2009/12/25

2010年 1月の事務所便り

「現代の名工」(卓越した技能者)の表彰制度

◆「現代の名工」とは?
現代の名工とは、厚生労働大臣によって表彰された「卓越した技能者」の通称です。この制度は昭和42年度に設けられたものであり、その道で第一人者と目されている技能者を表彰することで、技能者の地位や技能水準の向上を図るとともに、技能の世界で活躍する職人や技能の世界を目指す若者に目標を示し、夢や希望を与えることを目的としています。
毎年約150名(平成7年度までは毎年100名)が表彰されており、表彰者の総数は平成20年度の第42回の表彰までで4,838名となっています。
著名な受賞者としては、これまで、四川料理家の陳建民さん、服飾評論家の市田ひろみさん、和食料理家の道場六三郎さんなどがいます。

◆表彰の要件とは?
推薦人は都道府県知事や事業団体、また、20歳以上で二親等以内の親族でなければ一般の人でもなることができます。表彰の対象となるのは、大工、植木職人や料理家、衣服の仕立人など、全20の職業部門の技能者です。
技能者として推薦される人は、その道において第一人者と目され、現役の就業者でかつ後進に技能指導を行う人であり、他の技能者の模範的存在と認められる人です。平成16年度までは「35歳以上で15年以上の経験」という条件がありましたが、平成17年度からは経験と年齢は問わないということになったため、門戸が広がりました。
 推薦された人の中から、技能者表彰審査委員の意見を聴いたうえで、厚生労働大臣によって決定されます。表彰された人は、表彰状、卓越技能章(楯と徽章)および褒賞金(10万円)が授与されます。

◆技能継承につながることを期待
昨今、特に製造業における技術者の高齢化が進み、後継者不足に悩む状況です。また、団塊の世代が順次退職していき、ものづくりの技能継承が危ぶまれている中で、この制度により、1人でも多くの若者が「技能工」という存在に関心を持ち、その世界で活躍したいという想いにつながっていくことが期待されます。




職場で食事をとる人が増加傾向に

◆オフィス内での飲食が増えている
最近1年間で、出勤する日の昼食を「オフィス内の自分の席でとる」と答えた人が41%に上ることが、民間企業の調査でわかりました。
この調査は9月下旬にインターネットで実施され、首都圏・中部・近畿圏在住の企業の正社員らのうち20~59歳の男女1,000人を対象としています。

◆「職場で間食や昼食」が増加
この調査では、職場で食事をとる機会が増えたかどうか尋ねたところ、「間食や昼食で増えた」という人が目立ちました。まず、朝食、昼食、夕食、間食、夜食のそれぞれについて、出勤する日の摂取状況を尋ねたうえで、それぞれについて「ほとんど食べない」と答えた人を除き、最近1年間に職場でとる機会が増えたかどうかを尋ねていいます。
この結果、「増えた」が最も多かったのは「間食」の19%で、この割合は「減った」(13%、他の選択肢は「変わらない」「職場ではとらない」)より5ポイント以上高い結果になりました。次いで多かったのは「昼食」の17%で、「減った」(5%)を10ポイント以上も上回りました。

◆昼食は自席で
3食の食事については、出勤する日にどこで食べているかという質問(複数回答)には、朝食や夕食はいずれも「自宅」が最多でしたが、昼食は「オフィス内の自分の席」が最多で、次いで「街中の飲食店」(ファーストフードや喫茶店などを含む)、「社員食堂」、「社員食堂以外の職場のリフレッシュ空間」と続いています。
また、出勤する日の昼食で最も利用が多い場所についての質問については、「オフィス内の自分の席」が31%とトップで、最近1年間で昼食を職場でとる機会が「増えた」人に限ると、「オフィス内の自分の席」と回答した人の割合は複数回答の場合で49%、最も利用が多い場所でも37%といずれも高い割合となっています。

◆不況の影響で「節約志向・効率重視」に
職場で昼食をとる最大の理由で最も多かったのは「外に食べに行くより食事代を節約できるから」(35%)で、「時間を効率的に使えるから」(22%)が続いています。
節約ニーズと効率重視である職場での食事は、昨今の不況が少なからず影響していることから、今後も増加傾向にあると考えられます。




「がん検診」自治体や企業における取組み

◆発見率の向上が大きな課題
国立がんセンターの調査によれば、2007年に全国のがん診療連携拠点病院でがんと診断された患者のうち、「健康診断・がん検診・人間ドック」などで発見された人の割合は16.7%であるという結果が出ました。また、がん検診単独で見ると、その発見率は岩手県の17.7%から奈良県の3.6%と、各都道府県で開きがあることもわかりました。
健常者が受ける検診体制が充実すれば、がんの早期発見・死亡率低下につながることから、検診での発見率向上は大きな課題となっています。
国のがん対策推進基本計画では、がん検診の受診率数値目標として「2012年までに50%」と掲げられましたが、2008年にスタートした特定健診・保健指導(メタボ健診)の事務に忙殺されるなどの理由から、到達は困難な状況です。

◆自治体・企業における取組み
しかし、自治体や企業も単に手をこまねいていたわけではなく、様々な工夫を凝らしています。
自治体の動きとしては、職場検診の普及啓発に補助金を交付したり、休日・夜間検診を実施するなどがん検診に熱心に取り組む市区町村には交付金額を増額したり、一定年齢の女性には無料で乳がん検診が受けられるように整備したりしている所もあるようです。
また、金融機関や保険会社と連携して、受診呼びかけのパンフレットを配布したり、代理店窓口で受診者に記念品を渡したりという活動も広まっているようです。
受診率向上のため、企業においても受診制度の整備が広まってきています。これは、従業員の健康増進は企業にとっても大きな課題の1つであるからです。
検診費用を全額負担したり、事業所に検診車を呼んで勤務の合間に検診できるようにしたりしている企業もあります。また、全額とはいかないまでも検診費の一部を負担する企業も増加しています。

◆早期発見が何より大切
さらに、国立がんセンターでは、がん検診の有効性が示されれば受診率が上がることが予想されるため、がんの種類別の詳細分析やがん患者の生存率調査、がん診療連携拠点病院別のデータ整備などが鍵を握るとして、そのデータ公開も検討しています。
「がん大国」と言われる日本では、2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなると言われています。がんは早期発見でればかなりの確率で助かるということを考えると、我々はがん検診にもっと関心を持つ必要がありそうです。




医療・介護、理美容…職探しで重視する点と辞める理由


◆医療・介護、理美容従事者の実態
求人情報サービス会社が、医療・介護系、理美容系の有資格者を対象とした、就業に関する意識調査を行い、その結果を発表しました。
調査対象は、医療・介護系、理美容系の対象となる資格を持っている、関東(1都3県)、関西(2府2県)に住む20~50歳の男女1,500人で、インターネットにより調査が行われました。

◆職探しの際に重視する点
調査結果によると、仕事を探す際に重視する点について聞いた質問では、3職すべてで「やりがいのある仕事であること」が最多となりました。「やりがい」を重視した人は、全職種の平均で4.0%であるのに対し、医療系16.1%、介護系15.7%、理美容系21.5%といずれも高い割合となっています。
また、医療・介護系では、「正社員または正社員に近い雇用形態であること」が介護系13.0%、医療系8.7%と全職種平均(5.2%)を上回っており、正社員志向が強いことがわかりました。
理美容系では、「資格や技術が身に付く仕事であること」が12.8%(全職種平均1.9%)となるなど、スキルアップできるかどうかを重視している一方、医療系・介護系で多かった「正社員または正社員に近い雇用形態であること」はわずか1.3%にとどまっていることが明らかになりました。

◆辞める際の理由
仕事を辞める理由についての質問では、3職種ともに給与や勤務時間といった条件面が上位に入りました。
介護系と理美容系では「業務内容の割に給与が低いから」(介護系30.5%、理美容系23.2%)が最も多く、医療系でも20.8%と高く、「職場や社員の雰囲気が悪いから」(29.0%)に次ぐ多数回答となっています。
また「1日に働く時間が長いから」(医療系18.1%、介護系16.0%)と「もっとよい条件の仕事が見つかったから」(医療系17.0%、介護系17.2%)のいずれもが全職種平均を上回る数値となっていました。
一方、理美容系では、「自分に向いていない仕事だと感じたから」が20.7%と、他の職種に比べ高い特長的な結果となりました。こ強いやりがいを抱いて仕事を始める人が多い職種だけに、壁に当たってしまうとイメージとのギャップが大きいためと考えられます。

◆早期退職予防にはフォロー体制の整備を
これらの職種で起こる早期退職を予防するには、条件面の改善を行うことが有効ですが、職場での密なコミュニケーションなど、日頃からのフォロー体制整備も効果的ではないでしょうか。




相次ぐ里子虐待と里親制度の課題

◆突きつけられた重い課題
最近、新聞などでも取り上げられていますが、「里親による里子への虐待」が後を絶たないようです。恵まれない子どもを自らの意思で引き取って育てる、善意で成り立つはずの里親制度に、重い課題が突きつけられています。

◆里親には何が要求されるか?
そもそも里親制度とは、保護者がいなかったり、児童虐待などを受けたりした子どもの養育を、児童相談所を通じて一般の夫婦に委託する制度です。里親の希望者は、書類審査と面接、研修を経て里親登録を行います。
しかし、深い愛情を持って里子を受け入れたとしても、実際にはその養育は並大抵のものではありません。実の親からの虐待、ネグレクト、施設での長期集団生活などにより十分な愛情を受けてこなかった子どもたちは、愛情不足でうまく対人関係を築けない「愛着障害」のケースが多く、このため、里親の関心を引こうとあらゆる手段を使って困らせようとする傾向があるそうです。
家庭内での暴力行為や万引きといった行動が特に多いのも、そういった理由からです。また、あいさつや食事、歯磨きなどの基本的な習慣も身に付いていないケースが多いようです。
これらのことに腹を立てず、じっくり根気よく教えていくことが里親には要求されますが、躾のために大声で叱ることが、近所からは「虐待しているのでは?」と思われるのではないかと、周囲の目を気にして悩む里親の方もいるようです。

◆里親委託率の向上に向けて
このような難しい問題を抱え、「悩んでいる里親を支援する制度が十分ではない」という指摘がなされています。この背景には、里親同士の交流が進まず、経験者が悩みを共有する場が乏しいことなどがあるようです。
こうした状況の中、厚生労働省は、平成21年度末までに里親の委託率を8.1%から15.0%に上げる数値目標を立てました。それに伴い、今年4月からは「改正児童福祉法」が施行され、「里親認定登録制度の見直し」「里親支援の強化」「養育里親の研修の義務化」「里親手当の増額」など、里親制度の内容が拡充されています。
家庭内で深い愛情をもって養育されることが子どもたちにとって大切ですので、里親支援についてのより充実した対応が望まれます。




「労働審判」の申立件数が増加しています!

◆2年間で約2.3倍に増加
2008年における「労働審判」の申立件数が2,052件となり、制度がスタートした2006年(877件)と比較すると約2.3倍に増えたそうです。今年については9月末時点で2,553件となり、すでに昨年の件数を大幅に上回っています。

◆労働審判の目的・手続き
労働審判は、解雇や賃金の不払いなど、事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブル(個別労働紛争)について、その実情に即して「迅速」、「適正」、「実効的」に解決することを目的としています。
労働審判の手続きは、労働審判官(裁判官)1名と、労働に関する専門知識・経験を有する労働審判員2名で組織された労働審判委員会(計3名)が、原則として3回以内の期日で審理を行い、適宜調停を試み、調停による解決に至らない場合には、事案の実情に即した柔軟な解決を図るための労働審判を行う手続きです。
この労働審判に対して当事者から異議の申立てがあった場合には、労働審判はその効力を失い、労働審判事件は通常の訴訟に移行することになります。

◆労働審判のメリット
労働審判のメリットとしては、原則として3回以内の審理で解決が図られるため、通常の訴訟よりも迅速な紛争解決を図ることができる点が挙げられます。制度スタート以降、申立てから審判終了までの平均日数は「約74日」となっています。
また、申立ての際に必要となる印紙代も通常の民事訴訟の半額となっており、費用的なメリットも大きいため、労働者側からの申立てが多いようです。

◆今後も増加傾向か?
昨年来の不況により、解雇、雇止め、派遣切りなどをめぐる労使間のトラブルが増加していることが、労働審判の申立件数の増加につながっていると考えられます。また、不況下において、今年1~6月にサービス残業が急増していたとする民間企業の調査結果などもあり、申立件数の増加傾向はしばらく続くものと考えられます。
企業側としては、労使間のトラブルを生じさせないような取組み(適正な労務管理、就業規則・社内規程の見直しなど)が、今後、より重要になってくるでしょう。




「確定拠出年金」の使い勝手が良くなる?

◆「適年」の受け皿として
厚生労働省は、「確定拠出年金制度」(日本版401k)を拡充するため、関連法の改正案を来年の通常国会に提出する方針を明らかにしています。
同省では、今でも多くの中小企業が採用している「適格退職年金制度」(2012年3月末に廃止予定)の受け皿として、この確定拠出年金が大いに活用されることを期待しているようです。

◆確定拠出年金の特徴と導入の背景
確定拠出年金は、拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用収益との合計額をベースに年金給付額が決定される年金制度です。
厚生年金基金や適格退職年金などの企業年金制度は、給付額が約束されるという特徴がありますが、離転職時の年金資産の持ち運びが十分確保されておらず労働移動への対応が困難であることなどが指摘されていました。
そこで、公的年金に上乗せされる部分における新たな選択肢として、2001年10月に確定拠出年金制度が導入されました。

◆予定されている主な改正内容
確定拠出年金には、企業のみが掛金を拠出する「企業型」と、個人のみが掛金を拠出する「個人型」がありますが、来年予定されている改正はこのうち「企業型」に関するものであり、主な内容は次のとおりです。
(1)個人による掛金拠出を認める(ただし個人の掛金は企業の拠出額以下とする)
(2)加入年齢を引き上げる(積立期間の上限を「60歳」から「65歳」に変更する)
なお、「企業型」の確定拠出年金の導入件数は、2008年3月末時点で3,043件(加入者数311万人)です。

◆果たして加入件数は増えるか?
確定拠出年金は、運用が悪化すれば個人の年金受給額は当然減ってしまうものの、企業にとっては、追加負担を求められることが基本的にはないというメリットがあります。
上記の改正により、厚生労働省のねらい通りに加入件数が増えていくのか、注目しておきたいところです。




「中小企業緊急雇用安定助成金」の変更点、「雇用保険法」の改正案

◆民主政権で何が変わった?
民主政権に変わり、雇用関係に関しても様々な動きがあります。ここでは、中小企業にとって影響の大きい「中小企業緊急雇用安定助成金」の変更点と「雇用保険法」の改正案を取り上げます。

◆「中小企業緊急雇用安定助成金」の変更内容
「中小企業緊急雇用安定助成金」の支給要件が次のように緩和されています。
(1)助成金対象の拡大
これまで、出向労働者を出向元に復帰させた後、6カ月を経ずに再度出向させた場合には助成金の対象外であったものが、対象とされました。これは、平成22年11月29日までの時限措置とされています。
(2)生産量要件の緩和
生産量要件(従来は「売上高・生産量の最近3カ月間の月平均値がその直前3カ月または前年同期に比べ5%以上減少していること」)に、「売上高・生産量の最近3カ月間の月平均値が前々年同期に比べ10%以上減少し、直近の決算等の経常損益が赤字であること」が加えられました。この要件は、対象期間の初日が平成21年12月2日~平成22年12月1日の間にあるものに限られます。

◆「雇用保険法」の改正案
厚生労働省は「雇用保険法」の改正原案をまとめ、その内容を明らかにしました。来年の通常国会に改正案を提出し、来年4月からの施行を目指すとしていますので、今後の動向に要注目です。
(1)加入に必要な雇用見込み期間の短縮
雇用保険への加入の際に必要とされる雇用見込み期間について、現行の「6カ月以上」から「31日以上」に短縮するとしています。この適用拡大により、新たに255万人が雇用保険の加入対象になると試算されています。
(2)雇用保険料率の引上げ
労使折半とされている雇用保険料率について、現行の「0.8%」から「1.2%」に引き上げるとしています。
(3)未加入扱いの遡及期間の延長
保険料を納付したにもかかわらず手続上の問題により未加入扱いとなった人の遡及期間について、現行の「2年まで」から「2年超」とするとしています。




「雇用支援ワンストップサービス」が試行実施

◆77のハローワークで実施
新聞報道やテレビ等でも話題となっていた「雇用支援ワンストップサービス」が、11月30日に17都道府県、77のハローワークにおいて試行実施されました。
当初は15都道府県43地域で実施されると報道されていましたが、最終的には実施箇所が増えたようです。東京都、愛知県、大阪府では、すべてのハローワークにおいて実施されたそうです。

◆実施された「ワンストップサービス」とは?
このワンストップサービスは、政府の緊急雇用対策本部が打ち出したものであり、国・自治体・保健所などが連携してハローワークに総合受付を設け、失業者に対して「職業紹介」「生活費の貸付け」、「住宅手当の支給」「就業支援」「生活保護」「こころの健康」などの情報をハローワークで一元的に提供して、解決してもらおうとするものです。
実施当日の利用者は全国で2,399人だったと発表され、大阪府が511人、東京都が482人などとなっています。

◆今後の動きは?
そもそもこのワンストップサービスの目的は、昨年末に話題となった「派遣村」がなくても失業者に対応できる態勢を作ることにあります。
政府や民主党などは、定期的な開催や年末年始の開催など、このサービスを本格的に実施したいと考えているようです。
しかし、自治体が生活保護の申請急増を警戒するなど、難色を示している向きもあるようで、今後このサービスがどのようになって行われていくのか、気になるところです。

2009/12/02

12月の事務所便り

 「改正入管法」成立で企業への影響は?

 ◆不法滞在者の減少なるか?
今年7月8日、現在、国内に約13万人いるとみられる不法滞在者の減少等を目的とした「出入国管理及び難民認定法」の改正案が可決・成立し、7月15日に公布されました。
外国人を雇用している企業、これから雇用しようと考えている企業に影響のある改正項目もありますので、ぜひとも押さえておきたいところです。

 ◆新たな在留管理制度の導入
現在、3カ月以上日本に在留する外国人は、外国人登録を行ったうえで「外国人登録証明書」(2008年末時点で約222万人が所有)を携帯しなければなりませんが、改正により、これに代わって「在留カード」が導入されることになりました。日本に中長期間にわたって在留する外国人には、このカードの携帯義務が課されます。
「在留カード」には、氏名、国籍、居住地などのほか、「外国人登録証」には記載の必要がなかった「就労制限の有無」や「資格外活動許可を受けているときはその旨」も記載が必要となります。一般企業にとっては、就労が可能な在留外国人であるか否かを判断しやすくなるというメリットがあります。
また、住居地情報を市区町村に届け出なければならなくなります。さらに、一定の在留資格を有している外国人は、勤務先企業等の情報を入国管理局へ届け出る必要もあります。そして、企業にも、受け入れた外国人情報を国に提供する努力義務が課されます。
公布から3年以内に施行の予定です。

 ◆新たな在留資格(技能実習)の創設
これまで批判の多かった「研修・技能実習生」の見直しも行われ、原則として、座学実習のみの場合は「研修」という在留資格となりますが、実務研修(OJT)を伴うものについては「技能実習」という在留資格が新たに新設されました。 この「技能実習」の中には、(a)「講習による知識習得活動」・「雇用契約に基づく技能等習得活動」と、(b)(a)の活動に従事し、技能等を修得した者が雇用契約に基づき習得した技能等を要する業務に従事する為の活動が含まれます。
上記(a)のうちの「雇用契約に基づく技能等習得活動」と、(b)の活動には、労働基準法や最低賃金法等の労働関係諸法令が1年目から適用されることとなりますので、注意が必要です。
公布から1年以内に施行の予定です。

 ◆その他の改正項目
 その他、「適法な滞在者の在留期間の上限延長(3年から5年)」、「1年以内の再入国に関して原則として許可不要」などについても定められました。


 ハローワークにおける「雇用支援ワンストップサービス」

 ◆「緊急雇用対策」の目玉
政府が10月23日に公表した「緊急雇用対策」の中の1つに、「雇用支援ワンストップサービス」というものがあります。新聞報道によれば11月下旬からサービスがスタートするとのことです。
ハローワークに確認しても、「詳しい手続き等はまだ明らかになっていない」とのことでしたが、一体どのようなサービスなのでしょうか?

 ◆どのようなサービスか?
この「雇用支援ワンストップサービス」は、ハローワークにおいて「職業の紹介」や「生活資金の貸付け」、「住宅手当の支給」「就業の支援」(働きながら介護資格を取得できるようにする)などの複数の手続きについて、失業者が一括して行うことのできるサービスです。
これまでは、これらの複数の手続きを別々のところに申請しなければなりませんでしたが、ハローワークの職員、自治体(福祉関係)の職員、社会福祉協議会の職員などが一体となって、失業者等に対して雇用を支援するためのサービスを行います。

 ◆今後の状況
まずは都市部(東京都、愛知県、大阪府など)のハローワークにおいて試験的に実施され、年内は12月29日・30日も開庁するとのことです。そして、利用状況をみながら、年末年始にかけて実施都市、実施日を増やしていくことが検討されています。
最近は完全失業率に若干の改善がみられますが、9月に厚生労働省から発表された「非正規労働者の雇い止め等の状況」によれば、2008年10月~2009年12月までに実施済み(または実施予定)の非正規労働者の雇い止め等は、全国4,127事業所で計23万8,752人となるなど、まだまだ厳しい雇用環境が続いています。
このワンストップサービスの実施により、昨年末に大きく報道された「年越し派遣村」の再来を防ぐことが期待されています。


 「仕事」と「家庭」の優先度合いはどちらが高い?

