0%)、「社風が良い会社」(17.2%)、「これから伸びそうな会社」(12.1%)が上位を占めました。

 ◆行きたくないのはどんな会社?
逆に、行きたくない会社に関する質問では、「暗い雰囲気の会社」(44.6%)、「ノルマのきつそうな会社」(32.7%)、「仕事の内容が面白くない会社」(22.4%)、「転勤の多い会社」(19.7%)、「休日・休暇がとれない(少ない)会社」(18.0%)の順に多くなっています。




外国人の新卒採用増加と海外赴任を望まない日本の若者

 ◆増える新卒採用の外国人
大手企業を中心に、新卒の外国人採用に力を入れる動きが目立ってきています。
IHIでは、すでにスタートしている韓国での新卒者の採用活動に加えて、イギリスでも、2011年の入社を対象とした会社説明会を始めており、NTTコミュニケーションズでは、2012年の春から、約20名(従来の2倍強)の新卒外国人を採用するとしています。
ソニーでは、中国やインドなどの学生を中心に、日本の新卒採用に占める外国人の割合を、2013年度をめどに全体の30%(従来の約2倍)にまで高めるとしています。また、「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングでは、2012年に、なんと、新卒者の約8割にも相当する1,050人の外国人を採用する方針を打ち出しています。

 ◆海外事業の強化を見据えて
外国人採用増加の背景には、企業が、将来の海外事業の強化を見据え、国籍の区別に関係なく人材を採用し、その際の派遣要員として育成すること、企業のグローバル競争力を高めることなどがあります。
これらの採用企業の動きに対応して、リクルートマネジメントソリューションズでは、国内の8,000社が新卒採用の際に取り入れている「SPI2」(能力と性格の適正検査)について、英語版と中国版を開発したとのことです。

 ◆海外赴任を望まない日本人
最近は、「時差のある海外で忙しく働きたくない」「治安や住環境が心配」「日本で平凡に暮らしたい」などの理由から、海外赴任や転勤を望まない「内向き思考」の若者が増えていると言われています。
産業能率大学の調査では、「海外で働きたくない」と回答した人は新卒者のうち49%で、9年前の調査と比較すると約20ポイントも減ったそうです。
そんな中、文部科学省、経済産業省では、高度な教育・研究に力を入れる大学(リサーチ・ユニバーシティ。東京大学、早稲田大学など12大学)と大手企業(商社、メーカー、運輸など16社)が連携を行い、国際競争を勝ち抜ける人材を育成・登用する新たな枠組み整備に乗り出すと発表しました。
厳しい国際競争の中、専門知識を備えた想像力豊かな「世界で勝てる人材」を、日本国内で育成するのが狙いのようです。




 職種による平均年収の違いは?

 ◆約3万5,000人を調査
総合人材サービス会社の株式会社インテリジェンスから、「職種別平均年収2010-2011年版」が昨年末に発表されました。
これは、同社が運営する「DODA転職支援サービス」に登録(2009年8月から2010年7月末まで)した転職希望者のうち、25~39歳の約3万5,000人、59職種の給与データを集計したもので、非常に参考となるデータとなっています。

 ◆6割以上の職種で平均年収が減少
全職種の平均年収は450万円(前年比6万円減少)であり、3年連続で前年を下回りましました。職種別でも、「59職種」のうち「36職種」で減少しています。
職種別の平均年収ランキングのベストテンは、次の通りとなっています。
(1)「投資銀行業務」…891万円
(2)「ファンドマネジャー・アナリスト・ディーラー」…654万円
(3)「コンサルタント」…607万円
(4)「経営企画・事業企画・新規事業開発」…607万円
(5)「ITコンサルタント」…599万円
(6)「MR」…599万円
(7)「プロダクトマネジャー」…597万円
(8)「法人営業(メガバンク・地方銀行・証券)」…576万円
(9)「プロパティマネジャー・不動産専門職」…543万円
(10)「セールスエンジニア・FAE」…542万円

 ◆「企画・事務職」部門の平均年収は?
なお、「企画・事務職」部門については、上位から、「知財・特許」506万円、「マーケティング・商品開発」498万円、「法務」493万円、「財務」488万円、「広報」472万円、「経理」445万円、「人事」443万円、「購買・物流・貿易」425万円、「総務・庶務」410万円、「秘書」409万円、「事務・オフィスワーク」311万円となっています。




