2010/12/09

12月の事務所便り

 いまどきの「課長」の実態は?

 ◆一部上場企業の課長428人の回答
産業能率大学がインターネット調査会社を通じて「上場企業の課長を取り巻く状況に関する調査」を今年9月に行い、その結果が公表されました。
従業員が100人以上の上場企業に勤務し、部下が1人以上いる「課長」428人が、「昇任前の経験」、「現在の悩み」、「上司の支援」、「今後のキャリア」などについて回答しています。

 ◆多くはマネージャー兼プレイヤー
まず、「プレイヤーとしての仕事の割合」についての質問では、「0%」と答えた人はわずか1.4%でした。プレイヤーとしての活動割合が半分より多い人は4割を超えています。
プレイングマネジャー化しているケースが多く、多くの課長がプレイヤーとしての活動を兼務していることがわかります。この傾向は、中小企業においてはなおさら強くなるでしょう。

 ◆仕事上の悩みとメンタルヘルス
次に、「仕事上の悩みを相談できる人がいるかどうか」との質問には、「いる」と答えた人が50.2%、「いない」と答えた人が49.8%と、ほぼ半数に分かれました。
「いる」と答えた人に対して「どのような相談者がいるのか」を尋ねたところ、「会社の上司」「会社の同僚」が多数でした。
また、「自分自身のメンタルヘルスに不安を感じたことがあるか」との質問には、「ある」と答えた人が43.7%、「ない」と答えた人が56.3%でした。その原因としては、「上司との人間関係」、「成果創出へのプレッシャー」、「仕事の内容」などが多くありました。
自分の身近に相談できる人がいるかどうかも、不安の有無に関係しているものと思われます。

 ◆遣り甲斐をもって仕事に取り組めるか
自分が「課長としてイキイキと働いていると思うか」との質問では、「どちらかといえばイキイキと働いている」が54.9%、「イキイキと働いている」が6.8%でした。逆に言えば、イキイキと働いていない人が約4割もいるということになります。
これら課長クラスにある方たちが、イキイキと遣り甲斐をもって仕事に取り組める環境をつくることが会社の仕事でもあり、それらができている会社はきっと成果を残している会社ということになるでしょう。


 義務化されるか?
 企業による「受動喫煙防止対策」

 ◆検討会が報告書を発表
厚生労働省では、昨年7月に「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会」を立ち上げ、今年5月にその検討会が報告書をまとめました。今後、この報告書をベースに、労働安全衛生法の改正案が国会で審議される予定となっています。
この改正案が成立した場合、飲食業・サービス業などにとっては大きな負担が強いられることとなりそうです。

 ◆これまでの対策の流れ
職場における受動喫煙防止対策については、平成4年以降、「労働安全衛生法」に定められた快適職場形成の一環として進められました。その後、平成15年に「健康増進法」が施行され、平成17年2月に「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が発効するなど、受動喫煙を取り巻く環境は大きく変化しています。
また、健康志向の強まりや受動喫煙の有害性に関する知識の普及などから、職場における受動喫煙に対する労働者の意識も高まりつつあります。

 ◆受動喫煙防止を事業主の「義務」へ
このような環境の変化から、現在、企業に対して強く「受動喫煙防止対策」を求める流れになっています。
そして、職場における受動喫煙防止について、従来の「快適職場形成のため」から「労働者の健康障害防止のため」という観点に切り替え、職場における受動喫煙防止を事業主の「義務(罰則付き)」とする法改正が予定されているのです。

 ◆今後の審議状況に注目
今後のあり方として、事務所、工場等では「全面禁煙」「喫煙室を設けそれ以外を禁煙」とすることが求められ、飲食店、ホテル・旅館等においては、原則として「全面禁煙」「喫煙室を設けそれ以外を禁煙」とすることが必要とされ、それが困難な場合は喫煙区域の割合を少なくし、喫煙区域からの煙の漏れを防ぎ、換気等を行うように求められる方向です。
多くの企業に影響を与えることとなりそうな法改正のため、今後の改正案の審議状況が気になるところです。


 新卒者の採用活動開始時期を見直しの動き

 ◆相次ぐ見直しの表明
9月下旬、大手商社7社は、企業における大卒者の採用活動時期を遅らせるよう、日本経団連に呼びかける考えを表明しました。「就職活動の長期化が学業の妨げになっている」との意見が強いためであり、商社自身の採用試験の時期も見直していくとしています。
また、10月初旬には、社団法人日本貿易会(貿易商社の業界団体)が、新卒者の採用活動に関して、2013年度入社対象の新卒者から、採用スケジュールを遅らせるべく具体的な検討を始め、また、各産業界が協調して見直しが実現できるよう日本経団連などの関係団体に働きかけると発表しました。

