2005/06/01

平成17年6月号

成果型退職金制度をご存知ですか

従来の一般的な退職金制度は、退社時の賃金と勤続年数をもとに計算されました。支払い総額は退職時の基本給に、勤続年数が長くなるほど有利となる係数を掛け合わせて算出されます。つまり、一人ひとりの仕事の成果よりも長く勤め上げたことを評価する退職金の仕組みといえます。
しかし、バブル崩壊の影響等により売上が停滞ぎみの企業にとっては、どの社員にも同じように高水準の退職金を約束するのは負担である、と考えるようになってきました。
そこで「成果型退職金制度」が最近になって急速に広がり、厚生労働省によるとすでに大企業の36%が当制度を採用し、今年も大手企業の導入が続いています。
◆成果型退職金制度とは
成果型退職金とは、社員の能力や貢献度、勤続年数を点数に換算し、それをもとに退職時の一時金を算出する方法です。これは、ポイント制退職金とも呼ばれており、毎年の点数を累積し、退社時に一定の係数をかけたものが支払額になります。
◆成果型退職金制度の特徴
成果型退職金は基本給と連動せず、勤続年数による係数の傾斜は緩やかになっています。毎年の成果や役職を反映してポイントを積み上げるため、同じ勤続年数であってもより上の等級に格付けされた者、または早く昇格した者が退職金の額も多くなり、その意味で能力主義賃金を反映したものであるといえます。そのため、企業によっては、仕事で高い成果を上げることで退職金も増える、と強調して社員のやる気を促そうとしています。
◆成果型退職金制度のメリット
成果型退職金制度は、企業からみて以下のようなメリットがあります。
1 昇給による退職金の自然増加を回避することができるため、人件費の削減につなげることができる
2 企業への貢献度を反映させた制度であるため、社員の意欲・モラールの向上が期待できる
3 人材流動化に対応しやすいため、中途入社員にとって不利にならない
◆成果型退職金制度を導入する際の留意点
成果型退職金は「成果を上げた人には報いる」のが前提であるため、毎年の査定を公平に運用できるかが重要になります。評価結果に社員が納得できなければ、不満や不公平感が高まって士気に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。そのため、管理職に対して人事評価の研修を実施する企業もあります。

高年齢者雇用安定法

高年齢者雇用安定法が改正されました。65歳未満の定年を定めている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、1定年年齢の引上げ、2継続雇用制度の導入、3定年の定めの廃止のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません。
この高年齢者雇用確保措置の年齢は、年金(定額部分)の支給開始年齢の引上げスケジュールに合わせ、平成25(2013)年4月1日までに、62歳から65歳まで段階的に引き上げられます。ただし、事業主は労使協定により、2の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、2の措置を講じたものとみなされます。
高年齢者雇用確保措置のうち継続雇用制度には、勤務延長制度と再雇用制度があります。勤務延長制度とは、定年年齢が設定されたまま、その定年年齢に到達した者を退職させることなく引き続き雇用する制度です。一方、再雇用制度とは、定年年齢に達した者をいったん退職させた後再び雇用する制度です。
継続雇用制度の雇用条件については、高年齢者の安定した雇用の確保が図られたものであれば、必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用でなくてもよいとされています。また、常用雇用のみならず、短時間勤務や隔日勤務なども含まれます。
また、継続雇用制度の対象者に係る「基準」については、労使協定で基準を定めることとされました。これは、継続雇用の対象者の選定にあたって、企業によって必要とする能力や経験等が様々であると考えられ、労使間で十分に話し合い、その企業に最もふさわしい基準を労使納得の上で策定するという仕組みを作ることが適当だからです。
ただし、労使で十分に協議の上、定められたものであっても、事業主が恣意的に継続雇用を排除しようとするなど、本改正や他の労働関連法規に反する、あるいは公序良俗に反するものは認められません。
 継続雇用制度の対象者に係る望ましい「基準」は、1意欲、能力等をできる限り具体的に測るものであること(具体性)、2必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見が可能であること(客観性)の2つの観点に留意して策定されたものとされています。ちなみに、望ましい例とは具体的には、1社内技能検定レベルAレベル、2営業経験が豊富な者(全国の営業所を3カ所以上経験)、3過去3年間の勤務評定がC(平均)以上の者(勤務評定が開示されている企業の場合)などが挙げられます。
基準にかかる経過措置として、事業主が労使協定のために努力したにもかかわらず協議が調わないときは、大企業の事業主は平成21年3月31日まで、中小企業の事業主(常時雇用する労働者の数が300人以下である事業主のことをいう)は平成23年3月31日までの間は、就業規則等により継続雇用制度の対象となる高年齢者にかかる基準を定め、当該基準に基づく制度を導入できることとしています。