 ◆厚労省が調査結果を発表
近年、「ワーク・ライフ・バランス」の重要性が叫ばれていますが、「人口減少社会」が到来する中、労働者が仕事と家庭を両立して安心して働き続けることができる環境を整備することは、国にとっても企業にとってもますます重要な課題となっています。
先日、厚生労働省が民間企業に委託して実施した調査の結果により、仕事と家庭の両立支援(ワーク・ライフ・バランス)をめぐる現状等が明らかになりました。

 ◆現実は「仕事優先」が多数
この調査は「子育て期の男女への仕事と子育ての両立に関するアンケート調査」というもので、未就学の子を持つ男女(男性正社員、女性正社員、女性非正社員、専業主婦)を対象に実施され、4,110件の有効回答がありました。
仕事と家事・子育ての優先度の希望と現実をみると、正社員男性の58.4%、正社員女性の52.3%が「仕事と家事・子育てを両立」させたいと考えていますが、現実としては、男女ともに「仕事優先」(男性74.0%、女性31.2%)の割合が高くなっています。

 ◆帰宅時間の状況、女性の退職理由
また、帰宅時間をみると、関東圏の男性で夜9時以降に帰宅する割合が30.4%となるなど、男性の帰宅が遅い状況が明らかになりました。
妊娠・出産前後に女性正社員が仕事を辞めた理由としては、「家事、育児に専念するため自発的に辞めた」の割合(39.0%)が最も高く、一方で、「仕事を続けたかったが仕事と育児の両立の難しさで辞めた」(26.1%)と「解雇された、退職勧奨された」(9.0%)の合計が35.1%となっています。

 ◆制度の利用しやすさ、勤務形態、短時間勤務
職場の両立支援制度の利用しやすさでは、育児休業制度や子の看護休暇等について、女性のほうが男性より「利用しやすい」と答えた割合が高く、男性の方が「利用しにくい」と答えた割合が高くなっています。
夫の就労時間別に妻が希望する勤務形態をみると、夫の就労時間が長いほど妻の「短時間勤務・短日勤務」を希望する割合が高くなっています(夫の就労時間が「35時間以上40時間未満」の場合25.1%、「70時間以上」の場合43.7%)。
そして、短時間勤務で働いた場合の評価については、「どのように評価されるか知らない」との回答割合が、男性38.6%、女性31.8%と高くなっています。


 厚労省が「労働時間適正化キャンペーン」実施

 ◆11月はキャンペーン期間
厚生労働省は、11月1日から30日までを、昨年同様に「労働時間適正化キャンペーン」期間として定め、長時間労働やこれに伴うサービス残業等の問題解消を図るため、電話相談や啓発等の取組みを実施しています。
キャンペーンの重点事項としては、①時間外労働協定の適正化等による時間外・休日労働の削減、②長時間労働者への医師による面接指導等の健康管理に対する体制の整備、③労働時間の適正な把握の徹底(来年4月1日から施行される改正労働基準法に対応した体制整備も含む)です。

 ◆取組みの背景
この取組みの背景には、平成20年度に行われた各調査において明らかになっている次のことなどあります。
(1)週労働時間60時間以上の労働者の割合が10.0%となっており、子育て世代に当たる30歳代男性では約20%と依然として長時間労働の実態がみられる。
(2)過労死等の事案である脳血管疾患および虚血性心疾患等で労災認定された件数が377件と、過重労働による健康障害が多発している。
(3)全国の労働基準監督署の指導により、不払いであった割増賃金が支払われた事案のうち、1企業当たり100万円以上の支払いがなされた企業数は1,553企業、対象労働者は18万730人、支払われた割増賃金の合計は196億1,351万円となっており、是正指導事案が多くみられた。

 ◆電話による相談も受付け
また、平成20年度の「労働時間適正化キャンペーン」として実施した電話相談に寄せられた相談件数879件のうち、長時間労働に関するものは320件、賃金不払残業に関するものは400件となっており、この問題が非常に大きいことがうかがえます。
キャンペーンの実施事項としては、事業主へのリーフレットの配布、「労働時間相談ダイヤル」による長時間労働抑制等のための電話相談(11月22日実施。フリーダイヤル:0120-897-713)、使用者団体・労働組合への周知・啓発の協力要請などです。


 税制改正で家計への影響は?

 ◆「扶養控除」の廃止・縮小と「給与所得控除」の上限設定
政府税制調査会では、現政権の目玉施策である「子ども手当」や「公立高校の授業料無償化」などの家計支援の実施とバランスをとるため、所得課税の見直しによる増税を模索し始めています。
来年度税制改正の見直し案として浮上しているのが「一般の扶養控除の廃止」、「特定扶養控除の縮小」と「給与所得控除の上限設定」です。

 ◆具体的には?
来年度から支給が始まる予定の「子ども手当」(中学校卒業までの子ども1人あたり月2万6,000円[初年度は半額]の手当)との見合いで、所得金額から扶養親族1人あたり38万円を差し引く「一般の扶養控除」の廃止はすでに固まっています。
また、16歳から22歳の高校生や大学生等の特定扶養親族がいる場合に1人あたり63万円を差し引く「特定扶養控除」は、公立高校の授業料の無償化案に連動して、縮小が検討されています。
さらに、給与収入から一定額を差し引く「給与所得控除」に上限を設けることで、所得税の重要な機能である所得の再分配の効果を高めるとしています。

 ◆増税の負担が重くなる家庭も
これらのことを考えると、成年の扶養家族や大学生・浪人生を抱える家庭では、「子ども手当」や「公立高校の授業料無償化」の恩恵は受けられず、一般扶養控除・特定扶養控除だけが廃止・縮小となり増税は免れないことになります。
特定扶養控除の額を仮に38万円に縮小した場合、高校生の子ども2人がいる課税所得700万円の家庭では、所得税で年間約11万5,000円の負担増に、全廃した場合には約29万円の負担増になるとされています。また、給与所得控除に上限を設ければ、高額所得者はさらに負担が増えるということになります。
雇用や景気に不安が続く中、サラリーマン家庭の増税を急げば、これらの控除見直しに対する反発は免れないでしょう。「子どもを社会全体で育てていく」という考えは必要でしょうが、それに伴う財源の確保については慎重な検討が求められます。


 産業医の選任に対する助成金

 ◆他の事業者と共同での契約も可
常時50人以上の労働者を使用する労働者のいる事業場では、産業医の選任が義務付けられていますが、義務のない小規模の事業場において、産業医を選任して労働者の健康に関する活動を行おうとする事業者を支援する助成金として、「小規模事業場産業保健活動支援促進助成金」があります。
この助成金は、常用労働者数が50人未満の事業場の事業者が、他の事業者と共同または単独で産業医と契約を結び、その産業医に保健指導・健康相談等の保健活動をさせた場合に、その費用の一部を最大3年間補助する制度です。

 ◆「産業医」とは?
産業医とは、医師のうち、日本医師会から産業医の認定を受けた人や、労働衛生コンサルタント試験の保健衛生区分に合格した人等で、労働者の健康管理等を行う人のことです。
産業医の活動としては、「職場の見回りによる作業改善のアドバイス」、「健康診断結果に基づくアドバイスによる労働者の健康管理」、「長時間労働者への面接指導による健康防止対策」などがあります。
その結果、健康に対する労働者の意識が向上したり、生活習慣病の防止が図れたりするなど、快適な職場づくりにつながるといえます。

 ◆快適な職場づくりに役立てる
助成金の額は、労働者の人数に関係なく一定の額です。産業医による保健活動にかかった額(上限21,500円)×活動回数(年4回まで)=年間上限86,000円を3年間受けることができます。
長時間労働による精神疾患や過労死の問題が大きく取り上げられている中、「快適な職場づくり」は社員の定着率を向上させる効果があります。産業医の選任義務のない小規模の事業場において、助成金をうまく活用しながら快適な職場づくりにつなげてもらいたいものです。


 注目浴びる「介護」「グリーン」「地域社会」の3分野

 ◆「緊急雇用対策」の柱
政府の緊急雇用対策本部が、2010年度3月末までに10万人程度の雇用の下支えと創造を目指す「緊急雇用対策」を正式に決定したとの報道がありました。
この対策では、困窮者や新卒者などへの「緊急的な支援措置」と、将来的な成長が見込まれる「介護」「グリーン」「地域社会」の3つの重点分野における「緊急雇用創造プログラム」が2本柱となっています。
この「緊急雇用創造プログラム」では、「介護」「グリーン」「地域社会」の3分野で働きながら職業能力を高める雇用プログラムの推進などに取り組むとしています。

 ◆「介護分野」での雇用創造
介護分野では「『働きながら資格を取る』介護雇用プログラム」が創設されています。具体的には、地方自治体が介護施設に緊急雇用創出事業を委託し、介護施設側は求職者と有期雇用契約を締結、求職者は介護補助の業務を行いながら資格取得のための講座を無料で受講することができるというものです。
契約期間は、ヘルパー2級を目指す場合は1年間、介護福祉士は2年間で、雇入れ期間中の賃金と講座受講料には、委託事業費を充てるということです。
この他、「介護職員処遇改善交付金」の周知を通じた介護職員の処遇改善、ハローワークでの介護求人の開拓の重点実施などからなる「介護人材確保施策の推進」や「介護サービス整備の加速化」も行うとしています。

 ◆「グリーン分野」「地域社会分野」での政策
もう1つの「グリーン分野」とは、農林、環境・エネルギー、観光などを指します。直売所や農産品の地域ブランドの立上げ支援、太陽光発電の施工技術者の育成などが柱となっています。
また、「地域社会分野」では、NPO法人や社会企業家に保育事業を任せるなどの「社会的企業」の活用などが盛り込まれています。
この「緊急雇用対策」を契機として、これらの3分野が注目を浴びていきそうです。厳しい雇用情勢の中、一刻も早い雇用の安定が望まれるところです。


 「父親のワーク・ライフ・バランス応援サイト」開設

 ◆仕事と子育てを両立させるための情報を紹介
厚生労働省は、主に子育て期の男性労働者を対象とした「父親のWLB(ワーク・ライフ・バランス)応援サイト」(http://www.papa-wlb.jp/index.html)を開設しました。
このサイトは、父親も子育てができる働き方の実現に向けて、子育て期における父親の役割、育児休業取得の際の留意点のほか、両立支援に関する制度の概要、子育てにかかる経済的支援制度や各種相談窓口等の紹介など、仕事と子育てを両立させ、相乗効果を生み出すためのヒントがまとめてあります。

 ◆男性のWLBは少子化・労働力減少の改善に
現在、わが国では勤労者世帯の過半数が共働き世帯になっており、女性だけでなく、男性も子育てができる環境作りが求められています。男性の約3割が育児休業の取得を希望している一方、実際の育児休業取得率は1.23%に過ぎず、男性が子育てや家事に費やす時間については極めて低い水準となっています。
男性が子育てに関わることができないことは、男性の希望が叶えられないというだけでなく、女性に家事や子育ての負荷がかかることにより、女性の継続就業を困難にするとともに、第二子以降の出産意欲にも影響を及ぼし、少子化の原因ともなっていると指摘されています。
子育て世帯の「仕事と子育てを両立したい!」という希望に応えるとともに、女性が安心して働き続けるためには、男性の働き方の見直しや子育てへの積極的な関わりを促進させることが必要となっています。

 ◆育児・介護休業法の改正
このような流れを受け、本年6月に「改正育児・介護休業法」が成立しました。改正法では、父親の育児休業の取得促進を目的とした「パパママ育休プラス」や、出産後8週間以内の期間に育児休業を取得した父親に限って育児休業を再取得できる制度の新設、配偶者が専業主婦(夫)であっても育児休業を取得できる制度など、男女ともに子育てや介護をしながら働き続けることができる環境作りを目指した内容となっています。
仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)が実現した社会とは、老若男女誰もが、仕事、家庭生活、地域生活、個人の自己啓発など、様々な活動について、自らが希望するバランスで展開できる状態であると言われています。
男性の子育てへの積極的な参加と、ワーク・ライフ・バランスに対する企業のより一層の支援が期待されます。


 今話題の「介護職員処遇改善交付金」とは?

 ◆支給対象は?
厚生労働省は、「介護職員処遇改善交付金」を積極的に活用するよう求める事務連絡を、介護保険関係団体などに出しました。
この「介護職員処遇交付金」は、介護職員の処遇改善に取り組む事業者に対して、平成21年10月から平成23年度末までの間、計約4,000億円を交付するものですが、平成24年度以降も介護職員の処遇改善に取り組んでいく旨の方針を示しており、引き続き取組みを進めていくとしています。
交付金により賃金改善できる職種は、原則として指定基準上の介護職員、介護従業者、訪問介護員等として勤務している職員が対象ですが、他の職務に従事していても、介護職員として勤務していれば対象となります。ただし、訪問看護など、人員配置基準上、介護職員のいないサービスは対象外となります。

 ◆支給方法は?
この交付金は、介護サービス提供に関わる介護報酬に一定の率を乗じて得た額を、毎月の介護報酬と併せて交付し、事業年度ごとに事業者が提出する実績報告に基づき、余剰金が発生した場合には、その額を返還するものです。
また、交付金事業の年度区分は、当該年の4月から翌年の3月支払い分まで(12カ月間)とし、その交付金の額の根拠となる介護サービスは、原則として、当該年の2月から翌年1月までに提供された介護サービスとなります。
ただし、平成21年度および平成24年度については、交付金支給の始期および終期が異なります。

 ◆申請手続、その他の要件
申請手続は、交付金見込額を上回る賃金改善計画を策定し、職員に対して周知を行ったうえで都道府県に申請を行い、承認が得られれば、介護職員の賃金改善に充当するための資金が介護報酬とは別に毎月自動的に交付されます。
なお、交付金は、原則として申請があった月のサービス提供分から対象になりますが、当初については、平成21年12月中に申請した事業者に限り、10月サービス提供分からさかのぼって交付となります。
このほかにも、労働保険に加入していることや、交付金の対象事業者としての申請日の属する月の初日から起算して過去1年間に、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働者災害補償保険法、雇用保険法等の違反により罰金刑以上の刑に処せられていないことが支給要件となっています。

2009/11/02

11月の事務所便り

政府の雇用対策と雇用調整助成金等の状況

◆対象者・事業所数がともに減少
厚生労働省が10月初めに、「休業等実施計画届」(雇用調整助成金等の申請時に事業所が提出する書類)の受理状況を発表しました。
それによれば、8月の対象者数は211万841人となり、7月の243万2,565人と比較して13.2%も減少しました。また、8月の対象事業所数は7万9,922カ所となり、7月の8万3,031カ所から3.7%減少しました。「雇用調整助成金」(中小企業の場合は「中小企業緊急雇用安定助成金」)の利用も、いくらか落ち着いてきたようです。
また、8月における「大量雇用変動届」(会社都合等により30人以上が離職した場合に提出する書類)の届出事業所数は284事業所(7月は251事業所)、離職者数は1万4,550人(7月は1万891人)となっており、こちらのほうは増加しています。

◆新政権による雇用対策
民主党を中心とする政権に変わり、政府は、鳩山首相を本部長とする「緊急雇用対策本部」を設置する方針を発表し、新たな雇用対策も明らかになっています。
政府は、今後、当面の雇用対策を盛り込んだ「緊急雇用創造プログラム」をまとめる方針を示しており、主な対策としては、「介護分野における雇用者数の拡充」、「公共事業削減に伴う建設・土木労働者の転職支援」、「生活保護の受給促進等の貧困層対策」などが挙げられています。

◆さらなる雇調金要件の緩和
また、助成金に関しては、「雇用調整助成金」「中小企業緊急雇用安定助成金」の支給要件を緩和する方針も示されています。支給の要件とされている「直近3カ月間の売上高の減少幅」について、現行よりも少ない幅で支給を認める考えです。
企業にとっては従来よりも使い勝手が良くなる改正だといえます。

◆今後の政策に注目
8月の完全失業率は「5.5%」と過去最悪の水準となりました。企業にとっても労働者にとっても、まだまだ景気は上向いてきたとはいえない状況です。今後、「6%に達するのでは」といった懸念もあります。
そのような状況にならないためにも、企業を支援する助成金の拡充を含め、どのような対策を政府が打ち出し、実行していくのか、注目したいところです。


政権交代で再び動き出した「派遣法改正」

◆抜本的な改正に向けて
労働者派遣法(以下、「派遣法」)の改正については、自民党政権時から様々な議論がなされてきました。
派遣法に基づく指針が改正され、「派遣切り」を行った企業に対して、残りの契約期間中の休業手当相当額の支払いを求める制度が創設されるなどしましたが、結局は労使の意見がまとまらず、抜本的な派遣法改正には至りませんでした。しかし、このたび民主党が政権を獲得したことにより、再び改正に向けた議論が始まりました。

◆民主党マニフェストの実現なるか
厚生労働省はこのほど、「労働政策審議会」(厚生労働大臣の諮問機関)の分科会を開催し、派遣法の改正に向けた政・労・使による議論をスタートさせました。
民主党・社民党・国民新党は、不安定な雇用をなくすことなどを目的として、「製造業派遣」「登録型派遣」「日雇い派遣」の原則禁止などを主張していますので、それらを実現しようという考えです。また、法律名を「労働者派遣法」から「派遣労働者保護法」に変更することも検討されています。
政府は、年内にも派遣法の改正案をまとめるとしていますが、経営側や派遣業界の反発は必至であり、すんなりと改正が行われるかは微妙な状況といえるでしょう。

◆「間接雇用」から「直接雇用」への動き
雇用形態に関して、最近、派遣労働者などの「間接雇用」を正社員・パート社員・アルバイト社員などの「直接雇用」にシフトする企業が増加傾向にあるようです。
求人広告の企画・発行を行っている企業のアンケート調査(999社が回答)によれば、派遣労働者を雇用している企業(147社)のうち約45%が、「1年前に比べて派遣労働者が減った」と回答しており、約3分の1の企業が「今後さらに派遣社員の比率を下げる予定」と回答しています。
今後の派遣法改正の動向にも注目しつつ、自社において「どのような雇用形態を中心として企業を運営していくべきか」を考えていかなければならない時期に来ていると言えるでしょう。


「新型インフルエンザ」と休業手当・有休等の関係

◆予断を許さない状況
新型インフルエンザについては、「これからピークを迎える」との見方もあり、まったく予断を許さない状況にあります。そんな中、厚生労働省が「新型インフルエンザに関連して労働者を休業させる場合の労働基準法上の問題に関するQ&A」というものを、ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/20.html)で発表しました。
これは、新型インフルエンザに伴って労働者を休業させる場合における賃金の支払いの必要性の有無等について、同省の見解を示したものであり、大変参考になります。なお、この見解は平成21年9月時点の状況を基にしているいため、今後の状況に応じて変更される可能性があるとのことです。

◆5つの「Q&A」
上記ホームページでは、以下の5つの質問に対する見解が掲載されています。いずれのケースについても、場合分けをして「休業手当の支払いが必要なケース」「休業手当の支払いが不要なケース」等が示されています。上記ホームページをご確認ください。
(1)労働者が新型インフルエンザに感染したため休業させる場合は、会社は労働基準法第26条に定める休業手当を支払う必要があるか?
(2)労働者に発熱などの症状があるため休業させる場合は、会社は休業手当を支払う必要があるか?
(3)労働者が感染者と近くで仕事をしていたため休業させる場合は、会社は休業手当を支払う必要があるか?
(4)労働者の家族が感染したためその労働者を休業させる場合は、会社は休業手当を支払う必要があるか?
(5)新型インフルエンザに感染している疑いのある労働者について、一律に年次有給休暇を取得したこととする取扱いは、労働基準法上問題はないか? 病気休暇を取得したこととする場合はどうか?

◆万全の準備を!
「新型インフルエンザ」の流行は、企業の経営にとっては死活問題ともなり得ます。実際に多くの社員が感染してしまったような場合に備え、万全の準備を整えておくことが必要でしょう。


健康保険の財政悪化が深刻な状況

◆協会けんぽ、健康保険組合ともに赤字
健康保険を運営する各機関の財政状況が深刻化しているようです。「協会けんぽ」(旧政府管掌健康保険)では、2010年3月末決算で3,100億円の赤字になる見通しを発表しています。この赤字幅は、前年度に比べ約810億円も増える見込みで、3年連続で単年度赤字となります。
また、全国の健康保険組合(1,497組合)でも、2008年度の経常収支は合計3,060億円の赤字となっており、黒字を確保した組合は3割にとどまっています。このような状況は、2009年度には一段と悪化すると予測されています。

◆「景気後退」と「高齢化」が大きく影響
これらの状況は、景気の悪化により従業員の給与・賞与が減って保険料収入が減る一方、高齢化により保険給付費が膨らんでいることが要因となっています。
健康保険組合では、保険料を引き上げる組合が今後相次ぐと予想されますが、「協会けんぽ」の保険料を上回ると加入者にとっては加入しているメリットが薄れるため、解散する組合が増えていく可能性も指摘されています。

◆新政権と健康保険財政
一方、「協会けんぽ」では、現状で保険料引上げによる加入者の負担増を求めることは厳しいと判断し、協会けんぽを運営する全国健康保険協会は、長妻厚生労働大臣に国費の投入の増額を正式に要請したそうです。厚生労働大臣では、「協会けんぽ」の収入全体に占める国庫補助率を、2009年度の13%(約1兆円)から最大20%程度まで引き上げる方針であり、働き手の負担増の軽減を目指しています。
しかし、民主党は政権公約で病院の診療報酬引上げを掲げており、必要な医療費はさらに膨らむ可能性があるため、財政の厳しさは増すことが予想されます。保険料が引き上げられること、医療費が高くなることに不満をもつ前に、我々ができること、つまり、いかに健康を維持するかを考え、これ以上の負担増がないようにしたいものです。


非正規雇用者の約4割が「正社員並み」の仕事

◆年収「300万円以下」が約8割
厚生労働省が「非正規雇用者」と「事業所」を対象に、今年の7月に初めて実施したインターネットによる実態調査によると、派遣労働者・契約社員・パート社員など、いわゆる非正規雇用者の約4割が「正社員並みの仕事をしている」ことが明らかになりました。
その一方で、非正規雇用者の約8割は「年収300万円以下」と回答しており、企業が正社員の代替として、低賃金でこれらの労働者を利用していることがわかります。
事業所への調査では、非正規雇用者を雇う理由として、37.7%が「人件費を低く抑えるため」、38.9%が「業務量の変化に対応するため」と回答しています。

◆非正規雇用者の待遇の今後
民主党はマニフェストに、正規・非正規を問わず、同じ職場で同じ仕事をしている人は同じ賃金を得るべきとする「同一労働・同一賃金」の実現を掲げ、ワーキングプアや賃金格差の問題解消に取り組む構えです。
同党の政策に影響力をもつ日本労働組合総連合会(連合)でも、職務の違い(職務の難易度、仕事に対する負担、要求される知識や技能)、職務遂行能力の違い、業績の違いなど、合理的な理由がない限り、勤務時間や契約期間が短いことを理由として正規雇用者と非正規雇用者とで労働条件に差をつけることを禁じた「パート・有期契約労働法」(仮称)の早期制定を目指しています。

◆企業の負担増に直結
こうした状況から、非正規雇用者の待遇を引き上げる施策が講じられることは必至ですが、いまだ経済情勢が混沌としている中、労働条件の底上げは企業の負担増に直結するため、使用者側としては容易には受け入れられないものと思われます。今後いかなる施策が実施されていくのか、要注目です。


生活を楽しむ人は循環器病にかかりにくい

◆アクティブでポジティブな男性は良い結果
厚生労働省の研究班は、「自分は生活を楽しんでいる」と考える男性ほど、心筋梗塞などの循環器病になったり、循環器病が原因で死亡したりするリスクが低くなるとする調査結果を発表しました。この調査結果によると、こうした人はスポーツなどを行って健康的な生活を送っていることに加え、困難な出来事にも前向きに対処できるためにストレスを感じにくいなど、心理的な作用も影響していると考えられるそうです。
研究班によると、循環器疾患や癌疾患の既往歴のない全国の40~69歳の男女8万8,175人を対象として、約12年間の追跡調査を行ったところ、3,523人に循環器疾患の発症が確認されたそうです。

◆循環器病との関係は?
調査開始時点で「自分の生活を楽しんでいるか?」という問いに、高・中・低の3段階で答えてもらい、3グループに分けて循環器病リスクとの関連を調べたところ、男性では、生活を楽しんでいる意識が高いグループに比べ、中程度のグループの発症リスクは1.2倍、低いグループでは1.23倍でした。病気の種類別にみると、脳卒中では1.22倍、虚血性心疾患では1.28倍でした。
次に、循環器疾患による死亡との関係を調べたところ、追跡期間中に全体で1,860人の死亡が確認され、男性で楽しんでいる意識が高いグループと比べて低いグループのリスクは1.61倍も高く、脳卒中については1.75倍、虚血性心疾患については1.91倍高いという結果となりました。