 ◆採用側企業の発表を受けて
これら採用側企業の動きを受けて、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣は、連名で245の主要経済団体、業界団体に向けた、早期の採用選考活動の抑制などを要請する文書を送りました。この要請文の中では各団体の努力を求めています。
また、リクルートや毎日コミュニケーションなど就職情報会社10社で構成する「日本就職情報出版懇話会」でも、就職活動の早期化への批判に対応し、新卒者の採用情報を提供するサイトの開設時期について、例年から1カ月以上遅らせて、来年は11月1日以降にすると発表しました。

 ◆これまでの就活の流れに変化
これまでの流れとしては、まず、大学3年生の8月ごろに「インターンシップ」を行う企業が出てきます。そして、10~11月にかけて「就職情報サイト」が開設され、「業界別セミナー」や「就活フェア」なども開かれます。
そして年が明けた1月ごろから「会社説明会」の開催が徐々に増えてきて、2月ごろには「エントリーシート」の提出なども始まります。
4年生になると「採用面接・選考」が始まり、5月ごろには「内々定」が出始め、6月には中小企業の採用活動も本格化してきます。
 来年以降は、採用側企業や国側の対応を受けて、これらのスケジュールが遅くなっていくものと思われますが、企業としては、じっくりと良い人材を見極め、自社にとって必要な人材を確保することが必要なことには変わりはないでしょう。


 どんな気持ちで職場の飲み会に参加しているか

 ◆職場の人とのお酒の飲み方に関する調査
キリン食生活文化研究所では「職場の人とのお酒の飲み方に関する意識調査」を行い、先日その結果が発表されました。
職場の仲間や上司・部下とお酒を飲む機会の多寡は会社によってそれぞれ異なるでしょうが、各人がどのような思いで「飲み会」に参加しているのか、とても興味深い内容になっています。

 ◆飲み会は「コミュニケーション」のため
アンケート項目中の「職場の人とお酒を飲む際に期待すること」については、トップは上司・部下ともに「コミュニケーションをとりたい」でした。そして、自分の上司より部下と飲むときのほうがその期待は充足される傾向にあることがわかりました。
また、職場の人からの飲み会の誘いを断る際に「行けない理由をはっきり言って断る」人は4割以上いました。20代では、部下・後輩に対し「行けない理由をはっきり言う」割合(36.3%)が、上司に対する場合よりも低くなっています。

 ◆飲み会の平均額・平均回数は?
職場の人とお酒を飲むときの1回あたりの平均予算は4,401円(前年比129円マイナス)でした。月平均の回数は前年と同じ1.5回となっています。
上司が部下とお酒を飲む際におごる金額の平均は1回あたり7,092円で、エリア別に見ると1位は「北海道」で8,542円。2位は「北陸」で7,400円、3位は「東北」7,221円となっています。寒い地域で働いている人のほうが太っ腹なのでしょうか?

 ◆増える傾向にある「割り勘」
最近では、上司と部下で飲みに行っても「割り勘」とするケースが増えているようです。
上記の調査とは別の調査では、「上下関係なく割り勘にすることが多い」と答えた20~59歳の人は全体の24%に上りました。
年功序列が崩れつつあり、明確な上下関係意識が薄れつつあることの影響なのかどうかはわかりませんが、いずれにしても、社内でのコミュニケーションを図るうえで「飲み会」が有効な手段の1つであることは間違いないでしょう。


 転職を考え始める年齢は何歳?