 パート労働の問題点と今後の改正について

 ◆様々な問題点が
パート労働については、不安定な雇用、正社員との待遇(賃金・労働条件)の格差、容易な労働条件の引下げ、権利行使や団結権の抑制などについて、多くの問題点が指摘されています。
それらの問題点を解消するため、パートタイム労働法(正式名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」については、平成19年に改正が行われ、平成20年4月1日から施行されています。

 ◆前回の改正からまもなく3年が経過
上記の改正法の附則では「政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律による改正後の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、当該規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とされていました。
そして先日、改正法の施行後3年目を迎えていることから、今後のパートタイム労働対策について検討を行うための「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」が厚生労働省内に立ち上げられました。

 ◆今後の法改正に向けて
この研究会は、(1)パートタイム労働の実態、(2)パートタイム労働の課題、(3)今後のパートタイム労働対策について検討することを大きな目的としています。
パート労働者のさらなる待遇改善を図るため、より具体的には、「通常の労働者との間の待遇の異同」、「通常の労働者への転換の推進」、「待遇に関する納得性の向上」「パートタイム労働法の実効性の確保」について、今後議論が重ねられ、今後の法改正に向けて議論が深められていくと思われます。
企業にも大きな影響を与えかねないパート労働者の取扱いについて、今後の議論の行方を見守りたいところです。




 成長分野に対して支給される奨励金

 ◆「健康分野」「環境分野」への奨励金
厚生労働省は、「成長分野等人材育成支援事業」の一環として、新たな奨励金を創設しました。
これは、雇用創出効果が高い「健康分野」「環境分野」において人材育成に取り組む事業主に対して、一定の額を支給するものです。詳しい内容を見ていきましょう。

 ◆支給対象事業主の要件
現在、政府は「新成長戦略」の中において、「健康分野」「環境分野」を重点強化の対象と位置付けています。これらの分野の成長を支え、生産性を高めるためには、人材の確保と育成が欠かせないとして、「健康分野」「環境分野」の事業主が負担した訓練費用を支給しようというものです。
支給の対象となる事業主の要件は、「健康、環境分野および関連するものづくり分野の事業を行っていること」と「雇用期間の定めなく雇用した労働者、または他分野から配置転換した労働者を対象に、1年間の職業訓練計画を作成し、Off-JT(通常の業務を離れて行う職業訓練)を実施すること」です。

 ◆職業訓練コースに求められる内容
支給の対象となる職業訓練コースは、(1)1コースの訓練時間が10時間以上であること、(2)Off-JTであること、(3)所定労働時間内に実施される訓練が総訓練時間数の3分の2以上であることなどの要件を満たす必要があります。
支給額は、対象者1人当たり20万円が上限とされ、中小企業が大学院を利用した場合については50万円が上限とされます。

 ◆注意事項
なお、この奨励金は、「キャリア形成促進助成金」などと同一の事由で同時に支給を受けることはできないことに注意が必要です。
その他、さらに詳しい要件、支給申請手続き等については、厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/dl/f-top-c.pdf)で確認することができます。




 確定拠出年金制度における「選択制」

 ◆広がりを見せる「選択制」
運用次第で将来の受給額が変わる「確定拠出年金制度」(日本版401k)が導入されて約10年が経ちましたまが、導入企業の従業員のうち、希望者だけが確定拠出型を選択することのできる「選択制」が広がってきているようです。

 ◆「確定拠出年金制度」とは?
年金には、全国民共通の基礎年金(1階部分)と会社員の厚生年金など(2階部分)に加え、個人や企業が任意に上乗せを行う部分(3階部分)があります。
そして、3階部分の運用方法には大きく分けて「確定給付型」と「確定拠出型」とがあり、前者は将来の給付額が確定しているもので、後者は掛金が確定しているものです。
確定拠出年金制度は、毎月、掛金を積み立てて、その資金を運用しながら老後の備えをする制度であり、会社が掛金を負担する「企業型」と個人が掛金を負担する「個人型」とがあります。

 ◆給与の減額部分を財源に
確定拠出年金は、本来、企業が掛金を拠出し、それを従業員本人が運用しますが、資金に余裕のない企業にとっては導入が難しいものです。そこで、掛金を上積みするのではなく、給与から確定拠出年金に拠出する金額を減額し、運用を希望する従業員は拠出金額を掛金として運用し、希望しない従業員は従来通りの給与を受け取るという方式が増えています。
「給与が減っては意味がないのでは?」と思われるかもしれませんが、受け取る給与額は掛金を含めると従来通りの金額となり、給与が減るとその分の税金や社会保険料の負担も減ります。また、掛金は全額、所得控除の対象となるため、節税効果も生まれます。