◆男性と女性では異なる結果
生活を楽しんでいる意識の高いグループでは、運動習慣のある人の割合が高く、喫煙者の割合が低いなど、健康的な生活習慣を維持している人が多い傾向が見られました。心理的にポジティブな状態にある人は、困難な出来事に出会っても「なんとかできる」と前向きな考え方ができ、ストレスとなってしまった出来事にうまく対処できるため、心身への悪影響につながらないのではないか、と考えられているようです。
ただし、今回の調査では、女性についてはこうした意識とリスクの関連はみられないようです。これは、もともと男性よりもストレスに強いことなどが関係している可能性があると考えられています。「ストレスに対する対処法」や「自覚されたストレスが心身に与える影響」が男女間で異なることもわかっており、男女差に関するメカニズムの解明が待たれます。


年内にも「母子加算」復活へ

◆生活保護の概要
新聞報道によると、政府は今年3月末に廃止された「生活保護」の母子加算を、年内にも復活させる方針を固めたそうです。
生活保護は、「生活扶助」、「教育扶助」、「住宅扶助」、「医療扶助」、「介護扶助」、「出産扶助」、「生業扶助」および「葬祭扶助」の8つで構成されており、世帯の状況に応じて必要な種類の扶助を組み合わせて支給することにより、健康で文化的な生活水準を維持するとしています。
保護の要否の判断は、厚生労働大臣が定める基準による最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に保護が適用され、最低生活費から収入を差し引いた差額を保護費として支給するとされています。

◆生活保護の現状は?
2008年度の生活保護受給世帯は、1カ月平均114万8,766世帯で、前年度(110万5,275世帯)に比べ約3.9%増え、過去最多を更新したことが厚生労働省の社会福祉行政業務報告でわかりました。受給者数も159万2,620人と、前年度(154万3,321人)比で約3.2%増となっています。

◆母子加算復活の対象は全国で約10万世帯
母子加算は、18歳以下の子がいる生活保護受給世帯かつ一人親世帯に対して、保護費に最大約2万3,000円を上乗せする形で支給される仕組みでしたが、2005年から段階的に削減され、今年の3月で廃止されました。これに対して民主党などは「格差の固定化を招く」と批判してきました。
母子加算復活については法改正は必要なく、厚生労働大臣の告示により見直し可能となっています。母子加算復活の対象となるのは全国で約10万世帯にも上り、必要経費は年間180億円と試算されています。
2009年度中に必要な金額は60億円前後となる見込みで、財源としては2009年度予算の予備費などを充当する方向で、厚生労働省と財務省が調整を続けており、近々合意に達する見通しということです。


企業で導入が広がる「知的資産経営」

◆「知的資産経営」とは?
経営理念や人材、技能、ブランド、ノウハウといった、数字に表わしにくい無形資産を評価して経営に活かす「知的資産経営」を導入する企業が、中小企業を含め広がってきているようです。
「知的資産」とは、特許やノウハウなどの知的財産だけではなく、さらには組織力、人材、技術、経営理念、顧客とのネットワークなど、財務諸表には表れてこない、目に見えにくい経営資源の総称です。また、そのような会社の本当の価値や強み(知的資産)をしっかり把握し、活用することで、業績向上や会社の価値向上に結び付けることを「知的資産経営」と呼んでいます。
厳しい時代に企業が勝ち残っていくためには、差別化を図っていくことが必要です。差別化の手段は様々ありますが、「知的資産」を活用することにより、他社との差別化を図ることができるだけでなく、企業価値を高めることが可能となるのです。

◆「知的資産経営報告書」で自社価値をアピール
財務諸表を中心とした評価のみでは、企業の持つ価値がきちんと伝わっていないことがあります。企業の有する人材や技術、ノウハウなどの知的資産や、企業の優位性、取組みなどを「知的資産経営報告書」にまとめ、ステークホルダー(顧客、取引先、金融機関、従業員等)に開示することにより、企業の優れた部分や価値を知らせることができます。
また、報告書を作成することにより自社の内容・価値を正確に伝えることができ、経営方針や行動理念など、会社の向かう方向性を社員に示すことができるため、顧客や金融機関に配付するほか、人材募集や社員教育にも活用されるケースが増えているようです。

◆自治体なども支援
最近では、自治体を中心に報告書作成を支援する動きが広がりつつあります。例えば、近畿地方では、近畿経済産業局や大阪商工会議所、ひょうご産業活性化センターなどが中心となり、ホームページ上での報告書のモデル紹介、報告書を開示している企業一覧表の掲載、質問に答えることにより自社の知的資産経営を評価できるツールの公開、専門家の派遣やセミナーの開催を行っています。
京都府では、2008年度に「知恵の経営」と題して、知的資産経営の推進を全国の都道府県で初めて打ち出しました。推進役となる「知恵の経営」のナビゲーター育成を開始したり、報告書を作成した企業に年利1.9%の低利融資が受けられる制度を用意したりするなど、導入支援策を打ち出しています。
これまで見えない魅力であった無形資産を評価して経営に活かすことのできる「知的資産経営」の積極的な導入は、企業業績向上の一助となることでしょう。

2009/09/30

10月の事務所便り

 アルバイト・パート社員の「働く理由」「辞める理由」

 ◆どんな理由が多いのか?
大手人材総合サービス企業が、アルバイト・パートとして就業中の労働者(約3,000名)を対象に、「働く理由」・「辞める理由」に関する意識調査を実施し、その結果が発表されました。

 ◆働く理由…「趣味」「貯金」の減少が目立つ
「働く理由」については、「生活費を補いたかったので」(42.9%)が最も多く挙げられ、次いで「趣味に使うお金が欲しかったので」(36.1%)、「時間を有効に使いたかったので」(33.3%)と続いています。
昨年の結果と比較すると、主な理由が軒並みポイントを下げている中で、「生活費を補いたかったので」が0.7ポイントとわずかながら増加しています。また、昨年に比べて減少した項目の中では、「趣味に使うお金が欲しかったので」(9.1ポイント減)、「貯金を増やしたかったので」(4.8ポイント減)の減少が目立っています。
遊びのためや生活の余裕を得るためではなく、生活費を稼ぐ必要に迫られてアルバイト・パートを始めた人が増加していると考えられますが、アルバイト・パートであっても、よりはっきりとした目的意識をもって仕事に向き合う層が増えている結果とも考えられます。

 ◆辞める理由…「店長や社員の人の雰囲気が悪いから」が増加
一方、「辞める理由」については、「店長や社員の人の雰囲気が悪いから」が24.2%で最も多く挙げられており、次いで「給与が低いから」(16.2%)、「楽でない・疲れる仕事だから」(15.0%)と続きました。
昨年の結果と比較すると、最も多かった理由は「店長や社員の人の雰囲気が悪いから」で変化はないものの、今年は5.8ポイントの大幅な増加となっています。
また、「給与が低いから」は昨年から4.1ポイント、「もっとよい条件の仕事が見つかったから」は3.9ポイント伸びています。

 ◆仕事の選択基準はよりシビアに
これらの結果から、パート・アルバイトの方が、生活費を補う傾向がより強くなっていると同時に、人間関係に加え、給与や条件面でよりシビアに仕事を選んでいる様子が見て取れます。


 高年齢者を雇用する事業所の割合が増加

 ◆高年齢者雇用の実態は?
昨年9月に厚生労働省が実施した「高年齢者雇用実態調査」の結果が発表されました。この調査の目的は、高年齢者の雇用状況や、平成18年に改正された「高年齢者雇用安定法」の施行後の実態を把握することです。

 ◆全体的に増加している高年齢労働者の割合
まず、60歳以上の労働者を雇用している事業所の割合は59.4%(平成16年の前回調査では50.5%)で、前回調査時に比べて8.9ポイント上昇し、企業規模が大きいほど割合が高くなっています。
事業所の全常用労働者に占める高年齢労働者の割合でも、60歳以上の労働者の割合は10.0%(同7.6%)で前回調査時に比べ2.4ポイント上昇しています。
産業別では、60歳以上の労働者を雇用している事業所の割合は、製造業が81.1%と最も高く、次いで建設業が71.1%、運輸業が69.6%となっています。

 ◆定年年齢65歳以上の事業所割合が上昇
定年制がある事業所の割合は73.5%(平成16年の前回調査では74.4%)、逆に定年制がない事業所の割合は26.5%(同25.6%)となっています。
事業所の規模別に定年制がある事業所の割合を見てみると、1,000人以上規模が99.8%と最も高く、5~29人規模が69.6%と最も低くなっています。また、前回調査時に比べ、定年年齢65歳以上の事業所割合が上昇しています。

 ◆9割近くの企業が「継続雇用制度」を導入
一律に定年制を定めている事業所で定年年齢が60~64歳の事業所では、「継続雇用制度」がある割合は89.1%で、このうち「勤務延長制度」があるのは27.3%、「再雇用制度」があるのは83.5%となっています。
また、「勤務延長制度」がある事業所のうち、「勤務延長制度」のみがある事業所の割合は16.5%、「再雇用制度」がある事業所のうち、「再雇用制度」のみがある事業所割合は72.7%となっています。
平成18年に改正された「高年齢者雇用安定法」による段階的な65歳までの定年年齢の引上げや、継続雇用制度の導入義務付けが浸透し、ベテラン社員の経験・能力を有効活用する企業が増えている実態がうかがえます。


 「育児休業制度」「短時間勤務制度」の運用状況

 ◆厚生労働省の調査結果から
厚生労働省から、2008年度の「雇用均等基本調査」の結果が発表されました。
この調査は、男女の雇用均等問題に関する雇用管理の実態を把握することを目的に毎年実施されていますが、2008年度は、育児・介護休業制度や子の看護休暇制度の運用状況等についての調査でした。

 ◆事業所規模・男女による差が大きい制度導入割合
この調査によれば、「育児休業制度」に関する規定がある事業所の割合は66.4%で、2005年度の調査に比べて4.8ポイント上昇しています。規定がある事業所の割合については、企業規模による差が大きく、事業所規模が5人以上の場合は66.4%であるのに対して、30人以上の場合では88.8%となっています。
2008年3月末までの1年間に本人または配偶者が出産した人のうち、同年10月1日までに育児休業を開始した人の割合は、女性では昨年より0.9ポイント上昇して90.6%になり、初めて9割を超えたのに対し、男性は昨年より0.33ポイント低下して1.23%となり、0~1%台で低迷が続いています。
女性の取得が広がっている中、仕事への影響や復帰後の不安などから、男性の取得が進んでいない現状が浮かび上がっています。

 ◆女性「10~12カ月未満」、男性「1カ月未満」が最多
育児休業の取得期間については、女性では「10~12カ月未満」(32.0%)が最も多く、次いで「12~18カ月未満」(16.9%)となっており、5割近くが10カ月以上となっています。
一方、男性では「1カ月未満」(54.1%)が最も多く、5割超が短期間で復職している状況です。
育児休業取得者があった際の雇用管理としては、「代替要員の補充を行わず、同じ部門の他の社員で対応した」(45.9%)が最も多く、次いで「派遣労働者やアルバイトなどを代替要員として雇用した」(35.7%)、「事業内の他の部門または他の事業所から人員を異動させた」(21.7%)と続いています。

 ◆「短時間勤務制度」の活用も広がる
その他、育児のための「短時間勤務制度」を導入している事業所の割合は38.9%と、2005年度に比べて7.5ポイント上昇しました。
利用可能期間についても、小学校就学時以降まで「短時間勤務制度」を活用できる事業所は15.0%となり、6ポイント上昇しています。


 若年層に対する重点雇用対策の最終案

 ◆政府プロジェクトチームによる最終案
政府が7月に立ち上げた「若年雇用対策プロジェクトチーム」による重点雇用対策の最終案が明らかになりました。この対策には、企業の採用抑制により学校を卒業しても未就職である若者を雇った事業主に対して助成する新制度の創設など、約20項目が挙げられています。
その主なものは以下の通りです。

 ◆重点雇用対策の主な内容
(1)若年雇用対策の総合的推進(内閣府)
…国・地域において「若者雇用推進会議(仮称)」を開催するとともに、若年雇用に関し、「将来雇用見通し・若者雇用推進アクションプラン」の策定等を行うための基礎調査(採用側の企業や学生等へのアンケート調査等)等を実施する。
(2)民間機関のノウハウ活用、専門人材育成等によるキャリア教育プログラムの効果的推進による若者の職業への円滑な移行支援(厚生労働省)
…中学、高校生等を対象に、キャリア・コンサルティング等の専門性を活かし、キャリア教育の企画・運用を担う専門人材の養成や、キャリア教育を推進する民間サポート機関の育成・活用等に、関係行政機関等が連携して取り組む。
(3)未就職卒業者早期就職プロジェクト(厚生労働省)
…若者の応募機会の拡大に向けた企業の取組みを促進するとともに、未就職卒業者が応募可能な求人の開拓、事業主への助成措置等を行う「未就職卒業者早期就職プロジェクト」を新たに実施する。
(4)ジョブ・カード制度の一層の展開(厚生労働省)
…ジョブ・カード制度の一環として、新たに、キャリア形成の過程をモデル化したキャリアマップの作成、各種検定の整備、モデル評価シートの多様化等の産業分野ごとの展開に向けた基盤整備を行い、職業訓練に活用する。

 ◆実施については不透明な部分も
これらの対策は、各省庁が2010年度の概算要求に盛り込み、予算要求の規模は合計で約374億円です。
ただ、先の総選挙により政権が交代し、一部予算の見直しも検討されていることから、実施にはまだまだ不透明な部分もありそうです。


 「ジョブ・カード」取得者が10万人を突破

 ◆「職業能力」「職業意識」が整理できるジョブ・カード
職業経験が少ない人の就職を支援するため、厚生労働省が2008年4月から始めた「ジョブ・カード制度」ですが、カードの取得者が今年6月末で累計10万人を超えたことがわかりました。

 ◆「ジョブ・カード」のねらい
ジョブ・カード制度は、企業現場でのOJT(実習)、教育訓練機関等でのOFF-JT(座学等)による職業訓練を通じて、フリーターや子育て終了後の女性など、職業経験の少ない人の能力を高め、就職を支援することをねらいとしてスタートしました。
ジョブ・カードの発行希望者は、企業現場・教育訓練機関等で実践的な職業訓練を受け、その評価結果である評価シート等を取得し、これを自らの職歴・教育訓練歴、取得資格などの情報とともに「ジョブ・カード」としてとりまとめます。
ジョブ・カードを作成することにより、自分の職業能力・意識を整理することができるだけでなく、作成したジョブ・カードは、常用雇用を目指した就職活動や職業キャリア形成に幅広く活用することができるとされています。

 ◆制度自体の認知度は依然低い
ただ、制度の導入からまもなく1年半が経過しますが、制度自体の認知度がまだまだ低く、そのメリットが広く知られていないため、当初の目標である「5年間で100万人」のジョブ・カード取得者数には現状では厳しい状況です。
そこで、ジョブ・カード制度を広く普及させるための具体策として、国・産業界・労働界・教育界等で構成される「ジョブ・カード推進協議会」において、「全国推進基本計画」が定められています。
内容は、「ジョブ・カード制度」の周知および広報、職業能力形成プログラムおよび実践型教育プログラムの普及、受講者等の就職促進、ジョブ・カード様式の普及、キャリア・コンサルタントの養成です。
ジョブ・カード制度の趣旨や目的が一般にわかりやすい形で周知され、この制度の対象者となる求職者および受入れ企業が円滑に利用できるようになるには、さらなる対策が必要でしょう。


 出産育児一時金が38万円から42万円に増額

 ◆平成22年3月までの暫定措置
緊急の少子化対策として、出産育児一時金が見直されます(平成21年10月から平成22年3月までの暫定措置)。
具体的には、平成21年10月1日以降に出産される方から、出産育児一時金の支給額および支給方法が以下のように変わります。

 ◆支給額と支給方法
支給額は、原則38万円を4万円引き上げ、42万円となります(産科医療補償制度に加入する病院などにおいて出産した場合に限る。それ以外の場合は35万円から4万円引き上げた39万円)。
支給方法は、これまで直接支払制度が実施されなかった出産費用に出産育児一時金を充てることができるよう、原則として医療保険者から出産育児一時金が病院などに直接支払われる仕組みです。したがって、今後は原則42万円の範囲内で、まとまった出産費用を事前に用意しなくても良くなります。
ただし、出産育児一時金が42万円を超えて支給される場合であっても、42万円までが直接支払制度の対象ですので、42万円を超える部分は加入の医療保険者に直接請求することになります。
出産育児一時金が医療保険者から病院などに直接支払われることを望まない場合は、出産後に医療保険者から受け取る従来の方法を利用することも可能です(ただし、出産費用を退院時に病院などにいったん自分で支払う必要がある)。

 ◆医療機関への対策
一方、医療機関にとっては、制度の見直しにより分娩費用としての一時金が支払われるのが、今までの場合に比べて1~2カ月遅れることになります。そこで、一時的な資金不足対策として、独立行政法人福祉医療機構から運転資金の融資を受ける制度が設けられました。
経済的な不安を解消し、安心して出産できる今回の制度改正は、暫定措置としてではなく、恒久的な制度としての実施が望まれます。


 どうなる?「街角の年金相談センター」構想

 ◆構想が大きく揺らいでいる!
平成22年1月から予定されている「社会保険庁」から「日本年金機構」への移行に伴って、社会保険庁の「年金相談センター」の業務は「街角の年金相談センター」に引き継がれることとなっていました。しかし、今この構想が大きく揺らいでいます。

 ◆「年金相談センター」から「街角の年金相談センター」へ?
「年金相談センター」は、社会保険事務所の年金相談窓口の混雑を緩和するために、全国の都市(27都道府県51カ所)に置かれているものであり、来訪相談についての相談を承る窓口です。開庁日は月曜日から金曜日(国民の休日・年末年始の休日を除く)、開庁時間は午前8時30分から午後5時15分です。
この「年金相談センター」が運営している業務については、「日本年金機構」の設立に伴い、全国社会保険労務士会連合会が受託することになりました。これにより「年金相談センター」の配置換えを行い、すべての都道府県に「街角の年金相談センター」を開設し、社会保険労務士による年金の「対面相談」を実施する予定となっていました。
しかし、先の衆議院議員総選挙の結果により「街角の年金相談センター」構想にも「待った」がかかってしまったのです。

 ◆総選挙の結果が大きく影響
ご承知の通り、総選挙の結果、民主党による政権交代が実現しましたが、同党はその公約で、社会保険庁と国税庁を統合して新たに「歳入庁」をつくることを掲げています。
この公約実現の一歩として、「社会保険庁」から「日本年金機構」への移行が凍結される公算が大きいようであり、「年金相談センター」から「街角の年金相談センター」への移行についてもストップがかかるのでは、という報道がなされています。
先行きは不透明であり、今後の動向に注目しなければなりませんが、いずれにしましても、国民にとっては「年金記録問題の全面的な解決」、「新たな年金相談体制の整備」が望まれるところです。


 9月分から始まった都道府県別の健康保険料率

 ◆9月分の保険料から
「政府管掌健康保険」が「全国健康保険協会」(通称:協会けんぽ)に移行されてからまもなく1年が経ちます。協会けんぽ設立に伴い決定されていたのが「都道府県別の健康保険料率の設定」です。
今年3月末にこの料率が決定され、9月分の保険料から実施(一般被保険者については10月納付分から、任意継続被保険者については9月納付分から)されていますので、給与計算の担当者などは特に注意が必要です。

 ◆「都道府県別の健康保険料率」実施の目的
なぜ「都道府県別の健康保険料率」が実施されたのか,協会けんぽのホームページには以下のように記されています。
「従来の全国一律の保険料率のもとでは疾病の予防等の地域の取組により医療費が低くなっても、その地域の保険料率に反映されないという問題点が指摘されていました。こうした中で、先般の医療制度改革においては、政府管掌健康保険について、国保や長寿医療制度と同様に、都道府県単位の財政運営を基本とする改革が行われており、都道府県毎の保険料率は、こうした改革の一環として導入されたものです。」
 
 ◆都道府県別の保険料率
全国47都道府県別の保険料率は次の通りですので、ご確認ください。
・8.26%(北海道)
・8.25%(佐賀県)
・8.24%(徳島県、福岡県)
・8.23%(香川県、熊本県、大分県)
・8.22%(大阪府、岡山県、広島県、山口県、長崎県、鹿児島県)
・8.21%(青森県、秋田県、石川県、奈良県、和歌山県、島根県、高知県)
・8.20%(福島県、福井県、兵庫県、鳥取県、宮崎県、沖縄県)
・8.19%(宮城県、神奈川県、富山県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、愛媛県)
・8.18%(岩手県、山形県、茨城県、栃木県、東京都、新潟県、滋賀県)
・8.17%(群馬県、埼玉県、千葉県、山梨県、静岡県)
・8.15%(長野県)


 「債権法改定」で契約ルールが大きく変わる?

