2006/03/31

平成18年4月号

年金未加入防止対策案

社会保険庁は、国民年金に加入していない人を減らすため、住民基本台帳ネットワークの情報を本格的に活用する方針を進めています。これは、住基ネットの氏名、生年月日等の個人情報を基に、毎年34歳の人の年金加入状況を総点検し、未加入者に対して加入を促すことを目的としています。なぜ「34歳」を対象としているのかというと、年金の最低加入期間である25年要件を満たすためです。年金を受給するには、最低加入期間として25年が必要とされています。ですから、加入期間がたとえば24年11カ月だった場合、たった1カ月足りないだけなのですが、年金は1円も受給できないこととなっています。したがって、60歳に到達するまでに25年間の年金加入期間を満たすには、35歳がぎりぎりの年齢となるというわけです。そういった実情を請けて、今国会に提出される社会保険庁改革関連法案に住基ネットの活用を盛り込み、来年度から着手することとしているようです。

これまでの対策
政府はこれまでにも、若年層に対し「学生納付特例」や「若年者納付猶予制度」等を設け、年金未納を減らすための措置を行ってきています。しかし、若年層の納付率は低く、平成16年度の納付率が63.6%であるのに対し、年齢階層別でみると、40歳未満の納付率はこれ以下となっており、20歳台前半では49.6%と、50%を切っているのが現状です。また、全体の年金の納付率も決して高いとはいえません。こういった状況にかんがみ、現在でも、経済的な理由等で保険料を納めるのが困難な場合には、申請により保険料が全額免除または半額免除となる制度がありますが、平成18年7月からは新たに1/4免除、3/4免除の新しい割合も加えられます。

厚生年金未加入事業所への対応
4月から社会保険庁は、厚生年金と中小企業の会社員らが加入することになっている政府管掌健康保険に加入していない企業や個人を、強制的に加入させる措置を強化する方針です。強制加入は、社会保険庁の文書や個別訪問による加入の呼びかけに応じない事業者に対して行われており、現在は従業員20人以上の事業所がその対象となっていますが、これが15人以上の従業員がいる事業所等へと拡大されます。具体的には、未加入の事業所に対して事前に立入検査を行う日を通知し、従業員名簿の提出を促し、職権で加入手続きを進めます。そして、もし強制加入させた事業所が保険料の納付を拒否した場合は、銀行口座などを差し押さえるなどの方法で保険料を払わせるとしています。
厚生年金と政管健保はすべての法人事業所と5人以上の従業員がいる個人事業所に加入義務があります。しかし、事業主が保険料の半額を負担することを嫌い、加入手続きを怠ったり、違法に脱退する事業主が途絶えず今回の対応となったようです。


少子化対策

政府は、急速に進む少子化を食い止めるには、仕事と子育ての両立を促す企業環境の整備が不可欠とみており、次世代育成支援対策推進法(次世代法)で社員300人超の企業に行動計画の策定を義務付けました。それに伴い、主要企業が社員の子育て支援策を相次いで拡充し始めています。

●主要企業の例
東京海上日動火災保険やサントリーなどは、子どもが小学3年生になるまで勤務時間を短縮できる制度を導入、日産自動車では妊娠がわかれば即座に産前休暇を認める制度を導入しました。企業の支援策が実際にどの程度活用されるかは未知数ですが、リーディングカンパニーの名に相応しい実績を残していただきたいところです。ちなみに、政府は女性の育児休業の取得率の目標を80%としていますが、実際には2004年度で70%強、同年の男性の取得率は政府目標の10%に対して0.44%でした。制度はあっても利用しにくい雰囲気があるとの指摘は以前から多くあります。

●兵庫の例
兵庫県では、「5年間で25万人」の赤ちゃんを産んでもらおうという“産めよ増やせよ”作戦に着手するため、平成18年度の予算案に約618億円を盛り込んだそうです。また、「晩婚化・未婚化の進行」への対策として、平成18年度から男女の出会いを支援するお見合い紹介事業を始めます。これは「ひょうご出会いサポート事業」という名称で、企業、自治体など会員団体を募り、職場交流会で気の合った相手を探してもらうシステムです。出生率の低下に危機感を抱く兵庫県は、年平均5万人への回復を目標に、結婚支援など少子化対策を多角的に展開していく方針です。

●その他の例
富山県では経営者の次世代育成支援事業に100万円を予算化したり、久留米市では特定不妊治療を行う夫婦を対象に、来年度から年間5万円を独自に助成することを決めました。

平成18年3月号

無断欠勤の社員を解雇できる?