 ◆デメリットはあるか?
しかしながら、デメリットもあります。給与を減額して掛金に移す方式では、給与額で決定される厚生年金保険料の等級が下がる可能性があり、将来の年金受取額が減るおそれがあります。
総合的には利点が大きいケースがほとんどですが、給与水準や年齢などによって変わることもあるため、個別に確認することが必要です。




 有料老人ホーム入居時の契約トラブルに注意!

 ◆入居希望者が増加中
高齢化社会を迎える中、介護付き有料老人ホーム等への入居を希望する人が増えているそうです。
介護体制や設備などをチェックするため、希望先のホームに体験入居する方も多いようですが、入居一時金や月額費用の金額など、費用面の確認を怠ったばかりにトラブルに発展するケースも見受けられるようです。

 ◆有料老人ホームとは?
有料老人ホームは、食事・介護・洗濯・掃除などの家事、健康管理のいずれかのサービスを提供する施設で、特別養護老人ホームなど老人福祉施設以外の高齢者施設のことをいいます。
事業者は、サービス内容、建物の規模、職員配置、医療施設との提携内容等を、都道府県に対して届け出る義務があり、都道府県も必要があれば立入り検査や改善命令を行うことができます。
しかし、都道府県が行う監督は不十分だと言われており、入居者との契約に関するトラブルも非常に多いようです。特に、入居費用などお金をめぐってのものが多く、自宅を売却して入居費用を調達する人も少なくないだけに、お金にまつわるトラブルは深刻です。

 ◆十分な説明を求めることが必要
介護付きホームに限ったことではありませんが、有料老人ホームの特徴として、入居の際に利用権の対価を支払う点が挙げられます。「利用権」とは、居室のほか、食堂や浴場などの共有部分・設備を利用する権利のことですが、高齢者の平均余命を勘案した想定入居期間(償却期間)分を、入居時に一時金として支払う仕組みです。
この一時金について、事業者は返還義務のある部分については保全措置を講じる必要がありますが、保全措置を講じていないケースが目立つようです。
利用権は一般に権利性が弱く、事業者が破綻してしまうと、事業を引き継ぐ者が現れない限り権利も消滅してしまいます。したがって、高額な一時金を支払う際には、事前に十分な説明を求めてから契約を結ぶ必要があります。

 ◆事前に費用のチェックを
ホーム内で利用する物品やサービスについても、「気軽に利用していたら、後から多額の請求が来てトラブルになった」というケースもあるようで、定額で支払う月額費用に含まれるものなのかそうでないのかを、事前に確認しておく必要があります。




 社会保障・税の「共通番号制」開始に向けて

 ◆2015年スタートの方針
政府の「社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会」は、国民一人ひとりに番号を配り、2015年1月に利用を開始する基本方針を明らかにしました。
年金手帳や健康保険証などの機能をICカード1枚にまとめて配布し、利便性を向上させるもので、秋の臨時国会での関連法案の提出を目指しています。

 ◆「共通番号制」導入でどうなる?
共通番号制導入に伴って配布されるICカードに、年金手帳、健康保険証などの機能を持たせることにより、個人にかかっている医療費などを国が一元的に把握することができます。政府は、自分の過去の医療費や年金給付などをインターネット上で確認できる「マイ・ポータル」の創設も検討しています。
共通番号制度導入により、金融資産や不動産取引などから発生する総合的な所得を国が把握しやすくなると思われます。

 ◆低所得者への新たな給付の検討
このような正確な所得把握を前提に議論されているのが、減税と現金給付を組み合わせることにより低所得者を支援する「給付付き減税控除」です。これは、減税の恩恵が十分に行き渡らない低所得者に現金を給付する仕組みであり、消費税増税における低所得者対策の一環として位置付けられているようです。
経済界などでは、「消費税増税の環境整備になる」などとして、正確な所得把握に繋がる番号制導入に前向きな声も多いようです。