 ◆「契約」に関するルールの大幅な見直し
法務省は、現在、市民生活・企業活動における様々な「契約」に関すルールを改めるため、「債権法」(民法の債権に関する規定)を全面的に見直す方針を示しています。
「債権法」の全面改正が行われるのは、1898年(明治31年)の施行以来始めてのこととなります。

 ◆「民法」の歴史
民法は、1890年に公布されたものの施行されることなく終わった「旧民法」の修正法として、「財産法」(総則、物権、債権)に関する部分は1896年に、「家族法」(親族、相続)に関する部分は1898年に公布され、いずれも1898年に施行されたという長い歴史を持っています。
「家族法」に関する部分については1947年(昭和22年)に一度全面的な見直しが行われましたが、「財産法」に関する部分については、これまでに数々の重要な改正が行われてきたものの、全面的な見直しが行われることはありませんでした。

 ◆なぜ今見直しなのか?
今回、「債権法」の見直しが検討されている背景には、1世紀以上も前の社会経済活動を前提とした契約ルールを点検し直し、今の時代に合ったように、企業活動や商取引、消費者に関わるルールを見直す必要が出てきているということがあります。
現在の民法が制定された当時には想定されていなかった契約の形式が出てきたため、法律の条文解釈だけでは解決しきれないトラブルが生じてきているとうことも挙げられます。
例えば、語学学校の授業などを中途で解約した場合の初めに払い込んだ費用返還に関するトラブル、企業の合併・買収交渉の途中での交渉破棄をめぐるトラブルなどです。

 ◆今後の行方
現在、学者などが参加している「民法(債権法)改正検討委員会」による「改正試案」が発表され、これらが法改正のベースとなっていくものと思われます。
法務省は、早ければ2012年の通常国会に改正案を提出したいとしており、実際に改正が行われるのはまだ先の話でしょうが、「契約」が業務のベースとなっている企業にとっても注目しておくべき法改正だと言えるでしょう。


 新型インフルエンザに対する企業の取組み

 ◆再び猛威をふるう新型インフル
新型インフルエンザの猛威はとどまることを知らず、世界保健機関(WHO)の発表によれば、9月6日時点における新型インフルエンザの影響とされる死亡者数は世界で3,200名を突破したそうです。日本でも8月中旬に新型インフルエンザの影響による初の死亡者が確認されました。
薬局の店頭からマスクがなくなってしまうなどの現象も再び起きつつあるようです。

 ◆企業における取組みは?
東京経営者協会では、8月下旬に「新型インフルエンザ対策の取組み状況に関するアンケート調査結果」(東京都内の会員企業が対象。1,210社のうち237社が回答)を発表しました。企業が事前にとった対策としては、「備蓄品の調達」(72.3%)、「社員の意識啓発」(64.5%)、「対応体制・意思決定プロセスの構築」(50.0%)、「対応マニュアル・行動計画の策定」(47.7%)が上位を占めました(複数回答)。
また、三井住友海上火災保険が行ったアンケート調査(上場企業が対象。3,807社のうち722社が回答)によれば、社内で新型インフルエンザ感染が拡大したときに対応するための「事業継続計画」を策定している上場企業は38.1%であり、新型インフルエンザ対策について「実行中」「対応を策定中」「策定予定」のいずれかと回答した企業はあわせて90.6%でした。

 ◆企業としては何をすべきか?
その他、企業としては、感染した社員や感染の疑いのある社員にどのタイミングで「自宅待機命令」を出すのか、社員の家族の感染が発覚した場合はどうするのか、社員を自宅待機させた場合の「賃金」や「休業手当」はどうするのかについても考えておかなければなりません。
企業のリスクマネジメントとして、規程の策定なども含め、いざという時に備えて対策を考えておくべきでしょう。

2009/08/31

9月の事務所便り

 年金・医療制度とも赤字続き

 ◆過去最大の赤字幅
厚生労働省は、自営業者などが加入する国民年金とサラリーマンが加入する厚生年金、また、主に中小企業のサラリーマンが加入する「協会けんぽ」の2008年度の決算を発表しました。
国民年金・厚生年金とも運用損が響き過去最大の赤字幅となっており、赤字額は、国民年金が1兆1,216億円、厚生年金が10兆1,795億円となっています。国民年金が3年連続の赤字、厚生年金が2年連続の赤字です。
この主な原因は、リーマンショック等により内外の株式市場が大幅に下落したことに加え、為替市場で急速に円高に進んだ影響により、積立金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用損失が膨らんだためです。
厚生年金においては、前年度に比べ被保険者数の増加や保険料率の引上げ等により歳入が増加し、歳出について受給者数の増加はあったものの、全体では3,136億円歳入が歳出を上回りました。一方、国民年金では歳入が被保険者数の減少により減ったことにより、歳出が歳入を4,199億円上回っています。

 ◆年金給付と制度の見直し
これらの結果が、すぐに年金給付に影響を与えることはないと思われますが、このまま低迷が続くようであれば、現行制度の見直しも迫られそうです。
また、協会けんぽ(旧政管健保)では収支が2,538億円の赤字となり、単年度赤字は2年連続で、赤字幅も拡大しました。失業が増えたことによる加入者の減少だけでなく、保険料計算のベースとなる給与や所得の水準も下がりました。支出については、高齢化に伴う医療費増が影響しています。

 ◆協会けんぽでは9月から個別の保険料率
協会けんぽでは、今年9月から、保険料率が全国一律のものから都道府県ごとに個別に決められることになり、収支の結果がますます影響を及ぼすことになりそうです。


 介護労働者の就業実態と雇用環境改善への取組み

 ◆平均勤続年数は4.4年
厚生労働省所管の財団法人介護労働安定センターが、昨年10月に実施した「介護労働者の就業実態と就業意識調査」の結果を発表しました。
訪問介護員、介護職員の1年間(平成19年10月1日~平成20年9月30日)の採用率は22.6%、離職率は18.7%でした。採用に関しての募集ルートは「ハローワーク・人材銀行」が78.0%で最も多く、次いで「職員や知人を通じて」が64.0%、「折込みチラシ、新聞・雑誌の広告」が46.7%の順でした。また、全体では「中途採用」が84.6%と圧倒的に多く、「新卒採用」はわずか9.6%でした。
職種別の離職率は、訪問介護員は13.9%、介護職員は21.9%で、就業形態別では正社員が18.5%、非正社員は18.9%でした。離職者のうち、勤務した年数が「1年未満の者」は39.0%、「1年以上3年未満の者」は36.5%で、離職者の75.5%が3年未満で離職しています。
勤続年数をみると、全体の平均で4.4年、職種別では訪問介護員が4.3年、介護職員が3.8年という結果になっています。

 ◆雇用環境改善への取組み
早期離職防止や定着促進のための方策というテーマのアンケートでは、「職場内の仕事上のコミュニケーションの円滑化を図っている」が63.4%で最も多く、次いで「労働時間の希望を聞く」が60.3%、「賃金・労働時間等の労働時間を改善する」が52.6%でした。
また、訪問介護員、介護職員に対する人材育成のための取組みのテーマでは、「教育・研修計画を立てている」が51.7%で最も多く、次いで「自治体や業界団体が主催する教育・研修には積極的に参加させている」が50.0%、「採用時の教育・研修を充実させている」が39.0%となっています。
一方、人材育成の取組みにあたっての問題点については、「人材育成のための時間がない」が47.7%で最も多く、次いで「採用時期が別々で効率的な育成ができない」が28.3%、「人材育成のための費用に余裕がない」が25.8%の順でした。

 ◆業界・個別事業所での対策が必要
今後、介護サービスを運営するうえでの問題点として、「今の介護報酬では十分な賃金を支払えない」や「良質な人材の確保が難しい」といった声も多いようです。
介護報酬アップや現状の雇用情勢は、介護業界にとって「追い風」とも言われていますが、業界全体や個別の事業所ごとに取り組むべき課題への対策が急がれます。


 日本人の平均寿命が過去最高を更新

 ◆女性86.05歳、男性79.29歳
厚生労働省が2008年「簡易生命表」を公表し、日本人の平均寿命が女性86.05歳、男性79.29歳となり、ともに過去最高を更新したことがわかりました。前年に比べて女性は0.06歳、男性は0.1歳延びていますが、インフルエンザの流行などにより、平均寿命が短くなった2005年以降、3年連続の延びです。
「簡易生命表」は、その年の死亡状況が変わらないと仮定して、各年齢の人が1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるのかの期待値を示す「平均余命」の指標です。また「平均寿命」とは、0歳時の平均余命のことです。

 ◆女性は24年連続世界一、男性は4位へ後退
日本人女性の平均寿命は24年連続世界一で、男性は2007年の3位から4位に後退しました。女性の2位は香港の85.5歳、3位はフランスの84.3歳、4位はスイスの84.2歳の順です。
一方、男性の1位はアイスランドの79.6歳、2位は香港とスイスの79.4歳となっています。

 ◆医療・年金制度の充実が求められている
2008年に生まれた赤ちゃんのうち、65歳以上まで生きる人の割合は女性で93.4%、男性で86.6%となっており、さらに90歳以上まで生きる人の割合は女性が44.8%、男性が21.1%となりました。
平均寿命が延びた理由については、医療水準の向上などにより、三大死因とされる「がん」、「心臓病」、「脳卒中」の死亡率が下がったことが大きな要因とされており、交通事故による死亡者数が減ったことも影響しているようです。
平均寿命が延びることに伴って高齢者等が安心して暮らせる社会にするためにも、医療や年金といった制度の充実がますます求められます。


 「児童相談所」の通報番号が全国共通に

 ◆通報・相談しやすい体制づくり
厚生労働省は、各地の児童相談所に全国共通の電話番号を導入する方針を決めました。地域によってバラバラだった番号を統一することにより、児童虐待や育児に関する相談などを受け付けやすくすることが狙いです。
児童相談所では、児童虐待の通報のほか、様々な相談に応じています。これまで全国統一の電話番号はなく、各自治体が広報誌などで周知していました。今回の取組みは、すでに導入済みの小児救急相談ダイヤル「#8000」のように、全国共通番号の導入で周知を進め、通報や相談を受け付けやすくするものです。
新しく決まる共通番号に電話をすれば、所管の児童相談所に自動的に転送される仕組みです。固定電話からかけると市内局番などから所管の相談所を割り出し、市内局番と相談所の所轄が一致しない場合や、携帯電話からの通話の場合は郵便番号などをプッシュしてもらい振り分ける流れです。ただし、PHSやIP電話には対応せず、通話料は有料の見込みです。

 ◆通報は国民の義務でもある
「児童虐待の防止等に関する法律」では、児童虐待が疑われる場合の通告を国民の義務としています。しかし現状においては、児童相談所は、都道府県、政令市など別々の母体が設置しており、ある都市では県と市の相談所が2つあったりするように、所管地域が複雑なため、従来は電話の転送が困難とされていました。
厚生労働省が今年の5月に全国201カ所の児童相談所を調査したところ、約9割の相談所は上記の転送が可能で、技術的な理由で加入できない自治体が11カ所残りますが、今回、導入に踏み切るようです。

 ◆今年11月までには詳細が決定
電話番号は「0570」から始まる見通しで、厚生労働省は今年11月の「児童虐待防止推進月間」までに詳細を決めるとしています。
現実に通報されるケースは氷山の一角とも言われていますが、この仕組みの導入により、児童に対する虐待を少しでも防ぐことが期待されます。
 

 最低賃金、今年は据置きが大勢か?

 ◆引上げ額の目安は全国平均7~9円
厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会(小委員会)は、2009年度の最低賃金の改定額の目安を決定しました。35県については現状維持とし、最低賃金額が生活保護支給額を下回る12都道府県に限って引上げの方針を打ち出しています。その結果、引上げ額は全国平均で7~9円となり、昨年度実績(16円)を下回る見込みです。
最低賃金は、企業が従業員に支払う義務のある最低限の賃金で、都道府県ごとに決まっています。現在は、最も高いのが東京都、神奈川県などの「766円」、最も低いのが宮崎県、鹿児島県、沖縄県などの「627円」となっており、全国平均は「703円」(いずれも時給換算)です。
今回の目安を反映すると、2009年度には最低賃金額は710~712円となる見通しです。

 ◆景気後退の影響は
今回の審議においては、生活保護の支給額が最低賃金の額を上回る地域の解消と、昨秋以降の景気後退の影響をどうみるかが焦点です。昨年は47都道府県すべてで引上げが示されましたが、昨秋以降の急速な景気後退に配慮し、今回は35県を現状維持としました。
引上げを示したのは12都道府県にとどまりました。それも、最低賃金の額が生活保護の支給額を下回る状況を解消するのが狙いで、最も引上げ額が大きいのは東京の20~30円、最も低いのは秋田の2円でした。

 ◆賃金の底上げは小幅となる見通し
2007年度・2008年度は賃金底上げを狙い、10円を上回る大幅な引上げ額の目安が示され、2009年度で引上げ実績は7年連続ですが、賃金の底上げは小幅になりそうです。
前述の小委員会は中央最低賃金審議会に結果を報告し、これを受け、審議会が厚生労働大臣へ答申する見通しです。その後、都道府県ごとの最低賃金審議会で議論され、各地域の引上げ額が決められます。今秋には新しい最低賃金が適用される見込みです。


 「実習型雇用支援事業」がスタート

 ◆人材確保を考えている企業を支援
昨今の厳しい雇用情勢において、休業を実施することにより雇用を維持しようとする事業主を支援する助成金(雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金)が広く利用されていることから、助成金への関心が高まっていますが、7月から、人材確保を考えている中小企業等を支援する新たな制度である「実習型雇用支援事業」がスタートしました。
企業が、十分な技能や経験を有しない求職者を「実習型雇用」により受け入れることにより、求職者の円滑な再就職と中小企業等の人材確保を促進するものです。
具体的には、ハローワークから職業紹介を受けた求職者と企業が、原則6カ月間の有期雇用契約を結び、「実習計画書」に基づいて、技能および経験を有する指導者の下で指導を受けながら実習や座学などを通じて必要な技能や知識を身に付けることで、企業のニーズにあった人材を育成し、その後の正規雇用へとつなげることを目的とします

 ◆助成額と要件
実習型雇用により求職者を受け入れた事業主に対しては、「緊急人材育成・就職支援基金」より、以下の通り助成金が支給されます。
(1)実習型雇用期間(6カ月)……1人あたり月額10万円
(2)実習型雇用終了後の正規雇入れ……1人あたり100万円(ただし、正規雇用6カ月後に50万円、その後6カ月後に50万円と2回に分けて支給)
(3)正規雇入れ後の教育訓練……1人あたり上限50万円
対象となる事業主は、ハローワークにおいて実習型雇用として受け入れるための求人登録をしていること、実習型雇用終了後に正規雇用として雇い入れることを前提としていることであり、企業規模や業種などの要件は定められていません。

 ◆求職者・企業双方にメリット
技能や経験が不足していることが理由でうまく採用に結び付かないケースは数多くあると思われますが、当初の6カ月間で必要な技能や知識を身につけることができ、正規雇用への道が開かれるのであれば、求職者・企業双方にとってメリットがある制度ではないでしょうか。


 活用が広がる「動産担保融資制度」とは?

 ◆融資件数が1年で2.7倍に増加
金融庁の発表によれば、2008年度における「動産担保融資制度」による融資件数が1,387件(前年度比2.7倍)に増加したそうです。金額ベースでは585億円(同63%増)となっています。
絶対額としては、まだまだ少ない融資制度の1つだとはいえますが、どのような仕組みで、企業にとってどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

 ◆「動産担保融資」とは
動産担保融資制度は、企業が抱えている在庫商品、工場設備・機械、農家が飼っている家畜などの流動性の高い資産を担保として、金融機関が成長の見込める企業などに資金を貸し付ける仕組みであり、アメリカなどでは一般的なものとなっています。
これまでに担保として認められたものの例としては、昆布、りんご、牛、豚、冷蔵設備、建材、鋼材、工作機械、プレス装置などがあります。
融資の金額は、在庫商品の市場価値や取引先の支払能力などが総合的に判断されたうえで、決定されます。

 ◆動産担保融資制度のメリット
通常の融資制度においては、企業は、金融機関に担保として不動産を求められる場合が多く、土地・建物等の不動産を持っていない中小企業は、融資を受けづらいというのが現状です。しかし、この動産担保融資制度を活用することによって、資金繰りが楽になる中小企業は少なくないでしょう。

 ◆いくつかの課題も
動産担保融資制度の課題としては、「動産担保の価値を正確に評価することができるのか」ということが挙げられます。これに関しては、金融機関が、担保に設定する動産に関する専門家(いわゆる“目利き”)などと連携するケースが増えているようです。
また、企業にとっては、「在庫を担保にしないと融資を受けられない企業」とみられてしまう点がデメリットとなっているようです。
これらの点がクリアできれば、さらに活用が広がるものと思われます。


 「高額介護・高額介護合算療養費制度」の申請受付開始

 ◆申請受付がスタート
平成20年4月から、「後期高齢者医療制度」(長寿医療制度)とともに、「高額医療・高額介護合算療養費制度」(以下、「合算制度」という)が施行されました。
このうち、「合算制度」については、この8月(加入している医療保険や介護保険により受付開始日が異なる)から順次申請受付が始まりました。

 ◆「合算制度」の内容
「合算制度」は、公的医療保険・介護保険の両方を利用している世帯の自己負担額が重くなり過ぎないように、自己負担額の合計が一定の上限額(年額56万円をベースとして、世帯員の年齢構成や所得区分に応じて設定されている)を超えた場合に、超過分が還付される制度です。
費用の負担については、医療保険者・介護保険者の双方が、自己負担額の比率に応じて負担し合うことになっています。

 ◆具体的なケース
想定されるのは、高齢の妻の介護により出費が大きくなっていたところ、夫が病気で倒れてしまいさらに高額な医療費がかかってしまうというようなケースです。このようなケースにおいて、できるだけ世帯の負担を少なくしてあげようというのが、本制度創設の趣旨です。
例えば夫婦2人の世帯(ともに75歳で市町村民税非課税)が、1年間(8月1日~7月31日の間)で、夫が医療保険で30万円、妻が介護保険で30万円を支払った場合、世帯としての年間の負担は合計60万円となりますが、支給申請を行うことにより、この場合の上限額(31万円)を超えた金額である29万円が還付されます。
なお、この「合算制度」の詳細については、厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/za/0724/a10/a10.html)にも掲載されていますので、ご参照ください。


 「多重派遣」をめぐる労働局による命令事例

 ◆「二重派遣」で業務停止命令
7月16日、福島労働局は、人材派遣会社から派遣された労働者を別の会社に派遣していたなどとして、福島県の製造業「アルファ電子」に対し、同社の派遣業について1カ月間業務を停止するよう命令を出しました。また、二重派遣となることを知っていながら同社に労働者を派遣していた同県の人材派遣会社(4社)に対しても、事業改善命令を出しました。

 ◆なんと「三重派遣」の事例も!
また、7月23日、東京労働局などは、東京都の派遣会社「辰星技研」が無届けの派遣会社などから派遣されてきた労働者を二重・三重の派遣状態で日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県)に派遣していたとして、事業停止命令を出しました。
厚生労働省の発表によれば、三重派遣による事業停止命令は初めてのことだそうです。

 ◆禁止されている「多重派遣」
法律上、労働者供給事業のうち、労働者派遣に該当するものだけが例外的に許されていますが、それ以外のものは職業安定法44条により禁止されています。
「二重派遣」は、A社がその雇用する労働者をB社に派遣し、B社が当該労働者をさらにC社に派遣するケースをいいます。この場合において、B社は、自社が雇用していない労働者を他社(C社)のために労働に従事させていることから、労働者派遣の定義には当てはまらず、こうした行為は職業安定法44条により禁止されます。
二重派遣と判断された場合には、指導や検査等の行政処分がなされるほか、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を受ける可能性もあります。


 利用が増える「遺言信託」のメリット

 ◆伸びる利用件数
社団法人信託協会(http://www.shintaku-kyokai.or.jp/)のまとめによれば、今年3月末時点における「遺言信託」の利用件数が、6万5,612件(前年同月末比6.4%増)となったそうです。
この遺言信託については、大手の信託銀行だけでなく地方銀行なども取扱いを行っており、サービスを拡充していることから、利用件数はこの5年間で約1.5倍となっているそうです。

 ◆「遺言信託」とはどんなものか?
「遺言信託」は、信託銀行などが、遺言書作成の助言・保管・執行などを一括して顧客から請け負うものです。顧客に対して、法的に有効な遺言書の作成方法を助言し、作成した遺言書を保管し、死亡後に執行(遺言書に従った遺産の処理、口座の名義書換など)を行うサービスを提供します。
この遺言信託には、一般的に、遺言書の保管だけを行う契約形態と、執行までをまとめて行う契約形態があるそうです。

 ◆「遺言信託」利用増加の背景
遺言書は、公証役場の公証人に作成を依頼したり、弁護士に執行を依頼したりすることもできますが、(1)作成のアドバイスをもらえること、(2)遺言内容の定期的な見直しなどのアフターフォローがあること、(3)執行の際の手際が良いことなどから、主に富裕層や企業オーナーなどが信託銀行に依頼するケースが増えているようです。
また、相続に関しての権利意識が高まっていることなども、この「遺言信託」の利用件数拡大に繋がっているようです。


 霞が関(中央省庁)に「認証保育所」開設へ

 ◆国土交通省に保育所を開設へ
国土交通省は、同省内に今年10月に保育所を開設し、役所だけでなく周辺の一般企業に勤める人の子どもも受け入れる方針を明らかにしました。最近では、大企業を中心に企業内に託児所などを設置するケースも増えつつありますが、こうした取組みは霞が関を中心とした中央省庁では初めてで、注目を浴びそうです。
この保育所の名称は「かすみがせき保育所」で、定員は30名、0~5歳児の子どもを受け入れる予定とのことです。東京都が独自に認めている「認証保育所」として設置されます。

 ◆「認可保育所」とは?
保育所といった場合、まずは「認可保育所」があります。「認可保育所」は、児童福祉法に基づく児童福祉施設のことであり、施設の広さ、保育士等の職員数、給食設備、防災管理、衛生管理などの国が定めた設置基準をクリアして、都道府県知事に認可された施設のことです。
保護者が仕事や病気などの理由で、0歳~小学校就学前の子どもの保育ができない場合に子どもを預かり保育します。市区町村が運営する「公立保育所」と社会福祉法人などが運営する私立の「民間保育所」がありますが、認可保育所は公費により運営されます。

 ◆「認証保育所」とは?
これに対して「認証保育所」は、広い敷地を確保できないなど、「認可保育所」の基準を満たしていなくても、自治体が独自の基準を定めて「認証」した保育所のことです。自治体が民間企業などの事業者に対して運営費を補助することにより成り立っています。利用者は、保育所と直接契約する必要があります。
なお、東京都では、2001年にこの「認証保育所」の仕組みを導入し、8月1日現在、都内に457カ所あるそうです。

 ◆待機児童の問題
ここ最近「待機児童」が大きな社会問題となっています。保育所入所資格を有して入所を希望していても、保育所の施設定員を超過するなどの理由から入所できない状態にある児童のことです。
前述の「かすみがせき保育所」の設置も待機児童対策の一環だと言われていますが、待機児童対策がさらに進んでいくことが期待されます。

2009/07/31

8月の事務所便り

 公的年金の運用損失が過去最悪に

 ◆年金積立金の運用主体
公的年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2008年度の市場運用利回りがマイナス10.03%だったことがわかりました。
GPIFは、厚生労働大臣から委託され、国民年金と厚生年金の年金積立金の管理および運用を行っています。積立金は平成12年度までは全額を旧資金運用部に預託することが義務付けられていましたが、平成13年4月に財政投融資制度改革が行われ、厚生労働大臣による自主運用が実施されています。この改革により、積立金は一部を除いて厚生労働大臣からGPIFへ寄託されることとなりました。
そして、今年3月末の運用資産総額は約117兆円で、このうち市場運用分が約92兆円を占めており、資産構成割合は国内債権が67%、国内株式が12%、外国債券が11%、外国株式が10%となっています。

 ◆さらなる積立金不足の可能性も
今回の運用損失は過去最悪の9兆6,670億円で、特に第2および第3四半期の落ち込みが大きく響いています。
これは、リーマンショック等により拡大した金融危機とその実体経済への波及による急激な景気減速から内外の株式市場が大幅に下落したことに加え、対ユーロを中心に為替市場で急速に円高が進んだことが影響しています。
中でも、運用分の利回りの成績が最も悪かったのが、外国株式の-42.21%、次いで国内株式の-35.55%です。その結果、平成19年度末に7兆4,180億円あった累積黒字は、平成20年度末に1兆9,908億円の累積損失に転落し、5年ぶりに累損を抱えることになりました。
 日本の場合は、債権での運用が主体なため、海外に比べると今回の金融・経済危機の影響は比較的小さかった面もありますが、運用利回りが好転しないとさらなる積立金不足の問題を引き起こす可能性が潜んでおり、企業・労働者の将来へ様々な影響を与えることにもなります。


 待機児童の解消に向け、「認定こども園」増加の方針

 ◆「2012年度までに2,000カ所以上」が目標
保育園に入れない待機児童は約4万人もいると言われています。これは、働きながら子育てをする人が増えているためで、都市部を中心に問題は深刻化しています。一方で、幼稚園に入る子供は減る傾向にあります。
そこで政府は、「認定こども園」を待機児童の受け皿にすべく、2008年4月時点で約230カ所のこども園を、2012年度までのできるだけ早い時期に2,000カ所以上に増やす方針を固めました。

 ◆「認定こども園」とは
 「認定こども園」とは、文部科学省が所管する幼稚園と厚生労働省が所管する保育園を通じて、教育・保育内容の充実、施設共用化のための環境整備、幼稚園教諭と保育士の資格併用の促進など、幼保の連携を図るため幼稚園と保育園の良いところを活かしながら、制度の枠組みを超えた新しい仕組みとして、平成18年10月にスタートしているものです。
現状では、幼稚園と保育園には次のような違いがあります。
●対象年齢:幼稚園が3歳~就学前、保育園が0歳~就学前。
●施  設:幼稚園が教育施設、保育園は福祉施設。
●児 童 数:幼稚園は約167万人、保育園は約202万人。
●職員の資格:幼稚園は幼稚園教諭、保育園は保育士。
●利用申込:幼稚園は直接申込み、保育園は市長村に申し込む。