社員が無断欠勤を続けており、自宅にも戻っていないようで、連絡も取れない状況となってしまいました。また、ご家族も連絡がとれないようです。この社員は、これまでも何度か無断欠勤をしたことがあり、その都度注意していましたが、会社として社員を解雇したい場合、どのような手続きが必要でしょうか。
◆解雇するには
行方不明の社員を解雇するには、民法97条の2の「公示送達」によって、解雇の意思表示を行わなければなりません。具体的には、社員の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てを行い、裁判所の掲示板に掲示するほか、掲示したことについて官報および新聞に少なくとも1回掲載し、最後に掲載した日から2週間が経過すれば、社員に会社の解雇の意思表示が到達したものとみなされます。
◆解雇予告手当は
公示送達によって解雇する場合にも、所轄の労働基準監督署長から解雇予告の除外認定を受けない場合には、社員に解雇の意思表示が到達したとみなされる日(この場合、官報および新聞に最後に掲載した日から2週間が経過した日)の翌日から起算して30日目の日を解雇日と指定するか、30日分の解雇予告手当を供託するか、どちらかの手続きが必要です。
◆労働契約の自然終了
また、就業規則、労働協約、労働契約のいずれかで無断欠勤が連続して一定期間に及び、連絡不能である場合において自然退職とする旨の定めがある場合には、労働契約の自然終了として雇用契約を終了させることができます。
ただし、無断欠勤の期間が短すぎる場合や無断欠勤をして連絡が取れなくなったことについて客観的な正当性がある場合には、規定の適用が認められないケースも考えられますので注意が必要です。

公益通報者保護法が4月に施行

不正を内部告発した社員に対して、会社が解雇その他の不利益な取扱いを行うことを禁止する公益通報者保護法が2006年4月に施行されます。内部告発のルールを明確にし、内部告発者を守ることで企業に法令を遵守させることが目的です。
◆保護の対象となるのは
内部告発者として保護されるのは、正社員、派遣労働者、アルバイト、パートタイマーなどで、退職者も含まれます。自ら不正を是正する立場にあり、株主総会で選任・解任される取締役や監査役は保護の対象外となっています。
内部告発者を保護するために、具体的には内部告発を理由とした解雇や減給、降格、派遣労働者の交代要求、退職金の没収・減額などが禁じられています。
◆通報先と保護要件は
通報先は、事業者内部、処分等の権限を有する行政機関、報道機関や消費者団体などの事業者外部ですが、それぞれに保護の要件が定められています。
事業者内部については通報が金品の要求などの「不正の目的」でないこと、行政機関についてはそれに加え、通報内容が真実であるという相当の理由があることなどです。
◆外部への告発は
報道機関や消費者団体などの外部へ告発する場合には、さらに以下のいずれかに該当するケースに限るなど要件が厳しくなっています。
1、不利益な取扱いを受ける恐れがある
2、証拠隠滅の恐れがある
3、公益通報をしないことを正当な理由なく要求された
4、企業に告発したのに20日以上たっても調査が開始されない
5、個人の生命、身体に危機が生じる切迫した危険がある
◆もし公益通報を受けたら
公益通報を受けた事業者は、公益通報の是正措置等について、公益通報者に通知するように努めなければなりません。また、行政機関が公益通報を受けた場合は、必要な調査や適切な措置を取らなければなりません。

【トピック】
●初任給調査結果 東京労働局
今年の3月卒業予定者の初任給の平均値(東京都)は、大学が20万2,000円(前年比0.7%増)、短大が18万3,100円(同1.3%増)、専修学校が18万3,000円(同1.7%増)、高校が16万5,000円(前年同)だった。東京労働局が都内ハローワークで受理した求人内容をもとにまとめた。

●管理職以外も「残業代なし」へ?
厚労省の研究会で、管理監督者や裁量労働制で働く人でなくても、一定以上の収入や権限がある労働者を労働時間規制から外す方向が示された。その条件として、1.業務の進行について指示を受けず、成果で賃金が決まる 2.一定以上の収入があり、本人が同意している 3.会社が過労を防ぐための健康確保措置を講じている 4.導入を労使で協議し、合意に至っている などをあげている。同省は、審議会の議論を経て07年上程予定の労基法の改正案に盛り込むことを目指す。