 ◆プライバシーへの配慮は不可欠
ただ、国が所得を正確に把握するためには、金融機関などにも番号活用を義務付ける必要があり、それにより民間にも事務コストが発生する可能性があります。企業にも、従業員の給与等を管理している社内の番号を納税者番号に結び付けるシステム構築などが求められる可能性もあり、負担がないわけではありません。
また、番号を利用する範囲が広がれば、取り扱う個人のプライバシー情報も増えるため、情報流出の危険性も広がります。共通番号を利用する範囲や番号の目的外利用を防ぐ仕組みについて、今後さらに議論を重ねることが必要でしょう。




 「継続雇用制度導入」の特例措置がまもなく終了

 ◆特例措置は3月末まで
現在、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」により、65歳未満の定年を定めている事業主は、「高年齢者雇用確保措置」(定年の定めの廃止、定年年齢の引上げ、継続雇用制度の導入のいずれか)を実施する必要があります。
このうち、「継続雇用制度の導入」については、希望者全員を対象とするか、労使協定により対象者の基準を定めなければなりませんが、現在は特例措置として、中小企業(300人以下)の場合は、対象者の基準を就業規則で定めることが可能です。
この措置は、今年3月31日で終了します。中小企業では、対象者に関する基準を就業規則で定めている場合、労使協定により基準を定めた旨を就業規則に定め、労働基準監督署への届出を行わなければなりません。

 ◆関連する奨励金
定年の引上げや定年の定めの廃止等を実施した場合に支給される助成金として、「中小企業定年引上げ等奨励金」があります。
この「中小企業定年引上げ等奨励金」は、65歳以上への定年の引上げや定年の定めの廃止等の措置を講じ、6か月以上経過している中小企業事業主に対して、企業規模に応じて一定額が支給されるものです。また、70歳以上への定年の引上げまたは定年の定めの廃止等を実施した場合には、上乗せ支給があります。
支給額は、「65歳以上への定年の引上げ」の場合、企業規模1人~9人で40万円、10人~99人で60万円、100人~300人で80万円です。「70歳以上への定年の引上げまたは定年の定めの廃止」の場合、上乗せ額を含むと、企業規模1人~9人で80万円、10人~99人で120万円、100人~300人で160万円です。

 ◆各種公的支援の活用
この他、雇用保険から支給される高年齢雇用継続基本給付金や、64歳以上の従業員については、事業所税の従業員割の対象外になるなどの税制上の優遇措置などの公的支援があります。これらを効果的に活用し、高齢者が長く働ける企業を目指してみてはいかがでしょうか。



 高額医療費における患者の立替払いが不要に

 ◆2012年度から全面スタート
厚生労働省は、がんや難病などの高額な治療薬が増え、患者の立替えの負担が大きくなっている現状を踏まえ、「高額療養費制度」について、上限額を超える部分の患者の立替払いをなくす方針を示しました。
2012年度から、すべての医療機関・薬局で対応させる方針のようです。

 ◆高額療養費制度とは?
高額療養費制度は、患者の収入に応じて医療費に一定の金額(自己負担限度額)が設けられ、それを超えた場合に、一旦、病院の窓口で本人負担分を支払い、支給申請をすることにより、患者が加入する保険者から後から払い戻される仕組みです。
1カ月の自己負担限度額は、70歳未満で「上位所得者」(標準報酬月額53万円以上)の場合は15万円強、「一般所得者」の場合は8万円強、「低所得者」(住民税が非課税)の場合は35,400円です。
現在の制度では、原則として医療費の3割を医療機関・薬局の窓口で支払い、上限額を超える分について、後から払い戻しを受けます。

 ◆「限度額適用認定証」の発行
制度の変更後は、費用の「立替え」と「払戻し」の手間がかからなくなります。
事前に、自分の加入する保険者から所得区分の記載されている「限度額適用認定証」の発行を受け、医療機関・薬局の窓口に提示すれば自己負担の上限額までの支払いで済み、超過分の医療費については、医療機関・薬局が患者に代わって保険者に請求します。

 ◆治療薬などが高額化の傾向
最近は、がんや難病などの治療薬が高額になる傾向があります。例えば、血液がんの一種の慢性骨髄性白血病の治療薬(グリベック)の場合は、1カ月あたりの薬代が約33万円、同種の治療薬(タシグナ)の場合は約55万円かかるそうです。
患者が一度に多額の現金を用意する必要がなくなる今回の制度変更は非常に有効です。2011年度から、まずは一部の医療機関・薬局で対応可能となり、2012 年度からはすべての医療機関・薬局で対応できるようです。