 ◆4万人以上の会社員が回答
株式会社インテリジェンスが運営する転職サービス「DODA」では、会社員が転職を考え始める年齢についての調査を行い、その結果を発表しました。
この調査の対象者は、「DODA」人材紹介サービスに登録した人のうち登録時の年齢が22~39歳(転職回数0回)の大卒以上の男女で、4万人以上から回答がありました。

 ◆ 転職を考え始めた年齢は?
転職を考え始めた年齢についての回答では、「25歳」(13.5%)が最多であり、「26歳」(12.5%)、「24歳」(11.8%)と続いています。4割近くの人が入社2~3年目の段階で次のキャリアを考えているようです。

 ◆職種別ではどうか?
転職を考え始めた年齢について職種別に見ると、下記の年齢がそれぞれ最多となっています。
・「企画・事務」…29歳(8.8%)
・「金融などの専門職」…28歳(9.1%)
・「ITエンジニア」…27歳(9.5%)
・「建築・土木」…27歳(10.6%)
・「モノづくりエンジニア」…26歳(9.7%)
・「メディカル」…26歳(11.6%)
・「営業」…25歳(10.9%)
・「販売・サービス」…25歳(12.6%)

 ◆安定志向の傾向も
最近は比較的若い年齢において転職を考え始める人が多いようですが、社団法人日本能率協会が今年4月に発表した新入社員の意識調査では、約半数の人が「定年まで勤めたい」と回答し、「終身雇用」や「年功序列」を望む傾向も見られます。
会社としては、有能な人材が会社にずっと残ってくれるのがベストでしょうが、そのためには、社員のキャリアアップのために何ができるのか等を真剣に考える必要があるでしょう。


 賃金収入は減少傾向、4人に1人「失業の不安」

 ◆労働者にとっては厳しい状況
連合総研では、10月に労働者を対象に実施した「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」(勤労者短観)の結果を発表しました。
「景気や勤め先の経営状況」「賃金収入と失業不安」などの項目について調査しており、労働者の厳しい状況がうかがえる結果となっています。

 ◆賃金収入は減少傾向に
1年前と比較した賃金収入の増減については、「減った」(32.9%)と回答した人が3割を超えており、前回調査(34.6%)と比べてもほとんど改善が見られませんでした。
また、今後1年の賃金収入見込みについて「減ると思う」(25.5%)と回答した人が前回調査(21.8%)を上回り、「増えると思う」(16.9%)と回答した人は前回調査(21.0%)から減少しています。悲観的な見方をする人の割合が高まっています。

 ◆4人に1人が「失業の不安」
次に、「今後1年間の失業の不安」について「感じる」と回答した人は25.0%で、過去最高を記録した昨年同月(28.3%)よりは低下しましたが、一昨年の同月調査(23.8%)を上回っています。
また、非正社員(男性53.6%、女性34.8%)や20代(32.9%)が感じる失業の不安は、相対的に高くなっています。

 ◆所定外労働、賃金不払い残業
このアンケート調査では、他にも「所定外労働の状況」「賃金不払い残業の状況」などについての調査を行っており、非常に興味深いものとなっていますので、連合総研のホームページ(http://www.rengo-soken.or.jp/webpage/21.html)を覗いてみてください。


 「労働時間適正化キャンペーン」実施中

 ◆全国一斉の電話相談など
厚生労働省では、長時間労働に伴う問題解消を図るために、11月を「労働時間適正化キャンペーン」と定め、全国一斉の電話相談の実施をはじめ、使用者団体・労働組合への協力要請、リーフレットの配布などによる周知啓発などの取組みを集中的に実施しています。

 ◆労働時間をめぐる現状
平成21年の総務省調査によると、週60時間以上働いている人の割合は全体の9.2%で、30代の男性に限ってみると全体の倍の水準となる18.0%にも上ります。
1カ月の残業時間が80時間を超える状態が続くと、心身の健康を害するばかりか、過労死の危険性が高まると言われています。
過労死などで労災認定された件数は平成21年度に293件となっており、過重労働による健康障害の事例が数多く報告されています。また、労働基準監督署による賃金不払残業の是正指導も多く見られます。

 ◆キャンペーンの重点事項
このような状況を受け、厚生労働省では、平成22年度も「労働時間適正化キャンペーン」を実施し、長時間労働の抑制を行うなど、労働時間の適正化に向けて労使の主体的な取組みを促すとともに、重点監督などを行っています。
今年度の重点取組み事項は、次の3点となっています。
(1)時間外労働協定の適正化などによる時間外・休日労働の削減
(2)長時間労働者への医師による面接指導など労働者の健康管理に関する措置の徹底
(3)労働時間の適正な把握の徹底

 ◆賃金不払残業が大きな問題に
長時間労働と同様に、現在、賃金不払残業(サービス残業)が大きな問題になっています。
このキャンペーンを機に、恒常的に長時間労働が行われていないか、長時間労働者の健康管理について配慮がなされているか、労働時間が適正に把握されているかなど、労働環境を今一度見直してみましょう。

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