 ◆「認定こども園」の認定
「認定こども園」は、就学前のこどもに幼児教育・保育を提供する機能と地域における子育て支援を行う機能を備え、認定基準を満たす施設が都道府県知事から「認定こども園」の認定を受けることができます。
 そして、認定を受けるには4つのタイプがあります。
●幼保連携型:認可幼稚園と認可保育園とが連携して一体的な運営を行うことにより、認定こども園として機能を果たす。
●幼稚園型or保育園型:認可幼稚園もしくは認可保育園がそれぞれ保育園的or幼稚園的な機能を備えて認定こども園として機能を果たす。
●地方裁量型:幼稚園・保育所いずれの認可もない地域の教育・保育施設が認定こども園として機能を果たす。
 女性が安心して働ける環境整備のためにも、両省がお互いの立場に固執するようなことなく、さらなる拡充につながることが望まれます。

 
 依然として高水準
  …労災(脳・心疾患および精神障害等)の請求・支給決定状況

 ◆高い水準が続く脳・心疾患および精神障害等に係る労災の補償状況
 平成20年度における脳・心疾患および精神障害等に係る労災の補償状況が発表され、労災の請求件数および支給決定件数とも高い水準で推移していることが明らかになりました。

 ◆過労死等の事案について
請求件数は889件で、前年に比べ42件(4.5%)減少しています。支給決定件数は377件で、前年に比べ15件(3.8%)減少しています。
業種別では、請求件数、支給決定件数とも運輸業がトップ、ついで卸売・小売業となっています。職種別では、請求件数、支給決定件数とも運輸・通信従事者が最も多くなっています。年齢別では、請求件数は50歳~59歳がトップ、ついで60歳以上、その次が40歳~49歳となっていますが、支給決定件数では、60歳以上と40歳~49歳とでは逆になっています。
「長時間の過重業務」により支給決定された事案として、1カ月平均の時間外労働時間数で見た場合、80時間以上~100時間未満が最も多くなっています。

 ◆精神障害の事案について
請求件数は927件で、前年に比べ25件(2.6%)減少しています。決定件数は269件で、前年に比べ1件(0.4%)増加しています。
業種別では、請求件数、支給決定件数とも製造業がトップ、ついで卸売・小売業となっています。職種別では、請求件数は事務従事者が最も多いのですが、支給決定件数は専門的・技術的職業従事者が最も多くなっています。年齢別では、請求件数、支給決定件数とも30歳~39歳がトップ、ついで40歳~49歳となっています。
「長時間の過重業務」により支給決定された事案として、1カ月平均の時間外労働時間数で見た場合20時間未満が最も多く、次に100時間以上~120時間未満となっています。


 自転車による違反の検挙・送検数が急増

 ◆増える危険自転車
自転車の運転者が信号無視などの交通違反で検挙される事例が急増していることが、警察庁のまとめでわかりました。
2008年に都道府県警が自転車の運転者を道路交通法違反容疑で検挙・送検したのは1,211件で、前年比で49%も増えました。このうち罰金など刑事処分の対象となる交通切符(赤切符)を適用したのが903件、残りは事故を起こすなどして送検した事例です。検挙・送検の内訳では、信号無視が262件(対前年比27%増)、遮断機が鳴る踏切への立入りは246件(同420%増)となっています。
違反者には、注意を喚起する「指導警告票」を渡すのが基本ですが、危険・悪質なケースは赤切符を含めた送検の対象としています。

 ◆自転車にも道交法が適用される
 こうした背景には、自転車が道路交通法上の「車両」の一種(軽車両)であるという認識が不足していることが考えられます。
 自転車も自動車と同様に、「飲酒運転の禁止」「二人乗りの禁止」「並進の禁止」「夜間のライト点灯」「信号を守る」などの安全ルールが法律で定められており、違反をすれば懲役や罰金等の罰則の適用も、もちろんあります。また、今年7月1日からは、傘を差しながら、携帯電話を使用しながらの運転も禁止されています。
 「自転車なので大きな事故にはならない」と考えている人も多いようですが、仮に相手を死傷させた場合には、刑事上の責任以外にも被害者に対する損害賠償という民事上の責任も負わなければなりません。現に数千万円という賠償金を支払った例も見受けられます。
 手軽な乗り物として、通勤などに自転車を利用されている方は、正しいルールを知ったうえで安全に運転をしてもらいたいものです。


 8月1日から基本手当日額等が変更

 ◆平均給与額の低下により、日額等も低下
雇用保険の給付額を算定するための基礎となる賃金日額の範囲等が、8月1日から変更されます。この賃金日額の範囲等については、毎月勤労統計の平均定期給与額の上昇または低下した比率に応じ、毎年自動的に変更されています。平成20年度の平均給与額が平成19年度と比べて約0.6%低下したために、以下の3点が変更されます。

1.基本手当日額の最高額および最低額
(最高額)
   60歳以上65歳未満 6,741円 → 6,700円
   45歳以上60歳未満 7,730円 → 7,685円
   30歳以上45歳未満 7,030円 → 6,990円
   30歳未満      6,330円 → 6,290円
(最低額)
   1,648円 → 1,640円

2.失業期間中に自己の労働による収入がある場合に、基本手当の減額の算定に係る控除額
   1,334円 → 1,326円

3.高年齢雇用継続給付の算定に係る支給限度額
   337,343円 → 335,316円


 派遣労働者の雇用と労災をめぐる問題

 ◆相次ぐ労働局による是正指導
ここのところ、派遣労働者の雇用に関して、労働局による是正指導が相次いで行われています。
東京労働局は、今年5月に日産自動車(東京都)に対し、派遣社員の雇用の安定を図るように是正指導を行いました。これは、同社に勤務している派遣社員2人(いずれも20代女性)が、直接雇用を申し立てていたことを受けたものです。
また、広島労働局は、マツダ(広島県)に対して是正指導を行っていましたが、同様に、同社の自動車の委託生産を行っている取引先のプレス工業(川崎市)に対しても是正指導を行いました。これは、昨年末に雇止めされた元派遣社員の男性による「同社は派遣社員の短期雇用と再派遣を行っていた」との申告を受けたものです。
さらに、兵庫労働局は、三菱電機の子会社である三菱電機エンジニアリング姫路事業所(兵庫県)と同県の派遣会社に対し、実態は「派遣」であるにもかかわらず「出向」と装って派遣労働者を働かせていたとして、職業安定法に基づく是正指導を行いました。

 ◆増加する派遣労働者の労災事故
厚生労働省の調査によれば、2008年に労災事故で死傷した派遣労働者は5,631人だったそうです。2年連続で5,000人を超え、製造業への派遣が解禁された2004年と比較すると8.4倍になっています。しかも、労災事故を報告しない「労災隠し」が横行しているとの疑いもあり、上記の数は「氷山の一角ではないか」との声もあがっています。
このような状況を受け、厚生労働省では、派遣先事業場で発生した労災事故について、派遣先への求償権の行使を徹底することを目的として、過失割合の判断基準を作成する方針を明らかにしました。過去の損害賠償請求に関する裁判例などを参考にして、今年の10月頃までにガイドラインをまとめる意向のようです。

 ◆企業に求められるコンプライアンス
派遣労働者をめぐっては、偽装請負、偽装派遣、偽装出向などが一時期話題となり、新聞等でも大きく報道され、多くの企業が派遣労働者の雇用改善に取り組みました。
現在は「100年に一度の大不況」と言われる状況で、多くの企業が経営に行き詰まっています。しかし、そのような状況下であっても、「コンプライアンス遵守」の精神を忘れてはいけません。法律に則った派遣労働者の雇用、労災事故への対応等が企業には求められます。


 適年廃止まであと数年…各企業の動きは?

 ◆廃止まで残り約2年8カ月
ご承知の通り、税制適格年金(適年)は2012年3月末で廃止される(税制上の優遇が受けられなくなる)ことが決まっています。
先日発表された厚生労働省によるアンケート調査結果によれば、適年を導入している企業のうち、約89%の企業が何かしらの対応を行っているそうですが、約9%の企業は何らの対策も行っていないそうです。また、社団法人信託協会に発表によれば、2009年3月末時点における適年の資産残高は、8兆1,319億円(対前年比30.8%減)となっています。
適年から他の年金制度への移行作業には1~2年ほどかかることなどから、厚生労働省では、できるだけ早めに手続きを取るよう求めています。

 ◆移行先の選択肢
適年からの移行先の選択肢としては、一般に、中小企業退職金共済(中退共)、特定退職金共済(特退共)、確定給付企業年金、確定拠出年金、厚生年金基金、生命保険などが挙げられます。また、適年の廃止を機に、自社における退職金制度を廃止してしまうことも考えられます。
これらのうち、多くの中小企業が選択しているのが中退共ですが、独立行政法人勤労者退職金共済機構の調べによれば、2008年度における適年から中退共への移行件数は2,437件(前年度比4.5%増)であり、適年解約企業のうち中退共に移行した割合は約33%だったそうです。

 ◆移行を実施していない企業の考え
移行を実施していない企業のパターンとしては、主に以下のものが挙げられます。
(1)「まだまだ時間がある」と考えているパターン
(2)「どこに移行してよいかわからない」というパターン
(3)「他社の動向をうかがっている」というパターン
(4)「適年廃止・適年移行に関心がない」というパターン
いずれにしても、移行を実施していない企業、まだ何も行っていない企業は、早く何かしらの対策をとらなければならない時期に来ています。


 夏本番を前にした熱中症対策

 ◆意外と多い熱中症による事故
熱中症は、高温多湿な環境下で、体内の水分・塩分のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破たんしたりするなどして発症する障害の総称です。
熱中症により死亡した労働者の数は、平成11年以降は毎年20人前後で推移しており、平成20年は17人でした。業種別で見ると、平成18年~20年の3年間(合計は52人)で、建設業(33人)、製造業(8人)、警備業(2人)の順に死亡者数が多くなっており、当然のことながら炎天下での業務を強いられる業種が多くなっています。
また、熱中症により4日以上休業した労働者の数は平成19年には約300名でした。

 ◆厚労省による「熱中症予防対策マニュアル」
厚生労働省では、熱中症による労災事故を防止するために、先日、「職場における熱中症予防対策マニュアル」(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/06/dl/h0616-1b.pdf)を発表しました。それによれば、熱中症防止のポイントは以下の通りです。
(1)職場の暑熱の状況を把握した作業環境管理・作業管理・健康管理
(2)熱への順化期間(熱に慣れ、環境に適応する期間)の計画的な設定
(3)自覚症状の有無によらない水分・塩分の摂取
(4)熱中症発症に影響を与える疾患(糖尿病・高血圧症等)を踏まえた健康管理
また、他に参考になるものとして、東京労働局では熱中症への注意喚起を促すリーフレット(http://www.roudoukyoku.go.jp/roudou/eisei/pdf/pamphlet_2009.pdf)を作成しており、熱中症に関する事例などが掲載されています。

 ◆熱中症を予防するには
まずは、一人ひとりが日頃から健康管理に留意しておくことが大切です。暴飲暴食、睡眠不足などには特に注意が必要です。また、体調の悪そうな労働者には炎天下での業務を行わせないといった配慮も必要です。
また、外での業務の場合、通気性の良い作業服、着帽などは必須です。そして、上記のマニュアルでも挙げられていますが、こまめな水分補給が必要です。「のどが渇いた」と感じたときにはすでに水分が不足しているケースが多いものです。ミネラル等が十分に含まれたスポーツドリンクや塩水などが効果的です。
 

 不景気下における企業の人事面での対応策

 ◆企業はどんな対策をとっているか
労働政策研究・研修機構が昨年12月に行ったアンケート調査(全国2,734社が回答)の結果によれば、各企業が行った「経済情勢悪化への人事面の対応」として、以下のものが挙げられています。
(1)残業規制(26.1%)
(2)中途採用の停止・削減(21.5%)
(3)配置転換(14.9%)
(4)賃金制度の見直し(12.7%)
(5)来年度新規採用の中止(12.6%)
(6)派遣社員の契約打切り(10.3%)
(7)期間工などの雇止め(9.8%)
(8)従業員の賃金カット(8.3%)

 ◆希望退職・退職勧奨・整理解雇
また、上記で挙げられている以外にも、希望退職制度の実施、退職勧奨の実施、整理解雇の実施などを行わざるを得ない企業も多くなっています。
一般的には、整理解雇を実施するにあたっては、4つの要素(人員整理の必要性、解雇回避努力義務、人選の合理性、手続きの妥当性)が必要とされています。このうち、「解雇回避努力義務」について考えた場合、希望退職を募集せずに整理解雇を行った場合は「解雇回避努力義務」を十分に果たしたとはいえないと判断するのが一般的な裁判例の考えです。ですので、希望退職を募集した後に解雇整理を行うのが企業にとっての安全策だといえるでしょう。

 ◆リスク回避を十分に
希望退職を募集しても、これに労働者が予定人数ほど応募してこないことがあります。この場合、退職の条件を労働者に有利に設定し直し、2次募集・3次募集を行うことも考えられます。また、希望退職募集と平行して、退職勧奨を実施する企業もあります。
その場合、勧奨が民法上の強迫になることなどのないよう、慎重に手続きを進め、また、法違反と判断されることのないよう、専門家等に相談しながら進めていくのが企業にとってのリスク回避策となります。

2009/06/29

7月の事務所便り

 社会保障協定の効力を持つ相手国が10カ国に

 ◆保険料の二重払い防止
二国間における公的年金保険料の二重払いなどを防止することを目的とした「社会保障協定」に関して、日本との締結相手国が10カ国になりました。平成12年2月のドイツを皮切りに、英国・韓国・米国・ベルギー・フランス・カナダ・オーストラリア・オランダと協定を結び、今年6月よりチェコが加わりました。
国際間の人的移動の増えた現代では、国民皆保険制度の日本にとって歓迎される協定です。

 ◆社会保障協定の仕組み
外国に派遣され就労している人は、派遣中でも自国の社会保険制度に継続して加入している場合が多く、自国の制度と外国の制度に対して二重に保険料を支払うことを余儀なくされます。また、日本の公的年金制度に限らず、外国の公的年金制度についても、老齢年金の受給資格の1つとして、制度への一定期間の加入を要求している場合がありますが、外国に短期間派遣され、その期間だけその国の公的年金制度に加入したとしても、老齢年金の受給資格要件としての一定の加入年数を満たすことができない場合が多いため、外国で負担した保険料が掛捨てになります。
社会保障協定は、これらの問題を解決するために相手国と締結する協定であり、「社会保険制度への二重加入の防止」と「年金加入期間の通算」が主な内容です。

 ◆今後の見通し
海外赴任者の場合、その保険料は企業が負担することが多いため、この協定を結ぶと、一般的には海外進出企業の保険料負担の軽減につながります。
海外に長期滞在する日本人は約74万6,000人と言われ、チェコを含む協定発効先10カ国にその約6割(約43万人)がいます。厚生労働省の試算では、これらの国に進出している日本企業の負担は年間1,000億円程度軽減でき、そのうち米国向けが半分以上を占めるとみられています。
今後も、多くの日本企業が進出しており、社会保障制度の比較的進んでいる国に的を絞って協定を結ぶことで、この先5年程度の間に協定国は20カ国を超えるとみられています。
年金受給は私達の将来にわたって関わりのあるものです。保険料の支払金額は将来の年金額に影響をもたらすものであり、このような協定は大いに歓迎したいものです。




 労働相談件数が過去最多を更新!

 ◆急激な景気悪化を反映
労働者と企業間のトラブルを裁判に持ち込まずに迅速に解決することを目指す「個別労働紛争解決制度」に基づく2008年度の「民事上の個別労働紛争相談件数」が、過去最多の約23万7,000件に上りました。厚生労働省は、「急激な景気悪化を反映し、解雇や雇止めをめぐる非正規労働者からの相談が目立っている」としています。

◆2001年にスタートした個別労働紛争解決制度
個別労働紛争解決制度は2001年10月にスタートし、全国の労働局などの「総合労働相談コーナー」で相談を受け付けています。
全体の「総合労働相談件数」は107万5,021件(前年度比7.8%増)と初めて100万件を突破し、このうち、労働基準法や労働者派遣法などに明確に違反しているものを除く、民事上の労働紛争に関するものは23万6,993件(同19.8%増)でした。

◆「解雇」関連の相談が最多
紛争内容については、「解雇」関連が25.0%と最も多く、経済的な理由による「整理解雇」の相談件数は前年度の2倍以上になりました。また、「労働条件の引下げ」が13.1%、「いじめ・嫌がらせ」が12.0%でした。
相談を受け、実際に労働局が企業側に指導・助言をしたのは7,592件(同14.1%増)、専門家で構成される紛争調整委員会があっせんに乗り出したケースは8,457件(同18.3%増)となっています。
厚生労働省紛争処理業務室では、「景気悪化で労働トラブルに遭う労働者が増えている。不利益な取扱いを受けたり、疑問を感じたりしたら、最寄りの労働局に相談してほしい」としています。

◆トラブルを一歩手前で防ぐ
都道府県労働局長による助言・指導の申出件数が多かったものは、2007年は「解雇」、「労働条件の引下げ」、「いじめ・嫌がらせ」と続き、2008年は「解雇」、「いじめ・嫌がらせ」、「労働条件の引下げ」でした。一方、紛争調整委員会によるあっせん申請件数が多かったものは、2007・2008年ともに「解雇」、「いじめ・嫌がらせ」、「労働条件の引下げ」と続き、上位3件は顔ぶれが同じとなっています。
もう一歩踏み込んで、個別労働紛争解決制度を利用する手前で、労使トラブルを未然に防ぐためには、「労使間でコミュニケーションをとっていく」、「細やかな就業規則を作成する」といったような努力が必要なのではないでしょうか。




災害・事故などに対応する「事業継続計画(BCP)」

◆強毒性だけでなく弱毒性にも対応
最近の新型インフルエンザの流行の影響もあり、大手企業を中心に、重要業務への影響を最小限に抑えるための「事業継続計画(BCP)」の拡充が進んでいます。
企業が持つBCPの多くは自然災害や強毒性の鳥インフルエンザの流行を想定していたため、大手通信社や流通企業などは、弱毒性インフルエンザの場合にも対応できる、詳細な計画作りを進めているようです。

◆「BCP」とはどんなものか?
事業継続計画(BCP「Business Continuity Plan」)とは、災害・事故などの非常事態発生時に、企業や自治体が重要業務をできるだけ中断せず継続させるための計画です。仮に中断した場合であっても、目標とする復旧時間内での業務再開を目指します。計画には、地震などの自然災害、情報システム障害、テロなどあらゆるリスクを織り込む必要があります。欧米では1990年代以降、社員の不祥事なども想定リスクに加えてBCPを作成する企業が増えました。
日本でも大手企業を中心に導入事例が増えつつありますが、地震や台風などの対策を主眼としているケースが多く見られます。ある新聞社が「人と防災未来センター」(神戸市)と共同で2008年11月下旬から12月中旬にかけて実施した調査では、新型インフルエンザの大流行に備えてBCPの策定に動いている大企業は62%で、このうち「策定済み」は15%、「策定予定」は47%でした。

◆企業により異なる対応
これまでのほとんどの企業のBCPは、「強毒性」の鳥インフルエンザを想定しています。そのため、「弱毒性」と言われる今回のインフルエンザに対しては機械的な運用を避けて柔軟に対応しています。業務を停止すれば市民生活に大きな影響を与えることになる電力・ガス、医薬品業界などは、詳細な行動計画を策定しており、それに基づいて段階的に対策を進める考えです。
一方、多くの人が集まる鉄道や流通業などでは対応が分かれています。ある鉄道会社は、まとまったBCPは策定せず、防災対策など、個々にマニュアルを用意し、今回は職員に予防の手引きを配付しましたが、大流行時の対応は盛り込まれておらず、「運行については国からの指示に従う」方針です。
遊園地を運営する企業では新型インフルエンザ対策も含めたBCPの策定を検討していますが、休業するかどうかの判断基準はまったく未定で、「行政の指導を仰ぎながら柔軟に対応する」としています。また、空港と都心を結ぶ鉄道を運行する企業は「業務の優先順位付けなどを検討中で、早急に対応策を完成させる」方針です。

◆大手だけでは意味がない
大手企業では進み始めたBCPの策定ですが、大手企業は多くの業務で中小企業に依存しています。そのため、感染拡大を防ぐにはサプライチェーン全体に予防措置を徹底する必要があります。今後は、中小企業でも対応策が必要になりそうです。




母親の4割超が「子どものため自分は犠牲に」

◆親は子どもの犠牲に?
「自分の生き方より子育てを優先」。新聞報道によると、大手通信教育社が幼稚園児や保育園児の子どもを持つ母親を対象に行った調査で、「子どものために自分が犠牲になるのは仕方ない」と回答した人の割合が5年前より増え(全体の40%超)、このような考え方が増えていることがわかったそうです。一方で「自分の生き方も大事にしたい」と考える母親の割合は減っています。

◆子育ての意識が高まる
「子育ても大事だが自分の生き方も大切にしたい」と答えた母親は5年間で7.1ポイント減少して56.7%となりました。
家庭でのしつけについては、起床や就寝時間など「規則正しい生活リズムが身につくようにしつけている」と回答した母親が14.3ポイント増加して70.7%となっています。学力面では、「小学校入学までに読み書きができるように心がけている」と答えた母親が5.1ポイント増えて25.3%になりました。過半数が週に1~2回以上、「一緒にひらがなやカタカナの学習をする」と答えたほか、40%近くが「一緒に数や算数の学習をする」といい、しつけや教育への関心の高まりがうかがえます。

◆家庭の事情に応じた支援策を
母親の就業別に回答を求めた質問では、専業主婦の48.4%が「自分は子育てに向いている」と回答したのに対し、フルタイムで働く母親は40.8%でした。また、フルタイム勤務の人の14.6%が「良い母親であろうとして、かなり無理をしている」と答えています。
夫婦でお互いの関心事を話し合うフルタイム勤務の母親は58.0%で、専業主婦(75.5%)に比べると大きく下回り、調査を行った会社では「常勤の母親にとっては育児と仕事の両立が難しい状況が生まれている。個々の家庭の実情に応じた支援策が必要になってくるだろう」としています。




「短時間正社員」定着促進のための助成金拡充へ

◆就業意識・価値観の変化
厚生労働省は、子育てや介護などで就業時間に制約があっても正社員として働くことができる「短時間正社員」を定着させるため、助成金制度を今夏にも拡充する構えです。
様々な雇用形態が入り混じる現代で、就業意識や価値観の変化により、個人の希望に応じた働き方を選択したいという労働者が増加しています。

◆「短時間正社員」の働き方
短時間正社員は、「正社員」としての身分は変わりません。1日の労働時間や1週間の労働日数をフルタイム正社員より短くするものの、仕事はフルタイム正社員と同じで、給与や賞与は働いた時間に比例して支払われ、昇進は通常の正社員と同等に扱うなど、これらの点で非正社員とは区別されるものです。
現代では、個人の希望に応じた働き方を選択したいという労働者が増加しており、中でも育児や介護の課題を解決し、就業を継続しながら仕事と家庭の両立を目指す手段としては有効な働き方と言えるでしょう。

◆ワークシェアとの違い
時短で働く方法としては「ワークシェアリング」の名称が知られていますが、これは、仕事の総量を労働者で分かち合うというもので、1人当たりの労働時間を減らすことによって企業全体での雇用を維持したり、様々な業務ごとの短時間労働を組み合わせることによって雇用機会を増やしたりすることにつながるというものです。
これに対して、短時間正社員制度は、労働者の地位を正社員と同じにするというもので、特に現在就労中の人にとっては、現状の業務を続けやすいと言えるでしょう。

◆国や企業に期待されること
現在、企業が短時間正社員を導入する際、「短時間労働者均衡待遇推進助成金」(パートタイマー均衡待遇推進助成金)として最大40万円を支給される制度があります。この制度は、従来、短時間正社員を導入する際に、1人でも複数人でも助成金額は同じでしたが、厚生労働省は、今夏にも、人数に応じて金額を増やす仕組みを検討しています。追加人数の上限は10人を想定しているようです。
豊富な業務経験を持っていても就労条件が合わないために働き続けることができなければ、労働者のみならず企業にとっても大きな損失になりかねません。労働力を有効に活用するために、国や企業には柔軟な対応が望まれるのではないでしょうか。



中小企業の生き残り策として注目を集める
「第二会社方式」

◆「第二会社方式」とは?
近年、経営状態が厳しくなった中小企業による「第二会社方式」の活用件数が増加傾向にあるようです。
この「第二会社方式」とは、経営困難に陥っている企業の中でも収益性のある事業部門について、事業譲渡や会社分割の方法によって別法人(第二会社)に分離し、赤字部門を残した旧会社を清算することにより事業の継続を図るものです。
この方式を活用した事業再生は、不良債権のリスクを負わずに損金算入の手続きが容易なことから、金融機関やスポンサーの協力が得やすいというメリットが大きく、非常に注目されています。

◆デメリットはないのか?
上記の「第二会社方式」については、これまで、以下のようなデメリットが指摘されていました。
(1)第二会社において事業継続に必要な運転資金を確保するために、多額の資金調達を必要とすること。
(2)事業の継続に必要な資産の移転にあたって、税負担が発生すること。
(3)第二会社により継続を図る事業が行政官庁の許認可等の対象となっている場合、改めて許認可等の取得申請が必要となること。

◆デメリット解消のための法改正
今年の4月22日に成立した「改正産業活力再生特別措置法」により、上記のデメリットが解消されることになりました。つまり、「必要な事業資金に対する金融支援」、「登録免許税・不動産取得税負担の軽減」、「特例による営業上必要な許認可の承継」が認められるようになったのです。
改正法はすでに4月30日に公布され一部施行されていますが、主要事項の施行は今年7月以降になるとみられており、今後、指針等も発表される予定です。これから、この「第二会社方式」を活用する中小企業がますます増えてくるかもしれません。




企業の「営業秘密」を保護するための改正不正競争防止法

◆改正不正競争防止法が成立
この度、「不正競争防止法の一部を改正する法律案」が可決・成立し、4月30日に公布されました(施行は来年の4月以降となる予定)。
この法改正は、「企業間の公正な競争の確保」の観点から、企業が保有する営業秘密の保護を図るための措置を設けたものであり、一般企業にも大きな影響を与えるものと思われます。特に以下の(3)については、自社の従業員や取引先にも関係がありますから、特に注意が必要です。
以下、法改正の内容を簡単にご紹介します。

◆主要な改正内容
(1)営業秘密侵害罪の目的要件の変更
これまで、営業秘密を侵害したとして罰するには、「不正競争の目的で」侵害することが必要とされていました。これが改正され、「不正の利益を得る目的で、またはその保有者に損害を加える目的で」侵害することで足りるようになりました。
 この改正により、これまでは罰することのできなかった「不正な利益を得るため、海外政府などに営業秘密を開示する行為」や「営業秘密の保有者を単に害するため、営業秘密をネット上の掲示板に書き込む愉快犯的な行為」も罰せられるようになるため、結果的に、営業秘密を保有する企業がこれまでよりも保護されるようになります。
(2)処罰対象行為の見直し
これまで、処罰の対象となるのは、第三者などが違法性の高い行為(詐欺的行為や管理侵害行為など)を行ったうえで、「営業秘密記録媒体などを介した方法により」不正に営業秘密を取得した場合だけでした。これが改正され、営業秘密の取得方法が記録媒体などを介していない場合でも罰せられるようになりました。
この改正により、「営業秘密を記憶する場合」や「記録媒体などに記録されていない営業秘密(会議における会話)を盗聴する場合」も処罰の対象となります。
(3)従業員等による営業秘密取得自体への刑事罰の導入
これまで、営業秘密の保有者から秘密を示された者(従業員や取引先など)については、秘密の使用・開示に至った段階で初めて刑事罰の対象となっていました。これが改正され、「記録媒体などの横領」「記録媒体などの記録の複製作成」「記録の消去義務に違反したうえで消去したように偽装する行為」という方法で営業秘密を取得した場合に罰せられるようになりました。




政府による取組みの効果? 出生率が3年連続上昇

◆3年連続で「合計特殊出生率」が上昇
先日、厚生労働省から「人口動態統計」が発表されましたが、これによると、2008年における合計特殊出生率(女性が生涯に産む子どもの数)は「1.37」となり、2007年の「1.34」を上回ったそうです。2006年に6年ぶりに上昇して以来、これで3年連続の上昇となりました。出生数は109万1,150人(前年比1,332人)でした。
同省では、晩婚化を背景に30歳代の出産が増えていることや、減少していた20歳代の出産が下げ止まり傾向にあると分析していますが、これまでの政府による「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」への取組みが、いくらか功を奏しているようです。

◆これまでの取組み
政府はこれまで、「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」を設け、「ワーク・ライフ・バランス憲章」や「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を策定するなど、積極的に少子化対策に取り組んできました。
そして昨年の7月には「仕事と生活の調和の実現に向け当面取り組むべき事項」(http://www8.cao.go.jp/wlb/government/top/toumen/pdf/s1.pdf)を発表し、以下の項目を掲げました。
(1)企業の取組みの見える化……企業が策定の「一般事業主行動計画」の公表促進
(2)企業向けアドバイザー養成……「仕事と生活の調和アドバイザー」養成の支援
(3)推進企業ネットワークの構築……企業における推進者によるネットワーク作り
(4)男性の働き方を変える……男性の育児休暇取得の促進、実践事例の提供・紹介
(5)データベースの構築……好事例の収集および内閣府ホームページにおける掲載
(6)国家公務員の取組み(隗より始める)……政府全体として労働時間の短縮推進

◆今後の法改正の動き
現在、以下の内容を盛り込んだ「改正育児・介護休業法案」が国会にて審議されています。この法律が成立して施行されれば、各企業の取組み方にもよりますが、さらに「ワーク・ライフ・バランス」が進んでいくかもしれません。
・短時間勤務制度の義務化
・所定外労働の免除の義務化
・子の看護休暇制度の拡充
・パパ・ママ育休プラス(仮称)
・父親の育児休業取得の促進
・労使協定による専業主婦(夫)除外規定の廃止
・介護のための短期休暇制度の創設
・紛争解決の援助・調停の仕組み等の創設
・公表制度・過料の創設




社員の副業・アルバイトを認める場合の留意点

◆不況による影響
金融危機に端を発する昨年来の不況により、各企業における「派遣社員の解雇」、「有期契約労働者の雇止め」、「一時帰休」、「希望退職・早期退職」、「退職勧奨」「整理解雇」の実施などが数多く報じられています。また、「給与カット」「賞与カット」などを実施するところもあり、これらは社員の生活に関わるため、大きな問題となっています。
給与カット・賞与カットによる社員の収入減に対応する施策の1つとして、従来は認めていなかった「副業」や「アルバイト」を容認する企業が徐々に増えているようです。社員に副業・アルバイトを認めることにより、減った分の給与を補填してもらうのが狙いです。

◆会社にとっての選択肢
これまで社員に副業・アルバイトを認めていなかった(いわゆる「兼業禁止規定」を置いていた)会社がこれらを認める場合の選択肢としては、以下の3つが考えられます。
(1)「会社による許可制」として認める。
(2)「会社への届出制」として認める。
(3)「完全解禁」として認める。
上記のいずれを選択するにしても、会社の就業規則や社内規定を整備し、社員の副業・アルバイトを認める場合の基準をはっきりと社員に示しておかなければなりません。
また、副業・アルバイトを認める場合でも、期限を決めて認めるのか、今後はずっと認めるのかを決めておくべきです。

◆認める場合の留意点
副業・アルバイトを認めるとしても、注意しなければならない点がいくつかあります。
1つは、「自社の業務と競合するような会社での副業・アルバイトは禁止する」ということが考えられます。自社の社員を競合会社で働かせることにより、自社の営業秘密やノウハウなどが他社に漏れる可能性があるからです。
もう1つは、「疲労やストレスなどを溜めさせない」ということです。副業・アルバイトを認めてトータルの労働時間が長くなることによって、社員に疲労・ストレスが溜まり、それにより自社での仕事がおろそかになってしまっては、本末転倒です。
これらのリスク等も十分に検討したうえで、会社の方針を決定しましょう。

2009/05/27

6月の事務所便り

 中小企業と求職者との“お見合い”バスツアー

◆「雇用確保」と「地域活性化」
 中小企業庁は、仕事を探す人たちに中小企業を案内し、雇用の確保と地域の活性化につなげようと、「地域魅力発見バスツアー」(愛称“ちいバス”http://chi-bus.net/)を開始すると発表しました。2009年度中に全国で100ツアーを開催し、3,000人の参加を見込んでいます。

◆ツアーの概要
 「地域魅力発見バスツアー」は、優秀な人材を求める中小企業と参加者(求職者)が直接じっくりと話をする場を持ち、関心を持ち合った同士をつないで、就職につなげるというものです。1つの都道府県を2泊3日でまわり、7社程度を訪問するツアーを中心に、日帰りや5泊6日など、5種類を用意しています。
雇用に積極的な全国1,400社が訪問先で、1回あたりの参加者は約30人を予定しています。宿泊費やバス代は同庁が負担しますが、ツアー中の食事代や集合場所への交通費は参加者が負担します。行き先が地方の場合、東京など大都市圏からの出発と現地出発の両方が用意されています。参加者の年齢や居住地域の制限はありませんが、応募多数の場合は抽選となります。
1回目は4月22~24日に千葉県で開催され、2回目は5月26~29日に大分県で開催される予定です。この2つのツアーを含め、今年の年末までに75のツアーが計画されています。出発地点は、仙台、東京、名古屋、静岡、愛知、大阪、広島、福岡など、不況で仕事を失った方が多い地域が中心となっています。

◆ツアーが新たな雇用の機会に
 大企業がリストラを実施したり、新卒採用を絞ったりしている今こそ、優秀な人材を獲得するチャンスと捉えている中小企業は多いと言われています。仕事を探している求職者にとっては、地方に関心を持っても就職活動に行くのはなかなか難しいという声もあります。
就職フェアなど、求人側が同じ場所に集まって求職者と顔合わせをするという今までの形ではなく、バスツアーで各地を訪れ、実際に働く現場を自分の目で見ることができ、そこで働く人ともじっくりと話ができるこの新たな形態が、優秀な人材を求める中小企業と求職者とを結ぶ新たな雇用の機会として確立することに期待したいものです。


 国民年金納付率が過去最低を更新

◆3年連続で低下
 2008年度の国民年金保険料の納付率は62%前後となり、過去最低だった2002年度を下回りました。3年連続の低下で、政府が目標とする80%との乖離が広がっています。

◆納付率低下が与える影響
 国民年金の納付率が低下した原因として、年金記録問題への対応に人手を割かれて保険料収納担当は人員削減となり、収納が効率よくできなかったことや、記録漏れ問題への不信感から意図的に支払われなかった人が増えたことなどが挙げられます。そして、雇用情勢の悪化も追い討ちをかけ、リストラなどで離職者が増え、厚生年金から国民年金に切り替わるケースが増加し、生活費の確保を優先して滞納する人も増えていると指摘されています。
厚生労働省がまとめた公的年金の財政検証によれば、国民年金の納付率が80%で推移すれば、現役世代の手取り収入に対する厚生年金の給付水準は「50.1%」に下げ止まると試算しています。しかし、納付率が低下すれば積立金が減るなどして前提条件が崩れ、政府が約束する「50%給付」は難しくなると言われています。
さらに、国民年金未加入者や未納者が加入期間を満たすことができず、将来年金を受け取ることができない無年金者が増えると、生活保護者を増やすことにもつながり、国の負担はますます増えることが懸念されています。

◆納付率アップへの取組み
 社会保険庁は、1990年代前半に80%台を維持していた納付率を回復させようと、クレジットカードやインターネットで納付ができるように環境を整備しているほか、収納業務の民間委託対象を増やすなど強制的な徴収の枠組みづくりなどにも力を入れ、納付率の向上を目指してきました。
そして、今年11月からは「住民基本台帳ネットワーク」を活用し、国民年金のみ加入者を把握し、34歳と44歳に達した人を対象に国民年金への加入を勧奨するそうです。ねらいは、通知を送ることで未加入者を効率的に減らすことです。
納付率の低さが、将来我々の受け取ることができる年金に響いてくるという現在の年金制度にも問題があるように思いますが、何よりも、なぜ国民年金を払う必要があるのかということ、加入することのメリット、年金を受給するためには必ず加入期間が25年必要であることなど、国民に対してわかりやすい制度の説明を十分に行うことが必要でしょう。
年金への不安や不信感が高まる中、年金に対する意識を変えることが納付率向上の一番の近道になるように思います。


 労働基準監督署への申立て件数が増加

◆雇用情勢悪化の中…
 景気後退で雇用情勢が悪化し、労働基準監督署に不服を申し立てる労働者が急増しているようです。不当な解雇や賃金不払いなどを不満とするケースが多くみられ、2008年の申立て件数は39,384件となり、1955年以来、53年ぶりの高水準となりました。
 
◆申立て内容の検討
 全国約320の労働基準監督署では、雇用問題に関する労働者からの相談や申告を受けつけています。これをもとに調査を実施し、労働基準法などの法律違反が判明すれば、企業に是正勧告がなされます。勧告に従わない企業は送検されることもあります。
2008年の申立て件数は前年比11%増え、厳しい不況に見舞われた直後の昭和55年(55,999件)以来の高水準となりました。2009年に入っても1月は3,647件、2月は3,811件と高水準で推移しています。
2008年の内訳をみると、最も多いのは賃金不払い(28,955件)で、経営不振の企業から賃金をもらえなくても数カ月間辛抱して働き、我慢できなくなって最後に申し立てる労働者が目立っています。一方、職場に突然来なくなるなど、賃金不払いの責任が労働者にあるケースもみられます。
解雇は7,360件で、解雇に至るまでの手続きが十分でない企業が多くみられます。企業が労働者を解雇する場合、30日以上前に予告する必要がありますが、予告しないときには30日分以上の賃金(解雇予告手当)を支払わなければいけません。こうした手続きを知らない企業の増加が不服を申し立てる件数を押し上げているとみられています。

◆労使トラブルに発展する前に
 現在、やむなく労働条件の引下げや希望退職者の募集、解雇など雇用調整を行わざるを得ないとする企業が多くみられます。労働条件引下げや解雇などを行うことがやむを得ない場合であっても、実施に当たっては、法律で定められている手続き、労使間で定めた必要な手続き等を遵守するとともに、事前に労使間での話合いや労働者への説明を行うことが必要です。これらを怠ると労使のトラブルに発展します。
厚生労働省では、労働条件引下げや解雇をやむを得ず検討しなければならない場合であっても守らなければならない法令の概要や、労務管理上参考となる裁判例の主なものを取りまとめた「厳しい経済情勢下での 労務管理のポイント」(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/081218-1.pdf)というリーフレットを作成しました。 このリーフレットで労務管理のポイントを自社と照らし合わせ、適正な手続きのもと労使トラブルに発展することを回避したいものです。


 「メタボ検診」伸び悩む受診率

◆受診率の低さ
 40歳から74歳までの人を対象に行う、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)かどうかを調べる「特定健康診査・特定保健指導」(メタボ検診)の受診率の低さが問題視されています。

◆各市町村の取組み
 生活習慣病を減らして医療費削減につなげる、世界でも例を見ない取組みとしてスタートし、1年が経過しました。国民健康保険の加入者を対象にメタボ健診を実施する市町村の多くは受診率の低さに頭を悩ませており、受診率が目標に届かない自治体が続出しています。
メタボ健診は、メタボリックシンドロームに着目した健康診断のことです。メタボリック症候群やその予備軍の人に対し、早期に治療や生活指導を徹底して、増大する医療費を削減することが目的の新健診です。健康保険組合や市町村などの保険者に実施が義務付けられており、健康保険組合の場合、従業員(被保険者)だけでなく、被扶養者も対象となります。
国は市町村国保について、2012年度の特定健診の受診率を「65%」、特定保健指導の実施率を「45%」とする目標を設定しています。市町村はこれを達成できないと、75歳以上の医療費への拠出金が最大10%増えるというペナルティを課されることもあり、受診率アップのために様々な独自の工夫を行っています。
例えば、平日は忙しくて受診できない人を呼び込もうと休日や夜間に健診日を設定した「ナイト健診」を実施したり、女性の受診率アップを目指した「レディースデー」を設けたり、受診を促しています。

◆受診率アップにむけて
 2008年11月末時点での市町村国保の受診率の平均値は28.8%にとどまり、2008年度の目標値として掲げる「35%」を下回っている現状です。
受診率をアップさせるため様々な取組みを行っていますが、何よりも、メタボリックシンドロームが肥満症や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病をひき起こす原因となっていること、生活習慣病発症を予防するための検診がメタボ検診であることをもっと周知させる必要があるように思います。発症する前に予防することの大切さをもっと伝えるべきではないでしょうか。


 障害者雇用促進法の改正

◆改正のポイント
 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律(改正障害者雇用促進法)が成立し、平成21年4月から段階的に施行されています。 
(1)「障害者雇用納付金制度」の対象事業主の拡大
障害者雇用納付金制度は、雇用障害者数が法定雇用率の1.8%に満たない事業主から、その雇用する障害者が1人不足するごとに1月当たり5万円を徴収し、法定雇用率を超えて障害者を雇用する事業主に対し、障害者雇用調整金(超過1人につき1月当たり2万7,000円)や助成金を支給する仕組みです。
これまでは常用雇用労働者を301人以上雇用する事業主のみを対象としてきましたが、障害者の身近な雇用の場である中小企業における障害者雇用の促進を図るため、平成22年7月から常用雇用労働者201人以上300人以下の事業主、平成27年4月から常用雇用労働者101人以上200人以下の事業主に、制度の対象が拡大されます。
(2)障害者の短時間労働への対応
現在、原則として、週所定労働時間が30時間以上の労働者を実雇用率や法定雇用障害者数の算定の基礎としています。短時間労働については、障害者によっては、障害の特性や程度、加齢に伴う体力の低下等により、長時間労働が難しい場合があるほか、障害者が福祉的就労から一般雇用へ移行していくための段階的な就労形態として有効であるなどの理由から、障害者に一定のニーズがあります。
こうしたニーズへの対応として、平成22年7月からは障害者雇用率制度における実雇用障害者数や実雇用率のカウントの際に、身体障害者または知的障害者である短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満)を「0.5」としてカウントすることとなりました。

◆法改正の一方で
 法改正が行われ、障害者雇用の拡大と安定が図られる一方、昨秋以降の世界同時不況の影響で障害者が解雇されるケースが急増しています。不況になると、非正規社員や障害者、育児休業者などの社会的弱者が解雇の標的となり、失業者が急増して問題視されています。
政府の対策として、失業給付の拡充などの救済策はすぐに打ち出されましたが、解雇に至らないケースへの対策も充実させ、雇用が安定することを期待したいものです。


 育児・介護休業法改正案のポイント

◆平成22年4月の施行予定
 3歳未満の子どもを持つ従業員に対する「短時間勤務制度」の導入を企業に義務付けることや、父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2カ月までの間に1年間育児休業を取得可能とする「パパ・ママ育休プラス」の創設などを盛り込んだ育児・介護休業法の改正案が閣議決定されました。国会審議が順調に進めば、来年4月施行の予定です。

◆改正案のポイント
(1)子育て期間中の働き方の見直し
 ・3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度(1日6時間)を設けることを事業主の義務とし、労働者からの請求があったときの所定外労働の免除を制度化する。
 ・子の看護休暇制度を拡充する
  (小学校就学前の子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日)。
(2)父親も子育てができる働き方の実現
 ・父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2カ月(現行1歳)までの間に、1年間育児休業を取得可能とする。
 ・父親が出産後8週間以内に育児休業を取得した後に復帰した場合、再度育児休業を取得可能とする。
 ・配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得不可とすることができる制度を廃止する。
(3)仕事と介護の両立支援
 ・介護のための短期の休暇制度を創設する
  (要介護状態の対象家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日)。
(4)実効性の確保
 ・苦情処理・紛争解決の援助および調停の仕組みを創設する。
 ・勧告に従わない場合の公表制度、および報告を求めた場合に報告をせず、または虚偽の報告をした者に対する過料を創設する。

◆仕事と家庭の両立に向けて
 上記内容は、いずれも企業の取組み強化を迫るものとなっています。しかし、制度は整ったとしても、現実は利用しにくい雰囲気が、育休取得が進まない原因となっており、中小企業では、仕事と家庭を両立させ、育児休業を取得するには難しい状況であると言われています。
改正法が成立しても、両立支援が実効性あるものになるかどうかは、職場の意識改革を進めて育児休業を利用しやすい職場環境を作れるか、そして何よりも経営者の取組みがカギとなるでしょう。


 利用が増加する「未払賃金立替払制度」とは?

◆ここに来て利用が急増
 不況の影響による企業の倒産が連日のように報道されていますが、倒産に伴う退職労働者に国が未払いの賃金を立替払いする「未払賃金立替払制度」の利用件数も増加しているようです。
2008年度における支給者数は5万4,422人、支給総額は248億円と、ともに前年比6%増となっています。また、企業数は3,639件(前年度比8.7%増加)、支給者1人あたりの平均立替払額は45万6,000円でした。
なお、 2008年度下半期に限ってみると、同年上半期と比較して37%も増加しています。

◆制度の概要
 未払賃金の立替払制度は、企業の倒産に伴い、賃金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して、国が未払賃金の一部を事業主に代わって立替払いする制度です。この業務を行っているのは「独立行政法人労働者健康福祉機構」(http://www.rofuku.go.jp/)です。

◆利用の要件
(1)事業主に係る要件
   労災保険の適用事業の事業主で、かつ1年以上事業を実施していること、法律上の倒産(破産手続開始の決定、特別清算開始の命令、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定)をしたことが要件となります。
   なお、中小企業の場合は、事実上の倒産(事業活動停止、再開見込みなし、賃金支払能力なし)
でもよいとされています。
(2) 労働者に係る要件
   破産手続開始等の申立て(事実上の倒産の認定申請)の6カ月前の日から2年間に退職したこと、未払賃金額等について、法律上の倒産の場合には破産管財人等が証明(事実上の倒産の場合には労働基準監督署長が確認)すること、破産手続開始の決定等(事実上の倒産の認定)の日の翌日から2年以内に立替払いの請求を行うことが必要です。


 日系外国人の離職・帰国を国がサポート

◆4月から事業スタート
 厚生労働省は、「日系人離職者に対する帰国支援事業」を発表し、今年の4月から開始しています。4月だけで1,095人が申請を行ったそうです。
派遣・請負などの不安定な雇用形態にある日系人労働者については、日本語能力が不足していることや日本の雇用慣行に慣れていないことに加え、日本での職務経験が十分ではないことから、一旦離職した場合には再就職が難しいと言われています。
日本で離職した場合、母国で再就職することが有効な選択肢として考えられるため、帰国を希望する日系人に対する帰国支援について、与党を中心に提言がなされていました。

◆「帰国ニーズ」への対応
 同省では、これらの「帰国ニーズ」にこたえるため、帰国を決めた離職者に対し、帰国支援金を支給する事業(帰国支援事業)を開始したのです。
なお、引き続き日本で再就職したいと希望する日系外国人に対しては、引き続き、再就職支援、雇用維持のための各種事業、住宅確保支援策の活用などを実施していくとしています。

◆制度の概要
(1)対象者…事業開始以前(平成21年3月31日以前)に入国して就労・離職した日系外国人が対象で 
  す。日本での再就職を断念して母国に帰国し、同様の身分に基づく在留資格による再度の入国を
  行わないこととした者およびその家族に「帰国支援金」が支給されます。
(2)支給額…本人1人当たり30万円、扶養家族については1人当たり20万円が支給されます。なお、
  雇用保険受給期間中の者については一定額(支給残日数が30日以上→10万円、同日数が60日
  以上→20万円)が上積みされます。
(3)実施主体…ハローワーク(産業雇用安定センターに一部事務を委託)です。

◆日系人の多い地域のハローワーク
 日系外国人が多い地域(太田、松本、浜松、美濃加茂、大垣、豊田、刈谷、豊橋、四日市)のハローワークには、「日系人就職促進ナビゲーター」が設置され、細やかな個別就職支援を実施しています。


 新型インフル流行で注目浴びるか「在宅勤務」

◆新型インフルエンザ流行による影響
 新型インフルエンザの感染が拡大すると、「働き方として在宅勤務(テレワーク)が注目を浴びるのでは?」と言われています。会社員であれば、通勤中の電車やバス内で感染の可能性が高くなるからです。
テレワーク利用者(IT活用により場所と時間を自由に使った柔軟な働き方を週8時間以上利用する人)の数は、「ワーク・ライフ・バランス」などを背景に、2002年に408万人だったのが2005年には674万人と、3年で約65%増加しています。新型インフルエンザの流行によりこの動きがますます加速する可能性があります。

◆導入目的・実施しない理由
 労働政策研究・研修機構が2007年に実施した調査によると、企業が考えている「テレワークの導入目的」「テレワークを実施しない理由」は次の通りです。
【導入目的】
 ・勤務者の移動時間の短縮…66.7%
 ・仕事と育児・介護など家庭生活の両立…58.3%
 ・創造的業務の効率・生産性の向上…50.0%
【実施しない理由】
 ・労働時間の管理が難しい…62.7%
 ・適した職種(仕事)がない…49.2%
 ・コミュニケーションに問題がある…45.8%

◆導入には何が必要か?
 テレワークを導入するには、まずその職種が導入可能な職種なのかを判断しなければなりません。会社がどのように労働時間を管理するのか、通信費の費用負担はどうするのか、労災が発生した場合はどうするのかなどの問題もクリアしなければなりません。
また、厚生労働省が2008年7月に改訂した「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」などを参考に、「在宅勤務規程」をしっかりと整備しなければならないでしょう。


 年金に関する2つの新しい法律

◆2つの法律が成立
 年金に関して、2つの新しい法律が成立しました。1つは「年金遅延加算法」、もう1つは「延滞金軽減法」で、いずれも議員立法によるものです。
ここでは、この2つの法律について、その概要を簡単にご紹介します。

◆「年金遅延加算法」の概要
 年金遅延加算法(正確には「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律」)は、公的年金制度に対する国民の信頼を回復することを目的として、記録漏れが見つかったことにより年金が増額する人に対し、支給が遅れていた期間の物価上昇率分を上乗せするものです。
初年度においては最大約700億円が見込まれており、法律の施行は来春の予定です。
 なお、今年2月の時点で、5年を超す支給の遅れが見つかっているのは約7万3,000件、総額425億円です。

◆「延滞金軽減法」の概要
 延滞金軽減法(正確には「社会保険の保険料等に係る延滞金を軽減するための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」)は、社会保険料等の納付が困難な事業主の経済的負担を軽減することを目的として、保険料を滞納した事業主が支払う延滞金の金利(年14.6%)を、3カ月以内の遅れであれば「年7.3%」に引き下げるものです。
ただし、当面は日本銀行が定めている基準割引率に4%をプラスした利息が適用されるため、「年4.5%」となります。
約40億円の負担軽減になるものと見込まれており、法律の施行は2010年1月の予定です。

2009/04/30

5月の事務所便り


 「労災認定基準」の見直しで企業への影響は?

◆10年ぶりに見直し
厚生労働省は、仕事を原因とするうつ病などの精神疾患や過労自殺の労災認定基準について、10年ぶりに見直しを行いました。ストレス強度の評価項目を増やし、今年度から新基準での認定を始めます。

◆新たな判断基準の追加
精神障害に関する労災は、厚生労働省が1999年に作成した心理的負荷評価表に基づき、労働基準監督署が発病前6カ月間について、職場で起きた出来事のストレスの強さを3段階で評価し、判定します。「病気やケガ」「仕事内容の変更」「セクハラ」などの具体的な出来事の有無を判断材料として、総合判定で「弱、中、強」の3段階に分類し、強の場合、労災に当たるとしています。
認定基準の見直し後は、会社の合併や成果主義の採用、効率化など、働く環境の変化を念頭に入れ、ストレスの要因となる職場の出来事として「多額の損失を出した」「ひどい嫌がらせやいじめ、暴行を受けた」「非正規社員であることを理由に差別や不利益扱いを受けた」など、新たな判断基準として評価項目を31項目から43項目とし、12項目を新たに追加しました。

◆労災認定基準の見直しより大切なこと
今回の労災認定基準の見直しにより、それぞれの職場に沿った労災認定ができるようになることが期待されています。しかし、時代の変化により多様化・複雑化した労働者の精神疾患について、認定基準が細かくなり、職場の現状に見合った労災認定に近付けることは、労災補償の対象となるような病気になってしまった労働者にとっては喜ばしいことである反面、逆に、今後はさらにうつ病や過労自殺の労災認定件数が増えていくように思われます。
職場に沿った労災認定基準の見直しの動きや労災認定者に手厚い補償をすることも大事ですが、労働者がうつ病や過労自殺に追い込まれないような労働環境の整備や労働条件の改善、そのような状況にならないための予防策を打ち出すことが、政府として一番取り組むべき課題なのではないでしょうか。


 中小企業・小規模企業向け共済を拡充へ

◆中小企業の安全網整備
昨年から続く100年に一度とも言われる大不況下で、多くの中小・小規模企業が厳しい経営状態に追い込まれているのが現状です。
このような状況の中で、経済産業省は、中小・小規模企業の安全網として位置付けられている「小規模企業共済制度」「中小企業倒産防止共済制度」の見直しを始めたようです。

◆2つの共済制度(その1)
「小規模企業共済制度」とは、小規模企業の個人事業主または会社等の役員が、事業を廃止した場合や役員を退職した場合など、第一線を退いたときに、それまで積み立ててきた掛金に応じた共済金を受け取ることのできる制度です。企業が廃業した際に経営者の生活や事業の再建を支えるための退職金制度といえるものであり、加入者は掛金を積み立て、事業廃業時に共済金を受け取ることができます。
今回の見直しの柱は「加入対象者の範囲拡大」です。現在は、小規模事業の「個人事業主」に加入対象者は限られていますが、「後継者」や「共同経営者」を加える方向に動いています。後継者が加入できるようになると、事業継承が円滑に進むようになり、家族などの共同経営者の引退後の生活保障を拡充する狙いもあります。

◆2つの共済制度(その2)
取引先が倒産して売掛金や手形等が回収困難になったときに連鎖倒産が発生するのを未然に防ぐため、毎月一定の掛金を積み立てておくことにより共済金の貸付けを受けることができる「中小企業倒産防止共済制度」も同様に見直しが検討されています。
今回の見直しでは、貸付金額の上限(3,200万円)を引き上げる方向に動いています。それは、取引先の倒産で回収が困難になる金額が現在の貸付上限の3,200万円ではカバーできない場合が増えているためで、4,000万円程度を軸に具体的な引上げ幅が検討されているようです。
そして、現在の制度では「破産手続きが開始したとき」や「金融機関による手形の取引停止処分を受けたとき」などに限って取引先の「倒産」としているため、私的整理で売掛金の回収が困難になった場合には貸付の対象にはなっていません。この「私的整理」を倒産の対象に加えるかどうか、「倒産」という定義自体の見直しも検討されています。

◆「真の安全網」を機能させるために
昨年からの不況下で、多くの企業で経営が厳しい状況にあります。経営の安定を図ることを目的としたこの2つの共済制度ですが、今回の見直しが「真の安全網」として機能するよう、そして利用しやすい仕組みになるように期待したいものです。


 育児休業取得者の不利益取扱いをめぐるトラブル

◆労使トラブルへの発展
世界的な金融危機の影響等により雇用情勢が急速に悪化する中で、育児休業取得や妊娠・出産を理由とした企業側からの解雇や雇止めなど、不利益な扱いを受けた労働者からの相談が急増し、労使トラブルにまで発展しているケースもあるようです。

◆不利益な取扱いをめぐる労働相談
育児休業取得をめぐる不利益な扱いに関する労働者からの相談は、ここ5年で増加傾向にあります。都道府県の労働局に寄せられた相談件数は、昨年4月から今年2月末までの間に1,100件を上回り、前年度の約1.4倍となっていることが厚生労働省のまとめでわかりました。また、同様に、妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いに関する相談も増加しています。
金融危機が起きた昨年度後半からこのような相談は急激に増加し、現行の調査方法となった2002年度以降で最悪の水準となっています。
寄せられた相談内容は、育児休業後に復職を希望しても「業績悪化で以前の勤務時間に仕事がない」「他の人を雇ってしまった」などと拒まれたケース、勤務条件の変更を求められたり退職を勧奨されたりするケースなどが目立っています。

◆厚生労働省の対応
こうした状況を踏まえ、厚生労働省は、産前産後休業および育児休業等の申出・取得、妊娠・出産を理由とする解雇その他不利益な取扱いについて、各都道府県労働局長に対し、労働者からの相談への丁寧な対応、法違反の疑いのある事案についての迅速かつ厳正な対応、法違反を未然に防止するための周知徹底等に関する通達を出しました。
そして、事業主に対しての周知も徹底し、事業主向けリーフレットを新たに作成しました。

◆法違反の周知徹底を
経営環境が悪化して業績不振であることが理由であっても、労働者が産前産後休業または育児休業等の申出・取得をしたこと、妊娠または出産したこと等を理由として、解雇その他の不利益な取扱いをすることは、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法で禁止されています。
また、労働基準法、男女雇用機会均等法により産前産後の期間およびその後30日間に解雇することも禁止されています。また、妊娠中・産後1年以内の解雇は「妊娠・出産、産前産後休業取得等による解雇でないこと」を事業主が証明しない限り無効となります。
育児休業の取得を推進し、ワークバランスを提唱している反面、不況のあおりが育児休業者など立場の弱い人々に向かっている現状において、国が取り組むべき課題が潜んでいるように思われます。


 経済産業省が発表した“雇用創出企業1,400社”とは?

◆経済産業省が冊子を作成
職を失う人が増加する一方、中堅・中小企業の求人は「仕事がきつい」などといったイメージから敬遠されがちです。このような行き違いをなくそうと、経済産業省では、採用や人材育成に意欲のある中堅・中小企業約1,400社を厳選して、各社の情報をまとめた「雇用創出企業1,400社」と題した冊子を作成しました。

◆「雇用創出企業1,400社」とは
雇用情勢が悪化するなか、政府が一丸となって取りまとめた「雇用創出企業1400社」は、「不況期こそ人材確保のチャンス」と捉える企業について、関係機関を総動員して約1,400社を掘り起こしたものです。掲載企業は、全国の製造業(約800社)、サービス業(約570社)、農業(約40社)で、今春以降に予定する求人数は6,000人にも上ります。
何を作っているのか、どんなサービスを提供しているかといった企業概要の紹介に加え、人材育成方針などの内容も盛り込まれており、社長や社員の顔写真とともに「他企業には真似できない製品製造に携われるのがやりがい」など、現場で働く人の生の声も掲載されています。

◆選ばれた企業の特徴
これらの企業の多くは、「ジョブカフェ」や「ハローワーク」など、求職者がよく利用する公的機関の有効活用や情報発信などを行っています。
また、工業高校や高専などの進路指導担当職員による就職相談の際に、正規雇用を大切にする業種での働き方を紹介してもらうことにより、人材確保の取組みを推進し、雇用のミスマッチを解消していくことを目的として活動を行っています。

◆新たな雇用の創出に期待
経済産業省では、厳しい情勢においても採用意欲のある中堅・中小企業が数多く存在していると考えているようです。これらの企業の魅力をより多くの人に知ってもらうことで、経営における「人」の重要性を広く訴えるとともに、年齢や技能、勤務地や労働条件をめぐり企業が求める人材と求職者の条件が合致しない「雇用のミスマッチ」を解消できる1つの方策として考えています。
この「雇用創出企業1,400社」の取組みが、業種や勤務条件だけでは見えてこない企業の魅力を伝え、雇用のミスマッチを解消し、新たな雇用につながるきっかけとなることを期待したいものです。


 施行された「改正雇用保険法」のポイント!

◆ついに改正法が成立!
改正雇用保険法が成立し、3月31日から施行されています。成立から施行までの期間が非常に短く、しかも年度末からの施行ということで、雇用情勢の厳しい現実が伺えます。果たして失業者を救う改正となるでしょうか。
今回の改正点を大きく分類すると、以下の7点が挙げられます。
(1)雇用保険の適用範囲の拡大
(2)雇止めとなった非正規労働者に対する基本手当の受給資格要件の緩和と所定給付日数の拡充
(3)再就職が困難な方に対する給付日数の延長
(4)再就職手当の給付率引上げおよび支給要件の緩和
(5)常用就職支度手当の給付率引上げおよび支給対象者の拡大
(6)育児休業給付の統合と給付率引上げ措置の延長
(7)雇用保険料率の引下げ

◆改正の具体的内容
(1)短時間労働者や派遣労働者の雇用保険の適用基準について、従来は「週所定労働時間が20時間以上あり、1年以上引き続き雇用されることが見込まれること」が条件でしたが、1年以上の雇用の見込み期間が「6カ月以上」と短縮されました。
(2)特定受給資格者に該当しない方でも、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職された方(特定理由離職者)については、基本手当の受給要件が「離職日以前2年間に被保険者期間が通算して12カ月以上」必要なところ、「離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上」あれば要件を満たすようになりました。基本手当の給付日数も解雇等による離職者並みに手厚くなりました。
(3)解雇や労働契約が更新されなかったことによる離職者について、年齢や地域を踏まえ、特に再就職が困難な場合に給付日数が60日分延長されることになりました。
(4)再就職手当の支給要件が、従来の「所定給付日数を3分の1 以上かつ45日以上残している場合」から「所定給付日数を3分の1以上残している場合」に緩和されました。さらに、再就職手当の給付率についても、現行の30%から40%(支給残日数が3分の2 以上ある場合は50%)に引き上げられました。
(5)障害者等の就職困難者が所定給付日数を残して安定した職業に就いた場合に支給される常用就職支度手当の給付率が、従来の30%から40%に引き上げられました。
(6)これまで、「育児休業基本給付金(30%)」と「育児休業者職場復帰給付金(20%)」と分けて支給されていた育児休業に関する給付が、平成22年4月からは、統合され、休業中に「休業開始時賃金日額×支給日数×50%」が支給されることになります。
(7)失業給付に係る分の雇用保険料率が各業態とも0.4%(労使とも0.2%ずつ)引き下げられ、この結果、別途の事業主負担分0.3%を合わせた雇用保険料率は、一般の事業で1.1%(農林水産・清酒製造業1.3%、建設業1.4%)となりました。


 指針改正で定められた派遣先企業の賠償責任

◆数年ぶりの指針改正
いずれも平成11年に労働省(現在の厚生労働省)が定め、派遣元・派遣先が講じるべき事項を示した「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」(以下「派遣元指針」)・「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(以下「派遣先指針」)というものがあります。「派遣先指針」においては、派遣先企業が講じるべき事項として「派遣契約の解除の事前の申入れ」「派遣先における就業機会の確保」などが定められています。
このたび、この2つの指針が数年ぶりに見直され、今年の3月31日から適用されています。ここでは、この両指針について、どのような目的から、どのような改正が行われたのかを見ていきたいと思います。

◆指針改正の趣旨は?
昨今の不景気の影響により、労働者派遣契約の中途解除に伴う派遣労働者の解雇や雇止め等が、いわゆる「派遣切り」として新聞紙上でも大きく報道されています。
両指針の改正は、派遣元や派遣先が適切に対処することにより、派遣労働者の雇用の安全を確保しようという趣旨で行われました。
厚生労働省は、改正された指針に基づき、派遣契約中途解除への適切な対応について「周知啓発」や「的確な指導監督」を進めていくこととしています。

◆改正指針の内容は?
今回の「派遣元指針」・「派遣先指針」の主な改正内容は次の通りです。
(1)派遣契約の中途解除に当たって、派遣元事業主は、まず休業等により雇用を維持するとともに、休業手当の支払い等の責任を果たすこと
(2)派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により派遣契約を中途解除する場合は、休業等により生じた派遣元事業主の損害を賠償しなければならないこと
(3)派遣契約の締結時に、派遣契約に(2)の事項を定めること

◆「非正社員の安全網整備」がポイントに
マスコミ報道等でもご承知の通り、政府は4月上旬に「未来開拓戦略」と称する経済対策を明らかにしましたが、雇用に関係する分野では、非正社員への対策として7,000億円の基金を3年間の時限措置として設置し、雇用保険の受給資格のない失業者に月10~12万程度の職業訓練中の生活費を支給することを発表しました。
派遣社員のみならず、「非正社員全体の安全網整備」が重要なポイントであると、国も認識しているようです。


 新たに創設された「残業削減雇用維持奨励金」

◆制度の目的は?
不況の影響により大幅な減産となり、事業活動の縮小が余儀なくされた企業に対する助成制度としては、すでに「雇用調整助成金」「中小企業緊急雇用安定助成金」がありますが、要件が緩和されたことなども影響して支給申請が急増しているようです。
そして、このたび、同じような目的から、「雇用調整助成金」「中小企業緊急雇用安定助成金」両制度の一環として、新たに「残業削減雇用維持奨励金」が創設されました。
この奨励金は、従業員の残業を削減することによって有期契約労働者や派遣労働者の解雇を回避し、雇用の安定(雇用の維持)を図ることが目的とされています。また、政労使で合意された、いわゆる「日本型ワークシェアリング」(残業の削減、休業、教育訓練、出向などにより雇用維持を図ろうとするもの)を促進することが期待されています。
以下では、この奨励金の具体的な支給要件、支給額をご紹介します。

◆支給要件は?
この奨励金の支給を受けるためには、最近3カ月における売上高(または生産量等)の月の平均値がその直前の3カ月(または前年同期)と比べて「5%以上減少」している事業所において、以下の要件を満たしていることが必要です。
(1)判定期間における事業所労働者1人1月あたりの残業時間が、比較期間の平均値と比べて2分の1以上かつ5時間以上削減されていること。
(2)判定期間の末日における事業所労働者数が、比較期間の月平均事業所労働者数と比べて5分の4以上であること。
(3)計画届の提出日から判定期間の末日までの間に事業所労働者の解雇等(雇止め、派遣契約の中途解除等も含まれる)を行っていないこと。

◆支給額は?
それぞれの判定期間の末日時点での有期契約労働者・派遣労働者1人につき、判定期間ごとに以下の金額が支給されます。
なお、上限は、有期契約労働者・派遣労働者それぞれ100人とされており、残業削減計画届の提出日の翌日以降に雇い入れられた人などは対象にはならないとされています。
【中小企業事業主以外の事業主】
・有期契約労働者…10万円(年間20万円)
・派遣労働者…15万円(年間30万円)
【中小企業事業主】
・有期契約労働者…15万円(年間30万円)
・派遣労働者…22万5,000円(年間45万円)


 都道府県単位に変わる健康保険の保険料率

◆昨年10月にスタートした「協会けんぽ」
平成18年に行われた健康保険法の改正により、平成20年10月に「全国健康保険協会」(通称:協会けんぽ)が設立され、運営がスタートしています。
これまで、中小企業等で働いている従業員やその家族が加入している健康保険(政府管掌健康保険)は、国(社会保険庁)により運営されていましたが、新たに協会けんぽが運営することとなったものです。
ところで、協会けんぽ設立時に「都道府県別の健康保険料の設定」となることが決まっていましたが、その詳細は明らかになっておらず、協会けんぽ設立後1年以内に(平成21年9月までに)、事業主・被保険者が参画する運営委員会や各都道府県の評議会において意見徴収のうえ設定されるとされていました。
3月末にその取扱いが明らかになりましたので、ご紹介します。

◆「都道府県単位保険料率」設定の背景
従来、全国一律に設定されていた保険料率では、疾病予防等の地域の取組みにより医療費が低くなったとしても、その地域の保険料率に反映されないという問題点が指摘されていました。そのため、国民健康保険や長寿医療制度(後期高齢者医療制度)と同様、都道府県単位の財政運営を基本とする改革が行われ、その一環として都道府県単位の保険料率が導入されました。
なお、平成25年9月までは、都道府県間の料率の差を小さくして保険料率を設定することとなっており(激変緩和措置)、平成21年度は実際の保険料率と全国平均の保険料率との差が10分の1に調整されています。

◆「都道府県単位保険料率」
都道府県ごとに定められた保険料率は以下の通りです。長野県が最も低く、北海道が最も高くなっていますが、全体的に見ると、比較的「南高北低」の傾向にあるようです。
なお、健康保険組合の保険料率は、平均で7.41%です(2009年度予算早期集計より)。
・8.15%…長野
・8.17%…群馬・埼玉・千葉・山梨・静岡
・8.18%…岩手・山形・茨城・栃木・東京・新潟・滋賀
・8.19%…宮城・神奈川・富山・岐阜・愛知・三重・京都・愛媛
・8.20%…福島・福井・兵庫・鳥取・宮崎・沖縄
・8.21%…青森・秋田・石川・奈良・和歌山・島根・高知
・8.22%…大阪・岡山・広島・山口・長崎・鹿児島
・8.23%…香川・熊本・大分
・8.24%…徳島・福岡
・8.25%…佐賀
・8.26%…北海道

◆今後の取扱いについて
都道府県単位の保険料率については、今年の9月分(一般の保険者については10月納付分、任意継続被保険者については9月納付分)から適用されます。


 これからどうなる?「偽装請負」への対応

◆偽装請負をめぐるこれまでの動き
偽装請負(実態は労働者派遣であるにもかかわらず請負と偽っている違法な形態)については、平成18年の夏にマスコミが取り上げたことを発端として話題となりました。大手企業が恒常的に偽装請負を行っていたとの報道には大きなインパクトがありました。
その後、厚生労働省は、社会問題化した違法派遣や偽装請負を一掃することを目的として、昨年4月に「緊急違法派遣一掃プラン」をスタートさせるなどしましたが、制定された「日雇派遣指針」の効果も上がらず、労働者派遣法改正案も国会審議が進んでいないようです。

◆新たな通達と「疑義応答集」
厚生労働省では、今年3月末、偽装請負への指導をさらに強化していくため、全国の労働局宛てに労働者派遣と請負の区分基準を明確化する通達を出したそうです。また、同省のホームページに「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集」の掲載を開始しました。

◆わかりにくい派遣と請負の区分基準
『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』は、昭和61年に労働者派遣制度が開始された際に厚生労働省が発表したものです。しかし、この基準をもってしても「派遣と請負を区分する基準はわかりづらい」との声が上がっていました。
そこで、具体例を用いてその区分基準を明らかにしたのが上記の「疑義応答集」です。いわゆる「労働者派遣の2009年問題」にも対応するものだと言われています。

◆「疑義応答集」の具体的内容
全部で15のQ&Aからなる「疑義応答集」は、どのようなケースが偽装請負に該当するのか、以下の項目ごとに具体例を挙げて示していますので、非常に参考になります。ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/haken-shoukai03.pdf)でご確認ください。
(1)発注者と請負労働者との日常的な会話
(2)発注者からの注文(クレーム対応)
(3)発注者の労働者による請負事業主への応援
(4)管理責任者の兼任
(5)発注者の労働者と請負労働者の混在
(6)中間ラインで作業する場合の取扱い
(7)作業工程の指示
(8)発注量が変動する場合の取扱い
(9)請負労働者の作業服
(10)請負業務において発注者が行う技術指導
(11)請負業務の内容が変動した場合の技術指導
(12)玄関、食堂等の使用
(13)作業場所等の使用料
(14)双務契約が必要な範囲
(15)資材等の調達費用


 内定取消・新卒採用をめぐる最近の動き

◆厳しさが続く企業の採用状況
先日、入社式の前日(3月31日)に新卒者19名の採用内定を取り消した静岡市内の造船会社が、会社更生法の適用を申請して受理されたとの報道がありました。同社では、一度は内定取消を行ったものの、操業開始の目途が立ったとして4月9日に「内定取消」を「取消」していました。
また、福岡市内の不動産会社は、内々定を取り消した今春卒業の元大学生から慰謝料などの損害賠償を求める労働審判を申し立てられていましたが、調停が不成立となり、審判官に「内々定の取消は違法」だとして解決金75万円の支払いを命じられました。内々定の取消が違法と判断されたのは極めて珍しいケースだそうです。

◆新卒採用を控える傾向が鮮明に
日本経団連が実施した新卒採用に関するアンケート(会員企業約1,300社が調査対象)の調査結果によると、今年の春に新卒の学生を1人でも採用した企業の割合は98.5%(前年比1.4ポイント減少)で、前年を下回ったのは6年ぶりとのことです。さらに、来年の春はこの割合がさらに減少し、86.4%となるとの見通しが明らかになっています。
中堅・中小企業を対象に東京商工会議所が行ったアンケート調査(860社が回答)では、今春に新卒採用を予定していた企業は55.6%(前年比4.9ポイント減少)だったそうで、来春は41.3%にまで落ち込むと見られています。

◆学生の就職がさらに厳しく
リクルートから発表された来春卒業予定の大学生・大学院生の就職求人倍率(従業員5人以上の民間企業約4,300社が回答した結果の推計)は、大幅に悪化して1.62倍(前年比0.52ポイント減少)となっており、こちらも7年ぶりに前年を下回りました。
業種別にみると、「金融業」の求人倍率が0.29倍と最も低くなっています。
専門家の中には「2000年に求人倍率が『0.99倍』となった就職氷河期ほど落ち込むことはないのではないか」と見ている人もいるようですが、今後、企業の「採用抑制」と学生の「就職難」が改善されていくのは、まだまだ先のようです。

2009/04/01

4月の事務所便り


父親のワーク・ライフ・バランスを考える

◆まだまだ低い男性の育児休業取得率
女性の育児休業はだいぶ取得しやすくなってきましたが、男性についてはまだまだ理解が進んでいないのが現状です。男性の約3割が育児休業を取りたいと考えている一方で、実際の取得率はわずか1.56%にとどまっています。また、男性が子育てに費やす時間も、極めて低い水準にあります。
勤労者世帯の過半数が共働きとなっている今、男性も子育てに十分に関わることのできる環境作りが求められています。

◆「仕事と子育て両立パパ」を支援
男性も子育てに十分に関わることのできる働き方の実現に向け、厚生労働省は、これから父親になる男性労働者や子育て期にある男性労働者が仕事と家庭を両立した働き方ができるように、「父親のワーク・ライフ・バランス~応援します! 仕事と子育て両立パパ~」と題したハンドブックを作成しました(「父親のWLB(ワーク・ライフ・バランス)応援サイト」http://www.papa-wlb.com/よりダウンロード可能)。
このハンドブックには、両立支援制度等の関連情報(育児期における父親の役割や育児休業取得の際の留意点、子育てにかかる経済的支援制度や各種相談窓口など)が盛り込まれているほか、実際に育児休業を取得して子育てに積極的に関わっている男性の声や事例なども掲載されています。仕事と子育てが両立できる働き方を設計・実践するツールとして活用することができます。
企業においても、男性労働者が仕事と子育てをうまく両立させ、それによりモチベーションが高まる好循環を生み出すヒントとして活用することができそうです。

◆男性も家庭と仕事の両立を!
父親の積極的な子育て参加を応援することには、様々なメリットがあると考えられます。
例えば、企業側からみれば、男性従業員のモチベーションの向上、企業イメージの向上を図ることができます。また、社会経済的にも、夫婦で子育てを行うことにより少子化対策につながることが期待できるほか、女性の労働力率の向上、男女共同参画の推進につながります。
今や、男性も家庭と仕事との両立に積極的に取り組むべき時代です。今後、「父親のワーク・ライフ・バランス」支援の意義やメリット、具体的な取組みについて、いっそう真剣に考えなければならないといえるでしょう。


公的年金制度はこの先も本当に大丈夫なのか?

◆2年連続でマイナス運用
公的年金の積立金の市場運用利回りが、2年連続でマイナスになる見通しだそうです。2007年度に5年ぶりのマイナスに転じて5兆8,000億円余りの損失を出した運用利回りですが、国内外の株価低迷を受け、2008年度における損失額は10兆円に達する可能性もあるとされています。
現行の公的年金制度は、向こう約100年にわたり平均4.1%の利回りを確保できることを前提としています。この前提のハードルの高さが鮮明となったことにより、年金制度の危うさが露呈しています。

◆財政検証による年金制度の見通し
現在、高齢者が受け取ることのできる年金の財源は主に3つあります。1つ目が「現役世代の支払う保険料」、2つ目が「国庫負担」、3つ目が「運用しつつ徐々に取り崩す積立金」です。
安定的に年金を受給できるかどうかのカギを握るのは、制度の支え手である現役層の厚さを決める「出生率」と、積立金の運用を左右する「経済情勢」です。近年、出生率が下がり続けており、また、経済情勢も悪化しているため、年金制度への不安がかなり高まっています。
厚生労働省は、5年ごとに行っている公的年金の財政検証をこのたび実施しました。これによれば、「所得代替率」(現役世代の平均手取り収入に対して厚生年金のモデル世帯の標準的な年金受取額が何%になるかを示す比率)は、将来も50%を維持できると試算されています。この数字だけをみると、非常に良い数値だといえます。
しかし、実際には、16兆2,000億円あった累積収益は、積立金の市場運用を始めた2001年度から2006年度末までに約9割減り、昨年末時点で1兆7,000億円弱にまで減っています。年金の主な給付財源の1つである積立金が減っているにもかかわらず、試算上は「50%給付」を維持できることとなるのは、経済が安定的な成長軌道に戻る、年金制度の担い手が増えるなどといった甘い見通しで計算を行っているからだと言わざるを得ません。

◆「100年安心」の年金制度実現へ何が求められるか
今回行われた公的年金の財政検証では、今後の約100年を見通して政府が公約する給付水準の下限の50%を何とか確保できると結論付けましたが、50%維持へのつじつま合わせの跡もうかがえます。
「100年安心」をうたう年金制度ですが、「100年安心」の年金制度を実現するためには、制度改革の議論とともに、安定給付のカギを握る経済成長と少子化対策への戦略が必要です。年金制度の安定には、「経済情勢回復」と「出生率向上」の両輪が欠かせないといえます。


利用が進まない「ジョブ・カード制度」

◆1年間で約4万人に発行
職業経験が少ない人の就職を支援するため、厚生労働省が2008年4月から始めた「ジョブ・カード制度」ですが、普及が遅れています。5年間で100万人へのジョブ・カード発行が目標でしたが、導入から約1年で約4万人にとどまっています。
同省では、ジョブ・カード制度における雇用型訓練実施企業への助成を拡充するなどして、利用を呼びかけています。

◆「ジョブ・カード制度」の概要
ジョブ・カード制度は、企業現場でのOJT(実習)、教育訓練機関等でのOFF-JT(座学等)による職業訓練を通じて、フリーターや子育て終了後の女性など、職業経験の少ない人の能力を高め、就職を支援することをねらいとしてスタートしました。
ジョブ・カードの発行希望者は、企業現場・教育訓練機関で実践的な職業訓練を受け、その評価結果である評価シート等を取得し、これを自らの職歴・教育訓練歴、取得資格などの情報とともに「ジョブ・カード」として取りまとめます。
ジョブ・カードを作成することにより、自分の職業能力・意識を整理することができ、また、作成したジョブ・カードは、常用雇用を目指した就職活動や職業キャリア形成に幅広く活用することができるとされています。

◆政府の対策は?
制度の導入からまもなく1年が経過しますが、制度自体の認知度が低く、そのメリットが広く知られていないうえ、職業訓練希望者の受入れを表明した企業は現在約2,100社と少ない状況です。また、昨秋からの急激な不況で雇用が縮小しており、企業が今後の受入れに二の足を踏むことも予想されます。
普及促進のため、政府は、制度のテコ入れを始めています。まず、企業現場における職業訓練の際にかかる賃金の助成率が、中小企業では「2分の1」から「4分の3」に引き上げられました。また、訓練受入企業の参考となる「モデル評価シート」「モデルカリキュラム」等を作成し、企業の便宜を図っています。

◆不況期の雇用とジョブ・カード制度
中小企業にとっては、大企業が採用活用を控える傾向にある今、良い人材を積極的に採用できるチャンスです。その際にジョブ・カードを活用すれば、事前にその人の職業能力もわかり、雇用のミスマッチをなくすことができます。ひいては、雇用改善の近道ともなるでしょう。
政府には、制度自体の認知度を上げ、普及を進めるためのさらなる対策が期待されます。


雇用情勢の悪化と助成金制度

◆厳しい情勢が続く
厚生労働省が発表した1月の有効求人倍率は、前月より0.06ポイント低い0.67倍で、2003年9月以来、5年4カ月ぶりの低水準を記録しました。また、総務省が発表した1月の完全失業率は4.1%で、前月より0.2ポイント改善したものの、依然として高い数値となっています。完全失業者の数は、前年同月比21万人増の277万人に上っています。
世界的な金融危機と景気後退を受け、生産・雇用情勢が一段と悪化している折り、政府は様々な雇用対策を打ち出しています。

◆数値でみる雇用情勢
有効求人倍率とは、公共職業安定所(ハローワーク)で職を探している人1人につき何人分の求人があるかを示す数値で、雇用情勢の動向が比較的早く数値に反映されると言われています。1月における数値の低下は、1992年以来の大幅なものとなりました。
完全失業率は、15歳以上の働く意思のある人のうち、まったく職についていない人の比率を示す数値です。1月は3カ月ぶりに改善しましたが、これは厳しい雇用情勢を受けて職探しを一時見合わせる人や、女性の短時間労働者が増えるなどしたための形式的・一時的なものとみられ、雇用情勢の厳しさは変わらないと判断されています。

◆助成金による政府の雇用改善対策
政府は雇用対策の一環として、助成金制度の新設と要件緩和・要件拡充を次々に打ち出しています。
例えば、新たに「若年者等正規雇用化特別奨励金」が創設されています。これは、雇用改善を目指し正規雇用を支援するもので、「採用内定を取り消されて就職先が未決定の学生等」または「年長フリーターおよび30代後半の不安定就労者」を正規雇用する事業主が、一定期間ごとに引き続き正規雇用する場合に、中小企業には総額100万円、大企業には総額50万円の奨励金を支給するものです。
この他にも、「雇用調整助成金」・「中小企業緊急雇用安定助成金」、「派遣労働者雇用安定化特別奨励金」、「離職者住居支援給付金」、「介護未経験者確保等助成金」、「特定求職者雇用開発助成金」など、様々な助成金制度が創設され、要件が緩和されています。

◆助成金による雇用改善策は実るか
このような助成金制度による雇用対策により、政府の目指す雇用改善はどれだけ図られるでしょうか。その成果が有効求人倍率や完全失業率に数値として現れてくるまでには、まだまだ時間がかかりそうです。雇用情勢の悪化が今後も続くことが懸念されます。


プラス改定となった介護報酬と問題点

◆初のプラス改定に
介護サービス事業者に支払われる「介護報酬」について、2009年4月実施の改定率は「3.0%」となることが決定されています。2000年の介護保険制度創設以来、改定の度に引き下げられてきた介護報酬ですが、今回、初めてのプラス改定となりました。
離職率が高く人材確保が困難な現状を改善し、質の高いサービスを安定的に提供できるよう、介護従事者の処遇改善を進めるとともに、事業所の経営の安定化を図るための改定ですが、問題点も指摘されています。

◆介護報酬と改定内容
「介護報酬」とは、介護サービスを提供した事業所や施設が、そのサービスの対価として、保険者である市町村から受ける支払いです。介護報酬の額は、サービスの種類ごとに決められている単位数に、地域別の報酬単価を掛けて算出されます。サービス利用者の負担は介護報酬の「1割」で、残りの「9割」は介護給付費として介護保険から支払われます。
今回の改定では、基本の報酬部分はほとんど上げず、様々な加算部分の見直しを行って、新たに40を超える加算を設けました。職員のキャリアに着目し、介護福祉士や常勤職員の配置割合や勤続年数により報酬に差が出るしくみを採用したことは注目されます。
その他、医療連携・認知症ケアの充実などに関する加算、地域差を調整するための加算が増えています。

◆今回の改定の問題点
今回の改定は加算が中心の改定のため、加算部分が算定できるところとできないところで、事業所の差別化・選別化が進むおそれがあると言われています。また、加算の算定には記録の整備等が必要となるため、事務負担が増え、現場の困難が拡大することも考えられます。
さらに、今改定には利用者側の視点はまったくありません。介護報酬が上がれば、当然、その1割を負担する利用者の負担は大きくなりますが、利用料負担の軽減は行われませんでした。負担分が支払えないために、サービスの利用を制限せざるを得なくなるケースが今以上に増えるかもしれません。
介護サービスに対する家庭の負担を少しでも抑えるためには、「高額介護サービス費」(同じ月に利用したサービスの利用者負担の世帯合計が上限額を超えた分について後から支給する)や「高額医療・高額介護合算制度」(医療・介護にかかった費用の合算額で年限度額を超えた分について後から支給する)など、公的制度をうまく利用するのが賢明だといえるでしょう。


「有期労働契約」のルールを根本から見直しへ

◆厚生労働省が研究会を立上げ
近年、正社員と非正社員との賃金格差(対応した「改正パートタイム労働法」が2008年4月に施行済み)、景気悪化を背景とした期間工の雇止め、そしていわゆる「派遣切り」による失業者の増大など、「非正規雇用」や「有期労働契約」に関する事項が大きくクローズアップされています。今年3月末までに期間従業員約23,000人が職を失うとも報道されています。
有期契約労働者とは、「臨時雇い」(1カ月以上1年以内の雇用契約)と「日雇い」(日々または1カ月未満の雇用契約)の総称だと言われていますが、厚生労働省では、「有期労働契約」に関する法規制の在り方を根本から見直す方針を打ち出し、新たな有期労働契約のルール作りを目指すため、学識経験者・専門家(大学教授)で構成される「今後の有期労働契約の在り方に関する研究会」を立ち上げました。
先日(2009年2月23日)、研究会の第1回会合が開催されましたが、今後、労働基準法や労働契約法の改正なども見据えているようであり、議論が深められていきそうです。

◆非正規雇用社員・有期労働契約の問題点
これは2007年時点のデータですが、正規雇用社員の数は約3,441万人、非正規雇用社員の数は約1,732人となっており、1985年時点と比較すると、正規雇用社員は約98万人、非正規雇用社員は約1,077万人増加しており、以前と比べ非正規雇用社員の割合がだいぶ高くなってきています。非正規雇用社員の内訳は、パート社員が822万人、契約社員・嘱託社員等が435万人、アルバイトが342万人、派遣社員が133万人です。
このような状況において、上記の研究会では、有期労働契約に関して、(1)契約期間の上限制限(現行は原則3年、特例5年)、(2)有期労働契約の範囲と職種ごとの期間制限、(3)契約締結時の労働条件の明示、(4)通常の労働者との処遇の均衡、(5)契約の更新と雇止めなどに論点を絞り、いかなる法規制が必要なのか、または必要でないのかといった方向性を検討していくようです。

◆今後の動き-法改正はあるか?
研究会は、2009年度の早い時期に有期労働契約者の就業に関する実態調査を行ったうえで、有期労働契約に関する論点を整理し、2010年の夏ごろまでに報告書をまとめ、法律(労働基準法や労働契約法など)の改正を行っていきたい考えのようです。新聞紙上では、「雇止めの制限」「契約更新回数の制限」「最長3年間の契約期間の見直し」などが行われるのではないかと報道されています。
将来的には、有期労働契約に関するルールが大きく変わっていき、企業の人事労務管理に大きな影響を与えるようになるのかもしれません。


不法滞在外国人減少に向けた取組み

◆不法滞在外国人が大幅に減少
ここ数年、不法滞在の外国人が大幅に減少しているようです。法務省の入国管理局によれば、2004年に約25万人いた日本国内における不法滞在外国人の数は、2009年1月時点では約13万人になっているそうです。5年間でなんと約48%も減少しており、同省では、政府の中期的計画に基づいた「摘発の強化」と「入国審査の厳格化」が功を奏したとみているようです。
不法滞在外国人については、犯罪の温床になっているとも言われていますが、来日外国人の犯罪(不法滞在者以外によるものも含む)も減少傾向にあり、2007年中の来日外国人犯罪の検挙件数は3万5,800件(1万5,923人)で、前年比で4,328件(10.8%)減少しています。

◆法改正による「在留カード」の発行
政府は、さらなる対策にも取り組もうとしています。従来からあった「外国人登録証」(外国人登録制度)を廃止して、新たに「在留カード」(3カ月以上の滞在を認められた外国人について発行される)を作成するため、入国管理・難民認定法の改正案を、現在開会中の通常国会に提出する方針を明らかにしています。
法務省の推計によれば、現在、約2万人の不法滞在外国人に「外国人登録証」が発行されているそうですが、「在留カード」には、偽造を防止するためにICチップが付けられ、不法就労者かどうかをすぐに見分けられるようにするそうです。また、顔写真・氏名・国籍・住所・在留資格・有効期間などの情報が明記され、情報の変更には届出が義務付けられます。また、就労する資格があるかどうかについても記載されるとのことです。
なお、この在留カードを偽造した者には非常に重い罰則(1年以上10年以下の懲役など)が課せられることになっています。この法律改正により、さらなる不法滞在者の減少が期待されています。

◆「適法滞在者」には有利に
一方で、不法でない、適法な滞在外国人については、在留期間の上限をこれまでの3年から5年に延長することなども改正案に盛り込まれています。また、再入国については、原則として1年以内は政府による許可が不要とされるようです。
また、特別永住者(在日韓国人・在日朝鮮人など)は上記の改正された制度の対象外とされ、「特別永住者証明書」が発行されるそうです。


希望退職制度を実施する場合の注意点

◆希望退職制度の実施企業数は?
新聞報道によれば、不況が本格化した昨年の9月以降、正社員の希望退職制度を実施した上場企業は、全国で約120社に及んでおり、希望退職の募集人員は約2万人(このうち約5,200人が応募し、退職が決定している)に上っているそうです。
上場企業だけでこの数字なのですから、中小企業も合わせるとこの数はさらに増え、多くの企業が不況に苦しみ、人員削減に踏み切らざるを得ない状況であることがわかります。

◆希望退職制度とは?
希望退職制度は、退職金を増額することなどを条件として、あくまでも企業側と従業員側との「合意」に基づいて実施される制度です。従来、解雇回避のための、あるいは解雇等に先んじて行われるべき人員削減策として用いられてきました。
希望退職者の募集は、特定の労働者に対して行われるのものではなく、会社全体もしくは少なくとも事業場単位で行われるものとされています。一般に、希望退職者の募集は労働契約解約のための申込みの誘因であると考えられますので、希望退職者の募集自体は、使用者側からの解約の申込みの意見表示ではありません。
そして、労働者が応募することにより、解約の申込みの意思表示をしたことになります。そして、会社がこれに対して承諾の意思表示を行えば労働契約は終了します。

◆制度を実施する場合の手順
企業の状況により異なる場合もありますが、希望退職制度を実施する際の一般的な手順は、次の通りです。
(1)募集対象・募集人員・募集期間などの検討・設定
(2)退職条件・退職予定日などの検討・設定
(3)労働組合や従業員代表との協議
(4)従業員への説明会の開催
(5)希望退職募集の案内(1次・2次・3次…)
(6)応募受付、募集の締切り
(7)合意書の作成など

◆トラブル発生の回避が重要
希望退職制度を実施する際には、労働者との間にトラブルが発生しないような配慮が必要です。特に、従業員の退職合意の任意性を損なわないように十分注意する必要があり、退職に応じるように個別の従業員を執拗に説得するなどの行為は、後々のトラブルに繋がる可能性があります。


4月から発送が開始される「ねんきん定期便」

◆「特別便」の成果はいかに?
社会保険庁は、2007年の年末から2008年の秋にかけて、すべての年金受給者と加入者(約1億900万人)に対して、「ねんきん特別便」の発送を行いました。しかし、思ったほどの効果は上がっていないようです。
この「特別便」への回答率は、昨年12月末時点で63%にとどまっており(そのうち約14%に当たる991万人が自分の記録に「漏れ」や「間違い」があると回答しています)、当初の予想よりもだいぶ低い結果となっています。

◆「ねんきん定期便」とは?
今年の4月からは、年金加入者(国民年金・厚生年金の被保険者。約7,000万人)に対し、「ねんきん定期便」の送付が始まります。社会保険庁は、これにより年金記録の「再点検」を求めるとしています。なお、送付の周期は「毎年誕生月に送付」となっています。
この「定期便」では、「特別便」とは異なり、記録の改ざんなども見抜けるような工夫がなされるようです。自分の年金加入記録(履歴)に加え、(1)標準報酬月額、(2)将来の年金見込額、(3)保険料の納付実績も記載されることとなっています。

◆「定期便」に封入される予定のもの
この「定期便」には、基本的には以下のものが封入されることになっています。
(1)定期便の本体
(2)説明書(冊子)
(3)回答票
(4)返信用封筒
なお、自分の年金記録漏れに気付いていない加入者については、記録漏れを申し出るためのヒントとして、記録が漏れている期間を示す書類(「あなた様の年金加入記録に結び付く可能性のある記録のお知らせ」)が同封されることになっています。
この「ねんきん定期便」の詳細やひな形等に関しては、社会保険庁のホームページ(http://www.sia.go.jp/topics/2006/n1124.html)でご覧いただくことができます。